説明

より適切な細胞変異体を選択可能であり、継続的に培養液を製造する移動型容器を備える連続培養装置

植物、動物または幹細胞を継続的に培養する方法及び装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
記載の発明は、液体または半固体培地において、特有の代謝特性及び増殖率の増加に伴って、生細胞の選択を可能とする方法及び装置を提供する。選択の工程(適応進化)に対しては、遺伝的に変異した生物(突然変異体)が個体群に現れ、同じ起源のその他の変異体と競合する。最も高い増殖率を有するものは、経時的に相対的比率が増加し、増殖率の増加に伴い個体群(及び個体)となる。この工程は、産業工程または学術目的に用いられる生物のパフォーマンスを向上させることが出来る。本発明は、生細胞(例えば、真核生物、古細菌、ウイルス、原核生物、菌類、藻類、酵母類、植物細胞、動物細胞または幹細胞)の有望な生産量を達成するために、連続培養装置を利用する。本発明は、生細胞から生産される活性成分または生物成分を生産するために用いられても良い。このような活性成分または生物成分は、転じて診断用、予防用または治療用の医薬品として用いられても良い。
【背景技術】
【0002】
増加した増殖率(適応度)を選択するには、持続的な培養が必要とされる。これは、培養している培養物を定期的に希釈することで達成される。これは、先行技術においては三通りの方法で達成されてきた。即ち、固体培養、段階希釈及び連続培養であり、これらは主に希釈の程度が異なる。
【0003】
固体培養は、少量の増殖培養物や細胞のペトリ皿から新鮮な増殖培地を含む容器への繰り返しの移送を伴う。段階培養は、少量の増殖培養物の新鮮な増殖培地を含むより大きな容器への繰り返しの移送を伴う。培養細胞が新しい容器内で飽和状態まで増殖したら、その工程は繰り返される。文献(非特許文献1:Lenski & Travisano: Dynamics of adaptation and diversification : a 10000-generation experiment with bacterial populations. 1994. Proc Natl Acad Sci USA. 15: 6808-14)では、この方法を用いて持続的培養の最長実験を実現した。実験では、長年にわたって増殖率の順調な伸びが明白に実証された。この方法は、通常、他量の労働投資を伴って手動で行われ、また外部環境への暴露によりコンタミネーションを被り易い。段階培養も、後述されるように、非効率的である。
【0004】
選択率または増殖率の伸び率、は個体群サイズに左右される(非特許文献2:Fisher: The Genetical Theory of Natural Selection. 1930. Oxford University Press, London, UK)。更に、個体群サイズが急激に変動する連続移送(serial transfer)のような状況では、選択は、個体群の調和平均(N)に比例し(非特許文献3:Wright: Size of Population and breeding structure in relation to evolution. 1938. Science 87: 430-431)、故にその周期の間、最低の個体群により近似できる
個体群の大きさは、維持可能であるので、選択は連続培養を介してより効率的に行われる。段階希釈とは区別される連続培養では、少量の培養している培養物が、定期的に等量の新鮮な増殖培地に置き換えられるように、相対的に少ない容積を必要とする。この方法では、周期的な希釈の間に、有効個体群サイズを、その最小サイズを増加させることで最大化する。連続培養を可能とする装置は、特定の時間間隔で希釈を行う場合には、「ケモスタット(chemostats)」と称され、培養物が特定の密度まで増殖したときに自動的に希釈を行う場合、「タービドスタット(turbidostats)」と称される。
【0005】
簡単にするために、以下、両種の装置を「ケモスタット」という文言で纏める。ケモスタットは、1950年代に二つのグループにより同時に発明された(非特許文献4:Novick & Szilard: Description of the chemostat. 1950. Science 112: 715-716)及び(非特許文献5:Monod: La technique de la culture continue- Theorie et applications. 1950. Ann. Inst. Pasteur 79: 390--410)。ケモスタットは、増殖率における短期間での急激な向上を実証するために用いられた(非特許文献6:Dykhuizen DE. Chemostats used for studying natural selection and adaptive evolution. 1993. Methods Enzymol. 224: 613-31)。
【0006】
従来のケモスタットでは、耐希釈性(静置)変異体が意図せずして選択されることに起因して、増殖率の向上のための選択を長期間維持することが出来ない。これらの変異体は、ケモスタットの表面に付着することで耐希釈性を有することが出来る。そうすることで、より高い増殖率の個体を含むより粘着性が低い個体を打ち負かしてしまい、従って、装置の本来の目的が妨げられてしまう(非特許文献7:Chao & Ramsdell: The effects of wall populations on coexistence of bacteria in the liquid phase of chemostat cultures,. 1985. J. Gen. Microbiol. 131: 1229-36)。
【0007】
