説明

アスファルトの締め固め度を測定する方法、および締め固め度を測定する装置、および締め固め機械

【課題】アスファルトの締め固め度を測定する方法および装置を提供すること。
【解決手段】この方法は、締め固め機械により、締め固める表面区域の被覆層上を通過するステップと、締め固め機械の位置の位置データを測定するステップと、被覆層の表面区域の現在の部分表面を画定するステップであって、現在の部分表面は既に通過した複数の小区域からなる可能性があるステップと、締め固め効果を測定するのに有用であるパラメータを測定および/または選択し、該パラメータを位置データと共に記憶するステップと、現在の部分表面または小区域の全てにパラメータを割り当てるステップと、該パラメータから、現在の部分表面または小区域の締め固め度を計算するステップと、現在の部分表面または各小区域について以前のパス中に記憶されたパラメータが前記計算に含まれるパラメータの一部をなすように、以上のステップを繰り返すステップを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求の範囲第1項に規定されたような、熱い材料、特にアスファルトの層の締め固め度を測定する方法と、特許請求の範囲第15項に規定されたような締め固め度を測定する装置、および特許請求の範囲第18項に規定されたような締め固め機械に関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルト道路建設では、ボーリングサンプルを取り、これを試験所で分析することによって、アスファルト締め固めの品質を検査することが現時点では通例となっている。この手法は、測定がスポット検査のみにより、また締め固め過程の終了後にのみ行なわれるので問題がある。処理表面全体の評価を行なうことは可能ではないだろう。締め固め過程は、遡及的にのみ観察され、処理中にすぐに調節することができない。
【0003】
さらに、手動で作動され、所与のスポット上において締め固め度を検出することが可能である電子プローブの使用が行なわれる。このような電子プローブは、締め固めが依然として進行中である間に、すぐに個別の結果を生じる利点を提供する。しかし、この測定方法では、測定がスポット方式であるという特徴により、処理表面全体に関する結果を得るのが不可能になる。
【0004】
土工エンジニアリングの分野から、締め固め度の間接的検出方法が既に知られている。これらの方法では、剛性値は、計算に数学的方法を使用して、振動しているロールタイヤおよび下にある地面の加速度信号に基づき、機械の締め固め動作中に計算される。結果がプロットされ、モニタを介してユーザに対して直接視覚化される。
【0005】
締め固め過程中の地域の結果をすぐに得るために、上記土工エンジニアリングの方法に倣って、アスファルトの剛性を測定することによってアスファルト舗装でも同様の方法を適用することが行われた。しかし、圧縮されたアスファルトについて得られる剛性値は、多数の要因によって影響を受ける。このような要因の中で言及する価値がある例は、下にある不均一な地面、様々な層厚さ、つぎ(patch)、およびアスファルト温度である。これらの影響を与える要因により、剛性測定は締め固め作業の品質の十分な評価には不適当である。これらの方法はしたがって、アスファルト締め固めに関してほとんど有用ではない。
【0006】
したがって、締め固めの処理中にすぐに締め固め過程を最適化するのに適合する方法に対する要求はかなり存在する。
【0007】
ヨーロッパ特許第0698152号A1から、地面表面の締め固め度を測定する方法および装置が既に知られている。この測定方法を実行するため、処理される地面表面は最初に単位表面区域に分割される。所与の単位表面区域上でパス(pass:通過)が行なわれると、単位表面区域の様々なデータ(例えば、アスファルト温度またはロール速度)が、適切なセンサまたは測定装置によって検出される。これらのデータに基づき、単位表面区域の締め固め度は、通り過ぎた部分の部分締め固め効果または部分指数として計算される。単位表面区域に対する現在の合計締め固め値または合計指数は、現在の部分締め固め効果または部分指数をこの単位表面区域の以前のパスの合計締め固め効果または合計指数に加えることによって得られる。これに関して、この方法は、締め固め度がパスの数と共に準対数的に増えるという仮定に基づいている。
【0008】
