説明

アスタキサンチンの結晶形

本発明は、従来開示されていない、アスタキサンチンの特定の結晶形の混合物、ならびに結晶形IおよびIIと指定される個々の結晶形を、その結晶形を作製するための方法と合わせて記載する。生命科学産業のための、上記新規なアスタキサンチン結晶形を含む栄養投与形態を作製するための方法も開示する。さらに、本発明は、異なる量の(他の)カロテノイド化合物と合わせて、規定した量の全トランス−アスタキサンチンを含む結晶形Iおよび結晶形IIならびにその組合せを記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスタキサンチンを含む結晶形、関連するプロセス、組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サケ類における血漿摂取および肉付き(flesh deposition)を改善するために、良好な経口での生物学的利用能を有するアスタキサンチンなどの着色剤を供給することは、特に魚類用飼料生産者や養殖業者にとって重要な問題である。生理学的環境における溶解度が小さいので、魚飼料ペレットや他の栄養投与形態のアスタキサンチン結晶を投与しても、着色剤の十分な経口摂取は得られない。生物的に着色剤をより利用できるようにすべく、飼料ペレットに加工するのに水に分散性である粒子状アスタキサンチン組成物を作製するためのいくつかの方法が開発されてきた。分散性組成物は、結晶性アスタキサンチンを、高温高圧下で溶媒(特許文献1および特許文献2)または油類(特許文献3)中に溶解させ、続いて直ちに、その有機溶液を水性親水コロイド中に分散させることによって作製される。あるいは、カロテノイドを水性賦形剤マトリックス中に溶解させ、溶媒または油(特許文献4)を用いないで加圧下で乳化させる。水分散液から粉末処方物を作製するために、どの方法もさらなる処理を必要とする。X線回折およびラマン分光法によって示されるような結晶構造の点から見て用いるタイプのアスタキサンチン結晶は、どの開示においても記載されていない。アスタキサンチン組成物を作製するのに骨の折れる状態を必要とするにも関わらず、生産により好都合な方法を確立する方向への努力はほとんどなされてこなかった。エネルギーおよび溶媒の消費削減のための1つの方法は、有利な溶解性、溶融性または安定性を有する異なる結晶形態のアスタキサンチンを利用することができ、それにより加工条件がよりゆるくなる。驚くべきことに、特定の結晶形態のアスタキサンチン、およびアスタキサンチン組成物を作製するためのその潜在的有用性に関しては特に開示がなされていない。異なる結晶形態は、インビボでの溶出速度に影響を及ぼすことが可能であり、油状の投与媒体中で、カロテノイドの(過飽和)濃度をより高くできるようにし、それによって、より高い経口摂取および生物学的利用能を提供することができる。
【特許文献1】米国特許第6,863,914号明細書
【特許文献2】米国特許第6,406,735号明細書
【特許文献3】米国特許第5,364,563号明細書
【特許文献4】米国特許第6,093,348号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
米国特許第6,827,941号は、アセトン中に希釈したアスタキサンチン溶液(50mg/リットル)を、続いて水/アセトン7/3(容積/容積)で20倍希釈して作製したアスタキサンチンの無定形凝集体を記載している。しかし、特定の結晶形態の形成に関しては触れられていない。米国特許第5,654,458号は、ウィッティヒ法を用いた反応混合物からのトランス−アスタキサンチンの合成および結晶化を記載しているが、得られた1種または複数の結晶構造を明確にすることはできていない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、本明細書で結晶形Iおよび結晶形IIと指定したアスタキサンチンを含む、これまで開示されていない新規な結晶形の混合物、および前記結晶形を作製するための方法に関する。さらに、本発明は、異なる量の(他の)カロテノイド化合物と合わせて、規定した量の全トランス−アスタキサンチンを含む結晶形Iおよび結晶形IIならびにその組合せを記載する。本発明は、結晶形Iもしくは結晶形IIまたはその組合せを含む投与形態、および油または有機溶媒に溶解または懸濁された結晶形Iまたは結晶形IIあるいはその組合せの使用をさらに包含する。溶液または分散液は、親水性または親油性の分散剤キャリア中にアスタキサンチンを含む固体組成物を作製するために用いることができ、また、アスタキサンチンの物理的形態物を作製するためにも用いることができる。
【0005】
本発明では以下の定義を適用する。
【0006】
「アスタキサンチン」は、25重量%以下の他のカロテノイド化合物(アスタキサンチンのシス異性体を含む)と一緒に全トランス−アスタキサンチン(3,3’−ジヒドロキシ−β,β−カロテン−4,4’−ジオン)を含む。
【0007】
「カロテノイド化合物」は、アスタキサンチン代謝産物、合成または天然のアスタキサンチン誘導体、例えばエーテル化またはエステル化された酸化または水素化生成物およびシス異性体を含む。この用語は、アスタキサンチンの合成または結晶化の間、あるいは天然物からのアスタキサンチンの抽出工程の間に生成する副生物を含む。典型的なアスタキサンチン関連カロテノイド化合物は、例えば9−シスアスタキサンチン、13−シス−アスタキサンチン、15−シス−アスタキサンチン、アスタシン、セミ−アスタシンおよびC−25アルデヒド(CAS番号72523−68−3を有する、全トランス−3−ヒドロキシ−4−オキソ−12’−アポ−ベータ−カロテン−12’−アル)である。この用語は、具体的には全トランス−アスタキサンチンを排除する。この用語は、21CFR73.35に記載されているアスタキサンチンのためのUS−FDA(米国食品医薬品局)仕様における「アスタキサンチン以外の全カロテノイド」の要件を包含する。
【0008】
「モル%」は、全トランス−アスタキサンチンとカロテノイド化合物の合計であるカロテノイドの合計モル含量に対する結晶形の純度を示す。
【0009】
図に示したX線粉末回折またはラマンスペクトルと「実質的に一致する」ということは、同じピークおよび極小の配列を示し、同一波数で同じ前記ピークと極小の強度比(ラマン)ならびにシータおよび格子間間隔位置d(X線)を示す任意のスペクトルが、±5%の標準偏差内で、図1および図2にそれぞれ示すアスタキサンチン結晶形IのX線およびラマンスペクトル、あるいは、図3および図4にそれぞれ示す結晶形IIのX線およびラマンスペクトルの特徴と一致することを意味する。
【0010】
「約」とは、結晶形Iもしくは結晶形IIまたはその混合物を作製するための溶液中あるいは前記結晶形中におけるカロテノイド化合物のモル%で、限度の両側について20%の標準偏差であることを指す。
【0011】
「親油性分散剤」は、固体組成物中にアスタキサンチンの分子もしくはコロイド分散体または凝集体を組み込む特性を有する、室温で5mg/ml以下の水への溶解度を有する固体物質である。
【0012】
「親水性分散剤」は、水相でのアスタキサンチンの懸濁性を高める湿潤剤として作用する特性を有する、室温で5mg/mlを超える水への溶解度を有する固体物質である。この定義は、またo/w型乳化剤、ポリマーおよび親水コロイドも指す。
【0013】
「固体組成物」は、共通の溶媒または溶媒の組合せの中にカロテノイドと親油性または親水性の分散剤を溶解し、続いて溶媒または溶媒混合物を除去することによって作製される固体マトリックス中に、アスタキサンチンが分配されていることを意味する。
【0014】
「水混和性溶媒」は、相分離することなく水と任意の比で混合することができる溶媒、例えばエタノールを意味する。
【0015】
「水非混和性溶媒」は、相分離なしでは水と部分的にしか混合することができない溶媒、例えばジクロロメタンを意味する。
【0016】
「アンチソルベント」は、その中に全トランス−アスタキサンチンとカロテノイド化合物が溶解するが、特定の結晶形態の結晶化を引き起こす温度で、(アスタキサンチンに対して)溶解能力が低いかまたはほとんど溶媒特性を有していない溶媒と混和性である結晶化液体である。この定義には水も含まれる。定義によれば、アスタキサンチンは、室温またはそれ以下でアンチソルベント、例えばメタノール中に1mg/ml未満の溶解度を有する。
【0017】
「生命科学産業」には、食品、飼料、医薬、水産養殖、化粧品、栄養補給食品および獣医関連産業が含まれる。
【0018】
本発明は、天然または合成のアスタキサンチンを含む「結晶形」および「着色剤組成物」の分野におけるものである。
【0019】
本発明では以下の実施形態、すなわち
a)i)以下の格子間平面間隔d(10−10m):8.0±0.1、6.5±0.05、6.3±0.05、6.1±0.05、5.96±0.05、5.58±0.05、5.43±0.05、4.87±0.05、4.32±0.05、4.24±0.05、4.21±0.05、4.07±0.05、4.03±0.05、3.58±0.05、3.50±0.05を含むX線回折パターン、および
ii)372±2、346±2、333±2、312±2、289±2、234±2、193±2、178±2133±2、82±2cm−1でのピークを含むラマンスペクトル
の少なくとも1つ、ならびに任意選択で、
iii)212〜222℃で相転移を示すDSCスキャン、および
iv)20℃〜25℃で35〜45g/lのジクロロメタン中の溶解プロファイル
の少なくとも1つを特徴とする結晶形Iと、
b)i)以下の格子間平面間隔d(10−10m):7.2±0.1、6.6±0.05、6.5±0.05、5.48±0.05、5.34±0.05、5.27±0.05、4.49±0.05、4.38±0.05、4.12±0.05、3.89±0.05、3.61±0.05、3.56±0.05、3.34±0.05、3.32±0.05、3.22±0.05を含むX線回折パターン、および
ii)376±2、337±2、314±2、304±2、289±2、206±2、180±2、137±2、107±2、93±2cm−1でのピークを含むラマンスペクトル
の少なくとも1つ、ならびに任意選択で
iii)225〜240℃で相転移を示すDSCスキャン、および
iv)20℃〜25℃で10〜30g/lのジクロロメタン中の溶解プロファイル
の少なくとも1つを特徴とする結晶形IIと
を含む結晶形態のアスタキサンチンから本質的になる混合物を説明する。
【0020】
好ましい実施形態は、
20重量%〜80重量%の結晶形Iと指定される結晶形態のアスタキサンチンと、
80重量%〜20重量%の結晶形IIと指定される結晶形態のアスタキサンチンから本質的になる混合物に関する。
【0021】
好ましい実施形態は、
10重量%〜90重量%の結晶形Iと指定される結晶形態のアスタキサンチンと、
90重量%〜10重量%の結晶形IIと指定される結晶形態のアスタキサンチンから本質的になる混合物に関する。
【0022】
好ましい実施形態は、
95重量%〜5重量%の結晶形Iと指定される結晶形態のアスタキサンチンと、
5重量%〜95重量%の結晶形IIと指定される結晶形態のアスタキサンチンから本質的になる混合物に関する。
【0023】
