説明

アクチュエータ保持機構およびエアゾール式製品

【課題】廃棄対象のエアゾール式製品のガス抜きモードまたは内容物連続放出モードを設定・解除するときの作業(操作)手順の簡単化を図ることを目的とする。
【解決手段】ガス抜きモード/内容物連続放出モードの設定・解除用の操作部材6が、カバー体5やヒンジ作用部7と一体成形されている。ヒンジ作用部7は操作部材6の回動中心である。図示のガス抜きモード/内容物連続放出モードでは、作動モード位置のアクチュエータ(通常の操作ボタン)4の段部4aに操作部材6の可撓性片部6cが係合している。この係合保持状態を解除してアクチュエータ4を静止モードに復帰させるには、操作部材6をB方向(反時計方向)に押し上げればよい。このとき、操作部材6の可撓性片部6cがそのテーパ面6dの部分を撓らせながら段部4aから離脱して、アクチュエータ4は周知のスプリング作用によりステム3とともに上動し、静止モードとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール式製品を対象としたアクチュエータ保持機構などに関する。
【0002】
特にエアゾール式製品の作動モード(=内容物放出状態)と、静止モード(=内容物封止状態)とを選択的に設定するアクチュエータを、その作動モード位置(ガス抜きモード位置でもある)にいわばメカ的に継続して保持するとともに、必要に応じてこの保持状態を解除できるようにしたアクチュエータ保持機構に関する。
【0003】
なお、本明細書における「保持」は、利用者がいったん設定した状態が何らかの機構的作用により継続されることを示す意で用いている。すなわち、ある状態が、もっぱら利用者の操作によって継続されるような状況はこの「保持」の対象外である。
【0004】
このアクチュエータ保持機構によれば、
(1)使用済みエアゾール(内容物を使い切って廃棄対象となったエアゾール式製品)の残留ガスの放出モード(ガス抜きモード)
(2)内容物の連続放出モード
としての選択的な使い方を容易に、また確実に行うことができる。
【0005】
この(1)と(2)の各モードにおけるアクチュエータの作動態様そのものは同じであり、いずれのモードにおいても容器本体の収容物が外部空間に放出される。違うのは、使用済みエアゾールの場合には残留ガスが放出され、そうでない場合には内容物が放出されることである。また、ガス抜きモードにおいてはアクチュエータの作動状態を積極的に解除する必要はないが、連続放出モードにおいては(内容物を使いきってしまうなどの場合は別として)所望の放出終了後に利用者が当該作動状態を解除する。
【0006】
なお、作動状態解除後のアクチュエータは既存のスプリングなどの作用により通常の静止モード位置に復帰する。
【0007】
なお、本明細書では、原則としてエアゾール式製品およびエアゾール容器,容器本体,アクチュエータ,バルブなどの各用語を、概略次のような関連性の下で使っている。
【0008】
すなわち、
・エアゾール式製品は、エアゾール容器に後述の放出対象内容物や放出用ガスを収容して使用可能状態に設定済みのものであり、
・エアゾール容器は、容器本体にバルブ,アクチュエータやカバー体を取り付けたものであり、
・容器本体は、マウンティングカップ取り付け用の開口部を持つ缶形状のものであり、
・バルブは、エアゾール式製品の作動モード/静止モードを設定するための機構であってマウンティングカップやハウジング,ステム,ステムガスケットなどからなり、
・アクチュエータは、バルブと連結して内容物を放出するための作動部であって操作ボタンやスパウトなどが該当する。
【0009】
また、容器内容物の放出口の側を「前」とし、それと反対側を「後」としている。すなわち図1〜図4の左側方向が「前」で、右側方向が「後」となる。
【背景技術】
【0010】
本件出願人は、静止モードでは操作ボタンやバルブを覆って保護し、作動モードではエアゾール容器から取り外されてしまうキャップを、使用済みエアゾールにおけるガス抜き状態の自己保持部材として作用させる、すなわち当該キャップをガス抜き用治具として用いることを提案している(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
