説明

アスファルト乳剤散布装置

【課題】アスファルト乳剤の散布幅を変更しても煩雑なスイッチ操作作業を行うことなく、散布密度を均一にすることができるようにする。
【解決手段】乳剤タンクから供給されるアスファルト乳剤を散布する複数個の散布ノズル19A〜19E、19a〜19eが走行車両の幅方向に間隔をあけて配列されてなるスプレーバー18R,18Lを前後二列に配置し、該前後二列のスプレーバー18R,18Lを散布ノズル19A〜19E、19a〜19eの配列方向に沿って相対移動可能に設けてなり、かつ、二列のスプレーバー18R,18Lの相対移動により、前後で重なり合う状態となる散布ノズル19A〜19E、19a〜19eのうち、片方のスプレーバーにおける散布ノズルの乳剤散布を他方のスプレーバーにおける散布ノズルに対し自動的に入切する制御装置17を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアスファルト乳剤散布装置に関するものであり、特に、アスファルト乳剤を下層路面上に散布する乳剤散布専用のアスファルト乳剤散布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アスファルト乳剤散布装置を備えたアスファルトフィニッシャとしては、アスファルト乳剤をアスファルト乳剤散布装置により、未舗装の路盤やアスファルト舗装体、あるいは、コンクリート舗装体等の下層路面上に散布しながら、ホッパ内に蓄積されたアスファルト合材を送り出し装置により、下層路面上に散布された乳剤の上に送り出してスクリードで敷き均すものが知られている。
【0003】
このようなアスファルトフィニッシャに適用されるアスファルト乳剤散布装置には、乳剤タンクから供給されるアスファルト乳剤を散布する散布ノズルが走行車両の幅方向に間隔をあけて複数配列されてなるスプレーバーを複数、前記散布ノズルの配列方向に沿わせた状態で、該配列方向に沿って相対移動可能に設けてなることにより、散布幅を調整するものがある(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0004】
前記アスファルト乳剤散布装置は、スプレーバー同士が前記散布ノズルの配列方向において重なり合うと、この重なり合う部分には、両スプレーバーの散布ノズルが存在してしまうことになる。すると、この重なり合う部分だけ、アスファルト乳剤の散布密度が高くなってしまうことになるため、スプレーバーの一方について他方に対し重なり合う部分における散布ノズルを切る等の操作をする必要がある。従来、この散布ノズルの入切操作は、スイッチを介して手動で行っていた。
【特許文献1】実公平1−11775号公報。
【特許文献2】特許第3542903号公報。
【特許文献3】特許第3797958号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、散布ノズルの入切操作をスイッチを介して手動で行うと、スイッチの入れ忘れ、または、切り忘れによって、散布しない部分ができたり、または、重複散布する部分ができたりする問題があった。また、スイッチの入り切りという煩雑なスイッチ操作作業をさらに行わなければならないという問題があった。
【0006】
そこで、アスファルト乳剤の散布幅を変更しても煩雑なスイッチ操作作業を行うことなく、散布密度を均一にすることができるようにするために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、乳剤タンクから供給されるアスファルト乳剤を散布する複数個の散布ノズルを走行車両の幅方向に間隔をあけて配列されてなるスプレーバーを、少なくとも前後二列に配置し、該前後二列のスプレーバーを前記散布ノズルの配列方向に沿って相対移動可能に設けてなるアスファルト乳剤散布装置において、前記二列のスプレーバーの前記相対移動により、前後で重なり合う状態となる前記散布ノズルのうち、片方のスプレーバーにおける散布ノズルの乳剤散布を他方のスプレーバーにおける散布ノズルに対し自動的に入切するスイッチ制御手段を設けたアスファルト乳剤散布装置を提供する。
