説明

アキュムレータ

【課題】ベローズ伸縮作動時の耐久性を確保するベローズ構造を備えるアキュムレータを提供する。
【解決手段】機器の圧力配管に接続されるオイルポートを備えるアキュムレータハウジングと、ハウジング内部に組み込まれてハウジング内部空間をオイルポートに連通する液体室および高圧ガスを封入する気体室に仕切る金属ベローズおよびベローズキャップとを有し、金属ベローズは、その外径側山部、内径側谷部ならびに山部および谷部を連結する斜辺部を軸方向に繰り返し備える構造のアキュムレータにおいて、金属ベローズ6は、山部6aおよび谷部6bの断面形状をそれぞれアール形状に形成されるとともに斜辺部6cの断面形状をアール形状もしくは波形状に形成され、斜辺部は、その展開長が長くベローズ伸縮時に弾性変形しやすいことにより、山部および谷部の変形量を低減させる構造を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄圧装置または脈圧減衰装置等として用いられるアキュムレータに関するものである。本発明のアキュムレータは例えば、自動車等車両のブレーキシステムにおける油圧配管等に用いられる。
【背景技術】
【0002】
金属ベローズ型アキュムレータにおいて、現行のU字ベローズに対しベローズの耐久性を向上させるため、本願出願人は先に図4に示す金属ベローズ51を備えるアキュムレータを提案している(特許文献1参照)。図4(A)はこの金属ベローズ51の自由長状態の要部断面図、図4(B)は同ベローズ51の収縮状態の要部断面図を示し、いずれも図の右側が外径側、図の左側が内径側とされている。
【0003】
しかして、この先行技術は、ベローズ自由長時および伸長時に山部51aおよび谷部51bは断面U字形状を呈し、ベローズ圧縮時に山部51aはU字のアールが変化してヘアピン形状を形成するものであって、ベローズ耐久性の向上に有効な手段であるが、以下の点において実現性が小さいものとも考えられる。
【0004】
すなわち、上記ベローズ51は金属製のため、その実作動において、ベローズ伸縮に伴う山部51aおよび谷部51bのアールの変化はごく僅かであると考えられる。したがって上記ベローズ51によると、ゼロダウン時の差圧に対する耐久性は優れるが、ベローズ伸縮に伴って山部51aおよび谷部51bのアールが大きく変化する場合には、伸縮に伴う山部51aおよび谷部51bのアールの応力振幅が大きくなり、よってゼロダウン作動もしくは通常作動でのベローズ耐久性の低下が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−192290号公報(図2および図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の点に鑑みて、上記先行技術の有利な点を継承しつつ、ベローズ伸縮作動時の耐久性も確保できるベローズ構造を備えるアキュムレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1によるアキュムレータは、機器の圧力配管に接続されるオイルポートを備えるアキュムレータハウジングと、前記ハウジングの内部に組み込まれて前記ハウジングの内部空間を前記オイルポートに連通する液体室および高圧ガスを封入する気体室に仕切る金属ベローズおよびベローズキャップとを有し、前記金属ベローズは、その外径側山部、内径側谷部ならびに前記山部および谷部を連結する斜辺部を軸方向に繰り返し備える構造のアキュムレータにおいて、前記金属ベローズは、前記山部および谷部の断面形状をそれぞれアール形状に形成されるとともに前記斜辺部の断面形状をアール形状もしくは波形状に形成され、前記断面形状をアール形状もしくは波形状に形成された斜辺部は、その展開長が長くベローズ伸縮時に弾性変形しやすいことにより、前記山部および谷部の変形量を低減させる構造を有することを特徴とする。
【0008】
上記図4に示した先行技術においては、ベローズ51の山部51aおよび谷部51bの断面形状がそれぞれアール形状に形成されているが、斜辺部51cの断面形状が直線形状に形成されているために、この斜辺部51cの展開長(膜長)が短く展開長(膜長)に余裕がない状態となっている。これに対し本発明では、ベローズの山部および谷部の断面形状がそれぞれアール形状に形成されるとともに斜辺部の断面形状がアール形状もしくは波形状に形成されているため、斜辺部の展開長(膜長)が長く展開長(膜長)に余裕が生じ、特にベローズ伸長時の山部および谷部の距離変化は斜辺部の変形が担い、山部および谷部のアールの変化がなくても伸縮動作が可能となる。したがってこのような構造のベローズによれば、ゼロダウン時の差圧に対する耐久性と、ゼロダウン作動もしくは通常作動における耐久性を併せ持つことが可能となる。
