説明

アクセサリ、カメラボディ、およびカメラシステム

【課題】アクセサリのファームウェアをアップグレードしているとき、アクセサリが正常にアップロードされていることをカメラボディへ通知する。
【解決手段】カメラシステム1は、カメラボディ100と、カメラボディ100に着脱可能に装着されるアクセサリの一つである交換レンズ200とを備える。ボディ側接点からレンズ側接点へアップグレード用データが送信される。交換レンズ200は、フラッシュメモリ215にファームウェアを記憶しており、アップグレード用データに基づいてファームウェアをアップグレードする。アップグレード中、交換レンズ200の動作状況に関するステータスデータがレンズ側接点からボディ側接点へ送信される。カメラボディ100は、交換レンズ200の動作状況に関するステータスデータに基づいて、交換レンズ200が正常動作しているか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセサリ、カメラボディ、およびカメラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交換レンズのようなカメラボディに着脱可能に装着されるアクセサリには個別にファームウェアが組み込まれ種々の制御が行われるようになっている。このようなアクセサリでは、機能拡張等のためファームウェアをアップグレードする必要性が生じている。
【0003】
通信回線を介して外部機器から取得したデータに基づいて、ファームウェアをアップロードする電子機器が知られている(たとえば、特許文献1)。特許文献1に記載されている電子機器(電話機)は、通信回線を介して取得したデータの正常性を確認し、正常性が確認されなかったときは異常通知を行い、外部機器に対してデータの再送信を要求する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−142713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の発明では、アップグレード用データの正常性について確認した結果を外部機器へ通知しているが、そのデータを使用したアップグレード中の電子機器の動作状況の正常性については通知されていない。そのため、外部機器は電子機器のファームウェアが正常にアップロードされたか否かを判定できなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、カメラボディに着脱可能に装着されるアクセサリであって、装着されたカメラボディから出力されるデータを入力する第1接点と、第1接点とは異なる接点であって、装着されたカメラボディに対してデータを出力する第2接点と、予めインストールされたファームウェアを記憶する第1のアクセサリ側記憶手段と、ファームウェアをアップグレードするためのアップグレード用データを、カメラボディから第1接点を介して入力する第1データ通信手段と、アップグレード用データに基づいて、ファームウェアをアップグレードするアップグレード手段と、アップグレード手段によりファームウェアをアップグレード処理している間、アクセサリのアップグレード処理の動作状況に関するデータを、第2接点を介してカメラボディへ出力する第2データ通信手段と、を備えることを特徴とするアクセサリである。
【0007】
請求項4に係る発明は、ファームウェアが予めインストールされているアクセサリが着脱可能に装着されるカメラボディであって、装着されたアクセサリに対してデータを出力する第3接点と、第3接点とは異なる接点であって、装着されたアクセサリから出力されるデータを入力する第4接点と、ファームウェアをアップグレードするためのアップグレード用データを、第3接点を介してアクセサリへ送信する第3データ通信手段と、アクセサリがファームウェアをアップグレード処理している間、アクセサリのアップグレード処理の動作状況に関するデータを、第4接点を介してアクセサリから入力する第4データ通信手段と、アクセサリがファームウェアをアップグレードしている間、アップグレード処理の動作状況に関するデータに基づいて、アクセサリが正常動作しているか否かを判定する正常動作判定手段と、を備えることを特徴とするカメラボディである。
【0008】
請求項5に係る発明は、カメラボディと、カメラボディに着脱可能に装着されるアクセサリとを備えるカメラシステムであって、アクセサリは、装着されたカメラボディから出力されるデータを入力する第1接点と、第1接点とは異なる接点であって、装着されたカメラボディに対してデータを出力する第2接点と、予めインストールされたファームウェアを記憶する第1のアクセサリ側記憶手段と、ファームウェアをアップグレードするためのアップグレード用データを、カメラボディから第1接点を介して入力する第1データ通信手段と、アップグレード用データに基づいて、ファームウェアをアップグレードするアップグレード手段と、アップグレード手段によりファームウェアをアップグレード処理している間、アクセサリのアップグレード処理の動作状況に関するデータを、第2接点を介してカメラボディへ出力する第2データ通信手段と、を備え、カメラボディは、装着されたアクセサリに対してデータを出力する第3接点と、第3接点とは異なる接点であって、装着されたアクセサリから出力されるデータを入力する第4接点と、ファームウェアをアップグレードするためのアップグレード用データを、第3接点を介してアクセサリへ送信する第3データ通信手段と、アクセサリがファームウェアをアップグレード処理している間、アクセサリのアップグレード処理の動作状況に関するデータを、第4接点を介してアクセサリから入力する第4データ通信手段と、アクセサリがファームウェアをアップグレードしている間、アップグレード処理の動作状況に関するデータに基づいて、アクセサリが正常動作しているか否かを判定する正常動作判定手段と、を備えることを特徴とするカメラシステムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、カメラボディに着脱可能に搭載されるアクセサリにおいて、カメラボディからアップグレード用データを受信したアクセサリがファームウェアをアップグレードしている間、アクセサリの動作状況がカメラボディへ随時通知されるため、カメラボディはアクセサリが正常にアップロードされていることを判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明を適用したレンズ交換式のカメラシステムを示した斜視図である。
【図2】本発明を適用したレンズ交換式のカメラシステムを示した断面図である。
【図3】保持部の詳細を示す模式図である。
【図4】コマンドデータ通信の例を示すタイミングチャートである。
【図5】ホットライン通信の例を示すタイミングチャートである。
【図6】レンズ着脱検知部が交換レンズの着脱を検知する様子を示したタイミングチャートである。
【図7】ファームウェアのアップグレードに関するフローチャートである。
【図8】ファームウェアのアップグレードに関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明を適用したレンズ交換式のカメラシステムを示した斜視図である。なお、図1では本発明に係わる機器および装置のみを示し、それ以外の機器および装置については図示と説明を省略する。カメラシステム1は、カメラボディ100と、カメラボディ100に着脱可能な交換レンズ200とから構成される。
【0012】
