説明

アクチュエータ

【課題】従来より応答性を向上させ、正確な位置制御を行う。
【解決手段】弁ボディ22内に配されるスリーブ23内を摺動可能に移動するスプール24が設けられている。弁ボディ22の内周面には、圧縮空気が供給される供給用ポート25aが形成された内周溝25、第1の排気用ポート26aが形成された内周溝26、第2の排気用ポート27aが形成された内周溝27、第1の接続ポート15に接続される第1の出力用ポート28aが形成された内周溝28、第2の接続ポート16に接続される第2の出力用ポート29aが形成された内周溝29が形成されている。エアサーボバルブ21のスリーブ23には、供給用弁孔31、第1及び第2の排気用弁孔32,33、第1及び第2の出力用弁孔34,35が形成されている。スリーブの供給用弁孔31、第1及び出力用弁孔34,35は、複数形成され、第1及び第2の排気用弁孔32,33は、単数となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアサーボバルブを用いたアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
エアサーボバルブを用いたアクチュエータは、圧力エネルギを直線運動に変換することによって、可動体を可動させることができる。例えば、エアサーボバルブには、特許文献1に示すようなものがあり、これを用いたアクチュエータを図6に示す。
【0003】
このアクチュエータ100は、可動体を可動させるシリンダ機構101と、このシリンダ機構101に接続され可動方向を切り換えるエアサーボバルブ111と、このエアサーボバルブ111を駆動する駆動機構131と、この駆動機構131を制御する制御部132とを備えている。
【0004】
シリンダ機構101は、シリンダ102内を、ピストンロッド103の先端部に形成されたピストン104が摺動可能に設けられてなり、ピストンロッド103に可動体が取り付けられる。シリンダ102には、ピストン104の移動方向の一方の側に第1の接続ポート105が形成され、移動方向の他方の側に第2の接続ポート106が形成されている。これら第1及び第2の接続ポート105,106には、ピストン104の移動方向を切り換えるためのエアサーボバルブ111が接続される。
【0005】
このエアサーボバルブ111は、弁ボディ112と、この弁ボディ112内に配されるスリーブ113と、このスリーブ113内を摺動可能に移動するスプール114とを備えている。
【0006】
弁ボディ112は、円筒の開口が長手方向に形成されており、この開口の内周面には、略中央に、コンプレッサより圧縮空気が供給される供給用ポート115aが形成された供給用内周溝115が形成されている。また、供給用内周溝115の一方の側には、第1の排気用ポート116aが形成された第1の排気用内周溝116が形成され、供給用内周溝115の他方の側には、第2の排気用ポート117aが形成された第2の排気用内周溝117が形成されている。更に、供給用内周溝115と第1の排気用内周溝116との間には、シリンダ102の第1の接続ポート105に接続される第1の出力用ポート118aが形成された第1の出力用内周溝118が形成され、供給用内周溝115と第2の排気用内周溝117との間には、シリンダ102の第2の接続ポート106に接続される第2の出力用ポート119aが形成された第2の出力用内周溝119が形成されている。
【0007】
また、エアサーボバルブ111のスリーブ113には、供給用ポート115aに対応して供給用弁孔121が形成されている。また、スリーブ113には、第1の排気用ポート116aに対応して第1の排気用弁孔122が形成されていると共に、第2の排気用ポート117aに対応して第2の排気用弁孔123が形成されている。更に、スリーブ113には、第1の出力用ポート118aに対応して第1の出力用弁孔124が形成されていると共に、第2の出力用ポート119aに対応して第2の出力用弁孔125が形成されている。
【0008】
ここで、供給用弁孔121は、上下に2つ設けられ、供給用ポート115aと一列に形成されている。また、第1の排気用弁孔122も、上下に2つ設けられ、第1の排気用ポート116aと一列に形成され、第2の排気用弁孔123も、上下に2つ設けられ、第2の排気用ポート117aと一列に形成されている。更に、第1の出力用弁孔124も上下に2つ設けられ、第1の出力用ポート118aと一列に形成され、第2の出力用弁孔124も上下に2つ設けられ、第2の出力用ポート119aと一列に形成されている。
【0009】
