説明

アジュバントを増強するための組成物および方法

アジュバントは、例えば抗原の免疫原性を増大させることによって免疫応答を刺激する化合物又は材料である。本明細書においては、アジュバント効果を増大させる組成物及び方法が提供される。前記方法は、抗原提示細胞(APC)に対して、APCの細胞表面マーカーに結合する化合物を使用してアジュバントを標的化させることを含む。かかる方法は、動物(例えばヒト)の免疫応答を刺激するのに有用である。また、抗原とアジュバントとをAPCに標的化させる組成物も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願)
本願は、2006年9月26日に出願された米国仮特許出願第60/847,407号の利益を主張する。米国仮特許出願第60/847,407号は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
哺乳類の免疫系は、腫瘍細胞、他の病原性細胞、及び侵入した異種病原体の認識及び除去のための手段を提供する。免疫系は、通常強力な防御線を提供するが、癌細胞や、他の病原性細胞、感染因子が宿主の免疫応答をすり抜けて増殖するか、若しくは随伴する宿主病原性と共に持続する例が依然として多くある。化学療法剤及び放射線療法は、自己複製する新生物を除去するために開発されてきた。しかしながら、現在利用可能な化学療法剤及び放射線治療方式の全てではないにしてもほとんどは、癌細胞を破壊するだけでなく正常な宿主細胞(例えば造血系の細胞)に影響を及ぼすように働くため、有害副作用を有する。更に、宿主の薬剤耐性が発現する場合、化学療法剤の有効性は限定される。
【0003】
また、異種病原体は、適格な免疫応答をすり抜けることによって、若しくは宿主の免疫系が薬物療法や他の健康問題によって支障を来す場合に宿主内で増殖することがある。多くの治療用化合物が開発されてきたものの、かかる治療に耐性のある病原体や耐性を獲得した病原体は多い。治療剤に対する耐性を発現する癌細胞及び感染微生物の能力並びに現在利用可能な抗癌薬の有害副作用によって、病原性細胞集団に特異的で且つ宿主毒性が低下した新規な療法を開発することの必要性が際立っている。
【0004】
免疫系は、特異性抗原の受容体を表面に発現するBリンパ球及びTリンパ球によって媒介される特異免疫を含む特異免疫及び非特異免疫の両方を示し得る。特異的な免疫応答は、体液性免疫(即ち、抗体作成によるB細胞活性化)及び細胞媒介性免疫(即ち、細胞傷害性Tリンパ球や、ヘルパーTリンパ球(TH1細胞やTH2細胞等)、抗原提供細胞等のT細胞の活性化)を伴う。TH1応答は、補体結合抗体、細胞傷害性Tリンパ球の活性化、及び強い遅延型過敏性反応を誘発し、IL−2、IL−12、TNF、リンホトキシン及びγ−インターフェロンの産生と関連する。TH2応答は、IgE並びにIL−4、IL−5、IL−6及びIL−10の産生と関連する。特異的免疫応答は、ある抗原に既に曝露された免疫細胞がその後その抗原に曝露されると同じ抗原に速やかに応答可能であるように、特異性だけでなく記憶を伴う。
【0005】
アジュバントは、例えば抗原の免疫原性を増大させることによって免疫応答を刺激する化合物又は材料である。アジュバントは、非特異的(多種多様な抗原に対する免疫応答の刺激)にか、特異的(即ち抗原特異的な免疫応答の刺激)にかのいずれかで作用し得る。特異免疫を増大させるアジュバントは、細胞性免疫応答又は体液性応答或いはその両方を刺激することによって作用し得る。細胞性免疫応答を刺激するアジュバントは、TH1応答又はTH2応答の方へ免疫応答を片寄らせる可能性がある。体液性免疫応答を刺激するアジュバントは、使用するアジュバントに応じて異なる抗体アイソタイププロファイルの産生を誘導する可能性がある。この点に関しては、異なるアジュバントによって、異なる抗体アイソタイプ、各アイソタイプの異なる量の抗体、及び親和性が異なる抗体の産生が刺激される可能があり、その結果、使用するアジュバント次第で非常に異なる抗体集団となる。
【0006】
免疫応答を刺激する安全且つ有効な組成物及び方法を開発することは、非常に重要なことである。特に、腫瘍関連抗原及び病原体関連抗原に対する免疫応答を、かかる抗原を最初に同定する必要なしに、又は、特異性抗原に対する処置を個別に扱う必要なしに刺激する方法の必要が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書においては、アジュバント効果を増大させる組成物及び方法が提供される。また、免疫刺激を必要とするヒト等の動物の治療方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様において、本発明は、抗原提示細胞(APC)の細胞表面マーカーに結合する化合物に結合するアジュバントを含む薬剤を動物に投与することと、それによって抗原提示細胞(APC)に対してアジュバントを標的化させることと、該化合物や該アジュバント以外の抗原に対する免疫応答を刺激することによって該アジュバントの効果を増大させることとを含むアジュバント効果増大方法を提供するものである。該アジュバントは、APC細胞表面マーカーに結合する化合物に共有結合してよい。
【0009】
ある実施形態において、該化合物は、APCの細胞表面マーカーに結合する抗体であってよい。かかる抗体は、抗体フラグメント、内部移行抗体、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であってよい。
【0010】
ある実施形態において、APCは樹状細胞であってよい。APCが樹状細胞である場合、細胞表面マーカーは、例えばDC−SIGN等のC型レクチンであってよい。そのような場合において、該DC−SIGNに結合する化合物は、例えば、マンノース炭水化物、フコース炭水化物、植物レクチン、抗生物質、糖、タンパク質又は抗体であってよい。例示的な一実施形態において、該DC−SIGNと結合する化合物は、例えばモノクローナル抗体等の抗体である。
【0011】
ある実施形態において、該アジュバントは、例えば、ミネラル塩、小分子、サポニン、多糖類、脂質、核酸、タンパク質又はペプチドであってよい。例示的な一実施形態において、アジュバントは、例えばキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)やカルメット・ゲラン桿菌(BCG)等のタンパク質である。
【0012】
ある実施形態において、該動物はヒトである。
【0013】
ある実施形態において、該アジュバントは自然免疫応答を刺激する。
【0014】
ある実施形態において、該動物は、予め該アジュバントを接種されない。
【0015】
ある実施形態において、該薬剤は、該化合物に共有結合する抗原を更に含む。
【0016】
別の一態様において、本発明は、免疫応答の刺激を、それを必要とする動物において行う方法であって、抗原提示細胞(APC)の細胞表面マーカーに結合する化合物に結合するアジュバントを含む薬剤を該動物に投与することを含み、該薬剤が該化合物や該アジュバント以外の抗原に対する免疫応答を刺激する(尤も、該化合物及び/又は該アジュバントに対する応答も発現することがある)方法を提供するものである。該アジュバントは、APCの細胞表面マーカーに結合する化合物に共有結合してよい。
【0017】
ある実施形態において、該薬剤は、腫瘍関連抗原又は病原体感染に関連する抗原に対する免疫応答を刺激する。
【0018】
別の実施形態において、本発明は、アジュバントに共有結合するDC−SIGN特異抗体を含むAPC標的化剤を該動物に投与することを含む動物の免疫応答を刺激する方法であって、該APC標的化剤が該DC−SIGN特異抗体や該アジュバント以外の抗原に対する免疫応答を刺激し、該動物が予め該アジュバントを接種されない方法を提供するものである。なお、該抗原に対する免疫応答の他に、該抗体及び/又はアジュバントに対する免疫応答もまた発現する可能性がある。
【0019】
別の一態様において、本発明は、抗原提示細胞(APC)の細胞表面マーカーに結合する化合物と、アジュバントと、抗原とを含む免疫刺激剤であって、該化合物、アジュバント及び抗原が結合している免疫刺激剤を提供するものである。ある実施形態において、該アジュバント、抗原及び化合物は、共有結合してよい。各種実施形態において、該アジュバント、抗原及び化合物は、いかなる順序で結合してもよい。
【0020】
ある実施形態において、該抗原は、例えば腫瘍関連抗原や病原体由来抗原あってよい。
【0021】
ある実施形態において、該アジュバントは、例えばミネラル塩や、小分子、サポニン、多糖類、脂質、核酸、タンパク質、ペプチドであってよい。例示的な一実施形態において、該アジュバントは、例えばキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)やカルメット・ゲラン桿菌(BCG)等のタンパク質である。
【0022】
ある実施形態において、該化合物は、APCの細胞表面マーカーに結合する抗体である。かかる抗体は、例えば抗体フラグメントや、内部移行抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体であってよい。該化合物が抗体である場合、該抗原は、重鎖定常領域のC末端に結合する可能性がある。或いは、該抗原は、該抗体の相補性決定領域(CDR)又は該抗体の定常領域に取り込まれ得る。
【0023】
ある実施形態においては、該化合物は、樹状細胞の細胞表面マーカーと結合する。例示的な樹状細胞の表面マーカーはC型レクチン(例えばDC−SIGN)である。DC−SIGNに結合する化合物の例としては、例えばマンノース炭水化物や、フコース炭水化物、植物レクチン、抗生物質、糖、タンパク質、抗体が含まれる。例示的な一実施形態において、DC−SIGNに結合する化合物は、抗体(例えばモノクローナル抗体)である。
【0024】
別の一態様において、本発明は、抗原提示細胞(APC)の細胞表面マーカーに結合する化合物と、アジュバントと、抗原とを含む免疫刺激組成物を提供するものであって、該アジュバントと該抗原の内の少なくとも1種が該化合物に結合するものである。
【0025】
本発明の実施においては、特に明記しない限り、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA及び免疫学の従来の技法を用いることが可能であり、これらは当該技術分野の範囲内である。かかる技法は、文献において完全に説明されている。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual,2nd Ed.,ed.by Sambrook,Fritsch and Maniatis(Cold Spring Harbor Laboratory Press:1989);DNA Cloning,Volumes I and II(D.N.Glover ed.,1985);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait ed.,1984);Mullis et al.米国特許第4,683,195号;Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hames&S.J.Higgins eds.1984);Transcription And Translation(B.D.Hames&S.J.Higgins eds.1984);Culture Of Animal Cells (R.I.Freshney,Alan R.Liss,Inc.,1987);Immobilized Cells And Enzymes(J.Woodward ed.,IRL Press,1985);B.Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);the treatise,Methods In Enzymology(Academic Press,Inc.,N.Y.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(J.H.Miller and M.P.Calos eds.,1987,Cold Spring Harbor Laboratory);Methods In Enzymology,Vols.154 and 155(Wu et al. eds.),Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(Mayer and Walker,eds.,Academic Press,London,1987);Handbook Of Experimental Immunology,Volumes I−IV(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.,1986);Manipulating the Mouse Embryo,(Hogan,B.,Costantini,F.and Lacy,E.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1986)を参照。
【0026】
本発明の他の特徴及び効果は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0027】
添付の特許請求の範囲は、参考として本セクションで援用される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明の前述及び他の特徴及び効果は、添付の図面に関連してなされる以下の例示の実施例の詳細な説明からより完全に理解されるであろう。
【図1A】図1A〜1D。臍帯血移植されたマウスは、TitermaxにおけるKLHによる免疫化又はD1V1−KLHによるDC−SIGN標的免疫化の後、KLHに対する増殖応答を引き起こす可能性がある。図1A:15週齢の4匹の移植マウスに、Titermaxと共に50μgのKLH(半分量を皮下、残り半分を腹腔内)を注射した。2匹の免疫マウス(平均値で示される)及び1匹の非接種マウスをDay12に屠殺し、脾臓細胞を単離した。KLHに応答する増殖を、培養5日後にH−チミジンの取り込みを決定することによってテストした。図1B:2匹のマウスに対して、1回目の免疫化の3週間後に第2免疫化を行った。12日後に脾臓を摘出した。KLHに対する脾細胞の増殖を、H−チミジンの取り込みによって評価した。図1C:6匹の移植マウスを、100μgのD1V1−KLH又は100μgの5G1.1−KLHによって静脈内で免疫化した。更に2匹の移植マウスにも、100μgのKLHとTitermaxとを皮下注射した。9日後(図1C)又は、図1Dにおける14日後(図1D)に脾臓を収集し、H−チミジン取り込みアッセイによってKLHに対する増殖応答を評価した。データは、3〜6回の繰り返した平均±標準偏差を表す。
【図1B】図1A〜1D。臍帯血移植されたマウスは、TitermaxにおけるKLHによる免疫化又はD1V1−KLHによるDC−SIGN標的免疫化の後、KLHに対する増殖応答を引き起こす可能性がある。図1A:15週齢の4匹の移植マウスに、Titermaxと共に50μgのKLH(半分量を皮下、残り半分を腹腔内)を注射した。2匹の免疫マウス(平均値で示される)及び1匹の非接種マウスをDay12に屠殺し、脾臓細胞を単離した。KLHに応答する増殖を、培養5日後にH−チミジンの取り込みを決定することによってテストした。図1B:2匹のマウスに対して、1回目の免疫化の3週間後に第2免疫化を行った。12日後に脾臓を摘出した。KLHに対する脾細胞の増殖を、H−チミジンの取り込みによって評価した。図1C:6匹の移植マウスを、100μgのD1V1−KLH又は100μgの5G1.1−KLHによって静脈内で免疫化した。更に2匹の移植マウスにも、100μgのKLHとTitermaxとを皮下注射した。9日後(図1C)又は、図1Dにおける14日後(図1D)に脾臓を収集し、H−チミジン取り込みアッセイによってKLHに対する増殖応答を評価した。データは、3〜6回の繰り返した平均±標準偏差を表す。
【図1C】図1A〜1D。臍帯血移植されたマウスは、TitermaxにおけるKLHによる免疫化又はD1V1−KLHによるDC−SIGN標的免疫化の後、KLHに対する増殖応答を引き起こす可能性がある。図1A:15週齢の4匹の移植マウスに、Titermaxと共に50μgのKLH(半分量を皮下、残り半分を腹腔内)を注射した。2匹の免疫マウス(平均値で示される)及び1匹の非接種マウスをDay12に屠殺し、脾臓細胞を単離した。KLHに応答する増殖を、培養5日後にH−チミジンの取り込みを決定することによってテストした。図1B:2匹のマウスに対して、1回目の免疫化の3週間後に第2免疫化を行った。12日後に脾臓を摘出した。KLHに対する脾細胞の増殖を、H−チミジンの取り込みによって評価した。図1C:6匹の移植マウスを、100μgのD1V1−KLH又は100μgの5G1.1−KLHによって静脈内で免疫化した。更に2匹の移植マウスにも、100μgのKLHとTitermaxとを皮下注射した。9日後(図1C)又は、図1Dにおける14日後(図1D)に脾臓を収集し、H−チミジン取り込みアッセイによってKLHに対する増殖応答を評価した。データは、3〜6回の繰り返した平均±標準偏差を表す。
【図1D】図1A〜1D。臍帯血移植されたマウスは、TitermaxにおけるKLHによる免疫化又はD1V1−KLHによるDC−SIGN標的免疫化の後、KLHに対する増殖応答を引き起こす可能性がある。図1A:15週齢の4匹の移植マウスに、Titermaxと共に50μgのKLH(半分量を皮下、残り半分を腹腔内)を注射した。2匹の免疫マウス(平均値で示される)及び1匹の非接種マウスをDay12に屠殺し、脾臓細胞を単離した。KLHに応答する増殖を、培養5日後にH−チミジンの取り込みを決定することによってテストした。図1B:2匹のマウスに対して、1回目の免疫化の3週間後に第2免疫化を行った。12日後に脾臓を摘出した。KLHに対する脾細胞の増殖を、H−チミジンの取り込みによって評価した。図1C:6匹の移植マウスを、100μgのD1V1−KLH又は100μgの5G1.1−KLHによって静脈内で免疫化した。更に2匹の移植マウスにも、100μgのKLHとTitermaxとを皮下注射した。9日後(図1C)又は、図1Dにおける14日後(図1D)に脾臓を収集し、H−チミジン取り込みアッセイによってKLHに対する増殖応答を評価した。データは、3〜6回の繰り返した平均±標準偏差を表す。
【図2】CD40抗体によって、DC−SIGN抗体を介してDCを標的とする抗原に対する免疫応答は変化しない。臍帯血移植Rag2−/−γc−/−マウスに、100μgのD1V1−KLHを、90μgの抗ヒトCD40と共に、又はそれを伴わずに静脈内注射した。免疫化の9日後に脾臓を摘出し、各種濃度のKLHで脾細胞を5日間刺激した。脾細胞の増殖を、H−チミジンの取り込みによって評価した。データは、3〜6回の繰り返した平均±標準偏差を表す。
【図3A】図3A〜3C。種々のDC−SIGN抗体(E10−TT)による破傷風トキソイドペプチドの送達も免疫応答を誘発する。図3A:15週齢の臍帯血移植マウスを、Titermaxと共に50μgの破傷風トキソイド(TT)(半分量を皮下、残り半分を腹腔内)で免疫化した。幾匹かのマウスを屠殺し、免疫化の9日後に脾臓を単離するか(図3A)、或いは幾匹かのマウスを2回目の免疫化の後に屠殺し、免疫化の9日後に脾臓を単離した(図3B)。TTに応答する増殖を、培養5日後にH−チミジンの取り込みによって決定した。図3C:5匹のRag2−/−γc−/−マウスの各々に、3nmolのTTと混合した3nmolのE10−TT又は3nmolのE10を皮下注射した。9日後、脾臓を摘出し、E10又はTTで脾細胞を刺激した。4日後、各ウェル内に1μCiH−チミジンを加えた。前記細胞を24時間収集した。値は、3〜6ウェルの平均±標準偏差を表す。
【図3B】図3A〜3C。種々のDC−SIGN抗体(E10−TT)による破傷風トキソイドペプチドの送達も免疫応答を誘発する。図3A:15週齢の臍帯血移植マウスを、Titermaxと共に50μgの破傷風トキソイド(TT)(半分量を皮下、残り半分を腹腔内)で免疫化した。幾匹かのマウスを屠殺し、免疫化の9日後に脾臓を単離するか(図3A)、或いは幾匹かのマウスを2回目の免疫化の後に屠殺し、免疫化の9日後に脾臓を単離した(図3B)。TTに応答する増殖を、培養5日後にH−チミジンの取り込みによって決定した。図3C:5匹のRag2−/−γc−/−マウスの各々に、3nmolのTTと混合した3nmolのE10−TT又は3nmolのE10を皮下注射した。9日後、脾臓を摘出し、E10又はTTで脾細胞を刺激した。4日後、各ウェル内に1μCiH−チミジンを加えた。前記細胞を24時間収集した。値は、3〜6ウェルの平均±標準偏差を表す。
【図3C】図3A〜3C。種々のDC−SIGN抗体(E10−TT)による破傷風トキソイドペプチドの送達も免疫応答を誘発する。図3A:15週齢の臍帯血移植マウスを、Titermaxと共に50μgの破傷風トキソイド(TT)(半分量を皮下、残り半分を腹腔内)で免疫化した。幾匹かのマウスを屠殺し、免疫化の9日後に脾臓を単離するか(図3A)、或いは幾匹かのマウスを2回目の免疫化の後に屠殺し、免疫化の9日後に脾臓を単離した(図3B)。TTに応答する増殖を、培養5日後にH−チミジンの取り込みによって決定した。図3C:5匹のRag2−/−γc−/−マウスの各々に、3nmolのTTと混合した3nmolのE10−TT又は3nmolのE10を皮下注射した。9日後、脾臓を摘出し、E10又はTTで脾細胞を刺激した。4日後、各ウェル内に1μCiH−チミジンを加えた。前記細胞を24時間収集した。値は、3〜6ウェルの平均±標準偏差を表す。
【図4】DC−SIGN抗体によってDCを標的とする抗原は、刺激性免疫応答を誘発するための二量体化を必要としない。TTジペプチドと混合した3.3nmolのscFv−RR−TT又はD1V1scFvのいずれかを、3匹の移植マウスに各々静脈内注射した。1匹のマウスを、Titermaxと共にジペプチドによって皮下で免疫化した。脾臓を9日後に収集し、PHA、ジペプチド又は培地単独で細胞を刺激した。4日後にH−チミジンを加え、翌日細胞を収集して数を決定した。値は、3〜6ウェルの平均±標準偏差を表す。
