説明

アクチュエータ装置

【課題】コンパクトで薄型であり、かつ、変位部材に作用する加圧力の変動の小さいアクチュエータ装置を得る。
【解決手段】ベース板10と、加圧板15と、平板状の圧電素子20A,20Bと、該圧電素子20A,20Bの間に挿入された補強板25と、圧電素子20A,20Bの一端部の表面に貼着された摩擦板30A,30Bと、圧電素子20A,20Bの他端部に取り付けた重り35とで構成されている。加圧板15は圧電素子20A,20Bが変位する方向Y,−Yに延在する、剛性力が加圧板15の他の領域よりも小さい低剛性領域15aを有し、主として該低剛性領域15aによって圧電素子20A,20Bに弾性力が付与されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータ装置、特に、圧電素子を駆動源とするアクチュエータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電素子を駆動源とするアクチュエータ装置として、特許文献1には、電気的作用により伸縮し、該伸縮方向に平行な平面を有する圧電素子と、前記圧電素子の伸縮方向に平行な平面上に載置され、かつ、前記圧電素子の伸縮方向の前端に固定された第1摩擦部材と、前記第1摩擦部材の上面に当接するように載置され、被駆動体を駆動する駆動部材と、前記第1摩擦部材に対して前記駆動部材を押圧する押圧機構部と、前記圧電素子の伸縮方向の後端を固定する固定部材とを有する圧電素子を用いた駆動装置が記載されている。
【0003】
しかし、前記駆動装置においては、駆動部材を押圧する押圧機構部はコイルばねによって押圧力を得ているため、コイルばねを保持する筺体などを必要とすることから低背化が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−65777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、コンパクトで薄型であり、かつ、変位部材に作用する加圧力の変動が小さいアクチュエータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明の一形態であるアクチュエータ装置は、
電圧の印加に伴って位置が変位する変位部材と、
前記変位部材を加圧することにより、前記変位部材に対して相対的に変位する平板状の加圧板と、
を備え、
前記加圧板は、前記変位部材が変位する第1の方向に延在する、剛性が加圧板の他の領域よりも小さい低剛性領域を有し、
前記加圧板による前記変位部材に対する加圧力は主として前記低剛性領域の弾性力によって付与されていること、
を特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、変位部材と該変位部材に対して相対的に変位する平板状の加圧板とからなるため、コンパクトで薄型化が達成される。また、加圧板は、変位部材が変位する第1の方向に延在する、剛性が加圧板の他の領域よりも小さい低剛性領域を有し、主として該低剛性領域の弾性力によって変位部材に対する加圧力を付与しているため、変位部材に作用する加圧力の変動が小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1実施例であるアクチュエータ装置を示す分解斜視図である。
【図2】第1実施例であるアクチュエータ装置を示す側面図である。
【図3】第1実施例であるアクチュエータ装置の移動部を示す側面図である。
【図4】第1実施例であるアクチュエータ装置の動作説明図である。
【図5】圧電素子に印加する駆動電圧を示すグラフである。
【図6】第2実施例であるアクチュエータ装置を示す側面図である。
【図7】第2実施例であるアクチュエータ装置の動作説明図である。
【図8】第3実施例であるアクチュエータ装置の要部を示す側面図である。
【図9】第4実施例であるアクチュエータ装置を示す分解斜視図である。
【図10】加圧板の第1例を示す平面図である。
【図11】加圧板の第1例のばね定数特性を示すグラフである。
【図12】比較例である加圧板を示す平面図である。
【図13】比較例である加圧板のばね定数特性を示すグラフである。
【図14】加圧板の第2例を示す平面図である。
【図15】加圧板の第2例のばね定数特性を示すグラフである。
