説明

アクチュエータ及び基板搬送ロボット

【課題】 駆動機構の高さをコンパクトにしたアクチュエータを提供すること。
【解決手段】 アクチュエータは、第1ロータと、第1ステータと、第2ロータと、第2ステータとを備える。第1ロータの回転軸を基準として、第1ロータおよび第2ロータは同心円状に配置され、第1ロータの回転軸を基準として、第1ステータおよび第2ステータは同心円状に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクチュエータ及び基板搬送ロボットに関する。特に、半導体ウエハ基板や、LCD、太陽電池基板、あるいは光通信機器用基板を搬送する基板搬送ロボット、基板搬送ロボットに用いるアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
図4、5の参照により、従来の基板搬送ロボットおよびプロセス処理装置(例えば、特許文献1を参照)を説明する。図5に示す複数のプロセス処理装置(以下、「処理室」)1−6は、基板搬送ロボット51を中心にして放射状に配置されている。基板搬送ロボット51は、搬送室60の内部に配置され、ロードロック室(LL1)から搬入された基板を処理室1−6のそれぞれに搬送する。各処理室で処理された基板は、最終的にロードロック室(LL2)から排出される。基板搬送ロボット51は、第1アーム52の回転(+α度)動作と、第2アーム53の回転(−2α度)動作と、を同時に行うことにより、第2アームの先端に構成されている基板保持プレート54の軌道が直線的になるように動作可能である。処理室1−6は、基板搬送ロボット51を中心にして放射状に配置されている。第1アーム52および第2アーム53の回転動作に基づいて基板保持プレート54を直線的に動作させることより、基板搬送ロボット51は各処理室に基板を搬送することが可能である。処理室で基板の処理が終了した後に、基板搬送ロボット51は処理室から基板を排出し、次の処理を行う別の処理室に基板を移載する。
【0003】
基板搬送ロボット51の概略を説明する。ベルト55と連結された内軸480は固定のまま(未回転)、外軸490を回転させると、第1アーム52は中心軸を中心に回転(+α角)する。第1アーム52の内部で所定の歯数のプーリ58と接続されたベルト55の働きにより、第2アーム53は第1アーム52の回転とは逆の方向に所定倍の角度(例えば2倍:−2α角)だけ動作する。基板保持プレート54は、第1アーム52と同一方向に同一角度回転することができるように構成されているため、結果的に、外軸490の回転運動を行うだけで、基板保持プレート54を直線的に動かす直動動作が可能になる。この直動動作により、基板保持プレート54に載置された基板を処理室内に搬送することができる。処理室で基板の処理が終了した後に、基板搬送ロボット51は、直動動作により処理室から基板を排出する。そして、基板搬送ロボット51の外軸490と内軸480を同期させて同一方向に回転させることにより、基板搬送ロボット51の向きを変えて、別の処理室へ基板を移載(以下アームの公転)することが可能である。
【0004】
特許文献2には、ベルトを排除して構成されたアームが提案されている。特許文献2のアームの場合、アームの公転時は、図5と同様に外軸、内軸を同期させて同一方向に回転させることにより基板搬送ロボットの向きを変えることができる。また、第1アームの駆動と第2アームの駆動とを同期させて、特許文献1と同様にそれぞれ所定の角度だけ回転させることにより、直動動作を実現している。更に、基板を載せかえるために、基板搬送ロボットの基板保持プレートを上下動させる上下機構を搭載している基板搬送ロボットもある。各処理室における基板処理は真空環境で行うため、基板搬送ロボット51は真空チャンバとして機能する搬送室60の真空環境を悪化することなく動作可能に構成されている。
【0005】
図4の基板搬送ロボットは、第1アームを動作させる回転駆動機構と第2アームを動作させる回転駆動機構とを有している(上側モータ400、下側モータ410)。基板搬送ロボットは、基板を保持する基板保持プレートと連結されているアームに接続されている駆動軸を直接駆動するロータとステータのセットを2セット有する。真空対応の場合、ロータとステータの間に真空隔壁の機能を有するハウジング430が設けられる。ハウジング430から真空チャンバの間では、外軸490の回りはベローズ495で覆われハウジング内部の気密状態が保持されている。永久磁石を有したロータ(内軸ロータ440、外軸ロータ450)は、ハウジング430に固定されているステータ(内軸ステータ445、外軸ステータ455)とそろえられて配置されている。下側モータ410により駆動される内軸480と上側モータ400により駆動される外軸490とは同軸になるように配置され、上側モータ400と下側モータ410とが上下に直列に設けられた構成になっている。また、回転位置検出用のセンサ(内軸用エンコーダ460、外軸用エンコーダ465)が設けられ、駆動軸の回転位置、回転角度を検出することが可能である。
