説明

アッセイ測定のための方法および装置

正規化された曝露量を確立する共振デバイスの表面のかなりの面積にわたって複数の結合で材料エレメントを結合することを含むアッセイを実施する方法および装置。この方法および装置はさらに、材料エレメントに適用される外部影響を第1期間にわたって制御することと、表面に結合した材料エレメントの量の、正規化された曝露量に対する変化を示す信号を第2期間にわたって測定することとを含む。場合によっては、測定された信号を時間で積分して、表面に結合した材料エレメントの時間平均量を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、アッセイ測定を行う方法および装置に関し、詳細には生物アッセイ測定に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景技術)
アッセイ測定技術の目標は、溶解している標的分析物の量を、1つには、少なくとも1つの捕捉作用物質または捕捉プローブ(本明細書では捕捉作用物質と称する)を用いて標的分析物を捕捉することによって測定することである。ある種のケースでは、第1の、すなわち主要な捕捉作用物質をセンサ表面または微粒子表面などの表面に固定する。サンドイッチアッセイの場合と同様に、第2捕捉作用物質を使用してそれを同時に(特異的に、または非特異的に、あるいは交差反応会合により)分析物と結合させることができる。試料中に分析物が存在しないときでも、非特異的な表面会合のために、試料中の材料が少量ではあるが結合し得る。結合した標的分析物の量は通常、結合工程および洗浄工程(例えば、非標的材料を洗浄して除去する工程)を実施した後で記録された信号の大きさと、分析物を含む試料に上記表面を曝露する前に記録された基底信号とを比較することによって定量化される。
【0003】
従来方式のアッセイ測定技術で用いられる定量法は精度の点で限界がある。というのは、こうした定量法では、例えば、複数の異なる装置の出力変動が補償されず、アッセイを実施する時間にわたって複数の測定値を提供する有効な手段や、障害となるバックグラウンド材料を動作中の装置から除去する信頼性のある手段が提供されないからである。さらに、ある種のアッセイ測定技術は、追加のハードウエアを使用して複数の異なる装置の出力変動を補償する手の込んだ技術を必要とする。
【0004】
また、従来方式のアッセイ測定技術には、試料調製の誤り、流体混合の間違い、アッセイ材料の物理的性質の変化、および流体の流れの変動などによるアッセイ不良を識別するための適切な手段もない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、改善されたアッセイ測定用の装置および方法、ならびに、品質保証および品質管理用の方法および装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、一態様では、アッセイ測定装置に流体が導入されたかどうかを判定する方法に関するものである。この方法は、共振デバイスの表面に流体を送ることを含む。この方法はさらに、共振デバイスによって出力された(例えば、時間の関数としての)電気信号をモニターすることを含む。この電気信号の性質は、共振デバイスの表面と接触する流体の物理的な性質に基づいて変化する。この方法はさらに、共振デバイスによって出力された電気信号が、流体の存在を示す所定の条件を満たすかどうかを判定することを含む。
【0007】
ある種の実施形態では、この方法は、共振デバイスの表面に第2流体を送ることと、共振デバイスによって出力された電気信号を時間の関数としてモニターすることと、共振デバイスによって出力された電気信号が第2の所定の条件を満たすかどうかを判定することとを含む。ある種の実施形態では、共振デバイスによって出力された電気信号は、電気信号の値が指定された値よりも大きいか、または小さい場合に所定の条件を満たす。ある種の実施形態では、共振デバイスによって出力された電気信号は、電気信号の値が最小値と最大値との間にある場合に所定の条件を満たす。共振デバイスによって出力された電気信号の様々な性質をモニターすることができる。ある種の実施形態では、共振デバイスによって出力された電気信号の変化率をモニターして、例えば、流体の流量、ポンプの動作、または共振デバイスの表面近傍の流体の流れのパターンに問題があるかどうかを判定する。
【0008】
ある種の実施形態では、流体は磁性粒子を含む。ある種の実施形態では、流体は生物学的試料を含む。ある種の実施形態では、流体を送ることは、チャネルを通して、または共振デバイスの表面の上で流体をポンプで送ることを含む。
【0009】
本発明は、別の態様では、アッセイ測定装置に流体が導入されたかどうかを判定する方法に関するものである。この方法は、共振デバイスの表面に第1流体を送ることを含む。この方法はさらに、第1流体が共振デバイスの表面と接触することに応答して、共振デバイスによって出力された第1電気信号をモニターすることを含む。この方法はさらに、共振デバイスの表面に第2流体を送ることを含む。この方法はさらに、第2流体が共振デバイスの表面と接触することに応答して、共振デバイスによって出力された第2信号をモニターすることを含む。この方法はさらに、共振デバイスによって出力された第1信号および第2信号が所定の条件を満たすかどうかを判定することを含む。
【0010】
ある種の実施形態では、共振デバイスによって出力された第1信号および第2信号は、第1信号と第2信号との間の値の差が最小値と最大値との間にある場合に所定の条件を満たす。ある種の実施形態では、第1流体および第2流体を送ることは、チャネルを通して第1流体および第2流体をポンプで送ることを含む。
【0011】
本発明は、別の態様では、アッセイ測定装置内の流体の流量を決定する方法に関するものである。この方法は、共振デバイスの表面に流体を送るチャネルに流体を導入することを含み、共振デバイスは、共振デバイスの表面と接触する物質の物理的な性質に基づいて電気信号を出力する。この方法はさらに、共振デバイスによって出力された(例えば、時間の関数としての)電気信号をモニターすることを含む。この方法はさらに、チャネルの幾何学的性質および共振デバイスによって出力された電気信号に基づいて流体の流量を決定することを含む。
【0012】
この流体は粒子を含み得る。ある種の実施形態では、流体の流量を決定することは、流体がチャネルに導入された後で粒子が共振デバイスの表面と接触する時間を決定することを含む。ある種の実施形態では、粒子が共振デバイスの表面と接触する時間は、共振デバイスによって出力された電気信号がいつ変化するかに基づいて決定される。ある種の実施形態では、流体の流量を決定することは、流体がチャネルに導入された後で、共振デバイスによって出力された電気信号がいつ変化するかに基づいて、流体が共振デバイスの表面と接触する時間を決定することを含む。
【0013】
本発明は、別の態様では、アッセイ測定装置を特徴とする。このアッセイ測定装置は、流体が入る少なくとも1つの開口を有する流体チャンバを備える。このアッセイ測定装置は、流体チャンバの少なくとも1つの内面の少なくとも一部を規定する共振デバイスを備える。このアッセイ測定装置は、共振デバイスによって出力された少なくとも1つの信号をモニターするための手段を備える。このアッセイ測定装置は、共振デバイスによって出力された電気信号が特定の流体の存在を示す所定の条件を満たすかどうかを判定するための手段も備える。
【0014】
本発明は、別の態様では、流体の流量を決定する方法に関するものである。この方法は、分析物を含む流体と、分析物に親和性を有する捕捉作用物質を含む複数の磁性粒子とを混合して、少なくとも一部の分析物に結合した少なくとも一部の磁性粒子を生成することを含む。この方法はさらに、混合された流体をチャネルを通して流体チャンバ中に方向付けることを含み、共振デバイスの少なくとも1つの表面は、流体チャンバ内の流体と流体連通する。この方法はさらに、共振デバイス近傍に第1磁束を生成して、複数の結合した磁性粒子の少なくとも一部を共振デバイスの少なくとも1つの表面に磁気的に引き寄せることを含む。この方法はさらに、チャネルおよび流体チャンバの幾何学的性質ならびに共振デバイスによって出力された電気信号に基づいて、チャネルおよび流体チャンバを通過する流体の流量を決定することを含む。
【0015】
ある種の実施形態では、流体の流量を決定することは、流体がチャネルに導入された後で、共振デバイスによって出力された電気信号がいつ変化するかに基づいて、流体が共振デバイスの表面と接触する時間を決定することを含む。ある種の実施形態では、共振デバイスによって出力された電気信号は、磁性粒子が共振デバイスの少なくとも1つの表面と接触するときに変化する。
【0016】
本発明は、別の態様では、アッセイ測定準備方法に関するものである。この方法は、分析物を含む流体と、分析物に親和性を有する捕捉作用物質を含む複数の磁性粒子とを混合して、分析物に結合した磁性粒子を生成することを含む。この方法はさらに、混合された流体をチャネルを通して流体チャンバ中に方向付けることを含み、共振デバイスの少なくとも1つの表面は、流体チャンバ内の流体と流体連通する。この方法はさらに、共振デバイス近傍に第1磁束を生成して、磁性粒子を共振デバイスの少なくとも1つの表面に磁気的に引き寄せることを含む。この方法はさらに、共振デバイスによって出力される電気信号に基づいて、分析物を含む流体が所定量の磁性粒子と混合されたかどうかを判定することを含む。
【0017】
本発明は、別の態様では、分析物を含む流体に磁性粒子が適切にドーズされたかどうかを判定することを含む。この方法は、分析物を含む流体と、分析物に親和性を有する捕捉作用物質を含む所定数の磁性粒子とを混合して、分析物に結合した磁性粒子を生成することを含む。この方法はさらに、混合された流体を共振デバイスの表面に送ることを含む。この方法はさらに、共振デバイス近傍に第1磁束を生成して、磁性粒子を共振デバイスの少なくとも1つの表面に磁気的に引き寄せることを含む。この方法はさらに、共振デバイスから出力される電気信号に基づいて、分析物を含む流体に磁性粒子が適切にドーズされたかどうかを判定することを含む。ある種の実施形態では、分析物を含む流体に磁性粒子が適切にドーズされたかどうかを判定する方法はさらに、共振デバイスから出力される電気信号に基づいて、分析物を含む正しい体積の流体と、所定数の磁性粒子が混合されたかどうかを判定することを含む。
【0018】
本発明は、一態様では、アッセイを実施する方法に関するするものである。この方法は、正規化された曝露量を確立する共振デバイスの表面のかなりの面積にわたって複数の結合で材料エレメントを結合することを含む。この方法はさらに、材料エレメントに適用される外部影響を第1期間にわたって変化させることを含む。この方法はさらに、第2期間にわたって信号を時間で積分して、表面に結合した材料エレメントの時間平均量を決定することを含む。
【0019】
本発明は、別の態様では、アッセイを行う前にアッセイ測定装置の較正を必要としないアッセイを実施する方法を特徴とする。
【0020】
本発明は、別の態様では、アッセイを実施する方法に関するものである。この方法は、正規化された曝露量を確立する共振デバイスの表面のかなりの面積にわたって複数の結合で材料エレメント(例えば、磁性粒子、常磁性粒子、金粒子、マイクロスフェア、またはビーズ)を結合することを含む。この方法はさらに、材料エレメントに適用される外部影響を第1期間にわたって制御することを含む。この方法はさらに、表面に結合した材料エレメントの量の、正規化された曝露量に対する変化を示す信号を第2期間にわたって測定することを含む。
【0021】
ある種の実施形態では、この方法はさらに、第2期間中に表面に結合した材料エレメントの量の、正規化された曝露量に対する変化に基づいて、材料エレメントと表面との間に存在する物質の濃度を決定することを含む。材料エレメントと表面との間に存在する物質により、材料エレメントは表面に結合し得る。ある種の実施形態では、この方法はさらに、外部影響に応答して表面から放出(分離)される材料エレメントの量と外部影響とを相関させることを含む。ある種の実施形態では、この方法はさらに、測定された信号の値を時間で積分して、表面に結合した材料エレメントの時間平均量を決定することを含む。
【0022】
外部影響を制御することは外部影響を変化させることを含み得る。ある種の実施形態では、この方法はさらに、表面に結合する材料エレメントの量の変化を外部影響の変化に相関させることを含む。外部影響を適用することは、例えば、材料エレメントの上か、材料エレメントを通過してか、あるいは材料エレメントを横切って流体を流すことを含み得る。外部影響を適用することは、材料エレメントと表面との間に相対的な加速を作り出すことも含み得る。
【0023】
ある種の実施形態では、材料エレメントは磁性体であり、外部影響を適用することは、材料エレメントと反対の磁場勾配を適用することを含む。ある種の実施形態では、外部影響を適用することは、一定か、または時間変化する電場に材料エレメントを曝露して、材料エレメントに作用する電気泳動力または誘電泳動力を誘起することを含む。ある種の実施形態では、外部影響を適用することは、共振デバイスによって生成される音響場または流体の流れ場に材料エレメントを曝露することを含む。
【0024】
ある種の実施形態では、外部影響を適用することは、材料エレメントと表面との間の結合力の強さを変化させることを含む。結合力の強さを変化させることは、流体のpHを変化させること、材料エレメントの上に変性剤を流すこと、流体の温度を変化させること、あるいはこれらの組合せを含み得る。ある種の実施形態では、材料エレメントに外部影響を適用することは、材料エレメントと表面との間の相対変位(relative displacement)の大きさを大きくすることを含む。ある種の実施形態では、材料エレメントに外部影響を適用することは、第2期間にわたって外部影響を変化させることを含む。ある種の実施形態では、外部影響を適用することは、材料エレメントにかかる力を生成することを含み、前記力は、材料エレメントと表面との間の結合と競合するものである。