【図16】加圧板の第3例を示す平面図である。
【図17】加圧板の第4例を示す平面図である。
【図18】加圧板の第5例を示す平面図である。
【図19】加圧板の第6例を示す平面図である。
【図20】第5実施例であるアクチュエータ装置を示す斜視図である。
【図21】第5実施例であるアクチュエータ装置を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るアクチュエータ装置の実施例について添付図面を参照して説明する。なお、各図において共通する部材、部分には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
(第1実施例、図1〜図5参照)
本発明の第1実施例であるアクチュエータ装置1は、図1に示すように、ベース板10と、加圧板15と、平板状の圧電素子20A,20Bと、該圧電素子20A,20Bの間に挿入された補強板25と、圧電素子20A,20Bの一端部の表面に接合固定(貼着)された摩擦板30A,30Bと、圧電素子20A,20Bの他端部に取り付けた重り35と、ベース板10と加圧板15との間に介在されたスペーサ36と、で構成されている。
【0011】
圧電素子20A,20Bは、帯状をなす単板の表裏面に電極を形成したもので、真鍮製の薄板材からなる補強板25の表裏面に接着されている。補強板25の端部は圧電素子20A,20Bの他端部から突出しており、この突出部分に重り35が取り付けられている。
【0012】
加圧板15はベース板10に対して圧電素子20A,20Bを間に挟んでビスやカシメなどで固定されている。即ち、圧電素子20A,20Bはベース板10と加圧板15との間に摩擦板30A,30Bを介して所定の弾性力で挟持されている。加圧板15は所定のばね定数を保持しており、そのばね性で圧電素子20A,20Bを摩擦板30A,30Bを介してベース板10との間で弾性的に挟持している。即ち、加圧板15は板ばねを構成している。圧電素子20A,20Bに対する弾性的な圧接力はスペーサ36の厚さによって調整される。
【0013】
なお、加圧板15の構成、作用やばね定数特性などについては、図10〜図19を参照して以下に詳述する。
【0014】
圧電素子20A,20Bは、その分極方向が図3に矢印で示すように補強板25を挟んで互いに逆向きであり、駆動用の配線41は補強板25を通じて一方面の電極に接続され、配線42は他方面の電極に接続されている。この圧電素子20A,20Bは電圧印加方向と垂直方向に変位するd31モードを利用してアクチュエータとして利用される。即ち、圧電素子20A,20Bは分極方向に電界が作用すると、厚み方向に伸縮するとともに面方向にも伸縮する。厚み方向に伸びるときは面方向に縮み、厚み方向に縮むときは面方向に伸びる。
【0015】
以上の構成からなる本第1実施例の動作を概説すると、図4(A)に示す通常状態から、低速充電すると圧電素子20A,20Bは緩やかに収縮し、重り35が摩擦板30A,30Bに近づく(図4(B)参照)。次に、逆方向に急速充電すると圧電素子20A,20Bは急速に伸長し、重り35は自身の慣性で動くことはなく、摩擦板30A,30Bがベース板10と加圧板15との間で滑りを生じる(図4(C)参照)。次に、低速充電すると圧電素子20A,20Bは緩やかに収縮し、重り35が摩擦板30A,30Bに近づく(図4(D)参照)。以上の動作を繰り返すことにより、重り35が図4中左方に移動することになる。
【0016】
圧電素子20A,20Bを駆動するために印加する電圧は概略図5に示すとおりである。図5は圧電素子20A,20Bの緩やかな収縮、急速な伸長のプロファイルを示してもいる。
【0017】
即ち、第1実施例において、圧電素子20A,20B、補強板25、重り35、摩擦板30A,30Bが移動部であり、ベース板10、加圧板15、スペーサ36が固定部である。
【0018】
ところで、圧電素子20A,20Bは、チタン酸ジルコン酸鉛などの圧電セラミック材料からなり、セラミック単板の表裏面に電極を形成したものである。補強板25と重り35は真鍮製であり、適宜絶縁処理が必要である。ベース板10と加圧板15は、ステンレス製であり、摩擦板30A,30Bとの対向面には硬化処理及び/又は潤滑処理が施されている。例えば、無電解ニッケルめっきを施した後に熱処理が施されている。硬質クロムめっきが施されていてもよい。摩擦板30A,30Bはステンレス製であり、表面にはコーティング処理が施されている。コーティング処理はダイヤモンドライクカーボン又はフッ素樹脂とニッケルの複合皮膜を好適に用いることができる。
