アクチュエータ、その制御方法及びアクチュエータを備えた内視鏡
【課題】既存の内視鏡等の被駆動物に巻きつけて利用可能なコンパクトな形状を有し、かつ効率的な駆動が行えるアクチュエータ、その制御方法等を提供する。
【解決手段】弾性体で形成された、複数の圧力室3を有するチューブ状のアクチュエータ本体1と、前記複数の圧力室3に流体を供給排出制御して所定の圧力を印加する圧力印加手段10と、を備え、前記複数の圧力室3の圧力を制御することで推進力を発生させるアクチュエータにおいて、前記アクチュエータ本体1は、その断面が略四角形状の周壁5からなる単層構造であるとともに、当該周壁5内部を弾性隔壁で区画してアクチュエータ本体1長手方向に沿って形成される複数の圧力室3を有する。
【解決手段】弾性体で形成された、複数の圧力室3を有するチューブ状のアクチュエータ本体1と、前記複数の圧力室3に流体を供給排出制御して所定の圧力を印加する圧力印加手段10と、を備え、前記複数の圧力室3の圧力を制御することで推進力を発生させるアクチュエータにおいて、前記アクチュエータ本体1は、その断面が略四角形状の周壁5からなる単層構造であるとともに、当該周壁5内部を弾性隔壁で区画してアクチュエータ本体1長手方向に沿って形成される複数の圧力室3を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用大腸内視鏡等に適用可能である弾性体で形成されたチューブ状アクチュエータの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1や特許文献2に記載されているように内視鏡誘導アクチュエータシステム(図10、図11参照)において、内視鏡に推進力を付加することが可能な空気圧駆動アクチュエータがある。このアクチュエータはチューブ状のゴム構造体に空気圧をかけることで進行波を生成し推進力を得るものである。このアクチュエータは、4つの圧力室がアクチュエータ本体の幅方向に平行に配置されたものとなっている。また、これに対して、圧力室を階層的に配置することで、アクチュエータの変位出力を増加させる構造が提案されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−253391号公報
【特許文献2】特開平11−253392号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】H.Onoe,K.Suzumori,S.Wakimoto “Optimum Design of Pneumatic Multi−chamber Rubber Tube Actuator Generating Traveling Deformation Waves for Colonoscope Insertion” 2008 IEEE International conference on Advanced Intelligent Mechatoronics, pp31−36
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1や特許文献2に記載のアクチュエータは図8に示す断面を持つチューブ状の構造である。これを内視鏡に巻きつけ、4つの部屋を順に加圧することで表面に弾性進行波を生成し、推進力を得る。しかしながら、変位が小さく、推進速度が小さい(主としてx方向(水平方向)の変位が小さいことに起因)場合や、大腸の内壁面の凸凹が大きいと推進力がうまく得られない(主としてy方向(垂直方向)の変位が小さいことに起因)という問題がある。
【0006】
これを改善する形状として図9のような形状が考案されている。図9に示す断面形状を有するアクチュエータは、図8のアクチュエータとの比較において変位量は大きい。しかしながら、依然としてその値は十分ではない。なお、非特許文献1では、アクチュエータの断面形状として、図9で示す2層構造の他3層構造の提案もなされているが、3層以上の構造では嵩高くなってしまい内視鏡への搭載が困難である。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、既存の内視鏡等の被駆動物に巻きつけて利用可能なコンパクトな形状を有し、かつ効率的な駆動が行えるアクチュエータ、その制御方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、
弾性体で形成された、複数の圧力室を有するチューブ状のアクチュエータ本体と、
前記複数の圧力室に流体を供給排出制御して所定の圧力を印加する圧力印加手段と、を備え、前記複数の圧力室の圧力を制御することで推進力を発生させるアクチュエータにおいて、
前記アクチュエータ本体は、その断面が略四角形状の周壁からなる単層構造であるとともに、当該周壁内部を弾性隔壁で区画してアクチュエータ本体長手方向に沿って形成される複数の圧力室を有するアクチュエータである。
【0010】
請求項2においては、
前記圧力室を、少なくとも3つ有するアクチュエータである。
【0011】
請求項3においては、
前記複数の圧力室は、
前記アクチュエータ本体の前記周壁内部の天井部と断面所定形状の弾性隔壁により区画された上部圧力室と、
前記上部圧力室の外側に位置する周壁内部を、少なくとも前記断面所定形状の弾性隔壁を含む弾性隔壁により前記アクチュエータ本体の幅方向略中央にて左右略対称に区画された左右下部圧力室と、
から構成されるアクチュエータである。
【0012】
請求項4においては、
前記断面所定形状の弾性隔壁は、円弧状の弾性隔壁であるアクチュエータである。
【0013】
請求項5においては、
前記周壁内部の天井部と前記断面円弧状の弾性隔壁とのなす角が、鋭角となるアクチュエータである。
【0014】
請求項6においては、
前記アクチュエータ本体は、その表面に複数の突起部を有するアクチュエータである。
【0015】
請求項7においては、
被駆動物の外周に複数の前記アクチュエータ本体を平行に巻回して、前記複数のアクチュエータ本体間に位相差を与えて前記被駆動物を駆動するアクチュエータである。
【0016】
請求項8においては、
請求項1から請求項7の何れか一項に記載のアクチュエータを用いて、
前記上部圧力室及び前記左右下部圧力室を常圧状態とする工程と、
前記左右下部圧力室のうち一方の下部圧力室を加圧状態とするとともに前記上部圧力室及び他方の下部圧力室を常圧状態とする工程と、
前記一方の下部圧力室及び前記上部圧力室を加圧状態とするとともに前記他方の下部圧力室を常圧状態とする工程と、
前記上部圧力室及び前記左右下部圧力室を加圧状態とする工程と、
前記一方の下部圧力室を常圧状態とするとともに前記上部圧力室及び前記他方の圧力室を加圧状態とする工程と、
前記一方の下部圧力室及び前記上部圧力室を常圧状態とするとともに、前記他方の下部圧力室を加圧状態とする工程と、を含み、
前記各圧力室に対して流体の供給排出制御を行って、前記各工程を連続して繰り返し、
前記アクチュエータ本体の幅方向の推進力を発生させるアクチュエータの制御方法である。
【0017】
請求項9においては、
前記被駆動物の外周に2つの前記アクチュエータ本体を平行に巻回した請求項7に記載のアクチュエータを用いて、
一方の前記アクチュエータ本体と、他方の前記アクチュエータ本体と、のそれぞれにおいて、前記各工程を連続して繰り返し、かつ、前記2つのアクチュエータ本体間に180度の位相差を与えるアクチュエータの制御方法である。
【0018】
請求項10においては、
前記常圧状態に替えて、負圧状態にするアクチュエータの制御方法である。
【0019】
請求項11においては、
請求項1から請求項7の何れか一項に記載のアクチュエータを備え、前記アクチュエータ本体を被検体挿入部の外周に巻回して設けた内視鏡である。
【0020】
請求項12においては、
前記アクチュエータ本体の外周を被覆する内視鏡である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、既存の形状と比較して、上下方向、幅方向とも変位量を極めて大きくすることができるので、アクチュエータとしての推進性能を高めることが可能である。
