説明

アウトガス捕集装置および捕集方法

【課題】真空容器中に発生する極微量のアウトガス成分のみを精度良く効率的に測定するためのアウトガス捕集装置及び捕集方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係るアウトガス捕集装置は、測定対象であるアウトガスを捕集する第1の冷却トラップと、測定対象であるアウトガス以外のガス成分を捕集する第2の冷却トラップとを具備することを特徴とする。また、真空容器内におけるアウトガス捕集方法は、アウトガスの発生前にアウトガス以外のガス成分を第2の冷却トラップで捕集するステップと、アウトガスの発生後にアウトガス成分を第1の冷却トラップで捕集するステップを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウトガス捕集精度を向上させる技術に関する。特に、半導体微細加工技術において、レジスト材料から発生する微量のアウトガスを精度良く分析するためのアウトガス捕集装置及び捕集方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体微細加工技術において、感光性材料であるレジストを露光すると、レジスト材料から微量のアウトガスが発生する。このアウトガスは、高価な露光装置の光学特性を劣化させるなどの問題を生じる原因となる。そのために、アウトガスを分析、評価することは半導体デバイスを製造する上で、重要な課題である。このアウトガスの分析には、微量ガス成分の分析であることから、従来ガスクロマトグラフィなどの分析手法が適用されている。
【0003】
しかし、レジストから発生するアウトガスは極微量であるために、ガスクロマトグラフィにおいてもさらに高感度、かつ高精度の測定手法が求められている。従来から、ガスクロマトグラフィの検出精度を高める方法として、冷却トラップが用いられている。例えば、特許文献1には、第1カラムで十分に分離されなかった画分を冷却トラップにより捕捉し、測定したい成分を効率よく測定するガスクロマトグラフィ技術が開示されている。また、特許文献2には、測定したい微量な成分を冷却トラップで冷却濃縮し、その後加熱して脱離させ測定するガスクロマトグラフィ技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特願平11−248694号公報
【特許文献2】特開平7−318552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えばレジスト由来のアウトガス分析において、測定したいアウトガスの成分や物性が、アウトガス以外のガスの成分や物性と大きく異なる場合は、上記特許文献1又は2に記載の方法が適用できる可能性がある。しかし、特許文献1及び2に記載された構成の冷却トラップをレジスト由来のアウトガス分析に適用しようとしても、アウトガスを精度良く求めることができないという問題が生じる。その理由の1つは、レジストから発生するガスには水(HO)のように、背圧として真空系にもともと存在するガスと同一のガス成分が含まれるからである。
【0006】
つまり、特許文献1に記載された構成の冷却トラップを用いて、背圧中のアウトガス以外の由来成分である水を捕捉除去しようとすると、レジスト由来のアウトガス中の水も捕捉してしまい、レジスト由来のアウトガスを精度良く分析することはできない。即ち、特許文献1に記載の構成でレジスト由来以外のガス成分を捕捉除去しようとしても、本来測定したいレジスト由来のガス成分までも捕捉除去してしまうという問題がある。
【0007】
また、特許文献2に記載された構成の冷却トラップを用いて、レジスト由来のアウトガス中の水のみを捕捉しようとしても、背圧中のレジスト以外の由来成分である水も一緒に捕捉してしまうという問題がある。量的には、アウトガス中の水よりも背圧中の水の方が多いために、この場合も、レジスト由来のアウトガス中の水を精度良く分析することはできない。
【0008】
本発明の課題は、真空容器中に発生する極微量のアウトガス成分のみを精度良く効率的に測定するためのアウトガス捕集装置及び捕集方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、アウトガス捕集の冷却トラップとアウトガス以外のガス成分を捕集するトラップを別々に設けることにより解決される。
【0010】
