説明

めっき装置

【課題】処理対象物を搬送、給電などを行う複数のロールにめっき液が付着することを効果的に防止できるめっき装置を提供する。
【解決手段】複数のロールにより略水平方向に搬送される処理対象物を受け入れる入口部121と、処理対象物の被めっき面へ下方からめっき液を噴出するめっき液供給部と、処理対象物にめっき電流を供給する給電ロール113,114と、めっき処理された処理対象物を排出する出口部122とを設けためっき槽を備えるめっき装置100において、めっき液供給部は、被めっき面に対して、入り口部側の斜め下方からめっき液を噴出する第一供給ノズル132と、出口部側の斜め下方からめっき液を噴出する、第一供給ノズルに対向して設けられた第二供給ノズル133とからなり、第一供給ノズル132から噴射されためっき液と、第二供給ノズル133から噴射されたメッキ液とが、被めっき面で衝突して落下するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はめっき装置に関するもので、特に、処理対象物にめっき液を下方から噴出してめっき処理を行うめっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体のウェハーや電子基板等のめっきの処理対象物に対して、種々のめっき処理が行われている。そして、そのめっき処理を行う装置の一つとして、処理対象物にめっき液を噴出してめっき処理を行うめっき装置が知られている。
【0003】
このめっき液を噴出しながらめっき処理するタイプのめっき装置としては、複数のロールにより略水平方向に搬送される処理対象物に、被めっき面の下方からめっき液を噴出し、給電ロールなどにより処理対象物にめっき電流を供給してめっき処理するものがある。
【0004】
このようなタイプのめっき装置では、処理対象物に対して連続的にめっき処理することができ、複数のめっき液を順次噴出させることで、様々なめっき処理を容易に行うことができる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−255899号公報
【特許文献2】特開2003−283126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、複数のロールにより略水平方向に搬送される処理対象物に、めっき液を噴出しながらめっき処理するタイプのめっき装置では、めっき液の飛散により、給電ロールなどにめっき液が付着すると、ロール自体にめっき処理がされ、ロール径が大きくなり、搬送速度が変更されたり、処理対象物を搬送できなくなる場合がある。そして、本来めっきを付着すべき処理対象物へのめっき皮膜がロールに付着するため、めっき膜厚が少なくなり、めっき処理自体も不安定になるなどの問題も生じる。また、このタイプのめっき装置で、電解エッチング処理を行う場合には、電解エッチング液の付着によりロール自体がエッチングされる場合がある。
【0007】
このような事情を背景になされたものであり、本発明は、複数のロールにより略水平方向に搬送される処理対象物に、めっき液を噴出しながらめっき処理するタイプのめっき装置について、めっき液や電解エッチング液などの飛散により、ロールへのめっき処理や電解エッチングなどを効果的に防止できる、めっき装置構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数のロールにより略水平方向に搬送される処理対象物を受け入れる入口部と、処理対象物の被めっき面へ下方からめっき液を噴出するめっき液供給部と、処理対象物にめっき電流を供給する給電ロールと、めっき処理された処理対象物を排出する出口部とを設けためっき槽を備えるめっき装置において、めっき液供給部は、被めっき面に対して、入り口部側の斜め下方からめっき液を噴出する第一供給ノズルと、出口部側の斜め下方からめっき液を噴出する、第一供給ノズルに対向して設けられた第二供給ノズルとからなり、 第一供給ノズルから噴射されためっき液と、第二供給ノズルから噴射されたメッキ液とが、被めっき面で衝突して落下するようにしたことを特徴とするものである。
【0009】
本発明によれば、処理対象物の下方から噴出されためっき液が、処理対象物に接触した後、めっき槽内に飛散することなく、落下してしまうため、処理対象物を搬送するロールや給電ロールへのめっき液の付着を大幅に減少させることが可能となる。そのため、本発明のめっき装置によれば、ロールへのめっき処理や電解エッチングなどを効果的に防止できる
【0010】
本発明に係るめっき装置は、第一供給ノズル及び第二供給ノズルが、被めっき面の全幅にわたりめっき液が接するように、帯状のめっき液を噴出するようにされたことが好ましい。処理対象物が幅広の板状である場合、その被めっき面全面に効率的にめっき処理を行うためには、第一供給ノズルと第二供給ノズルとから、被めっき面の全幅にわたりめっき液が噴出するようにすればよいものである。この帯状のめっき液の噴出方法としては、処理対象物の被めっき面の幅方向の全域わたるように、複数の噴出孔を形成したノズルや、スリット状の噴出口を形成したノズルを用いることで可能となる。
