説明

ろ過器及びろ過システム並びにろ過材

【課題】廃油としてのアルミニウム切削クーラントオイルを再使用可能な状態にろ過できるようにする。
【解決手段】ろ過器2は、上部にオイル入口29aを有すると共に、底部にオイル出口28bを有するろ過容器27と、このろ過容器27の底部に敷設されたフィルタ31aと、このフィルタ31a上に収容されたおが屑32a、32bからなるろ過材33とを備えて構成されている。この構成のろ過器2には、廃油がオイル入口29aから入れられると、廃油は、おが屑32b、おが屑32aに浸透し、フィルタ28bを通過し、流出口10dから出る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム切削クーラントオイルをろ過するろ過器及びろ過システム並びにろ過材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械などでは、独自にクーラントオイルろ過装置を備えたものがあるが、これはチップ状の金属粉を除去できるが、微細粉はなかなか除去できず、何回かの使用の後は微細粉の含有量が多くなり、廃油として処理される。
【0003】
このようなクーラントオイルの廃油は、金属粉が鉄や鋼材の場合には、磁石を用いて吸着除去して再使用したり、あるいは比重が重いことから沈殿させてクーラントオイル上澄みを再使用することが行なわれる。なお、切削油ろ過用のフィルタとして、メッシュ状に組み合わされた繊維材の目に消毒作用を有する重金属化合物の微粒子を付着させた構成のものがある(特許文献1)。
【特許文献1】特開平7−16410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のクーラントオイルの廃油は、上述したように、金属粉が鉄や鋼材の場合には、磁石による吸着や、沈殿による方法で、再使用が可能であるが、しかし、特に微細なアルミニウム粉は上述のフィルタをすり抜けてしまうと共に、磁石では吸着できず、また比重も比較的軽いことから、沈殿処理による回収除去がなかなかできず、濁りがひどくなると、そのまま、廃油として処理されるのが実情であった。
【0005】
従って、本発明の目的は、廃油としてのアルミニウム切削クーラントオイルを再使用可能な状態にろ過できるろ過器及びろ過システム並びにろ過材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は次の点に着目してなされたものである。本発明者の実験によれば、次のことが考察された。本発明者は、ろ過容器に種々のろ過材を収容して、アルミニウム切削クーラントオイルの廃油をろ過したが、ろ過材としておが屑を用いた場合、アルミニウム微細粉とおが屑との吸着性が良く、すなわち、おが屑によるろ過効率が良く、再使用が可能となったことが判明した。
【0007】
請求項1の発明のろ過器は、アルミニウム切削クーラントオイルをろ過するろ過器であって、上部にオイル入口を有すると共に、底部にオイル出口を有するろ過容器と、このろ過容器の底部に敷設されたフィルタと、このフィルタ上に収容された木製粒状体からなるろ過材とを備えてなる。
【0008】
この請求項1の発明によれば、アルミニウム切削クーラントオイルがオイル入口から入れられると、該クーラントオイルは、木製粒状体に浸透し、フィルタを通過し、オイル出口から出る。この場合、前記クーラントオイルが木製粒状体に浸透するとき、クーラントオイル中のアルミニウムの微細粉が木製粒状体に付着する。この結果、クーラントオイルをろ過することができ、廃油として処分されるクーラントオイルを再使用することができるようになった。また、3マイクロメートル以上のアルミニウム切削粉を除去することができ、再使用にあたっては、切削刃物の磨耗及び機械の寿命が延び、さらに製品の不良率を良化する効果がある。
【0009】
