説明

アゴメラチン及びその薬物組成物

【課題】本発明は抑鬱症を治療する薬物であるアゴメラチン結晶及びその薬物組成物を提供する。
【解決手段】前記アゴメラチン結晶は、Cu−Kα線を用いて2θ(度)で示されるX線粉末回折スペクトルにおいて、12.84、13.84、16.14、18.56、19.12、20.86、21.20、23.84に特徴の回折ピークがあり、その赤外吸収スペクトルにおいて、約3234、3060、2940、1638、1511、1436、1249、1215、1184、1032、908、828、755、588cm−1に特徴の吸収ピークがあり、DSC吸熱転換温度が97.6℃である。前記アゴメラチン結晶は活性成分として抑鬱症を治療する薬物の製造における使用をさらに提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬物化学合成の技術分野に属し、アゴメラチン(agomelatine)結晶及びその製造方法、並びに活性成分として抑鬱症を治療する薬物の製造におけるアゴメラチン結晶の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
社会経済の発展や生活リズムの加速化に伴い、人々のストレスが増加したり、感情に対する衝撃が激しくなったりすることで、抑鬱症の発病率が年々高まっている。抑鬱症(depression)は、感情障害(mood disorders)の主なタイプであり、顕著且つ持続的な気分低落を主な特徴とする症候群である。その主な表現は、気分低落、興味の低減、悲観、思惟の鈍さ、主動性の欠乏、自己非難、食事や睡眠質量の低下、様々な病気に対する心配、全身にわたる多くの箇所の不快感であり、重篤な患者では自殺の意欲や挙動も表現される。臨床では、抑鬱症に対する治療は、主に西洋薬に頼り、一定の効果があるが、何れも異なる程度の副作用や依存性が有る。
【0003】
アゴメラチン(Agomelatine)は、フランスのセルヴィエ社に初めて開発され且つ唯一のメラトニン1、2(MT1 MT2)受容体のアゴニストでもあり、セロトニン2c(5HT2c)受容体の拮抗薬でもある。主に抑鬱症の発病を治療するためのものである。その独特な作用機構は、現在で普遍に採用されている抗うつ薬、例えば選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)及びセロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)の作用機構と完全に異なる。SSRI及びSNRI類抗うつ薬は、セロトニンの濃度を向上させることで抗抑鬱の効果を図るが、例えば体重変化、性機能障害、停薬症候群などの諸多の副作用も齎す。一方、アゴメラチンでは、薬物の分子構造は直接に神経シナプス後膜におけるセロトニン2c(5HT2c)受容体と結合することにより、その抗抑鬱の効果を発揮し、且つシナプス間隙におけるセロトニンの濃度を増加させない。アゴメラチンのこの独特な作用機構は、抗抑鬱の効果を迅速で有効的に発揮させると同時に、最大限に薬物の副作用の発生を避けることができる。
【0004】
アゴメラチンのもう一つの独特の作用ターゲットはメラトニン受容体にある。MT1、MT2受容体が人の視交叉上核に密集に分布され、この神経核は主に人の睡眠リズムを制御する。アゴメラチンはMT1、MT2受容体のアゴニストである。MT1、MT2受容体に対する作動作用によって、患者の睡眠品質がよく改善されるとともに、患者の昼間の覚める状態も向上される。睡眠状態の良さと抑鬱症の転帰とは互いに因果関係がある。80%の抑鬱症患者は何れも異なる程度で睡眠障害の問題を有する報告がある。睡眠品質の改善は直接に抑鬱症患者の全体臨床状況の改善を促進している。多量の臨床研究により、以下のことが検証された。即ち、アゴメラチンは、理想的な短期と長期の効果を有し、速やかに効果を発生させ、また、抑鬱症患者の再発や複発率を著しく低下し、SSRIやSNRI類薬物よりその安全性が著しく優れ、抑鬱症の中心症状を軽減するとともに患者の睡眠品質を顕著に改善して昼間での覚める状態も向上させている。もちろん、アゴメラチンの出現は、医者と患者の抑鬱症を治療する選択において新しい選択肢を提供する。
【0005】
アゴメラチン(agomelatine)の化学名はN−[2−(7−メトキシ−1−ナフチル)エチル]アセトアミドであり、その構造式は以下の通りである。
【化1】

【0006】
