説明

アダプタおよびペイロード打ち上げ用ロケット

【課題】簡易な構造でペイロードに入力される振動を低減することが可能なアダプタおよびペイロード打ち上げ用ロケットを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るアダプタ1は、ペイロード打ち上げ用ロケットに収容されるペイロードの振動を抑制する、ペイロードとロケット部の間に設けられたアダプタ1であって、外筒11と内筒12を有する二重構造の筒部材と、筒部材の一端で外筒11と内筒12に結合した第1の弾性部材21と、筒部材の他端で外筒と内筒に結合した第2の弾性部材22とを備え、筒部材の一端側の内筒側または外筒側でペイロードと連結し、筒部材の他端側の外筒側または内筒側でロケット部の先端と連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペイロードとロケット部の間に設置されるアダプタ、および該アダプタが設けられたペイロード打ち上げ用ロケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ペイロード打ち上げ用ロケットは、燃料部やロケットエンジンからなるロケット部の先端側に、人工衛星、探査機などのペイロードが搭載される。打ち上げ用ロケットの飛行中、ペイロードに入力される振動を低減するため、ペイロードとロケット部の間に緩衝体などが設置される。
【0003】
特許文献1では、打ち上げ用ロケットに搭載される、ダンパを備える荷重振動絶縁に関する技術が開示されている。また、特許文献2では、ロケット機軸方向の振動とペイロードのロッキングを防止する緩衝シリンダ装置を備える制振機構に関する技術が開示されている。さらに、特許文献3では、ロケット機軸方向の振動を緩衝する緩衝体と、ペイロードのロッキングを防止するトーションバーを備える制振機構に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2001−509866号公報(図2a、図2b、図3)
【特許文献2】特開2000−289697号公報(図1、図2)
【特許文献3】特開2000−289699号公報(図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロケットの振動荷重は、ロケット機軸方向が主であり、ペイロードとロケット部の間に剛性の低いばねを配置することで、高周波の振動伝達を抑えることができる。但し、ペイロードは上端がロケットに固定されず、下端のみが緩衝体などのばねに固定されるため、ペイロードはロッキング運動が大きくなるという問題がある。そこで、特許文献1では、複数のダンパを組み合わせることによって、並進運動と回転運動を減衰させている。また、特許文献2では、鉛直シリンダと、鉛直シリンダに接続された水平シリンダからなる緩衝シリンダ装置を備えることで、ロケット機軸方向の振動とペイロードのロッキングを同時に抑制している。さらに、特許文献3では、機軸方向に剛性の低い積層ゴムを配置すると共に、トーションバーを配置することで、ペイロードのロッキング運動を抑えることを可能にしている。
【0006】
しかし、特許文献1〜3の制振機構は、構成部品が多く複雑であり、打ち上げ用ロケットの重量が増加するという問題がある。また、この制振機構は、各部品のコストや組み立てコスト、製品管理に必要なコストが高価である。さらに、複雑な機構であることから、制振機構全体の信頼性を確保することが困難である。すなわち、制振機構を構成する積層ゴムやリンク機構の動特性の非線形性、温度特性、組立公差などのばらつきなど複数の要因があるため、安定した品質を確保しづらいという問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、簡易な構造でペイロードに入力される振動を低減することが可能なアダプタおよびペイロード打ち上げ用ロケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のアダプタおよびペイロード打ち上げ用ロケットは以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係るアダプタは、ペイロード打ち上げ用ロケットに収容されるペイロードの振動を抑制する、ペイロードとロケット部の間に設けられたアダプタであって、外筒と内筒を有する二重構造の筒部材と、筒部材の一端で外筒と内筒に結合した第1の弾性部材と、筒部材の他端で外筒と内筒に結合した第2の弾性部材とを備え、筒部材の一端側の内筒側または外筒側でペイロードと連結し、筒部材の他端側の外筒側または内筒側でロケット部の先端と連結する。
【0009】
