説明

アクリル樹脂の製造方法

【課題】 有機溶剤存在下に単量体をラジカル重合して得られるアクリル樹脂について、該樹脂が高分子量であり、分子量分布が狭く、しかも、単量体含有量が低減されたアクリル樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】 (メタ)アクリル酸エステル、及び、極性官能基とオレフィン性二重結合とを分子内に含有する単量体をラジカル重合させるアクリル樹脂の製造方法において、開始時の単量体100重量部に対し、式(1)で表されるRが5〜100(重量部/hr)で重合中に有機溶剤を混合させることを特徴とするアクリル樹脂の製造方法。
R=[(A×(1−C)/C−100×(1−B)/B)/D]×100 (1)
(式中、Aは終了時の単量体及びアクリル樹脂の合計重量部を表し、Bは開始時の反応溶液に含まれる単量体の濃度を表し、Cは重合終了時の単量体及びアクリル樹脂の合計濃度を表し、Dは重合時間を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムとガラス基材との粘着に好適なアクリル樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機溶剤存在下にラジカル重合して得られるアクリル樹脂は、粘着力、凝集力、耐候性、透明性、耐久性などが優れているため、粘着テープ、粘着シートの感圧性粘着層を形成する粘着剤として幅広く使用されている。最近、偏光フィルム、位相差フィルムなどの光学フィルムに該粘着剤を積層し、得られる粘着剤層に液晶セル等のガラス基材と貼合して、液晶表示装置(LCD)や有機エレクトロルミネッセンス(EL)などのフラットパネル表示装置(FPD)に使用されている。
該粘着剤層は、FPDの高性能化に伴って、高温、高湿条件下にて発泡や、ガラス基材との剥離を抑制することが求められており、このような粘着剤層に好適なアクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とし、カルボキシル基、水酸基又はアミド基を有する単量体、連鎖移動剤であるアルコキシシリル基含有チオール化合物、及び有機溶媒を一括して混合したのち共重合して、重量平均分子量(Mw)800,000〜1,500,000、分子量分布(Mw/Mn)1.5〜3.5であるアクリル樹脂が得られることが報告されている(特許文献1)。また、該アクリル樹脂と架橋剤などを含む粘着剤は、貼り直すためにガラス基材から光学フィルムを剥離した後でも、粘着剤層と接していたガラス基材の表面に、曇りや糊残り等がほとんど発生しない、いわゆる、リワーク性に優れることも報告されている。
【0003】
【特許文献1】特開平9−145925号公報[請求項1]、[0039]実施例1、[0058]実施例4、[0077]〜[0078][発明の効果]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、特許文献1に記載されたような、原料を一括で混合させた溶液重合法について検討したところ、未反応の(メタ)アクリル酸エステルなどの単量体が20%程度残存し、単量体を十分除去しなければ、60℃→−20℃→60℃を1サイクルとしこれを100サイクル繰り返すヒートショック(以下、HSという場合がある)を与えると、該単量体が揮発、凝集を繰返してガラス板表面に剥れ、曇りなどが生じる可能性があることが明らかになった。
本発明の目的は、有機溶剤存在下に単量体をラジカル重合して得られるアクリル樹脂について、該樹脂の重量平均分子量が1,000,000以上の高分子量であり、該樹脂の分子量分布(Mw/Mn)が5以下と狭く、しかも、該樹脂に含まれる単量体含有量が低減されたアクリル樹脂の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、有機溶剤存在下に(メタ)アクリル酸エステル(a)及び下記単量体(b)を必須単量体としてラジカル重合させるアクリル樹脂の製造方法において、重合開始時の重合反応溶液に用いられる単量体100重量部に対し、ラジカル重合中に式(1)で表されるRを5〜100(重量部/hr)の範囲内で有機溶剤を混合させることを特徴とするアクリル樹脂の製造方法である。
【0006】
R=[(A×(1−C)/C−100×(1−B)/B)/D]×100 (1)
(式中、Aは重合終了時の重合反応溶液に用いられる単量体及びアクリル樹脂の合計重量部を表し、Bは重合開始時の重合反応溶液に含まれる単量体の濃度(重量%)を表し、Cは重合終了時の重合反応溶液に含まれる単量体及びアクリル樹脂の合計濃度(重量%)を表し、Dは重合時間(hr)を表す。)
【0007】
(b):カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、
アルデヒド基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも一つの
極性官能基と、一つのオレフィン性二重結合とを分子内に含有する単量体
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によって得られるアクリル樹脂は、重量平均分子量が1,000,000以上の高分子量であり、分子量分布(Mw/Mn)が5以下と狭く、得られるアクリル樹脂における単量体の反応率が高く、単量体含有量はアクリル樹脂(固形分)100重量部に対し、15重量部以下に低減される。
そして、該アクリル樹脂を主成分とする粘着剤は、高温、高湿条件下に保管しても、粘着剤層中で発泡、白ヌケなどの外観変化が少なく、粘着剤層とガラス基材との間の剥離を抑制し、耐HS性にも優れる。
さらに、該粘着剤層を介して偏光フィルムなどの光学フィルムをガラス基材に貼合したのち、貼り直すためにガラス基材から該フィルムを剥離した後でも、粘着剤層と接していたガラス基材の表面に、曇りや糊残り等がほとんど発生しない、いわゆる、リワーク性に優れる。このことにより、一度積層した粘着剤をガラス基材から剥離しても、剥離後のガラス基材の表面に糊残りや曇りが抑制され、再び、ガラス基材として用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で製造されるアクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル(a)、及びカルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、アルデヒド基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも一つの極性官能基と、分子内に一つのオレフィン性二重結合とを含有する単量体(b)を必須単量体としてラジカル重合させて得られるアクリル樹脂である。
【0010】
本発明における(メタ)アクリル酸エステル(a)とは、式(A)で表される化合物である。

(式(A)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは炭素数1〜14のアルキル基またはアラルキル基を表す。Rのアルキル基またはアラルキル基は炭素数1〜10のアルコキシ基によって置換されていてもよい。)
【0011】