【図5A】図5A〜5D。RAJI/フルダラビン処理RAJI/iDC/hPBLモデルにおけるD1V−KLHのアジュバント効果。NOD/SCIDマウスに、4百万個のRAJI細胞(図5A、図5C)或いは3百万個のRAJI細胞及び2百万個のフルダラビン処理RAJI細胞(fdRAJI)(図5B、図5D)、30000個の未熟DC、及び3百万個のhPBLを注射した。等モル量のD1V1−KLH(40μg)、対照抗体5G1.1−G2/G4(40μg)又はKLH(10μg)に細胞混合物を皮下注射した。その後、200μgのD1V1−KLH、又は200μgの対照抗体、又は50μgのKLHを使用して、抗体又はKLHを1週間間隔で更に2回投与した。データは、各群の10匹のマウスからの腫瘍容積の平均±標準誤差を表す。スチューデントのt検定によって算出された対照抗体投与群と比較した有意水準(p<0.01)。**対照抗体投与群と比較した高有意水準(p<0.005)。
【図5B】図5A〜5D。RAJI/フルダラビン処理RAJI/iDC/hPBLモデルにおけるD1V−KLHのアジュバント効果。NOD/SCIDマウスに、4百万個のRAJI細胞(図5A、図5C)或いは3百万個のRAJI細胞及び2百万個のフルダラビン処理RAJI細胞(fdRAJI)(図5B、図5D)、30000個の未熟DC、及び3百万個のhPBLを注射した。等モル量のD1V1−KLH(40μg)、対照抗体5G1.1−G2/G4(40μg)又はKLH(10μg)に細胞混合物を皮下注射した。その後、200μgのD1V1−KLH、又は200μgの対照抗体、又は50μgのKLHを使用して、抗体又はKLHを1週間間隔で更に2回投与した。データは、各群の10匹のマウスからの腫瘍容積の平均±標準誤差を表す。スチューデントのt検定によって算出された対照抗体投与群と比較した有意水準(p<0.01)。**対照抗体投与群と比較した高有意水準(p<0.005)。
【図5C】図5A〜5D。RAJI/フルダラビン処理RAJI/iDC/hPBLモデルにおけるD1V−KLHのアジュバント効果。NOD/SCIDマウスに、4百万個のRAJI細胞(図5A、図5C)或いは3百万個のRAJI細胞及び2百万個のフルダラビン処理RAJI細胞(fdRAJI)(図5B、図5D)、30000個の未熟DC、及び3百万個のhPBLを注射した。等モル量のD1V1−KLH(40μg)、対照抗体5G1.1−G2/G4(40μg)又はKLH(10μg)に細胞混合物を皮下注射した。その後、200μgのD1V1−KLH、又は200μgの対照抗体、又は50μgのKLHを使用して、抗体又はKLHを1週間間隔で更に2回投与した。データは、各群の10匹のマウスからの腫瘍容積の平均±標準誤差を表す。スチューデントのt検定によって算出された対照抗体投与群と比較した有意水準(p<0.01)。**対照抗体投与群と比較した高有意水準(p<0.005)。
【図5D】図5A〜5D。RAJI/フルダラビン処理RAJI/iDC/hPBLモデルにおけるD1V−KLHのアジュバント効果。NOD/SCIDマウスに、4百万個のRAJI細胞(図5A、図5C)或いは3百万個のRAJI細胞及び2百万個のフルダラビン処理RAJI細胞(fdRAJI)(図5B、図5D)、30000個の未熟DC、及び3百万個のhPBLを注射した。等モル量のD1V1−KLH(40μg)、対照抗体5G1.1−G2/G4(40μg)又はKLH(10μg)に細胞混合物を皮下注射した。その後、200μgのD1V1−KLH、又は200μgの対照抗体、又は50μgのKLHを使用して、抗体又はKLHを1週間間隔で更に2回投与した。データは、各群の10匹のマウスからの腫瘍容積の平均±標準誤差を表す。スチューデントのt検定によって算出された対照抗体投与群と比較した有意水準(p<0.01)。**対照抗体投与群と比較した高有意水準(p<0.005)。
【発明を実施するための形態】
【0029】
1.定義
本明細書で使用される場合、以下の用語及び成句は、以下に記載される意味を有するものとする。特に定義されない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語及び科学用語は、一般的に当業者に理解されるものと同じ意味を有する。
【0030】
単数形「a」、「an」及び「the」は、特に状況が明確に示されない限り、複数の言及を含む。
【0031】
「含む」及び「含まれる」という用語は、包括的で開かれた意味、即ち更なる要素が含まれ得るという意味で使用される。
【0032】
「含まれる」という用語は、「含まれるが限定されない」という意味で用いられる。「含まれる」と「含まれるが限定されない」は区別なく使用される。
【0033】
「免疫グロブリン」は四量体分子である。天然の免疫グロブリンにおいて、各四量体は同じ2対のポリペプチド鎖から構成され、各対は、1個の「軽」鎖(約25kDa)及び1個の「重」鎖(約50−70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識を担う約100〜110以上のアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能を担う定常領域を規定する。ヒトの軽鎖は、κ軽鎖とλ軽鎖とに分類される。重鎖は、μ、δ、γ、α、εに分類され、それぞれ抗体アイソタイプをIgM、IgD、IgG、IgA、IgEに規定する。軽鎖及び重鎖中の可変領域及び定常領域には、約12以上のアミノ酸の「J」領域が結合し、重鎖も約10以上のアミノ酸の「D」領域を含む。一般的に、Fundamental Immunology Ch.7(Paul,W.,ed.,2nd ed.Raven Press,N.Y.(1989))を参照。IgG、IgA及びIgDアイソタイプは、免疫グロブリン分子に柔軟性を与える約10〜60のアミノ酸のアミノ酸配列である「ヒンジ領域」を有する。各軽鎖/重鎖の対の可変領域は、完全型免疫グロブリンが2個の結合部位を有するように抗体結合部位を形成する。免疫グロブリンは高次構造に組織され得る。IgAは、一般的に2つの四量体の二量体である。IgMは、一般的に5つの四量体の五量体である。
【0034】
免疫グロブリン鎖は、3つの超可変領域(相補性決定領域又はCDRとも呼称する)によって結合された比較的保存されたフレームワーク領域(FR)という同じ一般構造を示す。各対の2つの鎖からのCDRは、フレームワーク領域により整列させられ、特異的エピトープに対する結合を可能にしている。N末端からC末端まで、軽鎖及び重鎖の両方は、領域FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDRS及びFR4を含む。各領域に対するアミノ酸の割当は、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1987 and 1991))又はChothia&Lesk J.Mol.Biol.196:901−917(1987);Chothia et al.Nature 342:878−883(1989)の定義に従う。
【0035】
「抗体」とは、完全型免疫グロブリン又は特異的結合のための完全抗体と競合するその抗原結合部位を意味する。抗原結合部位は、組換えDNA法或いは完全抗体の酵素的開裂又は化学開裂によって生じる。抗原結合部位としては、なかでも、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、dAb及び相補性決定領域(CDR)フラグメント、一本鎖抗体(scFv)、単一領域抗体、キメラ抗体、ミニボディー、二重体、三重体、四重体及びポリペプチドに結合する特異性抗原を与えるのに十分な少なくとも一部の免疫グロブリンを含有するポリペプチドが含まれる。
【0036】
Fabフラグメントは、VL、VH、CL及びCH1領域からなる一価のフラグメントであり;F(ab’)フラグメントは、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって結合した2個のFabフラグメントを含む二価のフラグメントであり;Fdフラグメントは、VH領域とCH1領域とからなり;Fvフラグメントが、抗体の1本のアームのVL領域及びVH領域からなり;dAbフラグメント(Ward et al.,Nature 341:544−546,1989)はVH領域からなる。
【0037】
一本鎖抗体(scFv)は、VL領域及びVH領域が対になって、それらを単一タンパク質鎖として作製することを可能にする合成リンカーを介して一価の分子を形成する抗体である(Bird et al.,Science 242:423−426,1988及びHuston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883,1988)。二重体は、VH領域及びVL領域が単一のポリペプチド鎖に発現する二価抗体又は二重特異性抗体であるが、それは、短すぎて同じ鎖上の2つの領域間に対が形成され得ないリンカーを使用するものであり、それによって前記領域を別の鎖の相補性領域と対になるようにし、2個の抗原結合部位を生成するものである(例えば、Holliger,P.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448,1993及びPoljak,R.J.,et al.,Structure 2:1121−1123,1994を参照)。1つ以上のCDRは、共有結合又は非共有結合のいずれかで分子内に組み込まれ得る。ミニボディーは、2個のscFvモノマーに2つの定常領域が結合する二価抗体又は二重特異性抗体である(例えば、Hudson,P.J. and Sourisu,C.,Nature Medicine 9:129−134(2003)参照)。
【0038】
抗体は1つ以上の結合部位を有し得る。2個以上の結合部位が存在する場合、前記結合部位は互いに同じであるか、若しくは異なっていてよい。例えば、天然の免疫グロブリンは2個の同じ結合部位(例えば二価)を有し、一本鎖抗体又はFabフラグメントは1個又は2個の結合部位を有し得るが、一方で「二重特異性」抗体又は「二官能性」抗体は2個の異なる結合部位を有する。
【0039】
「ヒト抗体」という用語には、ヒト免疫グロブリン配列に由来する1個以上の可変領域及び定常領域を有する全ての抗体が包含される。好ましい実施形態において、可変領域及び定常領域の全ては、ヒト免疫グロブリン配列(完全ヒト抗体)に由来する。これらの抗体は、下記の通り様々な方法で調製され得る。
【0040】
本明細書で用いられる「ヒンジ」又は「ヒンジ領域」という用語は、アミノ酸残基224〜251(Kabat番号付けスキーム)を含む重鎖の領域を意味する。この領域は、遺伝子ヒンジ(例えばKabat番号付けスキームを用いた場合のアミノ酸残基224〜243)並びに構造的に柔軟なアミノ酸残基C末端〜前記遺伝子ヒンジを包含する(例えば、Burton DR,Molecular Genetics of Immunoglobulin,Chapter 1,Calabi,F. and Neuberger,M.S.,eds;Elsevier Science Publishers B.V.(1987)参照)。
【0041】
「キメラ抗体」という用語は、1個の抗体に由来する1個以上の領域と、1個以上の他の抗体に由来する1個以上の領域とを含む抗体をいう。
【0042】
「腫瘍関連抗原」という用語は、好ましくは腫瘍細胞によって提示され、よって腫瘍細胞と非腫瘍細胞との区別を可能にするポリペプチドを意味する。腫瘍関連抗原は、免疫応答の推定標的である腫瘍細胞の内面又は表面上に発現するタンパク質である。それらは、多くの場合変異、欠失、異なる発現量、二次修飾の変化、又は他の発育段階における発現による通常の細胞性対応物とは異なる。前記タンパク質は、好ましくは細胞表面上に発現し、更にMHCクラスI分子によって、腫瘍細胞表面上で処理されたペプチドとして提示される。腫瘍関連抗原の例としては、例えば、CA125、CA19−9、CA15−3、D97、gp100、CD20、CD21、TAG−72、EGF受容体、上皮細胞接着分子(Ep−CAM)、癌胎児性抗原(CEA)、前立腺特異抗原(PSA)、PMSA、CDCP1、CD26、ヘプシン、HGF(肝細胞増殖因子)、Met、CAIX(G250)、EphhB4(エフリン・タイプB受容体4)、EGFR1、EGFR2、PDGF、VEGFR、DPP6、シンデカン1、IGFBP2
(ヒトインスリン様増殖因子結合タンパク質2)、CD3、CD28、CTL4、VEGF、Her2/Neu受容体、チロシナーゼ、MAGE1、MAGE3、MART、BAGE、TRP−1、CA50、CA72−4、MUC1、NSE(ニューロン特異的エノラーゼ)、α−フェトプロテイン(AFP)、SSC(扁平上皮癌抗原)、BRCA−1、BRCA−2、hCGが含まれる。
【0043】
「治療上有効量」という用語は、治療を必要とする被験体への投与の際、かかる治療を行うのに十分なAPC標的化剤、薬物又は他の分子の量を意味する。治療上有効量は、治療される被験体及び病状、被験体の体重及び年齢、病状の重症度、投与方法等に応じて変化するものであって、当業者によって直ちに決定され得る。
【0044】
2.アジュバント効果を増大させるための組成物
例えば本明細書に記載される方法に従って使用され得るアジュバント効果を増大させるためのAPC標的化剤が、本明細書において提供される。かかる薬剤は、APC上の細胞表面タンパク質に結合する化合物に共有結合するアジュバントを含む。かかる薬剤は、更なる成分(例えば抗原)を任意に含んでよい。また、APC標的化剤と薬学的に許容される担体とを含む組成物が提供される。
【0045】
本明細書に記載されるAPC標的化剤は、APCの細胞表面タンパク質に対してアジュバントを標的化させる化合物を含む。例示的な一実施形態において、前記化合物は、APC上の内部移行受容体に対してアジュバントを標的化させる。種々の細胞がAPCとして機能し得る。これらの細胞の際立った特色は、クラスIIMHC分子を発現し、共刺激信号を送達する能力を有することである。3種の細胞型が専門的なAPCとして分類される:樹状細胞、マクロファージ、Bリンパ球。例示的な一実施形態において、APC細胞表面タンパク質に特異的に結合する化合物としては、抗体(例えば抗MHCII抗体)や以下に記載される細胞表面マーカーに対する抗体がある。
【0046】
樹状細胞に特異的な細胞表面マーカーとしては、例えば、CD83、CD205/DEC−205、CD197/CCR7、CD209/DC−SIGNが含まれる。かかるDC細胞表面特異的マーカーに特異的に結合する化合物を使用して、DCに対してアジュバントを標的化させることができる。例示的な一実施形態においては、化合物を使用して、DC表面上の内部移行受容体(例えば、DEC−205、DC−SIGN、CCR7受容体)にアジュバントを標的化させることができる。DC細胞表面マーカーに結合し得る化合物としては、例えば炭水化物や、レクチン、抗生物質、糖、タンパク質、ペプチド、抗体がある。
【0047】
ある実施形態においては、化合物をDC−SIGNに標的化してよい。DC−SIGNは、T細胞上のICAM受容体に結合し、樹状細胞へのHIVの付着を容易にするC型レクチンである(例えば、米国特許公開第2005/0118168号参照)。DC−SIGNと結合し得る化合物としては、例えば、マンノース炭水化物(例えばマンナン及びD−マンノース;フコース炭水化物(例えばL−フコース);植物レクチン(例えばコンカナバリンA);抗生物質(例えばプラディマイシンA);糖(例えばN−アセチル−D−グルコサミン及びガラクトース);並びに適切なペプチド模倣化合物や薬物小分子が挙げられ、それらは例えばファージディスプレイ法を用いて同定され得る。更に、DC−SIGN結合活性を保持するタンパク質(例えばgp120)及びそれらの類似体又はフラグメントは、DC−SIGN結合部分及びそのフラグメントを含む単離ICAM受容体やその類似体等と同様に使用され得る。
【0048】
特定の実施形態において、化合物は、DC特異的細胞表面タンパク質(例えば、CD205/DEC−205、CD197/CCR7、CD209/DC−SIGN)に対して標的化される抗体であってよい。更に本明細書で概説されるように、かかる抗体は、商業的に購入され得るか、若しくは標準的技法を用いて作製され得る。例示的な一実施形態において、APCに対してアジュバントを標的化させる化合物は、例えばAZN−D1やAZN−D2等の抗DC−SIGN抗体である(例えば、米国特許公開第2005/0118168号参照)。例示的な一実施形態において、化合物は、DCの表面上の内部移行受容体に対して標的化される抗体(例えば、DEC−205や、DC−SIGN、CCR7に結合する抗体)であってよい。
【0049】
Bリンパ球に特異的な細胞表面マーカーとしては、例えば、CD19、CD20、CD21、CD22、CD32、CD79α,β、CD83、CD138、CD139、CD179a,b、CD180が含まれる。かかるBリンパ球特異的細胞表面マーカーに特異的に結合する化合物を使用して、Bリンパ球に対してアジュバントを標的化させることができる。Bリンパ球細胞表面マーカーに結合し得る化合物は、例えばタンパク質や、ペプチド、抗体であってよい。例示的な一実施形態において、化合物は、例えばCd19、CD20、CD21、CD22、CD32又はCD79に結合するタンパク質、ペプチド又は抗体等、Bリンパ球の表面上の内部移行受容体に対して標的化される抗体であってよい。
【0050】
マクロファージに特異的な細胞表面マーカーとしては、例えばCD64や、CD169、CD170、CD206が含まれる。かかるマクロファージ特異的細胞表面マーカーに特異的に結合する化合物を使用して、マクロファージに対してアジュバントを標的化させることができる。マクロファージ細胞表面マーカーに結合し得る化合物は、例えばタンパク質や、ペプチド、抗体であってよい。例示的な実施形態において、化合物は、例えば、CD64又はCD206に結合するタンパク質、ペプチド、抗体等、マクロファージの表面上の内部移行受容体を標的とする抗体であってよい。
【0051】
APCに対するアジュバントの標的化に使用される抗体としては、IgG、IgM、IgE、IgA又はIgD分子であってよい。かかる抗体は、例えばIgG(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4等)や、IgM、IgE、IgA、IgD等の任意のタイプの抗体アイソタイプに由来する定常領域又はその一部、又はG2/G4ハイブリッド定常領域等のハイブリッド定常領域又はその一部を含むことが可能である(例えば、Burton DR and Woof JM,Adv.Immun.51:1−18(1992);Canfield SM and Morrison SL,J.Exp.Med.173:1483−1491(1991);Mueller JP,et al.,Mol.Immunol.34(6):441−452(1997)参照)。
【0052】
ある実施形態において、キメラ抗体、ヒト化抗体又は霊長類化(CDR移植)抗体、抗体フラグメント並びにキメラ抗体フラグメント又はCDR移植抗体フラグメントは、異なる種に由来する部位を含んでおり、APCに対してアジュバントを標的化させるために使用され得る。例示的な抗体フラグメントとしては、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、ミニボディー、又は重鎖定常領域及び/又は軽鎖定常領域の少なくとも一部と融合したFv、scFv、二重体、三重体が含まれる。これらの抗体の各種部分は、従来の技法によって互いに化学的に結合され得るか、若しくは遺伝子工学法を使用して連続したタンパク質として調製され得る。例えば、キメラ鎖又はヒト化鎖をコードする核酸は、連続したタンパク質を作製するために発現させ得る。例えば、Cabilly et al.、米国特許第4,816,567号;Cabilly et al.、欧州特許第0,125,023号;Boss et al.、米国特許第4,816,397号;Boss et al.、欧州特許第0,120,694号;Neuberger,M.S.et al.,WO86/01533;Neuberger,M.S.et al.、欧州特許第0,194,276B1号;Winter、米国特許第5,225,539号;及びWinter、欧州特許第0,239,400B1号を参照。また、霊長類化抗体に関してはNewman,R.et al.,BioTechnology 10:1455−1460(1992)を参照。一本鎖抗体に関しては、例えば、Ladner et al.、米国特許第4,946,778号;及びBird,R.E.et al.,Science 242:423−426(1988)を参照。
【0053】
更に、キメラ抗体、ヒト化抗体、霊長類化抗体又は一本鎖抗体のフラグメント等の抗体の機能性フラグメントを使用して、APCに対してアジュバントを標的化させることができる。機能性抗体フラグメントとは、それらが誘導される完全長抗体の少なくとも1つの結合機能及び/又は調節機能を保持するフラグメントをいう。好ましい機能性フラグメントは、相当する完全長抗体の抗原結合機能を保持する。
【0054】
ヒト化抗体は、重鎖及び軽鎖のフレームワーク領域及び定常領域内の特定のアミノ酸が、ヒトにおける免疫応答を回避する又は無効にするように変異したヒト以外の種に由来する抗体である。或いは、ヒト化抗体は、ヒト抗体に由来する定常領域をヒト以外の種の可変領域に融合させることによって作製され得る。ヒト化抗体作製法の例は、米国特許第6,054,297号、同第5,886,152号及び同第5,877,293号に見出され得る。ヒト化抗体は、場合により少なくとも1つの部分がヒト由来である異なる由来の免疫グロブリン部分を含んでよい。従って、所望のエピトープに対する結合特異性を有するヒト化免疫グロブリン(非ヒト由来(例えば齧歯類)の抗原結合領域及びヒト由来の免疫グロブリンの少なくとも一部(例えば、ヒトフレームワーク領域、ヒト定常領域又はその一部)を含む前記免疫グロブリン)は、APCに対してアジュバントを標的化させるために使用され得る。例えば、ヒト化抗体は、マウス等の必要な特異性を有する非ヒト由来の免疫グロブリンに由来する部分と、ヒト由来の免疫グロブリン配列(例えばキメラ免疫グロブリン)に由来する部分とを含むことが可能であり、それらは従来の技法によって化学的に結合(例えば合成)され、又は遺伝子工学法を用いて連続したポリペプチドとして調製される(例えば、キメラ抗体のタンパク質部位をコードするDNAが発現して、連続したポリペプチド鎖を産生し得る)。
【0055】