好ましい実施形態は、
99.9重量%〜0.1重量%の結晶形Iと指定される結晶形態のアスタキサンチンと、
0.1重量%〜99.9重量%の結晶形IIと指定される結晶形態のアスタキサンチンから本質的になる混合物に関する。
【0024】
他の実施形態は、
i)以下の格子間平面間隔d(10−10m):8.0±0.1、6.5±0.05、6.3±0.05、6.1±0.05、5.96±0.05、5.58±0.05、5.43±0.05、4.87±0.05、4.32±0.05、4.24±0.05、4.21±0.05、4.07±0.05、4.03±0.05、3.58±0.05、3.50±0.05を含むX線回折パターン、および
ii)372±2、346±2、333±2、312±2、289±2、234±2、193±2、178±2、133±2、82±2cm−1でのピークを含むラマンスペクトル
の少なくとも1つ、ならびに任意選択で、
iii)212〜222℃で相転移を示すDSCスキャン、および
iv)20℃〜25℃で35〜45g/lのジクロロメタン中の溶解プロファイル
の少なくとも1つを特徴とする結晶形Iと指定される結晶形態のアスタキサンチンを含む組成物に関する。
【0025】
他の実施形態は、
i)以下の格子間平面間隔d(10−10m):7.2±0.1、6.6±0.05、6.5±0.05、5.48±0.05、5.34±0.05、5.27±0.05、4.49±0.05、4.38±0.05、4.12±0.05、3.89±0.05、3.61±0.05、3.56±0.05、3.34±0.05、3.32±0.05、3.22±0.05を含むX線回折パターン、および
ii)376±2、337±2、314±2、304±2、289±2、206±2、180±2、137±2、107±2、93±2cm−1でのピークを含むラマンスペクトルでのピークを含むラマンスペクトル
の少なくとも1つ、ならびに任意選択で、
iii)225〜240℃で相転移を示すDSCスキャン、および
iv)20℃〜25℃で10〜30g/lのジクロロメタン中の溶解プロファイル
の少なくとも1つを特徴とする結晶形IIと指定される結晶形態のアスタキサンチンを含む組成物に関する。
【0026】
本発明の他の対象は、賦形剤を結晶形Iに加えることを含む上記組成物を作製するための方法、および賦形剤を結晶形IIに加えることを含む方法である。
【0027】
特に好ましい実施形態は、
i)以下の格子間平面間隔d(10−10m):8.0±0.1、6.5±0.05、6.3±0.05、6.1±0.05、5.96±0.05、5.58±0.05、5.43±0.05、4.87±0.05、4.32±0.05、4.24±0.05、4.21±0.05、4.07±0.05、4.03±0.05、3.58±0.05、3.50±0.05を含むX線回折パターン、および
ii)372±2、346±2、333±2、312±2、289±2、234±2、193±2、178±2、133±2、82±2cm−1でのピークを含むラマンスペクトル
の少なくとも1つ、ならびに任意選択で
iii)212〜227℃で相転移を示すDSCスキャン、および
iv)20℃〜25℃で35〜45g/lのジクロロメタン中の溶解プロファイル
の少なくとも1つを特徴とする結晶形Iと指定される結晶形態のアスタキサンチンに関する。
【0028】
特に好ましい実施形態は、図1に示すX線粉末回折スペクトルとほぼ一致するX線粉末回折パターンを有する結晶形Iと指定される結晶形態のアスタキサンチンに関する。
【0029】
特に好ましい実施形態は、図2に示すラマンスペクトルとほぼ一致するラマンスペクトルを有する結晶形Iと指定される結晶形態のアスタキサンチンに関する。
【0030】
他の好ましい実施形態は、
i)以下の格子間平面間隔d(10−10m):8.0±0.1、6.5±0.05、6.3±0.05、6.1±0.05、5.96±0.05、5.58±0.05、5.43±0.05、4.87±0.05、4.32±0.05、4.24±0.05、4.21±0.05、4.07±0.05、4.03±0.05、3.58±0.05、3.50±0.05を含むX線回折パターン、および
ii)372±2、346±2、333±2、312±2、289±2、234±2、193±2、178±2、133±2、82±2cm−1でのピークを含むラマンスペクトル
の少なくとも1つ、ならびに任意選択で
v)212〜222℃で相転移を示すDSCスキャン、および
vi)20℃〜25℃で35〜45g/lのジクロロメタン中の溶解プロファイル
の少なくとも1つを特徴とし、
全トランス−アスタキサンチンと、少なくとも約13モル%の少なくとも1つのカロテノイド化合物とを含む結晶形Iと指定される結晶形態のアスタキサンチンに関する。
【0031】
他の好ましい実施形態は、
i)以下の格子間平面間隔d(10−10m):8.0±0.1、6.5±0.05、6.3±0.05、6.1±0.05、5.96±0.05、5.58±0.05、5.43±0.05、4.87±0.05、4.32±0.05、4.24±0.05、4.21±0.05、4.07±0.05、4.03±0.05、3.58±0.05、3.50±0.05を含むX線回折パターン、および
ii)372±2、346±2、333±2、312±2、289±2、234±2、193±2、178±2、133±2、82±2cm−1でのピークを含むラマンスペクトル
の少なくとも1つ、ならびに任意選択で
iii)212〜222℃で相転移を示すDSCスキャン、および
iv)20℃〜25℃で35〜45g/lのジクロロメタン中の溶解プロファイル
の少なくとも1つを特徴とし、
全トランス−アスタキサンチンと、9−シス−アスタキサンチン、13−シスアスタキサンチン、15−シス−アスタキサンチン、アスタシン、セミ−アスタシンおよびC−25アルデヒドからなる群から選択される少なくとも約13モル%の少なくとも1つのカロテノイド化合物とを含む結晶形Iと指定される結晶形態のアスタキサンチンに関する。
【0032】
他の特に好ましい実施形態は、
i)以下の格子間平面間隔d(10−10m):7.2±0.1、6.6±0.05、6.5±0.05、5.48±0.05、5.34±0.05、5.27±0.05、4.49±0.05、4.38±0.05、4.12±0.05、3.89±0.05、3.61±0.05、3.56±0.05、3.34±0.05、3.32±0.05、3.22±0.05を含むX線回折パターン、および
ii)376±2、337±2、314±2、304±2、289±2、206±2、180±2、137±2、107±2、93±2cm−1でのピークを含むラマンスペクトル
の少なくとも1つ、ならびに任意選択で
iii)225〜240℃で相転移を示すDSCスキャン、および
iv)20℃〜25℃で10〜30g/lのジクロロメタン中の溶解プロファイル
の少なくとも1つを特徴とする結晶形IIと指定される結晶形態のアスタキサンチンに関する。
【0033】
特に好ましい実施形態は、図3に示すX線粉末回折スペクトルとほぼ一致するX線粉末回折パターンを有する結晶形IIと指定される結晶形態のアスタキサンチンに関する。
【0034】
特に好ましい実施形態は、図4に示すラマンスペクトルとほぼ一致するラマンスペクトルを有する結晶形IIと指定される結晶形態のアスタキサンチンに関する。
【0035】
他の特に好ましい実施形態は、
i)以下の格子間平面間隔d(10−10m):7.2±0.1、6.6±0.05、6.5±0.05、5.48±0.05、5.34±0.05、5.27±0.05、4.49±0.05、4.38±0.05、4.12±0.05、3.89±0.05、3.61±0.05、3.56±0.05、3.34±0.05、3.32±0.05、3.22±0.05を含むX線回折パターン、および
ii)376±2、337±2、314±2、304±2、289±2、206±2、180±2、137±2、107±2、93±2cm−1でのピークを含むラマンスペクトル
の少なくとも1つ、ならびに任意選択で
iii)225〜240℃で相転移を示すDSCスキャン、および
iv)20℃〜25℃で10〜30g/lのジクロロメタン中の溶解プロファイル
の少なくとも1つを特徴とし、
全トランス−アスタキサンチンと、最大で約7モル%の少なくとも1つのカロテノイド化合物とを含む結晶形IIと指定される結晶形態のアスタキサンチンに関する。
【0036】
他の特に好ましい実施形態は、
i)以下の格子間平面間隔d(10−10m):7.2±0.1、6.6±0.05、6.5±0.05、5.48±0.05、5.34±0.05、5.27±0.05、4.49±0.05、4.38±0.05、4.12±0.05、3.89±0.05、3.61±0.05、3.56±0.05、3.34±0.05、3.32±0.05、3.22±0.05を含むX線回折パターン、および
ii)376±2、337±2、314±2、304±2、289±2、206±2、180±2、137±2、107±2、93±2cm−1でのピークを含むラマンスペクトル
の少なくとも1つ、ならびに任意選択で
iii)225〜240℃で相転移を示すDSCスキャン、および
iv)20℃〜25℃で10〜30g/lのジクロロメタン中の溶解プロファイル
の少なくとも1つを特徴とし、
全トランス−アスタキサンチンと、少なくとも1つの9−シスアスタキサンチン、13−シス−アスタキサンチン、15−シス−アスタキサンチン、アスタシン、セミ−アスタシンおよびC−25アルデヒドからなる群から選択される最大で約7モル%の少なくとも1つのカロテノイド化合物とを含む結晶形IIと指定される結晶形態のアスタキサンチンに関する。
【0037】
他の特に好ましい実施形態は、
i)以下の格子間平面間隔d(10−10m):7.2±0.1、6.6±0.05、6.5±0.05、5.48±0.05、5.34±0.05、5.27±0.05、4.49±0.05、4.38±0.05、4.12±0.05、3.89±0.05、3.61±0.05、3.56±0.05、3.34±0.05、3.32±0.05、3.22±0.05を含むX線回折パターン、および
ii)376±2、337±2、314±2、304±2、289±2、206±2、180±2、137±2、107±2、93±2cm−1でのピークを含むラマンスペクトル
の少なくとも1つ、ならびに任意選択で
iii)225〜240℃で相転移を示すDSCスキャン、および
iv)20℃〜25℃で10〜30g/lのジクロロメタン中の溶解プロファイル
の少なくとも1つを特徴とし、
表1に示すUS−FDAの21CFR73.35に記載の以下の仕様に適合する結晶形IIと指定される結晶形態のアスタキサンチンに関する。
【0038】
【化2】

他の実施形態は、少なくとも5重量/重量%の形態Iまたは形態IIを含む、指定した結晶形Iおよび結晶形IIの結晶形態のアスタキサンチンの混合物を作製するための方法であって、