ここで、(メタ)アクリル酸エステル(a)としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレートなどの直鎖状アクリル酸アルキルエステル;、iso-ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、iso-オクチルアクリレートなどの分枝状アクリル酸アルキルエステル;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレートなどの直鎖状メタクリル酸アルキルエステル;、iso-ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、iso-オクチルメタクリレートなどの分枝状メタクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。
【0012】
の炭化水素基にアルコキシ基が置換された(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メトキシエチルアクリレート、エトキシメチルアクリレート、メトキシエチルメタクリレート、エトキシメチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0013】
アクリル樹脂は、異なる複数の(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を含有していてもよい。アクリル樹脂100重量部(不揮発分)に対し、(メタ)アクリル酸エステル(a)は、通常、60〜99.9重量部、好ましくは80〜99.6重量部用いられる。
【0014】
単量体(b)としては、例えば、極性官能基がカルボキシル基である単量体(b)として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられ、極性官能基が水酸基である単量体(b)として、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、極性官能基がアミド基である単量体(b)としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジアセトンジアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等が挙げられ、極性官能基がエポキシ基である単量体(b)としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられ、極性官能基がオキセタニル基である単量体(b)として、例えば、オキセタニル(メタ)アクリレート、3−オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。さらに、極性官能基がアミノ基である単量体(b)としては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、アリルアミン等が挙げられ、極性官能基がイソシアネート基である単量体(b)としては、例えば、2−メタクリロイロキシエチルイソシアネート等が挙げられ、極性官能基がアルデヒド基である単量体(b)としては、例えば、アクリルアルデヒド等が挙げられる。これら単量体(b)としては、異なる2種以上の単量体(b)を組み合わせて使用してもよい。
単量体(b)としては、中でも、極性官能基が水酸基である単量体(e)及び極性官能基がカルボキシル基である単量体(b)が好ましく、とりわけ、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−トが好適である。
【0015】
本発明に用いられる単量体(b)の使用量としては、通常、アクリル樹脂100重量部に対し、0.1〜20重量部程度である。単量体(b)の使用量が0.1重量部以上であると得られる樹脂の凝集力が向上する傾向にあることから好ましく、20重量部以下であると光学フィルムの寸法が変化しても、その寸法変化に粘着剤層が追随して変動するので、ガラス基板と粘着剤層との間の浮き剥れが抑制される傾向にあることから好ましい。
【0016】
本発明の製造方法において、(メタ)アクリル酸エステル(a)および単量体(b)以外の単量体を使用してもよい。
具体的には、分子内に1つのオレフィン性二重結合と、分子内に少なくとも1つの5員環以上の複素環基とを含有する単量体(c)が例示される。少なくとも1つの5員環以上の複素環基とは、炭素数5以上、好ましくは炭素数5〜7の脂環式炭化水素基内の少なくとも1つのメチレン基が窒素原子、酸素原子又は硫黄原子などのヘテロ原子で置換されている基をいう。
単量体(c)の具体例としては、アクリロイルモルホリン、ビニルカプロラクタム、N−ビニル−2−ピロリドン、テトラハイドロフルフリルアクリレート、テトラハイドロフルフリルメタクリレート、カプロラクトン変性テトラハイドロフルフリルアクリレート等を挙げることができる。また、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートなどのように、ヘテロ原子が3員環及び7員環を構成している単量体は、7員環の複素環基を持つことから単量体(c)である。さらに、2,5−ジヒドロフランなどのように、オレフィン性二重結合が複素環基に含まれていてもよい。単量体(c)として、異なる2種類以上の単量体(c)を用いてもよい。
単量体(c)としては、中でも、N−ビニルピロリドン、ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン又はこれらの混合物が好適である。
【0017】
本発明の製造方法における単量体(c)の使用量としては、アクリル樹脂100重量部に対し、通常、約30重量部以下であり、好ましくは0.1〜20重量部程度である。単量体(c)を用いると、光学フィルムの寸法が変化しても、その寸法変化に粘着剤層が追随して変動するので、液晶セルの周縁部の明るさと中心部の明るさとの間に差がなくなり、白抜け、色ムラが抑制される傾向にあることから好ましく、30重量部以下であるとガラス基板と粘着剤層との浮き剥れが抑制される傾向にあることから好ましい。
【0018】
(メタ)アクリル酸エステル(a)、単量体(b)及び単量体(c)のいずれとも異なる単量体であって、アクリル樹脂に用いられる単量体(d)としては、分子内にオレフィン性二重結合を少なくとも2つ含有する単量体が例示される。この単量体(d)の存在により、アクリル樹脂の構造単位(a)などから構成される主鎖が架橋されることになる。単量体(d)の具体例としては、分子内にオレフィン性二重結合を2つ含有する単量体(2官能性モノマー)としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート類、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミドなどのビス(メタ)アクリルアミド類、アジピン酸ジビニル、セバシン酸ジビニルなどのジビニルエステル類、アリルメタクリレート、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。また、分子内にオレフィン性二重結合を3つ含有する単量体(3官能性ビニルモノマー)としては、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−S−トリアジン、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルアミン、N,N−ジアリルアクリルアミドなどが挙げられ、分子内にオレフィン性二重結合を4つ含有する単量体(4官能性ビニルモノマー)としては、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラアリルピロメリテート、N,N,N’,N’−テトラアリル−1,4−ジアミノブタン、テトラアリルアンモニウム塩などが挙げられる。単量体(d)として、異なる2種類以上の単量体(d)を用いてもよい。