この方法の欠点は、処理されるべき地面表面の単位表面区域への理想的な分割にある。特に、湾曲もする、道路の典型的な進行は、したがって、この知られている方法によって明確に表現することができない。これによりまた、特に締め固める地面表面の縁部領域において、締め固め作業の明確な評価を行なうことが不可能になる。さらなる問題は、実際、締め固め機械の移動経路が直線的に並行して延びておらず、代わりに、地面は相互に重なり合う経路に沿って処理されるという事実によって生じる。特に複数の締め固め機械を同時に使用する場合、固定された行路により移動を行なうことは可能でなく望ましくもないだろう。その結果、単位表面区域が締め固め機械によって部分的にのみ通過される場合が起こる可能性がある。例えば、単位表面区域の半分の領域の上だけを数回通過したにもかかわらず完全に処理されたと評価されることが起こる場合、この単位表面区域に対する締め固め作業が既に完了したことをドライバに通信するが、極端な場合、この単位表面区域の半分は実際は処理されないままである。
【0009】
【特許文献1】ヨーロッパ特許第0698152号A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、締め固め度を検出する方法、および上に記載した従来技術の欠点を避けながら、処理される表面の締め固め度をより正確に知らせることを可能にするこのような方法を行なうシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、それぞれ特許請求の範囲第1項および第15項の特徴によって達成される。
【0012】
本発明の方法によると、締め固める表面区域の締め固め度を測定するために、自己締め固め表面区域は熱い材料、特にアスファルトの被覆層を備えており、該材料は被覆された後に連続して冷却され、締め固める表面区域の被覆層が最初に少なくとも1つの締め固め機械によって通過される。この過程では、締め固め機械の位置を示す位置データは、位置計測システムによって測定される。締め固め機械の現在の位置、および少なくとも締め固め機械の寸法により、被覆層の表面区域の現在の部分表面が画定される。現在の部分表面が既に通過された締め固められるべき表面区域の部分上に部分的にまたは全体的に配置される場合、現在の部分表面はまた、既に通過された複数の小区域からなることができる。締め固め効果を測定するのに有用である締め固め機械の1つの位置のパラメータが測定および/または選択され、その位置データと共に記憶される。これらのパラメータはその後、現在の部分表面、または現在の部分表面の全ての小区域に割り当てられる。記憶されたパラメータに基づき、現在の部分表面または現在の部分表面の各小区域の現在の締め固め度が計算される。上記ステップを繰り返すことによって、様々な部分表面または部分表面の小区域に割り当てられる多数のパラメータが各位置データと共に記憶される。上記ステップを繰り返すことにより、現在計算する部分表面または該部分表面の現在計算する小区域のために以前のパスで記憶されたパラメータが、現在の部分表面または該部分表面の現在計算すべき小区域のための現在のパラメータと共に、計算過程の入力パラメータとなる。
【0013】
したがって、実行される計算の中では、1つの表面に対して前に記憶されたパラメータの全ては、その締め固め度の計算のために使用される。したがって、現在の締め固め度を計算する場合、現在の締め固め度は常に、単に締め固め度の部分的増加を計算してそれ以前に計算された締め固め度合計値に加算する代わりに、全ての測定または選択した生データから計算することができるので、現在の部分表面、または現在の部分表面の小区域の締め固めの履歴を考慮することが可能になる。
【0014】
例えば、試験測定走行から明らかになったことであるが、アスファルト上のパスが、パスの数に対する締め固め度の準対数的進展の仮定によっては考慮することができない異常を発生させる。該一連の試験では、パスの約30%で、パスの締め固め度がその直前のパスと比べて小さくなる異常の発生を伴なう可能性があることが分かった。しかし、現在の締め固め度の計算では、このような異常な結果は、締め固め作業の履歴を考慮することによってのみ計算することができる。
【0015】
1つの部分表面および/または1つの部分表面の小区域の寸法は可変であることが好ましい。
【0016】
また、1つの部分表面内の小区域の長さも可変とすることができる。
【0017】
1つの部分表面の小区域の寸法、および/または1つの部分表面内の1つの小区域の位置は、以前のパスにおける少なくとも1つの部分表面、および/または1つの部分表面の少なくとも1つの小区域との該部分表面の重なりにより決定することができる。
【0018】
1つの部分表面の小区域の寸法、および/または1つの部分表面内の1つの小区域の位置は、前記パラメータのうちの1つまたは複数のにより1つのすることができる。
【0019】
部分表面または小区域の可変分割によって、また1つの部分表面内の小区域の可変位置によって、高精度で、締め固められる道路表面の進展を表示ことが可能になる。さらに、(1つまたは複数の)締め固め機械の移動経路の重なりを表示し、これを考慮することが可能になる。