i)全トランス−アスタキサンチンと、少なくとも1つの9−シス−アスタキサンチン、13−シス−アスタキサンチン、15−シスアスタキサンチン、アスタシン、セミ−アスタシンおよびC−25アルデヒドからなる群から選択される約7モル%〜約17モル%の少なくとも1つのカロテノイド化合物とを含むアスタキサンチンの混合物を、溶媒の沸点までの温度でアスタキサンチンの溶解度が少なくとも1mg/mlである溶媒に溶解させる工程と、iia)アンチソルベントを添加する工程、iib)蒸発によるかまたは任意選択で溶媒をアンチソルベントと同時交換することによって溶媒を除去する工程、およびiic)核形成剤、あるいは結晶形IもしくはIIまたはその混合物を含むシードを任意選択で含有する有機溶媒溶液を冷却する工程からなる群から選択されるさらなる工程と、iii)結晶を収集し、アンチソルベントで洗浄し、乾燥する工程とを含む方法に関する。
【0039】
他の実施形態は、結晶形Iと指定される結晶形態のアスタキサンチンを作製するための方法であって、i)全トランス−アスタキサンチンと、少なくとも9−シス−アスタキサンチン、13−シス−アスタキサンチン、15−シス−アスタキサンチン、アスタシン、セミ−アスタシンおよびC−25アルデヒドからなる群から選択される少なくとも約13モル%の少なくとも1つのカロテノイド化合物とを含むアスタキサンチンの混合物を、溶媒の沸点までの温度でアスタキサンチンの溶解度が少なくとも1mg/mlである溶媒に溶解させる工程と、iia)アンチソルベントを添加する工程、iib)蒸発によるかまたは任意選択で溶媒をアンチソルベントと同時に交換することによって溶媒を除去する工程、およびiic)核形成剤、または結晶形Iを含むシードを任意選択で含有する有機溶媒溶液を冷却する工程からなる群から選択されるさらなる工程と、iii)結晶を収集し、アンチソルベントで洗浄し、乾燥する工程とを含む方法に関する。
【0040】
他の実施形態は、結晶形Iと指定される結晶形態のアスタキサンチンを作製するための方法であって、i)全トランス−アスタキサンチンと、少なくとも1つの9−シス−アスタキサンチン、13−シス−アスタキサンチン、15−シス−アスタキサンチン、アスタシン、セミ−アスタシンおよびC−25アルデヒドからなる群から選択される少なくとも約13モル%の少なくとも1つのカロテノイド化合物とを含むアスタキサンチンの混合物を、溶媒の沸点までの温度でジクロロメタン、トリクロロエタン、クロロホルム、ジメトキシメタン、ジエトキシエタン、ジオキサシクロペンタン、THF、NMP、N−エチルピロリドン、トルエン、ピリジンおよび二硫化炭素からなる群から選択される溶媒に溶解させる工程と、iia)メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノールおよび水からなる群から選択されるアンチソルベントを添加する工程、iib)蒸発によるかまたは任意選択で溶媒をアンチソルベントと同時に交換することによって溶媒を除去する工程、およびiic)核形成剤、または結晶形Iを含むシードを任意選択で含有する有機溶媒溶液を冷却する工程からなる群から選択されるさらなる工程と、iii)結晶を収集し、アンチソルベントで洗浄し、乾燥する工程とを含む方法に関する。
【0041】
他の実施形態は、結晶形IIと指定される結晶形態のアスタキサンチンを作製するための方法であって、i)全トランス−アスタキサンチンと、少なくとも9−シス−アスタキサンチン、13−シス−アスタキサンチン、15−シス−アスタキサンチン、アスタシン、セミ−アスタシンおよびC−25アルデヒドからなる群から選択される基本的に最大で約7モル%の少なくとも1つのカロテノイド化合物とを含むアスタキサンチンの混合物を、溶媒の沸点までの温度でアスタキサンチンの溶解度が少なくとも1mg/mlである溶媒に溶解させる工程と、iia)アンチソルベントを添加する工程、iib)蒸発によるかまたは任意選択で溶媒をアンチソルベントと同時に交換することによって溶媒を除去する工程、およびiic)核形成剤、または結晶形Iを含むシードを任意選択で含有する有機溶媒溶液を冷却する工程からなる群から選択されるさらなる工程と、iii)結晶を収集し、アンチソルベントで洗浄し、乾燥する工程とを含む方法に関する。
【0042】
他の実施形態は、結晶形IIと指定される結晶形態のアスタキサンチンを作製するための方法であって、i)全トランス−アスタキサンチンと、少なくとも1つの9−シス−アスタキサンチン、13−シス−アスタキサンチン、15−シスアスタキサンチン、アスタシン、セミ−アスタシンおよびC−25アルデヒドからなる群から選択される本質的に最大で約7モル%の少なくとも1つのカロテノイド化合物とを含むアスタキサンチンを、ジクロロメタン、トリクロロエタン、クロロホルム、ジメトキシメタン、ジエトキシエタン、ジオキサシクロペンタン、THF、NMP、N−エチルピロリドン、トルエン、ピリジンおよび二硫化炭素からなる群から選択される溶媒に溶解させる工程と、iia)アンチソルベントを添加する工程、iib)蒸発によるかまたは任意選択で溶媒をアンチソルベントと同時に交換することによって溶媒を除去する工程、およびiic)核形成剤、または結晶形II含むシードを任意選択で含有する有機溶媒溶液を冷却する工程からなる群から選択されるさらなる工程と、iii)結晶を収集し、アンチソルベントで洗浄し、乾燥する工程とを含む方法に関する。
【0043】
他の実施形態は、結晶形Iと指定される結晶形態のアスタキサンチンまたは結晶形Iと結晶形IIの混合物を作製するための方法であって、i)全トランス−アスタキサンチンと、少なくとも1つの9−シスアスタキサンチン、13−シス−アスタキサンチン、15−シス−アスタキサンチン、アスタシン、セミ−アスタシンおよびC−25アルデヒドからなる群から選択される最大で約7モル%の少なくとも1つのカロテノイド化合物とを含むアスタキサンチンを、ジクロロメタン、トリクロロエタン、クロロホルム、ジメトキシメタン、ジエトキシエタン、ジオキサシクロペンタン、THF、NMP、N−エチルピロリドン、トルエン、ピリジンおよび二硫化炭素からなる群から選択される溶媒に溶解させる工程と、ii)その溶液に熱、光、酸化剤からなる群から選択される少なくとも1つの処理を施す工程と、iiia)アンチソルベントを添加する工程、iiib)蒸発によるかまたは任意選択で溶媒をアンチソルベントと同時に交換することによって溶媒を除去する工程、およびiiic)核形成剤またはシードを加えるか、またはそのどちらも加えずに、有機溶媒溶液を冷却する工程からなる群から選択されるさらなる工程と、iv)結晶を収集し、アンチソルベントで洗浄し、乾燥する工程とからなる結晶化方法を含む方法に関する。
【0044】
本発明の好ましい実施形態は、上記定義の結晶形IおよびIIまたはその混合物を栄養投与形態にさらに加工することを含む方法に関する。
【0045】
他の実施形態は、生命科学産業で使用するためのアスタキサンチンの結晶形IもしくはIIまたはその混合物を含む投与形態である。
【0046】
他の実施形態は、魚飼料産業で使用するために、アスタキサンチンのアスタキサンチン結晶形IもしくはIIまたはその混合物を含む投与形態であって、アスタキサンチンの含量が20重量%未満である投与形態である。
【0047】
他の実施形態は、魚飼料を作製し、生命科学産業で使用するための食用油中のアスタキサンチン結晶形IもしくはIIまたはその混合物の懸濁液を含む投与形態である。
【0048】
他の実施形態は、魚飼料産業や生命科学産業で使用するためのアスタキサンチンを含む投与形態を作製するための方法であって、アスタキサンチン結晶形IもしくはIIまたはその混合物を、有機溶媒もしくは油またはその混合物に溶解させ、続いてその投与形態へさらに加工する方法である。
【0049】
他の実施形態は、生命科学産業で使用するためのアスタキサンチンを含む投与形態を作製するための方法であって、アスタキサンチン結晶形IもしくはIIまたはその混合物を、有機溶媒または油またはその混合物に溶解させ、続いて親油性分散剤を含む投与形態へさらに加工する方法である。
【0050】
他の実施形態は、生命科学産業で使用するためのアスタキサンチンを含む投与形態を作製するための方法であって、アスタキサンチン結晶形IもしくはIIまたはその混合物を、有機溶媒もしくは油またはその混合物に溶解させ、続いて親水性分散剤を含む投与形態へさらに加工する方法である。
【0051】
他の実施形態は、アスタキサンチンを含む油状組成物を作製するための方法であって、その方法が、魚飼料ペレットや他の用途に直接組み込むために結晶形Iもしくは結晶形IIまたはその混合物を、100℃〜230℃の温度で食用油および/または魚油に直接溶解させることを含む方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
(発明を実施するための最良の形態)
カロテノイドは、8つのイソプレノイド単位からなる炭化水素(カロテン)およびその酸化誘導体(キサントフィル)の部類である。カロテノイドの部類の化合物は2つの主要グループ、すなわちカロテンとキサントフィルに分類される。β−カロテンまたはリコピンなどの純粋なポリエン炭化水素であるカロテンに対して、キサントフィルはヒドロキシ、エポキシおよびオキソ基などの官能性部分をさらに含む。キサントフィルのグループの典型的な例はカンタキサンチン、ゼアキサンチンおよびアスタキサンチンである。
【0053】
アスタキサンチンは3,3’−ジヒドロキシ−β,β−カロテン−4,4’−ジオンである。合成アスタキサンチンは7542−45−2のCAS番号を有しており、ジアステレオ異性体(3S,3’S)と、(3R,3’S)と3R,3’R)の1:2:1の混合物である。天然物から単離されたアスタキサンチンは472−61−7のCAS番号を有している。アスタキサンチンは、普通のロブスター(ヨーロピアンロブスター(Homarusgammarus))などの多くの甲殻類、サケ(タイセイヨウサケ(Salamo salar))、フラミンゴの羽(例えばPhoencopterus rubber)に見いだされる色素である。アスタキサンチンは様々な動物、特に、サケ、マス、エビ、マダイ、観賞魚および家禽用の飼料成分として主に用いられる。最近では、天然のアスタキサンチンは食品、栄養補助食品または抗酸化特性を有する化粧品用添加物としても用いられている。
【0054】
アスタキサンチンは、発酵によって得るか(Biotechnol Letters 10(1988年)609〜614頁)、WO−A89/1997や欧州特許第EP329754号に開示されている微細藻類から得ることができる。WO−A86/6082は、甲殻類の貝殻からの抽出による天然物からのアスタキサンチンの単離を開示している。米国特許第2004253664号は、真核微生物を使用するカロテノイド、キサントフィルおよびアポカロテノイドの製造を記載している。天然のアスタキサンチンの抽出のための代替の供給源は、酵母ファフィアロドザイマ(Phaffia rhodozyma)の独占的菌株(proprietary strain)を発酵させて作製される産物であるAquasta(商標)である。アスタキサンチンを得るための他の方法は、米国特許第5,654,488号などの化学的合成を利用する方法である。
【0055】
