説明

アセタール化合物の精製方法

【課題】アセタール化合物を低真空・高温で蒸留する際に発生する異臭を抑制する、甘さのあるフローラル香気を有するアセタール化合物の精製方法及び製造方法、ならびに当該アセタール化合物を含有する香料組成物を提供すること
【解決手段】酸化防止剤の存在下、一般式(I)


(式中、R1は水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、R2はn−プロピル基又はi−プロピル基を示し、R3は水素原子、n−プロピル基、又はi−プロピル基を示す。)
で表されるアセタール化合物を含有する原料を80〜170℃で蒸留する工程を有するアセタール化合物の精製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は調合香料原料として有用なアセタール化合物の精製方法及び製造方法、ならびに該精製方法により得られたアセタール化合物を含有する香料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
下記化学式(IV)
【0003】
【化1】

【0004】
で表されるアセタール化合物は、リグスター、カシュー様の香調を有しており香料として有用であることが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、アセタール化合物、すなわち1,3−ジオキサン類の一般的な製法として、2−メチルペンタナールと、1,3−アルカンジオールと、オルソギ酸エチルとを反応させてから後処理を行い、最後に真空蒸留をする方法が開示されており、沸点は72℃/0.02mb(=2Pa)と記載されている。
【0005】
【特許文献1】特公平2−22119号公報
【非特許文献1】「14705の化学商品」,化学工業日報社発行,2005年1月25日,p.1218−1227
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
工業的に蒸留を行う場合、特許文献1のように2Paという高真空に減圧することは容易ではなく、より低真空で蒸留を行うことが好ましい。しかし、低真空では沸点が上昇し、高温による蒸留を要することから、熱による分解で生じる副生成物に起因する品質の劣化が生じ、目的の品質の製品が得られないという問題がある。さらに、工業的に蒸留を行う場合、特許文献1に記載の0.1モルスケール、すなわち約20gスケールでの蒸留よりも長時間を要することが一般的であり、熱による品質の劣化がより顕著になる場合がある。一方、上記一般式(I)で表されるアセタール化合物の蒸留を工業的に有利な条件、すなわち低真空・高温で蒸留を行った場合、異臭が発生し、品質を低下させるという問題がある。
すなわち、本発明の課題は、アセタール化合物を低真空・高温で蒸留する際に発生する異臭を抑制する、甘さのあるフローラル香気を有するアセタール化合物の精製方法、及び当該アセタール化合物を含有する香料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、上記一般式(I)で表される、例えば2−(1−メチルブチル)−5−メチル−5−n−プロピル−1,3−ジオキサンなどのアセタール化合物の蒸留を工業的に有利な条件、すなわち低真空・高温で行うと異臭が発生し、製品の品質を低下させる場合のあることを確認した上で、(i)その原因物質が蒸留時に発生する2,2−ジメチルペンチル=2−メチルペンタノアートなどの副生成物であること、(ii)上記副生成物のフルーティ・グリーンな匂いが、上記アセタール化合物の汎用的な調合香料素材としての品質を低下させる重要な異臭原因物質であること、(iii)さらに、上記アセタール化合物に含まれる上記副生成物の含有量が特定量以下であれば、上記アセタール化合物の調合香料素材としての製品品質に影響を与えないこと、を見出した。
そこで、本発明者らは、このような知見に基づいて、さらに鋭意検討を行った結果、酸化防止剤の存在下、特定の温度条件で蒸留を行うことで、異臭の発生等による品質の低下が抑制されたアセタール化合物が得られることを見出した。
すなわち、本発明は、酸化防止剤の存在下、一般式(I)
【0008】
【化2】

【0009】
(式中、R1は水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、R2はn−プロピル基又はi−プロピル基を示し、R3は水素原子、n−プロピル基、又はi−プロピル基を示す。)
で表されるアセタール化合物を含有する原料を80〜170℃で蒸留する工程を有するアセタール化合物の精製方法、及び該精製方法により得られたアセタール化合物を含有する香料組成物を提供する。
さらに、本発明は、下記工程(i)及び工程(ii)を有する、一般式(I)
【0010】
【化3】

