説明

アクリルエマルション粘着剤

【課題】高い固定性を有するアクリルエマルション粘着剤および両面粘着テープを提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)を主成分とし、イタコン酸(b)を含むビニル系不飽和単量体混合物を、水性媒体中において乳化重合させることを特徴とするアクリルエマルション粘着剤であり、ビニル系不飽和単量体混合物が、分子中にカルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基及びアミド基から選択される一以上の置換基を有する単量体(c)並びに/又は親水性のビニル系不飽和単量体(d)を一種以上更に含むアクリルエマルション粘着剤および両面粘着テープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた保持性・固定性を有するアクリルエマルション粘着剤およびそれが適用された両面粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車、家電製品などの分野において、部品の固定には接着剤が使用されてきた。最近では、高強度の両面粘着テープも開発され、接着剤に代わって固定用途に用いられている。その一例として、厚みのある発泡体を基材とすることにより、応力を分散させ、固定性を高めたテープが知られている。また、不織布等の薄い基材に溶剤系アクリル粘着剤を適用した両面粘着テープの中にも、固定性の比較的高いものが見られる。
【特許文献1】特開2006−249284
【特許文献2】特開2007−224188
【特許文献3】特開2007−112838
【特許文献4】特開2006−283034
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、アクリルエマルション粘着剤で固定性に優れるものは見出されていない。また、基材に依らず粘着剤自体の固定性の向上を謳った技術は見受けられない。そこで、本発明は、優れた保持性・固定性を有するアクリルエマルション粘着剤を提供することを目的とする。ここで、本発明は後述するようにアクリルエマルション粘着剤の合成においてイタコン酸を共重合させることを本質とするが、アクリルエマルション粘着剤の合成に際し一原料としてイタコン酸を使用すること自体は、例えば特許文献1〜4に開示されている。しかしながら、これら文献では、原料の一部として添加してもよい重合性不飽和カルボン酸として、多種挙げられている中の一つとしてイタコン酸が列記されているに過ぎず、実施例でもイタコン酸を使用したものは無い。しかも、本明細書の実施例及び比較例から明らかなように、これら文献に記載されたイタコン酸以外の重合性不飽和カルボン酸(例えばアクリル酸やマレイン酸)を用いた場合には、固定性(L型保持力)がイタコン酸を用いた場合と比較して顕著に低い。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、アクリルエマルション粘着剤の合成において、イタコン酸を共重合させることにより、固定性が飛躍的に向上し、溶剤系粘着剤を遥かに上回ることを見出した。
【0005】
即ち、本発明(1)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)を主成分とし、イタコン酸(b)を含むビニル系不飽和単量体混合物{好適には、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)を主成分とし、イタコン酸(b)を0.5〜10重量%含むビニル系不飽和単量体混合物}を、水性媒体中において乳化重合させることを特徴とするアクリルエマルション粘着剤である。
【0006】
更に、イタコン酸は水溶性が高く、単独重合性に乏しい等の理由から、水系での重合は困難であり、従来の重合条件では重合転化率が大きく低下するという課題もある。当該課題の下、本発明者は、イタコン酸と特定モノマー(親水性モノマー等)を共重合することにより、基材に依らず優れた固定性を示す両面粘着テープとして適用可能なアクリルエマルション粘着剤が提供できることを更に見出した。具体的には、下記の本発明(2)である。
【0007】
即ち、本発明(2)は、前記ビニル系不飽和単量体混合物が、分子中にカルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基及びアミド基から選択される一以上の置換基を有する単量体(c)並びに/又は親水性のビニル系不飽和単量体(d)を一種以上更に含む、前記発明(1)のアクリルエマルション粘着剤である。
【0008】
本発明(3)は、前記発明(1)又は(2)の粘着剤が適用された両面粘着テープである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係る粘着剤は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)とイタコン酸(b)から成るポリマーであり、この2成分を必須的に含有している。より好適には、特定の官能基を有するモノマー(c)または親水性モノマー(d)を共重合した3成分以上からなるポリマーが望ましい。さらに、共重合可能な他の不飽和結合を有するモノマー(e)を1種類以上共重合させてもよい。以下、各原料成分について詳述する。
【0010】
《ビニル系不飽和単量体混合物中の各成分》
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)のアルキル基は特に限定されず、直鎖、分岐、環状を問わないが、炭素数1〜18のものが使用される。例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソステアリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソノニルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等が挙げられる。尚、本最良形態に係る発明において、(メタ)アクリル酸エステルとは、前記成分の中から選択された一種のモノマーのみならず、数種のモノマーの組合せであってもよく、好適には共重合物のTgが−20℃以下になるように組み合わせて用いられる。なお、共重合体のTgは各ホモポリマーのTgから次式で計算される。(1/Tg=1/Tg(a)+1/Tg(b)+1/Tg(c)+・・・)。