以上のようなスリーブ113内を摺動するスプール114には、供給用弁孔121を開閉する供給用シール部126が形成され、この供給用シール部126に隣接する第1の凹部127を挟んで第1の排気用弁孔122を開閉する第1の排気用シール部128が形成され、供給用シール部126に隣接する第2の凹部129を挟んで第2の排気用弁孔123を開閉する第2の排気用シール部130が形成されている。
【0010】
以上のようなスプール114は、例えば特許文献1に記載されているような電磁アクチュエータによって構成された駆動機構131よって駆動される。そして、この駆動機構131は、制御部132によって駆動制御される。この制御部132は、ピストン104の移動方向及び移動位置の情報が入力されると、入力された情報に基づいて、駆動機構131の電磁アクチュエータを駆動すると共にコンプレッサより弁ボディ112の供給用ポート115aに供給する圧縮空気の流量を制御して、スリーブ113内のスプール114を所定位置まで移動させる。
【0011】
以上のように構成されたアクチュエータ100の基本状態は、図6に示すように、スプール114の供給用シール部126が供給用弁孔121を閉塞し、第1の排気用シール部128が第1の排気用弁孔122を閉塞し、第2の排気用シール部130が第2の排気用弁孔123を閉塞した状態である。したがって、シリンダ102の空間部102a,102bへの空気の入出力は行われない状態にある。
【0012】
そして、図7に示すように、ピストンロッド103を矢印X1方向に移動させるときには、制御部132によって、スプール114が矢印X1方向に摺動される。すると、第1の排気用シール部128が第1の排気用弁孔122を閉塞したままで、供給用弁孔121と第2の排気用弁孔123が開放される。そして、第1の凹部127が、開放された供給用弁孔121と第1の出力用ポート118aとを繋ぎ、第2の凹部129が、第2の出力用ポート119aと第2の排気用ポート117aとを繋いだ状態となる。この状態で、供給用ポート115aからは、コンプレッサから矢印X2方向の圧縮空気が供給用ポート115a、供給用弁孔121、第1の凹部127、第1の出力用弁孔124、第1の出力用ポート118a、第1の接続ポート105で結ばれる供給側流路を介してシリンダ102内のピストン104で区画された一方の空間部102aに供給される。すると、ピストン104は、圧縮空気によって押圧され、矢印X1方向に移動し、これに伴って、他方の空間部102bにある圧縮空気は、矢印X3に示すように、第2の接続ポート106、第2の出力用ポート119a、第2の出力用弁孔125、第2の凹部129、第2の排気用弁孔123で結ばれる排気側流路を介して第2の排気用ポート117aより排気される。かくして、ピストン104が所定位置まで矢印X1方向に移動すると、制御部132は、図7の状態から駆動機構131の電磁アクチュエータを駆動し、図6に示す基本状態にスプール114を戻し、移動したピストン位置を維持するようにする。
【0013】
また、図8に示すように、ピストンロッド103を矢印Y1方向に移動させるときには、制御部132によって、スプール114が矢印Y1方向に摺動される。すると、第2の排気用シール部130が第2の排気用弁孔123を閉塞したままで、供給用弁孔121と第1の排気用弁孔122が開放される。そして、第2の凹部129が、開放された供給用弁孔121と第2の出力用ポート119aとを繋ぎ、第1の凹部127が、第1の出力用ポート118aと第1の排気用ポート116aとを繋いだ状態となる。この状態で、供給用ポート115aからは、コンプレッサから矢印Y2方向の圧縮空気が供給用ポート115a、供給用弁孔121、第2の凹部129、第2の出力用弁孔125、第2の出力用ポート119a、第2の接続ポート106で結ばれる供給側流路を介してシリンダ102内のピストン104で区画された他方の空間部102bに供給される。すると、ピストン104は、圧縮空気によって押圧され、矢印Y1方向に移動し、これに伴って、一方の空間部102aにある圧縮空気は、矢印Y3に示すように、第1の接続ポート105、第1の出力用ポート118a、第1の出力用弁孔124、第1の凹部127、第1の排気用弁孔122で結ばれる排気側流路を介して第1の排気用ポート116aより排気される。かくして、ピストン104が所定位置まで矢印Y1方向に移動すると、制御部132は、図8の状態から駆動機構131の電磁アクチュエータを駆動し、図6に示す基本状態にスプール114を戻し、移動したピストン位置を維持するようにする。
【0014】
以上のように動作するエアサーボバルブを用いたアクチュエータ100は、静音性に優れ、多点位置決めや自在な速度制御が可能である一方で、空気という圧縮性のある流体を使用するため、正確な速度制御や位置制御がやや困難で、更に、負荷に影響されやすいと言った短所を有する。このため、更に応答性を向上させ、正確な位置制御を行うことができるようにすることが求められている。