ある実施形態において、APC標的化化合物として有用な抗体は、内部移行抗体(例えば、その抗体が結合した細胞が取り込む抗体)であってよい。
【0056】
また、本明細書に記載されるAPC標的化剤はアジュバントをも含む。前記アジュバントは、APC細胞表面分子に特異的に結合する化合物に結合(例えば共有結合)し、それによってAPCに対してアジュバントを標的化させ、アジュバント効果を増大させる。多種多様なアジュバントが、本明細書に記載される薬剤に応じて使用され得る。例示的な実施形態においては、ヒトへの投与に適切なアジュバントを選択してよい。本明細書に記載される前記方法及び組成物に応じて使用され得るアジュバントの例としては、ミネラル塩、サポニン、多糖類、脂質、リポ多糖類(エンドトキシン)、核酸、タンパク質が含まれるが、これらに限定されない。
【0057】
ある実施形態において、アジュバントはミネラル塩であってよい。ミネラル塩のアジュバントの例としては、アルミニウム塩、リン酸アルミニウム(例えば、HCI Biosector Elsenbakken 23,DK−3600 Fredrikssund(デンマーク))、リン酸カルシウム(例えば、Superfos Biosector Als Frydenlundsvej 30,2950 Vedback、デンマーク)、水酸化アルミニウム(Alhydrogel)、γインスリンと結合する水酸化アルミニウム(Algammulin)、非晶質アルミニウムヒドロキシホスフェート(Adju―Phos)、デオキシコール酸−水酸化アルミニウム錯体(DOC/Alum)が含まれるが、これらに限定されない。
【0058】
別の実施形態において、アジュバントは、イミキモド等の合成イミダゾキノリン(S−26308,R−837)(Harrison et al.,Vaccine 19:1820−1826(2001))又はレジキモド(S−28463,R−848)(Vasilakos et al.,Cellular Immunology 204:64−74(2000))であってよい。
【0059】
ある実施形態において、アジュバントはサポニンであってよい。サポニンは、天然及び合成のグリコシドトリテルペノイド化合物並びにその薬学的に許容される塩、誘導体、模倣体(例えばイソツカレソール及びその誘導体)及び/又はその生物学的に活性なフラグメントを包含し、それらはアジュバント活性を有する。例示的なサポニンとしては、例えば、キラヤサポニン、QS−7、QS−17、QS−18、QS−21、Quil−A(例えば米国特許第5,057,540号参照)、GSK−1(高麗人参サポニン)が含まれる。
【0060】
ある実施形態において、アジュバントは核酸であってよい。核酸のアジュバントの例としては、CpG、ポリアデニル酸/ポリウリジル酸及びロキソリビン(7−アリル−8−オキソグアノシン)(例えば、米国特許第6,406,705号参照)が含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
他の実施形態において、アジュバントは、タンパク質又はタンパク質フラグメントであってよい。タンパク質のアジュバントの例としては、ヘモシアニン、ヘモエリトリン、血清タンパク質、サイトカイン、マクロファージ炎症タンパク質、細菌性抗原、酵母抗原、哺乳動物ポリペプチド、超抗原が含まれる。
【0062】
一例示的実施形態において、アジュバントは、ヘモシアニン及びヘモエリトリンであってよい。例示的なヘモシアニンは、他の軟体動物及び節足動物のヘモシアニン及びヘモエリトリンを用いてもよいが、キーホールリンペット(KLH)に由来する。
【0063】
別の一例示的実施形態において、タンパク質のアジュバントは、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)であってよい。
【0064】
別の一実施形態において、タンパク質のアジュバントは、血清タンパク質(例えば補体因子C3d)であってよい。C3dは、16個のアミノ酸のペプチド(例えば、Fearon et al.,1998,Semin.Immunol.10:355−61;Nagar et al.,1998,Science;280(5367):1277−81,Ross et al.2000,Nature Immunol.,Vol.1(2)参照)であり、これは市販されている(例えば、Sigma Chemical Company Cat.C1547)。
【0065】
他の実施形態において、タンパク質のアジュバントはサイトカインであってよい。本発明の組成物において使用され得るサイトカインの例としては、インターフェロン(例えばインターフェロン−γ)、インターロイキン(例えば、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−4(IL−4)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−7(IL−7)、インターロイキン−12(IL−12)、インターロイキン−15(IL−15))、コロニー刺激因子(例えばマクロファージコロニー刺激因子(M−CSF));G−CSF、GM−CSF、腫瘍壊死因子(TNF)、IL−1及びMIP−3aが含まれるが、これらに限定されない。
【0066】
ある実施形態において、タンパク質のアジュバントは、マクロファージ炎症タンパク質(MIP)又はそのフラグメントであってよい。MIPは、刺激(例えばグラム陰性菌、リポ多糖類及びコンカナバリンA)に応答して、特定の哺乳類細胞(例えばマクロファージやリンパ球)によって産生するタンパク質である。例示的なMIPとしては、マクロファージ炎症タンパク質3(MIP−3)(Genbank Accession No.P55773)がある。
【0067】
別の実施形態において、タンパク質のアジュバントは、細菌性抗原や酵母抗原であってよい。適切な細菌性抗原又は酵母抗原の例としては、例えば、ムラミルペプチド(例えば、Immther(登録商標)、theramide(MDP誘導体)、DTP−N−GDP、GMDP(GERBUアジュバント)、MPC−026、MTP−PE、ムラメチド及びムラパルミチン);MPL誘導体(例えば、MPLA、MPL−SE、3D−MLA、SBAS−2);マンナン、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノル−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(ノル−MDP)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)が含まれる。かかる薬剤は市販されており、例えば、MPL−AはICN Chemical Company(Cat#150012)から、Immther(登録商標)はDor Pharma Inc.から入手され得る。
【0068】
他の実施形態において、タンパク質のアジュバントは哺乳類ペプチドであってよい。アジュバントとして使用され得る哺乳類ペプチドの例としては、例えば、黒色腫ペプチド946、好中球化学誘引ペプチド、エラスチン反復ペプチドが含まれる。
【0069】
ある実施形態において、アジュバントは超抗原であってよい。超抗原は、細胞内腫瘍抗原等の細胞内抗原に対する免疫応答を生じさせる又は増強させるために特に有用であり得る。超抗原は、抗原処理の必要なしに、ペプチド抗原よりも大きな割合のTリンパ球を刺激する細菌性産物である(Mooney et. al.,(1994),Mol.Immunol.31:675−681)。超抗原としては、ブドウ球菌エキソタンパク質(例えば、黄色ブドウ球菌及び表皮ブドウ球菌由来のα、β、γ及びδエンテロトキシン)、α、β、γ及びδ大腸菌エキソトキシン、細菌(例えばウェルシュ菌や化膿連鎖球菌)由来の他の膜タンパク質及び毒素が含まれる。
【0070】
他の実施形態において、アジュバントは多糖類であってよい。例えば肺炎球菌多糖類アジュバント等の各種多糖類アジュバントも使用され得る(例えば、Yin et al.,(1989)J.Biological Response Modifiers 8:190−205参照)。また、多糖類のポリアミンの変種(例えば、キチン及びキトサン並びに、脱アセチル化キチン)も使用され得る。
【0071】
他の実施形態において、アジュバントはリポ多糖類(エンドトキシン)であってよい。この種類のアジュバントは、動物において使用され得るリピドAや、動物及びヒトにおいて使用され得る無毒化エンドトキシンによって例示される。無毒化及び精製されたエンドトキシン並びにそれらの組み合わせは、米国特許第4,866,034号;同第4,435,386号;同第4,505,899号;同第4,436,727号;同第4,436,728号;同第4,505,900号に記載されている。
【0072】
別の一実施形態において、アジュバントは、グラム陰性細胞に由来するテイコ酸であってよい。これらには、リポテイコ酸(LTA)、リビトールテイコ酸(RTA)、グリセロールテイコ酸(GTA)が含まれる。また、それらの合成対応物の活性型も使用され得る(Takada et al.,(1995)Infection and Immunity 63:57−65)。
【0073】
トレハロースジミコレートの有無にかかわらず、BCG及びBCG細胞壁骨格(CWS)もまたアジュバントとして使用され得る。トレハロースジミコレート酸自体を使用してよい。トレハロースジミコレートは、米国特許第4,579,945号に記載のように調製され得る。
【0074】
本明細書において記載されるアジュバントは、市販されている、又は当該技術分野において周知の従来の方法を用いて得られる。
【0075】
当業者に既知の種々の方法によって、APC細胞表面分子に結合する化合物にアジュバントを共有結合させることができる。例えば、化学的リンカー、ペプチドリンカー又はオリゴマーリンカーを使用して、APC標的化化合物にアジュバントを結合させることができる。例示的な一実施形態において、APC標的化剤は、APC細胞表面分子に向けられる抗体とアジュバントとを含む。かかる実施形態において、好ましくは、抗体の抗原結合活性に影響を及ぼさない方法で抗体にアジュバントを結合させる。例えば、化学的リンカー、ペプチドリンカー、オリゴマーリンカー又は組換え法を使用して、重鎖及び/又は軽鎖の定常領域のC末端にアジュバントを結合させることができる。例示的な実施形態において、抗体に結合させるアジュバントはタンパク質アジュバントであってよい。かかる実施形態においては、ペプチドリンカー又は化学的リンカーによって、重鎖及び/又は軽鎖の定常領域のC末端にアジュバントを結合させることができる。また、組換え法を使用して、抗体の重鎖及び/又は軽鎖の定常領域のC末端にタンパク質アジュバントを結合させることができ、例えば、アジュバントをコードする核酸を、抗体の重鎖又は軽鎖をコードする核酸及び融合物として発現するアジュバント/抗体分子と適切に結合させることができる。
【0076】
特定の実施形態においては、切断可能なペプチドリンカーによって、抗体の重鎖又は軽鎖の定常領域のC末端にアジュバントを結合させることができる。ペプチドリンカーは、例えば2、3、4、5個以上の小さなアミノ酸残基(例えばグリシンやセリン)を含んでよい。更に、リンカーは、ポリペプチドのN末端の近く又は直接隣接して位置するプロテアソーム切断を引き起こす1個以上のアミノ酸(典型的にはリジンやアルギニン)を含んでよい。例示的なリンカーとしては、例えば、配列GGX(配列番号1)、GGGX(配列番号2)、GGGGX(配列番号3)、GGGSX(配列番号4)又はGGGSGGGSX(配列番号5)を有するペプチドが挙げられ、ここでXはリジン又はアルギニンであり、nは1〜5である。
【0077】
ある実施形態において、APC標的化化合物に対してアジュバントを結合させるためにアジュバントをリポソーム担体内にカプセル化することは望ましい可能性がある。例えば、アジュバントがミネラル塩等の小分子である場合、かかる技法は望ましい可能性がある。
【0078】
特定の実施形態においては、APC標的化化合物に2種類以上の異なるアジュバントを共有結合してよい。2つ以上のアジュバントの組み合わせを使用する場合、アジュバントの種類は同じであっても異なってもよい。例えば、2種の異なるタンパク質アジュバント、2種の異なるオリゴヌクレオチドアジュバント、2種の異なる多糖類アジュバント、タンパク質アジュバント及びオリゴヌクレオチドアジュバント、タンパク質アジュバント及び多糖類アジュバント等を使用することは望ましい可能性がある。
【0079】
特定の実施形態において、APC標的化剤は、更なる成分を更に含むことができる。例示的な一実施形態において、APC標的化剤は、APC標的化化合物に共有結合するアジュバントと抗原とを含む。前記アジュバントはAPC標的化化合物に共有結合し、前記抗原は、APC標的化化合物又はアジュバントのいずれかに共有結合してよい。例示的な一実施形態において、前記抗原は前記アジュバントと異なる。
【0080】
抗原は、化学的リンカー、ペプチドリンカー、オリゴマーリンカー又はアジュバントをAPC標的化担体に結合するための上記の組換え法を使用して、APC標的化化合物に(例えば、APC標的化化合物又はアジュバントに直接)結合させることができる。更に、ペプチド抗原は、抗体APC標的化化合物内に、前記抗体の領域(例えばCDR領域や定常領域)内に前記抗原のアミノ酸配列を導入することによって組み込まれ得る(例えば、米国特許公開第2004/0253242号参照)。例示的な一実施形態において、ペプチド抗原は、抗体のヒンジ領域の中又は近くに組み込まれる。抗原配列は、ヒンジ領域のN末端と重鎖の上流領域との間の結合部、又はヒンジ領域のC末端と重鎖の下流領域との間の結合部で、ヒンジ領域自体に組み込まれ得る。抗原配列には、プロテアソーム切断部位が場合により側面に位置してよい。抗原配列は、抗体内にペプチドを挿入することによって抗体分子に組み込まれ得る(例えば、アミノ酸配列が抗体の配列に付加される)。或いは、抗原配列は、前記導入配列と抗体配列の一部を置換することによって抗体内に組み込まれ得る。置換によってアミノ酸配列を組み込む場合、導入されるアミノ酸配列の長さは、置換される抗体配列と同じサイズ、より大きい又はより小さくてよい(例えば、組み込まれる10個のアミノ酸の配列によって、長さが5、10又は15個のアミノ酸である抗体分子上の配列の領域を置換することができる)。例示的な一実施形態において、アミノ酸配列は、抗体分子の全体のサイズが維持されるように、置換される抗体配列の領域と同じ長さである。抗原配列は、組み込まれる配列と高いアミノ酸配列同一性を有する領域で抗体内に組み込まれ得る。
【0081】
APC標的化剤に含まれる抗原は、免疫応答を刺激することが望まれる任意の抗原であってよい。例えば抗原は、被験体に対してAPC標的化剤の投与を行うことで前記抗原に対する免疫応答を生じさせるように、病原体又は腫瘍細胞に由来するものであってよい。例示的な一実施形態において、抗原は、腫瘍関連抗原又は病原体関連抗原であってよい。
【0082】
例示的な腫瘍関連抗原としては、以下のものが含まれる:黒色腫と関連するgp100、チロシナーゼ、MAGE−1、MAGE−3、MART、BAGE、TRP−1;胃癌と関連するCEA(癌胎児性抗原)、CA19−9、CA50、CA72−4;大腸癌と関連するCEA、CA19−9、Muc−1;膵臓癌と関連するCA19−9、Ca−50、CEA;小細胞肺癌と関連するCEA、NSE(ニューロン特異的エノラーゼ)、EGF受容体;肺癌と関連するCEA;肝臓癌と関連するα−フェトプロテイン(AFP);前立腺癌と関連するPSA、PMSA、CDCP1、CD26、ヘプシン、HGF(肝細胞増殖因子)、Met、CAIX(G250)、EphhB4(エフリン・タイプB受容体4)、EGFR1、EGFR2、PDGF、VEGFR、DPP6、シンデカン1、IGFBP2(ヒトインスリン様増殖因子結合タンパク質2)、CD3、CD28、CTL4、VEGF;胆嚢癌と関連するCA19−9;扁平上皮癌と関連するSSC(扁平上皮癌抗原);乳癌と関連するCEA CA15−3、CEA、BRCA−1、BRCA−2、Muc−1及びHer2/Neu受容体;精巣癌と関連するAFP、hCG;卵巣癌と関連するCA−125、CEA、CA15−3、AFP及びTAG−72;B細胞リンパ腫と関連するCD20、CD21。
【0083】
腫瘍関連抗原は実験的に同定され得る又はデータベースから選択され得る。癌細胞によって発現又はアップレギュレートされる分子を同定するデータベースとしては、例えば、NCI60マイクロアレイプロジェクト(例えば、Ross et al.,Nature Genetics 24:227−34(2000);ワールドワイドウェブ(genome−www.stanford.edu/nci60/)参照)、癌分類法(例えば、A.Su et al.,Cancer Research 61:7388−7393(2001);ワールドワイドウェブ(gnf.org/cancer/epican)参照)、リンパ腫/白血病分子プロファイリングプロジェクト(例えば、Alizadeh et al.,Nature 403:503−11(2000);ワールドワイドウェブ(llmpp.nih.gov/lymphoma/)参照)が含まれる。癌細胞によって発現する又はアップレギュレートされる分子の同定に有用な実験方法としては、例えば、マイクロアレイ実験、定量的PCR、FACS、ノーザン分析が含まれる。
【0084】
ある実施形態において、本発明は、APC標的化剤と遊離抗原とを含む組成物を提供するものである。例えば、組成物は、APC標的化化合物に結合しない抗原と共に混合されるAPC標的化化合物に共有結合するアジュバント及び抗原を有するAPC標的化剤を含んでよい。例示的な一実施形態において、APC標的化化合物に結合する抗原と遊離抗原とは同じものである。前記抗原は、単一の抗原或いは抗原の混合物であってよく、例えば、同じタンパク質に由来する種々のペプチド、異なるタンパク質に由来するペプチド、他の抗原分子の混合物が含まれる。
【0085】
他の実施形態において、抗原は、例えば植物や、バクテリア、原生動物、寄生虫又はウィルス等、病原体と関連した抗原であってよい。かかる抗原は、ペプチド、糖タンパク質又は多糖類であり得る。多種多様な適切な病原体抗原の具体例は、例えば米国特許公開第2006/0171917号に見出され得る。
【0086】
ある実施形態において、APC標的化剤は、KLHと錯体を形成する抗−DC−SIGN抗体を含む2種成分剤ではない。ある実施形態において、APC標的化剤はマンナンコーティングリポソームではない。ある実施形態において、APC標的化剤は、脂質でもリポソームでもないアジュバントを含む。ある実施形態において、APC標的化剤は、核酸でも核酸ワクチンでもない抗原を含む。ある実施形態において、APC標的化剤は、APC細胞表面分子に結合する抗体を含むものであって、前記抗体が、抗体の相補性決定領域(CDR)又は定常領域に組み込まれた抗原やアジュバントを含まないものである。
【0087】
また、本発明の範囲内には、タンパク質系APC標的化剤をコードする核酸、APC標的化剤をコードする核酸を含む発現ベクター、及びAPC標的化剤を作製するための発現ベクターを含む宿主細胞が包含される。
【0088】
3.アジュバント効果を増強させる方法
本発明は、抗原提示細胞(APC)に対してアジュバントを標的化させることによってアジュバントの効果を増強させる方法及び組成物を提供するものである。前記方法は、APC上の細胞表面タンパク質と結合する化合物に結合するアジュバントを含む薬剤を利用する。ある実施形態において、前記方法は、APC標的化化合物に結合するアジュバントと抗原とを含むAPC標的化剤を利用することができる。
【0089】
前記方法は、研究目的並びに治療目的を含むアジュバント効果が望まれるいずれの状況においてもアジュバントの効果を増強させるために使用され得る。例えば、アジュバントは、一般的に、前記アジュバントと共に投与される所望の抗原に対する免疫応答を増強させるために抗体産生と共に使用される。アジュバントは、一般的に、ワクチンの抗原成分に対する免疫応答を刺激するためにワクチンと共に使用される。
【0090】
例示的な実施形態において、本発明は、免疫応答の刺激及び/又は増強が望まれる被験体(例えば、病原体感染、癌又は他の病状に罹患している個体)を治療する方法を提供する。前記方法は、本明細書に記載される治療上有効量の1種以上のAPC標的化剤を前記個体に投与することを含む。これらの方法は、特に動物の、より詳しくはヒトの治療的処置及び予防的処置を目的とする。
【0091】
ある実施形態において、APC標的化剤は、例えば抗感染剤等(例えば、抗生物質化合物、抗ウィルス性化合物及び/又は抗真菌性化合物等)の1種以上の他の治療剤との併用療法の一部として投与され得る。例えば、例示的な抗生物質としては、サルファ剤(例えばサルファニルアミド)、葉酸類似体(例えばトリメトプリム)、β−ラクタム(例えばペニシリン、セファロスポリン)、アミノグリコシド(例えばストレプトマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ゲンタマイシン)、テトラサイクリン(例えばクロロテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、ドキシサイクリン)、マクロライド(例えばエリスロマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン)、リンコサミド(例えばクリンダマイシン)、ストレプトグラミン(例えばキヌプリスチン及びダルフォプリスチン)、フルオロキノロン(例えばシプロフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン)、ポリペプチド(例えばポリミキシン)、リファンピン、ムピロシン、シクロセリン、アミノサイクリトール(例えばスペクチノマイシン)、糖ペプチド(例えばバンコマイシン)、オキサゾリジノン(例えばリネゾリド)が含まれる。例示的な抗ウィルス剤として、例えば、ビダラビン、アシクロビル、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、ヌクレオシド−類似体逆転写酵素阻害剤(例えばAZT、ddI、ddC、D4T、3TC)、非核酸系逆転写酵素阻害剤(例えばネビラピン、デラビルジン)、プロテアーゼ阻害剤(例えばサキナビル、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビル)、リバビリン、アマンタジン、リマンタジン、リレンザ、タミフル、プレコナリル及びインターフェロンが含まれる。例示的な抗真菌薬としては、例えば、ポリエン抗真菌薬(例えばアンフォテリシン及びナイスタチン)、イミダゾール抗真菌薬(ケトコナゾール及びミコナゾール)、トリアゾール抗真菌薬(例えばフルコナゾール及びイトラコナゾール)、フルシトシン、グリセオフルビン、テルビナフィンが含まれる。