【0022】
また、本発明によれば、内視鏡の挿入時に補助的に支援することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係るアクチュエータの構成を示す一部破断斜視図。
【図2】本実施形態に係るアクチュエータ本体の断面形状(断面モデル)を示す断面図。
【図3】アクチュエータ(アクチュエータ本体断面)の駆動シミュレーションを示す図。
【図4】アクチュエータ本体の断面を示す図。
【図5】(a)は、各形状によるxd(水平方向)、yd(垂直方向)の変位率比較を示す図、(b)はアクチュエータの評価パラメータを示す図。
【図6】アクチュエータを搭載した内視鏡の推進力発生原理を示す図。
【図7】ダミー内視鏡に搭載したアクチュエータを示す図。
【図8】特許文献1記載のアクチュエータ本体断面を示す図であり、(a)は4つの圧力室が加圧されていない状態を示す図、(b)及び(c)は4つの圧力室を順に加圧していく状態を示す図。
【図9】非特許文献1記載のアクチュエータ本体断面を示す図であり、(a)は3つの圧力室が加圧されていない状態を示す図、(b)及び(c)は3つの圧力室を順に加圧していく状態を示す図。
【図10】従来技術を示す図。
【図11】従来技術を示す図。
【図12】アクチュエータの駆動方法を示す図。
【図13】アクチュエータ本体の断面形状による運動の比較(シミュレーション)を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0025】
本実施形態に係るアクチュエータは、複数の圧力室(チャンバー)を有し、当該複数の圧力室の圧力を制御することより推進力を発生させる空気圧駆動アクチュエータである。アクチュエータは、図1に示すように、弾性体で形成された、複数の圧力室3(3a、3b、3c)を有するチューブ状のアクチュエータ本体1と、前記複数の圧力室3に流体を供給排出制御して所定の圧力を印加する圧力印加手段10と、を主に備える。
【0026】
前記アクチュエータ本体1は、その断面が略四角形状の周壁(本実施形態では、長方形状の周壁5)からなる単層構造であるとともに、当該周壁5内部(以下、内部空間という)を弾性隔壁で区画してアクチュエータ本体1長手方向に沿って形成される複数の圧力室3を有する。
【0027】
アクチュエータ本体1は、角筒状の弾性体(本実施形態ではシリコーンゴム)からなるチューブ状アクチュエータであり、断面略長方形状の内部空間を有する。また、アクチュエータ本体1は、その表面に当該アクチュエータ本体1の長手方向に沿って延びる複数の突起部2(本実施形態においては5つ)を有する。アクチュエータ本体1は、押し出し成型により所定長さのものを一体的に製作することが可能である。この所定長さのアクチュエータ本体1の作製用チューブを任意の長さで切出して両端部をシリコーンゴムで閉塞し、一端に圧力供給用の後述するチューブを接続することで、所望の長さのアクチュエータを作製することが可能である。本実施形態におけるアクチュエータ本体1の断面の外形形状は、アクチュエータ本体1の断面の高さh=3.5mm、アクチュエータ本体1の断面の幅w=6.0mm、であり、突起部2の厚さ(高さ)t=0.5mm、(アクチュエータ本体1長さ方向は任意長)である(図4参照)。
なお、突起部2については、アクチュエータ表面の変位量をより大きくして推進力を得やすくするために設けられたものであるが、特に突起部2を有するものに形状を限定するものではなく、突起部2を有しないアクチュエータ本体においても、本発明の効果を得ることは可能である。
【0028】
圧力室3は、アクチュエータ本体1の内部空間を複数に区画して形成されたものであり、前記アクチュエータ本体1の長手方向に沿って延びる。
【0029】
前記複数の圧力室3は、図2に示すように、3室の圧力室であり、左右の下部圧力室3a、3bと、上部圧力室3cと、から構成される。
なお、圧力室3の数は、本実施形態の如く、3室に限定されるものではないが、アクチュエータの推進力を発生させるためには、アクチュエータ本体1の内部空間に圧力室を少なくとも3室形成する必要がある。
【0030】
上部圧力室3cは、前記アクチュエータ本体1の前記内部空間の天井部1aと断面所定形状(本実施形態では、断面円弧状)の弾性体からなる弾性隔壁1bにより区画された空間である。また、上部圧力室3cは、前記内部空間の天井部1aと断面所定形状(本実施形態では、断面円弧状)の弾性体からなる弾性隔壁1bとのなす角θが、鋭角となるべく形成されている。
なお、本実施形態では、断面円弧状の弾性隔壁1bにより内部空間を区画して上部圧力室3cを形成したが、特に弾性隔壁1bの断面形状を限定するものではない。例えば、弾性隔壁1bの断面形状としては、例えば、断面屈曲状、断面曲線状、断面ジグザグ状、断面蛇腹状等とすることもできる。
【0031】
左右下部圧力室3a、3bは、前記上部圧力室3cの外側に位置する内部空間を、少なくとも前記断面所定形状(本実施形態では、断面円弧状)の弾性隔壁1bを含む弾性隔壁により前記アクチュエータ本体1の幅方向略中央にて左右略対称に区画された空間である。左右の下部圧力室3a、3bは、アクチュエータ本体1幅方向の略中央に形成される断面柱状の弾性隔壁1cを介して隣接する。また、左右の下部圧力室3a、3bが有する上下左右の隅角部6、7は、略直角となるように形成されている。
なお、本実施形態においては、左右下部圧力室3a、3bを断面柱状の弾性隔壁1cを介して隣接する構成としているが、特に限定するものではなく、断面所定形状(本実施形態では、断面円弧状)の弾性隔壁1bの最下部が内部空間の底部1dと連設するように形成することも可能である。
また、上部圧力室3cは、少なくとも内部空間の天井部1aを上部圧力室3c内壁として含む空間であればよい。さらに、左右下部圧力室3a、3bは、少なくとも内部空間の下左右の隅角部6、7を左右下部圧力室3a、3bのそれぞれの内壁として含む空間であれば良い。また、これらに加えて、上部圧力室3c、左右下部圧力室3a、3bは、所定の弾性隔壁により内部空間を本実施形態の如く断面略Y字状や、例えば、断面略U字状、断面略V字状になるように区画して、内部空間が断面視三方に分割されるように上部圧力室3c、左右下部圧力室3a、3bを構成すればよい。
【0032】
圧力印加手段10は、前記複数の圧力室3a、3b、3cに流体(本実施形態では、エア)を供給排気制御(給排気制御)して所定の圧力を印加する手段である。圧力印加手段10には、弾性体からなる空気圧給排気用のチューブ4a、4b、4cを備えており、アクチュエータ本体1が有する前記複数の圧力室3a、3b、3cのそれぞれに接続されている。チューブ4aは、閉塞されたアクチュエータ本体1一端1eを介して左下部圧力室3aに連通している。チューブ4bは、閉塞されたアクチュエータ本体1一端1eを介して右下部圧力室3bに連通している。チューブ4cはアクチュエータ本体1一端1eを介して上部圧力室3cに連通している。圧力印加手段10は、図示しない電磁弁、コンプレッサ等を備える。圧力印加手段10は、各圧力室3a、3b、3cに対してそれぞれ独立してエアの給排気制御を行って、各圧力室3a、3b、3cを所定の圧力に制御することが可能であり、各圧力室3a、3b、3cを所望の加圧状態、負圧状態及び常圧状態(非加圧状態:大気圧)に制御することが可能である。
なお、本実施形態においては、流体としてエア(空気)を使用するが、特に限定するものではなく、例えば、流体として液体である水や生理食塩水等を使用することも可能である。
また、本実施形態におけるアクチュエータ(アクチュエータ本体1)においては、特に限定するものではないが、加圧状態の圧力値として125kPa、負圧状態の圧力値としては−35kPa程度(ともにゲージ圧)で十分な推進効果が得られる。
【0033】
次に、本実施形態に係るアクチュエータの作用について具体的に説明する。
