説明

アスファルト乳剤

【課題】道路にクラックが生じた場合、クラックの底の部分まで切削し、舗装を再生すればよいが、それは非常に時間も費用も掛かる。よって、適度な深さまで切削し、その上方に舗装材を舗設することになる。しかしながら通常のアスファルト乳剤では、クラックの上方に舗設した場合、そのクラックが上方に上がり路面にまでまたクラックが生じることになる。そこで、接着性が高く、防水性に優れた遮水膜を作るための靭性の高いアスファルト乳剤を提供する。
【解決手段】ストレートアスファルト100重量部に対して、芳香族系石油樹脂15〜25重量部、水60〜100重量部、乳化剤0.1〜3.5重量部を混合したもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト乳剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アスファルト乳剤とは、ストレートアスファルトを乳化剤と安定剤を含む水中に乳化させたものである。
アスファルト舗装路は、舗装路では最も汎用されているものであるが、老朽化により道路に凹部やクラックが生じ事故の原因ともなる。また、アスファルト骨材が離脱、飛散することにより、道路の断面が露出するようになり、骨材の飛散がより加速することになる。
【0003】
道路にクラックが生じた場合、クラックの底の部分まで切削し、舗装を再生すればよいが、それは非常に時間も費用も掛かる。よって、適度な深さまで切削し、その上方に舗装材を舗設することになる。
【0004】
しかしながら通常のアスファルト乳剤では、クラックの上方に舗設した場合、そのクラックが上方に上がり路面にまでまたクラック(リフレクションクラック)が生じることになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、接着性と防止性が高く、靭性に優れた遮水膜を作るためのアスファルト乳剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上のような現状に鑑み、本発明者は鋭意研究の結果本発明アスファルト乳剤を完成したものであり、その特徴とするところは、ストレートアスファルト100重量部に対して、芳香族系石油樹脂15〜25重量部、水60〜100重量部、乳化剤0.1〜3.5重量部を混合した点にある。
【0007】
ストレートアスファルトとは、原油の減圧蒸留でえられたそのままのものをいう。
【0008】
芳香族系石油樹脂とは、ベンゼン環を有する炭化水素の混合物であり、重量平均分子量は1600〜2500程度である。この芳香族系石油樹脂を加えることによって、硬化後常温時には強い接着性と靭性を有するのである。
【0009】
芳香族系石油樹脂の添加量は、ストレートアスファルト100重量部に対して、芳香族系石油樹脂は15〜25重量部である。15以下では効果が少なく、25重量部以上加えても有効でない。
この樹脂を加えたことにより、乳剤として被施工面に塗布し、分解後、表面の合材の熱によって軟化し、骨材やクラック等の間隙に十分浸透する。また、舗設後、常温に戻った時には強い被膜を形成する。それによって、層間剥離を軽減するとともに、クラックの上昇(リフレクションクラック)を防止する。
【0010】
水の量がストレートアスファルト100重量部と芳香族系石油樹脂15〜25重量部に対して、60〜100重量部である。即ち、乳剤の全体量に対して40重量%以下にしているのである。換言すると、蒸発残留分が60重量%以上ということである。
このように蒸発残留分を多くすることによって、乳剤としての粘度を高くできるので、散布量を多くでき(0.8リットル/m以上)クラックへの浸透が増し、分解後の膜厚が厚くできるため、クラック防止機能や遮水機能が向上するのである。
【0011】
乳化剤は、通常のアスファルト乳剤に使用するものでよい。例えば、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤である。カチオン系界面活性剤の場合には酸性(pHが小さい)でないと解離(溶解)せず、効果がでないため、塩酸等の酸を加える。このカチオン系が分解が速いため好適である。例として、硬化牛脂アルキルポリアミンやステアリルプロピレンジアミン等がある。
アニオン系(高級アルコールの硫酸塩等)はアルカリが必要であり、両性のものでは酸もしくはアルカリが必要であり、ノニオン系では酸もアルカリも不要である。
【0012】