【0025】
ある種の実施形態では、第2期間中に信号を測定することは、表面プラズモン共鳴装置、共振デバイス、音響デバイス、たわみ板波(flexural plate wave)デバイス、水晶微量天秤(quartz crystal microbalance)デバイス、および顕微鏡からなる群から選択した装置を使用して実施される。この表面はこの装置の表面である。
【0026】
第2期間中に信号を測定することは、第2期間中に表面に結合する材料エレメントの量の変化を連続的に測定することを含み得る。ある種の実施形態では、表面に結合する材料エレメントの量の変化を測定することは、第1期間中に材料エレメントが表面に結合する速度を測定することを含む。第1期間は第2期間に部分的に、または完全に重なり合うことがある。結合は、特異的会合、非特異的会合、交差反応会合、イオン結合、共有結合、ファンデルワールス結合、水素結合、または極性結合とし得る。
【0027】
ある種の実施形態では、材料エレメントは、共振デバイスの表面に材料エレメントを結合させる前に試料中の物質に曝露される。ある種の実施形態では、この方法はさらに、材料エレメントと表面との間にある物質の濃度に基づいて、試料中にある物質の濃度を決定することを含む。
【0028】
本発明は、別の態様では、アッセイを実施する装置を特徴とする。この装置は、表面を有する共振デバイスを備える。この装置はさらに、複数の材料エレメント(例えば、磁性粒子、常磁性粒子、金粒子、マイクロスフェア、またはビーズ)を表面に結合し、かつ複数の材料エレメントと表面との間に物質を挟むことができ、それによって、物質と複数の材料エレメントとの間に複数の結合が形成され、かつ正規化された曝露量が確立される結合物質または結合のための手段を備える。この装置はさらに、第1期間にわたって材料エレメントに外部影響を適用するための供給源を備える。この装置はさらに、表面に結合した材料エレメントの量の、正規化された曝露量に対する変化を示す信号を測定する測定デバイスを備える。
【0029】
ある種の実施形態では、外部影響を適用するための供給源は、材料エレメントの上の、または材料エレメントを通過する、あるいは材料エレメントを横切る流体の流れを制御する。ある種の実施形態では、材料エレメントは磁性体であり、外部影響を適用するための供給源は、材料エレメントと反対の磁場勾配を適用する。ある種の実施形態では、外部影響を適用するための供給源は、一定か、または時間変化する電場に材料エレメントを曝露して、材料エレメントに作用する電気泳動力または誘電泳動力を誘起する。ある種の実施形態では、外部影響を適用するための供給源は、共振デバイスによって生成される音響場または流体の流れ場に材料エレメントを曝露する。
【0030】
共振デバイスは、例えば、音響デバイス、たわみ板波デバイス、表面音響波デバイス、ラム波デバイス、共鳴カンチレバーデバイス、シアーハーモニック表面音響波デバイス、音響プレートモードデバイス、または水晶微量天秤デバイスとし得る。ある種の実施形態では、測定デバイスは、表面プラズモン共鳴装置、共振デバイス、音響デバイス、たわみ板波デバイス、水晶微量天秤デバイス、または顕微鏡である。ある種の実施形態では、外部影響を適用するための供給源は測定デバイスでもある。
【0031】
本発明は、別の態様では、アッセイを実施する方法に関するものである。この方法は、正規化された曝露量を確立する表面のかなりの面積にわたって複数の結合で材料エレメントを結合することを含む。この方法はさらに、第1期間にわたって材料エレメントに外部影響を適用することを含む。この方法はさらに、表面に結合した材料エレメントの量の、正規化された曝露量に対する変化を示す光学信号を第2期間にわたって測定することを含む。この方法はさらに、光学信号の値を時間で積分して、表面に結合した材料エレメントの時間平均量を決定することを含む。
【0032】
ある種の実施形態では、この方法はさらに、第2期間中に表面に結合した材料エレメントの量の、正規化された曝露量に対する変化に基づいて、材料エレメントと表面との間に存在する元の試料中の物質の濃度を決定することを含む。ある種の実施形態では、材料エレメントと表面との間に存在する物質により、材料エレメントは表面に結合する。
【0033】
ある種の実施形態では、この方法はさらに、外部影響に応答して表面から放出される材料エレメントの量と外部影響とを相関させることを含む。外部影響を適用することは、材料エレメントの上か、材料エレメントを通過してか、あるいは材料エレメントを横切って流体を流すことを含み得る。ある種の実施形態では、外部影響を適用することは、一定か、または時間変化する電場に材料エレメントを曝露して、材料エレメントに作用する電気泳動力または誘電泳動力を誘起することを含む。ある種の実施形態では、外部影響を適用することは、共振デバイスによって生成される音響場または流体の流れ場に材料エレメントを曝露することを含む。
【0034】
ある種の実施形態では、外部影響を適用することは、材料エレメントと表面との間の結合力の強さを変化させることを含む。結合力の強さを変化させることは、流体のpHを変化させること、材料エレメントの上に変性剤を流すこと、流体の温度を変化させること、あるいはこれらの組合せを含み得る。
【0035】
ある種の実施形態では、第2期間中に光学信号を測定することは、表面プラズモン共鳴装置、顕微鏡、または(非共鳴散乱装置(例えば、蛍光測定装置)を含む)光散乱測定装置からなる群から選択した装置を使用して実施される。この表面はこの装置の表面とし得る。
【0036】
粒子は、例えば、磁性粒子、常磁性粒子、金粒子、マイクロスフェア、またはビーズとし得る。ある種の実施形態では、粒子は蛍光性である。ある種の実施形態では、光学信号を測定することは、粒子または粒子に結合した物質の反射率、透過率、または蛍光を測定することを含む。
【0037】
本発明は、別の態様では、アッセイを実施する装置を特徴とする。この装置は表面を備え、結合物質または結合のための手段は、複数の材料エレメントを表面に結合し、かつ複数の材料エレメントと表面との間に物質を挟むことができ、それによって、物質と複数の材料の間に複数の結合が形成され、かつ正規化された曝露量が確立される。この装置はさらに、第1期間にわたって材料エレメントに外部影響を適用するための供給源を備える。この装置はさらに、表面に結合した材料エレメントの量の、正規化された曝露量に対する変化を示す信号を測定する光学測定デバイスを備える。光学信号の値を時間で積分して、表面に結合した材料エレメントの時間平均量を決定する。
【0038】
ある種の実施形態では、外部影響を適用するための供給源は、材料エレメントの上の、または材料エレメントを通過する、あるいは材料エレメントを横切る流体の流れを制御する。ある種の実施形態では、材料エレメントは磁性体であり、外部影響を適用するための供給源は、材料エレメントと反対の磁場勾配を適用する。光学測定デバイスは、例えば、表面プラズモン共鳴装置、顕微鏡、または(非共鳴散乱装置(例えば、蛍光測定装置)を含む)光散乱測定装置からなる群から選択した装置とし得る。
【0039】
ある種の実施形態では、外部影響を適用するための供給源は、一定か、または時間変化する電場に材料エレメントを曝露して、材料エレメントに作用する電気泳動力または誘電泳動力を誘起する。ある種の実施形態では、外部影響を適用するための供給源は、共振デバイスによって生成される音響場または流体の流れ場に材料エレメントを曝露する。粒子は、例えば、磁性粒子、常磁性粒子、金粒子、マイクロスフェア、またはビーズとし得る。
【0040】
本発明は、別の態様では、アッセイを実施する装置を特徴とする。この装置は、正規化された曝露量を確立する共振デバイスの表面のかなりの面積にわたって複数の結合で材料エレメントを結合する手段を備える。この装置はさらに、材料エレメントに適用される外部影響を第1期間にわたって制御する手段を備える。この装置はさらに、表面に結合した材料エレメントの量の、正規化された曝露量に対する変化を示す信号を第2期間にわたって測定する手段を備える。
【0041】
本発明の上記その他の目的、特徴、および利点、ならびに本発明自体は、以下の説明を添付の図面と併せ読めばより完全に理解されよう。ただし、図面は必ずしも原寸に比例していない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
(例示的な実施形態の詳細な説明)
本発明は、複数の材料エレメントの表面と第2の表面との間の結合(または会合)強度と分離(または解離)強度を、これらの表面の一方または両方に作用する外部影響の存在下で比較することを含むアッセイ測定法を対象としている。この外部影響は、材料エレメントと第2表面の結合と競合するものである。本発明の特定の実施形態は、例えば、第2表面に結合した材料エレメントの量の、正規化された曝露量に対する変化を示す信号を測定することも含む。本発明の別の実施形態は、測定された信号を時間で積分して、第2表面に結合した材料エレメントの時間平均量を決定することも含む。
【0043】
本発明の実施形態では、アッセイ測定装置の絶対較正が不要である。例えば、ある種の実施形態では、複数の材料エレメントが結合する表面は、共振デバイスの表面である。この共振デバイスは、装置の相対周波数シフトを測定し、アッセイ測定装置電子回路の周波数または振幅の絶対較正を必要としない。さらに、この方法は、複数の時点で信号を比較することによって単一の装置に蓄積された材料の量の相対変化を測定することを含むので、装置(例えば、FPW装置)自体の、その表面に蓄積する材料に対する応答は、例えば、生物試薬のばらつきの較正を除き、アッセイを実施する前に較正する必要がない。生物試薬のばらつきの較正はロットごとに行うことがあり、制御装置を必要とする。この較正を除き、本発明の実施形態は、アッセイ測定装置(信号変換手段)に求められる較正の量を減らすことができるという利点を有する。そのため、組立および試験中に較正ステップが不要なので装置の製造コストを下げることができる。
【0044】
さらに、本発明の方法により、アッセイが、特定の分析物と結合させるか、特定の分析物を捕捉するために試料と相互作用させる、または(例えば、ピペットによって)混合する材料エレメント(例えば、ビーズ)の量の変動を受けにくくなる。この方法では、蓄積期間中に装置の表面に集まる材料エレメントの総量で正規化するので、この方法は一般にこれらの変動に対して鈍感である。
【0045】
共振デバイスを含むアッセイ測定装置の較正の必要性が低くなることは、分散型測定システムでは特に有利である。実験室環境外で行うアッセイが認められるには、システムは日常の較正なしで動作しなければならない。直接較正なしで動作することができ、追加された試薬(例えば、ビーズ)の変動に対する不感受性が改善されることにより、アッセイ測定方法が改善される。
【0046】
様々な測定アッセイ用のフォーマットおよび装置が本発明の範囲内で企図されている。例えば、表面の一方または両方に捕捉作用物質を配置することができる。例えば、複数の材料エレメント(例えば、ビーズ)の表面が特定の物質(例えば、特定の分析物)を結合し得る捕捉作用物質で被覆されたサンドイッチアッセイを実施することができる。この捕捉作用物質で被覆された材料エレメントは、特定の分析物を含む試料に曝露される。第2表面(例えば、共振デバイスの表面または光学的な表面)は、やはり特定の分析物と結合し得る捕捉作用物質で被覆される。捕捉作用物質で被覆された材料エレメントは、第2表面に曝露される。次いで、適切なアッセイ測定装置(例えば、共振デバイスに基づく測定装置または表面プラズモン共鳴装置)を使用して、例えば、第2表面に結合した特定の分析物の存在の有無を検出する。
【0047】
競合アッセイは、本発明の方法を適用することにより効果が得られるように実施し得る別のアッセイフォーマットの例である。複数の材料エレメント(例えば、ビーズ)の表面は、特定の物質(例えば、特定の分析物)と結合し得る捕捉作用物質で被覆される。捕捉作用物質で被覆された材料エレメントは、特定の分析物を含む試料に曝露される。第2表面(例えば、共振デバイスの表面または光学的な表面)は、これらの材料エレメントと結合し得る捕捉作用物質で被覆される。捕捉作用物質で被覆された材料エレメントは、第2表面に曝露される。特定の分析物が付着しない捕捉作用物質で被覆された材料エレメントは、第2表面に結合しやすい。特定の分析物が付着する捕捉作用物質で被覆された材料エレメントは、第2表面と結合しにくい。そのため、試料が大量の特定の分析物を含む場合、第2表面に結合する捕捉作用物質で被覆された材料エレメントの正味強度は小さくなる。
【0048】
本発明の一実施形態では、流体試料中の物質(例えば、分析物)は、材料エレメント(例えば、磁性ビーズ)の表面に結合して物質−材料エレメントの複合体を形成する。この複合体は、システムに傾斜磁場を加えることによって移動し、装置の表面(例えば、共振デバイスの表面)に局在化する。この磁場は、材料エレメントの磁性材料内で、局所磁力線に整列した分極を誘起する。材料エレメントは、この傾きの方向に正味の力を受け、そのため、材料エレメントは磁場の強さが大きい領域に向かって移動する。この磁場の分布は、流体試料中の複合体を装置表面に向けて引き寄せ、これらの複合体が装置表面全体にわたって分布するように調整される。流体試料中の無関係なバックグラウンド成分(例えば、細胞、タンパク質といった標的成分ではない成分)の磁気感受率は一般に、磁性材料エレメントの磁気感受率よりもはるかに低く、そのため、磁場がこれらのバックグラウンド成分に及ぼす影響は大きくない。したがって、装置表面と相互作用するバックグラウンド成分材料は極めて少ない。