カメラボディ100には交換レンズ200が着脱可能に取り付けられるボディ側レンズマウント101が設けられている。ボディ側レンズマウント101の近傍(ボディ側レンズマウント101の内周側)の位置には、ボディ側レンズマウント101の内周側に部分的に突出する状態で、接点を保持する保持部(電気的な接続部)102が設けられている。この保持部102には複数の接点が設けられている。
【0013】
また交換レンズ200には、ボディ側レンズマウント101に対応する、カメラボディ100が着脱可能に取り付けられるレンズ側レンズマウント201が設けられている。レンズ側レンズマウント201の近傍(レンズ側レンズマウント201の内周側)の位置には、レンズ側レンズマウント201の内周側に部分的に突出する状態で、接点を保持する保持部(電気的な接続部)202が設けられている。この保持部202には複数の接点が設けられている。
【0014】
カメラボディ100に交換レンズ200が装着されると、複数の接点が設けられたカメラボディ100側の保持部102が、複数の接点が設けられた交換レンズ200側の保持部202に電気的に且つ物理的に接続される。両保持部102,202は、カメラボディ100から交換レンズ200への電力供給、および、カメラボディ100と交換レンズ200との信号の送受信に利用される。
【0015】
カメラボディ100内のボディ側レンズマウント101後方には、例えばCMOSやCCDなどの撮像素子104が設けられる。カメラボディ100の上方には、入力装置たる操作ボタン105が設けられている。ユーザは操作ボタン105等の入力装置を用いてカメラボディ100に撮影指示や撮影条件の設定指示等を行う。
【0016】
図2は、本発明を適用したレンズ交換式のカメラシステムを示した断面図の一例である。図2に例示されるカメラシステム1は、ボディ側レンズマウント101とレンズ側レンズマウント201とを介して、交換レンズ200がカメラボディ100に装着されている。交換レンズ200は、被写体像を結像させる結像光学系210を備える。結像光学系210は複数のレンズ210a〜210cにより構成されている。これら複数のレンズ210a〜210cには、被写体像のピント位置を制御するためのフォーカシングレンズ210bが含まれている。
【0017】
交換レンズ200の内部には、交換レンズ200の各部の制御を司るレンズ側制御部203が設けられている。レンズ側制御部203は不図示のマイクロコンピュータおよびその周辺回路等により構成される。レンズ側制御部203には、レンズ駆動部212とレンズ位置検出部213とフラッシュメモリ215とRAM216とレンズ側第1通信部217とレンズ側第2通信部218とが接続されている。
【0018】
レンズ駆動部212は例えばステッピングモータ等のアクチュエータを有し、レンズ駆動部212に入力された信号に応じてフォーカシングレンズ210bを駆動する。レンズ位置検出部213は、例えばレンズ駆動部212が有するステッピングモータに入力された信号のパルス数を計数して、フォーカシングレンズ210bの位置を検出する。あるいは、交換レンズ200に設けられた周知の距離エンコーダ等を用いてフォーカシングレンズ210bの位置を検出してもよい。
【0019】
フラッシュメモリ215は不揮発性の記憶媒体であり、交換レンズ200に予めインストールされたファームウェアの制御プログラム等が予め記憶される。フラッシュメモリ215に記憶された制御プログラムはレンズ側制御部203により実行される。また、フラッシュメモリ215に記憶された制御プログラム等は、ファームウェアのアップグレードのために書き込み可能である。RAM216は揮発性の記憶媒体であり、レンズ側制御部203により各種データの記憶領域として利用される。
【0020】
レンズ側第1通信部217およびレンズ側第2通信部218は、保持部202を介してカメラボディ100との間で信号の授受を行うことにより、カメラボディ100とのデータ通信を行う。
【0021】
撮像素子104の前面には、撮像素子104の露光状態を制御するためのシャッター115と、光学的ローパスフィルターや赤外線カットフィルターを組み合わせた光学フィルター116とが設けられている。結像光学系210を透過した被写体光は、シャッター115およびフィルター116を介して撮像素子104に入射する。
【0022】
カメラボディ100の内部には、カメラボディ100の各部の制御を司るボディ側制御部103が設けられている。ボディ側制御部103は不図示のマイクロコンピュータとROMとRAMとその他周辺回路等により構成される。ボディ側制御部103にはボディ側第1通信部117、ボディ側第2通信部118、およびレンズ着脱検知部119が接続されている。
【0023】
ボディ側第1通信部117は保持部102を介して交換レンズ200内のレンズ側第1通信部217との間で信号の授受を行うことにより、レンズ側第1通信部217とのデータ通信を行う。同様に、ボディ側第2通信部118は保持部102を介して交換レンズ200内のレンズ側第2通信部218との間で信号の授受を行うことにより、レンズ側第2通信部218とのデータ通信を行う。レンズ着脱検知部119は保持部102のうち後述する特定の接点の信号レベルに基づいて交換レンズ200の着脱を検知する。
【0024】
カメラボディ100の背面には、LCDパネル等により構成される表示装置111が配置される。ボディ側制御部103はこの表示装置111に対し、撮像素子104の出力に基づく被写体の画像(いわゆるスルー画)や、撮影条件等を設定するための各種のメニュー画面を表示する。
【0025】
カメラボディ100には、メモリカード122が着脱可能に装着される。メモリカード122には、撮像画像データや、交換レンズ200にインストールされているファームウェアをアップグレードするためのアップグレード用データなどが記憶される。
【0026】
(保持部102,202の説明)
図3は保持部102,202の詳細を示す模式図である。図3に示すように、保持部102はBP1〜BP12の12個の接点を有する。また保持部202は、上記の12個の接点にそれぞれ対応する、LP1〜LP12の12個の接点を有する。以下、BP1〜BP12をボディ側接点、LP1〜LP12をレンズ側接点と称する。
【0027】
ボディ側接点BP1およびBP2は、カメラボディ100内の第1電源回路120に接続されている。ボディ側接点BP1とBP2とは、交換レンズ200がカメラボディ100に装着されているとき、レンズ側接点LP1とLP2とにそれぞれ接続される。第1電源回路120はボディ側接点BP1およびBP2とレンズ側接点LP1およびLP2とを介して、交換レンズ200のうち消費電力の小さい電子回路へ動作電力(電圧)を供給する。第1電源回路120は、レンズ駆動部212のように消費電力の大きい電子回路へは電源(電圧)を供給しない。
【0028】
第1電源回路120は、ボディ側制御部103により給電制御されており、交換レンズ200側へ動作電力(電圧)を供給する給電状態と、交換レンズ200側へ動作電力を供給しない給電停止状態とを有する。
【0029】
以下の説明では、ボディ側接点BP1およびレンズ側接点LP1により構成される信号線を、信号線V33と呼ぶ。また、ボディ側接点BP2およびレンズ側接点LP2により構成される信号線を、信号線GNDと呼ぶ。
【0030】