請求項2の発明は、前記ろ過容器が、上面を開口し底部に前記オイル出口を備えた容器本体と、この容器本体の上面開口を密閉するように取着され前記オイル入口を備えた蓋とから構成され、且つ、ろ過材上面と当該蓋との間にはオイル滞留用の空間部が形成される構成であるところに特徴を有する。これによれば、前記クーラントオイルを前記空間部に充満させることができ、ろ過容器内でのアルミニウム微細粉のクーラントオイル中での浮遊率をアップできて木製粒状体との付着度合いを向上させ得ると共に、クーラントオイルの浸透圧が木製粒状体上面全域に作用することが期待でき、ろ過効率向上に寄与できる。
【0010】
請求項3の発明は、前記ろ過材が、少なくとも2つ以上の異種形態の木製粒状体を積層してなるところに特徴を有する。これによれば、アルミニウム微細粉の大きさに応じた捕捉が可能となり、木製粒状体全体でアルミニウム微細粉を均一に捕捉することが可能となり、ろ過器の目詰まりの遅延化を図ることが可能となる。
【0011】
請求項4の発明は、前記異種形態の木製粒状体が、木製粒状体の粒度の大きさの形態が異なるところに特徴を有する。これによれば、アルミニウム微細粉をその粒度に合わせて分散して捕捉することが可能となり、目詰まりの遅延化にさらに寄与できる。
請求項5の発明は、前記異種形態の木製粒状体が、粒度がほぼ同じであって、積層密度が異なる形態の木製粒状体からなるところに特徴を有する。これによれば、粒度の種類が少なくて済む。
【0012】
請求項6の発明は、前記異種形態の木製粒状体が、木材の種類が異なる形態の木製粒状体からなるところに特徴を有する。これによれば、複数種類の木製粒状体により、アルミニウム微細粉との吸着度の相違が期待でき、ろ過効率の向上が期待できる。
請求項7の発明は、前記異種形態の木製粒状体の相互間には、当該木製粒状体の混合を阻止し且つオイルの通過を許容する中間フィルタを介在しているところに特徴を有する。これによれば、クーラントオイルが通過しても異種形態の木製粒状体が混合することがなく、異種形態の木製粒状体の当初のろ過性能を維持できる。
【0013】
請求項8の発明は、木製粒状体がおが屑から構成されているところに特徴を有する。これによれば、製材や材木加工などにおいて副次的に産出されるおが屑を利用するから、廃材利用が可能で、またコスト安となる。
請求項9の発明は、木製粒状体に、分離促進剤が含浸されているところに特徴を有する。これによれば、木製粒状体によるアルミニウムの微細粉に対する捕獲性能の他に、分離促進剤による微細粉結合作用が期待でき、ろ過能力が向上する。
【0014】
請求項10の発明は、前記異種形態の木製粒状体の少なくとも一つに、分離促進剤が含浸されているところに特徴を有する。これによれば、木製粒状体による捕獲作用と、木製粒状体及び分離促進剤による捕獲作用とを期待できて、ろ過能力が向上する。
請求項11の発明は、前記分離促進剤がアルコール系材料から構成されているところに特徴を有する。これによれば、微細粉同士が結合しやすくなり、微細粉の粒度を大きくすることが可能となり、木製粒状体が該微細粉を捕獲しやすくなり、捕獲作用が向上する。
【0015】
請求項12の発明は、前記アルコール系材料はエタノールであるところに特徴を有する。これによれば、微細粉同士の結合性が高くなり、捕獲作用がさらに向上し、ろ過性能がさらに向上する。
請求項13の発明は、前記ろ過容器が、周壁が順次下方に向うに従って幅狭となるテーパー状をなすところに特徴を有する。これによれば、周壁がいわゆるストレート状をなすろ過容器の場合と違って、クーラントオイルの流下浸透による木製粒状体の空洞化が少なくなる。
【0016】
請求項14の発明は、前記木製粒状体の粒度は、篩の10メッシュ以下の目を通過し得る粒度であるところに特徴を有する。これによれば、アルミニウム微細粉の付着効率が良好である。
また、請求項15のろ過システムは、アルミニウム切削クーラントオイルをろ過するろ過システムであって、請求項1ないし14のいずれかに記載のろ過器と、このろ過器を着脱可能に設置する設置部と、この設置部の上方に設置されアルミニウム切削クーラントオイルを貯留する前記オイル貯留器と、このオイル容器と前記ろ過器のオイル入口とを連通する連通路と、前記ろ過器のオイル入口に流入するオイル又は前記ろ過器内のオイルの温度を制御するオイル温度制御器とを備えてなるところに特徴を有する。