【0034】
本実施形態に係るアクチュエータの主な特徴としては、アクチュエータ本体1の断面形状において弾性隔壁1bが曲線形状で構成され、当該弾性隔壁1bの内壁と天井部1aとのなす角θが鋭角となっていることである。このように、弾性隔壁1bが曲線形状で構成されているため、圧力が圧力室3aに印加された際の受圧面積が大きくなり、また、容易に変形が可能となる。そのため、例えば、圧力室3aを加圧することによって、右方向への変位量が大きくとれる。同様に、圧力室3bを加圧した場合には、左方向への変位量が大きくなる。また、なす角θが鋭角であることによって、圧力室3cに圧力を印加した際の垂直方向の変位量が大きくなるのである。つまり、本実施形態に係るアクチュエータでは、圧力室3cにおいて曲線構造を採用することで変位量の増加を図るとともに、上記なす角θを鋭角とすることで変位量のさらなる増加を図ったものである。各圧力室3a、3b、3cに対して、圧力を印加する順序は、圧力室3a→3c→3bである。より詳細な各圧力室3a、3b、3cに対する圧力の制御方法については、後述するアクチュエータの制御方法において説明する。
【0035】
次に、上述したアクチュエータに適用するアクチュエータの制御方法について図3を用いて説明する。具体的には、先ず、ひとつのアクチュエータ本体1の上端部の動作を制御する制御方法について図3を用いて説明する。
【0036】
図3(1)から(6)に本実施形態に係るアクチュエータ本体(アクチュエータ本体1断面)の駆動シミュレーションを示す。この駆動シミュレーションによって得られた高変位量を得るために好適なアクチュエータ本体1の制御方法は、以下のようになる。
【0037】
すなわち、上記アクチュエータにおける好適なアクチュエータ本体1の制御方法は、前記上部圧力室3c及び前記左右下部圧力室3a、3bを常圧状態とする工程と(図3(1))、前記左右下部圧力室3a、3bのうち一方の下部圧力室3aを加圧状態とするとともに前記上部圧力室3c及び他方の下部圧力室3bを常圧状態とする工程と(図3(2))、前記一方の下部圧力室3a及び上部圧力室3cを加圧状態とするとともに前記他方の下部圧力室3bを常圧状態とする工程と(図3(3))、前記上部圧力室3c及び前記左右下部圧力室を加圧状態とする工程と(図3(4))、前記一方の下部圧力室3aを常圧状態とするとともに前記上部圧力室3c及び前記他方の圧力室3bを加圧状態とする工程と(図3(5))、前記一方の下部圧力室3a及び前記上部圧力室3cを常圧状態とするとともに、前記他方の下部圧力室3bを加圧状態とする工程と(図3(6))、を含み、前記各圧力室3a、3b、3cに対して流体の供給排気制御(本実施形態においては、エアの給排気制御)を行って、前記各工程を連続して繰り返し、アクチュエータ本体1の幅方向の推進力を発生させるものである。ここで、前記各工程を連続して繰り返すとは、図3に示した工程(1)から工程(6)について順に進行させて、当該工程(6)が終了したら工程(1)に再び戻るものであり、工程(1)から工程(6)を途切れることなく連続的に繰り返すことである。
【0038】
(アクチュエータの変位率評価)
次に、本実施形態に係るアクチュエータと従来のアクチュエータとを比較するために、それぞれの変位率を求めて比較評価を行った。
本実施形態のアクチュエータにて発生する進行波は楕円状運動の集合である。そのため、アクチュエータの性能を評価するには、アクチュエータ上部で発生する楕円状運動における水平方向と垂直方向の大きさによって評価できる。
具体的には、図5(b)に示すように、アクチュエータ本体の断面形状のx方向、y方向の変位率xd、ydをアクチュエータ本体の性能を評価するための評価パラメータとして用いる。この評価パラメータでは、変位率xdが大きい場合は、アクチュエータ本体による推進速度が大きいことを表し、変位率ydが大きい場合は、アクチュエータ本体が接触する凹凸(例えば、内視鏡では、腸壁の凹凸)への適応能力が高いことを表している。
【0039】
また、アクチュエータ本体1の断面形状(図2参照)と図8、図9にてそれぞれ示した断面形状による駆動シミュレーションを行い、アクチュエータ本体1の断面形状と図8、図9にてそれぞれ示した断面形状のx方向、y方向の変位率xd、yd(xd:水平方向の変位/アクチュエータ本体の幅、yd:垂直方向の変位/アクチュエータ本体の高さ)を比較した結果を図5(a)に示す。図5(a)に示す表からわかるように、本実施形態のアクチュエータ本体1の断面形状は従来のものに比べて極めて大きな変位を実現している。
【0040】
図13は、アクチュエータ本体1の断面形状、特許文献1に記載されたアクチュエータ本体の断面形状(このアクチュエータは、バブラアクチュエータという)、及び非特許文献1に記載された従来のアクチュエータ本体の断面形状A、B、Cのそれぞれについて駆動シミュレーションを行い、それぞれの断面形状のx方向、y方向の変位率xd、ydを比較した結果である。この図13に示す座標軸からわかるように、本実施形態のアクチュエータ本体1の断面形状(図13の座標軸上で示す「発明形状:突起部あり」)は従来のものに比べて極めて大きな変位を実現している。また、本実施形態のアクチュエータ本体1において突起部2を有しない断面形状(図13のグラフ上で示す「発明形状:突起部なし」)においても、変位率xdが突起部2を有するアクチュエータ本体1と比べやや小さいが、変位率ydが従来のものに比べて極めて大きな変位を実現している。
【0041】
次に、上述したアクチュエータを内視鏡に適用した例について説明する。
なお、本実施形態においては、アクチュエータによる被駆動物として内視鏡を例として挙げたが、特に限定するものではない。
【0042】
本実施形態に係るアクチュエータを搭載した内視鏡は、完全な自律推進型ではなく、医師の挿入力の補助となる推進性能を有するものである。具体的には、大腸に内視鏡を挿入する際に、挿入を容易にするため本実施形態に係るアクチュエータを従来からある内視鏡に取り付けることで、内視鏡自体に推進力を付与するものである。これによって、臓器(本実施形態においては、大腸)に過負荷を与えないという効果がある。以下に、内視鏡にアクチュエータを搭載した場合の推進力の発生原理について説明する。
【0043】
(推進力の発生原理)
図6、図12に本実施形態に係るアクチュエータを搭載した内視鏡の推進力の発生原理を示す。
上述した複数の圧力室3a、3b、3cを有するアクチュエータにおいて、特定の圧力(空気圧)パターン(例えば、上述したアクチュエータ本体1の制御方法)で圧力室3a、3b、3cを加圧することで、アクチュエータ本体1の表面では楕円状運動(図6では、時計回り方向)が励起される。そこで、この楕円状運動の励起をより効果的に利用するために、被駆動物である内視鏡の被検体挿入部の外周に複数の前記アクチュエータ本体(本実施形態では、2つのアクチュエータ本体1・1)を平行に巻回して(突起部2が外側になるように巻回して)、前記複数2つのアクチュエータ本体1・1間に位相差を与えて、進行波をアクチュエータ本体1・1表面に発生させる。すなわち、アクチュエータ本体1を複数(本実施形態では、2本)使用し、当該2つのアクチュエータ本体1・1のそれぞれの位置関係を区別するためにそれぞれをアクチュエータ本体をA、Bとすると、図6に示すように内視鏡の長さ方向において、アクチュエータ本体A、Bが交互に、配置されるように内視鏡の被検体挿入部に螺旋状に巻きつけ、図12に示すように二つのアクチュエータ本体A、B間に位相差(180度)をつけることでアクチュエータ本体A、Bは、片方が遊脚状態(アクチュエータ本体1表面が腸壁から離れている状態)のときに他方が立脚状態(アクチュエータ本体1表面が腸壁と接している状態)となり(図7参照)、このように駆動することで進行波がアクチュエータ本体A、B全体の表面に発生する。この進行波により、内視鏡に推進力が付与されて、内視鏡を駆動することが可能となる。
【0044】
