説明

アクリル樹脂フィルム及び光拡散板

【課題】持続性のある帯電防止性能と優れた耐光性を有し、且つ外観が良好なアクリル樹脂フィルム、及び光拡散板の少なくとも一表面にこのアクリル樹脂フィルムが積層された光拡散板を提供する。
【解決手段】アクリル樹脂(A)、高分子型帯電防止剤(B)及び紫外線吸収剤(C)を含有し、紫外線吸収剤(C)の含有量がアクリル樹脂(A)100質量部に対して0.01〜1.3質量部であるアクリル樹脂フィルム及び光拡散板の表面に前記アクリル樹脂フィルムが積層された光拡散板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクリル樹脂フィルム及び表面にアクリル樹脂フィルムが積層された光拡散板に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系樹脂は、その優れた光学特性を利用して、車輌用灯具、ディスプレイ装置、機器銘板等に利用されている。例えば、直下型バックライトユニットに使用されるポリカーボネート樹脂系光拡散板の保護層としてアクリル系樹脂を使用することが提案されている(特許文献1及び2)。しかしながら、アクリル系樹脂は電気絶縁体であるため、光拡散板の製造時やバックライトユニットの組立時等において、様々な要因でアクリル系樹脂が帯電してしまう。その結果、光拡散板の表面に埃が付着し、それによってディスプレイ面の輝度低下や画質斑等の表示特性上の不具合が生じる問題があった。
【0003】
このような状況において、アクリル系樹脂の優れた透明性を維持しつつ、持続性のある帯電防止性能を有する材料の要望が増えてきている。
【0004】
この要望に対し、帯電防止性能に湿度依存性がなく、長期間帯電防止性能が保持される特徴を有する高分子型帯電防止剤を使用する技術が提案されている。例えば、特許文献3においては、高分子型帯電防止剤としてポリエーテルエステルアミド化合物を配合した熱可塑性樹脂組成物を射出成形加工又は押出成形加工した成形体が提案されている。また、特許文献4においては、高分子型帯電防止剤としてポリオレフィンのブロックと親水性ポリマーのブロックを有するブロックポリマーであるポリエーテルオレフィン共重合体が提案され、この共重合体を配合した樹脂組成物を射出成形した成形物が開示されている。
【0005】
しかしながら、アクリル樹脂フィルムに長期間帯電防止性能を付与するためにこれら高分子型帯電防止剤を配合し、更に耐光性を改善するために紫外線吸収剤を配合すると、得られたアクリル樹脂フィルムの表面に紫外線吸収剤がブリードアウトし、外観が悪化する問題があった。
【特許文献1】特開2005−148186号公報
【特許文献2】特開2005−234521号公報
【特許文献3】特開平11−199667号公報
【特許文献4】特開2001−278985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は持続性のある帯電防止性能と優れた耐光性を有し、且つ外観が良好なアクリル樹脂フィルム、及び光拡散板の表面にこのアクリル樹脂フィルムが積層された光拡散板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、アクリル樹脂(A)、高分子型帯電防止剤(B)及び紫外線吸収剤(C)を含有し、紫外線吸収剤(C)の含有量がアクリル樹脂(A)100質量部に対して0.01〜1.3質量部であるアクリル樹脂フィルムを第1の発明とする。
【0008】
また、本発明は光拡散板の少なくとも一表面に上記のアクリル樹脂フィルムが積層された光拡散板を第2の発明とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、持続性のある帯電防止性能と優れた耐光性を有し、且つ紫外線吸収剤のブリードアウトを抑えたアクリル樹脂フィルムを得ることができる。また、このアクリル樹脂フィルムを光拡散板の表面に積層することにより、光拡散板への埃等の付着を長期間防止し、併せて光の照射による光拡散板の黄変を抑制し、且つ良好な外観を有する光拡散板が得られる。その結果、輝度が良好な光拡散板を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<アクリル樹脂(A)>
本発明のアクリル樹脂フィルムに使用されるアクリル樹脂(A)としては、アクリル酸アルキルエステルが構成単位として含有されるゴム重合体の存在下に、メタクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体又は単量体混合物を重合して得られた重合体(I)、又は該重合体(I)にさらにメタクリル酸アルキルエステルが主構成単位である重合体(II)を配合した樹脂組成物が挙げられる。例えば、特公昭59−36646号公報、特公昭62−19309号公報、特開昭63−77963号公報及び特開2006−146029号公報に記載されているような重合体又は樹脂組成物を用いることができる。
