説明

アウトソール及びこのアウトソールを備える靴

【課題】軽量であり、グリップ性及び耐摩耗性に優れたアウトソール及び靴の提供。
【解決手段】本発明のアウトソール1は、接地層17及び非接地層19を備え、かつ実質的に気泡を含まないポリマー組成物からなる積層部15を備えている。積層部15のアウトソール底面全体に対する面積比率が70%以上であり、接地層17の比重が1.00以上1.23以下であり、非接地層19の比重が0.90以上1.13以下であり、接地層17の比重が非接地層19の比重より大きく、接地層17のショアA硬度が55以上95以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフシューズ、テニスシューズ、サッカーシューズ、ジョギングシューズ、トレッキングシューズ、タウンシューズ等の靴と、この靴に用いられるアウトソールに関する。
【背景技術】
【0002】
靴は、アウトソール、アッパー、インソール等から構成されている。通常アウトソールは、ゴムを基材とするポリマー組成物から形成されている。アウトソールは、着地と蹴りとを伴って運動時に地面をグリップする必要がある。特に濡れた地面では滑りやすいため、ウェットグリップ性は重要である。
【0003】
アウトソールは、軽量であることも重要である。アウトソールの重さは靴の重さを左右する。軽い靴は、運動に適しており、履き心地がよい。特開平2−149206号公報には、気泡を含むアウトソールが開示されている。このアウトソールは、気泡を含むため軽量であり、瞬時ストップ性及び防滑性を備えている。
【特許文献1】特開平2−149206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特開平2−149206号公報のアウトソールは、気泡が含まれるので、耐摩耗性が不十分であるという問題がある。
【0005】
また、耐摩耗性に優れるゴム架橋物からなるアウトソールを得るためには、シリカ、カーボンブラック等の補強剤を45〜65phr程度、含有させる必要があるが、この補強剤は比重が大きいため、アウトソールが重くなるという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、軽量であり、グリップ性及び耐摩耗性に優れたアウトソールの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るアウトソールは、地面に当接する接地層、及び該接地層の上側に形成された非接地層を有し、実質的に気泡を含まないポリマー組成物からなる積層部を備えており、
上記積層部のアウトソール底面全体に対する面積比率が70%以上であり、
上記接地層の比重が1.00以上1.23以下であり、
上記非接地層の比重が0.90以上1.13以下であり、
上記接地層の比重が上記非接地層の比重より大きく、
上記接地層のショアA硬度が55以上95以下である。
【0008】
好ましくは、上記接地層及び非接地層それぞれが、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)を含んでなる。
【0009】
本発明に係る靴は、地面に当接する接地層、及び該接地層の上側に形成された非接地層を有し、実質的に気泡を含まないポリマー組成物からなる積層部を備えており、
上記積層部のアウトソール底面全体に対する面積比率が70%以上であり、
上記接地層の比重が1.00以上1.23以下であり、
上記非接地層の比重が0.90以上1.13以下であり、
上記接地層の比重が上記非接地層の比重より大きく、
上記接地層のショアA硬度が55以上95以下であるアウトソール
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアウトソールにおいては、ショアA硬度が所定範囲内であり、耐摩耗性が良好である接地層と、耐摩耗性は必要とされず、該接地層より比重を小さくした非接地層とを備える二層構造からなるので、耐摩耗性に優れ、しかも軽量である。接地層及び非接地層がNBRを含んでなる場合は、ウエットグリップ性に優れ、しかも接地層と非接地層との接着性が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る靴1が示された一部切り欠き正面図であり、図2はその底面図である。この靴1は、アッパー3、ミッドソール5及びアウトソール7を備える。図示されていないが、この靴1はインソールも備える。このアウトソール7は、本体9と多数の突起11とを備えている。突起11は、本体9から下方に向かって突出している。突起11は、本体9と一体的に成形されている。ここで「一体的に成形」とは、本体9と突起11とが分子レベルで結合している状態を意味する。この突起11により、防滑性が付与される。
