説明

アクチュエータ

【課題】軸方向での大型化が抑制され、低コストであって、ロータの径方向でのガタつきが抑制されて静音化を図ることができるアクチュエータを提供する。
【解決手段】回転軸31を有したロータ30と、回転軸31を回転可能に支持する軸孔13を有したケース10とを備えたアクチュエータ1において、ケース10に固定された固定部62、弾性変形可能であって回転軸13が摺動回転可能に貫通した摺動孔65を画定する摺動孔画定部64、固定部62と摺動孔画定部64とをつなぐ腕部661〜663、を有した板部材60を備え、摺動孔画定部64は、摺動孔65の拡大を容易にするための切れ込み67が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、回転軸の径方向での位置を安定させるために、回転軸の軸端部を球形状若しくは円錐状とし、軸受部材の軸端部と当接する当接面形状を、球形状の軸端部に対しては円錐状の穴形状とし、円錐状の穴形状の軸端部に対しては球形状にした軸受構造が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−138939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている軸受構造においては、軸受部材の当接面形状は、回転軸の軸端部を軸方向から覆うように形成されている。このため、このような軸受構造を採用したアクチュエータは、軸方向での大きさが増すおそれがある。
【0005】
また特許文献1に開示されている軸受構造は、磁力によってロータを上記の軸受部材側に付勢している。この理由は、以下のように考えられる。ロータを上記の軸受部材側に付勢しなかった場合には、回転軸の軸方向でのガタつきが発生する恐れがある。軸方向でのガタつきが発生した場合、軸受部材の穴部と回転軸の軸端部とが接触した状態を安定して維持できない。このため、回転軸の径方向での位置も安定させることができないと考えられる。従って、特許文献1に開示されている軸受構造においては、回転軸を軸受部材側に付勢しないと、回転軸が径方向でガタつき、軸受部材の穴部と回転軸との間で打撃音が発生し駆動音が増大する恐れがある。また、ロータを軸受部材側に付勢する手段を講じると、製造工程が煩雑化し製造コストが上昇する恐れがある。
【0006】
そこで本発明は、軸方向での大型化が抑制され、低コストであって、ロータの径方向でのガタつきが抑制されて静音化を図ることができるアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、回転軸を有したロータと、前記回転軸を回転可能に支持する軸孔を有したケースとを備えたアクチュエータにおいて、前記ケースに固定された固定部、弾性変形可能であって前記回転軸が摺動回転可能に貫通した摺動孔を画定する摺動孔画定部、前記固定部と前記摺動孔画定部とをつなぐ腕部、を有した板部材を備え、前記摺動孔画定部には、前記摺動孔の拡大を容易にするための切れ込み部が形成されている、ことを特徴とするアクチュエータによって達成できる。
【0008】
これにより、回転軸に対して径方向外側の向きに力が作用した際に、切れ込み部の作用によって摺動孔が拡大する。摺動孔が拡大した後は、摺動孔画定部の弾性復元力によって、回転軸は再び元の位置に戻される。これにより、回転軸とケースに設けられた軸孔との打撃音が抑制され、静音化が達成される。また、ロータを軸方向に付勢する手段を設けることなく静音化を達成できるので、低コストを維持できる。また、回転軸は摺動孔を貫通しているため、軸方向での大型化も抑制される。
【0009】
また、上記目的は、軸孔を有したロータと、前記軸孔に挿入される固定軸とを備えたアクチュエータにおいて、前記ロータに固定された固定部、弾性変形可能であって前記固定軸と摺接して前記固定軸が貫通した軸孔を画定する摺動孔画定部、前記固定部と前記摺動孔画定部とをつなぐ腕部、を有した板部材を備え、前記摺動孔画定部には、前記摺動孔の拡大を容易にするための切れ込み部が形成されている、ことを特徴とするアクチュエータによって達成できる。
【0010】