少量(通常、約50μl〜1000μlのアスタキサンチン有機溶媒溶液)を用いた結晶形態のアスタキサンチンのスクリーニングは、管またはウェルプレートカップを用いて実施する。アンチソルベントを加えるかまたは蒸発させることによって管/カップの中のアスタキサンチンを結晶化させ、その結晶構造を、特徴的なラマンスペクトル、X線粉末回折パターンおよび他の物理的パラメータを測定することによって評価する。基本的に様々なレベルの異なるカロテノイド化合物を含有する少量のアスタキサンチンを用いて制御結晶化を行うと、意外にも、個別にかまたは混合物中で一緒に形成されたアスタキサンチンの区別できる2つの結晶形が得られる。「ベストフィット」を得るために、結晶形の混合物を複数の既知の重量比で、測定したラマンスペクトルを2つの形態の平均的個別スペクトルと比較することによって、個々の形態の含量を評価する。混合物中に別個の2つの形態が存在するということは、特徴的なラマンスペクトルにおいて反映される。そこでは、「ベストフィット」スペクトルに寄与する個々の形態物Iおよび形態物IIのスペクトルのピーク以外に特徴的な他のピークは確認されていない。アスタキサンチンの毒性、溶解度および安定性に関して(例えば溶媒残渣)、工業的に妥当な極性、非極性、非プロトン性およびプロトン性溶媒を用いた溶媒除去および結晶回収に関連する因子を試験する。それによって、驚くべきことに、アスタキサンチン結晶形Iまたは11の生成は、用いた溶媒または結晶化方法の影響を受けず、基本的にはカロテノイド化合物の存在およびその濃度によって支配されることが分かる。意外にも、アスタキサンチンは、結晶を作製するための条件に応じて、2つの区別できる結晶形また2つの形態の混合物として存在することができる。これは明らかに、工業的に有用な2つの結晶形およびその2つの形態の混合物を、アスタキサンチンの溶液から、制御された条件下で作製することができることを示している。
【0056】
魚飼料および栄養用途ならびに生命科学産業の他の部門のためのアスタキサンチン組成物の作製の既知の技術では、融点、有機溶媒への溶解度、DSCスキャンなどの少なくとも1つの他の物理的パラメータに加えて、X線粉末回折パターンやラマンスペクトルによって明確に特徴付けられる特定の結晶形、特に2つの形態の混合物の作製の可能性は開示されていない。その結晶形は、有機溶媒および油に対して様々な溶解性を有しており、それによって、アスタキサンチン組成物を、取扱いかつ処方するのにより広い選択可能性をもたらしている。さらに、結晶形は、インビボでの溶出速度に影響を及ぼすことができ、油性投与媒体におけるより高い(過飽和)濃度を可能にし、それによって経口投与後でのより高い摂取と生物学的利用能がもたらされる。
【0057】
アスタキサンチン結晶形のX線ディフラクトグラムはBruker D8アドバンスモデルを用いて記録する。D値は1.5406 10−10mの波長での2つのシータ値から計算する。Cu Kα2放射は、Bruker、EVA Version 10.0によるソフトウェアを用いて排除される。ラマンスペクトルは、1064nmのレーザー励起波長で、Bruker FT−Spectrometer Brulcer RFS100/Sを用いて記録する。DSC測定は、Perkin Elmer示差熱量計モデルDSC7を用いて実施する。
【0058】
結晶形Iは、不規則形状の晶癖および赤/赤褐色の外観を有し、結晶形IIと比較して、より低い融点、有機溶媒または油中へのより大きい溶解度と溶解速度を有する。結晶形Iは、図1および図2にそれぞれ示すそのX線粉末回折およびラマンスペクトルを特徴とする。表2は結晶形Iの特徴的なX線粉末回折を示している。ピーク位置は角度2シータ°と、対応するD値で示す。これらの位置における標準偏差は±5%以内である。ピークの強度はそのCps値、および最大値に対する相対強度で示す。相対強度が<5%である場合、ピークを「vw」、すなわち「非常に弱い」と指定される。それに対応して、5〜15%の場合「w」(弱い);15〜30%の場合「m」(中位);30〜70%の場合「s」(強い)とし、>70%の場合「vs」(非常に強い)とする。
【0059】
【化3】

表3は結晶形Iの特徴的なラマンスペクトルを示す。ピーク位置は波数(cm−1)で示す。これらの位置における標準偏差は±5%以内である。ピークの強度は、そのラマン強度値、および最大値に対する相対強度で示す。相対強度が<5%である場合、ピークを「vw」、すなわち「非常に弱い」と指定される。それに対応して、5〜15%の場合「w」(弱い);15〜30%の場合「m」(中位);30〜70%の場合「s」(強い)とし、>70%の場合「vs」(非常に強い)とする。
【0060】
【化4】

結晶形Iは乾燥状態で安定である。この結晶は、有機溶媒や油中での溶解度が大きいことなどの、形態物IIのそれを上回る望ましい特性を示すことができる。
【0061】
結晶形IIは結晶ブレード/シート様の晶癖および青色/紫色の外観を有し、結晶形Iと比較して、より高い融点、油および有機溶媒中へのより小さい溶解度を有する。結晶形IIは、図3および図4にそれぞれ概略示したそのX線粉末回折およびラマンスペクトルを特徴とする。表4に、結晶形IIの典型的なX線粉末回折を示す。ピーク位置は角度2シータ°と、対応するD値で示す。これらの位置における標準偏差は±5%以内である。ピークの強度はそのCps値、および最大値に対する相対強度で示す。相対強度が<5%である場合、ピークを「vw」(非常に弱い)と指定される。それに対応して、5〜15%の場合「w」(弱い);15〜30%の場合「m」(中位);30〜70%の場合「s」(強い)とし、>70%の場合「vs」すなわち(非常に強い)とする。
【0062】
【化5】

表5では、結晶形IIの典型的なラマンスペクトルを示す。ピーク位置は波数(cm−1)で示す。これらの位置における標準偏差は±5%以内である。ピークの強度は、そのラマン強度値、および最大値に対する相対強度で示す。相対強度が<5%である場合、ピークを「vw」(非常に弱い)と指定される。それに対応して、5〜15%の場合「w」(弱い);15〜30%の場合「m」(中位);30〜70%の場合「s」(強い)とし、>70%の場合「vs」(非常に強い)とする。
【0063】
【化6】

図5は、結晶形Iと結晶形IIを0.55:0.45の重量比で含む混合物のラマンスペクトルを示す。
【0064】
所望の結晶形または2つの形態物の混合物を作製するために、少なくとも93重量%の全トランス−アスタキサンチンを含むアスタキサンチンを、適切な溶媒に溶解し、出発物質として用いることができる。妥当な量の少なくとも1つのカロテノイド化合物を加えることができる。あるいは、カロテノイド化合物は、結晶化の際に、かつ/またはそれに先行して、条件、例えば温度を制御し、溶液を酸化することによってその場で生成させることができる。例えば、カロテノイド化合物はトルエン、食用油およびアルカノールなどの高沸点溶媒中で、アスタキサンチンを溶解する際またはその後にその場で生成させることができる。所望の結晶形を含むシードを結晶化媒体に加えて、結晶化を加速させ、所望の結晶形の収率を増大させることができる。
【0065】
あるいは、所望の結晶形または形態物Iと形態物IIの混合物は、アスタキサンチンの製造、抽出または精製方法を制御することによって作製することができる。ここで、最後の結晶化溶液は、本質的に本明細書で記載の結晶形I、形態物IIまたは形態物Iと形態物IIの物理的混合物を生成させるのに望ましい範囲内で十分な量の少なくとも1つのカロテノイド化合物を含む。結晶形I、または形態物Iと形態物IIの混合物は、非常に高い純度のアスタキサンチン(すなわち95%超)を有する溶液を調製し、続いて、例えば熱および/または光で溶液を処理して十分な量のカロテノイド化合物を生成させ、最後の結晶化の後、基本的な結晶形Iまたは形態物Iと形態物IIの混合物を得ることもできる。
【0066】
上記の結晶化方法は、好ましくは、形態物Iかまたは形態物II結晶のいずれかを作製する合成の後に実施されることを理解すべきである。あるいは、それらを、アスタキサンチン結晶の精製または抽出の段階(化学的合成、または天然物からのアスタキサンチン化合物の単離の一部として)で実施することもできる。そこでは、アスタキサンチン結晶を作製するための少なくとも1つの結晶化段階、または溶媒を使用した(再)結晶化の手順が用いられる。
【0067】
アスタキサンチン結晶形または結晶形の混合物を作製するための出発溶液は、開示した形態物IもしくはIIまたはその混合物の結晶と合わせて結晶化の開始時に十分な濃度である限り、(特定の結晶形態に望ましい範囲内で)正確な量のカロテノイド化合物を含む必要はない。沸騰溶媒中にアスタキサンチンを溶解すると、副生成物としてカロテノイド化合物を十分生成させる結果となる。さらに、洗浄に最も適した溶媒、温度および条件を選択することによって、会合していないカロテノイド化合物を除去することができる。結晶形Iまたは結晶形IIを含むシードを結晶化溶液に加えると、より高い収率での所望の形態物の生成をさらに加速させることができる。
【0068】
所望のアスタキサンチン結晶形IもしくはIIまたはその混合物を作製するために、全トランス−アスタキサンチンに、個別にまたは好ましくは混合物として加えることができる適切なカロテノイド化合物は、合成アスタキサンチン誘導体、例えばエーテル化もしくはエステル化された酸化または水素化生成物、アスタキサンチンのシス−異性体である。この用語は、アスタキサンチンの合成および結晶化の間、または天然物からのアスタキサンチンの抽出プロセスの間に得られる副生成物を含む。カロテノイド化合物の生成は、準最適条件下で合成を実施した結果であっても、カロテノイド化合物濃度の所望のレベルでの制御を可能にする条件下で合成、抽出または結晶化手順を実施した結果であってもよい。好ましいカロテノイド化合物の1つまたはその混合物は、9−シス、13−シス−アスタキサンチンおよび他のシス−アスタキサンチン誘導体(例えば、15−シス−アスタキサンチン)、アスタシン(すなわち、CAS番号514−76−1のβ,βカロテン−3,3’,4,4’−テトロン)、セミ−アスタシン(3−ヒドロキシ−β,β−カロテン−3’,4,4’−トリオン)およびC−25アルデヒド(CAS番号72523−68−3の、全トランス−3−ヒドロキシ−4−オキソ−12’−アポ−ベータ−カロテン−12’−アル)からなるカロテノイド化合物の群の中から選択することができる。これらは単独ででも任意の組合せでも用いることができる。
【0069】
カロテノイド化合物プロファイルと濃度が異なる溶液から出発して、結晶形I、形態物IIまたは形態物Iと形態物IIを含む混合物を作製するのに考えられる、同様の原理に基づいたいくつかの結晶化方法がある。当業者が想定できる適切な結晶化方法には、これらに限定されないが、以下の方法が含まれる。一般に、溶液を調製するのに適した溶媒は、結晶化が開始される温度で少なくとも1mg/mI、好ましくは10〜50mg/mlのアスタキサンチンを溶解する溶媒である。アンチソルベントを用いる場合、適切なアンチソルベントは、結晶化させる温度で1mg/ml未満しか溶解せず、かつアスタキサンチンを溶解する溶媒と混和性である溶媒である。
【0070】
制御された温度条件下で、アスタキサンチンの無極性の非プロトン性有機溶液から出発して、溶液から溶媒を除去することによって、任意選択で混和性の極性アンチソルベントと同時に交換することによって結晶化を誘発させる。好ましい無極性の非プロトン性溶媒はジクロロメタンである。代替の塩素化無極性の非プロトン性溶媒は、例えばクロロホルム、トリクロロエタンである。適切な非塩素化系代替物はジメトキシメタン、ジエトキシエタンおよびジオキサシクロペンタンである。好ましい極性アンチソルベントはメタノールまたはエタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールおよびtert−ブタノールなどの他のアルカノールである。