本発明の第1の視点において、真空容器の内部で発生するアウトガスの捕集装置は、測定対象であるアウトガスを捕集する第1の冷却トラップと、測定対象であるアウトガス以外のガス成分を捕集する第2の冷却トラップとを具備することを特徴とする。これらの冷却トラップ(特に第2の冷却トラップについて)は、複数の冷却トラップを設けることも可能である。
【0011】
アウトガス以外のガス成分を捕集する第2の冷却トラップが、真空容器の内壁と、アウトガスを捕集する第1の冷却トラップとの間に設置されていることが好ましい。
【0012】
アウトガス以外のガス成分を捕集する第2の冷却トラップが、アウトガスを捕集する第1の冷却トラップ全体を取り囲むように構成されていることが好ましい。
【0013】
アウトガスを捕集する第1の冷却トラップの表面積が、アウトガス以外のガス成分を捕集する第2の冷却トラップの内側の表面積に等しいことが好ましい。当然であるが、厳密な意味での等しさを要求するものではない。
【0014】
真空容器内及びアウトガス以外のガス成分を捕集する第2の冷却トラップ内をそれぞれ排気する、独立の排気手段を設ける(即ち差動排気を行う)ことができる。
【0015】
真空容器内及びアウトガス以外のガス成分を捕集する第2の冷却トラップ内をそれぞれ排気する独立の排気手段を設けたことにより、アウトガスを捕集する第1の冷却トラップ近傍の真空度を、アウトガス発生時の真空度のおよそ100分の1のオーダーないしそれ以下に保つことができる。
【0016】
第1の冷却トラップ及び第2の冷却トラップの両方又はいずれか1つがクライオポンプであることが好ましい。
【0017】
上記装置は、半導体微細加工のための露光装置に適用され、アウトガスを捕集する第1のトラップに、露光用試料の露光に必要な孔を有することができる。
【0018】
露光に必要な孔を介して露光させる光学系が集光光学系を有し、露光用試料から見た前記孔の開き角が0.05以上0.2ステラジアン以下、好ましくは0.05以上0.16ステラジアン以下であることが好ましい。
【0019】
露光装置は、13.5nmの波長を含む極紫外光で露光することができる。
【0020】
本発明の第2の視点において、真空容器内におけるアウトガスの捕集方法は、アウトガスの発生前にアウトガス以外のガス成分を第2の冷却トラップで捕集するステップと、アウトガスの発生後にアウトガス成分を第1の冷却トラップで捕集するステップを含むことを特徴とする。
【0021】
第1の冷却トラップ及び第2の冷却トラップの両方又はいずれかを、使用前に焼き出しするステップを含むことができる。
【0022】
第1の冷却トラップ及び第2の冷却トラップの両方又はいずれかがクライオポンプであることができる。
【0023】
真空容器内及びアウトガス以外のガス成分を捕集する第2の冷却トラップ内を排気する差動排気方法を用いることができる。
【0024】
上記方法は、半導体微細加工のための露光装置に適用することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明により、真空容器中に発生する極微量のアウトガス成分のみを精度良く効率的に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
一般に、アウトガス以外のガス成分としては、真空容器の壁に水や、日常、露光して発生し、捕捉しきれずに壁に吸着、残留したアウトガス成分などがある。アウトガス捕集用のトラップを冷却すると、壁から放出されるこれらの成分も同時に吸着されてしまうために、露光中にレジストから発生するアウトガス成分のみを精度良く測定することができない。
【0027】
そこで、真空容器の中央にアウトガス捕集のための冷却トラップ(内部冷却トラップ)を、アウトガス測定試料を囲むように設け、さらに真空容器の壁と内部冷却トラップとの間に、好ましくは内部冷却トラップを外側から取り囲むように、アウトガス以外のガス成分を捕集する外側の冷却トラップ(外部冷却トラップ)を設ける。つまり、二重構造の冷却トラップを設ける。レジスト試料を導入する前に、アウトガス以外のガス成分を捕集する外側のトラップ(外部冷却トラップ)を冷却し、あらかじめ、分析を干渉し測定精度を劣化させる成分を捕集する。これにより、真空容器の内壁からの背圧によるガス成分の干渉を低減することができ、精度良くレジストからのアウトガスのみを測定できる。つまりレジスト試料を導入、露光し、露光中のアウトガス成分のみを内側の冷却トラップ(内部冷却トラップ)で捕捉できる。
【0028】
内部冷却トラップで捕捉したアウトガスをガスクロマトグラフィで測定する場合には、キャリアガスを導入し、内部冷却トラップを加熱し、捕捉されていたアウトガス成分を熱脱離させ、キャリアガスによりアウトガス成分を捕集管へ流し込み、捕集し、ガスクロマトグラフィで測定する。