【0020】
小区域は、部分表面内におけるその寸法およびその位置に関して、パスの数により決定されることが好ましい。したがって、現在のパスによるこの小領域の現在の締め固め度の計算は、全ての小領域について一貫したパラメータが記憶されているので、1回だけ行えばよい。したがって、現在の部分表面について、現在の部分表面の各小領域についてはそれぞれ1回の計算だけ実行すればよく、その結果少ない数の計算が要求されるにすぎない。部分表面が小区域を備えていない場合、特に現在の部分表面が以前のパスの部分表面と一致する場合は、この部分表面についての締め固め度の計算は1回だけ行えばよい。
【0021】
したがって、上述した部分表面および小区域の決定は、締め固め度の効率的および迅速な計算を可能にする。
【0022】
現在の締め固め度を計算するパラメータとしては、パスの数、層温度、締め固め機械の速度、ロールタイヤの振動数、ロールタイヤの振幅、締め固め機械のタイプ、締め固め機械の質量、層の冷却挙動、締め固めのタイプ、層の構成、および/または締め固め機械のステアリング角を含むことができる。
【0023】
さらに、固定パラメータとして使用される少なくとも1つの別のパラメータが、作業開始時に予め設定されることが有利である。このようなパラメータは、例えば、アスファルト混合物、締め固め機械の重量、または締め固めのタイプとすることができる。
【0024】
もちろん、作業を行ないながら固定パラメータを変更する選択肢も存在する。例えば、締め固めタイプが固定パラメータとして予め設定され、さらに該締め固めタイプが「振動」(vibration)による締め固めとして指定されている場合、その表面区域の領域を通過した後に、もし締め固め機械がこの作業のさらなる進展中にこのような方法(次記の「発振」または「静止」)で締め固めを行なうべきである場合には、このパラメータを「発振」(oscillation)または「静止」(static)に変更することが可能である。
【0025】
好ましい一変更形態によると、現在より前の1つのパスの1つの部分表面または1つの小区域の少なくとも1つの記憶されたパラメータは、部分表面を示すパラメータおよび/または時間要素によって修正される。
【0026】
このような方法で、例えば部分表面の冷却挙動の記憶されたパラメータを、冷却挙動の現在の測定から得られる情報または該冷却挙動の時間的進展に基づいて、連続的に修正することが可能になる。これにより、締め固め度の極めて正確な計算が可能になる。さらに、現在の部分表面の1つのパラメータに基づいて、該現在の部分表面またはその1つの小区域の少なくとも1つのパラメータを算出できる可能性が存在する。したがって、例えば、冷却挙動のパラメータは、現在のパスの層温度のパラメータとそれよりも前のパスの層温度のパラメータとから導き出すことができる。
【0027】
本発明の好ましい一変更態様によると、1つの部分表面および/または1つの部分表面の1つの小区域に対する処理優先度が計算される。
【0028】
この場合、優先度は、現在の締め固め度、パスの数、時間要素、および/または例えば層の冷却挙動などの個別のパラメータから計算することができる。
【0029】
処理優先度を参照して、優れた締め固め度を得るために、どの表面または1つの部分表面のどの小区域を次に処理しなければならないかを決定することができる。例えば、締め固める表面区域の1つの部分表面または1つの部分表面の1つの小区域の温度が処理には低すぎるようになる可能性がある場合、この領域について計算される通過優先度は極めて高くなり、それによってこの領域は次に処理されるべきであると判断される。
【0030】
本発明は有利には、次のステップで、各部分表面および/または1つの部分表面の各小区域についての現在の締め固め度、個別のパラメータ、および/または処理優先度の図示表示とともに、表面区域が図示表示される。上記情報の図示表示により、締め固め機械のオペレータは、締め固められるべき表面区域に対して最も良好な処理結果に到達するように機械を操作することが可能になる。
【0031】
また、別の方法のステップでは、位置データは現在の位置データ、および最も高い処理優先度を有する部分表面および/または1つの部分表面の小区域の位置データから計算することができ、これらのデータを表示することができる。このようにして、例えばすぐに締め固めなければならない表面区域の領域への距離および方向が締め固め機械のオペレータに示される。この過程では、ナビゲーションデータの計算はまた、時間要素と締め固め機械の速度を考慮することができ、これにより処理優先度に関する最適のルートを計算および表示することが可能になる。