【0011】
重合体(I)におけるアクリル酸アルキルエステルを主成分とするゴム重合体は、アクリル酸アルキルエステル50〜99.9質量%、共重合可能な二重結合を有する他の単量体0〜49.9質量%、多官能性単量体0〜10質量%及びグラフト交叉剤0.1〜10質量%から得られる。
【0012】
アクリル酸アルキルエステルは、アルキル基が直鎖状、分岐鎖状のもののいずれでもよい。その具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル等が挙げられる。これらは単独又は2種以上を混合して使用することができる。これらのうちアクリル酸n−ブチルが好ましい。
【0013】
共重合可能な二重結合を有する他の単量体としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル等のメタクリル酸アルキルエステル、低級アルコキシアクリレート、シアノエチルアクリレート、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル性単量体、スチレン、アルキル置換スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。これらは単独又は2種以上を混合して使用することができる。これらのうちメタクリル酸メチルが好ましい。
【0014】
多官能性単量体とは、共重合性の二重結合を1分子内に2個以上有する単量体である。具体的化合物としては、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート等のアルキレングリコールジメタクリレートが好ましい。又、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等のポリビニルベンゼン等も使用可能である。その他、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等も有効である。これらは単独又は2種以上を混合して使用することができる。これらのうち1,3−ブチレングリコールジメタクリレートが好ましい。
【0015】
グラフト交叉剤とは、異なる共重合性の二重結合を1分子内に2個以上有する単量体である。その具体例としては、共重合性のα,β−不飽和カルボン酸又はジカルボン酸のアリル、メタリル又はクロチルエステル等が挙げられる。特に、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸又はフマル酸のアリルエステルが好ましい。これらのうち、メタクリル酸アリルエステルが優れた効果を奏し好ましい。その他、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等も有効である。これらは単独又は2種以上を混合して使用することができる。グラフト交叉剤は、主としてそのエステルの共役不飽和結合が、アリル基、メタリル基或いはクロチル基よりはるかに速く反応し化学的に結合する。
【0016】
アクリル酸アルキルエステルを主成分とするゴム重合体は、メタクリル酸アルキルエステルを含む単量体を含む単量体又は単量体混合物を重合した後、アクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体又は単量体混合物を重合しても良い。
【0017】
その他連鎖移動剤を使用することができる。なお、連鎖移動剤は、通常のラジカル重合に用いられるものの中から選択できる。具体例としては、炭素数2〜20のアルキルメルカプタン、メルカプト酸類、チオフェノール、四塩化炭素等が挙げられる
アクリル酸アルキルエステル及び共重合可能な二重結合を有する他の単量体から得られる重合体のFOXの式で求められるガラス転移温度は、25℃未満であることが好ましい。
【0018】
上記ゴム重合体の存在下、メタクリル酸アルキルエステル80〜100質量%、アクリル酸アルキルエステル0〜20質量%及び共重合可能な二重結合を有する他の単量体0〜20質量%を含有する、メタクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体又は単量体混合物を重合して、重合体(I)が得られる。その他連鎖移動剤を使用することができる。メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル及び共重合可能な二重結合を有する他の単量体としては、上記のものが挙げられる。メタクリル酸アルキルエステルとしてはメタクリル酸メチルが特に好ましい。