【0017】
これによれば、オイル貯留器からの一定の水頭圧によりアルミニウム切削クーラントオイルを前記ろ過器に供給でき、しかも当該アルミニウム切削クーラントオイルの温度を制御することでほぼ一定粘度状態で前記ろ過器に供給でき、ろ過器内の木製粒状体のろ過性能を一定化できて、ろ過器のろ過性能を良好な状態に維持できる。
請求項16のろ過システムは、前記連通路が、前記オイル入口に液密に接続されているところに特徴を有する。これによれば、オイル貯留器からのほぼ一定の水頭圧を確実にかけることができて、アルミニウム切削クーラントオイルの浸透圧をほぼ一定にすることができて、ろ過器のろ過性能をさらに良好な状態に維持できる。
【0018】
請求項17のろ過材は、アルミニウム切削クーラントオイルをろ過するろ過器に収容されるろ過材であって、木製粒状体に、分離促進剤を含浸させてなるところに特徴を有する。これによれば、アルミニウム切削クーラントオイルを良好にろ過できるろ過材を提供できる。
請求項18の発明は、分離促進剤がエタノールから構成されているところに特徴を有する。これによれば、アルミニウム切削クーラントオイルをさらに良好にろ過できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、廃油として廃棄されていたアルミニウム切削クーラントオイルを再使用可能な清浄化状態にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施例につき図面を参照して説明する。図2には、ろ過システムの全体構成を示し、図1にはろ過器部分の構成を示している。図1において、ろ過システム1は、例えば3個のろ過器2を着脱可能にセットし得るようになっている。このろ過システム1について述べる。廃油容器3は、ドラム缶などからなり、使用済みの廃油(アルミニウム切削クーラントオイル)が収容されており、この廃油容器3はクーラントオイルを使用した廃油提供者あるいは廃油回収業者から搬入されたものである。この廃油容器3内の廃油は送油ポンプ4によって汲み上げられて、油供給管4bを通して後述するオイル貯留器である廃油貯留器5に供給されるようになっている。なお、上記送油ポンプ4には、ポンプ手動スイッチ4aが備えられている。また油供給管4bには送油バルブ4cが備えられている。
【0021】
フレーム6には、上部に前記廃油貯留器5が複数例えば3つほぼ同一高さに配設されており、中央の廃油貯留器5に対して、前記廃油容器3内の廃油が前記送油ポンプ4により供給されるようになっている。この中央の廃油貯留器5と、左右の廃油貯留器5、5とは、連通管7、7によって連通されていて、この連通管7、7によって各廃油貯留器5内に同じ液位(該連通管7以上の液位)の廃油が行き渡って貯留されるようになっている。この場合、フロート型の液位スイッチ8によって設定液位に達した時に前記送油ポンプ4が停止されるようになっている。
【0022】
前記各廃油貯留器5に貯留された廃油は、連通路9を通して、該廃油貯留器5下方部の設置部10に設置された例えば3つのろ過器2に供給される。この設置部10は、図1に示すように、ろ過器2の外周部を位置決めする孔10aを備えた筐体10bと、ろ過器2の底部を載置する通油可能な載置板10cと、この載置板10cを通過して流下する廃油を集めて流出口10dから流出させる集油板10eとを備えて構成されている。
【0023】
前記連通路9は、開閉バルブ11aを備えた管路11と、流量調整手段たる流量調整器12と、フレキシブル管13と、接続管兼用の開閉バルブ14とを順に接続して構成されている。前記管路11の途中部には液位計11bが配設されており、連通路9内の液位が判るようになっている。
【0024】