このキャップを用いて使用済みエアゾールのガス抜き処理を行なうときの利用者の作業手順は次のようになる。
(1)キャップをエアゾール容器から取り外す。
(2)いわば出力弁として作用するステムから操作ボタンを取り外す。
(3)先に取り外したキャップでステムを通常の作動モード(操作ボタンが押されて内容物が外部空間に放出される状態)の位置まで押下げて、当該キャップの一部を容器本体側のマウンティングカップに係合させる。
【0012】
この係合によりステムは作動モードと同じ状態に保持され、エアゾール容器内の残留ガスは確実に外部空間に流出していく。
【特許文献1】特開2004−75124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このように、提案済みの、操作ボタン保護用のキャップを利用したガス抜き用治具は、エアゾール式製品全体の構成部品点数を特に増やすことなしに使用済みエアゾールのガス抜きモード(=ステムを作動モード対応位置に移動させた状態)を簡単・確実に保持できるといった利点を有するものである。
【0014】
ただ、ガス抜きモード設定用のキャップでステムを押し下げるもので、あらかじめ操作ボタンをステムから取り外すといった作業を行なうことが前提になっている。
【0015】
そのため、利用者によってはガス抜きモードの設定手順にいくらかの煩雑感を覚えることもあり、上述の提案はこの点で改善の余地を残したものとなっている。
【0016】
そこで、本発明では、アクチュエータ保持機構(=ガス抜きモード/内容物連続放出モードの設定機構)を移動可能な形でエアゾール容器と一体化させるものとし、
・この保持機構の被係合部を作動モード位置のアクチュエータと係合するように移動させてこれを保持し、すなわち操作ボタンなどのアクチュエータをステムから取り外すといった中間作業なしに当該ステムの作動モード位置を保持できるようにして、ガス抜きモード設定の作業手順の簡単化を図るとともに、
・同じく内容物連続放出モードの設定手順の簡単化を図り、かつ、アクチュエータ保持機構の被係合部と作動モード位置のアクチュエータとの係合状態を解除できるようにして、エアゾール式製品の使用態様の多様化を図る、
ことを目的とする。
【0017】
また、作動モード位置のアクチュエータと係合するアクチュエータ保持機構の被係合部を、可撓性状(撓り性状)のもので構成することにより、アクチュエータを特に操作しなくても、もっぱら当該保持機構の操作に基づく被係合部の変位・変形作用でこの係合状態を解除できるようにして、内容物連続放出モードの使用時の利便化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、以上の課題を次のようにして解決する。
(1)エアゾール式製品の作動モード設定用のアクチュエータ(例えば後述のアクチュエータ4,14)をその作動モード位置に継続的に保持するアクチュエータ保持機構において、前記アクチュエータの作動モード位置への継続的な保持を選択し、またそれを解除するための操作部(例えば後述の操作部6a,16a)と、前記操作部とともに移動し、前記選択操作の際には、前記作動モード位置にの前記アクチュエータの一部と係合してこの状態を継続し、かつ、前記解除操作の際にはこの係合状態から解放される被係合部(例えば後述の片部6c,係止面16c)とを備え、前記操作部および前記被係合部がエアゾール容器と一体化されるものとする。
(2)上記(1)において、前記操作部は、前記エアゾール容器のカバー体(例えば後述のカバー体5,15)に取り付けられ、前記被係合部は、可撓性状を有する態様で前記操作部に形成されており、前記解除操作の際には当該可撓性状に基づく自らの変化によって前記係合状態から解放される、ようにする。
【0019】
