説明

めっき装置及びめっき液の管理方法

【課題】めっき液の使用量を極力少なく抑えつつ、めっき液の各成分の濃度を長時間に亘って一定に保って、基板の表面により均一な膜厚のめっき膜を安定して形成できるようにする。
【解決手段】カソードとした基板Wの表面と不溶解性アノード98との間にめっき液を満たして該表面に電解めっきを行うめっきセル12と、めっき液をめっきセル12に供給し回収して循環させるめっき液循環系136と、めっき液に含まれる成分をめっき液よりも高い濃度で含む補給液を、めっき液循環系136内を循環するめっき液に補給してめっき液の成分の濃度を一定範囲内に維持するめっき液成分補給系138を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき装置及びめっき液の管理方法に係り、特に半導体ウェハなどの基板の表面に形成された微細な配線用凹部(回路パターン)に銅等の金属(配線材料)を埋込んで配線を形成するのに使用されるめっき装置及び該めっき装置に使用されるめっき液の成分を管理するのに好適なめっき液の管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体チップの高速化、高集積化に伴い、半導体ウェハ等の基板の表面に配線回路を形成するための金属材料として、アルミニウムまたはアルミニウム合金に代えて、電気抵抗率が低くエレクトロマイグレーション耐性が高い銅(Cu)が用いる動きが顕著になっている。この種の銅配線は、基板の表面に設けた微細な配線用凹部内に銅を埋込むことによって一般に形成される。この銅配線を形成する方法としては、CVD、スパッタリング及びめっきといった手法があるが、めっきが一般的である。
【0003】
図1は、この種の銅配線基板の製造例を工程順に示す。先ず、図1(a)に示すように、半導体素子を形成した半導体基材1上の導電層1aの上にSiOからなる酸化膜やLow−K材膜等の絶縁層2を堆積し、この絶縁層2の内部に、リソグラフィ・エッチング技術により、配線用凹部としてのコンタクトホール3とトレンチ4を形成する。その上にTaNやTiN等からなるバリア層5、更にその上に電解めっきの給電層としてシード層7をスパッタリングやCVD等によって形成する。
【0004】
そして、図1(b)に示すように、基板Wのシード層7の表面に銅めっきを施すことで、コンタクトホール3及びトレンチ4内に銅を充填するとともに、絶縁層2上に銅膜6を堆積する。その後、化学的機械的研磨(CMP)により、絶縁層2上の銅膜6、シード層7及びバリア層5を除去して、コンタクトホール3及びトレンチ4内に充填させた銅膜6の表面と絶縁層2の表面とをほぼ同一平面にする。これにより、図1(c)に示すように、絶縁層2の内部に銅膜6からなる配線が形成される。
【0005】
このようなめっき処理において、その成分として、目的金属である銅の塩、支持電解質、添加剤を基板の表面に留める等の役割を果たす塩素等のハロゲンイオン及び水の他に、めっき反応を促進する反応促進剤(アクセレレータ)、めっき反応を抑制する反応抑制剤(サプレッサ)及びめっき膜の表面を平滑化する平滑化剤(レベラ)の3つの有機添加剤を含むめっき液が一般に用いられる。
【0006】
近年の半導体装置におけるプリント配線やLSI配線は、用いられるチップサイズの縮小化に伴い、より微細化する傾向にある。この様な微細構造体への電解めっきでは、めっき膜の細溝への埋込み特性を向上させることが必要となる。そのためには、この種のめっきを行うめっき装置において、めっき液中に含まれるめっき液成分(金属イオン、支持電解質、ハロゲンイオン、各種添加剤)の濃度を、めっき作業時を含め、長期間に渡って一定に保つことが要求される。
【0007】
電解めっき装置では、アノードとしてめっき液中に含有される金属イオンと同じ金属イオンが生成される金属が一般に用いられる。例えば、硫酸銅と硫酸を主成分とし、液中に銅イオンを含有するめっき液を使用する電解めっき装置では、銅中にリンを少量含む含リン銅がアノードとして使用される。このようなアノードを使用した電解めっき装置で電解めっきを行うと、アノード中の金属、例えば銅がめっき液中に溶け出し、アノードは減少しながら形状を変化させる。そして、アノードの形状が変化すると、カソード側に形成されるめっき膜の膜厚のばらつきが大きくなる。このため、アノードを定期的に交換する必要が生じる。更に、含リン銅をアノードとした場合、アノードの表面にブラックフィルムと呼ばれる黒色のスラッジが形成され、このブラックフィルムがカソード側に成膜されるめっき膜に悪影響を与えて、基板に形成した配線用凹部内に形成される配線等に欠陥が生じる原因となる。
【0008】
このため、アノードとして、例えばチタンの表面に酸化イリジウムなどをコーティングした不溶解性のものを用い、不溶解性アノードとカソードとなる基板の表面との間にめっき液を満たしつつ通電して、該表面にめっき処理を行うようにした電解めっき装置が開発されている。不溶解性アノードは、含リン銅アノードのように表面にブラックフィルムと呼ばれる黒色のスラッジが形成されることがなく、まためっき処理に伴ってアノードが溶解することがないため、アノードの交換が不要となって、アノードの保守・管理に手間がかからないといった利点を有する。
【0009】
近年、電気化学的な手法(CVS:Cyclic Voltammetry Stripping)により、めっき液中に含まれる添加剤の濃度を自動的に分析する自動分析手段が構築されている。つまり、めっき液中の添加剤の濃度を自動分析手段を用いて分析し、得られた結果をもとに、不足した添加剤をめっき液中に補充することにより、めっき液中の添加剤の濃度を一定に保つようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
表面(被めっき面)を上向きにして基板を保持する、いわゆるフェースアップ方式を採用した電解めっき装置にあっては、一回のめっき処理に使用されるめっき液の量が一般に少ない。このため、めっき液の使用方法として、一回のめっき処理毎にめっき液を捨てる、いわゆるワンパス式(使い捨て)が採用されている。しかし、ワンパス式では、めっき液の使用量が多くなってランニングコストが高くなってしまう。
【0011】
このため、めっき液を回収しながら循環させて再使用する、いわゆる循環式を採用することが考えられる。この循環式を採用しためっき液の循環・回収システムにあっては、一般に、めっき処理に使用されためっき液を回収し循環させる循環槽が備えられ、循環槽内に回収されためっき液から一定量のめっき液を基板の表面(被めっき面)に供給してめっき処理を行い、めっき処理後にめっき面上に残っためっき液を循環槽に回収するように構成されている。
【0012】
基板の表面に良好なめっき膜を安定して形成するためには、めっき液中に含まれるめっき液の各成分の濃度を、めっき作業時を含め長期間に渡って一定に保つことが要求される。不溶解性アノードを用いためっき装置においては、めっきの進行に伴う銅等の金属の消費、添加剤の分解及び水素イオンの生成などにより、めっき液成分の濃度が徐々に変化することが知られている。したがって、めっき処理後のめっき液を循環槽に回収して再使用すると、循環槽内に回収しためっき液成分の濃度が徐々に変化する。このため、めっき液の各成分の濃度を、めっき作業時を含め長期間に渡って一定に保つためには、めっき液の各成分を適時めっき液に補充することが必要となる。
【0013】
不溶解性アノードを用いためっき装置では、目的の金属イオンの補充は、粉末状の金属塩を循環槽内に投入するか、または別槽で金属片を溶解させて補充するといった方法が一般に採用されている。しかし、粉末状の金属塩をめっき液中に補充すると、めっき液中に微粒子が増加し、この増加した微粒子がめっき処理後の基板の表面に欠陥を生じさせる原因となることが懸念される。一方、別槽で金属片を溶解させて補充する方法では、装置構成が複雑になり、装置コストが上昇してしまう。
【0014】
また、めっき液中の添加剤の濃度を自動分析手段を用いて分析し、得られた結果をもとに不足した添加剤をめっき液に補充して、めっき液中の添加剤の濃度を一定に保つようにすると、自動分析手段は、一般に測定に多くの時間を要するため、所定の時間間隔で添加剤をめっき液に補充することになり、しかも、厚膜のめっき膜をめっきする時には多量の、薄膜のめっき膜をめっきする時には少量のように、めっき条件によって異なる量の添加剤を補充する必要がある。このため、めっき液に添加剤を補充する前後におけるめっき液中の添加剤濃度の変動が大きく、かつめっき条件によって、この変動の幅が大きく変化してしまう。