これにより、固定軸とロータの軸孔との打撃音が抑制され、静音化が達成される。また、ロータを軸方向に付勢する手段を設けることなく静音化を達成できるので、低コストを維持できる。また、固定軸は摺動孔を貫通しているため、軸方向での大型化も抑制される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、軸方向での大型化が抑制され、低コストであって、ロータの径方向でのガタつきが抑制されて静音化を図ることができるアクチュエータを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して複数の実施例について説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、実施例1に係るアクチュエータ1の断面図、図2は、アクチュエータ1の上面図、図3は、アクチュエータ1の底面図である。アクチュエータ1は、上面側に配置されたケース10、底面側に配置されたケース20、回転可能に支持され周方向に複数の磁極に着磁されたロータ30、ロータ30との間で磁力が作用するステータ40、ステータ40を励磁するためのコイル50を含む。ロータ30、ステータ40、コイル50は、ケース10とケース20との間に配置されている。ステータ40は、U字状に形成され、ロータ30の外周面と対向する3つの磁極部41を有している。磁極部41は、コイル50への通電状態に応じて異なる極性に励磁され、ロータ30と磁極部との間に生じる磁気的吸着力、反発力の作用によってロータ30が所定の作動角を回転する。アクチュエータ1は、ロータ30を所定の作動角で停止可能な、所謂ステッピングモータである。
【0014】
ロータ30は、磁性樹脂によって回転軸31と一体に成形されている。回転軸31は、それぞれ上端部311、下端部312を有し、上端部311はケース10に形成された軸孔13により、下端部312はケース20に形成された軸孔23により回転可能に支持されている。即ち、ロータ30は、ケース10、ケース20によって回転可能に収納されている。
【0015】
ケース20は、コイル50の厚みを逃すための逃げ孔24が形成されている。また、ケース20には2箇所に係合ピン22が形成されている。係合ピン22は、アクチュエータ1が固定される部材と係合して、アクチュエータ1を他の部材へ固定する機能を有している。
【0016】
図1、図2に示すように、ケース10の外面には、板部材60が固定されている。板部材60は、ケース10よりも薄く形成されている。板部材60は、合成樹脂により薄肉に形成され、若干の弾力性を有している。また、図1、図3に示すように、ケース20には、板部材70が固定されている。板部材70は、板部材60と同一形状、同一材料により形成されている。板部材60、70についての詳細は後述する。
【0017】
次に、板部材60の形状について詳細に説明する。図4は、板部材60の正面図である。板部材60は、ケース10に固定された固定部62、回転軸31が摺動回転可能に貫通した摺動孔65を画定する摺動孔画定部64、固定部62と摺動孔画定部64とをつなぐ3本の腕部661〜663、を有している。
【0018】
固定部62は、摺動孔画定部64の周りを囲うように形成されている。腕部661〜663は、摺動孔画定部64から放射状に固定部62へと連続している。腕部661〜663の幅は、固定部62、摺動孔画定部64の径方向での幅よりも細い。また、摺動孔画定部64には、図4に示すように切れ込み67が形成されている。切れ込み67は、摺動孔画定部64の平面方向での弾性変形を容易にする機能を有している。切れ込み67は、摺動孔画定部64の径方向に形成されている。摺動孔画定部64、腕部661〜663は、ケース10とは接触しておらずケース10には固定されていない。腕部661〜663は、摺動孔画定部64から放射状に広がるようにして固定部62と連続している。また、腕部661と腕部662とによって肉抜き孔681が、腕部662と腕部663とによって肉抜き孔682が、腕部663と腕部661とによって肉抜き孔683が画定される。
【0019】
また、摺動孔65に回転軸31を挿入すると、摺動孔65は回転軸31と摺接する。即ち、回転軸31を挿入する前の摺動孔65の径は、回転軸31の径よりも僅かに小さい。また、摺動孔65と回転軸31の径の大きさは回転軸31の回転が可能な程度に設定されている。両者の径の差が大きすぎると、摺動孔65と回転軸31との間に発生する摺動抵抗が大きくなりすぎ、ロータ30が回転しなくなる恐れがあるからである。今回の実施例においては、摺動孔65と回転軸31の径の大きさが0.02mm以下となるように設定している。尚、板部材70も板部材60と同様に形成されている。板部材70については後述する。
【0020】
また、摺動孔65の径は、軸孔13の径よりも小さい。即ち、軸孔13の径は、回転軸31の径よりも大きく形成されている。従って、回転軸31と軸孔13との間には、若干のクリアランスがある。
【0021】