連続培養における耐希釈性を避けるために、一つの方法及びケモスタット装置(遺伝子エンジン:the Genetic Engine)が発明された(特許文献1:PASTEUR INSTITUTE [FR] & MUTZEL RUPERT [DE]により出願された米国特許US 6,686,194-B1)。この方法は、バルブ制御された流体移送を用いて、増殖する培養物を二つのケモスタットの間で周期的に移動させ、培養物の活発な増殖期の合間に各々を殺菌及び洗浄することを可能とする。このような定期的な殺菌周期は、耐希釈性変異体を死滅させることで耐希釈性変異体の選択を防ぐ。この方法及び装置では目的が達成されるものの、滅菌(密閉)環境内で、幾つかの流体の独立した複雑な操作が必要となる。このとき、該環境は、非常に腐食性であるとともに潜在的に非常に活性であり、バルブを素早く損傷させ、保存及び廃棄物処理問題を引き起こすようなもの(NaOH)を含む。ケモスタット装置は、また、細胞の培養を補助するにあたって何らの供給も為されないよう限定されている。遺伝子エンジンのような装置、及び他の公知の技術は、浮遊状態及び/または凝集細胞として培養しない細胞の連続培養を可能にしない。
【0008】
細胞が生存し、増殖するために必要な状態のために、大量での培養が困難な幾つかの細胞の種類がある。これらの細胞に関しては、連続培養の手法によって増殖が可能であると考えられている。これは、特に真核生物(例えば、藻類、酵母類、菌類、植物細胞、動物細胞及び幹細胞)にでの事例である。
【0009】
例えば、ヒト胚性幹細胞は、典型的には単離されたうえ、幹細胞塊を培地として知られるニュートリエントブロス(nutrient broth)を含むプラスチック製の実験用培養皿へと移送することで培養される。この細胞は、分裂し、皿の表面中に広がっていく。培養皿の内面は、典型的には、分裂しないよう処理を施されたマウス胚性皮膚細胞で覆われている。このような被膜層は、支持細胞層と呼ばれる。培養皿の底面に支持細胞層を備える理由は、ヒト胚性幹細胞が接着するための粘着性の面を提供するためである。
【0010】
支持細胞層も培地中に養分を放出する。近年、科学者達は、このようなマウスの支持細胞を用いない胚性幹細胞の培養方法を考案した。これは、マウス細胞内のウイルスやその他の高分子がヒト細胞内に伝染する危険性を抑制するため、科学上の重大な進歩である。
【0011】
数日間の過程にわたって、内部の細胞塊の細胞は急速に増殖し、培養皿内に密集を開始する。その後、それらの細胞は丁寧に剥がされ、幾つかの新鮮な培養皿へと蒔かれる。細胞を再び蒔くこの工程は、継代(subculturing)と呼ばれ、数ヶ月にわたって幾度も繰り返される。細胞の継代の各周期は、パッセージ(passage)と称される。半年以上の後、細胞塊のもとの細胞は、数百万の胚性幹細胞をもたらす。分化せず、6か月以上の細胞培養において大幅に増殖した胚性幹細胞は、多能性であり、遺伝子的に正常であると思われ、胚性幹細胞株と称される。
【0012】
一度細胞株が構築されるか、またはその前段階であっても、それらの細胞群は、冷凍することが出来、更なる培養や実験のために他の研究室に移送することも出来る。しかしながら、連続培養は、生細胞にストレスを与え、コンタミネーションの潜在的な原因を作る操作を最大限抑制するという利点を与える。培養が開始したら、熟練した技術者は、連続培養によって、継続的な細胞の生産という利点を享受することが出来る。幹細胞の生産は、一度幹細胞が生産されれば、今日用いられている他の手法に比べて大幅に上回る幹細胞を間断なく生産することが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】US 6,686,194-B1[p03]
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Lenski & Travisano: Dynamics of adaptation and diversification : a 10000-generation experiment with bacterial populations. 1994. Proc Natl Acad Sci USA. 15: 6808-14
【非特許文献2】Fisher: The Genetical Theory of Natural Selection. 1930. Oxford University Press, London, UK
【非特許文献3】Wright: Size of Population and breeding structure in relation to evolution. 1938. Science 87: 430-431
【非特許文献4】Novick & Szilard: Description of the chemostat. 1950. Science 112: 715-716
【非特許文献5】Monod: La technique de la culture continue- Theorie et applications. 1950. Ann. Inst. Pasteur 79: 390--410
【非特許文献6】Dykhuizen DE. Chemostats used for studying natural selection and adaptive evolution. 1993. Methods Enzymol. 224: 613-31
【非特許文献7】Chao & Ramsdell: The effects of wall populations on coexistence of bacteria in the liquid phase of chemostat cultures,. 1985. J. Gen. Microbiol. 131: 1229-36
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って本発明は、耐希釈性変異体からの干渉を受けずに、細胞(原核生物、細菌、古細菌、真核生物及びウイルスを含む)の連続培養のための改良された(及び完全に独立した)方法及び装置を提供することを課題とする。その他のケモスタットのように、当該装置は、新鮮な増殖培地を用いて増殖培養物を定期的に希釈する手段と、培養物と外部環境との間でガス交換する手段と、無菌状態と、ケモスタット及びタービドスタットのいずれかとしての自動操作とを備える。
【0016】