すなわち、被駆動物である内視鏡の被検体挿入部の外周に2つの前記アクチュエータ本体1を平行に巻回したアクチュエータを用いて、図12に示すように、一方の前記アクチュエータ本体Aと、他方の前記アクチュエータ本体Bと、のそれぞれにおいて、前記各工程(1)から(6)を連続して繰り返し、かつ、前記2つのアクチュエータ本体A・B間に180度の位相差を与えることで、図6に示すように進行波を生成し、内視鏡の体内への挿入時に内視鏡の進行を補助的に支援することが可能である。
【0045】
(内視鏡の推進実験)
図4は製作したアクチュエータ本体1の断面、図7は推進実験に使用した本実施形態に係るアクチュエータを搭載したダミー内視鏡(樹脂ロッド)を示している。樹脂ロッドには、2本のアクチュエータ本体1・1が平行に巻かれている。アクチュエータを駆動することでダミー内視鏡の推進(図7において矢印で示す進行方向へのダミー内視鏡の自走)が可能であった。推進速度は、4.8mm/sであり、図8に示す断面形状を有するアクチュエータと比較し、約3.7倍の速度向上が確認できた。
【0046】
このように、アクチュエータを内視鏡に適用すれば、内視鏡に推進力を付加することで挿入補助効果が得られ、安全な挿入を実現することができる。
なお、内視鏡としては、特に医療用に限定するものではなく、工業用も含めて広く適用可能である。
【0047】
以上のように、本発明によれば、既存の形状と比較して、上下方向、幅方向とも変位量を極めて大きくすることができるので、アクチュエータとしての推進性能を高めることが可能である。
【0048】
また、上記各圧力室を常圧状態にする替わりに、負圧状態にすることで、さらに上下方向、幅方向ともアクチュエータ本体の変位量を大きくすることができる。
【0049】
また、本発明によれば、内視鏡の被検体挿入部の外周に扁平なアクチュエータ本体(ラバーチューブアクチュエーター)を脱着自在に巻き付けているので内視鏡自体の高度な滅菌処理をする場合でも簡単に取り外して使い捨てが可能である。また、本発明によるアクチュエータでは、アクチュエータ本体として安価な材料が使用可能である。
【0050】
また、本発明は、従来のものに比べてコンパクトな形状のアクチュエータ本体を実現したものであり、薄型(本実施形態では、アクチュエータ本体の高さh=3.5mm)ながらも高変位率が得られるアクチュエータであるため、取付サイズ(直径)に制約のある内視鏡の挿入部等の部位にも適用することが可能である。
【0051】
また、本発明のように、上部空気圧室を中央に位置させ、左右下部空気圧室を相互に影響し合う位置づけで配置構成したことにより、最少数の圧力室(3つの圧力室)で変位量が大きくかつ安定した推進力を発生させることが可能である。
【0052】
本発明は、既存の内視鏡等の被駆動物に巻きつけて利用可能なコンパクトな形状を有し、かつ効率的な駆動が行えるアクチュエータ本体の断面形状に関するものである。なお、アクチュエータを内視鏡に巻きつけた状態でその外周を、アクチュエータを保護する保護被膜にて被覆し、アクチュエータ本体を内視鏡の被検体挿入部と一体化するように構成することも可能である。これにより、内視鏡使用後のメンテナンスの際においてアクチュエータを取り外す必要がなくなる。
【0053】
本発明は、複数のアクチュエータ本体を被駆動物である内視鏡に巻回して平行に配置し、当該複数のアクチュエータ本体に対して流体の供給排気制御を行うことで複数のアクチュエータ本体表面に進行波を発生させ、これによりを被駆動物を駆動するものであるが、特に用途を限定するものではなく、例えば、複数のアクチュエータ本体を平面状に平行に配置し、流体の供給排気制御を行うことで複数のアクチュエータ本体表面に所定方向の進行波を発生させることで、アクチュエータ本体上に載置した搬送物を所定方向に搬送することができる搬送手段としても利用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 アクチュエータ本体
1a 天井部
1b 弾性隔壁
1c 弾性隔壁
3a 左下部圧力室
3b 右下部圧力室
3c 上部圧力室
5 周壁
10 圧力印加手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用大腸内視鏡等に適用可能である弾性体で形成されたチューブ状アクチュエータの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1や特許文献2に記載されているように内視鏡誘導アクチュエータシステム(図10、図11参照)において、内視鏡に推進力を付加することが可能な空気圧駆動アクチュエータがある。このアクチュエータはチューブ状のゴム構造体に空気圧をかけることで進行波を生成し推進力を得るものである。このアクチュエータは、4つの圧力室がアクチュエータ本体の幅方向に平行に配置されたものとなっている。また、これに対して、圧力室を階層的に配置することで、アクチュエータの変位出力を増加させる構造が提案されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−253391号公報
【特許文献2】特開平11−253392号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】H.Onoe,K.Suzumori,S.Wakimoto “Optimum Design of Pneumatic Multi−chamber Rubber Tube Actuator Generating Traveling Deformation Waves for Colonoscope Insertion” 2008 IEEE International conference on Advanced Intelligent Mechatoronics, pp31−36
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1や特許文献2に記載のアクチュエータは図8に示す断面を持つチューブ状の構造である。これを内視鏡に巻きつけ、4つの部屋を順に加圧することで表面に弾性進行波を生成し、推進力を得る。しかしながら、変位が小さく、推進速度が小さい(主としてx方向(水平方向)の変位が小さいことに起因)場合や、大腸の内壁面の凸凹が大きいと推進力がうまく得られない(主としてy方向(垂直方向)の変位が小さいことに起因)という問題がある。
【0006】
これを改善する形状として図9のような形状が考案されている。図9に示す断面形状を有するアクチュエータは、図8のアクチュエータとの比較において変位量は大きい。しかしながら、依然としてその値は十分ではない。なお、非特許文献1では、アクチュエータの断面形状として、図9で示す2層構造の他3層構造の提案もなされているが、3層以上の構造では嵩高くなってしまい内視鏡への搭載が困難である。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、既存の内視鏡等の被駆動物に巻きつけて利用可能なコンパクトな形状を有し、かつ効率的な駆動が行えるアクチュエータ、その制御方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、
弾性体で形成された、複数の圧力室を有するチューブ状のアクチュエータ本体と、
前記複数の圧力室に流体を供給排出制御して所定の圧力を印加する圧力印加手段と、を備え、前記複数の圧力室の圧力を制御することで推進力を発生させるアクチュエータにおいて、
前記アクチュエータ本体は、その断面が略四角形状の周壁からなる単層構造であるとともに、当該周壁内部を弾性隔壁で区画してアクチュエータ本体長手方向に沿って形成される複数の圧力室を有するアクチュエータである。
【0010】
請求項2においては、
前記圧力室を、少なくとも3つ有するアクチュエータである。
【0011】
請求項3においては、
前記複数の圧力室は、
前記アクチュエータ本体の前記周壁内部の天井部と断面所定形状の弾性隔壁により区画された上部圧力室と、
