説明

アダプタ、及びアダプタを備えるスパウト付きパウチ

【課題】 本発明は、スパウト付きパウチのスパウトに緩まないように取り付けることができるアダプタを提供することである。
【解決手段】 本発明のアダプタは、ネジ部の下方にタンパーエビデンス環状部9がスクリューキャップの緩方向に回転不能に係止されているスパウト7とチューブ部材とを接続するためのアダプタ1であって、チューブ部材を接続可能な接続部2と、締方向に回転させることによりスパウトのネジ部に螺合可能な取付部3と、を有し、前記取付部3の下方部には、タンパーエビデンス環状部9の上方部に形成された嵌合凹部99に嵌合可能な嵌合凸部59が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経腸栄養剤などが充填されたスパウト付きパウチのスパウトと胃ろうカテーテルなどのチューブ部材とを接続するためのアダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビタミン類やアミノ酸などを含む経腸栄養剤、流動食、水分補強ゼリーなどを患者に投与するため、経腸栄養剤などが充填されたスパウト付きパウチが用いられている。
このスパウト付きパウチ内の充填物を患者に投与する際には、スパウトにカテーテルのようなチューブ部材を取り付けるが、一般には、スパウトとチューブ部材は、アダプタを介して取り付けられる。
特許文献1には、チューブ部材を圧入する先細テーパ状の接続部とスパウトに取り付ける取付部とを有し、前記接続部に形状の異なる滑り止め部が形成されている、アダプタが開示されている。
【0003】
かかるアダプタは、その取付部をスパウト付きパウチのスパウトのネジ部に螺合し、且つ、その接続部にチューブ部材を接続することによって使用される。
しかしながら、アダプタの接続部には患者に繋がったチューブ部材が接続されているので、使用している間に、アダプタの取付部がスパウトから緩むおそれがある。アダプタが緩むと、スパウトとアダプタの隙間から充填物が漏れてしまう。
また、使用途中で、患者などが誤ってアダプタを回してスパウトから外すおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−136427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、スパウトに取付けた後にスパウトから緩まないアダプタを提供することである。
本発明の他の目的は、スパウトに取付けた後にスパウトから緩まないアダプタを備えるスパウト付きパウチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のアダプタは、ネジ部の下方にタンパーエビデンス環状部がスクリューキャップの緩方向に回転不能に係止されているスパウトとチューブ部材とを接続するためのアダプタであって、チューブ部材を接続可能な接続部と、締方向に回転させることによりスパウトのネジ部に螺合可能な取付部と、を有し、前記取付部の下方部には、タンパーエビデンス環状部の上方部に形成された嵌合凹部に嵌合可能な嵌合凸部が形成されている。
【0007】
上記アダプタは、スパウトに対して回転不能なタンパーエビデンス環状部の嵌合凹部に嵌合可能な嵌合凸部が取付部に設けられている。スパウトに対して緩方向に回転不能に係止されたタンパーエビデンス環状部の嵌合凹部に、嵌合凸部が嵌合されたアダプタは、それを緩方向に回転させることができない。
従って、スパウトに取り付けたアダプタがスパウトから緩むことがない。
【0008】