更に、本発明は、真核生物(例えば、植物細胞、藻類、菌類、動物細胞及び幹細胞)、及びある種の原核生物(例えば、放線菌)、場合によっては、ある種の古細菌やウイルスのような、浮遊状態で培養しない、または凝集細胞として培養する細胞の連続培養のための改良された、且つ他と異なる方法及び装置を提供することを課題とする。本発明により培養され得る幹細胞は、胚性幹細胞、胎性幹細胞、臍帯幹細胞、胎盤由来幹細胞及び成体幹細胞に限らない。本発明により培養され得る成体幹細胞は、造血系幹細胞、骨髄幹細胞、ストローマ細胞、アストロサイト、オリゴデンドロサイトに限られない(例えば、「Hematopoietic Stem Cell Protocols,.. Klug and C. Jordan, Humana Press, Totowa, New Jersey, 2002」を参照することにより本書に援用される)。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、滅菌や洗浄の工程を含む一切の液体の移送を行うことなく、これらの目的を達成するために考案されたものである。これは、保存、及び苛性溶媒の使用により生じる複雑な流体移送を含む滅菌及び洗浄、コンタミネーション、並びに一の容器から他の容器への培養物の移送に起因する増殖の阻害に係る危険及び困難を回避する点において、先行技術に対する本発明に特有の利点を表す。
【0018】
連続培養は、増殖培地が充填されたフレキシブルな滅菌チューブ内部で実現される。培地及び培養チャンバ表面は相互に対して相対的に静止しており、両方が、定期的に且つ同時に、「複数のゲート」、つまり、チューブが複数のクランプによって滅菌状態で細分化される位置、を介したチューブのぜん動運動によって置換される。該複数クランプは、培養細胞のチューブにおける領域間の移動を防ぐ。UVゲートも(任意で)、更なる安全性のために培養容器の上流及び下流に加えることが出来る。
【0019】
本発明の方法及び装置は、ケモスタット表面への耐希釈性変異体の接着に対して、希釈工程と相前後して発生するその影響を受けた表面の置換として、周期的というよりむしろ連続的に選択を行う点において、先行技術における改良品である。また、このようなチューブは、浮遊状態で培養する細胞及び凝集細胞として培養する細胞に対しても、容器から他の容器への細胞の移送を行うことによって細胞を阻害することのないという利点を有する連続的な育成の補助を行う。
【0020】
このようなチューブは、飽和した(完全に増殖した)培養物を含む領域と、新鮮な培地を含む領域と、これら二領域の間にあって、培養される培養物が新鮮な培地と混合されて希釈される育成室または培養チャンバと称される領域とが存在するように、一時的に細分化される。複数のゲートは、培養される培養物とともに、それに関連する培養チャンバの表面及び接着される静的な細胞が単離することによって取り除かれ、新鮮な培地及び新しい培養チャンバ表面に置き換えられるよう、周期的にチューブ上のある位置から解放され、他の位置に置き換えられる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、装置の可能な構成の概略図を示す。
【図2】図2は、装置の二つの可能な位置を示す。
【図3】図3は、連続培養のために生物を注入する以前の、前記フレキシブルチューブの全ての領域が新たな培地で充填された装置の状態T0を表す。
【図4】図4は、生物菌の注入直後の前記フレキシブルチューブの状態T1を表す。
【図5】図5は、前記ゲート(3)及び(4)により限定される前記成長チャンバ(10)として規定される領域において培養物が増殖する増殖期である装置の状態T2を表す。
【図6】図6は、成長チャンバ領域(10)のうち、等量のチューブ、培地、及び増殖培養物の移送と同時に、新たなチューブ及び培地をゲート3の移動を介して取り込み、ゲート4の移動によりサンプリングチャンバ領域(11)へ取り込む、第2増殖周期の開始を決定するチューブと関連培地の最初のぜん動運動直後の装置の状態T3を表す。
【図7】図7は、第2増殖周期である装置の状態T4を表す。
【図8】図8は、成長チャンバ領域(10)のうち、等量のチューブ、培地、及び増殖培養物の移送と同時に、新たなチューブ及び培地をゲート3の移動を介して取り込み、ゲート4の移動によりサンプリングチャンバ領域(11)へ取り込む、第3増殖周期の開始を決定する、チューブ及び含有培地の第2ぜん動運動直後の装置の状態T5を表す。
【図9】図9は、第3増殖周期である装置の状態T6を表す。このステップは状態T4と同等であり、更なる動作の反復特性を示す。
【図10】図10は、二つの積み重ねられた歯がフレキシブルチューブを締め付ける構成で、ゲートを決定する、歯の考えられ得る側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
包括的且つ限定的ではないが、一つの可能な概略構成は、以下に記載のような幾つかの構成要素を含むであろう。以下、図面を参照して好適な実施例に基づいて本発明を例示的に説明する。
【0023】
図1は、装置の可能な構成の全体図を示す。ここに、
(1)は、装置における異なる複数領域を含む柔軟性のあるチューブを表し、その領域とは、上流の新鮮な培地(7)、培養チャンバ(10)、サンプリングチャンバ(11)、及び処理済みの増殖培養領域(15)であり、
(2)は、ユーザにより決定された条件に従って温度規制を可能とするサーモスタット制御ボックスを表し、ここに、
a.前記培養チャンバ(10)と、
b.前記サンプリングチャンバ(11)と、
c.前記培養チャンバ(10)の開始点を規定する上流ゲート(3)と、
d.前記培養チャンバ(10)の終点と前記サンプリングチャンバ(11)の開始点を規定する下流ゲート(4)と、
e.前記サンプリングチャンバ(11)の終点を規定する第二下流ゲート(5)と、
f.ユーザまたは自動制御システムをして、増殖している培養物の光学密度の監視、並びにフィードバック制御システムの動作を可能ならしめ、培養密度(タービドスタット機能)に基づいて、チューブ(1)の制御された移動を可能ならしめる濁度計(6)と、
g.一または複数の撹拌機とが設置されて良い。aからgに挙げた装置要素は、サーモスタット制御ボックスの外部、またはその非存在下に設けられても良いことに留意すべきである。
【0024】
(7)は、未使用のフレキシブルなチューブにおける新鮮な培地を表し、
(8)は、動作の際に、新鮮な培地とチューブとを供給するために、新鮮な培地が充填されたチューブを搭載したバレルを表し、
(12)は、任意の紫外線ゲートを表し、
(13)は、動作の自動化及び制御を可能とする、光学密度濁度計、温度測定規制装置、撹拌機、及び傾斜モータ等の、複数の異なる監視または動作インターフェースと通信する通信手段と接続されたコンピュータからなるコントロールシステムを表し、