【0009】
尚、アール形状もしくは波形状とは、斜辺部の断面形状が直線形状ではなく曲線形状であるとするものであって、アール形状としては曲線による山なり状の湾曲部が一つのもの、波形状としては曲線による山なり状の湾曲部が複数のものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0011】
すなわち、上記したように本発明によれば、斜辺部の断面形状がアール形状もしくは波形状に形成されて斜辺部の展開長(膜長)が長く展開長(膜長)に余裕が設定されているため、斜辺部が変形しやすく、よってこの分、山部および谷部の負担が軽減されることになる。したがってベローズ伸縮作動時の耐久性を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例に係るアキュムレータの全体断面図
【図2】(A)は同アキュムレータに備えられる金属ベローズの自由長状態の要部断面図、(B)は同ベローズの収縮状態の要部断面図
【図3】金属ベローズについて他の実施例を示す図であって、(A)は同金属ベローズの自由長状態の要部断面図、(B)は同ベローズの収縮状態の要部断面図
【図4】金属ベローズについて従来例(先行技術)を示す図であって、(A)は同金属ベローズの自由長状態の要部断面図、(B)は同ベローズの収縮状態の要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明には、以下の実施形態が含まれる。
(1)本発明は、上記先行技術をベースに、山と谷部に連通する斜辺部の形状をRもしくは波形としたものである。具体的には、上記先行技術によるヘアピンベローズの斜辺部はほぼ直線であるのに対し、本発明の斜辺部はRもしくは波形とすることにより、斜辺部の展開長(膜長)に余裕が生じ、特にベローズ伸長時の山および谷部の距離変化は斜辺部の変形が担い、山および谷部Rの変形がなくても伸縮動作が可能となる。したがって、かかる構成のベローズであれば、ゼロダウン時の差圧に対する耐久性と、ゼロダウン作動もしくは通常作動における耐久性を併せ持つことが可能となり、上記先行技術の有利な点を継承しつつ、ベローズ伸縮作動時の耐久性も確保できる。
【0014】
(2)シェルと、前記シェル内に配置され、一端が前記シェルに固着され、他端がベローズキャップにより塞がれることにより前記シェルの内部を気体室と液体室とに分離している金属ベローズと、前記液体室に液体を導入する導入孔を取り囲むように配置され、気体室と導入孔とに分離するオイルポートと、前記金属ベローズの収縮限度を規定するステーと、前記オイルポートと前記キャップとの間に配置され、前記液体室と前記導入孔との間をシールするシール手段とよりなる金属ベローズ型アキュムレータにおいて、前記金属ベローズの長手方向の断面形状に関して、山、谷部はR形状を有し、かつ山と谷部を連通する斜辺部はRもしくは波形の形状を有している金属ベローズが具備されていることを特徴とする金属ベローズ型アキュムレータ。
(3)前記金属ベローズが収縮し、前記ベローズキャップが前記ステーに当接した際は、前記金属ベローズの斜辺部同士が面接触することを特徴とする金属ベローズを具備したアキュムレータ。
【0015】
(4)金属ベローズにおいて、長手方向の断面形状が、山、谷部はR形状を有し、かつ山と谷部を連通する斜辺部は、Rもしくは波形の形状を有している。かかるベローズが収縮し、ベローズキャップがステーに当接した際は、ベローズの斜辺部同士が面接触する。そのため、ゼロダウン時に差圧が発生した際も、ベローズの応力が斜辺の面に分散されるため、差圧時の耐久性が向上する。
(5)前記金属ベローズが伸長した際は、山、谷部の距離変化をベローズの斜辺部が吸収し、前記山、谷部Rの変化がないため、ベローズ伸縮動作に対する耐久性も確保される。
【0016】
(6)上記先行技術に係るベローズ51は、以下の構成を有している。