【0019】
単量体(d)の中でも、下記式(D)で表される(メタ)アクリロイル基を分子内に2つ有する単量体が好ましい。

(式中Rは水素原子またはメチル基を表す。)
【0020】
本発明の製造方法における単量体(d)の使用量としては、アクリル樹脂100重量部に対し約5重量部以下であり、好ましくは0.1〜3重量部程度である。単量体(d)を用いると、光学フィルムの寸法が変化しても、その寸法変化に粘着剤層が追随して変動するので、液晶セルの周縁部の明るさと中心部の明るさとの間に差がなくなり、白抜け、色ムラが抑制される傾向にあることから好ましく、5重量部以下であると、アクリル樹脂を製造する際のゲルの生成が抑制される傾向にあることから好ましい。
【0021】
(メタ)アクリル酸エステル(a)、単量体(b)、単量体(c)及び単量体(d)のいずれとも異なる単量体であって、アクリル樹脂に使用される単量体(e)としては、分子内に1つのオレフィン性二重結合と、少なくとも1つの脂環式構造を含有する単量体が例示される。該脂環式構造とは、通常、炭素数5以上、好ましくは炭素数5〜7程度のシクロパラフィン構造又はシクロオレフィン構造である。ここで、シクロオレフィン構造とは、脂環式構造の中にオレフィン性二重結合を含有する構造である。
具体的には、脂環式構造を有するアクリル酸エステルとして、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ジシクロペンタニル、アクリル酸シクロドデシル、メチルシクロヘキシルアクリレート、トリメチルシクロヘキシルアクリレート、アクリル酸tert-ブチルシクロヘキシル、シクロヘキシルαエトキシアクリレート、シクロヘキシルフェニルアクリレート等が挙げられ、脂環式構造を有するメタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸シクロドデシル、メチルシクロヘキシルメタクリレート、トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、メタクリル酸tert-ブチルシクロヘキシル、シクロヘキシルαエトキシメタクリレート、シクロヘキシルフェニルメタクリレート等が挙げられる。また、脂環式構造を複数含有するアクリレートとして、ビスシクロヘキシルメチルイタコネート、ジシクロオクチルイタコネート、ジシクロドデシルメチルサクシネート等が挙げられ、ビニル基を含有するビニルシクロヘキシルアセテート等も単量体(e)である。
単量体(e)としては、異なる2種以上の単量体(e)を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
本発明の製造方法に使用される単量体(e)の使用量としては、通常、アクリル樹脂100重量部に対し、約30重量部以下であり、好ましくは0.1〜15重量部程度である。単量体(e)を用いると、ガラス基板と粘着剤層との浮き剥れが抑制される傾向にあることから好ましく、30重量部以下であると光学フィルムの寸法が変化しても、その寸法変化に粘着剤層が追随して変動するので、液晶セルの周縁部の明るさと中心部の明るさとの間に差がなくなり、白抜け、色ムラが抑制される傾向にあることから好ましい。
単量体(e)としては、中でも、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ジシクロペンタニルは、入手が容易なことから好ましい。
【0023】
本発明の製造方法において、単量体(a)〜(e)のいずれとも異なるビニル系単量体(f)を使用してもよい。該ビニル系単量体としては、例えば、脂肪酸ビニルエステル、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、芳香族ビニル、(メタ)アクリロニトリル、共役ジエン化合物などが挙げられる。
【0024】
ここで、脂肪酸ビニルエステルとしては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、絡酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、ラウリン酸ビニルなどが挙げられる。ハロゲン化ビニルとしては、塩化ビニルおよび臭化ビニル等が例示され、ハロゲン化ビニリデンとしては、塩化ビニリデン等が例示され、(メタ)アクリロニトリルとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが例示される。共役ジエン化合物とは、分子内に共役二重結合を有するオレフィンであり、具体例としては、イソプレン、ブタジエン、クロロプレンなどが挙げられる。芳香族ビニルとは、ビニル基と芳香族基を有する化合物であり、具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン、オクチルスチレン、フロロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレン、ニトロスチレン、アセチルスチレンおよびメトキシスチレンなどのスチレン系単量体、ビニルピリジン、ビニルカルバゾールなどの含窒素芳香族ビニルなどが挙げられる。これらビニル系単量体(f)としては、異なる2種以上の単量体(f)を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
本発明の製造方法に用いられる単量体(f)の使用量は、通常、アクリル樹脂100重量部に対し、5重量部以下、好ましくは0.05重量部以下、とりわけ好ましくは、実質的に使用しないことが好ましい。
【0026】
本発明の製造方法は、有機溶剤存在下に(メタ)アクリル酸エステル(a)及び単量体(b)を必須単量体としてラジカル重合させるアクリル樹脂の製造方法であって、重合中に有機溶剤を特定の混合速度で混合させることを特徴とする製造方法である。
ここで、有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の脂肪族アルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などが挙げられる。
有機溶剤は回収の容易さの観点から、通常、1種類の有機溶媒が用いられるが、複数種の混合物を用いてもよく、あるいは、反応開始時の有機溶剤と重合中に混合させる有機溶剤が異なっていてもよい。
【0027】
