説明

アイリス面空間結像制御型画像表示装置

【課題】 挟視野角の表示装置を提供することにより、必要以上の広い視野角を持つことによるエネルギーの無駄をなくし、以て省エネに貢献する。
【解決手段】物体面、結像面、レンズ面の三つの面を有する基本結像系の物体面には、少なくとも角度的に均一な光強度を実現するホモジェナイザー4の出力面に位置し物体面とレンズ面との距離aとほぼ等しい焦点距離f1を有するレンズ8が配置され、レンズ面の焦点距離f2のレンズ10のレンズ面又はその近傍に光拡散特性の少ない透過型光変調手段12が配置され、レンズ面から下記の等式を満たす距離b離間した位置に結像面が位置されるようにしてなる。
等式:(1/a)+(1/b)=1/f2

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察者の画像視認位置という限られた狭い領域にのみ画像を送ることが可能であって、その領域外に画像を送ることによる無駄な電力消費を回避して省エネを図ることができるアイリス面空間結像制御型画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種表示装置は、一般に、一つの表示画像を、表示画面に対して互いに異なる角度に位置する多くの観察者に対して視認できるようにするようにしている。即ち、比較的広視野角で解像度を高く、コントラクトも良好にすることが、基本的設計思想であり、その広視野角実現のため拡散手段(例えば拡散フィルム)を用いたものが多かった。
【0003】
特開2007−183498号(特許文献1)にはそのような拡散フィルムや投射システムが紹介されており、図5はそのような拡散フィルムの一例を示すものである。同図(a)〜(c)は同じ角度で一つのレンズ(入射側レンズ)に入射した光はそれぞれその角度に対応した位置に集光し、そして、その各位置に集光した光は上記レンズの焦点位置に配置された別のレンズ(出射側レンズ)にてある角度範囲で拡散される原理を示している。(d)はその上記二つのレンズを一体化した拡散フィルムの断面図である。
【0004】
このような拡散フィルムを駆使することによって、入射側のレンズの働きにより入射角度に応じた位置に集光した画像を構成する光を、出射側のレンズのある範囲で拡散させることができるので、その拡散角度範囲に位置する観察者全員に画像を視認させることができる。
従って、このような拡散フィルムを視野角拡大に用いた表示装置は、その拡散角度を適宜に設定することにより広い角度範囲に渡って視認ができるようにし、以て、広視野角を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−183498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、表示装置には、広視野角であることが要求されるものだけがあるわけではない。つまり、狭視野角であっても差し支えないものもある。
例えば、旅客機等の各客席毎に設けられるテレビジョン用ディスプレイ、或いは個人向け小型テレビジョン、パーソナルコンピュータ、携帯電話、携帯情報端末等のディスプレイがそれである。
【0007】
これ等のディスプレイは、基本的に、それを観るのは一人であり、その人のみが視えれば良いものである。極論すれば、その一人の人間の両眼が存在する狭い領域に対してのみ画像光を送ることができれば良いと言える。
しかしながら、そのような狭視野角でも良いディスプレイであっても、最小限必要な視野角よりも相当に広い視野角を有するのが普通であり、従来、視野角を広くする技術開発は盛んに行われてきたが、不必要に視野角を広めることがないように視野角を狭めるという技術開発は行われてこなかった。
【0008】
というのは、必要以上に視野角を広めることは無駄な電力消費をもたらし、省エネの精神に反するという認識が表示装置の開発技術分野に存在しなかったからである。
元来、表示装置がそれに要求される視野角よりも広い視野角を有するとすると、その広い分、無駄に画像を出力していることになる。
例えば、一人の人間の両眼に画像を出力できれば良いのに、数人乃至数十人乃至数百人の人間が同時に視認できる領域に画像を出力する特性を有しているとすると、その数人乃至数十人乃至数百人マイナス1人が視認できる領域への画像出力はまったくの無駄になるのである。これは、当然に、画像表示をするために作り出す光の無駄等を生み出し、そのために消費されるエネルギーの無駄をもたらす。
【0009】