【0015】
【特許文献1】特開2003−206908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来より応答性を向上させ、正確な位置制御を行うことができようにし、安定したサーボ制御を実現するエアサーボバルブを用いたアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係るエアサーボバルブを用いたアクチュエータは、シリンダ内を、ピストンロッドの先端部に形成されたピストンが摺動可能であると共に、このシリンダのピストンの移動方向の一方の側に第1の接続ポートが形成され、移動方向の他方の側に第2の接続ポートが形成されたシリンダ手段と、弁ボディと、この弁ボディ内に配されるスリーブと、このスリーブ内を摺動可能に移動するスプールとを有するエアサーボバルブと、上記スリーブ内のスプールを摺動させる駆動手段と、上記スプールを上記駆動手段によって摺動させて上記ピストンの位置を制御する制御手段とを備えている。
【0018】
そして、上記エアサーボバルブの弁ボディの内周面の周回り方向には、圧縮空気が供給される供給用ポートが形成された供給用内周溝が形成され、この供給用内周溝の一方の側に第1の排気用ポートが形成された第1の排気用内周溝が形成され、上記供給用内周溝の他方の側に第2の排気用ポートが形成された第2の排気用内周溝が形成され、上記供給用内周溝と上記第1の排気用内周溝との間に、上記シリンダ手段の第1の接続ポートに接続される第1の出力用ポートが形成された第1の出力用内周溝が形成され、上記供給用内周溝と上記第2の排気用内周溝との間に、上記シリンダ手段の第2の接続ポートに接続される第2の出力用ポートが形成された第2の出力用内周溝が形成されている。
【0019】
また、上記エアサーボバルブのスリーブには、上記供給用ポートに対応して供給用弁孔が形成され、上記第1の排気用ポートに対応して第1の排気用弁孔が形成され、上記第2の排気用ポートに対応して第2の排気用弁孔が形成され、上記第1の出力用ポートに対応して第1の出力用弁孔が形成され、上記第2の出力用ポートに対応して第2の出力用弁孔が形成されている。
【0020】
上記スプールは、上記供給用弁孔を開閉する供給用シール部が形成され、この供給用シール部に隣接する第1の凹部を挟んで上記第1の排気用弁孔を開閉する第1の排気用シール部が形成され、上記供給用シール部に隣接する第2の凹部を挟んで上記第2の排気用弁孔を開閉する第2の排気用シール部が形成されている。
【0021】
上記スプールの供給用シール部が上記供給用弁孔を閉塞し、上記第1の排気用シール部が上記第1の排気用弁孔を閉塞し、上記第2の排気用シール部が上記第2の排気用弁孔を閉塞した基本状態から何れか一方に摺動したとき、上記何れか一方の凹部は、開放された供給用弁孔と上記何れか一方の出力用ポートとを繋ぐと共に、他方の凹部は、何れか他方の出力用ポートと上記何れか一方の排気ポートとを繋ぐ。
【0022】
そして、上記何れか他方の出力用ポートと上記何れか一方の排気ポートとを繋ぐ排気側流路は、開放された供給用弁孔と上記何れか一方の出力用ポートとを繋ぐ供給側流路よりも狭く形成され、排気流量を供給量より少なくし、シリンダ内を従来より高圧にできるようにしている。
【0023】
ここで、上記排気側流路を、供給側流路よりも狭くするには、上記スリーブの第1及び第2の排気用弁孔の数を、上記スリーブの供給用弁孔の数より少なく、例えばスリーブの供給用弁孔を複数とし、上記第1及び第2の排気用弁孔を、単数とすればよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、排気側流路を、供給側流路よりも狭くしたので、シリンダ内を従来より高圧にできる。したがって、ピストンの移動開始までの時間を短くすることができ、応答性の向上を図ることができ、また、ピストンロッドに対して負荷が加わったときにも、ピストンの位置のぶれを小さくすることができ、これにより、可動体の位置制御を正確に行うことができ、安定したサーボ制御を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を適用したエアサーボバルブを用いたアクチュエータを参照して説明する。
【0026】
図1に示すように、本発明が適用されたアクチュエータ1は、可動体を可動させるシリンダ機構11と、このシリンダ機構11に接続され可動方向を切り換えるエアサーボバルブ21と、このエアサーボバルブ21を駆動する駆動機構41と、この駆動機構41を制御する制御部42とを備えている。
【0027】