ボディ側接点BP3,BP4,BP5,およびBP6はコマンドデータ通信と称するデータ通信を行うための接点である。これら4つのボディ側接点は、ボディ側第1通信部117に接続されている。これら4つの接点にそれぞれ接続されるレンズ側接点LP3,LP4,LP5,およびLP6は、レンズ側第1通信部217に接続されている。ボディ側第1通信部117とレンズ側第1通信部217は、これら4つのボディ側接点および4つのレンズ側接点を介して信号の授受を行うことによりデータ通信を行う。ボディ側第1通信部117とレンズ側第1通信部217が行うデータ通信(コマンドデータ通信)の内容については、後に詳述する。
【0031】
ボディ側第1通信部117およびレンズ側第1通信部217は、各接点から入力される信号の信号レベルが所定の基準レベル(例えば2.0V)以上であった場合に、当該入力信号が真理値「真」(1、H、High等とも称する)を表していると判断する。また、各接点から入力される信号の信号レベルが上記の基準レベルとは別個に設定される所定の基準レベル(例えば0.8V)以下であった場合に、当該入力信号が真理値「偽」(0、L、Low等とも称する)を表していると判断する。ボディ側第2通信部118およびレンズ側第2通信部218についても同様である。
【0032】
ボディ側接点BP6は、カメラボディ100内においてプルアップ抵抗R1を介して電源Vcc(例えば5V)に接続されている。すなわち、ボディ側接点BP6はプルアップされている。他方、レンズ側接点LP6は、交換レンズ200内においてプルダウン抵抗R2を介して接地されている。すなわち、レンズ側接点LP6はプルダウンされている。
【0033】
プルアップ抵抗R1およびプルダウン抵抗R2の抵抗値は、交換レンズ200にカメラボディ100が取り付けられ且つレンズ側第1通信部217によるデータ通信が行われていない場合に、ボディ側接点BP6の信号レベルが真理値Lに対応する信号レベル(例えば0.8V以下の信号レベル)になるよう定められる。例えば、R1=10kΩ、R2=100Ωである。
【0034】
また、ボディ側レンズマウント101に交換レンズ200が取り付けられていない場合には、ボディ側接点BP6の信号レベルが真理値Hに対応する信号レベル(例えば2.0V以上)になる。これは、ボディ側接点BP6がプルアップされていることによる。
【0035】
ボディ側接点BP6にはレンズ着脱検知部119が接続されている。レンズ着脱検知部119は、ボディ側接点BP6の信号レベルに基づいて交換レンズ200の着脱を検知する。レンズ着脱検知部119による着脱の検知については後に詳述する。
【0036】
なお以下の説明では、ボディ側接点BP3およびレンズ側接点LP3により構成される信号線を、信号線CLKと呼ぶ。同様に、ボディ側接点BP4およびレンズ側接点LP4により構成される信号線を信号線BDATと、ボディ側接点BP5およびレンズ側接点LP5により構成される信号線を信号線LDATと、ボディ側接点BP6およびレンズ側接点LP6により構成される信号線を信号線RDYと呼ぶ。
【0037】
ボディ側接点BP7,BP8,BP9,およびBP10はホットライン通信と称するデータ通信を行うための接点である。これら4つのボディ側接点は、ボディ側第2通信部118に接続されている。これら4つの接点にそれぞれ接続されるレンズ側接点LP7,LP8,LP9,およびLP10は、レンズ側第2通信部218に接続されている。ボディ側第2通信部118とレンズ側第2通信部218は、これら4つのボディ側接点および4つのレンズ側接点を介して信号の授受を行うことによりデータ通信を行う。ボディ側第2通信部118とレンズ側第2通信部218が行うデータ通信(ホットライン通信)の内容については、後に詳述する。
【0038】
なお以下の説明では、ボディ側接点BP7およびレンズ側接点LP7により構成される信号線を、信号線HREQと呼ぶ。同様に、ボディ側接点BP8およびレンズ側接点LP8により構成される信号線を信号線HANSと、ボディ側接点BP9およびレンズ側接点LP9により構成される信号線を信号線HCLKと、ボディ側接点BP10およびレンズ側接点LP10により構成される信号線を信号線HDATと呼ぶ。
【0039】
ボディ側接点BP11およびBP12は、カメラボディ100内の第2電源回路121に接続されている。ボディ側接点BP11とBP12とは、交換レンズ200がカメラボディ100に装着されているとき、レンズ側接点LP11とLP12とにそれぞれ接続される。第2電源回路121は、ボディ側接点BP11およびBP12とレンズ側接点LP11およびLP12とを介して、レンズ駆動部212に駆動電力(電圧)を供給する。
【0040】
第2電源回路121は、ボディ側制御部103により給電制御されており、交換レンズ200側へ駆動電力(電圧)を供給する給電状態と、交換レンズ200側へ駆動電力を供給しない給電停止状態とを有する。
【0041】
以下の説明では、ボディ側接点BP11およびレンズ側接点LP11により構成される信号線を、信号線PGNDと呼ぶ。また、ボディ側接点BP12およびレンズ側接点LP12により構成される信号線を、信号線BATと呼ぶ。
【0042】
なお、ボディ側接点BP11およびレンズ側接点LP11を流れる電流の最大値と最小値との差は、ボディ側接点BP2およびレンズ側接点LP2を流れる電流の最大値と最小値との差よりも大きくなっている。これは、アクチュエータ等の駆動系を有するレンズ駆動部212が消費する電力が、交換レンズ200内のレンズ側制御部203等の電子回路に比べて大きいこと、ならびに、フォーカシングレンズ210bを駆動する必要がない場合にはレンズ駆動部212が電力を消費しないことに拠る。
【0043】
(コマンドデータ通信の説明)
レンズ側第1通信部217は、レンズ側接点LP3〜LP6、すなわち信号線CLK,BDAT,LDAT,およびRDYを介して、ボディ側第1通信部117とのデータ通信を行う。このデータ通信は例えば16ミリ秒毎に繰り返し行われる。また、このデータ通信では、ボディ側第1通信部117からの制御データの受信とボディ側第1通信部117への応答データの送信とが並行して行われる。以下、レンズ側第1通信部217とボディ側第1通信部117との間で行われる通信の詳細を説明する。なお、本実施形態において、レンズ側第1通信部217とボディ側第1通信部117との間で行われる通信を上述のようにコマンドデータ通信と称する。
【0044】
図4は、コマンドデータ通信の例を示すタイミングチャートである。ボディ側第1通信部117およびレンズ側第1通信部217がデータ通信を行っていない場合(図4の時刻T1より前)、信号線RDYの信号レベルは、真理値Lに対応する信号レベルとなっている。以降、真理値Lに対応する信号レベルのことをLレベルと略記する。また、真理値Hに対応する信号レベルのことをHレベルと略記する。
【0045】
ボディ側第1通信部117はコマンドデータ通信の開始時(T1)に、まず信号線RDYの信号レベルを確認する。信号線RDYの信号レベルはレンズ側第1通信部217の通信可否を表している。すなわち、レンズ側第1通信部217は、レンズ側第1通信部217がデータ通信を行える状態か否かを表す信号をレンズ側接点LP6に送信する。この信号は、データ信号でもクロック信号でもない信号である。レンズ側第1通信部217がデータ通信を行えない状態であれば、レンズ側接点LP6からはHレベルの信号が出力される。ボディ側第1通信部117は、信号線RDYがHレベルである場合、これがLレベルになるまで通信を開始しない。また、通信中の次の処理を実行しない。
【0046】