(イ)軸方向断面形状がU字形の外径側山部51aおよび内径側谷部51bを有する。
(ロ)アキュムレータのベローズキャップがオイルポートに当接した後、更に液体室の圧力が低下したとき、金属ベローズ同士に面接触部分が形成されるとともに外径側山部51aのU字型部分の曲率半径が縮小しヘアピン形状になる。
(ハ)またこのとき、内径側谷部51bのU字型部分の曲率半径が拡大することもある。
(ニ)斜辺部51cの断面形状は直線形状とされている。
したがってこの先行技術対比で本発明は、(イ)ないし(ハ)はそのままで、(ニ)の代わりとして、斜辺部の断面形状をアール形状もしくは波形状としたものである。
【実施例】
【0017】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施例に係るアキュムレータ1を示している。当該実施例に係るアキュムレータ1は、ベローズ6として金属ベローズを用いる金属ベローズ型アキュムレータであって、以下のように構成されている。
【0019】
すなわち、図示しない機器の圧力配管に接続されるオイルポート3を備えるアキュムレータハウジング2が設けられており、このハウジング2の内部に金属ベローズ6およびベローズキャップ7が配置されてハウジング2の内部空間が、オイルポート3のポート穴(液体導入孔)3aに連通する液体室(液室)8と、高圧ガス(例えば窒素ガス)を封入する気体室(ガス室)9とに仕切られている。ハウジング2としては有底円筒状のシェル4と、このシェル4の一端開口部に固定(溶接)されたオイルポート3とを組み合わせたものとされているが、ハウジング2の部品割り構造は特に限定されるものではなく、例えばシェル4とオイルポート3は一体であっても良く、シェル4の底部はシェル4と別体のエンドカバーであっても良く、何れにしてもシェル4の底部またはこれに相当する部品には、気体室9に気体(ガス)を注入するための注入口4aが設けられ、注入後、プラグ5で閉じられている。ハウジング2内すなわち液体室8にはオイルポート3のポート穴3aを通じて圧力配管側の液体(圧油)が出入りする。
【0020】
金属ベローズ6としては、その固定端(下端)がハウジング2のポート側内面であるオイルポート3の内面に固定(溶接)されるとともにその遊動端(上端)に円板状のベローズキャップ7が固定(溶接)され、よって当該アキュムレータ1はベローズ6の外周側に気体室9が配置されるとともにベローズ6の内周側に液体室8が配置される外ガスタイプのアキュムレータとされている。ベローズキャップ7の外周部には、ハウジング2の内面に対しベローズ6およびベローズキャップ7が直接接触しないように制振リング10が取り付けられているが、この制振リング10はシール作用を奏さず、よって高圧ガスを上下に通過させるものである。符号11はプロテクションリングである。金属ベローズ6の詳細については後述する。
【0021】
オイルポート3の内面上に内部台座としてのステー12が配置され、このステー12の外周側に位置してこのステー12とシェル4との間に上記ベローズ6が配置されている。ステー12はその筒状部の一端(上端)に径方向内方へ向けて段差部および端面部を一体成形したものであって、筒状部の他端(下端)をもってオイルポート3の内面に固定(溶接)されている。端面部の中央には貫通穴状の液体出入口12aが設けられている。ステー12はオイルポート3に対し一体に成形されたものであっても良い。
【0022】
ベローズキャップ7におけるステー12側の面(下面)に、ガスケットホルダ13が固定されている。このガスケットホルダ13はその筒状部の一端(下端)に径方向内方へ向けてフランジ部を一体成形したものであって、筒状部の他端(上端)をもってベローズキャップ7におけるステー12側の面(下面)に設けた凹部の周縁部に固定(嵌合)されている。
【0023】
ガスケットホルダ13の内周側に、円板状のガスケット14が浮遊可能な状態で保持されている。ここに浮遊可能な状態で保持されているとは、円板状ガスケット14がガスケットホルダ13およびこれを固定したベローズキャップ7に対して軸方向(ベローズ6の伸縮方向)に変位可能な状態で保持されていることを云い、ガスケット14はガスケットホルダ13のフランジ部に係合して抜け止めされているので、このフランジ部とベローズキャップ7との間で軸方向に変位可能とされている。
【0024】