【0019】
厚さに関してその一例を示すと、ベース板10は0.4mm、摩擦板30A,30Bはそれぞれ0.05mm、圧電素子20A,20Bはそれぞれ0.15mm、補強板25は0.1mm、加圧板15は0.3mmであり、アクチュエータ装置1としては1.2mmの厚みである。また、保持力は300gf、駆動力は70gf、移動速度は9mm/sが達成されている。
【0020】
以上のごとく、本第1実施例においては、圧電素子20A,20Bのd31モードでの動作によって、圧電素子20A,20B及び重り35が移動部となるコンパクトで薄型のアクチュエータ装置1を得ることができる。特に、圧電素子20A,20Bは摩擦板30A,30Bを介してベース板10及び加圧板15と圧接しているため、摩擦板30A,30Bによって圧電素子20A,20Bが機械的に保護される。摩擦板30A,30Bを薄くすることで、移動体を構成する質量が重り35に集中することになり、重り35の慣性効果を高め、駆動力を大きくしたり、駆動電圧を小さくすることができる。
【0021】
また、加圧板15及びベース板10の主面の面積を摩擦板30A,30Bの主面の面積よりも大きくすることにより、重り35の移動量を大きくすることができる。また、ベース板10に圧接する摩擦板30Bと加圧板15に圧接する摩擦板30Aは互いに面積が異なっており、小さいほうの摩擦板30Aは大きいほうの摩擦板30Bに平面視で重なるように設けられていてもよい。これにて、摩擦板30Bの端部での接触摺動を防止し、ベース板10及び加圧板15との確実な面接触を確保することができる。特に、加圧板15と圧接する摩擦板30Aの面積をベース板10と圧接する摩擦板30Bよりも小さくすることで、動作が安定化する。さらに、加圧板15は自身のばね性で摩擦板30A,30Bを加圧しているため、別途弾性部材を必要とすることがなく、アクチュエータ装置1がさらに小型化、低背化される。補強板25の端部に重り35を固定する構造も装置の低背化に寄与する。
【0022】
また、圧電素子20A,20Bは補強板25に固着されているため、圧電素子20A,20Bを薄くしても機械的強度を補強することができ、圧電素子20A,20Bの割れを未然に防止できる。2枚の圧電素子20A,20Bを補強板25の表裏面に固着し、それぞれの分極方向が補強板25を挟んで互いに逆向きであるため、2枚の圧電素子20A,20Bに並行して電圧を印加することにより、駆動電圧を低減できる。
【0023】
さらに、ベース板10及び/又は加圧板15の表面であって摩擦板30A,30Bが圧接する面には硬化処理及び/又は潤滑処理を施すことにより、滑らかな移動を実現でき、耐久性が向上する。さらに、摩擦板30A,30Bが圧電素子20A,20Bに接合固定されているので、圧電素子20A,20Bの振動が摩擦板30A,30Bに直接的に伝達され、ベース板10との間で高速な駆動が可能になる。
【0024】
また、第1実施例では、重り35を設けたが、重り35は必ずしも必要ではない。重り35を設けることは、重り35が支点となって慣性体として機能するので、より大きな移動量が得られ、好ましい。
【0025】
(第2実施例、図6及び図7参照)
第2実施例であるアクチュエータ装置2は、図6に示すように、基本的には前記第1実施例と同じ構成からなり、異なるのは、圧電素子20A,20Bの他端部に取り付けた重り35に代えて支持部37としたものである。この支持部37及び圧電素子20A,20Bが固定部となり、ベース板10、加圧板15、スペーサ36が移動部となる。
【0026】
即ち、その移動形態は、図7(A)に示す通常状態から、低速充電すると圧電素子20A,20Bは緩やかに収縮し、ベース板10及び加圧板15が支持部37に近づく(図7(B)参照)。次に、逆方向に急速充電すると圧電素子20A,20Bは急速に伸長し、ベース板10及び加圧板15は自身の慣性で動くことはなく、摩擦板30A,30Bがベース板10と加圧板15との間で滑りを生じる(図7(C)参照)。次に、低速充電すると圧電素子20A,20Bは緩やかに収縮し、ベース板10及び加圧板15が支持部37に近づく(図7(D)参照)。以上の動作を繰り返すことにより、ベース板10及び加圧板15が図7中右方に移動することになる。