アゴメラチンに対して多くの文献が報告されている。例えば、ヨーロッパ特許明細書EP0447285にアゴメラチン、その製造及びその治療用途が記載されており、中国特許CN1680284にアゴメラチンの新規合成方法、新規結晶型及びその薬物組成物が記載されており、出願番号200810174918.2にアゴメラチンの新規結晶型VI、その製造方法及びそれを含む薬物組成物が記載されており、EP0447285とJ.M.C,1994,37,3231−3239にアゴメラチンの別の合成経路が記載されている。
【0007】
化合物は全て2種類又は多種の結晶状態で存在することができ、それは物質の本能であることがよく知っている。同じ構造の分子は異なる固体形式として結晶化され、同質異像の物質と呼ばれる。異なる結晶は異なる結晶格子エネルギーを有し、これにより、それは固態で純度が優れ、再現性が良い物理的性能を呈する。本発明は、異なる製造方法によって従来文献と異なるアゴメラチンの新規結晶が得られ、そのX線粉末回折スペクトルが得られることにより、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一つの目的は品質が良く、再現性に優れ、HPLC規格化法による純度が99%以上のアゴメラチン結晶を提供することである。
【0009】
本発明のもう一つの目的はアゴメラチン結晶の製造方法を提供することである。
【0010】
本発明の別の一つの目的はアゴメラチン結晶を含有する薬物組成物を提供することである。
【0011】
本発明の他の一つの目的は抑鬱症を治療する薬物の製造におけるアゴメラチン結晶の組成物の使用を提供することである。上記目的を達成するために、本発明は下記のような技術案を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
Cu−Kα線を用いて2θ(度)で示されるX線粉末回折スペクトルが図1に示すように、その赤外吸収スペクトルにおいて約3234、3060、2940、1638、1511、1436、1249、1215、1184、1032、908、828、755、588cm−1に特徴の吸収ピークがあり、DSC吸熱転換温度が97.6℃であることを特徴とするアゴメラチン結晶。
【0013】
本発明に記載のアゴメラチン結晶は、Cu−Kα線を用いて2θ(度)で示されるX線粉末回折スペクトルにおいて、12.84、13.84、16.14、18.56、19.12、20.86、21.20、23.84に典型的な特徴の回折ピークがある。
【0014】
本発明に記載のアゴメラチン結晶の製造方法は、アゴメラチン粗製品をDMFに溶解してろ過し、ろ液を迅速に攪拌されている蒸留水に注入して15〜45分間保持し、ろ過して真空乾燥し、含有量が99%より高いアゴメラチン結晶が得られることである。例えば、一定量のアゴメラチン粗製品をDMFに加えてDMF溶液とし、ろ過し、ろ液を迅速に攪拌されている蒸留水に注入し、15〜45分間攪拌保持し、ろ過して真空乾燥し、含有量が99%より高いアゴメラチン結晶が得られる。
【0015】
当業者に知られるように、アゴメラチン粗製品をDMFに溶解することは一般的に室温であればよいが、必要に応じて温度を適当に向上させることもあり、その原則はアゴメラチン粗製品を完全に溶解できることを標準とすることである。真空乾燥は一般的に室温で完成でき、或いは、必要に応じて適当に温度を向上させて水分を除いてアゴメラチン結晶の含有量が99%より高いことを保証するように行われる。本発明では、真空乾燥の時間が特に限定されないが、アゴメラチン結晶の含有量の測定結果に基づいて調整してもよく、通常5−10hである。
【0016】
本発明では、上記のDMFの加入量が特に限定されないが、アゴメラチン粗製品が溶解できればよい。一般的に、ろ液が5−60℃の迅速に攪拌されている蒸留水に注入される。
【0017】
本発明に記載のろ液(DMF溶液)と蒸留水との重量部数の比は1:20−50である。好ましくは1:20−40であり、より好ましい重量部数の比は1:20−30である。
【発明の効果】
【0018】
本発明で製造したアゴメラチン結晶は既存の既知結晶型と比較して具備する積極的な効果が以下の通りである。
【0019】
即ち、本発明で製造したアゴメラチン結晶は、水及び他の溶媒を含まない新規の結晶である。それは溶出、流動性及び製剤の調製において価値ある特性を呈し、品質が高く、溶解度がよく、吸収しやすく、長時間保存しても温度、光、湿度に対して安定するなどの利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1、図1−aはアゴメラチン結晶のX線粉末回折スペクトルである。