シリンダ機構11は、シリンダ12内を、ピストンロッド13の先端部に形成されたピストン14が摺動可能に設けられてなり、ピストンロッド13に可動体が取り付けられる。シリンダ12には、ピストン14の移動方向の一方の側に第1の接続ポート15が形成され、移動方向の他方の側に第2の接続ポート16が形成されている。これら第1及び第2の接続ポート15,16には、ピストン14の移動方向を切り換えるためのエアサーボバルブ21が接続される。シリンダ12内は、ピストン14によって2つの空間部12a,12bに仕切られ、ピストン14は、これら2つの空間部12a,12bの圧力差によって摺動する。また、シリンダ12には、ポテンショメータ17が配設され、ピストン14の位置を接触又は非接触で検出できるようになっている。例えば、ポテンショメータ17は、可動側接点がピストン14に設けられ、この可動側接点がシリンダ12側の抵抗素子に沿って移動する際の電圧変化等の出力変化によってピストン14の位置の変位量を検出する。
【0028】
このエアサーボバルブ21は、弁ボディ22と、この弁ボディ22内に配されるスリーブ23と、このスリーブ23内を摺動可能に移動するスプール24とを備えている。
【0029】
弁ボディ22は、円筒の開口が長手方向に形成されており、この開口の内周面には、略中央に、コンプレッサ2より圧縮空気が供給される供給用ポート25aが形成された供給用内周溝25が形成されている。また、供給用内周溝25の一方の側には、第1の排気用ポート26aが形成された第1の排気用内周溝26が形成され、供給用内周溝25の他方の側には、第2の排気用ポート27aが形成された第2の排気用内周溝27が形成されている。更に、供給用内周溝25と第1の排気用内周溝26との間には、シリンダ12の第1の接続ポート15に接続される第1の出力用ポート28aが形成された第1の出力用内周溝28が形成され、供給用内周溝25と第2の排気用内周溝27との間には、シリンダ12の第2の接続ポート16に接続される第2の出力用ポート29aが形成された第2の出力用内周溝29が形成されている。
【0030】
また、エアサーボバルブ21のスリーブ23には、供給用ポート25aに対応して供給用弁孔31が形成されている。また、スリーブ23には、第1の排気用ポート26aに対応して第1の排気用弁孔32が形成されていると共に、第2の排気用ポート27aに対応して第2の排気用弁孔33が形成されている。更に、スリーブ23には、第1の出力用ポート28aに対応して第1の出力用弁孔34が形成されていると共に、第2の出力用ポート29aに対応して第2の出力用弁孔35が形成されている。
【0031】
ここで、供給用弁孔31は、上下に2つ設けられ、供給用ポート25aと一列に形成されている。また、第1の排気用弁孔32は、第1の排気用ポート26aと対向する位置に1つ設けられ、従来のアクチュエータ100のスリーブ113のように一列に2つ設けられていない。これと同様に、第2の排気用弁孔33も、第1の排気用ポート27aと対向する位置に1つ設けられ、従来のアクチュエータ100のスリーブ113のように一列に2つ設けられていない。更に、第1の出力用弁孔34は、上下に2つ設けられ、第1の出力用ポート28aと一列に形成され、第2の出力用弁孔35も上下に2つ設けられ、第2の出力用ポート29aと一列に形成されている。すなわち、スリーブ23は、第1及び第2の排気用弁孔32,33の数を少なくとも供給用弁孔31より少なくし、排気側の流路を供給側の流路より狭くして排気流量を絞り、シリンダ12内のピストン14で仕切られた各空間部12a,12b内を従来より高圧に維持できるようにしている。
【0032】
なお、供給用弁孔31の数と第1及び第2の排気用弁孔32,33の数との関係は、第1及び第2の排気用弁孔32,33の排気量が供給量より少なくなるように、第1及び第2の排気用弁孔32,33の数が供給用弁孔31の数より少なければ、特に限定されるものではない。
【0033】
また、ここでは、更に、第1及び第2の排気用弁孔32,33の数を第1及び第2の出力用弁孔34,35の数より少なくしている。そして、第1及び第2の排気用弁孔32,33の数を1つとし、供給用弁孔31、第1及び第2の出力用弁孔34,35の数を複数、例えば2つとしている。
【0034】
また、図6に示した従来のアクチュエータ100のスリーブ113の第1及び第2の排気用弁孔122,123の開口面積を供給用弁孔121の開口面積より狭くして、排気流量を絞るようにしても良い。また、この他に、第1及び第2の排気用弁孔32,33の数を従来と同じにして第1及び第2の排気用ポート26a,27aの開口面積を狭くして、排気流量を絞るようにしても良い。
【0035】