【0006】
基板搬送ロボットはステータ(内軸ステータ445、外軸ステータ455)に供給された電力に基づいて、ロータ(内軸ロータ440、外軸ロータ450)を所定の角度、回転させて、基板保持プレート54に載置された基板を、図5で説明したように搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10ー128692号公報
【特許文献2】特表平8ー506771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図4に示す構成では、ロータとステータのセットが直列に配置されているため、回転駆動機構の回転軸方向に長くなる。そのため、基板を搬送する基板搬送ライン(パスライン)も合わせて高くする必要がある。すなわち、各処理室装置全体の基板搬送ライン(パスライン)も高くすることが必要とされ、装置全体は大型化せざるを得ないものとなった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
駆動機構の回転軸方向の長さをコンパクトにしたアクチュエータを提供することを目的とする。
【0010】
上記の目的を達成する本発明にかかるアクチュエータは、中空構造を有し、内側を真空排気できるハウジングと、
前記ハウジングの内部において回転自在に支持されている第1ロータと、
前記ハウジングの内部において回転自在に支持されており、前記第1ロータの回転軸を基準として、前記第1ロータが配置されている位置よりも外周側に配置されている第2ロータと、を備え、前記第1ロータの回転軸を基準として、前記第1ロータおよび前記第2ロータが同心円状に配置されているアクチュエータであって、
前記ハウジングは、
前記第1ロータの回転軸を基準として、前記第1ロータの外周側に構成されている第1外周隔壁と、
前記第2ロータの外周側に構成されている第2外周隔壁と、を備え、
前記アクチュエータは、
前記第1ロータの回転軸を基準として、前記第1ロータが配置されている位置よりも外周側に配置されており、前記第1外周隔壁を介して、前記第1ロータの外周面に対向している第1ステータと、
前記第1ロータの回転軸を基準として、前記第2ロータが配置されている位置よりも外周側に配置されており、前記第2外周隔壁を介して、前記第2ロータの外周面に対向して配置されている第2ステータと、を備えることを特徴とする。
【0011】
あるいは、本発明にかかるアクチュエータは、中空構造を有し、内側を真空排気できるハウジングと、
前記ハウジングの内部において回転自在に支持されている第1ロータと、
前記ハウジングの内部において回転自在に支持されており、前記第1ロータの回転軸を基準として、前記第1ロータが配置されている位置よりも外周側に配置されている第2ロータと、を備え、前記第1ロータの回転軸を基準として、前記第1ロータおよび前記第2ロータが同心円状に配置されているアクチュエータであって、
前記ハウジングは、
前記第1ロータの回転軸を基準として、前記第1ロータの外周側に構成されている第1外周隔壁と、
前記第2ロータの内周側に構成されている第2内周隔壁と、を備え、
前記アクチュエータは、
前記第1ロータの回転軸を基準として、前記第1ロータが配置されている位置よりも外周側に配置されており、前記ハウジングの第1外周隔壁を介して、前記第1ロータの外周面に対向している第1ステータと、
前記第1ステータの外周面に配置されているステータ支持部と、
前記第1ロータの回転軸を基準として、前記ステータ支持部よりも外周側に構成されている前記ハウジングの第2外部隔壁と、前記ステータ支持部との間に配置され、前記第2内周隔壁を介して、前記第2ロータに対向して配置されている第2ステータと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に拠れば、駆動機構の軸方向の長さをコンパクトにしたアクチュエータを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態にかかるアクチュエータの断面図。
【図2】第2実施形態にかかるアクチュエータの断面図。
【図3A】第3実施形態にかかるアクチュエータの断面図。
【図3B】一体のステータを図3Aの矢印A方向から見た図。
