説明

アゾ化合物、アゾ顔料および該アゾ化合物又は該アゾ顔料を含む分散物、着色組成物、インクジェット記録用インク、インクジェット記録用インクタンク、インクジェット記録方法、及び記録物

【課題】着色力、色相等の色彩的特性に優れ、かつ耐光性、耐オゾン性等の耐久性にも優れるアゾ顔料および該アゾ顔料を含む顔料分散物、着色組成物、インクジェット記録用インクを提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)により表されるアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩または水和物。


(一般式(1)中、R、R、R、Y、Z、Gはそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、nは2〜4の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アゾ化合物、アゾ顔料および該アゾ化合物又は該アゾ顔料を含む分散物、着色組成物、インクジェット記録用インク、インクジェット記録用インクタンク、インクジェット記録方法、及び記録物に関する。
【0002】
近年、画像記録材料としては、特にカラー画像を形成するための材料が主流であり、具体的には、インクジェット方式の記録材料、感熱転写方式の記録材料、電子写真方式の記録材料、転写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インキ、記録ペン等が盛んに利用されている。また、撮影機器ではCCDなどの撮像素子において、ディスプレーではLCDやPDPにおいてカラー画像を記録・再現するためにカラーフィルターが使用されている。これらのカラー画像記録材料やカラーフィルターでは、フルカラー画像を表示あるいは記録するために、いわゆる加法混色法や減法混色法の3原色の色素(染料や顔料)が使用されているが、好ましい色再現域を実現できる吸収特性を有し、且つさまざまな使用条件、環境条件に耐えうる堅牢な色素がないのが実情であり、改善が強く望まれている。
【0003】
上記の各用途で使用する染料や顔料には、共通して次のような性質を具備している必要がある。即ち、色再現性上好ましい吸収特性を有すること、使用される環境条件下における堅牢性、例えば耐光性、耐熱性、オゾンなどの酸化性ガスに対する耐性が良好であること、等が挙げられる。加えて、色素が顔料の場合にはさらに、水や有機溶剤に実質的に不溶であり、耐薬品堅牢性が良好であること、および、粒子として使用しても分子分散状態における好ましい吸収特性を損なわないこと、等の性質をも具備している必要がある。上記要求特性は分子間相互作用の強弱でコントロールすることができるが、両者はトレードオフの関係となるため、両立させるのが困難である。また、顔料を使用するにあたっては、他にも、所望の透明性を発現させるために必要な粒子径および粒子形を有すること、使用される環境条件下における堅牢性、例えば耐光性、耐熱性、オゾンなどの酸化性ガスに対する耐性、その他有機溶剤や亜硫酸ガスなどへの耐薬品堅牢性が良好であること、使用される媒体中において微小粒子まで分散し、かつ、その分散状態が安定であること、等の性質も必要となる。特に、良好なイエロー色相を有し、光、湿熱及び環境中の活性ガスに対する耐性が高く、中でも着色力が高く、光に対して堅牢な顔料が強く望まれている。
【0004】
すなわち、顔料に対する要求性能は色素分子としての性能を要求される染料に比べて、多岐にわたり、色素分子としての性能だけでなく、色素分子の集合体としての固体(微粒子分散物)としての上記要求性能を全て満足する必要がある。結果として、顔料として使用できる化合物群は染料に比べて極めて限定されたものとなっており、高性能な染料を顔料に誘導したとしても微粒子分散物としての要求性能を満足できるものは数少なく、容易に開発できるものではない。これはカラーインデックスに登録されている顔料の数が染料の数の1/10にも満たないことからも確認される。
【0005】
アゾ顔料は色彩的特性である色相および着色力に優れているため、印刷インキ、インクジェット用インク、電子写真材料などに広く使用されている。これらのうち、最も典型的に使用されている黄色のアゾ顔料は、ジアリーリド顔料である。ジアリーリド顔料としては例えばC.I.ピグメント・イエロー12、同13、同17などが挙げられる。しかし、ジアリーリド顔料は堅牢性、とりわけ耐光性が非常に劣るため、印字物が光に曝されることによって顔料が分解して褪色してしまい、印字物の長期間の保存に適さない。
【0006】
このような欠点を改良するために、分子量を大きくしたり、強い分子間相互作用を持つ基を導入したりすることによって、堅牢性を改善したアゾ顔料も開示されている。(例えば特許文献1〜3参照)。しかしながら、改良された顔料においても、例えば特許文献1に記載の顔料はその耐光性が改善されてはいるが未だ不十分であり、また、例えば特許文献2および3に記載の顔料は色相が緑味で着色力が低くなり、色彩的特性に劣るといった欠点があった。
【0007】
また、特許文献4、5、6には色再現性に優れた吸収特性と十分な堅牢性を有する色素が開示されている。しかしながら、該特許文献に記載されている具体的化合物は、どれも水または有機溶剤に溶解するため、耐薬品堅牢性が十分でない。
【0008】
イエロー、マゼンタ、シアンの3色、またはさらにブラックを加えた4色による原色混合法を用いてフルカラーを再現する場合、イエロー用の顔料としての堅牢性の劣る顔料を用いると、時間の経過とともに印字物のグレーバランスが変化してしまい、また、色彩的特性に劣る顔料を用いると、印刷時の色再現性が低下してしまう。したがって、高い色再現性を長時間維持する印字物を得るために、色彩的特性及び堅牢性の両立した黄色顔料及び顔料分散物が望まれている。
【0009】
【特許文献1】特開昭56−38354号公報
【特許文献2】米国特許2936306号
【特許文献3】特開平11−100519号公報
【特許文献4】特開2003−277662号公報
【特許文献5】特開2005−220217号公報
【特許文献6】特開2008−7732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は着色力、色相等の色彩的特性に優れ、かつ耐光性、耐オゾン性等の耐久性にも優れるアゾ化合物、アゾ顔料および該アゾ化合物又は該アゾ顔料を含む分散物、着色組成物、インクジェット記録用インク、これを用いたインクジェット記録用インクタンク及びインクジェット記録方法、並びに、上記色彩的特性及び上記耐久性に優れる記録物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は上記した実情に鑑みて鋭意検討した結果、新規なアゾ顔料を得、これが色彩的特性と耐久性が両立して優れるものであることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
即ち、本発明は、
〔1〕
下記一般式(1)により表されるアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩または水和物。
【0013】
【化1】

【0014】
(一般式(1)中、R、R、R、Y、Z、Gはそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、nは2〜4の整数を表す。n=2の場合は、R、R、R、Y、ZまたはGを介した2量体を表す。n=3の場合はR、R、R、Y、ZまたはGを介した3量体を表す。n=4の場合はR、R、R、Y、ZまたはGを介した4量体を表す。)
〔2〕
下記一般式(2)で表されるアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩または水和物。
【0015】
【化2】

【0016】
(一般式(2)中、R’、R’、Y’はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、炭素数2〜4のアルキニル基、炭素数1〜5のアシル基、炭素数7〜9のアラルキル基、5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環基、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環基を表す。R’は水素原子または1価の置換基を表す。Z’はハメットのσp値が0.2以上の電子求引性基を表す。Xは炭素原子隣接位のヘテロ原子を表し、Gは5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環を形成する原子団を表す。R’、R’、R’、Y’、Gのいずれかが5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環を表す場合、単環または縮合環を表す。R’、R’、R’、Y’、Gのいずれかが5員環の不飽和のヘテロ環を表す場合、環内に窒素原子を2つ以上有する。)
【0017】
〔3〕
上記一般式(2)中のXが窒素原子であることを特徴とする〔2〕記載のアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩または水和物。
【0018】
〔4〕
上記一般式(2)中のGが、下記一般式(3)−1から(3)−6で表される置換基群のいずれかから選ばれることを特徴とする〔2〕に記載のアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩または水和物。
【0019】
【化3】

【0020】
(式中、R〜R23はそれぞれ独立に、水素原子、または置換基を表す。また、R〜R21がそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。)
【0021】
〔5〕
上記一般式(1)で表されるアゾ顔料が、下記一般式(4)で表されるアゾ顔料であることを特徴とする〔1〕に記載のアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩または水和物。
【0022】
【化4】

【0023】
(一般式(4)中、n、R、R、R、Y、Zはそれぞれ独立に一般式(1)中のn、R、R、R、Y、Zと同義であり、Xは炭素原子隣接位のヘテロ原子を表す。Gは5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環を形成する原子団を表し、n=2の場合は、R、R、R、Y、ZまたはGを介した2量体を表す。n=3の場合は、R、R、R、Y、ZまたはGを介した3量体を表す。n=4の場合は、R、R、R、Y、ZまたはGを介した4量体を表す。R、R、R、Y、Gのいずれかが5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環を表す場合、単環または縮合環である。)
【0024】
〔6〕
上記一般式(4)中のXが窒素原子であることを特徴とする〔5〕に記載のアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩または水和物。
【0025】
〔7〕
上記一般式(4)中のGが下記一般式(3)中の(3)−1から(3)−6で表される1〜3価の置換基群から選ばれる、いずれかの基であることを特徴とする〔5〕または〔6〕に記載のアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩または水和物。
【0026】
【化5】

【0027】
(式中、R〜R23はそれぞれ独立に、水素原子、または置換基を表す。また、R〜R21がそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。)
【0028】
〔8〕
下記一般式(2)で表されるアゾ化合物。
【0029】
【化6】

【0030】
(式中、R’、R’、Y’はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、炭素数2〜4のアルキニル基、炭素数1〜5のアシル基、炭素数7〜9のアラルキル基、5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環基、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環基を表す。R’は水素原子または1価の置換基を表す。Z’はハメットのσp値が0.2以上の電子求引性基を表す。Xは炭素原子隣接位のヘテロ原子を表し、Gは5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環を形成する原子団を表す。R’、R’、R’、Y’、Gのいずれかが5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環を表す場合、単環または縮合環を表す。R’、R’、R’、Y’、Gのいずれかが5員環の不飽和のヘテロ環を表す場合、環内に窒素原子を2つ以上有する。)
【0031】
〔9〕
上記一般式(2)中のGが、下記一般式(3)−1から(3)−6で表される置換基群のいずれかから選ばれることを特徴とする〔8〕に記載のアゾ化合物。
【0032】
【化7】

【0033】
(式中、R〜R23はそれぞれ独立に、水素原子、または置換基を表す。また、R〜R21がそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。)
【0034】
〔10〕
下記一般式(4)で表されるアゾ化合物。
【0035】
【化8】

【0036】
(式中、R、R、R、Y、Zはそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、nは2〜4の整数を表す。Xは炭素原子隣接位のヘテロ原子を表す。Gは5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環を形成する原子団を表し、n=2の場合は、R、R、R、Y、ZまたはGを介した2量体を表す。n=3の場合は、R、R、R、Y、ZまたはGを介した3量体を表す。n=4の場合は、R、R、R、Y、ZまたはGを介した4量体を表す。R、R、R、Y、Gのいずれかが5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環を表す場合、単環または縮合環である。)
【0037】
〔11〕
上記一般式(4)中のGが下記一般式(3)中の(3)−1から(3)−6で表される1〜3価の置換基群から選ばれる、いずれかの基であることを特徴とする〔10〕に記載のアゾ化合物。
【0038】
【化9】


(式中、R〜R23はそれぞれ独立に、水素原子、または置換基を表す。また、R〜R21がそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。)
【0039】
〔12〕
〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載のアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩または水和物又は〔8〕〜〔11〕のいずれかに記載のアゾ化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする分散物。
【0040】
〔13〕
〔12〕に記載の分散物を含有することを特徴とする着色組成物。
【0041】
〔14〕
〔12〕に記載の分散物を含有することを特徴とするインクジェット記録用インク。
【0042】
〔15〕
〔14〕に記載のインクジェット記録用インクを含有することを特徴とするインクジェット記録用インクタンク。
【0043】
〔16〕
〔14〕に記載のインクジェット記録用インクを用いることを特徴とするインクジェット記録方法。
【0044】
〔17〕
〔14〕に記載のインクジェット記録用インクを用いることで得られる記録物。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、着色力、色相等の色彩的特性と、耐オゾン性等の耐久性が良好であり、特に耐光性、分散性に優れたアゾ顔料が提供される。本発明の顔料を種々の媒体に分散させることにより、色彩的特性、耐久性および分散安定性に優れる顔料分散物が提供される。また、本発明によれば、該アゾ顔料を含む、着色力、色相等の色彩的特性に優れ、かつ耐光性、分散性にも優れる着色組成物、インクジェット記録用インク及びインクジェット記録用インクタンクが得られる。また、本発明によれば、上記色彩的特性及び上記耐久性に優れる記録物を得ることのできるインクジェット記録方法が提供される。また、本発明によれば、上記色彩的特性及び上記耐久性に優れる記録物が提供される。顔料分散物は例えば、インクジェットなどの印刷用のインク、電子写真用のカラートナー、LCD、PDP、などのディスプレーやCCDなどの撮像素子で用いられるカラーフィルター、塗料、着色プラスチック等に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、本発明について詳細に説明する。
ここで、本明細書中で用いられるハメットの置換基定数σp値について若干説明する。
ハメット則はベンゼン誘導体の反応または平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために1935年L.P.Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則に求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができるが、例えば、J.A.Dean編、「Lange’s Handbook of Chemistry」第12版、1979年(Mc Graw−Hill)や「化学の領域」増刊、122号、96〜103頁、1979年(南光堂)に詳しい。なお、本発明において各置換基をハメットの置換基定数σpにより限定したり説明したりするが、これは上記の成書で見出せる、文献既知の値がある置換基にのみ限定されるという意味ではなく、その値が文献未知であってもハメット則に基づいて測定した場合にその範囲内に含まれるであろう置換基をも含むことはいうまでもない。本発明の一般式(1)、(2)、(4)、(5)で表される化合物はベンゼン誘導体ではないが、置換基の電子効果を示す尺度として、置換位置に関係なくσp値を使用する。本発明においては今後、σp値をこのような意味で使用する。
【0047】
〔アゾ顔料〕
顔料は、色素分子間の強力な相互作用による凝集エネルギーによって、分子同士がお互いに強固に結合しあっている状態にある。この状態を作るには、分子間のファンデルワールス力、分子間水素結合が必要であることが、例えば、日本画像学会誌、43巻、10頁(2004年)等に記載されている。
分子間のファンデルワールス力を強めるには、分子への芳香族基、極性基および/又はヘテロ原子の導入等が考えられる。また、分子間水素結合を形成させるには、分子へのヘテロ原子に結合した水素原子を含有する置換基の導入および/又は電子供与性の置環基の導入等が考えられる。更に分子全体の極性が高い方が好ましいと考えられる。そのためには、例えば、アルキル基等鎖状の基は短い方が好ましく、分子量/アゾ基の値は小さい方が好ましいと考えられる。
これらの観点から、顔料分子は、アミド結合、スルホンアミド結合、エーテル結合、スルホン基、オキシカルボニル基、イミド基、カルバモイルアミノ基、ヘテロ環、ベンゼン環等を含有することが好ましい。
本発明におけるアゾ顔料は前記一般式(1)で表される。一般式(1)で表される化合物は、その特異的な構造により色素分子の分子間相互作用を形成しやすく、水または有機溶媒等に対する溶解性が低く、アゾ顔料とすることができる。
顔料は、水や有機溶媒等に分子分散状態で溶解させて使用する染料とは異なり、溶媒中に分子集合体等の固体粒子として微細に分散させて用いるものである。
【0048】
以下、一般式(1)により表されるアゾ顔料、およびその互変異性体、結晶多形、塩、錯体について詳細に説明する。
【0049】
【化10】