【0071】
形態物IまたはIIを含む結晶は、極性の非プロトン性または極性のプロトン性溶媒中のアスタキサンチン溶液から蒸発により溶媒を除去することによって得ることもできる。アスタキサンチンに対して高い溶解性を有し、かつ低い沸点を有する溶媒が好ましい。その例はTHFおよびピリジンである。
【0072】
結晶化を誘発させる他の方法は、無極性の非プロトン性溶媒中の(過)飽和溶液を冷却する方法である。好ましい無極性の非プロトン性溶媒はジクロロメタン、トルエン、または代替の塩素化無極性の非プロトン性溶媒である。アスタキサンチンに対して高い溶解性を有するテトラヒドロフラン(THF)、N−メチルピロリドン(NMP)、N−エチルピロリドン(NEP)およびピリジンなどの極性溶媒も考えられる。純粋な形態のシードを結晶化溶液に加えることによって、所望の結晶形態の結晶化速度と収率を増大させることができる。
【0073】
形態物IまたはIIを含む結晶は、無極性の非プロトン性、極性の非プロトン性または極性のプロトン性溶媒中に、所望の濃度の全トランス−アスタキサンチンとカロテノイド化合物とを含むアスタキサンチンの溶液を、混和性の極性アンチソルベントを加えて希釈することによっても得ることができる。無極性の非プロトン性溶媒の例は、ジクロロメタン、トルエンまたは代替の塩素化溶媒である。その場合、アンチソルベントはメタノールのようなアルカノールである。適切な極性溶媒の例はTHF、NMPおよびピリジンである。アンチソルベントとして、アルカノールまたは好ましくは水を使用することができる。
【0074】
得られる結晶は当業界で周知の、例えばろ過、自然沈降または遠心分離法によって収集し、任意選択で適切な(アンチ)ソルベント、好ましくは冷アルカノール(好ましくはメタノール)で洗浄し、乾燥する(好ましくは真空下で)。さらに処理するのに望ましい粒子径を得るために、得られた結晶を粉砕することができる。
【0075】
上記の方法を用いて、塩素化溶媒を、ジメトキシメタン、ジエトキシエタンまたはジオキサシクロペンタンで置き換えることができる。
【0076】
結晶化溶液のカロテノイド化合物濃度が0%から最大で約7モル%まで増大すると、残りのカロテノイドは全トランス−アスタキサンチンであり、大部分結晶形IIが生成し、他方の結晶形Iの存在は5%未満の検出可能なレベルを下回る。約7モル%のカロテノイド化合物のレベルでは、残りのカロテノイドは全トランス−アスタキサンチンであり、大部分の量の結晶形IIの存在下、少量の結晶形Iが生成される。溶液中に存在するカロテノイド化合物のモル%が約7モル%から約17モル%へ増大すると、全カロテノイドの残りの部分は全トランス−アスタキサンチンであり、結晶形IおよびIIを含む混合物が得られる。ここで、形態物Iと形態物IIの比はカロテノイド化合物の増加にしたがって増大する。約17モル%カロテノイド化合物のレベルでは、全カロテノイドの残りの部分は全トランス−アスタキサンチンであり、大部分の量の結晶形Iの存在下、少量の結晶形IIが生成される。約17モル%超のカロテノイド化合物では、全カロテノイドの残りの部分は全トランス−アスタキサンチンであり、結晶形Iが大部分を占め、結晶形IIの存在は5%未満の検出可能なレベルを下回る。しかし、結晶形Iおよび/または形態物IIの生成の度合は全体的な結晶化条件に依存する。
【0077】
結晶化溶液中のカロテノイドのレベルと結晶化条件に応じて、結晶形Iと結晶形Iの混合物は0%〜100%の形態物Iと100%〜0%の形態物II、または0.1%〜99.9%の形態物Iと99.9%〜0.1%の形態物II、または5%〜95%の形態物Iと95%〜5%の形態物II、または10%〜90%の形態物Iと90%〜10%の形態物II、または20%〜80%の形態物Iと80%〜20%の形態物IIを含むことができる。
【0078】
好ましい例では、カロテノイド化合物が大部分シスアスタキサンチンである場合、少なくとも約17モル%のシスアスタキサンチン(好ましくは9−シスまたは13−シスまたはその混合物)を含む形態物Iの結晶を生成させることができる。したがって、有機溶媒および油中での有利な溶解特性と、より低い融点を有する最大でほぼ100%アスタキサンチンを含むアスタキサンチン結晶形Iを作製することが可能である。
【0079】
カロテノイド化合物の含量は、適用する結晶化手順に応じて、得られる結晶と比較して出発溶液中により多く存在してもより少なく存在してもよい。高い温度を用いると、溶液および結晶中のカロテノイド化合物の濃度は増大するが、結晶中の全トランス−アスタキサンチン含量は減少することになる。より穏やかな温度条件および/または異なる結晶化方法を用いる場合、結晶中でのカロテノイド化合物のレベルはより低くなる可能性がある。それと並行して、結晶の全トランス−アスタキサンチン含量は増大する。さらに、所望のアスタキサンチン結晶形を作製するために最終段階で用いる洗浄工程によって、会合していないカロテノイド化合物が、アスタキサンチン結晶から除去される。
【0080】
全トランス−アスタキサンチンと約17モル%超のカロテノイド化合物とを含む溶液から調製された結晶形Iは全トランス−アスタキサンチンを、少なくとも約13モル%の、好ましくはシス−アスタキサンチン、セミアスタシン、アスタシンまたはC−25アルデヒドからなるカロテノイド化合物の群の少なくとも1つと一緒に含む。9−シスもしくは13−シス−アスタキサンチンまたは15−シス−アスタキサンチンそれ自体またはその混合物がより好ましい。結晶がすべて形態物Iであり、アスタキサンチンが全トランス−アスタキサンチンと9−シスまたは13−シス−アスタキサンチンだけを含む場合、水産養殖で採用される純度の定義によれば(Determination of stabilized astaxanthin in premixes and fish feeds-version 1.1, Roche Vitamins Ltd and references therein, J. Schierle, N. Faccin, V. Riegert)、アスタキサンチンは100%の純度であると見なされる。
【0081】
全トランス−アスタキサンチンと、0%から最大で約7モル%の濃度のカロテノイド化合物とを含む溶液から作製された結晶形IIは、全トランス−アスタキサンチンと、約7モル%未満の、好ましくは9−シス−アスタキサンチン、13−シス−アスタキサンチン、15−シス−アスタキサンチン、セミアスタシン、アスタシンまたはC−25アルデヒドからなるカロテノイド化合物の群の少なくとも1つを含むことができる。9−シスまたは13−シス−アスタキサンチンそれ自体またはその混合物がより好ましい。US−FDAデータベース21CFR73.35に記載されている仕様に適合しており、4%以下の「アスタキサンチン以外の全カロテノイド」を含み、かつ結晶形IIの形態であるアスタキサンチンは本発明に包含される。不確かさを回避するために、本発明では、「アスタキサンチン以外の全カロテノイド」を「カロテノイド化合物」と定義する。「アスタキサンチン以外の全カロテノイド」が、少なくとも1つのシス−アスタキサンチン、アスタシン、セミ−アスタシンおよびC−25アルデヒドからなる群から選択されるカロテノイド化合物からなる、FDA仕様に適合するアスタキサンチンが好ましい。前記「アスタキサンチン以外の全カロテノイド」が、9−シス−アスタキサンチン、13−シス−アスタキサンチンおよび15−シス−アスタキサンチンからなる群から選択されるカロテノイド化合物である、FDA仕様に適合するアスタキサンチンがより好ましい。
【0082】
結晶形は、少量で許容量の溶媒残渣、重金属および分解生成物などの他の化合物を含むことができる。
【0083】
結晶形I、形態物IIおよび2つの形態物の混合物は、有機体に投与するのに適した固体、半固体処方物などに混ぜ込むのに適している。固体の例は錠剤、顆粒剤、ペレット剤、カプセル剤、粉剤等である。半固体の例は、クリーム剤、軟膏、ゲル剤、懸濁剤およびローションである。それらには、油性媒体中の結晶形Iもしくは形態物IIまたは形態物Iと形態物IIの混合物の粒子状微粉化懸濁剤が含まれる。結晶は、1〜5μmの平均径範囲であることが好ましい。
【0084】
結晶形Iを用いて作製できる好ましい投与形態は、アスタキサンチンを含む油分散性組成物であり、それを作製するための方法はWO03/102116に記載されている。本明細書で記載するX線およびラマン分光法によって指定される結晶形Iもしくは形態物IIまたはその混合物は、米国特許第2,861,891号、同第5,364,563号および同第6,296,877号に記載されているアスタキサンチンを含む水分散性組成物を作製するためにも用いることができる。
【0085】
アスタキサンチンを含む固体の組成物および処方物を作製するための一般的な方法は、結晶形I、形態物IIまたはその混合物を、適切な賦形剤の存在下で有機性、水混和性もしくは水非混和性の溶媒またはその混合物に溶解し、続いて水に希釈するか、またはWO03/102116に記載の蒸発技術によって溶媒を除去する方法である。結晶形IまたはIIをそのまま用い、エネルギーをかけることによってアスタキサンチンの油性溶液に溶解することができる。
【0086】
溶液を調製し、アスタキサンチン結晶形IもしくはIIまたはその混合物を処理して乾燥したアスタキサンチン組成物にするための溶媒は、水混和性であっても水非混和性であってもよい。水混和性および非混和性溶媒の例には、上記に挙げた結晶形態の結晶化に用いられる溶媒の例が含まれる。常用の圧力および温度で結晶化する際に用いられるアンチソルベントを、熱/圧力をかけることによって、アスタキサンチンのための溶媒(例えば、イソプロパノール/水)として用いることができる。
【0087】
賦形剤の好ましい例は、分散剤、ポリマーおよび合成の天然系ゴムおよびセルロース誘導体である。それらは親水性であっても親油性であってもよい。
【0088】
固体アスタキサンチン組成物は2.5重量%〜25重量%、好ましくは5重量%〜15重量%、より好ましくは7.5重量%〜12.5重量%の全アスタキサンチンを含む。組成物で用いられる分散剤の量は好ましくは50重量%〜97.5重量%である。必要な重量に仕上げるために、様々な量の賦形剤の量を充填剤として用いることができる。
【0089】
適切な親油性分散剤は、油溶性カロテノイド組成物を作製するのに適しており、経口固体投与形態の薬剤の放出を改変するための親油性コーティング材料としての栄養物用または薬剤用添加剤として用いられる親油性ポリマーのようなWO03/102116に記載されているものである。適切な分散剤は、エチルセルロース、合成および天然の樹脂、ロジンおよびゴムからなる群のうちの特定のものから選択することができる。
【0090】