このような無駄の存在には多くの技術者が気づいていないが、本願の発明者は、東日本大震災による福島原発事故によって計画停電の実施、大企業への節電の法制化、小企業、一般家庭への節電の要請等の事態を生じ、表示装置の視野角が必要以上に広いことによる無駄な電力消費に気づき、そのような無駄を無くす必要を認識するに至った。
そして、本願発明者は、その無駄をなくすべく思考し、実験を重ね、本発明を為すに至った。
即ち、本発明は、挟視野角の表示装置を提供することにより、必要以上の広い視野角を持つことによるエネルギーの無駄をなくし、以て省エネに貢献することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1のアイリス面空間結像制御型画像表示装置は、物体面、レンズ面、結像面の三つの面を有する基本結像系からなり、上記物体面には、角度的に、又は角度的且つ空間的にほぼ均一な光強度を実現するホモジェナイザーの出力面とその出力面に位置し上記物体面とレンズ面の距離aとほぼ等しい焦点距離f1を有するレンズが配置され、上記レンズ面の焦点距離f2のレンズのレンズ面又はその近傍に光拡散性のない又は少ない透過型光変調手段が配置され、上記レンズ面から下記の等式を満たす距離b離間した位置に結像面が位置されたことを特徴とする。
等式:(1/a)+(1/b)=1/f2
【0011】
請求項2のアイリス面空間結像制御型画像表示装置は、物体面、レンズ面、結像面の三つの面を有する基本結像系からなり、上記物体面には、角度的に、又は角度的且つ空間的にほぼ均一な光強度を実現するホモジェナイザーの出力面とその出力面に位置し焦点距離f1を有するレンズが配置され、上記レンズ面の焦点距離f2の非軸非球面フレネル反射鏡のレンズ面又はその前側近傍に光拡散性のない又は少ない透過型光変調手段が配置され、上記レンズ面から距離b離間した位置に結像面が位置され、上記物体面から上記レンズ面に至る距離が上記レンズの焦点距離f1とほぼ等しいaであり、上記a、b及び上記焦点距離f2との間に下記の等式が略成立することを特徴とする。
等式:(1/a)+(1/b)=1/f2
【0012】
請求項3のアイリス面空間結像制御型画像表示装置は、請求項1又は2のアイリス面空間結像制御型画像表示装置において、入射角無依存のトップハット的拡散特性を有する内部屈折率分布型の拡散フィルムを一又は複数枚重ねたものをホモジェナイザーとしたことを特徴とする。
請求項4のアイリス面空間結像制御型画像表示装置は、請求項1、2又は3のアイリス面空間結像制御型画像表示装置において、前記ホモジェナイザーとしてフライアイレンズ2枚又はレンチキュラーレンズ2枚を互いにレンズの焦点距離だけ離して設置したレンズの組を二組互いに直交させたものを用いることを特徴とする。
【0013】
請求項5のアイリス面空間結像制御型画像表示装置は、請求項1、2、3又は4に記載のアイリス面空間結像制御型画像表示装置において、前記焦点距離f1のレンズの有効径内に複数のホモジェナイザー出力面をアレイ状(一次元又は二次元)に配置されるようにしたことを特徴とする。
請求項6のアイリス面空間結像制御型画像表示装置は、請求項1、3、4又は5に記載のアイリス面空間結像制御型画像表示装置において、前記透過型光変調手段が前記レンズ面から前記物体面側に、前記レンズ焦点距離f2以内の距離を置いて設置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1のアイリス面空間結像制御型画像表示装置によれば、透過型光変調手段として拡散特性を有するものを用いないので、画像光を拡散することを抑制し、視野角を狭くすることが可能である。
実施態様により異なるが、視野角を立体角で数百分の1、更には数千分の1、更には数万分の1、また更に数10万分の1にすることもでき、顕著な省エネに貢献できる。
更に、光を拡散させないようにするので、外光も拡散しないで通り抜けるようにすることができ、外光による悪影響を顕著に低減することができる。
【0015】
請求項2のアイリス面空間結像制御型画像表示装置によれば、レンズ面のあるものとして非軸非球面フレネル反射鏡を用いるので、物体面からの光を非軸非球面フレネル反射鏡のレンズ面に対してそれより斜め前側から照射し、そのレンズ面の前側にて光変調手段により変調し、アイリス面に結像することができる。
従って、フロント型のアイリス面空間結像制御型画像表示装置を提供することができる。勿論、視野角を狭くすることができること、外光による悪影響を顕著に低減できることは、請求項1のアイリス面空間結像制御型画像表示装置と同様である。