【0019】
メタクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体又は単量体混合物は、ゴム重合体の存在下にメタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル及び共重合可能な二重結合を有する他の単量体から選ばれる少なくとも一種の単量体又は単量体混合物が重合された後に、重合されてもよい。
【0020】
重合体(I)の製造法としては、例えば、逐次多段重合法が挙げられる。また、各段階での重合法としては乳化重合法が一般的であるが、例えば、乳化重合後、次の重合時に懸濁重合系に転換させる乳化懸濁重合法も可能である。
【0021】
乳化重合する際に乳化液を調製する際に使用される界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系及びノニオン系の界面活性剤が使用できるが、アニオン系の界面活性剤が好ましい。
【0022】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ロジン石鹸;オレイン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、N−ラウロイルザルコシン酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム等のカルボン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩;ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩が挙げられる。
【0023】
上記界面活性剤の好ましい具体例としては、三洋化成工業(株)製のNC−718(商品名)、東邦化学工業(株)製のフォスファノールLS−529、フォスファノールRS−610NA、フォスファノールRS−620NA、フォスファノールRS−630NA、フォスファノールRS−640NA、フォスファノールRS−650NA及びフォスファノールRS−660NA(それぞれ商品名)、花王(株)製のラテムルP−0404、ラテムルP−0405、ラテムルP−0406及びラテムルP−0407(それぞれ商品名)が挙げられる。
【0024】
重合開始剤としては公知のものが使用できる。重合開始剤としては、例えば、過酸化物、アゾ系開始剤又はこれらに酸化剤・還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤が挙げられる。これらの中でレドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩・ロンガリット・ハイドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が好ましい。
【0025】
重合開始剤の添加方法としては、水相又は単量体相のいずれか片方又は双方に添加することができる。
【0026】
重合温度は用いる重合開始剤の種類や量によって任意に設定できるが、40〜120℃が好ましく、60〜95℃がより好ましい。
【0027】
本発明においては重合体(I)を乳化重合で得る際に各種重合助剤を使用してもよい。
【0028】
上記のように、乳化重合で得られた重合体(I)はラテックスの状態から回収される。
【0029】
重合体ラテックスから重合体を回収する方法としては、例えば、塩析若しくは酸析凝固法又は噴霧乾燥若しくは凍結乾燥法が挙げられ、粉状で回収される。
【0030】
重合体(II)はメタクリル酸アルキルエステルを主構成単位とする。メタクリル酸アルキルエステル以外の共重合可能な二重結合を有する他の単量体を使用することができる。その他連鎖移動剤を使用することができる。これらの単量体としては、上記のものが挙げられる。重合体(II)は、懸濁重合、乳化重合、溶液重合、塊状重合等の公知の重合法によって製造することができる。
【0031】
重合体(I)及び重合体(II)の使用量は、それぞれ20〜100質量%及び80〜0質量%である。
【0032】
<高分子型帯電防止剤(B)>
本発明においては、アクリル樹脂フィルムの帯電防止効果の持続性に優れる点で帯電防止剤として高分子型帯電防止剤(B)が使用される。
【0033】