【0015】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、めっき液の使用量を極力少なく抑えつつ、めっき液の各成分の濃度を長時間に亘って一定に保って、基板の表面により均一な膜厚のめっき膜を安定して形成できるようにしためっき装置及び該めっき装置に使用されるめっき液の管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に記載の発明は、カソードとした基板の表面と不溶解性アノードとの間にめっき液を満たして該表面に電解めっきを行うめっきセルと、めっき液を前記めっきセルに供給し回収して循環させるめっき液循環系と、めっき液に含まれる成分をめっき液よりも高い濃度で含む補給液を、前記めっき液循環系内を循環するめっき液に補給してめっき液の成分の濃度を一定範囲内に維持するめっき液成分補給系を有することを特徴とするめっき装置である。
【0017】
めっき液を回収しながら循環させて再使用することで、めっき液の使用量を極力少なく抑え、また不溶解性アノードを使用することで、アノードの交換を不要となして、アノードの保守・管理を容易となすことができる。しかも、不溶解性アノードを使用し、かつめっき液を循環させて再使用することに伴って変化するめっき液成分の濃度を、めっき液に含まれる成分をめっき液よりも高い濃度で含む補給液をめっき液に補給して一定範囲内に維持することで、めっき液成分の補給に伴ってめっき液中の微粒子が増加したり、装置が複雑化したりすることを防止することができる。
【0018】
請求項2に記載の発明は、前記めっき液循環系から所定量のめっき液を排出するめっき液排出系を更に有することを特徴とする請求項1記載のめっき装置である。
めっき液循環系から所定量のめっき液を排出することで、例えばめっき液の各成分の濃度を一定範囲に維持するのに必要な補給液の液量を確保できるように、めっき液循環系内のめっき液の液量を調整することができる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、前記めっき液循環系は、前記めっきセルでめっきに使用されためっき液を回収するめっき液緩衝槽、前記めっき液緩衝槽に接続され前記補給液をめっき液中に補給するめっき液調整槽、及び前記めっき液調整槽に接続され該めっき液調整槽で調整されためっき液を溜めて前記めっきセルに供給するめっき液供給槽を有することを特徴とする請求項1または2記載のめっき装置である。
【0020】
めっきに使用されためっき液をめっき液緩衝槽内に一旦回収した後、めっき液調整槽内に送り、めっき液調整槽でめっき液に補給液を補給してめっき液の各成分の濃度を調整し、しかる後、各成分の濃度を調整しためっき液をめっき液供給槽に溜めてからめっきセルに供給してめっきを行うことで、各成分の濃度をより一定しためっき液をめっきセルに供給することができる。
【0021】
請求項4に記載の発明は、前記めっき液成分補給系でめっき液に補給される補給液に含まれる成分は、反応促進剤、反応抑制剤及び平滑化剤の少なくとも一つを含む有機添加剤、金属イオン、支持電解質及びハロゲンイオンであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のめっき装置である。
【0022】
例えば、銅の埋込みに使用されるめっき液の成分には、金属(銅)イオン、支持電解質及びハロゲンイオンの他に、反応促進剤(アクセレレータ)、反応抑制剤(サプレッサ)及び平滑化剤(レベラ)の3つの有機添加物が一般に含まれており、不溶解性アノードを使用しためっきの進行に伴って、これらの成分のめっき液中における濃度が徐々に変化する。したがって、これらの各成分をめっき液よりも高い濃度で含む補給液をめっき液に補給することで、めっき液中の各成分の濃度を一定範囲に維持することができる。
【0023】
請求項5に記載の発明は、前記補給液の補給量は、電解めっきに要した電気量の積算値から求められることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のめっき装置である。
めっき液を循環させて使用する電解めっきにおいて、めっき処理によって変化するめっき液中の各成分の量(消費量)は、一般にめっき処理時の電気量によって決まる。このため、電解めっきに要した電気量の積算値からめっき液の各成分の補給量を算出することができる。更に、自動分析手段の分析時間よりも短い時間間隔で、めっき液中の添加剤の補給量を算出して補給することで、例えば添加剤補給時におけるめっき液中の添加剤濃度の変動を小さく抑えることができる。
【0024】
請求項6に記載の発明は、前記補給液は、めっき液中の1つ成分をめっき液よりも高い濃度で有し、補給液タンクからめっき液中に補給されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のめっき装置である。
例えば、めっき液中の金属イオン、支持電解質、ハロゲンイオン、反応促進剤、反応抑制剤及び平滑化剤の6つの成分の濃度を一定範囲に維持する場合、これらの各成分のみを有する補給液を補給液タンクに個別に貯蔵してめっき液に補給することで、これらの各成分におけるめっき液中の濃度を個別に管理することができる。
【0025】
請求項7に記載の発明は、前記めっきセルは、前記不溶解性アノードと前記カソードとなる基板との間に配置される高抵抗構造体を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のめっき装置。
不溶解性アノードと前記カソードとなる基板との間に高抵抗構造体を配置し、この高抵抗構造体にめっき液自身の抵抗よりも高い抵抗を持たせることで、基板の表面(被めっき面)に形成された、例えばシード層等の抵抗を無視できる程度となし、基板の表面の電気抵抗による電流密度の面内差を小さくして、めっき膜の面内均一性を向上させることができる。
【0026】
請求項8に記載の発明は、前記補給液の補給量は、前記めっきセルでめっきを施すために通電した電流の電流密度と通電時間から決定される消耗係数を用いて求められることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のめっき装置である。
めっき液中に含まれる添加剤にあっては、その消費量がめっき時に通電した電流の電流密度及び通電時間の相違によって異なり、このため、積算電気量のみで補給量を算出した場合に、補給量と実際の消費量との間にずれが生じるものがある。このような添加剤に対しては、めっきを施すために通電した電流の電流密度と通電時間から決定される消耗係数を用いることで、その消費量をより正確に求めることができる。
【0027】
請求項9に記載の発明は、前記めっきセルは、前記不溶解性アノードと前記カソードとなる基板との間に配置された高抵抗構造体によってアノード室とカソード側領域に区分され、前記補給液の補給量は、前記アノード室と前記カソード側領域で個別に求められて合計されることを特徴とする請求項8記載のめっき装置である。
消費量が電流密度の大小に影響を受けるめっき液中の添加剤は、めっきセルをアノード室とカソード側領域に区分した場合に、アノード室とカソード側領域で異なった状態で消費される。このため、アノード室とカソード側領域で消費される消費量を個別に求めて合計することで、添加剤の消費量より正確に求めることができる。
【0028】
請求項10に記載の発明は、前記電流密度と通電時間から決定される消耗係数を用いて求められる補給液に含まれるめっき液の成分は、反応促進剤であることを特徴とする請求項8または9記載のめっき装置である。
これにより、めっき液中に含まれ、消費量が電流密度の大小に影響を受ける反応促進剤の濃度をより厳密に管理し、均一かつ均質な銅めっき等を行って、信頼性の高い銅配線等を得ることができる。
【0029】
請求項11に記載の発明は、前記めっき液調整槽は、該めっき液調整槽内のめっき液の液面を計測する液面センサを有することを特徴とする請求項3乃至10のいずれかに記載のめっき装置である。
これにより、めっき液調整槽内に溜められためっき液の液面を液面センサで計測して、めっき液調整槽に溜められるめっき液の液量を一定範囲に維持することができる。
【0030】