【0050】
(一般式(1)中、R、R、R、Y、Z、Gはそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、nは2〜4の整数を表す。n=2の場合は、R、R、R、Y、ZまたはGを介した2量体を表す。n=3の場合はR、R、R、Y、ZまたはGを介した3量体を表す。n=4の場合はR、R、R、Y、ZまたはGを介した4量体を表す。)
【0051】
以下に前記一般式(1)について詳しく説明する。
一般式(1)中、nは、2〜4の整数を表し、2または3であることが好ましく、2である場合が、より好ましい。
nが2以上の場合、分子量が大きくなり、分子間のπ―πスタッキング等の分子間相互作用がより強くなる。分子間の相互作用が密になると、耐溶剤性が向上する。さらに分子間の相互作用が密になり、結晶性が高まると、格子振動等によるエネルギー緩和が起きやすく、耐光性が向上する。一方、nが4を超える場合、分子量が大きくなるが、立体的な障害により分子が平面性を保つことが困難になる。その結果、分子間の相互作用が弱まり、耐光性や耐溶剤性が低下する傾向となる。
、R、R、Y、Z、Gは置換基を有していてもよい。
【0052】
一般式(1)中、R、R、R、Y、Z、Gで表される基としては、水素原子、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖アルキル基、炭素数7〜12の直鎖又は分岐鎖アラルキル基、炭素数2〜6の直鎖又は分岐鎖アルケニル基、炭素数2〜6の直鎖又は分岐鎖アルキニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルケニル基(例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、2−メチルスルホニルエチル、3−フェノキシプロピル、トリフルオロメチル、シクロペンチル)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、アリール基(例えば、フェニル、4−t−ブチルフェニル、2,4−ジ−t−アミルフェニル、4−アセトアミドフェニル)、ヘテロ環基(例えば、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、2−フリル、2−チエニル、2−ピリジル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシ基、アミノ基、アルキルオキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−メチルスルホニルエトキシ)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、3−t−ブチルオキシカルボニルフェノキシ、3−メトキシカルボニルフェニルオキシ)、アシルアミノ基(例えば、アセトアミド、ベンズアミド、4−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)ブタンアミド)、アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ、ブチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルブチルアミノ)、アリールアミノ基(例えば、フェニルアミノ、2−クロロアニリノ)、ウレイド基(例えば、フェニルウレイド、メチルウレイド、N,N−ジブチルウレイド)、スルファモイルアミノ基(例えば、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、オクチルチオ、2−フェノキシエチルチオ)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ、2−ブトキシ−5−t−オクチルフェニルチオ、2−カルボキシフェニルチオ)、アルキルオキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ)、アルキルスルホニルアミノ基及びアリールスルホニルアミノ基(例えば、メチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、p−トルエンスルホニルアミノ)、カルバモイル基(例えば、カルバモイル、N−エチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル)、スルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル)、スルホニル基(例えば、メチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル)、アルキルオキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル)、ヘテロ環オキシ基(例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アゾ基(例えば、フェニルアゾ、4−メトキシフェニルアゾ、4−ピバロイルアミノフェニルアゾ、2−ヒドロキシ−4−プロパノイルフェニルアゾ)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ)、カルバモイルオキシ基(例えば、N−メチルカルバモイルオキシ、N−フェニルカルバモイルオキシ)、シリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ、ジブチルメチルシリルオキシ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェノキシカルボニルアミノ)、イミド基(例えば、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ヘテロ環チオ基(例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、2,4−ジ−フェノキシ−1,3,5−トリアゾール−6−チオ、2−ピリジルチオ)、スルフィニル基(例えば、3−フェノキシプロピルスルフィニル)、ホスホニル基(例えば、フェノキシホスホニル、オクチルオキシホスホニル、フェニルホスホニル)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル)、アシル基(例えば、アセチル、3−フェニルプロパノイル、ベンゾイル)、イオン性親水性基(例えば、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基及び4級アンモニウム基)が挙げられる。
【0053】
本発明のアゾ顔料がイオン性親水性基を置換基として含有する場合は、多価金属カチオン(例えば、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオン)との塩であることが好ましく、レーキ顔料であることが特に好ましい。
【0054】
一般式(1)中、R、Rとしては、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数2〜6の直鎖または分岐鎖のアルケニル基、炭素数2〜6の直鎖または分岐鎖のアルキニル基、炭素数7〜9のアラルキル基、置換もしくは無置換の5〜8員環のアリール基、置換もしくは無置換の5〜8員環のヘテロ環基である場合が好ましい。更に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基、置換もしくは無置換の5〜8員環のアリール基である場合が好ましく、その中でも特に、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基、置換もしくは無置換の5〜6員環のアリール基である場合が最も好ましい。
【0055】
一般式(1)中、Rで表される1価の置換基としては、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec-ブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、2−メチルスルホニルエチル、3−フェノキシプロピル、トリフルオロメチル)、炭素数7〜12のアラルキル基(ベンジル、4−アミノフェニルメチル)、炭素数2〜6の直鎖又は分岐鎖のアルケニル基(例えばエテニル、1−プロペニル、1,3−ブタンジエニル)、炭素数2〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキニル基(例えばエチニル、1−プロピニル、1−ブチニル)、炭素数3〜6のシクロアルキル基(例えばシクロペンチル)、炭素数3〜10のシクロアルケニル基(シクロヘキセニル、シクロヘキサンジエニル)、アリール基(例えば、フェニル、4−t−ブチルフェニル、2,4−ジ−t−アミルフェニル)、ヘテロ環基(例えば、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、アルキルオキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル)、アシル基(例えば、アセチル、3−フェニルプロパノイル、ベンゾイル)が挙げられる。
【0056】
の好ましい例としては、水素原子、炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル)、炭素数2〜4のアルケニル基(例えばエテニル)、炭素数2〜4のアルキニル基(例えばエチニル)が挙げることができる。
【0057】
として更に好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、エテニル基、エチニル基である。その中でも、水素原子の場合が特に好ましい。
【0058】
Yの好ましい例は、水素原子、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数2〜6の直鎖または分岐鎖のアルケニル基、炭素数2〜6の直鎖または分岐鎖のアルキニル基、炭素数1〜6のカルバモイル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換の5〜8員環のアリール基、置換もしくは無置換の5〜8員環のヘテロ環基である場合が好ましく、更に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数1〜4のカルバモイル基、炭素数1〜5のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換の5〜8員環のアリール基である場合が好ましく、その中でも、水素原子、メチル基、t−ブチル基、置換もしくは無置換の5〜6員環のアリール基である場合が特に好ましい。
【0059】
一般式(1)中、Zはハメットの置換基定数σp値が0.2以上の電子求引性基であることが好ましく、σp値が0.3以上の電子求引性基であることがより好ましい。上限としては1.0以下の電子求引性基であることが好ましい。
【0060】
σp値が0.2以上の電子求引性基であるZの具体例としては、アシル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアリールホスフィニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、アシルチオ基、スルファモイル基、チオシアネート基、チオカルボニル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン化アリールオキシ基、ハロゲン化アルキルアミノ基、ハロゲン化アルキルチオ基、σp値が0.2以上の他の電子求引性基で置換されたアリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アゾ基、又はセレノシアネート基が挙げられる。
【0061】
Zの好ましい例としては、炭素数2〜6のアシル基、炭素数2〜6のアシルオキシ基、炭素数1〜8のカルバモイル基、炭素数2〜8のアルキルオキシカルボニル基、炭素数7〜12のアリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキルスルフイニル基、炭素数6〜10のアリールスルフイニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数6〜10のアリールスルホニル基、炭素数0〜9のスルファモイル基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキルオキシ基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキルチオ基、炭素数6〜12のハロゲン化アリールオキシ基、2つ以上のσp値が0.2以上の他の電子求引性基で置換された炭素数7〜12のアリール基、及び窒素原子、酸素原子、または硫黄原子を有する5〜8員環で炭素数1〜10のヘテロ環基を挙げることができる。
【0062】
更に好ましくは、シアノ基、炭素数2〜8のアルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数6〜10のアリールスルホニル基、または炭素数0〜9のスルファモイル基である。特に好ましいものは、シアノ基、炭素数2〜8のアルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜4のアルキルスルホニル基、炭素数6〜8のアリールスルホニル基、または炭素数0〜8のスルファモイル基であり、シアノ基が最も好ましい。
【0063】
一般式(1)中、Gの好ましい例としては、水素原子、直鎖または分岐鎖のアルキル基、シクロアルキル基、アシル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環であり、Gが5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環あるいはヘテロ環を表す場合、単環または縮合環である。また、Gは置換基を有していてもよい。更に好ましい例としては、Gが水素原子、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数1〜6のアシル基、5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環が挙げられ、Gが5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環あるいはヘテロ環を表す場合、単環または縮合環である。また、Gは置換基を有していてもよい。特に、Gが5〜8員環の置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環、5〜8員環の置換もしくは無置換のヘテロ環基が好ましい。Gが5〜8員環の置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環、5〜8員環の置換もしくは無置換のヘテロ環基を表す場合、単環または縮合環である。
【0064】
一般式(1)中、Gで表されるヘテロ環基の例には、置換位置を限定しないで例示すると、ピリジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、ピロリル基、インドリル基、フリル基、ベンゾフリル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、トリアゾリル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、イソチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、チアジアゾリル基、イソオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ピロリジニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、イミダゾリジニル基、チアゾリル基、スルホラニル基などが挙げられる。
【0065】
中でも、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基である場合は更に好ましく、その中でも、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基である場合は特に好ましい。
【0066】
前記Gが更に置換基を有することが可能な基であるときは、置換基の例としては、前記一般式(1)におけるR、R、R、Y、Z、Gで挙げた基と同じものを挙げることができる。
【0067】
、R、R、Y、Zは置換基を有していてもよく、置換基の例としては、前記一般式(1)におけるR、R、R、Y、Z、Gで挙げた置換基と同じものを挙げることができる。
【0068】
、R、R、Y、Z、Gが二価の基を示す場合、二価の基としては、アルキレン基(例、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン)、アルケニレン基(例、エテニレン、プロぺニレン)、アルキニレン基(例、エチニレン、プロピニレン)、アリーレン基(例、フェニレン、ナフチレン)、二価のヘテロ環基(例、6ークロロー1、3、5ートリアジンー2、4ージイル基、ピリミジン−2、4−ジイル基、ピリミジン−4、6−ジイル基、キノキサリンー2、3ージイル基、ピリダジンー3,6−ジイル)、−O−、−CO−、−NR’−(R’は水素原子、アルキル基又はアリール基)、−S−、−SO−、−SO−又はこれらの組み合わせ(例えば−NHCHCHNH−、−NHCONH−等)であることが好ましい。
【0069】
アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、二価のヘテロ環基、R’のアルキル基又はアリール基は、置換基を有していてもよい。
【0070】
置換基の例としては、前記一般式(1)におけるR、R、R、Y、Z、Gで挙げた置換基と同じものを挙げることができる。
【0071】
上記R’のアルキル基およびアリール基は、前記一般式(1)におけるR、R、R、Y、Z、Gがアルキル基またはアリール基の場合に挙げた置換基例と同義である。
【0072】
さらに好ましくは、炭素数6以下のアルキレン基、炭素数6以下のアルケニレン基、炭素数6以下のアルキニレン基、炭素数6以上10以下のアリーレン基、二価のヘテロ環基、−S−、−SO−、―SO−又はこれらの組み合わせ(例えば−SCHCHS−、−SCHCHCHS−等)であることがさらに好ましい。
【0073】
二価の連結基の総炭素数は0乃至20であることが好ましく、0乃至15であることがより好ましく、0乃至10であることが最も好ましい。
【0074】
、R、R、Y、Z、Gが三価の基を示す場合、三価の基としては、3価の炭化水素基、三価のヘテロ環基、>N−、又はこれと2価の基の組み合わせ(例えば>NCHCHNH−、>NCONH−等)であることが好ましい。
【0075】
三価の連結基の総炭素数は0乃至20であることが好ましく、0乃至15であることがより好ましく、0乃至10であることが最も好ましい。
【0076】
本発明の一般式(1)で表される顔料の好ましい基の組み合わせについては、種々の基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の基が前記の好ましい基である化合物がより好ましく、全ての基が前記の好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0077】
本発明の一般式(1)で表されるアゾ顔料として特に好ましい組み合わせは、以下の(イ)〜(へ)を含むものである。
【0078】
(イ)nは2〜4の整数を表し、好ましくは2〜3の整数であり、特に2が好ましい。
【0079】
(ロ)R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数2〜6の直鎖または分岐鎖のアルケニル基、炭素数2〜6の直鎖または分岐鎖のアルキニル基、置換もしくは無置換の5〜8員環のアリール基、置換もしくは無置換の5〜8員環のヘテロ環基である場合が好ましく、その中でも水素原子、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基、置換もしくは無置換の5〜8員環のアリール基である場合が更に好ましく、特に、メチル基、t−ブチル基、置換もしくは無置換の5〜6員環のアリール基である場合が最も好ましい。
【0080】
(ハ)Yは水素原子、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数2〜6の直鎖または分岐鎖のアルケニル基、炭素数2〜6の直鎖または分岐鎖のアルキニル基、炭素数1〜6のカルバモイル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換の5〜8員環のアリール基、置換もしくは無置換の5〜8員環のヘテロ環である場合が好ましく、その中でも、水素原子、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数1〜4のカルバモイル基、炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換の5〜8員環のアリール基である場合が更に好ましく、特に、水素原子、メチル基、置換もしくは無置換の5〜6員環のアリール基である場合が最も好ましい。
【0081】
(ニ)Rは水素原子、1価の置換基である場合が好ましく、その中でも、水素原子、メチル基、エチル基、エテニル基、エチニル基である場合が更に好ましく、特に、水素原子である場合が最も好ましい。
【0082】
(ホ)Zは、シアノ基、炭素数2〜6のアシル基、炭素数2〜6のアシルオキシ基、炭素数1〜8のカルバモイル基、炭素数2〜8のアルキルオキシカルボニル基、炭素数7〜12のアリールオキシカルボニル基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキルスルフイニル基、炭素数6〜10のアリールスルフイニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数6〜10のアリールスルホニル基、炭素数0〜9のスルファモイル基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜6のハロゲン化アリール基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキルオシキ基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキルチオ基、炭素数6〜12のハロゲン化アリールオキシ基、5〜8員環のヘテロ環基である場合が好ましく、その中でも、シアノ基、炭素数2〜8のアルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数6〜10のアリールスルホニル基、炭素数0〜8のスルファモイル基である場合が好ましく、最も好ましいのはシアノ基である。
【0083】
(ヘ)Gは、水素原子、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数1〜4のアシル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、炭素数7〜10のアラルキル基、5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環である場合が好ましく、Gが5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環あるいはヘテロ環を表す場合、単環または縮合環である。また、Gは置換基を有していてもよい。更に、置換もしくは無置換の5〜8員環の芳香族炭化水素環、置換もしくは無置換の5〜8員環の芳香族ヘテロ環である場合が好ましく、Gが5〜8員環の芳香族炭化水素環あるいは芳香族ヘテロ環を表す場合、単環または縮合環である。その中でも特に、Gが置換もしくは無置換の6員環の芳香族ヘテロ環である場合が最も好ましく、置換もしくは無置換の6員環の芳香族ヘテロ環を表す場合、単環または縮合環である。
【0084】
本発明は、一般式(1)で表されるアゾ顔料の互変異性体もその範囲に含むものである。一般式(1)は、化学構造上取りうる数種の互変異性体の中から極限構造式の形で示しているが、記載された構造以外の互変異性体であってもよく、複数の互変異性体を含有した混合物として用いても良い。例えば、一般式(1)で表される顔料には、下記一般式(1’)で表されるアゾ−ヒドラゾンの互変異性体が考えられる。
本発明は、一般式(1)で表されるアゾ顔料の互変異性体である以下の一般式(1’)で表される化合物もその範囲に含むものである。
【0085】
【化11】