【0013】
図3は、図2のIII−III線に沿った断面図である。アウトソール7は、実質的に気泡を含まないポリマー組成物からなる積層部15を備える。積層部15は、いわゆるソリッドゴムからなる。ソリッドゴムからなる積層部15は、耐摩耗性及び安定性に優れ、柔軟性を有する。ここで、気泡とは、化学発泡剤の発泡、微小中空球の配合等の手段によって意図的に導入されたものをいう。すなわち、ポリマー組成物の混練工程、成形工程等で意図せず混入したり発生したガスによる、欠陥としての微量の気泡(いわゆる鬆)が存在するものは、「実質的に気泡を含まないポリマー組成物」に含まれる。
【0014】
積層部15は、地面に当接する接地層17と、接地層17のインソール側に形成された非接地層19とを備える。接地層17は、後述するように、比重αは大きいが耐摩耗性に優れる。非接地層19は耐摩耗性が要求されないので、比重βが小さく設定されている。本実施形態のアウトソール7においては、積層部15の接地層17によって、耐摩耗性及びウェットグリップ性が付与され、非接地層19により軽量化が図られている。
【0015】
アウトソール7は、一部に積層構造でない部分を備えてもよい。アウトソール7の底面全体に対する積層部15の面積比率は、70%以上であるのが好ましい。より好ましくは、積層部15の面積比率は75%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。なお、積層部15の面積比率は、アウトソール7の平面投影面積に占める積層部15の平面投影面積である。
【0016】
接地層17の基材ポリマーとして、NBRが含まれるのが好ましい。NBRは、アウトソール7のウェットグリップ性を高める効果を有する。NBRは、比重が0.97から1.00程度とポリマーとしては比重が大きい。NBRの中でも、NBR中の結合アクリロニトリル(AN)量が25%以上43%以下のものがウェットグリップ性に優れている点で好ましい。より好ましくは、結合AN量が31%以上36%以下のNBRである。
【0017】
接地層17の基材ポリマーとして、NBRとともに、VCR、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ニトリル−イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム及び天然ゴムのうちの1種又は2種以上が併用され得る。ここで、VCRとは、高シスポリブタジエンと高結晶性シンジオタクチックポリブタジエンとが複合化されたゴムを意味する。接地層17は、地面と直接摺動する部分なので、耐摩耗性に優れていることが必要である。耐摩耗性が良好に維持される観点から、上記の中でも、VCR、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム及び天然ゴムが、併用される基材ポリマーとして好適である。NBRが全ゴム成分に占める比率は、90質量%以上であるのが好ましい。
【0018】
基材ポリマーとして、ゴムと共に合成樹脂が用いられてもよい。ゴムと合成樹脂とが併用される場合、全基材ポリマーに占めるゴムの比率は、柔軟性の観点から、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上が特に好ましい。柔軟性の観点からは、基材ポリマーとしてゴムのみが用いられることが好ましい。
【0019】
耐摩耗性を高めるために、架橋密度の向上、小径の充填剤の配合等の手段が用いられてもよい。硬度を高めるために接地層17のポリマー組成物には補強充填剤が加えられ得る。一般的に、補強充填剤として無機充填剤のカーボンブラック又はシリカが配合される。これらカーボンブラック及びシリカは、ポリマーに比べて比重が大きい。軽量なアウトソール7を得るという観点から、この補強充填剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して70質量部以下、さらに60質量部以下であるのが好ましい。
【0020】
接地層17の比重を高めることなく適当な硬度を付与するため、樹脂充填剤を併用するのが好ましい。接地層17に、樹脂充填剤が配合されることにより上記補強充填剤の効果が補われる。樹脂充填剤の使用により、カーボンブラック及びシリカの量が低減される。樹脂充填剤は比重が低いので、樹脂充填剤の使用は、アウトソール7の軽量化に寄与する。樹脂充填剤は、比重が1.05以下、さらには1.00以下、さらには0.95以下、さらには0.91以下であるのが、特に好ましい。