以上のようなスリーブ23内を摺動するスプール24には、供給用弁孔31を開閉する供給用シール部36が形成され、この供給用シール部36に隣接する第1の凹部37を挟んで第1の排気用弁孔32を開閉する第1の排気用シール部38が形成され、供給用シール部36に隣接する第2の凹部39を挟んで第2の排気用弁孔33を開閉する第2の排気用シール部40が形成されている。
【0036】
以上のようなスプール24は、電磁アクチュエータによって構成された駆動機構41よって駆動される。例えば、この駆動機構41は、スプール24と一体の棒状の永久磁石の周囲に駆動電流が供給されるコイルを配置し、コイルより発生する磁束との相互作用によって、スプール24の正逆方向の駆動力を発生する。
【0037】
また、この駆動機構41には、スプール24の位置を検出するための変位センサ43が設けられている。この変位センサ43は、ホール素子やMR素子等からなるもので、永久磁石から生じる磁束密度を検出し、この磁束密度の変化から永久磁石の変位をスプール24の変位として検出する。そして、この駆動機構41は、制御部42によって駆動制御される。
【0038】
この制御部42は、図2に示すように、サーボ回路を有しており、アクチュエータ1の動作プログラムやユーザの操作コマンドによって設定されたピストン14の移動目標位置とポテンショメータ17によって検出されたピストン14の所定位置からの変位量との誤差を算出する第1の加算器44と、この誤差に対応したスプール24の移動目標値を生成する流量指示部45と、スプール24の移動目標位置と変位センサ43によって検出されたスプール24の所定位置からの変位量との誤差を算出し駆動機構41の電磁アクチュエータの駆動信号を生成する第2の加算器46とを備えている。このような制御部42は、変位センサ43でスプール24の所定位置からの変位量を第2の加算器46に帰還し、スプール24の移動目標位置との誤差が0となるようにし、更に、ポテンショメータ17でピストン14の所定位置からの変位量を第1の加算器44に帰還し、ピストン14の移動目標位置との誤差が0となるように、駆動機構41の電磁アクチュエータを制御することで、ピストン14を目標位置まで移動させるようにしている。
【0039】
以上のように構成されたアクチュエータ1の基本状態は、図1に示すように、スプール24の供給用シール部36が供給用弁孔31を閉塞し、第1の排気用シール部38が第1の排気用弁孔32を閉塞し、第2の排気用シール部40が第2の排気用弁孔33を閉塞した状態である。したがって、シリンダ12の空間部12a,12bへの空気の入出力は行われない状態にある。
【0040】
そして、図3に示すように、ピストンロッド13を矢印A1方向に移動させるときには、制御部42によって、スプール24が図1に示した基本状態から矢印A1方向に摺動される。すると、第1の排気用シール部38が第1の排気用弁孔32を閉塞したままで、供給用弁孔31と第2の排気用弁孔33が開放される。そして、第1の凹部37が、開放された供給用弁孔31と第1の出力用ポート28aとを繋ぎ、第2の凹部39が、第2の出力用ポート29aと第2の排気用ポート27aとを繋いだ状態となる。この状態で、供給用ポート25aからは、コンプレッサ2から矢印A2方向の圧縮空気が供給用ポート25a、供給用弁孔31、第1の凹部37、第1の出力用弁孔34、第1の出力用ポート28a、第1の接続ポート15で結ばれる供給側流路を介してシリンダ12内のピストン14で区画された一方の空間部102aに供給される。すると、ピストン14は、圧縮空気によって押圧され、矢印A1方向に移動し、これに伴って、他方の空間部102bにある圧縮空気は、矢印A3に示すように、第2の接続ポート16、第2の出力用ポート29a、第2の出力用弁孔35、第2の凹部39、第2の排気用弁孔33で結ばれる排気側流路を介して第2の排気用ポート27aより排気される。かくして、ピストン14が所定位置まで矢印A1方向に移動すると、制御部42は、図3の状態から駆動機構41の電磁アクチュエータを駆動し、図1に示す基本状態にスプール24を戻し、移動したピストン位置を維持するようにする。
【0041】
この際、スリーブ23の第2の排気用弁孔33は、従来のアクチュエータ100の第2の排気用弁孔123と比較して数が少ないことから、単位時間当たりの排気流量を従来より少なくすることができ、シリンダ12の他方の空間部12a,12bを従来より高圧に維持することができる。
【0042】