【0011】
本発明に係るめっき装置は、第一供給ノズルと第二供給ノズルとから噴出されためっき液が接するようにされた液受け板と、液受け板に接しためっき液を下方で受け止める樋部とが設けられた飛散防止手段を、めっき槽内に搬送される処理対象物の上方に備えるようにすることが好ましい。処理対象物がめっき槽内に存在しない状態でめっき液を噴出すると、めっき槽内でめっき液が飛散する現象が生じ、各ロールへめっき液の付着が生じやすくなるが、本発明のように、ノズルから噴出されためっき液が接するようにされた液受け板と、液受け板に接しためっき液を下方で受け止める樋部とが設けられた飛散防止手段を、処理対象物の上方に備えておけば、処理対象物がめっき槽内に存在しない場合であっても、めっき液は飛散防止手段により落下することになり、ロールへのめっき液の付着を効果的に防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数のロールにより略水平方向に搬送される処理対象物に、めっき液を噴出しながらめっき処理するタイプのめっき装置において、給電ロールなどの各ロールへのめっき液の付着を効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態におけるめっき装置の概略側面断面図。
【図2】本実施形態におけるめっき装置の概略正面断面図。
【図3】図1の拡大図。
【図4】飛散防止板と噴出めっき液との状態を示す概念斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るめっき装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0015】
図1には本実施形態におけるめっき装置の側面断面図の概略を示しており、図2には本実施形態におけるめっき装置の側面断面図(図1のX−X断面)の概略を示している。
【0016】
図1及び図2におけるめっき装置100は、めっき装置外壁101〜104の外側に、処理対象物(図示省略)を搬送するための押さえロール111、112と給電ロール113、114が配置されている。この押さえロール111、112と給電ロール113、114とは、めっき装置外壁101、102に設けられた入口部121及び出口部122に、処理対象物を略水平状態で搬送するように配置されている。
【0017】
めっき装置外壁に囲まれた内部には、搬送された処理対象物にめっき処理を行うめっき槽130が形成されており、めっき槽130は、めっき液を供給するめっき液供給管131、第一供給ノズル132、第二供給ノズル133、飛散防止板134、ガイドロール135が設けられている。
【0018】
ガイドロール135は、めっき槽内に搬送される処理対象物の両端を支持するもので、めっき槽内に搬送された処理対象物の被めっき面(図示省略)が開放状態となるようにされている。
【0019】
第一供給ノズル132は、めっき槽内に搬送される処理対象物に対して、液供給管131から供給されためっき液(太線矢印)を入り口部側から噴出するようにされており、第二供給ノズル133は、出口部側からめっき液を噴出するようにされている。そして、図3に示すように、その噴出方向は、第一供給ノズル132が入口部側下方からめっき槽中央上方側に向けてあり、第二供給ノズル133が出口部側下方からめっき槽中央上方側に向けてあり、相対向する方向に噴出するものとなっている。そのため、第一供給ノズル132から噴出されためっき液と、第二供給ノズル133から噴出されためっき液とは、それぞれめっき槽内の処理対象物Wに接し、そのめっき液の一部はめっき槽中央付近の位置で衝突し、双方のめっき液の流れを打ち消して落下する。尚、図3の拡大図では、説明の都合上、ガイドロール135の図示を省略している。
【0020】
また、第一及び第二供給ノズルは、搬送された処理対象物の被めっき面の全幅にわたりめっき液が接するように、帯状のめっき液を噴出するように、めっき液の噴出部分がスリット状に加工されている。
【0021】
飛散防止板134は、めっき槽内に搬送される処理対象物よりも上方位置に配置されている。この飛散防止板134は、めっき槽内に処理対象物が無い時に、第一及び第二供給ノズルから噴出されためっき液を受け止め下方に落下させ、めっき槽内にめっき液が飛散することを防止する。
【0022】
図4には、飛散防止板134とめっき液との状態のイメージを示している。この図4では、めっき液の噴出状態が判るように、第一供給ノズルと第二ノズルとは、めっき液を複数の噴出孔から噴出する場合を例にしている。また、図4の概念図が判りやすくするために、第一供給ノズルから噴出されためっき液を示す矢印と第二供給ノズルから噴出されためっき液を示す矢印との、矢印線の太さを異なるように図示している。