【0027】
なお、前記支持部37は、例えば、電子機器の筺体(図示せず)そのものであってもよく、あるいは、固定された重り35であってもよい。
【0028】
本第2実施例において、その他の構成は前記第1実施例と同様であり、その作用効果も第1実施例と同様である。
【0029】
(第3実施例、図8参照)
第3実施例であるアクチュエータ装置3は、図8にその要部を示すように、3枚の圧電素子20A,20B,20Cを2枚の補強板25を介在させて積層したもので、それぞれの分極方向は図8に矢印で示すように補強板25を挟んで互いに逆向きである。その他の構成は前記第1実施例と同様であり、その作用効果も第1実施例と同様であり、特に、本第3実施例では駆動力が大きくなる。
【0030】
(第4実施例、図9参照)
第4実施例であるアクチュエータ装置4は、図9に示すように、d33モードで動作する圧電素子21を用いたものである。圧電素子21の先端に摩擦部材31が固定され、後端には重り38が固定されている。ベース板10と加圧板15との間にはスペーサ36を介して摩擦部材31が圧着されている。
【0031】
本第4実施例においては、圧電素子21がd33モードで動作する点以外は前記第1実施例と同様に、圧電素子21の伸縮動作に伴って重り38が間欠的に移動(図4に示した動作)、あるいは、ベース板10が移動する(図7に示した動作)。
【0032】
(加圧板の形状、加圧力の適正化、図10〜図19参照)
ところで、前記圧電素子は大きな変位を得ることができるd31モードで動作する。しかし、図5に示した波形の電圧を印加することで、図4又は図7に示した動作をするインパクト型であるため、加圧板による加圧力に起因する摩擦力に対する圧電素子の駆動力が小さくて扱いにくい面を有している。具体的には、加圧板による圧力が大きすぎると、圧電素子の変位が阻害され動作しにくくなる。一方、圧力が小さすぎると、圧電素子のみが変位してしまい、加圧板や重りが追随せず、アクチュエータとして機能しない。特に、変位部材の移動位置によって加圧板による圧力があまり変動しないことが好ましいことは、d33モードで動作する圧電素子にとっても同様である。そこで、加圧板の好ましい形状、構造について以下に説明する。
【0033】
(加圧板の第1例、図10及び図11参照)
第1例である加圧板15は、図10に示すように、圧電素子が変位する変位方向Y,−Yに延在する、剛性が加圧板15の他の領域よりも小さい低剛性領域15a(図10(B)に斜線を付して示す)を有している。具体的には、加圧板15の長辺方向Y,−Y方向に対する直交方向Xの両端部分には、それぞれ、4個ずつの固定用穴16及びコ字形状の開口部17が形成され、開口部17と開口部17との間及び開口部17から加圧板15の端部までをリブ18とされている。加圧板15は固定用穴16にてスペーサ36を介してベース板10にねじ止めされている。つまり、加圧板15は開口部17の外側で固定され、Y,−Y方向にリブ18が並んでいる領域が低剛性領域15aである。
【0034】
このような低剛性領域15aを有する加圧板15によって圧電素子を押圧することにより、加圧板15の中央部分とY方向及び−Y方向の外縁部分とのばね定数の差を小さくでき、圧電素子に対して適度な加圧力を加えることができる。中央部分を0として変位方向Y,−Yの位置とばね定数との関係をシミュレーションすると、図11に示す特性が得られた。中央部分から外縁部分にわたってばね定数は最大値の12%しか変動していない。つまり、加圧板15の第1例では、中央部分と外縁部分とのばね定数の差を小さくでき、圧電素子に対して適度な加圧力を加えることができる。
【0035】
より詳しくは、加圧板15の第1例においては、長辺方向Y,−Yに対して直交方向Xにリブ18を形成しているため、長辺方向Y,−Y方向に開口部17が複数並んでいることによって生じるY−Y断面における凸状の撓みだけではなく、開口部17間にリブ18部分が形成されることによって、X−X断面における凸状に撓みも生じる。加圧板15が変位部材に加える加圧力は、この長辺方向とそれとは直交する方向のそれぞれに加わる加圧力の合計になるので、前記の構成によれば、加圧力15によって押しつけられる変位部材がどの位置に移動したとしても加圧板15からはほぼ均等な加圧力を与えることができる。それゆえ、加圧板15の中央部分と外縁部分との間で生じる加圧板15の変位量の差が小さくなり、摩擦板30A,30Bの位置による加圧力の変動量が小さくなる。