(14)は、処理済みの増殖培養物が充填されたチューブを含むチューブを巻きつけた、任意の処理バレルを表し、
(15)は、前記サンプリングチャンバの下流に位置する、処理済みの増殖培養物を表す。
【0025】
図2は、装置の二つの可能な位置を示しており、前記サーモスタット制御ボックス(2)及び前記培養チャンバに係る前記装置のその他の部品を、撹拌目的、ガス循環及び除去目的、並びに、底部に沈殿して希釈を免れてしまうかもしれない粒状(凝集)細胞の除去を保障する目的で、さまざまな程度に傾斜できることを例示する。細胞が成長のための拡販を必要としない場合、装置は、同じ位置に留まることも出来る(例えば、平坦な位置、またはある角度を成して)。
【0026】
図3から図9は、前記サーモスタット制御ボックス(2)内で所定の位置にある前記フレキシブルなチューブ(1)であって、ゲート(3)、(4)、及び(5)を介して前記チューブが全工程の間とどまり、また前記チューブがそのぜん動運動に従って移動する、当該複数ゲートを介して挿入された前記フレキシブルなチューブ(1)を表す。
【0027】
図3は、連続培養のために生物を注入する以前の、前記フレキシブルなチューブの全ての領域が新鮮な培地で充填された装置の状態T0を表す。
【0028】
図4は、細胞株の注入直後の前記フレキシブルなチューブの状態T1を表す。
【0029】
図5は、前記ゲート(3)及び(4)により限定される前記培養チャンバ(10)として規定される領域において培養物が増殖する増殖期である装置の状態T2を表す。
【0030】
図6は、培養チャンバ領域(10)のうち、等量のチューブ、培地、及び増殖培養物の移送と同時に、新たなチューブ及び培地をゲート3の移動を介して導入、ゲート4の移動によりサンプリングチャンバ領域(11)へ取り込む、第二増殖周期の開始を決定するチューブと関連培地の最初のぜん動運動直後の装置の状態T3を表す。チューブと、チューブ内の培地と、その培地で増殖した任意の培養物が一緒に移動することを認識することが重要である。流体移送は、新鮮な培地及び増殖培養物が、培養チャンバ領域内で撹拌により相互に混じりあう場合にのみ起こるものである。
【0031】
図7は、第二増殖周期である装置の状態T4を表す。この周期の間、チューブのぜん動運動後に培養チャンバ内に残っている細胞は、このステップで、残りの培養物と混合された新鮮な培地にある栄養物を用いて増殖可能である。
【0032】
図8は、培養チャンバ領域(10)のうち、等量のチューブ、培地、及び増殖培養物の移送と同時に、新たなチューブ及び培地をゲート3の移動を介して導入、ゲート4の移動によりサンプリングチャンバ領域(11)へ取り込む、第3増殖周期の開始を決定する、チューブ及び含有培地の第二ぜん動運動直後の装置の状態T5を表す。
【0033】
図9は、第3増殖周期である装置の状態T6を表す。このステップは状態T4と同等であり、更なる動作の反復特性を示す。選択された細胞のサンプルは、シリンジまたはその他の回収装置を用いて、サンプリングチャンバ領域(11)から任意の時間に除去してもよい。図10は、二つの積み重ねられた歯がフレキシブルなチューブを締め付ける構成で、ゲートを決定する、歯の考えられ得る側面図である。複数ゲートはまた、可動ベルトに対して押し付ける単一歯、取り外し可能な複数クランプ、またはゲートを通過しての細胞の移動を防ぎ、チューブに沿った様々な位置において代わる代わる配置と除去され得るその他の機構によって決定できる。
【0034】
装置の基本動作を図3から図9に示す。
【0035】
新鮮な滅菌培地のチューブ(前記ゲート(3)、(4)、及び(5)により領域A−Hに分割される)を搭載した後の、本発明の装置に対する一つの潜在的な構成を図1に示す。
【0036】
選択された細胞の装置への植え込みは、当該細胞を、注入(図4、領域B)することにより培養チャンバ(図3)内へと導入することで実施される。その後、培養物は、所望の密度まで増殖することが可能であり、連続培養が開始される(図5)。
【0037】
連続培養は、チューブにおけるゲートを備えた複数領域の反復運動により進行するであろう。これは、複数ゲート、チューブ、培地、及びチューブ内部の任意の培養物における同時に起こる移動を含む。チューブは、常に同じ方向に移動するであろう。新鮮な培地を含む未使用のチューブ(以下、「上流」の培養チャンバ(7)と適宜記載する)は、培養チャンバへ移動し、そこに残っている培養物と混ざることで、そこに含まれる細胞が更に増殖するための基質となる。培養チャンバ領域への導入前は、この培地及びそれに関連するチューブは、上流ゲート(3)によって培養チャンバから分離され、滅菌状態が維持されるであろう。増殖培養物を含む使用済チューブは、同時に「下流」へ移動され、下流ゲート(4)により培養チャンバから分離されるであろう。
【0038】
一つ以上の成長チャンバが存在するとき、複数の成長チャンバは同じ目的、または異なる目的のために用いられて良い。例えば、生細胞は、環境の同じ、または相異なる第一の成長チャンバ及び第二の成長チャンバ内で培養されることが出来る。一の実施例として、第一の成長チャンバが細胞の培養に用いられ、第二の成長チャンバが生細胞を異なる環境下で扱うよう用いられていても良い。例えば、細胞は、所望の生産物の発現を誘導するよう扱われても良い。培養培地自体の構成物または添加物は、培養の開始に先駆けて、または開始後に添加されても良い。例えば、全ての構成物または添加物が培養開始前に培地に含まれても良く、また構成物は、培養が開始された後に、一つ以上の成長チャンバに対し注入されても良い。
【0039】
ゲートの構成自体は、本出願に特有な点ではない。例えば、ある構成においては、同時に移動する多数の歯を有するチェーンで、ゲートを設計できる。また、別の構成においては、図1に示すように、複数の相異なる同期したチェーンで分離できる。ゲートは、図10に記載のように、積み重ねられた状態で二つの歯がチューブを締め付ける構成のシステムからなり、歯の接触面における精度によって、チューブの領域GとHの間のコンタミネーションが回避される。別の構成においては、図3から図9における記号3、4及び5に示すように、一つの歯をチューブの一方の面に押さえつけ、それにより、ぜん動運動の間にチューブが滑動する固定胴体に、当該チューブがしっかり押さえつけられることで、滅菌ゲートを得ることができる。更に別の構成においては、複数クランプが固定軸を中心に装置に対して回転する機構がチューブを移動させるために用いられる。前記サーモスタット制御ボックス(2)は、加熱及び冷却装置と一体となった温度計等の公知の手段により得られる。