本発明のアダプタを備えるスパウト付きパウチは、外周面にネジ部が形成されたスパウトと、スパウトのネジ部のネジ部の下方において緩方向に回転不能に係止されているタンパーエビデンス環状部と、を有するスパウト付きパウチと;締方向に回転させることにより前記スパウトのネジ部に螺合可能な取付部と、チューブ部材を接続可能な接続部と、を有するアダプタと;を備え、前記タンパーエビデンス環状部の上方部には、下方に凹んだ嵌合凹部が形成されており、前記取付部の下方部には、下方に突出された嵌合凸部が形成されており、前記取付部を前記スパウトに螺合したときに、前記嵌合凸部が前記タンパーエビデンス環状部の嵌合凹部に嵌合可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のアダプタは、スパウト付きパウチのスパウトに取り付けた後、スパウトから緩まない。かかるアダプタを使用すれば、スパウト付きパウチから充填物を注出している際に、アダプタとスパウトの間から充填物が漏れることもなく、又、患者などが誤ってアダプタをスパウトから外すことも防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の1つの実施形態に係るアダプタを備えるスパウト付きパウチの正面図。ただし、スパウト付きパウチの袋は、その一部を省略して表している(他の図も同様)。
【図2】本発明の1つの実施形態に係るアダプタの正面図。
【図3】同底面図。
【図4】図2のIV−IV線で切断した縦断面図。
【図5】図1のスパウト付きパウチの要部拡大正面図。
【図6】図5のVI−VI線で切断した拡大断面図。
【図7】スクリューキャップ及びタンパーエビデンス環状部が取り付けられていない状態のスパウト付きパウチの正面図。
【図8】スクリューキャップを取り外し、タンパーエビデンス環状部が残った状態のスパウト付きパウチの正面図。
【図9】アダプタを取り付けたスパウト付きパウチの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ具体的に説明する。
<アダプタを備えるスパウト付きパウチについて>
図1において、本発明のアダプタ1を備えるスパウト付きパウチ10は、アダプタ1と、スパウト付きパウチ10と、を備えた充填物の注出具である。
このアダプタ1を備えるスパウト付きパウチ10は、スパウト7とスパウト7のネジ部の下方において緩方向に回転不能に係止されているタンパーエビデンス環状部9とを有するスパウト付きパウチ10と、スパウト7のネジ部に螺合可能な取付部3とチューブ部材を接続可能な接続部2とを有するアダプタ1と、を備え、取付部3は、スパウト7に取り付けたときにタンパーエビデンス環状部に嵌合し得る。
アダプタ1は、他端部が使用者に繋げられたチューブ部材の一端部と、スパウト付きパウチ10のスパウト7と、を接続するために使用される。
アダプタ1は、チューブ部材を接続可能な接続部2と、スパウト7に螺合可能な取付部3と、を有する。
スパウト付きパウチ10は、充填物が封入された袋6(一部省略して図示している)と、袋6に装着された充填物を注出する注出口を有するスパウト7と、下方にタンパーエビデンス環状部9を有する。前記スパウト7の注出口は、スクリューキャップ8によって閉栓されている。
以下、アダプタ及びスパウト付きパウチの具体的な構成をそれぞれ説明する。
【0012】
<アダプタについて>
図2〜図4に於いて、本発明のアダプタ1は、スパウト付きパウチ10のスパウト7とチューブ部材とを接続する部材である。
アダプタ1は、チューブ部材の一端部を接続するための接続部2と、締方向に回転させることによりスパウト7のネジ部に螺合可能な取付部3と、接続部2及び取付部3の間に形成された中間部4と、を有する。
前記接続部2、中間部4、及び取付部3は、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂などの合成樹脂又は金属などを用いて一体的に形成されている。接続部2、中間部4、及び取付部3は、それぞれ筒状である。接続部2、中間部4、及び取付部3の内部の各空洞は、軸方向に連通されている。従って、アダプタ1の内部には、軸方向に延びる1つの通路11が形成されている。
【0013】
接続部2は、先端側に向かうに従って次第に小径となった略円錐台筒状である。