続いて、図4に示すように、ピストンロッド13を矢印B1方向に移動させるときには、制御部42によって、スプール24が図1に示した基本状態から矢印B1方向に摺動される。すると、第2の排気用シール部40が第2の排気用弁孔33を閉塞したままで、供給用弁孔31と第1の排気用弁孔32が開放される。そして、第2の凹部39が、開放された供給用弁孔31と第2の出力用ポート29aとを繋ぎ、第1の凹部37が、第1の出力用ポート28aと第1の排気用ポート26aとを繋いだ状態となる。この状態で、供給用ポート25aからは、コンプレッサ2から矢印B2方向の圧縮空気が供給用ポート25a、供給用弁孔31、第2の凹部39、第2の出力用弁孔35、第2の出力用ポート29a、第2の接続ポート16で結ばれる供給側流路を介してシリンダ12内のピストン14で区画された他方の空間部102bに供給される。すると、ピストン14は、圧縮空気によって押圧され、矢印B1方向に移動し、これに伴って、一方の空間部102aにある圧縮空気は、矢印B3に示すように、第1の接続ポート15、第1の出力用ポート28a、第1の出力用弁孔34、第1の凹部37、第1の排気用弁孔32で結ばれる排気側流路を介して第1の排気用ポート26aより排気される。かくして、ピストン14が所定位置まで矢印B1方向に移動すると、制御部42は、図4の状態から駆動機構41の電磁アクチュエータを駆動し、図1に示す基本状態にスプール24を戻し、移動したピストン位置を維持するようにする。
【0043】
この際も、スリーブ23の第1の排気用弁孔32は、従来のアクチュエータ100の第1の排気用弁孔122と比較して数が少ないことから、単位時間当たりの排気流量を従来より少なくすることができ、シリンダ12の空間部12a,12bを従来より高圧に維持することができる。
【0044】
以上のように、本発明が適用されたアクチュエータ1は、従来よりスリーブ23の第1及び第2の排気用弁孔32,33の数を減らし、供給側流路より排気側流路を狭くし、従来より排気量を制限することで、空間部12a,12bが従来より高圧に維持されていることから、ピストン14の移動開始までの時間を短くすることができ、応答性の向上を図ることができる。また、ピストンロッド13に対して負荷が加わったときにも、ピストン14の位置のぶれを小さくすることができ、これにより、可動体の位置制御を正確に行うことができる。すなわち、アクチュエータ1は、安定したサーボ制御を実現することができる。
【0045】
以上のように構成されたアクチュエータ1は、例えば展示用人間型ロボットの上肢部の関節に用いることができる。このように展示用人間型ロボットの上肢部等は、通行人等と接触することがあるが、肩関節部や肘関節部に、本発明を適用したエアサーボバルブを用いたアクチュエータを用いることで、通行人等に対する衝撃を和らげることができる。
【0046】
ここで、図5は、展示用人間型ロボットの上肢部を示す要部斜視図である。この上肢部51は、上腕アーム52と、前腕アーム53と、手掌部54とを備えており、胴体のベース55と上腕アーム52との間に肩関節部56が設けられ、上腕アーム52と前腕アーム53との間に肘関節部57が設けられている。
【0047】
肩関節部56は、ベース55に固定された略凹字状の支持部材58に上肢部51を胴体の前後方向となる矢印D1方向及び反矢印D2方向に回動させるための支軸59が取り付けられており、この支軸59の先端部に、上腕アーム52を取り付けるための略凹字状の取付部材61が設けられている。また、支持部材58の天板部には、第1の回動支持部材62が設けられ、上腕アーム52には、第2の回動支持部材63が設けられ、第1の回動支持部材62と第2の回動支持部材63との間には、上肢部51全体、すなわち上腕アーム52を支軸59を中心に回動させる駆動ユニット64が設けられている。
【0048】
駆動ユニット64は、本体部64aの一端部に軸部64bが設けられ、この軸部64bが第2の回動支持部材63の支軸63aに可動可能に取り付けられている。また、本体部64aは、上述したアクチュエータ1が内蔵され、ピストンロッド13を外部に露出させている。また、本体部64aは、シャフト64cが伸縮可能に取り付けられている。このシャフト64cの先端部は、第1の回動支持部材62の支軸62aに回動可能に取り付けられている。また、このシャフト64cには、連結板64dが固定されており、この連結板64dは、更に、本体部64a内のアクチュエータ1のピストンロッド13の先端部に固定されている。したがって、シャフト64cは、ピストンロッド13の移動に伴って伸縮することになる。
【0049】
以上のような肩関節部56は、アクチュエータ1が図3に示す矢印A1方向にピストンロッド13を移動させるとき、このピストンロッド13が本体部64aから伸び、これに伴って、シャフト64cが本体部64aから伸長する。これにより、上腕アーム52は、支軸59を中心に胴体の後側へ向かって矢印D1方向に回動することになる。また、アクチュエータ1が図4に示す矢印B1方向にピストンロッド13を移動させるときには、このピストンロッド13が本体部64a内に縮み、これに伴って、シャフト64cが本体部64a内に引き込まれる。これにより、上腕アーム52は、支軸59を中心に胴体の前側へ向かって矢印D2方向に回動することになる。
