説明

アウターロータ型モータ

【課題】軸受ハウジングの加工・材料コストを低減し、組み付け精度、耐久性の良い、アウターロータ型モータを提供する。
【解決手段】軸受ハウジング7は、金属母材をプレス成形により塑性変形して筒状に形成されたハウジング本体部7aの内周面部7bに軸受18が組み付けられ、当該ハウジング本体部7aより外周側に塑性変形により突面部7cが形成され外周側に固定子コア9が組み付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、プリンタ、複写機、DVD駆動装置などのOA機器やシート空調、冷却用ブロワなどの車載機器、プロジェクターなどに用いられるアウターロータ型モータに関する。
【背景技術】
【0002】
アウターロータ型のDCブラシレスモータの一例について説明する。中空筒体状のハウジングはモータベース部に組み付けられ、該ハウジングの内周側に軸受部が組み付けられ、外周部にはモータ基板やステータコアが組み付けられる。マグネットを有するロータは、ロータ軸がハウジング内に挿入された軸受部を介して回転可能に組み付けられている。
【0003】
ハウジングは、金属母材から機械加工するか、ダイカスト等により予め成形された素材を切削加工したものをモータベース部にねじ止め等により固定されて用いられる。また円筒状に絞り加工され、ねじ止めされるものもある(特許文献1参照)。
また、ハウジングの他例として金属ベース材からバーリング加工して一体に形成したもの(特許文献2参照)や、モータケーシングを樹脂成形する際に軸受ハウジングも一体成形するもの(特許文献3参照)などが用いられる。或いは、金属部品と樹脂成形を組み合わせて(インサート、アウトサート)したものなども用いられる。
【特許文献1】特開2003−32987号公報
【特許文献2】特開2004−236390号公報
【特許文献3】実開平6−74059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ハウジングを切削加工で形成する場合、材料が無駄になる(歩留まりが低くなる)課題があり、かつモータベースと接続するための部品コストや加工コストが発生する。また、金属ベース材にバーリング加工等を行なってハウジングを形成するものや単純な円筒形状に絞ったものにおいては、プレス成形により肉厚変化を伴うため及び素材の厚さの制約により固定子内径と軸受外径との寸法設定が難しく、また固定子内径と軸受外径との寸法差が大きいものには採用できない。また、ハウジングをケーシングと共に樹脂成形により一体成形する場合には、温度変化(熱膨張)によりハウジング内外周に組み付けられる部品の固定力が変化し易く、摩耗や変形により耐久性が低い。
【0005】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、薄肉材料を使い、プレス成形により加工コスト低減を図ると共に、固定子内径と軸受外径の寸法差の大きいものにも適用できハウジングの内外に部品が組み付けられてもはめあい寸法精度の影響を受け難い耐久性の高いアウターロータ型モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
内周側にモータ軸を支持する軸受部が組み付けられ外周側に固定子コアが組み付けられる軸受ハウジングを備えたアウターロータ型モータであって、前記軸受ハウジングは、金属母材をプレス成形により塑性変形して筒状に形成されたハウジング本体部の内周面部に軸受部が組み付けられ、当該ハウジング本体部より外周側に塑性変形により突面部が形成され外周側に固定子コアが組み付けられていることを特徴とする。
また、前記軸受ハウジングは、金属板材から筒体状に絞り加工された若しくは金属筒材からプレス成形されたハウジング本体部と当該ハウジング本体部より外周側に塑性変形により突面部が形成されていることを特徴とする。
また、前記ハウジング本体部と固定子コアとの隙間に先端側が挿入され、段付部で固定子コアを支持するコア支持部がケーシングと一体に樹脂成形されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上述したアウターロータ型モータを用いれば、軸受ハウジングは、金属母材をプレス成形により塑性変形して筒状に形成されたハウジング本体部の内周面部に軸受部が組み付けられ、当該ハウジング本体部より外周側に塑性変形により突面部が形成され外周側に固定子コアが組み付けられている。このように、軸受ハウジングが突面部を持つ形状に成形することで固定子内径と軸受外径の寸法差の大きいモータにもプレス成形による突出量で調整できる。また、ハウジング本体部より外周側にプレス成形により突面部を設けることによりその屈曲部の弾性により圧入による応力を吸収できるため寸法公差が緩和できる。また、プレス成形による軸受ハウジングと樹脂成形によるケーシングと組み合わせれば、固定子コアと軸受は軸受ハウジングの内外周面に押圧されて組み付けられるため、同軸度や組立精度及び耐久性の高いアウターロータ型モータを提供することができる。