【図4】従来の基板搬送ロボットを説明する図。
【図5】従来の基板搬送ロボットを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって確定されるのであって、以下の個別の実施形態によって限定されるわけではない。
【0015】
(第1実施形態)
図1の参照により第1実施形態にかかる基板搬送ロボット、および基板搬送ロボットに用いるアクチュエータ1000の構成を説明する。基板搬送ロボットは、本実施形態のアクチュエータを駆動源として有する。図1は、アクチュエータ1000の断面図であり、アクチュエータ1000は同心円状に配置された2つの軸(内軸、外軸)を独立に回転駆動することが可能である。2つの軸のうち、相対的に内側にある軸を内軸110とし、相対的に外側にある軸を外軸120とする。アクチュエータのハウジング100は構成部材の接合部分にOリング500を挟み込むことにより気密状態が保持された中空構造を有し、その内部は真空チャンバ101と連通しており、真空排気可能である。ハウジング100の下面部163は、内軸ステータ112を配置するために下向きに開口した溝部を有する。ハウジング100の上面部には内軸110、外軸120を通すための開口部が形成されている。この開口部から真空チャンバ101へと延びる外軸の周囲は気密保持部材190(ベローズ)に覆われ、ハウジング100内部の気密状態が保持されている。中空構造を有するハウジング100の内部で、内軸110はベアリング600により支持され、外軸120はベアリング700、710により回転自在に支持されている。内軸110と外軸120とは独立に回転可能である。
【0016】
内軸110を駆動するモータを内軸モータ113とし、外軸120を駆動するモータを外軸モータ123とする。内軸モータ113の外周側(内軸ロータ111が回転する回転半径方向の外側)に外軸モータ123が、内軸モータ113(内軸ロータ111)の回転軸を基準として同心円状に配置されている。すなわち、内軸ロータ111の回転軸を基準として、内軸ロータ111および外軸ロータ121および内軸ステータ112および外軸ステータ122(第2ステータ)は同心円状に配置される。内軸モータ113と外軸モータ123を同心円状に配置することで軸方向の長さを短くすることができる。また、動作速度を揃えるために発生トルクを変化させる工夫により、同期回転時の制御応答性を揃えることができる。
【0017】
内軸モータ113を構成する内軸ロータ111(第1ロータ)は、永久磁石を有しており、基板搬送ロボットのハウジング100の内部において回転自在に支持されている。内軸ロータ111は、ハウジング100内で回転自在に支持されている内軸110に連結されており、内軸ロータ111の回転が内軸110に伝達され、内軸110が回転する。
【0018】
内軸ステータ112(第1ステータ)は、内軸ロータ111の回転軸を基準として、内軸ロータ111が配置されている位置よりも外周側に配置されている。内軸ステータ112(第1ステータ)は、ハウジング100を構成する隔壁114(外部隔壁)を介して、内軸ロータ111の永久磁石の外周面に対向して配置されている。
【0019】
外軸モータ123を構成する外軸ロータ121(第2ロータ)は、永久磁石を有し、基板搬送ロボットのハウジング100の内部において回転自在に支持されている。外軸ロータ121(第2ロータ)は、内軸モータ113を構成する内軸ロータ111の回転軸を基準として、内軸ステータ112が配置されている位置よりも半径方向の外周側に配置される。外軸ロータ121(第2ロータ)は、ハウジング100内で回転自在に支持されている外軸120に連結されており、外軸ロータ121(第2ロータ)の回転が外軸120に伝達され、外軸120が回転する。外軸ステータ122(第2ステータ)は、内軸ロータ111の回転軸を基準として、外軸ロータ121(第2ロータ)よりも外周側に構成されているハウジング100の側壁115を介して、外軸ロータ121の永久磁石の外周面に対向して配置されている。
【0020】
基板搬送ロボットは、内部が真空排気できるよう構成された真空チャンバ101に接続されている。基板搬送ロボットは、内軸モータ113により駆動される内軸110を介して接続される第1アームと、外軸モータ123により駆動される外軸120を介して接続される第2アームと、を有する。第1アームおよび第2アームが、内軸モータ113および外軸モータ123の回転動作を受けて所定の回転角度、回転速度で動作可能である。
【0021】