【0050】
また、肘関節部57は、上腕アーム52の先端部に固定された取付部材71の支軸71aに前腕アーム53を上下方向となる矢印D3及びD4方向に回動可能に取り付けている。また、上腕アーム52には、第1の回動支持部72が設けられ、前腕アーム53には、第2の回動支持部73が設けられ、第1の回動支持部72と第2の回動支持部73との間には、前腕アーム53を支軸71aを中心に回動させる駆動ユニット74が設けられている。
【0051】
駆動ユニット74は、本体部74aの一端部が第1の回動支持部72の支軸72aに回動可能に取り付けられ、他端部が第2の回動支持部73の支軸73aに回動可能に取り付けられている。また、本体部74aは、上述したアクチュエータ1が内蔵され、ピストンロッド13を外部に露出させている。また、本体部74aは、シャフト74bが伸縮可能に取り付けられている。このシャフト74bの先端部は、第2の回動支持部73の支軸73aに回動可能に取り付けられている。また、このシャフト74bには、連結板74cが固定されており、この連結板74cは、更に、本体部74a内のアクチュエータ1のピストンロッド13の先端部に固定されている。したがって、シャフト74bは、ピストンロッド13の移動に伴って伸縮することになる。
【0052】
以上のような肘関節部57は、アクチュエータ1が図3に示す矢印A1方向にピストンロッド13を移動させるとき、このピストンロッド13が本体部74aから伸び、これに伴って、シャフト74bが本体部74aから伸長する。これにより、前腕アーム53は、支軸71aを中心に上方へ向かって矢印D3方向に回動することになる。また、アクチュエータ1が図4に示す矢印B1方向にピストンロッド13を移動させるときには、このピストンロッド13が本体部74a内に縮み、これに伴って、シャフト74bが本体部74a内に引き込まれる。これにより、前腕アーム53は、支軸73aを中心に下方へ向かって矢印D4方向に回動することになる。
【0053】
以上のように、人間型ロボットの肩関節部56や肘関節部57にアクチュエータ1を用いたときには、上腕アーム52や前腕アーム53の所定位置に応答性良く曲げることができ、更に、その曲げられた状態をぶれが少ない状態で維持することができる。
【0054】
なお、ここでは、人間型ロボットの関節部分にアクチュエータ1を用いた場合を説明したが、アクチュエータ1が用いられる装置としては、これに限定されるものではなく、この他に、例えば動物模型や恐竜模型といったロボットの関節部分等にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明が適用されたエアサーボバルブを用いたアクチュエータの基本状態を示す断面図である。
【図2】上記アクチュエータのサーボ回路を説明する図である。
【図3】上記アクチュエータが一方向に移動する場合を示す断面図である。
【図4】上記アクチュエータが他方向に移動する場合を示す断面図である。
【図5】展示用人間型ロボットの上肢部を示す要部斜視図である。
【図6】従来のエアサーボバルブを用いたアクチュエータの基本状態を示す断面図である。
【図7】上記アクチュエータが一方向に移動する場合を示す断面図である。
【図8】上記アクチュエータが他方向に移動する場合を示す断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 アクチュエータ、11 シリンダ機構、12 シリンダ、12a,12b 空間部、13 ピストンロッド、14 ピストン、15 第1の接続ポート、16 第2の接続ポート、21 エアサーボバルブ、22 弁ボディ、23 スリーブ、24 スプール、25 供給用内周溝、25a 供給用ポート、26 第1の排気用内周溝、26a 第1の排気用ポート、27 第2の排気用内周溝、27a 第2の排気用ポート、28 第1の出力用内周溝、28a 第1の出力用ポート、29 第2の出力用内周溝、29a 第2の出力用ポート、31 供給用弁孔、32 第1の排気用弁孔、33 第2の排気用弁孔、34 第1の出力用弁孔、35 第2の出力用弁孔、36 供給用シール部、37 第1の凹部、38 第1の排気用シール部、39 第2の凹部、40 第2の排気用シール部、51 上肢部、52 上腕アーム、53 前腕アーム、54 手掌部、55 ベース、56 肩関節部、57 肘関節部、58 支持部材、59 支軸、61 取付部材、62 第1の回動支持部材、62a 支軸、63 第2の回動支持部材、63a 支軸、64 駆動ユニット、64a 本体部、64b 軸部、64c シャフト、64d 連結板、71 取付部材、71a 支軸、72 