【図2】アゴメラチン結晶の赤外スペクトルである。
【図3】アゴメラチン結晶のDSC吸熱転換のチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一つの典型的な実施例において、アゴメラチン粗製品を DMFに加え、25℃で溶解させてろ過し、迅速に攪拌されている5℃、200ml蒸留水にろ液を室温で注入する。その後、室温で攪拌してろ過し、ろ過ケーキを蒸留水で洗浄し、真空乾燥して含有量が99%より高いアゴメラチン結晶が得られる。
【0022】
本発明のもう一つの典型的な実施例において、アゴメラチン粗製品をDMFに加えてろ過し、迅速に攪拌されている15℃、250ml蒸留水にろ液を室温で注入する。その後、室温で攪拌してろ過し、ろ過ケーキを蒸留水で洗浄し、真空乾燥して含有量が99%より高いアゴメラチン結晶が得られる。
【0023】
本発明の別の一つの典型的な実施例において、アゴメラチン粗製品をDMFに溶解してろ過し、迅速に攪拌されている25℃、500ml蒸留水にろ液を室温で注入する。その後、室温で攪拌してろ過し、ろ過ケーキを蒸留水で洗浄し、真空乾燥して含有量が99%より高いアゴメラチン結晶が得られる。
【0024】
本発明の他の一つの典型的な実施例において、アゴメラチン粗製品をDMFに加えてろ過し、迅速に攪拌されている60℃、800ml蒸留水にろ液を室温で注入する。その後、室温で攪拌してろ過し、ろ過ケーキを蒸留水で洗浄し、真空乾燥して含有量が99%より高いアゴメラチン結晶が得られる。
【0025】
本発明で製造したアゴメラチン結晶は下記のような特徴を有する。
1、X線粉末回折:
装置:日本理学D/MAX 2500 X線回折装置
ターゲット: Cu−Κα線(λ=1.5405) 、 2θ=2−40℃
ステップ角: 0. 04℃
計算時間: 0. 5秒
管電圧: 40KV
管電流: 100mA
走査速度: 8℃/min
フィルター: グラファイトモノクロメータ
2θ値の誤差: 2θ値± 0.10
【0026】
【表1】

【0027】
2、装置の規格及び試験条件:
METTLER TOLEDO DCC822示差走査熱量計;温度範囲:室温 40− 300℃;昇温速度:10℃/ min。
【0028】
結果により、そのDSC吸熱転換温度が97.6℃であることが明らかになる。
【0029】
3、赤外スペクトル(IR ) :
装置: 米国ニコレ社制MAGNA−560型フーリエ赤外スペクトロメータ。
【0030】
KBr打錠の本発明のアゴメラチン結晶の赤外スペクトルにおいて、3234、3060、2940、1638、1511、1436、1249、1215、1184、1032、908、828、755、588cm−1に特徴の吸収ピークがある。
【0031】
当業者は理想的な薬物投与剤量を容易に決定することができ、且つそれらの投与剤量は実際に使用するアゴメラチン結晶の投与方式、製剤の濃度及び病気の状況によって変化している。また、治療対象とする患者の年齢、体重、食事及び投与時間なども剤量を適当に調整することを招来する。
【0032】
本発明には治療有効量のアゴメラチン結晶、及び一種又は多種の薬用キャリアを含有する薬物組成物がさらに開示されている。ここで、前記の組成物は経口投与剤又は注射剤であり、経口投与剤が好ましい。例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、経口投与液などが挙げられ、また、アゴメラチン結晶と薬用キャリアを混合して調製した注射液又は凍結乾燥粉末なども挙げられる。
【0033】
本発明に記載の一種又は多種の薬用キャリアは安定剤、希釈剤、崩壊剤、溶媒、粘着剤及び滑剤などを含む。ここで、希釈剤は澱粉、微結晶セルロース、ポリエチレングリコール−1000、ポリエチレングリコール−4000、ポリエチレングリコール−6000、スクロース、デキストリン、ラクトース、粉砂糖、グルコース、低分子量デキストラン、塩化ナトリウム又はマンニトールなどを含むが、それらに限定されていない。前記粘着剤は水、エタノール、澱粉スラリー、シロップ、ゼラチン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム又はポリエチレンピロリドンなどを含むが、それらに限定されていない。前記滑剤はステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ホウ酸、塩化ナトリウム、 オレイン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポロキサマなどを含むが、それらに限定されていない。前記崩壊剤は澱粉、カルボキシメチル澱粉ナトリウム、重炭酸ナトリウム及びクエン酸、酒石酸又は低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどを含むが、それらに限定されていない。前記安定剤は寒天のような多糖、アクリル樹脂、セルロースエーテル及びカルボキシメチルセルロースなどを含むが、それらに限定されていない。