次に、切れ込み67について説明する。図5は、切れ込み67の説明図である。例えば、図5Aに示すように、回転軸31に径方向外側への力が作用した場合を想定する。回転軸31の上端部311の中心Cに図5Aのような力Fが作用すると、上端部311は力Fの方向へ移動しようとする。上端部311が移動しようとすると、図5Bに示すように、切れ込み67が開いて僅かに上端部311が力Fの方向に移動する。切れ込み67が開くことにより摺動孔65は若干拡大することになる。尚、この際腕部663には、腕部663の根元側(固定部62側)を支点とする力F3が作用する。その後は、摺動孔画定部64、腕部662、腕部663の弾性復元力によって再び切れ込み67が閉じ、図5Aに示した状態に戻る。即ち、切れ込み67が開くことにより、回転軸31に作用した径方向の力を吸収して、再び回転軸31を最適な位置へと戻す役割を果たす。
【0022】
このように、切れ込み67が開くのは、摺動孔画定部64の径方向の幅が細く形成されており、かつ、摺動孔画定部64に切れ込み67が形成されているからである。仮に、腕部661〜663が形成されておらず、固定部62から摺動孔画定部64へ連続した平板状に形成されていた場合、たとえ切り込みが形成されていたとしても、摺動孔65の周辺の剛性が強くなりすぎ、摺動孔65が拡大することは困難となる恐れがある。しかしながら、固定部62と摺動孔画定部64とを腕部661〜663によって繋ぐことにより、摺動孔画定部64の径方向での幅を細くでき摺動孔画定部64の剛性が強くなりすぎることを防止している。また、摺動孔画定部64、腕部661〜663はケース10に固定されてないため、このような弾性変形が可能となる。
【0023】
このように、切れ込み67が形成されていること等によって、摺動孔65の拡大が容易となる。これにより、回転軸31に径方向外側の力が作用した際に、摺動孔65が拡大することにより、径方向外側への力を吸収し、再び弾性復元力によって回転軸31を元の位置に戻す。これにより、ケース10の軸孔13と回転軸31との打撃音が抑制される。これにより、アクチュエータ1の静音化が達成されている。また、回転軸31は径方向のガタつきが抑制されることになる。
【0024】
また、板部材60によって回転軸31の径方向のガタつきが常に抑制されるので、従来のように、ロータ30を軸方向へ付勢する手段を設ける必要はない。これにより、低コストを維持できる。また、回転軸31は、摺動孔65を貫通しているので、軸方向でのアクチュエータ1の大型化も抑制される。また、摺動孔65は、上端部311の外周面と摺接しているので、ロータ30が停止する際のハンチングを抑制できる。
【0025】
尚、回転軸31に軸方向の力が作用した場合であっても、摺動孔65と回転軸31とは摺接しているので、摺動孔65と回転軸31との間の抵抗によって、回転軸31の軸方向の移動が制限される。これにより、軸方向でのガタつきも抑制され、これに起因する作動音も抑制できる。
【0026】
尚、板部材70についても板部材60と同様の作用効果を有している。従って、板部材60、70は、協働でロータ30の径方向、及び軸方向でのガタつきを抑制し、アクチュエータ1の静音化が図られている。
【0027】
次に、腕部661〜663の方向について説明する。図5Aに示すように、腕部661〜663のそれぞれの中心線661c〜663cは、摺動孔65の中心、即ち、回転軸31の中心Cを避けるようにして、摺動孔画定部64と連続している。仮に、中心線661c〜663cが中心Cに向かうように、腕部を形成した場合、腕部の長さは最も短くなる。腕部が短くなると、例えば、図5Bに示すように、腕部663が固定部62側を支点として回転するような力F3が作用した際に、腕部663の剛性が強くなりすぎて横方向に曲がりにくくなる恐れがある。このように腕部の剛性が強くなりすぎると、切れ込み67が開きにくくなり、回転軸31に作用した力を吸収することができなくなる恐れがある。また、摺動抵抗が大きくなりすぎる恐れもある。
【0028】
しかしながら上述したように、中心線661c〜663cは、中心Cを避けるようにして形成されているので、腕部661〜663を横方向に曲がることが可能な程度の剛性に設定されており、これにより切れ込み67が開きやすくなっている。
【0029】
次に、板部材60の固定方法について説明する。図6は、ケース10への板部材60の固定方法の説明図である。図6Aは、板部材60が固定される前のアクチュエータ1の上面図であり、図2と対応する図である。図6Aに示すように、ケース10の外面には、凸面17、凹面18、が形成されている。凸面17と凹面18とは所定の段差を有して連続している。凹面18は、軸孔13周辺に形成されている。また、凸面17は、凹面18周辺に形成されている。ケース10に板部材60を固定する際には、図6Aにおいて斜線で示した領域Rに接着剤を塗布する。領域Rは、凹面18周囲の凸面17上の領域である。