また、円板状ガスケット14は、金属または硬質樹脂等よりなる円板状の剛性プレート15の表面にゴム等よりなる弾性体16を被着したものであって、この表面に被着した弾性体16によって、ガスケット14のステー12側の面(下面)に、ステー12の端面部に接離自在に当接して当接時に液体室(ベローズ6の内側であってかつステー12の外側の空間)8および液体出入口12a間をシールし、液体室8を閉塞する突起状のシール部17が形成され、一方、ガスケット14のベローズキャップ7側の面(上面)に、ベローズキャップ7に接離自在に当接して当接時にガスケット14およびベローズキャップ7間に微小な軸方向間隙(図示せず)を設定するための同じく突起状のスペーサ部(図示せず)が形成されている。尚、後者のスペーサ部によってガスケット14およびベローズキャップ7間に間隙を設定するのは、液体室8の閉塞時、この閉塞した液体室8に閉じ込められた液体が熱膨張したときに、この液体がガスケット14およびベローズキャップ7間に浸入しやすくするためである(スペーサ部が設けられていないと、ガスケット14およびベローズキャップ7が互いに密着した状態となり、密着した状態であると液体が熱膨張したときに液体が両者間に浸入しにくい。したがって後述するガスケット14がステー12の端面部に当接したままの状態でベローズキャップ7のみが軸方向移動すると云う作動が生じにくくなる)。
【0025】
シール部17は、所定の軸方向高さおよび径方向幅を備える環状の突起として形成されており、環状であるので、ステー12の端面部に当接したときにシール作用を奏して液体室8を閉塞する。一方、スペーサ部は、所定の高さおよび径方向幅を有する環状の突起として形成されているが、円周上一部に切欠部が所要数設けられており、よって環状のままではないので、ベローズキャップ7に当接してもシール作用を奏さない。したがってガスケット14がそのシール部17でステー12の端面部に当接した状態で、ガスケット14におけるベローズキャップ7側の面の受圧面積はステー12側の面の受圧面積よりも大きく設定されている。
【0026】
また、ガスケットホルダ13のフランジ部とガスケット14との間には、ガスケット14をベローズキャップ7に押し付ける方向に弾性付勢する復帰バネ手段としてウェーブ状のスプリング18が介装されている。
【0027】
つぎに、上記アキュムレータ1の作動を説明する。
【0028】
(1)定常作動時・・・
上記したように当該アキュムレータ1はオイルポート3のポート穴3aをもって図示しない機器の圧力配管に接続される。当該アキュムレータ1の定常作動時、円板状ガスケット14はガスケットホルダ13に保持された状態でベローズキャップ7とともに移動することによりステー12の端面部から離れているので、ステー12の端面部に設けられた液体出入口12aは開いている。したがってこの液体出入口12aを通してオイルポート3のポート穴3aと液体室8とが連通し、ポート穴3aから液体室8へそのときどきの圧力を備えた液体が随時導入されるので、ベローズキャップ7がガスケット14とともに液体圧および気体圧が均衡するように随時移動する。
【0029】
(2)圧力配管の圧力低下時(所謂ゼロダウン時)・・・
上記(1)の定常作動時の状態から、機器の運転が停止する等して圧力配管の圧力が極端に低下し気体室9の圧力を下回る状態(所謂ゼロダウン状態)になると、液体室8内の液体が液体出入口12aおよびポート穴3aから配管側へ徐々に排出され、ベローズキャップ7がステー12に近付く方向(下方)へ移動し、ベローズキャップ7に保持されたガスケット14がそのシール部17でステー12の端面部に当接して停止し、液体室8を閉塞する。したがって閉塞された液体室8に一部の液体が閉じ込められ、この閉じ込められた液体の圧力と気体室9に封入された気体の圧力とが均衡するので、ベローズ6内外に大きな差圧が発生せず、ベローズ6に過大な応力が作用せず、よってベローズ6に塑性変形(異常変形や破損)が発生するのが抑制される。
【0030】
(3)熱膨張時・・・
