説明

アスベスト飛散防止液及びそれを充填したエアゾールスプレー

【課題】アスベストの飛散を効果的に防止できるような組成物およびそれを充填したエアゾールスプレーを提供することを課題とする。
【解決手段】レジン、界面活性剤、アルコール又は水、噴射ガスを適切な割合で配合することにより、効果的なアスベスト飛散防止を達成できる組成物及びエアゾールスプレーを提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスベストの飛散を防止できる液及びエアゾールスプレーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アスベストによる被害について新聞等で報道されており、アスベストの大気中の環境濃度を測定すると、近年は平成5年頃と比較すると、都心では10倍程度に上昇している。そして、地方自治体はこのアスベストが飛散しないように規制を強化する対策を打ち出しているのが現状である。
【0003】
ところで、アスベスト(石綿)は結晶が細長く成長して繊維状になったケイ酸マグネシウム塩を主とする鉱物である。防火幕、防火服、ブレーキライニング、壁材、防火板等に使用されている。
【0004】
このようなアスベストが人間の肺の中に吸入されると、アスベストが気道の奥に入り込み、肺等を包んでいる膜(中皮)に突き刺さり、その周辺の細胞が異変を起こし、「中皮腫」を引き起こす原因となる。しかも発症までの期間が30〜40年後というケースも珍しくない。
このようなアスベストが飛散しないように種々の対策が採られている。
【0005】
たとえば、特開平4−60054号公報(特許文献1)には、「石綿被覆層の封じ込め及び化粧仕上げ用材料として、一般式M2O・xSiO2・aqで表される水溶性珪酸塩溶液と合成樹脂エマルジョンおよび/または水溶性樹脂を結合材とし、無機質系軽量骨材を骨材とすることを特徴とする石綿被覆層の封じ込めおよび化粧仕上げ用材料。」について記載されている。
【0006】
特開平8−246688号公報(特許文献2)には、「建築構築物の解体において、解体装置の解体部より、発塵抑制機能を有する液状物を被解体部に噴霧しながら解体を行うことを特徴とする建築構築物の解体時における発塵抑制方法。」が記載されている。
【0007】
また、特開平6−49391号公報(特許文献3)には、「主成分が合成樹脂、無機質難燃剤、無機質充填剤および水からなることを特徴とする石綿飛散防止処理剤。」について記載されている。
【0008】
しかしながら、いずれも効果の面からみて十分とは言えない状況である。
【特許文献1】特開平4−60054号公報
【特許文献2】特開平8−246688号公報
【特許文献3】特開平6−49391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
アスベストの飛散を効果的に防止できるような組成物およびそれを充填したエアゾールスプレーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意努力した結果、レジン、界面活性剤、アルコール又は水、噴射ガスを適切な割合で配合することにより、効果的なアスベスト飛散防止を達成できる組成物及びエアゾールスプレーを提供できることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は、
・レジンを主成分とすることを特徴とするアスベスト飛散防止液、
・レジンを1.0〜8.0%含有することを特徴とする(1)記載のアスベスト飛散防止液、
・(1)又は(2)記載のアスベスト飛散防止液を充填したエアゾールスプレー
に関する。
【0012】
本発明のアスベスト飛散防止エアゾールスプレーは、アスベストが使用されている一般家庭において、天井、壁等のアスベストの飛散を抑制するのみならず、室内等に噴霧することで空中に浮遊しているアスベストが微粒子に展着して床に落ち、人体が吸入するのを防ぐこともできる。
【0013】
レジンはアクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂およびその他の水溶性樹脂等からなるもので、配合量は1.0〜8.0%が好ましい。1.0%以下であると効果が少なく、8.0%以上であると展着効果はあるが粘性もまして噴霧しにくくなり好ましくない。
【0014】
アスベスト飛散防止液をつくるには、レジン以外の成分として、界面活性剤、アルコール等を配合することが必要であり、このアスベスト飛散防止液をエアゾールスプレーに充填する際に噴射ガスを入れる。
【0015】
界面活性剤は各種あるが中でもオクタン酸ヘキシデシルがもっとも好ましい。配合量は他の成分との関係もあり、0.01〜0.1%が好ましい。
【0016】
アルコールは、エタノール、IPA(イソプロピルアルコール)、変性アルコールのいずれでも良い。配合量は1.0〜40.0%が好ましい。噴射ガスは、LPG、DME(ジメチルエーテル)、HFC152a(代替フロン)等を使用することができる。配合量は他の成分との関係で97.99〜51.9%となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のエアゾールスプレーにより、天井、壁等からアスベストが飛散することを防止でき、また空中に浮遊するアスベストが人体に吸入されることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を具体的に説明するために、実施例を示すが、これに限定されるものでないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0019】
レジン5%、界面活性剤としてオクタン酸ヘキシデシル0.05%、エタノール20%、噴射ガスとしてLPG74.95%を配合し、エアゾールスプレーを作成した。
【0020】
このエアゾールスプレーを使用してアスベストがどの程度飛散防止されたかを、アスベストがどの程度吸収シートに付着されたかを測定することで評価した。
【0021】
A.測定器具および測定環境
(1) 付着性測定器具
付着紙、ペット用瞬間吸収シート(300mm×225mm)をハンガーにクリップにて固定する。
(2) 直示天秤:最小秤量値が10mgのもの。
(3) ストップウォッチ:最小目盛1秒以下のもの。(即測定の必要あるため)
(4) 瞬間吸着シート:(株)ヤマヒサペット ペットシート300mm×225mm
(5) 試験場所:日本フィリン株式会社 開発室
(6) 試験日時:平成17年10月11日〜平成17年10月13日
(7) 室温湿度:平均室温23℃ 平均湿度60%
【0022】
B.測定試験方法および操作
(1) スプレーを固定し、20秒間噴射させる。
(2) 直示天秤の上に付着測定用吸収シートの重量を記録する。
(3) 予め重量(噴射前試料重量=W1g)を測定した試料を、スプレーの噴射方向が付着性測定用の吸収シートの中心に一致し、かつ距離が200mmになるようにハンガーにクリップでとめる。
(4) 予め重量(噴射前試料重量=W1g)を測定した試料を、スプレーの噴射方向が付着性測定用の吸収シートの中心に一致し、かつ距離が200mmになるようにハンガーにクリップでとめる。
(5) 吸収シートに向けて噴射し、直後に付着性試験用のシートを固定してあるハンガーから取り、直示天秤にのせ、重量表示を測定して記録する。(噴射直後とは10秒以内を意味する。)
(6) 噴射直後試料重量(=W2g)を記録する。
(7) 3回の測定を行い、次式によって求めた値の総平均をもって付着率とする。
噴射後試料重量(W2) − 噴射前試料重量(W1)
付着率= ――――――――――――――――――――――― ×100
使用前製品重量 − 使用後製品重量
【0023】
C.試験測定結果(距離200mm)
29.10 − 25.34
(1) ――――――――――――――――――――×100=85.45%
151.87 − 147.47