このような構成からなるアクチュエータ保持機構および、このアクチュエータ保持機構を備えたエアゾール式製品を本発明の対象としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、このように、エアゾール容器と一体化されるアクチュエータ保持機構の操作部材の例えば回動操作によりその一部(被係合部)を作動モード位置のアクチュエータと係合させ、かつ、この係合状態を保持しているので、ガス抜きモード設定時の作業手順の簡単化を図ることができる。
【0021】
また、ガス抜きモード設定時と同じ手順で内容物連続放出モードを設定し、必要に応じてこの放出モードを解除可能にしているので、エアゾール式製品の使用態様の多様化を図ることができる。
【0022】
また、作動モード位置のアクチュエータと係合するアクチュエータ保持機構の被係合部として可撓性状(撓り性状)のものを用いることにより、アクチュエータを特に操作しなくても、もっぱら当該保持機構の操作に基づく被係合部の変位・変形作用でこの係合状態から解放されるようにしているので、内容物連続放出モードを使用する上での利便化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1乃至図4を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0024】
ここで、
図1は、エアゾール式製品の静止モード(その1)、すなわちアクチュエータがステム付勢用スプリング(図示省略)の作用によって上動している状態を示し、
図2は、ガス抜きモードまたは、内容物の連続放出モード(その1:図1のアクチュエータをその下動位置に保持した状態)を示し、
図3は、エアゾール式製品の静止モード(その2)、すなわちアクチュエータがステム付勢用スプリング(図示省略)の作用によって上動している状態を示し、
図4は、ガス抜きモードまたは、内容物の連続放出モード(その2:図2のアクチュエータをその下動位置に保持した状態)を示している。
図1〜図4のそれぞれにおいて、(a)は平面図を示し,(b)は断面図を示す。
【0025】
以下のアルファベット付き参照番号の構成要素は原則として、そのアルファベットなし参照番号の構成要素の一部であることを示している。例えば段部4aはアクチュエータ4の一部である。また、10番台の参照番号(14〜17)はそれぞれ図3および図4のみで使用する。
【0026】
図1〜図4において、
〔1〜3:図1乃至図4で使用〕
1は後述の内容物および放出用ガスを収納したブリキ製の容器本体,
2は容器本体1の開口端部に取り付けられてハウジング(図示省略)を保持するマウンティングカップ,
3は図示上方向への弾性力を受ける態様でハウジング(図示省略)の内部に下側部分が配されてステムガスケット(図示省略)とともに内容物の出力弁として作用するステム,
〔4〜7:図1および図2で使用〕
4はステム3に取り付けられたアクチュエータ(操作ボタン),
4aは当該アクチュエータの外周面下部に形成されて後述の可撓性片部6cとの係合作用により当該アクチュエータをその作動モード位置に保持するための段部,
4bは段部4aの下方側に続くテーパ面(外周面),
4cは外部空間に放出される内容物の通路部,
4dは当該通路部に続く放出口,
5はアクチュエータ4を囲む態様でマウンティングカップ2に取り付けられたカバー体,
5aはマウンティングカップ2の下端部分と嵌合する環状のアンダーカット(突状部),
5bは後述の操作部材6を設けるために形成された外側の開口部,
5cは当該開口部において対向する一対の起立壁,
5dは当該操作部材6の移動(回動)に対して抵抗作用およびその後の(A方向への回動時の)係止作用を呈する態様で当該起立壁に形成された一対の制動用突状部,
6はカバー体5と一体成形されてアクチュエータ4をその作動位置に保持する状態(=図1のモード)とそれを解除した状態(=図2のモード)とを選択的に設定するための操作部材,
6aは略L字状の断面形状からなる操作部,
6bは制動用突状部5dとそれぞれ係止する一対の爪部分,