適切な親水性分散剤は、水溶性分散剤および水分散性カロテノイド組成物を作製するのに適した方法を記載している米国特許第2861891号、同第5364563号および同第6296877号に記載のものである。親水性分散剤には、これらに限定されないが、例えばゼラチン、魚ゼラチン、でんぷん、デキストリン、植物性タンパク質、ペクチン、アラビアゴム、カゼイン、カゼイン塩、またはこれらの混合物でできた低分子量および高分子量成分の保護コロイドが含まれる。タンパク質含有保護コロイド、特に非ゲル化低分子量タンパク質加水分解物およびより高分子量のゲル化ゼラチンが好ましい。上記および他のポリ(ビニルアルコール)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびアルギン酸塩も用いることができる。低分子量保護コロイド成分の平均分子量は好ましくは10,000〜50,000、特に15,000〜30,000であり、高分子量成分は好ましくは60,000を超える平均分子量を有する。低分子量保護コロイド成分の割合は5〜95重量%、好ましくは20〜80重量%、特に30〜60重量%である。末端製品の機械的安定性を増大させるためには、そのコロイドに、米国特許第6,296,877号に記載されている糖類または糖アルコール、例えばスクロース、グルコース、ラクトール、転化糖、ソルビトール、マンニトールまたはグリセロールなどの軟化剤を加えると好都合である。他の親水性分散剤は、MW4000〜6000を有するPEG(ポリエチレングリコール)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、クロスポビドン、ポリビニルピロリドン−ポリビニルアセテートコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HMPC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ポリアクリレートおよびポリメタクリレートからなる群から選択することができる。
【0091】
溶媒または溶媒混合物は、例えば噴霧乾燥法、凍結乾燥法、凍結噴霧乾燥法、噴霧顆粒化法または超臨界流体抽出法により除去される。
【0092】
その結晶形は、米国特許第6,827,941号に記載のアスタキサンチンのJまたはH凝集体を含む組成物を作製するのに適している。その凝集体は、アスタキサンチン結晶形I、形態物IIまたはその混合物から調製された有機溶媒溶液を過剰の水に加えて沈澱させる。
【0093】
結晶形Iは、好ましくは、米国特許第6,093,348号による水分散性組成物を製造するために用いることができる。ここで、カロテノイドは、適切な界面活性剤/親水コロイドを用いて分散し、高温高圧で溶融してエマルジョンを形成させる。
【実施例】
【0094】
以下の代表的な実施例(1〜7)は、既知量の全トランス−アスタキサンチンと少なくとも1種の指定のカロテノイド化合物とを含む異なる極性を有する有機液体溶液から出発して、アスタキサンチン結晶形Iもしくは形態物IIまたはその定義された混合物を作製するための方法を示す。実施例(7〜9)は、結晶形Iおよび/または結晶形IIまたはその規定された混合物をそのままで投与形態中に混ぜ込む方法を示す。実施例(10〜13)は、結晶形Iもしくは結晶形IIまたはその定義された混合物を、投与物および栄養性組成物を作製するために溶媒に溶解させる方法を示す。
【0095】
所望の結晶形を作製するためのアスタキサンチンはSigma社(天然アスタキサンチン)およびDr.Ehrenstorfer(合成アスタキサンチン、分析用グレード)から購入した。化合物の純度はHPLC測定法により測定し、X線回折およびラマン分光法により特性評価した。超高純度アスタキサンチンは、より純度の低いアスタキサンチンから分取HPLC法により得ることもできる。
【0096】
(実施例1)
40mgのアスタキサンチン(97.2モル%の全トランス−アスタキサンチン、1.6モル%の9−シス−アスタキサンチンおよび1.2モル%の13−シス−アスタキサンチン)を30℃で2mlのジクロロメタン(DCM)中に溶解し、真空下で溶媒除去処理して結晶にした。図4に示すようにラマンスペクトルは結晶形IIの存在を示している。X線回折パターンを図3に示す。結晶のHPLC分析は、99.2モル%の全トランス−アスタキサンチンと、約0.8モル%のカロテノイド化合物レベルに相当する0.4モル%の9−シスアスタキサンチンおよび0.4モル%の13−シス−アスタキサンチンを示している。
【0097】
(実施例2)
20mgの分析用グレードアスタキサンチン(97.2モル%の全トランス−アスタキサンチンと、1.6モル%の9−シスアスタキサンチンおよび1.2モル%の13−シス−アスタキサンチン)を1mlのピリジンに溶解し、70℃で30分間加熱する。8.0mlの冷水を加えた後、生成した結晶を水で洗浄する。図2のスペクトルに示すように、ラマンスペクトルは結晶形Iの存在を示している。図1にX線回折パターンを示す。HPLC測定により、全トランス−アスタキサンチンとシス−アスタキサンチン異性体の合計量が100%であることをはっきり示している。アスタキサンチンは78モル%の全トランス−アスタキサンチン、3モル%の9−シスアスタキサンチンおよび19モル%の13−シス−アスタキサンチンを含む。カロテノイド生成物のレベルは約22モル%である。同様に、ピリジン溶液を80℃で40分間加熱すると、28モル%の13−シス−アスタキサンチンが生成し、得られる結晶は、特徴的なX線回折パターンとラマンスペクトルにより、アスタキサンチン結晶形Iと特定される。
【0098】
(実施例3)
97.2モル%の全トランス−アスタキサンチンおよび2.8モル%のシスアスタキサンチン(さらに1.6モル%の9−シス−アスタキサンチンおよび1.2モル%の13−シスアスタキサンチンを含む)を含む20mgのアスタキサンチンを室温で1.0mlのピリジンに溶解する(溶液1)。72モル%の全トランス−アスタキサンチンと28モル%の13−シス−アスタキサンチンを含む実施例2からの20mgのアスタキサンチンを室温で1.0mlのピリジンに溶解する(溶液2)。2つの溶液を複数の比で混合し、0.6mlの冷水を加え、生成した結晶をろ取し、2mlの水で洗浄し、乾燥後ラマンスペクトルを記録する。得られる結果を表6にまとめる。
【0099】
【化7】

実施例3は、極性のプロトン性溶媒、例えばピリジンを用いることによって、結晶形IもしくはIIまたはその混合物の生成が、溶液中のカロテノイド化合物のレベルに主として依存することを明らかに示している。図5は0.55:0.45の重量比で結晶形Iと形態物IIを含む混合物のラマンスペクトルを示す。
【0100】
あるいは、カロテノイド化合物の濃度を、例えば全トランス−アスタキサンチンの結晶格子と会合するのに十分な既知量のカロテノイド化合物を加えることによって制御するか、かつ/またはアンチソルベントの水を加える前に、ピリジン溶液を加熱して、実施例2で示したように前記カロテノイド化合物の生成をその場でもたらすことによって生成させることができる。あるいは、所望の結晶形または混合物は、溶液を蒸発させ、結晶形IかIIのいずれかのシードを用いるか用いないで、溶液を冷却することによって調製することができる。
【0101】
(実施例4)
97.2モル%の全トランス−アスタキサンチン、1.6モル%の9−シスアスタキサンチンおよび1.2モル%の13−シス−アスタキサンチンを含む35.66mgのアスタキサンチンと、アスタシンを含む3.61mgのカロテノイド化合物を24mlのDCM中に溶解し、DCMを蒸留により除去し、同時にメタノールで置換する。生成した結晶を収集し、冷メタノールで洗浄し、真空下で乾燥する。ラマンスペクトルは、6:4の比で結晶形Iと結晶形IIを含む結晶(いくつかの重量比で純粋な両結晶形のラマンスペクトルを平均し、測定したスペクトルと一致させる)が存在することを示している。結晶のHPLC分析は、85.4重量/重量%の全トランス−アスタキサンチンと、約17モル%のカロテノイド化合物レベルに相当する0.4重量/重量%の9−シス−アスタキサンチン、1.0重量/重量%の13−シス−アスタキサンチン、7.6重量/重量%のアスタシン、1.9重量/重量%のセミ−アスタシンおよび3.6重量/重量%のC−25アルデヒドを示している。
【0102】
(実施例5)
80重量/重量%の全トランス−アスタキサンチン、2.7重量/重量%の9−シスアスタキサンチン、2.7重量/重量%の13−シス−アスタキサンチン、0.8重量/重量%のアスタシン、5.5重量/重量%のセミアスタシンおよび8.7重量/重量%のC−25アルデヒドを含む40.3mgのアスタキサンチンを24mlのDCM中に溶解し、沸点まで加熱する。DCMを留去させながら、40mlのMeOHを滴下する。得られた結晶をろ過し、次いで0℃でMeOHで洗浄し、結晶を真空下、室温(RT)で終夜かけて乾燥する。ラマンスペクトルは形態物I結晶の存在を示している。結晶のHPLC分析は87重量/重量%の全トランス−アスタキサンチンと、約16モル%のカロテノイド化合物レベルに相当する1.3重量/重量%の9−シス−アスタキサンチン、1.5重量/重量%の13−シス−アスタキサンチン、0.9重量/重量%のアスタシン、6.2重量/重量%のセミアスタシンおよび2.8%のC−25アルデヒドを示している。
【0103】
(実施例6)
80重量/重量%の全トランス−アスタキサンチン、2.7重量/重量%の9−シスアスタキサンチン、2.7重量/重量%の13−シス−アスタキサンチン、0.8重量/重量%のアスタシン、5.5重量/重量%のセミアスタシンおよび8.7重量/重量%のC−25アルデヒドを含む196.7mgのアスタキサンチンと、97.2重量/重量%の全トランス−アスタキサンチン、1.6重量/重量%の9−シス−アスタキサンチンおよび1.2重量/重量%の13−シス−アスタキサンチンを含む203.3mgのアスタキサンチンを24mlのDCMの中に溶解する。実施例1と同様に、DCMを蒸留により除去し、同時に40mlのMeOHで置換する。ラマンスペクトルは7:3の比で結晶形Iと形態物IIを含む結晶が存在することを示している。結晶のHPLC分析は、91重量/重量%の全トランス−アスタキサンチンと、約12モル%のカロテノイド化合物レベルに相当する0.9重量/重量%の9−シス−アスタキサンチン、0.5重量/重量%の13−シス−アスタキサンチン、0.4重量/重量%のアスタシン、3.5重量/重量%のセミ−アスタシンおよび3.5%のC−25アルデヒドを含むカロテノイド化合物を示している。
【0104】
(実施例7)