接続部2及び中間部4の各外周面には、滑り止め加工として複数の突起2a,4aが形成されている。接続部2の外周面に形成された複数の突起2aは、断面略鋸刃状であり、一方、中間部4の外周面に形成された複数の突起4aは、断面略半円状である。
なお、上記各突起2a,4aの形状は異なっているが、何れもが断面略鋸刃状又は略半円状であってもよい。
【0014】
取付部3は、略円筒状であり、その内周面にはネジ部31が形成されている。取付部3は、それを締方向に回転させることにより、前記ネジ部31を介して、スパウト付きパウチ10のスパウト7のネジ部に螺合可能である。前記締方向は、アダプタ1の軸回りの一方向であり、一般的には、アダプタ1の軸を上から見た場合の時計回り方向である。
【0015】
取付部3の下方部には、嵌合凸部59が下方に向かって突設されている。この嵌合凸部59は、アダプタ1をスパウト7に完全に螺合したときに、後述するタンパーエビデンス環状部9の嵌合凹部99に嵌合する部分である。
スパウト7に回転不能に係止されたタンパーエビデンス環状部9の嵌合凹部99に、取付部3の嵌合凸部59が嵌合することにより、アダプタ1に緩方向の回転力を加えても、アダプタ1を緩方向に回転させることはできない。前記緩方向は、アダプタ1の軸回りの他方向であって、アダプタ1の締方向と反対の方向である。
なお、本明細書において、完全に螺合とは、アダプタ又はスクリューキャップとスパウトとの間から充填物が漏れないように、アダプタ又はスクリューキャップがスパウトに螺合した状態をいう。
【0016】
具体的には、嵌合凸部59は、取付部3の下端面の一部分から下方に向かって突設されている。嵌合凸部59の形成数は、特に限定されず、1箇所でもよいし、複数箇所でもよい。嵌合凸部59を複数設ける場合には、嵌合凸部59の数は、タンパーエビデンス環状部9の嵌合凹部99と同数か又はそれよりも少ないことが好ましい。嵌合凸部59の数が嵌合凹部99よりも多いと、余った嵌合凸部59の下端面がタンパーエビデンス環状部9の上端面に当接して、他の嵌合凸部59が嵌合凹部99に嵌合することを妨げるからである。
また、嵌合凸部59を複数設ける場合には、各嵌合凸部59の形成間隔は、全ての嵌合凸部59を嵌合凹部99に嵌合させるため、タンパーエビデンス環状部9の嵌合凹部99の形成間隔と同じにすることが好ましい。
なお、本実施形態では、嵌合凸部59が1箇所形成されている場合を図示している。
嵌合凸部59は、アダプタ1をスパウト7に完全に螺合させたときに、タンパーエビデンス環状部9の嵌合凹部99に嵌合するような位置に設けられている。
【0017】
嵌合凸部59は、アダプタ1を緩方向に回転させたときに、タンパーエビデンス環状部9の嵌合凹部99に嵌合するように形成されていれば、その形状は特に限定されない。
例えば、嵌合凸部59は、正面視略矩形状、半円状、正三角形状などに形成されていてもよいが、図示したように正面視略直角三角形状に形成されていることが好ましい。
かかる略直角三角形状の嵌合凸部59は、取付部3の下端面からアダプタ1の緩方向且つ下方側に延びる傾斜面591(以下、凸部傾斜面という)と、取付部3の下端面に対して略直交し且つアダプタ1の締方向に対向する係合面592(以下、凸部係合面という)と、を有する。
【0018】
この凸部係合面592は、凸部傾斜面591の先端部(凸部傾斜面591の下端部)に形成されている。
前記凸部傾斜面591と取付部3の下端面の成す角は、鈍角であれば特に限定されず、例えば、120度〜175度であり、好ましくは、135度〜170度である。
また、嵌合凸部59の突出長さは、後述するキャップ嵌合凸部92の突出長さよりも長い。
【0019】
取付部3の下端面は、平面視リング状であり、好ましくは嵌合凸部59が設けられた部分を除いて平坦面とされている。このリング状の下端面の外径は、タンパーエビデンス環状部9のリング状の上端面の外径と略同じでもよいし、若干大きい又は若干小さくてもよい。取付部3の下端面から突設された嵌合凸部59が、タンパーエビデンス環状部9の上端面に形成された嵌合凹部99に嵌合するように、取付部3の下端面の外径を設定すればよい。