【0034】
本発明には前記製造方法によって得られるアゴメラチン結晶の、活性成分として抑鬱症を治療する薬物の製造における使用がさらに開示されている。本発明のアゴメラチン結晶は当該既知のアゴメラチン化合物自身と同じ用途を有する。例えば、抑鬱、重篤抑鬱、季節性の感情障害、睡眠障害、心血管病理学、時間差による不眠と疲労などに起因する抑鬱症などを治療することができる。また、例えば、得られるアゴメラチン結晶を薬理学や薬効学の実験で検討した結果、アゴメラチン結晶は中枢神経系及び微循環に対して優れた治療作用を有することがわかった。
【実施例】
【0035】
以下の実施例は本発明の理解に助かるものであり、提出した請求項に記載の発明に対して何かの形態で制限するものであると理解されるわけがない。中では、アゴメラチン化合物の粗製品の製造はCN1680284を参照する。
【0036】
参考実施例 1 :
(7−メトキシ−1、2、3、4−テトラヒドロ−1−ナフタレニル)酢酸エチルの調製
反応器に7−メトキシ−1−テトラロン85gと活性化の亜鉛粉末75gを加え、そしてトルエン100mlと単体ヨウ素の結晶2粒を加え、攪拌し、還流状態まで加熱する。ブロモ酢酸エチル129mlとトルエン100mlとの混合溶液をゆっくり滴下し、加熱して反応液を還流状態に保持する。滴下した後、10分間還流し続き、反応を停止させる。
反応液を25℃まで冷却し、攪拌しながら氷水1500ml及び塩酸200mlを加え、10分間攪拌した後、相分離を行い、水層をさらにトルエン250ml×2で抽出し、有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウム70gを加えて乾燥する。翌日、濾過し、ろ液にΡ2Ο5 80gを加え、攪拌して加熱還流し、3時間反応する。反応が終了した後、25℃まで降温し、濾過し、ろ液を減圧で濃縮乾燥させることで、浅い褐色の油状物100gを得た。その含有量は90%(HPLC)であり、換算すると純収率は75.8%である。
【0037】
参考実施例2:
( 7−メトキシ−1−ナフチル)酢酸エチルの調製
反応器に単体硫黄17.6gと(7−メトキシ−1、2、3、4−テトラヒドロ−1−ナフタレニル)酢酸エチル90gを加え、攪拌しながら215℃まで加熱し、10時間反応する。反応が終了した後、60℃まで自然冷却させ、酢酸エチル500mlを加えて混合物を30分間攪拌する。濾過し、ろ過ケーキを酢酸エチル100mlで洗浄し、ろ液を合わせ、減圧で濃縮乾燥させることで、褐色の油状物92gを得た。その含有量は82.4%(HPLC)であり、換算すると純収率は85%である。
【0038】
参考実施例 3:
7−メトキシ−1−ナフチル酢酸の調製
水酸化ナトリウム40gを水1000mlに溶解し、95%エタノール1000mlを加え、均一に混合する。その後、(7−メトキシ−1−ナフチル)酢酸エチル50gを上記混合溶液に加え、室温で3時間攪拌する。反応を停止させ、減圧でエタノールを蒸発させことで、赤褐色の液体を得た。酢酸エチル300ml×2で洗浄した後、水層に95%エタノール30mlを加え、迅速に攪拌しながら濃塩酸を滴下してPH 2に調節し、浅い褐色の固体が多量析出される。濾過して乾燥することで、生成物32gを得た。mp:154−156℃、HPLCで測定した含有量は98. 48%であり、収率は72%である。
【0039】
参考実施例 4:
7−メトキシ−1−ナフチルアセトアミドの調製
7−メトキシ−1−ナフチル酢酸50gをジクロロメタン750mlに加え、 加熱して溶解させ、還流状態のまま塩化チオニルをゆっくり滴下し、滴下が終わった後、還流で2時間反応する。
【0040】