【0016】
請求項3のアイリス面空間結像制御型画像表示装置によれば、入射角無依存のトップハット的拡散特性を有する内部屈折率分布型の拡散フィルムをホモジェナイザーとして用いることで、ロッドライクインテグレータを使わなくても角度的且つ空間的にほぼ均一な光強度を実現でき、ホモジェナイザーの小型化が容易に可能となる。
請求項4のアイリス面空間結像制御型画像表示装置によれば、ホモジェナイザーとしてフライアイレンズ2枚又はレンチキュラーレンズ2枚を互いにレンズの焦点距離だけ離して設置したレンズの組を二組互いに直交させたものを用いたので、光強度を角度的に均一にでき、角度的に均一な光強度を実現でき、画面の周辺部が中央部よりも暗くなるという画像の品位低下を回避することができる。
【0017】
請求項5のアイリス面空間結像制御型画像表示装置によれば、1、2、3又は4に記載のアイリス面空間結像制御型画像表示装置において、前記焦点距離f1のレンズの有効径内に複数のホモジェナイザー出力面をアレイ状(一次元又は二次元)に配置されるようにしたので、空間に結像する位置を複数箇所とすることができる。
そして、デジタルカメラ等の分野で普及している顔認識システムやアイトラッキンングに関する既知の技術によって、観測者の位置を検出し、検出した観察者に対応する光源のみをオンする(点灯させる)ことにより、必要なエリアには画像表示をするが、観察者がおらず、従って画像表示を必要としないエリアには画像表示をしないようにすることができる。
以て、画像表示可能なエリアを増やしつつ、画像表示に費やすエネルギーに無駄が生じないようにすることができる。
【0018】
請求項6のアイリス面空間結像制御型画像表示装置によれば、透過型光変調手段をレンズ面から物体面側にそのレンズの焦点距離f2以内ずれたところに位置させたので、観察者側からは透過型光変調手段による虚像をレンズ(焦点距離f2のレンズ)により拡大して視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明アイリス面空間結像制御型画像表示装置の第1の実施例を示す斜視図である。
【図2】図1の実施例の省エネ効果の説明図である。
【図3】本発明アイリス面空間結像制御型画像表示装置の第2の実施例を示す斜視図である。
【図4】本発明アイリス面空間結像制御型画像表示装置の第3の実施例を示す斜視図である。
【図5】従来において広視野角実現のため拡散手段(例えば拡散フィルム)を用いた技術である特許文献1により紹介された拡散フィルムの一例を示すものである。同図(a)〜(c)は同じ角度で一つのレンズ(入射側レンズ)に入射した光はそれぞれその角度に対応した位置に集光し、そして、その各位置に集光した光は上記レンズの焦点位置に配置された別のレンズ(出射側レンズ)にてある角度範囲で拡散される原理を示している。(d)はその上記二つのレンズを一体化した拡散フィルムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明アイリス面空間結像制御型画像表示装置の第1のものは、基本的に、物体面、結像面、レンズ面の三つの面を有する基本結像系のその物体面には、角度的に、又は角度的且つ空間的にほぼ均一な光強度を実現するホモジェナイザー出力面とその出力面に位置し上記物体面とレンズ面の距離aとほぼ等しい焦点距離f1を有するレンズが配置され、上記レンズ面の焦点距離f2のレンズのレンズ面又はその近傍に光拡散特性のない又は少ない透過型光変調手段が配置され、上記レンズ面から下記の等式を満たす距離b離間した位置に結像面が位置されたことを特徴とするものである。等式:(1/a)+(1/b)=1/f2
尚、本発明アイリス面空間結像制御型画像表示装置の第1のものは、リア型の画像表示装置であるが、本発明アイリス面空間結像制御型画像表示装置の第2のものは、レンズ面を有するものとして非軸非球面フレネル反射鏡を用い、更に、透過型光変調手段をレンズ面の前側に配置することにより、物体面からの光をそのレンズ面のある非軸非球面フレネル反射鏡に対して斜め前側から照射することができるようにし、以てフロント型にしたものである。
更に、反射手段を付加し、物体面からの光を直接レンズ面のある非軸非球面フレネル反射鏡に照射するのではなく、その付加した反射手段により物体面からの光を反射して非軸非球面フレネル反射鏡に照射するようにしても良い。
【0021】
本発明アイリス面空間結像制御型画像表示装置の透過型光変調手段として、好適な例は、バックライトのないところの光拡散手段を有しない液晶パネルである。