高分子型帯電防止剤(B)としては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリオレフィンと親水性ポリマーとのブロックポリマー、ポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルアミドイミド等のポリエーテル部位を含有する重合体及び4級アンモニウム塩基含有アクリレート共重合体等の4級アンモニウム塩基を含有する重合体が挙げられる。
【0034】
これらの中で、光学的に透明なアクリル樹脂フィルムを得るために、高分子型帯電防止剤(B)としてアクリル樹脂との屈折率差が少ないポリオレフィンと親水性ポリマーとのブロックポリマー又はポリエーテルエステルアミドを用いることが好ましい。
【0035】
ポリオレフィンと親水性ポリマーとのブロックポリマーとしては、例えば、官能基を有するポリオレフィンとその官能基と反応可能な官能基を有する親水性ポリマーとの反応物であって、ポリオレフィンからなるブロックと親水性ポリマーからなるブロックとがエステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、イミド結合等を介して繰り返し交互に結合した構造を有するものが挙げられる。
【0036】
上記のポリオレフィンとしては、ポリマーの両末端にカルボキシル基、水酸基、アミノ基等の官能基を有するポリオレフィンが挙げられる。
【0037】
また、上記の親水性ポリマーとしては、官能基として水酸基を有するポリオキシアルキレン等のポリエーテルジオール、両末端にカルボキシル基を有するポリアミドとポリエーテルジオールとから得られるポリエーテルエステルアミド、ポリアミドイミドとポリエーテルジオールとから得られるポリエーテルアミドイミド、ポリエステルとポリエーテルジオールとから得られるポリエーテルエステル及びポリアミドとポリエーテルジアミンとから得られるポリエーテルアミドが挙げられる。
【0038】
ポリオレフィンと親水性ポリマーとのブロックポリマーにおける親水性ポリマーの比率は20〜90質量%が好ましい。
【0039】
ポリオレフィンと親水性ポリマーとのブロックポリマーの具体例としては、三洋化成工業(株)製ペレスタット230(商品名、屈折率1.50)及びペレスタット300(商品名、屈折率1.49)が挙げられる。
【0040】
また、ポリエーテルエステルアミドとしては、例えば、ポリアミドとポリエーテルジオールとを重縮合させて得られるポリエーテルエステルアミドが挙げられる。
【0041】
上記のポリアミドとしては、炭素原子数6以上のアミノカルボン酸又はラクタム、ジアミンとジカルボン酸から得られる炭素数6以上のナイロン塩から選ばれる少なくとも1種のポリアミド形成性モノマー及び分子内に環状構造を有する炭素数4〜20のジカルボン酸から誘導される。
【0042】
ポリエーテルジオールとしては、ポリオキシアルキレングリコール及びビスフェノール系化合物から選ばれる少なくとも1種のエチレンオキシド付加物が挙げられる。
【0043】
ポリエーテルエステルアミドの具体例としては、富士化成工業(株)製TPAE−H151(商品名、屈折率1.49)が挙げられる。
【0044】
ポリオレフィンと親水性ポリマーとのブロックポリマー又はポリエーテルエステルアミドとアクリル樹脂(A)との屈折率差は、アクリル樹脂フィルムの透明性を良くするために0.01以下が好ましく、0.005以下がより好ましい。
【0045】
高分子型帯電防止剤(B)としてポリオレフィンと親水性ポリマーとのブロックポリマー又はポリエーテルエステルアミドを使用する場合、ポリオレフィンと親水性ポリマーとのブロックポリマー又はポリエーテルエステルアミドの含有量はアクリル樹脂(A)100質量部に対して30質量部以下が好ましい。30質量部以下で帯電防止性能とフィルム成形後の着色性、吸水性、透明性、耐衝撃強度、外観及び成形性とのバランスが得られる傾向にある。ポリオレフィンと親水性ポリマーとのブロックポリマー又はポリエーテルエステルアミドの含有量は20質量部以下がより好ましく、15質量部以下が更に好ましい。
【0046】
本発明においては、必要に応じて高分子型帯電防止剤(B)に界面活性剤型帯電防止剤を併用することができる。
【0047】
界面活性剤型帯電防止剤としては、例えば、アルキルスルホン酸塩及びグリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。
【0048】
<紫外線吸収剤(C)>
紫外線吸収剤(C)としては、例えば、トリアジン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、サリシレート系化合物及びベンゾエート系化合物が挙げられる。これらの中で、紫外線カット性に優れるトリアジン系化合物が好ましい。