ラジカル重合に用いられる重合開始剤としては、熱重合開始剤や光重合開始剤などが例示され、光重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトンなどが挙げられる。熱重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)などのアゾ系化合物;ラウリルパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシドなどの有機過酸化物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素など無機過酸化物等が挙げられる。また、熱重合開始剤と還元剤を併用したレドックス系開始剤なども重合開始剤として使用し得る。
【0028】
重合開始剤としては、中でも、反応温度及び重合条件により適宜選択されるが工業的に溶液重合を用いることから熱重合開始剤が好ましく、とりわけアゾ化合物は半減期が短く副反応を起こしにくいために生産性の観点から好ましい。
本発明に用いられる重合開始剤の使用量としては、全ての単量体100重量部に対し、通常、0.001〜0.3重量部程度、好ましくは、0.01〜0.2重量部程度である。0.001重量部以上であると重合体の高分子量化することから好ましく、0.3重量部以下であると単量体反応率が向上する傾向があることから好ましい。
重合開始剤の混合方法としては、通常、重合開始時に一括して混合させる方法であるが、例えば、重合開始剤使用量の80〜99%、好ましくは、90〜95%を重合開始時に一括で混合させ、単量体の濃度が10重量%以下程度になったところで、さらに単量体濃度を低下させるために残りの重合開始剤を混合させる方法、例えば、重合開始剤使用量の1〜20%、好ましくは、5〜15%を重合開始時に一括で混合させ、残りの重合開始剤を有機溶剤とともに混合させる方法などが挙げられる。
【0029】
重合開始時の重合反応溶液に用いられる単量体100重量部に対し、ラジカル重合中に有機溶剤の混合速度(重量部/hr)は、式(1)で表されるRを5〜100(重量部/hr)の範囲内となる混合速度である。
R=[(A×(1−C)/C−100×(1−B)/B)/D]×100 (1)
(式中、Aは重合終了時の重合反応溶液に用いられる単量体及びアクリル樹脂の合計重量部を表し、Bは重合開始時の重合反応溶液に含まれる単量体の濃度(重量%)を表し、Cは重合終了時の重合反応溶液に含まれる単量体及びアクリル樹脂の合計濃度(重量%)を表し、Dは重合時間(hr)を表す。)
【0030】
ここで、重合開始時の重合反応溶液に用いられる単量体の100重量部とは、重合開始時の単量体の使用量のみならず、有機溶剤とともに単量体を混合させる場合には混合される単量体の使用量も含まれることを意味する。
Aは重合終了時の重合反応溶液に用いられる単量体及びアクリル樹脂の合計重量部を表し、ここで、重合反応溶液に含まれる単量体及びアクリル樹脂の合計重量部は、アクリル樹脂の重合が付加反応であることから、用いた単量体の合計重量と一致するので、その値を用いればよい。
重合終了時の単量体の使用量Aは、通常、重合開始時に用いた単量体100重量部に対し120重量部以下、好ましくは110重量部以下、とりわけ好ましくは100重量部である。重合開始時の単量体の使用量が120重量部以下であると得られるアクリル樹脂の分子量が向上する傾向があることから好ましい。
【0031】
重合開始時の重合反応溶液に含まれる単量体の濃度(重量%)であるBは、通常、40重量%以上、好ましくは50〜60重量%に調製される。40重量%以上であると高分子量の重合体を得ることができることから好ましい。また、60重量%以下であると重合熱による急激な温度上昇を抑制される傾向があることから好ましい。
尚、重合反応溶液に含まれる単量体の濃度(重量%)は、絶対検量法、内部標準法などのガスクロマトグラフィや液体クロマトグラフィ等で測定することできる。
また、単量体の反応率は、まず、重合反応溶液の重量と該濃度から未反応の単量体の重量が得、該重量を使用された単量体の合計重量で除すれば求めることができる。
【0032】
Cは重合終了時の重合反応溶液に含まれる単量体及びアクリル樹脂の合計濃度(重量%)を表す。ここで、重合反応溶液に含まれる単量体及びアクリル樹脂の合計濃度は、アクリル樹脂の重合が付加反応であることから、用いた単量体の合計重量を重合反応溶液全重量で除すことによって求めることができる。
従って、[A×(1−C)/C−100×(1−B)/B]×100は、重合反応開始よりも後のラジカル重合反応中に混合された有機溶媒の使用量(重量部)と換言することができる。A×(1−C)/C−100×(1−B)/B、すなわち重合反応中に混合される有機溶媒の重量としては、通常、使用される単量体の全重量(A)の1重量部に対して0.3〜4重量部程度、好ましくは0.5〜3.5重量部程度である。
Cは、通常、30重量%以上、好ましくは30〜40重量%に調製される。30重量%以上であると反応後半に単量体濃度が薄くなっても低分子量体生成を抑制する傾向があることから好ましい。また、40重量%以下であると重合時における反応溶液を攪拌することが容易になる傾向があることから好ましい。
【0033】
Dの重合時間(hr)は、反応温度によっても異なるが、通常、8時間以上であり、工業的な観点から、8〜12時間程度である。重合時間が8時間以上であると得られるアクリル樹脂が高分子量化し、重合終了時の単量体の反応率が向上する傾向があることから好ましい。
【0034】
R、すなわち、重合中に混合される有機溶剤の混合速度は5〜100重量部/hrである。Rが5重量部/hr以上であると重合時における反応溶液を攪拌することが容易になる傾向があることから好ましく、Rが100重量部/hr以下であると得られるアクリル樹脂が高分子量化する傾向があることから好ましい。
混合は、A〜Dの値が決定していれば、Rが計算できることからこの値となるように、通常、有機溶剤をほぼ連続的に混合してやればよい。
有機溶剤の混合は間欠的でもよいが、この場合には、重合溶液における単量体を除くアクリル樹脂(不揮発分)の濃度(以下、反応濃度という場合がある)が50%以下となるように調製しながら間欠的に混合させればよい。
有機溶剤の混合が連続的であれ間欠的であれ、重合中の反応濃度が、50%以下であると重合反応溶液を攪拌するのに十分な粘度であることから好ましい。
【0035】
重合中には、アルコキシシリル基含有チオール化合物を実質的に使用しないことが好ましい。アルコキシシリル基含有チオール化合物は連鎖移動剤として単量体の反応率を低減させる傾向があることから好ましくない。ここで、実質的とは(A×10−5)重量部未満の使用量を意味する。
【0036】
かくして得られたアクリル樹脂の分子量としては、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)の標準ポリスチレン換算による重量平均分子量(Mw)が、1,000,000〜2,000,000である。重量平均分子量が1,000,000以上であると、高温高湿下での接着性が向上し、ガラス基板と粘着層との間の浮き、剥れが低下する傾向があり、しかもリワーク性が向上する傾向にあることから好ましい。重量平均分子量が2,000,000以下であると、光学フィルムの寸法が変化しても、その寸法変化に粘着層が追随して変動するので、液晶セルの周縁部の明るさと中心部の明るさとの間に差がなくなり、白抜け、色ムラが抑制される傾向にあることから好ましい。
【0037】
また、アクリル樹脂の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn))としては、5以下、好ましくは3〜4である。分子量分布が5以下であると柔軟性をある程度保ったまま凝集力が向上する傾向があることから好ましい。
