説明

アクチュエータ

【課題】簡単な構成で可動子の運動の自由度をある程度確保できるアクチュエータを提供する。
【解決手段】第1の固定子60の一端部65と他端部66とは、XYZ直交座標系におけるX軸をY軸回りで回転させた第1の軸に沿って前記可動子を挟んで対向するように配置される。また、第2の固定子70の一端部75と他端部76とは、XYZ直交座標系において、X軸をY軸回りで第1の軸とは反対方向に回転させた第2の軸に沿って可動子を挟んで対向するように配置される。第3の固定子80及び第4の固定子90も同様に、それぞれが、Y軸をX軸回りでそれぞれ反対方向に回転させた傾きを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータにおいて、多自由度の回転動作をするために、ロータに磁石を設置し、ステータにコイル等を設け、前記コイルを励磁することでロータを回転させることが従来技術として知られている(例えば、特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−245456号公報
【特許文献2】特開2009−130957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のアクチュエータは、ロータ(可動子)が行う運動の自由度を高めるために、多数の磁石、コイル等をロータおよびステータに配置する必要があったので、その構造が複雑であった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で可動子の運動の自由度をある程度確保できるアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るアクチュエータは、
S極とN極との2つの磁極を有する外周面を備え、自転可能及び傾動可能に支持された可動子と、
それぞれが前記外周面に対向する8つの電磁石と、を備え、
前記8つの電磁石のうちの第1−1の電磁石と第1−2の電磁石とは、前記可動子が傾動していないときの前記可動子の自転軸をZ軸とし、前記可動子の前記自転軸と傾動軸との交点を原点とした場合のXYZ直交座標系において、前記XYZ直交座標系におけるX軸をY軸回りで回転させた第1の軸に沿って前記可動子を挟んで対向するように配置され、
前記8つの電磁石のうちの第2−1の電磁石と第2−2の電磁石とは、前記XYZ直交座標系において、前記X軸をY軸回りで前記第1の軸とは反対方向に回転させた第2の軸に沿って前記可動子を挟んで対向するように配置され、
前記8つの電磁石のうちの第3−1の電磁石と第3−2の電磁石とは、前記XYZ直交座標系において、前記Y軸をX軸回りで回転させた第3の軸に沿って前記可動子を挟んで対向するように配置され、
前記8つの電磁石のうちの第4−1の電磁石と第4−2の電磁石とは、前記XYZ直交座標系において、前記Y軸をX軸回りで前記第3の軸とは反対方向に回転させた第4の軸に沿って前記可動子を挟んで対向するように配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るアクチュエータによれば、簡単な構成で可動子の運動の自由度をある程度確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係るアクチュエータの概略斜視図である。
【図2】(a)は固定子と可動子との位置関係を説明するための図1のアクチュエータの要部平面図である。(b)は固定子と可動子との位置関係を説明するための図1のアクチュエータの要部底面図である。(c)は(a)におけるA−A断面図である。
【図3】(a)は図1のアクチュエータの可動子が備える磁石の平面図である。(b)は図1のアクチュエータの可動子の円筒状部材の拡大断面図である。
【図4】(a)は図1のアクチュエータに供給する駆動信号の一例を示す図である。(b)は図1のアクチュエータに供給する駆動信号の一例を示す図である。
【図5】(a)は図1のアクチュエータの可動子が自転する様子を説明するための図であり、可動子及び各固定子それぞれの一部をZ軸方向から見た模式図である。(b)は図1のアクチュエータの可動子が傾動する様子を説明するための図であり、可動子及び各固定子それぞれの一部を断面として表した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態に係るアクチュエータ100を、図1〜図5を参照して説明する。アクチュエータ100は、例えば、カメラの固体撮像素子を搭載し、固体撮像素子の撮像方向を変化させるものである。