基板搬送ロボットは可動シール部材と、ハウジング100を上昇または降下させて上下方向の位置を調整することが可能な上下動装置180とを有し、アームに保持された基板の高さを制御することができる。かかる構成によれば、アクチュエータの小型化を図ることができ、真空処理装置のメンテナンスエリアを確保することが可能になる。また、メンテナンス時において、高所作業の必要がなくなり、十分な作業の安全性を確保することも可能になる。上下動装置180は、ハウジング100の底面部に構成されている。上下動装置180は、例えば、ハウジング100を上下方向に伸縮可能な可動シール部材(ベローズ管など)を介してハウジング100の上下方向の位置を調整する。
【0022】
内軸110には、内軸110(第1軸)の回転数や回転角度(第1軸の回転角度)を検出することが可能な内軸用エンコーダ170(第1検出部)が設けられている。また、外軸120には、外軸120(第2軸)の回転数や回転角度(第2軸の回転角度)を検出することが可能な外軸用エンコーダ175(第2検出部)が設けられている。内軸用エンコーダ170、外軸用エンコーダ175としては、磁気式や光学式のエンコーダを用いることができる。例えば、光学式エンコーダは、回転軸側に取り付けられたディスク171、173と、ハウジング100側に取り付けられた投光器及び読み取りヘッド172、174とからなっている。ディスク171、173は、遮光部と透光部とが所定間隔に形成されており、回転軸の回転に応じて投光器から読み取りヘッド172、174に向かう光が遮蔽される。そのため、読み取りヘッド172、174で読み取った光の検出パターンから回転軸の回転数や回転角度を検出することが可能である。
【0023】
本実施形態のアクチュエータは、内軸モータ113、外軸モータ123ともにインナーロータの形式として構成している。この構成により内軸ロータ111の永久磁石と外軸ロータ121(第2ロータ)の永久磁石とが、コイルを有する内軸ステータ112、ハウジング100の外壁116を挟んで配置される構成となるため減磁するおそれがない。
【0024】
また、内軸モータ113をインナーロータの構成として、内軸ステータ112のコイルをハウジングの外部に配置とすることで、内軸ステータ112が大気側に接する面積を広く取ることが可能になる。この構造はコイルの放熱に有利な構造である。また、外軸モータ123をインナーロータの構成とすることで、内軸ステータ112のコイルと離れて、外軸ステータ122(第2ステータ)のコイルを配置できる。この構造によりコイルの冷却を効果的に行うことが可能になる。
【0025】
内軸ステータ112は外周側でハウジングに固定され、外軸ステータ122は、外周側でステータ支持部128に固定されている。このように、内軸ステータ112及び外軸ステータ122を外周側で固定することで、内軸ステータ112と内軸ロータ111の間の隔壁(第1外周隔壁)、及び外軸ステータ122と外軸ロータ121の間の隔壁(第2外周隔壁)を薄く構成することができる。すなわち、内軸ステータ112及び外軸ステータ122から内軸ロータ111及び外軸ロータ121に及ぼす磁力の減衰を抑えることが可能になり、モータの効率の向上を図ることができる。
【0026】
本実施形態に拠れば、駆動機構の高さをコンパクトにしたアクチュエータを提供することが可能になる。すなわち、内軸用モータ部と外軸用モータ部がほぼ同心円状に並列に配置したことより、直列に配置した構造に比較して駆動部の高さを低くすることが可能になる。
【0027】
また、内軸の長さを短くすることが可能になり、シャフト自体のねじれ剛性を上げることが可能になり、搬送安定性が向上し、信頼性を向上することが可能になる。
【0028】
(第2実施形態)
次に、図2の参照により本発明の第2実施形態にかかる基板搬送ロボット、および基板搬送ロボットに用いるアクチュエータ2000の構成を説明する。図2は、アクチュエータ2000の断面図であり、アクチュエータ2000は同心円状に配置された2つの軸(内軸、外軸)を独立に回転駆動することが可能である。2つの軸のうち、相対的に内側にある軸を内軸110とし、相対的に外側にある軸を外軸120とする。図1の構成要素と同一の構成要素については、同一の参照番号を付して、説明を省略する。
【0029】
本実施形態のアクチュエータは、内軸ロータ111の外周側に内軸ステータ112が配置されている。また、内軸ステータ112の外周側に外軸ステータ122が配置され、外軸ステータ122の外周側に外軸のロータが配置されている。内軸はインナーロータ形式で、かつ、外軸はアウターロータ形式の構成となっている。内軸モータ113の外周側(内軸ロータ111が回転する回転半径方向の外側)に外軸モータ123が、内軸モータ113(内軸ロータ111)の回転軸を基準として同心円状に配置されている。すなわち、内軸ロータ111の回転軸を基準として、内軸ロータ111および外軸モータ123の外軸ロータ121および内軸ステータ112および外軸ステータ122は同心円状に配置されている。