前記上部圧力室の外側に位置する周壁内部を、少なくとも前記断面所定形状の弾性隔壁を含む弾性隔壁により前記アクチュエータ本体の幅方向略中央にて左右略対称に区画された左右下部圧力室と、
から構成されるアクチュエータである。
【0012】
請求項4においては、
前記断面所定形状の弾性隔壁は、円弧状の弾性隔壁であるアクチュエータである。
【0013】
請求項5においては、
前記周壁内部の天井部と前記断面円弧状の弾性隔壁とのなす角が、鋭角となるアクチュエータである。
【0014】
請求項6においては、
前記アクチュエータ本体は、その表面に複数の突起部を有するアクチュエータである。
【0015】
請求項7においては、
被駆動物の外周に複数の前記アクチュエータ本体を平行に巻回して、前記複数のアクチュエータ本体間に位相差を与えて前記被駆動物を駆動するアクチュエータである。
【0016】
請求項8においては、
請求項1から請求項7の何れか一項に記載のアクチュエータを用いて、
前記上部圧力室及び前記左右下部圧力室を常圧状態とする工程と、
前記左右下部圧力室のうち一方の下部圧力室を加圧状態とするとともに前記上部圧力室及び他方の下部圧力室を常圧状態とする工程と、
前記一方の下部圧力室及び前記上部圧力室を加圧状態とするとともに前記他方の下部圧力室を常圧状態とする工程と、
前記上部圧力室及び前記左右下部圧力室を加圧状態とする工程と、
前記一方の下部圧力室を常圧状態とするとともに前記上部圧力室及び前記他方の圧力室を加圧状態とする工程と、
前記一方の下部圧力室及び前記上部圧力室を常圧状態とするとともに、前記他方の下部圧力室を加圧状態とする工程と、を含み、
前記各圧力室に対して流体の供給排出制御を行って、前記各工程を連続して繰り返し、
前記アクチュエータ本体の幅方向の推進力を発生させるアクチュエータの制御方法である。
【0017】
請求項9においては、
前記被駆動物の外周に2つの前記アクチュエータ本体を平行に巻回した請求項7に記載のアクチュエータを用いて、
一方の前記アクチュエータ本体と、他方の前記アクチュエータ本体と、のそれぞれにおいて、前記各工程を連続して繰り返し、かつ、前記2つのアクチュエータ本体間に180度の位相差を与えるアクチュエータの制御方法である。
【0018】
請求項10においては、
前記常圧状態に替えて、負圧状態にするアクチュエータの制御方法である。
【0019】
請求項11においては、
請求項1から請求項7の何れか一項に記載のアクチュエータを備え、前記アクチュエータ本体を被検体挿入部の外周に巻回して設けた内視鏡である。
【0020】
請求項12においては、
前記アクチュエータ本体の外周を被覆する内視鏡である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、既存の形状と比較して、上下方向、幅方向とも変位量を極めて大きくすることができるので、アクチュエータとしての推進性能を高めることが可能である。
【0022】
また、本発明によれば、内視鏡の挿入時に補助的に支援することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係るアクチュエータの構成を示す一部破断斜視図。
【図2】本実施形態に係るアクチュエータ本体の断面形状(断面モデル)を示す断面図。
【図3】アクチュエータ(アクチュエータ本体断面)の駆動シミュレーションを示す図。
【図4】アクチュエータ本体の断面を示す図。
【図5】(a)は、各形状によるxd(水平方向)、yd(垂直方向)の変位率比較を示す図、(b)はアクチュエータの評価パラメータを示す図。
【図6】アクチュエータを搭載した内視鏡の推進力発生原理を示す図。
【図7】ダミー内視鏡に搭載したアクチュエータを示す図。
【図8】特許文献1記載のアクチュエータ本体断面を示す図であり、(a)は4つの圧力室が加圧されていない状態を示す図、(b)及び(c)は4つの圧力室を順に加圧していく状態を示す図。
【図9】非特許文献1記載のアクチュエータ本体断面を示す図であり、(a)は3つの圧力室が加圧されていない状態を示す図、(b)及び(c)は3つの圧力室を順に加圧していく状態を示す図。
【図10】従来技術を示す図。
【図11】従来技術を示す図。
【図12】アクチュエータの駆動方法を示す図。
【図13】アクチュエータ本体の断面形状による運動の比較(シミュレーション)を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0025】
本実施形態に係るアクチュエータは、複数の圧力室(チャンバー)を有し、当該複数の圧力室の圧力を制御することより推進力を発生させる空気圧駆動アクチュエータである。アクチュエータは、図1に示すように、弾性体で形成された、複数の圧力室3(3a、3b、3c)を有するチューブ状のアクチュエータ本体1と、前記複数の圧力室3に流体を供給排出制御して所定の圧力を印加する圧力印加手段10と、を主に備える。
【0026】
前記アクチュエータ本体1は、その断面が略四角形状の周壁(本実施形態では、長方形状の周壁5)からなる単層構造であるとともに、当該周壁5内部(以下、内部空間という)を弾性隔壁で区画してアクチュエータ本体1長手方向に沿って形成される複数の圧力室3を有する。
【0027】
アクチュエータ本体1は、角筒状の弾性体(本実施形態ではシリコーンゴム)からなるチューブ状アクチュエータであり、断面略長方形状の内部空間を有する。また、アクチュエータ本体1は、その表面に当該アクチュエータ本体1の長手方向に沿って延びる複数の突起部2(本実施形態においては5つ)を有する。アクチュエータ本体1は、押し出し成型により所定長さのものを一体的に製作することが可能である。この所定長さのアクチュエータ本体1の作製用チューブを任意の長さで切出して両端部をシリコーンゴムで閉塞し、一端に圧力供給用の後述するチューブを接続することで、所望の長さのアクチュエータを作製することが可能である。本実施形態におけるアクチュエータ本体1の断面の外形形状は、アクチュエータ本体1の断面の高さh=3.5mm、アクチュエータ本体1の断面の幅w=6.0mm、であり、突起部2の厚さ(高さ)t=0.5mm、(アクチュエータ本体1長さ方向は任意長)である(図4参照)。
なお、突起部2については、アクチュエータ表面の変位量をより大きくして推進力を得やすくするために設けられたものであるが、特に突起部2を有するものに形状を限定するものではなく、突起部2を有しないアクチュエータ本体においても、本発明の効果を得ることは可能である。
【0028】
圧力室3は、アクチュエータ本体1の内部空間を複数に区画して形成されたものであり、前記アクチュエータ本体1の長手方向に沿って延びる。
【0029】
前記複数の圧力室3は、図2に示すように、3室の圧力室であり、左右の下部圧力室3a、3bと、上部圧力室3cと、から構成される。
なお、圧力室3の数は、本実施形態の如く、3室に限定されるものではないが、アクチュエータの推進力を発生させるためには、アクチュエータ本体1の内部空間に圧力室を少なくとも3室形成する必要がある。
【0030】
上部圧力室3cは、前記アクチュエータ本体1の前記内部空間の天井部1aと断面所定形状(本実施形態では、断面円弧状)の弾性体からなる弾性隔壁1bにより区画された空間である。また、上部圧力室3cは、前記内部空間の天井部1aと断面所定形状(本実施形態では、断面円弧状)の弾性体からなる弾性隔壁1bとのなす角θが、鋭角となるべく形成されている。
なお、本実施形態では、断面円弧状の弾性隔壁1bにより内部空間を区画して上部圧力室3cを形成したが、特に弾性隔壁1bの断面形状を限定するものではない。例えば、弾性隔壁1bの断面形状としては、例えば、断面屈曲状、断面曲線状、断面ジグザグ状、断面蛇腹状等とすることもできる。
【0031】