【0032】
さらに、本発明は有利には、データ、好ましくは測定しまたは選択したパラメータが位置データと共に、少なくとも1つの別の締め固め機械および/または中央演算処理装置に伝達され、それによって複数の締め固め機械を備えたネットワークでは、全ての締め固め機械は、他の各締め固め機械のデータについても自由に使えるように取得する。したがって、現在の締め固め度を計算する場合、1つの締め固め機械のパスだけではなく、全ての締め固め機械のパスを考慮することが可能である。このようにして、複数の締め固め機械が協働して作動することができ、締め固められる表面区域の関心領域の現在の締め固め度が、全ての機械の締め固め作業を考慮して計算される。
【0033】
本発明によると、さらに、上記方法を行なう装置が提供される。この装置では有利には、位置計測システムは、衛星ベース(satellite-based)位置データを受信する位置データ受信機を備えている。
【0034】
上記に代えてまたは追加として、位置計測システムは、光学位置計測システム、好ましくはレーザ位置計測システムを備えることができる。
【0035】
このようにして、締め固め機械の位置は極めて正確および便利に測定することができる。光学位置計測システムを使用すれば、例えば、トンネルなどの衛星ベース位置測定が可能ではない状況で、締め固め機械の位置を測定することも可能である。
【0036】
本発明によると、さらに上記装置を備えた締め固め機械が提供される。
【0037】
締め固め機械の別の有利な実施形態が、特許請求の範囲の関連する下位クレームで規定されている。
【0038】
本発明の一実施形態は以下に、図面を参照して詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
図1は、締め固められるべき道路表面の1つの表面区域7の締め固め度を測定する本発明の方法を行なうのに使用される締め固め機械1を略図的に示している。道路表面の締め固められるべき表面区域7は、熱い材料の被覆層3を含んでいる。熱い材料は、例えばアスファルトとすることができる。締め固め機械1は、図1の矢印で示すような移動方向に、締め固められるべき表面区域7の上をパス(pass:通過)する。この過程では、移動方向から見て前部ロールタイヤ17、および移動方向から見て後部ロールタイヤ19が、被覆層3を締め固める。パスの間、被覆層3の表面温度は、温度センサによって測定される。図1に略図的に示された温度センサ20は、距離を置いて被覆層の表面の温度を測定するようになっている非接触式赤外線温度計である。もちろん、他の温度測定方法も適用可能である。
【0040】
締め固め機械1は、位置計測システム(positioning syatem)の位置データ受信機21を備えており、該受信機は例えばGPS受信機とすることができる。位置計測システムの使用によって、締め固め機械の位置を測定することができる。別のセンサ(図示せず)を使用して、締め固め機械の速度、ロールタイヤの振動数、ロールタイヤの振幅、締め固め機械のステアリング角を測定することができる。本発明の方法では、さらにパスの数を登録することができ、また締め固め機械のタイプ、締め固め機械の質量、締め固めのタイプ、および層の構成を予め定めることができる。
【0041】
本発明の方法を行なう場合、締め固められるべき表面区域7の被覆層3は、締め固め機械1によって通過(pass)される。
【0042】
位置計測システムの位置データ受信機21を使用して、締め固め機械1の位置が測定される。この過程では、位置データ受信機21は、衛星から位置データを受信し、そのデータから位置を計算することができる。これに代えてまたはこれに加えて、締め固め機械1は、光学位置計測システム、例えばレーザ位置計測システムを備え、それにより例えば、衛星ベース位置計測システムの使用による位置測定が実行可能でないトンネルを通過する場合の位置測定が可能になる。
【0043】
図2aでは、道路表面5の締め固める表面区域7が図示されている。符号15は、締め固め機械の略図的に示した移動経路を示す。移動経路の中央に符号11でマーキングした点は、位置計測システムによって測定された締め固め機械の位置を示している。締め固め機械の位置の測定後、締め固め機械の移動方向に向いているベクトルが、締め固め機械の位置に配置される。この位置と、前記ベクトルと、締め固め機械の寸法、特に締め固め機械のロールタイヤの幅によって、表面区域7の部分表面9が画定される。締め固め機械の上記位置では、締め固め効果を測定する適切なパラメータが測定または選択される。上述のように、このようなパラメータは、例えば、層温度、締め固め機械の速度、ロールタイヤの振動数、ロールタイヤの振幅、締め固め機械のステアリング角とすることができる。さらに、パスの数が登録される。図2aに示す例では、パスの数はnで示されている。