前記設置部10の集油板10eの流出口10dにはフレキシブル管15が接続され、このフレキシブル管15の下端部は、ろ過済油貯留器16の円筒容器状のろ過油検視部16aに臨んでいる。このろ過油検視部16aは透明な材料からなり、内部にろ過済油貯留器16内に貫通する縦管16bが設けられている。前記フレキシブル管15から流下したろ過油(前記ろ過器2でろ過した廃油)は、このろ過油検視部16aに所定液位(縦管16bの上端高さで決定される液位)まで貯留され、縦管16bによりろ過済油貯留器16内に流入するように構成されている。このろ過油検視部16aに溜まったろ過油は外部から目視可能であり、従って、このろ過油検視部16aは、ろ過油のろ過状況をその濁り度合いにより検査できる検視手段として機能する。このろ過済油貯留器16は、開閉バルブ17を経て取出しポンプ18に接続されており、この取出しポンプ18により、ろ過済油貯留器16内のろ過油を排出管19及びフレキシブル管20を介して回収容器21に回収する。前記ろ過油検視部16aは例えば透明な材料で形成されており、内部に縦管16bが備えられている。
【0025】
22は電源スイッチボックスで、オンスイッチ22a、オフスイッチ22b、電源ランプ22cを有してなる。23は、左側の廃油貯留器5に接続されたオーバーフロー管であり、開閉バルブ23aを備えている。このオーバーフロー管23の吐出口23bの下方には適宜受け容器(図示せず)が配置されるものである。この場合、この吐出口23bは廃油容器3に連通させても良い。24は取出しポンプ18オンオフ用のスイッチである。25は制御盤で、各スイッチのオンオフ信号の入力を行なって、各ポンプへの電源供給・遮断制御や、次に述べる温度設定制御など行なうものである。
【0026】
前記連通路9の例えば管路11には、該管路11に対して加熱及び冷却が可能なオイル温度制御器26が設けられており、これは管路11中の廃油の温度を直接あるいは間接的に測定する温度センサ(図示せず)を備え、制御盤25にて設定した温度となるように、温度センサによる測定温度をフィードバックして加熱制御あるいは冷却制御を行うものである。
【0027】
さて、前記ろ過器2について説明する。このろ過器2は、ろ過容器27を備えており、このろ過容器27は、有底円筒状で上面が開口した容器本体28と、平面円形状の蓋29とを有して構成されている。ろ過容器27の上部を構成する蓋29は、容器本体28の開口周縁のフランジ28aに例えばねじ30により取り付けられている。この場合蓋29はパッキン27aにより前記容器本体28の上面開口を密閉するように取り付けられている。この蓋29には、オイル入口29aが形成されており、この蓋29において、オイル入口29a以外は密閉されている。このオイル入口29aには前記開閉バルブ14が接続されている。また、容器本体28の底部には多数の孔からなるオイル出口28bが形成されている。前記容器本体28は、周壁が順次下方に向うに従って幅狭この場合径小となるテーパー状をなすように構成されており、その傾斜角度は、鉛直方向に対してほぼ85度である。
【0028】
この容器本体28の底部にはフィルタ31aが敷設され、さらに上下方向の中間部にも中間フィルタであるフィルタ31bが敷設されている。
前記下側のフィルタ31a上には木製粒状体である第1のおが屑32aが収容され、そして上記フィルタ31bを介して木製粒状体である第2のおが屑32bが収容されている。これらおが屑32a、32bはろ過材33を構成している。この第1のおが屑32a及び第2のおが屑32bは異種形態をなすものであり、これら第1及び第2のおが屑32a、32bは、おが屑の粒度の大きさの形態が異なるものである。この場合、第1のおが屑32aは「40メッシュ」(目開きやく0.4mm)の篩を通過した粒度であり、第2のおが屑32bは「10メッシュ」(目開き1.7mm)の篩を通過した粒度であり、第1のおが屑32aの粒度が第2のおが屑32bの粒度より小さい。
【0029】
また、前記第2のおが屑32bは蓋29との間にオイル滞留用の空間部27bを残すように収容されており、すなわち、ろ過材33である第2のおが屑32b上面と当該蓋29との間にはオイル滞留用の空間部27bが形成される構成としている。なお、上記フィルタ31a、31bは各おが屑32a、32bが落下しない程度の目を有するフィルタ材例えば不織布により構成されている。