【0010】
アクチュエータ100は、図1及び図2に示すように、表側枠体10と、裏側枠体20と、収納ケース30と、支持体40と、可動子50と、第1の固定子60と、第2の固定子70と、第3の固定子80と、第4の固定子90と、を備える。なお、下記の説明では、アクチュエータ100に設定したXYZ座標系に基づいて説明を行う。このXYZ座標系は、可動子50が傾動していない状態(詳しくは後述する)における可動子50の自転軸をZ軸に取った座標系である。XYZ座標系の原点Oは、可動子50の自転軸と傾動軸との交点(詳しくは後述する。)とする。
【0011】
表側枠体10は、中央が貫通した略四角形の板状の枠体(例えば、金属製又は合成樹脂製)であり、表側スペーサ12と裏側スペーサ14とを備える。表側枠体10は、XYZ座標系のX軸とY軸とによって構成される平面(XY平面)と平行になるように配置されている。表側スペーサ12Aは、表側枠体10の一辺10Aの表面の略中央に配置されている。裏側スペーサ14Aは、表側枠体10の一辺10Aの裏面の略中央に配置されている。なお、図1では省略されているが、表側スペーサ12Aと同様の表側スペーサ、及び、裏側スペーサ14Aと同様の裏側スペーサが、表側枠体10の一辺10B〜10Dそれぞれの表面又は裏面の略中央にも形成されている。下記の説明では、一辺10Bに形成された各スペーサを表側スペーサ12B及び裏側スペーサ14Bと言い、一辺10Cに形成された各スペーサを表側スペーサ12C及び裏側スペーサ14Cと言い、一辺10Dに形成された各スペーサを表側スペーサ12D及び裏側スペーサ14Dと言う。各スペーサは、第1の固定子60と、第2の固定子70と、第3の固定子80と、第4の固定子90とのそれぞれを傾かせるように案内する。つまり、これらスペーサは、各固定子60〜90をXY平面に対して傾かせる。
【0012】
裏側枠体20は、略四角形の板状の枠体(例えば、金属製又は合成樹脂製)であり、四隅のネジN1乃至N4等によって表側枠体10に固定されている。裏側枠体20は、XY平面と平行になるように配置されている。表側枠体10と裏側枠体20とは、ネジN1乃至N4それぞれが中を通る4つの円筒状のスペーサを介して(ネジN1に対応するスペーサS1及びネジN2に対応するスペーサS2のみ図示)、間隔を空けて互いに固定されている。
【0013】
収納ケース30は、略直方体(直方体も含む)の箱体(例えば、合成樹脂製)であり、内部が空洞で表側が開口している(開口31)。収納ケース30は、裏側枠体20の表側の面(表側枠体10に対向する面)上に固定されている。収納ケース30は、支持体40及び可動子50を内部に収納するものであり、可動子50(後述の取り付け用部材52)を開口31から露出させる。
【0014】
支持体40(例えば、合成樹脂製)は、収納ケース30の内部に配置され、可動子50を自転可能かつ傾動可能に支持する。支持体40は、収納ケース30の底面の中央に位置し、球体42と、前記底面から立設して球体42を支持する柱43と、から構成されている。球体42は、柱43の先端に配置されている。支持体40は、例えば、収納ケース30に設けられた嵌合孔30aに一端部が嵌合されることで配設され、他端部で球体42を支持する。
【0015】
支持体40には貫通孔40aが形成されている。貫通孔40aは、図2(c)に示すように、柱43の底面から球体42の中心部に向かって(つまり、Z軸に沿って)形成され、柱43と球体42の略中心部を貫通する。貫通孔40aは、収納ケース30外側の空間と収納ケース30内部の空間とを連通するので、貫通孔40a内に、可動子50に取り付けられる固体撮像素子に一端部が接続され、他端部が収納ケース30外側の外部装置(例えば、この外部装置は制御装置であり、裏側枠体20に設けられている)と接続される配線を通すことが出来る。これにより、配線の一部を支持体40で保護し、また、可動子50が変位することによる不意な配線の絡まりを防止しつつも、可動子50とともに変位する固体撮像素子に電力、制御信号等を供給するための配線を、容易に配設できる。支持体40に取り付けられた可動子50内には、貫通孔40aに連通する空間(図2(c)参照)が設けられている。貫通孔40aからは配線が通され、その空間を通って固体撮像素子に接続される。これにより、可動子50が傾動したとしても配線が可動子50の動きに追従できるという良好な配線構造が可能である。なお、アクチュエータ100の外部にある所定の装置に一端部が接続された配線を、表側枠体10と裏側枠体20との間から(Z軸と略垂直方向から)通し、貫通孔40aを通過させるようにして、他端部を固体撮像素子と接続してもよい。また、裏側枠体20に貫通孔40aと対応する孔が設けられ、この孔と支持体40の貫通孔40aとを通過する配線が、固体撮像素子とアクチュエータ100の外部にある所定の装置とを導通接続するようにしてもよい。以上のように、本実施形態に係る支持体40は、可動子50を支持する役割と、配線を接続先の装置に案内する役割とを併せ持つ。