【0044】
層温度に基づき、現在の層温度と以前のパスの層温度の温度差を検出することによって、層の冷却挙動を測定することが可能である。また、該冷却挙動を測定するときに、例えば外気温、風速、大気圧、大気湿度などの気象データを対応するセンサを使用して測定し、該気象データを使用する選択肢もある。既に説明したように、本発明の方法では、締め固め機械のタイプ、締め固め機械の質量、締め固めのタイプ、および層の構成を固定パラメータとして予め設定することが可能である。
【0045】
本発明のさらなる過程では、パラメータは部分表面9に割り当てられる。これに関して、これらのパラメータが締め固められる表面区域全体に対して有効であると仮定できる限り、該固定的に予め設定されたパラメータを該部分表面に同様に割り当てることは義務的には要求されない。
【0046】
これらのパラメータの全体から、現在の部分表面9の締め固め度が計算される。
【0047】
締め固め機械の別のパスn+1中の、道路表面5の表面区域7が図2bに示されている。締め固め機械の移動経路が、参照番号15’で記されている。図2aにより締め固め機械の位置11について画定された部分表面9が、破線によって略図的に示されている。図2bから分かるように、パスn+1の移動経路15’は前回のパスnの移動パスと重なっている。パスn+1の位置11’では次に、部分表面9’が画定される。部分表面9’の画定が、位置11’、締め固め機械の寸法、および点11’を通過するベクトルによって示される移動方向に応じて実行される。パスn中に記憶されたパラメータ、特にパスの回数に基づき、作動システムは移動経路の重なりが生じたことを検出する。そういうわけで、部分表面9’は2つの小区域13aおよび13bに分割される。点11’では、パラメータが再び測定および選択される。これらのパラメータは、部分表面9’、および部分表面9’の個別の小区域13aおよび13bにそれぞれ割り当てられる。
【0048】
次に、部分表面9’の締め固め度が計算される。本発明の方法によると、締め固め度の計算が部分表面または小区域の領域に対して前に記憶された全てのパラメータも考慮して行なわれるので、部分表面9’の締め固め度の計算では、それぞれの計算が各小区域13a、13bについて行なわれる必要がある。小区域13aの締め固め度を計算するために、パスn+1のパラメータ、およびパスnのパラメータが使用される。というのは、小区域13aがパスnの部分表面9に配置されているからである。図示した例では、小区域13bでは、パスn+1について位置11’で測定または選択されたパラメータのみが、締め固め度の計算の際に使用される。小区域13b内に、以前のパスの部分表面または小区域が配置される場合、小区域13bは該部分表面または該小区域の境界に対応して分割され、それによって部分表面9’は3つ以上の小区域から構成されることになる。そして、締め固め度はそれに応じて、各小区域に対して計算される。
【0049】
このようにして、本発明の方法によりパスを繰り返す場合、締め固める表面区域全体が締め固め機械と共に進行する部分表面に分割され、ここに該部分表面の寸法および位置は可変となる。締め固め機械の移動経路の重なりによって、現在の部分表面は小さい寸法の小区域に分割され、それによって、締め固められた表面区域の締め固め度の極めて正確な測定が可能になる。
【0050】
上に記載した方法では、部分表面、例えば部分表面nについて既に記憶したパラメータが、現在の部分表面、例えば部分表面9’のパラメータ、および/または時間要素によって修正される。このパラメータは、例えば、層の冷却挙動であってもよい。例えば、パスn+1とパスnの間の時間間隔により、および/または天候の変動により、パスn中の部分表面9について前に記憶された層の冷却挙動が実体に対応しないことがパスn+1中の層の冷却挙動のパラメータにより明らかな場合には、部分表面9について記憶されたこのパラメータはそれに応じて修正することができる。また、記憶したパラメータを修正する代わりに、対応するタイムスタンプが付けられた部分表面9に対する新しいパラメータを記憶することも可能である。
【0051】
このようにして、表面区域の処理の履歴および冷却の履歴を高い精度で記憶することができ、それによって、これから締め固められる表面区域について極めて有用な温度予想を行うことが可能になる。
【0052】
熱いアスファルトは特定の温度以上でのみ圧縮することができ、圧縮はこの温度以下ではもはや実際上可能ではないので、部分表面、および/または部分表面の小区域に対する処理の優先度は、温度予想の助けをかりて、また別に層の冷却挙動の助けをかりて計算することができる。