上記(2)の状態すなわちガスケット14によって液体室8が閉塞された状態で、雰囲気温度の上昇等によって液体室8に閉じ込められた液体および気体室9に封入された気体が熱膨張すると、液体のほうが熱膨張量が大きいので、この熱膨張による高圧を受けてベローズキャップ7がステー12から離れる方向(上方)へ移動し、液体室8の容積が拡大し、液体室8の圧力が低下する。したがってベローズ6内外の液体圧および気体圧が均衡し続けるので、ベローズ6内外に大きな差圧が発生せず、ベローズ6に過大な応力が作用せず、よってベローズ6に塑性変形が発生するのが抑制される。尚、このとき、ガスケット14はその両面における受圧面積の差によりシール部17がステー12の端面部に当接したままで移動しない。したがって液体室8は閉塞されたままとされている。
【0031】
(4)圧力配管の圧力低下の解消時・・・
上記(2)の状態が解消されてオイルポート3のポート穴3aから液体が流入すると、この液体の圧力がガスケット14に作用してガスケット14をステー12から離れる方向(上方)へ移動させる。したがってシール部17がステー12の端面部から離れて上記(1)の状態に復することになる。
【0032】
つぎに、上記金属ベローズ6の詳細について説明する。
【0033】
図2(A)は、上記アキュムレータ1に備えられる金属ベローズ6の自由長状態の要部断面図、図2(B)は同金属ベローズ6の収縮状態の要部断面図をそれぞれ示しており、いずれも図の右側が外径側すなわち気体室9側、図の左側が内径側すなわち液体室8側とされている。
【0034】
上記金属ベローズ6は、その外径側山部6a、内径側谷部6b、ならびに山部6aおよび谷部6bを連結する斜辺部6cを備える1ピッチ分の形状が軸方向に繰り返される構造とされている。そして、山部6aおよび谷部6bの断面形状がそれぞれアール形状(円弧形状)に形成されるとともに、斜辺部6cの断面形状が山なり状の湾曲部を単数備えるアール形状(円弧形状)に形成されており、後者の断面形状をアール形状に形成された斜辺部6cが、これが断面直線形状である場合と比較して、展開長(膜長)が長く、よって展開長(膜長)に余裕が設定されて弾性変形しやすいことにより、ベローズ6の伸縮時、山部6aおよび谷部6bの変形量を低減させることができる構造とされている。
【0035】
また、図2(A)に示すように自由長状態において、斜辺部6c同士は互いに離れており、これが収縮すると図2(B)に示すように、一つの山部6aに連結された斜辺部6c同士がアール形状のままで互いに面接触する。
【0036】
また、図2(A)に示すように自由長状態において、山部6aおよび谷部6bは断面U字形状であり、これが収縮すると図2(B)に示すように、一つの山部6aに連結された斜辺部6c同士が互いに面接触する結果として、断面ヘアピン形状(Uの字の両端が互いに接近して接触し閉塞した形状)に変形する。
【0037】
更にまた、上記したように山部6aおよび谷部6bの断面形状がそれぞれアール形状に形成されるとともに斜辺部6cの断面形状がアール形状に形成されているので、このベローズ6は断面直線形状の部位をまったく有していない。
【0038】
図3(A)は、他の実施例に係る金属ベローズ6の自由長状態の要部断面図、図3(B)は同金属ベローズ6の収縮状態の要部断面図をそれぞれ示しており、いずれも図の右側が外径側すなわち気体室9側、図の左側が内径側すなわち液体室8側とされている。
【0039】
上記金属ベローズ6は、その外径側山部6a、内径側谷部6b、ならびに山部6aおよび谷部6bを連結する斜辺部6cを備える1ピッチ分の形状が軸方向に繰り返される構造とされている。そして、山部6aおよび谷部6bの断面形状がそれぞれアール形状(円弧形状)に形成されるとともに、斜辺部6cの断面形状が山なり状の湾曲部を複数備える波形状(蛇行線形状)に形成されており、後者の断面形状を波形状に形成された斜辺部6cが、これが断面直線形状である場合と比較して、展開長(膜長)が長く、よって展開長(膜長)に余裕が設定されて弾性変形しやすいことにより、ベローズ6の伸縮時、山部6aおよび谷部6bの変形量を低減させることができる構造とされている。
【0040】
また、図3(A)に示すように自由長状態において、斜辺部6c同士は互いに離れており、これが収縮すると図3(B)に示すように、一つの山部6aに連結された斜辺部6c同士が波形状のままで互いに面接触する。
【0041】
また、図3(A)に示すように自由長状態において、山部6aおよび谷部6bは断面U字形状であり、これが収縮すると図3(B)に示すように、一つの山部6aに連結された斜辺部6c同士が互いに面接触する結果として、断面ヘアピン形状(Uの字の両端が互いに接近して接触し閉塞した形状)に変形する。