【0049】
本発明の原理を組み込んだアッセイ測定装置の使用の例には、臨床診断、バイオアナリシス、バイオプロセス、工業分野での検出、防衛応用が含まれる。例えば、本発明を利用して、試料中で検出された分析物のレベルに基づいて、疾患を診断し、また、疾患の進展のリスクを評価することができる。さらに、本発明を利用して、例えば、試料中に存在する1つまたは複数の心臓マーカのレベルに基づいて患者が心臓発作を起こしたかなど、患者の症状を評価することができる。本発明を利用して、(例えば、細菌性、ウィルス性、または寄生性の)感染を検出し、かつ/または、その感染がどのくらい進んでいるのかを検出することができる。本発明により、分析物をリアルタイムで(すなわち、試料の分析中に)検出することができる。さらに、本発明を診察の時点で用いて、生物学的かつ/または臨床学的に関連する分析物を、(例えば、離れた試験施設に試料を送ることに関連する)遅れなく測定し、それによって、治療をカスタマイズし、患者のコンプライアンスレベルを上げることができる。
【0050】
図1Aは、本発明による、アッセイ測定を実施するのに使用するアッセイ測定装置100の一実施形態の概略図である。システム100は、様々な試験溶液(本明細書では「試験流体」または「流体」とも称する)をアッセイ装置104の表面143に輸送するチャネル102の網状構造を備える。下記の米国特許および米国特許出願には、本発明のアッセイ測定装置100で使用するのに適した様々なタイプのアッセイ装置の例が記載されている。これらは、米国特許第5129262号、米国特許第5189914号、米国特許第6688158B2号、米国特許第6851297号、米国特許第5668303号、米国特許第5836203号、および米国特許出願公開第2004−0038195号であり、これらすべてを参照によりここに組み込む。
【0051】
例えば、米国特許第5129262号には、ラム波伝播媒体を形成する材料の薄い平面シートを有する超音波センサが記載されている。板モード波としても知られるラム波は、有限厚さの材料を通過する形でしか伝播し得ない。表面音響波(SAW)は、伝播するSAWの波長の数百倍程度の厚さを有する伝播媒体を必要とするが、それとは異なり、ラム波は、最大でも数波長程度、典型的には、伝播するラム波の波長の何分の一かの厚さの伝播媒体を必要とする。このシートの厚さは約20μm以下である。ラム波生成器はこの平面シート内でラム波を発生させ、出力装置はこのシートに沿って伝播するラム波の伝播特性を表す電気信号を生成する。測定デバイスは、出力された電気信号の特性のうち選択されたものを測定する。この平面シートは、このシートに関わる測定値に依存するある種の物理的な特性を有し、この物理的な特性により、このシートに沿って伝播するラム波の伝播特性が決まる。出力装置からの電気信号は伝播特性を表すので、この電気信号はシートに関わる測定値も表す。
【0052】
米国特許第5129262号に記載のラム波デバイスは、例えば、生物を感知するのに使用することができる。上記で説明した平面シートは、捕捉作用物質であらかじめ被覆することができ、それによって、この捕捉作用物質と結合し得る分析物を含む液体に浸されるか、あるいは接触すると、この装置の周波数が変化する。伝播媒体の表面での分析物への捕捉作用物質の付着は、シート中でのラム波の波動速度を変化させるように作用する。波動速度の変化により、この装置の遅延線発振器の形態で振動周波数が変化する。また、捕捉作用物質と分析物の付着を速めるために、このシートは、多孔性かつ浸透性の材料で作製してもよく、それによって、シートのより大きな表面積に捕捉作用物質を被覆することができ、かつ、膜を貫通して液体を含む分析物を流すことができる。他の生物相互作用を感知することもできる。追加の応用例には、イムノアッセイ、検査室での臨床試験、in vivo生物医学モニタリング、および生物医学研究などがある。
【0053】
ここで説明する実施形態で使用する試験溶液には、例えば、阻止溶液106、試料108、および緩衝液110があるが、これらは貯留容器112から供給される。各貯留器112からのチャネル経路はバルブ114で開閉されて、アッセイ装置104の入口ポート118につながる合流点116への特定の試験溶液の流れが制御される。試験溶液は、アッセイ装置104を通過して流れ、出口ポート120から排出され、ポンプ122に至る。ポンプ122は、チャネル102の網状構造およびアッセイ装置104を通して試験溶液を引き込み、廃棄受け124に試験溶液を送る。
【0054】
図1Bに、アッセイ測定装置100の別の実施形態を示す。この実施形態では、アッセイ装置104およびそれに関連する流体チャンバ160をカートリッジ103(すなわち、取り外して交換し得る消耗品)としてパッケージする。ある種の実施形態は、装置104を通過する流れを変化させる栓、障壁、またはバフルなどの流体制御装置101も含み得る。一実施形態では、流体制御装置101は、流体制御装置101がない場合よりも、装置104を通過する流体の流れが表面143の近くを通過するように動作する。さらに、入力流体チャンバ105として図に示す入力試験溶液の供給源は、試験溶液をカートリッジ103の入口109に送る出口107を有する。ある種の実施形態では、まず磁性粒子が入力流体チャンバ105内に配置され、入力流体チャンバ105内で分析物を含む流体と磁性粒子が混合され、次いで、装置104が配置されているカートリッジ103に送られる。磁性粒子は、入力流体チャンバ105内で、ある装置によって(例えば、ポンプまたは磁気攪拌機の動作によって)分析物を含む流体と混合させることもできる。
【0055】
図1Bにはさらに、カートリッジ103の出口115から流体を受ける入口113を備えた出力流体チャンバ111が示されている。この出力流体チャンバ111は、本明細書で説明する流体制御装置の1つまたは複数を含み得る。また、出力流体チャンバ111は、廃棄流体を溜め、かつ/または処理するための1つまたは複数の機構も含み得る。ある種の実施形態では、装置100はチャンバ160を含まない。ある種の実施形態では、流体は、装置104の表面143への流体の流れを支えるのに適した単一の直線状の流体チャネルまたは流路によって装置104の表面143に提供される。
【0056】
少なくとも1つの実施形態では、入力流体チャンバ105の出口107とカートリッジ103の入口109とが交わる接合部は、接続および分離が繰り返し行い得るように構築され配置される。同様に、カートリッジ103の出口115と出力流体チャンバ111の入口113とが交わる接合部は、接続および分離が繰り返し行い得るように構築され配置される。ある種の実施形態では、これらの接合部は、接続および分離用の工具、例えば、結合および分離に関わるスパナまたは類似の工具を必要とするねじ付き継ぎ手を必要とするように構築され配置される。他の実施形態では、これらの接合部は、特別な工具や付属品なしで手作業での接続および分離が迅速かつ容易に行われるように構築され配置される。このような継ぎ手は、工具を必要とするものもしないものも当技術分野では周知のものである。ある種の実施形態では、入力流体チャンバおよび出力流体チャンバが複数ある。ある種の実施形態では、1つまたは複数の入力および/または出力用の流体チャンバはカートリッジ103の一部になっている。さらに、ある種の実施形態では、1つまたは複数の磁束供給源がカートリッジ103の一部になっている。
【0057】
図2に、図1Aおよび図1Bの装置104をより詳細に示す。この実施形態では、アッセイ装置104はFPW装置である。FPW装置104では、曲げおよび引張りの形で歪みエネルギーが伝えられる。ある種の実施形態では、FPW装置104の厚さと波長の比は1未満であることが望ましく、ある種の実施形態では、1よりもかなり小さいことが望ましい。一般に、FPW装置104の波長「λ」は、本明細書で説明するくし形電極のピッチにほぼ等しい。一実施形態では、FPW装置104の厚さと波長の比は2μm/38μmである。他の実施形態では、FPW装置104はこの装置に関連する、特定のモード(例えば、ゼロ次モードから高次モードまでの任意のモード)またはモードの帯域を分離するように設計される。例えば、上記で説明した厚さ/波長が2μm/38μmのFPW装置104は、FPW装置104の80次モードを分離する。FPW装置104は、くし形電極の特定のパターンを選択し、それを装置に被着させることによってこの効果を実現するように設計し得る。一実施形態では、FPW装置104の形状は矩形である。あるいは、FPW装置104は、円形または楕円形あるいは他の何らかの平面形状とし得る。
【0058】
一般に、FPW装置104は、当技術分野で周知の微細加工技術を利用してシリコンウエハ130から構築される。ここで説明する実施形態では、エッチングにより窪み132がウエハ130に形成され、それによって、長さ約1.6mm、幅約0.4mm、厚さ約2μmの薄い懸架膜134が生成される。ウエハ130の全体的な厚さは約500μmであり、そのため、窪み132の深さは、ウエハ130の厚さよりもわずかに小さくなる。図2Aの拡大挿入図に示すように、膜134の外面(すなわち、窪み132の反対側の表面)に厚さ0.5μmの窒化アルミニウム(AlN)の層を被着させる。AlN層上に2組のくし形金属電極138を被着させる。膜134の内面(すなわち、窪み132に面する表面)に金の薄い(約500Å)層140を被着させて、(本明細書でより詳細に説明する)捕捉作用物質の固定がうまくいくようにする。ある種の実施形態では、2組のくし形電極の一方は、膜134の(図2で見て)左半分に配置された作動部分または送出部分である。2組のくし形電極の他方は、膜134の(図2で見て)右半分に配置された感知部分または受信部分である。ある種の実施形態では、2組のくし形電極は、膜134の(図2の左から右に見た)長さに沿って並んで配置され、これら2組の一方は作動部分または送出部分であり、これら2組の他方は感知部分または受信部分である。
【0059】
ある種の実施形態では、(例えば、MEMS処理を利用して)微細加工した装置が好ましい。というのは、こうした装置は、容易かつ確実に濡らすことができるほぼ平面の感知区域(例えば、表面143)を有するように製作し得るからである。ある種の実施形態では、装置の表面に被覆または表面処理を施して表面の濡れ性を向上させる。図2および図2Aを参照すると、表面143付近の流体チャネルの幾何形状は、例えばDRIEエッチング処理または制御型KOHエッチング処理を利用して窪みをエッチングする微細加工処理によって正確に規定される。正確な体積流量の流体が外部影響として、装置100の表面143にもたらされる。流体の流れを制御することと、流体チャネルを規定することを組み合わせることにより、センサ表面全体にわたって高精度な流速が得られる。このように流れを高精度に制御すると、装置の表面に付着する様々な粒子の会合強度のわずかな違いを区別することができる。
【0060】
FPW装置(例えば、図2の装置104)は薄く、それによって、曝露された流体中に大きな磁場勾配を生成する装置のところで、あるいは装置の近くで磁場を緊密に作用させることができるので、アッセイ測定を行うのに有利である。磁場勾配が大きいと、材料エレメント(例えば、常磁性粒子)に対する引付け力が強くなり、それによって、曝露された試料からこれらの粒子を、それらが低濃度であってもより効率的に抽出することができる。磁場勾配が大きければ、装置の表面への非特異的な付着(例えば、細胞の付着)を低減するトランスデューサ表面にこれらの材料エレメントを引き寄せながら、流れがより強い状態でアッセイを実施することもできる。粒子をより低濃度で使用することができると、粒子の単位面積当たり捕捉される分析物をより多くすることができ、それによってセンサ表面による測定可能な会合/解離効果がより強くなるので、検出限界を下げることができる。
【0061】
動作においては、装置/制御電子回路126(図1A参照)は、少なくとも一方の組の電極138に時間変化する電気信号を印加して、懸架膜134内に振動を生じさせる。また、装置/制御電子回路126は、少なくとも第2の組の電極138からセンサ信号を受け取ることによって膜134の振動特性をモニターする。膜134の窪み132側に液体が接触すると、板構造の最大応答は約15〜25MHzになる。装置/制御電子回路126は、基準信号と、第2の組の電極からのセンサ信号とを比較して、センサ信号の相対的な大きさと位相角の変化を周波数の関数として決定する。装置/制御電子回路126は、これらの変化を解釈して特定の標的分析物の存在の有無を検出する。ある種の実施形態では、この装置/制御電子回路は、例えば、膜134の内面143上での分析物の濃度も決定する。
【0062】
ある種の実施形態では、共鳴型センサシステムが有利である。というのは、共鳴型センサシステムでは、センサ表面近傍の材料物質との相互作用の空間的な積分を、共振デバイスのモード形状に対して重み付けした形で表すリアルタイム信号が得られるからである。このタイプの信号は、フレームごとの光学画像列よりも有利なことがある。というのは、各フレームでの材料物質の量を評価するにはフレームを後処理しなければならないからである。リアルタイム信号により、中程度から高程度の忠実度で時間観察を行い、材料エレメントまたは分析物が共振デバイスの表面に結合(会合)する相対速度、ならびに材料エレメントまたは分析物が共振デバイスの表面から放出(解離)される速度を積分することができる。こうすると、外部影響が制御された状態で材料が表面と会合し、表面から解離する統計的な性質が観察され、かつ長時間にわたって蓄積され、それによって正規化された時間総計信号が得られる。