【0086】
(一般式(1’)中、n、R、R、R、Y、Z、Gは一般式(1)中のn、R、R、R、Y、Z、Gと同義である。)
【0087】
本発明は一般式(2)で表されるアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩または水和物にも関する。
【0088】
以下、一般式(2)により表されるアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩または水和物について詳細に説明する。
【0089】
【化12】

【0090】
(一般式(2)中、R’、R’、Y’はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、炭素数2〜4のアルキニル基、炭素数1〜5のアシル基、炭素数7〜9のアラルキル基、5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環基、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環基を表す。R’は水素原子または1価の置換基を表す。Z’はハメットのσp値が0.2以上の電子求引性基を表す。Xは炭素原子隣接位のヘテロ原子を表し、Gは5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環を形成する原子団を表す。R’、R’、R’、Y’、Gのいずれかが5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環を表す場合、単環または縮合環を表す。R’、R’、R’、Y’、Gのいずれかが5員環の不飽和のヘテロ環を表す場合、環内に窒素原子を2つ以上有する。R’、R’、R’、Y’、Z’、Gが置換基を有していてもよい。)
【0091】
以下に、前記一般式(2)中のR’、R’、R’、Y’、Z’、X、Gを更に詳しく説明する。
R’、R’、R’、Y’、Z’、Gは置換基を有していてもよい。
【0092】
一般式(2)中、R’、R’は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、炭素数2〜4のアルキニル基、炭素数7〜9のアラルキル基、5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環基、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環基である場合が好ましい。R’、R’のいずれかが5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環基、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環基を表す場合は、単環または縮合環であり、置換基を有することができる場合、置換基を有していても無置換であっても良い。更に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環基、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環基である場合が好ましく、R’、R’のいずれかが5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環基、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環基を表す場合、単環または縮合環であり、置換基を有することができる場合、置換基を有していても無置換であっても良い。その中でも特に、メチル基、t−ブチル基、置換もしくは無置換の5〜8員環のアリール基、置換もしくは無置換の5〜8員環の芳香族ヘテロ環基である場合が最も好ましい。
【0093】
R’の基の例は、上記一般式(1)中のRの例と同義であり、好ましい例も同じである。
Z’の基の例は、上記一般式(1)中のZの例と同義であり、好ましい例も同じである。
【0094】
一般式(2)中、Y’は水素原子、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、炭素数2〜4のアルキニル基、炭素数7〜9のアラルキル基、5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環基、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環基である場合が好ましい。Y’が5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環基、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環基を表す場合は、単環または縮合環であり、置換基を有することができる場合、置換基を有していても無置換であっても良い。その中でも、水素原子、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基、5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環基、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環基である場合が更に好ましい。Y’が5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環基、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環基を表す場合は、単環または縮合環であり、置換基を有することができる場合、置換基を有していても無置換であっても良い。その中でも特に、水素原子、メチル基、t−ブチル基、置換もしくは無置換の6員環の芳香族炭化水素環基、置換もしくは無置換の6員環の芳香族ヘテロ環基である場合が好ましい。
【0095】
一般式(2)中、Xは炭素原子隣接位の原子を表し、ヘテロ原子である場合が好ましく、中でも、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子である場合が更に好ましく、特に、窒素原子、硫黄原子、酸素原子である場合が好ましく、窒素原子である場合が最も好ましい。Xが窒素原子であることにより、色素分子の分子間相互作用だけでなく、分子内相互作用を強固に形成しやすくなる。それにより安定な分子配列の顔料を構成しやすくなり、良好な色相、高い堅牢性(耐光・ガス・熱・溶剤等)を示す点で好ましい。
【0096】
は、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環である場合が好ましく、Gが5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環を表す場合、単環または縮合環である。また、Gは置換基を有していてもよい。更に、置換もしくは無置換の5〜8員環の芳香族ヘテロ環である場合が更に好ましく、Gが5〜8員環の芳香族ヘテロ環を表す場合、単環または縮合環であり、Gが5員環の芳香族ヘテロ環を表す場合、環内に窒素原子を2つ以上有する。特に、置換もしくは無置換の6員環の芳香族ヘテロ環である場合が好ましく、下記一般式(3)中の(3)−1から(3)−6で表される置換基群のいずれかから選ばれる場合が最も好ましい。
【0097】
【化13】

【0098】
一般式(3)中、R〜R23はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、アミノ基、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数1〜5のアシル基、炭素数2〜4のアルケニル基、炭素数2〜4のアルキニル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基、炭素数1〜8のアルキルアミノ基、炭素数2〜5のアルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜5のアミド基、炭素数7〜10のアラルキル基、5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環を表す。R〜R23が5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環あるいはヘテロ環を表す場合、単環または縮合環である。また、R〜R23が更に置換基を有することができる場合、置換基を有していても無置換であっても良い。更に、水素原子、水酸基、アミノ基、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数1〜5のアシル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基、炭素数1〜8のアルキルアミノ基、炭素数2〜5のアルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜5のアミド基である場合がより好ましく、その中でも、水素原子、水酸基、アミノ基、メチル基、メチルオキシ基、メチルアミノ基、アセトアミド基である場合が特に好ましい。
【0099】
〜R21はそれぞれ互いに結合を形成しても良く、その場合、R〜R21は5〜7員環の炭化水素環、5〜7員環のヘテロ原子環を形成するのに必要な非金属原子団である場合が好ましく、6員環の芳香族炭化水素環、6員環の芳香族ヘテロ原子環を形成するのに必要な非金属原子団である場合が更に好ましい。
【0100】
一般式(2)中、Gで表されるヘテロ環基の例には、置換位置を限定しないで例示すると、ピリジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、ピロリル基、インドリル基、フリル基、ベンゾフリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、トリアゾリル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアジアゾリル基、イソオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ピロリジニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、イミダゾリジニル基、スルホラニル基などが挙げられる。
【0101】
中でも、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基である場合は更に好ましく、その中でも、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基である場合は特に好ましい。
【0102】
前記Gが更に置換基を有することが可能な基であるときは、置換基の例としては、前記一般式(1)におけるR、R、R、Y、Z、Gで挙げた基と同じものを挙げることができる。
【0103】
本発明の一般式(2)で表される顔料の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の基が前記の好ましい基である化合物がより好ましく、全ての基が前記の好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0104】
本発明の一般式(2)で表されるアゾ顔料として特に好ましい組み合わせは、以下の(イ)〜(ト)を含むものである。
【0105】
(イ)R’、R’はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、炭素数2〜4のアルキニル基、炭素数7〜9のアラルキル基、5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環基、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環基である場合が好ましい。R’、R’のいずれかが5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環基、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環基を表す場合は、単環または縮合環であり、また、置換基を有することができる場合、置換基を有していても無置換であっても良い。更に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環基、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環基である場合がより好ましく、R’、R’のいずれかが5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環基、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環基を表す場合、単環または縮合環であり、また、置換基を有することができる場合、置換基を有していても無置換であっても良い。その中でも特に、メチル基、t−ブチル基、置換もしくは無置換の5〜8員環のアリール基、置換もしくは無置換の5〜8員環の芳香族ヘテロ環基である場合が最も好ましい。
【0106】
(ロ)Y’は、水素原子、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、炭素数2〜4のアルキニル基、炭素数7〜9のアラルキル基、5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環基、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環基である場合が好ましい。Y’が5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環基、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環基を表す場合は、単環または縮合環であり、置換基を有することができる場合、置換基を有していても無置換であっても良い。その中でも、水素原子、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基、5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環基、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環基である場合が更に好ましい。Y’が5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環基、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環基を表す場合は、単環または縮合環であり、置換基を有することができる場合、置換基を有していても無置換であっても良い。その中でも特に、水素原子、メチル基、t−ブチル基、置換もしくは無置換の6員環の芳香族炭化水素環基、置換もしくは無置換の6員環の芳香族ヘテロ環基である場合が好ましい。
【0107】
(ハ)R’は水素原子、1価の置換基である場合が好ましく、その中でも、水素原子、メチル基、エチル基、エテニル基、エチニル基である場合が更に好ましく、特に、水素原子である場合が最も好ましい。
【0108】
(ニ)Z’は、シアノ基、炭素数2〜6のアシル基、炭素数2〜6のアシルオキシ基、炭素数1〜8のカルバモイル基、炭素数2〜8のアルキルオキシカルボニル基、炭素数7〜12のアリールオキシカルボニル基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキルスルフイニル基、炭素数6〜10のアリールスルフイニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数6〜10のアリールスルホニル基、炭素数0〜9のスルファモイル基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜6のハロゲン化アリール基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキルオシキ基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキルチオ基、炭素数6〜12のハロゲン化アリールオキシ基、5〜8員環で炭素数1〜10のヘテロ環基である場合が好ましく、その中でも、シアノ基、炭素数2〜8のアルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数6〜10のアリールスルホニル基、炭素数0〜8のスルファモイル基である場合が好ましく、最も好ましいのはシアノ基である。
【0109】
(ホ)Xはヘテロ原子であることが好ましく、中でも窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子である場合が更に好ましく、特に、窒素原子、酸素原子、硫黄原子である場合が好ましく、窒素原子である場合が最も好ましい。
【0110】
(ヘ)Gは、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環である場合が好ましく、Gが5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環を表す場合、単環または縮合環である。また、Gは置換基を有していてもよい。Gが5員環の不飽和へテロ環を表す場合、環内に窒素原子を2つ以上有する。更に、置換もしくは無置換の5〜8員環の芳香族ヘテロ環である場合が更に好ましく、Gが5〜8員環の芳香族ヘテロ環を表す場合、単環または縮合環であり、Gが5員環の芳香族ヘテロ環を表す場合、環内に窒素原子を2つ以上有する。特に、置換もしくは無置換の6員環の芳香族ヘテロ環である場合が好ましく、下記一般式(3)中の(3)−1から(3)−6で表される置換基群のいずれかから選ばれる場合が最も好ましい。
【0111】
【化14】

【0112】
(ト)R〜R23はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、アミノ基、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数1〜5のアシル基、炭素数2〜4のアルケニル基、炭素数2〜4のアルキニル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基、炭素数1〜8のアルキルアミノ基、炭素数2〜5のアルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜5のアミド基、炭素数7〜10のアラルキル基、5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環である。R〜R23が5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環あるいはヘテロ環を表す場合、単環または縮合環である。また、R〜R23は置換基を有していてもよい。更に、水素原子、水酸基、アミノ基、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数1〜5のアシル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基、炭素数1〜8のアルキルアミノ基、炭素数2〜5のアルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜5のアミド基である場合が好ましく、その中でも、水素原子、水酸基、アミノ基、メチル基、メチルオキシ基、メチルアミノ基、アセトアミド基である場合が好ましい。
〜R21はそれぞれ互いに結合して環を形成しても良く、その場合、R〜R21は5〜7員環の炭化水素環、5〜7員環のヘテロ原子環を形成するのに必要な非金属原子団である場合が好ましく、6員環の芳香族炭化水素環、6員環の芳香族ヘテロ原子環を形成するのに必要な非金属原子団である場合が更に好ましい。
【0113】
本発明は、一般式(2)で表されるアゾ顔料の互変異性体もその範囲に含むものである。一般式(2)は、化学構造上取りうる数種の互変異性体の中から極限構造式の形で示しているが、記載された構造以外の互変異性体であってもよく、複数の互変異性体を含有した混合物として用いても良い。例えば、一般式(2)で表される顔料には、下記一般式(2’)で表されるアゾ−ヒドラゾンの互変異性体が考えられる。
本発明は、一般式(2)で表されるアゾ顔料の互変異性体である以下の一般式(2’)で表される化合物もその範囲に含むものである。
【0114】
【化15】

【0115】
(一般式(2’)中、R’、R’、R’、Y’、Z’、Gは、一般式(2)中のR’、R’、R’、Y’、Z’、Gと同義である。)
【0116】
上記一般式(1)で表されるアゾ顔料は、下記一般式(4)で表されるアゾ顔料であることが好ましい。
【0117】
以下、一般式(4)により表されるアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩または水和物について詳細に説明する。
【0118】
【化16】

【0119】
式中、n、R、R、R、Y、Zはそれぞれ独立に一般式(1)中のn、R、R、R、Y、Zと同義であり、Xは一般式(2)中のXと同義である。Gは5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環を形成する原子団を表し、n=2の場合は、R、R、R、Y、ZまたはGを介した2量体を表す。n=3の場合はR、R、R、Y、ZまたはGを介した3量体を表す。n=4の場合はR、R、R、Y、ZまたはGを介した4量体を表す。R、R、R、Y、Gのいずれかが5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環を表す場合、単環または縮合環である。R、R、R、Y、Z、Gは置換基を有していてもよい。
【0120】
以下に、前記一般式(4)中のn、R、R、R、Y、Z、X、Gを更に詳しく説明する。
【0121】
一般式(4)中、n、R、R、R、Y、Zの基の例は、それぞれ独立に上記一般式(1)中のn、R、R、R、Y、Zの基の例と同義であり、好ましい例も同じである。
Xの例は、それぞれ独立に上記一般式(2)中のX、の例と同義であり、好ましい例も同じである。
【0122】
は、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環である場合が好ましく、Gが5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環を表す場合、単環または縮合環である。また、Gは置換基を有していてもよい。更に、置換もしくは無置換の5〜8員環の芳香族ヘテロ環である場合が更に好ましく、Gが5〜8員環の芳香族ヘテロ環を表す場合、単環または縮合環である。その中でも特に、置換もしくは無置換の6員環の芳香族ヘテロ環である場合が好ましく、下記一般式(3)中の(3)−1から(3)−6で表される置換基群のいずれかから選ばれる場合が最も好ましい。
【0123】
【化17】