【0049】
トリアジン系化合物としては、例えば、下記一般式(1)で表される2,4,6−トリアリールトリアジンが挙げられる。
【化1】

【0050】
式中、R、R、R及びRは同一又は異なり、水素、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、スルホキシル基、カルボキシ基、ハロゲン、ハロアルキル基及びアリルアミノ基から選ばれる少なくとも1種である。Rは水素、炭素数1〜18のアルキル基、酸素を含有する脂肪族または環状脂肪族である。酸素を含有する脂肪族または環状脂肪族の例としては、下記一般式(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)で示される基が好ましい。
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【0051】
紫外線吸収剤(C)の分子量は300以上が好ましく、400以上がより好ましい。
【0052】
紫外線吸収剤(C)の具体例としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のチヌビン1577(商品名)及び(株)アデカ製のアデカスタブLA46(商品名)が挙げられる。
【0053】
紫外線吸収剤(C)の含有量はアクリル樹脂(A)100質量部に対して0.01〜1.3質量部である。紫外線吸収剤(C)を帯電防止剤と併用する場合、紫外線吸収剤(C)の含有量が0.01質量部以上で耐光性が得られ、また1.3質量部以下でブリードアウトの問題が生じない。紫外線吸収剤(C)の含有量は0.5〜1.0質量部が好ましい。
【0054】
<アクリル樹脂フィルム>
本発明のアクリル樹脂フィルムの厚みとしては、フィルム物性及び加工性の点で10〜500μmが好ましい。アクリル樹脂フィルムの厚みが10〜500μmで適度な剛性となる傾向があり、ラミネート性、二次加工性等が容易となり、更に製膜性が安定してフィルム製造が容易となる傾向がある。アクリル樹脂フィルムの厚みは15〜200μmがより好ましく、30〜200μmが更に好ましい。
【0055】
本発明のアクリル樹脂フィルムのヘイズはJIS K7136に準拠して測定したときの値が10%以下であることが好ましい。アクリル樹脂フィルムのヘイズが10%以下の場合、光拡散板にアクリル樹脂フィルムを積層して使用したときに光源からの光が効率良く透過するため、これを用いた液晶表示装置は発光品位が良好になる。
【0056】
本発明のアクリル樹脂フィルムはアクリル樹脂(A)、高分子型帯電防止剤(B)及び紫外線吸収剤(C)を含有するが、必要に応じて、安定剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃助剤、充填剤、離型剤等の一般の配合剤を配合することができる。また、本発明のアクリル樹脂フィルムを光拡散板に積層する場合には、耐光性を更に改善するためにヒンダードアミン系光安定剤(HALS)を添加することが好ましい。
【0057】
上記の添加剤の添加方法としては、樹脂組成物をフィルム化する際に、成形機にアクリル樹脂(A)と共に供給する方法と、添加剤を添加した混合物を各種混練機にて混練混合して樹脂組成物とする方法がある。後者の方法に使用する混練機としては、通常の単軸押出機、二軸押出機、バンバリミキサー、ロール混練機等が挙げられる。
【0058】
樹脂組成物をフィルム化する方法としては、例えば、公知の溶融流延法、Tダイ法、インフレーション法等の溶融押出法が挙げられる。これらの中で、経済性の点でTダイ法が好ましい。
【0059】
<光拡散板>
本発明のアクリル樹脂フィルムはバックライト用光拡散板の光源側の表面及び液晶側の表面から選ばれる少なくとも1つの表面に積層して使用することができる。
【0060】
本発明に使用される光拡散板の材料としては、例えば、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、メチルメタクリレート−スチレン樹脂(MS樹脂)、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂及び環状ポリオレフィン樹脂が挙げられる。これらの中で、光線透過率の高いメタクリル樹脂及びポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0061】
光拡散板としては、上記の樹脂中に光拡散剤を分散させたものを使用することができる。光拡散剤としては、透明で、耐光性、耐熱性、耐湿性があり、高い光拡散性を有するものが好ましい。
【0062】