【0040】
培養細胞の増殖のため、または実験の計画により必要とされるエアレーション(ガス交換)は、ガス透過性チューブを使用して、直接、機械的補助無しに実現される。例えば、ガス透過性フレキシブルなチューブは、シリコンで作成できるが、これに限定されない。周囲の大気との交換、または培養チャンバ若しくは全ケモスタットに接する人工的に規定された大気(液体またはガス)との交換により、エアレーションを実現できる。実験が嫌気性を要求する場合には、フレキシブルなチューブは、ガス不透過性とすることができる。例えば、ガス不透過性フレキシブルなチューブは、被覆または処理されたシリコンで作成できるが、これに限定されない。
【0041】
嫌気性進化条件に対して、チューブの複数領域は、ガス交換の動力学を制御するために、特定の制御された大気領域において制限することもできる。これは、前記サーモスタット制御ボックスを気密にし、その後中性ガスをそれに注入する、または雰囲気制御された部屋に完全な装置を配置することにより実現できる。
【0042】
静的変異体の対抗選択は、増殖培地とともに培養チャンバ表面を置換することにより実現される。
【0043】
装置は更に、重力に対して様々な方向で動作可能に設計される。即ち、図2に示されるように、360度までの範囲で傾斜している。
【0044】
耐希釈性変異体は、凝集した細胞が上流側へと落下し得る場合、チャンバの壁に付着するよりむしろ互いに付着し合うことによって希釈を回避出来、それによりチャンバから除去されることを回避する。従って、チューブの移動の周期の間、凝集した細胞が培養チャンバから取り除かれていく領域に向けて落下して行くようにチューブは通常下向きに傾斜していることが望ましい。この構成は、重力に対して下流ゲートが上流ゲートよりも下にあるように装置を傾斜させることを含む。
【0045】
培養チャンバは、実験者が選択した条件に従って、減圧または加圧出来る。異なる複数の圧力調整方法を用いることが出来る。例えば、上流端部から、培養チャンバにわたって、新鮮な培地及びチューブに対し、真空または加圧空気を加えること。他のチューブの減圧または加圧の方法は、培養チャンバの上流や内部において、チューブの締め付けやロックを交互に行うことで実施することができる。
【0046】
培地がガス透過性チューブに含まれる場合、培地内に気泡が形成されてもよい。これらの気泡は、チューブの密閉領域上部に上昇し、その領域(及びこれを規定するゲート)の移動によってその領域が培養チャンバか、サンプリングチャンバか、またはケモスタットの終点へ至るまで、そこにトラップされることとなる(図6、夫々、領域D−C、BまたはA)。装置が下方に傾斜している場合は、このような気泡は、培養チャンバまたはサンプリングチャンバにたまり、培養物を追いやってしまう。装置は、チューブの移動の間に、周期的に上方に傾斜させるよう設計されている。これにより、たまったガスを前記チャンバから除去することができる。
【0047】
装置の傾斜運動、及び/または外部装置(9)による培養チャンバの振動を用いて、培養チャンバ内の細胞の凝集を減少できる。または、一または複数の撹拌子を、殺菌前に、新鮮な培地を充填したチューブ内に含めることが出来、培養動作の間、磁気的に撹拌出来る。成長のために撹拌を必要としない細胞の場合、撹拌機は定位置に留まっていることも可能である。
【0048】
培養チャンバの長さと比較して、上流ゲートにより規定された新鮮な培地の領域の比例長さは、一周期の間に実現される希釈の程度を規定するであろう。
【0049】
希釈頻度は、(例えば、ケモスタット機能の)計時により決定出来る。例えば、幹細胞は、細胞分化の開始前に回収されるため、限定された期間において収穫され得る。また、希釈頻度は、濁度計(図1の記号6)により測定される培養チャンバ内の培養物の密度によるフィードバック調節によって決定されても良く、濁度が所定の閾値に達した際に希釈周期が形成される(タービドスタット機能)。濁度を測定するために、チューブは透明または半透明であって良い。サンプリングチャンバは、増殖培養物を回収可能としている。これは、実験結果を分析し、更なる培養、保存、または機能的な実施のために、増殖率を上げながら細胞を回収するため、または個体群のカウント、培地の化学成分の確認、増殖培養物のpHの計測、若しくは(例えば、幹細胞などの真核生物、原核生物、古細菌やウイルスなど)大量の細胞の生産などのその他の目的のためである。培養チャンバ内部のpHを常に監視するために、チューブは、その壁部に埋め込まれた/ちりばめられたpH指標を構成上含むことができる。
【0050】
本発明の装置において、増殖培地として任意の形態の液体または半固体材料を用いることができる。半固体増殖基質を使用出来るということは、先行技術を超えた顕著な進歩である。選択工程により改良された代謝工程を規定する増殖培地は、ユーザにより選択及び規定されうる。
【0051】
必要であれば、装置は複数の増殖チャンバを含めることが出来る。このとき、一つの増殖チャンバの下流ゲートは、別の増殖チャンバの上流ゲートとなる。これにより、例えば、一の細胞が第一チャンバ内で単独で増殖し、その後、第二チャンバにおける第二細胞(またはウィルス)の栄養源として用いることが出来る。
【0052】
本発明は、薬品や、ワクチンや、抗毒素のための生物成分の標本作製に用いられても良い。それらは、本発明により培養される細胞により合成または生産される。このような生物成分は、診断用、予防用または治療用の医薬品として用いられても良い。例えば、本発明は、インシュリンのような治療用のタンパク質生成のために用いられても良い。
【0053】
より好適な実施例においては、装置または方法は、未分化の状態で幹細胞を継続的に回収するよう周期を形成しても良い。更に、培養物の環境は、幹細胞の分化を阻害するよう調整されても良い。例えば、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(aldehyde dehydrogenase)阻害剤、ホスホイノシチド3キナーゼ(phosphoinositide 3-kinase)阻害剤、TGF受容体キナーゼ(TGF Receptor Kinase)阻害剤、TGF−β受容体キナーゼ(TGF-β Receptor Kinase)阻害剤などの幹細胞分化阻害剤が培養培地に添加されても良い。また、培養培地に供給される酸素量のような処理条件は、所定の幹細胞の成長を促進するため及び/または幹細胞の分化を減速または促進させるために増減されて良い。