信号線RDYがLレベルであれば、ボディ側第1通信部117はボディ側接点BP3からクロック信号401を出力する。ボディ側第1通信部117はこのクロック信号401に同期して、ボディ側接点BP4から制御データの前半部分であるボディ側コマンドパケット信号402を出力する。また、信号線CLKにクロック信号401が出力されると、レンズ側第1通信部217はクロック信号401に同期してレンズ側接点LP5から応答データの前半部分であるレンズ側コマンドパケット信号403を出力する。
【0047】
レンズ側第1通信部217は、レンズ側コマンドパケット信号403の送信完了に応じて、信号線RDYの信号レベルをHレベルにする(T2)。レンズ側制御部203は、受信したボディ側コマンドパケット信号402の内容に応じた処理である第1制御処理404を開始する。例えば受信したボディ側コマンドパケット信号402が特定のデータを要求する内容であった場合、レンズ側制御部203は第1制御処理404として、当該データを生成する処理を実行する。
【0048】
レンズ側制御部203は第1制御処理404が完了すると、レンズ側第1通信部217に第1制御処理404の完了を通知する。レンズ側第1通信部217はこの通知に応じて、レンズ側接点LP6からLレベルの信号を出力する(T3)。ボディ側第1通信部117はこの信号レベルの変化に応じて、ボディ側接点BP3からクロック信号405を出力する。ボディ側第1通信部117はこのクロック信号405に同期して、ボディ側接点BP4から制御データの後半部分であるボディ側データパケット信号406を出力する。また、信号線CLKにクロック信号405が出力されると、レンズ側第1通信部217はクロック信号405に同期してレンズ側接点LP5から応答データの後半部分であるレンズ側データパケット信号407を出力する。
【0049】
レンズ側第1通信部217は、レンズ側データパケット信号407の送信完了に応じて、信号線RDYの信号レベルを再びHレベルにする(T4)。レンズ側制御部203は、受信したボディ側コマンドパケット信号402およびボディ側データパケット信号406の内容に応じた処理である第2制御処理408を開始する。例えば受信したボディ側コマンドパケット信号402が、フォーカシングレンズ210bの駆動指示であり、受信したボディ側データパケット信号406がフォーカシングレンズ210bの駆動量であった場合、レンズ側制御部203は第2制御処理408として、フォーカシングレンズ210bを当該駆動量だけ駆動する処理を実行する。
【0050】
レンズ側制御部203は第2制御処理408が完了すると、レンズ側第1通信部217に第2制御処理408の完了を通知する。レンズ側第1通信部217はこの通知に応じて、レンズ側接点LP6からLレベルの信号を出力する(T5)。
【0051】
上述した時刻T1〜時刻T5に行われた通信が、1回のコマンドデータ通信である。上述のように、1回のコマンドデータ通信では、ボディ側制御部103およびボディ側第1通信部117により、ボディ側コマンドパケット信号402およびボディ側データパケット信号406がそれぞれ1つずつ送信される。すなわち、処理の都合上2つに分割されて送信されるものの、ボディ側コマンドパケット信号402およびボディ側データパケット信号406は2つ合わせて1つの制御データを構成する。
【0052】
同様に、1回のコマンドデータ通信では、レンズ側制御部203およびレンズ側第1通信部217によりレンズ側コマンドパケット信号403およびレンズ側データパケット信号407がそれぞれ1つずつ送信される。すなわち、レンズ側コマンドパケット信号403およびレンズ側データパケット信号407は2つ合わせて1つの応答データを構成する。
【0053】
以上のように、レンズ側第1通信部217は、ボディ側第1通信部117からの制御データの受信と、ボディ側第1通信部117への応答データの送信とを並行して行う。
【0054】
上述したように、コマンドデータ通信に用いられる4つの信号線(CLK、BDAT、LDAT、RDY)には、レンズ側第1通信部217およびボディ側第1通信部117により種々の信号が出力される。図4を参照すれば明らかな通り、これらの信号のうちで信号レベルの変化が最も少ない信号は、レンズ側第1通信部217により信号線RDYに出力される信号である。すなわち、レンズ側第1通信部217は、カメラボディ100とのコマンドデータ通信において、4つのレンズ側接点LP3〜LP6のうちレンズ側接点LP6の信号レベルの変化が最も少なくなるようレンズ側接点LP3〜LP6を制御する。
【0055】
なお、上述した第1制御処理404および第2制御処理408に関しては、徒にカメラ全体の処理が滞らないよう、それらの制御処理に要する時間に対して、所定の規定(制限/上限)時間が予め設定されている。レンズ側制御部203は、ボディ側コマンドパケット信号やボディ側データパケット信号に基づいた制御処理を規定時間以内に完了する。例えば、コマンドデータ通信において、レンズ側で行われる制御処理(作業)は、通常(レンズ側が正常動作している場合)であれば、約数百マイクロ秒〜数ミリ秒程度で完了する。このとき規定時間として、コマンドデータ通信におけるレンズ側での作業時間に、ある程度のマージン時間を加えた時間が設定されており、例えば、数10ミリ秒〜数100ミリ秒の範囲の中で適切な値に設定されている。
【0056】
ボディ側コマンドパケット信号やボディ側データパケット信号を受信したレンズ側制御部203は、図4に示した期間T23およびT45が上記の規定時間を上回らないように制御しながら所定の制御処理を実行する。換言すると、レンズ側第1通信部217は、レンズ側レンズマウント201にカメラボディ100が取り付けられている間は、レンズ側接点LP6の信号レベルが上記の規定時間以上連続してHレベルにならないようにレンズ側接点LP6を制御する。
【0057】
なお、交換レンズ200のファームウェアをアップグレードする処理など、一部の特定処理については例外的に上述の規定時間を超えてしまう。これは、ファームアップ処理中においては、上述のアップグレード用データをフラッシュメモリ215に書き込む処理に時間を要する(書き込み動作に時間がかかる)ためである。レンズ側第1通信部217は、このような特定処理を行っている場合には、レンズ側接点LP6の信号レベルが上記の規定時間以上連続してHレベルになることを許容する。
【0058】
(ホットライン通信の説明)
レンズ側第2通信部218は、レンズ側接点LP7〜LP10、すなわち信号線HREQ,HANS,HCLK,およびHDATを介して、ボディ側第2通信部118へレンズ位置データを送信する。以下、レンズ側第2通信部218とボディ側第2通信部118との間で行われる通信の詳細を説明する。なお、本実施形態において、レンズ側第2通信部218とボディ側第2通信部118との間で行われる通信をホットライン通信と称する。
【0059】
図5は、ホットライン通信の例を示すタイミングチャートである。本実施形態のボディ側制御部103は、ホットライン通信を第2の所定周期Tn(本実施形態では例えば1ミリ秒)毎に開始するように構成されている。この周期は、コマンドデータ通信を行う周期よりも短い。図5(a)は、ホットライン通信が所定周期Tn毎に繰り返し実行されている様子を示す図である。繰り返し実行されるホットライン通信のうち、ある1回の通信の期間Txを拡大した様子が図5(b)に示されている。以下、図5(b)のタイミングチャートに基づいて、ホットライン通信の手順を説明する。
【0060】