【0020】
<スパウト付きパウチについて>
スパウト付きパウチ10は、図1に示すように、袋6と、袋6に装着されたスパウト7と、下方にタンパーエビデンス環状部9を有する。スパウト7のネジ部は、スクリューキャップ8が螺合可能である。
袋6内には、充填物が充填されている。充填物は特に限定されず、例えば、経腸栄養剤、流動食、水分補強ゼリーなどが挙げられる。
【0021】
前記スパウト7の注出口は、スクリューキャップ8によって閉栓されている。着脱可能なスクリューキャップ8によって注出口が閉栓され得るスパウト付きパウチ10は、スパウト7の注出口から充填物を充填できる。すなわち、スパウト7が取り付けられた袋2について、スパウト7の注出口を通じて袋2内に充填物を充填した後、タンパーエビデンス環状部9が一体的に設けられたスクリューキャップ8をスパウト7に螺合することにより注出口を閉栓する。このようにしてスクリューキャップ8によって注出口が閉栓されたスパウト付きパウチ10を得ることができる。
このようにスパウト7から袋2内に充填物を充填できるので、袋2の内部に生じるデッドスペース(充填物が充填されていない空間)を小さくできる。一般的にスパウトが取り付けられていない袋の開口部から充填物を充填すると、比較的大きなデッドスペースが生じるが、上記スパウト付きパウチ10にあっては、デッドスペースが小さくなるため、正味の充填量に適合した容量の袋を用いることができる。このため、本発明では、袋のコストや保管運搬費の低減を図ることができる。さらに、上記スパウト付きパウチ10に対する充填物の充填は、既存の充填装置を用いて行うことができるので、新たな設備投資を行う必要もない。
スパウト7、スクリューキャップ8及びタンパーエビデンス環状部9の材質は特に限定されないが、通常、これらはポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂などの合成樹脂によって形成される。
また、袋6は、周囲を熱シールなどで接着した柔軟なフィルムから形成されている。
【0022】
前記スクリューキャップ8の内周面には、スパウト7に螺合するネジ部(図示せず)が形成されている。スクリューキャップ8は、それを締方向に回転させることにより、前記ネジ部を介してスパウト7の外周面のネジ部に螺合可能である。前記締方向は、アダプタ1の締方向と同じ方向であり、一般的には、スクリューキャップ8の軸を上から見た場合の時計回り方向である。なお、スクリューキャップの緩方向は、前記締方向と反対の方向である。
【0023】
また、スクリューキャップ8の下端面には、図1及び図5に示すように、タンパーエビデンス環状部9の上端面から突設されたキャップ嵌合凸部92に嵌合するキャップ嵌合凹部82が凹設されている。
キャップ嵌合凸部92とキャップ嵌合凹部82が嵌合された状態で、スクリューキャップ8の下部は、脆弱な細い架橋部83を介して、タンパーエビデンス環状部9と連結されている。架橋部83は、スクリューキャップ8とタンパーエビデンス環状部9の間に少なくとも1箇所設けられ、好ましくは、スクリューキャップ8の周方向に等間隔に2箇所〜4箇所設けられる。架橋部83は、タンパーエビデンス環状部9がスクリューキャップ8から不用意に外れない程度に両者を連結できる細い線状部である。
上記キャップ嵌合凹部82は、スクリューキャップ8を締方向に回転させたときに、キャップ嵌合凸部92に係合し、従って、タンパーエビデンス環状部9はスクリューキャップ8の締方向の回転に追従してその方向に回転する。一方、スクリューキャップ8を緩方向に回転させたときには、キャップ嵌合凸部92とキャップ嵌合凹部82の係合が解除されてスクリューキャップ8のみが回転し、架橋部83が破断してスクリューキャップ8のみがスパウト7から外れる。
【0024】