【0030】
上記構成の作用について説明する。各バルブ4c、11a、14、17は閉塞状態としており、オーバーフロー管23の開閉バルブ23aは開放しておく。この場合、図示しないが吐出口23b下方には受け容器を設置している。まず、送油ポンプ4を廃油容器3内に挿入配置し、送油バルブ4cを開放し、電源のオンスイッチ22aをオンし、ポンプ手動スイッチ4aをオンする。すると、送油ポンプ4が動作して、廃油容器3内の廃油が各廃油貯留器5に送り込まれ、所定液位(例えば20リットル相当の液位)に達すると、液位スイッチ8がオフし、制御盤25により送油ポンプ4の動作が停止される。なお、前記オンスイッチ22aのオンにより前記オイル温度制御器26の電源もオンされ、設定された温度になるように制御される。
【0031】
その後、開閉バルブ14を開放し、開閉バルブ11aを徐々に開放してゆく。この場合、ろ過器2の単位時間当たりのろ過量(単位時間当たりのろ過量)に対して単位時間当たりの油供給量を若干大目にする(これは後述するが液位計11bで判断する)。これにより、各廃油貯留器5内の廃油が連通路9を通してろ過器2内に徐々に供給されてゆき、ろ過器2内のおが屑32a、32bに浸透し、さらにろ過器2内の前記空間部27bを充填していく。そして、この空間部27bに廃油が完全に充填されると、流量調整器12上方の部分で油溜まりができる。この油溜まり(つまりろ過器2の単位時間当たりのろ過量に対して単位時間当たりの油供給量を若干大目であることによりこの油溜まりが形成される)を液位計11bで確認すると、開閉バルブ11aを全開する。その後、流量調整器12により供給湯量を調整する。この場合供給湯量は、70〜80[cc/分]程度が良い。これにより、廃油貯留器5の水頭圧がろ過器2内に作用し、良好なろ過圧力が得られる。なお、ろ過器2上面に対する前記廃油貯留器5下部の高さを10〜100cmとすると良い。
【0032】
その後、ろ過器2においては、廃油が空間部27bに滞留しつつ、おが屑32b、おが屑32aを順に、前記水頭圧により浸透してゆく。このとき、廃油が空間部27bに充満するから、アルミニウム粉が浮遊し、おが屑32bとの付着率が向上し、また、前記水頭圧による浸透圧がおが屑32b上面全域に作用する。従って、廃油中のアルミニウムの微細粉がおが屑32b、32aに十分に浸透し、付着する。この場合、粒度の大きいおが屑32bに対しては比較的大きめのアルミニウム粉が付着し、粒度の小さいおが屑32aに対しては比較的小さめのアルミニウム粉が付着する。
【0033】
そして、ろ過された廃油(ろ過油)が流出口10d及びフレキシブル管15を通してろ過油検視部16aに貯められる。このとき、このろ過油の色をもってろ過状態を判断することができる。すなわち、ろ過前の廃油は、微細なアルミニウム粉を多量に含んでいるため、ほぼ黒い色をしていて光透過度も悪いものであるが、ろ過油は、多量のアルミニウム粉が除去されているため、薄い褐色となって光透過度も格段に高くなっている。この場合、上述した供給油量70〜80[cc/分]程度とすると、ろ過所要時間を過度に長くすることなく、良好なろ過状態が得られる。また、この供給油量は前記流量調整器12により適宜調整すると良い。例えば、ろ過所要時間を長くしても良い場合では、供給油量を少なくして、ろ過効果をさらに上げるようにしても良い。
【0034】
前記廃油貯留器5内の廃油が全てろ過されると(液位計11bや、ろ過油検視部16aで確認)、開閉バルブ11aを閉塞し、スイッチ24をオンして取出しポンプ18を動作させてろ過油を回収容器21に回収する。この後、スイッチやバルブを初期状態に戻す。使用した前記ろ過器2は、再度使用しても良いし、新たなろ過器2と交換しても良い。また、回収容器21に回収したろ過油を再度ろ過するようにしても良い。
【0035】