【0011】
(式中、R1は水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、R2はn−プロピル基又はi−プロピル基を示し、R3は水素原子、n−プロピル基、又はi−プロピル基を示す。)
で表されるアセタール化合物の製造方法を提供する。
工程(i) 一般式(II)
【0012】
【化4】

【0013】
で表されるアルデヒド化合物と、一般式(III)
【0014】
【化5】

【0015】
(式中、R1は水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、R2はn−プロピル基又はi−プロピル基を示し、R3は水素原子、n−プロピル基、又はi−プロピル基を示す。)
で表される1,3−ジオール化合物とを反応させて、アセタール化合物を含有する原料を得る工程
工程(ii) アセタール化合物を含有する原料を、酸化防止剤の存在下、80〜170℃で蒸留する工程
【発明の効果】
【0016】
本発明の精製方法及び製造方法によれば、低真空・高温で蒸留しても異臭の発生が抑制された、甘さのあるフローラル香気を有するアセタール化合物、及び該アセタール化合物を含有する香料組成物を得ることができる。本発明の精製方法及び製造方法により得られるアセタール化合物は、甘さのあるフローラル香気を有し、調合香料原料、及び芳香剤等の賦香成分として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[アセタール化合物の精製方法]
本発明のアセタール化合物の精製方法は、酸化防止剤の存在下、一般式(I)
【0018】
【化6】

【0019】
で表されるアセタール化合物を含有する原料を80〜170℃で蒸留する工程を有する。
ここで、一般式(I)中、R1は水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、R2はn−プロピル基又はi−プロピル基を示し、R3は水素原子、n−プロピル基、又はi−プロピル基を示す。得られる香気の観点から、R1はメチル基が好ましく、R2はn−プロピル基が好ましく、R3は水素原子が好ましい。
【0020】
本発明で用いられる酸化防止剤は、公知のものを使用することができ、例えば非特許文献1に記載される酸化防止剤を挙げることができる。これらの中で、少量で目的とする効果を発揮できることから、フェノール系酸化防止剤、又はリン酸系酸化防止剤が好ましく、フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。フェノール系酸化防止剤としては、モノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、及び高分子型フェノール系酸化防止剤が挙げられ、なかでも揮発性の低さの点でビスフェノール系酸化防止剤及び高分子型フェノール系酸化防止剤がより好ましく、適当な粘度や溶解度を有することから取り扱いの容易さの点でビスフェノール系酸化防止剤がさらに好ましい。
より具体的には、フェノール系酸化防止剤としては、例えばジブチルヒドロキシトルエン等のモノフェノール系酸化防止剤、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)等のビスフェノール系酸化防止剤、テトラキス−[メチレン−3−(3’−,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、及びα−トコフェロール等の高分子型フェノール系酸化防止剤が挙げられる。