【0021】
好ましい樹脂充填剤の具体例としては、ハイスチレン樹脂及びシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンが挙げられる。ハイスチレン樹脂は、スチレン樹脂含有量が60質量%以上のスチレン−ブタジエン共重合体である。また、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンは、ミクロ構造における、1,2結合ビニル成分を90%以上含み、残余成分がシス1,4結合又はトランス1,4結合である樹脂である。
【0022】
上記樹脂充填剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して5質量部以上35質量部以下であるのが好ましい。この配合量が5質量部未満では、硬度が不足する。下限は、10質量部であるのがさらに好ましい。樹脂充填剤の配合量が35質量部を超えると、耐摩耗性が低下しやすい。上限は、30質量部であるのがさらに好ましい。
【0023】
上記接地層17用のポリマー組成物には、硫黄架橋、過酸化物架橋等が適用され得る。上記ポリマー組成物には、その他必要に応じ、軟化剤、シリル化剤、シランカップリング剤、老化防止剤、加硫促進剤、架橋助剤、着色剤等が適量添加される。
【0024】
接地層17のポリマー組成物は、比重αが、1.00以上1.23以下、下限が、好ましくは1.03、さらに好ましくは1.05、上限が、好ましくは1.22、さらに好ましくは1.20とされる。比重αが1.00未満である場合、上記補強充填剤の配合量が少ないことになり、アウトソール7が硬度及び耐摩耗性に劣る。また、比重αが1.23を超えると、アウトソール7が重くなる。
【0025】
接地層17のポリマー組成物は、ショアA硬度が、55以上95以下、下限が、好ましくは65、さらに好ましくは70、上限が、好ましくは90、さらに好ましくは85とされる。ショアA硬度が55未満である場合、アウトソール7が安定性に劣る。補強充填剤が少ないため硬度が低くなっている場合は、耐摩耗性が悪くなる。ショアA硬度が95を超えると、アウトソール7が屈曲性に劣る。ショアA硬度は、厚みが12mmの板状試験片を用い、デュロメーターハードネスタイプAにて、JIS−K−6253に準拠して測定される。
【0026】
積層部15における接地層17の厚みは、本体9及び突起11において1mm以上であるのが好ましい。より好ましくは、1.5mm以上である。接地層17を厚くすると、非接地層19は薄くなる。非接地層19が薄いと、アウトソール7の重量が大きくなる。この観点から、接地層17の厚みは7mm以下であるのが好ましく、6mm以下、さらには4mm以下であるのが好ましい。また、積層部15において、接地層17の厚みは均一でなく、部分的に変えてもよい。例えば、耐摩耗性及びグリップ性が特に求められる突起11において接地層17の厚みを厚くし、他の部分を薄くしてもよい。
【0027】
非接地層19の基材ポリマーとしては、NBRが含まれるのが好ましい。接地層17にNBRが含まれる場合、非接地層19には必須的にNBRが含まれる。NBRは、他のゴム成分との接着性に劣る(極性が異なる)ので、接地層17がNBRを含有する場合は、接地層17と非接地層19との接着性を向上させるため、非接地層19にもNBRを含有させる必要がある。接地層17と同様に、NBRの中でも、NBR中の結合AN量が25%以上43%以下であるのがウェットグリップ性に優れている点で好ましい。より好ましくは、結合AN量が31%以上36%以下のNBRである。
【0028】
非接地層19の基材ポリマーとして、NBRとともに、VCR、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ニトリル−イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム及び天然ゴムのうちの1種又は2種以上が併用され得る。NBRが全ゴム成分に占める比率は、25質量%以上であるのが好ましい。
【0029】
基材ポリマーとして、ゴムと共に合成樹脂が用いられてもよい。ゴムと合成樹脂とが併用される場合、全基材ポリマーに占めるゴムの比率は、柔軟性の観点から、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上が特に好ましい。柔軟性の観点からは、基材ポリマーとしてゴムのみが用いられることが好ましい。
【0030】