【0016】
可動子50は、円筒状部材51と、取り付け用部材52(図2において、断面を表すハッチングを省略した。)とを備える。円筒状部材51は、円筒状の部材であり、図3に示すように、その外周面51a(球面状のように湾曲している。)がS極とN極との2極になるように構成されている。つまり、円筒状部材51は、円筒状の磁石51bを含む。本実施形態では、円筒状部材51は、円筒状の芯51cの外周面に円筒状の磁石51bを嵌合させた形状となっている。円筒状部材51の内壁面51dには、球体42の形状に合わせた凹み51eが形成されており、この凹み51eと球体42とが摺動可能に嵌合する。これによって、可動子50は、自転が出来、かつ、所定の角度まで傾動することが出来る。
取り付け用部材52は、円筒状部材51に固定されている。取り付け用部材52には、前記の固体撮像素子が取り付けられる。円筒状部材51と、取り付け用部材52とは一体で変位するため、可動子50の変位(自転又は傾動)によって、取り付け用部材52に取り付けられた固体撮像素子も変位する。つまり、可動子50を変位させることによって、固体撮像素子の撮像方向が変化する。また、取り付け用部材52には、図1、図2(c)に示すように、取付孔52aが設けられている。例えば、この取付孔52aに固体撮像素子の一部が挿入され、その一部が可動子50内部に至り、前述した配線に導通接続される。その他、配線が貫通孔40a及び取付孔52aを通過し、固体撮像素子に接続されてもよい。
【0017】
なお、本実施形態では、可動子50は、外周面51aの径方向が前記XY平面と平行になる状態(水平状態)にあるときに、傾動していない状態になっているものとする。これによって、傾動していない状態における可動子50の自転軸は、Z軸上にあることになる。
【0018】
第1の固定子60は、略Cの字形状である。第1の固定子60は、略Cの字形状の磁性体(コア)61と、磁性体61の両端部に設けられた二つのコイル62及び63と、を備える。コイル62は、磁性体61の一端側の部分に巻回されたコイルであり、絶縁性のカバーで適宜被覆されている。コイル63は、磁性体61の他端側の部分に巻回されたコイルであり、絶縁性のカバーで適宜被覆されている。
【0019】
本実施形態では、第1の固定子60において、コイル62を含む一端部を一端部65と呼び、コイル63を含む他端部を他端部66と呼ぶ。さらに、一端部65と他端部66とを繋ぐ部分(磁性体61の、一端側の部分と他端側の部分とを繋ぐ部分)を接続部67と呼ぶ。
【0020】
ここで、一端部65と他端部66とは、その一部が収納ケース30の側壁を貫通し、その内部に達しており、可動子50を挟んで対向している。具体的には、第1の固定子の一端部65の端面65aと他端部66の端面66aとが、外周面51aに対向するとともに、可動子50を挟んで対向している。また、一端部65と他端部66とは、それぞれ、表側スペーサ12Aと裏側スペーサ14Bとに当接して案内されており、本実施形態では、X軸を、Y軸を回転軸にしてα°の角度だけ傾けた第1の軸に沿って(第1の軸に重なる場合と第1の軸に平行となる場合の両者を含む。「沿って」について同じ。)延在している。本実施形態では、このような配置によって、一端部65と他端部66とは、前記第1の軸に沿って可動子50を挟んで対向している。
【0021】
第2の固定子70は、略Cの字形状である。第2の固定子70は、略Cの字形状の磁性体(コア)71と、磁性体71の両端部に設けられた二つのコイル72及び73と、を備える。コイル72は、磁性体71の一端側の部分に巻回されたコイルであり、絶縁性のカバーで適宜被覆されている。コイル73は、磁性体71の他端側の部分に巻回されたコイルであり、絶縁性のカバーで適宜被覆されている。
【0022】
本実施形態では、第2の固定子70において、コイル72を含む一端部を一端部75と呼び、コイル73を含む他端部を他端部76と呼ぶ。さらに、一端部75と他端部76とを繋ぐ部分(磁性体71の、一端側の部分と他端側の部分とを繋ぐ部分)を接続部77と呼ぶ。