【0124】
一般式(3)中、R〜R23はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、アミノ基、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数1〜5のアシル基、炭素数2〜4のアルケニル基、炭素数2〜4のアルキニル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基、炭素数1〜8のアルキルアミノ基、炭素数2〜5のアルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜5のアミド基、炭素数7〜10のアラルキル基、5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環を表す。R〜R23が5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環あるいはヘテロ環を表す場合、単環または縮合環である。また、R〜R23が更に置換基を有することができる場合、置換基を有していても無置換であっても良い。更に、水素原子、水酸基、アミノ基、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数1〜5のアシル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基、炭素数1〜8のアルキルアミノ基、炭素数2〜5のアルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜5のアミド基である場合がより好ましく、その中でも、水素原子、水酸基、アミノ基、メチル基、メチルオキシ基、メチルアミノ基、アセトアミド基である場合が特に好ましい。
【0125】
〜R21はそれぞれ互いに結合を形成しても良く、その場合、R〜R21は5〜7員環の炭化水素環、5〜7員環のヘテロ原子環を形成するのに必要な非金属原子団である場合が好ましく、6員環の芳香族炭化水素環、6員環の芳香族ヘテロ原子環を形成するのに必要な非金属原子団である場合が更に好ましい。
一般式(4)中、Gで表されるヘテロ環基の例には、置換位置を限定しないで例示すると、ピリジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、ピロリル基、インドリル基、フリル基、ベンゾフリル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、トリアゾリル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、イソチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、チアジアゾリル基、イソオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ピロリジニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、イミダゾリジニル基、スルホラニル基などが挙げられる。
【0126】
中でも、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基である場合は更に好ましく、その中でも、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基である場合は特に好ましい。
【0127】
前記Gが更に置換基を有することが可能な基であるときは、置換基の例としては、前記一般式(1)におけるR、R、R、Y、Z、Gで挙げた基と同じものを挙げることができる。
【0128】
、R、R、Y、Zが二価の基を示す場合、二価の基としては、アルキレン基(例、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン)、アルケニレン基(例、エテニレン、プロぺニレン)、アルキニレン基(例、エチニレン、プロピニレン)、アリーレン基(例、フェニレン、ナフチレン)、二価のヘテロ環基(例、6−クロロ−1、3、5−トリアジン−2、4ージイル基、ピリミジン−2、4−ジイル基、ピリミジン−4、6−ジイル基、キノキサリン−2、3−ジイル基、ピリダジン−3,6−ジイル)、−O−、−CO−、−NR’−(R’は水素原子、アルキル基又はアリール基)、−S−、−SO−、−SO−又はこれらの組み合わせ(例えば−NHCHCHNH−、−NHCONH−等)であることが好ましい。
【0129】
アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、二価のヘテロ環基、R’のアルキル基又はアリール基は、置換基を有していてもよい。
【0130】
置換基の例としては、前記一般式(1)におけるR、R、R、Y、Z、Gで挙げた置換基と同じものを挙げることができる。
【0131】
上記R’のアルキル基およびアリール基は、上記R、R、R、Y、Z、Gがアルキル基またはアリール基の場合に挙げた置換基例と同義である。
【0132】
更に、炭素数6以下のアルキレン基、炭素数6以下のアルケニレン基、炭素数6以下のアルキニレン基、炭素数6以上10以下のアリーレン基、二価のヘテロ環基、−S−、−SO−、―SO−又はこれらの組み合わせ(例えば−SCHCHS−、−SCHCHCHS−等)であることがより好ましい。
【0133】
が二価の基を示す場合、二価の基としては、二価のヘテロ環基(例えば、6−クロロ−1、3、5−トリアジン−2、4−ジイル基、ピリミジン−2、4−ジイル基、ピリミジン−4、6−ジイル基、キノキサリン−2、3−ジイル基、ピリダジン−3,6−ジイル)であることが好ましい。
【0134】
二価のヘテロ環基は、置換基を有していてもよい。
【0135】
置換基の例としては、前記一般式(1)におけるR、R、R、Y、Z、Gで挙げた置換基と同じものを挙げることができる。
【0136】
二価の連結基の総炭素数は0乃至20であることが好ましく、0乃至15であることがより好ましく、0乃至10であることが最も好ましい。
【0137】
、R、R、Y、Zが三価の基を示す場合、三価の基としては、3価の炭化水素基、三価のヘテロ環基、>N−、又はこれと2価の基の組み合わせ(例えば>NCHCHNH−、>NCONH−等)であることが好ましい。
【0138】
が3価の基を表す場合、3価の基としては、3価のヘテロ環基(例えば、1、3、5−トリアジン−2、4、6−トリイル基、ピリミジン−2、4、6−トリイル基)であることが好ましい。
【0139】
三価の連結基の総炭素数は0乃至20であることが好ましく、0乃至15であることがより好ましく、0乃至10であることが最も好ましい。
【0140】
本発明の一般式(4)で表される顔料の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の基が前記の好ましい基である化合物がより好ましく、全ての基が前記の好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0141】
本発明の一般式(4)で表されるアゾ顔料として特に好ましい組み合わせは、以下の(イ)〜(ト)を含むものである。
【0142】
(イ)nは、2〜4の整数であって、2〜3の整数である場合が好ましく、2である場合が更に好ましい。
【0143】
(ロ)R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数2〜6の直鎖または分岐鎖のアルケニル基、2〜6の直鎖または分岐鎖のアルキニル基、置換もしくは無置換の5〜8員環のアリール基、置換もしくは無置換の5〜8員環のヘテロ環基である場合が好ましく、その中でも水素原子、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基、置換もしくは無置換の5〜8員環のアリール基である場合が更に好ましく、特に、メチル基、t−ブチル基、置換もしくは無置換の5〜8員環のアリール基である場合が最も好ましい。
【0144】
(ハ)Yは水素原子、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数2〜6の直鎖または分岐鎖のアルケニル基、炭素数2〜6の直鎖または分岐鎖のアルキニル基、炭素数1〜6のカルバモイル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換の5〜8員環のアリール基、置換もしくは無置換の5〜8員環のヘテロ環である場合が好ましく、その中でも、水素原子、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数1〜4のカルバモイル基、総炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換の5〜8員環のアリール基である場合が更に好ましく、特に、水素原子、メチル基、置換もしくは無置換の5〜6員環のアリール基である場合が最も好ましい。
【0145】
(ニ)Rは水素原子、1価の置換基である場合が好ましく、その中でも、水素原子、メチル基、エチル基、エテニル基、エチニル基である場合が更に好ましく、特に、水素原子である場合が最も好ましい。
【0146】
(ホ)Zは、シアノ基、炭素数2〜6のアシル基、炭素数2〜6のアシルオキシ基、炭素数1〜8のカルバモイル基、炭素数2〜8のアルキルオキシカルボニル基、炭素数7〜12のアリールオキシカルボニル基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキルスルフイニル基、炭素数6〜10のアリールスルフイニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数6〜10のアリールスルホニル基、炭素数0〜9のスルファモイル基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜6のハロゲン化アリール基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキルオシキ基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキルチオ基、炭素数6〜12のハロゲン化アリールオキシ基、5〜8員環のヘテロ環基である場合が好ましく、その中でも、シアノ基、炭素数2〜8のアルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数6〜10のアリールスルホニル基、炭素数0〜8のスルファモイル基である場合が好ましく、最も好ましいのはシアノ基である。
【0147】
(へ)Xはヘテロ原子であることが好ましく、中でも窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子である場合が更に好ましく、特に、窒素原子、酸素原子、硫黄原子である場合が好ましく、窒素原子である場合が最も好ましい。
【0148】
(ト)Gは、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環である場合が好ましく、Gが5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環を表す場合、単環または縮合環である。また、Gが更に置換基を有することができる場合、置換基を有していても無置換であっても良い。Gが5員環の不飽和へテロ環を表す場合、環内に窒素原子を2つ以上有する。更に、置換もしくは無置換の5〜8員環の芳香族ヘテロ環である場合が更に好ましく、Gが5〜8員環の芳香族ヘテロ環を表す場合、単環または縮合環であり、Gが5員環の芳香族ヘテロ環を表す場合、環内に窒素原子を2つ以上有する。特に、置換もしくは無置換の6員環の芳香族ヘテロ環である場合が好ましく、下記一般式(3)中の(3)−1から(3)−6で表される置換基群のいずれかから選ばれる場合が最も好ましい。
【0149】
【化18】

【0150】
〜R23はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、アミノ基、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数1〜5のアシル基、炭素数2〜4のアルケニル基、炭素数2〜4のアルキニル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基、炭素数1〜8のアルキルアミノ基、炭素数2〜5のアルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜5のアミド基、炭素数7〜10のアラルキル基、5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環である。R〜R23が5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環あるいはヘテロ環を表す場合、単環または縮合環である。また、R〜R23は置換基を有していてもよい。更に、水素原子、水酸基、アミノ基、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数1〜5のアシル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基、炭素数1〜8のアルキルアミノ基、炭素数2〜5のアルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜5のアミド基である場合が好ましく、その中でも、水素原子、水酸基、アミノ基、メチル基、メチルオキシ基、メチルアミノ基、アセトアミド基である場合が好ましい。
〜R21はそれぞれ互いに結合を形成しても良く、その場合、R〜R21は5〜7員環の炭化水素環、5〜7員環のヘテロ原子環を形成するのに必要な非金属原子団である場合が好ましく、6員環の芳香族炭化水素環、6員環の芳香族ヘテロ原子環を形成するのに必要な非金属原子団である場合が更に好ましい。
【0151】
本発明は、一般式(4)で表されるアゾ顔料の互変異性体もその範囲に含むものである。一般式(4)は、化学構造上取りうる数種の互変異性体の中から極限構造式の形で示しているが、記載された構造以外の互変異性体であってもよく、複数の互変異性体を含有した混合物として用いても良い。例えば、一般式(4)で表される顔料には、下記一般式(4’)で表されるアゾ−ヒドラゾンの互変異性体が考えられる。
本発明は、一般式(4)で表されるアゾ顔料の互変異性体である以下の一般式(4’)で表される化合物もその範囲に含むものである。
【0152】
【化19】

【0153】
(一般式(4’)中、R、R、R、X、Y、Z、Gは、一般式(4)中のR、R、R、X、Y、Z、Gと同義である。)
【0154】
上記一般式(2)で表されるアゾ顔料は、下記一般式(5)で表されるアゾ顔料であることが好ましい。
【0155】
以下、一般式(5)により表されるアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩または水和物について詳細に説明する。
【0156】
【化20】

【0157】
(一般式(5)中、R’、R’、Y’、Z’はそれぞれ独立に一般式(2)中のR’、R’、Y’、Z’と同義である。Gは5〜6員環の含窒素芳香族ヘテロ環を形成する非金属原子団を表す。Gが5〜6員環の含窒素芳香族ヘテロ環を表す場合、単環または縮合環である。Gは置換基を有していてもよい。Gが5員の含窒素芳香族ヘテロ環を表す場合、環内に窒素原子を2つ以上有する。)
【0158】
以下に前記一般式(5)中のR’、R’、Y’、Z’、Gを更に詳しく説明する。
【0159】
R’、R’、Y’は、それぞれ独立に上記一般式(2)中のR’、R’、Y’の例と同義であり、好ましい例も同じである。
Z’は、上記一般式(1)中のZの例と同義であり、好ましい例も同じである。
【0160】
一般式(5)中、Gは、5〜6員環の含窒素芳香族ヘテロ環である場合が好ましく、Gが5〜6員環の含窒素芳香族ヘテロ環を表す場合、単環または縮合環である。また、Gは更に置換基を有することができる場合、置換基を有していても無置換であっても良い。中でも、置換または無置換の6員環の含窒素芳香族ヘテロ環である場合は更に好ましく、特に、下記一般式(3)中の(3)−1から(3)−6で表される置換基群のいずれかから選ばれる場合が最も好ましい。
【0161】
【化21】

【0162】
一般式(3)中、R〜R23はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、アミノ基、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数1〜5のアシル基、炭素数2〜4のアルケニル基、炭素数2〜4のアルキニル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基、炭素数1〜8のアルキルアミノ基、炭素数2〜5のアルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜5のアミド基、炭素数7〜10のアラルキル基、5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環である。R〜R23が5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環あるいはヘテロ環を表す場合、単環または縮合環である。また、R〜R23は置換基を有していてもよい。更に、水素原子、水酸基、アミノ基、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数1〜5のアシル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基、炭素数1〜8のアルキルアミノ基、炭素数2〜5のアルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜5のアミド基である場合が好ましく、その中でも、水素原子、水酸基、アミノ基、メチル基、メチルオキシ基、メチルアミノ基、アセトアミド基である場合が好ましい。
【0163】
〜R21はそれぞれ互いに結合を形成しても良く、その場合、R〜R21は5〜7員環の炭化水素環、5〜7員環のヘテロ環を形成するのに必要な非金属原子団である場合が好ましく、6員環の芳香族炭化水素環、6員環の芳香族ヘテロ環を形成する場合が更に好ましい。
【0164】
一般式(5)中、Gで表されるヘテロ環基の例には、置換位置を限定しないで例示すると、ピリジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、ピロリル基、インドリル基、フリル基、ベンゾフリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、トリアゾリル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアジアゾリル基、イソオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ピロリジニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、イミダゾリジニル基、スルホラニル基などが挙げられる。
【0165】
中でも、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基である場合は更に好ましく、その中でも、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基である場合は特に好ましい。
【0166】
本発明の一般式(5)で表される顔料の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の基の少なくとも1つが前記の好ましい記である化合物が好ましく、より多くの種々の記が前記の好ましい基である化合物がより好ましく、全ての基が前記の好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0167】
本発明の一般式(5)で表されるアゾ顔料として特に好ましい組み合わせは、以下の(イ)〜(ニ)を含むものである。
【0168】
(イ)R’、R’はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、炭素数2〜4のアルキニル基、炭素数7〜9のアラルキル基、5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環基、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環基である場合が好ましい。R’、R’のいずれかが5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環基、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環基を表す場合は、単環または複合環であり、置換基を有することができる場合、置換基を有していても無置換であっても良い。更に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環基、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環基である場合が好ましく、R’、R’のいずれかが5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環基、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環基を表す場合、単環または縮合環であり、置換基を有することができる場合、置換基を有していても無置換であっても良い。その中でも特に、メチル基、t−ブチル基、置換もしくは無置換の5〜6員環のアリール基、置換もしくは無置換の5〜6員環の芳香族ヘテロ環基である場合が最も好ましい。
【0169】
(ロ)Y’は、水素原子、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、炭素数2〜4のアルキニル基、炭素数7〜9のアラルキル基、5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環基、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環基である場合が好ましい。Y’が5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環基、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環基を表す場合は、単環または縮合環であり、置換基を有することができる場合、置換基を有していても無置換であっても良い。その中でも、水素原子、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基、5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環基、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環基である場合が更に好ましい。Y’が5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環基、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環基を表す場合は、単環または縮合環であり、置換基を有することができる場合、置換基を有していても無置換であっても良い。その中でも特に、水素原子、メチル基、t−ブチル基、置換もしくは無置換の6員環の芳香族炭化水素環基、置換もしくは無置換の6員環の芳香族ヘテロ環基である場合が好ましい。
【0170】
(ハ)Z’は、シアノ基、炭素数2〜6のアシル基、炭素数2〜6のアシルオキシ基、炭素数1〜8のカルバモイル基、炭素数2〜8のアルキルオキシカルボニル基、炭素数7〜12のアリールオキシカルボニル基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキルスルフイニル基、炭素数6〜10のアリールスルフイニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数6〜10のアリールスルホニル基、炭素数0〜9のスルファモイル基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜6のハロゲン化アリール基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキルオシキ基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキルチオ基、炭素数6〜12のハロゲン化アリールオキシ基、5〜8員環のヘテロ環基である場合が好ましく、その中でも、シアノ基、炭素数2〜8のアルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数6〜10のアリールスルホニル基、炭素数0〜8のスルファモイル基である場合が好ましく、最も好ましいのはシアノ基である。
【0171】
(ニ)Gは5〜6員環の含窒素芳香族ヘテロ環である場合が好ましく、Gが5〜6員環の含窒素芳香族ヘテロ環を表す場合、単環または縮合環である。また、Gは置換基を有していてもよい。中でも、置換または無置換の6員環の含窒素芳香族ヘテロ環である場合は更に好ましく、上記一般式(3)中の(3)−1から(3)−6で表される1価の置換基群から選ばれる、いずれかの基である場合が最も好ましい。
一般式(3)中、R〜R23はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、アミノ基、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数1〜5のアシル基、炭素数2〜4のアルケニル基、炭素数2〜4のアルキニル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基、炭素数1〜8のアルキルアミノ基、炭素数2〜5のアルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜5のアミド基、炭素数7〜10のアラルキル基、5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環である。R〜R23が5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環あるいはヘテロ環を表す場合、単環または縮合環である。また、R〜R23は置換基を有していてもよい。更に、水素原子、水酸基、アミノ基、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数1〜5のアシル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基、炭素数1〜8のアルキルアミノ基、炭素数2〜5のアルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜5のアミド基である場合が好ましく、その中でも、水素原子、水酸基、アミノ基、メチル基、メチルオキシ基、メチルアミノ基、アセトアミド基である場合が好ましい。
〜R21がそれぞれ互いに結合を形成してもよく、その場合、R〜R21は5〜7員環の炭化水素環、5〜7員環のヘテロ原子環を形成するのに必要な非金属原子団である場合が好ましく、6員環の芳香族炭化水素環、6員環の芳香族ヘテロ原子環を形成するのに必要な非金属原子団である場合が更に好ましい。
【0172】
本発明は、一般式(5)で表されるアゾ顔料の互変異性体もその範囲に含むものである。一般式(5)は、化学構造上取りうる数種の互変異性体の中から極限構造式の形で示しているが、記載された構造以外の互変異性体であってもよく、複数の互変異性体を含有した混合物として用いても良い。例えば、一般式(5)で表される顔料には、下記一般式(5’)で表されるアゾ−ヒドラゾンの互変異性体が考えられる。
本発明は、一般式(5)で表されるアゾ顔料の互変異性体である以下の一般式(5’)で表される化合物もその範囲に含むものである。
【0173】
【化22】