【0053】
本発明の方法ではさらに、これから処理される道路表面の表面区域を視覚化することが提供される。したがって、該表面区域は図形的に表示され、該表示は各部分表面および/または部分表面の各表面区域についての、現在の締め固め度、個々のパラメータ、および/または処理優先度を含んでいる。処理優先度を視覚的に表示す場合、個別の部分表面および/または小区域がその優先度に対応する色で記されている。例えば、最も高い処理優先度の部分表面および/または小区域は、警告色、例えば赤、または点滅で示すことができ、優れた締め固め結果を得るために、締め固め機械の操作者が次に処理しなければならないこれらの領域をすぐに識別することが可能になる。本発明の方法では、現在の位置データ、および高い処理優先度を有する部分表面および/または部分表面の小区域の位置データに基づいて、操作者に伝達するナビゲーションデータを例えば距離および方向の表現形式で計算することがさらに可能である。その結果、該ナビゲーションデータは、最も高い処理優先度を有する部分表面または小区域の処理を行うための最適の経路を示すルートの計算のために使用することができる。これにより、極めて優れた締め固め結果を有する極めて効果的な処理が可能になる。
【0054】
複数の締め固め機械を使用して締め固める表面区域を処理することを可能にするために、個別の締め固め機械が、例えば無線によってその測定または選択されたデータ、および付属する位置データを他の締め固め機械に伝達し、それによって全ての締め固め機械はそれぞれ利用可能な他の締め固め機械のデータを取得することになる。さらに、各締め固め機械は前記データを1つの中央演算処理装置に伝達し、該中央演算処理装置は、他の締め固め機械に対して該データの分配を行なうようにすることができる。複数の締め固め機械を備えたこのようなネットワークでは、各機械自体が、利用可能なデータに基づいて、対応する締め固め度および優先度を計算することも可能になる。また、中央演算処理装置内でデータを収集し、この装置内で対応する計算を実行することが可能である。その後、その結果は締め固め機械に伝達され、操作者の注意を引くように視覚的に表示される。
【0055】
図3は、現在の締め固め度の計算を示す図を示している。この図では、Pはパスnについて選択された1組のパラメータを示している。この1組のパラメータPは、上記の測定または選択されたパラメータと、固定的に予め設定されたパラメータを含んでいる。図3に示す計算方法は、部分表面、または部分表面の小区域のいずれかに対する計算方法である。図2a、2bに関して既に記載したように、部分表面は以前のパスとの重なりにより画定される。小区域を画定するこの過程では、小区域全体は隅々まで同じ処理履歴を有すること、すなわち同じ組のパラメータP〜Pがその小区域全体に対して存在していることが明白である。計算モデルMでは、現在の締め固め度がパラメータP〜Pの組から計算される。計算モデルMは、複数の連続テストの助けをかりて確立されたものである。この計算モデルでは、各パラメータP〜Pの組のパラメータがニューラルネットワークによって互いに連結され、それによって現在の締め固め度を計算することができる。
【0056】
図4は、道路表面5の締め固められる表面区域7の締め固め度を示す図示表示を示している。図4の図示表示では、灰色の様々な暗度は様々な締め固め度を示している。もちろん、前記グレースケールの表現の代わりに、着色した表現を使用することもできる。
【0057】
図4の表現から明らかなように、表面区域7内で行なわれる別々のパスは、別々の部分表面または部分表面の小区域に対して異なる締め固め度をもたらしている。例えば、計算した締め固め度に対応する色によって記された小区域が参照番号9’によって示されている。
【0058】
したがって、様々な色による図示表示は、締め固める表面区域の個別の締め固め度を締め固め機械の操作者に示すように働き、それによって締め固め機械をまだ低すぎる締め固め度を有する対応する部分に対して操舵することができる。
【0059】
本発明の方法では、締め固め機械の1つの位置について2組のパラメータを測定または選択し、これらの組のパラメータを2つの部分表面に割り当てることも可能である。例えば、1つの部分表面は、アスファルト層上に突出した前部ロールタイヤ17の、図1に示す中心から移動方向に前向きに延びることができ、第2の部分表面は層3上に突出する後部ロールタイヤの中心から移動方向に前向きに延びることができる。
【0060】
上で詳細に説明したように、部分表面は締め固め機械の位置により画定される。そうする際、部分表面の範囲は、締め固め機械の寸法、特に締め固め機械のロールタイヤの幅によって画定され、そのため部分表面の幅がロールタイヤの幅に対応する。
【0061】