【0054】
いくつかの細胞は増殖するための基質を必要とすることから、物理的な支持体や構造を培養チャンバ容器に加えることが出来る。より好適な実施例において、連続繊維層のような連続支持体をチューブ内部に加えることが出来る。これは、薄い連続繊維により、支持体構造のように構成され、三次元的に細胞を増殖出来るよう培養チャンバ容器に加えられる。例えば、支持体は繊維層になり得る。このような繊維層は、幹細胞や植物細胞や、これらの支持体構造を好む、または浮遊状態で増殖が出来ない接着性の細胞のようなその他の種類の細胞の増殖の補助となる。そして、特定の条件下において、また環境の変化において、対象となる変異種のための自然淘汰を実施し得る。
【0055】
より好適な実施形態において、Huang et al., Continuous Production of butanol by Clostridium acetobutylicum immobilized in a fibrous bed reactor, Appl Biochem Biotechnol. 2004 Spring; 113-116:887-98において記述される繊維状の物質は、参照により本明細書中に援用される。チューブの構造及び大きさは、培養チャンバ容器内に組み込まれる支持体構造の必要がなくなるよう変更されても良い。より好適な実施形態において、細胞がより自然に接着するよう比較的小さい径のチューブが用いられる。また、接着性の細胞のための接着剤の必要がないよう、自然な支持体として用いられるチューブ。
【0056】
本発明の装置及び方法により、研究者及び製品開発者は、
浮遊状態で培養可能な生細胞株、または浮遊状態でなくチューブ壁やチューブ内繊維層などの支持体上で培養する生細胞株を持続的増殖(連続培養)を介して進化させることが出来る。その結果生じる改良された細胞は、新たな株または種を構成できる。これら新たな細胞は、培養の過程で得られる変異体により識別でき、これらの変異体によりその新たな細胞は、その原種の遺伝子型特徴から区別することができる。本発明の装置及び方法により、研究者は任意の生体における新たな株を、自然淘汰の過程を通じて増殖率を増加させながら個体を分離することにより選択することができる。本発明はまた、進歩的であり完全に区別可能な真核生物(例えば、酵母類、菌類、植物細胞、藻類、動物細胞または幹細胞)のような細胞の連続的な培養のための方法及び装置を提供する。
【0057】
更なる実施形態として、一時的または恒久的に細胞を対象とし、少なくとも電波、光波、X線、音波、電磁場、放射性磁場、放射性媒体のうち一つまたは複数の組み合わせを照射し得る照射手段を用いることも出来る。以下の文献は、参照により本明細書中に援用される。Biofizika. 2005 Jul-Aug, 50(4) :689- 92、Bioelectromagnetics. 2005 Sep, 26 (6) : 431-9 、Chem Commun (Camb). 2005 Jan 14, (2):174-6、Biophys J. 2005 Feb, 88 (2) : 1496-9、Bioelectromagnetics. 1981, 2(3):285-9、Sb Lek. 1998, 99 (4) : 455-64、Antimicrob Agents Chemother. 2004 Dec, 48 (12) : 4662-4、J Food Prot. 2003 Sep, 66 (9) : 1712-5、Astrobiology. 2006 Apr, 6(2):332-47、Life Sci Space Res. 1970, 8:33-8、Adv Space Res. 1995 Mar, 15(3):211-4、Radiat Res. 2006 May, 165 (5) : 532-7、Mutagenesis. 2004 Sep, 19 (5) : 349-54、Cancer Sci. 2006 Jun, 97(6):535-9、Appl Environ Microbiol. 2006 May, 72 (5) :3608-14、Pol J Microbiol. 2005, 54 Suppl:7-11。
【0058】
他の実施形態において、装置の培養チャンバ領域は、細胞を異なる重力下に一時的または恒久的におくよう構成されていても良い。例えば、細胞は微小重力環境内で増殖されても良い。
【0059】
以下の文献は、参照により本明細書中に援用される。J Gravit Physiol. 2004 Mar; 11 ( 1 ): 75-80、Immunol Rev. 2005 Dec;208:267-80、J Gravit Physiol. 2004 JuI; 11 (2 ) : P181-3.。
【0060】
本発明に係る上述した詳細な説明によれば、本発明に係る装置及び方法の改良や変更は、当業者にとって明白であろう。そのような改良や変更は、本発明の請求の範囲内に入るものである。
【符号の説明】
【0061】
1 チューブ、
2 サーモスタット制御ボックス、
3、4、5 ゲート、
6 濁度計、
7 上流の新鮮な培地、
10 培養チャンバ、
11 サンプリングチャンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生細胞を連続的に培養するための装置であって、
培地、及び前記生細胞が浮遊状態若しくは非浮遊状態であるとともに、凝集状態若しくは非凝集状態で培養可能な表面を含む、濁度の測定のため透明または半透明のフレキシブルなチューブと、
前記チューブを
i)未使用の培地を含む上流領域、
ii)使用済みの培地を含む下流領域、及び
iii)前記上流領域及び前記下流領域の間に配置される、前記細胞を培養するための培養チャンバ領域
に分割出来るよう位置決めされ、開位置と閉位置が夫々可能な複数クランプのシステムと
を備え、