【0029】
冷却トラップとしては、クライオポンプなどにより冷却制御されたステンレス製の円筒などを用いることができる。アウトガス捕集用の冷却トラップとしては、必要に応じて、レジスト試料からのアウトガス成分を効率よく捕捉するトラップ・ボックス、温度計測のための温度センサー、温度調整用ヒーターなどを設けても良い。アウトガス以外のガス成分を捕集するトラップとしては、捕集効率を高めるために、表面積を大きくしたり、アウトガス以外のガス成分を捕集しやすくしたりする手段を設けても良い。アウトガス以外のガス成分を捕集するには、その発生源の近くに設けると効果が大きい。必要に応じて、2本以上の複数の冷却トラップを設けることもできる。
【0030】
上述の二重構造にする場合には、内部冷却トラップ領域は真空度が悪くなる場合もある。その場合には、差動排気により内部冷却トラップ領域の真空度を高真空に保つことが、高精度のアウトガス測定のために有効である。
【0031】
冷却温度としては、アウトガスを捕集する冷却トラップは、アウトガス成分が捕捉できる温度まで冷却する必要がある。好ましくは、アウトガス成分の凝固点より50度程度、低い温度に設定することが望ましい。
【0032】
アウトガス以外のガス成分を捕集する冷却トラップは、アウトガス成分の凝固点以下にすることが好ましい。より好ましくは、アウトガス成分の凝固点より10度程度、低い温度に設定することが望ましい。
【0033】
二重構造の冷却トラップは、内部冷却トラップ近傍にレジスト試料を設置する場合に有効で、特に、内部が空洞のトラップ・ボックスを内部冷却トラップに熱的に密着させた構造が特に有効である。
【0034】
トラップ・ボックスを用いる場合には、レジストをこのトラップ・ボックス内に設置するために、レジスト試料を露光するための孔を設けねばならない。しかし、孔の口径を大きくすると、露光により発生したレジストがこの孔を介して、外に出てしまい、外側の冷却トラップに捕捉され、測定精度が低下するという欠点がある。したがって、この孔の口径を小さくすることが好ましく、特に、レジストからアウトガスが放出可能な全立体角の1%以内にすることが望ましい。このように小さな孔を介して露光するためには、露光光学系に集光光学系を採用し、集光点をこの孔と一致させることにより効率よくレジストを露光することができる。
【0035】
本発明に係るアウトガス捕集装置及び捕集方法は、このような孔を設けることにより、極紫外光による露光に限らず、他のArFエキシマレーザーのような光や電子線、又はイオン線による露光の場合にも適用できる。また、ArFエキシマレーザー用レジストや電子線用レジスト等からのアウトガスにも加えて、高分子材料や無機材料など他の材料に関しても適用できる。さらに本発明は、半導体リソグラフィ分野に限らず、他のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)や分析分野にも適用できる。さらに本発明は、三重冷却トラップなど、トラップの数を増やしてより高精度に測定することも可能である。
【実施例】
【0036】
(実施例1)
図1は、本発明に係るアウトガス捕集装置の構成の第1の実施例を示す模式図である。真空槽6はバルブ7を介して排気ポンプ8により高真空10−8Paに保持されている。真空槽6の内壁の近傍に外部冷却トラップ1を設置している。この外部冷却トラップ1は、外部冷却トラップ用冷却・加熱機4と熱的に接続しており、外部冷却トラップ1の温度を25Kから580Kまで制御することができる。
【0037】
最初に真空槽6内で外部冷却トラップ用冷却・加熱機4を用いて外部冷却トラップ1を573Kまで加熱し、5時間真空排気して、外部冷却トラップ1に元々吸着していた成分を焼き出した。次に外部冷却トラップ1を173Kまで冷却し、その温度を保持した。
【0038】
一方、他の真空槽で同様に焼き出しを行った内部冷却トラップ2を、その雰囲気を高真空に保ったまま、真空駆動機構12により、外部冷却トラップ1の内部へ導入した。この内部冷却トラップ2は、その内部に空洞部が設けてあり、上部開口部15よりその空洞内に被測定試料(露光用試料)である極紫外光用レジスト試料3を真空駆動機構12により設置してある。この開口部15は、レジスト試料3を露光するための照射孔も兼ねており、レジスト試料3から見た孔の開き角は0.1ステラジアンである。レジスト試料3は真空槽6に導かれた極紫外光11でレジスト試料3を露光することができる位置に設置し、真空駆動機構12により正確にその位置合わせを行った。