【0023】
ここで、一端部75と他端部76とは、その一部が収納ケース30の側壁を貫通し、その内部に達しており、可動子50を挟んで対向している。具体的には、第2の固定子の一端部75の端面75aと他端部76の端面76aとが、外周面51aに対向するとともに、可動子50を挟んで対向している。また、一端部75と他端部76とは、それぞれ、表側スペーサ12Bと裏側スペーサ14Aとに当接して案内されており、本実施形態では、X軸を、Y軸を回転軸にして−α°の角度だけ傾けた(つまり、第1の固定子60の場合とは反対方向に同じ大きさの角度だけ傾けた)第2の軸に沿って延在している。本実施形態では、このような配置によって、一端部75と他端部76とは、前記第2の軸に沿って可動子50を挟んで対向している。
【0024】
第3の固定子80は、略Cの字形状である。第3の固定子80は、略Cの字形状の磁性体(コア)81と、磁性体81の両端部に設けられた二つのコイル82及び83と、を備える。コイル82は、磁性体81の一端側の部分に巻回されたコイルであり、絶縁性のカバーで適宜被覆されている。コイル83は、磁性体81の他端側の部分に巻回されたコイルであり、絶縁性のカバーで適宜被覆されている。
【0025】
本実施形態では、第3の固定子80において、コイル82を含む一端部を一端部85と呼び、コイル83を含む他端部を他端部86と呼ぶ。さらに、一端部85と他端部86とを繋ぐ部分(磁性体81の、一端側の部分と他端側の部分とを繋ぐ部分)を接続部87と呼ぶ。
【0026】
ここで、一端部85と他端部86とは、その一部が収納ケース30の側壁を貫通し、その内部に達しており、可動子50を挟んで対向している。具体的には、第3の固定子の一端部85の端面85aと他端部86の端面86aとが、外周面51aに対向するとともに、可動子50を挟んで対向している。また、一端部85と他端部86とは、それぞれ、表側スペーサ12Cと裏側スペーサ14Dとに当接して案内されており、本実施形態では、Y軸を、X軸を回転軸にしてα°の角度だけ傾けた(つまり、第1の固定子60の場合と同じ方向に同じ大きさの角度だけ傾けた)第3の軸に沿って延在している。本実施形態では、このような配置によって、一端部85と他端部86とは、前記第3の軸に沿って可動子50を挟んで対向している。
【0027】
第4の固定子90は、略Cの字形状である。第4の固定子90は、略Cの字形状の磁性体(コア)91と、磁性体91の両端部に設けられた二つのコイル92及び93と、を備える。コイル92は、磁性体91の一端側の部分に巻回されたコイルであり、絶縁性のカバーで適宜被覆されている。コイル93は、磁性体91の他端側の部分に巻回されたコイルであり、絶縁性のカバーで適宜被覆されている。
【0028】
本実施形態では、第4の固定子90において、コイル92を含む一端部を一端部95と呼び、コイル93を含む他端部を他端部96と呼ぶ。さらに、一端部95と他端部96とを繋ぐ部分(磁性体91の、一端側の部分と他端側の部分とを繋ぐ部分)を接続部97と呼ぶ。
【0029】
ここで、一端部95と他端部96とは、その一部が収納ケース30の側壁を貫通し、その内部に達しており、可動子50を挟んで対向している。具体的には、第4の固定子の一端部95の端面95aと他端部96の端面96aとが、外周面51aに対向するとともに、可動子50を挟んで対向している。また、一端部95と他端部96とは、それぞれ、表側スペーサ12Dと裏側スペーサ14Cとに当接して案内されており、本実施形態では、Y軸を、X軸を回転軸にして−α°の角度だけ傾けた(つまり、第3の固定子80の場合とは反対方向に同じ大きさの角度だけ傾けた)第4の軸に沿って延在している。本実施形態では、このような配置によって、一端部95と他端部96とは、前記第4の軸に沿って可動子50を挟んで対向している。
【0030】
なお、第1の固定子60、第2の固定子70、第3の固定子80、第4の固定子90は、それぞれ、例えば、可動子50の部分が開放されている環状(円環状や多角形の環状を含む。)の形状のように、一端部と他端部とが対向し(少なくとも両端面が対向する状態であればよい)、一端部と他端部とが接続部で接続されている形状であればよい。なお、第1の固定子60と第2の固定子70とは、開放している部分が反対方向を向くように配置されている。つまり、接続部67の位置と接続部77の位置とが可動子50を挟んで反対側に位置するように、第1の固定子60と第2の固定子70とは配置されている。また、第3の固定子80と第4の固定子90とは、開放している部分が反対方向を向くように配置されている。つまり、接続部87の位置と接続部97の位置とが可動子50を挟んで反対側に位置するように、第3の固定子80と第4の固定子90とは配置されている。このような配置によって、アクチュエータ100のサイズはコンパクトになる。