リン酸系酸化防止剤としては、例えばトリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノ及び/又はジノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジフォスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが挙げられる。なかでも、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)等のビスフェノール系酸化防止剤、α−トコフェロール、及びトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが好ましく、得られる製品品質の観点から2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、及びα−トコフェロールがより好ましく、取り扱いが容易である点で2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)がさらに好ましい。
【0021】
酸化防止剤の添加量は、上記一般式(I)で表されるアセタール化合物を含有する原料に対して、0.001〜50質量%が好ましく、0.005〜5質量%がより好ましく、0.01〜1質量%がさらに好ましい。この範囲内であれば、アセタール化合物の品質低下を抑制することができ、かつ効率的である。
また、酸化防止剤は、本発明にかかるアセタール化合物を含有する原料を蒸留する際に存在していれば、特に制限なく、後述するアルデヒド化合物と1,3−ジオール化合物との反応前、反応中、及び/又は反応後に添加することができる。反応中の熱による製品品質の低下を抑制する観点から、酸化防止剤は反応前に添加することが好ましい。
【0022】
本発明の精製方法は、蒸気が凝縮する温度が80〜200℃で蒸留を行うが、生産性、減圧条件の制御の容易さの観点から、80〜170℃が好ましく、80〜150℃がより好ましい。また、蒸留は温度上昇を防止するために減圧下で行うことが好ましく、通常13Pa〜26.7kPaの真空度で行うことができ、生産性、減圧条件の制御の容易さの観点から、27Pa〜13.3kPaの真空度で行うことが好ましい。これらの条件における蒸留槽内の温度は、上記の蒸気が凝縮する温度よりも通常0〜50℃程度高い。本発明における蒸留の温度条件は、蒸気が凝縮する温度である。
蒸留に使用する装置は、一般的なものであれば特に限定されることはなく、回分式蒸留装置でも、連続式蒸留装置でも実施することができる。また、蒸留塔も、特に限定されることはなく一般的なものであれば使用することができ、例えばビグリューカラム、回転バンドカラム、棚段塔、充填塔等を用いることができる。
【0023】
このようにして得られたアセタール化合物は、蒸留の際に発生する、例えば2,2−ジメチルペンチル=2−メチルペンタノアートのような副生成物を含有することがある。アセタール化合物中の上記副生成物の含有量は、良好な製品品質を得る観点から、0.5質量%未満、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.05質量%未満、さらに好ましくは0.001質量%未満であり、特に好ましくは0質量%(すなわち、含まない)である。従って、このようにして得られたアセタール化合物は、単独で又は他の成分と組合せて、香水、石鹸、シャンプー、リンス、ボディーシャンプー、洗剤、化粧品、スプレー製品、芳香剤、入浴剤等の賦香成分として使用することができる。
【0024】
[アセタール化合物を含有する原料の製造方法]
本発明にかかるアセタール化合物を含有する原料は、化学式(II)
【0025】
【化7】