【0011】
成分(c)として使用される単量体は分子中にカルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基及びアミド基から選択される一種以上の官能基を有する重合性ビニル系単量体である。具体的には、カルボキシル基を含む単量体としてはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸モノエステル、β−カルボキシエチルアクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート等がある。ヒドロキシル基を含む単量体としては2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート(商品名:ブレンマーPE、AE(日油))、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート(商品名:ブレンマーPP、AP(日油))、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸エステル(商品名:プラクセルF(ダイセル化学工業))、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド等がある。アミノ基を含む単量体としては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびその四級化塩、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびその四級化塩、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドおよびその四級化塩等がある。アミド基を有する単量体としては、(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドおよびその四級化塩、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N−ビニルアセトアミド、メタクリルアミドエチルエチレンウレア、アクリルアミドt−ブチルスルホン酸等がある。これらの単量体は、イタコン酸の主ポリマーへの共重合を促進し系全体の重合速度の増加に寄与すると同時にポリマーの接着性を向上させる働きがあると考えられる。前記成分の中から選択された一種のモノマーのみならず、数種のモノマーの組合せであってもよい。
【0012】
成分(d)として使用される単量体は一般に親水性モノマーと呼ばれる単量体であり、主にイタコン酸の共重合を促進する働きをするものと考えられる。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸モノエステル、β−カルボキシエチルアクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート(商品名:ブレンマーPE、AE(日油))、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸エステル(商品名:プラクセルF(ダイセル化学工業))、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびその四級化塩、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびその四級化塩、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドおよびその四級化塩、(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N−ビニルアセトアミド、メタクリルアミドエチルエチレンウレア、アクリルアミドt−ブチルスルホン酸、N−ビニル−2−ピロリドン、アクリロイルモルフォリン、(メタ)アクリロニトリル、アルコキシ(メタ)アクリレート、アルコキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート、メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン等分子中に親水性を示す構造(カルボキシル基、水酸基、エーテル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基、アミド基)を有する単量体が使用される。前記成分の中から選択された一種のモノマーのみならず、数種のモノマーの組合せであってもよい。
【0013】
また、上述した成分(c)と成分(d)は、一部重複したものも存在する。即ち、分子中にカルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基及びアミド基から選択される一種以上の官能基を有する、親水性の重合性ビニル系単量体がこれに相当する。この場合は、原料中に成分(c)が存在すると捉えることも、原料中に成分(d)が存在すると捉えることも可能である。ここで、より好適な成分(c)/成分(d)は、アクリル酸、メタクリル酸、ダイアセトンアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアクリルアミド、ω―カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、アクリル酸ダイマー、2−アクリロイロキシエチル−コハク酸であり、更に好適な成分(c)/成分(d)は、アクリル酸、メタクリル酸、ダイアセトンアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、ω―カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレートである。
【0014】
原料であるビニル系不飽和単量体混合物は、上記(a)及び(b){更に(c)及び/又は(d)}に加え、他の不飽和結合を有する単量体(e)を更に共重合成分として含有していてもよい。単量体(e)としては、スチレン、酢酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル等がある。
【0015】
《ビニル系不飽和単量体混合物中の各成分量》