本発明によれば、筒部材は、一端で第1の弾性部材と結合し他端で第2の弾性部材と結合しつつ、筒部材の一端の内筒側(又は外筒側)において人工衛星などのペイロードと連結し、筒部材の他端の外筒側に(又は内筒側)おいてロケット部先端と連結する。そして、ロケット機軸方向の振動荷重が入力されたとき、第1の弾性部材と第2の弾性部材が機軸方向に曲げ変形して、ペイロードの機軸方向の振動を抑制し、ロッキング振動が入力されたとき、第1の弾性部材と第2の弾性部材が軸力方向の剛性で抵抗してペイロードのロッキング振動を抑制する。筒部材は円錐台形状でもよいし円柱形状でもよく、また平面が円形状に限られず、四角などの多角形状を有する多角錐台形状また多角柱形状でもよい。
【0010】
上記発明において、第1の弾性部材または第2の弾性部材は、ロケット機軸方向に対して垂直方向の剛性がロケット機軸方向の剛性よりも大きいことが望ましい。
【0011】
本発明によれば、第1の弾性部材または第2の弾性部材は、曲げ剛性が低く、引張剛性および圧縮剛性が高くなり、ロケット機軸方向の振動に対しては曲げ変形で柔らかく振動を抑制し、ロッキング振動に対しては軸力方向に剛となり振動を抑制する。第1の弾性部材または第2の弾性部材は、例えば内筒と外筒に結合したリング形状の板ばね、または内筒と外筒に結合し上部または下部から見たとき放射状に設けられた複数の棒状部材でもよい。
【0012】
上記発明において、第1の弾性部材または第2の弾性部材に沿って第1の減衰部材が設けられてもよい。
【0013】
本発明によれば、第1の減衰部材によって、ペイロードに入力されたロケット機軸方向の振動やロッキング振動を効率良く減衰させることができる。第1の減衰部材は、例えば、第1の弾性部材または第2の弾性部材が板ばねであるとき、板ばねに貼付された粘弾性部材である。粘弾性部材は拘束材と板ばねに挟まれるように設置されてもよい。拘束材は板ばねよりも変形が小さい部材とすることで粘弾性部材を更にひずませることができる。
【0014】
上記発明において、外筒と内筒の間に第2の減衰部材が設けられてもよい。
【0015】
本発明によれば、ペイロードに入力されたロケット機軸方向の振動やロッキング振動を効率良く減衰させることができる。第2の減衰部材は、外筒と内筒からなる二重構造の間に設けられ、例えば、粘弾性部材またはワイヤーロープ(例えばエニダイン社製のワイヤーロープ防振器)である。
【0016】
上記発明において、第1の弾性部材または第2の弾性部材は板ばねであってもよい。
【0017】
第1の弾性部材または第2の弾性部材が板ばねであれば、構造上安定して、ペイロードのロケット機軸方向の振動を抑制したり、ロッキング振動を抑制したりすることができる。
【0018】
本発明に係るペイロード打ち上げ用ロケットは、上記いずれかの構成のアダプタが設けられている。
【0019】
本発明によれば、アダプタがペイロードのロケット機軸方向の振動を抑制し、ロッキング振動を抑制するため、制振機構として複雑な部材が不要となり、簡単かつ信頼性が高い構造で振動を低減できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡易な構造でペイロードに入力される振動を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の打ち上げ用ロケットの先端部分を示す縦断面図である。
【図2】本発明のアダプタを示す縦断面図である。
【図3】本発明のアダプタを示す斜視図である。
【図4】本発明のアダプタの一部を切り出した部分斜視図である。
【図5】本発明のアダプタの板ばね部、粘弾性部材および拘束材を示す部分拡大図である。
【図6】本発明のアダプタを示す縦断面図である。
【図7】本発明のアダプタを示す縦断面図である。
【図8】本発明のアダプタの変形例を示す上面図である。
【図9】従来のアダプタおよびばねによる支持方式を示す側面図である。
【図10】本発明のアダプタによる支持方式を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
まず、打ち上げ用ロケット10の構成について説明する。図1は、本発明の打ち上げ用ロケット10の先端部分を示す縦断面図である。
【0023】
打ち上げ用ロケット10は、アダプタ1と、ペイロード2と、ロケット部3と、フェアリング4などからなる。アダプタ1は、後述する構成を有しており、ペイロード2とロケット部3の間に設けられ、ロケット機軸方向の振動とロッキング振動を抑制する。ペイロード2は、例えば人工衛星や探査機などである。ペイロード2は、下端がアダプタ1の上端と接続されるが、上端は打ち上げ用ロケット10のいずれの箇所にも固定されずフリーとされた自由端となっている。
【0024】