【0063】
本明細書で説明するように、対象とする分析物を標的にする捕捉作用物質は、膜134の内面を覆う金の薄い層140上で固定される。一実施形態では、チオール終端アルキル鎖は、金の表面に結合して自己組織化単分子層(SAM)を形成する。当技術分野では周知の生化学処理工程を利用して捕捉作用物質とSAM鎖との共有結合を得るために、SAM鎖のごく一部を反応性基(例えば、カルボキシル基)で終端させる。SAM鎖の残りの部分は、非反応性基、好ましくは非特異的な結合をしにくい親水性を有するもの(例えば、オリゴノマーまたはエチレングリコール)で終端させる。他の表面の化学的操作は文献に記載されており、捕捉表面を生成するのに利用し得る。
【0064】
FPW装置104は、膜134の外面の電極138が電気的に接続されるようにパッケージ化される。さらに、FPW装置104は、チャネルブロック142で機械的に支持され、それによって膜134の内面が試験溶液と接触し、センサ表面143と液体試料が接触する界面が得られる。チャネルブロック142により、入力ポート118から膜134の内面を通過して出口ポート120から出るように試験溶液を流すための経路(例えば、図1Bの流体チャンバ160)が生成される。FPW装置104とチャネルブロック142の間にシール144が形成され、それによって、FPW装置104とチャネルブロック142の組立品の中に形成されたチャネル102から試験溶液が流出しないようにする。このようにチャネルブロック142は流体チャンバを形成し、この流体チャンバの内壁の1つはFPW装置104である。
【0065】
FPW装置104とチャネルブロック142の組立品を貫通するチャネル102の直径は約0.5mmである。チャネルブロック142は様々な材料で形成することができるが、とりわけ、プラスチック、金属、またはセラミックが挙げられる。
【0066】
装置100は、少なくとも1つの流体の性質、いくつか例を挙げると、システム100内での流量、圧力、または軌跡を変化させる1つまたは複数の流体制御装置を備える。図1Aに示すポンプ122およびバルブ114は、様々な試験溶液が装置を通過し、表面143を流れるように方向づけ、かつ制御する(試験手順を実施するのに必要とされる)ものであり、どれも流体制御装置の例である。一般に、流体制御装置は、装置104の流体チャンバ160内の少なくとも1つの表面の近傍で少なくとも1つの流体の性質を変化させる。これは一般に、表面143の少なくとも一部に沿って磁性粒子を分布させるためになされる。先に述べたように、ある種の実施形態では、流体制御装置はポンプ(例えば、蠕動ポンプ、遠心ポンプ、回転ポンプ、電気浸透ポンプ)である。ある種の実施形態では、このポンプは流体チャンバの入口側に配置され、他の実施形態では、このポンプは流体チャンバの出口側に配置される。ある種の実施形態では、この装置は、流体チャンバの少なくとも1つの内面近傍で流体の流れを変化させるように流体チャンバに対して配設される分流器(例えば、栓、障壁、またはバフル)である。
【0067】
図1Aを参照すると、単一のポンプ122は、アッセイ装置104の廃棄側に置かれる。ポンプ122が作り出す吸引力により、緩衝液110または試料108中の分析物が、装置104の供給側のそれぞれの貯留容器112から引き出される。バルブ114は、試験手順中の任意の時点でいずれかの試験溶液を表面143に送るよう制御するように装置104の供給側に置かれる。ポンプ122は、この試験の流量を制御する。
【0068】
温度を管理する装置(例えば、熱電冷却機)を装置104およびチャネルブロック142に付随させてもよい。このように、比較的一定で既知の温度に装置104を維持することによって、装置104の出力に対する環境状態変化の影響が小さくなる。代替実施形態では、温度センサを、例えば装置104の一部として装置100に含める。温度変動の影響を受けない信号を生成するために、特定の時点で(あるいは、ある期間中に)温度センサの出力に基づいて装置104からのセンサ信号を拡大縮小する。この拡大縮小処理は、数学モデルまたは解析モデル、あるいは数学モデルと解析モデルの何らかのハイブリッド的な組合せに基づいて行うことができる。
【0069】
装置100のある種の実施形態では、試験溶液の経路にフィルタを備えて、特定のサイズの粒子(例えば、磁性粒子や生体材料)を選択的に濾過し、それによって、これらの粒子が流体チャンバに入らないようにする。例として、特定の試験手順は、試験中にフィルタを変更する工程を含み得る。こうすると、試験の異なる部分で異なるタイプ(すなわち、サイズ)の分析物および磁性粒子を流体チャンバに送り、装置100によって試験することができる。
【0070】
一実施形態では、材料エレメントは、表面が捕捉作用物質で被覆された磁性粒子(例えば、常磁性または超常磁性のビーズまたはマイクロスフェア)であり、これらの材料エレメントは、分析物を含む試料と混合される。規定の混合時間を経た後で、分析物−材料エレメントの複合体146が、非特異材料に結合した粒子147および何も結合していない粒子148と合わせて得られる。粒子146、147、148は試料貯留漕112内に置かれている。
【0071】
装置100はさらに、膜134の近傍で磁束を生成する磁場誘起構造150を備える。図1Aでは、磁束源は、通常は装置104の膜134のすぐ近くに配置された後退可能な磁石150である。磁石150を膜134のすぐ近くに置くと、磁石150は膜134の近傍で大きな傾きの磁場を生成する。装置/制御電子回路126の制御により、後退可能な磁石150は、膜134近傍の磁場を大きく下げるのに十分な距離だけ膜134から離して後退させることができる。一実施形態では、磁石150を膜134のすぐ近くに置くときには、膜134の表面143から約200μmの位置にあるようにする。別の実施形態では、磁石150を膜のすぐ近くに置くときには、膜134の表面143から約50μm〜約100μmの位置にあるようにする。
【0072】
磁石150を膜134のすぐ近くに置くと、磁石150は、試料から表面143に磁性粒子を引き寄せる磁束源となる。分析物−粒子の複合体146、ならびに非特異的に結合した材料を伴う粒子147および何も結合していない粒子148は、液体試料から移動し、表面143にぶつかる。分析物は、表面143上の捕捉作用物質と結合する。そのため、磁性粒子と表面との間で分析物による結合が形成される。非特異的に結合した材料を伴う粒子147および何も結合していない粒子148は、磁場によって表面143に保持される。さらに、弱い結合力が粒子146、147、148と、表面143との間に作用し得る。(本明細書でより詳細に説明する)手順の洗浄工程の間、磁石150は後退させられて、表面143に蓄積した粒子が受ける磁力が減少する。洗浄流量を増加させて、分析物によって表面143に結合していない粒子147および148を取り除く。非特異的に結合した材料を伴う粒子147ならびに何も結合していない粒子148は、分析物−粒子の複合体146よりも表面143に結合する力が弱いので、これらは、より低い洗浄流量(および対応する流体力学的な力)で表面143から放出される。したがって、磁石150を取り除く(すなわち、表面143において粒子146、147、および148が受ける磁力を大きく減少させる)ことを利用して、分析物146を伴う粒子と、分析物146を伴わない粒子(粒子147および148)とを区別する。磁石150を出し入れする1つのやり方は、(図示しない)カム機構によって作動する(図示しない)カートリッジに磁石150を取り付けることである。
【0073】
磁石150の材料、幾何形状、および表面143からの距離により、磁場形状および磁場勾配、したがって、分析物−粒子の複合体146が受ける力が決まる。後退可能な磁石150として使用する高強度永久磁石は市販されているものがある。例えば、いくつかの販売業者(例えば、Dexter Magnetic Technologies社)から直径1mmの円筒形NdFeB磁石を購入することができる。一実施形態では、直径1mm、長さ5mmのNdFeB磁石150を作用させるときには、磁石150を表面143から0.1mm以内に配置する。後退させたときには、磁石150は、表面143から少なくとも0.5mmのところにあるようにする。装置104の膜134は極めて薄く(2μm)、非磁性材料(例えば、シリコン、窒化アルミニウム、または金)でできているので、膜134により、装置104の表面143側で磁場が大きく乱れることはない。その結果、収集効率を高めるのに必要な極めて強い磁場および大きな磁場勾配を実現することができる。
【0074】
チャネル102を通る試料の流量は、収集効率をよくするのに必要な(例えば、操作者が指定した)滞留時間によって決まる。試料の流量は、表面143上での平均速度が約1〜約5mm/秒になるように調整される。直径約3μmの酸化鉄の常磁性粒子では、50%近い収集効率が得られることがある。
【0075】
他の構成の磁束の供給源150(すなわち磁石)を用いてもよい。例えば、永久磁石の代わりに電磁石を使用することができる。この電磁石は、装置104の表面143近傍で磁束を収束させるように延びる磁極片を備える。
【0076】
あるいは、磁化可能な材料を作製し、表面143に隣接して(0.1mm以内に)配置することができ、この磁化可能材料の開放面と別の磁石を組み合わせて磁化可能材料中に磁場を誘起する。この材料中に誘起された磁場は、表面143近傍で所望の磁場勾配が得られるように働く。こうすると、材料の作製のしかたによっては、低コストの大きな磁石を使用することができ、単一の磁石を使用して複数のセンサに対応することができる。この目的に有用な材料の例は、純鉄、合金49(高ニッケル含有鉄)などの高μ金属、シリコン鋼(シリコン1〜2%:代表値)である。このような磁化可能材料とそれに付随する磁石を使用することの利点は、センサアセンブリを簡略化することができることであり、それによって製造コストが下げることができる。磁石は、強磁性コアと接触させ、また完全に引っ込めるだけでよいので、磁石の出し入れに低精度のアクチュエータを使用することができる。磁石150を表面143のすぐ近くに位置決めする上記で説明した実施形態では、アッセイ再現性をよくするためには、より高レベルの精度が必要とされる。この手法では磁場強度にいくらかの損失があるが、良好な(例えば、10%よりも大きい)捕捉効率を実現する全体システムを設計することは依然として可能である。
【0077】
磁場誘起構造(例えば、磁石または強磁性材料)の先端の形状を調整して、装置104の表面143における磁場勾配を強化し、かつ/または集中することができる。装置104のサイズ(例えば、0.3mm×1.6mm)は、典型的には、従来のやり方で形成した磁石または機械加工したインダクタよりも小さいので、膜134に隣接する磁場誘起構造の部分をテーパ加工して、表面143の1つまたは複数の場所で磁場を集中させることができる。先端のテーパ加工は、局所的な磁場の大きさおよび局所的な磁場勾配をともに大きくするように働く。例えば、先端をくさび形にすることは、図2に示す装置の幾何形状によく適している。
【0078】
装置100の一実施形態は、第1磁束源150に完全にあるいは部分的に対向する任意選択の磁束の第2磁束源150aを備える。この第2磁束源150aを使用して、表面143に付着した磁性粒子の一部を移動させることができる。こうすると、例えば、分析物が結合していない磁性粒子148を移動させることができる。こうした磁性粒子は、分析物と結合した粒子146ほど強く表面143に付着していない。ある種の実施形態では、第1磁束源150が、電源をオフにされるか、または表面143から離され、次いで、第2磁束源150aが、流体チャンバの少なくとも1つの表面に対して位置決めされ、それによって、磁性粒子が選択的に除去される。これは、例えば、分析物が結合しておらず、したがって、表面143にそれほど強く結合していない磁性粒子148を除去するために行うことができる。こうすると、流体の流れを強めて分析物が結合していない磁性粒子148を除去するのと類似の効果が実現される。
【0079】
装置104の表面143上で分析物−粒子の複合体146の分布を制御すると、装置の性能を改善することができる。というのは、装置104は懸架膜134を有し、膜134のすべての部分が検出可能な共鳴の移動質量に均等に寄与するわけではないからである。例えば、装置100は、装置104の1/3の幅の範囲で、膜134の長軸の中心線の中央の2/3に沿って分析物−粒子の複合体146を分布させるように構築し配置することができる。流れ場の効果を考慮に入れると、磁場誘起構造(例えば、磁石150)の先端の形状は、センサ膜134の上の流れの方向に磁場の大きさおよび磁場勾配が増すようにすることができる。すなわち、分析物−粒子の複合体146は、境界層から分析物が部分的になくなる下流領域では、上流領域で分析物−粒子の複合体146が受けるよりも大きい磁場および磁場勾配を受ける。
【0080】
一般に、装置100は、表面143の1つまたは複数の特定の領域において磁性粒子が集中するように構築し配置することができる。装置104の応答は、製作材料の特性または装置設計の細部のせいで、表面143全体にわたって均一でないことがある。そのため、装置104の高感度領域は、不均一であり、装置104の長軸および短軸の中心線に対して非対称なことがある。そのため、磁場誘起構造の先端は、感度が最も高い1つまたは複数の領域に磁性粒子を集中させるような形状にすることができる。
【0081】