請求項12に記載の発明は、前記めっきセルに供給するめっき液をサンプリングして、めっき液中の各成分の濃度を分析するめっき液分析装置を更に有することを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載のめっき装置である。
これにより、めっき液を所定の時間間隔でサンプリングしてめっき液中の各成分の濃度をめっき液分析装置で分析し、不足する成分をめっき液に補給することで、めっき条件の時間的変化などにより、めっき液の各成分の消費量のバランスが崩れた場合等に対応することができる。
【0031】
請求項13に記載の発明は、めっき液に含まれる成分をめっき液よりも高い濃度で含む補給液をめっき液に補給して、めっきに使用されるめっき液の成分の濃度を一定範囲内に維持することを特徴とするめっき液の管理方法である。
【0032】
請求項14に記載の発明は、めっきセルでめっきに使用されためっき液をめっき液緩衝槽内に回収し、前記めっき液緩衝槽内のめっき液をめっき液調整槽内に送液し、該めっき液調整槽でめっき液に含まれる成分をめっき液よりも高い濃度で含む補給液をめっき液に補給してめっき液の成分の濃度を一定範囲内に維持し、前記めっき液調整槽内のめっき液をめっき液供給槽に送液し、前記めっき液供給槽内のめっき液を前記めっきセルに供給することを特徴とするめっき液の管理方法である。
【0033】
請求項15に記載の発明は、前記補給液の補給量を、電解めっきに要した電気量の積算値から求めることを特徴とする請求項13または14記載のめっき液の管理方法である。
請求項16に記載の発明は、前記補給液の補給量を、前記めっきセルでめっきを施すために通電した電流の電流密度と通電時間から決定される消耗係数を用いて求めることを特徴とする請求項13または14記載のめっき液の管理方法である。
【0034】
請求項17に記載の発明は、前記めっきセルは、前記不溶解性アノードと前記カソードとなる基板との間に配置された高抵抗構造体によってアノード室とカソード側領域に区分され、前記補給液の補給量を、前記アノード室と前記カソード側領域で個別に求めて合計することを特徴とする請求項16記載のめっき液の管理方法である。
請求項18に記載の発明は、前記電流密度と通電時間から決定される消耗係数を用いて求められる補給液に含まれるめっき液の成分は、反応促進剤であることを特徴とする請求項16または17記載のめっき液の管理方法である。
【0035】
請求項19に記載の発明は、めっきする金属が銅で、硫酸銅濃度が200g/L〜飽和濃度の硫酸銅水溶液を、銅イオン濃度が20〜60g/Lのめっき液に補給して、めっき液中の銅イオン濃度を一定範囲に維持することを特徴とする請求項13乃至18のいずれかに記載のめっき液の管理方法である。
【0036】
請求項20に記載の発明は、めっき液中に支持電解質としての硫酸が含まれ、濃度が20〜98wt%の硫酸を、硫酸濃度が10〜100g/Lのめっき液に補給して、めっき液中の硫酸濃度を一定範囲に維持することを特徴とする請求項13乃至18のいずれかに記載のめっき液の管理方法である。
【0037】
請求項21に記載の発明は、めっき液にハロゲンイオンとしての塩素が含まれ、濃度が1〜36wt%の塩酸を、塩素濃度が30〜90mg/Lのめっき液中に補給して、めっき液中の塩素濃度を一定範囲に維持することを特徴とする請求項13乃至18のいずれかに記載のめっき液の管理方法である。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、めっき液を回収し循環させて再使用するシステムを構築してめっき液の使用量を減少させ、しかも、交換が不要で、保守・管理の容易な不溶解性アノードを使用し、めっき液中の微粒子が増大したり、装置として複雑化したりすることを防止しつつ、めっき液の各成分の濃度を長期に亘って一定に保って、めっき液のめっき特性を安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。この実施の形態は、半導体基板の表面に設けた微細な配線用凹部内に銅を埋込んで銅からなる配線を形成するようにした例を示す。
【0040】
図2は、本発明の実施の形態におけるめっき装置を備えた基板処理装置の全体配置図を示す。図2に示すように、基板処理装置には、同一設備内に位置して、内部に複数の基板Wを収納する2基のロード・アンロード部10と、めっき処理を行う2基のめっきセル12と、ロード・アンロード部10とめっきセル12との間で基板Wの受渡しを行う搬送ロボット14と、めっき液調整槽16を有し、めっきセル12にめっき液を供給するめっき液供給設備18が備えられている。
【0041】
めっきセル12には、図3に示すように、めっき処理及びその付帯処理を行う基板処理部20が備えられ、この基板処理部20に隣接して、めっき液を溜めるめっき液トレー22が配置されている。また、回転軸24を中心に揺動する揺動アーム26の先端に保持されて基板処理部20とめっき液トレー22との間を揺動する電極ヘッド28を有する電極アーム部30が備えられている。更に、基板処理部20の側方に位置して、プレコート・回収アーム32と、純水やイオン水等の薬液、または気体等を基板に向けて噴射する固定ノズル34が配置されている。この実施の形態にあっては、3個の固定ノズル34が備えられ、その内の1個を純水の供給用に用いている。
【0042】
基板処理部20には、図4に示すように、基板の表面(被めっき面)を上向きにして基板Wを保持する基板保持部36と、この基板保持部36の上方に該基板保持部36の周縁部を囲繞するように配置されたカソード部38が備えられている。更に、基板保持部36の周囲を囲繞して処理中に用いる各種薬液の飛散を防止する有底略円筒状のカップ40が、エアシリンダ(図示せず)を介して上下動自在に配置されている。
【0043】
基板保持部36は、エアシリンダ44によって、下方の基板受渡し位置Aと、上方のめっき位置Bと、これらの中間の前処理・洗浄位置Cとの間を昇降し、図示しない回転モータ及びベルトを介して、任意の加速度及び速度でカソード部38と一体に回転する。この基板受渡し位置Aに対向して、めっきセル12のフレーム側面の搬送ロボット14側には、基板搬出入口(図示せず)が設けられ、また基板保持部36がめっき位置Bまで上昇した時に、基板保持部36で保持された基板Wの周縁部に下記のカソード部38のシール材90とカソード電極88が当接する。一方、カップ40は、その上端が基板搬出入口の下方に位置し、図4に仮想線で示すように、上昇した時に基板搬出入口を塞いでカソード部38の上方に達する。
【0044】
めっき液トレー22は、めっき処理を実施していない時に、電極ヘッド28をめっき液トレー22内に位置させ、電極ヘッド28内のめっき液の一部を置換させるためのもので、高抵抗構造体110が収容できる大きさに設定されている。また、めっき液の液面を計測するフォトセンサがめっき液トレー22に取付けられている。
【0045】
電極アーム部30は、この例では、図示しないサーボモータからなる上下動モータとボールねじを介して上下動し、旋回モータ(図示せず)を介して、めっき液トレー22と基板処理部20との間を旋回(揺動)する。モータの代わりに空気圧アクチュエータを使用してもよい。
【0046】
プレコート・回収アーム32は、図5に示すように、上下方向に延びる支持軸58の上端に連結されて、ロータリアクチュエータ60を介して旋回(揺動)し、エアシリンダ(図示せず)を介して上下動する。このプレコート・回収アーム32には、その自由端側にプレコート液吐出用のプレコートノズル64が、基端側にめっき液回収用のめっき液回収ノズル66がそれぞれ保持されている。プレコートノズル64は、例えばエアシリンダによって駆動するシリンジに接続されて、プレコート液がプレコートノズル64から間欠的に吐出される。また、めっき液回収ノズル66は、めっき液回収管130に設置したポンプ134(図13参照)に接続され、このポンプ134の駆動に伴って、基板上のめっき液はめっき液回収ノズル66から吸引される。
【0047】
基板保持部36は、図6乃至図8に示すように、円板状の基板ステージ68を備え、この基板ステージ68の周縁部の円周方向に沿った6カ所に、上面に基板Wを水平に載置して保持する支持腕70が立設されている。この支持腕70の1つの上端には、基板Wの端面に当接して位置決めする位置決め板72が固着され、この位置決め板72を固着した支持腕70に対向する支持腕70の上端には、基板Wの端面に当接し回動して基板Wを位置決め板72側に押付ける押付け片74が回動自在に支承されている。また、他の4個の支持腕70の上端には、回動して基板Wをこの上方から下方に押付けるチャック爪76が回動自在に支承されている。