ボディ側第2通信部118はホットライン通信の開始時(T6)、まずボディ側接点BP7からLレベルの信号を出力する。レンズ側第2通信部218は、この信号がレンズ側接点LP7に入力されたことをレンズ側制御部203に通知する。レンズ側制御部203はこの通知に応じて、レンズ位置データを生成する生成処理501の実行を開始する。生成処理501とは、レンズ側制御部203がレンズ位置検出部213にフォーカシングレンズ210bの位置を検出させ、検出結果を表すレンズ位置データを生成する処理である。
【0061】
レンズ側制御部203が生成処理501を実行完了すると、レンズ側第2通信部218はレンズ側接点LP8からLレベルの信号を出力する(T7)。ボディ側第2通信部118は、この信号がボディ側接点BP8に入力されたことに応じて、ボディ側接点BP9からクロック信号502を出力する。レンズ側第2通信部218はこのクロック信号502に同期して、レンズ側接点LP10からレンズ位置データを表すレンズ位置データ信号503を出力する。
【0062】
レンズ位置データ信号503の送信が完了すると、レンズ側第2通信部218はレンズ側接点LP8からHレベルの信号を出力する(T8)。ボディ側第2通信部118は、この信号がボディ側接点BP8に入力されたことに応じて、レンズ側接点LP7からHレベルの信号を出力する(T9)。
【0063】
上述した時刻T6〜時刻T9に行われた通信が、1回のホットライン通信である。上述のように、1回のホットライン通信では、レンズ側制御部203およびレンズ側第2通信部218により、レンズ位置データ信号503が1つ送信される。
【0064】
ホットライン通信に用いられる4つのレンズ側接点LP7〜LP10のうち、レンズ側接点LP7、LP8には、クロック信号でもデータ信号でもない信号が出力される。これら2つのレンズ側接点の信号レベルの変化は、コマンドデータ通信に用いられるレンズ側接点LP6よりも多くなる。これは、ホットライン通信がコマンドデータ通信に比べてより短い周期で実行されるためである。
【0065】
例えばコマンドデータ通信が16ミリ秒毎に、ホットライン通信が1ミリ秒毎にそれぞれ実行されるとしたとき、レンズ側接点LP6の信号レベルの変化は16ミリ秒につき4回となる。他方、ホットライン通信は例えば1ミリ秒毎に実行され、レンズ側接点LP7、LP8における1回の通信当たりの信号レベルの変化はそれぞれ2回であるので、16ミリ秒につき信号レベルがそれぞれ32回変化することとなる。
【0066】
換言すると、レンズ側第1通信部217は、カメラボディ100とのコマンドデータ通信およびホットライン通信において、レンズ側接点LP3〜LP10のうちレンズ側接点LP6の信号レベルの変化が最も少なくなるようレンズ側接点LP3〜LP6を制御する。
【0067】
なお、コマンドデータ通信とホットライン通信は同時並行的に実行することが可能である。すなわち、レンズ側第1通信部217とレンズ側第2通信部218との一方は、その他方がカメラボディ100と通信を行っている場合であってもカメラボディ100と通信を行うことが可能である。
【0068】
(交換レンズの着脱検知の説明)
図6(a)は、レンズ着脱検知部119が交換レンズ200の装着を検知する様子を示したタイミングチャートである。カメラボディ100に交換レンズ200が未装着の場合(取り外された場合を含む)、ボディ側接点BP6がプルアップされているため(図3)、ボディ側接点BP6の信号レベルはHレベルとなる。ここで交換レンズ200が装着されると、ボディ側接点BP6の信号レベルがLレベルになるようにプルアップ抵抗R1およびプルダウン抵抗R2の抵抗値が定められているため、ボディ側接点BP6の信号レベルはLレベルになる(T10)。レンズ着脱検知部119はこのように、ボディ側接点BP6の信号レベルがLレベルになった場合に交換レンズ200が装着されたことを検知する。そしてボディ側制御部103は、交換レンズ200のカメラボディ100への装着を検知すると、第1電源回路120が給電状態となり、また交換レンズ200との間の通信動作を開始する。
【0069】
図6(b)は、レンズ着脱検知部119が交換レンズ200の取り外しを検知する様子を示したタイミングチャートである。カメラボディ100から交換レンズ200が取り外されると、ボディ側接点BP6の信号レベルは再びHレベルとなる(T11)。この時点ではレンズ着脱検知部119は、この信号レベルの変化が、レンズ側第1通信部217が信号線RDYに信号を出力したことによって引き起こされたものなのか、あるいは交換レンズ200が取り外されたことによって引き起こされたものなのかを区別することができない。
【0070】
レンズ着脱検知部119は、ボディ側接点BP6の信号レベルがHレベルとなったとき、ボディ側接点BP6の信号レベルがそのような信号レベルを上述の規定時間(図4での説明にて既述)以上保持するか否かを見極める。
【0071】
仮に時刻T11において発生した信号レベルの変化がレンズ側第1通信部217によるものであるとすれば、時刻T11から上記の規定時間が経過する前に、ボディ側接点BP6の信号レベルはLレベルに戻るはずである。他方、ボディ側接点BP6の信号レベルが上記の規定時間を経過してもなおHレベルのままであったとすれば、これは交換レンズ200が取り外されたことによる信号レベルの変化であると判断することができる。従ってレンズ着脱検知部119は、時刻T11から所定時間T1112が経過した時刻T12において、交換レンズ200の取り外しを検知する。
【0072】
カメラボディ100内のレンズ着脱検知部119はこのように、ボディ側接点BP6の信号レベルが、上述の規定時間以上連続してHレベルであった場合に、交換レンズ200の取り外しを検知する。なお本実施形態では、レンズ着脱検知部119が交換レンズの取り外しを判断する指標となる期間である、ボディ側接点BP6の信号レベルが真理値Hに対応する信号レベルに維持(継続)されたままの期間を、「規定時間以上」としている。この「規定時間以上」に含まれる期間としては、上述の規定時間そのものであっても良いし、上記規定時間よりも長め(例えば上述の規定時間の数倍程度くらいまで)であっても良い。
【0073】
ただし、交換レンズ200のファームウェアをアップグレードする処理を実行しているときは、ボディ側接点BP6の信号レベルが、上述の規定時間以上連続してHレベルになったとしても、交換レンズ200が取り外されたとは判断しない。
【0074】
なお、ボディ側接点BP6の信号レベルが、上記規定時間以上連続してHレベルになるケースとしては、上述の交換レンズ200の取外しやファームウェアのアップグレード以外のケースも考えられる。例えば、交換レンズは装着したままであるが交換レンズ側がハングアップしているようなケースや、或いは通信接点不良のケースなどである。カメラボディ100のボディ側制御部103としては、何れの理由(要因)に基づくケースであっても、レンズ着脱検知部119が交換レンズ200が未装着状態であると判断した場合は、第1電源回路120による交換レンズ200への給電を遮断する処理を行う。
【0075】
これにより上述のハングアップや通信接点不良などのケースで、交換レンズ側の信号線RDYの信号レベルがHレベルに維持され続けている場合であっても、カメラボディ100側から交換レンズ200側への給電が一旦オフされるため、これによりレンズ側制御部203の動作が停止し、レンズ側接点LP6はプルダウン抵抗R2を介してLレベルになる。つまり交換レンズ側の信号線RDYの信号レベルがLレベルになるので、カメラボディ100は図6(a)で説明したのと同様の振る舞いをする。すなわち、カメラボディ側のレンズ着脱検知部119は、交換レンズが再装着された状態になったと認識し、そしてボディ側制御部103の制御のもと交換レンズ200への給電や通信を開始する。