【0030】
図6Bは、ケース10に接着剤ABが塗布された状態での、ケース10周辺の拡大断面図である。本来接着剤ABは、凹面18へはみ出さずに凸面17上に塗布すべきであるが、図6Bに示すように、凸面17に塗布した接着剤ABが凹面18へと流れ出す場合も想定される。このような状態で、上端部311に摺動孔65を挿入して固定部62が凸面17と固定されるようにして、ケース10に板部材60を貼り付ける。
【0031】
図6Cは、板部材60がケース10に貼り付けられた状態での、ケース10周辺の拡大断面図である。板部材60が貼り付けられると、凸面17上にあった接着剤ABは上述したように、凹面18へと漏れ出す場合がある。しかしながら、凸面17と凹面18とは段差を有しているため、凹面18に漏れ出した接着剤ABが腕部662や、摺動孔画定部64に付着することが防止される。このように、凸面17よりも低い凹面18を設けることにより、腕部661〜663や摺動孔画定部64と、ケース10との接着が防止されている。
【0032】
また、図6Cに示すように、凹面18は、腕部661〜663、摺動孔画定部64と対向する位置に形成されている。このため、腕部661〜663、摺動孔画定部64の軸方向での撓みがある程度許容される。回転軸31に径方向の力が作用した場合、腕部661〜663、摺動孔画定部64は、軸方向に撓む場合がある。このような場合に、腕部661〜663、摺動孔画定部64の軸方向の撓みが制限されると、腕部661〜663とケース10とが接触して摺動孔画定部64の弾性変形が制限されるおそれがある。しかしながら、凹面18は、腕部661〜663、摺動孔画定部64の軸方向での撓みを許容するような深さに設定されている。従って、摺動孔画定部64の弾性変形が制限されることを防止している。
【0033】
次に、板部材70のケース20への固定方法について簡単に説明する。尚、板部材70については、板部材60と同一形状、大きさであるので、板部材60と同様の符号を付することにより詳細な説明は省略する。図7は、板部材70の固定方法の説明図である。尚、図7Aは、板部材70がケース20へ固定される前のアクチュエータ1の底面図であり、図3と対応する。図7Aに示すように、ケース20の外面には、凸面27、凹面28が形成されている。凸面27と凹面28とは所定の段差を有して連続している。凹面28は、軸孔23の周辺部に形成されている。また、凸面27は、凹面28の周辺部に形成されている。ケース20に板部材70を固定する際には、図7Aにおいて斜線で示した領域Rに接着剤を塗布する。領域Rは、凹面28周囲の凸面27上の領域である。
【0034】
図7Bは、ケース20に接着剤ABが塗布された状態でのケース20周辺の拡大断面図である。凸面27上に接着剤ABを塗布し、次に図7Cに示すように、摺動孔75に回転軸31の下端部312を挿入し、固定部72が凸面27に固定されるようにして、板部材70をケース20へ貼り付ける。図7Cに示すように、ケース20の外面には、凹面28が形成されているので、凸面27から凹面28へ流れた接着剤ABが、腕部762や摺動孔画定部74に付着することが防止される。回転軸31に径方向の力が作用した際に、腕部762等とケース20と接触して、摺動孔画定部74の弾性変形が制限されることが抑制される。尚、板部材60、70の固定は、アクチュエータ1の組立工程において最後に行われる。
【0035】
以上のように、回転軸31は、板部材60、70によって回転可能に支持されている。従って、回転軸31に径方向の力が加わると、摺動孔65又は摺動孔75が拡大して回転軸31の径方向のずれが許容されるが、ある程度までずれると、回転軸31の外周面と、軸孔13又は軸孔23とが摺接する。従って回転軸31の径方向のずれは、軸孔13、又は軸孔23によって制限される。即ち、通常の状態にあっては、回転軸31は軸孔13、軸孔23と接触せず、回転軸31に径方向の力が作用した場合には、回転軸31は軸孔13又は軸孔23と接触しうる。回転軸31が軸孔13又は軸孔23と接触することにより、摺動孔画定部64又は摺動孔画定部74の変形が大きくなりすぎることを防止し、板部材60又は板部材70の破損を防止している。
【実施例2】
【0036】