光拡散剤としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン、ナイロン樹脂、ノルボルネン樹脂、シクロヘキサン系樹脂、塩化ビニル系樹脂等の有機物;及び結晶性シリカ、ガラス、フッ化リチウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機物が挙げられる。
【0063】
光拡散板としては、透明で、光線透過率が高く、複屈折率が低く、アクリル樹脂フィルムが容易に積層できるものが好ましく、直下型バックライト用光拡散板がより好ましい。
【0064】
本発明のアクリル樹脂フィルムを積層した光拡散板を直下型バックライトの光拡散板として用いる場合、本発明のアクリル樹脂フィルムを光拡散板の光源側、液晶側の両面に積層して使用することができる。このアクリル樹脂フィルムが積層された光拡散板は光源による光拡散板の黄変を抑制し、埃等の付着による輝度低下を抑制することができることから、この直下型バックライトを用いた液晶表示装置はカラー液晶表示における色合いや発光品位を長時間維持することができる。
【0065】
本発明のアクリル樹脂フィルムを光拡散板に積層する方法としては、例えば、共押出Tダイ法、共押出ラミネーション法等の共押出法が挙げられる。また、アクリル樹脂フィルムをドライラミネーション法、熱ラミネーション法等のフィルムラミネーション法により積層する方法又は樹脂組成物の溶液のコーティング法による積層法等の公知の方法により光拡散板に積層することができる。これらの中で、装置が簡単で連続的に安定した品質の光拡散板を容易に得ることができる共押出法及びフィルムラミネーション法が好ましく、フィルムラミネーション法がより好ましい。
【実施例】
【0066】
以下、実施例により本発明を説明する。尚、実施例及び比較例中の「部」は「質量部」を表す。また、略号は夫々以下の化合物を示す。
【0067】
MMA:メチルメタクリレート
MA:メチルアクリレート
BA:ブチルアクリレート
St:スチレン
AMA:アリルメタクリレート
1,3BD:1,3−ブチレングリコールジメタクリレート
tBH:t−ブチルハイドロパーオキサイド
CHP:クメンハイドロパーオキサイド
SFS:ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート
EDTA:エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩
nOM:n−オクチルメルカプタン
RS−610NA:モノ−n−ドデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸ナトリウム(東邦化学(株)製、商品名;フォスファノールRS−610NA)
実施例及び比較例において、調製した重合体の評価、アクリル樹脂フィルム及びアクリル樹脂フィルムを積層した光拡散板はそれぞれ以下の方法により評価した。
【0068】
(1)重合体の質量平均粒子径
乳化重合で得られた重合体ラテックスを大塚電子(株)製の光散乱光度計DLS−700(商品名)を用いて動的光散乱法で測定した。
【0069】
(2)重合体のゲル含有率
秤量した約0.5g(抽出前質量)の重合体をアセトン溶媒中、還流下で4時間抽出処理し、この抽出処理液を遠心分離により分別した。次いで、得られた固形分の乾燥後の質量(抽出後質量)を測定し、以下の式にてゲル含有率を求めた。
【0070】
ゲル含有率(%)={(抽出前質量−抽出後質量)/抽出前質量}×100
(3)アクリル樹脂フィルムのヘイズ
JIS K7136に準拠して評価した。
【0071】
(4)アクリル樹脂フィルム表面のブリードアウトの有無
アクリル樹脂フィルムを23℃、50%RHの環境下で180日間放置し、その後アクリル樹脂フィルム表面を肉眼観察してブリードアウトの有無を確認した。
【0072】
○:ブリードアウト無し
×:ブリードアウト有り
(5)アクリル樹脂フィルムの帯電防止性能
JIS K6911に準拠し、アクリル樹脂フィルムを23℃、50%RHの状態に24時間放置した後、同雰囲気中、印加電圧500Vの条件で超絶縁計(東亜電波工業(株)製SM−10E型(商品名))を用いて表面抵抗率を測定し、帯電防止性能を評価した。
【0073】
(6)光拡散板の塵埃付着性
アクリル樹脂フィルムを積層した光拡散板を室内にて25℃、50%RHで二ヶ月間吊るし、塵埃が付着する程度を下記基準で目視評価した。
【0074】
○:塵埃の付着が殆ど見られない。
【0075】
×:塵埃が付着して光拡散板が曇って見える。
【0076】
(7)光拡散板の帯電防止性能