【0076】
(ファームウェアのアップグレードの説明)
交換レンズ200のファームウェアをアップグレード(更新/ファームアップ)するアップグレード処理(更新処理/ファームアップ処理)について、図7および8を用いて説明する。アップグレード処理は、ボディ側制御部103とレンズ側制御部203とが協働して実行される。
【0077】
アップグレード処理は、表示装置111に表示されたメニュー画面の中からユーザによりアップグレード処理を示す項目が選択され、且つカメラボディ100に装填されているメモリカード122にアップグレード用データが記憶されており、且つそのアップグレード用データが交換レンズ200用のものであるときに開始される。このアップグレード用データを記憶しているメモリカード122は、周知の如く、カメラボディ100に装填および取外し可能なものである。
【0078】
図7は、ボディ側制御部103側が実行するアップグレード処理のフローチャートの一例である。ステップS100では、ボディ側制御部103は、第2電源回路121を給電停止状態にして交換レンズ200への駆動電力の供給を停止する。以降、ファームウェアをアップグレードしている間は、レンズ駆動部212は動作しない。
【0079】
ステップS101では、ボディ側制御部103は、上述のコマンドデータ通信系であるボディ側接点BP4を介してレンズ側接点LP4へアップグレードの開始を指示する信号を送信する。なお、ステップS101で送信されるアップグレードの開始を指示する信号のことを開始コマンドと称する。本ステップ以降(後述のS105)において、ボディ側制御部103は、上述のコマンドデータ通信系を使って(ボディ側接点BP4を介して)アップグレード用データを送信する。
【0080】
ステップS102では、ボディ側制御部103は、上述のホットライン通信系を用いたホットライン通信を開始する。ボディ側制御部103は、まずボディ側接点BP7を介してレンズ側接点LP7へLレベルの信号を送信する。そして、ボディ側制御部103は、ボディ側接点BP8を介してレンズ側接点LP8からLレベルの信号を受信すると、ボディ側接点BP9を介してレンズ側接点LP9へクロック信号を送信する。これにより、ボディ側制御部103は、ボディ側接点BP10を介して交換レンズ200から送信されてくるデータの受信が可能となる。
【0081】
ステップS101で送信された開始コマンドを受信した交換レンズ200は、ステップS102でホットライン通信が開始されると、レンズ側接点LP9で受信したクロック信号に同期してレンズ側接点LP10からボディ側接点BP10へステータスデータと称するデータを送信する。ステータスデータとは、交換レンズ200のアップグレード処理に関する動作状況を表すデータである。交換レンズ200のアップグレード処理に関する動作状態とは、例えば「アップグレード処理動作が正常状態(正常に進行中)」、「アップグレード用データの受信待機中」、「データ書き込み中にエラー発生」、「アップグレード処理完了(正常終了)」などを含む。
【0082】
ステップS103では、ボディ側制御部103は、ボディ側接点BP10を介した上述のステータスデータの受信を開始する。以降、カメラボディ100のボディ側制御部103はステップS102で開始されたホットライン通信が継続されている間、ステータスデータを受信し続ける。
【0083】
ステップS104では、ボディ側制御部103は、ボディ側接点BP10を介して受信したステータスデータ等に基づいて、アップグレードが開始可能か否かを判定する。例えば、ボディ側制御部103は、ステータスデータが示す交換レンズ200の動作状況が「正常状態」である場合にアップグレード開始可能と判定する。
【0084】
ステップS104において、アップグレードが開始不可能であるとボディ側制御部103が判定した場合は、図7の処理を終了する。なお、図7の処理を終了する前にステップS101からステップS103までの処理を所定回数リトライすることにしてもよい。
【0085】
ステップS105では、ボディ側制御部103は、ボディ側接点BP4を介してレンズ側接点LP4へアップグレード用データを送信する。ボディ側制御部103は、データの書き込みを指示するコマンドパケット信号を送信し、その後アップグレード用データをデータパケット信号として送信する。アップグレード用データを送信された交換レンズ200のレンズ側制御部203は、ファームウェアのアップグレードを開始する。このとき、レンズ側制御部203は、書き込み処理を行っている間レンズ側接点LP6(RDY)から出力される信号をHレベルにする。ボディ側制御部103は、アップグレード用データを交換レンズ200側へ送信した後、ステップS106に処理を進める。
【0086】
ステップS106では、ボディ側制御部103は、ボディ側接点BP6がLレベルになるまでステップS106で待機する。すなわち、レンズ側制御部203が書き込み処理を完了させ、レンズ側接点LP6からLレベルの信号を出力するまで、ステップS106で待機する。
【0087】
ボディ側制御部103がステップS106で待機しているとき、信号線RDYの信号レベルが前述の規定時間(図4での説明にて記述)を超えることがある。このような場合であっても、アップグレード処理中においては、レンズ着脱検知部119は交換レンズ200が未装着であるとは判断しない。そのため、レンズ側制御部203への動作電力の供給が維持され、アップグレード処理を続けることができる。
【0088】
ステップS106においてボディ側接点BP6がLレベルになると、ボディ側制御部103は、ステップS107へ処理を進める。
ステップS107では、ボディ側制御部103は、ボディ側接点BP4を介してレンズ側接点LP4へアップグレードの終了を指示する信号を送信する。なお、ステップS103で送信されるアップグレードの終了を指示するコマンドパケット信号のことを終了コマンドと称する。
【0089】
ステップS108では、ボディ側制御部103は、ボディ側接点BP10を介して受信したステータスデータに基づいて、アップグレードが正常に終了したか否かを判定する。例えば、ボディ側制御部103は、ステータスデータが示す交換レンズ200の動作状況が「アップグレード処理完了(正常終了)」である場合には、アップグレードが正常に終了したと判定する。ステップS108において、ボディ側制御部103は、アップグレードが正常に終了したと判定した場合はステップS109へ進む。
【0090】
ステップS109では、ボディ側制御部103は、ステップS102で開始したホットライン通信を中止する。ボディ側接点BP7から出力される信号の信号レベルをHレベルにし、ボディ側接点BP9を介したクロック信号の送信を停止することにより、ホットライン通信を停止する。これにより、ボディ側制御部103は、ステップS103で開始したステータスデータの受信を停止する。
【0091】
ステップS108において、アップグレードが正常終了していないとボディ側制御部103が判定した場合は、図7の処理を終了する。なお、図7の処理を終了する前にステップS105からステップS108までの処理を所定回数リトライすることにしてもよい。
【0092】
ステップS110では、ボディ側制御部103は、第2電源回路121を給電停止状態にして交換レンズ200への動作電力の供給を停止する。これにより、交換レンズ200のすべての部位が電源オフ状態となる。ボディ側制御部103は、交換レンズ200への電源供給を停止したらカメラボディ側の電源もオフにし、アップグレード処理を終了する。
