説明

アスファルト混合物混合用ミキサの回転リング

【課題】 混合軸の軸封部に取り付ける回転リングの摩耗を抑え、メンテナンスコストの低減化を図れるアスファルト混合物混合用ミキサの回転リングを提供する。
【解決手段】 回転リング5の混合槽内に臨ませる表面側には複数の所定高さの突起体14を半径方向に放射状に固着し、該突起体14は隣接する突起体14間に混合材料を付着させて回転リング5の表面に摩耗防止層を形成させるように所定の間隔で配置する。また、回転リング5の少なくとも裏面側には耐摩耗性の高いハードフェーシング処理を施して硬化肉盛層15を形成する。そして、砕石、砂、アスファルトの混合時に、回転リング5の突起体14に粘着性を帯びた混合材料が付着して成長し、隣接する突起体14間を埋め尽くして回転リング5の表面側全体に摩耗防止層が形成されることで、回転リングの摩耗を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路舗装材であるアスファルト混合物を混合するミキサに関し、特にミキサの混合槽の対向する側壁間に貫通させた混合軸の軸封部に取り付ける回転リングに関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルト混合物を製造するアスファルトプラントには、砕石、砂、アスファルトを混合させるためのミキサを搭載しており、該ミキサは、混合槽の対向する側壁間に混合羽根を取り付けた二本の混合軸を水平方向に貫通させて回転自在に支持し、該混合軸を相反する方向に回転させることによってアスファルト混合物の混合を行っている。前記ミキサでは、砕石、砂を混合するために、混合槽内に存在する混合軸、混合アーム、混合ブレード、混合軸の軸封部に取り付ける回転リングが摩耗しやすい。
【0003】
前記混合アーム、混合ブレードは、特に摩耗しやすいために部品交換を含めて摩耗防止に対しては配慮されている。また、混合軸は、特許文献1のように、略筒状の摩耗防止用カバーを取り付け、該摩耗防止用カバーの外周面に突起体を形成して突起体間に混合材料を付着させて摩耗防止層を形成したものがある。
【0004】
また、軸封部に取り付ける回転リングは、図5に示すような形状をしており、回転リング5を二分割とし、ボルト・ナットにて締結することで混合軸に装着可能な構造とし、耐摩耗のために硬質の部材が採用されている。
【特許文献1】特開2001−140208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記回転リングは、硬質の部材を採用しているものの、比較的短期間に交換しているのが現状であり、更なる摩耗防止が望まれる部品でもある。
【0006】
本発明は上記の点に鑑み、混合軸の軸封部に取り付ける回転リングの摩耗を極力抑え、メンテナンスコストの低減化を図れるアスファルト混合物混合用ミキサの回転リングを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係る請求項1記載のアスファルト混合物混合用ミキサの回転リングでは、回転リングの混合槽内に臨ませる表面側には複数の所定高さの突起体を半径方向に放射状に固着し、該突起体は隣接する突起体間に混合材料を付着させて回転リングの表面に摩耗防止層を形成させるように所定の間隔で配置したことを特徴としている。
【0008】
また、請求項2記載のアスファルト混合物混合用ミキサの回転リングでは、回転リングの少なくとも裏面側には耐摩耗性の高いハードフェーシング処理を施したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る請求項1記載のアスファルト混合物混合用ミキサの回転リングによれば、回転リングの混合槽内に臨ませる表面側には複数の所定高さの突起体を半径方向に放射状に固着し、該突起体は隣接する突起体間に混合材料を付着させて回転リングの表面に摩耗防止層を形成させるように所定の間隔で配置したので、アスファルトを含む混合材料の付着により形成された摩耗防止層によって回転リングの表面側の摩耗防止が図れ、交換寿命が延びてメンテナンスコストの低減化を図れる。
【0010】
また、請求項2記載のアスファルト混合物混合用ミキサの回転リングによれば、回転リングの少なくとも裏面側には耐摩耗性の高いハードフェーシング処理を施したので、回転リングの裏面側に侵入した混合材料による摩耗もハードフェーシング(硬化肉盛層)によって極力防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係るアスファルト混合物混合用ミキサの回転リングにあっては、回転リングの混合槽内に臨ませる表面側には複数の所定高さの突起体を半径方向に放射状に固着している。該突起体は、隣接する突起体間に粘着性を有するアスファルトを含む混合材料を付着させて回転リングの表面に摩耗防止層を形成させることのできる間隔で配置している。また、回転リングの少なくとも裏面には耐摩耗性の高いハードフェーシング処理、即ち補強溶接による硬化肉盛層を形成して耐摩耗性を強化している。
【0012】