左右下部圧力室3a、3bは、前記上部圧力室3cの外側に位置する内部空間を、少なくとも前記断面所定形状(本実施形態では、断面円弧状)の弾性隔壁1bを含む弾性隔壁により前記アクチュエータ本体1の幅方向略中央にて左右略対称に区画された空間である。左右の下部圧力室3a、3bは、アクチュエータ本体1幅方向の略中央に形成される断面柱状の弾性隔壁1cを介して隣接する。また、左右の下部圧力室3a、3bが有する上下左右の隅角部6、7は、略直角となるように形成されている。
なお、本実施形態においては、左右下部圧力室3a、3bを断面柱状の弾性隔壁1cを介して隣接する構成としているが、特に限定するものではなく、断面所定形状(本実施形態では、断面円弧状)の弾性隔壁1bの最下部が内部空間の底部1dと連設するように形成することも可能である。
また、上部圧力室3cは、少なくとも内部空間の天井部1aを上部圧力室3c内壁として含む空間であればよい。さらに、左右下部圧力室3a、3bは、少なくとも内部空間の下左右の隅角部6、7を左右下部圧力室3a、3bのそれぞれの内壁として含む空間であれば良い。また、これらに加えて、上部圧力室3c、左右下部圧力室3a、3bは、所定の弾性隔壁により内部空間を本実施形態の如く断面略Y字状や、例えば、断面略U字状、断面略V字状になるように区画して、内部空間が断面視三方に分割されるように上部圧力室3c、左右下部圧力室3a、3bを構成すればよい。
【0032】
圧力印加手段10は、前記複数の圧力室3a、3b、3cに流体(本実施形態では、エア)を供給排気制御(給排気制御)して所定の圧力を印加する手段である。圧力印加手段10には、弾性体からなる空気圧給排気用のチューブ4a、4b、4cを備えており、アクチュエータ本体1が有する前記複数の圧力室3a、3b、3cのそれぞれに接続されている。チューブ4aは、閉塞されたアクチュエータ本体1一端1eを介して左下部圧力室3aに連通している。チューブ4bは、閉塞されたアクチュエータ本体1一端1eを介して右下部圧力室3bに連通している。チューブ4cはアクチュエータ本体1一端1eを介して上部圧力室3cに連通している。圧力印加手段10は、図示しない電磁弁、コンプレッサ等を備える。圧力印加手段10は、各圧力室3a、3b、3cに対してそれぞれ独立してエアの給排気制御を行って、各圧力室3a、3b、3cを所定の圧力に制御することが可能であり、各圧力室3a、3b、3cを所望の加圧状態、負圧状態及び常圧状態(非加圧状態:大気圧)に制御することが可能である。
なお、本実施形態においては、流体としてエア(空気)を使用するが、特に限定するものではなく、例えば、流体として液体である水や生理食塩水等を使用することも可能である。
また、本実施形態におけるアクチュエータ(アクチュエータ本体1)においては、特に限定するものではないが、加圧状態の圧力値として125kPa、負圧状態の圧力値としては−35kPa程度(ともにゲージ圧)で十分な推進効果が得られる。
【0033】
次に、本実施形態に係るアクチュエータの作用について具体的に説明する。
【0034】
本実施形態に係るアクチュエータの主な特徴としては、アクチュエータ本体1の断面形状において弾性隔壁1bが曲線形状で構成され、当該弾性隔壁1bの内壁と天井部1aとのなす角θが鋭角となっていることである。このように、弾性隔壁1bが曲線形状で構成されているため、圧力が圧力室3aに印加された際の受圧面積が大きくなり、また、容易に変形が可能となる。そのため、例えば、圧力室3aを加圧することによって、右方向への変位量が大きくとれる。同様に、圧力室3bを加圧した場合には、左方向への変位量が大きくなる。また、なす角θが鋭角であることによって、圧力室3cに圧力を印加した際の垂直方向の変位量が大きくなるのである。つまり、本実施形態に係るアクチュエータでは、圧力室3cにおいて曲線構造を採用することで変位量の増加を図るとともに、上記なす角θを鋭角とすることで変位量のさらなる増加を図ったものである。各圧力室3a、3b、3cに対して、圧力を印加する順序は、圧力室3a→3c→3bである。より詳細な各圧力室3a、3b、3cに対する圧力の制御方法については、後述するアクチュエータの制御方法において説明する。
【0035】
次に、上述したアクチュエータに適用するアクチュエータの制御方法について図3を用いて説明する。具体的には、先ず、ひとつのアクチュエータ本体1の上端部の動作を制御する制御方法について図3を用いて説明する。
【0036】
図3(1)から(6)に本実施形態に係るアクチュエータ本体(アクチュエータ本体1断面)の駆動シミュレーションを示す。この駆動シミュレーションによって得られた高変位量を得るために好適なアクチュエータ本体1の制御方法は、以下のようになる。
【0037】
すなわち、上記アクチュエータにおける好適なアクチュエータ本体1の制御方法は、前記上部圧力室3c及び前記左右下部圧力室3a、3bを常圧状態とする工程と(図3(1))、前記左右下部圧力室3a、3bのうち一方の下部圧力室3aを加圧状態とするとともに前記上部圧力室3c及び他方の下部圧力室3bを常圧状態とする工程と(図3(2))、前記一方の下部圧力室3a及び上部圧力室3cを加圧状態とするとともに前記他方の下部圧力室3bを常圧状態とする工程と(図3(3))、前記上部圧力室3c及び前記左右下部圧力室を加圧状態とする工程と(図3(4))、前記一方の下部圧力室3aを常圧状態とするとともに前記上部圧力室3c及び前記他方の圧力室3bを加圧状態とする工程と(図3(5))、前記一方の下部圧力室3a及び前記上部圧力室3cを常圧状態とするとともに、前記他方の下部圧力室3bを加圧状態とする工程と(図3(6))、を含み、前記各圧力室3a、3b、3cに対して流体の供給排気制御(本実施形態においては、エアの給排気制御)を行って、前記各工程を連続して繰り返し、アクチュエータ本体1の幅方向の推進力を発生させるものである。ここで、前記各工程を連続して繰り返すとは、図3に示した工程(1)から工程(6)について順に進行させて、当該工程(6)が終了したら工程(1)に再び戻るものであり、工程(1)から工程(6)を途切れることなく連続的に繰り返すことである。
【0038】
(アクチュエータの変位率評価)
次に、本実施形態に係るアクチュエータと従来のアクチュエータとを比較するために、それぞれの変位率を求めて比較評価を行った。
本実施形態のアクチュエータにて発生する進行波は楕円状運動の集合である。そのため、アクチュエータの性能を評価するには、アクチュエータ上部で発生する楕円状運動における水平方向と垂直方向の大きさによって評価できる。
具体的には、図5(b)に示すように、アクチュエータ本体の断面形状のx方向、y方向の変位率xd、ydをアクチュエータ本体の性能を評価するための評価パラメータとして用いる。この評価パラメータでは、変位率xdが大きい場合は、アクチュエータ本体による推進速度が大きいことを表し、変位率ydが大きい場合は、アクチュエータ本体が接触する凹凸(例えば、内視鏡では、腸壁の凹凸)への適応能力が高いことを表している。
【0039】
また、アクチュエータ本体1の断面形状(図2参照)と図8、図9にてそれぞれ示した断面形状による駆動シミュレーションを行い、アクチュエータ本体1の断面形状と図8、図9にてそれぞれ示した断面形状のx方向、y方向の変位率xd、yd(xd:水平方向の変位/アクチュエータ本体の幅、yd:垂直方向の変位/アクチュエータ本体の高さ)を比較した結果を図5(a)に示す。図5(a)に示す表からわかるように、本実施形態のアクチュエータ本体1の断面形状は従来のものに比べて極めて大きな変位を実現している。
【0040】
図13は、アクチュエータ本体1の断面形状、特許文献1に記載されたアクチュエータ本体の断面形状(このアクチュエータは、バブラアクチュエータという)、及び非特許文献1に記載された従来のアクチュエータ本体の断面形状A、B、Cのそれぞれについて駆動シミュレーションを行い、それぞれの断面形状のx方向、y方向の変位率xd、ydを比較した結果である。この図13に示す座標軸からわかるように、本実施形態のアクチュエータ本体1の断面形状(図13の座標軸上で示す「発明形状:突起部あり」)は従来のものに比べて極めて大きな変位を実現している。また、本実施形態のアクチュエータ本体1において突起部2を有しない断面形状(図13のグラフ上で示す「発明形状:突起部なし」)においても、変位率xdが突起部2を有するアクチュエータ本体1と比べやや小さいが、変位率ydが従来のものに比べて極めて大きな変位を実現している。