【0174】
(一般式(5’)中、R’、R’、Y’、Z’、Gは、一般式(5)のR’、R’、Y’、Z’、Gと同義である。)
【0175】
上記一般式(2)で表されるアゾ顔料は、下記一般式(6)で表されるアゾ顔料であることがより好ましい。
【0176】
以下、一般式(6)により表されるアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩または水和物について詳細に説明する。
【0177】
一般式(6):
【0178】
【化23】

【0179】
(一般式(6)中、R’、R’、Y’、Z’は、それぞれ一般式(5)中のR’、R’、Y’、Z’と同義であり、好ましい組み合わせも同じである。Gは6員環の含窒素芳香族ヘテロ環基を形成する非金属原子団を表し、該へテロ環は単環であっても、縮環していても良い。)
【0180】
上記一般式(1)、(2)、(4)、(5)及び(6)で表されるアゾ顔料において多数の互変異性体が考えられる。一般式(1)、(2)、(4)、(5)及び(6)で表されるアゾ顔料のうち、前述したように特に好ましいアゾ顔料の一般式の例としては、上記一般式(6)で表されるアゾ顔料を挙げることができる。
この構造が好ましい要因としては、一般式(6)で示すようにアゾ顔料構造に含有するヘテロ環を構成する窒素原子、水素原子およびヘテロ原子(カルボニル基の酸素原子またはアミノ基の窒素原子)が少なくとも1個以上の分子内の交叉水素結合(分子内水素結合)を容易に形成し易いことが挙げられる。その結果、分子の平面性が上がり、更に分子内・分子間相互作用が向上し、一般式(6)で表されるアゾ顔料の結晶性が高くなり(高次構造を形成し易くなり)、顔料としての要求性能である、光堅牢性、熱安定性、湿熱安定性、耐水性、耐ガス性及びまたは耐溶剤性が大幅に向上するため、最も好ましい例となる。
【0181】
本発明は一般式(2)で表されるアゾ化合物、その互変異性体、それらの塩または水和物にも関する。
【0182】
【化24】

【0183】
(式中、R’、R’、Y’はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、炭素数2〜4のアルキニル基、炭素数1〜5のアシル基、炭素数7〜9のアラルキル基、5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環基、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環基を表す。R’は水素原子または1価の置換基を表す。Z’はハメットのσp値が0.2以上の電子求引性基を表す。Xは炭素原子隣接位のヘテロ原子を表し、Gは5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環を形成する原子団を表す。R’、R’、R’、Y’、Gのいずれかが5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環を表す場合、単環または縮合環を表す。R’、R’、R’、Y’、Gのいずれかが5員環の不飽和のヘテロ環を表す場合、環内に窒素原子を2つ以上有する。)
【0184】
本発明の一般式(2)で表されるアゾ化合物の置換基の例及び好ましい置換基の組み合わせは、一般式(2)で表されるアゾ顔料で挙げたものと同じである。
【0185】
一般式(2)で表されるアゾ化合物は、一般式(2)中のGが、下記一般式(3)−1から(3)−6で表される置換基群のいずれかから選ばれることが好ましい。
【0186】
【化25】


(式中、R〜R23はそれぞれ独立に、水素原子、または置換基を表す。また、R〜R21がそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。)
【0187】
一般式(2)で表されるアゾ化合物において、一般式(3)−1から(3)−6で表される置換基群の例及び好ましい置換基の組み合わせは、一般式(2)で表されるアゾ顔料における一般式(3)−1から(3)−6で挙げたものと同じである。
【0188】
本発明は一般式(4)で表されるアゾ化合物、その互変異性体、それらの塩または水和物にも関する。
【0189】
【化26】

【0190】
(式中、n、R、R、R、Y、Zはそれぞれ独立に一般式(1)中のn、R、R、R、Y、Zと同義であり、Xは炭素原子隣接位のヘテロ原子を表す。Gは5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環を形成する原子団を表し、n=2の場合は、R、R、R、Y、ZまたはGを介した2量体を表す。n=3の場合は、R、R、R、Y、ZまたはGを介した3量体を表す。n=4の場合は、R、R、R、Y、ZまたはGを介した4量体を表す。R、R、R、Y、Gのいずれかが5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環を表す場合、単環または縮合環である。)
【0191】
本発明の一般式(4)で表されるアゾ化合物の置換基の例及び好ましい置換基の組み合わせは、一般式(4)で表されるアゾ顔料で挙げたものと同じである。
【0192】
一般式(4)で表されるアゾ化合物は、一般式(4)中のGが下記一般式(3)中の(3)−1から(3)−6で表される1〜3価の置換基群から選ばれる、いずれかの基であることが好ましい。
【0193】
【化27】

【0194】
(式中、R〜R23はそれぞれ独立に、水素原子、または置換基を表す。また、R〜R21がそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。)
【0195】
一般式(4)で表されるアゾ化合物において、一般式(3)−1から(3)−6で表される置換基群の例及び好ましい置換基の組み合わせは、一般式(4)で表されるアゾ顔料における一般式(3)−1から(3)−6で挙げたものと同じである。
【0196】
本発明の一般式(2)及び一般式(4)で表されるアゾ化合物の塩、水和物及びその互変異性としては本発明のアゾ顔料の塩、水和物及びその互変異性と同様のものを挙げることができる。
本発明の新規なアゾ化合物は、アゾ顔料として有用である。また、本発明の分散物は一般式(2)又は(4)で表されるアゾ化合物の互変異性体、それらの塩または水和物を少なくとも1種含むことが好ましい。
【0197】
前記一般式(1)、(2)、(4)、(5)、(6)で表されるアゾ顔料および顔料分散体の具体例、及び、一般式(2)、(4)で表されるアゾ化合物を以下に示すが、本発明に用いられるアゾ顔料および顔料分散体、並びに、アゾ化合物は下記の例に限定されるものではない。
【0198】
また、以下の具体例の構造は化学構造上取りうる数種の互変異性体の中から極限構造式の形で示されるが、記載された構造以外の互変異性体構造のものであっても良いことは言うまでもない。
【0199】
【化28】

【0200】
【化29】

【0201】
【化30】

【0202】
【化31】

【0203】
本発明の一般式(1)、(2)、(4)、(5)及び(6)で表される顔料は、化学構造式が一般式(1)、(2)、(4)、(5)若しくは(6)又はその互変異性体であれば良く、多形とも呼ばれるいかなる結晶形態の顔料であっても良い。
【0204】
結晶多形は、同じ化学組成を有するが、結晶中におけるビルディングブロック(分子又はイオン)の配置が異なることを言う。結晶構造によって化学的及び物理的性質が決定され、各多形は、レオロジー、色、及び他の色特性によってそれぞれ区別することができる。また、異なる多形は、X-Ray Diffraction(粉末X線回折測定結果)やX-Ray Analysis(X線結晶構造解析結果)によって確認することもできる。本発明の一般式(1)、(2)、(4)、(5)及び(6)で表される顔料に結晶多形が存在する場合、どの多形であってもよく、また2種以上の多形の混合物であっても良いが、結晶型が単一のものを主成分とすることが好ましい。すなわち結晶多形が混入していないものが好ましく、単一の結晶型を有するアゾ顔料の含有量はアゾ顔料全体に対し70%〜100%、好ましくは80%〜100%、より好ましくは90%〜100%、更に好ましくは95%〜100、特に好ましくは100%である。単一の結晶型を有するアゾ顔料を主成分とすることで、色素分子の配列に対して規則性が向上し、分子内・分子間相互作用が強まり高次な3次元ネットワークを形成しやすくなる。その結果として色相の向上・光堅牢性・熱堅牢性・湿度堅牢性・酸化性ガス堅牢性及び耐溶剤性等、顔料に要求される性能の点で好ましい。
アゾ顔料における結晶多形の混合比は、単結晶X線結晶構造解析、粉末X線回折(XRD)、結晶の顕微鏡写真(TEM)、IR(KBr法)等の固体の物理化学的測定値から確認できる。
【0205】
上述した互変異性および/または結晶多形の制御は、カップリング反応の際の製造条件で制御することができる。
【0206】
また、本発明において一般式(1)、(2)、(4)、(5)及び(6)で表されるアゾ顔料は、酸基のある場合には、酸基の一部あるいは全部が塩型のものであってもよく、塩型の顔料と遊離酸型の顔料が混在していてもよい。上記の塩型の例としてNa、Li、K等のアルカリ金属の塩、アルキル基もしくはヒドロキシアルキル基で置換されていてもよいアンモニウムの塩、又は有機アミンの塩が挙げられる。有機アミンの例として、低級アルキルアミン、ヒドロキシ置換低級アルキルアミン、カルボキシ置換低級アルキルアミン及び炭素数2〜4のアルキレンイミン単位を2〜10個有するポリアミン等が挙げられる。これらの塩型の場合、その種類は1種類に限られず複数種混在していてもよい。
【0207】
更に、本発明で使用する顔料の構造において、その1分子中に酸基が複数個含まれる場合は、その複数の酸基は塩型あるいは酸型であり互いに異なるものであってもよい。
【0208】
本発明において、前記一般式(1)、(2)、(4)、(5)及び(6)で表されるアゾ顔料は、結晶中に水分子を含む水和物であっても良い。
【0209】
以下に、本発明のアゾ顔料の合成に関して詳細に説明する。
【0210】
本発明のアゾ顔料は、例えば、一般式(7)のジアゾ成分から既知の方法により調製したジアゾニウム塩を一般式(8)のカップリング成分とアゾカップリング反応させることにより合成できる。
【0211】
【化32】