もちろん、1つのロールタイヤのみを有する締め固め機械の使用によって本発明の方法を行なうことも可能である。
【0062】
図1に示す締め固め機械では、それぞれの温度センサは、前部ロールタイヤ17の上流側、および後部ロールタイヤ19の下流側に配置されている。両温度センサ20は層3の表面温度を検出する。両温度センサ間の距離により、および層3の処理中に冷却のためにロールタイヤ17、19の上に噴霧されそしてロールタイヤ17、19から層3の表面に注がれる水により、2つの温度センサ20によって検出される層3の表面温度は異なる。そういうわけで、本発明の方法で使用される層温度は、2つの温度の間の固定の重み付け比に従って検出される。また、層温度の検出に使用される温度の重みを、例えばロールタイヤ17および19上に注がれる冷却水の量によって変更するということも可能である。移動方向から見て前部ロールタイヤの上流側、および後部ロールタイヤの下流側に配置された2つの温度センサの使用による層3の表面温度の温度測定はまた、道路表面の締め固める表面区域の締め固め度を測定する上記の本発明の方法とは無関係に実行可能であり、したがって2つの検出温度の重みを用いて層温度を測定する前記方法はまた、他の過程、例えば剛性測定にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】締め固め機械の概略図である。
【図2】道路表面の締め固められる表面区域の概略図である。
【図3】現在の締め固め度の計算の図示表示である。
【図4】道路表面の締め固められる表面区域の締め固め度の例示的な図示表示である。
【符号の説明】
【0064】
1…締め固め機械、3…被覆層、5…道路表面、7…表面区域、9…部分表面、9’…部分表面、11,11’…位置計測システムによって測定された締め固め機械の位置、13a,13b…小区域、15…移動経路、15’…移動経路、17…前部ロールタイヤ、19…後部ロールタイヤ、20…温度センサ、21…位置データ受信機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
締め固める道路表面の1つの表面区域の締め固め度を測定する方法であって、締め固める前記表面区域は、熱い材料、特にアスファルトの被覆層を備えており、前記材料は被覆後に連続して冷却されるものであり、
該方法は、
a)少なくとも1つの締め固め機械を使用して、前記締め固める表面区域の前記被覆層上を通過するステップと、
b)位置計測システムを使用して、前記締め固め機械の位置の位置データを測定するステップと、
c)前記締め固め機械の現在位置、および少なくとも前記締め固め機械の寸法に応じて、前記被覆層の前記表面区域の現在の部分表面を画定するステップであって、前記現在の部分表面は既に通過した複数の小区域からなる可能性があるステップと、
d)前記締め固め機械の位置で、締め固め効果を測定するのに有用であるパラメータを測定および/または選択し、前記パラメータを該位置データと共に記憶するステップと、
e)前記パラメータを前記現在の部分表面、または該現在の部分表面の全ての小区域に割り当てるステップと、
f)前記パラメータから、前記現在の部分表面または前記現在の部分表面の各小区域の現在の締め固め度を計算するステップと、
g)前記現在の部分表面または各小区域について以前のパスで記憶されたパラメータが、ステップf)において前記計算に含まれるパラメータのそれぞれ一部をなすように、ステップa)からf)を繰り返すステップを含む方法。
【請求項2】
1つの部分表面および/または1つの部分表面の小区域の寸法は可変であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1つの部分表面内で前記小区域の位置は可変であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
1つの部分表面の前記小区域の寸法および/または1つの部分表面内の1つの小区域の位置は、以前のパスにおける少なくとも1つの部分表面および/または1つの部分表面の少なくとも1つの小区域との該部分表面の重なりにより決定されることを特徴とする、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
1つの部分表面の前記小区域の寸法および/または1つの部分表面内の1つの小区域の位置は、前記パラメータのうちの1つまたは複数により決定されることを特徴とする、請求項2から4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの別のパラメータが、ステップa)の前に固定パラメータとして予め設定されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