で表されるアルデヒド化合物と、一般式(III)
【0026】
【化8】

【0027】
で表される1,3−ジオール化合物との反応により得ることができる。
ここで、上記一般式(III)中、R1は水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、R2はn−プロピル基又はi−プロピル基を示し、R3は水素原子、n−プロピル基、又はi−プロピル基を示す。得られる香気の観点から、R1はメチル基が好ましく、R2はn−プロピル基が好ましく、R3は水素原子が好ましい。
【0028】
本発明にかかるアルデヒド化合物と1,3−ジオール化合物との反応は、公知の方法に従って行うことができる。例えば、特公平2−22119号公報の実施例の一般的製造手順に記載される、下記反応式(I)
【0029】
【化9】

【0030】
で示される方法が挙げられる。ここで、反応式(I)中のR1、R2及びR3は、上記と同様である。より具体的には、同モル量のアルデヒド化合物と1,3−ジオール化合物との混合物に、オルソギ酸エチル及びp−トルエンスルホン酸(及び/又はその一水和物)等の酸触媒を加えて、室温で通常1時間攪拌して反応を終了させる。次いで、ギ酸エチルとエタノールとからなる混合物を、常圧にて徐々に留去する。得られた冷却残渣をエーテルに溶解させて、水酸化ナトリウム水溶液と水を用いて洗浄した後、硫酸ナトリウム等の乾燥剤を加えて乾燥させて、濾過、濃縮をして本発明にかかるアセタール化合物を含有する原料を得ることができる。
【0031】
また、本発明にかかるアセタール化合物を含有する原料は、特表2002−510324号公報(9頁)のアセタール化に記載の方法により得ることもできる。より具体的には、同モル量のアルデヒド化合物と1,3−ジオール化合物との混合物を、p−トルエンスルホン酸水和物と共にシクロヘキサン等の溶媒に溶解させて、該溶液を加熱還流させて生成した水を分離する。反応終了後、得られた溶液を冷却し、炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液で洗浄し、洗浄した液がアルカリ性でなくなるまで分液ロート振盪機等を用いて振盪抽出する。溶液に硫酸ナトリウム等の乾燥剤を加えて乾燥させて、溶媒を、回転蒸発器等を用いて減圧除去することで、本発明にかかる原料を得ることができる。さらに、得られた原料を、上述した本発明の精製方法により精製することで、本発明にかかるアセタール化合物を製造することができる。
【0032】
[香料組成物]
本発明の香料組成物は、通常用いられる他の香料成分や、所望組成の調合香料に、本発明の精製方法により得られた一般式(I)で表されるアセタール化合物を単独で又は2種以上を混合し、配合して得られるものである。その配合量は、調合香料の種類、目的とする香気の種類及び香気の強さ等により異なるが、調合香料中に0.1〜90質量%が好ましく、1〜40質量%がより好ましい。
本発明のアルコール系化合物と組み合わせて用いることができる香料成分としては、炭化水素類、アルコール類、フェノール類、エステル類、カーボネート類、アルデヒド類、ケトン類、アセタール類(ただし、本発明のアセタール化合物を除く)、エーテル類、ニトリル類、カルボン酸類、ラクトン類等の天然精油や天然抽出物、合成香料を挙げることができる。
【実施例】
【0033】
[異臭の評価]
実施例及び比較例で得られたアセタール化合物の異臭の評価を以下の基準で行った。
I :異臭は全く感じられなかった。
II :異臭は若干感じられるが、フローラル香気を有する化合物として実用上問題ない。
III :異臭が感じられ、フローラル香気を有する化合物として使用できない。
【0034】
製造例1:2−(1−メチルブチル)−5−メチル−5−n−プロピル−1,3−ジオキサンを含有する原料の製造
窒素雰囲気下、1Lのフラスコに2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール 396g、2−メチルペンタナール 300g、パラトルエンスルホン酸一水和物 15gをゆっくりと入れ、攪拌しながらオルソギ酸エチル444gを室温で滴下し、さらに1時間攪拌する。反応液を常圧で蒸留し、副生したエタノールとギ酸エチルを留去した下層に水酸化ナトリウム水溶液とエーテルを加えて中和して水層を廃棄後、有機層を水洗してから硫酸ナトリウムを加えて乾燥後、濾過、濃縮をして下記化学式(V)で表される2−(1−メチルブチル)−5−メチル−5−n−プロピル−1,3−ジオキサンを含有する原料 636gを得た。
【0035】
【化10】