【0092】
例示的な一実施形態において、本発明は、被験体のインフルエンザの治療又は予防のため若しくはインフルエンザと関連した症状の治療又は軽減のための免疫応答を刺激する方法を提供する。前記方法は、本明細書に記載のように治療上有効量のAPC標的化剤を投与することを含んでよい。本明細書において提供される方法に従って治療され得る例示的なインフルエンザ感染としては、例えば、A型インフルエンザ、B型インフルエンザ、C型インフルエンザが含まれる。例示的な一実施形態において、前記インフルエンザとしては、A型インフルエンザ(例えば、A/PR78/34又はA/HK/8/68、若しくはH1N1、H2N2、H3N2、H5N1、H9N2、H2N1、H4N6、H6N2、H7N2、H7N3、H4N8、H5N2、H2N3、H11N9、H3N8、H1N2、H11N2、H11N9、H7N7、H2N3,H6N1、H13N6、H7N1,H11N1、H7N2及びH5N3等)がある。各種実施形態において、APC標的化剤は、被験体の感染と実質的に同時に又はその後に投与され得る(即ち治療上の処置)。他の実施形態において、APC標的化剤は、治療上の有益性(例えば、インフルエンザ感染の1つ以上の症状又は合併症、ウィルス力価、ウィルス複製、又は1種以上のインフルエンザ菌株のウィルスタンパク質量の減少又は低下)を提供するものである。低減又は緩解させ得るインフルエンザ感染の症状又は合併症としては、例えば、悪寒、発熱、咳嗽、咽頭痛、鼻閉、副鼻腔うっ血、鼻の感染症、副鼻腔感染症、体の痛み、頭痛、疲労、肺炎、気管支炎、耳部感染、耳痛又は死亡が含まれる。更に別の実施形態において、治療上の有益性としては、インフルエンザ感染からの被験体の回復の促進がある。更に他の実施形態において、APC標的化剤は、抗ウィルス剤或いはインフルエンザ感染と関連した1種以上の症状又は合併症(例えば、悪寒、発熱、咳嗽、咽頭痛、鼻閉、体の痛み、頭痛、疲労、肺炎、気管支炎、副鼻腔感染症又は耳部感染)を阻害する1種以上の薬剤との併用療法の一部として投与され得る。一実施形態において、インフルエンザの治療又は予防に有用なAPC標的化剤は、APC標的化化合物に共有結合するアジュバントを含む。別の一実施形態において、インフルエンザの治療に有用なAPC標的化剤は、アジュバントとそれに共有結合したインフルエンザ抗原とを有するAPC標的化化合物を含む。
【0093】
ある実施形態においては、腫瘍増殖の阻害又は抑制方法及び癌を罹患する個体の治療方法が提供される。前記方法は、本明細書に記載のような治療上有効量の1種以上のAPC標的化剤を前記個体に投与することを含む。ある実施形態において、APC標的化剤は、APC標的化化合物に共有結合するアジュバントを含んでよい。他の実施形態において、APC標的化剤は、アジュバントとそれに共有結合する腫瘍関連抗原とのAPC標的化錯体を含んでよい。これらの方法は、特に動物、より詳しくはヒトの治療的処置及び予防的処置を目的とする。
【0094】
APC標的化剤は、癌(腫瘍)(大腸癌、乳癌、中皮腫、前立腺癌、膀胱癌、頭頸部の扁平上皮癌(HNSCC)、カポシ肉腫、神経膠芽細胞腫、神経膠星状細胞腫、リンパ腫、肺癌、黒色腫、腎癌、白血病等が含まれるがこれらに限定されない)の治療又は予防に有用である可能性がある。
【0095】
ある実施形態において、1種以上のAPC標的化剤は、一緒に(同時に)又は異なる時点で(逐次的に)投与することが可能である。APC標的化剤は、単独で、或いは増殖性疾患(例えば腫瘍)の治療又は予防のための他の従来の抗癌治療法と併用して使用され得る。例えば、かかる方法は、予防的な癌予防、術後の癌の再発及び転移の予防に、及び他の従来の癌療法のアジュバントとして用いられ得る。本発明は、本発明の1種以上のAPC標的化剤を用いることによって、従来の癌療法(例えば、化学療法、放射線療法、光線療法、免疫療法、手術)の有効性を増大させ得ることを認めるものである。
【0096】
多様な従来の化合物は、抗腫瘍活性を有することが示されている。これらの化合物は、充実性腫瘍の縮小、転移及び更なる成長の予防、若しくは白血病又は骨髄悪性腫瘍における悪性細胞の数の減少のための化学療法における医薬品として使用されてきた。化学療法は、様々な種類の悪性腫瘍の治療に効果的であるが、多くの抗腫瘍性化合物は、望ましくない副作用を誘起する。二種以上の異なる治療を併用する場合、その治療は相乗作用的に働き、その治療の各々薬剤の投与量の減少を可能にし、それによってより高投与量の各化合物によって生じる有害な副作用を減少させることが明らかである。他の例において、治療が無効な悪性腫瘍は、2種以上の異なる治療の併用療法に応答することができる。
【0097】
抗腫瘍療法と併用され得る医薬品化合物としては、単なる例示として、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、アスパラギナーゼ、bcg、ビカルタミド、ブレオマイシン、ブセレリン、ブスルファン、カンプトセシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロドロネート、コルヒチン、シクロホスファミド、シプロテロン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ジエネストロール、ジエチルスチルベストロール、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エストラジオール、エストラムスチン、エトポシド、エクセメスタン、フィルグラスチム、フルダラビン、フルドロコルチゾン、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、フルタミド、ゲムシタビン、ゲニステイン、ゴセレリン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、インターフェロン、イリノテカン、レトロゾール、ロイコボリン、ロイプロリド、レバミゾール、ロムスチン、メクロレタミン、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ニルタミド、ノコダゾール、オクトレオチド、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロン酸、ペントスタチン、プリカマイシン、ポルフィマー、プロカルバジン、ラルチトレキセド、リツキシマブ、ストレプトゾシン、スラミン、タモキシフェン、テモゾロマイド、テニポシド、テストステロン、チオグアニン、チオテパ、二塩化チタノセン、トポテカン、トラスツズマブ、トレチノイン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン及びビノレルビンが含まれる。
【0098】
これらの化学療法的抗腫瘍化合物は、それらの作用機序によって、例えば以下のものを含む群に分類され得る:抗代謝薬/抗癌剤(例えば、ピリミジン類似体(5−フルオロウラシル、フロクスウリジン、カペシタビン、ゲムシタビン及びシタラビン)及びプリン類似体)、葉酸拮抗剤及び関連阻害剤(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン、2−クロロデオキシアデノシン(クラドリビン));抗増殖/抗有糸分裂剤(天然産物(例えばビンカアルカロイド類(ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン))、微小管撹乱物質(例えば、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポシロン、ナベルビン)、エピポドフィロトキシン(エトポシド、テニポシド)、DNA傷害剤(アクチノマイシン、アムサクリン、アントラサイクリン、ブレオマイシン、ブスルファン、カンプトセシン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、シトキサン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ヘキサメチルメラミンオキサリプラチン、イホスファミド、メルファラン、メクロレタミン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ニトロソ尿素、プリカマイシン、プロカルバジン、タキソール、タキソテール、テニポシド、トリエチレンチオホスホルアミド及びエトポシド(VP16)等);抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)及びマイトマイシン;酵素(L−アスパラギンを全身で代謝し、それ自身のアスパラギンを合成する能力を有さない細胞を奪取するL−アスパラギナーゼ);抗血小板剤;抗増殖/抗有糸分裂アルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード(メクロレタミン、シクロホスファミド及び類似体、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミン及びメチルメラミン(ヘキサメチルメラミン及びチオテパ)、スルホン酸アルキル−ブスルファン、ニトロソ尿素(カルムスチン(BCNU)及び類似体、ストレプトゾシン)、トラゼン−ダカルバジニン(DTIC));抗増殖/抗有糸分裂代謝拮抗剤(例えば葉酸類似体(メトトレキサート));白金配位錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、ミトタン、アミノグルテチミド;ホルモン類、ホルモン類似体(エストロゲン、タモキシフェン、ゴセレリン、ビカルタミド、ニルタミド)、アロマターゼ阻害剤(レトロゾール、アナストロゾール);抗凝固剤(ヘパリン、合成ヘパリン塩、及び他のトロンビンの阻害剤);フィブリン溶解薬(例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子、ストレプトキナーゼ及びウロキナーゼ)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ;抗遊走剤;抗分泌剤(ブレベルジン);免疫抑制薬(シクロスポリン、タクロリムス(FK−506)、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル);免疫調節性剤(レナリドマイド(Revlimid、CC−5013)及びCC−4047(アクチミド))等のサリドマイド及びその類似体)、シクロホスファミド;抗血管新生化合物(TNP−470、ゲニステイン)及び成長因子阻害剤(血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤、線維芽細胞成長因子(FGF)阻害剤);アンギオテンシン受容体遮断薬;酸化窒素供与体;アンチセンスオリゴヌクレオチド;抗体(トラスツズマブ);細胞周期阻害剤及び分化誘導物質(トレチノイン);mTOR阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤(ドキソルビシン(アドリアマイシン)、アムサクリン、カンプトセシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、テニポシド、エピルビシン、エトポシド、イダルビシン及びミトキサントロン、トポテカン、イリノテカン)、コルチコステロイド(コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、プレニソロン);成長因子信号伝達キナーゼ阻害剤;ミトコンドリア機能障害誘導物質及びカスパーゼ活性化剤;及びクロマチン撹乱物質。
【0099】
ある実施形態において、抗血管新生療法に併用され得る医薬品化合物としては、(1)bFGF(塩基性線維芽細胞成長因子)等の「血管新生促進分子」放出阻害剤;(2)抗βbFGF抗体等の血管新生促進分子中和剤;(3)血管新生刺激に対する内皮細胞応答阻害剤(コラゲナーゼ阻害剤、基底膜代謝回転阻害剤、血管新生抑制ステロイド、真菌由来血管新生阻害剤、血小板第4因子、トロンボスポンジン、関節炎薬物(例えばD−ペニシラミン及び金チオマレート酸塩)、ビタミンD類似体、α−インターフェロン等)が含まれる。更に提唱された血管新生阻害剤については、Blood et al.,Bioch.Biophys.Acta.,1032:89−118(1990),Moses et al.,Science,248:1408−1410(1990),Ingber et al.,Lab.Invest.,59:44−51(1988)及び米国特許第5,092,885号、同第5,112,946号、同第5,192,744号、同第5,202,352号並びに同第6,573,256号を参照。更に、血管新生を阻害するために使用され得る多種多様な化合物(例えば、VEGF媒介血管新生経路を遮断するペプチド又は薬剤、エンドスタチンタンパク質又は誘導体、アンギオスタチンのリジン結合フラグメント、メラニン又はメラニン活性化化合物、プラスミノーゲンフラグメント(例えばプラスミノーゲンのクリングル1〜3)、トロポニンサブユニット、ビトロネクチンαβの拮抗剤、サポシンBに由来するペプチド、抗生物質又は類似体(例えばテトラサイクリン又はネオマイシン)、ジエノゲスト含有組成物、ペプチドと連結するMetAP−2阻害コアを含む化合物、化合物EM−138、カルコン及びその類似体及びnaaladase阻害剤)がある。例えば、米国特許第6,395,718号、同第6,462,075号、同第6,465,431号、同第6,475,784号、同第6,482,802号、同第6,482,810号、同第6,500,431号、同第6,500,924号、同第6,518,298号、同第6,521,439号、同第6,525,019号、同第6,538,103号、同第6,544,758号、同第6,544,947号、同第6,548,477号、同第6,559,126号、及び同第6,569,845号を参照。
【0100】
本発明のAPC標的化剤の投与は、併用療法の性質に応じて、他の療法が施されている間及び/又はその後で継続させ得る。APC標的化剤の投与は、単回投与又は多回投与で行うことができる。場合により、APC標的化剤の投与は、従来の療法の少なくとも数日前に開始されるが、一方で他の例においては、従来の療法を施す直前又はその時に開始される。
【0101】
例示的な実施形態において、本明細書に記載される方法は、APC標的化化合物に結合するアジュバントを予め接種されていない被験体のアジュバント効果を増強させること又は免疫応答を刺激することを含む。
【0102】
特定の実施形態において、本明細書に記載される方法は、自然免疫応答、リコールの免疫応答、又はその両方を刺激することができる。
【0103】
例示的な実施形態において、本明細書に記載される方法は、アジュバント又はAPC標的化化合物以外の抗原に対する免疫応答を刺激する。ある実施形態において、前記方法は、未知の抗原に対する免疫応答を刺激することを含んでよい。ある実施形態において、前記方法は、既に被験体内に存在する抗原(例えば腫瘍抗原や病原体抗原)に対する免疫応答を刺激することを含んでよい。
【0104】
ある実施形態において、例えば抗原、アジュバント及びAPC標的化化合物を含む3種の成分のAPC標的化剤を利用する場合、前記方法は、(アジュバント及び/又はAPC標的化化合物に対する免疫応答を刺激することを除外しないにもかかわらず)アジュバント又はAPC標的化化合物に対する免疫応答ではなく、関連抗原に対する免疫応答を刺激することを含む。前記被験体の前記抗原への曝露又は接種は、予め行っても行わなくてもよい。
【0105】
4.抗体産生
本明細書に記載されるあるAPC標的化剤の産生に有用な抗体は、所望のエピトープと結合するように設計されてよく、或いは公的に入手可能な既知の抗体のソースから選択されてよい。例えば、抗体配列のデータベースは、imgt.cines.frのワールドワイドウェブ上に見出され得る。抗体をコードする核酸配列は、標準的組換えDNA法を使用して、タンパク質アジュバントやペプチド抗原等の1個以上の配列を付加するためにマニピュレートされ得る。タンパク質系APC標的化剤をコードする核酸配列は、更に後述するように、発現ベクター内及びAPC標的化剤の発現に適切な宿主細胞内に導入され得る。
【0106】
免疫抗原の調製並びにポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の作製は、本明細書に記載されるように又は他の適切な技法を使用して実施され得る。種々の方法が記載されている。例えば、Kohler et al.,Nature,256:495−497(1975) and Eur.J.Immunol.6:511−519(1976);Milstein et al.,Nature 266:550−552(1977);Koprowski et al.,U.S.Pat.No.4,172,124;Harlow,E. and D.Lane,1988,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,N.Y.);Current Protocols In Molecular Biology,Vol.2(Supplement 27,Summer’94),Ausubel,F.M.et al.,Eds.,(John Wiley & Sons:New York,N.Y.),Chapter 11,(1991)を参照。一般的に、ハイブリドーマは、適切な不死化細胞株(例えばSP2/0等の骨髄腫細胞株)を抗体産生細胞と融合することによって作製され得る。抗体産生細胞は、好ましくは脾臓又はリンパ腺のものであって、対象の抗原によって免疫化される動物から得られる。融合細胞(ハイブリドーマ)は、選択培養条件を使用して単離され得、限界希釈によってクローニングされ得る。所望の特異性を有する抗体を産生する細胞は、適切なアッセイ(例えばELISA)によって選択され得る。
【0107】
必要な特異性の抗体を産生する又は単離する他の適切な方法としては、例えば、組換え抗体をライブラリーから選択する方法や、ヒト抗体の完全なレパートリを産生することが可能なトランスジェニック動物(例えばマウス)の免疫化に基づく方法が含まれる。例えば、Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2551−2555(1993);Jakobovits et al.,Nature,362:255−258(1993);Lonberg et al.,U.S.Pat.No.5,545,806;Surani et al.,U.S.Pat.No.5,545,807を参照。
【0108】
例示のために、APC細胞表面タンパク質に由来するイムノゲンは、哺乳類(例えばマウス、ハムスター、ウサギ)を免疫化するために使用され得る。例えば、Antibodies:A Laboratory Manual ed. by Harlow and Lane(Cold Spring Harbor Press:1988)を参照。タンパク質又はペプチドに免疫原性を与えるための技法としては、担体との共役又は当該技術分野で周知の他の技法が含まれる。ポリペプチドの免疫原性部分は、アジュバントの存在下で投与され得る。免疫化の過程は、血漿又は血清中の抗体価の検出で観察できる。標準的なELISA又は他のイムノアッセイは、抗体のレベルを評価するための抗原としてのイムノゲンと共に使用され得る。
【0109】
ポリペプチドの抗原製剤により動物を免疫化後、抗血清を得ることができ、所望により、ポリクローナル抗体を血清から単離することができる。モノクローナル抗体を産生するため、抗体産生細胞(リンパ球)を免疫化動物から収集することが可能であり、ハイブリドーマ細胞等を得るため、標準体細胞融合法により骨髄腫細胞などの不死化細胞と融合させることができる。かかる技法は当該技術分野で周知であり、例えば、ハイブリドーマ法(最初にKohler and Milstein,(1975)Nature,256:495−497で開発された)、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozbar et al.,(1983)Immunology Today,4:72)、ヒトモノクローナル抗体を産生するEBV−ハイブリドーマ法(Cole et al.,(1985)Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.pp.77−96)が含まれる。ハイブリドーマ細胞は、所望のポリペプチドと特異的に反応する抗体とかかるハイブリドーマ細胞を含む培養物から単離されるモノクローナル抗体とを産生するために免疫化学的にスクリーニングされ得る。
【0110】
ある実施形態において、抗体は、従来の技法と、全抗体について上記と同様の有用性についてスクリーニングされたフラグメントとを使用して断片化され得る。例えば、F(ab’)フラグメントは、抗体をペプシンで処理することによって生成できる。得られたF(ab’)フラグメントを処理してジスルフィド架橋を減少させてFab’フラグメントを産生することができる。Fabフラグメントは、抗体をパパインで処理することによって生成できる。
【0111】
ある実施形態において、本明細書に記載される抗体は、抗体の少なくとも1つのCDR領域により与えられる対象のポリペプチドとの親和性を有する二重特異性分子、一本鎖分子、並びにキメラ及びヒト化分子を含むことが更に意図される。軽鎖又は重鎖二量体や、Fvや一本鎖(scFv)構築体等のその任意の最小限のフラグメントの産生のための技法は、例えば米国特許第4,946,778号に記載されている。また、トランスジェニックマウス又は他の哺乳類を含む他の生物体を用いてヒト化抗体を発現させることができる。これらの抗体を生成する方法は、当該技術分野で既知である。例えば、Cabilly et al.、米国特許第4,816,567号;Cabilly et al.、欧州特許第0,125,023号;Queen et al.、欧州特許第0,451,216号;Boss et al.、米国特許第4,816,397号;Boss et al.、欧州特許第0,120,694号;Neuberger,M.S.et al.,WO86/01533;Neuberger,M.S.et al.、欧州特許第0,194,276号;Winter、米国特許第5,225,539号;Winter、欧州特許第0,239,400号;Padlan,E.A. et al.、欧州特許出願第0,519,596A1を参照。また、Ladner et al.、米国特許第4,946,778号;Huston、米国特許第5,476,786号;及びBird,R.E.et al.,Science,242:423−426(1988)を参照。