【0038】
さらに、重合に使用された全ての単量体に対する重合終了時における単量体濃度は、通常、85重量%以上であり。好ましくは88重量%以上である。85重量%以上であると、得られる粘着剤層とガラス基材との浮き剥れが抑制される傾向にあることから好ましい。
【0039】
本発明の製造方法によって得られるアクリル樹脂は架橋剤と配合されて粘着剤とすることができる。ここで、架橋剤とは、アクリル樹脂に含まれる単量体(b)に由来する極性官能基と架橋し得る官能基を分子内に2個以上有するものであり、具体的にはイソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、金属キレート系化合物およびアジリジン系化合物などが例示される。
ここで、イソシアネート系化合物とは、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどが挙げられる。また、前記イソシアネート化合物にグリセロール、トリメチロールプロパンなどポリオールとを反応せしめたアダクト体やイソシアネート化合物を2、3量体等にしたものについても本発明に用いられる架橋剤である。
【0040】
エポキシ系化合物としては、例えば、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂、エチレングリコールグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシレンジアミンおよび1,3-ビス(N,N'-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0041】
金属キレート化合物としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロムおよびジルコニウムなどの多価金属に、アセチルアセトンやアセト酢酸エチルが配位した化合物などが挙げられる。
【0042】
アジリジン系化合物としては、例えば、N,N'-ジフェニルメタン-4,4'-ビス(1-アジリジンカルボキサイド)、N,N'-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソフタロイル-1-(2-メチルアジリジン)、トリ-1-アジリジニルホスフィンオキサイド、N,N'-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキサイド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネートおよびテトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネートなどが挙げられる。
【0043】
架橋剤として、2種類以上の架橋剤を使用してもよい。粘着剤における架橋剤(不揮発分)の使用量としては、アクリル樹脂100重量部(不揮発分)に対して、通常、0.005〜5重量部程度であり、好ましくは0.01〜3重量部程度である。架橋剤の量が0.005重量部以上であると、ガラス基板と粘着剤層との間の浮剥れ及びリワーク性が向上する傾向にあることから好ましく、5重量部以下であると、光学フィルムの寸法変化に対して粘着剤層の追随性が優れることから、白抜け、色ムラが低下する傾向にあり、好ましい。
【0044】
該粘着剤には、ガラス基材との接着性を向上させるため、シランカップリング剤、シリコーンオリゴマーなどのシラン系化合物を混合させてもよい。
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−グリシドキシプロピルエトキシジメチルシランなどが挙げられる。
【0045】
シリコーンオリゴマーとしては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、メルカプトメチルトリメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、メルカプトメチルトリメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、メルカプトメチルトリエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、メルカプトメチルトリエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、3−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、3−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、3−アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、3−アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、ビニルトリメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、ビニルトリメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、ビニルトリエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、ビニルトリエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、ビニルメチルジメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、ビニルメチルジメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、ビニルメチルジエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、ビニルメチルジエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、3−アミノプロピルトリメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、3−アミノプロピルトリメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、3−アミノプロピルトリエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、3−アミノプロピルトリエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、等が挙げられる。
【0046】
本発明の粘着剤に、2種類以上のシラン系化合物を使用してもよい。
粘着剤におけるシラン系化合物の使用量(溶液)としては、アクリル樹脂100重量部(不揮発分)に対して、通常、0.0001〜10重量部程度であり、好ましくは0.01〜5重量部の量で用いられる。シラン系化合物の量が0.0001重量部以上であると粘着剤層とガラス基板との密着性が向上することから、好ましい。またシラン系化合物の量が10重量部以下であると、粘着剤層からシラン系化合物がブリードアウトすることを抑制する傾向にあることから、好ましい。
