説明

アコースティックギター系弦楽器

【課題】アコースティックギター系弦楽器を軽量化、音色改善すると共に、音色の調整が容易にできるようにする。
【解決手段】透孔11,11a〜11eが開設された力木5a,5b,6a,6b,18を胴体の表板1の内側面および/または裏板2の内側面に貼着する。また、その力木に開設する透孔の大きさ、形状、または数を変えることにより、アコースティックギター系弦楽器から奏される音色を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラシックギター,フォークギターのようなアコースティックギター系弦楽器に関し、詳しくはその胴体内に配設される力木に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ギターの胴体は、一般に表板の内側面や裏板の内側面に力木を接着剤により接着させて配設することにより補強され、弦の張力による変形を起こすことのないようにしている。また、この力木は、下記特許文献1、2等に示されたように、ギターの音響特性にも影響を与える重要な部材であることが知られている。
【特許文献1】特開平11−85143号公報
【特許文献2】特開2001−236058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで上記力木は、胴体を補強する観点からすると太径で頑強のものを縦横に多数本設けることが望ましいものの、そうすると、ギターの重量が重くなって演奏性を損ねるだけでなく、響きも悪くなり、ギターとしての好ましい音色が得られないおそれが生じるという問題があった。
従って、胴体を構成する木の材料や性質、或いは、ミュージシャンが要求する音色に応じて力木の太さや配置を決める必要があるが、個々のギターについてそのような調整をすることには多くの手間を要すると同時に特別な技巧を要するものであった。このため、コストが高くなる状況であった。
本発明は、このような従来のアコースティックギター系弦楽器の問題点を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そのために本発明のアコースティックギター系弦楽器は、透孔が開設された力木を胴体の表板の内側面および/または裏板の内側面に貼着してなることを特徴とする。
また、本発明は上記アコースティックギター系弦楽器において、複数の透孔を力木の長手方向に亘って適宜間隔で開設したことを特徴とする。
また、本発明に係るアコースティックギター系弦楽器の音色調整方法は、力木に開設する透孔の大きさ、形状、または数を変えることにより音色を調整するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、アコースティックギター系弦楽器を軽量化、音色改善する顕著な効果があると共に、音色調整が容易となるので、音色に対する個々のミュージシャンの要求に容易に応じられるようになる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に本発明の実施形態を図面に従い説明する。図1は本発明に係るギターの胴体の縦断面図で、1はスプルース等の単板からなる表板、2はマホガニー等の単板からなる裏板、3は曲線状に湾曲した側板であり、表板1および裏板2の周囲が該側板3に継板部材4を介して接合することにより当該胴体が中空状に形成され、該胴体に棹(図示せず)を設けることによりギターが構成される。
【0007】
表板1の内側面には、図2に示したように、長手棒状の力木5a,5bが中央でX字状に交差するように貼着されるほか、該力木の一側にこれより短い棒状の力木6a,6bが平行に貼着される。なお、力木5a,5bは、図3に分解斜視図を示したように、長手方向略中間部に互いに合致し得るU字形の切込7a,7bを形成することによりX字状に組み合わされるようにすると共に、両端部8a,9a,8b,9bを薄手に削ることにより前記継板部材4に係合されるようにしている。そして、接着剤として膠を使用し、表板1の内面に貼着される。なお、10は接着剤を塗って力木5a,5bの交点の上に貼付した布きれで、この布きれによって両力木5a,5bが強固に組み合わされるようにしている。
そして、これらの力木5a,5bおよび力木6a,6bに、複数の透孔11が長手方向に亘って適宜間隔で開設することにより、該力木がその強度、剛性を損なうことなく軽量化されるようにしている。
【0008】
また、12は表板1に形成されたサウンドホール、13は該サウンドホールの上部に貼着された力木、14は該力木13の上部で該力木と平行に貼着された薄手補強板、15a〜15cは該サウンドホールを囲うように貼着された薄手補強板、16は表板1の弦取付部内面に貼着された補強板、17はその他の短い力木である。
なお、裏板2の内側面にも図1に例示されるように力木18が適宜貼着される。
【0009】
このように本発明に係るギターは、力木5a,5b,6a,6bに透孔11を形成したことから、ギターの重さが軽くなるだけでなく、胴体内の音が該透孔11を通して自由に伝播するので音の抜けが良くなり、音響的にも改善されたものとなる。
【0010】
また、透孔11の大きさや形状、或いは透孔11を開設する間隔や開設する数を適宜調整することにより、柔らかい音や硬い音など、ミュージシャンの好みの音色が比較的容易に調整できるようになる。即ち、胴体の木の材質等により音色を調節するよりも簡単に響きが調節され好みの音色を得ることができる。
【0011】
ちなみに、図4に示した力木は大きめの透孔11aと小さい透孔11bとを交互に開設した例である。また、図5は楕円形の透孔11cと透孔11dを縦長と横長となるように交互に開設した例を示す。また、図6は上下方向交互に三角形の透孔11eを形成することによりトラス状とし、開口率を上げても力木の曲げ強度が落ちないようにしたものである。
【産業上の利用可能性】
【0012】
本発明は、クラシックギター,フォークギターは勿論、近年生産が増加している小型ギター、或いはウクレレのようなアコースティックギター系弦楽器に広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るギターの胴体の縦断面図。
【図2】本発明に係るギターの表板の内面の斜視図。
【図3】本発明に係る力木の分解斜視図。
【図4】本発明に係る力木の他の実施形態を示す斜視図。
【図5】本発明に係る力木の他の実施形態を示す斜視図。
【図6】本発明に係る力木の他の実施形態を示す斜視図。
【符号の説明】
【0014】
1 表板
2 裏板
3 側板
5a,5b,6a,6b,18 力木
11,11a〜11e 透孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透孔が開設された力木を胴体の表板の内側面および/または裏板の内側面に貼着してなることを特徴としたアコースティックギター系弦楽器。
【請求項2】
複数の透孔を力木の長手方向に亘って適宜間隔で開設したことを特徴とする請求項1に記載のアコースティックギター系弦楽器。
【請求項3】
力木に開設する透孔の大きさ、形状、または数を変えることにより音色を調整することを特徴としたアコースティックギター系弦楽器の音色調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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