【0031】
次に、アクチュータ100の動作について説明する。まず、図4(a)を参照し、Z軸を自転軸(回転軸)として可動子50を自転させる場合(つまり、可動子50を傾動させていない状態で自転させる場合)について説明する。
【0032】
ここでは、第1の固定子60のコイル62及び63に正弦波の交流電流(駆動信号A)を流す。第2の固定子70のコイル72及び73に正弦波の交流電流(駆動信号C)を流す。第3の固定子80のコイル82及び83に余弦波の交流電流(駆動信号B)を流す。第4の固定子90のコイル92及び93に余弦波の交流電流(駆動信号D)を流す。また、各駆動信号A乃至Dにおいて、ピーク時(正のピーク時及び負のピーク時)の電流の値は同じである。
【0033】
なお、コイル62及び63には共通の駆動信号Aが供給されるので、コイル62及び63は、駆動信号Aが供給された場合(同方向の電流が流れた場合)、磁性体61に同じ向きの磁束が発生するように、磁性体61に巻回されている。このようなコイルの巻回し方向は、第2乃至第4の固定子70、80、90それぞれの二つのコイルについても同様である。また、駆動信号A及びCは、同じ正弦波の信号なので、コイル62及び63の巻回しの方向とコイル72及び73の巻回しの方向とは、各コイルに同じ信号が供給されたときに、第1の固定子60の一端部65の端面65a(又は他端部66の端面66a)と第2の固定子70の他端部76の端面76a(又は一端部75の端面75a)とが同じ磁極になるような方向になっている。また、駆動信号B及びDは、同じ余弦波の信号なので、コイル82及び83の巻回しの方向とコイル92及び93の巻回しの方向とは、各コイルに同じ信号が供給されたときに、第3の固定子80の一端部85の端面85a(又は他端部86の端面86a)と第4の固定子90の他端部96の端面96a(又は一端部95の端面95a)とが同じ磁極になるような方向になっている。
【0034】
初期状態(0[rad]の時)では、駆動信号B及び駆動信号Dの電流値は正のピークの値になっているが、駆動信号A及び駆動信号Cの電流値は0[A]である。このため、第3及び第4の固定子80、90が磁力を発生する。これにより、可動子50は、この磁力の方向に沿った向きに向いている。また、第3及び第4の固定子80、90には、同じ値の電流が流れているので、第3及び第4の固定子80、90が発生させている磁力の大きさは同じである。つまり、可動子50は、第3の固定子80と第4の固定子90との間で釣り合い、このため、可動子50は、自転軸がZ軸と重なっており、傾動していない状態になっている。例えば、一端部85及び他端部96側がS極になるとすると、他端部86及び一端部95側はN極になり、外周面51aにおけるN極の部分が端面85a及び端面96aに対向し、外周面51aにおけるS極の部分が端面86a及び端面95aに対向する。
【0035】
第2の状態(π/2[rad]の時)では、駆動信号B及び駆動信号Dの電流値は0[A]であり、駆動信号A及び駆動信号Cの電流値は正のピークの値になっている。このため、第1及び第2の固定子60、70が磁力を発生する。これにより、可動子50は、この磁力の方向に沿った向きに向いている。また、第1及び第2の固定子60、70には、同じ値の電流が流れているので、第1及び第2の固定子60、70が発生させている磁力の大きさは同じである。つまり、可動子50は、第1の固定子60と第2の固定子70との間で釣り合い、このため、可動子50は、自転軸がZ軸と重なっており、傾動していない状態になっている。例えば、一端部65及び他端部76側がS極になるとすると、他端部66及び一端部75側はN極になり、外周面51aにおけるS極の部分が端面65a及び端面76aに対向し、外周面51aにおけるN極の部分が端面66a及び端面75aに対向する。
【0036】