アクリル樹脂フィルムを積層した光拡散板を60℃、95%RHの環境下及び80℃、0%RHの環境下で500時間放置した後のアクリル樹脂フィルムの表面の表面抵抗率を測定し、帯電防止性能を下記の基準で評価した。
【0077】
◎:1×1013Ω/cm以下。
【0078】
○:1×1013Ω/cmを超え、1×1015/cm以下。
【0079】
×:1×1015Ω/cmを超える。
【0080】
(8)光拡散板の耐光性
光拡散板のアクリル樹脂フィルムを積層した面を以下に示す条件で冷陰極管実曝露した後の光拡散板の変色の度合い及び帯電防止性能低下の度合いを以下の基準で評価した。
【0081】
(冷陰極管実曝露条件)
冷陰極管:φ2.6ランプ
ランプ電流:8mA、3本並列
雰囲気温湿度:23℃、50%RH
ランプとサンプル面との距離:1.4mm(設計値)
サンプル面の温度:約50℃
曝露期間:6ヶ月
(変色の度合い)
○:変色なし
×:変色あり
(帯電防止性能低下の度合い)
○:アクリル樹脂フィルムの表面の表面抵抗率はほとんど低下していない。
【0082】
×:アクリル樹脂フィルムの表面の表面抵抗率が著しく低下した。
【0083】
[実施例1]
<重合体(H−1)の製造>
攪拌機を備えた容器にイオン交換水8.5部を仕込んだ後、以下に示す単量体混合物(a)を投入し、攪拌混合した。次いで、この混合物を攪拌しながらRS−610NAを1.1部上記容器に投入した後、攪拌を20分間継続して、乳化液(N−1)を得た。乳化液(N−1)中の分散相の平均粒子径は10μmであった。
【0084】
次に、乳化液(N−1)中にイオン交換水186.5部を投入し、窒素雰囲気下で70℃に昇温した。この後、これに、以下に示す重合助剤(b)をイオン交換水5部に加えて調製した重合助剤混合物を一括投入した。
【0085】
更に、窒素雰囲気下で撹拌しながら、乳化液(N−1)を8分間かけて重合容器に滴下した後、15分間反応を継続させ、重合体(A−1)の重合を完結した。
【0086】
続いて、窒素雰囲気下で以下に示す単量体混合物(c)を90分間かけて重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、重合体(B−1)を得た。
【0087】
続いて、窒素雰囲気下で以下に示す単量体混合物(d)を45分間かけて重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、重合体(D−1)を形成させた。
【0088】
続いて、窒素雰囲気下で以下に示す単量体混合物(e)を140分間かけて重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、重合体(C−1)を形成し、4段重合の重合体(H−1)の重合体ラテックスを得た。重合体ラテックス中の重合体の質量平均粒子径は0.12μmであった。
【0089】
単量体混合物(a)
MMA 0.3部
BA 4.5部
1,3BD 0.2部
AMA 0.05部
CHP 0.025部
重合助剤(b)
SFS 0.2部
硫酸第一鉄 0.0001部
EDTA 0.0003部
単量体混合物(c)
MMA 1.5部
BA 22.5部
1,3BD 1.0部
AMA 0.25部
CHP 0.016部
単量体混合物(d)
MMA 6部
BA 4部
AMA 0.075部
CHP 0.0125部
単量体混合物(e)
MMA 55.2部
BA 4.8部
nOM 0.204部
tBH 0.08部
得られた重合体(H−1)の重合体ラテックスを、濾材にSUS製のメッシュ(平均目開き62μm)を取り付けた振動型濾過装置を用いて濾過した。この後、濾液を3%酢酸カルシウム水溶液中に投入して塩析させ、塩析物を水洗し、乾燥して粉体状の重合体(H−1)を得た。
【0090】
重合体(H−1)のゲル含有率は60%であった。また、重合体(H−1)をアセトンに分散させた際に、その分散液中に存在する直径55μm以上の粒子の数は重合体100gあたり18個であった。
【0091】
次に、重合体(H−1)100部、帯電防止剤として富士化成工業(株)製TPAE−H151(商品名)を10部、紫外線吸収剤としてチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製チヌビン1577(商品名)を0.7部及び抗酸化剤としてチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製イルガノックス1076(商品名)を0.1部配合した後、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。次いで、得られた混合物を230℃に加熱した脱気式押出機(東芝機械(株)製TEM−35B(商品名))に供給し、混練してペレットを得た。