【0112】
かかるヒト化免疫グロブリンは、所望のヒト化鎖をコードする遺伝子(例えばcDNA)を調製するために合成及び/又は組換え核酸を使用して産生することが可能である。例えば、ヒト化可変領域についてコードする核酸(例えばDNA)配列は、ヒト鎖又はヒト化鎖をコードするDNA配列(例えば既にヒト化された可変領域からのDNA鋳型)を改変するためにPCR突然変異誘発方法を使用して構築され得る(例えば、Kamman,M.,et al.,Nucl.Acids Res.,17:5404(1989));Sato,K.,et al.,Cancer Research,53:851−856(1993);Daugherty,B.L.et al.,Nucleic Acids Res.,19(9):2471−2476(1991);及びLewis,A.P. and J.S.Crowe,Gene,101:297−302(1991)参照)。これら又は他の適切な方法を使用して、直ちに変異体を作製することも可能である。一実施形態においては、クローニングされた可変領域に突然変異が起きる可能性があり、所望の特異性を有する変異体をコードする配列を選択することができる(例えばファージライブラリーから;例えば、Krebber et al.、米国特許第5,514,548;Hoogenboom et al.,WO93/06213,published(1993年4月1日公開)、を参照)。
【0113】
所望のポリペプチドと特異的に結合するモノクローナル抗体を生成する方法は、検出可能な免疫応答の刺激に有効的な量のポリペプチドを含む免疫原性組成物の量をマウスに投与することと、マウスから抗体産生細胞(例えば脾臓由来の細胞)を得て、抗体産生ハイブリドーマを得るために前記抗体産生細胞に骨髄腫細胞を融合させることと、ポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを同定するために前記抗体産生ハイブリドーマをテストすることとを含む。一旦得られると、場合により、細胞培養物中でハイブリドーマを増殖させることができ、ポリペプチドと特異的に結合するモノクローナル抗体をハイブリドーマ由来細胞が産生するという培養条件で増殖させることができる。モノクローナル抗体は、前記細胞培養物から精製され得る。
【0114】
更に、ハイブリドーマ細胞株は、免疫グロブリン鎖をコードする核酸のソースとして使用することが可能であり、それは単離及び発現が可能である(例えば、任意の適切な技法を使用して他の細胞に移す際(例えば、Cabilly et al.、米国特許第4,816,567号;Winter、米国特許第5,225,539号参照))。例えば、再配列された軽鎖又は重鎖を含むクローンを(例えばPCRによって)単離することが可能であるか、或いはcDNAライブラリーを前記細胞株から単離されるmRNAから調製することが可能であり、及び所望の免疫グロブリン鎖をコードするcDNAクローンを単離することが可能である。このように、前記抗体の重鎖及び/又は軽鎖をコードする核酸又はその一部は、種々の宿主細胞内又はin vitro翻訳系内の特異的免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、又はそれらの変異体(例えばヒト化免疫グロブリン)の産生のための組換えDNA法に従って得られ、使用され得る。例えば、ヒト化された免疫グロブリンや免疫グロブリン鎖等の変異体をコードする核酸(cDNA等)又はその誘導体は、前記核酸が1つ以上の発現調節要素(例えばベクター内の、又は宿主細胞ゲノム内に組込まれたもの)に機能的に連結されるように、適切な原核生物ベクター又は真核生物ベクター(例えば発現ベクター)内に配置され、適切な方法(例えば形質転換、トランスフェクション、エレクトロポレーション、感染)よって適切な宿主細胞内に導入される。産生のために、宿主細胞は、発現に適切な条件下(例えば、誘導物質、適切な塩類が補充される適切な培地、成長因子、抗生物質、栄養補給剤等の存在下)で維持することが可能であり、それによって、コードされたポリペプチドが産生される。所望により、コードされたタンパク質は、(例えば宿主細胞や培地から)回収及び/又は単離され得る。前記作製方法がトランスジェニック動物の宿主細胞の発現を包含することはいうまでもない(例えば、WO92/03918、GenPharm International(1992年3月19日公開)を参照)。
【0115】
抗体はまた、当該技術分野で既知の各種ファージディスプレイ法を用いて作製することも可能である。ファージディスプレイ法において、機能的抗体領域はファージ粒子の表面上にディスプレイされ、ファージ粒子はそれらをコードするポリヌクレオチド配列を保有する。特定の一実施形態において、かかるファージは、レパートリ又はコンビナトリアル抗体ライブラリー(例えばヒトやネズミ)から発現するFab及びFv或いはジスルフィド結合安定化Fv等、抗原結合領域をディスプレイするために利用することが可能である。対象の抗原に結合する抗原結合領域を発現するファージは、例えば標識抗原又は固体表面又はビーズに結合した又は捕捉された抗原を用いて、抗原により選択又は同定され得る。これらの方法で使用されるファージは、典型的にはfdやM13等の繊維状ファージである。抗原結合領域は、ファージ遺伝子III又は遺伝子VIIIタンパク質のいずれかとのリコンビナント融合タンパク質として発現する。本発明の免疫グロブリン又はそのフラグメントを作製するために使用され得るファージディスプレイ法の例としては、Brinkman et al.,J.Immunol.Methods 182:41−50(1995);Ames et al.,J.Immunol.Methods 184:177−186(1995);Kettleborough et al.,Eur.J.Immunol.24:952−958(1994);Persic et al.,Gene 187:9−18(1997);Burton et al.,Advances in Immunology 57:191−280(1994);PCT出願番号PCT/GB91/01134;PCT公開WO90/02809;WO91/10737;WO92/01047;WO92/18619;WO93/11236;WO95/15982;WO95/20401;並びに米国特許第5,698,426号;同第5,223,409号;同第5,403,484号;同第5,580,717号;同第5,427,908号;同第5,750,753号;同第5,821,047号;同第5,571,698号;同第5,427,908号;同第5,516,637号;同第5,780,225号;同第5,658,727号;同第5,733,743号及び同第5,969,108号に開示されているものが含まれる。
【0116】
上記の参考文献に記載のように、ファージ選択後、前記ファージから抗体コード領域を単離及び使用され得、全抗体(ヒト抗体などを含む)又は任意の他の所望のフラグメント等を作製できる。例えば下記で詳述のように、任意の所望の宿主(哺乳類細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母、細菌等)において発現させることが可能である。例えば、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、及びF(ab’)フラグメントを組換え産生する技法はまた、PCT公開WO92/22324;Mullinax et al.,BioTechniques,12(6):864−869,1992;及びSawai et al.,Am.J.Reprod.Immunol.,34:26−34,1995;及びBetter et al.,Science,240:1041−1043,1988(各々はその開示内容全体を参考として援用される)に開示されているもの等、当該技術分野で既知の方法を用いて使用することもできる。一本鎖Fvs及び抗体を産生するために使用され得る技法の例としては、米国特許第4,946,778号及び同第5,258,498号;Huston et al.,Methods in Enzymology,203:46−88,1991;Shu et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:7995−7999,1993;及びSkerra et al.,Science,240:1038−1040,1988に記載されているものが含まれる。
【0117】
所望の結合特異性を有する抗体をコードするポリヌクレオチドは、当該技術分野で既知の任意の方法によって得ることができる。所望の抗原に対して免疫特異的な抗体のヌクレオチド配列は、例えば上記のように、文献から又はデータベース(例えばGenBank)から得ることが可能である。抗体をコードするポリヌクレオチドは、化学的に合成されるオリゴヌクレオチドから構築され(例えば、Kutmeier et al.,BioTechniques17:242(1994)に記載の通り)、それは、簡潔には、抗体をコードする配列の部分を含むオーバーラップするオリゴヌクレオチドの合成、これらのオリゴヌクレオチドのアニーリング及び連結、次いでPCRによる連結オリゴヌクレオチドの増幅を伴う。或いは、抗体をコードするポリヌクレオチドは、抗体の発現のために選択されるハイブリドーマ細胞株等、抗体を発現する組織又は細胞から得られるcDNAライブラリーから作製され得る。所望の抗体遺伝子は、配列の3’末端及び5’末端とハイブリダイズ可能な合成プライマーを使用して、PCR増幅によってライブラリーから単離され得る。次いで、PCRによって作製された増幅核酸は、当該技術分野で周知の任意の方法を使用して、複製可能なクローニングベクター内にクローニングされ得る。
【0118】
APC標的化剤をコードする核酸配列が得られた時点で、APC標的化剤の作成のためのベクターは、当該技術分野で周知の技法を使用する組換えDNA法によって作製され得る。当業者に周知の方法は、APC標的化剤コード配列及び適切な転写及び翻訳制御シグナルとを含む発現ベクターを構築するために使用され得る。これらの方法としては、例えば、in vitro組換えDNA法、合成法、in vivo遺伝子組換えが含まれる。(例えば、Sambrook et al.,1990,Molecular Cloning A Laboratory Manual,2d Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.及びAusubel et al.eds.,1998,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,NYに記載の技法を参照)。
【0119】
APC標的化剤(又はその成分(例えば抗体、タンパク質アジュバント、抗原ペプチド等))のヌクレオチド配列を含む発現ベクターは、従来の技法(例えばエレクトロポレーション、リポソーム型トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿)によって宿主細胞に移すことが可能であり、次いで従来の技法によってトランスフェクト細胞を培養して抗体を産生することができる。特定の実施形態において、APC標的化剤の発現は、構成的プロモーター、誘導性プロモーター又は組織特異的プロモーターによって調節される。
【0120】
組換えAPC標的化剤を発現するために使用される宿主細胞は、細菌細胞(例えば大腸菌)又は真核細胞のいずれであってもよい。真核細胞は、特に全組換え免疫グロブリン分子を含むAPC標的化剤の発現に有用であり得る。例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)等の哺乳類細胞は、ヒトサイトメガロウィルスに由来する主要中間初期遺伝子プロモーター要素等のベクターと共に、免疫グロブリンに有効的な発現系である(Foecking et al.,1998,Gene 45:101;Cockett et al.,1990,Bio/Technology 8:2)。
【0121】
種々の宿主−発現ベクター系は、本明細書に記載されるAPC標的化剤を発現するために利用され得る。かかる宿主―発現系は、APC標的化剤のコード配列が産生され、その後精製され得るビヒクルを表すが、適切なヌクレオチドコード配列で形質転換又はトランスフェクトされる場合にin situでAPC標的化剤を発現し得る細胞も表す。これらとしては、免疫グロブリンコード配列を含む、組換えバクテリオファージDNA発現ベクター、組換えプラスミドDNA発現ベクター又は組換えコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば大腸菌や枯草菌)等の微生物;免疫グロブリンコード配列を含む組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えばサッカロミセスやピキア);免疫グロブリンコード配列を含む組換えウィルス発現ベクター(例えばバキュロウィルス)を感染させた昆虫細胞系;組換えウィルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウィルス(CaMV)やタバコモザイクウィルス(TMV))を感染させた又は免疫グロブリンコード配列を含む組換えプラスミド発現ベクター(例えばTiプラスミド)で形質転換された植物細胞系;哺乳類細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えばメタロチオネインプロモーター)又は哺乳類のウィルスに由来するプロモーター(例えばアデノウィルス後期プロモーター;ワクシニアウィルス7.5Kプロモーター)を含む組換え発現構築物を宿す哺乳類細胞系(例えば、COS細胞、CHO細胞、BHK細胞、293細胞、293T細胞、3T3細胞、リンパ細胞(米国特許第5,807,715号参照)、Per C.6細胞(Crucellによって開発されたラット網膜細胞))が含まれるが、これらに限定されない。本明細書に記載されるAPC標的化剤の作製に適用可能な植物、酵母又は真菌/藻類の抗体を作製する方法は、例えば、米国特許第6,046,037号と、同第5,959,177号と、米国特許公開第2005/0037420号と同第2005/0138692号とに記載されている。
【0122】
細菌系において、多くの発現ベクターは、有利には、発現するAPC標的化剤について意図された使用に応じて選択され得る。例えば、APC標的化剤の医薬組成物の生成のためにかかる大量のタンパク質を産生する場合、直ちに精製される高レベルの融合タンパク質産物の発現を導くベクターは望ましい可能性がある。かかるベクターとしては、融合タンパク質が産生されるようにAPC標的化剤コード配列がlacZコード領域を有するフレーム内のベクター内に個別に連結され得る大腸菌発現ベクターpUR278(Ruther et al.,1983,EMBO J.2:1791);PINベクター(Inouye & Inouye,1985,Nucleic Acids Res.13:3101−3109;Van Heeke & Schuster,1989,J.Biol.Chem.24:5503−5509)等が含まれるが、これらに限定されない。pGEXベクターは、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)を有する融合タンパク質として異種ポリペプチドを発現させるために使用され得る。一般的に、かかるAPC標的化剤は可溶性であり、マトリックスグルタチオン−アガロースビーズに対する吸着及び結合によって溶解細胞から容易に精製することが可能であり、その後遊離グルタチオンの存在下で溶出する。pGEXベクターは、クローニングされた標的遺伝子産物がGST部分から放出され得るようにトロンビン又はXa因子プロテアーゼ切断部位を含むように設計される。
【0123】
昆虫系においては、Autographa californica核多角体病ウィルス(AcNPV)が、異種遺伝子を発現するためのベクターとして使用される。前記ウィルスは、スポドプテラ・フルギペルダ細胞内で増殖する。APC標的化剤コード配列は、前記ウィルスの非必須領域(例えばポリヘドリン遺伝子)に個別にクローニングすることが可能であり、AcNPVプロモーター(例えばポリヘドリンプロモーター)の制御下に置かれる。
【0124】
哺乳動物の宿主細胞においては、多くのウィルスベースの発現系を利用することが可能である。アデノウィルスが発現ベクターとして使用される場合、対象のAPC標的化剤コード配列は、アデノウィルス転写/翻訳制御複合体(例えば、後期プロモーター及び三部リーダー配列に連結され得る。次いで、このキメラ遺伝子は、in vitro又はin vivo組換えによりアデノウィルスゲノムに挿入され得る。ウィルスゲノムの非必須領域(例えばE1又はE3領域)における挿入は、生存可能であり、感染宿主において免疫グロブリン分子を発現可能である組換えウィルスを生じる(例えば、Logan & Shenk,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:355−359(1984)参照)。特異的開始シグナルはまた、挿入されたAPC標的化剤コード配列の効果的な翻訳に必要とされ得る。これらのシグナルとしては、ATG開始コドンや隣接配列が含まれる。更に、開始コドンは、インサート全体の翻訳を保証するために所望のコード配列のリーディングフレームと同調していなければならない。これらの外因性翻訳制御シグナル及び開始コドンは、天然及び合成性の両方の種々の由来のものであり得る。発現の有効性は、適切な転写エンハンサーエレメント、転写終結因子等の包含により増大され得る(Bittner et al.,Methods in Enzymol.153:51−544(1987)参照)。
【0125】
更に、宿主細胞株が選択され得るが、これは挿入された配列の発現を調節するか、又は所望される特異的な様式での遺伝子産物を修飾及びプロセッシングする。タンパク質産物のかかる修飾(例えばグリコシル化)及びプロセッシング(例えば切断)は、タンパク質の機能にとって重要であり得る。異なる宿主細胞は、タンパク質の翻訳後プロセッシング及び修飾について特徴的で特異的な機序を有する。適切な細胞株又は宿主系が選択されて、発現する異種タンパク質の正確な修飾及びプロセッシングを確実にすることができる。このために、転写一次産物の適切なプロセッシング、グリコシル化、及び遺伝子産物のリン酸化のための細胞機構を有する真核生物宿主細胞が使用され得る。かかる哺乳動物宿主細胞としては、CHO、VERY、BHK、Hela、COS、MDCK、293、3T3、WI38、BT483、Hs578T、HTB2、BT20及びT47D、CRL7030及びHs578Bstが含まれるが、これらに限定されない。
【0126】
長期にわたる高収率の組換えタンパク質(例えば、APC標的化剤、抗体、タンパク質アジュバント、ペプチド抗原等)の産生のためには、安定的な発現が好ましい。例えば、APC標的化剤を安定して発現する細胞株が設計され得る。ウィルスの複製開始点を含む発現ベクターを使用するよりも、宿主細胞は、適切な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位等)及び選択可能なマーカーによって制御されたDNAで形質転換され得る。異種DNAの導入後、設計された細胞は、栄養強化培地中で1〜2日間増殖させることが可能であり、次いで選択培地に置き換えられる。組換えプラスミド中の選択可能なマーカーは、選択に対する耐性を与え、細胞がプラスミドをその細胞の染色体に安定に組込み、そして病巣(これは、次にクローニングすることが可能であり、そして細胞株にまで拡大され得る)を形成するまで増殖することを可能にする。この方法は、本明細書に記載されるAPC標的化剤を発現する細胞株を設計するために有利に利用され得る。
【0127】
多数の選択系が使用することが可能であるが、これらとしては、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wigler et al.,Cell 11:223(1977))、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska & Szybalski,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 48:202(1992))、及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy et al.,Cell 22:817(1980))の遺伝子が含まれるが、これらには限定されず、これらはそれぞれtk−細胞、hgprt−細胞又はaprt−細胞において使用され得る。また、代謝拮抗物質耐性が、dhfr遺伝子(これは、メトトレキサートに対する耐性を与える)(Wigler et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:357(1980);O’Hare et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1527(1981));gpt遺伝子(これは、ミコフェノール酸に対する耐性を与える)(Mulligan & Berg,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:2072(1981));neo遺伝子(これは、アミノグリコシドG−418に対する耐性を与える)(Tolstoshev,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32:573−596(1993);Mulligan,Science 260:926−932(1993);及びMorgan and Anderson,Ann.Rev.Biochem.62:191−217(1993);May,TIB TECH 11:155−215(1993));並びにhygro遺伝子(これは、ヒグロマイシンに対する耐性を与える)(Santerre et al.,Gene 30:147(1984))について選択の基礎として使用され得る。使用可能な組換えDNA法の技術分野で一般的に既知の方法は、Ausubel et al.(eds.),1993,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,NY;Kriegler,1990,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,Stockton Press,NY;and in Chapters 12 and 13,Dracopoli et al.(eds),1994,Current Protocols in Human Genetics,John Wiley & Sons,NY.;Colberre−Garapin et al.,1981,J.Mol.Biol.150:1に記載されている。