キャップ嵌合凹部82は、上述のように、スクリューキャップ8を締方向に回転させたときに、キャップ嵌合凸部92に係合し、且つ、スクリューキャップ8を緩方向に回転させたときに、キャップ嵌合凸部92との係合が解除され得るように形成されていれば、その形状は特に限定されない。
例えば、図5に示すように、キャップ嵌合凸部92は、タンパーエビデンス環状部9の上端面からスクリューキャップ8の緩方向且つ上方側に延びる傾斜面921と、タンパーエビデンス環状部9の上端面に対して略直交し且つスクリューキャップ8の締方向に対向する係合面922と、を有する。
一方、キャップ嵌合凹部82は、前記キャップ嵌合凸部92と同様な正面視略直角形状の凹み部であり、キャップ嵌合凸部92の傾斜面921に対面する傾斜面821と、キャップ嵌合凸部92の係合面922に対面する係合面822と、を有する。
【0025】
キャップ嵌合凸部92とキャップ嵌合凹部82は同数設けられる。
本実施形態では、キャップ嵌合凸部92及びキャップ嵌合凹部82の数は、それぞれ対応して2箇所設けられているが、それぞれ1箇所でもよいし、それぞれ対応して3箇所以上設けられていてもよい。
【0026】
タンパーエビデンス環状部9の上方部には、嵌合凹部99が下方に向かって凹設されている。この嵌合凹部99は、アダプタ1をスパウト7に完全に螺合したときに、アダプタ1の嵌合凸部59が嵌合する部分である。
この嵌合凹部99は、キャップ嵌合凸部92と異なる箇所に設けられている。
【0027】
具体的には、嵌合凹部99は、キャップ嵌合凸部92が突設された部分以外の、タンパーエビデンス環状部9の上端面の一部分から下方に向かって凹設されている。嵌合凹部99の形成数は、特に限定されず、1箇所でもよいし、複数箇所でもよい。嵌合凹部99の形成数は、嵌合凸部59に応じて適宜設定できる。
なお、本実施形態では、嵌合凹部99が1箇所形成されている場合を図示している。
【0028】
嵌合凹部99の正面視形状は、嵌合凸部59が嵌るような形状であれば特に限定されない。もっとも、アダプタ1に緩方向の回転力が加わった際に、アダプタ1の嵌合凸部59に確実に係合してアダプタ1の緩方向の回転を規制できることから、嵌合凹部99は、嵌合凸部59の凸部係合面592に対向する係合面を有することが好ましい。
例えば、嵌合凹部99は、嵌合凸部59と同様な正面視略直角形状の凹み部であり、嵌合凸部59の凸部傾斜面591に対面する傾斜面991(以下、凹部傾斜面という)と、嵌合凸部59の凸部係合面592に対面する係合面992(以下、凹部係合面という)と、を有する。凹部傾斜面991は、タンパーエビデンス環状部9の上端面からアダプタ1の緩方向且つ下方側に徐々に傾斜して延設されている。凹部係合面992は、凹部傾斜面991の先端部に形成され且つタンパーエビデンス環状部9の上端面に対して略直交して下方に延設されている。
【0029】
上記タンパーエビデンス環状部9は、スクリューキャップ8をスパウト7に完全に螺合させた状態において、スパウト7のネジ部71の下方にスクリューキャップ8の緩方向に回転不能で且つスパウト7から上下方向に抜脱困難に係止されている。
具体的には、タンパーエビデンス環状部9の内周面には、図6に示すように、スパウト7の係合部72に係合する被係合部91が形成されている。
この被係合部91は、タンパーエビデンス環状部9の内周面からスクリューキャップ8の緩方向に延びる被傾斜面911と、スクリューキャップ8の締方向に対向する被係合面912と、を有する。
【0030】
被傾斜面911は、タンパーエビデンス環状部9の内周面の接線(厳密には、内周面を形作る円形線に対して引いた接線)に対して鈍角状に延出された面である。前記被傾斜面911と内周面の接線の成す角は、鈍角であれば特に限定されず、例えば、120度〜175度であり、好ましくは、135度〜170度である。
被係合面912は、被傾斜面911の先端部(緩方向先端部)に形成されている。
【0031】