【0092】
このペレットを80℃で一昼夜乾燥し、得られた乾燥ペレットを300mm幅のTダイを取り付けた40mmφのノンベントスクリュー型押出機(L/D=26)に供給して厚み50μmのアクリル樹脂フィルムを作製した。この時の条件はシリンダー温度200℃〜240℃、Tダイ温度250℃及び冷却ロール温度70℃であった。
【0093】
また、ビスフェノールAとホスゲンから得た粘度平均分子量24,300のポリカーボネート樹脂にアクリル系重合体微粒子(ローム・アンド・ハース・カンパニー製パラロイドEXL−5136(商品名)、質量平均粒子径7μm)を3.5部添加混合したものをベント付きTダイ押出機を用いて押出機温度250〜300℃、ダイス温度260〜300℃、ベント部の真空度26.6kPaの条件で溶融押出して、厚さ2mm及び幅1,000mmのポリカーボネート樹脂製の光拡散板を得た。
【0094】
前記のアクリル樹脂フィルムを上記の光拡散板に140℃で熱ラミネートして、アクリル樹脂フィルムが積層された光拡散板を得た。
【0095】
アクリル樹脂フィルムの全光線透過率、ヘイズ、ブリードアウトの有無及び帯電防止性能、並びに光拡散板の塵埃付着性、帯電防止性能及び耐光性について評価した。評価結果を表1に示す。
【表1】

【0096】
[実施例2]
帯電防止剤として三洋化成工業(株)製ペレスタット230(商品名)を10部用いた。それ以外は実施例1と同様にして厚み50μmのアクリル樹脂フィルム及びこのアクリル樹脂フィルムを積層した光拡散板を得た。また、実施例1と同様の評価の結果を表1に示す。
【0097】
[実施例3]
帯電防止剤として三洋化成工業(株)製ペレスタット300(商品名)を10部用いた。それ以外は実施例1と同様にして厚み50μmのアクリル樹脂フィルム及びこのアクリル樹脂フィルムを積層した光拡散板を得た。また、実施例1と同様の評価の結果を表1に示す。
【0098】
[比較例1]
紫外線吸収剤を用いなかった以外は実施例1と同様にして厚み50μmのアクリル樹脂フィルム及びこのアクリル樹脂フィルムを積層した光拡散板を得た。また、実施例1と同様の評価の結果を表1に示す。
【0099】
[比較例2]
帯電防止剤を用いなかった以外は実施例1と同様にして厚み50μmのアクリル樹脂フィルム及びこのアクリル樹脂フィルムを積層した光拡散板を得た。また、実施例1と同様の評価の結果を表1に示す。
【0100】
[比較例3]
帯電防止剤として三洋化成工業(株)製ペレスタット300(商品名)を10部、紫外線吸収剤としてチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製チヌビン1577(商品名)を1.4部用いた。それ以外は実施例1と同様にして厚み50μmのアクリル樹脂フィルム及びアクリル樹脂フィルムを積層した光拡散板を得た。また、実施例1と同様の評価の結果を表1に示す。
【0101】
実施例及び比較例より次のことが明らかとなった。
【0102】
実施例1〜3では、得られたアクリル樹脂フィルムは良好な透明性及び帯電防止性能を有し、フィルムの表面に紫外線吸収剤もブリードアウトせず外観は良好であった。また、このアクリル樹脂フィルムを積層した光拡散板は良好な帯電防止性能及び耐光性を有していた。
【0103】
一方、比較例1では、紫外線吸収剤を含有していないためアクリル樹脂フィルムを積層した光拡散板は耐光性の低下が見られた。また、比較例2では、帯電防止剤を含有していないためアクリル樹脂フィルムを積層した光拡散板は塵埃付着性が大きく発光品位は低位であった。更に、比較例3では紫外線吸収剤が過剰に含有されているため、アクリル樹脂フィルムの表面に紫外線吸収剤がブリードアウトしていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル樹脂(A)、高分子型帯電防止剤(B)及び紫外線吸収剤(C)を含有し、紫外線吸収剤(C)の含有量がアクリル樹脂(A)100質量部に対して0.01〜1.3質量部であるアクリル樹脂フィルム。
【請求項2】
アクリル樹脂フィルムのヘイズが10%以下である請求項1に記載のアクリル樹脂フィルム。
【請求項3】
光拡散板の少なくとも一表面に請求項1又は2に記載のアクリル樹脂フィルムが積層された光拡散板。

【公開番号】特開2009−84521(P2009−84521A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259629(P2007−259629)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】