【0008】
この構成によれば、アスファルト乳剤の散布幅が変更されて、前後のスプレーバーが相対移動されて散布ノズルが前後で重なり合う状態になると、スイッチ制御手段が、その前後で重なり合っている前記散布ノズルのうち、片方のスプレーバーにおける散布ノズルの乳剤散布を他方のスプレーバーにおける散布ノズルに対し自動的に入切するので、作業者は煩雑なスイッチ操作作業を行う必要がなくなる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1において、上記スイッチ制御手段に、上記散布ノズルにおける乳剤散布の入切動作を自動と手動のいずれでも行うことが可能な自動・手動切換選択手段を設けたアスファルト乳剤散布装置を提供する。
【0010】
この構成によれば、散布ノズルにおける乳剤散布の入切動作を自動と手動のいずれでも行うことができる。
【0011】
請求項3記載の発明は、上記前後二列のスプレーバーの一方側のスプレーバーに、上記スイッチ制御手段におけるスイッチを個々に操作するスイッチレバーを複数、上記散布ノズルの配列方向に沿わせて所定の間隔をあけて設け、前記前後二列のスプレーバーが相対移動されたときに、他方側のスプレーバーに設けたストライカが前記スイッチレバーと順に当接して前記スイッチレバーの動作を切り換え、かつ、上記スイッチ制御手段が前記スイッチレバーの切り換え信号により前記散布ノズルの入切を制御するようにしたアスファルト乳剤散布装置を提供する。
【0012】
この構成によれば、前後二列のスプレーバーが相対移動されると、その移動に対応したスイッチレバーの動作切換によりスイッチ制御手段に信号が送られ、相対移動位置に応じた箇所における散布ノズルの入切動作が自動的になされる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明は、アスファルト乳剤の散布幅が変更されても、前後で重なり合っている散布ノズルに対する入切操作は、スイッチ手段により自動的に行うので、作業者が煩雑なスイッチ操作作業を行う必要はなく、作業者への負担が軽減される。また、スイッチの入れ忘れ、または、スイッチの切り忘れによって、散布しない部分ができたり、または、重複散布する部分ができたりするのがなくなり、散布密度を均一にすることができる。
【0014】
請求項2記載の発明は、散布ノズルにおける乳剤散布の入切動作を自動と手動のいずれでも行うことができるので、例えば点検等のときに手動により散布ノズルを動作させることができ、請求項1の発明の効果に加えて、作業性が向上する。
【0015】
請求項3記載の発明は、前後二列のスプレーバーの相対位置を、スイッチレバーの配列を利用して簡単に知ることができるので、構造の簡略化が図れ、請求項1または2の発明の効果に加えて、コストの低減が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
アスファルト乳剤の散布幅を変更しても煩雑なスイッチ操作作業を行うことなく、散布密度を均一にすることができるようにするという目的を達成するために、乳剤タンクから供給されるアスファルト乳剤を散布する複数個の散布ノズルが走行車両の幅方向に間隔をあけて配列されてなるスプレーバーを、少なくとも前後二列に配置し、該前後二列のスプレーバーを前記散布ノズルの配列方向に沿って相対移動可能に設けてなるアスファルト乳剤散布装置において、前記二列のスプレーバーの前記相対移動により、前後で重なり合う状態になる前記散布ノズルのうち、片方のスプレーバーにおける散布ノズルの乳剤散布を他方のスプレーバーにおける散布ノズルに対し自動的に入切するスイッチ制御手段を設けることにより実現した。
【実施例1】
【0017】