非接地層19においては、耐摩耗性は、接地層17に求められるほど必要ではないので、高い硬度は必ずしも要しない。補強充填剤であるカーボンブラック及びシリカが配合される場合、軽量化の観点から、この補強充填剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対し30質量部以下であるのが好ましい。
【0031】
この非接地層19のポリマー組成物には、硫黄架橋が主に適用される。非接地層19には、必要に応じ、軟化剤、シリル化剤、シランカップリング剤、老化防止剤、加硫促進剤、架橋助剤、着色剤等が適量添加される。
【0032】
アウトソール7の軽量化を図るために、耐摩耗性を要しない非接地層19のポリマー組成物の比重βは、接地層17より小さくする。比重βは0.90以上1.13以下、下限が、好ましくは0.92、さらに好ましくは0.93、上限が、好ましくは1.12、さらに好ましくは1.10とされる。比重βを0.90未満にするのは、設計上、困難である。また、比重βが1.13を超えると、アウトソール7が重くなる。
【0033】
接地層17の比重αと非接地層19の比重βとの比α/βは、1.03以上1.20以下、下限が、好ましくは1.05、さらに好ましくは1.08、上限が、好ましくは1.15、さらに好ましくは1.12とされる。α/βが小さい場合、接地層17の比重αが小さくなって耐摩耗性が低下したり、非接地層19の比重βが大きくなってアウトソール7が重くなり、耐摩耗性向上及び軽量化という本発明の目的を十分に達成し得なくなる。また、α/βが大きい場合、接地層17の比重αが大きくなってアウトソール7が重くなり、非接地層19の強度が不十分となり、アウトソール7として必要な強度が保持され難くなる。
【0034】
非接地層19のポリマー組成物は、ショアA硬度が、55以上95以下、下限が、好ましくは65、さらに好ましくは70、上限が、好ましくは90、さらに好ましくは85とされる。ショアA硬度が55未満であると、アウトソール7が安定性に劣る。ショアA硬度が95を超えると、アウトソール7が屈曲性に劣る。
【0035】
非接地層19の厚みは、薄すぎると接地層17が厚くなってアウトソール7が重くなったりする。逆に、非接地層19の厚みが厚すぎると接地層17の厚みが薄くなり、耐摩耗性が低下する。この観点から、非接地層19の厚みは、積層部15の厚みの10%以上65%以下であるのが好ましい。また、積層部15において、非接地層19の厚みは均一でなく、部分的に変えてもよい。
【0036】
アウトソール7の製造においては、まず上型及び下型を備える成形型が準備される。下型の内面には、突起11に対応する凹陥部が設けられている。下型に上記接地層17用のポリマー組成物が充填される。このポリマー組成物が下型の内面形状に沿う形状を有するプレートにより押圧されて、接地層17が予備成形される。この予備成形された接地層17の上に非接地層19用のポリマー組成物が充填される。これらのポリマー組成物が充填された下型に上型が下降して合わせられて、押圧、加熱される。この加熱により、接地層17及び非接地層19のポリマーが架橋反応を起こし、積層部15が形成されるとともにアウトソール7が得られる。
【0037】
図4は、本発明の他の実施形態に係るアウトソール23が示された断面図であり、図5は、このアウトソール23の裏面図である。アウトソール23の本体25には、多数の突起27が設けられている。アウトソール23は、実質的に気泡を含まないポリマー組成物からなる積層部29及び非積層部35を備える。図5において、積層部29が斜線部分で示されている。このアウトソール23においては、積層部29の踵部側後方に非積層部35が連続して設けられている。積層部29は、接地層31と非接地層33とからなり、これらはそれぞれ、上記の接地層17及び非接地層19と同一の組成物からなる。従って、この積層部29は、ウェットグリップ性及び耐摩耗性を有し、しかも軽量化が図られている。非積層部35は、接地層17と同一の組成からなる。踵部分は激しく摩耗するので、耐摩耗性が良好である接地層17と同一成分であり、一層構造の非積層部35として構成されている。積層部29が上記の効果を奏するために、アウトソール23の底面に占める積層部29の面積比率が70%以上であることが必要である。より好ましくは、積層部29の面積比率は75%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。踵部摩耗防止の観点から、積層部29の面積比率の上限は、95%であるのが好ましい。
【実施例】
【0038】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0039】