【0048】
ここで、押付け片74及びチャック爪76の下端は、コイルばね78を介して下方に付勢した押圧棒80の上端に連結されて、この押圧棒80の下動に伴って押付け片74及びチャック爪76が内方に回動して閉じるようになっており、基板ステージ68の下方には、押圧棒80に下面に当接してこれを上方に押上げる支持板82が配置されている。
これにより、基板保持部36が図4に示す基板受渡し位置Aに位置する時、押圧棒80は支持板82に当接し上方に押上げられて、押付け片74及びチャック爪76が外方に回動して開き、基板ステージ68を上昇させると、押圧棒80がコイルばね78の弾性力で下降して、押付け片74及びチャック爪76が内方に回転して閉じる。
【0049】
カソード部38は、図9及び図10に示すように、支持板82(図8等参照)の周縁部に立設した支柱84の上端に固着した環状の枠体86と、この枠体86の下面に内方に突出させて取付けた、この例では6分割されたカソード電極88と、このカソード電極88の上方を覆うように枠体86の上面に取付けた環状のシール材90を有している。シール材90は、その内周縁部が内方に向け下方に傾斜し、かつ徐々に薄肉となって、内周端部が下方に垂下するように構成されている。
【0050】
これにより、図4に示すように、基板保持部36がめっき位置Bまで上昇した時に、この基板保持部36で保持した基板Wの周縁部にカソード電極88が押付けられて通電し、同時にシール材90の内周端部が基板Wの周縁部上面に圧接し、ここを水密的にシールして、基板の上面(被めっき面)に供給されためっき液が基板Wの端部から染み出すのを防止するとともに、めっき液がカソード電極88を汚染することを防止する。
なお、この例において、カソード部38は、上下動不能で基板保持部36と一体に回転するようになっているが、上下動自在で、下降した時にシール材90が基板Wの被めっき面に圧接するように構成してもよい。
【0051】
電極アーム部30の電極ヘッド28は、図11及び図12に示すように、揺動アーム26の自由端にボールベアリング92を介して連結した電極ホルダ94と、この電極ホルダ94の下端開口部を塞ぐように配置された、多孔質体からなる高抵抗構造体110を有している。すなわち、この電極ホルダ94は、下方に開口した有底カップ状に形成され、この下部内周面には凹状部94aが、高抵抗構造体110の上部には、この凹状部94aに嵌合するフランジ部110aがそれぞれ設けられ、このフランジ部110aを凹状部94aに嵌入することで、電極ホルダ94に高抵抗構造体110が保持されている。これによって、めっきセル12は、高抵抗構造体110によって、電極ホルダ94の内部のアノード室100とカソード側領域101に区画されている。
【0052】
高抵抗構造体110は、例えばアルミナ、SiC、ムライト、ジルコニア、チタニア、コージライト等の多孔質セラミックスまたはポリプロピレンやポリエチレンの焼結体等の硬質多孔質体、あるいはこれらの複合体、更には織布や不織布で構成されている。例えば、アルミナ系セラミックスにあっては、ポア径30〜200μm、SiCにあっては、ポア径30μm以下で、気孔率20〜95%、厚み1〜20mm、好ましくは5〜20mm、更に好ましくは8〜15mm程度のものが使用される。この例では、高抵抗構造体110は、例えば気孔率30%、平均ポア径100μmでアルミナ製の多孔質セラミックス板から構成されている。そして、この内部にめっき液を含有させることで、つまり多孔質セラミックス板自体は絶縁体であるが、この内部にめっき液を複雑に入り込ませ、厚さ方向にかなり長い経路を辿らせることで、めっき液の電気伝導率より小さい電気伝導率を有するように構成されている。
【0053】
このように高抵抗構造体110をアノード室100とカソード側領域101の間に配置し、この高抵抗構造体110によって大きな抵抗を発生させることで、シード層7(図1参照)の抵抗の影響を無視できる程度となし、基板Wの表面の電気抵抗による電流密度の面内差を小さくして、めっき膜の面内均一性を向上させることができる。
【0054】
アノード室100内には、高抵抗構造体110の上方に位置して、内部に上下に貫通する多数の通孔98aを有する不溶解性アノード98が配置されている。そして、電極ホルダ94には、アノード室100内のめっき液を吸引して排出するめっき液排出口103が設けられ、このめっき液排出口103は、廃液槽160に繋がるめっき液排出管106に接続されている。更に、電極ホルダ94の周壁内部には、不溶解性アノード98及び高抵抗構造体110の側方に位置して上下に貫通するめっき液供給口104が設けられ、このめっき液供給口104は、めっき液調整槽16から延びるめっき液供給管102に接続されている。
【0055】
このめっき液供給口104は、基板保持部36がめっき位置B(図4参照)にある時に、基板保持部36で保持した基板Wと高抵抗構造体110の隙間が、例えば0.5〜3mm程度となるまで電極ヘッド28を下降させ、この状態で、不溶解性アノード98及び高抵抗構造体110の側方から、基板Wと高抵抗構造体110との間のカソード側領域101にめっき液を供給するためのもので、シール材90と高抵抗構造体110に挟まれたカソード側領域101で下端のノズル部が開口するようになっている。高抵抗構造体110の外周部には、ここを電気的にシールドするゴム製のシールドリング112が装着されている。
【0056】
めっき液供給口104から供給されためっき液は、基板Wの表面に沿って一方向に流れ、このめっき液の流れによって、基板Wと高抵抗構造体110との間のカソード側領域101の空気が外方に押し出されて外部に排出され、基板Wとシール材90で区画されたカソード側領域101がめっき液供給口104から注入された新鮮で組成が調整されためっき液で満たされて、基板Wとシール材90で区画されたカソード側領域101にめっき液が溜められる。
【0057】
不溶解性アノード98は、白金、チタン等の不溶解性金属あるいはこれらの金属に酸化イリジウムをコーティングした材料で構成されている。このように、不溶解性アノード98を使用することで、不溶解性アノード98の表面にブラックフィルムと呼ばれる黒色のスラッジが形成されることを防止し、しかもめっき処理に伴って不溶解性アノード98が溶解することをなくして、アノードの交換を不要となすことができる。めっき液の流通のしやすさ等から、不溶解性アノード98は、網状であってもよい。
【0058】
めっき液供給設備18には、図13に示すように、めっき液調整槽16からから延び、めっき液供給口104(図12参照)に接続されためっき液供給管102と、めっき液調整槽16からから延び、めっき液回収ノズル66(図5参照)に接続されためっき液回収管130が備えられ、これらのめっき液供給管102及びめっき液回収管130の途中には、ポンプ132,134が設置されている。これによって、めっき液循環系136が構成されている。つまり、めっき液供給管102に設置したポンプ132を駆動して、めっき液調整槽16内の一定量のめっき液を基板保持部36で保持した基板Wの表面(被めっき面)のシール材90で区画された領域に供給する。そして、めっき終了後に、めっき液回収管130に設置したポンプ134を駆動し、めっき液回収ノズル66で基板Wの表面に残っためっき液を吸引してめっき液調整槽16内に回収し再使用するようにしている。
【0059】
めっき液供給設備18には、めっき液に含まれる各成分をめっき液よりも高い濃度で含む補給液を、めっき液調整槽16内でめっき液中に補給して、めっき液中のこれらの各成分の濃度を一定範囲内に維持するめっき液成分補給系138が備えられている。つまり、この例では、めっき液として、その成分に、濃度が20〜60g/Lの銅イオン、濃度が10〜100g/Lの支持電解質としての硫酸、及び濃度が30〜90mg/Lのハロゲンイオンとしての塩素の他に、反応促進剤(アクセレレータ)、反応抑制剤(サプレッサ)及び平滑化剤(レベラ)の3つの有機添加物を有するものを使用している。
【0060】
そして、硫酸銅の濃度が200g/L〜飽和濃度の硫酸銅水溶液を貯蔵した補給液タンク140、濃度が20〜98wt%の硫酸を貯蔵した補給液タンク142、濃度が1〜36wt%の塩酸を貯蔵した補給液タンク144、市販濃度の反応促進剤溶液を貯蔵した補給液タンク146、市販濃度の反応抑制剤溶液を貯蔵した補給液タンク148及び市販濃度の平滑化剤溶液を貯蔵した補給液タンク150が備えられている。そして、これらの各補給液タンク140〜150からめっき液調整槽16内のめっき液に各補給液を、更には純水補給管152を通して純水(DIW)を補給することで、めっき液調整槽16内に回収されためっき液の各成分の濃度を一定範囲内に維持して再使用するようにしている。めっき液調整槽16には、この内部に溜められためっき液の液面を計測する液面センサ154が備えられている。