ロケット部3は、燃料が搭載された燃料部と、ロケットエンジンなどからなる。ロケット部3は、上端がアダプタ1の下端と接続される。打ち上げ用ロケット10が例えば多段ロケットである場合、フェアリング4を閉じたまま一段ロケット部のロケットエンジンで一定の上空高さに到達した後、フェアリング4が分割され、二段ロケット部(例えば図1のロケット部3)のロケットエンジンでさらに推進して軌道上に到達する。その後、ペイロード2がアダプタ1から分離され、ペイロード2が軌道上を周回する。
【0025】
次に本発明のアダプタ1の構成について説明する。図2は、本発明のアダプタ1を示す縦断面図である。図3は、本発明のアダプタ1を示す斜視図である。図4は、本発明のアダプタ1の一部を切り出した部分斜視図である。
【0026】
アダプタ1は、例えば外筒11と、内筒12と、上板ばね21と、下板ばね22と、粘弾性部材31などからなる。
【0027】
外筒11と内筒12は、二重構造になっており、外筒11と内筒12との組み合わせによって、一つの筒部材が構成される。外筒11と内筒12の間は、粘弾性部材31が設置される以外は中空である。また、内筒12の内側も中空である。外筒11と内筒12はそれぞれ、図2および図3に示すように例えば円錐台形状である。
【0028】
外筒11と内筒12は、上板ばね21や下板ばね22よりも剛性は剛である。外筒11は、図4に示すように板部材11aとリブ11bからなる。すなわち、板部材11aがリブ11bによって補強されることによって剛性が確保されている。内筒12の構造も外筒11と同様である。なお、外筒11と内筒12の構造はこの例に限定されず、他の構成であってもよい。
【0029】
上板ばね21と下板ばね22はそれぞれ、第1の弾性部材、第2の弾性部材の一例であり、例えばリング形状である。上板ばね21は、外筒11と内筒12からなる筒部材の上端において、外筒11と内筒12の間に設けられ、下板ばね22は、外筒11と内筒12からなる筒部材の下端において、外筒11と内筒12の間に設けられる。上板ばね21、下板ばね22の外周は、外筒11と結合し、上板ばね21、下板ばね22の内周は、内筒12と結合する。上板ばね21、下板ばね22は、外筒11、内筒12と例えばファスナで結合される。
【0030】
上板ばね21と下板ばね22は、ロケット機軸方向に対して垂直方向(図2において左右方向)の剛性がロケット機軸方向(図2において上下方向)の剛性よりも大きい。上板ばね21と下板ばね22は、半径方向に切断したときの断面における半径方向の長さと板厚のアスペクト比は、半径方向の長さが長い。このような性質または形状を有することによって、上板ばね21と下板ばね22は、曲げ剛性が低く、引張剛性および圧縮剛性が高くなる。
【0031】
板ばねは一般に構造部材として実績のある部材であり、第1の弾性部材、第2の弾性部材を板ばねとすることで、アダプタ1は構造上安定して振動を抑制できる。
【0032】
なお、本発明は、第1の弾性部材、第2の弾性部材の一例として、上板ばね21と下板ばね22の場合について説明したが、本発明はこの例に限定されない。第1の弾性部材または第2の弾性部材は、ロケット機軸方向に対して垂直方向の剛性がロケット機軸方向の剛性よりも大きければよい。図8を用いて、第1の弾性部材の変形例を説明する。図8は、本発明のアダプタ1の変形例を示す上面図である。棒状部材23は、ロケット機軸方向に対して垂直方向の剛性がロケット機軸方向の剛性よりも大きい。なお、棒状部材23は、断面が円形でもよいし四角形などの多角形でもよい。そして、外筒11と内筒12の上端において、第1の弾性部材として複数の棒状部材23が放射状に配置される。外筒11と内筒12の下端にも同様に複数の棒状部材を放射状に配置してもよい。このような構成によって、外筒11と内筒12の間の部材は、上板ばね21と下板ばね22と同様に、曲げ剛性が低く、引張剛性および圧縮剛性が高くなる。
【0033】
図2に示した粘弾性部材31は、第2の減衰部材の一例であり、一端が外筒11に接続し他端が内筒12に接続して、外筒11と内筒12からなる二重構造の間に設けられる。粘弾性部材31が設けられることによって、アダプタ1はペイロード2に入力されたロケット機軸方向の振動やロッキング振動を効率良く減衰させることができる。粘弾性部材31は、例えばアクリル高分子であり、弾性的な性質を有しつつ、せん断力が入力されて変形したとき、変形力を熱エネルギーに変換して振動を減衰する。
【0034】
なお、本発明の第2の減衰部材は、上記の粘弾性部材31に限定されず、ワイヤーロープ(例えばエニダイン社製のワイヤーロープ防振器)でもよい。ワイヤーロープは、たわみによる弾性的な性質を有しつつ、ワイヤーロープ内の摩擦力を熱エネルギーに変換して振動を減衰する。
【0035】