【0036】
(比較例、図12及び図13参照)
ここで、比較例として、図12に示すように、直交方向Xの両側部分であって中央部分の1箇所に固定用穴16を形成してねじ止めする加圧板15’のばね定数特性を図13に示す。ここでばね定数は、中央部分から外縁部分にわたって最大値の72%の変動を示している。
【0037】
(加圧板の第2例、図14及び図15参照)
第2例である加圧板15は、図14に示すように、中央部分に位置するリブ18aの幅よりも長辺方向Y,−Yの端部部分に位置するリブ18b,18cの幅の方を大きくしたものであり、他の構成は前記第1例と同様である。中央部分を0として変位方向Y,−Yの位置とばね定数との関係をシミュレーションすると、図15に示す特性が得られた。中央部分から外縁部分にわたってばね定数は最大値の2.5%しか変動していない。つまり、加圧板15の第2例では、リブ18の幅寸法を変位方向Y,−Yに比例して大きくすることにより、中央部分と外縁部分とのばね定数の差を極めて小さくでき、圧電素子に対して適度な加圧力を加えることができる。
【0038】
また、中央部分に位置するリブ18aの厚みよりも変位方向Y,−Yの端部部分に位置するリブ18b,18cの厚みを大きくすることにより、第2例と同様の効果を得ることができる。
【0039】
(加圧板の第3例及び第4例、図16及び図17参照)
第3例及び第4例である加圧板15は、リブ18a,18b,18cをそれぞれ異なる形状としたものである。図16に示す第3例では、リブ18a,18b,18cの直交方向Xの幅を変えている。図17に示す第4例では、リブ18a,18bを屈曲させている。これらの形状によっても、加圧板15の中央部分と外縁部分とのばね定数の差を小さくできる。
【0040】
(加圧板の第5例及び第6例、図18及び図19参照)
第5例及び第6例である加圧板15は、図18及び図19に示すように、直交方向Xの両側部分に、変位方向Y,−Yに延在する帯状の薄肉部分19(斜線を付した部分)を形成し、該薄肉部分19を低剛性領域としたものである。固定用穴16は薄肉部分19の外側に4カ所ずつ設けられている。薄肉部分19は、図18に示す第5例では、変位方向Y,−Yに同じ幅で形成されており、図19に示す第6例では、変位方向Y,−Yに比例して若干狭く形成されている。このような帯状の薄肉部分19を形成することによっても、加圧板15の中央部分と外縁部分とのばね定数の差を小さくできる。
【0041】
(第5実施例、図20及び図21参照)
次に、第5実施例であるアクチュエータ装置5は、図20及び図21に示すように、基本的には前記第1実施例と同様の構成を備え、前記重り35に代えて、重り39及び筺体40を設けたものである。筺体40は樹脂の一体成形品からなり、枠部41に重り39を嵌めこみ、連結部42が裏面側の圧電素子20Bと接合固定(接着)されている。また、スペーサ36aは前記2本のスペーサ36をコ字形状に一体化したものを使用している。
【0042】
本第5実施例では、ベース板10に形成した穴11にて図示しない移動体にねじ止めし、筺体40に形成した穴43にて図示しない固定体にねじ止めする。動作形態は前記第1実施例と同様であり、加圧板15の作用効果も前述のとおりである。本第5実施例では、加圧板15が圧電素子20A,20Bの全面ではなく約半分の面積を覆っているだけである。つまり、加圧板15は圧電素子20A,20Bの全面を覆う必要はなく、圧電素子20A,20Bを適度な圧力で押圧することにより、小型化した状態でアクチュエータとしての動作が可能である。
【0043】
(他の実施例)
なお、本発明に係るアクチュエータ装置は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更できる。
【0044】
特に、圧電素子は1枚であってもよく、この場合には2枚の補強板を圧電素子の表裏面に固着して、補強を行ってもよい。また、積層構造にしてもよい。また、圧電素子の駆動回路の構成、印加電圧の形態、重りの取付け形態などは任意である。前記実施例に示した各部材の材料や寸法などはあくまで一例であることは勿論である。