【0047】
該粘着剤は、上記のようにアクリル樹脂、架橋剤及び/又はシラン系化合物からなるが、さらに、架橋触媒、耐候安定剤、タッキファイヤー、可塑剤、軟化剤、染料、顔料、および無機フィラー等を配合させてもよい。
【0048】
中でも、粘着剤に架橋触媒と架橋剤とを配合すると、粘着剤付光学フィルムを短時間の熟成で調製することができ、該フィルムを含む光学積層体は、光学フィルムと粘着剤層と間の浮き、剥れや、粘着剤層内での発泡を抑制し、しかもリワーク性に優れる場合がある。
架橋触媒としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、トリエチレンジアミン、ポリアミノ樹脂およびメラミン樹脂などのアミン系化合物などが挙げられる。粘着剤に架橋触媒としてアミン化合物を用いる場合、架橋剤としてはイソシアネート系化合物が好適である。
【0049】
本発明の粘着剤は、例えば、光学フィルムと貼合させる粘着剤付光学フィルムとして、通常、用いられる。その製造方法としては、例えば、剥離フィルムの上に有機溶剤に希釈させた粘着剤を塗布し、60〜120℃で0.5〜10分間程度加熱して有機溶媒を留去して、粘着剤層を得る。次いで、粘着剤層に光学フィルムを貼合したのち、温度23℃、湿度65%の雰囲気下であれば、5〜20日程度熟成させ、架橋剤が十分反応したのち、剥離フィルムを剥離して粘着剤付光学フィルムを得る方法;前記と同様に粘着剤層を得たのち、得られた剥離フィルムと粘着剤層との2層の積層体を、剥離フィルムと粘着剤層とが交互になるように多層に組み合わせたのち、温度23℃、湿度65%の雰囲気下であれば、5〜20日程度熟成させ、架橋剤が十分反応したのち、剥離フィルムを剥離し、代わって光学フィルムを貼合して粘着剤付光学フィルムを得る方法などが挙げられる。
ここで、剥離フィルムは、粘着剤層を形成する際の基材である。熟成中や粘着剤付光学フィルムとして保存する際に塵や埃などの異物から粘着剤層を保護する基材である場合もある。剥離フィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート等の各種樹脂からなるフィルムを基材とし、この基材の粘着剤層との接合面に、離型処理(シリコーン処理等)が施されたものなどが挙げられる。
【0050】
粘着剤付光学フィルムに用いられる光学フィルムとは、光学特性を有するフィルムであり、例えば、偏光フィルム、位相差フィルムなどが挙げられる。偏光フィルムとは、自然光などの入射光に対して、偏光を出射する機能を持つ光学フィルムである。偏光フィルムとしては、光学軸に対して平行である振動面の直線偏光を吸収し、垂直面である振動面を有する直線偏光を透過する性質を有する直線偏光フィルム、光学軸に対して平行である振動面の直線偏光を反射する偏光分離フィルム、偏光フィルムと後述する位相差フィルムを積層した楕円偏光フィルムなどが挙げられる。偏光フィルムの具体例としては、一軸延伸されたポリビニルアルコールフィルムにヨウ素、二色性染料などの二色性色素が吸着配向されているものなどが挙げられる。
【0051】
位相差フィルムとは、一軸または二軸などの光学異方性を有する光学フィルムであって、例えば、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアリレート、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリビニリデンフルオライド/ポリメチルメタアクリレート、液晶ポリエステル、アセチルセルロース、環状ポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリ塩化ビニルなどからなる高分子フィルムを1.01〜6倍程度に延伸することにより得られる延伸フィルムなどが挙げられる。中でも、ポリカーボネートあるいはポリビニルアルコールを一軸延伸、二軸延伸した高分子フィルムが好ましい。
【0052】
位相差フィルムとしては、一軸性位相差フィルム、広視野角位相差フィルム、低光弾性率位相差フィルム、温度補償型位相差フィルム、LCフィルム(棒状液晶ねじれ配向)、WVフィルム(円盤状液晶傾斜配向)、NHフィルム(棒状液晶傾斜配向)、VACフィルム(完全二軸配向型位相差フィルム)、newVACフィルム(二軸配向型位相差フィルム)などが挙げられる。
【0053】
さらに、これら光学フィルムの片面又は両面に基板フィルム(Protective Film)をさらに貼合しているものも光学フィルムとして好適に用いられる。基板フィルムとしては、例えば、本発明のアクリル樹脂とは異なるアクリル樹脂フィルム、三酢酸セルロースフィルム等のアセチルセルロース系フィルム、ポリエステル樹脂フィルム、オレフィン樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルム、ポリスルホン樹脂フィルム等が挙げられる。基板フィルムには、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤を配合されていてもよい。基板フィルムの中でも、アセチルセルロース系フィルムが好適である。
【0054】
本発明の光学積層体とは、粘着剤を介して、光学フィルム及びガラス基材が積層してなる積層体である。光学積層体は、通常、粘着剤付光学フィルムの粘着剤層とガラス基板とが貼合して製造することができる。ここで、ガラス基板としては、例えば、液晶セルのガラス基板、防眩用ガラス、サングラス用ガラスなどが挙げられる。中でも、液晶セルの上部のガラス基板に粘着剤付光学フィルム(上板偏光板)の粘着剤層を貼合し、液晶セルの下部のガラス基板に別の粘着剤付光学フィルム(下板偏光板)の粘着剤層を貼合してなる光学積層体は液晶表示装置として使用し得ることから好ましい。ガラス基板の材料としては、例えば、ソーダライムガラス、低アルカリガラス、無アルカリガラスなどが挙げられる。
【0055】
本発明の光学積層体は、光学積層体から粘着剤付き光学フィルムを剥離した後でも、粘着剤層と接していたガラス基板の表面に、曇りや糊残り等がほとんど発生しないことから、剥離されたガラス基板に再び、粘着剤付光学フィルムを貼り直すことが容易に実施することができる、すなわち、リワーク性に優れている。
【実施例】
【0056】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、実施例中「部」、「%」とあるのは特に断りのない限り重量基準である。また不揮発分は、JIS K-5407に準じた測定方法で行った。具体的にはアクリル樹脂を含む溶液を任意の重量、シャーレにとり防爆オーブンにて115℃、2時間乾燥させた後の残留不揮発分重量を最初に測りとった溶液の重量に対して割合で表したものである。粘度は、25℃でブルックフィールド粘度計により測定した値である。重量平均分子量測定は装置を用いて標準ポリスチレン換算より、試料濃度5mg/ml、試料導入量100μml、カラムとして東ソー(株)製:TSKgel G6000HXL2本、TSKgel G5000HXL2本を順次、直列したものを用い、温度40℃、流速1ml/minの条件で、溶出液としてテトラヒドロフランを用いて求めた。
【0057】
重合に使用された全ての単量体に対する重合終了時における残存単量体の割合(以下、反応率という場合がある)は以下のようにして求めた。