前記複数クランプのシステムは、前記チューブの前記上流領域及び前記下流領域の間に前記チューブの前記培養チャンバ領域を固定し、定義するために開閉するように、且つ前回定義された前記培養チャンバ領域の開始部が前記チューブの前記下流領域の一部となり、前回定義された前記チューブの前記上流領域の一部が前記チューブの前記培養チャンバ領域となるよう前記チューブの前記培養チャンバ領域を周期的に再定義するように構成され且つ配置されることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記複数クランプのシステムは、前記クランプが前記閉位置にある場合に、前記チューブに対して前記複数クランプの夫々が動かないよう構成され且つ配置されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記表面は、前記チューブの内面であることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記表面は、前記チューブ内部に挿入された連続的な支持部材であることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記表面は、連続繊維であることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記チューブは、ガス透過性であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記チューブは、ガス非透過性であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記チューブは、シリコンまたはその他のフレキシブルな部材を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記チューブの前記培養チャンバ部分の圧力を環境大気圧に対して変化させる圧力調節手段を更に備えることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記チューブは、pH指示手段を備えることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記チューブの前記培養チャンバ領域の温度を制御可能に構成される温度調節手段を更に備えることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記チューブの前記培養チャンバ領域を撹拌可能に構成されるアジテータを更に備えることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記アジテータは、少なくとも一つの撹拌子を備えることを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記培養チャンバ領域を電波、光波、X線、音波、電磁場、放射性磁場の少なくとも一つにさらすよう構成される放射手段を更に備えることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記培養チャンバ領域を異なる重力下にさらすよう構成される重力制御手段を更に備えることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記培養チャンバ領域は、前記培地を含む一または複数の培養チャンバを備えることを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記チューブ内の濁度を測定する濁度測定手段を更に備えることを特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記複数クランプの夫々は、前記チューブを移動可能なように固定軸の周囲を当該装置に対して回転可動であることを特徴とする請求項1から17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記培地のpHを測定可能となるよう前記チューブの構成物または内膜にpH指示手段を更に備えることを特徴とする請求項1から18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記チューブの前記培養チャンバ領域を凝集した細胞を取り除くために下向きに、または空気を抜くために上向きに傾ける角度調節手段を更に備えることを特徴とする請求項1から19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
当該装置は、前記培地内では浮遊状態では増殖しない、または前記チューブ内では非浮遊状態で増殖しない、真核生物、原核生物、古細菌及びウイルスである前記細胞の連続的な培養が可能であることを特徴とする請求項1から20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
当該装置は、凝集細胞として増殖する、真核生物、原核生物、古細菌及びウイルスである前記細胞の連続的な培養が可能であることを特徴とする請求項1から21のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
細胞を連続的に培養するための方法であって、
a)培地、及び前記細胞がチューブ内で培養可能な表面を含む透明または半透明のフレキシブルなチューブと、
前記チューブを
i)未使用の培地を含む上流領域、
ii)使用済みの培地を含む下流領域、及び
iii)前記上流領域及び前記下流領域の間に配置される、前記細胞を培養するための培養チャンバ領域
に分割出来るよう位置決めされ、開位置と閉位置が夫々可能な複数クランプのシステムとを設ける工程と、
b)濁度測定器またはその他の濁度を測定する装置によって前記チューブ内の濁度を測定する工程と、
c)前記チューブの前記上流領域及び前記下流領域の間に前記チューブの前記培養チャンバ領域を定義するよう、選択された複数のクランプをチューブ上で閉じる工程と、前記培養チャンバ領域に生存している前記細胞を導入する工程と、
d)前記細胞の関連する必要成長が取得されるまで、前記チューブ内の濁度を監視する工程と、
e)前回定義された前記培養チャンバ領域の開始部が前記チューブの前記下流領域の一部となり、前回定義された前記チューブの前記上流領域の一部が前記チューブの前記培養チャンバ領域となるよう選択された複数のクランプを周期的に開閉する工程と、
