説明

アクチュエータ駆動装置

【課題】 Hブリッジ回路を用いたアクチュエータ駆動装置における省電力化。
【解決手段】 Hブリッジ回路に供給される2種類のパルス信号が以下の条件を満たす。
x≧Xmin時
パルス信号Aのパルス幅=T(x/Xmax)
パルス信号Bはローレベル、
x≦(−Xmin)時
パルス信号Aはローレベル、
パルス信号Bのパルス幅=T(|x|/Xmax)
0<x<Xmin時
パルス信号Aのパルス幅=T(x/Xmax)+Tmin
パルス信号Bのパルス幅=Tmin
0>x>(−Xmin)時
パルス信号Aのパルス幅=Tmin
パルス信号Bのパルス幅=T(|x|/Xmax)+Tmin
x=0時
パルス信号Aのパルス幅=Tmin
パルス信号Bのパルス幅=Tmin
(x:制御信号、Tmin:アクチュエータを駆動可能な最小パルス幅、Xmin:そのときの制御信号であり、Xmin=Xmax(Tmin/T))

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,例えば光ディスク装置に必要なピックアップのフォーカス、トラッキング制御を行うためのアクチュエータを駆動するアクチュエータ駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コイルと磁石などで構成されたアクチュエータを駆動するアクチュエータ駆動装置において、図3(a)のような回路が用いられている。図3(a)のついて以下説明する。301は、アクチュエータの駆動力に応じた制御信号である。PWM回路302でPWM信号に変換されたパルスが、Hブリッジ回路305に供給され、アクチュエータ306を駆動する。図3(c)は、Hブリッジ回路305に供給される波形を示している。図3(a)で示したように、Hブリッジ回路305に供給される信号Aに対して、信号Bはインバーター303で反転された信号であり、周期Tのパルスのデューティが制御信号に応じて変化する。その特性を示したものが図3(b)であり、制御信号Xを横軸に、周期Tのパルスのハイレベル時間を縦軸に表している。図3(b)より、制御信号Xがゼロの場合は、Hブリッジ回路305に供給される信号A、Bのパルスのハイレベル期間はT/2である。すなわちパルスのデューティは50%となる。制御信号Xがプラスの場合、Hブリッジ回路305に供給される信号Aのパルスのハイレベル期間はT/2より大きく、信号Bのパルスのハイレベル期間はT/2より小さくなる。
【0003】
信号Aがハイレベルの時は、アクチュエータのCが電源、DがGNDに接続されるのと等価になりアクチュエータに正方向の力が駆動される。逆に信号Bがハイレベルの時はアクチュエータのDが電源、CがGNDに接続されるのと等価になりアクチュエータに逆方向の力が駆動される。アクチュエータは周期Tの高周波には応答しないため、この、正逆方向の力の平均が、アクチュエータの実際の駆動力となる。
【特許文献1】特開平11−308521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光ディスク装置を搭載した機器において、バッテリ駆動して持ち運べるポータブルという使用形態において、長時間の動作をさせるため光ディスク装置の低消費電力化が求められている。
【0005】
しかしながら、上記従来例では、図3のようなPWM特性の場合、必要な駆動力が小さいにもかかわらず、制御信号がゼロ付近においてはアクチュエータに多くの電流が流れ、電力を消費してしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、必要な駆動力が小さい場合において、電力の消費を少なくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するために、以下のアクチュエータ駆動装置を提供する。
【0008】
駆動力に応じた制御信号xをPWM回路により2種類のパルス信号(A,B)に変換した後、Hブリッジ回路に供給し、アクチュエータを駆動するアクチュエータ駆動装置において、
前記Hブリッジ回路がアクチュエータを駆動可能な最小パルス幅をTminとし、そのときの制御信号をXmin=Xmax(Tmin/T)とした場合、前記PWM回路が
x≧Xmin時
パルス信号Aのパルス幅=T(x/Xmax)
パルス信号Bはローレベル、
x≦(−Xmin)時
パルス信号Aはローレベル、
パルス信号Bのパルス幅=T(|x|/Xmax)
0<x<Xmin時
パルス信号Aのパルス幅=T(x/Xmax)+Tmin
パルス信号Bのパルス幅=Tmin
0>x>(−Xmin)時
パルス信号Aのパルス幅=Tmin
パルス信号Bのパルス幅=T(|x|/Xmax)+Tmin
x=0時
パルス信号Aのパルス幅=Tmin
パルス信号Bのパルス幅=Tmin
を満たす2種類のパルス信号に制御信号xを変換することを特徴とするアクチュエータ駆動装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、低消費電力で駆動可能なアクチュエータ駆動装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は本発明のデータ再生装置の実施例を表す図である。
【0012】
図1において、制御回路100は、アクチュエータ108の駆動力を決定するものである。
【0013】
制御信号X101の大きさは、アクチュエータを駆動する駆動力と比例している。前記制御信号Xにおいて、Xmaxを制御信号の最大値、−Xmaxを最小値とすると
−Xmax≦X≦Xmax
の範囲となる。
【0014】
102はPWM回路であり、101の制御信号Xを周期Tの2つのパルス信号パルスAおよびパルスBに変調する。そして、パルス信号103にパルスA、パルス信号104にパルスBを出力する。
【0015】
Hブリッジ回路105は、パルスAがハイレベル、かつパルスBがローレベルの場合、アクチュエータを正方向に駆動する。また、パルスAがローレベル、かつパルスBがハイレベルの場合、アクチュエータを逆方向に駆動する。アクチュエータ108は、Hブリッジ105より、駆動信号106、駆動信号107を介して駆動される。