本ビニル系不飽和単量体混合物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)を主成分として含有し、イタコン酸(b)を必須成分として含有する。ここで、「主成分」とは、当該混合物の全重量を基準として、50重量%以上、好適には70重量%以上含有することを意味する。また、イタコン酸(b)はポリマーの保持性・固定性を向上させるために共重合されるが、その配合量は、全単量体混合物の重量を基準として、0.1〜15重量%が好適であり、0.5〜10重量%がより好適であり、0.5〜5重量%であれば更に好適である。特定の官能基を有するモノマー{成分(c)}、親水性モノマー{成分(d)}の配合量はイタコン酸の重量に対して0〜5倍であることが好適であり、2〜5倍であればより好適である。他の不飽和結合を有する単量体(e)の配合量は0〜30重量%が好適である。更に、このビニル系不飽和単量体混合物は、アクリルエマルションを製造する際、原料を分割して添加した場合には、これら分割して添加した原料を合わせたものを意味する。
【0016】
《エマルション系粘着剤》
本発明に係るエマルション系粘着剤は、前述した原料を水性媒体中で乳化重合させることにより得られるアクリルエマルションを主成分とする。ここで、「主成分」とは、全粘着剤組成物の重量を基準として、好適には50重量%、より好適には70重量%含有することを指す。
【0017】
ここで、本発明に係る粘着剤は、上記の成分の他に、粘着付与剤樹脂として、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、クマロンインデン樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂等の樹脂を添加することができる。
【0018】
また、本発明に係る粘着剤は、架橋剤を含有していてもよい。ここで、架橋剤として、エポキシ基、イソシアネート基、ヒドラジド基、カルボジイミド基等の反応性官能基を二以上有している物質、例えば、ジグリシジルエーテル、アジピン酸ジヒドラジドを挙げることができる。
【0019】
また、充填剤として、炭酸カルシウム、亜鉛華(酸化亜鉛)、シリカ、酸化チタン等を含有していてもよい。
【0020】
その他、軟化剤として、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、ひまし油、綿実油、あまに油、菜種油等を添加することができる。
【0021】
《アクリルエマルションの物性》
次に、本発明に係るアクリルエマルションの物性を説明する。本発明に係るアクリルエマルションは、特に限定されないが、好適には、酢酸エチル不溶分(ゲル分率)が70%以上であり、より好適には90%以上である。ここで、ゲル分率の測定法は下記の通りである。まず、剥離紙上でエマルションを乾燥させ、粘着剤膜を作成する。得られた粘着剤膜を円筒ろ紙に入れ、酢酸エチル中に浸漬し、1週間放置する。この不溶分をゲル分とし、ゲル分の乾燥重量と浸漬前の乾燥重量の比をゲル分率として求める。
【0022】
《アクリルエマルションの製造方法》
本発明に係るアクリルエマルションは、前述した原料を水性媒体中で乳化重合させることにより得られる。ここで、乳化重合は公知の手段によって行うことができるが、例えば水を溶媒とし、界面活性剤の一種または二種以上とモノマー成分を加えて乳化させ、加熱した後、開始剤を添加して撹拌することにより、実施することができる。
【0023】
界面活性剤は特に限定されるものではないが、アニオン系界面活性剤として、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸ナトリウムやアクアロンKH−10(第一工業製薬(株)製反応性界面活性剤、スルホン酸系)、およびノニオン系界面活性剤として、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートやアクアロンRN−30(第一工業製薬(株)製反応性界面活性剤)などを使用することができる。
【0024】
上記の界面活性剤と共に、必要に応じて水溶性保護コロイドを使用することができる。例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ゼラチンなどが挙げられる。
【0025】
重合開始剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩系、t−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシドなどの有機過酸化物系、過酸化水素と酒石酸などのレドックス系、V−50(和光純薬工業(株)製)などの水溶性アゾ系開始剤等が使用できる。
【0026】
重合に際しては、共重合体の分子量を調節するため、必要に応じて連鎖移動剤を使用することができる。例えば、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ブチルメルカプタンなどが挙げられる。
【0027】
《アクリルエマルション粘着剤の製造方法》
本発明に係る粘着剤は、公知の手法により製造可能であり、例えば、乳化重合体に、必要に応じて、粘着付与剤樹脂、架橋剤等を添加、撹拌し製造することができる。
【0028】
《アクリルエマルション粘着剤の用途》
最後に、本発明に係る粘着剤の用途を説明する。本発明の粘着剤を公知の手法により基材上に適用することにより、各種用途に適用可能な両面粘着テープを得ることができる。例えば、紙用、プラスチック用、金属用の粘着テープを挙げることができる。具体的には、紙同士、プラスチック同士、金属同士だけではなく、異種材料同士の接合にも有用である。また、フック・ハンガーの取り付け等に有効な固定性を有する粘着テープも得ることができる。基材は、特に限定されないが、不織布、プラスチック発泡シート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタンなどの合成樹脂からなるフィルムまたはシートが挙げられる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明について実施例を参照しながら更に具体的に説明する。尚、本発明の技術的範囲は実施例に限定されるものではない。また、特記しない限り、以下の実施例における「部」は重量部を意味する。
【0030】
製造例 乳化重合による共重合体の製造方法