【0093】
図8は、レンズ側制御部203側が実行するアップグレード処理のフローチャートの一例である。ステップS200では、レンズ側制御部203は、コマンドデータ通信系(レンズ側接点LP4)を介して、図7のステップS101で送信された開始コマンドを受信する。なお、本ステップ以降(後述のS205)において、レンズ側制御部203は、カメラボディ100側から送信されるアップグレード用データをコマンドデータ通信系(レンズ側接点LP4)を介して受信する。
【0094】
ステップS201では、レンズ側制御部203は、フラッシュメモリ215に記憶された制御プログラムのうち、ホットライン通信に関する制御プログラムをRAM216に記憶する。レンズ側制御部203は、ファームウェアのアップグレードが完了するまで、ホットライン通信に関する処理はRAM216に記憶された制御プログラムに基づいて実行する。
【0095】
ステップS201の処理を終えたレンズ側制御部203は、レンズ側接点LP7の信号レベルがLレベルになるまでステップS202で待機する。レンズ側接点LP7の信号レベルがLレベルになったとき、ステップS203に進み、ホットライン通信を開始する。ステップS203では、レンズ側制御部203は、レンズ側接点LP8からボディ側接点BP8へLレベルの信号を送信した後、レンズ側接点LP9を介してボディ側接点BP9から送信されるクロック信号を受信する。そして、レンズ側制御部203は、受信したクロック信号に同期して、レンズ側接点LP10からボディ側接点BP10へデータ送信を開始する。
【0096】
ステップS201で開始コマンドを受信してステップS203でホットライン通信を開始した交換レンズ200のレンズ側制御部203は、ステップS204においてレンズ側接点LP10を介して、ステータスデータを送信する。
【0097】
ステップS205では、レンズ側制御部203は図7のステップS105で送信されたアップグレード用データを、レンズ側接点LP4を介して受信する。そして、ステップS206では、レンズ側制御部203は受信したアップグレード用データに基づいて、フラッシュメモリ215に記憶されたファームウェアの制御プログラム等をアップグレードする。レンズ側制御部203は、アップグレード中レンズ側接点LP6からHレベルの信号をボディ側接点BP6へ送信する。
【0098】
ステップS207では、レンズ側制御部203は、レンズ側第1通信部217を制御してレンズ側接点LP6から信号線RDYへLレベルの信号を送信する。レンズ側制御部203がこの処理を行うことにより、ボディ側制御部103は図7の処理をステップS106からステップS107へ進められる。
【0099】
ステップS208では、レンズ側制御部203は、レンズ側接点LP4を介して図7のステップS107で送信された終了コマンドを受信する。終了コマンドを受信したレンズ側制御部203は、ステップS209に処理を進める。
【0100】
ステップS208で終了コマンドを受信したレンズ側制御部203は、レンズ側接点LP7の信号レベルがHレベルになるまでステップS208で待機する。レンズ側接点LP7の信号レベルがHレベルになったとき、ステップS210に進み、ホットライン通信を終了する。
【0101】
その後、レンズ側制御部203は図8の処理を終了する。そして、図7のステップS111で第1電源回路が給電停止状態となったときに交換レンズ200は電源オフ状態となる。
【0102】
上述した実施形態によるカメラシステムによれば、次の作用効果が得られる。
カメラシステム1は、カメラボディ100と、カメラボディ100に着脱可能に装着される交換レンズ200とを備える。カメラボディ100と交換レンズ200とはそれぞれボディ側第1通信部117とレンズ側第1通信部217を備え、ボディ側接点BP4からレンズ側接点LP4へアップグレード用データを送信する。また、カメラボディ100と交換レンズ200とはそれぞれボディ側第2通信部118とレンズ側第2通信部218とを備え、交換レンズ200の動作状況に関するステータスデータをレンズ側接点LP10からボディ側接点BP10へ送信する(ホットライン通信)。交換レンズ200は、フラッシュメモリ215にファームウェアを記憶している。また、交換レンズ200は、アップグレード用データに基づいてファームウェアをアップグレードする(図8のステップS206)。一方、カメラボディ100に装填されているメモリカード122には、アップグレード用データが記憶されている。また、カメラボディ100は、交換レンズ200の動作状況に関するステータスデータに基づいて、交換レンズ200が正常動作しているか否かを判定する(図7のステップS104およびステップS108)。これにより、交換レンズ200がファームウェアをアップグレードしている間、交換レンズ200の動作状況がカメラボディ100へ随時通知されるため、カメラボディ100は交換レンズ200が正常にアップロードされていることを判定できる。
【0103】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
【0104】
(変形例1)
ホットライン通信において、レンズ側第2通信部218がレンズ位置データ以外のデータを送信するようにしてもよい。例えば、絞りの口径に関するデータや、ぶれ補正レンズの位置に関するデータを送信するようにしてもよい。
【0105】
(変形例2)
マニュアルフォーカスレンズなど、フォーカシングレンズ210bの位置が不要な場合には、レンズ側接点LP7〜LP10およびレンズ側第2通信部218を省いてもよい。レンズ着脱検知部119はボディ側接点BP6により交換レンズ200の着脱検知を行うので、ホットライン通信に用いられるこれらのレンズ側接点LP7〜LP10が存在しない場合であっても正しく着脱検知を行うことが可能である。
【0106】
(変形例3)
上述の実施形態で示した構成とは異なる構成を有するレンズ交換可能なカメラシステムにも、本発明を適用することが可能である。例えばカメラボディ内にミラーを有する、いわゆる一眼レフレックスカメラにも本発明を適用することができ、上述の実施形態と同様の効果を奏することが可能である。
【0107】
(変形例4)
上述の実施形態では、交換レンズ200のファームウェアをアップグレードする場合の処理について説明したが、カメラボディ100に接続され、コマンドデータ通信とホットライン通信とを行うための接点を有するアクセサリであれば、交換レンズ以外のアクセサリにも本発明を適用できる。例えば、交換レンズとカメラボディとの間に挿入される中間アダプタのうち、ファームウェアにより制御されるものにも適用できる。
【0108】
本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0109】
1…カメラシステム、100…カメラボディ、101…ボディ側レンズマウント、102、202…保持部、103…ボディ側制御部、117…ボディ側第1通信部、118…ボディ側第2通信部、119…レンズ着脱検知部、120…第1電源回路、121…第2電源回路、122…メモリカード、200…交換レンズ、201…レンズ側レンズマウント、203…レンズ側制御部、215…フラッシュメモリ、217…レンズ側第1通信部、218…レンズ側第2通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラボディに着脱可能に装着されるアクセサリであって、