[ポリマー組成物の調製]
下記の表1に示される配合物を密閉式混練機及びオープンロールで混練し、接地層用として配合番号がA1からA10までのポリマー組成物を得た。また、表2に示される配合物を密閉式混練機及びオープンロールで混練し、非接地層用として配合番号がB1からB3までのポリマー組成物を得た。なお、表1及び表2においては、質量比によって配合量が表されている。表1及び表2には、各ポリマー組成物の比重、ショアA硬度及びアクロン摩耗量も示されている。ショアA硬度は前述の測定方法により測定される。アクロン摩耗量は、JIS−K−6264に規定されたアクロン摩耗試験の「A−2法」に準拠して測定される。この摩耗量の測定では、摩耗輪の厚みが25mmとされ、試験片と摩耗輪との傾き角度が15°とされ、摩耗輪に掛かる荷重が44.1Nとされ、試験片の回転速度が250rpmとされる。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
表1及び表2に示されたポリマー及び添加剤の詳細は、以下の通りである。
* 1 NBR(南帝社の商品名「NANCAR 1052」、AN量:33.0%)
* 2 NBR(日本ゼオン社の商品名「Nipol DN315」、AN量:26.0%)
* 3 VCR(宇部興産社の商品名「UBEPOL VCR617」、SPB量:17.0%)
* 4 IR(日本ゼオン社の商品名「Nipol IR−2200」)
* 5 シンジオタクチックポリブタジエン樹脂(日本合成ゴム社の「RB830」)
* 6 ハイスチレン樹脂(Ameripol Synpol社の商品名「AMERIPOL1904」)
* 7 カーボンブラック(三菱化学社の商品名「ダイアブラックI」)
* 8 シリカ(デグサ社の「ウルトラジルVN3」)
* 9 ポリエチレングリコール(日本油脂社の商品名「PEG4000」)
*10 シランカップリング剤:ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフェン(デグサ社の「Si69」)
*11 ジオクチルフタレート(三建化工社の商品名「DOP」)
*12 老化防止剤(大内新興化学工業社の商品名「サンノックN」)
*13 老化防止剤:2,6-ジ-tert-ブチル-メチルフェノール(大内新興化学工業社の商品名「ノクラック200」)
*14 マイクロバルーン(日本フィライト社の商品名「エクスパンセルDU80」
*15 加硫促進剤:ジベンゾチアジルジスルフィド(大内新興化学工業社の商品名「ノクセラーDM」)
*16 加硫促進剤:テトラエチルチウラムジスルフィド(大内新興化学工業社の商品名「ノクセラーTET」)
*17 加硫促進剤:ジ-o-トリルグアニジン(大内新興化学工業社の商品名「ノクセラーDT」)
*18 加硫促進剤:N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(大内新興化学工業社の商品名「ノクセラーNS」)
【0043】
[実施例1]
前述の成形型の下型に、表1のA1のポリマー組成物を充填し、このポリマー組成物を下型の内面形状に沿う形状を有するプレートにより押圧して、予備成形の接地層を得た。この予備成形の接地層の上に表2のB1のポリマー組成物を充填した。これらのポリマー組成物を充填した成形型の下型に上型を合わせて、押圧、加熱した。この加熱により、接地層及び非接地層のポリマーが架橋反応を起こし、積層部が形成されるとともにアウトソールが得られた。
【0044】
[実施例2〜実施例5]
接地層及び非接地層の配合を表3に示される通りとした他は実施例1と同様にして、各アウトソールを得た。なお、積層部でない部分は、接地層用ポリマー組成物により形成した。
【0045】
[比較例1]
アウトソールに占める積層部の面積比率が60%となるようにした他は実施例1と同様に成形してアウトソールを得た。
【0046】
[比較例2〜比較例6]
接地層及び非接地層の配合を下記の表4に示される通りとした他は実施例1と同様にして、各アウトソールを得た。
【0047】
[比較例7]
積層部を備えず、接地層用のポリマー組成物A10のみを用いて成形してアウトソールを得た。
【0048】
【表3】

【0049】
【表4】

【0050】
[評価]
[耐摩耗性]
アスファルトコンクリートからなる地面にアウトソールを置き、このアウトソールの上に10kgの錘を載置して、アウトソールを引きずった。こうして、50cmの距離を100往復した段階でのアウトソールの体積を測定し、引きずる前の体積との差を算出した。この結果が、上記の表3及び表4に示されている。
【0051】
[ウェットグリップ性の評価]