【0128】
APC標的化剤(又はその成分)の発現レベルは、ベクター増幅によって増加され得る(総説については、Bebbington and Hentschel,The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells in DNA cloning,Vol.3(Academic Press,New York,1987)参照)。APC標的化剤を発現するベクター系におけるマーカーが増幅可能な場合、宿主細胞の培養物に存在するインヒビターのレベルの増加は、マーカー遺伝子のコピー数を増加させる。増幅した領域がAPC標的化剤のヌクレオチド配列と関連しているため、APC標的化剤の産生もまた増加される(Crouse et al.,1983,Mol.Cell.Biol.3:257)。
【0129】
宿主細胞は、2種の発現ベクター(重鎖由来のポリペプチドをコードする第1のベクター及び軽鎖由来のポリペプチドをコードする第2のベクター)でコトランスフェクトされ得る。前記2種のベクターは、重鎖ポリペプチド及び軽鎖ポリペプチドの等しい発現を可能にする同一の選択可能なマーカーを含み得る。或いは、重鎖及び軽鎖ポリペプチドの両方をコードする単一ベクターが使用され得る。かかる状況下において、軽鎖は、過剰な毒性遊離重鎖を回避するように重鎖の前に配置されなければならない(Proudfoot,1986,Nature 322:52;Kohler,1980,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:2197)。重鎖及び軽鎖についてのコード配列は、cDNA又はゲノムDNAを含み得る。
【0130】
本発明のAPC標的化剤(又はその成分)が組換え発現されると、それは抗体の精製のための当該技術分野で周知の任意の方法(例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、特にプロテインAの後の特異性抗原に対する親和性による親和性クロマトグラフィー、及びサイジングカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、差次的な溶解性、又はタンパク質の精製についての任意の他の標準的な技法)によって精製され得る。
【0131】
5.医薬組成物
本発明は、方法と、1種以上のAPC標的化剤を含む医薬組成物とを提供する。本発明はまた、被験体に有効量のAPC標的化剤又はAPC標的化剤を含む医薬組成物を投与することによって、疾患、障害又は感染症と関連した1種以上の症状の治療、予防及び改善法を提供する。一実施形態においては、APC標的化剤が実質的に精製される(即ち、実質的にその効果を限定又は望ましくない副作用を生じる物質を含まない)。本明細書に記載されるAPC標的化剤を投与することができる被験体としては、例えば、非霊長類(例えばウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラット等)及び霊長類(例えばカニクイザル等のサルやヒト)を包含する哺乳類等の動物が含まれる。例示的な一実施形態において、前記被験体はヒトである。
【0132】
ある実施形態において、記載されるAPC標的化剤は、薬学的に許容される担体と製剤化され得る。かかるAPC標的化剤は、単独又は医薬製剤(組成物)の成分として投与され得る。APC標的化剤は、ヒト又は獣医学に使用するための任意の簡便な方法における投与のために製剤化され得る。また、湿潤剤、乳化剤及び潤滑剤(例えばラウリル硫酸ナトリウムやステアリン酸マグネシウム)並びに着色剤、剥離剤、コーティング剤、甘味料、着香剤及び芳香剤、保存剤及び抗酸化剤は、前記組成物中に存在し得る。
【0133】
標題のAPC標的化剤の製剤としては、経口投与、飼料投与、局所投与、非経口投与(例えば、静脈内注射、動脈内注射、筋肉内注射、皮下注射)、吸入(例えば、気管支内吸入、鼻腔内吸入又は経口吸入、鼻腔内滴下)、直腸投与及び/又は腟内投与に適切なものが含まれる。また、他の適切な投与方法としては、再充填可能な装置又は生分解性装置及び徐放性ポリマー装置が含まれる。また、本明細書に記載される医薬組成物は、他の治療薬とのコンビナトリアル療法の一部として、(同じ製剤又は別々の製剤で)投与され得る。
【0134】
製剤は、単位用量形態で簡便に提示することが可能であり、薬学の技術分野で周知の任意の方法によって調製され得る。単一の剤形を作製するための担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、被処理宿主と特定の投与様式とに応じて変化し得る。一般的に、単一の剤形を作製するための担体材料と組み合わせることが可能な活性成分の量は、治療効果を生じるAPC標的化剤の量である。
【0135】
ある実施形態において、これらの製剤又は組成物を調製する方法は、APC標的化剤及び担体並びに、場合により、1種以上の副成分とを組み合わせることを含む。一般的に、製剤は、液体担体又は微粉固体担体或いはその両方と調製することが可能であり、次いで必要に応じてその生成物を成形することができる。
【0136】
経口投与のための製剤は、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、口内錠(風味付けした基礎原料、通常スクロース及びアカシア又はトラガカントゴムを使用)、散剤、顆粒の形態で、或いは水性液体又は非水液体の液剤又は懸濁剤として、或いは水中油液型液状エマルジョン又は油中水型液状エマルジョンとして、或いはエリキシル剤又はシロップ剤として、或いは(ゼラチン及びグリセリン等の不活性基剤、或いはスクロース及びアカシアを使用する)香錠として、及び/又は口内洗剤等としてあり得、各々は活性成分として所定量の1種以上の標題のAPC標的化剤を含む。
【0137】
経口投与のための固体投与形態(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖剤、散剤、顆粒剤等)において、本発明の1種以上のAPC標的化剤は、1種以上の薬学的に許容される担体(例えばクエン酸ナトリウムやリン酸二カルシウム)及び/又は以下のいずれかと混合され得る:(1)充填剤又は増量剤(例えばデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール及び/又は珪酸);(2)結合剤(例えばカルボキシメチルセルロース、アルギナート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース及び/又はアカシア);(3)保湿剤(例えばグリセロール);(4)崩壊剤(例えば寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ又はタピオカ澱粉、アルギン酸、あるケイ酸塩、炭酸ナトリウム);(5)溶液硬化遅延剤(例えばパラフィン);(6)吸収促進剤(例えば第四級アンモニウム化合物);(7)湿潤剤(例えばセチルアルコールやグリセロールモノステアレート);(8)吸収剤(例えばカオリン及びベントナイト粘土);(9)潤滑剤(例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム及びそれらの混合物);及び(10)着色剤。カプセル剤、錠剤及び丸剤の場合、前記医薬組成物は緩衝剤を含んでもよい。また、類似のタイプの固体組成物は、ラクトースや乳糖等の賦形剤並びに高分子量ポリエチレングリコール等を使用した軟充填ゼラチンカプセル及び硬充填ゼラチンカプセルにおける充填剤として使用され得る。
【0138】
経口投与のため液体剤形としては、薬学的に許容される乳剤、ミクロエマルジョン、液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤が含まれる。活性成分に加え、液体剤形は、当該技術分野において一般的に用いられる不活性希釈剤(例えば水や他の溶媒)、可溶化剤及び乳化剤(例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、ゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ソルビタンのポリエチレングリコール及び脂肪酸エステル、及びそれらの混合物を含むことができる。不活性希釈剤の他に、経口組成物としてはまた、湿潤剤、乳化及び懸濁化剤、甘味剤、着香剤、着色剤、賦香剤、保存剤が含まれる。
【0139】
前記活性化合物に加え、懸濁剤は、懸濁化剤(例えばエトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール、ソルビタンエステル)、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天及びトラガカント及びそれらの混合物を含むことができる。
【0140】
本発明の方法は、皮膚或いは粘膜(例えば子宮頚部や膣上のもの)のいずれかに対する局所投与を利用することができる。これによって、副作用の誘発を回避しつつ腫瘍への直接的な送達が行われ得る。局所製剤は、皮膚又は角質層透過増強剤として有効的であることが既知の多種多様な薬剤の内の1種以上を更に含むことができる。これらの例としては、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、プロピレングリコール、メチル又はイソプロピルアルコール、ジメチルスルホキシド及びアゾンが含まれる。更なる薬剤が、前記製剤を化粧学的に許容されるように更に含まれ得る。これらの例としては、脂肪、ワックス、油、染料、芳香剤、保存剤、安定化剤、界面活性剤がある。また、当該技術分野で既知のもの等の角質溶解剤が含まれ得る。例としては、サリチル酸や硫黄がある。
【0141】
局所又は経皮投与のための剤形としては、散剤、噴霧剤、軟膏剤、糊剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、液剤、貼付剤、吸入剤が含まれる。標題のAPC標的化剤は、薬学的に許容される担体、並びに必要とされ得る任意の保存剤、緩衝剤又は噴射剤と、無菌条件下で混合され得る。前記軟膏剤、糊剤、クリーム剤及びゲル剤は、APC標的化剤に加え、賦形剤(例えば動物性脂肪及び植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、珪酸、タルク、酸化亜鉛や、それらの混合物)を含有することができる。
【0142】
散剤及び噴霧剤は、薬剤の他に、賦形剤(例えば、ラクトース、タルク、珪酸、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、ポリアミド粉末や、これらの物質の混合物)を含有することができる。噴霧剤は、通例の噴射剤(例えばクロロフルオロハイドロカーボン)及び揮発性非置換炭化水素(例えばブタンやプロパン)を更に含有することができる。
【0143】
非経口投与に適切な医薬組成物は、1種以上の薬学的に許容される無菌の等張性の水溶液又は非水溶液、分散液、懸濁液又は乳液、或いは抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、製剤を指定のレシピエントの血液と等張にする溶質、懸濁化剤又は増粘剤を含有し得る使用時に無菌注射液剤又は分散液に再構成され得る無菌の散剤と組み合わせて1種以上のAPC標的化剤を含むことができる。本明細書に記載される医薬組成物に使用され得る適切な水性担体及び非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)及び適切なそれらの混合物、植物油(例えばオリーブ油)、注射可能有機エステル(例えばオレイン酸エチル)が含まれる。適切な流動性は、例えば、コーティング材料(例えばレシチン)を用いて、分散剤の場合には必要粒径を維持することによって、及び界面活性剤を用いて、維持され得る。
【0144】
これらの組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤を含有してよい。微生物の活動の防止は、各種の抗菌剤及び抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等)を含めることによって確実にされ得る。前記組成物中に等張性剤(例えば、糖類、塩化ナトリウム等)を含めることは望ましくあり得る。更に、注射可能剤型の長期にわたる吸収は、吸収を遅延させる薬剤(例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチン)を含ませることによってもたらされ得る。
【0145】
注射可能蓄積物は、ポリラクチド−ポリグリコリド等の生分解性ポリマーにおける1種以上のAPC標的化剤のマイクロカプセル化マトリックスを形成することによって作製される。ポリマーに対する薬物の割合、並びに特定のポリマーの性質に応じて薬物放出速度は制御され得る。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)やポリ(無水物)が含まれる。また、蓄積注射可能製剤は、体組織に適合したリポソーム又はミクロエマルジョンの薬物を封入することによって調製される。
【0146】
腟内又は直腸投与のための製剤は坐剤として提示され得、その坐剤は、本発明の1種以上の薬剤を、例えばカカオバター、ポリエチレングリコール、座薬ワックス又はサリチル酸塩を含む1種以上の適切な非刺激性賦形剤又は担体と混合することによって調製され得るものであり、且つ、室温で固体であるが体温で液体となり、そのため直腸内又は膣腔内で溶解して活性化合物を放出するものである。
【実施例】
【0147】
本発明を今や一般的に記載したので、本発明は、以下の実施例を参照することによってより直ちに理解されるであろう。実施例は、本発明の特定の態様及び実施形態の例示の目的のみで含まれ、そしていかなる形であれ本発明を限定することを意図しない。
【0148】
実施例1:DC−SIGNによる樹状細胞に対するアジュバントのin vivo標的化
DCは、末梢血液中及び組織中の抗原を取り込んで処理し、そして免疫応答の活性化のための流入領域リンパ節内のリンパ球にそれらを提示する固有の能力を有する抗原提供細胞である。しかしながら、生産的T細胞応答が生じるには活性化刺激が必要であり、そうしないと忍容性が誘起される(Hawiger,D.,et al.2001.J Exp Med 194:769−779)。癌ワクチンの開発は、主に自己由来DCのex vivoでの負荷に焦点を当ててきた(Banchereau,J.,et al.2005.Nat Rev Immunol 5:296−306)。近年、DC上の抗原取り込み受容体に対してin vivoで抗原を標的化する、より直接的な方法が、前臨床試験において探索されてきた。対象の候補物質の可能性としては、Fc受容体(Regnault,A.,et al.1999.J Exp Med 189:371−380;Kalergis,A.M.,et al.2002.J Exp Med 195:1653−1659)、ケモカイン受容体(Biragyn,A.,et al.2004.Blood 104:1961−1969)、及びC−型レクチン(Bonifaz,L.,et al. 2002.J Exp Med 196:1627−1638;Ramakrishna,V.,et al.2004.J Immunol 172:2845−2852)がある。Fc及びケモカイン受容体発現がDCに限定されない場合、C−型レクチンファミリーの幾つかのメンバーは、よりDC特異的な発現パターンを示す。I型C−型
レクチン、例えばマンノース受容体及びDEC−205は、in vitro及びin vivoでの抗体標的化試験に使用されてきた。両受容体に対する抗体は、抗原をDCに特異的に送達することが可能であり、その抗原は適切に処理され、T細胞に提示される。しかしながら、そのT細胞応答を観察したところ、免疫寛容を生じることが分かった(Bonifaz,L.,et al.2002.J Exp Med 196:1627−1638;Chieppa,M.,et al.2003.J Immunol 171:4552−4560)。DEC205抗体を介して抗原を送達する際、十分な刺激性応答を誘発するには更なる共刺激信号が必要であった。
【0149】
それに対して、DC−SIGNは、ヒトDCサブセット上のDEC205とは異なる発現パターンを有するII型C−型レクチンである。また、DC−SIGNは、種々の病原ウィルス上のエンベロープタンパク質に直接結合するその能力によって示される効率的に抗原を取り込むことが可能なエンドサイトーシス受容体である(Simmons,G.,et al.2003.Virology 305:115−123;Geijtenbeek,T.B.,et al.2000.Cell 100:587−597;Cambi,A.,et al.2005.Cell Microbiol 7:481−488)。in vitro試験によって、DC−SIGN抗体−KLH複合体がDCに内部移行し、DCの表面上にKLHエピトープを提示することに成功し、それによって抗−KLH T細胞応答が誘起されたことが示された(Tacken,P.J.,et al.2005.Blood 106:1278−1285)。本明細書に示される試験は、in vivoでDC−SIGNを介して抗原を標的化することによって未感作のヒト免疫細胞の刺激性免疫応答が高まるのかどうかを評価するものである。ヒトにおいては、DC−SIGNが専門の抗原提示細胞上に発現するだけであるが、一方でマウスにおいては、DC−SIGN生物が多数のファミリーメンバー及び種々の発現パターンとより一層複合する(Park,C.G.,et al.2001.Int Immunol 13:1283−1290;Takahara,K.,et al.2004.Int Immunol 16:819−829)。したがって、厳密にマウスのモデルにおけるDC−SIGNの抗体媒介標的化は、ヒトの設定に移すことができない可能性がある。この試験は、DC−SIGN抗体を使用してDCに対する抗原のin vivo標的化を評価するモデルとしてのヒト免疫系(Traggiai,E.,et al.2004.Science 304:104−107)の必須細胞と再構成される免疫不全Rag2−/−γc−/−マウスを使用したものである。抗−DC−SIGN抗体hD1V1及びE10は、いずれのマウスDC−SIGNファミリーメンバーとも交差反応しないため、再構成されたRag2−/−γc−/−における標的化は、完全にヒトDC−SIGNを介する。キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)及び破傷風トキソイド(TT)をモデル抗原として使用し、抗−DC−SIGN抗体に化学的又は遺伝子的にかのいずれかで連結した。DCに対するいずれの抗原の標的化された送達によっても、任意の更なる共刺激信号の非存在下で増殖性ヒト免疫応答が生じた。更に、抗−DC−SIGN抗体に連結したKLHの投与が他の腫瘍モデル及びヒト臨床試験においてKLHによって観察されるアジュバント効果を増大させるのかどうかを評価するために、ヒト末梢血リンパ球(hPBL)で再構成される腫瘍異種移植モデルを用いた(Ragupathi,G.,et al.2003.Clin Cancer Res 9:5214−5220;Krug,L.M.,et al.2004.Clin Cancer Res 10:6094−6100;Slovin,S.F.2005.Clin Prostate Cancer 4:118−123)。腫瘍成長の阻害は、DC−SIGN抗体に連結したKLHによって異種移植腫瘍モデルにおいて有意に増大した。故に、DC−SIGN抗体を介してDCに対して抗原を標的化することは、癌及び感染症に対する強い且つ持続性の抗原特異性T細胞応答を高める強力な方法である可能性があった。
【0150】
材料及び方法
抗体構築体。Tacken et al.(Blood 106:1278−1285(2005))に記載されるように、スルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(スルホ−SMCC;Pierce、米国イリノイ州ロックフォード)を使用して、化学的共役によって、G2G4融合定常領域を含むヒトDC−SIGNに特異的なヒト化抗−DC−SIGN抗体hD1V1に、KLHを共役させた。また、同様に、対照抗体5G1.1(C5aを認識するヒト化IgG2/G4抗体)にKLHを共役させた。
【0151】
scFv−RR−TTは、hD1V1の一本鎖変異体である。最初にAPEX3P内にscFvD1V1をクローニングした後、プロテアソーム切断用アルギニン「RR」リンカーとタンデムなC末端で一般的なTTヘルパーエピトープアミノ酸829−844の2つのコピーを連結する。D1V1 Vリーダー配列及びV配列並びにヒト化抗−DC−SIGN D1V1遺伝子のVを増幅した。精製用6XHis、終止コドン及びXbaI/EcoRI酵素クローニング部位を導入した。重なりPCRの後、(Gly−Gly−Gly−Gly−Ser)(配列番号6)リンカーをコードする配列を、VとVとの間に導入した。PCRフラグメントは、pCR2.1ベクター内にクローニングされたTAであり、正確な配列を確認した。次いで、pCR2.1−scFv−D1V1をBamHI/XbaIによって消化し、Alexionの哺乳類細胞発現ベクターApex3P(Apex3P−scFv D1V1HIS)内にフラグメントをクローニングした。配列決定によって最終構築体を確認した。