第1の回動支持部、72a 支軸、73 第2の回動支持部、73a 支軸、74 駆動ユニット、74a 本体部、74b シャフト、74c 連結板、100 アクチュエータ、101 シリンダ機構、102 シリンダ、102a,102b 空間部、103 ピストンロッド、104 ピストン、105 第1の接続ポート、106 第2の接続ポート、111 エアサーボバルブ、112 弁ボディ、113 スリーブ、114 スプール、115 供給用内周溝、115a 供給用ポート、116 第1の排気用内周溝、116a 第1の排気用ポート、117 第2の排気用内周溝、117a 第2の排気用ポート、118 第1の出力用内周溝、118a 第1の出力用ポート、119 第2の出力用内周溝、119a 第2の出力用ポート、121 供給用弁孔、122 第1の排気用弁孔、123 第2の排気用弁孔、124 第1の出力用弁孔、125 第2の出力用弁孔、126 供給用シール部、127 第1の凹部、128 第1の排気用シール部、129 第2の凹部、130 第2の排気用シール部、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ内を、ピストンロッドの先端部に形成されたピストンが摺動可能であると共に、このシリンダのピストンの移動方向の一方の側に第1の接続ポートが形成され、移動方向の他方の側に第2の接続ポートが形成されたシリンダ手段と、
弁ボディと、この弁ボディ内に配されるスリーブと、このスリーブ内を摺動可能に移動するスプールとを有するエアサーボバルブと、
上記スリーブ内のスプールを摺動させる駆動手段と、
上記スプールを上記駆動手段によって摺動させて上記ピストンの位置を制御する制御手段とを備え、
上記エアサーボバルブの弁ボディの内周面の周回り方向には、圧縮空気が供給される供給用ポートが形成された供給用内周溝が形成され、この供給用内周溝の一方の側に第1の排気用ポートが形成された第1の排気用内周溝が形成され、上記供給用内周溝の他方の側に第2の排気用ポートが形成された第2の排気用内周溝が形成され、上記供給用内周溝と上記第1の排気用内周溝との間に、上記シリンダ手段の第1の接続ポートに接続される第1の出力用ポートが形成された第1の出力用内周溝が形成され、上記供給用内周溝と上記第2の排気用内周溝との間に、上記シリンダ手段の第2の接続ポートに接続される第2の出力用ポートが形成された第2の出力用内周溝が形成され、
上記エアサーボバルブのスリーブには、上記供給用ポートに対応して供給用弁孔が形成され、上記第1の排気用ポートに対応して第1の排気用弁孔が形成され、上記第2の排気用ポートに対応して第2の排気用弁孔が形成され、上記第1の出力用ポートに対応して第1の出力用弁孔が形成され、上記第2の出力用ポートに対応して第2の出力用弁孔が形成され、
上記スプールは、上記供給用弁孔を開閉する供給用シール部が形成され、この供給用シール部に隣接する第1の凹部を挟んで上記第1の排気用弁孔を開閉する第1の排気用シール部が形成され、上記供給用シール部に隣接する第2の凹部を挟んで上記第2の排気用弁孔を開閉する第2の排気用シール部が形成され、
上記スプールの供給用シール部が上記供給用弁孔を閉塞し、上記第1の排気用シール部が上記第1の排気用弁孔を閉塞し、上記第2の排気用シール部が上記第2の排気用弁孔を閉塞した基本状態から何れか一方に摺動したとき、上記何れか一方の凹部は、開放された供給用弁孔と上記何れか一方の出力用ポートとを繋ぐと共に、他方の凹部は、何れか他方の出力用ポートと上記何れか一方の排気ポートとを繋ぎ、
上記何れか他方の出力用ポートと上記何れか一方の排気ポートとを繋ぐ排気側流路は、開放された供給用弁孔と上記何れか一方の出力用ポートとを繋ぐ供給側流路よりも狭く形成されていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
上記スリーブの第1及び第2の排気用弁孔の数を上記スリーブの供給用弁孔の数より少なくして、上記排気側流路より上記供給側流路を狭くしたことを特徴とする請求項1記載のアクチュエータ。
【請求項3】
上記スリーブの供給用弁孔は、複数形成され、上記第1及び第2の排気用弁孔は、単数であることを特徴とする請求項2記載のアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−101649(P2008−101649A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−282690(P2006−282690)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(591076257)株式会社ココロ (11)
【Fターム(参考)】