以下、本発明のアスファルト乳剤散布装置について、好適な実施例をあげて説明する。
【0018】
図1及び図2は、本発明の一実施の形態に係るアスファルト乳剤散布装置を適用したアスファルトフィニッシャの一例を示す。
【0019】
図1及び図2において、アスファルトフィニッシャ1は、前輪(操舵輪)2aと後輪(駆動輪)2bに支持された車体3を有し、該車体3に搭載されたパワーユニット4内のエンジンの動力によって走行する自走式の車両(走行車両)5と、該車両5の前部に設けたアスファルト合材を収容するためのホッパ6と、前記車両5の後部に車体3の幅方向(図1で上下方向、図2で紙面に垂直な方向)に向けて支持されたスプレッディングスクリュ(送出装置)7と、前記ホッパ6の底部とスプレディングスクリュ7との間において車体3にその前後方向(図1、図2で左右方向)に沿って設けられているバーフィーダ(送出装置)8と、前端を車両5の前後方向における中央の両側部に回動自在に支持され、後端部をシリンダ9で車体3に上下動可能に支持されているレベリングアーム10と、該レベリングアーム10の後端に支持されてシリンダ(図示せず)で上下に回動可能となっている車両5の幅方向に伸縮自在のスクリード11と、アスファルト乳剤散布装置12と、操縦装置13を有する運転席14とを備えている。この構成は、従来のアスファルト乳剤散布装置を備えたアスファルトフィニッシャの構成と基本的に同様となっている。
【0020】
前記アスファルト乳剤散布装置12は、前記車体3の前後方向における中央の上部に搭載された乳剤タンク15内のアスファルト乳剤が供給され、この供給されたアスファルト乳剤を下層路面に散布する乳剤散布機構16(図3及び図4参照)と、該乳剤散布機構16へのアスファルト乳剤の供給を切り換えるスイッチ制御手段としての制御装置17(図3参照)とを備えている。
【0021】
前記乳剤散布機構16は、図3、図4に示すように、車両5の幅方向に沿って延長された四角筒状のスプレーバー18R,18Lを有している。スプレーバー18R,18Lは、互いに前後二列に並べられ、かつ、その長手方向(車両4の幅方向)に沿って相対移動可能に配設されている。
【0022】
スプレーバー18Rには、該スプレーバー18Rの長手方向に所定の間隔をあけ、かつ、アスファルト乳剤を噴出する口を下側に向けて、スプレーバー18Rの下部に取り付けた複数個(本実施の形態では5個)のバルブ付の散布ノズル19A,19B,19C,19D,19Eと、これら散布ノズル19A,19B,19C,19D,19Eに個々に対応する乳剤用電磁開閉弁21R1〜21R5とを備えている。
【0023】
乳剤用電磁開閉弁21R1〜21R5は、制御装置17に設けられた開閉スイッチSW1〜SW4等によって個々に作動され、開閉スイッチSW1〜SW4がオン動作のときに弁が開き、コンプレッサ25からの圧縮エアが配管26を通して散布ノズル19A〜19Eに供給され、この供給されて来る圧縮エアにより散布ノズル19A〜19E内の弁が開き、乳剤タンク15から乳剤ポンプ24及び流路20を介して供給されるアスファルト乳剤が散布ノズル19A〜19Eを通して散布される。一方、開閉スイッチSW1〜SW4がオフ動作のときに弁が閉じ、コンプレッサ25からの圧縮エアの供給が停止され、散布ノズル19A〜19E内の弁も閉じてアスファルト乳剤の散布も停止するようになっている。
【0024】
一方、スプレーバー18Lには、前記スプレーバー18Rの場合と同様に、該スプレーバー18Lの長手方向に所定の間隔をあけ、かつ、アスファルト乳剤を噴出する口を下側に向けて、スプレーバー18Lの下部に取り付けた複数個(本実施の形態では5個)のバルブ付の散布ノズル19a,19b,19c,19d,19eと、これら散布ノズル19a〜19eに個々に対応する乳剤用電磁開閉弁21L1〜21L5とを備えている。
【0025】