反応が終了した後、反応液を減圧で濃縮乾燥させることで、赤褐色の油状物を得て、周囲で氷水にて冷却して固化させる。得られる固体を酢酸エチル500mlで溶解し、周囲で氷塩水にて冷却し、濃アンモニア水47.2mlをゆっくり滴下し、浅い黄色の固体が多量析出される。濾過して乾燥することで、粗製品49.8gを得た。95%エタノール747mlと活性化炭素37.3gで再結晶を行い、 精製品46gを得た。mp:201−202℃、収率:92.4%。
【0041】
参考実施例 5:
7−メトキシ−1−ナフチルアセトニトリルの調製
反応器に7−メトキシ−1−ナフチルアセトアミド30g、THF 120ml及びトリエチルアミン35.7gを加えて攪拌し、周囲で氷塩浴にて冷却し、トリフルオロ酢酸無水物をゆっくり滴下する。滴下が終わった後、15分間攪拌し続き、そして氷浴を外し、室温で2時間攪拌する。反応が終了した後、反応液を濃縮乾燥させ、水200mlを加えて0. 5時間攪拌した後、濾過して乾燥することで、粗製品28gを得た。イソプロピルエーテル280mlと活性化炭素1.4gで再結晶を行い、精製品22gを得た。mp:82−84℃、収率:80%。
【0042】
参考実施例 6:
2−(7−メトキシ−1−ナフチル)エチルアミンの調製
オートクレーブに7−メトキシ−1−ナフチルアセトニトリル56g、アンモニア水120ml、95%エタノール332ml、Raney−Ni 20gを加え、真空まで吸引した後Hを導入し、当該操作を3回繰り返す。Hを導入し、300気圧を保持して60℃の条件で12時間攪拌して反応する。反応が終了した後、室温で一晩放置する。翌日、真空まで吸引してNガスを導入し、オートクレーブを開けて反応液から触媒を濾過して除き、ろ液を減圧で濃縮乾燥させることで、浅い緑の油状物56gを得た。HPLCで測定した含有量は96. 95%であり、換算すると純収率は95%である。
【0043】
参考実施例 7:
N−[2−(7−メトキシ−1−ナフチル)エチル]アセトアミド(アゴメラチン)の調製
2−(7−メトキシ−1−ナフチル)エチルアミン40gをピリジン250mlに溶解し、40℃まで加熱して全部溶解させる。氷浴で冷却し、攪拌しながら塩化アセチル21.9gをゆっくり滴下する。滴下が終わった後、氷浴を外し、室温で30分間攪拌する。そして、反応液を氷水300mlに加えるとともに強く攪拌し、白い沈澱が多量析出され、1時間攪拌し続き、ろ過し、ろ過ケーキを水200ml×2で洗浄し、粗製品48g(下記の調製実施例に用いられる)を得た。
【0044】
H NMR (400 MHz、 CDCl): δ 7.77−7.15 (m 6Η、 ); δ 5.61 (s、 1H、 ) ; δ 3.99 (s、3H、 ); δ 3.62 (m、 2H、 ); δ 3.25 (t、 2H、 ); δ 1.95 (s、 3H、 )は文献の報告と一致する(J. Med. Chem、1994、 37 (20) 、 3231−3239)。
【0045】
調製実施例
実施例 1
アゴメラチン粗製品2gをDMF10mlに溶解させ、濾過し、迅速に攪拌されている25℃の蒸留水300mlにろ液を室温で加える。そして、室温で攪拌して濾過し、ろ過ケーキを蒸留水で洗浄し、生成物を室温で真空乾燥し、HPLC法で測定した結果、含有量が99%より高いアゴメラチン結晶を得た。その結果を図1に示す。
【0046】
実施例 2
室温で、アゴメラチン粗製品1gをDMF 5mlに加えて溶解させ、濾過し、迅速に攪拌されている40℃の蒸留水210mlにろ液を加える。そして、室温で20分間攪拌し、濾過し、ろ過ケーキを蒸留水で洗浄し、10時間真空乾燥する。HPLC法で測定した結果、含有量が99%より高いアゴメラチン結晶を得た。その結果を図1に示す。
【0047】
実施例 3
アゴメラチン粗製品2gをDMF 40mlに加えて溶解させ、濾過し、迅速に攪拌されている50℃の蒸留水300mlにろ液を室温で加える。そして、室温で30分間攪拌し、濾過し、ろ過ケーキを蒸留水で洗浄し、真空乾燥する。HPLC法で測定した結果、含有量が99%より高いアゴメラチン結晶を得た。その結果を図1に示す。
【0048】
実施例 4
アゴメラチン粗製品2gをDMF 10mlに加えて溶解させ、濾過し、迅速に攪拌されている5℃の蒸留水250mlにろ液を室温で加入する。そして、室温で30分間攪拌し、濾過し、ろ過ケーキを蒸留水で洗浄し、生成物を8時間真空乾燥し、HPLC法で測定した結果、含有量が99%より高いアゴメラチン結晶を得た。その結果を図1に示す。
【0049】
実施例 5