6cは当該操作部から下方に延びて当該保持状態のときにアクチュエータ4の段部4bと係合する先端部分を持つ可撓性状の片部,
6dは当該片部の(アクチュエータ4から遠い方の)周面下部に形成されたテーパ面,
7は操作部材6(操作部6aの側面部分)をカバー体5の起立壁5cに連結して当該操作部材の回動中心となる一対のヒンジ作用部,
〔14〜17:図3および図4で使用〕
14はステム3に取り付けられたアクチュエータ(操作ボタン),
14aは当該アクチュエータの外周面下部に形成されて後述の縦板状部16b(係止面16c)との係合作用により当該アクチュエータをその作動モード位置(=図4)に保持するための段部,
14bは段部14aの直下方側に続くテーパ面(外周面),
14cは外部空間に放出される内容物の通路部,
14dは当該通路部に続く放出口,
15はアクチュエータ14を囲む態様でマウンティングカップ2に取り付けられたカバー体,
15aはマウンティングカップ2の下端部分と嵌合する環状のアンダーカット,
15bは後述の操作部材16を設けるために形成された外側の開口部,
15cは当該開口部において対向する一対の起立壁,
15dは当該操作部材6’の移動(回動)に対して抵抗作用およびその後の(A方向への回動時の)係止作用を呈する態様で当該起立壁間に連結された制動用リブ状部,
15eは当該制動用リブ状部の上端部分で前後方向に傾斜した(後方が低い)テーパ面,
15fはアクチュエータ14の放出口14dから噴射される内容物や残留ガスを外部空間に導くための一対の開口部,
16はカバー体15と一体成形されてアクチュエータ14をその作動位置に保持する状態とそれを解除した状態とを選択的に設定するための操作部材,
16aはスロープ状の操作部,
16bは当該操作部の裏面(前面)中央の上下方向に形成されて制動用リブ状部15dとの係止作用を呈する縦板状部,
16cは当該縦板状部の底面前端側であって下動状態のアクチュエータ14の段部14aと係止する係止面,
16dは当該係止面に続く後側に略三角形の(上下方向の)断面形状で形成されて図3のA方向の回動操作によりテーパ面15eを乗り越えて制動用リブ状部15dに係止される三角突状部,
16eは図4の例えばガス抜きモードにおける縦板状部16b(の係止面16cおよび三角突状部16d)と段部14aおよび制動用リブ状部15dとの係止状態を解除して図3の静止モードに復帰させるための起立操作片部,
17は操作部材16(操作部16aの側面部分)をカバー体15の起立壁15cに連結して当該操作部材の回動中心となる一対のヒンジ作用部,
〔A,B:図1乃至図4で使用〕
Aはアクチュエータ4,14をその作動モード位置に保持する場合の利用者の回動操作方向,
Bはこの保持状態を解除する場合の利用者の回動操作方向,
をそれぞれ示している。
【0027】
アクチュエータ4,14,カバー体5,15,操作部材6,16およびヒンジ作用部7,17などの材質は、ポリプロピレン,ポリエチレン,ナイロン,ポリアセタール,ポリブチレンテレフタレートなどのプラスチックである。
【0028】
カバー体5,15,操作部材6,16およびヒンジ作用部7,17などは一体成形品である。また、例えばアクチュエータ4をスパウト形式にして、アクチュエータ,カバー体および操作部材の全体を一体成形品とすることもできる。
【0029】
なお、操作部材6の片部6cは、その全体を薄肉状としたり、その下方部分をテーパ状としたりすることにより、可撓性(撓り性状)を備えたものになっている。材質によって片部6cの可撓性を確保するようにしてもよい。カバー体5の制動用突状部5dや操作部材6の爪部分6bなども可撓性を有している。
【0030】
また、操作部材16の縦板状部16b(係止面16c,三角突状部16d),アクチュエータ14(段部14a,テーパ面14b)やカバー体15の制動用リブ状部15d(テーパ面15e)なども同じように可撓性(撓り性状)を有している。
【0031】
図1および図3の静止モードの場合、
(11)アクチュエータ4,14は、上述のように、ステム付勢用のスプリングの作用で上動した位置に停止し、