装着された前記カメラボディから出力されるデータを入力する第1接点と、
前記第1接点とは異なる接点であって、装着された前記カメラボディに対してデータを出力する第2接点と、
予めインストールされたファームウェアを記憶する第1のアクセサリ側記憶手段と、
前記ファームウェアをアップグレードするためのアップグレード用データを、前記カメラボディから前記第1接点を介して入力する第1データ通信手段と、
前記アップグレード用データに基づいて、前記ファームウェアをアップグレードするアップグレード手段と、
前記アップグレード手段により前記ファームウェアをアップグレード処理している間、前記アクセサリの前記アップグレード処理の動作状況に関するデータを、前記第2接点を介して前記カメラボディへ出力する第2データ通信手段と、
を備えることを特徴とするアクセサリ。
【請求項2】
請求項1に記載のアクセサリにおいて、
フォーカシングレンズを更に有し、
前記第1データ通信手段は、前記フォーカシングレンズの駆動指示および駆動量を含む制御データを、前記第1接点を介して前記カメラボディから受信し、
前記第2データ通信手段は、前記フォーカシングレンズの位置に関する位置データを、前記第2接点を介して前記カメラボディへ送信し、
前記アップグレード手段は、前記第1データ通信手段が前記制御データの代わりに受信した、前記ファームウェアをアップグレードするためのアップグレード用データに基づいて前記ファームウェアをアップグレードし、
前記第2データ通信手段は、前記アップグレード手段により前記ファームウェアをアップグレードしている間、前記アクセサリの動作状況に関するデータを、前記カメラボディへ送信することを特徴とするアクセサリ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアクセサリにおいて、
前記ファームウェアをアップグレードする前に、前記第1のアクセサリ側記憶手段に記憶されている前記第2データ通信手段のための制御プログラムを記憶する第2のアクセサリ側記憶手段をさらに備え、
前記第2データ通信手段は、前記ファームウェアをアップグレードしている間は前記第2のアクセサリ側記憶手段に記憶された制御プログラムに基づいて、前記アクセサリの動作状況に関するデータを前記カメラボディへ送信することを特徴とするアクセサリ。
【請求項4】
ファームウェアが予めインストールされているアクセサリが着脱可能に装着されるカメラボディであって、
装着された前記アクセサリに対してデータを出力する第3接点と、
前記第3接点とは異なる接点であって、装着された前記アクセサリから出力されるデータを入力する第4接点と、
前記ファームウェアをアップグレードするためのアップグレード用データを、前記第3接点を介して前記アクセサリへ送信する第3データ通信手段と、
前記アクセサリが前記ファームウェアをアップグレード処理している間、前記アクセサリの前記アップグレード処理の動作状況に関するデータを、前記第4接点を介して前記アクセサリから入力する第4データ通信手段と、
前記アクセサリが前記ファームウェアをアップグレードしている間、前記アップグレード処理の動作状況に関するデータに基づいて、前記アクセサリが正常動作しているか否かを判定する正常動作判定手段と、
を備えることを特徴とするカメラボディ。
【請求項5】
カメラボディと、前記カメラボディに着脱可能に装着されるアクセサリとを備えるカメラシステムであって、
前記アクセサリは、
装着された前記カメラボディから出力されるデータを入力する第1接点と、
前記第1接点とは異なる接点であって、装着された前記カメラボディに対してデータを出力する第2接点と、
予めインストールされたファームウェアを記憶する第1のアクセサリ側記憶手段と、
前記ファームウェアをアップグレードするためのアップグレード用データを、前記カメラボディから前記第1接点を介して入力する第1データ通信手段と、
前記アップグレード用データに基づいて、前記ファームウェアをアップグレードするアップグレード手段と、
前記アップグレード手段により前記ファームウェアをアップグレード処理している間、前記アクセサリの前記アップグレード処理の動作状況に関するデータを、前記第2接点を介して前記カメラボディへ出力する第2データ通信手段と、
を備え、
前記カメラボディは、
装着された前記アクセサリに対してデータを出力する第3接点と、
前記第3接点とは異なる接点であって、装着された前記アクセサリから出力されるデータを入力する第4接点と、
前記ファームウェアをアップグレードするためのアップグレード用データを、前記第3接点を介して前記アクセサリへ送信する第3データ通信手段と、
前記アクセサリが前記ファームウェアをアップグレード処理している間、前記アクセサリの前記アップグレード処理の動作状況に関するデータを、前記第4接点を介して前記アクセサリから入力する第4データ通信手段と、
前記アクセサリが前記ファームウェアをアップグレードしている間、前記アップグレード処理の動作状況に関するデータに基づいて、前記アクセサリが正常動作しているか否かを判定する正常動作判定手段と、
を備えることを特徴とするカメラシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のカメラシステムであって、
前記アクセサリは、
フォーカシングレンズを更に有し、
前記第1データ通信手段は、前記フォーカシングレンズの駆動指示および駆動量を含む制御データを、前記カメラボディから前記第1接点を介して受信し、
前記第2データ通信手段は、前記フォーカシングレンズの位置に関する位置データを、前記第2接点を介して前記カメラボディへ送信し、
前記第3データ通信手段は、前記制御データを前記第3接点を介して前記アクセサリへ送信し、
前記第4データ通信手段は、前記位置データを前記第4接点を介して前記アクセサリから受信し、
前記アップグレード手段により前記ファームウェアをアップグレード処理する間は、
前記第3データ通信手段が、前記制御データに代えて前記アップグレード用データを前記アクセサリへ送信し、
前記第1データ通信手段が、前記制御データに代えて前記アップグレード用データを受信し、
前記第2データ通信手段が、前記位置データに代えて、前記アクセサリの前記アップグレード処理の動作状況に関するデータを前記カメラボディへ送信し、
前記第4データ通信手段が、前記位置データに代えて、前記アップグレード処理の動作状況に関するデータを受信することを特徴とするカメラシステム。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載のカメラシステムにおいて、
前記アクセサリは、
前記ファームウェアをアップグレードする前に、前記第1のアクセサリ側記憶手段に記憶されている前記第2データ通信手段のための制御プログラムを記憶する第2のアクセサリ側記憶手段をさらに備え、
前記第2データ通信手段は、前記ファームウェアをアップグレードしている間は前記第2のアクセサリ側記憶手段に記憶された制御プログラムに基づいて、前記アクセサリの動作状況に関するデータを前記カメラボディへ送信することを特徴とするカメラシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−57866(P2013−57866A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197107(P2011−197107)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】