【0152】
Effectene(Qiagen)によってApex3P−scFvD1V1−RR−TTでトランスフェクトした293EBNAヒト胚腎臓細胞を、37℃及び5%COで、10%熱不活性FBS、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、活性250μg/mL G418 Sulfateを有する2mMグルタミン、及び1ng/mLピューロマイシンを含むDMEM(Cellgro#10−013−CV)中で増殖させた。細胞の90〜95%のコンフルエントT−175フラスコを、L−グルタミン及びペニシリン/ストレプトマイシンを補充した30mLのIS Pro無血清培地(Irvine Scientific、米国カリフォルニア州サンタアナ、Catalog#91103)を各フラスコに加える前に、血清タンパク質を除去するために、15mLハンクス液(HBSS)(又はCa/Mgを含むPBS)で洗浄した。上清を濃縮し、Qiagen Ni−NTA Columnによって精製した。
【0153】
最終的に25の全体のアミノ酸(RRIDKISDVSTIVPYIGPALNIRRR)(配列番号7)を挿入するために、エピトープの上流側及び3下流側で、2個の更なるアルギニンを有するグリシン249及び250間のCH2領域内に、重なりPCRによってTTエピトープ630DRを挿入することによって、TTエピトープを固定したヒトDC−SIGN/L−SIGN交差反応性キメラ抗体E10−TT(アイソタイプ、IgG1)を、前述(Dakappagari,N.,et al.2006.J Immunol 176:426−440)のように構築した。前記試験において使用された全ての抗体は、QCL−1000カブトガニ血球抽出成分アッセイ(BioWhittaker、米国メリーランド州ウォーカーズヴィル)を使用して決定されたように、エンドトキシンに対して陰性を示した。機能的グレードの抗CD40抗体を、eBioscience(米国カリフォルニア州サンディエゴ)から購入した。
【0154】
臍帯血試料及び前駆細胞の単離。親へのインフォームドコンセントの後、新しい臍帯血を、Advanced Bioscience Resources,Inc.(米国カリフォルニア州アラメダ)から入手した。前記血液は、HIV、B型肝炎表面抗原、C型肝炎及びサイトメガロウィルスについて陰性を示した。Ficoll−Paque勾配遠心分離(Histopaque、Sigma−Aldrich)によって、臍帯血単核細胞を単離した。次いで、血液前駆細胞を、Stem Cell Technologies,Inc.(加国バンクーバー)から入手されたProgenitor濃縮キットを使用して単離した。前記前駆細胞を分注し、使用するまで液体窒素中に保存した。
【0155】
マウス。Central Institute for Experimental Animals(日本国神奈川県)から、BALB/c背景のRag2−/−γc−/−マウスの雌雄を購入した。Perry Scientific(米国カリフォルニア州サンディエゴ)において、特定病原体感染防止条件で前記マウスを飼育し、収容した。4〜6週齢のNOD.CB17−Prkdcscid/J(NOD/SCID)マウスを、Jackson Laboratory(米国メイン州バーハーバー)から入手し、特定病原体感染防止条件下で維持した。動物についての研究は、全てPerry Scientific’s動物実験委員会(IACUC)によって承認された。
【0156】
新生児Rag2−/−γc−/−マウスの移植。Traggiai et al(Science 304:104−107(2004))に記載の方法に変更を幾つか行い、それに基づいて新生児マウスに臍帯血細胞を移植した。全ての手法は、Perry Scientific’s IACUC committeeの承認を得た。新生児のマウスに、1Gy/分で1Gyを照射した(カリフォルニア大学,サンディエゴ)。照射後1〜2時間目に、30ゲージ1/2インチ針(Becton Dickinson and Company、米国ニュージャージー州フランクリンレイクス)を使用して、マウスの肝臓に30μL RPMIにおけるCD34+臍帯血細胞を注入した。臍帯血細胞を移植した新生児マウスを3〜4週間目に離乳した。
【0157】
細胞単離。眼窩後穿刺により各マウスから末梢血液を採取した。密度勾配遠心分離によって、ヘパリン化全血から末梢血単核細胞(PBMC)を分離した。大腿骨及び脛骨を、無菌的に摘出した。骨髄を、いずれかの端部から完全なRPMI−1640(Invitrogen)によって洗浄した。細胞懸濁液を、セルストレーナー(Falcon;BD Biosciences)によって濾過し、8分間の400×gでペレット細胞に遠心分離した。標準手順で、脾臓、リンパ節(浅頸、腋窩、鼠径、腸間膜)から単個細胞浮遊液を調製した。脾臓の赤血球、PBMC及び、骨髄を、塩化アンモニウム(Stem Cell Technologies Inc.、加国ブリティッシュコロンビア州バンクーバー)によって溶解した。前記細胞を、追加実験に使用する前にRPMI−1640で2回洗浄した。
【0158】
臍帯血移植マウスの免疫化。マウスに、TitermaxアジュバントにおけるKLH(Calbiochem(EMD Biosciences)、米国カリフォルニア州サンディエゴ)又はTT抗原(Synpep,米国カリフォルニア州ダブリン)を皮下又は腹腔内かのいずれかで投与し、200μLのPBSにおけるDC−SIGN抗体D1V1−KLH、5G1.1−KLH又はD1V1−KLH、及びCD40抗体を静脈内投与した。
【0159】
増殖アッセイ。脾臓を摘出し、単個細胞浮遊液を無菌的に調製した。遠心分離後、赤血球を塩化アンモニウム(Stem Cell Technologies Inc.、加国ブリティッシュコロンビア州バンクーバー)によって溶解した。10%FCS、10mM Hepes、1mMピルビン酸ナトリウム溶液、2mM L−グルタミン、0.075%(w/v)炭酸水素ナトリウム、及び抗生物質を補充したRPMI1640におけるKLH又はTTの96ウェルプレートで、2×10の脾臓細胞を5日間培養した。4日間の共培養後、H−チミジン(1μCi/ウェル;Amersham、米国ニュージャージー州ピスカタウェイ)を細胞培養物に添加し、16〜18時間後にマイクロプレートシンチレーションカウンタ(Perkin Elmer、米国コネチカット州シェルトン)でチミジン取り込みを測定した。増殖指数を、(KLH又はTT投与のcpm)/(培地投与のcpm)として決定した。
【0160】
フローサイトメトリー分析。移植マウスから単離した免疫細胞を1%BSA及び0.1%NaNを含むPBSにおいて再懸濁し、以下のもの:PE共役抗ヒトCD19、APC共役抗ヒトCD4、PE共役抗ヒトCD8、又はFITC共役抗ヒトCD209(eBiosciences、米国カリフォルニア州サンディエゴ)、の内の1種と20分間培養し、同じ緩衝液で2回洗浄した。前記細胞をFACSCaliburフローサイトメータで分析し、BD CellQuest Proソフトウェア(BD Biosciences、米国カリフォルニア州マウンテンビュー)を使用してデータを分析した。実験データを、所与のマーカーに陽性の染色したゲート化細胞のパーセンテージで表す。
【0161】
RAJI−PBLモデル。インフォームドコンセント及びIRB承認の後、San Diego Blood Bankで、健康なヒトドナーから末梢血液を採取した。15分間400×gでヒストパック勾配(Sigma)で血液の遠心分離によってPBMCを単離した。RPMI−1640培地で細胞を2回洗浄した。同じドナーから、単球単離キットII(Miltenyi Biotec)による磁気分離を用いてCD14+単球を単離することによって、未成熟DCを調製した。次いで、800U/mLヒト組換えGM−CSF(Stemcell Technologies)、500U/mLヒト組換えIL−4(Stemcell Technologies)の存在下で、前記細胞を5日間培養した。Day3に、GM−CSF及びIL−4を再度加えた。
【0162】
RAJI細胞(ATCC)を、10%FCSを補充したRPMI中で培養した。フルダラビン(Sigma)投与RAJI細胞について、RAJI細胞を24時間5μg/mLでフルダラビンで培養し、RPMI−1640培地で3回洗浄した。4百万個のRAJI細胞、3万個の未成熟DC、及び3百万個のヒトPBMCを、NOD/SCIDマウスに皮下注射した。腫瘍成長を、試験デザインに対して盲検化した人員によるマイクロキャリパ測定法によって決定した。腫瘍容積を、式:(長さ)×(幅)×(幅)/2に従って算出した。実験データは、各群10匹のマウスからの腫瘍容積の平均を表す。抗体投与は、腫瘍日に開始し、指示用量の1/10で皮下注射によってPBMC注射を行い、その後2週間に亘って腫瘍付近に毎週皮下注射を行った。
【0163】
統計分析。群間差を、両側の対応のないスチューデントt検定によって分析した。有意性は、p<0.05で認められた。
【0164】
結果
臍帯血移植マウスにおけるDC−SIGN抗体hD1V1によるKLHのin vivo標的化は、刺激性免疫応答を誘起する。Tacken et al.(Blood 106:1278−1285(2005))は、KLHに共役したヒト化抗−DC−SIGN抗体(hD1V1−G2G4)を有するDCのin vitroインキュベーションが、構築体の内部移行を生じさせ、KLHで免疫化した患者に由来するT細胞に対してKLHエピトープの提示を成功させることを示した。得られた増殖性T細胞応答は、非共役型KLHによる刺激によって観察されるものより100倍強かった。現在の試験は、D1V1−KLHがin vivoでDCを標的化することに成功してヒトの未感作免疫細胞応答を刺激することができたのかどうかについて取り組むものである。hD1V1−G2G4抗体は齧歯類DC−SIGNと交差反応しないことから、マウスのDC−SIGN生物はヒトとは実質的に異なると思われ(Park,C.G.et al.2001.Int Immunol 13:1283−1290;Takahara,K.,et al.2004.Int Immunol 16:819−829)、ヒト免疫細胞を移植したマウスは、D1V1−KLHのin vivo標的化を評価するのに最もよい選択であると思われた。
【0165】
Traggiai et al.(Science 304:104−107(2004))に記載のヒト臍帯血移植マウスは完全な範囲の機能性ヒト免疫細胞を発育したことが報告された。免疫不全新生児マウスの肝臓内へのヒト造血幹細胞及び造血前駆細胞の移植がヒト免疫系の移植、拡大、全体的再構成を生じさせることを確認するために、多くの移植マウスにおいて、各種免疫器官に由来するヒトDC、ヒトB細胞、ヒトCD8 T細胞及びCD4 T細胞をフローサイトメトリーによって分析した。細胞注射の3ヵ月後、脾臓及びリンパ節において約12%〜25%のCD19陽性細胞、20〜31%のCD8+細胞、及び11〜15%のCD4+細胞が発現した(表I)。B細胞及びDCの割合はヒトと同等であると思われるが、CD4/CD8比はヒトにおいて期待されるものと比較して逆であった。これらのデータは、既に報告されているように(Traggiai, E.,et al.2004.Science 304:104−107)、再構成Rag2−/−γc−/−マウスにおけるヒト幹細胞及び前駆細胞が3ヵ月間に亘ってT細胞及びB細胞に発育したことを示している。
【0166】
表I.臍帯血移植の後の細胞頻度(%)。Rag2−/−γc−/−マウスへのヒト臍帯血細胞の注射の3ヵ月後、骨髄、リンパ節、脾臓を摘出し、ヒトCD抗原に対する抗体を使用してフローサイトメトリーによって細胞表現型を評価した。
【0167】
【表1】

DCへのKLHの標的化送達をテストする前に、アジュバントにおける免疫化後のKLHに対して検出可能な増殖性免疫応答を生じる能力について、移植マウスのヒトT細胞を評価した。非接種マウスに由来する脾細胞とは対照的に、接種9日後のKLH接種マウスから単離した脾細胞は、in vitroでKLHで刺激された場合に増殖した(図1A)。KLHによる第2の免疫化は、増殖応答を更に増加させなかった(図1B)。全体として増殖指数はかなり低く、これはヒトT細胞数がかなり少ないことを示していると推定される。しかしながら、前記応答は一貫性があって再現可能であり、このことは、ヒト臍帯血移植マウスがDC−SIGNによるKLHの標的化送達をテストするための適切なモデルであることを示している。
【0168】
in vivoにおけるDCへの抗原の特異的標的化をテストするために、補体タンパク質C5a(5G1.1−KLH)を認識する対照抗体に共役するD1V1−KLHかKLHのいずれかでRag2−/−γc−/−移植マウスを免疫化して、KLH抗体複合体に対するいかなる応答もDC−SIGNによって媒介されることを確実にした。9日後に脾臓を単離し、KLHに対する増殖応答をin vitroで評価した。D1V1−KLHの投与を受けたマウスは、5μMで約7倍、50μMで6倍のKLHに対する強い増殖応答を示したが、5G1.1−KLH対照抗体の投与を受けたマウスは、強い増殖応答を示さなかった(図1C)。免疫化の14日後においても、D1V1−KLHによって免疫化した3匹のマウスの内の2匹は、対照抗体5G1.1−KLHと比較して5μM KLHで2〜4倍の、50μM KLHで3〜5倍の、KLHに応答して良好なT細胞増殖を示した(図1D)。D1V1−KLH免疫化によって誘起したKLHに対する応答は、PHAによって誘起した増殖と同等だったが、これはKLHに対する強い応答が生じたことを示している。2匹の5G1.1−KLH免疫マウスのいずれも、KLHに対するT細胞応答を示さなかったが、これは、DC−SIGNによる標的化がKLHに対する免疫応答の増大に重要であることを示している。それに対して、TitermaxにおけるKLHによって免疫化したマウスの応答は弱かったが、有意だった。
【0169】
詳細に分析したところ、ヒト免疫細胞は、全ての移植マウスにおいて検出可能であることが分かった。その数はマウスの中で2倍まで変化し、ヒト細胞数の増加は、KLHに対する免疫応答の強さの増加と相関しなかった(表II)。これらの実験は、D1V1−KLHがヒト臍帯血移植マウスへの投与の際に更なるアジュバントを要求することなく刺激性免疫応答を誘起し得ることを示しているが、このことは、DC−SIGNによる標的化が、産生的免疫応答を誘起するために十分にDCを刺激することを示唆しており、そして、リコール応答だけでなく未感作応答がDC−SIGNによる標的化によって生じることを示している。
【0170】
表II.D1V1−KLHによって免疫化された移植マウスから回収したDC及びT細胞の数。臍帯血移植マウスを、100μgのD1V1−KLH又は100μgの5G1.1−KLHのいずれかによって静脈内で免疫化した。更に2匹のマウスに、100μgのKLH及びTitermaxを皮下注射した。脾臓及びリンパ節を9日後又は14日後に摘出し、T細胞及びDCの頻度をフローサイトメトリーによって評価した。
【0171】
【表2】

D1V1−KLHで免疫化したヒト臍帯血移植マウスにおいて誘起したKLHに対する全体的増殖応答に影響を及ぼさない抗CD40同時刺激。D1V1−KLH免疫化後のKLHに対するT細胞増殖の大きさは、既に更なるアジュバントの必要がないことが示唆されているPHA刺激後のT細胞増殖の大きさと同等だったが、KLH応答を増加させる能力について、抗CD40及びD1V1−KLHの同時投与を評価した。CD154(CD40L)によるCD40のライゲーションは、APCとT細胞との間の相互作用において重要な手順である(Howland,K.C.,et al.2000.J Immunol 164:4465−4470)。Bonifaz et al.(J Exp Med 196:1627−1638(2002))は、CD40を介したDC成熟刺激の同時送達が、抗−DEC−205:OVA構築体との刺激性免疫応答の誘発に必要であることを示した。同時刺激が存在しない場合、抗−DEC−205:OVAの投与は忍容性を誘起した。図2は、DEC−205による標的化とは対照的に、DC−SIGNによる抗原標的化が抗−CD40ライゲーションによって実質的に増大しないことを示している。D1V1−KLH単独によって生じるKLHに対するT細胞応答は、D1V1−KLHとCD40抗体との併用によって達成されるものと同様であった。
【0172】
DC−SIGNによるin vivoでの抗原標的化による増殖応答の誘起は、特定の抗−DC−SIGN抗体に特異的でもなく限定もされない。KLHの他に、別のモデル抗原(破傷風トキソイド(TT))に対する免疫応答が増大するかどうかについて評価した。更に、D1V1に加えて、他のDC−SIGN抗体構築体が免疫応答を誘起することができるかどうかについて取り組んだ。KLH実験と同様に、最初に、移植マウスにおけるアジュバントにおいて非共役型TTに対してヒト免疫応答が増大し得るのかどうかについて評価した。1回の免疫化を受けたマウスに由来する脾細胞はTTに応答して激しく増殖したが、未接種のマウスはそうではなかった(図3A)。TTに対する増殖応答の大きさは、PHAに対する増殖応答と同等であったが、このことはTTによって最大応答が得られたことを示している。第2の免疫化後、TTに応答するT細胞の増殖能力は、単回免疫化の後よりも2〜5倍高かった。(図3B)。しかしながら、T細胞応答とは対照的に、抗原特異性免疫グロブリン応答は検出され得なかった。抗体応答を増大させるためには、更なる免疫化が必要であったかもしれず、B細胞による取り込みには遊離抗原が提供されなければならない可能性が最も高い。まとめると、臍帯血移植マウスがTTに対するヒトT細胞応答を起こすことがこれらの実験によって示される。
【0173】
追加実験において、DC−SIGNにTTを標的化させる2種の異なる抗体複合体をテストした。KLH抗体複合体とは対照的に、TT構築体を、全タンパク質を抗体に化学結合させる代わりに、TTエピトープを含むように遺伝子操作した。TTエピトープ632DRがDC−SIGN反応性E10抗体(E10−TT)のヒンジ領域内に発現した(Dakappagari,N.,et al.2006.J Immunol 176:426−440)。E10−TT抗原複合体(E10−632DR)はin vitroでヒトDCによってプロセッシング及び提示でき、それによって、TT接種ドナーから得られたT細胞における有意な増殖応答が誘発されることがあらかじめ示された。Rag2−/−γc−/−再構成マウスにおけるE10−TT複合体によるin vivoでのヒトDCの標的化がTTに対して未感作T細胞応答を生じさせることが可能であるのかについて評価するために、移植マウスを、E10−TT複合体によってか、E10とTTとの混合物によってかのいずれかで免疫化した。免疫化の9日後、E10−TT複合体によって免疫化した5匹のマウスの内の3匹は、混合物としてE10とTTとによって免疫化した5匹のマウスよりも、TTに対して2倍強い免疫応答を引き起こした(図3C)。しかしながら、全体的な増殖指数は、D1V1−KLHによって観察されたものよりも小さかった。また、同じ実験において、前記抗体自体に対する応答が生じたかどうかについても評価した。一般的に、これは、E10及びTTの混合物の投与を受けたマウス3168を除いた場合ではなかった。全体として、この実験は、DC−SIGNによる抗原標的化が未感作T細胞の活性化を生じさせ得ることを確認するが、特異抗体又は特異抗原に限定されない。
【0174】
in vivoでのDC−SIGNによる抗原標的化による増殖性T細胞応答の誘起は二量体化を必要としない。実験の次にセットにおいて、増殖性T細胞応答の誘起がDC−SIGN分子の二量体化を必要とするのかどうかについて探索した。応答が二量体化なしで引き起こされ得るのかどうかを評価するために、hD1V1−G2G4を、タンデムでTTエピトープの2つのコピーを含む15アミノ酸リンカーによって分離されたV領域を有する一本鎖抗体に変換した(D1V1scFv−RR−TTと称する)。アジュバントにおけるTTジペプチドによる免疫化後にTTに応答するT細胞の増殖(TTジペプチドを混合したD1V1scFv−RR−TT又はD1V1scFv)を比較した。D1V1scFv−RR−TTを注射した3匹全てのマウスに由来する脾細胞は、ペプチドに対する強い増殖応答を示したが、それはPHA刺激細胞と同等であった。未刺激細胞は、少し増殖しか示さなかった(図4)。scFv及び遊離ジペプチドを注射したマウスのいずれもTTに対する応答を示さかったが、PHAに対する細胞増殖によって、ヒトT細胞の移植の成功が示された。また、TitermaxにおけるTTジペプチドの投与を受けたマウスは、意外にもPHAに対してではなく、TTに対して増殖応答を示した。これらのデータは、主に単量体型となるべきDC−SIGNに対する一本鎖抗体による抗原標的化でも刺激性免疫応答を誘起することを示しており、DC−SIGN分子の二量体化が必要であるとは思われない。
【0175】
癌療法のポテンシャルアジュバントとしてのD1V1−KLH。DC−SIGNによる抗原標的化の最大の目的は、例えば癌抗原又は感染症抗原に対して免疫系を導くことであり、これによって癌細胞又は感染因子の消失が生じる。臍帯血移植マウスを使用した実験の全てにおいて、T細胞の増殖とは、刺激性免疫応答についての読み出し値であった。次に、DC−SIGNによる抗原標的化によって腫瘍成長の阻害が生じるのかどうかについて取り組んだ。再度、D1V1−KLHをモデル系として使用した。ペプチド又は腫瘍溶解物を負荷したDCを含む癌ワクチンにKLHを加えることによって、臨床試験においてワクチン有効性が増加したことが報告された(Ragupathi,G.,et al.2003.Clin Cancer Res 9:5214−5220;Krug,L.M.,et al.2004.Clin Cancer Res 10:6094−6100;Slovin,S.F.2005.Clin Prostate Cancer 4:118−123)。故に、hD1V1(D1V1−KLH)へのKLHの結合によってアジュバントの性質が向上させることができ、それによって免疫系による腫瘍細胞死滅が増加するのかどうかについて取り組んだ。免疫欠損マウス(NOD/SCID)におけるヒト腫瘍成長に対するヒト免疫細胞の効果を評価するのに適切なモデルを事前に確立した。このモデルにおいて、0〜5×10のhPBL及び30,000個のDCと共にバーキット−リンパ種細胞株RAJIの皮下注射は腫瘍成長を阻害しないが、5×10超のhPBLの投与は、有意に腫瘍成長を阻害する。このモデルにおいて、30,000個のDC及び3×10のhPBLを有するD1V1−KLHの投与によって腫瘍成長阻害が生じるかどうかについて評価した。D1V1―KLH投与群の腫瘍成長を、対照抗体構築体5G1.1−KLH又はKLH単独を投与した群の腫瘍成長と比較した。期待された通り、30,000個の未成熟ヒトDCを有する3百万個のhPBLはRAJI細胞の腫瘍成長を有意に阻害しなかったが(図5A)、30,000個の未成熟DCを有する1千万個のhPBLは、腫瘍成長を90%阻害する。D1V1−KLHの投与は、50%腫瘍成長を阻害したが、対照抗体5G1.1−KLH又はKLH単独は、この実験の腫瘍成長に影響を及ぼさなかった。