【0212】
上記一般式(7)中、Y、Z、Gはそれぞれ上記一般式(1)中のY、Z、Gと同義である。
【0213】
【化33】

【0214】
上記一般式(8)中、R、R、Rはそれぞれ上記一般式(1)中のR、R、Rと同義である。
【0215】
上記一般式(7)のアミノ体で表されるヘテロ環アミン(ジアゾ成分)は、市販品で入手することができるものもあるが、一般的には公知慣用の方法、例えば特許第4022271号公報、に記載の方法で製造することができる。ヘテロ環アミンのジアゾニウム塩化反応は例えば、硫酸、リン酸、酢酸などの酸性溶媒中、亜硝酸ナトリウム、ニトロシル硫酸、亜硝酸イソアミル等の試薬と15℃以下の温度で10分〜6時間程度反応させることで行うことができる。カップリング反応は、上述の方法で得られたジアゾニウム塩と上記一般式(8)で表される化合物とを40℃以下、好ましくは25℃以下で10分〜12時間程度反応させることで行うことができる。
一般式(1)及び一般式(4)のnが2以上の場合の合成方法は、一般式(7)または一般式(8)のR〜R、Y、Z、G等において、置換可能な2価、3価あるいは4価の置換基を導入した原料を合成し、前記スキームと同様に合成することができる。
このようにして反応させたものは、結晶が析出しているものもあるが、一般的には反応液に水、あるいはアルコール系溶媒を添加し、結晶を析出させ、結晶を濾取することができる。また、反応液にアルコール系溶媒、水等を添加して結晶を析出させて、析出した結晶を濾取することができる。濾取した結晶を必要に応じて洗浄・乾燥して、一般式(1)で表されるアゾ顔料を得ることができる。
【0216】
一般式(2)、(5)及び(6)の合成方法は、上記説明において、上記一般式(7)のY、Z、Gを、それぞれ、Y’、Z’、G(又はG、G)と読み替えるとともに、上記一般式(8)のR、R、Rを、それぞれ、R’、R’、R’に読み替えるものとする(ここで、R’、R’、R’3、Y’、Z’、G、G、Gはそれぞれ上記一般式(2)、(5)及び(6)中のR’、R’、R’3、Y’、Z’、G、G、Gと同義である)。
【0217】
上記の製造方法によって上記一般式(1)、(2)、(4)、(5)、及び(6)で表される化合物は粗顔料として得られるが、本発明の顔料分散物として用いる場合、後処理を行うことが望ましい。この後処理の方法としては、例えば、ソルベントソルトミリング、ソルトミリング、ドライミリング、ソルベントミリング、アシッドペースティング等の摩砕処理、溶媒加熱処理などによる顔料粒子制御工程、樹脂、界面活性剤および分散剤等による表面処理工程が挙げられる。
【0218】
本発明の一般式(1)、(2)、(4)、(5)、及び(6)で表される化合物は後処理として溶媒加熱処理を行うことが好ましい。溶媒加熱処理に使用される溶媒としては、例えば、水、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、クロロホルム、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の極性非プロトン性有機溶媒、氷酢酸、ピリジン、またはこれらの混合物等が挙げられる。これらの後処理によって顔料の平均粒子形を0.01μm〜1μmに調整することが好ましい。
【0219】
上記の製造方法によって、上記一般式(1)、(2)、(4)、(5)及び(6)で表される化合物は粗アゾ顔料(クルード)として得られるが、本発明の顔料として用いる場合、後処理を行うことが望ましい。この後処理の方法としては、例えば、ソルベントソルトミリング、ソルトミリング、ドライミリング、ソルベントミリング、アシッドペースティング等の磨砕処理、溶媒加熱処理などによる顔料粒子制御工程、樹脂、界面活性剤および分散剤等による表面処理工程が挙げられる。
【0220】
本発明の一般式(1)、(2)、(4)、(5)及び(6)で表される化合物は後処理として溶媒加熱処理および/またはソルベントソルトミリングを行うことが好ましい。
溶媒加熱処理に使用される溶媒としては、例えば、水、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、イソプロパノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の極性非プロトン性有機溶媒、氷酢酸、ピリジン、またはこれらの混合物等が挙げられる。上記で挙げた溶媒に、さらに無機または有機の酸または塩基を加えても良い。溶媒加熱処理の温度は所望する顔料の一次粒子径の大きさによって異なるが、40〜150℃が好ましく、60〜100℃がさらに好ましい。また、処理時間は、30分〜24時間が好ましい。ソルベントソルトミリングとしては、例えば、粗アゾ顔料と、無機塩と、それを溶解しない有機溶剤とを混練機に仕込み、その中で混練磨砕を行うことが挙げられる。上記無機塩としては、水溶性無機塩が好適に使用でき、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を用いることが好ましい。また、平均粒子径0.5〜50μmの無機塩を用いることがより好ましい。当該無機塩の使用量は、粗アゾ顔料に対して3〜20質量倍とするのが好ましく、5〜15質量倍とするのがより好ましい。有機溶剤としては、水溶性有機溶剤が好適に使用でき、混練時の温度上昇により溶剤が蒸発し易い状態になるため、安全性の点から高沸点溶剤が好ましい。このような有機溶剤としては、例えばジエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングルコール、液体ポリプロピレングリコール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2ー(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールまたはこれらの混合物が挙げられる。当該水溶性有機溶剤の使用量は、粗アゾ顔料に対して0.1〜5質量倍が好ましい。混練温度は、20〜130℃が好ましく、40〜110℃が特に好ましい。混練機としては、例えばニーダーやミックスマーラー等が使用できる。
【0221】
〔顔料分散物〕
本発明の顔料分散物は、前記一般式(1)、(2)、(4)、(5)及び(6)で表されるアゾ顔料、互変異性体、その塩または水和物の少なくとも1種を含むことを特徴とする。これにより、色彩的特性、耐久性および分散安定性に優れた顔料分散物とすることができる。
【0222】
本発明の顔料分散物は、水系であっても非水系であっても良いが、水系の顔料分散物であることが好ましい。本発明の水系顔料分散物において顔料を分散する水性の液体は、水を主成分とし、所望により親水性有機溶剤を添加した混合物を用いることができる。前記親水性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートトリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコール誘導体、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン等のアミン、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。
【0223】
さらに、本発明の水系顔料分散物には水性樹脂を含んでいても良い。水性樹脂としては、水に溶解する水溶解性の樹脂、水に分散する水分散性の樹脂、コロイダルディスバーション樹脂、またはそれらの混合物が挙げられる。水性樹脂としては具体的には、アクリル系、スチレン−アクリル系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、フッ素系等の樹脂が挙げられる。
【0224】
さらに、顔料の分散および画質の品質を向上させるため、界面活性剤および分散剤を用いてもよい。界面活性剤としては、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両イオン性の界面活性剤が挙げられ、いずれの界面活性剤を用いても良いが、アニオン性、または非イオン性の界面活性剤を用いるのが好ましい。アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩,アルキル硫酸エステル塩,アルキルベンゼンスルホン酸塩,アルキルナフタレンスルホン酸塩,ジアルキルスルホコハク酸塩,アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩,アルキルリン酸塩,ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩,ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩,ナフタレンスルホン酸フォルマリン縮合物,ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩,グリセロールボレイト脂肪酸エステル,ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0225】
ノニオン性界面活性剤としては,例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル,ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー,ソルビタン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル,グリセリン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンアルキルアミン,フッ素系,シリコン系等が挙げられる。
【0226】
非水系顔料分散物は、前記一般式(1)、(2)、(4)、(5)、(6)で表される顔料を非水系ビヒクルに分散してなるものである。非水系ビヒクルに使用される樹脂は、例えば、石油樹脂、カゼイン、セラック、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、環化ゴム、塩化ゴム、酸化ゴム、塩酸ゴム、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、乾性油、合成乾性油、スチレン/マレイン酸樹脂、スチレン/アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂塩素化ポリプロピレン、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂等が挙げられる。非水系ビヒクルとして、光硬化性樹脂を用いてもよい。
【0227】
また、非水系ビヒクルに使用される溶剤としては、例えば、例えば、トルエンやキシレン、メトキシベンゼン等の芳香族系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル系溶剤、エトキシエチルプロピオネート等のプロピオネート系溶剤、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクタム、N−メチル−2−ピロリドン、アニリン、ピリジン等の窒素化合物系溶剤、γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、カルバミン酸メチルとカルバミン酸エチルの48:52の混合物のようなカルバミン酸エステル等が挙げられる。
【0228】
本発明の顔料分散物は、上記のアゾ顔料および水系または非水径の媒体とを、分散装置を用いて分散することで得られる。使用できる分散装置としては、例えば、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、ロールミル、ジェットミル、アトライター、超音波分散機、ディスパー等が挙げられる。
【0229】
本発明において、顔料分散物に含まれる顔料の体積平均粒子径は10nm以上250nm以下であることが好ましい。なお、顔料粒子の体積平均粒子径とは、顔料そのものの粒子径、または色材に分散剤等の添加物が付着している場合には、添加物が付着した粒子径をいう。本発明において、顔料の体積平均粒子径の測定装置には、ナノトラックUPA粒度分析計(UPA−EX150;日機装社製)を用いた。その測定は、顔料分散物3mlを測定セルに入れ、所定の測定方法に従って行った。なお、測定時に入力するパラメーターとしては、粘度にはインク粘度を、分散粒子の密度には顔料の密度を用いた。
【0230】
より好ましい体積平均粒子径は、20nm以上250nm以下であり、更に好ましくは20nm以上230nm以下である。顔料分散物中の粒子の数平均粒子径が10nm未満である場合には、保存安定性が確保できない場合が存在し、一方、250nmを超える場合には、光学濃度が低くなる場合が存在する。
【0231】
本発明の顔料分散物に含まれる顔料の濃度は、1〜35質量%の範囲であることが好ましく、2〜25質量%の範囲であることがより好ましい。濃度が1質量%に満たないと、インクとして顔料分散物を単独で用いるときに十分な画像濃度が得られない場合がある。濃度が35質量%を超えると、分散安定性が低下する場合がある。
【0232】
本発明のアゾ化合物を含有する分散物も、顔料分散物を構成する上述の成分を同様に含むことができ、分散物に含まれるアゾ化合物の好ましい濃度も顔料分散物で記載したものと同様である。
【0233】
本発明のアゾ顔料及びアゾ化合物の用途としては、画像、特にカラー画像を形成するための画像記録材料が挙げられ、具体的には、以下に詳述するインクジェット方式記録材料を始めとして、感熱記録材料、感圧記録材料、電子写真方式を用いる記録材料、転写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インク、記録ペン等があり、好ましくは、インクジェット方式記録材料、感熱記録材料、電子写真方式を用いる記録材料であり、更に好ましくは、インクジェット方式記録材料である。
【0234】
また、CCDなどの固体撮像素子やLCD、PDP等のディスプレーで用いられるカラー画像を記録・再現するためのカラーフィルター、各種繊維の染色のための染色液にも適用できる。
【0235】
〔着色組成物〕
本発明の着色組成物は、少なくとも一種の本発明のアゾ顔料またはアゾ化合物を含有する着色組成物を意味する。本発明の着色組成物は、媒体を含有させることができるが、媒体として溶媒を用いた場合は特にインクジェット記録用インクとして好適である。本発明の着色組成物は、媒体として、親油性媒体や水性媒体を用いて、それらの中に、本発明のアゾ顔料を分散させることによって作製することができる。好ましくは、水性媒体を用いる場合である。本発明の着色組成物には、媒体を除いたインク用組成物も含まれる。本発明の着色組成物は、必要に応じてその他の添加剤を、本発明の効果を害しない範囲内において含有しうる。その他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤(特開2003−306623号公報に記載)が挙げられる。これらの各種添加剤は、水系インクの場合にはインク液に直接添加する。油系インクの場合には、アゾ顔料分散物の調製後分散物に添加するのが一般的であるが、調製時に油相又は水相に添加してもよい。
【0236】
〔インクジェット記録用インク〕
次に、本発明のインクジェット記録用インクについて説明する。
本発明のインクジェット記録用インク(以下、「インク」という場合がある)は、上記で説明した分散物を用いる。好ましくは、水溶性溶媒、水等を混合して調整される。ただし、特に問題が無い場合は、前記本発明の分散物をそのまま用いても良い。
【0237】
本発明のインク中の分散物の含有割合は、記録媒体上に形成した画像の色相、色濃度、再度、透明性等を考慮すると、1〜100質量%の範囲が好ましく3〜20質量%の範囲が特に好ましく、その中でも3〜10質量%の範囲が最も好ましい。
【0238】
本発明のインク100質量部中に、本発明のアゾ顔料またはアゾ化合物を0.1質量部以上20質量部以下含有するのが好ましく、0.2質量部以上10質量部以下含有するのがより好ましく、1〜10質量部含有するのがさらに好ましい。また、本発明のインクには、本発明の顔料とともに、他の顔料を併用してもよい。2種類以上の顔料を併用する場合は、顔料の含有量の合計が前記範囲となっているのが好ましい。
【0239】
本発明のインクは、単色の画像形成のみならず、フルカラーの画像形成に用いることができる。フルカラー画像を形成するために、マゼンタ色調インク、シアン色調インク、及びイエロー色調インクを用いることができ、また、色調を整えるために、更にブラック色調インクを用いてもよい。
【0240】
さらに、本発明におけるインクは、上記本発明における顔料の他に別の顔料を同時に用いることが出来る。適用できるイエロー顔料(例えば、C.I.P.Y.−74、C.I.P.Y.−128、C.I.P.Y.−155、C.I.P.Y.−213)、適用できるマゼンタ顔料(C.I.P.V.−19、C.I.P.R.−122)適用できるシアン顔料(C.I.P.B.−15:3、C.I.P.B.−15:4)として、各々任意のものを使用する事が出来る。適用できる黒色材としては、ジスアゾ、トリスアゾ、テトラアゾ顔料のほか、カーボンブラックの分散体を挙げることができる。
【0241】
本発明のインクジェット記録用インクに用いられる水溶性溶媒としては、多価アルコール類、多価アルコール類誘導体、含窒素溶媒、アルコール類、含硫黄溶媒等が使用される。
具体例としては、多価アルコール類では、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン等が挙げられる。
【0242】
前記多価アルコール誘導体としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0243】
また、前記含窒素溶媒としては、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等が、アルコール類としてはエタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類が、含硫黄溶媒としては、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルフォラン、ジメチルスルホキシド等が各々挙げられる。その他、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等を用いることもできる。
【0244】
本発明に使用される水溶性溶媒は、単独で使用しても、2種類以上混合して使用しても構わない。水溶性溶媒の含有量としては、インク全体の1質量%以上60質量%以下、好ましくは、5質量%以上40質量%以下で使用される。インク中の水溶性溶媒量が1質量%よりも少ない場合には、十分な光学濃度が得られない場合が存在し、逆に、60質量%よりも多い場合には、液体の粘度が大きくなり、インク液体の噴射特性が不安定になる場合が存在する。
【0245】
本発明のインクジェット記録用インクの好ましい物性は以下の通りである。インクの表面張力は、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは、20mN以上45mN/m以下であり、更に好ましくは、25mN/m以上35mN/m以下である。表面張力が20mN/m未満となると記録ヘッドのノズル面に液体が溢れ出し、正常に印字できない場合がある。一方、60mN/mを超えると、印字後の記録媒体への浸透性が遅くなり、乾燥時間が遅くなる場合がある。
なお、上記表面張力は、前記同様ウイルヘルミー型表面張力計を用いて、23℃、55%RHの環境下で測定した。
【0246】
インクの粘度は、1.2mPa・s以上8.0mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは1.5mPa・s以上6.0mPa・s未満、更に好ましくは1.8mPa・s以上4.5mPa・s未満である。粘度が8.0mPa・sより大きい場合には、吐出性が低下する場合がある。一方、1.2mPa・sより小さい場合には、長期噴射性が悪化する場合がある。なお、上記粘度(後述するものを含む)の測定は、回転粘度計レオマット115(Contraves社製)を用い、23℃でせん断速度を1400s-1として行った。
【0247】
インクには、前記各成分に加えて、上記の好ましい表面張力及び粘度となる範囲で、水が添加される。水の添加量は特に制限は無いが、好ましくは、インク全体に対して、10質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは、30質量%以上80質量%以下である。
【0248】
さらに必要に応じて、吐出性改善等の特性制御を目的とし、ポリエチレンイミン、ポリアミン類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、多糖類及びその誘導体、その他水溶性ポリマー、アクリル系ポリマーエマルション、ポリウレタン系エマルション、親水性ラテックス等のポリマーエマルション、親水性ポリマーゲル、シクロデキストリン、大環状アミン類、デンドリマー、クラウンエーテル類、尿素及びその誘導体、アセトアミド、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等を用いることができる。
【0249】
また、導電率、pHを調整するため、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属類の化合物、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等の含窒素化合物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属類の化合物、硫酸、塩酸、硝酸等の酸、硫酸アンモニウム等の強酸と弱アルカリの塩等を使用することができる。その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、等も添加することができる。
【0250】
〔インクジェット記録方法、インクジェット記録装置、インクジェット記録用インクタンク及び記録物〕
本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインクジェット記録用インクを用い、記録信号に応じて記録ヘッドから記録媒体表面にインクを吐出して、記録媒体表面に画像を形成する方法である。
また、本発明のインクジェット記録装置は、本発明のインクジェット記録用インクを用い、インク(必要により処理液)を記録媒体表面に吐出する記録ヘッドを備え、記録媒体表面に前記インクを記録ヘッドから吐出することにより、画像を形成する装置である。なお、本発明のインクジェット記録装置は、記録ヘッドに、インクを供給することができ、かつ、インクジェット記録装置本体に対して脱着可能なインクジェット記録用インクタンク(以下、「インクタンク」と称す場合がある)を備えていてもよい。この場合、このインクジェット記録用インクタンクには、本発明のインクが収納される。
【0251】
本発明のインクジェット記録装置としては、本発明のインクジェット記録用インクを用いることが可能な印字方式を備えた通常のインクジェット記録装置が利用でき、この他にも、必要に応じてインクのドライングを制御するためのヒーター等を搭載していたり、中間体転写機構を搭載し、中間体にインク及び処理液を吐出(印字)した後、紙等の記録媒体に転写する機構を備えたものであってもよい。
また、本発明のインクジェット記録用インクタンクは、記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置に対して脱着可能であり、インクジェット記録装置に装着した状態で、記録ヘッドにインクを供給できる構成を有するものであれば、従来公知のインクタンクが利用できる。
【0252】
本発明のインクジェット記録方法(装置)は、滲み及び色間滲みの改善効果という観点から熱インクジェット記録方式、または、ピエゾインクジェット記録方式を採用することが好ましい。
熱インクジェット記録方式の場合、吐出時にインクが加熱され、低粘度となっているが、記録媒体上でインクの温度が低下するため、粘度が急激に大きくなる。このため、滲み及び色間滲みに改善効果がある。一方、ピエゾインクジェット方式の場合、高粘度の液体を吐出することが可能であり、高粘度の液体は記録媒体上での紙表面方向への広がりを抑制することが可能となるため、滲み、及び、色間滲みに改善効果がある。
【0253】
本発明のインクジェット記録方法(装置)において、インクの記録ヘッドへの補給(供給)は、インク液体が満たされたインクタンク(必要により処理液タンクを含む)から行われることがよい。このインクタンクは、装置本体に脱着可能なカートリッジ方式であることがよく、このカートリッジ方式のインクタンクを交換することで、インクの補給が簡易に行われる。
【0254】
本発明の記録物は、インクジェットインクを用いることで得られ、上記したインクジェット記録方法を採用することによって、好適に得られる。このような記録物によれば、彩的特性及び耐久性に優れる記録物とすることができる。
【実施例】
【0255】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例中、「部」とは質量部を表す。
〔実施例1〕
【0256】
本発明において一般式(7)で表されるジアゾ成分は、既知の方法(例えばBioorganic & Medicinal Chemistry Letter,14(2004年)2121頁〜2125頁記載の方法)により合成できる。
【0257】
【化34】