【0039】
次に内部冷却トラップ2を173Kに冷却した後、真空槽6に導かれた波長13.5nmの極紫外光11でレジスト試料3を10mJ/cmの露光量で露光した。露光によりレジスト試料3から発生したアウトガスは内部冷却トラップ2に捕捉された。レジスト試料3を真空駆動機構12により真空槽6の外部に出した後、真空槽6に接続するバルブを閉じて密閉状態にした。バルブ9を開けて、キャリアガスを真空槽6へ導入し、真空槽6内部を大気圧にして、1リットル/分の流束で高純度窒素を流した。
【0040】
次に、内部冷却トラップ2を内部冷却トラップ用冷却・加熱機5を用いて、573Kまで加熱した。内部冷却トラップ2に捕捉されたアウトガスは熱脱離され、真空槽6に接続された捕集管10で脱離したアウトガスを捕集した。この捕集管10をガスクロマトグラフィに接続して、ガス分析を行った。その結果、この露光によりレジスト試料3から放出されたアウトガス量は1x1012分子であった。
【0041】
外部冷却トラップ1は、真空槽6の内壁から脱離して内部冷却トラップ2に拡散・吸着するアウトガス以外のガス成分を捕捉し、その割合を低減する役割を果たし、高精度アウトガス測定を可能にしている。
【0042】
外部冷却トラップ用冷却・加熱機4は、外部冷却トラップ1がアウトガス測定に邪魔になるガス成分を効率よく捕捉する冷却温度を制御する役割と、捕捉したガス成分を加熱脱離させて排気ポンプ8で真空排気させる役割を果たし、高精度アウトガス測定を可能にしている。
【0043】
内部冷却トラップ2は、レジスト試料3を露光して生じるアウトガスを効率よく捕捉する役割を果たし、高精度アウトガス測定を可能にしている。内部冷却トラップ用冷却・加熱機5は、内部冷却トラップ2がレジスト試料3からのアウトガスを効率よく捕捉する冷却温度を制御する役割と、捕捉したガス成分を加熱脱離させて、捕集管10へ送る役割を果たし、高精度アウトガス測定を可能にしている。
【0044】
(比較例1)
比較例1として、冷却トラップを全く用いない従来の手法と実施例1との違いを調べた。すなわち、実施例1と比較して、内部冷却トラップ2および外部冷却トラップ1を用いずに、他の操作は実施例1と同様として比較例1とした。その結果、レジスト試料3から放出されたアウトガス量は3x1011分子であった。内部冷却トラップ2および外部冷却トラップ1の有無によるアウトガス量の差は、レジスト試料3から放出されるアウトガスが常温のトラップ・ボックスでは捕捉することができずに、見かけ上、アウトガス量が小さな値となったことがその理由と考えられる。したがって、実施例1の方法により、従来の方法と比較して高い精度でアウトガスを測定できることが示された。
【0045】
(比較例2)
比較例2として、公知の内部冷却トラップ2のみを用いる手法と実施例1との違いを調べた。すなわち、実施例1と比較して、外部冷却トラップ1を用いずに、他の操作は第1の実施例と同様とした。その結果、レジスト試料3から放出されたアウトガス量は5x1012分子であった。外部冷却トラップ1の有無によるアウトガス量の差は、真空槽6の内壁から放出されるガスを内部冷却トラップ2が捕捉したために、見かけ上、アウトガス量が大きな値となったことがその理由と考えられる。したがって、実施例1の方法により、従来と比較して真空槽6の内壁から放出されるガスの影響を排除して高い精度でアウトガス測定が行えることが実証された。
【0046】
(比較例3)
実施例1と比較して、露光に必要な孔の大きさを、試料から見た開き角を0.2ステラジアンに設定したことを除き、実施例1と同様とした。その結果、この露光によりレジスト試料3から放出されたアウトガス量は5x1011分子であった。比較例3では、露光用の孔が大きいために、アウトガスの捕捉効率が悪いことが分かった。即ち、露光用の孔は0.2ステラジアンよりも小さいことが良く、経験的に0.16ステラジアン以下であることが好ましい。ただしあまり小さいと露光に支障が生じるので、0.05ステラジアン程度以上であることが好ましい。
【0047】
(実施例2)
図2は、本発明に係るアウトガス捕集装置の構成の第2の実施例を示す模式図である。図2はボックスタイプでない(内部冷却トラップを囲む二重トラップ構造でない)外部冷却トラップを用いた一例を示すものである。実施例1と比較して、外部冷却トラップ1の代わりに、内部冷却トラップ2の上部にアウトガス以外のガス成分を捕集する冷却トラップ21を設けたことを除き、実施例1と同様にアウトガス量を測定した。その結果、この露光によりレジスト試料3から放出されたアウトガス量は9x1011分子であった。