また、軸受ハウジングは、金属板材から筒体状にプレス金型により絞り加工された若しくは金属筒材からプレス金型により成形されたハウジング本体部と当該ハウジング本体部より外周側に塑性変形により突面部がプレス金型により成形されているので、寸法のばらつきは少なく加工コストも安価に抑えることができる。
また、ハウジング本体部と固定子コアとの隙間に先端側が挿入され、段付部で固定子コアを支持するコア支持部がケーシングと一体に樹脂成形されていると、ケーシングとともに任意の形状に一体成形できるコア支持部により、ハウジング外周に形成される固定子コアとの隙間を埋めつつ位置決めして支持することができ、モータ部品の組み付け性及び組み付け精度が向上する。また、ハウジング本体部とケーシングとの固定は、固定子コアを挟み込んだ状態でハウジング端部を部分的にカシメ等で変形させることにより固定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係るアウターロータ型モータの最良の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。本実施形態では、一例としてアウターロータ型のDCブラシレスモータを用いて説明する。
【0009】
図1を参照して、DCブラシレスモータの概略構成について説明する。
図1において、ロータ1は、インペラ2が円筒状のロータヨーク3と一体にインサート成形されたものが用いられる。インペラ2のハブ4にはモータ軸5が一体に固定されている。ロータヨーク3の内周面には、リング状のマグネット6が固着されている。マグネット6は、周方向にN極とS極とで交互に着磁されている。モータ軸5は固定子側に設けられる軸受ハウジング7に圧入された軸受18により回転可能に支持されている。
【0010】
固定子8は、固定子コア9が金属円筒状の軸受ハウジング7の外周側に嵌め込まれて組み付けられる。固定子コア9は図示しないインシュレータに覆われており、ティース部にモータコイルが巻付けられている。また、モータ駆動回路が設けられたモータ基板10は、ケーシング11に設けられたリブ12や段付部13に支持されてスナップフィット14により組み付けられている。
【0011】
ケーシング11に円筒状に起立形成されたコア支持部15の先端部15aはハウジング本体部7aと固定子コア9との隙間に挿入されており、段付部15bで固定子コア9を支持している。コア支持部15はケーシング11と一体に樹脂成形されている。コア支持部15の底部にはスラストカバー16が組み付けられている。スラストカバー16の凹部にはスラスト受け部17が嵌め込まれ、モータ軸5の軸端部を支持している。スラスト受け部17には、例えばポリエーテルエーテルケトン材などの耐摩耗性を有する低摩擦樹脂材が好適に用いられる。
【0012】
軸受ハウジング7は、内周側にモータ軸5を支持する軸受部(例えば焼結含油軸受、ボールベアリングなど)18が組み付けられ外周側に固定子コア9が組み付けられている。軸受ハウジング7は筒体状のコア支持部15の内周側にハウジング本体部7aが嵌め込まれて組み付けられている。
【0013】
図2(a)(d)において、軸受ハウジング7は、金属筒体状のハウジング本体部7aの内周面部7bに軸受18が圧入、接着などにより組み付けられる(図1参照)。また、ハウジング本体部7aがプレス成形されて複数箇所(本実施例では3箇所;図2(b)(c)(e)参照)で形成された外周側突面部7cに固定子コア9が圧入、接着などにより組み付けられる(図1参照)。
【0014】
このように、軸受ハウジング7に突面部7cを持った形状に成形することで固定子コア9内径と軸受18外径の寸法差の大きいモータにも対応できる。また、ハウジング本体部7aからプレス成形により外周側に突面部7cを設けることにより、その屈曲部の弾性により圧入による応力を吸収することができ寸法公差を緩和することができる。また、プレス成形による軸受ハウジング7と樹脂成形によるケーシング11との組み合わせることにより、固定子コア9と軸受部18は共に軸受ハウジング7の内外周面に押圧されて組み付けられるため、樹脂の柔軟性と自由度の高い成形性(複雑な形状ができる)を活かしつつ、同軸度や組立精度の高いアウターロータ型モータを提供することができる。