【0030】
アクチュエータのハウジング100は中空構造を有し、その内部は真空チャンバと連通しており、真空排気可能である。中空構造を有するハウジングの内部で、内軸と外軸とは独立に回転可能である。
【0031】
内軸モータ113を構成する内軸ロータ111は、永久磁石を有しており、基板搬送ロボットのハウジング100の内部において回転自在に支持されている。内軸ロータ111は、ハウジング100内で回転自在に支持されている内軸110に連結されており、内軸ロータ111の回転が内軸110に伝達され、内軸110が回転する。
【0032】
内軸ステータ112(第1ステータ)は、内軸ロータ111の回転軸を基準として、内軸ロータ111が配置されている位置よりも外周側に配置されている。内軸ステータ112(第1ステータ)は、ハウジング100を構成する隔壁114(第1外周隔壁)を介して、内軸ロータ111の永久磁石の外周面に対向して配置されている。
【0033】
内軸ステータ112の外周面にステータ支持部201(第1ステータ支持部)が配置されている。ステータ支持部201は、内軸ステータ112を構成するコイルで生じた磁界が漏れないように磁場を遮断する材質で構成されると好適である。ステータ支持部201の外周面には、ステータ支持部202(第2ステータ支持部)が配置されている。ステータ支持部202は、外軸ステータ122を構成するコイルで生じた磁界が漏れないように磁場を遮断する材質で構成されると好適である。なお、ステータ支持部201,202はハウジング100とは別の部材として構成されているが、ハウジングと一体に構成されてもよい。なお、ステータ支持部201,202とは別体として内軸ステータ112や外軸ステータ122からの磁場を遮断する部材を、内軸ステータ112と外軸ステータ122の間に挿入してもよい。
【0034】
内軸ステータ112は外周側で、外軸ステータ122は内周側でステータ支持部に固定されている。このように、内軸ステータ112及び外軸ステータ122をステータ支持部に固定することで、内軸ステータ112と内側ロータの間の隔壁、及び外軸ステータ122と外側ロータの間の隔壁を薄く構成することができる。すなわち、内軸ステータ112及び外軸ステータ122から内側ロータ及び外側ロータに及ぼす磁力の減衰を抑えることが可能になり、モータの効率の向上を図ることができる。
【0035】
外軸ステータ122は、内軸ロータ111の回転軸を基準として、ステータ支持部202よりも外周側に構成される隔壁117(第2外周隔壁)と、ステータ支持部202との間に配置される。そして、外軸ステータ122は、隔壁117(第2内周隔壁)を介して、外軸ロータ121の永久磁石の内周面(内周側)に対向して配置される。
【0036】
外軸モータ123を構成する外軸ロータ121は、永久磁石を有し、基板搬送ロボットのハウジング100の内部において回転自在に支持されている。外軸ロータ121は、内軸モータ113の内軸ロータ111の回転軸を基準として、外軸ステータ122よりも回転半径方向の外周側に配置される。外軸ロータ121は、ハウジング100内で回転自在に支持されている外軸120に連結されており、外軸ロータ121の回転が外軸120に伝達され、外軸120が回転する。
【0037】
外軸ロータ121は、ハウジング100を構成する隔壁117(第2の隔壁)を介して、外軸ステータ122の外周面と対向して配置されている。
【0038】
本実施形態のアクチュエータは、内軸モータ113をインナーロータの形式とし、外軸モータ123をアウターロータの形式として構成している。この構成により内軸ロータ111の永久磁石と、外軸ロータ121の永久磁石と、がコイルを有する内軸ステータ112、外軸ステータ122、ステータ支持部201、202を挟んで配置されるため減磁するおそれがない。
【0039】
内軸モータ113をインナーロータ、外軸モータ123をアウターロータとして構成する。そして、内軸ステータ112のコイルと外軸ステータ122のコイルとをハウジングの外部に配置とすることで、内軸ステータ112および外軸ステータ122が大気側に接する面積を広く取ることが可能になる。この構造によりコイルの冷却を効果的に行うことが可能になる。
【0040】
(第3実施形態)