(12)操作部材6は、その操作部6aの爪部分6bがカバー体5の制動用突状部5dの図示右側域に係止されており、
(12)’操作部材16は、その操作部16aの縦板状部16bがカバー体15の制動用リブ状部15dの外側に位置している。
【0032】
このとき、操作部材6,16はともにアクチュエータ4,14の上下動範囲から完全に逃げているので、当該アクチュエータを下方に押圧してエアゾール式製品の作動モードを設定する際に当該操作部材が邪魔になるようなことは一切ない。なお、当該操作部材の逃げ動作は例えばヒンジ作用部7,17の可撓性に基づく復帰作用によって生じる。
【0033】
図1(静止モード)のアクチュエータ4を図2のガス抜きモード/内容物の連続放出モードに移行させて保持するには例えば、
(21)アクチュエータ4をその作動モード位置まで押下げて、
(22)次に、操作部6aの上面を図示A方向に押下げることにより、ヒンジ作用部7がいわば軸となるような操作部材6の回動操作を行えばよい。
【0034】
この回動操作にともない、操作部6aの爪部分6bがそれぞれカバー体5の制動用突状部5dをいわば乗り越えてその図示左側域に係止されるとともに、片部6cも図示時計方向に回動してその先端部分がアクチュエータ4の段部4aに係合する。爪部分6bが制動用突状部5dを乗り越えるのは、それぞれの素材であるプラスチックの可撓性に基づく変形作用のためである。乗り越えた後は、爪部分6bおよび制動用突状部5dがともに元の形状に復帰して上記係止状態となる。
【0035】
この段部4aと片部6cとの係合作用により、利用者がアクチュエータの押下げ操作を止めた後もアクチュエータ4はその作動モード位置に継続的に保持される。
【0036】
なお、上記(21),(22)の操作手順は逆にしてもよい。
【0037】
この場合、
(31)先ず操作部材6のA方向への回動操作により、操作部6aの爪部分6bがそれぞれカバー体5の制動用突状部5dをいわば乗り越えてその図示左側域に係止された状態となり、かつ、可撓性状の片部6cの下端側部分がアクチュエータ4のテーパ面4bの上側部分に当接して反時計方向に変位(変形)し、
(32)この変位状態で利用者がアクチュエータ4を押下げると、その段部4aが片部6cの下端を通過した段階で当該片部は図示時計方向に復帰して、段部4aと片部6cとの係合保持状態に移行する。
【0038】
いずれの操作手順をとる場合も、アクチュエータ4の段部4aに操作部材6の片部6が係合した(係合しえる)状態で利用者が当該アクチュエータの押圧を止めると、アクチュエータ4は上述のようにスプリング(図示省略)の弾性力によりステム3とともに上動しようとする。
【0039】
そのため、段部4aと係合した操作部材6はヒンジ作用部7を中心とする図示時計方向への回動力を受け、段部4aと片部6との係合状態は確実に保持される。
【0040】
したがってカバー体5の制動用突状部5dおよび操作部6aの爪部分6bは、アクチュエータなどを図2のモードに保持するための必須構成要素とはいえない。
【0041】
また、図3(静止モード)のアクチュエータ14を図4のガス抜きモード/内容物の連続放出モードに移行させて保持するには例えば、
(41)先ず、操作部16aのスロープ面を図示A方向(=時計方向)に押下げることによりヒンジ作用部17がいわば軸となるような操作部材16の回動操作を行って、縦板状部16bの三角突状部16dが制動用リブ状部15dのテーパ面15eを乗り越えて当該リブ状部に係止される状態とし、
(42)次に、アクチュエータ14をその作動モード位置まで押下げて、その段部14aが縦板状部16bの係止面16cと係合する、
ようにすればよい。
【0042】
ここで、上記(41)において、縦板状部16bの三角突状部16dが制動用リブ状部15dのテーパ面15eを乗り越えることができるのは、それぞれの素材であるプラスチックの可撓性に基づく変形作用のためである。乗り越えた後は、三角突状部16dおよびテーパ面15eが元の形状に復帰して係止状態となる。