上板ばね21と下板ばね22は、単一部材で構成されてもよいが、図5に示すように、板ばね部41に沿って粘弾性部材42が貼付されてもよい。図5は、本発明のアダプタ1の板ばね部41、粘弾性部材42および拘束材43を示す部分拡大図である。板ばね部41は、上板ばね21または下板ばね22である。粘弾性部材42は、第1の減衰部材の一例であり、拘束材43と板ばね部41に挟まれるように設置される。拘束材43は板ばね部41よりも変形が小さい部材とすることで粘弾性部材42を更にひずませることができる。粘弾性部材42は、上記の粘弾性部材31と同様の素材、性質を有する。
【0036】
アダプタ1は、打ち上げ用ロケット10に設置されるとき、筒部材の上端の内筒12側、すなわち図2や図4の符号21aで示す位置にてペイロード2と連結し、筒部材の下端の外筒11側、すなわち図2や図4の符号22aで示す位置にてロケット部3の先端と連結する。なお、アダプタ1は、筒部材の上端の外筒11側でペイロードと連結してもよく、このときは筒部材の下端の内筒12側がロケット部3の先端と連結する。
【0037】
次に、本発明のアダプタ1の作用について説明する。ここでは、アダプタ1が、筒部材の上端の内筒12側でペイロード2と連結し、筒部材の下端の外筒11側でロケット部3の先端と連結している場合について説明する。図6および図7は、本発明のアダプタ1を示す縦断面図である。図6は、ロケット機軸方向の振動を受けて、アダプタ1の内筒12が機軸方向に移動している状態を示し、図7は、ロッキング振動を受けて、アダプタ1の内筒12が外筒11内で回転方向に変位している状態を示す。
【0038】
アダプタ1にロケット機軸方向の振動が入力されると、図6に示すように、上板ばね21と下板ばね22が外筒11と連結した端部を固定端とし、他側端部、すなわち内筒12と連結した端部を自由端として曲げ変形する。その結果、アダプタ1は、上板ばね21と下板ばね22の曲げ変形によって、ロケット機軸方向の振動を柔らかく抑制できる。
【0039】
一方、例えばペイロード2がロッキング運動をして、アダプタ1にロッキング振動が入力されると、図7に示すように、上板ばね21と下板ばね22が軸力方向(すなわちロケット機軸方向に対して垂直方向)の剛性で抵抗して、ペイロード2のロッキング振動を抑制できる。
【0040】
上板ばね21と下板ばね22がロケット機軸方向にアーム長を持たせて2点配置されているため、本発明のアダプタはロッキング振動に対する剛性を高めることができる。
【0041】
また、外筒11と内筒12の間に粘弾性部材31などが設けられている場合や、上板ばね21や下板ばね22に沿って粘弾性材42が設けられている場合には、ペイロード2に入力されたロケット機軸方向の振動やロッキング振動を効率良く減衰させることができる。
【0042】
アダプタの従来品は一重構造であり、本発明のアダプタ1は二重構造となるが、外筒11と内筒12の組み合わせで従来のアダプタと同強度とすればよく、従来のアダプタに比べてトータル重量の増加は最小限に抑えられる。また、本発明は、積層ゴムやトーションバーといった機能品が不要であり、重量の増加を最小限に留められる。
【0043】
また、アダプタ1は、外筒11と内筒12が既存のアダプタとほぼ同形状であり、既存のアダプタの製造技術を流用することができる。さらに、アダプタ1は、組み立てが容易であり、構造が比較的簡易であることから製品管理を少なくすることができる。その結果、本発明のアダプタ1は製造コストの上昇を抑えることができる。
【0044】
またさらに、本発明のアダプタ1は、ロケット機軸方向の振動やロッキング振動を抑制できることから、従来のアダプタと制振機構を兼用した機能を有しており、アダプタ1を打ち上げ用ロケット10に採用することによって、従来のような制振機構が不要になる。そのため、図1のように従来のペイロードの上端位置が二点鎖線で示す2aであったとすると、従来必要とした制振機構の高さ分だけ、ペイロード2の位置を下げることができる。したがって、打ち上げ用ロケット10のフェアリング4内スペースを従来に比べて広く確保できる。
【0045】
また、従来の制振機構に設けられていた複雑な摺動部などがなく、本発明のアダプタ1は、製品信頼性が高い。
【0046】
以上より、本発明のアダプタ1は、ペイロードに入力されるロケット機軸方向の振動に対しては曲げ変形で柔らかく振動を抑制し、ロッキング振動に対しては軸力方向に剛となり振動を抑制する。また、本発明のアダプタ1は従来のアダプタの構造様式を流用した簡易な構造である。
【0047】
次に、ペイロード2の一例として標準的な人工衛星を仮定し、本発明のアダプタ1と従来のアダプタ5を試設計した例について説明する。従来のアダプタ5は一重構造であり、図9に示すように、アダプタ5の下面に機軸方向に弾性を有してアダプタ5を支持するばね6が設置される。図9は、従来のアダプタ5およびばね6による支持方式を示す側面図である。