次に、図3A、Bの参照により本発明の第3実施形態にかかる基板搬送ロボット、および基板搬送ロボットに用いるアクチュエータ3000の構成を説明する。図3Aは、アクチュエータ3000の断面図であり、アクチュエータ3000は同心円状に配置された2つの軸(内軸、外軸)を独立に回転駆動することが可能である。図1の構成要素と同一の構成要素については、同一の参照番号を付して、説明を省略する。図3Bは、一体のステータ300を矢印A方向から見た図である。
【0041】
本実施形態のアクチュエータでは、ステータ300の軸心の内側に内軸用の電磁コイル301が巻き付けられ、軸心の外側に外軸用の電磁コイル302が巻き付けられており、内軸用と外軸用とが一体のステータ300として構成されている。
【0042】
なお、第2実施形態と比較すると、ステータ300の電磁コイル301と電磁コイル302の間に位置する円筒状の部分はステータ支持部として機能する部分である。本実施形態におけるステータ支持部として機能する部分には、電磁コイル301と電磁コイル302の磁場が漏れないように磁気シールドとしての機能を有している。
【0043】
アクチュエータのハウジング100は中空構造を有し、その内部は真空チャンバ101と連通しており、真空排気可能である。中空構造を有するハウジング100の内部で、内軸と外軸とは独立に回転可能である。内軸モータ113を構成する内軸ロータ111は、永久磁石を有しており、基板搬送ロボットのハウジング100内部において回転自在に支持されている。内軸ロータ111は、ハウジング100内で回転自在に支持されている内軸110に連結されており、内軸ロータ111の回転が内軸110に伝達され、内軸110が回転する。内軸ロータ111の外周側に、ステータ300の軸心の内側に巻き付けられた電磁コイル301が配置されている。
【0044】
外軸モータ123を構成する外軸ロータ121は、永久磁石を有し、基板搬送ロボットのハウジング100の内部において回転自在に支持されている。外軸ロータ121は、内軸ロータ111の回転軸を基準として、内軸ロータ111およびステータ300よりも回転半径方向の外周側に配置される。外軸ロータ121は、ハウジング100内で回転自在に支持されている外軸120に連結されており、外軸ロータ121の回転が外軸120に伝達され、外軸120が回転する。
【0045】
また、外軸ロータ121は、ステータ300の軸心の外側に巻き付けられた電磁コイル302に、ハウジング100の隔壁345を介して対向する位置に配置されている。内軸モータはインナーロータ形式であり、外軸モータはアウターロータ形式の構成となっている。ステータ300の内側に巻かれた電磁コイル301が内軸ロータ111を回転させ、かつ、ステータ300の外側に巻かれた電磁コイル302が外軸ロータ121を回転させるよう構成されている。内軸モータと外軸モータとは、内軸モータ113(内軸ロータ111)の回転軸を基準として同心円状に配置されている。すなわち、内軸ロータ111の回転軸を基準として、内軸ロータ111および外軸ロータ121およびステータ300は同心円状に配置されている。
【0046】
一体のステータ300は、ハウジング100の外部であって、下向きに開口した溝部に配置されている。ステータ300は、ハウジング100の隔壁340(第1外部隔壁)と、内軸ロータ111の回転軸を基準として隔壁340よりも外周側の隔壁345(第2外部隔壁)との間に配置され、固定されている。ステータ300の軸心の内側に巻き付けられた電磁コイル301(第1コイル)は、内軸ロータ111の外周面と隔壁340を介して対向した位置に配置されている。ステータ300の軸心の外側に巻き付けられた電磁コイル302(第2コイル)は、外軸ロータ121の外周面と隔壁345を介して対向した位置に配置されている。
【0047】
電磁コイル301(第1コイル)と電磁コイル302(第2コイル)とは軸回転平面に対して同心円上に配置されている。一体のステータ300とすることで、アクチュエータの小型化を図ることができるとともに、内軸ステータ112と外軸ステータ122とを別々に組み付けるよりも位置決め精度の向上が可能になるとともに、組立時の作業効率の向上が可能になる。
【0048】
図3Aに示すように、一体のステータ300は、一方側のコイルで生じた磁界が他方側に漏れないような厚さに形成されている。ステータ300の各コイルで発生させた磁界が飽和しないほどの厚さとされている。本実施形態では、電磁コイル301(第1コイル)により構成される内側のステータと、電磁コイル302(第2コイル)により構成される外側のステータとを連結する円筒体は厚さ4〜10mm程度である。
【0049】
本実施形態に拠れば、駆動機構の高さをコンパクトにし、内軸モータと外軸モータとの相対的な位置調整が容易なアクチュエータを提供することが可能になる。すなわち、内軸用モータ部と外軸用モータ部がほぼ同心円状に並列に配置したことより、直列に配置した構造に比較して駆動部の高さを低くすることが可能になる。