次に、実施例2に係るアクチュエータ1aについて説明する。尚、実施例1に係るアクチュエータ1と同様の箇所については同様の符号を付することによってその詳細な説明は省略する。アクチュエータ1aは、所謂ステッピングモータである。
【0037】
図8は、実施例2に係るアクチュエータ1aの断面図、図9は、アクチュエータ1aの上面図である。ケース10aは、その内底面の中央付近に固定軸19aが立設している。ロータ30aは、固定軸19aによって回転可能に支持されている。ロータ30aは、磁性樹脂によって成形されている。また、ロータ30aは、図8に示すように、下部から上部にかけて、径が大きくなるように小径部33a、大径部34a、円板部35aを有している。小径部33aは、ケース20の孔23aに貫通して外部へ突出している。大径部34aは、ステータ40の磁極部と対向する。円板部35aは、ケース10aの内底面と対向する。尚、係合ピン12aは、ケース10とケース20とを固定するための機能を有している。
【0038】
円板部35aには板部材60aが固定されている。図9には、板部材60aを破線で示している。板部材60aは円板状に形成されている。図10は、板部材60aの正面図である。固定部62aがロータ30aの円板部35aに固定されている。摺動孔65の径の大きさは、固定軸19aの径の大きさよりも若干小さい。また、軸孔31aの径の大きさは、固定軸19aの径の大きさよりも大きい。
【0039】
従って、摺動孔65は固定軸19aに摺接していることになる。ロータ30aに径方向外側への力が作用した場合には、実施例1に係る板部材60と同様に、切れ込み67が開いて摺動孔画定部64が拡大して、ロータ30aは径方向外側へ若干移動する。その後に、摺動孔画定部64等の弾性復元力により、切れ込み67は閉じて、ロータ30aは再び元の位置に戻る。これにより、固定軸19aとロータ30aの軸孔31aとの打撃音が抑制され、アクチュエータ1の静音化が図られている。また、ロータ30aの径方向のガタつきも抑制される。また、摺動孔65と固定軸19aとが摺接しているので、軸方向のガタつきも抑制される。また、固定軸19aは摺動孔65を貫通しているので、軸方向でのアクチュエータ1aの大型化も抑制されている。また、ロータ30aが停止する際のハンチングが抑制される。
【0040】
次に、板部材60aの固定方法について説明する。図11、図12は、ロータ30aへの板部材60aの固定方法の説明図である。図11は、板部材60aが固定される前のロータ30aの上面図である。円板部35aは、軸孔31a周辺の凹面38aと、凹面38a周辺の凸面37aを有している。ロータ30aに板部材60aを固定する際には、図11において斜線で示した領域Rに接着剤を塗布する。この領域Rは凸面37a上である。
【0041】
図12Aは、ロータ30aに接着剤ABが塗布された状態での、円板部35a周辺の拡大断面図である。図12Aに示すように、凸面37a、凹面38aは所定の段差を有している。図12Bは、ロータ30aに板部材60aが貼り付けられた状態での、円板部35a周辺の拡大図である。板部材60aが貼り付けられると、凸面37aに塗布された接着剤ABは、凹面38aへと流れ出す。しかしながら、凸面37a、凹面38aとは、段差を有しているため、接着剤ABが腕部662や摺動孔画定部64に付着して、腕部662や摺動孔画定部64がロータ30aに固定されることを防止されている。
【0042】
次に、図12Cに示すように、摺動孔65、軸孔31aに固定軸19aを挿入する。このようにして、ロータ30aはケース10aへ組み付けられる。また、図12Cに示すように、ケース10aの固定軸19a周辺には、凹面18aが形成されている。凹面18aは、腕部661〜663、摺動孔画定部64、と対向する位置に形成されている。これは、ロータ30aに径方向の力が作用した際に、腕部661〜663、摺動孔画定部64の軸方向での撓みを許容するために設けられている。
【0043】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、変形・変更が可能である。
【0044】
尚、ケース10への板部材60の固定方法、ケース20への板部材70の固定方法、及びロータ30aへの板部材60aの固定方法は、レーザ溶着やスポット溶着でもよい。また、板部材70はケース20と、係合ピン22を介してアクチュエータ1が固定される部材との間に挟んで固定されてもよい。また、腕部は、2つであっても、4つ以上であってもよい。また、切れ込み67は、均等の間隔を有して放射状に腕部の数と同数あってもよい。また、実施例1の1において、板部材60のみ又は板部材70のみを採用してもよい。
【0045】