初期状態から第2の状態への移り変わりの期間においては、駆動信号B及び駆動信号Dの電流値が徐々に減少し、駆動信号A及び駆動信号Cの電流値が徐々に増加している。このため、第3及び第4の固定子80、90が発生される磁力が徐々に減り、第1及び第2の固定子60、70が発生される磁力が徐々に増えるため、可動子50の向き(自転の回転角)は、第3及び第4の固定子80、90が発生される磁力の方向に沿った向きから、第1及び第2の固定子60、70が発生される磁力の方向に沿った向きに徐々に変化していく。このような様子を図5(a)に示す。図5(a)の場合では、可動子50は左回りに回転している。初期状態から第2の状態の間においては、可動子50は、Z軸回りで45°自転する。
【0037】
第3の状態(π[rad]の時)は、駆動信号B及び駆動信号Dの電流値は負のピークの値になっているが、駆動信号A及び駆動信号Cの電流値は0[A]である。この場合、第3及び第4の固定子80、90が発生させる磁力は、初期状態のときと反対なので、可動子50は、初期状態のときと反対側の方向に向く。
【0038】
第4の状態(3π/2[rad]の時)は、駆動信号B及び駆動信号Dの電流値は0[A]になっているが、駆動信号A及び駆動信号Cの電流値は負のピーク値である。この場合、第1及び第2の固定子60、70が発生させる磁力は、第2の状態のときと反対なので、可動子50は、第2の状態のときと反対側の方向に向く。
【0039】
第5の状態(2π[rad]の時)は、初期状態と同じ状態なので、可動子50は、初期状態のときと同じ方向に向く。
【0040】
第2の状態から第5の状態までの間において、各状態の間では、初期状態から第2の状態までの間と同じように、可動子50は徐々に向きを変えていく(つまり、自転する)。
【0041】
以上から、上記初期状態から第5の状態のときまでで、可動子50は、360°自転する(つまり、一回転する)。なお、可動子50の自転軸は、球体42の中心を通る。
【0042】
次に、図4(b)を参照し、可動子50を傾動させた状態で自転させる場合(つまり、可動子50を傾動させていない状態で自転させる場合)について説明する。なお、各コイルの巻回し方向等は、図4(a)の場合と同じである。図4(b)の場合と図4(a)の場合とでは駆動信号が異なる。駆動信号A及びCは、両者ともに正弦波の信号であるが、正のピーク値及び負のピーク値が異なる。具体的には、駆動信号Aのピーク値の絶対値の方が駆動信号Cのピーク値の絶対値よりも大きい(|Ia|>|Ic|)。駆動信号B及びDは、両者ともに余弦波の信号であるが、正のピーク値及び負のピーク値が異なる。具体的には、駆動信号Bのピーク値の絶対値の方が駆動信号Dのピーク値の絶対値よりも大きい(|Ib|>|Id|)。なお、ここでは、|Ia|=|Ib|、|Ic|=|Id|とする。
【0043】
このような場合、ピーク値の絶対値が大きい方の駆動信号が供給されるコイルを有する固定子の磁力の方が前記絶対値が小さい方の駆動信号が供給されるコイルを有する固定子の磁力よりも大きくなるので、可動子50は、より大きい磁力の固定子の端面に引かれるので、可動子50は傾動することになる。なお、可動子50は、球体42の中心を通り、かつ、外周面51aの磁極の境界に含まれる傾動軸を中心に傾動する。つまり、傾動していないときの可動子50の自転軸と、可動子50の傾動軸とは、XYZ軸座標系の原点Oにおいて交差している。例えば、初期状態において、一端部85及び他端部96側がS極になるとすると(各他端部はN極になる。)、外周面51aにおけるN極の部分が端面85aにより引かれ、外周面51aにおけるS極の部分が端面86aにより引かれるので、可動子50はXY平面に対して、第3の固定子80(一端部85と他端部86)と同じ向きに傾動する(図5(b)参照)。
【0044】
図4(b)の場合と図4(a)の場合とでは、各ピーク値の絶対値が所定の駆動信号同士で同じであるか、異なるかの違いだけであるので、図4(b)のような各駆動信号A乃至Dでは、可動子50は、傾動軸を軸にして傾いたまま、Z軸を回転軸として自転する。
【0045】
上記で説明したように、各固定子のコイルに流す電流を制御することで(例えば、アクチュエータ100が備える図視しない制御部によって制御される。)、可動子50を自転させたり、傾動させたりすることが出来るので、可動子50を二軸回りで回転させることができ、可動子50を所望の方向に向けることが出来る。このため、可動子50に取り付けた撮像素子の撮像方向も所望の向きにすることが出来る。特に本実施形態では、可動子50の磁極が2極のみであり、電磁石が4つのみであるので、アクチュエータ100は、可動子50の運動の自由度をある程度確保しつつ、簡単な構造となっている。特に、本実施形態では、部品点数が少ないので、製造コストを抑えることも出来る。