尚、液晶パネル等は、普通カラーフィルタによりカラー化を図っているが、光源としてR(赤)、G(緑)、B(青)の三色の光源チップを備え、一定の順序で光源の発光色を切り換えるようにし、カラーシーケンシャルに照明光を液晶パネル等透過型光変調手段へ与えるようにすることができる。そして、光源の発光色の切り換えと光変調手段の画像変調対象色の切り換えとを同期させて行うようにした場合、液晶パネル等光変調手段としてカラーフィルタのないものを用いることができる。
【0022】
また、アイリス面空間結像制御型画像表示装置のホモジェナイザーとしてはロッドライクインテグレータ(ライトパイプ)が好適であるが、そのロッドライクインテグレータはあくまでホモジェナイザーの一例にすぎない。
また、ホモジェナイザーとして、フライアイレンズ2枚又はレンチキュラーレンズ2枚を互いにそのレンズの焦点距離だけ離して設置したレンズの組を、二組直交させたものを用いるようにしても良い。そのようにした場合、角度的均一性を極めて高くすることができ、より画像の品位を高めることができる。
【0023】
また、ホモジェナイザーとして、入射角無依存のトップハット的拡散特性を有する内部屈折型の拡散フィルムを一枚乃至複数枚重ねたものを用いると、ロッドライクインテグレータを使わなくても角度的且つ空間的にほぼ均一な光強度を得ることができ、ホモジェナイザーの小型化が容易に実現できる。
また、焦点距離f1の前記レンズの有効径内に複数のホモジェナイザーの出力面がアレイ状(一次元的又は二次元的)に配置されるようにすることもできる。このようにすることにより、空間に結像する位置を複数箇所とすることができる。
【0024】
そして、デジタルカメラで既に採用されているところの眼の存在を検知するアイトラッキング技術を併用することにより、眼の存在を検知したエリアと対応する光源のみをオンさせ、眼が不在のエリアと対応する光源をオフさせることができる。それにより、より一層の省エネ効果を得ることができるようにすることができる。
また、上述した透過型光変調手段としてバックライトのないところの光拡散手段を有しない液晶パネルを用いた場合において、前記レンズ面から物体面側にその液晶パネルを当該レンズの焦点距離f2以内の距離だけ離して配置すると、液晶パネルの虚像を観察者側から拡大して見るようにすることができる。
このように、本発明は種々の態様で実施することができ、種々の変形例があり得る。
【実施例】
【0025】
(第1の実施例)
図1は本発明アイリス面空間結像制御型画像表示装置の第1の実施例を示す斜視図である。
図において、2は光源であり、本例ではLED(発光ダイオード)が用いられている。4は上記光源2からの光を入射面にて受けるホモジェナイザーであり、本例ではロッドライクインテグレータが用いられている。このホモジェナイザー4は光源2からの光の強度を空間的に均一にして出力面から出射する。
尚、ホモジェナイザーとしては、フライアイレンズ2枚又はレンチキュラーレンズ2枚を互いにレンズの焦点距離だけ離して設置したレンズの組を二組互いに直交させたものを用いるようにしても良い。
6はホモジェナイザー4の出力面側に配置された拡散フィルムで、角度的に均一にする役割を果たす。
【0026】
拡散フィルム6は、本例では、本願出願人(国立大学法人東北大学)で開発されたDiffuse Light Control−film(D.L.C.−film)を2枚拡散方向が互いに直交するように積層したものである。
その積層されたD.L.C.−filmは、入射角度無依存のトップハット的均一拡散特性を有するので、角度的に均一なホモジェナイザーの役割を果たすことができる。従って、拡散フィルム6の出力面からは空間的にも角度的にも均一な光が出射される。
【0027】
8は上記拡散フィルム6の出力面に近接して設けられたレンズであり、その焦点距離はf1である。このレンズ8の働きにより、レンズ8から出射側へその焦点距離f1(=a)離れた面には、角度的情報と空間的位置情報が入れ換わり、空間的にも角度的にも均一な光の面が拡大して照射される。
10は上記レンズ8からこれの焦点距離f1(=a)だけ出射側へずれた上述の位置に配置されたフレネルレンズであり、その焦点距離はf2である。12はこのフレネルレンズ10の出射面に近接して配置された透過型の光変調手段であり、本例では、バックライトを有さず、光拡散特性のない液晶パネル(LCDパネル)を用いている。
【0028】