f)十分な量の細胞が増殖するまで、e)の工程を繰り返す工程と
を備えることを特徴とする方法。
【請求項24】
前記下流領域からの前記培地から複数の前記生細胞を回収する工程を更に備えることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記生細胞を前記下流領域から隔離する工程を更に備えることを特徴とする請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記生細胞は、藻類、菌類、酵母細胞、動物細胞、植物細胞及び幹細胞を含む集団から選択されることを特徴とする請求項23から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記生細胞は幹細胞であることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記生細胞は、造血系幹細胞、骨髄幹細胞、ストローマ細胞、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、胚性幹細胞、胎性幹細胞、臍帯幹細胞、胎盤由来幹細胞及び成体幹細胞を含む集団から選択されることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記細胞が培養される表面は、前記チューブの内面であることを特徴とする請求項23から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記細胞が培養される表面は、連続繊維であることを特徴とする請求項23から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記培養チャンバ領域内に存在する一または複数の培養チャンバにおいて前記細胞を培養する工程を更に備えることを特徴とする請求項23から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記培養チャンバ領域内で一または複数のタイプの細胞を培養する工程を更に備えることを特徴とする請求項23から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記チューブは、ガス透過性であることを特徴とする請求項23から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記チューブは、ガス非透過性であることを特徴とする請求項23から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記チューブの前記培養チャンバ部分の圧力を環境大気圧に対して調節する工程を更に備えることを特徴とする請求項23から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記培養チャンバ領域内の前記培地のpHを測定する工程を更に備えることを特徴とする請求項23から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記チューブの前記培養チャンバ領域の温度を制御可能に構成される温度調節手段を用いて、前記培養チャンバ領域の温度を調節する工程を更に備えることを特徴とする請求項23から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
アジテータを用いて、前記培養チャンバ領域内の前記培地を撹拌する工程を更に備えることを特徴とする請求項23から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記アジテータは、少なくとも一つの撹拌子を備えることを特徴とする請求項23から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記培養チャンバ領域を電波、光波、X線、音波、電磁場、放射性磁場の少なくとも一つにさらす工程を更に備えることを特徴とする請求項23から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記培養チャンバ領域を異なる重力下にさらす工程を更に備えることを特徴とする請求項23から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
e)の工程は、前記前記培養チャンバから前記培養チャンバの他の端部を通じて、所定の量の培地が前記下流領域へと隔離され、取り除かれる間に、前記上流領域からの同量の新鮮な培地を前記培養チャンバへと供給することで希釈を行うことが出来ることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項43】
e)の工程は、細胞周期の夫々の間に、前記培養チャンバとなる前記チューブが未使用の培地の導入とともに新しくなるよう、ひいては、隔離された前記培養チャンバに起こり得るコンタミネーションを避ける一方で、希釈抵抗性の個体群に起こり得る拡散を防ぐよう、前記チューブを動かす工程を更に備えることを特徴とする請求項23または42に記載の方法。
【請求項44】
前記細胞は、浮遊状態では増殖しないことを特徴とする請求項23から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記細胞は、凝集細胞として増殖することを特徴とする請求項23から44のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−544323(P2009−544323A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521860(P2009−521860)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/016960
【国際公開番号】WO2008/013967
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(509027010)
【氏名又は名称原語表記】DE CRECY,Eudes
【住所又は居所原語表記】6716 SW 100th Lane, Gainesville, Florida 32608, United States of America
【Fターム(参考)】