アゴメラチン粗製品2gをDMF 50mlに加えて溶解させ、濾過し、迅速に攪拌されている60℃の蒸留水400mlにろ液を室温で加える。そして、室温で45分間攪拌し、濾過し、ろ過ケーキを蒸留水で洗浄し、6時間真空乾燥し、HPLC法で測定した結果、含有量が99%より高いアゴメラチン結晶を得た。その結果を図1に示す。
【0050】
実施例 6
アゴメラチン粗製品2gをDMF 10mlに加えて溶解させ、濾過し、迅速に攪拌されている40℃の蒸留水600mlにろ液を室温で加入する。そして、室温で20分間攪拌し、濾過し、ろ過ケーキを蒸留水で洗浄し、生成物を10時間真空乾燥し、HPLC法で測定した結果、含有量が99%より高いアゴメラチン結晶を得た。その結果を図1に示す。
【0051】
製剤実施例
実施例 1
アゴメラチン結晶25gに、ラクトース43gと微結晶セルロース 16gを加えて均一に混合し、10%のヒドロキシプロピルメチルセルロース溶液を適量で加えて顆粒を製造し、乾燥し、そしてカルボキシメチル澱粉ナトリウム5.3gとステアリン酸マグネシウム 1.5gを加えて均一に混合し、打錠し、フィルムコーティングすることで、1000錠を作成した。
【0052】
実施例 2
アゴメラチン結晶25gに、ラクトース397gと、プリゲル化澱粉93gと、ヒドロキシプロピルセルロース15gと、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム29.8gと、ステアリン酸マグネシウム7.5gとを加えて均一に混合し、純水で顆粒を製造し、乾燥、打錠、フィルムコーティングすることで、1000錠を作成した。
【0053】
実施例 3
アゴメラチン結晶25gを100g溶融したポリエチレングリコール4000に加え、攪拌して完全に溶解させて均一に混合し、60℃の定温を保持して流動パラフィン (5〜10℃)に滴下し、凝縮して丸剤になり、流動パラフィンを吸い尽くした後、精粒して得られた。
【0054】
実施例 4
アゴメラチン結晶100gに、デキストリン100gとラクトース570gを加え、70%エタノールで顆粒を製造し、乾燥した後、カプセル剤に充填してカプセル剤1000粒を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cu−Kα線を用いて2θ(度)で示されるX線粉末回折スペクトルが図1に示すように、
その赤外吸収スペクトルにおいて、3234、3060、2940、1638、1511、1436、1249、1215、1184、1032、908、828、755、588cm−1に特徴の吸収ピークがあり、
DSC吸熱転換温度が97.6℃であることを特徴とするアゴメラチン結晶。
【請求項2】
Cu−Kα線を用いて2θ(度)で示されるX線粉末回折スペクトルにおいて、12.84、13.84、16.14、18.56、19.12、20.86、21.20、23.84に特徴の回折ピークがある請求項1に記載のアゴメラチン結晶。
【請求項3】
アゴメラチン粗製品をDMFに溶解してろ過し、ろ液を迅速に攪拌されている蒸留水に注入して15〜45分間保持し、ろ過して乾燥することを特徴とする請求項1または2に記載のアゴメラチン結晶の製造方法。
【請求項4】
前記ろ液と蒸留水との重量部数の比は1:20〜50である請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
治療有効量の請求項1または2に記載のアゴメラチン結晶、及び一種又は多種の薬用キャリアを含有する薬物組成物。
【請求項6】
前記組成物が経口投与の製剤である請求項5に記載の薬物組成物。
【請求項7】
活性成分として抑鬱症を治療する薬物の製造における請求項1または2に記載のアゴメラチン結晶の使用。

【図1】
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【図1−a】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−500276(P2013−500276A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521934(P2012−521934)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【国際出願番号】PCT/CN2010/002026
【国際公開番号】WO2011/075943
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(512024794)天津泰普葯品科技▲友▼展有限公司 (1)
【Fターム(参考)】