上記レンズ8からその焦点距離f1(=a)だけ離れた位置に上述したようにフレネルレンズ10と光変調手段12が配置されているので、フレネルレンズ8に入射した角度的にも空間的にも均一にされた光は、その面における光は光変調手段12により変調され、(1/a)+(1/b)=1/f2という条件を満たす距離bだけ光変調手段12から出射側へ離間したところに結像する面14ができる。
この面14は、ホモジェナイザー4の出射面に設けられた拡散フィルム6の出射面と共役関係にあり、そのため、空間的にも角度的にも均一な面になっている。そこで、本明細書では、この面14を空間結像アイリス面と呼ぶこととする。
【0029】
その空間結像アイリス面14内に人間の眼を入れると、眼の水晶体が角度情報である画像情報が位置情報として網膜に結像されるために空間的に均一な画像を視ることが可能になる。
更に、空間結像アイリス面14内で眼を動かしても、空間均一性はそのアイリス面14内において実現しているので、見ている画像全体の明るさも一定となる。
【0030】
このようなアイリス面空間結像制御型画像表示装置によれば、光変調手段としてバックライトがなく光拡散特性のない液晶パネル(LCDパネル)を用いているので、画像光が拡散することがない。従って、視野角を著しく狭くすることができ、延いては省エネ効果を得ることができる。
図2はその省エネ効果の説明図である。同図において、省エネ効果はS2/S1であり、そのS2/S1は次式で表される。尚、S1は通常の光拡散特性を有するようにした装置の光が拡散する立体角、S2は本実施例の装置の光が拡散する立体角、rは眼からスクリーンまでの距離である。
【0031】
S2/S1=π(r・tanθ)2/(2πr2)=(tanθ)2
人には両眼があるので、省エネ効果=2×(tanθ)2 /2=(tanθ)2となる。
今、3m離れた位置で空間結像アイリス面の直径を6cmとすると、tanθ=3cm/3m=1/100であるので、省エネ効果=(tanθ)2=1/10000となり、1/10000の超低消費電力が1人分について成立することになる。仮に、10人が見ていても1/1000の超低消費電力が実現する。液晶パネル.のバックライトの消費電力が液晶パネル全体の消費電力の90%〜95%を占めていることから考えても、上記技術の効果は大きい。
【0032】
(変形例1)
なお、上記第1の実施例において、透過型光変調手段、例えばバックライトがなく拡散特性を有しない液晶パネル12を、レンズ10と近接した位置ではなく、レンズ10から物体面側、即ちレンズ8側に、レンズ10の焦点距離f2以内の距離離間した位置に配置するようにしてもよい。
このようにすれば、観察者側からは透過型光変調手段12による虚像をレンズ(焦点距離f2のレンズ)10により拡大して視認することができる。

(変形例2)
また、光源2として、R(赤)、G(緑)、B(青)を発光する3個の発光手段を内蔵し、一定の順序でその発光する発光手段を切り換えることができるRGBシーケンシャル光源を用いると、画像変調手段として白黒用のものを用いてもカラーアイリス面空間結像制御型画像表示装置を実現することができる。
即ち、60秒間を3等分した180分の1秒間毎にRGBシーケンシャル光源2で発光する光の色を例えば赤(R)、緑(G)、青(B)、赤(R)、緑(G)、青(B)、・・・の順に切り換えるようにする。そして、それに同期して透過型光変調手段12の画像情報のカラー成分を赤(R)、緑(G)、青(B)、赤(R)、緑(G)、青(B)、・・・の順に切り換えるようにする。すると、画像変調手段として白黒用のものを用いてもカラーアイリス面空間結像制御型画像表示装置を実現することができる。
【0033】
(第2の実施例)
図3は本発明アイリス面空間結像制御型画像表示装置の第2の実施例を示す斜視図であり、この実施例は、図1に示した第1の実施例とは、光源2、ホモジェナイザー4を複数個ずつ設けることによりそれぞれアレイ化したものである点で異なるが、それ以外の点では共通する。
本実施例が光源2、ホモジェナイザー4をアレイ化するのは、観察者が複数人存在し得る場合とか、一人或いは少数の観察者が眼の位置を変え得る場合において、実際に観察者(の眼)が存在するエリアのアイリス面14のみに画像が生じされるようにし、観察者(の眼)が存在しないエリアには画像を表示しないようにし、画像表示に費やすエネルギーに無駄が生じないようにするためである。
【0034】