【0048】
一方、本発明のアダプタ1は上述した構成を有し二重構造である。アダプタ1は、上端の符号21aで示す位置にて人工衛星2を支持し、下端の符号22aで示す位置にて地面に接して支持される。図10は、本発明のアダプタ1による支持方式を示す側面図である。このとき、従来のアダプタ5およびばね6の支持方式と本発明のアダプタ1による支持方式それぞれについて、機軸方向とロッキング方向の固有振動数を比較する。機軸方向の剛性を同等とした場合にロッキング方向の固有振動数を比較した結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
表1の結果から分かるように、本発明のアダプタ1による支持方式の固有振動数は、従来の支持方式に比べて、ロッキング方向の固有振動数が2.5倍になる。これは、本発明のアダプタ1による支持方式によるロッキング剛性が、従来の支持方式に比べて6.3倍になっていることを示す。すなわち、本発明のアダプタ1を採用することによって機軸方向の剛性を下げた場合でも、ロッキング剛性の過度な低下を防止できる。なお、アダプタ1のサイジングによって、さらにロッキング剛性を向上させることができる。
【0051】
なお、上記説明では、外筒と内筒を有する二重構造の筒部材に設けられる第1の弾性部材または第2の弾性部材が、ロケット機軸方向に対して垂直方向の剛性がロケット機軸方向の剛性よりも大きいことによって、アダプタは、ロケット機軸方向の振動荷重が入力されたとき、ペイロードの機軸方向の振動を抑制し、ロッキング振動が入力されたとき、ペイロードのロッキング振動を抑制するとした。一方、本発明はこの例に限定されず、アダプタが、ロケット機軸方向の振動荷重が入力されたとき、ペイロードの機軸方向の振動を抑制し、ロッキング振動が入力されたとき、ペイロードのロッキング振動を抑制するものであればよい。したがって、そのようなアダプタを構成することができる部材であれば、上述した第1の弾性部材または第2の弾性部材のように、ロケット機軸方向に対して垂直方向の剛性がロケット機軸方向の剛性よりも大きい部材ではなくてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 アダプタ
2 ペイロード
3 ロケット部
4 フェアリング
10 打ち上げ用ロケット
11 外筒
12 内筒
21 上板ばね(第1の弾性部材)
22 下板ばね(第2の弾性部材)
31 粘弾性部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペイロード打ち上げ用ロケットに収容されるペイロードの振動を抑制する、ペイロードとロケット部の間に設けられたアダプタであって、
外筒と内筒を有する二重構造の筒部材と、
前記筒部材の一端で前記外筒と前記内筒に結合した第1の弾性部材と、
前記筒部材の他端で前記外筒と前記内筒に結合した第2の弾性部材と、
を備え、
前記筒部材の一端側の前記内筒側または前記外筒側で前記ペイロードと連結し、前記筒部材の他端側の前記外筒側または前記内筒側でロケット部の先端と連結することを特徴とするアダプタ。
【請求項2】
前記第1の弾性部材または前記第2の弾性部材は、ロケット機軸方向に対して垂直方向の剛性がロケット機軸方向の剛性よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のアダプタ。
【請求項3】
前記第1の弾性部材または前記第2の弾性部材に沿って第1の減衰部材が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のアダプタ。
【請求項4】
前記外筒と前記内筒の間に第2の減衰部材が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のアダプタ。
【請求項5】
前記第1の弾性部材または前記第2の弾性部材は板ばねであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のアダプタ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のアダプタが設けられたことを特徴とするペイロード打ち上げ用ロケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−131410(P2012−131410A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286138(P2010−286138)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】