上記被係合部91の数は、特に限定されず、少なくとも1つ設けられ、好ましくは2つ以上(複数)である。なお、本実施形態では、8つの被係合部91が設けられている。
被係合部91が複数設けられる場合、各被係合部91は、タンパーエビデンス環状部9の内周面の周方向に所定間隔を開けて設けられ、好ましくは、一定間隔(等間隔)に設けられる。
【0032】
スパウト7は、上端に注出口が開口された略円筒状であり、図7に示すように、その外周面にはネジ部71が形成されている。
また、スパウト7の外周面の、前記ネジ部71の下方には、タンパーエビデンス環状部9の被係合部91に係合する係合部72が形成されている。
【0033】
スパウト7の係合部72は、図6に示すように、スパウト7の外周面からスクリューキャップ8の締方向に延びる傾斜面721と、スクリューキャップ8の緩方向に対向する係合面722と、を有する。
傾斜面721は、上記被傾斜面911と同様に、スパウト7の外周面の接線に対して鈍角状に延出された面である。傾斜面721の具体的な傾斜角度は、上記被傾斜面911と同様である。
係合面722は、例えば、傾斜面721の先端部に形成され、スパウト7の外周面の接線に対して略直交するような面とされている。
【0034】
スパウト7の係合部72の数は、特に限定されず、少なくとも1つ設けられ、好ましくは2つ以上(複数)であり、より好ましくは被係合部91の数の1/2倍である。なお、本実施形態では、4つの係合部72が設けられ、好ましくは、これらが一定間隔(等間隔)で設けられている。
【0035】
さらに、前記ネジ部71と係合部72の間におけるスパウト7の外周面には、図7に示すように、その周方向に渡って環状の小突部73が外側に向かって突設されている。
環状の小突部73の突出頂部の外径は、スクリューキャップ8の下方内周面の内径よりも僅かに小さく且つタンパーエビデンス環状部9の上方内周面の内径よりも僅かに大きい。
スクリューキャップ8がスパウト7に完全に螺合した状態において、タンパーエビデンス環状部9の上端面はスパウト7の小突部73と係合部72の間に位置し且つタンパーエビデンス環状部9の被係合部91はスパウト7の係合部72に係合される。
【0036】
上記タンパーエビデンス環状部9とスクリューキャップ8は、架橋部83を介して連結されていると共に、キャップ嵌合凹部82及びキャップ嵌合凸部92が嵌合している。上述のように、キャップ嵌合凹部82は、スクリューキャップ8を締方向に回転させようとすると、キャップ嵌合凸部92に係合する。
従って、袋6内に充填物を充填した後、スパウト7のネジ部71に、タンパーエビデンス環状部9を有するスクリューキャップ8を締方向に回転させ、スクリューキャップ8をスパウト7に完全に螺合すると、スクリューキャップ8と共にタンパーエビデンス環状部9をスパウト7に取り付けることができる。取り付けられたタンパーエビデンス環状部9は、上述のように、タンパーエビデンス環状部9の上端面がスパウト7の小突部73と係合部72の間に位置し且つタンパーエビデンス環状部9の被係合部91がスパウト7の係合部72に係合される。
【0037】
一方、完全に螺合したスクリューキャップ8を緩方向に回転させたときには、その回転力が加わったスクリューキャップ8と、緩方向に回転不能なタンパーエビデンス環状部9と、の間を連結している脆弱な架橋部83が捩られて破断する。従って、図8に示すように、スクリューキャップ8だけをスパウト7から取り外すことができ、スパウト7の外周面には、タンパーエビデンス環状部9が残っている。
スパウト7に残ったタンパーエビデンス環状部9は、スパウト7の係合部72に係合されているので、少なくとも緩方向には回転させることができない。なお、スパウト7に残ったタンパーエビデンス環状部9は、構造上、締方向に回転可能であるが、実際の製品では、人力で締方向に回転させることは非常に困難である。