このように本実施例のろ過器2は、上部にオイル入口29aを有すると共に、底部にオイル出口28bを有するろ過容器27と、このろ過容器27の底部に敷設されたフィルタ31aと、このフィルタ31a上に収容されたおが屑32a、32bからなるろ過材33とを備えて構成されている。この構成のろ過器2には、廃油がオイル入口29aから入れられると、廃油は、おが屑32b、おが屑32aに浸透し、フィルタ31aを通過し、流出口10dから出る。この場合、廃油がおが屑32b、32aに浸透するとき、廃油中のアルミニウムの微細粉がおが屑に付着する。この結果、廃油をろ過することができ、廃油を再使用することができるようになった。
【0036】
特に本実施例によれば、前記ろ過容器27が、その上部である蓋29にオイル入口29aを有し、この蓋29は使用済みオイル入口29a以外は密閉されており、且つ、おが屑32b上面と当該蓋29との間にはオイル滞留用の空間部27bが形成される構成としたから、廃油を前記空間部27bに充満させることができ、ろ過容器27内においてアルミニウム微細粉の廃油中での浮遊率をアップできておが屑32bとの付着度合いを向上させ得ると共に、廃油の浸透圧がおが屑32b上面全域に作用することが期待でき、ろ過効率向上に寄与できる。
【0037】
また、前記ろ過材33が、少なくとも2つ以上の異種形態のおが屑32a、32bを積層してなるから、アルミニウム微細粉の大きさに応じた捕捉が可能となり、おが屑全体でアルミニウム微細粉をほぼ均一に捕捉することが可能となり、ろ過器2の目詰まりの遅延化を図ることが可能となる。
【0038】
さらに本実施例によれば、前記異種形態のおが屑32a、32bの相互間には、当該おが屑の混合を阻止し且つオイルの通過を許容する中間フィルタであるフィルタ31bを介在させた構成としたから、廃油が通過しても異種形態のおが屑32a、32bが混合することがなく、異種形態のおが屑の当初のろ過性能を維持できる。
【0039】
この場合、前記異種形態のおが屑32a、32bが、おが屑の粒度の大きさの形態が異なるから、アルミニウム微細粉をその粒度に合わせて分散して捕捉することが可能となり、目詰まりの遅延化にさらに寄与できる。
【0040】
特に本実施例では、おが屑32a、32bの粒度を10メッシュ以下としたことにより、アルミニウム微細粉の捕捉効率が特に優れており、例えば粒度3マイクロメートル以上のアルミニウム微細粉も捕捉可能となった。これは次の実験で明らかになった。すなわち、廃油の光透過度1に対して光透過度2(濁り度1/2)となったろ過油をサンプルとし、このサンプル中のアルミニウム微細粉を電子顕微鏡で撮像計測した結果、上述の粒度3マイクロメートル未満のアルミニウム微細粉のみが存在し、これは再使用に十分耐え得るものである。
【0041】
また、本実施例では、木製粒状体を、おが屑32a、32bから構成したので、製材や材木加工などにおいて鋸の削り屑として副次的に産出されるおが屑を利用するから、廃材利用が可能で、またコスト安となる。
【0042】
この場合、木製粒状体は、木材、板材などを専用の切削機械により粒状に加工して得るようにしても良い。
また、本実施例では、前記容器本体28の周壁が順次下方に向うに従って径小となるテーパー状をなすから、周壁がいわゆるストレート状をなすろ過容器の場合と違って、廃油の流下浸透によるおが屑の空洞化が少なくなる。すなわち、周壁がいわゆるストレート状をなすろ過容器の場合では、おが屑が周壁から内方への圧縮力を受けることがないが、ろ過容器27の周壁が順次下方に向うに従って径小となるテーパー状をなす本実施例では、おが屑が廃油の浸透圧を上から受けると、周壁から圧縮されるようになり、廃油の流下浸透によるおが屑の空洞化が少なくなるものである。
【0043】
また、上記実施例のろ過システム1によれば、ろ過器2を着脱可能に設置する設置部10と、この設置部10の上方に設置され前記廃油を貯留する廃油貯留器5と、この廃油貯留器5と前記ろ過器2のオイル入口29aとを連通する連通路9と、前記ろ過器2のオイル入口29aに流入するオイルの温度を制御するオイル温度制御器26とを設けたから、廃油貯留器5からの一定の水頭圧により廃油を前記ろ過器2に供給でき、しかも当該廃油の温度を制御することでほぼ一定粘度状態で前記ろ過器2に供給でき、ろ過器2内のおが屑32a、32bのろ過性能を一定化できて、ろ過器2のろ過性能を良好な状態に維持できる。この場合、オイル温度制御器26は前記ろ過器2内の廃油の温度を直に制御するようにしても良い。