装置104を通過する流量を変化させることによって、所与の磁場分布に対する分析物−粒子の複合体146の適用範囲をより均一にすることもできる。所与の磁場では、磁性粒子と表面143の相互作用はバルク流体の流量によって決まる。これは、弾道体が重力による物体力の存在下で落下するのとほぼ同じである。ただし、この場合は磁場誘起力が支配的である。流量を変化させることによって、分析物−粒子の複合体146と表面143を、流れの方向に沿って実質的に異なる場所で相互作用させることができる。さらに、磁性粒子が堆積する場合(磁性粒子が表面143に曝露される場合には望ましくない出来事)、この堆積物を引きちぎって、より多くの粒子を表面143全体にわたって分布させるために、流れを逆流させ、その後、パルス状に前進させることができる。装置100の一実施形態では、例えば、磁束源150と、表面143に沿う流体の流れの1つまたは複数の性質の一方または両方を検出手順を通して選択的に変化させることによって、表面143に沿って磁性粒子を選択的に配置させる。
【0082】
装置100の一実施形態は、表面143に付着した、または引き寄せられた磁性粒子の少なくとも1つの性質を特徴づける装置(例えば、光学装置または磁気装置)を備える。この装置は、装置104と一体になった部分とすることもできるし、磁石150の一部とすることもできる。あるいは、装置100の他の構成要素とは別の離散的な構成要素とすることもできる。このような装置を使用して粒子の存在の有無を検出し、さらに、その粒子に関係するパラメータ、例えば、表面143に引き寄せられた粒子のサイズ、量、濃度、または密度を決定することもできる。
【0083】
装置100の一実施形態は、操作者またはコンピュータが装置100またはこのシステムの特定の構成要素(例えば、図1Bのカートリッジ103)を識別して、このシステムまたは構成要素の使用を追跡することができる識別装置を備える。この識別装置は、バーコード、識別番号、または他の識別マークなどの記号または画像を含み得る。この識別装置は、RFIDタグ、集積回路、または識別情報を提供するための当技術分野で周知の他の構成要素などの実際の構成要素を含み得る。こうした構成要素は、受動的であっても能動的であってもよい。企図される任意の識別装置を使用することができるが、このような装置の多くは当技術分野で周知のものである。
【実施例】
【0084】
(実施例:較正器におけるPSA)
例として、本発明の原理に従って図1Aのアッセイ測定装置100を使用してデータを取得する実験を実施した。Dynal社のトシル活性化超常磁性ビーズを抗前立腺特異抗原(PSA)捕捉作用物質(製品番号90205、米国カリフォルニア州サンディエゴ所在のScripps研究所)で機能化し、それを試料に曝露した。試料は、1倍のPBS(リン酸緩衝食塩水)および1%ウシ血清アルブミン(BSA)に、約0pg/mL、10pg/mL、100pg/mL、および500pg/mLの遊離型PSA[Fitzgerald Industries International社、米国マサチューセッツ州コンコード所在]をスパイクしたものを用いた。実験では、試料に対するビーズ濃度を約2×10ビーズ/mL程度とした。このようにスパイクした試料をビーズとともに穏やかに連続して攪拌しながら1時間インキュベートした。(図示しない)カートリッジ内の単一チップ上に設けられた8個の図2のたわみ板波(FPW)装置104を、まず0.05%のTWEEN(登録商標)20(モノラウリン酸ポリエチレングリコールソルビタン[Sigma−Aldrich社、米国ミズーリ州セントルイス所在]を含む1倍のPBSを与えた後で、無料の抗PSA抗体(製品番号90197、米国カリフォルニア州サンディエゴ所在のScripps研究所)で機能化した。(本明細書で先に述べたものと同様に)基準信号に対する追跡センサ位相にそれぞれ対応する8種類の個別の周波数の基底測定を約17800秒の時点で行った。追跡位相は、各装置ごとにその装置の共鳴帯域内に入るように、応答の大きさがピーク値に近く、かつ周波数変化に対して位相応答の線形範囲が大きい周波数近傍で最初に選択する。センサ位相を追跡するとき、各時点で、個々の装置の追跡周波数を以下のようにして見つける。1)周波数範囲にわたって各装置を掃引し、基準信号に対して各励起周波数での応答の位相を記録する、2)各装置ごとに励起周波数を測定位相に関係づける関数をフィッティングする、3)この関数を使用して前に求めた追跡位相に対応する追跡周波数を計算する。この実施形態では、これらの装置を20MHz付近で動作させ、掃引範囲は約20kHzとする。この範囲全体にわたって、位相特性はほぼ線形であり、そのため、フィッティング関数は線形になる。各装置ごとの基準信号は、励起によって同時に駆動される抵抗器およびコンデンサといった受動電気コンポーネント回路網の出力を含む。基準回路網は、共鳴付近の装置について減衰に見合うように、かつ、好ましい位相シフトが提供されるように選択される。基底周波数は、追跡する周波数と照らし合わせ、それによって正規化され、選択した時点での百万分率(ppm)として示される。
【0085】
各装置104の感知表面143を捕捉作用物質で機能化した。典型的な処理条件を約2分間につき約50Wとする酸素プラズマ源を使用して金被覆チップを清浄にした。その後、これらのチップを純エタノールに30分間浸した。次いで、これらのチップをビオチンPEGジスルフィドのエタノール溶液(カタログ番号41151−0895、Polypure社、ノルウェー国オスロ所在)の0.5mM溶液に移し、一晩インキュベートした。これらのチップを純エタノールに戻し30分間浸した。最後に、これらのチップを短時間水洗いし、窒素流を吹き付けて乾燥させた。調製条件を変化させて、類似の結果を得ることができる。このようにして得られたビオチン化された装置104の表面をニュートラアビジン(Neutravidin)(製品番号31000、Pierce Biotechnology社、米国イリノイ州Rockford所在)で被覆した。これは、ニュートラアビジンの10μg/ml溶液をビオチン化した表面上で1時間流すことによって行った。製造者の指示(製品番号F−6347、Invitrogen社、米国カリフォルニア州Carlsbad所在)に従って抗体をビオチン化し、次いで、ニュートラアビジン化された表面に結合した。これは、ビオチン化された抗体の5μg/ml溶液(1倍のPBS0.1%BSA緩衝液に希釈)をニュートラアビジンで被覆した表面上で1時間流すことによって行った。
【0086】
図3は、時間に対して得られたデータをプロットしてグラフ300にしたものであり、本発明の原理に従ってデータを処理する前のものである。グラフ300のY軸304は、(本明細書で先に述べたものと同様に、設定された追跡位相に対応する)追跡周波数の変化であり、選択した時点での追跡周波数と照らし合わせ、それによって正規化されている。グラフ300のX軸306は時間であり、その単位は秒である。曲線310、314、318、322、326、330、334、および338は、試験した8個の装置のそれぞれに関連する実験結果の離散データ点のグラフである。曲線310および314は、約0pg/mlの遊離型PSAを含む試料についてのグラフである。曲線318および322は、約10pg/mlの遊離型PSAを含む試料についてのグラフである。曲線326および330は、約100pg/mlの遊離型PSAを含む試料についてのグラフである。曲線334および338は、約500pg/mlの遊離型PSAを含む試料についてのグラフである。ある種の実施形態では、例えばこれらの曲線において観察された正常なばらつき範囲外のデータ点は割愛してある。例えば、隣接するデータ点に対して相対的に値が1桁よりも大きく変化する偽データ点は、後続の解析では除外してあることがある。こうしたデータ点は、例えば操作者によって、あるいはコンピュータプログラムによってデータから取り除くことができる。
【0087】
PSA試料を導入し、それと同時にセンサ表面143近傍に磁場を約17900秒から約18200秒まで発生させた。約0pg/mL、10pg/mL、100pg/mL、および500pg/mLの遊離型PSAの試料をそれぞれ2つの異なる装置104(全部で8個の装置)に与えた。これらの試料を約100μL/分の割合でセンサ上を流し、センサ上を1回の分析に合計で体積500μLの試料を流した。このようにして、遊離型PSAで被覆したDynal社のトシル活性化超常磁性ビーズを装置104の実質的な表面(表面143)に結合させた。複数の結合によって各ビーズを装置104の表面143に結合させた。複数の結合それぞれにより、他とは区別される力が生じ、その力によって各ビーズが装置の表面に結合する。各試料ごとのビーズの集合の会合および解離の特性により、その試料中の分析物の濃度が決まる。
【0088】
約18200秒で、試料をプライミング緩衝液(1倍のPBS、0.05%TWEEN(登録商標)20(モノラウリン酸ポリエチレングリコールソルビタン)と入れ換えた。図3に示すように、曲線310、314、318、322、326、330、334、および338に関連する各信号の変化を18200秒から18400秒まで観察した。この変化は、試料流体から緩衝液流体に戻す切替えに関連するバルク流体の性質の変化を表している。約18400秒で、磁場を取り除いた。緩衝液流体(0.05%TWEEN(登録商標)20(モノラウリン酸ポリエチレングリコールソルビタン)を含む1倍のPBS)の流速は、約18200秒から18400秒まで約50μL/分であった(これは、センサ表面143では流速約1.5mm/秒に対応する)。
【0089】
流速は後続の450秒で(約18400秒から約18850秒で)、約50μL/分から約300μL/分に直線的に増加した(流速は、450秒の間30秒ごとに約17μL/分増加し、次いで、流速は約50μL/分に減少した)。このようにして、約18400秒から約18850秒まで流速を増加させることによって、制御された外部影響(すなわち、この実施形態では流速)をビーズに加えた。曲線310、314、318、322、326、330、334、および338の約18400秒から約18850秒までの部分は、この期間にわたってセンサ表面143に結合していたビーズ(および他の非特異性材料)の量の変化を示す信号を表す。
【0090】
本発明の原理を組み込む装置および方法により、アッセイ測定システム内の流体の流量を決定することもできる。共振デバイスによって出力される電気信号は、共振デバイス(例えば、図1A、図2、および図2Aのアッセイ装置104の表面143)の表面と接触する流体および他の物質(例えば、粒子または磁性粒子)に応答して変化するので、操作者またはコンピュータのプロセッサは、アッセイ中に流体が流れるチャネルまたは導管の幾何学的な性質および電気信号が変化する期間に基づいて流体の流量を決定することができる。
【0091】
図3に示す実験では、約17810秒でチャネルの入力ポート118に磁性粒子を含む流体を導入した。共振デバイスによって出力される電気信号の値は、約17900秒で(入力ポート118にビーズを導入してから約90秒後に)、第1磁束源(例えば、図1Aの第1磁束源150)によって共振デバイスの表面に引き寄せられる磁性粒子が存在するために変化し始める。チャネルの平均断面積は、入力ポート118から、共振デバイス104の表面143のうち磁性粒子が引き寄せられる場所までの間で約0.25mmであった。チャネルの有効長は、入力ポート118と、共振デバイス104の表面143のうち磁性粒子が引き寄せられる場所との間で約600mmであった。平均断面積、有効長、および磁性粒子が入力ポート118から共振デバイスの表面まで移動するのにかかる時間に基づいて流体の流量を計算し、約100μl/分が得られた。
【0092】
このようにして、アッセイ測定装置内での流体の流量を決定することが可能である。ある種の実施形態では、流体の流量は、入力ポートに2種類の異なる流体を順次導入することに基づいて決定することができる。というのは、共振デバイスによって出力される電気信号は、これらの流体の物理的な性質(例えば、粘度、密度、または流体中での音速)に応答して変化するからである。
【0093】
本発明の原理を組み込む装置および方法により、アッセイ測定について流体試料と磁性粒子の体積の比が正しいかどうかを判定することもできる。試料に対する磁性粒子のドーズ量は、全体的なアッセイ信号を決めるのに用いられる変数である。様々な方法を用いて、磁性粒子のドーズ量を決定することができる。
【0094】
例として、抗体が固定された粒子を使用するイムノアッセイの性能は、粒子の総表面積と試料の体積の比の影響を受ける。したがって、初期試料体積が制御されている場合、試料にドーズする(例えば、試料と混合する)粒子の数を制御することも必要である。これを行う理由は、各粒子に結合する分析物分子の数が、試料体積中の粒子の数および試料中の分析物の濃度によって決まるからである。他の因子も、例えばタンパク質、小分子、およびホルモンに対するイムノアッセイの性能に影響を及ぼすことが当業者には理解されるであろう。
【0095】
例えば、1つの方法は、流量を増加させる条件下で共振デバイスの表面から解離する磁性粒子を観察することによって、共振デバイス(例えば、FPW装置)への磁性粒子の結合強度を観察するというものである。
【0096】
加えられるドーズ量を分析する別の方法は、部分占有モデルを利用することである。例えば、式1により、(R.Ekins、「Ambient Analyte Assay」、第3章、The Immunoassay Handbook、監修 D.Wild、Elsevier社、ボストン、2005年、46〜60頁に記載されているように)1つのモデルが与えられる(この文献の内容を参照により本明細書に組み込む)。この文献では、大気分析物アッセイにおける捕捉作用物質の部分占有率Fは、曝露される流体の体積中の曝露される標的分析物の濃度[An]に対する捕捉作用物質の有効濃度[Ab]に依存する。
【0097】
【数1】