上記実施例に類似するものとして、ピリジンの代わりに、クロロホルム、トリクロロエタン、ジメトキシメタン、ジエトキシエタンおよびジオキサシクロペンタン、THF、NMP、NEPおよびトルエンのような代替の出発溶媒を用いることができる。結晶形Iまたは結晶形IIの結晶は、i)蒸発によるかまたは任意選択で溶媒を混和性アンチソルベントと同時交換することによって溶媒を除去する工程、ii)混和性アンチソルベントを溶液に添加する工程、またはiii)(過飽和)溶液を冷却する工程のいずれかによって、全トランス−アスタキサンチンを含む結晶化溶液中のカロテノイド化合物の濃度(結晶化の開始時点での)に応じて、任意選択で加熱した溶液から得ることができる。結晶化溶液中のカロテノイド化合物濃度が0%から約7モル%に増大し、全カロテノイドの残りの部分が全トランス−アスタキサンチンであると、結晶形IIが支配的に形成され、他方の結晶形Iの存在は5%未満の検出可能なレベル未満である。約7モル%カロテノイド化合物のレベルで、全カロテノイドの残りの部分が全トランス−アスタキサンチンであると、大部分量の結晶形IIの存在下で少量の結晶形Iが生成される。存在するカロテノイド化合物のモル%が、約7モル%から約17モル%へ増大し、全カロテノイドの残りの部分が全トランス−アスタキサンチンであると、形態物IとIIの比が増大した結晶形IとIIを含む混合物が得られる。約17モル%カロテノイド化合物のレベルで、全カロテノイドの残りの部分が全トランス−アスタキサンチンであると、大部分量の結晶形Iの存在下で少量の結晶形IIが生成される。約17モル%超のカロテノイド化合物で、全カロテノイドの残りの部分が全トランス−アスタキサンチンであると、結晶形Iが支配的であり、他方の結晶形IIの存在は5%未満の検出可能なレベル未満である。しかし、結晶形Iおよび/または形態物IIの生成の程度は全体的な結晶化条件に依存する。
【0105】
(実施例8)
10gのアスタキサンチン結晶形Iまたは形態物IIを90gの大豆油と混合する。結晶を粉砕する。得られる微粉化懸濁液は粉末処方物の作製に適している。またその結晶を、急速加熱の手順を用いて油中に直接溶解し、続いて乳化剤を含む過剰の油相または水相で冷却することができる。
【0106】
(実施例9)
10gのアスタキサンチン結晶形Iまたは形態物IIを20gのでんぷんと混合する。この粉末をさらに処理して、カプセル充填や錠剤化に適した流動性顆粒にする。
【0107】
(実施例10)
加熱可能な受入れ用フラスコ中に、4gのアスタキサンチン結晶形Iまたは形態物IIと1.54gのピーナッツ油を、28.8gのイソプロパノール/水(88/12、重量/重量)中の1.23gのエトキシキンの溶液に30℃で懸濁させる。この懸濁液を、170℃の混合温度で、58.7gのイソプロパノール/水(88/12、重量/重量)と0.2秒の滞留時間で混合する。次いで、分子レベルで分散している得られたアスタキサンチン溶液を直ちに別の混合容器に入れる。8.4gのゼラチンA(100Bloom、M.W.=94,000)に加えて、4.2gのGelita Sol P(M.W.=21,000)と9.2gのスクロースを含む、pH9に調節した11.34gのゼラチン水溶液を加えて、45℃で、コロイド状分散液中でアスタキサンチンを沈澱させる。
【0108】
(実施例11)
1gのアスタキサンチン結晶形Iを、8gのエチルセルロースN4(Dow Chemical Company)および1gのα−トコフェロールと一緒に90gのジクロロメタン(Fluka)中に溶解し、続いて溶媒を除去して噴霧顆粒法により顆粒を形成させることによって粉末組成物を作製する。
【0109】
(実施例12)
0.80gのアスタキサンチン結晶形IIを、8.4gのエチルセルロースN4(Dow Chemical Company)および0.80gのα−トコフェロールと一緒に90gのジクロロメタン(Fluka)中に溶解し、続いて溶媒を除去して噴霧顆粒法により顆粒を形成させることによって粉末組成物を作製する。
【0110】
(実施例13)
620mgのアスタキサンチン(結晶形II)を室温で200mlのTHFと混合し、ろ過する。50mlのTHF溶液を30分かけて250mlの水に滴下する。アスタキサンチン凝集体の主としてコロイド状の沈殿物が形成され、これをろ取する。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】図1はアスタキサンチンの結晶形IのX線ディフラクトグラムである。
【図2】図2はアスタキサンチンの結晶形Iのラマンスペクトルである。
【図3】図3はアスタキサンチンの結晶形IIのX線ディフラクトグラムである。
【図4】図4はアスタキサンチンの結晶形IIのラマンスペクトルである。
【図5】図5は、アスタキサンチンの結晶形Iおよび形態物IIの個々のスペクトルから導出して計算したスペクトルと比較した、アスタキサンチンの結晶形Iおよび結晶形IIを含む混合物のラマンスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)i)以下の格子間平面間隔d(10−10m):8.0±0.1、6.5±0.05、6.3±0.05、6.1±0.05、5.96±0.05、5.58±0.05、5.43±0.05、4.87±0.05、4.32±0.05、4.24±0.05、4.21±0.05、4.07±0.05、4.03±0.05、3.58±0.05、3.50±0.05を含むX線回折パターン、および
ii)372±2、346±2、333±2、312±2、289±2、234±2、193±2、178±2、133±2、82±2cm−1でのピークを含むラマンスペクトル
の少なくとも1つ、ならびに任意選択で、
iii)212〜222℃で相転移を示すDSCスキャン、および
iv)20℃〜25℃で35〜45g/lのジクロロメタン中の溶解プロファイル
の少なくとも1つを特徴とする結晶形Iと、
b)ii)以下の格子間平面間隔d(10−10m):7.2±0.1、6.6±0.05、6.5±0.05、5.48±0.05、5.34±0.05、5.27±0.05、4.49±0.05、4.38±0.05、4.12±0.05、3.89±0.05、3.61±0.05、3.56±0.05、3.34±0.05、3.32±0.05、3.22±0.05を含むX線回折パターン、および
ii)376±2、337±2、314±2、304±2、289±2、206±2、180±2、137±2、107±2、93±2cm−1でのピークを含むラマンスペクトル
の少なくとも1つ、ならびに任意選択で、
iii)225〜240℃で相転移を示すDSCスキャン、および
iv)20℃〜25℃で10〜30g/lのジクロロメタン中の溶解プロファイル
の少なくとも1つを特徴とする結晶形IIと
を含む結晶形態のアスタキサンチンから本質的になる混合物。
【請求項2】
99.9重量%〜0.1重量%の結晶形Iと指定される結晶形態のアスタキサンチンと、
0.1重量%〜99.9重量%の結晶形IIと指定される結晶形態のアスタキサンチンから本質的になる請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
95重量%〜5重量%の結晶形Iと指定される結晶形態のアスタキサンチンと、
5重量%〜95重量%の結晶形IIと指定される結晶形態のアスタキサンチンから本質的になる請求項1に記載の混合物。
【請求項4】
10重量%〜90重量%の結晶形Iと指定される結晶形態のアスタキサンチンと、
90重量%〜10重量%の結晶形IIと指定される結晶形態のアスタキサンチンから本質的になる請求項1に記載の混合物。
【請求項5】
20重量%〜80重量%の結晶形Iと指定される結晶形態のアスタキサンチンと、
80重量%〜20重量%の結晶形IIと指定される結晶形態のアスタキサンチンから本質的になる請求項1に記載の混合物。
【請求項6】
i)以下の格子間平面間隔d(10−10m):8.0±0.1、6.5±0.05、6.3±0.05、6.1±0.05、5.96±0.05、5.58±0.05.43±0.05、4.87±0.05、4.32±0.05、4.24±0.05、4.21±0.05、4.07±0.05、4.03±0.05、3.58±0.05、3.50±0.05を含むX線回折パターン、および
ii)372±2、346±2、333±2、312±2、289±2、234±2、193±2、178±2、133±2、82±2cm−1でのピークを含むラマンスペクトル
の少なくとも1つ、ならびに任意選択で、
iii)212〜222℃で相転移を示すDSCスキャン、および
iv)20℃〜25℃で35〜45g/lのジクロロメタン中の溶解プロファイル
の少なくとも1つを特徴とする結晶形Iと指定される結晶形態のアスタキサンチンを含む組成物。
【請求項7】
i)以下の格子間平面間隔d(10−10m):7.2±0.1、6.6±0.05、6.5±0.05、5.48±0.05、5.34±0.05、5.27±0.05、4.49±0.05、4.38±0.05、4.12±0.05、3.89±0.05、3.61±0.05、3.56±0.05、3.34±0.05、3.32±0.05、3.22±0.05を含むX線回折パターン、および
ii)376±2、337±2、314±2、304±2、289±2、206±2、180±2、137±2、107±2、93±2cm−1でのピークを含むラマンスペクトル
の少なくとも1つ、ならびに任意選択で、
iii)225〜240℃で相転移を示すDSCスキャン、および
iv)20℃〜25℃で10〜30g/lのジクロロメタン中の溶解プロファイル
の少なくとも1つを特徴とする結晶形IIと指定される結晶形態のアスタキサンチンを含む組成物。
【請求項8】
i)以下の格子間平面間隔d(10−10m):8.0±0.1、6.5±0.05、6.3±0.05、6.1±0.05、5.96±0.05、5.58±0.05、5.43±0.05、4.87±0.05、4.32±0.05、4.24±0.05、4.21±0.05、4.07±0.05、4.03±0.05、3.58±0.05、3.50±0.05を含むX線回折パターン、および
ii)372±2、346±2、333±2、312±2、289±2、234±2、193±2、178±2、133±2、82±2cm−1でのピークを含むラマンスペクトル
の少なくとも1つ、ならびに任意選択で、
vii)212〜222℃で相転移を示すDSCスキャン、および
viii)20℃〜25℃で35〜45g/lのジクロロメタン中の溶解プロファイル
の少なくとも1つを特徴とする結晶形Iと指定される結晶形態のアスタキサンチン。
【請求項9】
図1に示すX線粉末回折パターンとほぼ一致するX線粉末回折パターンを有する結晶形Iと指定される結晶形態のアスタキサンチン。
【請求項10】
図2に示すラマンスペクトルとほぼ一致するラマンスペクトルを有する結晶形Iと指定される結晶形態のアスタキサンチン。
【請求項11】
全トランス−アスタキサンチンと、少なくとも約13モル%の少なくとも1つのカロテノイド化合物とを含む請求項8に記載の結晶形Iと指定される結晶形態のアスタキサンチン。
【請求項12】
全トランス−アスタキサンチンと、9−シス−アスタキサンチン、13−シスアスタキサンチン、15−シス−アスタキサンチン、アスタシン、セミ−アスタシンおよびC−25アルデヒドからなる群から選択される少なくとも約13モル%の少なくとも1つのカロテノイド化合物とを含む請求項8に記載の結晶形Iと指定される結晶形態のアスタキサンチン。
【請求項13】
ii)以下の格子間平面間隔d(10−10m):7.2±0.1、6.6±0.05、6.5±0.05、5.48±0.05、5.34±0.05、5.27±0.05、4.49±0.05、4.38±0.05、4.12±0.05、3.89±0.05、3.61±0.05、3.56±0.05、3.34±0.05、3.32±0.05、3.22±0.05、および
ii)376±2、337±2、314±2、304±2、289±2、206±2、180±2、137±2、107±2、93±2cm−1でのピークを含むラマンスペクトル