【0061】
なお、補給する硫酸銅水溶液の硫酸銅の濃度は、250〜300g/Lの範囲が好ましく、補給する硫酸の濃度は、50〜98wt%の範囲が補給量を少なくする上で好ましく、また補給する塩素の濃度は、5〜20wt%の範囲が取扱上好ましい。
この例では、めっき液成分として、反応促進剤(アクセレレータ)、反応抑制剤(サプレッサ)及び平滑化剤(レベラ)の3つの有機添加物を有するめっき液を使用した例を示しているが、これらの有機添加剤の内、少なくとも1つを成分に含むめっき液を使用し、このめっき液に含まれる成分を補給液で補給するようにしてもよい。
【0062】
更に、めっき液供給設備18には、めっき液循環系136内を循環するめっき液を廃液槽160に排出するめっき液排出系162が設けられている。つまり、めっき液回収管130には分割形の3方弁164が設置され、この3方弁164で分割された廃液管166が廃液槽160に接続されている。
これによって、めっき終了後にめっき液回収管130に設置したポンプ134を駆動し、めっき液回収ノズル66で基板Wの表面(被めっき面)に残っためっき液を吸引してめっき液調整槽16内に回収する時に、廃液管166を通して、一部のめっき液が廃液槽160に排出される。
【0063】
図14に示すように、めっき液排出口103(図12参照)に接続されためっき液排出管106は廃液槽160に接続され、このめっき液排出管106には、ポンプ170が設置されている。これにより、めっき液トレー22内のめっき液中に電極ヘッド28の高抵抗構造体110を浸漬させた状態で、めっき液供給管102に設置したポンプ132を駆動することで、めっき液調整槽16内のめっき液をめっき液トレー22内に供給し、同時にめっき液排出管106に設置したポンプ170を駆動して、アノード室100内のめっき液を引き抜く。これにより、高抵抗構造体110に含浸されるめっき液の新たなめっき液との置換及び古くなっためっき液の廃棄を行う。
【0064】
めっきを行うに際して、カソード電極88はめっき電源114のカソードに、不溶解性アノード98はめっき電源114のアノードにそれぞれ電気的に接続される。なお、めっき電源114として、流れる電流の向きを任意に変更できるようにしたものを使用し、これによって、めっき装置がめっき膜をエッチングするエッチング機能を有するようにしてもよい。
【0065】
次に、この実施の形態のめっき装置を備えた基板処理装置の操作について説明する。
先ず、ロード・アンロード部10からめっき処理前の基板Wを搬送ロボット14で取出し、表面(被めっき面)を上向きにした状態で、フレームの側面に設けられた基板搬出入口から一方のめっきセル12の内部に搬送する。この時、基板保持部36は、下方の基板受渡し位置Aにあり、搬送ロボット14は、そのハンドが基板ステージ68の真上に到達した後に、ハンドを下降させることで、基板Wを支持腕70上に載置する。そして、搬送ロボット14のハンドを、基板搬出入口を通って退去させる。
【0066】
搬送ロボット14のハンドの退去が完了した後、カップ40を上昇させ、同時に基板受渡し位置Aにあった基板保持部36を前処理・洗浄位置Cに上昇させる。この時、この上昇に伴って、支持腕70上に載置された基板は、位置決め板72と押付け片74で位置決めされ、チャック爪76で確実に把持される。カップ40の上昇が完了すると、フレーム側面の基板搬出入口はカップ40で塞がれて閉じ、フレーム内外の雰囲気が遮断状態となる。
【0067】
一方、電極アーム部30の電極ヘッド28は、この時点では、図14に示すように、めっき液トレー22上の通常位置にあって、高抵抗構造体110がめっき液トレー22内のめっき液に浸漬されている。この状態で、めっき液トレー22内へのめっき液の供給と、アノード室100内のめっき液の引抜きを行って、高抵抗構造体110に含浸されるめっき液の置換を行う。
【0068】
カップ40が上昇するとプレコート処理に移る。即ち、基板Wを受取った基板保持部36を回転させ、待避位置にあったプレコート・回収アーム32を基板と対峙する位置へ移動させる。そして、基板保持部36の回転速度が設定値に到達したところで、プレコート・回収アーム32の先端に設けられたプレコートノズル64から、例えば界面活性剤からなるプレコート液を基板Wの表面に間欠的に吐出する。この時、基板保持部36が回転しているため、プレコート液は基板Wの表面の全面に行き渡る。次に、プレコート・回収アーム32を待避位置へ戻し、基板保持部36の回転速度を増して、遠心力により基板Wの表面のプレコート液を振り切って乾燥させる。
【0069】
プレコート完了後にめっき処理に移る。先ず、基板保持部36を、この回転を停止、若しくは回転速度をめっき時速度まで低下させた状態で、めっきを施すめっき位置Bまで上昇させる。すると、基板Wの周縁部は、カソード電極88に接触して通電可能な状態となり、同時に基板Wの周縁部上面にシール材90が圧接して、基板Wの周縁部が水密的にシールされる。
【0070】
一方、搬入された基板Wのプレコート処理が完了したという信号に基づいて、電極アーム部30をめっき液トレー22上方からめっきを施す位置の上方に電極ヘッド28が位置するように水平方向に旋回させ、この位置に到達した後に、電極ヘッド28をカソード部38に向かって下降させる。そして、高抵抗構造体110が基板Wの表面に接触することなく、例えば0.1mm〜3mm程度に近接した時に電極ヘッド28を停止させる。次に、めっき液供給管102から所定量のめっき液を供給して、図13に示すように、基板Wと高抵抗構造体110との間のシール材90で囲まれたカソード側領域101をめっき液で満たす。
【0071】
そして、カソード電極88をめっき電源114のカソードに、不溶解性アノード98をめっき電源114のアノードにそれぞれ接続し、めっきに要する電気量を積算しながら、基板Wの表面(シード層7の表面)にめっきを行う。めっき処理が完了すると、めっき電源114をカソード電極88及び不溶解性アノード98から切離し、電極アーム部30を上昇させた後、旋回させて、電極ヘッド28をめっき液トレー22の上方へ戻し、通常位置へ下降させる。
【0072】
次に、プレコート・回収アーム32を待避位置から基板Wに対峙する位置へ移動させて下降させ、めっき液回収管130に設置したポンプ134を駆動して、めっき液回収ノズル66から基板W上のめっき液の大部分をめっき液調整槽16内へ回収し、一部は、廃液槽160内に廃棄する。このめっき液の回収が終了した後、プレコート・回収アーム32を待避位置へ戻し、基板のめっき面のリンスのために、純水用の固定ノズル34から基板Wの中央部に純水を吐出し、同時に基板保持部36をスピードを増して回転させて基板Wの表面のめっき液を純水に置換する。このように、基板Wのリンスを行うことで、基板保持部36をめっき位置Bから下降させる際に、めっき液が跳ねて、カソード部38のカソード電極88が汚染されることが防止される。
【0073】
リンス終了後に水洗工程に入る。即ち、基板保持部36をめっき位置Bから前処理・洗浄位置Cへ下降させ、純水用の固定ノズル34から純水を供給しつつ基板保持部36及びカソード部38を回転させて水洗を実施する。この時、カソード部38に直接供給した純水、または基板Wの面から飛散した純水によってシール材90及びカソード電極88も基板と同時に洗浄することができる。
【0074】
水洗完了後にドライ工程に入る。即ち、固定ノズル34からの純水の供給を停止し、更に基板保持部36及びカソード部38の回転スピードを増して、遠心力により基板表面の純水を振り切って乾燥させる。併せて、シール材90及びカソード電極88も乾燥される。ドライ工程が完了すると基板保持部36及びカソード部38の回転を停止させ、基板保持部36を基板受渡し位置Aまで下降させる。すると、チャック爪76による基板Wの把持が解かれ、基板Wは、支持腕70の上面に載置された状態となる。これと同時に、カップ40も下降させる。
【0075】
以上で、1枚の基板に対するめっき処理及びそれに付帯する前処理や洗浄・乾燥工程の全ての工程を終了し、搬送ロボット14は、そのハンドを基板搬出入口から基板Wの下方に挿入し、そのまま上昇させることで、基板保持部36から処理後の基板Wを受取る。そして、搬送ロボット14は、この基板保持部36から受取った処理後の基板Wをロード・アンロード部10に戻す。