ここで、Kは分析物−捕捉作用物質の結合親和性、[Ab]は有効捕捉作用物質濃度、[An]は標的分析物濃度である。部分占有率Fは、捕捉作用物質濃度が約0.01/Kよりも大きいとき、捕捉作用物質の有効濃度[Ab]によって決まる。
【0098】
例として、本明細書で与えられたPSA試料(図3および図4参照)では、(磁性粒子に結合した)捕捉作用物質の有効濃度は、次式で与えられる。
【0099】
【数2】

式2中の試料体積(SampleVolume)は相殺され、ビーズと捕捉プローブの配合を一定に保つ場合、ビーズ表面密度(BeadSurfaceDensity)を均一とすると、有効捕捉作用物質濃度[Ab]は、最初のドーズ量の中に存在する磁性粒子の濃度に正比例する。したがって、磁性粒子濃度が高い場合、磁性粒子濃度は、部位の部分占有率、したがって、磁性粒子とセンサ表面(例えば、共振デバイスの表面)とのサンドイッチ結合強度に影響を及ぼすことになる。例えば図3に関しては、1ミリリットル当たり2e個のビーズと各流体試料とを混合した。1ミリリットル当たりのビーズの数をこのようにすると、試料1ミリリットル当たり捕捉作用物質が1e10〜10e10個程度の有効抗体濃度が得られる。1e−10モル程度の捕捉親和性では、有効捕捉作用物質濃度は0.01/Kよりも大きくなり、これは、ビーズ表面部分占有率が試料中のビーズ濃度によって決まることを意味する。これは、概念的には、温度計がその測定対象温度に影響を及ぼすほど十分に大きい状態で、溶液に温度計を浸してその溶液の温度を測定する概念と似ている。ビーズ表面部分占有率、したがって最終的なビーズ表面結合密度が影響を受けるので、測定を行い、ビーズが適切に試料にドーズされていることを確認することが(例えば、品質管理および品質保証には)有利である。
【0100】
この実施例では、先に述べたように、0pg/mL、10pg/mL、100pg/mL、および500pg/mLの遊離型PSAがそれぞれ、2つの異なる装置104(全部で8個の装置)に与えられた。(磁性粒子を伴う)試料流体が、約17900秒から約18020秒までは流体流量100μl/分で、約18020秒から約18200秒までは50μl/分で共振デバイス104の表面143に送られ、各共振デバイス104の表面143を約350μlの試料に曝露した。したがって、各共振デバイス104の表面143は、流体試料中の約7000個のビーズに曝露されたことになる。
【0101】
蓄積効率(表面を通過して流された磁性粒子の総数の一部が共振デバイスの表面に蓄積される)は、共振デバイスの表面に磁場を印加した状態で様々な流体流量についてなされた実験的な観察に基づいて50%と予想される。さらに、この実施例で使用する共振デバイスのゲージ率は、類似の共振デバイスを使用して実施された実験では、光学的なビーズ直接計数によって観察され、かつ類似の磁性粒子使用量の条件下で観察された電気信号変化に相関する1つのビーズ当たりの追跡周波数変化で百万分の一(ppm)程度である。共振デバイスの表面に曝露された流体試料中のビーズ数(1ml当たり2e個のビーズ350μlで約7000個のビーズが得られる)、蓄積効率50%、および共振デバイスのゲージ率(1つのビーズ当たり1ppm)に基づいて、各共振デバイスの表面上に蓄積されるビーズは3500個と予想され、これを図3の約18200秒のところに示す。正常な進行過程では効率およびゲージ率は変化することがあり、この変化の原因には、装置のタイプの変化、装置に出入りする流れの構成の変化、装置表面の近くに配置され、また装置表面から離れたところに退避する場合の磁場の構成の変化が挙げられる。
【0102】
したがって、例えば、流体試料にビーズが半数しか導入されていないか、あるいは逆に、使用した試料流体の体積が誤って2倍になっていないかを判定することが可能である。この場合、共振デバイスを使用して測定した平均蓄積量は、18200秒では予想値の約半分になる。使用したビーズが適切の数の半分であり、かつ使用した試料が適切な体積の2倍である場合、アッセイ品質管理測定の結果は、予想結果からさらに大きく変化することになる。別のケースで、使用したビーズの数が2倍であったか、逆に、使用した試料流体の体積が半分であった場合、共振デバイスを使用して測定された平均蓄積量は予想値の約2倍になる。このようにして、例えば試料調製の誤りおよび/またはビーズ試薬ドーズ量の誤差(例えば、試料流体体積または磁性粒子数が多すぎるか、または少なすぎること)によるアッセイ不良を識別することが可能である。
【0103】
図4は、図3において時間に対して得られたデータをプロットしてグラフ400にしたものであり、本発明の原理に従ってデータを処理した後のものである。図4の処理済み曲線410、414、418、422、426、430、434、および438は、図3の未処理曲線310、314、318、322、326、330、334、および338にそれぞれ対応する。グラフ400のY軸404は、装置104の共鳴点近くの追跡センサ位相における、装置104によって出力された信号の相対的な大きさの変化(百万分率)である。グラフ400のX軸406は時間であり、単位は秒である。
【0104】
処理済みの曲線410、414、418、422、426、430、434、および438は、まず、未処理曲線(310、314、318、322、326、330、334、および338)に関連するデータを正規化することによって求めた。追跡周波数の百万分率で示す各曲線(310、314、318、322、326、330、334、および338)ごとのデータを、その曲線の値によって約18350秒のところでさらに正規化し、試料流体の導入前に測定された基底周波数と照らし合わせた。それによって、各データ曲線は、試料の導入時の値から約18350秒における100%の値に拡大縮小される。次いで、約18400秒のところで磁場を取り除いた後で、正規化された各曲線に関連するデータを450秒(約18400秒〜約18850秒)にわたって積分した。この積分は、それぞれの装置信号レベルについて各間隔のレベルにそれぞれの間隔の時間を掛けて、それらを蓄積し、最終的な和をこの加算を行った時間で割ることによって実施した。こうすると、装置の表面143に結合した材料エレメント(ビーズ)の時間正規化量が得られ、これらの値を各試料に関連する分析物の濃度の大きさとして図に示す。このようにして、約18400秒から約18850秒までの間に各装置104の表面143に結合した材料エレメントの量の変化に基づいて分析物の濃度が決定される。図4に示すように、約10pg/mLの遊離型PSAが、このシステムに試料を導入する約9分よりも短い時間で検出された。
【0105】
本発明の代替実施形態では、正規化および積分の方法を代えることができる。例えば、各装置の出力を装置ごとに蓄積量に対して正規化するのではなく、単一チップ上の同一群の中の単一の装置の応答によって一群の装置を正規化してもよい。この場合、試料を流す間に加えられる材料エレメントの、異なる装置間の相対的な速度を考慮に入れて結果を導く。代替積分方法は、別々に分割した期間にわたって信号を蓄積することと、得られた結果をそれぞれの期間によって正規化することと、さらにこれら分割区間を重みづけして加算することとを含み得る。別の例では、制御された外部影響の期間後の特定の時点で観察された信号が正規化された状態で、正規化され積分された分割期間の和をとることができる。こうした方法により、外部影響の突然の変化によって生じ得る信号の異常によるバイアスならびに偽の環境効果を小さくすることができる。
【0106】
他の実施形態では、流量(例えば、1〜1000μL/分)を正確に制御することができ、その結果、バックグラウンド測定に比べて検出限界がより低くなり、測定のダイナミックレンジが広がる。ある種の実施形態では、流量は増加し続け、その結果、関連する材料エレメント(例えば、微小粒子)に対する外部影響が変化し続ける。ある種の実施形態では、流量を非線形に増加させ(例えば、1μL/分から1000μL/分まで対数的な増分で流量を増加させ)、それによって、より少ない流量では積分時間を長くすることができ、その結果、信号対雑音比が改善し、ダイナミックレンジが広がる。
【0107】
本発明の代替実施形態では、使用するアッセイ測定装置または装置の構成要素のタイプを代えることができる。ある種の実施形態では、材料エレメント(例えば、ビーズ、マイクロスフェア、常磁性粒子、磁性粒子、または金粒子)が共振デバイスの表面に結合する。共振デバイスは、例えば、音響デバイス、たわみ板波デバイス、表面音響波デバイス、ラム波デバイス、共鳴カンチレバーデバイス、シアーハーモニック表面音響波デバイス、音響プレートモードデバイス、または水晶微量天秤デバイスとし得る。
【0108】
表面に結合した材料エレメントの量の変化を示す信号の測定に使用する様々な装置が企図されている。使用し得る装置には、例えば、表面プラズモン共鳴装置、共振デバイス、音響デバイス、たわみ板波デバイス、水晶微量天秤デバイス、蛍光測定装置、および顕微鏡が含まれる。ある種の実施形態では、材料エレメントが結合する表面は、結合した材料エレメントの数の変化を測定するのに使用する装置の表面でもある。
【0109】
ある種の実施形態では、表面に結合した材料エレメントの量の、正規化された曝露量に対する変化を示す光学信号測定を行う。この場合、本発明の方法は、例えば、材料エレメントを画像化し計数することと、材料エレメントから放出された蛍光を空間的に積分して測定することと、材料エレメントで散乱した光を空間的に積分して測定することと、材料エレメントからの表面プラズモン共鳴変化を測定するか、あるいは、表面から反射する、または表面を透過する光の減衰を測定することを含み得る。
【0110】
材料エレメント、材料エレメントが結合する表面、あるいは、材料エレメントと表面との間に配設される物質または結合材料に適用する外部影響として様々な影響を利用することができる。本明細書で先に述べたように、外部影響は、表面に結合した複数の材料エレメントを通過してか、または材料エレメントの上か、あるいは材料エレメントを横切って流れる流体とし得る。ある種の実施形態では、材料エレメントと表面との間で相対加速度が形成される。ある種の実施形態では、材料エレメントは磁性体であり、例えば、図1Aの任意選択の供給源150aを用いて反対の磁場勾配が材料エレメントに適用される。
【0111】
ある種の実施形態では、材料エレメントと表面との間で相対変位の大きさが増加する。ある種の実施形態では、材料エレメントは、一定か、または時間変化する電場によって生成される電気泳動力または誘電泳動力に応答する。ある種の実施形態では、外部影響は、材料エレメントと表面との間の結合力の強さに影響を及ぼす。これは、例えば、流体のpHの変化、変性剤の導入、または表面上の材料エレメント近傍の温度変化によって実現し得る。ある種の実施形態では、材料エレメントが表面に結合する共振デバイスは、その共振デバイスの表面に材料エレメントと表面との間の結合力に対抗するように作用する音響場または流れ場を作り出す。
【0112】
図5は、時間に対して得られたデータをプロットしてグラフ500にしたものである。グラフ500のY軸504は、(本明細書で先に述べたものと同様に、設定された追跡位相に対応する)追跡周波数の変化である。グラフ500のX軸508は時間であり、単位は秒である。曲線512、516、520、524、528、532、536、および540は、試験した8個のたわみ板波デバイスのそれぞれに関連する実験結果の離散データ点をプロットしたものである。この実験では、アッセイ測定装置のチャネル、例えば、図1Aのアッセイ測定装置100のチャネル102に様々な流体を導入した。次いで、これらの流体をチャネル102を通してチャンバ160にポンプで送り、そこでこれらの流体を共振デバイスの表面(例えば、図2の装置104の膜134の表面143)と接触させた。各共振デバイス104は、共振デバイス104の表面143と接触する流体の物理的性質(例えば、密度、粘度、流体中の音速)に基づいて変化する信号を出力した。
【0113】
この実験では、0.1%TERGITOL(登録商標)NP40非イオン界面活性剤(Dow Chemical社、米国ミシガン州所在)を伴う脱イオン水をアッセイ測定装置に導入し、2139.1秒から約2200秒まで共振デバイスの表面に送った。0.05%TWEEN(登録商標)20(モノラウリン酸ポリエチレングリコールソルビタン)[Sigma−Aldrich社、米国ミズーリ州セントルイス所在]を伴う0.01Mリン酸緩衝食塩水を、約2200秒から約2850秒まで共振デバイスの表面に送った。0.01Mリン酸緩衝食塩水は、8gのNaCl、0.2gのKCl、1.44gのNaHPO、および0.24gのKHPOを800mlの蒸留HOに溶解して作製した。この溶液のpHは、必要な場合には、所望のpHが得られるまで、酸(例えば、塩酸)または塩基(例えば、水酸化ナトリウム)を滴定することによって7.4に調整した。次いで、この溶液に追加の蒸留HOを添加して総体積1Lの流体を生成した。次いで、この溶液を加圧滅菌した。
【0114】
0.1%TERGITOL(登録商標)NP40非イオン界面活性剤を伴う脱イオン水を共振デバイスの表面に約2850秒から約3100秒まで送った。0.05%TWEEN(登録商標)20を伴う0.02Mリン酸緩衝食塩水(本明細書で説明したのと同様に作製して0.02Mにしたもの)を共振デバイスの表面に約3100秒から約3300秒まで送った。0.1%TERGITOL(登録商標)NP40非イオン界面活性剤を伴う脱イオン水を共振デバイスの表面に約3300秒から約3600秒まで送った。0.05%TWEEN(登録商標)20を伴う0.05Mリン酸緩衝食塩水(本明細書で説明したのと同様に作製して0.02Mにしたもの)を共振デバイスの表面に約3600秒から約3950秒まで送った。