【0036】
実施例1
ビグリューカラムを装着した回分式蒸留装置を使用して、製造例1で得られた2−(1−メチルブチル)−5−メチル−5−n−プロピル−1,3−ジオキサンを含有する原料100gに、酸化防止剤として2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール) 0.1gを加え、5〜7kPa、138〜143℃で主留が留出するように蒸留して、2−(1−メチルブチル)−5−メチル−5−n−プロピル−1,3−ジオキサンの留分97gを得た。この留分をガスクロマトグラフィーで分析したところ、副生成物である2,2−ジメチルペンチル=2−メチルペンタノアートは検出されず、フルーティー・グリーン様の異臭も感じられなかった。得られた留分中の2−(1−メチルブチル)−5−メチル−5−n−プロピル−1,3−ジオキサンの純度、異臭の評価を第1表に示す。
【0037】
実施例2
酸化防止剤として、α−トコフェロールを用いる以外は実施例1と同様にして蒸留を行い、留分を得た。この留分をガスクロマトグラフィーで分析したところ、副生成物である2,2−ジメチルペンチル=2−メチルペンタノアートは検出されず、フルーティー・グリーン様の異臭も感じられなかった。得られた2−(1−メチルブチル)−5−メチル−5−n−プロピル−1,3−ジオキサンの純度、異臭の評価を第1表に示す。
【0038】
実施例3
酸化防止剤として、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトを用いる以外は実施例1と同様にして蒸留を行い、留分を得た。この留分をガスクロマトグラフィーで分析したところ、副生成物である2,2−ジメチルペンチル=2−メチルペンタノアートは留分中に0.4質量%含まれており、微かにフルーティー・グリーン様の異臭を有していた。得られた2−(1−メチルブチル)−5−メチル−5−n−プロピル−1,3−ジオキサンの純度、異臭の評価を第1表に示す。
【0039】
比較例1
酸化防止剤を用いない以外は実施例1と同様にして蒸留を行い、留分を得た。得られた2−(1−メチルブチル)−5−メチル−5−n−プロピル−1,3−ジオキサンの純度、異臭の評価を第1表に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
酸化防止剤を用いた実施例1〜3で得られたアセタール化合物は、甘さのあるフローラル香気を有し、品質の非常に高いものであった。一方、酸化防止剤を用いなかった比較例1で得られたアセタール化合物は、フルーティー・グリーン様の異臭を有し、フローラル香気を有するアセタール化合物として、調合香料原料等への使用には不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の精製方法及び製造方法によれば、低真空・高温で蒸留しても異臭の発生が抑制された、甘さのあるフローラル香気を有するアセタール化合物、及び該アセタール化合物を含有する香料組成物を得ることができる。本発明の精製方法及び製造方法により得られるアセタール化合物は、甘さのあるフローラル香気を有し、調合香料原料、及び芳香剤等の賦香成分として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化防止剤の存在下、一般式(I)
【化1】

(式中、R1は水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、R2はn−プロピル基又はi−プロピル基を示し、R3は水素原子、n−プロピル基、又はi−プロピル基を示す。)
で表されるアセタール化合物を含有する原料を80〜170℃で蒸留する工程を有するアセタール化合物の精製方法。
【請求項2】
前記原料が、化学式(II)
【化2】

で表されるアルデヒド化合物と、一般式(III)
【化3】

(式中、R1は水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、R2はn−プロピル基又はi−プロピル基を示し、R3は水素原子、n−プロピル基、又はi−プロピル基を示す。)
で表される1,3−ジオール化合物との反応により得られる原料である、請求項1に記載のアセタール化合物の精製方法。
【請求項3】
前記酸化防止剤が、反応前、反応中、及び/又は反応後に添加される請求項2に記載のアセタール化合物の精製方法。
【請求項4】
前記酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤である請求項1〜3のいずれかに記載のアセタール化合物の精製方法。
【請求項5】
フェノール系酸化防止剤が、ビスフェノール系酸化防止剤である請求項4に記載のアセタール化合物の精製方法。
【請求項6】
酸化防止剤の添加量が、前記原料に対して0.001〜50質量%である請求項1〜5のいずれかに記載のアセタール化合物の精製方法。
【請求項7】
請求項1〜6に記載の精製方法により得られるアセタール化合物を含有する香料組成物。
【請求項8】
下記工程(i)及び工程(ii)を有する、一般式(I)
【化4】

(式中、R1は水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、R2はn−プロピル基又はi−プロピル基を示し、R3は水素原子、n−プロピル基、又はi−プロピル基を示す。)
で表されるアセタール化合物の製造方法。
工程(i) 一般式(II)
【化5】

で表されるアルデヒド化合物と、一般式(III)
【化6】

(式中、R1は水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、R2はn−プロピル基又はi−プロピル基を示し、R3は水素原子、n−プロピル基、又はi−プロピル基を示す。)
で表される1,3−ジオール化合物とを反応させて、アセタール化合物を含有する原料を得る工程
工程(ii) アセタール化合物を含有する原料を、酸化防止剤の存在下、80〜170℃で蒸留する工程

【公開番号】特開2008−179603(P2008−179603A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277386(P2007−277386)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】