【0076】
以上のように、不溶解性アノード98を用い、めっき液を回収しながら循環させて再使用すると、めっき液調整槽16内に回収されためっき液中の各成分の濃度が徐々に変化する。そこで、この例では、複数枚の基板を処理し、めっきに要した電気量の積算値が所定の値、例えば50Ahに達した時に、めっき液成分補給系138からめっき液に含まれる成分をめっき液よりも高い濃度で含む補給液をめっき液調整槽16内に補給する。つまり、補給液タンク140から硫酸銅の濃度が200g/L〜飽和濃度の硫酸銅水溶液を、補給液タンク142から濃度が20〜98wt%の硫酸を、補給液タンク144から濃度が1〜36wt%の塩酸を、補給液タンク146から市販濃度の反応促進剤溶液を、補給液タンク148から市販濃度の反応抑制剤溶液を、補給液タンク150から市販濃度の平滑化剤溶液をそれぞれめっき液調整槽16内のめっき液に補給し、更に純水補給管152を通して純水(DIW)をめっき液調整槽16内のめっき液に補給する。これによって、めっき液調整槽16内に回収されためっき液の各成分の濃度を一定範囲内に維持し、この成分の濃度を一定範囲に維持しためっき液を循環させて再使用する。
【0077】
このように、めっき液循環系136を介して、めっき液を回収しながら循環させて再使用することでめっき液の使用量を極力少なく抑え、また交換が不要な不溶解性アノード98を使用することで、アノードの保守・管理を容易となすことができる。しかも、不溶解性アノード98を使用し、かつめっき液を循環させて再使用することに伴って変化するめっき液成分の濃度を、めっき液成分補給系138を介して、めっき液に含まれる成分をめっき液よりも高い濃度で含む補給液をめっき液に補給して一定範囲内に維持することで、めっき液成分の補給に伴ってめっき液中の微粒子が増加したり、装置が複雑化したりすることを防止することができる。
【0078】
各補給液の補給量は、例えばめっきに要した電気量の積算値から求められる。めっき液を循環させて使用する電解めっきにおいて、めっき処理によって変化するめっき液中の各成分の量は、めっき処理時の電気量によって一般に決まる。このため、予め実験により求めた各成分の消費または増加量をもとに、電解めっきに要した電気量の積算値からめっき液の各成分の補給量を算出することができる。
【0079】
このように、電気量の積算値からめっき液中の各成分の補給量を算出して補給することで、自動分析手段の分析時間よりも短い時間間隔で添加剤の補給を行うことができ、これによって、例えば添加剤補給時におけるめっき液中の添加剤濃度の変動を小さく抑えることができる。
【0080】
めっき液調整槽16には、この内部に溜められためっき液の液面を計測する液面センサ154が備えられており、補給液及び純水の補給に伴って、めっき液調整槽16内のめっき液の液面が所定の位置に達した時に、補給液及び純水の補給を停止し、これによって、めっき液調整槽16に一定量のめっき液が溜められるようにする。めっき液調整槽16内にめっき液が回収される時、めっき液の一部は、めっき液排出系162を介して廃液槽160内に廃棄される。これにより、めっき液循環系136内に回収されて再使用されるめっき液の液量を調整して、めっき液調整槽16内のめっき液中の各成分の濃度を一定範囲となすのに十分な量の補給液及び純水を補給することができる。
【0081】
図15及び図16は、本発明の他の実施の形態のめっき装置の概要を示す。このめっき装置の前述のめっき装置と異なる点は、以下の通りである。つまり、めっき液循環系136は、めっき液調整槽16の上流側に位置してめっき液緩衝槽200を、下流側に位置してめっき液供給槽202を有している。めっき液回収ノズル66から延びるめっき液回収管130は、めっき液緩衝槽200に接続され、めっき液供給口104を通してめっき液をめっきセル12に供給するめっき液供給管102は、めっき液供給槽202に接続されている。めっき液緩衝槽200とめっき液調整槽16は、内部にポンプ204を設置した連絡管206で結ばれ、めっき液調整槽16とめっき液供給槽202は、内部にポンプ208を設置した連絡管210で結ばれている。更に、めっき液調整槽16の底部には、内部にポンプ212を設置しためっき液引抜き管214の一端が接続され、このめっき液引抜き管214の他端は廃液槽160に接続されている。これにより、めっき液排出系162が構成されている。
【0082】
また、図16に示すように、めっき液トレー22内のめっき液中に電極ヘッド28の高抵抗構造体110を浸漬させた状態で、高抵抗構造体110に含浸されるめっき液の新たなめっき液との置換及び古くなっためっき液の廃棄を行う時、三方弁215を介して、このめっき液を廃液槽160に導いて廃液するか、またはめっき液緩衝槽200に導いて回収して再使用できるようになっている。
【0083】
更にこの例では、めっき液供給槽202内のめっき液をサンプリングして各成分を分析し、分析後のサンプリング液をめっき液調整槽16に戻すめっき液分析装置216が備えられている。また、純水は、純水タンク218に貯蔵されてめっき液調整槽16内に補給される。めっき液緩衝槽200には、この内部に溜められためっき液の液面を計測する液面センサ220が設置されている。
【0084】
この例にあっては、めっきセル12で1枚の基板を処理する毎にめっき液がめっき液緩衝槽200内に回収され、めっき液緩衝槽200内に所定量のめっき液が回収された時に、めっき液緩衝槽200内のめっき液をめっき液調整槽16に送る。めっき液調整槽16では、めっき液排出系162を介して、送られためっき液の一部を排出する。このめっき液の排出と同時または排出後に、前述と同様に、めっき液成分補給系138からめっき液に含まれる成分をめっき液よりも高い濃度で含む補給液、つまり硫酸銅水溶液、硫酸、塩酸、反応促進剤溶液、反応抑制剤溶液、平滑化剤溶液及び純水(DIW)をめっき液調整槽16内のめっき液に補給する。これによって、めっき液調整槽16内のめっき液の各成分の濃度が一定となるようにする。
【0085】
そして、めっき液調整槽16でめっき液の各成分の濃度を調整しためっき液をめっき液供給槽202に送り、このめっき液供給槽202から所定量のめっき液をめっきセル12に送る。つまり、図15に示すように、めっき液供給槽202から、所定量のめっき液を基板Wと不溶解性アノード98との間のシール材90で包囲された領域に送り、不溶解性アノード98とカソード電極88との間にめっき電源114から電圧を印加することで、基板Wの表面にめっきを行い、また図16に示すように、めっき液供給槽202から、所定量のめっき液をめっき液トレー22内に送りつつ、電極ヘッド28のアノード室100内のめっき液をめっき液排出管106から排出することで、高抵抗構造体110内に含浸されるめっき液の置換を行う。
【0086】
このように、めっきに使用されためっき液をめっき液緩衝槽200内に一旦回収した後、めっき液調整槽16に送り、このめっき液調整槽16でめっき液に補給液を補給してめっき液の成分の濃度を調整し、しかる後、成分の濃度を調整しためっき液をめっき液供給槽202に溜めてからめっきセル12に供給してめっきを行うことで、めっきセル12に供給されるめっき液の成分の濃度をより一定することができる。
【0087】
更に、この例では、めっき液供給槽202内のめっき液を所定の時間間隔でサンプリングしてめっき液中の各成分の濃度をめっき液分析装置216で分析し、めっき液成分補給系138を介して、不足するめっき液成分をめっき液調整槽16に補給するようにしている。このように、めっき液を所定の時間間隔でサンプリングしてめっき液中の各成分の濃度をめっき液分析装置216で分析し、不足するめっき液成分をめっき液に補給することで、めっき条件の時間的変化などにより、めっき液の各成分の消費量のバランスが崩れた場合等に対応することができる。
【0088】
なお、図17及び図18に示すように、めっき液緩衝槽200及びめっき液供給槽202を省略し、めっき液回収ノズル66から延びるめっき液回収管130、及びめっき液供給口104を通してめっき液をめっきセル12に供給するめっき液供給管102をめっき液調整槽16にそれぞれ接続して、装置としての簡素化を図るようにしてもよい。
【0089】