【0043】
この係止状態の縦板状部16bは、図4(b)に示すように、アクチュエータ14のテーパ面14bと略同じ方向に傾いている。
【0044】
そのため、上記(42)におけるアクチュエータ14のテーパ面14bは、傾斜状態の縦板状部16bの前側面部分に当接しながら当該部分を乗り越えていく。乗り越えた後、テーパ面14bなどが元の形状に復帰するので、アクチュエータ14は、図4(b)に示すようにその段部14aが縦板状部16bの係止面16cに係合された状態となる。
【0045】
この乗越え動作が可能なのは、上記(41)のときと同じように、テーパ面14bと縦板状部16bとの当接部分や、三角突状部16dと制動用リブ状部15dとの係止部分での可撓性に基づく相対的な変形作用のおかげである。
【0046】
なお、上記(41),(42)の操作手順は逆にしてもよい。
【0047】
この場合、後の手順である操作部材16のA方向への回動操作にともない、
(a)縦板状部16bの三角突状部16dが制動用リブ状部15dのテーパ面15eを乗越え、
(b)また、縦板状部16bの係止面16cの前端部分が、すでに押下げられているアクチュエータ14のテーパ面14bの上端側部分に当接するとき、当該前端部分は当該テーパ面14bを乗越えていく。
【0048】
そして図1および図2の場合と同じように、いずれの操作手順をとる場合も、アクチュエータ14の段部14aに操作部材16の係止面16cが係合した(係合しえる)状態で利用者が当該アクチュエータの押圧操作を止めると、アクチュエータ14は上述のようにスプリング(図示省略)の弾性力によりステム3とともに上動しようとする。
【0049】
そのため、段部14aと係合した操作部材16はヒンジ作用部17を中心とする図示時計方向への回動力を受け、当該段部と、当該操作部材の係止面16cとの係合状態は確実に保持される。
【0050】
図2の「ガス抜きモード/内容物の連続放出モード」を解除して図1の静止モードに復帰させるには、操作部6aの周面を図示B方向に押し上げるようにして操作部材6を図示反時計方向に回動させる操作を行えばよい。回動中心はヒンジ作用部7である。
【0051】
この回動操作にともなって、
(51)アクチュエータ4の段部4aと係合していた操作部材6は、
・片部6cの下端側部分(テーパ面6dの形成部分)が容器中心方向に撓みながら全体として当該段部から離れる方向に移動してこの係合状態から離脱し、
・かつ、操作部6aの爪部分6bがそれぞれカバー体5の制動用突状部5dを図1から図2への移行時とは逆方向に乗り越えてその図示右側域に係止され、
(52)操作部材6の片部6cとの係合状態から解放されたアクチュエータ4は、上述のスプリング作用により上方に移動する。
【0052】
この(51),(52)の各動作を経て、アクチュエータ4および操作部材6はともに図1の静止モード位置に復帰する。
【0053】
また、図3の「ガス抜きモード/内容物の連続放出モード」を解除する場合は、起立操作片部16eを図示B方向に押して操作部材16を図示反時計方向に回動させる操作を行えばよい。回動中心はヒンジ作用部17である。
【0054】
この起立操作片部16eの操作にともなう縦板状部16bの反時計方向への回動により、係止面16cはそれまで係合していたアクチュエータ14の段部14aを乗り越え、また、三角突状部16bは同じく係合していた制動用リブ状部15dを乗り越える。
【0055】
そして、いわばフリー状態となった操作部材16はヒンジ作用部17の可撓復元性に基づいてその初期状態に復帰する。すなわち図3の静止モード位置に戻る。
【0056】
なお、図1および図3の静止モードにおいて利用者が操作部材6,16に間違って軽く触れた程度では、当該操作部材の爪部分6bや三角突状部16dはいずれもカバー体5,15の制動用突状部5dや制動用リブ状部15dを乗り越えない。これにより図示のアクチュエータ保持機構は、不意に、ガス抜きモード/内容物連続放出モードへ移行することがないようにした、誤動作防止機能も担保している。
【0057】