【0115】
0.1%TERGITOL(登録商標)NP40非イオン界面活性剤を伴う脱イオン水を共振デバイスの表面に約3950秒から約4300秒まで送った。5%エタノールの脱イオン水溶液を共振デバイスの表面に約4300秒から約4600秒まで送った。0.1%TERGITOL(登録商標)NP40非イオン界面活性剤を伴う脱イオン水を共振デバイスの表面に約4600秒から約5350秒まで送った。0.1%TERGITOL(登録商標)NP40非イオン界面活性剤を伴う脱イオン水を共振デバイスの表面に約5350秒から約5568.6秒まで送った。
【0116】
0.1%TERGITOL(登録商標)NP40非イオン界面活性剤を伴う脱イオン水を共振デバイスの表面に送ったときに、追跡周波数の約百万分の0.0の変化が測定された。0.05%TWEEN(登録商標)20を伴う0.01Mリン酸緩衝食塩水を共振デバイスの表面に送ったときに、追跡周波数の約百万分の−1000の変化が測定された。0.05%TWEEN(登録商標)20を伴う0.02Mリン酸緩衝食塩水を共振デバイスの表面に送ったときに、追跡周波数の約百万分の−2500の変化が測定された。0.05%TWEEN(登録商標)20を伴う0.05Mリン酸緩衝食塩水を共振デバイスの表面に送ったときに、追跡周波数の約百万分の−5000の変化が測定された。5%エタノールの脱イオン水溶液を共振デバイスの表面に送ったときに、追跡周波数の約百万分の2500の変化が測定された。
【0117】
例として、操作者、あるいはコンピュータプロセッサ上で動作する自動処理アルゴリズムは、共振デバイスによって出力された電気信号に基づいて、アッセイ装置の表面と接触している流体のタイプを識別することができた。例えば、この実験では、追跡周波数の百万分の2500の変化は、0.1%TERGITOL(登録商標)NP40非イオン界面活性剤を伴うものから0.05%TWEEN(登録商標)20を伴う0.02Mリン酸緩衝食塩水に変化する流体が共振デバイスの表面と接触していることを示す。さらに、共振デバイスによって出力される電気信号が所定の条件を満たす(例えば、電気信号の値が指定値よりも大きい、または指定値よりも小さい、あるいは、最小値と最大値との間にある)ときに、使用者は、特定のタイプの流体がアッセイ装置の表面と接触していることを示す数値境界を設けることができる。
【0118】
共振デバイスの表面と接触している流体のタイプを判定することができれば、例えば、1種または複数種の正しい流体がアッセイ測定装置に導入されたかどうかを判定する助けになり得る。ある種の実施形態では、本発明の方法は、流体が正しい順序でアッセイ測定装置に導入されたかどうかを判定するのに有用である。さらに、共振デバイスによって出力される電気信号は時間の関数として測定されるので、ある種の実施形態では、特定の流体がアッセイ中の正しい時点で導入されたかどうかを判定することも可能である。例えば、血液の成分を分析する自動アッセイシステムでは、類似の共振デバイス電気信号変化が、未処理の試料または希釈した試料を洗浄緩衝液に(またはその逆)変えるときに観察されることになる。このアッセイシステムは、この変化をモニターして試料または洗浄緩衝液の導入を確認するように構成することができよう。さらに、電気信号のこの変化を利用して、試料または洗浄緩衝液が導入された時点を追跡することもできよう。
【0119】
当業者なら、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、本明細書で説明したものの変形形態、改変形態、および他の実施形態を想起するであろう。そのため、これらの形態は本発明に包含されるものと見なされる。したがって、本発明は、上記の図を用いた説明だけで定義されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1A】図1Aは、アッセイ測定を実施するのに使用するアッセイ測定装置の概略図である。
【図1B】図1Bは、アッセイ測定装置の別の実施形態の概略図である。
【図2】図2は、図1Aおよび図1Bに示すアッセイ測定装置の一部の拡大図である。図2Aは、図2の一部の拡大図である。
【図3】図3は、本発明の方法を適用する前のアッセイ測定データと時間の関係をグラフで表したものである。
【図4】図4は、本発明の方法を適用した後のアッセイ測定データと時間の関係をグラフで表したものである。
【図5】図5は、共振デバイスの表面に送られる様々な流体についてのアッセイ測定データをグラフで表したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正規化された曝露量を確立する共振デバイスの表面のかなりの面積にわたって複数の結合で材料エレメントを結合する工程と、
該材料エレメントに適用される外部影響を第1期間にわたって制御する工程と、
該表面に結合した材料エレメントの量の、該正規化された曝露量に対する変化を示す信号を第2期間にわたって測定する工程と
を含む、アッセイを実施するための方法。
【請求項2】
前記第2期間中に前記表面に結合した前記材料エレメントの量の、前記正規化された曝露量に対する変化に基づいて、該材料エレメントと該表面との間に存在する物質の濃度を決定する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記材料エレメントと前記表面との間に存在する前記物質により、該材料エレメントは該表面に結合する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記外部影響に応答して前記表面から放出される材料エレメントの量と該外部影響とを相関させる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記測定された信号の値を時間で積分して、前記表面に結合した材料エレメントの時間平均量を決定する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記外部影響を制御する工程は、該外部影響を変化させる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記表面に結合する材料エレメントの量の変化を前記外部影響の変化に相関させる工程を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
外部影響を適用する工程は、前記材料エレメントの上か、材料エレメントを通過してか、あるいは材料エレメントを横切って流体を流す工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
外部影響を適用する工程は、前記材料エレメントと前記表面との間に相対的な加速を作り出す工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記材料エレメントは、磁性体であり、外部影響を適用する工程は、該材料エレメントと反対の磁場勾配を適用する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
外部影響を適用する工程は、一定か、または時間変化する電場に前記材料エレメントを曝露して、該材料エレメントに作用する電気泳動力または誘電泳動力を誘起する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
外部影響を適用する工程は、前記共振デバイスによって生成される音響場または流体の流れ場に前記材料エレメントを曝露する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
外部影響を適用する工程は、前記材料エレメントと前記表面との間の結合力の強さを変化させる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
結合力の強さを変化させる工程は、流体のpHを変化させる工程、前記材料エレメントの上に変性剤を流す工程、流体の温度を変化させる工程、あるいはこれらの組合せを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
外部影響を適用する工程は、前記材料エレメントと前記表面との間の相対変位の大きさを大きくする工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
第2期間中に信号を測定する工程は、表面プラズモン共鳴装置、共振デバイス、音響デバイス、たわみ板波デバイス、水晶微量天秤デバイス、および顕微鏡からなる群から選択した装置を使用して実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記表面は、前記装置の表面である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記外部影響を適用する工程は、前記第2期間にわたって前記外部影響を変化させる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
測定する工程は、前記第2期間中に前記表面に結合する材料エレメントの量の変化を連続的に測定する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記表面に結合する材料エレメントの量の変化を測定する工程は、前記第1期間中に該材料エレメントが該表面に結合する速度を測定する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記第1期間は、前記第2期間に重なり合う、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記材料エレメントは、磁性粒子、常磁性粒子、金粒子、マイクロスフェア、またはビーズである、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記結合は、特異的会合、非特異的会合、交差反応会合、イオン結合、共有結合、ファンデルワールス結合、水素結合、または極性結合を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記材料エレメントは、前記共振デバイスの前記表面に該材料エレメントを結合させる前に試料中の前記物質に曝露される、請求項2に記載の方法。
【請求項25】
前記材料エレメントと前記表面との間にある前記物質の濃度に基づいて、前記試料中にある前記物質の濃度を決定する工程を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
外部影響を適用する工程は、前記材料エレメントにかかる力を生成する工程を含み、該材料エレメントにかかる力は、該材料エレメントと前記表面との間の前記結合と競合する、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
正規化された曝露量を確立する共振デバイスの表面のかなりの面積にわたって複数の結合で材料エレメントを結合する工程と、
該材料エレメントに適用される外部影響を第1期間にわたって変化させる工程と、
第2期間にわたって信号を時間で積分して、該表面に結合した材料エレメントの時間平均量を決定する工程と
を含む、アッセイを実施するための方法。
【請求項28】
表面を有する共振デバイスであって、結合物質または結合のための手段が、複数の材料エレメント該記表面に結合し、かつ該複数の材料エレメントと前記表面との間に物質を挟むことができ、それによって、該物質と該複数の材料エレメントとの間に複数の結合が形成され、かつ正規化された曝露量が確立される、共振デバイスと、
第1期間にわたって該材料エレメントに外部影響を適用するための供給源と、
該表面に結合した材料エレメントの量の、該正規化された曝露量に対する変化を示す信号を測定するための測定デバイスと
を備える、アッセイを実施するための装置。
【請求項29】
外部影響を適用するための前記供給源は、前記材料エレメントの上か、該材料エレメントを通過するか、あるいは該材料エレメントを横切る流体の流れを制御する、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記材料エレメントは、磁性体であり、外部影響を適用するための前記供給源は、該材料エレメントと反対の磁場勾配を適用する、請求項28に記載の装置。
【請求項31】
外部影響を適用するための前記供給源は、一定か、または時間変化する電場に前記材料エレメントを曝露して、該材料エレメントに作用する電気泳動力または誘電泳動力を誘起する、請求項28に記載の装置。
【請求項32】
外部影響を適用するための前記供給源は、前記共振デバイスによって生成される音響場または流体の流れ場に前記材料エレメントを曝露する、請求項28に記載の装置。
【請求項33】
前記共振デバイスは、音響デバイス、たわみ板波デバイス、表面音響波デバイス、ラム波デバイス、共鳴カンチレバーデバイス、シアーハーモニック表面音響波デバイス、音響プレートモードデバイス、または水晶微量天秤デバイスである、請求項28に記載の装置。
【請求項34】
前記測定デバイスは、表面プラズモン共鳴装置、共振デバイス、音響デバイス、たわみ板波デバイス、水晶微量天秤デバイス、または顕微鏡である、請求項28に記載の装置。
【請求項35】
前記材料エレメントは、磁性粒子、常磁性粒子、金粒子、マイクロスフェア、またはビーズである、請求項28に記載の装置。
【請求項36】
外部影響を適用するための前記供給源は、前記測定デバイスでもある、請求項28に記載の装置。
【請求項37】
正規化された曝露量を確立する表面のかなりの面積にわたって複数の結合で材料エレメントを結合する工程と、
第1期間にわたって該材料エレメントに外部影響を適用する工程と、