【0041】
次に、上述したアクチュエータを内視鏡に適用した例について説明する。
なお、本実施形態においては、アクチュエータによる被駆動物として内視鏡を例として挙げたが、特に限定するものではない。
【0042】
本実施形態に係るアクチュエータを搭載した内視鏡は、完全な自律推進型ではなく、医師の挿入力の補助となる推進性能を有するものである。具体的には、大腸に内視鏡を挿入する際に、挿入を容易にするため本実施形態に係るアクチュエータを従来からある内視鏡に取り付けることで、内視鏡自体に推進力を付与するものである。これによって、臓器(本実施形態においては、大腸)に過負荷を与えないという効果がある。以下に、内視鏡にアクチュエータを搭載した場合の推進力の発生原理について説明する。
【0043】
(推進力の発生原理)
図6、図12に本実施形態に係るアクチュエータを搭載した内視鏡の推進力の発生原理を示す。
上述した複数の圧力室3a、3b、3cを有するアクチュエータにおいて、特定の圧力(空気圧)パターン(例えば、上述したアクチュエータ本体1の制御方法)で圧力室3a、3b、3cを加圧することで、アクチュエータ本体1の表面では楕円状運動(図6では、時計回り方向)が励起される。そこで、この楕円状運動の励起をより効果的に利用するために、被駆動物である内視鏡の被検体挿入部の外周に複数の前記アクチュエータ本体(本実施形態では、2つのアクチュエータ本体1・1)を平行に巻回して(突起部2が外側になるように巻回して)、前記複数2つのアクチュエータ本体1・1間に位相差を与えて、進行波をアクチュエータ本体1・1表面に発生させる。すなわち、アクチュエータ本体1を複数(本実施形態では、2本)使用し、当該2つのアクチュエータ本体1・1のそれぞれの位置関係を区別するためにそれぞれをアクチュエータ本体をA、Bとすると、図6に示すように内視鏡の長さ方向において、アクチュエータ本体A、Bが交互に、配置されるように内視鏡の被検体挿入部に螺旋状に巻きつけ、図12に示すように二つのアクチュエータ本体A、B間に位相差(180度)をつけることでアクチュエータ本体A、Bは、片方が遊脚状態(アクチュエータ本体1表面が腸壁から離れている状態)のときに他方が立脚状態(アクチュエータ本体1表面が腸壁と接している状態)となり(図7参照)、このように駆動することで進行波がアクチュエータ本体A、B全体の表面に発生する。この進行波により、内視鏡に推進力が付与されて、内視鏡を駆動することが可能となる。
【0044】
すなわち、被駆動物である内視鏡の被検体挿入部の外周に2つの前記アクチュエータ本体1を平行に巻回したアクチュエータを用いて、図12に示すように、一方の前記アクチュエータ本体Aと、他方の前記アクチュエータ本体Bと、のそれぞれにおいて、前記各工程(1)から(6)を連続して繰り返し、かつ、前記2つのアクチュエータ本体A・B間に180度の位相差を与えることで、図6に示すように進行波を生成し、内視鏡の体内への挿入時に内視鏡の進行を補助的に支援することが可能である。
【0045】
(内視鏡の推進実験)
図4は製作したアクチュエータ本体1の断面、図7は推進実験に使用した本実施形態に係るアクチュエータを搭載したダミー内視鏡(樹脂ロッド)を示している。樹脂ロッドには、2本のアクチュエータ本体1・1が平行に巻かれている。アクチュエータを駆動することでダミー内視鏡の推進(図7において矢印で示す進行方向へのダミー内視鏡の自走)が可能であった。推進速度は、4.8mm/sであり、図8に示す断面形状を有するアクチュエータと比較し、約3.7倍の速度向上が確認できた。
【0046】
このように、アクチュエータを内視鏡に適用すれば、内視鏡に推進力を付加することで挿入補助効果が得られ、安全な挿入を実現することができる。
なお、内視鏡としては、特に医療用に限定するものではなく、工業用も含めて広く適用可能である。
【0047】
以上のように、本発明によれば、既存の形状と比較して、上下方向、幅方向とも変位量を極めて大きくすることができるので、アクチュエータとしての推進性能を高めることが可能である。
【0048】
また、上記各圧力室を常圧状態にする替わりに、負圧状態にすることで、さらに上下方向、幅方向ともアクチュエータ本体の変位量を大きくすることができる。
【0049】
また、本発明によれば、内視鏡の被検体挿入部の外周に扁平なアクチュエータ本体(ラバーチューブアクチュエーター)を脱着自在に巻き付けているので内視鏡自体の高度な滅菌処理をする場合でも簡単に取り外して使い捨てが可能である。また、本発明によるアクチュエータでは、アクチュエータ本体として安価な材料が使用可能である。
【0050】
また、本発明は、従来のものに比べてコンパクトな形状のアクチュエータ本体を実現したものであり、薄型(本実施形態では、アクチュエータ本体の高さh=3.5mm)ながらも高変位率が得られるアクチュエータであるため、取付サイズ(直径)に制約のある内視鏡の挿入部等の部位にも適用することが可能である。
【0051】
また、本発明のように、上部空気圧室を中央に位置させ、左右下部空気圧室を相互に影響し合う位置づけで配置構成したことにより、最少数の圧力室(3つの圧力室)で変位量が大きくかつ安定した推進力を発生させることが可能である。
【0052】
本発明は、既存の内視鏡等の被駆動物に巻きつけて利用可能なコンパクトな形状を有し、かつ効率的な駆動が行えるアクチュエータ本体の断面形状に関するものである。なお、アクチュエータを内視鏡に巻きつけた状態でその外周を、アクチュエータを保護する保護被膜にて被覆し、アクチュエータ本体を内視鏡の被検体挿入部と一体化するように構成することも可能である。これにより、内視鏡使用後のメンテナンスの際においてアクチュエータを取り外す必要がなくなる。
【0053】
本発明は、複数のアクチュエータ本体を被駆動物である内視鏡に巻回して平行に配置し、当該複数のアクチュエータ本体に対して流体の供給排気制御を行うことで複数のアクチュエータ本体表面に進行波を発生させ、これによりを被駆動物を駆動するものであるが、特に用途を限定するものではなく、例えば、複数のアクチュエータ本体を平面状に平行に配置し、流体の供給排気制御を行うことで複数のアクチュエータ本体表面に所定方向の進行波を発生させることで、アクチュエータ本体上に載置した搬送物を所定方向に搬送することができる搬送手段としても利用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 アクチュエータ本体
1a 天井部
1b 弾性隔壁
1c 弾性隔壁
3a 左下部圧力室
3b 右下部圧力室
3c 上部圧力室
5 周壁
10 圧力印加手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性体で形成された、複数の圧力室を有するチューブ状のアクチュエータ本体と、
前記複数の圧力室に流体を供給排出制御して所定の圧力を印加する圧力印加手段と、を備え、前記複数の圧力室の圧力を制御することで推進力を発生させるアクチュエータにおいて、
前記アクチュエータ本体は、その断面が略四角形状の周壁からなる単層構造であるとともに、当該周壁内部を弾性隔壁で区画してアクチュエータ本体長手方向に沿って形成される複数の圧力室を有することを特徴するアクチュエータ。
【請求項2】
前記圧力室を、少なくとも3つ有することを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記複数の圧力室は、
前記アクチュエータ本体の前記周壁内部の天井部と断面所定形状の弾性隔壁により区画された上部圧力室と、