図面において、2aは多数の光源2、2、・・・をアレイ化して配置した光源アレイであり、4aは光源アレイ2aの各光源2、2、・・・に対応して設けられたホモジェナイザー4、4、・・・からなるホモジェナイザーアレイであり、その各ホモジェナイザー4、4、・・・はそれぞれ自己と対応する光源2からの光を入射面にて受け、出射面から出射する。ホモジェナイザーアレイ4の出射面には拡散フィルム6が配置され、出力面からは空間的にも角度的にも均一な強度分布の光が出射されること、第1の実施例と同じである。
8は上記拡散フィルム6の出力面に近接して設けられたレンズであり、その焦点距離はf1である。そのレンズ8からその焦点距離f1と等しい距離a離れたところにフレネルレンズ10(その焦点距離がf2)が配置されており、そのフレネルレンズ10に近接して光変調手段(例えばバックライトがなく、拡散特性を有しない液晶パネル)12が配置されている。
【0035】
このような実施例によれば、フレネルレンズ10及び光変調手段12が近接して配置された位置から等式(1/a)+(1/b)=1/f2を満たす距離b出射側に離間した位置に、光源アレイ2aの各光源2、2、・・・から出射されホモジェナイザーアレイ4aの各ホモジェナイザー4、4、・・・に入射し光変調手段12によって変調された光によるアイリス面14、14、・・・がアレイ状に形成される。14aはアイリス面アレイである。
そして、カメラ技術で普及している顔認識システムやアイトラッキンングに関する既知の技術によって、観察者の位置を検出し、検出した観察者に対応する光源2のみをオンする(点灯させる)ことにより、必要なエリアには画像表示をするが、観察者がおらず、従って画像表示を必要としないエリアには画像表示をしないようにすることができる。
以て、画像表示に費やすエネルギーに無駄が生じないようにすることができる。
尚、本例では、光源2、2、・・・及びホモジェナイザー4、4、・・・が二次元アレイ状に配置されていたが、一次元アレイ状に配置されるようにしても良い。
【0036】
(第3の実施例)
図4は本発明アイリス面空間結像制御型画像表示装置の第3の実施例を示す斜視図である。
本実施例は、図3に示したリア型アイリス面空間結像制御型画像表示装置である第2の実施例をフロント型の画像表示装置に変形させたものであり、装置の薄型化、小型化を図ることができる。
なお、本実施例は、図3に示した実施例とは、フロント型にするために必要な手段が講じられている点で相違するが、それ以外の点では共通する。
【0037】
同図において、2aは複数の光源2、2、・・・からなる光源アレイ、4aは各光源2、2、・・・に対応して設けられたホモジェナイザー4、4、・・・からなるホモジェナイザーアレイである。6は拡散フィルムであり、例えば第1、第2の実施例の拡散フィルムと同じものが使用されており、ホモジェナイザーアレイ4aからの光を入射角度無依存のトップハット的均一拡散特性を有する。従って、拡散フィルム6の出射面からは、空間的にも角度的にも均一な光強度の光が出射される。
【0038】
16は上記拡散フィルム6の出射面に近接して配置されたレンズであり、第2の実施例或いは第1の実施例のレンズ8に相当する役割を果たし、本例では非球面非軸レンズが用いられている。このレンズ16の焦点距離はf1である。
18はレンズ16からの光を反射する非軸非球面反射鏡ミラーであり、本例では非球面非軸ミラーが設けられており、表示装置をリア型からフロント型にするのに一つの役割を果たす。
10rは非軸非球面フレネル反射鏡であり、第1、第2の実施例のフレネルレンズ10に相当する役割を果たすが、透過性を有さず、反射性を有する点で、第1、第2の実施例のフレネルレンズ10とは異なる。
【0039】
12は光変調手段であり、非軸非球面フレネル反射鏡10rの前方(観察者側)に近接して配置されており、その反射鏡10rで反射された光を変調する。
この近接して配置された光変調手段12及び非軸非球面フレネル反射鏡10rは、レンズ16からミラー18を経て自身12、10rに達する光路長がレンズ16の焦点距離f1と同じ距離aになるところに配置されている。
そして、光変調手段12及び非軸非球面フレネル反射鏡10rから光出射側に等式(1/a)+(1/b)=1/f2を満たす距離b出射側に離間した位置に、光源アレイ2aの各光源2、2、・・・から出射されホモジェナイザーアレイ4aの各ホモジェナイザー4、4、・・・に入射し光変調手段12によって変調された光によるアイリス面14、14、・・・がアレイ状に形成される。
【0040】
このようにすれば、光源アレイ2aやホモジェナイザーアレイ4aを光変調手段12及び非軸非球面フレネル反射鏡10rよりも観察者側にすることができ、延いてはアイリス面空間結像制御型画像表示装置の薄型化、小型化を図ることができる。