【0176】
アポトーシス細胞の存在が、場合によってはRAJI由来抗原の提示を増加でき、それによってこの腫瘍モデルにおいてD1V1−KLHの存在下でより強い腫瘍成長阻害が生じるのかどうかを更に評価した。実際、マウスにフルダラビン投与RAJI細胞とフルダラビン未投与RAJI細胞との混合物を注射した場合、腫瘍成長は、5G1.1−KLH及びKLH投与群で50%阻害され、D1V1−KLH投与群で75%阻害された(図5B)。KLH−hD1V1G2/G4による腫瘍成長阻害は、細胞注射後Day31から試験終了まで有意であることが認められた(p<0.05)。この実験を同一のドナーによって反復したところ、テストした投与のいずれかを伴ってRAJI細胞単独を注射したマウスにおいては、有意な腫瘍成長阻害は認められなかったが(図5C)、フルダラビン及び未投与細胞の混合物の投与を受けたマウスにおいては、D1V1−KLHの投与によって約80%の腫瘍成長阻害が生じた(図5D)。
【0177】
これらの実験によって、D1V1−KLHの投与は、KLH又はKLH−5G1.1の投与よりも免疫刺激を高め、それは腫瘍細胞死滅の増加を媒介することが示唆される。D1V1−KLHは、腫瘍ペプチド又は他の型の腫瘍抗原又は腫瘍細胞溶解を生じさせる任意の療法(例えば放射線療法や化学療法)と併用したアジュバントとして治療的に有用である可能性があった。更に、これらの実験は、腫瘍又は感染症抗原を含むように設計されたDC−SIGN抗体が、場合によっては、非標的化免疫化方法と比較して免疫応答の増大を高める可能性があるという原理の証明を提供する。
【0178】
均等物
本発明は、とりわけアジュバント効果を増大させる組成物及び方法を提供するものである。本発明の特定の実施形態が考察されたが、上記の明細書は例示的なものであり、限定的ではない。本発明の多くの変更は、本明細書の概要に基づいて当業者には明らかとなるであろう。本発明の全範囲は、均等物の全範囲と共に特許請求の範囲を参照することによって、及びかかる変更と共に明細書を参照することによって決定されなければならない。
【0179】
参照による引用
本明細書で言及される全ての刊行物及び特許は、下記で一覧が示されるものを含めて、あたかも個々の刊行物又は特許が具体的且つ個別に示され、参考として援用されているかのように、開示内容全体が本明細書で援用される。矛盾する場合、本明細書における全ての定義を含む本出願が支配する。
【0180】
また、The Institute for Genomic Research(TIGR)(www.tigr.org)及び/又はNational Center for Biotechnology Information(NCBI)(www.ncbi.nlm.nih.gov)によって維持されているもの等、公的なデータベース内の項目と相互に関連する受入番号を参照するいかなるポリヌクレオチド及びポリペプチド配列も、その全体が参考として援用される。
【0181】
また、参考として援用されるものは、以下のものである:
【0182】
【化1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アジュバントの効果を増大するための方法であって、抗原提示細胞(APC)の細胞表面マーカーに結合する化合物に結合するアジュバントを含む薬剤を動物に投与することと、それによって抗原提示細胞(APC)に対してアジュバントを標的化させることと、該化合物または該アジュバント以外の抗原に対する免疫応答を刺激することによって該アジュバントの効果を増大させることとを含む、方法。
【請求項2】
該アジュバントが該化合物に共有結合により結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該化合物がAPCの細胞表面マーカーに結合する抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該抗体が抗体の抗原結合フラグメントである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
該抗体が内部移行抗体である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
該抗体がヒト化抗体である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
該細胞表面マーカーが内部移行受容体である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
該APCが樹状細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
該細胞表面マーカーがC−型レクチンである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
該細胞表面マーカーがDC−SIGNである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
DC−SIGNに結合する該化合物が、マンノース炭水化物、フコース炭水化物、植物レクチン、抗生物質、糖、タンパク質又は抗体である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
DC−SIGNに結合する該化合物が抗体である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
該抗体がモノクローナル抗体である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
該アジュバントが、ミネラル塩、小分子、サポニン、多糖類、脂質、核酸、タンパク質又はペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
該アジュバントがタンパク質である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
該アジュバントが脂質でない、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
該タンパク質がキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)又はカルメット・ゲラン桿菌(BCG)である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
該動物がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
該アジュバントが自然免疫応答を刺激する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
該動物が予め該アジュバントを接種されない、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
該薬剤が医薬組成物に製剤化される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
該医薬組成物が更に抗原を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
該薬剤が該化合物に結合する抗原を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
該抗原が該化合物に共有結合する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
該薬剤が医薬組成物に製剤化される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
該医薬組成物が、更に、該化合物に結合しない抗原を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記化合物に結合する前記抗原及び前記化合物に結合しない前記抗原は同じものである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
該抗原が核酸ワクチンでない、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
該抗原がタンパク質又はペプチドである、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
免疫応答を刺激することを必要とする動物において免疫応答を刺激するための方法であって、抗原提示細胞(APC)の細胞表面マーカーに結合する化合物に結合するアジュバントを含む薬剤を該動物に投与することを含み、該薬剤が前記化合物または前記アジュバント以外の抗原に対する免疫応答を刺激する、方法。
【請求項31】
該アジュバントが共有結合によって該化合物に結合する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
該化合物がAPCの細胞表面マーカーと結合する抗体である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
該抗体が抗体の抗原結合フラグメントである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
該抗体が内部移行抗体である、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
該抗体がヒト化抗体である、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
該細胞表面マーカーが内部移行受容体である、請求項30に記載の方法。
【請求項37】
該APCが樹状細胞である、請求項30に記載の方法。
【請求項38】
該細胞表面マーカーがC−型レクチンである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
該細胞表面マーカーがDC−SIGNである、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
DC−SIGNに結合する該化合物が、マンノース炭水化物、フコース炭水化物、植物レクチン、抗生物質、糖、タンパク質又は抗体である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
DC−SIGNに結合する該化合物が抗体である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
該抗体がモノクローナル抗体である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
該アジュバントが、ミネラル塩、小分子、サポニン、多糖類、脂質、核酸、タンパク質又はペプチドである、請求項30に記載の方法。
【請求項44】
該アジュバントがタンパク質である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
該アジュバントが脂質でない、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
該タンパク質がキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)又はカルメット・ゲラン桿菌(BCG)である、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
該薬剤が腫瘍関連抗原に対する免疫応答を刺激する、請求項30に記載の方法。
【請求項48】
該薬剤が病原体感染と関連した抗原に対する免疫応答を刺激する、請求項30に記載の方法。
【請求項49】
該動物がヒトである、請求項30に記載の方法。
【請求項50】
該薬剤が自然免疫応答を刺激する請求項30に記載の方法。
【請求項51】
該動物が予め該アジュバントを接種されない、請求項30に記載の方法。
【請求項52】
該薬剤が医薬組成物に製剤化される、請求項30に記載の方法。
【請求項53】
該医薬組成物が更に抗原を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
該薬剤が該化合物に結合する抗原を更に含む、請求項30に記載の方法。
【請求項55】
該抗原が該化合物に共有結合する、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
該薬剤が医薬組成物に製剤化される、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
該医薬組成物が、更に、該化合物に結合しない抗原を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記化合物に結合する前記抗原及び前記化合物に結合しない前記抗原は同じものである、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
該抗原が核酸ワクチンでない、請求項53に記載の方法。
【請求項60】
該抗原がタンパク質又はペプチドである、請求項53に記載の方法。
【請求項61】
動物において免疫応答を刺激するための方法であって、アジュバントに共有結合するDC−SIGN特異抗体を含むAPC標的化剤を該動物に投与することを含み、該APC標的化剤が前記DC−SIGN特異抗体又は前記アジュバント以外の抗原に対する免疫応答を刺激し、該動物が予め該アジュバントを接種されない、方法。
【請求項62】
抗原提示細胞(APC)の細胞表面マーカーに結合する化合物と、アジュバントと、抗原とを含む免疫刺激剤であって、前記化合物、アジュバント及び抗原が結合している免疫刺激剤。
【請求項63】
該化合物、該抗原及び該アジュバントが共有結合する、請求項60に記載の免疫刺激剤。
【請求項64】
該化合物及び該抗原が該アジュバントに結合する、請求項62に記載の免疫刺激剤。
【請求項65】
該化合物及び該アジュバントが該抗原に結合する、請求項62に記載の免疫刺激剤。
【請求項66】
該アジュバント及び該抗原が該化合物に結合する、請求項63に記載の免疫刺激剤。
【請求項67】
該抗原が腫瘍関連抗原である、請求項62に記載の免疫刺激剤。
【請求項68】
該抗原が病原体に由来する抗原である、請求項62に記載の免疫刺激剤。
【請求項69】
該抗原が核酸ワクチンでない、請求項62に記載の免疫刺激剤。
【請求項70】
該抗原がタンパク質又はペプチドである、請求項62に記載の免疫刺激剤。
【請求項71】
該アジュバントが、ミネラル塩、小分子、サポニン、多糖類、脂質、核酸、タンパク質又はペプチドである、請求項62に記載の免疫刺激剤。
【請求項72】
該アジュバントがタンパク質である、請求項66に記載の免疫刺激剤。
【請求項73】
該アジュバントが脂質でない、請求項62に記載の免疫刺激剤。
【請求項74】
該タンパク質がキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)又はカルメット・ゲラン桿菌(BCG)である、請求項70に記載の免疫刺激剤。
【請求項75】
該化合物が、APCの細胞表面マーカーと結合する抗体である、請求項62に記載の免疫刺激剤。
【請求項76】
該抗体がヒト化抗体である、請求項75に記載の免疫刺激剤。
【請求項77】
該抗体が抗体の抗原結合フラグメントである、請求項75に記載の免疫刺激剤。
【請求項78】
該抗体が内部移行抗体である、請求項75に記載の免疫刺激剤。
【請求項79】
該抗原が重鎖定常領域のC末端に結合する、請求項75に記載の免疫刺激剤。
【請求項80】
該抗原が、前記抗体の相補性決定領域(CDR)又は前記抗体の定常領域に組み込まれる、請求項75に記載の免疫刺激剤。
【請求項81】
該化合物が、内部移行受容体である細胞表面マーカーと結合する、請求項62に記載の免疫刺激剤。
【請求項82】
該化合物が樹状細胞の細胞表面マーカーと結合する、請求項62に記載の免疫刺激剤。
【請求項83】
該細胞表面マーカーがC−型レクチンである、請求項82に記載の免疫刺激剤。
【請求項84】
該細胞表面マーカーがDC−SIGNである、請求項82に記載の免疫刺激剤。
【請求項85】
DC−SIGNに結合する該化合物が、マンノース炭水化物、フコース炭水化物、植物レクチン、抗生物質、糖、タンパク質又は抗体である、請求項84に記載の免疫刺激剤。
【請求項86】
DC−SIGNに結合する該化合物が抗体である、請求項85に記載の免疫刺激剤。
【請求項87】
該抗体がモノクローナル抗体である、請求項86に記載の免疫刺激剤。
【請求項88】
請求項62に記載の免疫刺激剤と薬学的に許容される担体とを含む組成物。
【請求項89】
該化合物に結合しない抗原を更に含む請求項88に記載の組成物。
【請求項90】
前記化合物に結合する前記抗原及び該化合物に結合しない前記抗原は同じものである、請求項88に記載の組成物。
【請求項91】
抗原提示細胞(APC)の細胞表面マーカーに結合する化合物と、アジュバントと、抗原とを含む免疫刺激組成物であって、前記アジュバント又は前記抗原の内の少なくとも1つが該化合物に結合する、免疫刺激組成物。
【請求項92】
前記アジュバント又は前記抗原の内の少なくとも1つが該化合物に共有結合する、請求項91に記載の免疫刺激組成物。
【請求項93】
該アジュバントが該化合物に結合する、請求項91に記載の免疫刺激組成物。
【請求項94】
該抗原が該アジュバントに結合する、請求項93に記載の免疫刺激組成物。
【請求項95】
該抗原が該化合物に結合する、請求項91に記載の免疫刺激組成物。
【請求項96】
該アジュバントが該抗原に結合する、請求項95に記載の免疫刺激組成物。
【請求項97】
該アジュバント及び該抗原が該化合物に結合する、請求項91に記載の免疫刺激組成物。
【請求項98】
該抗原が腫瘍関連抗原である、請求項91に記載の免疫刺激組成物。
【請求項99】
該抗原が病原体に由来する抗原である、請求項91に記載の免疫刺激組成物。
【請求項100】
該抗原が核酸ワクチンでない、請求項91に記載の免疫刺激組成物。
【請求項101】
該抗原がタンパク質又はペプチドである、請求項91に記載の免疫刺激組成物。
【請求項102】
該アジュバントが、ミネラル塩、小分子、サポニン、多糖類、脂質、核酸、タンパク質又はペプチドである、請求項91に記載の免疫刺激組成物。
【請求項103】
該アジュバントがタンパク質である、請求項102に記載の免疫刺激組成物。
【請求項104】
該アジュバントが脂質でない、請求項91に記載の免疫刺激組成物。
【請求項105】
該タンパク質がキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)又はカルメット・ゲラン桿菌(BCG)である、請求項103に記載の免疫刺激組成物。
【請求項106】
該化合物が、APCの細胞表面マーカーと結合する抗体である、請求項91に記載の免疫刺激組成物。
【請求項107】
該抗体がヒト化抗体である、請求項106に記載の免疫刺激組成物。
【請求項108】
該抗体が抗体の抗原結合フラグメントである、請求項106に記載の免疫刺激剤。
【請求項109】
該抗体が内部移行抗体である、請求項106に記載の免疫刺激組成物。
【請求項110】
該化合物が、内部移行受容体である細胞表面マーカーと結合する、請求項91に記載の免疫刺激組成物。
【請求項111】
該化合物が樹状細胞の細胞表面マーカーと結合する、請求項91に記載の免疫刺激組成物。
【請求項112】
該細胞表面マーカーがC−型レクチンである、請求項111に記載の免疫刺激組成物。
【請求項113】
該細胞表面マーカーがDC−SIGNである、請求項111に記載の免疫刺激組成物。
【請求項114】
DC−SIGNに結合する該化合物が、マンノース炭水化物、フコース炭水化物、植物レクチン、抗生物質、糖、タンパク質又は抗体である、請求項113に記載の免疫刺激組成物。
【請求項115】
DC−SIGNに結合する該化合物が抗体である、請求項114に記載の免疫刺激組成物。
【請求項116】
該抗体がモノクローナル抗体である、請求項115に記載の免疫刺激組成物。
【請求項117】
薬学的に許容される担体を更に含む、請求項91に記載の免疫刺激組成物。


【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図1D】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図5C】
image rotate

【図5D】
image rotate


【公表番号】特表2010−504970(P2010−504970A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530390(P2009−530390)
【出願日】平成19年9月24日(2007.9.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/020634
【国際公開番号】WO2008/039432
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(503102674)アレクシオン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (51)
【出願人】(508111958)
【Fターム(参考)】