また、分散安定性のため塩化カルシウム等の塩を加えることもよい。これはアスファルト乳剤を長期間保存した場合に分離しないようにするためである。
混合量はストレートアスファルト100重量部に対して、0.1〜3.5重量部である。
【0013】
アスファルト乳剤は、アスファルトと水を混合するのであるが、通常界面活性剤は水側に予め混合しておくものである。しかし、本発明ではアスファルト側にも界面活性剤を混合しておくのがよい。
【0014】
次に本発明アスファルト乳剤の製造方法について説明する。
まずストレートアスファルトに芳香族系石油樹脂を投入し、次にカチオン系界面活性剤を投入し溶解する。
次に乳化液を調整する。まづ、湯に塩酸を入れる。次に硬化牛脂アルキルポリアミン、ステアリルプロピレンジアミン、塩化カルシウムの順に投入する。
この乳剤の性能を発現させるために高せん断型のコロイドミルを用いて両者を混合する。
【0015】
本発明乳剤の用途としては密粒合材のオーバーレイのリフレクションクラックを抑制するタックコートとして用いることができる。また、透水性アスファルト合材の下層防水層としても最適である。例えば、通常の撒布量の1.5倍〜2.5倍程度を撒布し、分解後、高温(160〜180℃)のアスファルト合材を舗設すれば、その高温によって乳剤が融解し、且つその融解物の粘度が適切であるため、骨材間隙に十分浸透し、大きな固着力を発揮するものである。下方だけでなく上方にも浸透(ブリード)する。粗骨材1つ又は1つ半程度分まで上昇した。
【0016】
勿論、このような使用方法でなく、通常のPK−1、2、4、PK−RT、PK−Hなどの浸透用アスファルト乳剤が使用される用途には当然使用できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明には、次のような大きな利点がある。
(1) 蒸発残留分が60重量%以上であるため、散布量を多くでき、厚い被膜を形成する。
(2) 本発明アスファルト乳剤の分解層の上方に高温アスファルト合材(160℃以上)を舗設すると、その温度に分解層が溶融し、上方にブリードし合材の骨材に強固に固着する。これによって、層間接着が大きく増加する。
(3) 芳香族系石油樹脂を混合しているため、高温時粘性が低く、常温時では強い接着性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下好適な実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
以下に本発明アスファルト乳剤の1例の製造方法を挙げて説明する。
ストレートアスファルト60〜80を100重量部に芳香族系石油樹脂(重量平均分子量:2100、軟化点145℃)を20重量部投入する。
ついで硬化牛脂アルキルポリアミンを0.1重量部投入し、溶解させる。
【0020】
次に乳化液を調整する。
湯98重量部に塩酸1重量部を入れ、そこに硬化牛脂アルキルポリアミンを0.3重量部、ステアリルプロピレンジアミン0.3重量部、塩化カルシウム0.5重量部をこの順に投入した。コロイドミルを用いて乳剤を製造する。
【0021】
次に上記の例の乳剤の物性について説明する。
ふるい残留分(1.2mm):0
エングラー度 :9
付着度 :2/3以上
粒子の電荷 :陽(+)
蒸発残留分 :60%
針入度(25℃、 :16(1/10mm)
貯蔵安定度 :0
【0022】
次に上記例の引張接着強度を調べた(建研式引張接着強度試験)。
表層、基層ともに密粒度アスコン(13)を使用し、乳剤散布量が0.8リットル/mで試験した。引張接着強度は次の通りであった。
本実施例 :0.55MPa
PKR−T:0.08MPa
このように大きな差があった。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストレートアスファルト100重量部に対して、芳香族系石油樹脂15〜25重量部、水60〜100重量部、乳化剤0.1〜3.5重量部を混合したことを特徴とするアスファルト乳剤。





【公開番号】特開2010−7352(P2010−7352A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167472(P2008−167472)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(502217997)昭和瀝青工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】