乳剤用電磁開閉弁21L1〜21L5は、制御装置17に設けられた開閉スイッチSW1〜SW4等によって個々に作動され、開閉スイッチSW1〜SW4がオン動作のときに弁が開き、コンプレッサ25からの圧縮エアが配管26を通して散布ノズル19a〜19eに供給され、この供給されて来る圧縮エアにより散布ノズル19a〜19e内の弁が開き、乳剤タンク15から乳剤ポンプ24及び流路20を介して供給されるアスファルト乳剤がバルブ付散布ノズル19a〜19eを通して散布される。一方、開閉スイッチSW1〜SW4がオフ動作のときに弁が閉じ、コンプレッサ25からの圧縮エアの供給が停止され、散布ノズル19A〜19E内の弁も閉じてアスファルト乳剤の散布も停止するようになっている。
【0026】
また、前側のスプレーバー18Rには、各散布ノズル19A,19B,19C,19Dに対応しているスイッチレバーLS1,LS2,LS3,LS4が、後側のスプレーバー18L側に各々突出させた状態にして設けられている。これらスイッチレバーLS1,LS2,LS3,LS4は、開閉スイッチSW1〜SW4に個々に対応しており、傾倒することにより、傾倒したスイッチレバーLS1〜LS4に対応している開閉スイッチSW1〜SW4がオンからオフ動作するようになっている。
【0027】
一方、後側のスプレーバー18Lには、スプレーバー18R,18Lが相対移動するとき、スプレーバー18R側の散布ノズル19Aとスプレーバー18L側の散布ノズル19a、同じく散布ノズル19Bと19b、同じく散布ノズル19Cと19c、同じく散布ノズル19Dと19dとが互いに重なり合う位置毎に、スイッチレバーLS1,LS2,LS3,LS4と順に当接されて、対応している範囲内における全てのスイッチレバーLS1〜LS4を傾倒させ、この傾倒を介して開閉スイッチSW1〜SW4をオンからオフ動作に切り換えるストライカ22が設けられている。なお、スイッチレバーLS1〜LS4の傾倒は、ストライカ22との当接が解除されると、直立状態に復帰する。
【0028】
制御装置17は、信号供給線23a〜23eを介して乳剤用電磁開閉弁21L1〜21L5に接続されているとともに、信号供給線23A〜23Eを介して乳剤用電磁開閉弁21R1〜21R5に接続されている。また、信号供給線23Aと接続された回路部17A内にはスイッチレバーLS1に連動する前記開閉スイッチSW1が設けられ、信号供給線23aと接続された回路部17a内にはスイッチレバーLS2に連動する開閉スイッチSW2が、信号供給線23Bと接続された回路部17B内にはスイッチレバーLS3に連動する開閉スイッチSW3が、信号供給線23bと接続された回路部17b内にはスイッチリバーLS4に連動する開閉スイッチSW4が、それぞれ設けられている。
【0029】
このように構成されたアスファルト乳剤散布装置12は、アスファルト乳剤の散布幅を変更する場合、スプレーバー18R,18Lを左右方向に相対移動させ、スプレーバー18Rとスプレーバー18Lとで作られる車幅方向の長さを変えて行う。その際、乳剤用電磁開閉弁21R1〜21R5,21L1〜21L5を介して散布ノズル19A〜19E,19a〜19eによる乳剤散布の入切を制御し、散布密度を均一にする。この散布密度を均一にするために用いられている散布形式の一例を示したのが、図5に示す舗装幅と乳剤用電磁開閉弁21R1〜21R5,21L1〜21L5との関係図である。
【0030】
次に、図3〜図5を用いて、本実施の形態におけるアスファルト乳剤散布装置12の動作を説明する。
【0031】
図5において、(a)は最大の舗装幅L1の時で、この状態ではスプレーバー18Rの散布ノズルとスプレーバー18Lの散布ノズルは、いずれも前後方向で重なっていない状態にあり、またスイッチレバーLS1〜LS4のいずれも直立状態で、これらスイッチレバーLS1〜LS4に連動する開閉スイッチSW1〜SW4の全てがオンの状態にある。これにより、制御装置17は、全ての乳剤用電磁弁21R1〜21R5,21L1〜21L5を開かせ、全ての散布ノズル19A〜19E,19a〜19eからアスファルト乳剤が散布される「入」動作を保持している。