【0044】
また、本実施例のろ過システム1は、前記連通路9が、前記オイル入口29bに液密に接続されているから、廃油貯留器5からのほぼ一定の水頭圧をろ過容器27内に確実にかけることができて、廃油の浸透圧をほぼ一定にすることができて、ろ過器2のろ過性能をさらに良好な状態に維持できる。
【0045】
本発明は、上記した実施例に限られず、次のように変更して実施しても良い。
[1]木製粒状体に、分離促進剤を含浸させる構成としても良く、このようにすると、木製粒状体によるアルミニウムの微細粉に対する捕獲性能の他に、分離促進剤による微細粉捕獲作用が期待でき、ろ過能力が向上する。
【0046】
木製粒状体に、アルコール系材料(エタノール、メタノール)などの分離促進剤を木製粒状体に含浸させ、廃油(アルミニウム切削クーラントオイル)をろ過した場合、アルミニウム微細粉周囲に付着している汚れた油がアルミニウム微細粉から分離しやすくなり、結果的にアルミニウム微細粉同士の結合が期待でき、結果的に粒度が大きくなって、相対的に、木製粒状体による捕獲能力が向上したと推察される。
【0047】
[2]この場合、異種形態の木製粒状体の少なくとも一つに、分離促進剤を含浸させても良い。つまり、前記実施例においては、上側の木製粒状体である第2のおが屑32bに分離促進剤としてエタノールを含浸させるようにしても良い。このようにすると、上側の第2のおが屑32b部分でアルミニウム微細粉の結合性を良くし、下側の第1のおが屑32aでの捕獲効果の向上が期待できる。
【0048】
[3]この場合、分離促進剤としてはエタノール以外のアルコール系材料から構成しても良く、この場合も、微細粉同士が結合しやすくなり、微細粉の粒度を大きくすることが可能となり、木製粒状体が該微細粉を捕獲しやすくなり、捕獲作用が向上する。
【0049】
[4]木製粒状体の異種形態としては次の形態としても良い。すなわち、複数形態の各木製粒状体の粒度がほぼ同じであって、積層密度が異なるような異種形態としても良く、このようにすると、粒度の種類が少なくて済む。
【0050】
[5]また、木材の種類が異なる形態の木製粒状体としても良く、このようにすると、複数種類の木製粒状体により、アルミニウム微細粉との吸着度の相違が期待でき、ろ過効率の向上が期待できる。特に、木材の種類としては、桧や、栂や、スブルースなどの針葉樹が良い。
【0051】
[6]その他、本発明の実施例は、上記実施例に限定されるものではなく、例えば、ろ過完了をセンサなどにより自動的に検出するようにしても良いし、各バルブは自動的に開閉制御するようにしても良い。また、木製粒状体の形態は2形態以上であっても良い。また、ろ過容器27は平面的に見て矩形や多角形でも良い。また、フィルタは布から構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施例を示すろ過器部分の縦断正面図
【図2】ろ過システムの正面図
【符号の説明】
【0053】
図面中、1はろ過システム、2はろ過器、3は廃油容器、4は送油ポンプ、5は廃油貯留器(オイル貯留器)、9は連通路、10は設置部、12は流量調整器(流量調整手段)、16はろ過済油貯留器、16aはろ過油検視部、16bは縦管、18は取出しポンプ、21は回収容器、26は温度制御器、27はろ過容器、27bは空間部、28は容器本体、29は蓋、31aはフィルタ、31bはフィルタ(中間フィルタ)、32aは第1のおが屑、32bは第2のおが屑、33はろ過材を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム切削クーラントオイルをろ過するろ過器であって、
上部にオイル入口を有すると共に、底部にオイル出口を有するろ過容器と、