該表面に結合した材料エレメントの量の、該正規化された曝露量に対する変化を示す光学信号を第2期間にわたって測定する工程と、
該光学信号の値を時間で積分して、該表面に結合した材料エレメントの時間平均量を決定する工程と
を含む、アッセイを実施するための方法。
【請求項38】
前記第2期間中に前記表面に結合した前記材料エレメントの量の、前記正規化された曝露量に対する変化に基づいて、該材料エレメントと該表面との間に存在する物質の濃度を決定する工程を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記材料エレメントと前記表面との間に存在する前記物質により、該材料エレメントは該表面に結合する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記外部影響に応答して前記表面から放出される材料エレメントの量と該外部影響とを相関させる工程を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
外部影響を適用する工程は、前記材料エレメントの上か、該材料エレメントを通過してか、あるいは該材料エレメントを横切って流体を流す工程を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
外部影響を適用する工程は、一定か、または時間変化する電場に前記材料エレメントを曝露して、前記材料エレメントに作用する電気泳動力または誘電泳動力を誘起する工程を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項43】
外部影響を適用する工程は、前記共振デバイスによって生成される音響場または流体の流れ場に前記材料エレメントを曝露する工程を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項44】
外部影響を適用する工程は、前記材料エレメントと前記表面との間の結合力の強さを変化させる工程を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項45】
結合力の強さを変化させる工程は、流体のpHを変化させる工程、前記材料エレメントの上に変性剤を流す工程、流体の温度を変化させる工程、あるいはこれらの組合せを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
第2期間中に光学信号を測定する工程は、表面プラズモン共鳴装置、顕微鏡、または蛍光測定装置からなる群から選択した装置を使用して実施される、請求項37に記載の方法。
【請求項47】
前記表面は前記装置の表面である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記材料エレメントは、磁性粒子、常磁性粒子、金粒子、マイクロスフェア、またはビーズである、請求項37に記載の方法。
【請求項49】
前記材料エレメントは、蛍光性である、請求項37に記載の方法。
【請求項50】
光学信号を測定する工程は、前記粒子または該粒子に結合した物質の反射率、透過率、または蛍光を測定する工程を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
表面であって、結合物質または結合のための手段は、複数の材料エレメントを該表面に結合し、かつ該複数の材料エレメントと該表面との間に物質を挟むことができ、それによって、該物質と該複数の材料エレメントとの間に複数の結合が形成され、かつ正規化された曝露量が確立される、表面と、
第1期間にわたって該材料エレメントに外部影響を適用するための供給源と、
該表面に結合した該材料エレメントの量の、該正規化された曝露量に対する変化を示す信号を測定するための光学測定デバイスであって、該光学信号の値を時間で積分して、該表面に結合した材料エレメントの時間平均量を決定する、光学測定デバイスと
を備える、アッセイを実施するための装置。
【請求項52】
外部影響を適用するための前記供給源は、前記材料エレメントの上か、該材料エレメントを通過するか、あるいは該材料エレメントを横切る流体の流れを制御する、請求項51に記載の装置。
【請求項53】
前記材料エレメントは、磁性体であり、外部影響を適用するための前記供給源は、該材料エレメントと反対の磁場勾配を適用する、請求項51に記載の装置。
【請求項54】
外部影響を適用するための前記供給源は、一定か、または時間変化する電場に前記材料エレメントを曝露して、該材料エレメントに作用する電気泳動力または誘電泳動力を誘起する、請求項51に記載の装置。
【請求項55】
外部影響を適用するための前記供給源は、共振デバイスによって生成される音響場または流体の流れ場に前記材料エレメントを曝露する、請求項51に記載の装置。
【請求項56】
前記光学測定デバイスは、表面プラズモン共鳴装置、顕微鏡、または蛍光測定装置からなる群から選択した装置である、請求項51に記載の装置。
【請求項57】
前記粒子は、磁性粒子、常磁性粒子、金粒子、マイクロスフェア、またはビーズである、請求項51に記載の装置。
【請求項58】
正規化された曝露量を確立する共振デバイスの表面のかなりの面積にわたって複数の結合で材料エレメントを結合する手段と、
該材料エレメントに適用される外部影響を第1期間にわたって制御する手段と、
該表面に結合した材料エレメントの量の、該正規化された曝露量に対する変化を示す信号を第2期間にわたって測定する手段と
を備える、アッセイを実施するための装置。
【請求項59】
アッセイ測定装置に流体が導入されたかどうかを判定するための方法であって、
共振デバイスの表面に流体を送る工程と、
該共振デバイスによって出力された電気信号をモニターする工程であって、該電気信号の性質は、該共振デバイスの該表面と接触する該流体の物理的な性質に基づいて変化する、工程と、
該共振デバイスによって出力された該電気信号が、該流体の存在を示す所定の条件を満たすかどうかを判定する工程と
を含む、方法。
【請求項60】
前記共振デバイスによって出力された前記電気信号は、時間の関数としてモニターされる、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記共振デバイスの前記表面に第2流体を送る工程と、該共振デバイスによって出力された前記電気信号を時間の関数としてモニターする工程と、該共振デバイスによって出力された該電気信号が第2の所定の条件を満たすかどうかを判定する工程とを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記共振デバイスによって出力された前記電気信号は、該電気信号の値が指定された値よりも大きいか、または小さい場合に前記所定の条件を満たす、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
前記共振デバイスによって出力された前記電気信号は、該電気信号の値が最小値と最大値との間にある場合に前記所定の条件を満たす、請求項59に記載の方法。
【請求項64】
前記流体は、磁性粒子を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項65】
前記流体は、生物学的試料を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項66】
前記流体を送る工程は、チャネルを通して該流体をポンプで送る工程を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項67】
共振デバイスの表面に第1流体を送る工程と、
該第1流体が該共振デバイスの該表面と接触することに応答して、該共振デバイスによって出力された第1電気信号をモニターする工程と、
該共振デバイスの該表面に第2流体を送る工程と、
該第2流体が該共振デバイスの該表面と接触することに応答して、該共振デバイスによって出力された第2信号をモニターする工程と、
該共振デバイスによって出力された該第1信号および該第2信号が所定の条件を満たすかどうかを判定する工程と
を含む、アッセイ測定装置に流体が導入されたかどうかを判定するための方法。
【請求項68】
前記共振デバイスによって出力された前記第1信号および前記第2信号は、該第1信号と該第2信号との間の値の差が最小値と最大値との間にある場合に前記所定の条件を満たす、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記第1流体および前記第2流体を送る工程は、チャネルを通して該第1流体および該第2流体をポンプで送る工程を含む、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
共振デバイスの表面に流体を送るチャネルに該流体を導入する工程であって、該共振デバイスは、該共振デバイスの該表面と接触する物質の物理的な性質に基づいて電気信号を出力する、工程と、
該共振デバイスによって出力された該電気信号をモニターする工程と、
該チャネルの幾何学的性質および該共振デバイスによって出力された該電気信号に基づいて該流体の流量を決定する工程と
を含む、アッセイ測定装置内の流体の流量を決定するための方法。
【請求項71】
前記共振デバイスによって出力された前記電気信号は、時間の関数としてモニターされる、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記流体は、粒子を含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記流体の流量を決定する工程は、該流体が前記チャネルに導入された後で前記粒子が前記共振デバイスの前記表面と接触する時間を決定する工程を含む、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記粒子が前記共振デバイスの前記表面と接触する時間は、該共振デバイスによって出力された前記電気信号がいつ変化するかに基づいて決定される、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記流体の流量を決定する工程は、該流体が前記チャネルに導入された後で、前記共振デバイスによって出力された前記電気信号がいつ変化するかに基づいて、該流体が該共振デバイスの前記表面と接触する時間を決定する工程を含む、請求項71に記載の方法。
【請求項76】
流体が入る少なくとも1つの開口を有する流体チャンバと、
該流体チャンバの少なくとも1つの内面の少なくとも一部を規定する共振デバイスと、
該共振デバイスによって出力された少なくとも1つの信号をモニターするための手段と、
該共振デバイスによって出力された該電気信号が特定の流体の存在を示す所定の条件を満たすかどうかを判定するための手段と
を備える、アッセイ測定装置。
【請求項77】
分析物を含む流体と、該分析物に親和性を有する捕捉作用物質を含む複数の磁性粒子とを混合して、少なくとも一部の分析物に結合した少なくとも一部の磁性粒子を生成する工程と、
該混合された流体をチャネルを通して流体チャンバ中に方向付ける工程であって、共振デバイスの少なくとも1つの表面は、該流体チャンバ内の該流体と流体連通する、工程と、
該共振デバイス近傍に第1磁束を生成して、該複数の結合した磁性粒子の少なくとも一部を該共振デバイスの少なくとも1つの表面に磁気的に引き寄せる工程と、
該チャネルおよび流体チャンバの幾何学的性質ならびに該共振デバイスによって出力された電気信号に基づいて、該チャネルおよび流体チャンバを通過する該流体の流量を決定する工程と
を含む、流体の流量を決定するための方法。
【請求項78】
前記流体の流量を決定する工程は、該流体が前記チャネルに導入された後で、前記共振デバイスによって出力された前記電気信号がいつ変化するかに基づいて、該流体が該共振デバイスの前記表面と接触する時間を決定する工程を含む、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記共振デバイスによって出力された前記電気信号は、前記磁性粒子が前記共振デバイスの少なくとも1つの表面と接触するときに変化する、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
分析物を含む流体と、該分析物に親和性を有する捕捉作用物質を含む複数の磁性粒子とを混合して、分析物に結合した磁性粒子を生成する工程と、
該混合された流体をチャネルを通して流体チャンバ中に方向付ける工程であって、共振デバイスの少なくとも1つの表面は、該流体チャンバ内の該流体と流体連通する、工程と、
該共振デバイス近傍に第1磁束を生成して、該結合した磁性粒子を該共振デバイスの少なくとも1つの表面に磁気的に引き寄せる工程と、
該共振デバイスによって出力される電気信号に基づいて、分析物を含む該流体が所定量の磁性粒子と混合されたかどうかを判定する工程と
を含む、アッセイ準備方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2009−517661(P2009−517661A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542409(P2008−542409)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/045057
【国際公開番号】WO2007/062038
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(508153707)バイオスケール, インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】