【0032】
図5において、(b)は最大の舗装幅L1よりも狭められた舗装幅L2の時で、この状態ではスプレーバー18Rの散布ノズル19Aとスプレーバー18Lの散布ノズ19aとが前後方向で重なり合った状態にあり、またスイッチレバーLS1が傾倒状態、スイッチレバーLS2〜LS4が直立状態で、制御装置17における開閉スイッチSW1がオフ、開閉スイッチSW2〜SW4がオン状態にある。これにより、制御装置17は、乳剤用電磁開閉弁21R1を閉動作、乳剤用電磁開閉弁21R2〜21R5,21L1〜21L5を開動作にし、散布ノズル19Aからのアスファルト乳剤の散布を止め(「切」動作)、散布ノズル19B〜19E,19a〜19eよりアスファルト乳剤が散布される「入」動作を保持している。すなわち、前後方向で重なり合っている散布ノズル19Aと19aは、片方の散布ノズル19aだけにアスファルト乳剤を散布させて重複散布する部分をなくし、散布密度を均一にする。
【0033】
図5において、(c)は舗装幅L2よりも狭められた舗装幅L3の時で、この状態ではスプレーバー18Rの散布ノズル19A,19Bとスプレーバー18Lの散布ノズ19a,19bとが前後方向で重なり合った状態にあり、またスイッチレバーLS1,LS2が傾倒状態、スイッチレバーLS3,LS4が直立状態で、制御装置17における開閉スイッチSW1,SW2がオフ、開閉スイッチSW3,SW4がオン状態にある。これにより、制御装置17は、乳剤用電磁開閉弁21R1,21L1を閉動作、乳剤用電磁開閉弁21R2〜21R5,21L2〜21L5を開動作にし、散布ノズル19A,19aからのアスファルト乳剤の散布を止め(「切」動作)、散布ノズル19B〜19E,19b〜19eからアスファルト乳剤が散布される「入」動作を保持している。すなわち、前後方向で重なり合っている散布ノズル19A,19Bと散布ノズル19a,19bは、それぞれ片方の散布ノズル19b及び19Bだけにアスファルト乳剤を散布させて重複散布する部分をなくし、散布密度を均一にする。
【0034】
図5において、(d)は舗装幅L3よりも狭められた舗装幅L4の時で、この状態ではスプレーバー18Rの散布ノズル19A,19B,19Cとスプレーバー18Lの散布ノズ19a,19b,19cとが前後方向で重なり合った状態にあり、またスイッチレバーLS1,LS2,LS3が傾倒状態、スイッチレバーLS4が直立状態で、制御装置17における開閉スイッチSW1,SW2,SW3がオフ、開閉スイッチSW4がオン状態にある。これにより、制御装置17は、乳剤用電磁開閉弁21R1,21L1,21R2を閉動作、乳剤用電磁開閉弁21R3〜21R5,21L2〜21L5を開動作にし、散布ノズル19A,19a,19Bからのアスファルト乳剤の散布を止め(「切」動作)、散布ノズル19C〜19E,19b〜19eからアスファルト乳剤が散布される「入」動作を保持している。すなわち、前後方向で重なり合っている散布ノズル19A,19B,19Cと散布ノズル19a,19b、19cは、それぞれ片方の散布ノズル19b及び19c,19Cだけにアスファルト乳剤を散布させて重複散布する部分をなくし、散布密度を均一にする。
【0035】
図5において、(e)は舗装幅L4よりも狭められた舗装幅L5の時で、この状態ではスプレーバー18Rの散布ノズル19A,19B,19C,19Dとスプレーバー18Lの散布ノズ19a,19b,19c,19dとが前後方向で重なり合った状態にあり、またスイッチレバーLS1,LS2,LS3,LS4が動作状態で、制御装置17における開閉スイッチSW1,SW2,SW3,SW4が全て開状態にある。これにより、制御装置17は、乳剤用電磁開閉弁21R1,21L1,21R2,21L2を閉動作、乳剤用電磁開閉弁21R3〜21R4,21L3〜21L5を開動作にし、散布ノズル19A,19a,19B,19bからのアスファルト乳剤の散布を止め(「切」動作)、散布ノズル19C〜19E,19c〜19eよりアスファルト乳剤が散布される「入」動作を保持している。すなわち、前後方向で重なり合っている散布ノズル19A,19B,19C,19Dと散布ノズル19a,19b,19c,19dは、それぞれ片方の散布ノズル19c及び19d,19C,19Dだけにアスファルト乳剤を散布させて重複散布する部分をなくし、散布密度を均一にする。