尚、本実施例は、光源2及びホモジェナイザー4をアレイ化した第2の実施例をフロント型化したものであるが、第1の実施例のように光源2及びホモジェナイザー4をアレイ化しないタイプのリア型画像表示装置をフロント型化するという態様でも本発明を実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、観察者の画像視認位置という限られた狭い領域にのみ画像に画像を送ることが可能であって、その領域外に画像を送ることによる無駄な電力消費を回避して省エネを図ることができるアイリス面空間結像制御型画像表示装置に広く適用することができ、リア型の画像表示装置に利用可能性があるのみならず、フロント型の画像表示装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
2・・・光源、2a・・・光源アレイ、4・・・ホモジェナイザー、
4a・・・ホモジェナイザーアレイ、6・・・拡散フィルム、
8・・・レンズ(焦点距離f1)、
10・・・フレネルレンズ、10r・・・非軸非球面フレネル反射鏡
12・・・光変調手段(バックライトを持たず、拡散特性のない光拡散手段)、
14・・・アイリス面、14a・・・アイリス面アレイ、16・・・レンズ、
18・・・反射手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体面、レンズ面、結像面の三つの面を有する基本結像系からなり、
上記物体面には、角度的に、又は角度的且つ空間的にほぼ均一な光強度を実現するホモジェナイザーの出力面とその出力面に位置し上記物体面とレンズ面の距離aとほぼ等しい焦点距離f1を有するレンズが配置され、
上記レンズ面の焦点距離f2のレンズのレンズ面又はその近傍に光拡散性のない又は少ない透過型光変調手段が配置され、
上記レンズ面から下記の等式を満たす距離b離間した位置に結像面が位置された
ことを特徴とするアイリス面空間結像制御型画像表示装置。
等式:(1/a)+(1/b)=1/f2
【請求項2】
物体面、レンズ面、結像面の三つの面を有する基本結像系からなり、上記物体面には、角度的に、又は角度的且つ空間的にほぼ均一な光強度を実現するホモジェナイザーの出力面とその出力面に位置し焦点距離f1を有するレンズが配置され、
上記レンズ面の焦点距離f2の非軸非球面フレネル反射鏡のレンズ面又はその前側近傍に光拡散性のない又は少ない透過型光変調手段が配置され、上記レンズ面から距離b離間した位置に結像面が位置され、
上記物体面から上記レンズ面に至る距離が上記レンズの焦点距離f1とほぼ等しいaであり、上記a、b及び上記焦点距離f2との間に下記の等式が略成立する
ことを特徴とするアイリス面空間結像制御型画像表示装置。
等式:(1/a)+(1/b)=1/f2
【請求項3】
請求項1又は2のアイリス面空間結像制御型画像表示装置において、
入射角無依存のトップハット的拡散特性を有する内部屈折率分布型の拡散フィルムを一又は複数枚重ねたものをホモジェナイザーとした
ことを特徴とするアイリス面空間結像制御型画像表示装置。
【請求項4】
請求項1、2又は3のアイリス面空間結像制御型画像表示装置において、
前記ホモジェナイザーとしてフライアイレンズ2枚又はレンチキュラーレンズ2枚を互いにレンズの焦点距離だけ離して設置したレンズの組を二組互いに直交させたものを用いた
ことを特徴とするアイリス面空間結像制御型画像表示装置。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4に記載のアイリス面空間結像制御型画像表示装置において、
前記焦点距離f1のレンズの有効径内に複数のホモジェナイザー出力面をアレイ状(一次元又は二次元)に配置されるようにした
ことを特徴とするアイリス面空間結像制御型画像表示装置。
【請求項6】
請求項1、3、4又は5に記載のアイリス面空間結像制御型画像表示装置において、
前記透過型光変調手段が前記レンズ面から前記物体面側に、前記レンズ焦点距離f2以内の距離を置いて設置された
ことを特徴とするアイリス面空間結像制御型画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−25052(P2013−25052A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159423(P2011−159423)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】