また、小突部73の外径はタンパーエビデンス環状部9の上方内周面の内径よりも僅かに大きいので、スパウト7に残ったタンパーエビデンス環状部9を上方に引張っても、タンパーエビデンス環状部9の上端面が小突部73の下方に係止されるので、タンパーエビデンス環状部9をスパウト7から抜くことは困難である。
【0038】
<アダプタを備えるスパウト付きパウチの使用について>
図1に示すスパウト付きパウチ10から充填物を注出する際には、アダプタ1を使用する。
スクリューキャップ8によって閉栓されたスパウト付きパウチ10からスクリューキャップ8を緩方向に回してこれを取り外す。スクリューキャップ8を取り外した後には、上述のように、タンパーエビデンス環状部9がスクリューキャップ8の緩方向に回転不能な状態でスパウト7に係止されている、スパウト付きパウチ10が得られる。ただし、回転不能とは、人力で回しても回転しないという意味である。
【0039】
次に、アダプタ1をスパウト7に嵌め且つアダプタ1を締方向に回していく。アダプタ1の取付部3をスパウト7のネジ部71に螺合させていくと、これに追従して嵌合凸部59が回転しながら下がっていく。スパウト7の上端面がアダプタ1の取付部3の内部に形成された段部に当接すると、アダプタ1の通路11とスパウト7の注出口が水密状態で一体化して、アダプタ1の取付部3がネジ部71に完全に螺合する。これと略同時に、アダプタ1の嵌合凸部59が、スパウト7の上下方向に抜脱困難に係止されたタンパーエビデンス環状部9の嵌合凹部99に嵌合する(図9参照)。
【0040】
なお、タンパーエビデンス環状部9の上端面には、キャップ嵌合凸部92が上方に突設されているので、アダプタ1を締方向に回して嵌合凸部59が下がっていく途中であって嵌合凸部59が嵌合凹部99に嵌合する前に、嵌合凸部59がキャップ嵌合凸部92に当たる事態も生じ得る。この点、上記嵌合凸部59の突出長さは、キャップ嵌合凸部92よりも長く、さらに、嵌合凸部59は、アダプタ1の緩方向に延びる凸部傾斜面591を有する。このため、嵌合凸部59が嵌合凹部99に嵌合する前に、嵌合凸部59の凸部傾斜面591がキャップ嵌合凸部92に当たっても、嵌合凸部59がキャップ嵌合凸部92を容易に乗り越えていく。このため、アダプタ1を締方向に回転させていくだけで、嵌合凸部59と嵌合凹部99を簡単に嵌合させることができる。
【0041】
タンパーエビデンス環状部9はスパウト7に回転不能に係止されているので、少なくとも緩方向に回転させることができない。このタンパーエビデンス環状部9の上方部に形成された嵌合凹部99にアダプタ1の嵌合凸部59が嵌合されている。よって、アダプタ1を緩方向に回転させようとしても、回転不能なタンパーエビデンス環状部9に嵌合したアダプタ1を、緩方向に回転させることができない。
従って、アダプタ1の取付部3がスパウト7から緩むことがない。
なお、アダプタ1がスパウト7から緩まないとは、全く動かないという意味ではなく、アダプタ1がスパウト7に対して完全に螺合した状態を維持できるという意味である。
【0042】
アダプタ1をスパウト7に螺合させた後、アダプタ1の接続部2にチューブ部材(図示せず)を取り付ける。チューブ部材は、特に限定されず、単なる柔軟な管(ゴム管や柔軟なプラスチック管など)でもよいし、或いは、特開2009−136427号に開示されたような接続管付きの胃ろうカテーテルなどでもよい。
このチューブ部材を通じて、袋6内の充填物を注出できる。
【0043】
本発明のアダプタ1は、スパウト7に取り付けた後に緩方向に回転させることができないので、スパウト7から緩まない。
従って、このアダプタ1を備えるスパウト付きパウチ10は、使用中に、アダプタ1とスパウト7の間から充填物が漏れることがない。さらに、患者などの使用者やその補助者が誤ってアダプタ1を回そうとしても、アダプタ1がスパウト7から緩むこともない。
【0044】