【0258】
上記一般式(7)中、Y、Z、Gはそれぞれ上記一般式(1)中のY、Z、Gと同義である。
【0259】
本発明において一般式(8)で表されるカップリング成分は例えば以下のルートで合成できる。
【0260】
【化35】

【0261】
(上記一般式(8)中、R、R、Rはそれぞれ上記一般式(1)中のR、R、Rと同義である。)
【0262】
【化36】

【0263】
化合物(12)の合成
室温にて3−アミノクロトンニトリル(11)58.6部をエタノール310部(あるいはml)に溶解し、含水ヒドラジン35.7部を加え室温にて攪拌した。内温65℃に加温して攪拌を12時間行った。室温に冷却した後、減圧下溶媒を留去し、褐色油状化合物(12)を69.0部得た。
H NMR(400MHz in CDCl3; δppm; J Hz) 2.20 (3H, s), 5.42 (1H, s)MALDI-TOF-MS: 98.1 [M+H+]
【0264】
化合物(14)の合成
室温にて化合物(12)50部をメタノール400部に溶解した。別に、室温にて化合物(13)60.3部をメタノール300部に溶解し、氷冷して内温を5℃以下に保ち、上述の化合物(12)のメタノール溶液を、内温を5℃以下に保ちながら1時間かけて滴下した。滴加が完了した後、室温にて3時間攪拌した。別に、室温にて塩化ヒドロキシルアンモニウム43部をメタノール120部に懸濁させ、氷冷して内温を5℃以下にした。内温を10℃以下に保ちながら28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液120部を40分かけて滴加した。滴加が完了し、10℃以下で30分攪拌した後、室温に昇温して30分攪拌し、析出した固体をろ別してヒドロキシルアミンのメタノール溶液を得た。上述の化合物(12)と化合物(13)の反応溶液を氷冷して内温を5℃以下にした後、内温を15℃以下に保ちながら上述のヒドロキシルアミンのメタノール溶液を1時間かけて滴加し、滴加が完了した後、室温に昇温してさらに2時間攪拌した。析出した固体をろ過し、水100部、酢酸エチル100部を用いてかけ洗いし、室温にて12時間乾燥し、白色固体として化合物(14)を47部得た。
H NMR(400MHz in DMSO-d6; δppm; J Hz) 1.90 (3H, s), 2.15 (3H, s), 5.68 (1H,s), 7.57 (1H, s), 9.50 (1H, s)MALDI-TOF-MS: 155.1 [M+H+]
【0265】
化合物(15)の合成
室温にて化合物(14)47部をアセトニトリル700部に懸濁させ、氷冷して内温を5℃以下にした。内温を10℃以下に保ち、塩化p-トルエンスルホニル64部を少しずつ加えた。発熱が収まった後、内温を10℃以下に保ちながらトリエチルアミン46.5mlを30分かけて滴加し、さらに20分間同温度にて攪拌した後、室温に昇温してさらに2時間攪拌した。別に、飽和食塩水1500部を内温が10℃以下になるように氷冷して用意し、そこに上述の反応溶液を注ぎ込んだ。同温度にて1時間静置した後、析出した結晶をろ過して、10℃以下の冷水200部、酢酸エチル150部を用いてかけ洗いし、白色固体を得た。
得られた固体を室温にてメタノール1000部に懸濁させ、内温を65℃に加温して1時間攪拌した。室温に冷却し、減圧下溶媒を留去し、油状物を得た後、氷冷した。別に、飽和炭酸水素ナトリウム30部を水300部に溶解し、氷冷下、上述の油状物に少しずつ加えた。析出した結晶を水100部、酢酸エチル100部でかけ洗いし、室温にて12時間乾燥し、黄色固体として化合物(15)を18.3部得た。
H NMR(400MHz in DMSO-d6; δppm; J Hz) 2.20 (3H, s), 2.35 (3H, s), 5.48 (1H,s)MALDI-TOF-MS: 137.1 [M+H+]
【0266】
〔実施例2〕
具体的化合物例(2)−1
具体的化合物例(2)−1の合成は、以下のルートで合成した。
【0267】
【化37】

【0268】
顔料(2)−1の合成
1.7部の化合物(16)を21部のリン酸に室温にて加え、加温して内温を60℃にして溶解させた。この溶液を氷冷して内温を−5〜0℃を保ち亜硝酸ナトリウム0.8部を加えて、同温度にて1時間攪拌し、ジアゾニウム塩溶液を得た。別に化合物(15)1部をメタノール50部に懸濁させ、氷冷して内温を5℃以下に保ち、この中に上述のジアゾニウム塩溶液を内温が5℃以下となるように徐々に加えた。同温度にて1時間攪拌した後、氷浴をはずし室温で1時間攪拌した。析出した結晶を濾別し、メタノール50部かけ洗いし、更に水で充分にかけ洗いした。得られた結晶を乾燥せずにメタノール30部、水15部に加え、内温を60℃以上に加温して攪拌を3時間行った。その後、空冷下1時間攪拌し内温を室温に冷却した後、析出した結晶を濾別し、メタノール30部で洗浄した。12時間室温にて結晶を乾燥し、本発明の顔料(2)−1を2.3部を得た。収率93.2%。顔料(2)−1の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図1に示す。
【0269】
〔実施例3〕
具体的化合物例(2)−2
具体的化合物例(2)−2の合成は、以下のルートで合成した。
【0270】
【化38】

【0271】
顔料(2)−2の合成
1.7部の化合物(17)を室温にて20部のリン酸に加えて、加温して内温を60℃にして溶かした。この溶液を氷冷して内温−5〜0℃を保ち亜硝酸ナトリウム0.8部を分割して加えて同温度にて1時間攪拌し、ジアゾニウム塩溶液を得た。別に化合物(15)1部をメタノール50部に加えて懸濁液を用意し、氷冷して内温を5℃以下に保ち、この中に上述のジアゾニウム塩溶液を内温が5℃以下となるように徐々に加えた。同温度にて1時間攪拌した後、氷浴をはずし室温で1時間攪拌した。析出した結晶を濾別し、メタノール50部でかけ洗いし、更に水で充分にかけ洗いした。得られた結晶を乾燥せずにメタノール30部、水15部に加え、内温65℃過熱攪拌を3時間行った。その後、空冷下1時間攪拌し内温を室温に冷却した後、析出した結晶を濾別し、メタノール30部で洗浄した。12時間室温にて結晶を乾燥し、本発明の顔料(2)−2を1.9部を得た。収率77.5%。顔料(2)−2の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図2に示す。
【0272】
〔実施例4〕
具体的化合物例(2)−3
具体的化合物例(2)−3の合成は、以下のルートで合成した。
【0273】
【化39】

【0274】
顔料(2)−3の合成
1.0部の化合物(16)を室温にて12部のリン酸に加えて、加温して内温を60℃にして溶かした。この溶液を氷冷して内温を−5〜0℃を保ち亜硝酸ナトリウム0.5部を加えて同温度にて1時間攪拌させ、ジアゾニウム塩溶液を得た。別に化合物(18)0.8部をメタノール40部に懸濁させ、氷冷して内温を5℃以下に保ち、この中に上述のジアゾニウム塩溶液を内温が5℃以下となるように徐々に加えた。同温度にて1時間攪拌した後、氷浴をはずし室温で1時間攪拌した。析出した結晶を濾別し、メタノール50部かけ洗いし、更に水で充分にかけ洗いした。得られた結晶を乾燥せずにメタノール30部、水15部に加え、内温65℃にて過熱攪拌を3時間行った。その後、空冷下1時間攪拌し内温を室温に冷却した後、析出している結晶を濾別し、メタノール30部で洗浄した。12時間室温にて結晶を乾燥し、本発明の顔料(2)−3を1.2部を得た。収率79.2%。顔料(2)−3の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図3に示す。
【0275】
〔実施例5〕
具体的化合物例(2)−5
具体的化合物例(2)−5の合成は、以下のルートで合成した。
【0276】
【化40】

【0277】
顔料(2)−5の合成
1.3部の化合物(16)を室温にて16部のリン酸に加えて、加温して内温を60℃にして溶かした。この溶液を氷冷して内温を−5〜0℃に保ち亜硝酸ナトリウム0.6部を分割して加え、同温度にて1時間攪拌し、ジアゾニウム塩溶液を得た。別に化合物(19)1.2部をメタノール60部に加えて懸濁液を用意し、氷冷して内温を5℃以下に保ち、この中に上述のジアゾニウム塩溶液を内温が5℃以下となるように徐々に加えた。同温度にて1時間攪拌した後、氷浴をはずし室温で1時間攪拌した。析出した結晶を濾別し、メタノール50部かけ洗いし、更に水で充分にかけ洗いした。得られた結晶を乾燥せずにメタノール30部、水15部に加え、内温65℃にて過熱攪拌を3時間行った。その後、空冷下1時間攪拌し室温に冷却した後、析出している結晶を濾別し、メタノール30部で洗浄した。12時間室温にて結晶を乾燥し、本発明の顔料(2)−5を1.6部を得た。収率69.1%。顔料(2)−5の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図4に示す。
【0278】
〔実施例6〕
具体的化合物例(2)−6
具体的化合物例(2)−6の合成は、以下のルートで合成した。
【0279】
【化41】

【0280】
顔料(2)−6の合成
1.1部の化合物(16)を室温にて14部のリン酸に加えて、加温して内温を60℃にして溶かした。この溶液を氷冷して内温を−5〜0℃に保ち亜硝酸ナトリウム0.6部を分割して加えて同温度にて1時間攪拌し、ジアゾニウム塩溶液を得た。別に化合物(20)1.4部をメタノール70部に加えて懸濁液を用意し、氷冷して内温を5℃以下に保ち、この中に上述のジアゾニウム塩溶液を内温が5℃以下となるように徐々に加えた。同温度にて1時間攪拌した後、氷浴をはずし室温で1時間攪拌した。析出した結晶を濾別し、メタノール50部かけ洗いし、更に水で充分にかけ洗いした。得られた結晶を乾燥せずにメタノール30部、水15部に加え、内温65℃にて過熱攪拌を3時間行った。その後、空冷下1時間攪拌し室温に冷却した後、析出している結晶を濾別し、メタノール30部で洗浄した。12時間室温で結晶を乾燥し、本発明の顔料(2)−6を0.7部を得た。収率50.4%。顔料(2)−6の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図5に示す。
【0281】
〔実施例7〕
具体的化合物例(2)−7
具体的化合物例(2)−7の合成は、以下のルートで合成した。
【0282】
【化42】

【0283】
顔料(2)−7の合成
1.1部の化合物(16)を室温にて14部のリン酸に加えて、加温して内温60℃で溶かした。この溶液を氷冷して内温を−5〜0℃に保ち亜硝酸ナトリウム0.6部を分割して加えて同温度にて1時間攪拌し、ジアゾニウム塩溶液を得た。別に化合物(21)1.5部をメタノール60部に加えて懸濁液を用意し、氷冷して内温を5℃以下に保ち、この中に上述のジアゾニウム塩溶液を内温が5℃以下となるように徐々に加えた。同温度にて1時間攪拌した後、氷浴をはずし室温で1時間攪拌した。析出した結晶を濾別し、メタノール50部かけ洗いし、更に水で充分にかけ洗いした。得られた結晶を乾燥せずにメタノール30部、水15部に加え、内温65℃にて過熱攪拌を3時間行った。その後、空冷下1時間攪拌し室温に冷却した後、析出した結晶を濾別し、メタノール30部で洗浄した。12時間室温にて結晶を乾燥し、本発明の顔料(2)−7を1.5部を得た。収率60.0%。顔料(2)−7の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図6に示す。
【0284】
〔実施例8〕
具体的化合物例(2)−8
具体的化合物例(2)−8の合成は、以下のルートで合成した。
【0285】
【化43】

【0286】
顔料(2)−8の合成
1.1部の(16)を室温にて14部のリン酸に加えて、加温して内温60℃で溶かした。この溶液を氷冷して内温を−5〜0℃に保ち亜硝酸ナトリウム0.6部を分割して加えて同温度にて1時間攪拌し、ジアゾニウム塩溶液を得た。別に化合物(22)1.4部をメタノール60部に加えて懸濁液を用意し、氷冷して内温を5℃以下に保ち、この中に上述のジアゾニウム塩溶液を内温が5℃以下となるように徐々に加えた。同温度にて1時間攪拌した後、氷浴をはずし室温で1時間攪拌した。析出した結晶を濾別し、メタノール50部かけ洗いし、更に水で充分にかけ洗いした。得られた結晶を乾燥せずにメタノール30部、水15部に加え、内温65℃にて過熱攪拌を3時間行った。その後、空冷下1時間攪拌し室温に冷却した後、析出した結晶を濾別し、メタノール30部で洗浄した。12時間室温にて結晶を乾燥し、本発明の顔料(2)−8を1.8部を得た。収率75.2%。
顔料(2)−8の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図7に示す。
【0287】
〔実施例9〕
具体的化合物(2)−14
具体的化合物(2)−14の合成は、以下のルートで合成した。
【0288】
【化44】

【0289】
顔料(2)−14の合成
1.6部の化合物(23)を室温にてリン酸19.5部に加え、加温して内温60℃にて溶かした。この溶液を氷冷して内温−5〜0℃に保ち、亜硝酸ナトリウム0.6部を分割して加え、同温度にて1時間攪拌し、ジアゾニウム塩溶液を得た。別に化合物(15)を1部メタノール40部に加えて懸濁液を用意し、氷冷して内温を5℃以下に保ち、この中に上述のジアゾニウム塩溶液を内温が5℃以下となるように徐々に加え同温度にて1時間攪拌した後、氷浴をはずし室温で1時間攪拌した。析出した結晶を濾別し、メタノール50部かけ洗いし、更に水で充分にかけ洗いした。得られた結晶を乾燥せずにメタノール30部、水15部に加え、内温65℃にて過熱攪拌を3時間行った。その後、空冷下1時間攪拌し室温に冷却した後、析出した結晶を濾別し、メタノール30部で洗浄した。12時間室温にて結晶を乾燥し、本発明の顔料(2)−14を2.1部を得た。収率81.2%。顔料(2)−14の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図8に示す。
【0290】
〔実施例10〕
具体的化合物(2)−21
具体的化合物(2)−21の合成は、以下のルートで合成した。
【0291】
【化45】