実施例1において、回転軸31と回転軸31を磁性樹脂により一体に成形した例を挙げたが、ロータと回転軸を別部品で構成し、圧入等により一体に形成してもよい。
【0046】
また本発明の実施例では、板部材60、70を合成樹脂により薄肉に形成した例を挙げたが、一般的な光反射防止用フィルムや遮光フィルム、例えばソマブラックフィルム(ソマール社製)フィルム等の合成樹脂に特殊加工を施したフィルム等を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施例1に係るアクチュエータ1の断面図である。
【図2】実施例1に係るアクチュエータ1の上面図である。
【図3】実施例1に係るアクチュエータ1の底面図である。
【図4】板部材の正面図である。
【図5】切れ込みの説明図である。
【図6】板部材の固定方法の説明図である。
【図7】板部材の固定方法の説明図である。
【図8】実施例2に係るアクチュエータの断面図である。
【図9】実施例2に係るアクチュエータの上面図である。
【図10】板部材の正面図である。
【図11】板部材の固定方法の説明図である。
【図12】板部材の固定方法の説明図である。
【符号の説明】
【0048】
10、10a、20、20a ケース
13、23、31a 軸孔
17、27、37a 凸面
18、28、38a 凹面
19a 固定軸
30、30a ロータ
31 回転軸
60、60a、70 板部材
62、62a、72 固定部
64、64a、74 摺動孔画定部
65、75 摺動孔
661〜663 腕部
67 切れ込み
AB 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有したロータと、前記回転軸を回転可能に支持する軸孔を有したケースとを備えたアクチュエータにおいて、
前記ケースに固定された固定部、弾性変形可能であって前記回転軸が摺動回転可能に貫通した摺動孔を画定する摺動孔画定部、前記固定部と前記摺動孔画定部とをつなぐ腕部、を有した板部材を備え、
前記摺動孔画定部には、前記摺動孔の拡大を容易にするための切れ込み部が形成されている、ことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
軸孔を有したロータと、前記軸孔に挿入される固定軸とを備えたアクチュエータにおいて、
前記ロータに固定された固定部、弾性変形可能であって前記固定軸と摺接して前記固定軸が貫通した軸孔を画定する摺動孔画定部、前記固定部と前記摺動孔画定部とをつなぐ腕部、を有した板部材を備え、
前記摺動孔画定部には、前記摺動孔の拡大を容易にするための切れ込み部が形成されている、ことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項3】
前記固定部は、前記摺動孔画定部を囲い、
前記腕部は、前記摺動孔画定部から放射状に前記固定部へと連続した複数の腕部を含む、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のアクチュエータ
【請求項4】
前記腕部の中心線は、前記軸孔の中心を通過しない、ことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記ケースは、前記摺動孔画定部及び腕部との接触を回避するための凹面を有している、ことを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記ロータは、前記摺動孔画定部及び腕部との接触を回避するための凹面を有している、ことを特徴とする請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記板部材は、樹脂により成形されている、ことを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のアクチュエータ。
【請求項8】
前記切れ込みは、前記摺動孔の径方向に形成されている、ことを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載のアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−273309(P2009−273309A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123572(P2008−123572)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【Fターム(参考)】