【0016】
ここで、駆動力を必要としない場合に、消費電力を減らすために、図3に示すような従来の制御方法とは異なる制御方法を用いる。すなわち、パルスAであれば、制御信号0から負の領域で、パルスAのハイレベルの時間を0とし、制御信号0から正の領域ではその絶対値に比例したハイレベルの時間とする。パルスBであれば、制御信号0から正の領域で、パルスBのハイレベルの時間を0とし、制御信号0から負の領域ではその絶対値に比例したハイレベルの時間とするのである。これにより、必要な駆動力が小さい場合には、消費電力を低減することができる。
【0017】
しかし、この特性を利用することにより、以下のような問題が発生する。
【0018】
それは、パルス信号103またはパルス信号104に流れるパルスのハイレベルの時間が、アクチュエータの最小応答時間よりも小さい場合には、Hブリッジ105は、アクチュエータを駆動することができないという問題である。
【0019】
ここで、最小応答時間とは、Hブリッジ105のトランジスタがON状態に遷移することができ、アクチュエータにパルスのハイレベルの時間と等価な駆動力を与えることが出来る最小の時間である。
【0020】
そのため、Hブリッジ105のトランジスタをONに遷移させるためには、ある程度のパルスのハイレベルの時間が必要であり、その時間付近、またはそれより小さい時間では、パルスのハイレベルの時間と等価な駆動力を与えることが出来ないのである。
【0021】
そこで、制御信号Xが最小応答時間よりも小さい場合には、アクチュエータの駆動力を得るために以下のようにPWM回路102を動作させる。その様子を図2に示す。
【0022】
まず、前記最小応答時間、又は最小応答時間よりも大きい値であるTminを決定する。
【0023】
制御信号XがXmaxのときに、パルスAはハイレベルとなるようになっており、図中のXmin=Xmax(Tmin/T)となる。制御信号Xの値に応じて以下のようにパルスを発生させる。
【0024】
パルスのハイレベルの時間が前記最小応答時間よりも小さな場合には、ハイレベルの時間が必ず前記最小応答時間以上になるように、パルスのハイレベル期間を加える。すなわち、制御信号Xが、前記−Xmin以上かつXmin以下の場合には、パルスAおよびパルスBのハイレベルの時間にTminを加える。
【0025】
つまり、上記記載を式で表すと以下のように表すことができる。
【0026】
X≧Xminの場合
パルス信号Aのハイレベルの時間=T(X/Xmax)
パルス信号Bのハイレベルの時間=0
X≦(−Xmin)の場合、
パルス信号Aのハイレベルの時間=0
パルス信号Bのハイレベルの時間=T(|X|/Xmax)
0<X<Xminの場合、
パルス信号Aのハイレベルの時間=T(X/Xmax)+Tmin
パルス信号Bのハイレベルの時間=Tmin
0>X>(−Xmin)の場合、
パルス信号Aのハイレベルの時間=Tmin
パルス信号Bのハイレベルの時間=T(|X|/Xmax)+Tmin
X=0の場合、
パルス信号Aのハイレベルの時間=Tmin
パルス信号Bのハイレベルの時間=Tmin
また、上記に示した、それぞれの波形を図2に示す。制御信号Xが−Xmin<X<Xmin(ただしXmin=Xmax(Tmin/T)の範囲では、パルスAおよびパルスBが同一のPWMの周期でハイレベルになる期間がある。そのため、ハイレベルの期間が重ならないように、パルスの立ち上がりをT/2ずらしている。これはT/2に限らず、2*Tmin以上でPWMの周期Tにパルスが収まればいくらでもかまわない。
【0027】
以上により、本発明によって、必要な駆動力が小さい場合において、電力の消費を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第一の実施例のブロック図。
【図2】本発明の第一の実施例におけるPWM回路の特性および波形を示す図。
【図3】従来例のPWM回路の特性および波形を示す図
【符号の説明】
【0029】
100 制御回路
101 制御信号
102 PWM回路
103 パルス信号
104 パルス信号
105 Hブリッジ回路
106 駆動信号
107 駆動信号
108 アクチュエータ
301 制御信号
302 PWM回路
303 インバータ
304 パルス信号
305 Hブリッジ回路
306 アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力に応じた制御信号xをPWM回路により2種類のパルス信号(A,B)に変換した後、Hブリッジ回路に供給し、アクチュエータを駆動するアクチュエータ駆動装置において、
前記Hブリッジ回路がアクチュエータを駆動可能な最小パルス幅をTminとし、そのときの制御信号をXmin=Xmax(Tmin/T)とした場合、前記PWM回路が
x≧Xmin時
パルス信号Aのパルス幅=T(x/Xmax)
パルス信号Bはローレベル、
x≦(−Xmin)時
パルス信号Aはローレベル、
パルス信号Bのパルス幅=T(|x|/Xmax)
0<x<Xmin時
パルス信号Aのパルス幅=T(x/Xmax)+Tmin
パルス信号Bのパルス幅=Tmin
0>x>(−Xmin)時
パルス信号Aのパルス幅=Tmin
パルス信号Bのパルス幅=T(|x|/Xmax)+Tmin
x=0時
パルス信号Aのパルス幅=Tmin
パルス信号Bのパルス幅=Tmin
を満たす2種類のパルス信号に制御信号xを変換することを特徴とするアクチュエータ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−159365(P2007−159365A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−355002(P2005−355002)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】