以前の1つのパスについて記憶された、1つの部分表面または1つの小区域の少なくとも1つのパラメータは、前記現在の部分表面のパラメータおよび/または時間要素によって修正されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記現在の部分表面または該現在の部分表面の1つの小区域の少なくとも1つのパラメータは、前記現在の部分表面のパラメータにより計算されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記パラメータとして、パスの数、層温度、締め固め機械の速度、ロールタイヤの振動数、ロールタイヤの振幅、締め固め機械のタイプ、締め固め機械の質量、層の冷却挙動、締め固めのタイプ、層の構成、および/または締め固め機械のステアリング角を含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
1つの部分表面および/または1つの部分表面の1つの小区域についての処理優先度を計算するステップをさらに含む、請求項1から9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記処理優先度は、前記現在の締め固め度、前記パスの数、時間要素、および/または個々のパラメータ、好ましくは前記層の冷却挙動に基づき計算されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記表面区域を図示表示するステップであって、前記表示は各部分表面および/または部分表面の各小区域の、前記現在の締め固め度、および/または個別のパラメータ、および/または前記処理優先度を含んでいるステップをさらに含む、請求項1から11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
前記現在の位置データ、および最も高い処理優先度を有する前記部分表面および/または1つの部分表面の小区域の位置データから、ナビゲーションデータを計算するステップおよびそのナビゲーションデータを表示するステップをさらに含む、請求項10から12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
複数の締め固め機械を備えたネットワークでは、前記締め固め機械の全てがそれぞれ他の締め固め機械のデータにアクセスすることが可能なように、データ、好ましくは位置データを備えたパラメータを、少なくとも1つの別の締め固め機械および/または中央演算処理装置に伝達するステップをさらに含む、請求項1から13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1つに記載の方法を行なう装置。
【請求項16】
前記位置計測システムは、衛星ベース位置データを受信する位置データ受信機を備えていることを特徴とする、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記位置計測システムは、光学位置計測システム、好ましくはレーザ位置計測システムを備えていることを特徴とする、請求項15または16に記載のシステム。
【請求項18】
請求項15から17のいずれか1つに記載の装置を備えた締め固め機械。
【請求項19】
前記被覆層の温度を測定するための少なくとも2つの温度センサによって特徴づけられる機械であって、前記層温度のパラメータは前記2つのセンサによって測定される温度から計算される、請求項18に記載の締め固め機械。
【請求項20】
前記締め固め機械の駆動方向で見て、前記温度センサの一方が前軸の上流側に配置され、前記温度センサのもう一方が前記締め固め機械の後軸の下流側に配置されていることを特徴とする、請求項19に記載の機械。
【請求項21】
前記層温度の前記パラメータは、前記2つの測定温度に重みをつけることによって計算されることを特徴とする、請求項19または20に記載の機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−268217(P2008−268217A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−111397(P2008−111397)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【出願人】(508123375)ハム アーゲー (2)
【氏名又は名称原語表記】Hamm AG
【住所又は居所原語表記】Hammstrasse 1, 95633 Tirschenreuth Germany
【Fターム(参考)】