また、図2および図4のガス抜きモード/内容物連続放出モードでは、ステム3の周知のバルブ作用部が開状態となって、容器本体1の内容物や残留ガスが「ステム3−アクチュエータ4,14の通路部4c,14c−放出口4d,14d−(開口部15f)」のルートにより外部空間に噴射される。
【0058】
本発明が以上の記載内容に限定されないことは勿論であり、例えば、
(61)アクチュエータとして、泡沫用スパウトや櫛形アクチュエータ,頭皮タッチ式アクチュエータなどの任意のものを用いる、
(62)バルブとして、プッシュダウン式バルブやチルト式バルブ,ねじ式バルブなどの任意のものを用いる、
(63)容器として、アルミニウム容器やガラス容器,プラスチック容器などを用いる、
などのことを選択的に行ってもよい。
【0059】
また、操作部材6,16をカバー体5,15に対して(図示のように回動可能な形で設けるのではなく)スライド可能な形で設けるようにしてもよい。
【0060】
すなわち操作部材を、エアゾール式製品の静止モードではその全体がアクチュエータ4,14の可動領域の外に位置し、ガス抜きモード/内容物の連側放出モードではその可撓性状の片部6cや三角突状部16dが当該可動領域に入り込んでアクチュエータ4,14の段部4a,14aに係合しえる態様で、カバー体に設ける。制動用突状部5dや制動用リブ状部15dに相当する部分も必要に応じて設ける。
【0061】
このスライドタイプの操作部材をガス抜きモード/内容物の連側放出モードへ設定するとき、また、これを解除するときそれぞれのアクチュエータ4,14との間の操作手順は、図示の回動タイプの場合と同様である。
【0062】
本発明が適用されるエアゾール式製品としては、洗浄剤,清掃剤,制汗剤,冷却剤,筋肉消炎剤,ヘアスタイリング剤,ヘアトリートメント剤,染毛剤,育毛剤,化粧品,シェービングフォーム,食品,液滴状のもの(ビタミンなど),医薬品,医薬部外品,塗料,園芸用剤,忌避剤(殺虫剤),クリーナー,消臭剤,洗濯のり,ウレタンフォーム,消火器,接着剤,潤滑剤などの各種用途のものがある。
【0063】
容器本体に収納する内容物は、例えば、粉状物,油成分,アルコール類,界面活性剤,高分子化合物,各用途に応じた有効成分などである。
【0064】
粉状物としては、金属塩類粉末,無機物粉末や樹脂粉末などを用いる。例えば、タルク,カオリン,アルミニウムヒドロキシクロライド(アルミ塩),アルギン酸カルシウム,金粉,銀粉,雲母,炭酸塩,硫酸バリウム,セルロース,これらの混合物などを用いる。
【0065】
油成分としては、シリコーン油,パーム油,ユーカリ油,ツバキ油,オリーブ油,ホホバ油,パラフィン油,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,リノール酸,リノレン酸などを用いる。
【0066】
アルコール類としては、エタノールなどの1価の低級アルコール,ラウリルアルコールなどの1価の高級アルコール,エチレングリコールなどの多価アルコールなどを用いる。
【0067】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤などを用いる。
【0068】
高分子化合物としては、メチルセルロース,ゼラチン,デンプン,カゼインなどを用いる。
【0069】
各用途に応じた有効成分としては、サリチル酸メチル,インドメタシンなどの消炎鎮痛剤、安息香酸ナトリウム,クレゾールなどの除菌剤、ヒレスロイド,ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤、酸化亜鉛などの制汗剤、カンフル,メントールなどの清涼剤、エフェドリン,アドレナリンなどの抗喘息薬、スクラロース,アスパルテームなどの甘味料、エポキシ樹脂,ウレタンなどの接着剤や塗料、パラフェニレンジアミン,アミノフェノールなどの染料,リン酸二水素アンモニウム,炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いる。
【0070】