の少なくとも1つ、ならびに任意選択で、
iii)225〜240℃で相転移を示すDSCスキャン、および
iv)20℃〜25℃で10〜30g/lのジクロロメタン中の溶解プロファイル
の少なくとも1つを特徴とする結晶形IIと指定される結晶形態のアスタキサンチン。
【請求項14】
図3に示すX線粉末回折パターンとほぼ一致するX線粉末回折パターンを有する結晶形IIと指定される結晶形態のアスタキサンチン。
【請求項15】
図4に示すラマンスペクトルとほぼ一致するラマンスペクトルを有する結晶形IIと指定される結晶形態のアスタキサンチン。
【請求項16】
全トランス−アスタキサンチンと、最大で7モル%の少なくとも1つのカロテノイド化合物とを含む請求項13に記載の結晶形IIと指定される結晶形態のアスタキサンチン。
【請求項17】
全トランス−アスタキサンチンと、9−シスアスタキサンチン、13−シス−アスタキサンチン、15−シス−アスタキサンチン、アスタシン、セミ−アスタシンおよびC−25アルデヒドの少なくとも1つからなる群から選択される最大で7モル%の少なくとも1つのカロテノイド化合物とを含む請求項13に記載の結晶形IIと指定される結晶形態のアスタキサンチン。
【請求項18】
表1:
【化1】

に示すUS−FDAの21 CFR73.35に記載の以下の仕様に適合する請求項13に記載の結晶形IIと指定される結晶形態のアスタキサンチン。
【請求項19】
生命科学産業で用いるための請求項1に記載の結晶形IもしくはIIのアスタキサンチンまたはその混合物を含むアスタキサンチンの投与形態。
【請求項20】
魚飼料で用いるための請求項1に記載の結晶形IもしくはIIのアスタキサンチンまたはその混合物を含むアスタキサンチンの投与形態であって、アスタキサンチンの含量が20重量%未満である、投与形態。
【請求項21】
魚飼料で用いるための請求項1に記載の結晶形IもしくはIIのアスタキサンチンまたはその混合物の懸濁物を含み、かつ食用油を含む、アスタキサンチンの投与形態。
【請求項22】
少なくとも5重量/重量%の形態Iまたは形態IIを含む、請求項1に記載の結晶形Iおよび結晶形IIと指定したアスタキサンチンの結晶形の混合物を調製するためのプロセスであって、
i)全トランス−アスタキサンチンと、少なくとも1つの9−シス−アスタキサンチン、13−シスアスタキサンチン、15−シス−アスタキサンチン、アスタシン、セミ−アスタシンおよびC−25アルデヒドからなる群から選択される7モル%〜17モル%の少なくとも1つのカロテノイド化合物とを含むアスタキサンチンの混合物を、溶媒の沸点までの温度で少なくとも1mg/mlのアスタキサンチンの溶解度を有する溶媒に溶解させる工程と、iia)アンチソルベントを添加する工程、iib)蒸発によるか、任意選択で該溶媒をアンチソルベントと同時交換することによって該溶媒を除去する工程、iic)核形成剤または結晶形IもしくはIIまたはその混合物を含むシードを任意選択で含有する有機溶媒溶液を冷却する工程からなる群から選択されるさらなる工程と、iii)該結晶を収集し、アンチソルベントで洗浄し、乾燥する工程と、
を含むプロセス。
【請求項23】
請求項8に記載の結晶形Iと指定される結晶形態のアスタキサンチンを作製するためのプロセスであって、
i)全トランス−アスタキサンチンと、少なくとも9−シス−アスタキサンチン、13−シス−アスタキサンチン、15−シスアスタキサンチン、アスタシン、セミ−アスタシンおよびC−25アルデヒドからなる群から選択される少なくとも13モル%の少なくとも1つのカロテノイド化合物とを含むアスタキサンチンの混合物を、溶媒の沸点までの温度で少なくとも1mg/mlのアスタキサンチンの溶解度を有する溶媒に溶解させる工程と、iia)アンチソルベントを添加する工程、iib)蒸発によるか、任意選択で該溶媒をアンチソルベントと同時交換することによって該溶媒を除去する工程、およびiic)核形成剤または結晶形Iを含むシードを任意選択で含有する該有機溶媒溶液を冷却する工程からなる群から選択されるさらなる工程と、iii)該結晶を収集し、アンチソルベントで洗浄し、乾燥する工程と、
を含むプロセス。
【請求項24】
請求項8に記載の結晶形Iと指定される結晶形態のアスタキサンチンを作製するためのプロセスであって、
i)全トランス−アスタキサンチンと、少なくとも1つの9−シス−アスタキサンチン、13−シス−アスタキサンチン、15−シス−アスタキサンチン、アスタシン、セミ−アスタシンおよびC−25アルデヒドからなる群から選択される少なくとも13モル%の少なくとも1つのカロテノイド化合物とを含むアスタキサンチンの混合物を、ジクロロメタン、トリクロロエタン、クロロホルム、ジメトキシメタン、ジエトキシエタン、ジオキサシクロペンタン、THF、NMP、N−エチルピロリドン、トルエン、ピリジンおよび二硫化炭素からなる群から選択される溶媒に、該溶媒の沸点までの温度で溶解させる工程と、iia)メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノールおよび水からなる群から選択されるアンチソルベントを添加する工程、iib)蒸発によるか、任意選択で該溶媒をアンチソルベントと同時交換することによって該溶媒を除去する工程と、iic)核形成剤または結晶形Iを含むシードを任意選択で添加した有機溶媒溶液を冷却する工程からなる群から選択されるさらなる工程と、iii)該結晶を収集し、アンチソルベントで洗浄し、乾燥する工程と
を含むプロセス。
【請求項25】
請求項13に記載の結晶形IIと指定される結晶形態のアスタキサンチンを作製するためのプロセスであって、
i)全トランス−アスタキサンチンと、少なくとも9−シス−アスタキサンチン、13−シスアスタキサンチン、15−シス−アスタキサンチン、アスタシン、セミ−アスタシンおよびC−25アルデヒドからなる群から選択される最大で7モル%の少なくとも1つのカロテノイド化合物のアスタキサンチンとを含む混合物を、溶媒の沸点までの温度で少なくとも1mg/mlのアスタキサンチンの溶解度を有する溶媒に溶解させる工程と、iia)アンチソルベントを添加する工程、iib)蒸発によるか、任意選択で該溶媒をアンチソルベントと同時交換することによって該溶媒を除去する工程、およびiic)核形成剤または結晶形Iを含むシードを任意選択で添加した有機溶媒溶液を冷却する工程からなる群から選択されるさらなる工程と、iii)該結晶を収集し、アンチソルベントで洗浄し、乾燥する工程と
を含むプロセス。
【請求項26】
請求項13に記載の結晶形IIと指定される結晶形態のアスタキサンチンを作製するためのプロセスであって、
i)全トランス−アスタキサンチンと、少なくとも1つの9−シス−アスタキサンチン、13−シス−アスタキサンチン、15−シスアスタキサンチン、アスタシン、セミ−アスタシンおよびC−25アルデヒドからなる群から選択される最大で7モル%の少なくとも1つのカロテノイド化合物とを含むアスタキサンチンを、ジクロロメタン、トリクロロエタン、クロロホルム、ジメトキシメタン、ジエトキシエタン、ジオキサシクロペンタン、THF、NMP、N−エチルピロリドン、トルエン、ピリジンおよび二硫化炭素からなる群から選択される溶媒に溶解させる工程と、iia)アンチソルベントを添加する工程、iib)蒸発によるか、任意選択で該溶媒をアンチソルベントと同時交換することによって該溶媒を除去する工程、およびiic)核形成剤または結晶形IIを含むシードを任意選択で添加した有機溶媒溶液を冷却する工程からなる群から選択されるさらなる工程と、iii)該結晶を収集し、アンチソルベントで洗浄し、乾燥する工程と
を含むプロセス。
【請求項27】
結晶形Iと指定される結晶形態のアスタキサンチンまたは結晶形Iと結晶形IIの混合物を作製するためのプロセスであって、
i)全トランス−アスタキサンチンと、少なくとも1つの9−シスアスタキサンチン、13−シス−アスタキサンチン、15−シス−アスタキサンチン、アスタシン、セミ−アスタシンおよびC−25アルデヒドからなる群から選択される最大で7モル%の少なくとも1つのカロテノイド化合物とを含むアスタキサンチンを、ジクロロメタン、トリクロロエタン、クロロホルム、ジメトキシメタン、ジエトキシエタン、ジオキサシクロペンタン、THF、NMP、N−エチルピロリドン、トルエン、ピリジンおよび二硫化炭素からなる群から選択される溶媒に溶解させる工程と、ii)該溶液を熱、光、酸化剤からなる群から選択される少なくとも1つの処理にかける工程と、iiia)アンチソルベントを添加する工程、iiib)蒸発によるかまたは任意選択で該溶媒をアンチソルベントと同時に交換することによって該溶媒を除去する工程、およびiiic)核形成剤またはシードを加えるか、またはそのどちらも加えずに、有機溶媒溶液を冷却する工程からなる群から選択されるさらなる工程と、iv)該結晶を収集し、アンチソルベントで洗浄し、乾燥する工程と
からなる結晶化プロセスを含む、プロセス。
【請求項28】
請求項1に記載の結晶形IおよびIIまたはその混合物を栄養投与形態にさらに加工する工程を含む、プロセス。
【請求項29】
賦形剤を結晶形Iに加える工程を含む請求項6に記載の組成物を作製するためのプロセス。
【請求項30】
賦形剤を結晶形IIに加える工程を含む請求項7に記載の組成物を作製するためのプロセス。
【請求項31】
魚飼料および生命科学産業で用いるためのアスタキサンチンの投与形態を作製するためのプロセスであって、請求項1に記載のアスタキサンチン結晶形IもしくはIIまたはその混合物を有機溶媒または油またはその混合物中に溶解し、次いで該投与形態にさらに加工するプロセス。
【請求項32】
生命科学産業で用いるためのアスタキサンチンの投与形態を作製するためのプロセスであって、請求項1に記載のアスタキサンチン結晶形IもしくはIIまたはその混合物を有機溶媒または油またはその混合物中に溶解し、次いで親油性分散剤を含む該投与形態にさらに加工する、プロセス。
【請求項33】
生命科学産業で用いるためのアスタキサンチンの投与形態を作製するためのプロセスであって、請求項1に記載のアスタキサンチン結晶形IもしくはIIまたはその混合物を有機溶媒または油またはその混合物中に溶解し、次いで親水性分散剤を含む該投与形態にさらに加工するプロセス。
【請求項34】
アスタキサンチンを含む油状組成物を作製するためのプロセスであって、魚飼料ペレット中に直接混ぜ込むためや他の用途のために、請求項1に記載の結晶形Iもしくは結晶形IIまたはその混合物を、100℃〜230℃の温度で食用油および/または魚油中に直接溶解することを含む、プロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−504700(P2009−504700A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526431(P2008−526431)
【出願日】平成18年8月15日(2006.8.15)
【国際出願番号】PCT/EP2006/008047
【国際公開番号】WO2007/020057
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(504438358)ファレス ファーマシューティカル リサーチ エヌ.ブイ. (5)
【Fターム(参考)】