【0050】
また、内軸の長さを短くすることが可能になり、シャフト自体のねじれ剛性を上げることが可能になり、搬送安定性が向上し、信頼性を向上することが可能になる。
【0051】
また、ステータを一体に構成することで、径方向のハウジングサイズをコンパクト化することが可能になる。
【符号の説明】
【0052】
100 ハウジング
111 内軸ロータ
112 内軸ステータ
113 内軸モータ
121 外軸ロータ
112 外軸ステータ
123 外軸モータ
128 ステータ支持部
170 内軸用エンコーダ
175 外軸用エンコーダ
180 上下動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空構造を有し、内側を真空排気できるハウジングと、
前記ハウジングの内部において回転自在に支持されている第1ロータと、
前記ハウジングの内部において回転自在に支持されており、前記第1ロータの回転軸を基準として、前記第1ロータが配置されている位置よりも外周側に配置されている第2ロータと、を備え、前記第1ロータの回転軸を基準として、前記第1ロータおよび前記第2ロータが同心円状に配置されているアクチュエータであって、
前記ハウジングは、
前記第1ロータの回転軸を基準として、前記第1ロータの外周側に構成されている第1外周隔壁と、
前記第2ロータの外周側に構成されている第2外周隔壁と、を備え、
前記アクチュエータは、
前記第1ロータの回転軸を基準として、前記第1ロータが配置されている位置よりも外周側に配置されており、前記第1外周隔壁を介して、前記第1ロータの外周面に対向している第1ステータと、
前記第1ロータの回転軸を基準として、前記第2ロータが配置されている位置よりも外周側に配置されており、前記第2外周隔壁を介して、前記第2ロータの外周面に対向して配置されている第2ステータと、
を備えることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
中空構造を有し、内側を真空排気できるハウジングと、
前記ハウジングの内部において回転自在に支持されている第1ロータと、
前記ハウジングの内部において回転自在に支持されており、前記第1ロータの回転軸を基準として、前記第1ロータが配置されている位置よりも外周側に配置されている第2ロータと、を備え、前記第1ロータの回転軸を基準として、前記第1ロータおよび前記第2ロータが同心円状に配置されているアクチュエータであって、
前記ハウジングは、
前記第1ロータの回転軸を基準として、前記第1ロータの外周側に構成されている第1外周隔壁と、
前記第2ロータの内周側に構成されている第2内周隔壁と、を備え、
前記アクチュエータは、
前記第1ロータの回転軸を基準として、前記第1ロータが配置されている位置よりも外周側に配置されており、前記ハウジングの第1外周隔壁を介して、前記第1ロータの外周面に対向している第1ステータと、
前記第1ステータの外周面に配置されているステータ支持部と、
前記第1ロータの回転軸を基準として、前記ステータ支持部よりも外周側に構成されている前記ハウジングの第2外部隔壁と、前記ステータ支持部との間に配置され、前記第2内周隔壁を介して、前記第2ロータに対向して配置されている第2ステータと、
を備えることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項3】
前記ハウジングを上昇または降下させて上下方向の位置を調整することが可能な上下動装置を更に備えることを特徴とする請求項1または2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記第1ロータにより回転する第1軸には前記第1軸の回転角度および回転速度を検出するための第1検出部が設けられ、
前記第2ロータにより回転する第2軸には前記第2軸の回転角度および回転速度を検出するための第2検出部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアクチュエータを駆動源として備えることを特徴とする基板搬送ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−16214(P2012−16214A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152033(P2010−152033)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】