さらに、上記アダプタ1を備えるスパウト付きパウチ10によれば、患者などの使用者やその補助者が、次のように使用することを防止できる。その使用とは、充填物の注出を一旦止めてアダプタ1をスパウト7から外し、スパウト7をスクリューキャップ8にて閉栓してスパウト付きパウチ10を保管しておき、時間を置いて、残る充填物を注出するために、再度アダプタ1を取り付けるというものである。このような使用では、スパウト7やアダプタ1などの汚染が懸念されるが、本発明のアダプタ1を備えるスパウト付きパウチ10は、そのような使用法ができないので、衛生的である。
【0045】
本発明によれば、スクリューキャップ8を取り外し後にスパウト7に残存するタンパーエビデンス環状部9を有効利用して、アダプタ1の緩みを防止できる。一般に、タンパーエビデンス環状部9はスクリューキャップ8の開栓有無を判別するために設けられ、スクリューキャップ8を正規に開栓した後にはタンパーエビデンス環状部9は存在意義が無くなる。本発明者らは、不要になってしまったタンパーエビデンス環状部9がスパウト7に対して緩方向に回転不能であることに着目し、上述のようにこれを有効利用したものであって、このような着想は、従来にない新規な着想である。
【0046】
なお、本発明のアダプタ及びこれを備えるスパウト付きパウチは、上記実施形態に限られず、本発明の意図する範囲で適宜変更できる。
例えば、上記実施形態のアダプタ1の接続部2の形状は、次第に小径となる略円錐台筒状であるが、例えば、特開2009−136427号公報に記載されたように、接続部が、突起形状が異なる小径接続部及び大径接続部を有する形状に形成されていてもよい。
また、上記実施形態のアダプタ1は、中間部4を有するが、中間部4を有しないアダプタであってもよい。この場合、接続部2と取付部3が直接一体的に形成される。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のアダプタは、経腸栄養剤などを充填したスパウト付きパウチのスパウトとチューブ部材の間に取り付け、チューブ部材を通じてパウチ内の充填物を注出するために使用できる。
【符号の説明】
【0048】
1…アダプタ、2…アダプタの接続部、3…アダプタの取付部、4…アダプタの中間部、59…嵌合凸部、6…袋、7…スパウト、71…スパウトのネジ部、8…スクリューキャップ、9…タンパーエビデンス環状部、99…嵌合凹部、10…スパウト付きパウチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネジ部の下方にタンパーエビデンス環状部がスクリューキャップの緩方向に回転不能に係止されているスパウトとチューブ部材とを接続するためのアダプタであって、
チューブ部材を接続可能な接続部と、締方向に回転させることによりスパウトのネジ部に螺合可能な取付部と、を有し、
前記取付部の下方部には、タンパーエビデンス環状部の上方部に形成された嵌合凹部に嵌合可能な嵌合凸部が形成されていることを特徴とするアダプタ。
【請求項2】
外周面にネジ部が形成されたスパウトと、前記スパウトのネジ部の下方において緩方向に回転不能に係止されているタンパーエビデンス環状部と、を有するスパウト付きパウチと;締方向に回転させることにより前記スパウトのネジ部に螺合可能な取付部と、チューブ部材を接続可能な接続部と、を有するアダプタと;を備え、
前記タンパーエビデンス環状部の上方部には、下方に凹んだ嵌合凹部が形成されており、
前記取付部の下方部には、下方に突出された嵌合凸部が形成されており、
前記取付部を前記スパウトに螺合したときに、前記嵌合凸部が前記タンパーエビデンス環状部の嵌合凹部に嵌合可能であることを特徴とするアダプタを備えるスパウト付きパウチ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−71843(P2012−71843A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216470(P2010−216470)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【Fターム(参考)】