そして、上記構成の回転リングを軸封部に備えたアスファルト混合物混合用ミキサにて混合材料である砕石、砂、アスファルトを混合すると、回転リングの突起体に粘着性を有するアスファルトを含む混合材料が付着し、それが徐々に成長していき、ついには隣接する突起体間を埋め尽くして回転リングのほぼ表面全体に所定厚みの混合材料による摩耗防止層を形成することとなる。
【0013】
この摩耗防止層が形成されると、回転リングの表面に砕石や砂が直接接触しなくなり、これによって回転リングの摩耗を減少できる。また、混合槽側壁と回転リング外周面の隙間から軸封部に砂等の微細な混合材料が侵入し、回転リングの裏面を擦ることとなるが、回転リング裏面側に施したハードフェーシング(硬化肉盛層)によって摩耗も極力防止される。
【0014】
このように、回転リングの表面側は粘着性を有するアスファルトを含む混合材料にて摩耗防止層が形成されることで、また回転リングの裏面側はハードフェーシング処理が施されることで、回転リングの摩耗を極力防止できる。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、アスファルト混合物混合用ミキサの混合槽側壁1を貫通した混合軸2の軸封部3の断面図を示したものであり、混合槽側壁1へのライナー4の取り付け側が混合槽内に臨む側となっている。前記軸封部3には混合軸2と共に回転する回転部である回転リング5、カラー6と、混合槽側壁1と一体化された非回転部であるシールボックス7、シール押さえ8、固定リング9を備えている。前記回転部と非回転部との間には混合軸2の回転を許容する若干の間隙部10を設けている。
【0017】
また、軸封部3の回転部であるカラー6と、非回転部であるシールボックス7、シール押さえ8との隙間にシール材であるグランドパッキン11を装着すると共に、シールボックス7にグリス用通路12を形成し、グリス用通路12を通して潤滑用グリスを注入している。
【0018】
前記回転リング5は、図2乃至図4に示すように、混合軸2に装着するために二分割としてボルト・ナット13にて締結固定可能としており、混合槽内に臨ませる表面側には複数の所定高さの突起体14を半径方向に放射状に固着し、該突起体14は隣接する突起体14間に混合材料を付着させて回転リング5の表面に摩耗防止層を形成させるように所定の間隔で配置している。また、回転リング5の少なくとも裏面側には耐摩耗性の高いハードフェーシング処理を施して硬化肉盛層15を形成している。なお、必要に応じて他の摩耗しやすい適宜箇所にハードフェーシング処理を施しても良い。
【0019】
そして、アスファルト混合物混合用ミキサにて砕石、砂、アスファルトを混合すると、アスファルトが粘着性を有するために、回転リング5の突起体14に粘着性を帯びた混合材料が付着して成長し、隣接する突起体14間を埋め尽くして回転リング5の表面側ほぼ全体に所定厚みの混合材料による摩耗防止層が形成される。
【0020】
また、混合槽側壁1に取り付けたライナー4と、回転リング5の外周面との間隙部10より微細な砂等が侵入するが、回転リング5の裏面側に施したハードフェーシング(硬化肉盛層)15によって摩耗も極力防止される。
【0021】
このように、回転リング5の表面側に複数の突起体14を形成することで、混合材料の付着による摩耗防止層が形成されて摩耗防止が図られる。また、回転リング5の裏面側に施したハードフェーシング処理によって摩耗防止が図られ、回転リング5の寿命が延び、メンテナンスコストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る回転リングを採用したアスファルト混合物混合用ミキサの軸封部の断面図である。
【図2】本発明に係る回転リングの一実施例の平面図(a)と正面図(b)である。
【図3】同上の回転リングの斜視図である。
【図4】同上の回転リングを混合軸に装着した状態を示す一部省略斜視図である。
【図5】従来の回転リングの平面図(a)と正面図(b)である。
【符号の説明】
【0023】
1…混合槽側壁 2…混合軸
3…軸封部 5…回転リング
14…突起体 15…ハードフェーシング(硬化肉盛層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルト混合物混合用ミキサの混合槽の対向する側壁間に水平方向に貫通させた混合軸の軸封部に取り付ける回転リングであって、該回転リングの混合槽内に臨ませる表面側には複数の所定高さの突起体を半径方向に放射状に固着し、該突起体は隣接する突起体間に混合材料を付着させて回転リングの表面に摩耗防止層を形成させるように所定の間隔で配置したことを特徴とするアスファルト混合物混合用ミキサの回転リング。
【請求項2】
回転リングの少なくとも裏面側には耐摩耗性の高いハードフェーシング処理を施したことを特徴とする請求項1記載のアスファルト混合物混合用ミキサの回転リング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−112004(P2010−112004A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283043(P2008−283043)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(000226482)日工株式会社 (177)
【Fターム(参考)】