アウトソールにミッドソール及びアッパーを取り付けて、ゴルフ靴を得た。このゴルフ靴をゴルファーに着用させ、濡れた芝生及び路面で歩行及びゴルフボールの打撃を行わせた。そして、靴の滑りについて滑りにくいものを「5」とし、滑りやすいものを「1」として5段階で格付けさせた。10名のゴルファーの評価点の平均が表3及び表4に示されている。
【0052】
[安定性、屈曲性及び軽量性]
上記ウェットグリップ性の評価と同様に10名のテスターに靴を着用させて、歩き易さ、運動時の実用性について格付けさせた。安定性、屈曲性及び軽量性を評価項目として評価させて平均値が表3及び表4に示されている。数値が大きい方が、運動に伴う安定性が高く、足に沿う屈曲性がよいこと及び靴が軽く感じられることを示している。
【0053】
表3及び表4に示されるように、比較例1のアウトソールが装着された靴は、積層部の面積比率が小さいので、重い。比較例2の靴は、接地層のショアA硬度が小さいので、安定性が悪い。比較例3の靴は、接地層のショアA硬度が大きく、屈曲性が悪い。比較例4は、接地層の耐摩耗性が悪く、アウトソール全体として耐摩耗性が悪い。また、靴のウエットグリップ性も悪い。比較例5の靴は、接地層及び非接地層の比重が大きく、重い。比較例6の靴は、非接地層の比重が大きく、重い。比較例7の靴は、アウトソールが接地層の成分からなる一層構造であり、比重が大きく、重い。実施例のアウトソール、及び該アウトソールが装着された靴においては、比較例のアウトソール、及び該アウトソールが装着された靴に比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。なお、実施例5においては、接地層及び非接地層にNBRが配合されていないので、ウエットグリップ性が悪い。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、ゴルフシューズ、テニスシューズ、ウォーキングシューズ、ジョギングシューズ、トレッキングシューズ、婦人靴、紳士靴等に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る靴が示された一部切り欠き正面図である。
【図2】図2は、図1の靴の底面図である。
【図3】図3は、図2のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図4は、本発明の他の実施形態に係るアウトソールが示された断面図である。
【図5】図5は、図4のアウトソールが示された底面図である。
【符号の説明】
【0056】
1・・・靴
3・・・アッパー
5・・・ミッドソール
7、23・・・アウトソール
9、25・・・本体
11、27・・・突起
15、29・・・積層部
17、31・・・接地層
19、33・・・非接地層
35・・・非積層部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に当接する接地層、及び該接地層の上側に形成された非接地層を有し、実質的に気泡を含まないポリマー組成物からなる積層部を備えており、
上記積層部のアウトソール底面全体に対する面積比率が70%以上であり、
上記接地層の比重が1.00以上1.23以下であり、
上記非接地層の比重が0.90以上1.13以下であり、
上記接地層の比重が上記非接地層の比重より大きく、
上記接地層のショアA硬度が55以上95以下であるアウトソール。
【請求項2】
上記接地層及び非接地層それぞれが、アクリロニトリル−ブタジエンゴムを含んでなる請求項1に記載のアウトソール。
【請求項3】
地面に当接する接地層、及び該接地層の上側に形成された非接地層を有し、実質的に気泡を含まないポリマー組成物からなる積層部を備えており、
上記積層部のアウトソール底面全体に対する面積比率が70%以上であり、
上記接地層の比重が1.00以上1.23以下であり、
上記非接地層の比重が0.90以上1.13以下であり、
上記接地層の比重が上記非接地層の比重より大きく、
上記接地層のショアA硬度が55以上95以下であるアウトソール
を備える靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−29320(P2007−29320A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−215237(P2005−215237)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(504017809)SRIスポーツ株式会社 (701)
【Fターム(参考)】