【0023】
図4に示すように飛散防止板134は、めっき槽内に処理対象物が無い場合に、第一供給ノズルと第二供給ノズルから噴出されためっき液を受け止める液受け板134aと、液受け板に接しためっき液を下方で受け止める樋部134bとからなる。この樋部134bは、めっき槽の入口部側と出口部側の両方側にそれぞれ設けられている。また、樋部134bの先端面134cは、第一供給ノズル及び第二供給ノズルのめっき液の噴射方向と平行となるように加工されている。めっき槽内に処理対象物が無い場合に噴出されためっき液は、飛散防止板134の液受け止め板に接し、一部はそのまま落下し、その他は液受け板に沿って流れて樋部に落下する。樋部に落下しためっき液はその樋部の両端(図4の紙面に対して前後方向)側から流出されることになる。
【実施例】
【0024】
本実施形態のめっき装置を用いて、処理対象物としてウェハーを用い、その被めっき面に、Cuめっき処理を行った結果について説明する。
【0025】
処理対象物のウェハーは、100mm×100mm、厚み750μmのSi製のものを用い、このウェハー表面に下地として5000ÅのCu膜をスパッタリングにより被覆したものを使用した。そして、Cuめっき液は、市販硫酸銅めっき液(MICROFAB Cu200:日本エレクトロプレイテイングエンジニヤース(株)製)を用いた。
【0026】
めっき装置の条件としては、給電ロールがφ25mmSUS製、押さえロールがφ25mmポリプロピレン(PP)製、ガイドロールがφ25mmポリプロピレン(PP)製で、ロール間ピッチ(図1における給電ロール113とガイドロール135と給電ロール114とのそれぞれのロールのセンターピッチ)は25mmとした。供給ノズルのめっき液の供給量は20L/min、めっき液の噴出角度を45度とした。そして、飛散防止板は、塩化ビニル(PVC)製の100幅のもので、基板搬送ライン上の10mmの位置に設置した。ウェハーの搬送速度は22mm/minとした。
【0027】
上記条件にて、めっき処理を行った結果、複数のロール、特に給電ロールへの液付着はなかった。また、上記条件で20μm厚さを目標に、ウェハーにCuめっき処理を行ったところ、従来方式では30%(Avg/Range)であった膜厚均一性が、本実施例のめっき装置では6%以下の膜厚均一性を実現できた。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明によれば、処理対象物の被めっき面にめっき処理を行っても、処理対象物を搬送、給電などを行う複数のロールにめっき液が付着することが防止されるため、めっき処理の効率化を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0029】
100 めっき装置
101〜104 外壁
111,112 押さえロール
113,114 給電ロール
130 めっき槽
131 めっき液供給管
132 第一供給ノズル
133 第二供給ノズル
134 飛散防止板
134a 液受け板
134b 樋部
135 ガイドロール
W 処理対象物(ウェハー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のロールにより略水平方向に搬送される処理対象物を受け入れる入口部と、処理対象物の被めっき面へ下方からめっき液を噴出するめっき液供給部と、処理対象物にめっき電流を供給する給電ロールと、めっき処理された処理対象物を排出する出口部とを設けためっき槽を備えるめっき装置において、
めっき液供給部は、被めっき面に対して、入り口部側の斜め下方からめっき液を噴出する第一供給ノズルと、出口部側の斜め下方からめっき液を噴出する、第一供給ノズルに対向して設けられた第二供給ノズルとからなり、
第一供給ノズルから噴射されためっき液と、第二供給ノズルから噴射されたメッキ液とが、被めっき面で衝突して落下するようにしたことを特徴とするめっき装置。
【請求項2】
第一供給ノズル及び第二供給ノズルは、被めっき面の全幅にわたりめっき液が接するように、帯状のめっき液を噴出するようにされた請求項1に記載のめっき装置。
【請求項3】
第一供給ノズルと第二供給ノズルとから噴出されためっき液が接するようにされた液受け板と、液受け板に接しためっき液を下方で受け止める樋部とが設けられた飛散防止手段を、めっき槽内に搬送される処理対象物の上方に備えた請求項1に記載のめっき装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−87311(P2013−87311A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227160(P2011−227160)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000228165)日本エレクトロプレイテイング・エンジニヤース株式会社 (29)
【Fターム(参考)】