(1)重合に使用された全ての単量体を、それぞれ約0.005g、約0.05g、約0.5gずつを別々のサンプル瓶に正確に秤量し、これを酢酸エチルで25mlに希釈して標準液を作成し、該標準液1μlを上記測定装置に入れて、下記条件で運転し、単量体の保持時間とピーク面積を測定し、横軸にピーク面積、縦軸に単量体それぞれの重さをとって検量線を引き、単量体iのファクターQiをそれぞれ求めた。
(2)重合終了時の反応溶液を試料として約2.5gを正確に秤量し、酢酸エチルで25mlに希釈し、該試料を(1)と同じ条件で測定して該試料に含まれる単量体のピーク面積を測定した。これらの測定結果から、次式により単量体の反応率を求めた。
(3)反応率(%)=100−Σ{Qi×(単量体iのピーク面積)}/試料重量×100
(式中、Qiは単量体iのファクターを表す)
【0058】
(測定条件)
ガスクロマトグラフ:Agilent社6850シリーズガスクロマトグラフ
充填剤;キャピラリカラム(ジーエルサイエンス株式会社、Liquid phase:TC−FFAP、Length:30mx0.53mm、I.D:1.0μm)
インジェクション温度;180℃
ディテクター温度;220℃
カラム温度;50℃×10分保持後、5℃/分で170℃まで昇温、170℃から220℃まで10℃/分、
測定時間;50分
【0059】
(実施例1)
冷却管、窒素導入管、温度計、攪拌機を備えた反応器に、アセトン81.8部、単量体(a)としてアクリル酸ブチル(以下BAという)98.9部、単量体(b)としてアクリル酸(以下AAという)1.1部の混合溶液を仕込み、窒素ガスで装置内の空気を置換し、酸素不含としながら、内温を55℃に昇温したのち、アゾビスイソブチロニトリル(以下AIBNという)0.14部をアセトン10部に溶かした溶液を全量添加した。開始剤添加1時間後、単量体を除くアクリル樹脂の濃度(以下、反応濃度という場合がある)が35重量%になるようにアセトン溶剤を添加速度17.3重量部/hrで連続的に反応器に添加しながら内温54〜56℃で12時間保温し、最後に酢酸エチル溶剤を添加して反応濃度が20%になるように調節した。重量平均分子量1,200,000、Mw/Mnは3.9、単量体の反応率92.5%のアクリル樹脂を得た。
【0060】
(実施例2)
実施例1と同じ反応器に、アセトン81.8部、単量体(a)としてBA83.7部、アクリル酸イソボルニル(以下AIBという)15.2部、単量体(b)としてAA1.1部の混合溶液を仕込み、窒素ガスで装置内の空気を置換し、酸素不含としながら、内温を55℃に昇温したのち、AIBN 0.14部をアセトン10部に溶かした溶液を全量添加した。続いて実施例1と同様に有機溶剤を混合させながら反応させ、重量平均分子量1,220,000、Mw/Mnは3.3、単量体の反応率90.5%のアクリル樹脂を得た。
【0061】
(実施例3)
実施例1と同じ反応器に、アセトン81.8部、単量体(a)としてBA80.6部、AIB15.2部、ビニルカプロラクタム(以下VCLという)3.1部、単量体(b)としてAA1.1部の混合溶液を仕込み、窒素ガスで装置内の空気を置換し、酸素不含としながら、内温を55℃に昇温したのち、AIBN0.15部をアセトン10部に溶かした溶液を全量添加した。続いて実施例1と同様に有機溶剤を混合させながら反応させ、重量平均分子量1,210,000、Mw/Mnは3.6、単量体の反応率92.1%のアクリル樹脂を得た。
【0062】
(実施例4)
実施例1と同じ反応器に、アセトン53.8部、単量体(a)としてBA96.8部、アクリル酸メチル(以下MAという)2.1部、単量体(b)としてAA1.1部の混合溶液を仕込み、窒素ガスで装置内の空気を置換し、酸素不含としながら、内温を55℃に昇温したのち、AIBN0.08部をアセトン10部に溶かした溶液を全量添加した。開始剤添加1時間後、反応濃度が30重量%になるようにアセトン溶剤の添加速度89.7重量部/hrで連続的に反応器に添加しながら内温54〜56℃で12時間保温し、最後に酢酸エチル溶剤を添加して反応濃度が20%になるように調節した。重量平均分子量1,350,000、Mw/Mnは4.1、単量体の反応率92.7%のアクリル樹脂を得た。
【0063】
(実施例5)
実施例1と同じ反応器に、アセトン81.8部、単量体(a)としてBA89.9部、メタアクリル酸メチル(以下BMAという)5.7部、MA3.4部、単量体(b)としてAA1.0部の混合溶液を仕込み、窒素ガスで装置内の空気を置換し、酸素不含としながら、内温を55℃に昇温したのち、AIBN0.13部をアセトン10部に溶かした溶液を全量添加した。開始剤添加1時間後、反応濃度が40重量%になるようにアセトン溶剤の添加速度6.8重量部/hrで連続的に反応器に添加しながら内温54〜56℃で12時間保温し、最後に酢酸エチル溶剤を添加して反応濃度が20%になるように調節した。重量平均分子量1,190,000、Mw/Mnは3.2、単量体の反応率89.2%のアクリル樹脂を得た。
【0064】
(実施例6)
実施例1と同じ反応器に、アセトン66.7部、単量体(a)としてBA98.9部、単量体(b)としてAA1.1部の混合溶液を仕込み、窒素ガスで装置内の空気を置換し、酸素不含としながら、内温を60℃に昇温したのち、AIBN0.14部をアセトン10部に溶かした溶液を全量添加した。開始剤添加1時間後、反応濃度が30重量%になるようにアセトン溶剤の添加速度39.7重量部/hrで連続的に反応器に添加しながら内温59〜61℃で12時間保温し、最後に酢酸エチル溶剤を添加して反応濃度が20%になるように調節した。重量平均分子量1,270,000、Mw/Mnは3.8、単量体の反応率93.5%のアクリル樹脂を得た。
【0065】
(実施例7)
実施例1と同じ反応器に、アセトン66.7部、単量体(a)としてBA98.3部、単量体(b)としてAA1.7部の混合溶液を仕込み、窒素ガスで装置内の空気を置換し、酸素不含としながら、内温を55℃に昇温したのち、AIBN0.14部をアセトン10部に溶かした溶液を全量添加した。開始剤添加後2時間おきに、反応濃度が35重量%になるようにアセトン溶剤を163.6重量部(混合速度としては81.8重量部/hr)を6回、間欠的に反応器に添加しながら内温54〜56℃で12時間保温し、最後に酢酸エチル溶剤を添加して反応濃度が20%になるように調節した。GPCのポリスチレン換算の重量平均分子量1,320,000、Mw/Mnは3.4、単量体の反応率90.3%のアクリル樹脂を得た。
【0066】
(比較例1)
実施例1と同じ反応器に、アセトン100部、単量体(a)としてBA99.4部、単量体(b)としてAA0.6部の混合溶液を仕込み、窒素ガスで装置内の空気を置換し、酸素不含としながら、内温を60℃に昇温したのち、AIBN0.18部をアセトン10部に溶かした溶液を全量添加した。開始剤添加1時間後、反応濃度が30重量%になるようにアセトン溶液供給速度133.3重量部/hrで連続的に反応器に添加しながら内温59〜61℃で6時間保温し、最後に酢酸エチル溶剤を添加して反応濃度が20%になるように調節した。重量平均分子量800,000、Mw/Mnは6.5、単量体の反応率80.2%のアクリル樹脂を得た。
【0067】
(比較例2)