上記の実施の形態では、めっき液の各成分の消費量は、一般にめっき処理時の電気量によって決まるため、めっきに要した電気量の積算値からめっき液の各成分の補給量を算出して補給するようにしている。しかし、めっき液中に含まれる添加剤、例えば反応促進剤にあっては、その消費量がめっき時に通電した電流の電流密度及び通電時間の相違によって異なり、このため、積算電気量のみで補給量を算出した場合に、補給量と実際の消費量との間にずれが生じる。
【0090】
つまり、図15に示すように、電極ヘッド28を基板Wの表面に近接させ、基板Wと高抵抗構造体110との間のシール材90で囲まれたカソード側領域101をめっき液で満たした後、カソード電極88をめっき電源114のカソードに、不溶解性アノード98をめっき電源114のアノードにそれぞれ接続し、電流密度及び通電時間を変化させて基板の表面にめっきを施した時の、基板Wと高抵抗構造体110との間のシール材90で囲まれたカソード側領域101のめっき液に含まれる反応促進剤の消費率(消費係数)は、図19に示すようになる。
【0091】
このように、消費量がめっき時に通電した電流の電流密度及び通電時間の相違によって異なる、例えばめっき液に含まれる反応促進剤に対しては、図19に示す、めっきを施すために通電した電流の電流密度と通電時間から決定される消耗係数(消費率)を予め求めておき、実際にめっきを行った時に通電した電流の電流密度及び通電時間から反応促進剤の消費量を求めることで、反応促進剤の消費量をより正確に求めることができる。
【0092】
そして、このようにして、反応促進剤の消費量をより正確に求め、めっき液成分補給系138の補給液タンク146から、この消費量に見合った量に相当する反応促進剤溶液をめっき液調整槽16内のめっき液に補給することで、めっき液中に含まれ、消費量が電流密度の大小に影響を受ける反応促進剤の濃度をより厳密に管理し、均一かつ均質な銅めっき等を行って、信頼性の高い銅配線等を得ることができる。
【0093】
ここで、図16に示すように、アノード室100内のめっき液の一部を回収して再使用する場合、アノード室100内において、めっき液中の添加剤、例えば反応促進剤が消費されためっき液がめっき液緩衝槽200に戻される。このアノード室100内での反応促進剤等の消費の状態は、カソード側領域101での反応促進剤等の消費の状態と異なる。このため、この時には、電流密度及び通電時間を変化させて基板の表面にめっきを施した時の、アノード室110内のめっき液に含まれる反応促進剤等の消費率(消費係数)を予め求めておき、この消費係数からアノード室内でのめっき液に含まれる反応促進剤等のめっきによる消費量を求め、この消費量を、前述のようにして求めた、カソード側領域101での反応促進剤等のめっきによる消費量に加えることで、添加剤の消費量をより正確に求めることができる。
【0094】
(実施例1)
PVD法により、バリア層及び銅シード層を表面に成膜した300mmシリコンウェハを用意し、図2乃至図14に示すめっき装置を使用して、シリコンウェハの表面に、膜厚が1μmの銅めっき膜を連続して成膜した。この時に使用しためっき液の組成及びめっき条件は下記の通りである。そして、めっきに用いた電気量を積算し、積算電気量が50Ahに達する毎に、めっき液に下記の補給液(濃度調整液)を補給して、めっき液調整槽内のめっき液の各成分の濃度が初期濃度となるようにした。各補給液の補給量は、予め実験的に求めた各成分の消耗または増加量をもとに算出した。
【0095】
めっき液の組成
・硫酸銅5水和物:200g/L
・硫 酸 :80g/L
・塩 素 :50mg/L
・有機添加剤(反応促進剤,反応抑制剤,平滑化剤):所定量
【0096】
めっき条件
・めっき液量:50±5L
・電極ヘッド内のめっき液の置換量:10ml/回
・めっき液吐出量:100ml/回
・めっき液回収量:90ml/回
【0097】
補給液(濃度調整液)
・硫酸銅5水和物水溶液:銅イオン濃度73g/L
・96wt%硫酸
・10wt%塩酸
・有機添加剤(反応促進剤,反応抑制剤,平滑化剤):市販濃度
【0098】
(比較例1)
めっき液に補給液を補給することなく、他は実施例1と同様にして、シリコンウェハの表面にめっき膜を連続して成膜した。
(比較例2)
実施例1と同様にして、シリコンウェハの表面にめっき膜を連続して成膜した。ただし、めっき後にシリコンウェハ上に残っためっき液をめっき液調整用タンクに回収することなく排出させた。
実施例1および比較例1〜2により、連続して電解めっきを行った際のめっき液の各成分の濃度変化とめっき液排出量の結果を表1に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
この表1から、実施例1では、めっき液の各成分の濃度は、いずれも所定の濃度範囲内に維持されており、めっき液の排出量も少ないことが判る。これに対して、比較例1ではめっき液の各成分の濃度が大きく変化し、まためっき液の各成分の濃度は処理枚数の増加に伴い減少または増加し続け、めっき性能が維持できない。また、比較例2ではめっき液中の各成分の濃度は所定の濃度範囲には一定量に保たれるが、めっき液排出量が多く経済的でない。
【0101】
(実施例2)
PVD法により、バリア層及び銅シード層を表面に成膜した300mmシリコンウェハを用意し、図15及び図16に示すめっき装置を使用して、シリコンウェハの表面に、膜厚が1μmの銅めっき膜を連続して成膜した。この時に使用しためっき液の組成は、実施例1と同様で、めっき条件は下記の通りである。そして、電気量の積算値をもとにして、予め実験により求めためっき液の各成分の消耗または増加量をもとに、めっき液調整槽において、めっき液の各成分の濃度が所定濃度になるように計算して、補給液(濃度調整液)をめっき液に補給した。この補給液は、実施例1と同様である。
【0102】
めっき条件
・めっき液量:50±5L
・電極ヘッド内のめっき液の置換量:20ml/回
・めっき液吐出量:100ml/回
図20(a)及び(b)にめっき液供給槽内の各めっき液成分の濃度を示す。めっき液供給槽内の各めっき液成分の濃度は一定であり、従ってめっきセルに供給されるめっき液の濃度は常に一定であることが判る。
【0103】
(実施例3)
図17及び図18に示すめっき装置を用い、その他は実施例1と同様にして、ウェハの表面にめっきを行った。図21(a)及び(b)にめっき液調製槽内における各めっき液成分の濃度を示す。めっき液調製槽内の各めっき液成分の濃度は変化しており、めっきセルに供給されるめっき液の各成分の濃度は変化しているものの、この濃度を一定範囲内に維持できることが判る。
【0104】
(実施例4)
硫酸銅溶液(Cu:40g/L、HSO:80g/L、Cl:50ppm)に添加剤(反応抑制剤:6ml/L、反応促進剤:10ml/L、平滑化剤:2ml/L)を添加しためっき液を用いてめっきを行った。電流密度40mA/cmで1時間めっきした後、電流密度を20mA/cmとして更に1時間めっきした。20分おきに電流密度および通電時間から決定される消耗係数を用いて反応促進剤の消費量を求め、この消費量を見合った量の反応促進剤をめっき液に添加した。この時のめっき液中における反応促進剤の濃度変化を図22に示す。図22より、めっき液中の反応促進剤は、一定の濃度を保つことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】めっき処理によって銅配線を形成する例を工程順に示す図である。
【図2】本発明の実施の形態のめっき装置を備えた基板処理装置の全体を示す平面図である。
【図3】図2に示すめっき装置のめっきセルを示す平面図である。
【図4】図2に示すめっき装置のめっきセルの基板保持部及び電極部の拡大断面図である。
【図5】図2に示すめっき装置のめっきセルのプレコート・回収アームを示す正面図である。
【図6】図2に示すめっき装置のめっきセルの基板保持部の平面図である。
【図7】図6のB−B線断面図である。
【図8】図6のC−C線断面図である。
【図9】図2に示すめっき装置のめっきセルの電極部の平面図である。
【図10】図9のD−D線断面図である。
【図11】図2に示すめっき装置のめっきセルの電極アーム部の平面図である。
【図12】図2に示すめっき装置のめっきセルの電極ヘッド及び基板保持部を概略的に示す電解めっき時における断面図である。
【図13】図2に示すめっき装置のめっき処理時における概要を示す図である。
【図14】図2に示すめっき装置の電極ヘッド内のめっき液置換時における概要を示す図である。
【図15】本発明の他の実施の形態のめっき装置のめっき処理時における概要を示す図である。