さらに、上記内容物以外の、懸濁剤,紫外線吸収剤,乳化剤,保湿剤,酸化防止剤、金属イオン封鎖剤なども用いることができる。
【0071】
エアゾール式製品における内容物放出用ガスとしては、炭酸ガス,窒素ガス,圧縮空気,酸素ガス,希ガス,これらの混合ガスなどの圧縮ガスや、液化石油ガス,ジメチルエーテル,フロロカーボンなどの液化ガスを用いる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の、エアゾール式製品の静止モード(その1)を示す説明図であり、(a)は平面図を示し、(b)は断面図を示している。
【図2】本発明の、ガス抜きモード/内容物の連続放出モード(図1のアクチュエータをその下動位置に保持した状態)を示す説明図であり、(a)は平面図を示し、(b)は断面図を示している。
【図3】本発明の、エアゾール式製品の静止モード(その2)を示す説明図であり、(a)は平面図を示し、(b)は断面図を示している。
【図4】本発明の、ガス抜きモード/内容物の連続放出モード(図3のアクチュエータをその下動位置に保持した状態)を示す説明図であり、(a)は平面図を示し、(b)は断面図を示している。
【符号の説明】
【0073】
1:容器本体
2:マウンティングカップ
3:ステム
4:アクチュエータ(操作ボタン)
4a:段部
4b:テーパ面(外周面)
4c:内容物の通路部
4d:放出口
5:カバー体
5a:環状のアンダーカット(突状部)
5b:外側の開口部
5c:一対の起立壁
5d:一対の制動用突状部
6:操作部材
6a:操作部
6b:一対の爪部分
6c:可撓性状の片部
6d:テーパ面
7:一対のヒンジ作用部
14:アクチュエータ(操作ボタン)
14a:段部
14b:テーパ面(外周面)
14c:通路部
14d:放出口
15:カバー体
15a:環状のアンダーカット
15b:開口部
15c:一対の起立壁
15d:制動用リブ状部
15e:テーパ面
15f:一対の開口部
16:操作部材
16a:スロープ状の操作部
16b:縦板状部
16c:係止面
16d:三角突状部
16e:起立操作片部
17:一対のヒンジ作用部
A:アクチュエータ4をその作動モード位置に保持する場合の利用者の回動操作方向
B:アクチュエータ4の作動モード保持状態を解除する場合の利用者の回動操作方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール式製品の作動モード設定用のアクチュエータをその作動モード位置に継続的に保持するアクチュエータ保持機構において、
前記アクチュエータの作動モード位置への継続的な保持を選択し、またそれを解除するための操作部と、
前記操作部とともに移動し、前記選択操作の際には、前記作動モード位置の前記アクチュエータの一部と係合してこの状態を継続し、かつ、前記解除操作の際にはこの係合状態から解放される被係合部とを備え、
前記操作部および前記被係合部がエアゾール容器に一体化される、
ことを特徴とするアクチュエータ保持機構。
【請求項2】
前記操作部は、前記エアゾール容器のカバー体に取り付けられ、
前記被係合部は、可撓性状を有する態様で前記操作部に形成されており、前記解除操作の際には当該可撓性状に基づく自らの変化によって前記係合状態から解放される、
ことを特徴とする請求項1記載のアクチュエータ保持機構。
【請求項3】
請求項1または2記載のアクチュエータ保持機構を備え、かつ、放出用ガスおよび内容物を収容した、
ことを特徴とするエアゾール式製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−111350(P2006−111350A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−241499(P2005−241499)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(000144463)株式会社三谷バルブ (142)
【Fターム(参考)】