実施例1と同じ反応器に、アセトン81.8部、単量体(a)としてBA98.9部、単量体(b)としてAA1.1部の混合溶液を仕込み、窒素ガスで装置内の空気を置換し、酸素不含としながら、内温を45℃に昇温したのち、アゾビス(2,4−ジメチルバレロ二トリル)0.01部をアセトン10部に溶かした溶液を全量添加した。開始剤添加1時間後、反応濃度が45重量%になるようにアセトン溶剤の添加速度17.1重量部/hrで連続的に反応器に供給しながら内温44〜46℃で10時間保温し、最後に酢酸エチル溶剤を添加して反応濃度が20%になるように調節した。GPCのポリスチレン換算の重量平均分子量2,500,000、Mw/Mnは3.4、単量体の反応率80.4%であった。重合例の単量体組成及び結果は表1に示した。
【0068】
【表1】

BA:アクリル酸ブチル(単量体(a))
BMA:メタアクリル酸ブチル(単量体(a))
MA:アクリル酸メチル(単量体(a))
AA:アクリル酸(単量体(b))
AIB:アクリル酸イソボルニル(単量体(e))
VCL:ビニルカプロラクタム(単量体(c))
【0069】
<粘着剤の製造例>
実施例及び比較例で得られた溶液の不揮発分100部に、架橋剤であるポリイソシアネート系化合物(商品名:タケネートD-160N、三井武田ケミカル製)と、シラン化合物(商品名:KBM803、信越化成)とを混合させ、粘着剤1〜7(実施例1〜7のアクリル樹脂を使用)及び粘着剤8及び9(比較例1及び2のアクリル樹脂を使用)を得た。アクリル樹脂100部(不揮発分)に対して架橋剤(不揮発分)とシラン化合物(不揮発分)の混合量を表2に示した。
【0070】
<光学積層体の製造例>
このようにして得られた粘着剤を、アプリケーターを用いて離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製、商品名:PET3811)の離型処理面に乾燥後の厚さが25μmになるように塗布し、90℃で1分間乾燥させ、シート状の粘着剤を得た。次いで、光学フィルムとして偏光フィルム(ポリビニルアルコールにヨウ素を吸着させて延伸したものの両面にトリアセチルセルロース系保護フィルムで挟んだ3層構造にしたフィルム)を用い、該光学フィルム上に、前記で得られた粘着剤を有する面をラミネーターによって貼り合せたのち、温度23℃、湿度65%の条件で10日間熟成させて粘着剤層が設けられた粘着剤付き光学フィルムを得た。続いて、該粘着剤付光学フィルムを液晶セル用ガラス基板(コーニング社製、1737)の両面にクロスニコルになるように貼着し、光学積層体を得た。これを80℃、Dryで96時間保管した場合(耐熱)と、60℃、90%RHで96時間保管した場合(耐湿熱)、60℃に加熱後、−20℃に降温、さらに60℃に昇温する過程を1サイクル(1時間)とし、100サイクル保管した場合(耐HS)のそれぞれについて、保管後の光学積層体における耐久性、および条件1の時に白ヌケの発現状態を目視で観察した。結果を下記要領に分類し、表2にまとめた。
【0071】
<光学積層体の白ヌケ性>
白ヌケの発現状態の評価は、以下の4段階で行った。
◎ :白ヌケが全くみられない。
○ :白ヌケがほとんど目立たない。
△ :白ヌケがやや目立つ。
× :白ヌケが顕著にみとめられる。
【0072】
<光学積層体の耐熱性、耐湿熱性、耐HS性>
上記の耐久性の評価は、以下の4段階で行った。
◎ :浮き、剥れ、発泡等の外観変化が全くみられない。
○ :浮き、剥れ、発泡等の外観変化がほとんどみられない。
△ :浮き、剥れ、発泡等の外観変化がやや目立つ。
× :浮き、剥れ、発泡等の外観変化が顕著にみとめられる。
【0073】
<リワーク性>
リワーク性の評価は次のように行った。まず、前記光学積層体を25mm×150mmの試験片に調製した。次に、この試験片を貼付装置(富士プラスチック機械(株)製「ラミパッカー」)を用いて液晶セル用ガラス基板に貼付し、50℃、5kg/cm2(490.3kPa)で20分間オートクレーブ処理を行った。続いて70℃で2時間加熱処理を行い、50℃のオーブン中にて48時間保管した後、23℃、相対湿度50%RH雰囲気中にてこの貼着試験片を300mm/minの速度で180°方向に剥離し、下記要領で分類したガラス板表面の状態を観察した結果を、表2に示した。
【0074】
ガラス板表面の状態によりリワーク性の評価を以下の4段階で行った。
◎ :ガラス板表面に曇りおよび糊残りが全くみられない。
○ :ガラス板表面に曇り等がほとんど認められない。
△ :ガラス板表面に曇り等が認められる。
× :ガラス板表面に糊残りが認められる。
【0075】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の光学積層体を含むものであり、例えば、ノート型、ディスクトップ型、PDA(Personal Digital Assistance)などのパソコン用液晶ディスプレイ、液晶テレビ、車載用ディスプレイ、電子辞書、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、電卓、時計などの液晶表示装置が挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶剤存在下に(メタ)アクリル酸エステル(a)及び下記単量体(b)を必須単量体としてラジカル重合させるアクリル樹脂の製造方法において、重合開始時の重合反応溶液に用いられる単量体100重量部に対し、ラジカル重合中に式(1)で表されるRを5〜100(重量部/hr)の範囲内で有機溶剤を混合させることを特徴とするアクリル樹脂の製造方法。
R=[(A×(1−C)/C−100×(1−B)/B)/D]×100 (1)
(式中、Aは重合終了時の重合反応溶液に用いられる単量体及びアクリル樹脂の合計重量部を表し、Bは重合開始時の重合反応溶液に含まれる単量体の濃度(重量%)を表し、Cは重合終了時の重合反応溶液に含まれる単量体及びアクリル樹脂の合計濃度(重量%)を表し、Dは重合時間(hr)を表す。)
(b):カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、
アルデヒド基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも一つの
極性官能基と、一つのオレフィン性二重結合とを分子内に含有する単量体
【請求項2】
アクリル樹脂の重合溶液における単量体を除くアクリル樹脂(不揮発分)の濃度が50重量%以下となるように有機溶剤の混合速度を調整することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
有機溶剤が、芳香族炭化水素類、エステル類、脂肪族アルコール類及びケトン類からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の製造方法で得られたアクリル樹脂、架橋剤及びシラン化合物を含む粘着剤。
【請求項5】
請求項4に記載の粘着剤を介して、光学フィルム及びガラス基材が積層してなる積層体。

【公開番号】特開2006−321871(P2006−321871A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−145049(P2005−145049)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】