【0048】
冷却トラップ21を用いる実施例2は、実施例1のような二重構造でないために、実施例1と比較してレジスト試料の出し入れが容易になるという利点がある。その結果、二重構造である実施例1ほどアウトガス以外の成分を捕集することはできないが、従来よりも高精度でアウトガスを測定できることが示された。
【0049】
(実施例3)
図3は本発明に係るアウトガス捕集装置の構成の第3の実施例を示す模式図である。図3は集光光学系を具備した一例を示すものである。実施例1と比較して、集光光学系31を設け、露光用の孔(開口部15)の位置を集光点として、レジスト試料3を露光する極紫外光11の強度を10倍強くした点を除き、第1の実施例と同様とした。その結果、この露光によりレジスト試料3から放出されたアウトガス量は1x1013分子であった。
【0050】
集光光学系31を用いることにより、レジスト露光強度が強くなり、従来より多くのアウトガス量を発生させ、精度良く測定できる利点がある。
【0051】
(実施例4)
図4は本発明に係るアウトガス捕集装置の構成の第4の実施例を示す模式図である。図4は差動排気を具備した一例を示すものである。実施例1と比較して、内部冷却トラップ2の内側を、ポンプ用バルブ41を介して真空に引く排気ポンプ42を設けた点を除き、実施例1と同様とした。その結果、この露光によりレジスト試料3から放出されたアウトガス量は1x1012分子であった。上記差動排気により内部冷却トラップ2部分の真空度は10−8Paであった。アウトガス発生時の内部冷却トラップ2部分の真空度は、排気ポンプ42がない場合は約10−6Pa程度であるから、排気ポンプ42によりさらに100分の1程度の圧力に保たれていたことがわかった。
【0052】
差動排気を用いることにより、内部冷却トラップ部分を高真空に維持できることが示された。これにより装置を汚染することが少なくなるという利点がある。
【0053】
(実施例5)
実施例1と比較して、アウトガス以外のガス成分を捕集するトラップの内側の表面積にほぼ等しい表面積を有する、アウトガス捕集用冷却トラップを設けた点および露光量を0.1mJ/cmと小さくした点を除き、実施例1と同様とした。内側のトラップの表面を凹凸形状にして、外側のトラップと同じ表面積60cmにし、内側トラップの体積は外側のトラップの容積よりも小さいので、二重トラップとして使用できる。その結果、この露光によりレジスト試料3から放出されたアウトガス量は1x1012分子であった。尚、露光時間は2時間であった。
【0054】
アウトガス以外のガス成分を捕集するトラップの内側の表面積にほぼ等しい表面積を有する、アウトガス捕集用冷却トラップを用いることにより、長時間のアウトガス捕集でも精度良く測定できることが示された。
【0055】
(比較例4)
実施例5と比較して、アウトガス以外のガス成分を捕集するトラップの内側の表面積の半分の表面積を有するアウトガス捕集用冷却トラップを設けた点を除き、実施例5と同様とした。その結果、この露光によりレジスト試料3から放出されたアウトガス量は1.1x1012分子であった。内側と外側のトラップの表面積が異なるために、外側のトラップから1x1011分子のアウトガス以外のガス成分も捕集したと考えられる。これより、実施例5で記述したように、長時間の測定の場合には、アウトガス以外のガス成分を捕集するトラップの内側の表面積に等しい表面積を有するアウトガス捕集用冷却トラップを用いることにより高精度のアウトガス捕集ができることが示された。
【0056】
以上、本発明を上記実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態の構成にのみ制限されるものでなく、本発明の範囲内で当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係るアウトガス捕集装置の第1の実施例を示す模式図である。
【図2】本発明に係るアウトガス捕集装置の第2の実施例を示す模式図である。
【図3】本発明に係るアウトガス捕集装置の第3の実施例を示す模式図である。
【図4】本発明に係るアウトガス捕集装置の第4の実施例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0058】
1 外部冷却トラップ
2 内部冷却トラップ
3 レジスト試料
4 外部冷却トラップ用冷却・加熱機