【0036】
なお、逆に舗装幅を、舗装幅L5から舗装幅L1に広げる場合は、これと反対の動作、すなわち(e)〜(a)の順で制御される。
【0037】
このように、上記実施例1では、アスファルト乳剤の散布幅が変更されて、前後のスプレーバー18L,18Rが相対移動されて散布ノズル19A〜19E,19a〜19eが前後で重なり合う状態になると、スイッチ制御手段として制御装置17が、その前後で重なり合っている散布ノズル19A〜19E,19a〜19eのうち、片方のスプレーバーにおける散布ノズルの乳剤散布を他方のスプレーバーにおける散布ノズルに対し自動的に入切するので、作業者は煩雑なスイッチ操作作業を行う必要がなくなる。
【実施例2】
【0038】
図6は、本実施の形態におけるアスファルト乳剤散布装置の第2実施例を示す制御系統図である。第2実施例では、制御装置17における信号供給線23A,23B,23a,23b内に、自動・手動切換スイッチ手段としての自動・手動切換スイッチSa21,Sa22,Sa23,Sa24を設けるとともに、信号供給線23C,23D,23E,23c,23d,23e内に、手動スイッチSm21〜Sm26を設けたものであり、他の構成は図3と同一であるから、同じ部材には同じ符号を付して重複した説明は省略する。
【0039】
この第2実施例は、自動・手動切換スイッチSa21〜Sa24の可動片を接点a(自動)側に切り換え、かつ、手動スイッチSm21〜Sm26を全てオンとした状態では、第1実施例と同じ自動操作の回路態様になり、第1実施例と同じ動作が得られる。
【0040】
また、作業点検等で、手動スイッチSm21〜Sm26のいずれかをオンからオフに切り換えると、オフに切り換えられた手動スイッチSm21〜Sm26に対応している乳剤用電磁開閉弁21R3〜21R5,21L3〜21L5が閉動作状態になり、対応している散布ノズル19C〜19E,19c〜19eからのアスファルト乳剤の散布を止めることができるようになっている。
【0041】
さらに、作業点検等で、自動・手動切換スイッチSa21,Sa22,Sa23,Sa24の可動片のいずれかを接点m(手動)側に切り換えると、これに対応している乳剤用電磁開閉弁(21R1,21R2,21L1,21L2)は、手動操作態様になり、開閉スイッチSW1〜SW4の動作に依存することなく、対応している散布ノズル(19A,19B,19a,19b)からアスファルト乳剤を散布することができるようになっている。
【0042】
したがって、第2実施例では、自動・手動切換スイッチSa21,Sa22,Sa23,Sa24の切り換え操作及び手動スイッチSm21〜Sm26の操作を組み合わせることにより、自動操作と、自動と手動とのを組み合わせ操作、及び、手動のみの操作を可能にする。
【実施例3】
【0043】
図7は、本実施の形態におけるアスファルト乳剤散布装置の第3実施例を示す制御系統図である。第3実施例では、自動・手動切換スイッチSa30に連動して手動スイッチSm31〜Sm40を設けたものであり、他の構成は図3と同一であるから、同じ部材には同じ符号を付して重複した説明は省略する。
【0044】
そして、第3の実施例では、手動スイッチSm31〜Sm40は自動・手動切換スイッチSa30に連動し、自動・手動切換スイッチSa30の可動片が接点a(自動)側に切り換えられると、手動スイッチSm31〜Sm40が一括してオフとなり、第1実施例と同じ自動操作の回路が形成されて自動操作態様になる。反対に、自動・手動切換スイッチSa30の可動片が接点m(手動)側に切り換えられると、手動スイッチSm31〜Sm40は一括してオンとなり、開閉スイッチSW1〜SW4の動作に依存することなく、全ての散布ノズル(19A〜19E,19a〜19e)からアスファルト乳剤を散布することができる。