前記上部圧力室の外側に位置する周壁内部を、少なくとも前記断面所定形状の弾性隔壁を含む弾性隔壁により前記アクチュエータ本体の幅方向略中央にて左右略対称に区画された左右下部圧力室と、
から構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記断面所定形状の弾性隔壁は、円弧状の弾性隔壁であることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記周壁内部の天井部と前記断面円弧状の弾性隔壁とのなす角が、鋭角となることを特徴とする請求項4に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記アクチュエータ本体は、その表面に複数の突起部を有することを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
被駆動物の外周に複数の前記アクチュエータ本体を平行に巻回して、前記複数のアクチュエータ本体間に位相差を与えて前記被駆動物を駆動することを特徴とする請求項1から請求項6の何れか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れか一項に記載のアクチュエータを用いて、
前記上部圧力室及び前記左右下部圧力室を常圧状態とする工程と、
前記左右下部圧力室のうち一方の下部圧力室を加圧状態とするとともに前記上部圧力室及び他方の下部圧力室を常圧状態とする工程と、
前記一方の下部圧力室及び前記上部圧力室を加圧状態とするとともに前記他方の下部圧力室を常圧状態とする工程と、
前記上部圧力室及び前記左右下部圧力室を加圧状態とする工程と、
前記一方の下部圧力室を常圧状態とするとともに前記上部圧力室及び前記他方の圧力室を加圧状態とする工程と、
前記一方の下部圧力室及び前記上部圧力室を常圧状態とするとともに、前記他方の下部圧力室を加圧状態とする工程と、を含み、
前記各圧力室に対して流体の供給排出制御を行って、前記各工程を連続して繰り返し、
前記アクチュエータ本体の幅方向の推進力を発生させることを特徴とするアクチュエータの制御方法。
【請求項9】
前記被駆動物の外周に2つの前記アクチュエータ本体を平行に巻回した請求項7に記載のアクチュエータを用いて、
一方の前記アクチュエータ本体と、他方の前記アクチュエータ本体と、のそれぞれにおいて、前記各工程を連続して繰り返し、かつ、前記2つのアクチュエータ本体間に180度の位相差を与えることを特徴とする請求項7に記載のアクチュエータの制御方法。
【請求項10】
前記常圧状態に替えて、負圧状態にすることを特徴とする請求項8または請求項9に記載のアクチュエータの制御方法。
【請求項11】
請求項1から請求項7の何れか一項に記載のアクチュエータを備え、前記アクチュエータ本体を被検体挿入部の外周に巻回して設けたことを特徴とする内視鏡。
【請求項12】
前記アクチュエータ本体の外周を被覆することを特徴とする請求項11に記載の内視鏡。
【請求項1】
弾性体で形成された、複数の圧力室を有するチューブ状のアクチュエータ本体と、
前記複数の圧力室に流体を供給排出制御して所定の圧力を印加する圧力印加手段と、を備え、前記複数の圧力室の圧力を制御することで推進力を発生させるアクチュエータにおいて、
前記アクチュエータ本体は、その断面が略四角形状の周壁からなる単層構造であるとともに、当該周壁内部を弾性隔壁で区画してアクチュエータ本体長手方向に沿って形成される複数の圧力室を有することを特徴するアクチュエータ。
【請求項2】
前記圧力室を、少なくとも3つ有することを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記複数の圧力室は、
前記アクチュエータ本体の前記周壁内部の天井部と断面所定形状の弾性隔壁により区画された上部圧力室と、
前記上部圧力室の外側に位置する周壁内部を、少なくとも前記断面所定形状の弾性隔壁を含む弾性隔壁により前記アクチュエータ本体の幅方向略中央にて左右略対称に区画された左右下部圧力室と、
から構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記断面所定形状の弾性隔壁は、円弧状の弾性隔壁であることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記周壁内部の天井部と前記断面円弧状の弾性隔壁とのなす角が、鋭角となることを特徴とする請求項4に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記アクチュエータ本体は、その表面に複数の突起部を有することを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
被駆動物の外周に複数の前記アクチュエータ本体を平行に巻回して、前記複数のアクチュエータ本体間に位相差を与えて前記被駆動物を駆動することを特徴とする請求項1から請求項6の何れか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れか一項に記載のアクチュエータを用いて、
前記上部圧力室及び前記左右下部圧力室を常圧状態とする工程と、
前記左右下部圧力室のうち一方の下部圧力室を加圧状態とするとともに前記上部圧力室及び他方の下部圧力室を常圧状態とする工程と、
前記一方の下部圧力室及び前記上部圧力室を加圧状態とするとともに前記他方の下部圧力室を常圧状態とする工程と、
前記上部圧力室及び前記左右下部圧力室を加圧状態とする工程と、
前記一方の下部圧力室を常圧状態とするとともに前記上部圧力室及び前記他方の圧力室を加圧状態とする工程と、
前記一方の下部圧力室及び前記上部圧力室を常圧状態とするとともに、前記他方の下部圧力室を加圧状態とする工程と、を含み、
前記各圧力室に対して流体の供給排出制御を行って、前記各工程を連続して繰り返し、
前記アクチュエータ本体の幅方向の推進力を発生させることを特徴とするアクチュエータの制御方法。
【請求項9】
前記被駆動物の外周に2つの前記アクチュエータ本体を平行に巻回した請求項7に記載のアクチュエータを用いて、
一方の前記アクチュエータ本体と、他方の前記アクチュエータ本体と、のそれぞれにおいて、前記各工程を連続して繰り返し、かつ、前記2つのアクチュエータ本体間に180度の位相差を与えることを特徴とする請求項7に記載のアクチュエータの制御方法。
【請求項10】
前記常圧状態に替えて、負圧状態にすることを特徴とする請求項8または請求項9に記載のアクチュエータの制御方法。
【請求項11】
請求項1から請求項7の何れか一項に記載のアクチュエータを備え、前記アクチュエータ本体を被検体挿入部の外周に巻回して設けたことを特徴とする内視鏡。
【請求項12】
前記アクチュエータ本体の外周を被覆することを特徴とする請求項11に記載の内視鏡。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図4】
【図7】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図4】
【図7】
【公開番号】特開2012−30065(P2012−30065A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151301(P2011−151301)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、文部科学省特別電源所在県科学技術振興事業「ものづくりの高度化に関する基盤技術研究事業」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、文部科学省特別電源所在県科学技術振興事業「ものづくりの高度化に関する基盤技術研究事業」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【Fターム(参考)】
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