【0045】
また、磁石からなる加圧板を圧電素子に固着し、磁性体からなるベース板と加圧板との吸引力を利用して、摩擦部材をベース板に圧接させるような構成でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上のように、本発明は、アクチュエータ装置に有用であり、特に、コンパクトで薄型とすることができ、かつ、変位部材に作用する加圧力の変動が小さい点で優れている。
【符号の説明】
【0047】
1〜5…アクチュエータ装置
10…ベース板
15…加圧板
15a…低剛性領域
16…固定用穴
17…開口部
18(18a,18b,18c)…リブ
19…薄肉部分
20A,20B,20C,21…圧電素子
30A,30B…摩擦板
31…摩擦部材
35,38,39…重り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧の印加に伴って位置が変位する変位部材と、
前記変位部材を加圧することにより、前記変位部材に対して相対的に変位する平板状の加圧板と、
を備え、
前記加圧板は、前記変位部材が変位する第1の方向に延在する、剛性が加圧板の他の領域よりも小さい低剛性領域を有し、
前記加圧板による前記変位部材に対する加圧力は主として前記低剛性領域の弾性力によって付与されていること、
を特徴とするアクチュエータ装置。
【請求項2】
前記加圧板は前記第1の方向と直交する第2の方向の両側部分おいて複数個所で固定されていること、を特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ装置。
【請求項3】
前記加圧板には前記第2の方向の両側部分に、複数の開口部を有するとともに、該開口部の間にリブが設けられており、前記開口部及び前記リブが第1の方向と平行に並んでいる領域が前記低剛性領域であること、を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアクチュエータ装置。
【請求項4】
前記加圧板の固定位置は前記開口部の外側に配置されていること、を特徴とする請求項3に記載のアクチュエータ装置。
【請求項5】
複数の前記リブは、前記第1の方向の中央部分に位置するリブの幅よりも第1の方向の端部部分に位置するリブの幅の方が大きいこと、を特徴とする請求項3又は請求項4に記載のアクチュエータ装置。
【請求項6】
複数の前記リブは、前記第1の方向の中央部分に位置するリブの厚みよりも第1の方向の端部部分に位置するリブの厚みの方が大きいこと、を特徴とする請求項3又は請求項4に記載のアクチュエータ装置。
【請求項7】
前記加圧板には前記第2の方向の両側部分に、前記第1の方向に延在する帯状の薄肉部分を有し、該薄肉部分が前記低剛性領域であること、を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアクチュエータ装置。
【請求項8】
前記変位部材は電圧が印加されることによって伸縮する圧電素子であり、前記加圧板は前記圧電素子を加圧すること、を特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のアクチュエータ装置。
【請求項9】
前記加圧板と前記圧電素子との間には摩擦部材が介在されていること、を特徴とする請求項8に記載のアクチュエータ装置。
【請求項10】
前記変位部材は電圧が印加されることによって伸縮する圧電素子と、該圧電素子に接合された移動部材とで構成され、前記加圧板は前記移動部材を加圧すること、を特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のアクチュエータ装置。
【請求項11】
前記移動部材は前記加圧板に対して摩擦力を有していること、を特徴とする請求項10に記載のアクチュエータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−259684(P2011−259684A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224801(P2010−224801)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】