このろ過容器の底部に敷設されたフィルタと、
このフィルタ上に収容された木製粒状体からなるろ過材とを備えてなるろ過器。
【請求項2】
前記ろ過容器は、上面を開口し底部に前記オイル出口を備えた容器本体と、この容器本体の上面開口を密閉するように取着され前記オイル入口を備えた蓋とから構成され、且つ、ろ過材上面と当該蓋との間にはオイル滞留用の空間部が形成される構成であることを特徴とする請求項1記載のろ過器。
【請求項3】
前記ろ過材は、少なくとも2つ以上の異種形態の木製粒状体を積層してなる請求項1又は2に記載のろ過器。
【請求項4】
前記異種形態の木製粒状体は、木製粒状体の粒度の大きさの形態が異なることを特徴とする請求項3に記載のろ過器。
【請求項5】
前記異種形態の木製粒状体は、粒度がほぼ同じであって、積層密度が異なる形態の木製粒状体であることを特徴とする請求項3に記載のろ過器。
【請求項6】
前記異種形態の木製粒状体は、木材の種類が異なる形態の木製粒状体であることを特徴とする請求項3に記載のろ過器。
【請求項7】
前記異種形態の木製粒状体の相互間には、当該木製粒状体の混合を阻止し且つオイルの通過を許容する中間フィルタを介在したことを特徴とする請求項3ないし6のいずれかに記載のろ過器。
【請求項8】
前記木製粒状体は、おが屑から構成されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のろ過器。
【請求項9】
前記木製粒状体には、分離促進剤が含浸されていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載のろ過器。
【請求項10】
前記異種形態の木製粒状体の少なくとも一つに、分離促進剤が含浸されていることを特徴とする請求項3ないし7のいずれかに記載のろ過器。
【請求項11】
前記分離促進剤は、アルコール系材料から構成されていることを特徴とする請求項9又は10に記載のろ過器
【請求項12】
前記アルコール系材料はエタノールであることを特徴とする請求項11に記載のろ過器。
【請求項13】
前記ろ過容器は、周壁が順次下方に向うに従って幅狭となるテーパー状をなすことを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載のろ過器。
【請求項14】
前記木製粒状体の粒度は、篩の10メッシュ以下の目を通過し得る粒度であることを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載のろ過器。
【請求項15】
アルミニウム切削クーラントオイルをろ過するろ過システムであって、
請求項1ないし14のいずれかに記載のろ過器と、
このろ過器を着脱可能に設置する設置部と、
この設置部の上方に設置されアルミニウム切削クーラントオイルを貯留する前記オイル貯留器と、
このオイル容器と前記ろ過器のオイル入口とを連通する連通路と、
前記ろ過器のオイル入口に流入するオイル又は前記ろ過器内のオイルの温度を制御するオイル温度制御器と
を備えてなることを特徴とするろ過システム。
【請求項16】
前記連通路に流量調整手段を設けたことを特徴とする請求項15に記載のろ過システム。
【請求項17】
アルミニウム切削クーラントオイルをろ過するろ過器に収容されるろ過材であって、木製粒状体に、分離促進剤を含浸させてなることを特徴とするろ過材。
【請求項18】
分離促進剤はエタノールから構成されていることを特徴とする請求項17に記載のろ過材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−216217(P2007−216217A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−9218(P2007−9218)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(506021879)有限会社 サンエイト (1)
【Fターム(参考)】