【0292】
化合物(2)−21の合成
24部の濃硫酸、49部の酢酸を氷冷し、内温が10℃以下となるように8.2部の化合物(24)を分割して加え、溶かした。この溶液を内温を0〜5℃に保ち15.4部の43質量%ニトロシル硫酸を加えて同温度にて1時間攪拌し、ジアゾニウム塩溶液を得た。別に化合物(15)5部をメタノール200部に加えて懸濁液を用意し、氷冷して内温5℃以下を保ち、この中に上述のジアゾニウム塩溶液を内温5℃以下となるように徐々に加えた。同温度にて1時間攪拌した後、氷浴をはずし室温で1時間攪拌した。析出した固体を濾別し、メタノール50部かけ洗いし、更に水で充分にかけ洗いした。得られた固体を乾燥せずにメタノール50部、水25部に加え、65℃過熱攪拌を3時間行った。その後、空冷下1時間攪拌し室温に冷却した後、析出した結晶を濾別し、メタノール30部で洗浄した。12時間室温にて結晶を乾燥し、本発明の顔料(2)−21を6.5部を得た。収率53.1%。顔料(2)−21の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図9に示す。
【0293】
〔実施例11〕
具体的化合物(2)−41
具体的化合物(2)−41の合成は、以下のルートで合成した。
【化46】

【0294】
中間体(28)の合成
ヒドラジン1水和物387mL(7.98モル)にメタノール298mLを加えて10℃(内温)に冷却し、この混合液に4,6−ジクロロピリミジン149g(1.00モル)を徐々に添加(内温20℃以下)した後、氷浴をはずし、室温まで昇温し、同温度にて30分攪拌した。その後さらに加熱して内温60℃まで昇温し、同温度にて5時間攪拌した。反応終了後、水750mLを加えた後、氷冷して内温が8℃になるまで冷却し、析出した結晶をろ取、水でかけ洗いし、イソプロパノールでかけ洗いした。室温にて36時間乾燥を行い前記中間体(28)を119g(白色粉末、収率84.5%)で得た。得られた中間体(28)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H-NMR(300MHz、d-DMSO)7.80(s,1H), 7.52(s,2H), 5.98(s,1H), 4.13(s,4H)
【0295】
中間体(29)の合成
中間体(28)10g(71.3ミリモル)に、エタノール50mLを加えて室温で攪拌した。この懸濁液にエトキシメチレンマロノニトリル21.8g(178ミリモル)を加え、同温度にて12M塩酸水をpH3になるように滴加した後、内温が80℃になるまで加熱し、同温度にて1.5時間攪拌した。反応終了後、室温まで冷却し、析出した結晶を濾別し、水30ml、イソプロパノール30mlでかけ洗いした。得られた結晶を減圧下60℃にて乾燥し、前記中間体(29)を18.8g(灰色粉末、収率90.3%)得られた中間体(29)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H-NMR(300MHz、d-DMSO)8.94(s,1H), 8.35(s,4H), 8.03(s,2H), 8.01(s,1H)
【0296】
顔料(2)−41の合成
中間体(29)2部にリン酸40部、硫酸10部を加え、内温60℃に加温して30分間攪拌した。この懸濁液を冷却して内温3〜5℃に保ち、亜硝酸ナトリウムを1.2部加え、同温度にて2時間攪拌し、ジアゾニウム塩溶液を得た。この中に化合物(15)を粉体で、内温が5℃以下となるように徐々に加えた。同温度にて1.5時間攪拌した後、氷浴をはずし室温で30分攪拌した。この中にメタノール60mlを加え、30分攪拌した後、この反応液を水200mlに注ぎ込み、室温にて30分攪拌した。析出した結晶をろ取、水100ml、メタノール50mlでかけ洗いした。得られた結晶を乾燥せずにメタノール20ml、水20mlを加え、内温65℃にて過熱攪拌を3時間行った。その後、空冷下1時間攪拌し室温に冷却した後、析出した結晶を濾別し、メタノール30部で洗浄した。12時間室温にて結晶を乾燥し、本発明の顔料(2)−41を3.1部を得た。収率77.3%。顔料(2)−41の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図10に示す。
【0297】
〔比較例1〕
比較化合物(25)
比較化合物(25)の合成は、以下のルートで合成した。
【0298】
【化47】

【0299】
比較化合物(25)の合成
室温にて2.7部の40質量%ニトロシル硫酸を3.9部の濃硫酸、17.2部の酢酸に溶かした。この溶液を氷冷して内温を0〜5℃に保ち、内温が5℃以下となるように1.4部の化合物(26)を分割して加えて同温度にて1時間攪拌し、ジアゾニウム塩溶液を得た。別に化合物(15)1部をメタノール40部に加えて懸濁液を用意し、氷冷して内温5℃以下に保ち、この中に上述のジアゾニウム塩溶液を5℃以下となるように徐々に加えた。同温度にて1時間攪拌した後、氷浴をはずし室温で1時間攪拌した。析出した結晶を濾別し、メタノール50部かけ洗いし、更に水で充分にかけ洗いした。得られた結晶を乾燥せずにメタノール50部、水25部に加え、内温65℃にて過熱攪拌を3時間行った。その後、空冷下1時間攪拌し室温に冷却した後、析出した結晶を濾別し、メタノール30部で洗浄した。12時間室温にて結晶を乾燥し、比較化合物(25)を1.8部を得た。収率75.3%。比較化合物(25)の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図11に示す。
【0300】
〔実施例12〕
実施例2で合成した顔料(2)−1を2.5部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、6時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物1を得た。
【0301】
〔実施例13〕
実施例3で合成した顔料(2)−2を2.5部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、6時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物2を得た。
【0302】
〔実施例14〕
実施例4で合成した顔料(2)−3を2.5部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、6時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物3を得た。
【0303】
〔実施例15〕
実施例5で合成した顔料(2)−5を2.5部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、6時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物4を得た。
【0304】
〔実施例16〕
実施例6で合成した顔料(2)−6を2.5部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、6時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物5を得た。
【0305】
〔実施例17〕
実施例7で合成した顔料(2)−7を2.5部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、6時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物6を得た
【0306】
〔実施例18〕
実施例8で合成した顔料(2)−8を2.5部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、6時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物7を得た。
【0307】
〔実施例19〕
実施例11で合成した顔料(2)−41を2.5部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、6時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物8を得た。
【0308】
〔比較例2〕
実施例12で用いた顔料(2)−1に変えて比較化合物(25)を用いた以外は実施例10と同様に操作を行った。6時間の分散操作後、顔料分散物は得られず、ゲル化していた。
【0309】
〔比較例3〕
実施例12で用いた顔料(2)−1に変えてC.I.ピグメント・イエロー128(チバスペシャリティ社製CROMOPHTAL YELLOW 8GN)を用いた以外は実施例12と同様にして黄色の比較顔料分散物1を得た。
【0310】
〔比較例4〕
実施例12で用いた顔料(2)−1に変えてC.I.ピグメント・イエロー74(チバスペシャリティ社製Iralite YELLOW GO)を用いた以外は実施例11と同様にして黄色の比較顔料分散物2を得た。
【0311】
〔比較例5〕
実施例12で用いた顔料(2)−1に変えてC.I.ピグメント・イエロー155(クラリアント社製INKJET YELLOW 4G VP2532)を用いた以外は実施例11と同様にして黄色の比較顔料分散物3を得た。
【0312】
<耐光性評価>
得られた顔料分散物をNo.3のバーコーターを用いてエプソン社製フォトマット紙に塗布した。得られた塗布物の画像濃度を反射濃度計(X−Rite社製X−Rite938)を用いて測定し、画像濃度1.0の塗布物をフェードメーターを用いてキセノン光(170000Lux.;325nm以下カットフィルター存在下)を14日間照射し、キセノン照射前後の画像濃度を反射濃度計を用いて測定し、色素残存率[(照射後濃度/照射前濃度)×100%]として顔料分散物1、3、4、6、8及び比較顔料分散物1〜3を評価した。残存率が90%以上を○、70%以上90%未満を△、70%未満を×として、結果を表1に示す。
【0313】
得られた顔料分散物をNo.3のバーコーダーを用いてゼロックス社製普通紙4024に塗布した。得られた塗布物をフォトマット紙と同様に耐光性を評価したところ、フォトマット紙と同様の結果が得られた。
【0314】
<分散性>
顔料2.5部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、6時間分散を行った結果、ゲル化せずに十分に粒径が小さく分散できたものを○、できなかったものを×として顔料分散物1、3、4、6、8及び比較顔料分散物1〜3を評価した。結果を表1に示す。
【0315】
【表1】

【0316】
表1の結果から、本発明の顔料を使用した顔料分散物は耐光性に優れ、優れた分散性を示すことがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0317】
【図1】実施例1で得たアゾ顔料(2)−1の赤外吸収スペクトルである。
【図2】実施例2で得たアゾ顔料(2)−2の赤外吸収スペクトルである。
【図3】実施例3で得たアゾ顔料(2)−3の赤外吸収スペクトルである。
【図4】実施例4で得たアゾ顔料(2)−5の赤外吸収スペクトルである。
【図5】実施例5で得たアゾ顔料(2)−6の赤外吸収スペクトルである。
【図6】実施例6で得たアゾ顔料(2)−7の赤外吸収スペクトルである。
【図7】実施例7で得たアゾ顔料(2)−8の赤外吸収スペクトルである。
【図8】実施例8で得たアゾ顔料(2)−14の赤外吸収スペクトルである。
【図9】実施例9で得たアゾ顔料(2)−21の赤外吸収スペクトルである。
【図10】実施例10で得たアゾ顔料(2)−41の赤外吸収スペクトルである。
【図11】比較例1で得た比較化合物(25)の赤外吸収スペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)により表されるアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩または水和物。
【化1】


(一般式(1)中、R、R、R、Y、Z、Gはそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、nは2〜4の整数を表す。n=2の場合は、R、R、R、Y、ZまたはGを介した2量体を表す。n=3の場合はR、R、R、Y、ZまたはGを介した3量体を表す。n=4の場合はR、R、R、Y、ZまたはGを介した4量体を表す。)
【請求項2】
下記一般式(2)で表されるアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩または水和物。
【化2】


(式中、R’、R’、Y’はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、炭素数2〜4のアルキニル基、炭素数1〜5のアシル基、炭素数7〜9のアラルキル基、5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環基、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環基を表す。R’は水素原子または1価の置換基を表す。Z’はハメットのσp値が0.2以上の電子求引性基を表す。Xは炭素原子隣接位のヘテロ原子を表し、Gは5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環を形成する原子団を表す。R’、R’、R’、Y’、Gのいずれかが5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環を表す場合、単環または縮合環を表す。R’、R’、R’、Y’、Gのいずれかが5員環の不飽和のヘテロ環を表す場合、環内に窒素原子を2つ以上有する。)
【請求項3】
上記一般式(2)中のXが窒素原子であることを特徴とする請求項2記載のアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩または水和物。
【請求項4】
上記一般式(2)中のGが、下記一般式(3)−1から(3)−6で表される置換基群のいずれかから選ばれることを特徴とする請求項2に記載のアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩または水和物。
【化3】


(式中、R〜R23はそれぞれ独立に、水素原子、または置換基を表す。また、R〜R21がそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。)
【請求項5】
上記一般式(1)で表されるアゾ顔料が、下記一般式(4)で表されるアゾ顔料であることを特徴とする請求項1に記載のアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩または水和物。
【化4】


(式中、n、R、R、R、Y、Zはそれぞれ独立に一般式(1)中のn、R、R、R、Y、Zと同義であり、Xは炭素原子隣接位のヘテロ原子を表す。Gは5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環を形成する原子団を表し、n=2の場合は、R、R、R、Y、ZまたはGを介した2量体を表す。n=3の場合は、R、R、R、Y、ZまたはGを介した3量体を表す。n=4の場合は、R、R、R、Y、ZまたはGを介した4量体を表す。R、R、R、Y、Gのいずれかが5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環を表す場合、単環または縮合環である。)
【請求項6】
上記一般式(4)中のXが窒素原子であることを特徴とする請求項5に記載のアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩または水和物。
【請求項7】
上記一般式(4)中のGが下記一般式(3)中の(3)−1から(3)−6で表される1〜3価の置換基群から選ばれる、いずれかの基であることを特徴とする請求項5または6に記載のアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩または水和物。
【化5】


(式中、R〜R23はそれぞれ独立に、水素原子、または置換基を表す。また、R〜R21がそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。)
【請求項8】
下記一般式(2)で表されるアゾ化合物。
【化6】


(式中、R’、R’、Y’はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、炭素数2〜4のアルキニル基、炭素数1〜5のアシル基、炭素数7〜9のアラルキル基、5〜8員環の飽和または不飽和の炭化水素環基、5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環基を表す。R’は水素原子または1価の置換基を表す。Z’はハメットのσp値が0.2以上の電子求引性基を表す。Xは炭素原子隣接位のヘテロ原子を表し、Gは5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環を形成する原子団を表す。R’、R’、R’、Y’、Gのいずれかが5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環を表す場合、単環または縮合環を表す。R’、R’、R’、Y’、Gのいずれかが5員環の不飽和のヘテロ環を表す場合、環内に窒素原子を2つ以上有する。)
【請求項9】
上記一般式(2)中のGが、下記一般式(3)−1から(3)−6で表される置換基群のいずれかから選ばれることを特徴とする請求項8に記載のアゾ化合物。
【化7】


(式中、R〜R23はそれぞれ独立に、水素原子、または置換基を表す。また、R〜R21がそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。)
【請求項10】
下記一般式(4)で表されるアゾ化合物。
【化8】


(式中、R、R、R、Y、Zはそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、nは2〜4の整数を表す。Xは炭素原子隣接位のヘテロ原子を表す。Gは5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環を形成する原子団を表し、n=2の場合は、R、R、R、Y、ZまたはGを介した2量体を表す。n=3の場合は、R、R、R、Y、ZまたはGを介した3量体を表す。n=4の場合は、R、R、R、Y、ZまたはGを介した4量体を表す。R、R、R、Y、Gのいずれかが5〜8員環の飽和または不飽和のヘテロ環を表す場合、単環または縮合環である。)
【請求項11】
上記一般式(4)中のGが下記一般式(3)中の(3)−1から(3)−6で表される1〜3価の置換基群から選ばれる、いずれかの基であることを特徴とする請求項10に記載のアゾ化合物。
【化9】


(式中、R〜R23はそれぞれ独立に、水素原子、または置換基を表す。また、R〜R21がそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。)
【請求項12】
請求項1〜7のいずれかに記載のアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩または水和物又は請求項8〜11のいずれかに記載のアゾ化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする分散物。
【請求項13】
請求項12に記載の分散物を含有することを特徴とする着色組成物。
【請求項14】
請求項12に記載の分散物を含有することを特徴とするインクジェット記録用インク。
【請求項15】
請求項14に記載のインクジェット記録用インクを含有することを特徴とするインクジェット記録用インクタンク。
【請求項16】
請求項14記載のインクジェット記録用インクを用いることを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項17】
請求項14に記載のインクジェット記録用インクを用いることで得られる記録物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−235382(P2009−235382A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334956(P2008−334956)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】