【図16】本発明の他の実施の形態のめっき装置の電極ヘッド内のめっき液置換時における概要を示す図である。
【図17】本発明の更に他の実施の形態のめっき装置のめっき処理時における概要を示す図である。
【図18】本発明の更に他の実施の形態のめっき装置の電極ヘッド内のめっき液置換時における概要を示す図である。
【図19】電流密度と通電時間の変化に伴う反応促進剤の消費率(消費係数)の一例を示すグラフである。
【図20】実施例2におけるウェハ処理枚数とめっき液成分の濃度との関係を示すグラフである。
【図21】実施例3におけるウェハ処理枚数とめっき液成分の濃度との関係を示すグラフである。
【図22】実施例4におけるウェハ処理枚数とめっき液中の反応促進剤の濃度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0106】
10 ロード・アンロード部
12 めっきセル
14 搬送ロボット
16 めっき液調整槽
18 めっき液供給設備
20 基板処理部
22 めっき液トレー
26 揺動アーム
28 電極ヘッド
30 電極アーム部
32 プレコート・回収アーム
36 基板保持部
38 カソード部
64 プレコートノズル
66 めっき液回収ノズル
68 基板ステージ
88 カソード電極
90 シール材
94 電極ホルダ
98 不溶解性アノード
100 アノード室
101 カソード側領域
102 めっき液供給管
103 めっき液排出口
104 めっき液供給口
106 めっき液排出管
110 高抵抗構造体
112 シールドリング
114 めっき電源
130 めっき液回収管
136 めっき液循環系
138 めっき液成分補給系
140,142,144,146,148,150 補給液タンク
152 純水補給管
154,220 液面センサ
160 廃液槽
162 めっき液排出系
166 廃液管
200 めっき液緩衝槽
202 めっき液供給槽
216 めっき液分析装置
218 純水タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソードとした基板の表面と不溶解性アノードとの間にめっき液を満たして該表面に電解めっきを行うめっきセルと、
めっき液を前記めっきセルに供給し回収して循環させるめっき液循環系と、
めっき液に含まれる成分をめっき液よりも高い濃度で含む補給液を、前記めっき液循環系内を循環するめっき液に補給してめっき液の成分の濃度を一定範囲内に維持するめっき液成分補給系を有することを特徴とするめっき装置。
【請求項2】
前記めっき液循環系から所定量のめっき液を排出するめっき液排出系を更に有することを特徴とする請求項1記載のめっき装置。
【請求項3】
前記めっき液循環系は、前記めっきセルでめっきに使用されためっき液を回収するめっき液緩衝槽、前記めっき液緩衝槽に接続され前記補給液をめっき液中に補給するめっき液調整槽、及び前記めっき液調整槽に接続され該めっき液調整槽で調整されためっき液を溜めて前記めっきセルに供給するめっき液供給槽を有することを特徴とする請求項1または2記載のめっき装置。
【請求項4】
前記めっき液成分補給系でめっき液に補給される補給液に含まれる成分は、反応促進剤、反応抑制剤及び平滑化剤の少なくとも一つを含む有機添加剤、金属イオン、支持電解質及びハロゲンイオンであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項5】
前記補給液の補給量は、電解めっきに要した電気量の積算値から求められることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項6】
前記補給液は、めっき液中の1つ成分をめっき液よりも高い濃度で有し、補給液タンクからめっき液中に補給されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項7】
前記めっきセルは、前記不溶解性アノードと前記カソードとなる基板との間に配置された高抵抗構造体を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項8】
前記補給液の補給量は、前記めっきセルでめっきを施すために通電した電流の電流密度と通電時間から決定される消耗係数を用いて求められることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項9】
前記めっきセルは、前記不溶解性アノードと前記カソードとなる基板との間に配置された高抵抗構造体によってアノード室とカソード側領域に区分され、前記補給液の補給量は、前記アノード室と前記カソード側領域で個別に求められて合計されることを特徴とする請求項8記載のめっき装置。
【請求項10】
前記電流密度と通電時間から決定される消耗係数を用いて求められる補給液に含まれるめっき液の成分は、反応促進剤であることを特徴とする請求項8または9記載のめっき装置。
【請求項11】
前記めっき液調整槽は、該めっき液調整槽内のめっき液の液面を計測する液面センサを有することを特徴とする請求項3乃至10のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項12】
前記めっきセルに供給するめっき液をサンプリングして、めっき液中の各成分の濃度を分析するめっき液分析装置を更に有することを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載のめっき装置。
【請求項13】
めっき液に含まれる成分をめっき液よりも高い濃度で含む補給液をめっき液に補給して、めっきに使用されるめっき液の成分の濃度を一定範囲内に維持することを特徴とするめっき液の管理方法。
【請求項14】
めっきセルでめっきに使用されためっき液をめっき液緩衝槽内に回収し、
前記めっき液緩衝槽内のめっき液をめっき液調整槽内に送液し、該めっき液調整槽でめっき液に含まれる成分をめっき液よりも高い濃度で含む補給液をめっき液に補給してめっき液の成分の濃度を一定範囲内に維持し、
前記めっき液調整槽内のめっき液をめっき液供給槽に送液し、
前記めっき液供給槽内のめっき液を前記めっきセルに供給することを特徴とするめっき液の管理方法。
【請求項15】
前記補給液の補給量を、電解めっきに要した電気量の積算値から求めることを特徴とする請求項13または14記載のめっき液の管理方法。
【請求項16】
前記補給液の補給量を、前記めっきセルでめっきを施すために通電した電流の電流密度と通電時間から決定される消耗係数を用いて求めることを特徴とする請求項13または14記載のめっき液の管理方法。
【請求項17】
前記めっきセルは、前記不溶解性アノードと前記カソードとなる基板との間に配置された高抵抗構造体によってアノード室とカソード側領域に区分され、前記補給液の補給量を、前記アノード室と前記カソード側領域で個別に求めて合計することを特徴とする請求項16記載のめっき液の管理方法。
【請求項18】
前記電流密度と通電時間から決定される消耗係数を用いて求められる補給液に含まれるめっき液の成分は、反応促進剤であることを特徴とする請求項16または17記載のめっき液の管理方法。
【請求項19】
めっきする金属が銅で、硫酸銅濃度が200g/L〜飽和濃度の硫酸銅水溶液を、銅イオン濃度が20〜60g/Lのめっき液に補給して、めっき液中の銅イオン濃度を一定範囲に維持することを特徴とする請求項13乃至18のいずれかに記載のめっき液の管理方法。
【請求項20】
めっき液中に支持電解質としての硫酸が含まれ、濃度が20〜98wt%の硫酸を、硫酸濃度が10〜100g/Lのめっき液に補給して、めっき液中の硫酸濃度を一定範囲に維持することを特徴とする請求項13乃至18のいずれかに記載のめっき液の管理方法。
【請求項21】
めっき液にハロゲンイオンとしての塩素が含まれ、濃度が1〜36wt%の塩酸を、塩素濃度が30〜90mg/Lのめっき液中に補給して、めっき液中の塩素濃度を一定範囲に維持することを特徴とする請求項13乃至18のいずれかに記載のめっき液の管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2007−51362(P2007−51362A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−362314(P2005−362314)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】