5 内部冷却トラップ用冷却・加熱機
6 真空槽
7 ポンプ用バルブ
8 排気ポンプ
9 キャリアガス導入バルブ
10 捕集管
11 極紫外光
12 真空駆動機構
15 開口部
21 冷却トラップ
31 集光光学系
32 集光された極紫外光
41 ポンプ用バルブ
42 排気ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器の内部で発生するアウトガスの捕集装置であって、
測定対象であるアウトガスを捕集する第1の冷却トラップと、測定対象であるアウトガス以外のガス成分を捕集する第2の冷却トラップとを具備する、アウトガス捕集装置。
【請求項2】
アウトガス以外のガス成分を捕集する前記第2の冷却トラップが、前記真空容器の内壁と、アウトガスを捕集する前記第1の冷却トラップとの間に設置されていることを特徴とする、請求項1に記載のアウトガス捕集装置。
【請求項3】
アウトガス以外のガス成分を捕集する前記第2の冷却トラップが、アウトガスを捕集する前記第1の冷却トラップ全体を取り囲むように構成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のアウトガス捕集装置。
【請求項4】
アウトガスを捕集する前記第1の冷却トラップの表面積が、アウトガス以外のガス成分を捕集する前記第2の冷却トラップの内側の表面積に等しいことを特徴とする、請求項3に記載のアウトガス捕集装置。
【請求項5】
前記真空容器内及びアウトガス以外のガス成分を捕集する前記第2の冷却トラップ内をそれぞれ排気する、独立の排気手段を設けたことを特徴とする、請求項3又は4に記載のアウトガス捕集装置。
【請求項6】
前記真空容器内及びアウトガス以外のガス成分を捕集する前記第2の冷却トラップ内をそれぞれ排気する独立の排気手段を設けたことにより、アウトガスを捕集する前記第1の冷却トラップ近傍の真空度を、アウトガス発生時の真空度の100分の1のオーダー以下に保つことを特徴とする、請求項5に記載のアウトガス捕集装置。
【請求項7】
前記第1の冷却トラップ及び前記第2の冷却トラップの両方又はいずれか1つがクライオポンプであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一に記載のアウトガス捕集装置。
【請求項8】
半導体微細加工のための露光装置に適用され、アウトガスを捕集する前記第1のトラップに、露光用試料の露光に必要な孔を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一に記載のアウトガス捕集装置。
【請求項9】
露光に必要な前記孔を介して露光させる光学系が集光光学系を有し、前記露光用試料から見た前記孔の開き角が0.05以上0.16ステラジアン以下であることを特徴とする、請求項8に記載のアウトガス捕集装置。
【請求項10】
前記露光装置は、13.5nmの波長を含む極紫外光で露光することを特徴とする、請求項8又は9に記載のアウトガス捕集装置。
【請求項11】
真空容器内におけるアウトガスの捕集方法であって、
アウトガスの発生前にアウトガス以外のガス成分を第2の冷却トラップで捕集するステップと、該アウトガスの発生後に該アウトガス成分を第1の冷却トラップで捕集するステップを含むことを特徴とする、アウトガス捕集方法。
【請求項12】
前記第1の冷却トラップ及び前記第2の冷却トラップの両方又はいずれかを、使用前に焼き出しするステップを含むことを特徴とする、請求項11に記載のアウトガス捕集方法。
【請求項13】
前記第1の冷却トラップ及び前記第2の冷却トラップの両方又はいずれかがクライオポンプであることを特徴とする、請求項11又は12に記載のアウトガス捕集方法。
【請求項14】
前記真空容器内及びアウトガス以外のガス成分を捕集する前記第2の冷却トラップ内を排気する差動排気方法を用いることを特徴とする、請求項11〜13のいずれか一に記載のアウトガス捕集方法。
【請求項15】
半導体微細加工のための露光装置に適用されることを特徴とする、請求項11〜14のいずれか一に記載のアウトガス捕集方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−300167(P2009−300167A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153008(P2008−153008)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】