温度計、コンデンサー、窒素導入管、撹拌機を備えた温度調節可能な反応容器に蒸留水200部、反応型アニオン系界面活性剤(アクアロンKH−10:第一工業製薬(株)製)0.45部、2−エチルヘキシルアクリレート(以下、「2−EHA」とする)22.5部、n−ブチルアクリレート(以下、「n−BA」とする)3.6部、メチルメタクリレート(以下、「MMA」とする)3.0部、イタコン酸(以下、「ITA」とする)0.9部を仕込み、窒素気流下で80℃まで昇温した後、過硫酸カリウム0.6部を蒸留水10部に溶解させた液を滴下し、10分後から、2−EHA202.5部、n−BA32.4部、MMA27.0部、ITA8.1部からなるモノマー混合物を、反応型アニオン系界面活性剤(アクアロンKH−10:第一工業製薬(株)製)4.05部、蒸留水90部に乳化分散させたモノマー乳化物を、2時間で連続的に添加し、さらに80℃で2時間反応を継続し、重合を完結させた後冷却した。アンモニア水でpH7.5に調整後、金網等で濾過し、固形分50%のアクリル共重合体エマルションを得た。尚、本実施例および比較例で用いた他の乳化重合体は、当該製造例に従い製造して用いた。
【0031】
重合転化率の測定方法
ポリマーの重合転化率は、反応終了したエマルジョン液の固形分濃度から、下記式により求めた。
重合転化率=(実測固形分濃度/設定固形分濃度)×100
ここで、実測固形分濃度は、反応終了したエマルジョン液を120℃で2時間乾燥させ、乾燥前後の重量比により算出した。
実測固形分濃度=(乾燥後の重量/乾燥前の重量)×100
【0032】
粘着剤の評価方法
剥離紙上に本発明に係る粘着剤を乾燥後の厚さが50μmになるように塗工し、乾燥した後、不織布基材の両面に貼り合せて転写して、両面粘着シートを得た。得られたシートを25×25mmに裁断し、固定性を調査した。不織布基材としては、レーヨン不織布(厚さ50μm、坪量14g/m)を用いた。
【0033】
固定性の評価方法
両面粘着テープの片面を、ステンレス製のL型パネルに貼付し、余った部分を切断した。試験片の上から5kgの圧着ローラーを用い、圧着速度毎分約300mmで1往復圧着した。次に試験片のもう一方の面をステンレス製の試験板に貼り合せ、5kgの圧着ローラーを用い、圧着速度毎分約300mmで1往復圧着した。72時間放置した後、1kgの荷重をL型パネルに吊り下げ、落下するまでの時間を測定した。測定は23℃50%RHの条件下で行った。ここで、L型パネルとは、図1に示す形のもので、25×25mmのステンレス板をアルミニウム製のL型チップに接着剤を用いて固定したものであり、ステンレス板表面より20mm離れた位置の中央部に定荷重を負荷することを可能ならしめるべき約1mmφの穴をあけたものである。固定性10時間未満を×、10時間以上100時間未満を○、100時間以上を◎と評価した。
【0034】
比較例1〜3、実施例1
(メタ)アクリル酸エステルとカルボキシル基含有モノマーからなる乳化重合体を用いて、重合転化率および固定性(L型保持力)の評価を行った。結果を表1及び図2に示す。イタコン酸を共重合したときに、非常に高い固定性が得られた。しかし、重合転化率の低下が見られた。
【0035】

2−EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
n−BA:n−ブチルアクリレート
MMA:メチルメタクリレート
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
ITA:イタコン酸
【0036】
実施例1〜11
(メタ)アクリル酸エステルとイタコン酸に、さらに親水性モノマーを加えて共重合することにより、重合転化率を低下させることなく、高い保持性を有する粘着剤が得られた。結果を表2に示す。
【0037】

DAAM:ダイアセトンアクリルアミド
NIPAM:N−イソプロピルアクリルアミド
NVP:N−ビニル−2−ピロリドン
DM:ジメチルアミノエチルメタクリレート
DEAA:N,N−ジエチルアクリルアミド
アロニックスM−5300:東亞合成社製、ω―カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート
アロニックスM−5600:東亞合成社製、アクリル酸ダイマー
HOA−MS:2−アクリロイロキシエチル−コハク酸
【0038】
実施例12〜14、比較例4
実施例2〜18において特に効果の高かった、親水性モノマーとしてアクリル酸を用いた場合において、イタコン酸とアクリル酸の配合比による効果の確認を行った。結果を表3に示す。イタコン酸が多い方が固定性は高く、アクリル酸が多いほど重合転化率は高くなる傾向が認められた。尚、実施例14に係るアクリルエマルションのゲル分率は、95.4%であった。
【0039】

【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、実施例における固定性の評価方法の概要を示した図である。
【図2】図2は、実施例1及び比較例1〜3に係る粘着剤のL型保持力試験の結果図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)を主成分とし、イタコン酸(b)を含むビニル系不飽和単量体混合物を、水性媒体中において乳化重合させることを特徴とするアクリルエマルション粘着剤。
【請求項2】
前記ビニル系不飽和単量体混合物が、分子中にカルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基及びアミド基から選択される一以上の置換基を有する単量体(c)並びに/又は親水性のビニル系不飽和単量体(d)を一種以上更に含む、請求項1記載のアクリルエマルション粘着剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載の粘着剤が適用された両面粘着テープ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−126616(P2010−126616A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302069(P2008−302069)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000004020)ニチバン株式会社 (80)
【Fターム(参考)】