28.25 − 24.38
(2) ――――――――――――――――――――×100=85.43%
147.70 − 143.17

29.15 − 25.45
(3) ――――――――――――――――――――×100=85.25%
143.17 − 138.83
上記(1)、(2)、(3)の測定試験平均付着率=85.37%
【0024】
すなわち、200mm離れた距離から本発明のエアゾールスプレーにより噴射されたアスベスト飛散防止液は、吸収シートに85%以上付着している結果が得られた。このことは、浮遊するアスベストの85%以上が本発明のエアゾールスプレーによる噴射で飛散が防げることを証明している。
【実施例2】
【0025】
実施例1と同一の配合によるエアゾールスプレーを用いて展着試験を行った。
測定環境
試験場所:日本フィリン株式会社 開発室
試験日時:平成17年10月11日〜平成17年10月13日
室温湿度:平均室温23℃ 平均湿度60%
試験試料:1)未処理品(画用紙上に粉体アスベスト0.5gを敷き詰めたもの)
2)処理品(上記品に飛散防止エアゾールスプレーを施し樹脂量を1.0gとしたもの)
試験方法:JIS規格L−1092の防水試験方法による。
装置:撥水度試験装置(スプレー試験)は、図1に示すような装置であり、ガラス漏斗は200ml以上の容量、スプレーノズルは100mlの水を15〜20秒で散布できるものを用いた。
操作:試験試料から、20cm×20cmの試験片を各3枚採取し、試験片保持枠にしわを生じないように取り付け、図1の撥水度試験装置を用いて、スプレーの中心を保持枠の中心に一致させ、水100mlをガラス漏斗に入れて試験片上に散布する。
【0026】
次に、保持枠を台上から外し、その一端で水平に持ち試験片の表側を下向きにして他端を固いものに一度軽く当て、更に180度回し、前と同じ操作をして余分な水滴を落とす。保持枠につけたまま試験片のアスベストの残存量を測定した。3回の平均値で表した。
【0027】
【表1】

【0028】
表1から、本発明の飛散防止エアゾールスプレーで処理した場合、未処理品に比較して格段に残存率、すなわち試験片にアスベストが展着する率が向上し、ほぼ100%の残存率が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】撥水度試験装置(スプレー試験)を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジンを主成分とすることを特徴とするアスベスト飛散防止液。
【請求項2】
レジンを1.0〜8.0%含有することを特徴とする請求項1記載のアスベスト飛散防止液。
【請求項3】
請求項1又は2記載のアスベスト飛散防止液を充填したエアゾールスプレー。

【図1】
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【公開番号】特開2007−162254(P2007−162254A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−357329(P2005−357329)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【出願人】(593084627)日本フイリン株式会社 (14)
【Fターム(参考)】