【0045】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。例えば、本実施の形態の構造では、スプレーバーを前後二列に配置した構造を示しているが、二列以上であってもよいものである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施の形態に係るアスファルト乳剤散布装置を備えたアスファルトフィニッシャの上面図。
【図2】同じく、本発明の一実施の形態に係るアスファルト乳剤散布装置を備えたアスファルトフィニッシャの側面図。
【図3】本発明の一実施の形態におけるアスファルト乳剤散布装置の第1実施例を示す制御系統図。
【図4】同じく、アスファルト乳剤散布装置における乳剤散布機構の概略構成斜視図。
【図5】第1実施例におけるアスファルト乳剤散布装置の舗装幅と乳剤バルブとの関係を示す図で、(a)は舗装幅L1であるときの図、(b)は舗装幅L2であるときの図、(c)は舗装幅L3であるときの図、(d)は舗装幅L4であるときの図、(e)は舗装幅L5であるときの図を示している。
【図6】本実施の形態におけるアスファルト乳剤散布装置の第2実施例を示す制御系統図。
【図7】本実施の形態におけるアスファルト乳剤散布装置の第3実施例を示す制御系統図。
【符号の説明】
【0047】
16 乳剤散布機構
17 制御装置(スイッチ制御手段)
17A,17a,17B,17b 回路部
18R,18L スプレーバー
19A〜19E 散布ノズル
19a〜19e 散布ノズル
20 流路
21R1〜21R5 乳剤バルブ
21L1〜21L5 乳剤バルブ
22 ストライカ
23A〜23E 信号供給線
23a〜23e 信号供給線
SW1〜SW4 開閉スイッチ
LS1〜LS4 スイッチレバー
L1〜L5 舗装幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳剤タンクから供給されるアスファルト乳剤を散布する複数個の散布ノズルが走行車両の幅方向に間隔をあけて配列されてなるスプレーバーを、少なくとも前後二列に配置し、該前後二列のスプレーバーを前記散布ノズルの配列方向に沿って相対移動可能に設けてなるアスファルト乳剤散布装置において、
前記二列のスプレーバーの前記相対移動により、前後で重なり合う状態となる前記散布ノズルのうち、片方のスプレーバーにおける散布ノズルの乳剤散布を他方のスプレーバーにおける散布ノズルに対し自動的に入切するスイッチ制御手段を設けたことを特徴とするアスファルト乳剤散布装置。
【請求項2】
上記スイッチ制御手段に、上記散布ノズルにおける乳剤散布の入切動作を自動と手動のいずれでも行うことが可能な自動・手動切換選択手段を設けたことを特徴とする請求項1記載のアスファルト乳剤散布装置。
【請求項3】
上記前後二列のスプレーバーの一方側のスプレーバーに、上記スイッチ制御手段におけるスイッチを個々に操作するスイッチレバーを複数、上記散布ノズルの配列方向に沿わせて所定の間隔をあけて設け、前記前後二列のスプレーバーが相対移動されたときに、他方側のスプレーバーに設けたストライカが前記スイッチレバーと順に当接して前記スイッチレバーの動作を切り換え、かつ、上記スイッチ制御手段が前記スイッチレバーの切り換え信号により前記散布ノズルの入切を制御するようにしたことを特徴とする請求項1または2記載のアスファルト乳剤散布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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