【0015】
軸受ハウジング7は、板状の金属材(真鍮、ステンレススチール、電気亜鉛めっき鋼板など)を筒体状に絞り加工したもの或いは筒状の上記金属材を塑性変形させて外周側に複数の突面部7cが形成されたものなどが用いられる。
【0016】
また、軸受ハウジング7としては、図3(a)に示すように金属母材からの小径部(ハウジング本体部)19とこれに連続して大径部20が形成されていてもよい。即ち、小径部19の内周面部19aに軸受部18が組み付けられ、大径部20の外周面部20aに固定子コア9が組み付けられていてもよい。
【0017】
また、軸受ハウジング7としては、図3(b)に示すように金属母材から円筒部(ハウジング本体部)21とこれに連続して折り返し部22が形成されていてもよい。折り返し部22は、例えば板状の金属材から絞り加工により形成される。即ち、円筒部21の内周面部21aに軸受18が組み付けられ、折り返し部22の外周面部22aに固定子コア9が組み付けられていてもよい。
【0018】
上記実施例において、軸受ハウジング7のハウジング本体部7aに設けられる突面部7cは図2(a)のように周方向に複数箇所であってもよいし、図3(a)の大径部20や図3(b)の折り返し部22のように連続面であってもよい。
また、軸受18の軸孔の内径精度が確保できれば、円筒部材を部分的に径方向内側に突出させて突面部とし、軸受18を組み付けるようにしてもよい。この場合には、外周側が基本円筒部(ハウジング本体部)となって固定子コア9が組み付けられる。
また、上記実施例は、DCブラシレスモータを用いて説明したが、ブラシ付モータやACモータなど、他のアウターロータ型モータに用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】アウターロータ型モータの要部の断面説明図である。
【図2】軸受ハウジングの正面図、右側面図、左側面図、矢印A−A断面図、矢印B−B断面図である。
【図3】軸受ハウジングの他例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 ロータ
2 インペラ
3 ロータヨーク
4 ハブ
5 モータ軸
6 マグネット
7 軸受ハウジング
7a ハウジング本体部
7b、19a、21a 内周面部
7c 突面部
8 固定子
9 固定子コア
10 モータ基板
11 ケーシング
12 リブ
13 段付部
14 スナップフィット
15 コア支持部
15a 先端部
15b 段付部
16 スラストカバー
17 スラスト受け部
18 軸受
19 小径部
20 大径部
20a、22a 外周面部
21 円筒部
22 折り返し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周側にモータ軸を支持する軸受部が組み付けられ外周側に固定子コアが組み付けられる軸受ハウジングを備えたアウターロータ型モータであって、
前記軸受ハウジングは、金属母材をプレス成形により塑性変形して筒状に形成されたハウジング本体部の内周面部に軸受部が組み付けられ、当該ハウジング本体部より外周側に塑性変形により突面部が形成され外周側に固定子コアが組み付けられているアウターロータ型モータ。
【請求項2】
前記軸受ハウジングは、金属板材から筒体状に絞り加工された若しくは金属筒材からプレス成形されたハウジング本体部と当該ハウジング本体部より外周側に塑性変形により突面部が形成されている請求項1記載のアウターロータ型モータ。
【請求項3】
前記ハウジング本体部と固定子コアとの隙間に先端側が挿入され、段付部で固定子コアを支持するコア支持部がケーシングと一体に樹脂成形されている請求項1又は2記載のアウターロータ型モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−118625(P2009−118625A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−288204(P2007−288204)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(000106944)シナノケンシ株式会社 (316)
【Fターム(参考)】