【0042】
更にまた、上記したように山部6aおよび谷部6bの断面形状がそれぞれアール形状に形成されるとともに斜辺部6cの断面形状が波形状に形成されているので、このベローズ6は断面直線形状の部位をまったく有していない。
【0043】
上記図2または図3の構成のベローズ6が収縮し、ベローズキャップ7およびガスケット14がステー12に当接すると、図2(B)または図3(B)に示すように、断面形状をアール形状もしくは波形状に形成された斜辺部6c同士が面接触する。そのため、ゼロダウン時にベローズ6内外に差圧が発生してもベローズ6の応力が斜辺部6cに分散されるため、差圧発生時におけるベローズ6の耐久性が向上する。
【0044】
また、ベローズ6が伸長した際には、山部6aおよび谷部6bの軸方向変位を斜辺部6cが変形することにより吸収し、山部6aおよび谷部6bはあまり変形しないために、ベローズ6伸縮動作に対する耐久性が確保される。
【0045】
尚、上記実施例で説明したアキュムレータ1の構造は、単なる一例であってこれに限定されるものではない。例えばアキュムレータ1は、ベローズ6の内周側に気体室9が配置されるとともにベローズ6の外周側に液体室8が配置される内ガスタイプのアキュムレータであっても良い。またアキュムレータ1は、ガスケット14、ガスケットホルダ13および復帰バネ手段等よりなる液体室圧力調整機構を備えないものであっても良い。
【0046】
更にまた、上記ベローズ6についてはこれを以下のように表現することができる。
【0047】
すなわち、機器の圧力配管に接続されるオイルポート3を備えるアキュムレータハウジング2と、前記ハウジング2の内部に組み込まれて前記ハウジング2の内部空間を前記オイルポート3に連通する液体室8および高圧ガスを封入する気体室9に仕切る金属ベローズ6およびベローズキャップ7とを有するアキュムレータ1に用いられる金属ベローズ6であって、外径側山部6a、内径側谷部6bならびに前記山部6aおよび谷部6bを連結する斜辺部6cを軸方向に繰り返し備える構造の金属ベローズ6において、前記山部6aおよび谷部6bの断面形状をそれぞれアール形状に形成されるとともに前記斜辺部6cの断面形状をアール形状もしくは波形状に形成され、前記断面形状をアール形状もしくは波形状に形成された斜辺部6cは、その展開長が長くベローズ伸縮時に弾性変形しやすいことにより、前記山部6aおよび谷部6bの変形量を低減させる構造を有している。
【符号の説明】
【0048】
1 アキュムレータ
2 ハウジング
3 オイルポート
3a ポート穴
4 シェル
4a 注入口
5 プラグ
6 ベローズ
6a 山部
6b 谷部
6c 斜辺部
7 ベローズキャップ
8 液体室
9 気体室
10 制振リング
11 プロテクションリング
12 ステー
12a 液体出入口
13 ガスケットホルダ
14 ガスケット
15 剛性プレート
16 弾性体
17 シール部
18 スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器の圧力配管に接続されるオイルポートを備えるアキュムレータハウジングと、前記ハウジングの内部に組み込まれて前記ハウジングの内部空間を前記オイルポートに連通する液体室および高圧ガスを封入する気体室に仕切る金属ベローズおよびベローズキャップとを有し、前記金属ベローズは、その外径側山部、内径側谷部ならびに前記山部および谷部を連結する斜辺部を軸方向に繰り返し備える構造のアキュムレータにおいて、
前記金属ベローズは、前記山部および谷部の断面形状をそれぞれアール形状に形成されるとともに前記斜辺部の断面形状をアール形状もしくは波形状に形成され、前記断面形状をアール形状もしくは波形状に形成された斜辺部は、その展開長が長くベローズ伸縮時に弾性変形しやすいことにより、前記山部および谷部の変形量を低減させる構造を有することを特徴とするアキュムレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−167748(P2012−167748A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29594(P2011−29594)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】