【0046】
なお、本発明の範囲は上記実施形態(図面の記載も含む。)によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない限り、上記実施形態に様々な変形を加えることができるのはもちろんである。例えば、上記では、1つの固定子が二つのコイルを備えているが、コイルは1つであってもよい。コイルが1つだと電流の制御が簡単になる。また、コイルは、1つの固定子について三つ以上であってもよい。また、上記一端部と他端部とをそれぞれ独立した電磁石としてもよい。例えば、第1の固定子60において、接続部67を設けず、一端部65及び他端部66をそれぞれ電磁石としてもよい。また、アクチュエータ100が変位させるものは、固体撮像素子に限らず、他の物であってもよい。例えば、固体撮像素子の代わりに、マイク等のセンシングデバイスを可動子50に取り付けてもよい。このような場合、上記固体撮像素子の撮像方向はセンシングデバイスのセンシング方向になる。例えば、上記アクチュエータ100では、可動子50に取り付けたセンシングデバイスのセンシング方向も所望の向きにすることが出来る。また、センシングデバイスを可動子50に取り付ける場合であっても、上記の支持体40の貫通孔40aによって、配線を容易に配設でき、また、配線が可動子50の動きに追従できるという良好な配線構造が可能である。
【符号の説明】
【0047】
100 アクチュエータ
10 表側枠体
20 裏側枠体
30 収納ケース
40 支持体
50 可動子
51a 外周面
60 第1の固定子
70 第2の固定子
80 第3の固定子
90 第4の固定子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
S極とN極との2つの磁極を有する外周面を備え、自転可能及び傾動可能に支持された可動子と、
それぞれが前記外周面に対向する8つの電磁石と、を備え、
前記8つの電磁石のうちの第1−1の電磁石と第1−2の電磁石とは、前記可動子が傾動していないときの前記可動子の自転軸をZ軸とし、前記可動子の前記自転軸と傾動軸との交点を原点とした場合のXYZ直交座標系において、前記XYZ直交座標系におけるX軸をY軸回りで回転させた第1の軸に沿って前記可動子を挟んで対向するように配置され、
前記8つの電磁石のうちの第2−1の電磁石と第2−2の電磁石とは、前記XYZ直交座標系において、前記X軸をY軸回りで前記第1の軸とは反対方向に回転させた第2の軸に沿って前記可動子を挟んで対向するように配置され、
前記8つの電磁石のうちの第3−1の電磁石と第3−2の電磁石とは、前記XYZ直交座標系において、前記Y軸をX軸回りで回転させた第3の軸に沿って前記可動子を挟んで対向するように配置され、
前記8つの電磁石のうちの第4−1の電磁石と第4−2の電磁石とは、前記XYZ直交座標系において、前記Y軸をX軸回りで前記第3の軸とは反対方向に回転させた第4の軸に沿って前記可動子を挟んで対向するように配置されている、
ことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記第1−1の電磁石と前記第1−2の電磁石とは、共通の第1の磁性体に1以上のコイルを巻き回した1つの電磁石の一端部と他端部とから構成され、
前記第2−1の電磁石と前記第2−2の電磁石とは、共通の第2の磁性体に1以上のコイルを巻き回した1つの電磁石の一端部と他端部とから構成され、
前記第3−1の電磁石と前記第3−2の電磁石とは、共通の第3の磁性体に1以上のコイルを巻き回した1つの電磁石の一端部と他端部とから構成され、
前記第4−1の電磁石と前記第4−2の電磁石とは、共通の第4の磁性体に1以上のコイルを巻き回した1つの電磁石の一端部と他端部とから構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記可動子を自転可能及び傾動可能に支持する支持体をさらに備え、
前記支持体には、前記可動子に取り付けられる所定の装置に接続される配線を通すための貫通孔が、前記Z軸に沿って形成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−17258(P2013−17258A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146585(P2011−146585)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】