説明

アデノシン受容体アゴニストの治療上の使用

【課題】癌、炎症、自己免疫疾患、虚血再灌流損傷、てんかん、敗血症、敗血症ショック、神経変性(アルツハイマー病を含む)、筋肉疲労または筋肉痙攣の予防、治療または改善効果を有するアデノシン受容体アゴニストの提供。
【解決手段】プリン環の2位にアルコキシ基が置換した、特定な2−アルコキシアデノシンの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療化合物としてのアデノシン受容体アゴニストの使用に関連する。
【背景技術】
【0002】
アデノシンは、4つの既知の受容体、アデノシンA1、A2A、A2BおよびA3受容体に作用する、偏在性の局所ホルモン/神経伝達物質である。一般に、アデノシンは組織中のエネルギーの需要供給のバランスを保つのに役立つ。例えば心臓において放出されたアデノシンは、房室結節および心房中のA1受容体により仲介される作用により、心臓の動きを遅くし(Belardinelli,L&Isenberg,G Am.J.Physiol.224,H734−H737)、一方で同時に冠動脈を拡張しエネルギー(すなわちグルコース、脂肪および酸素)供給を増加させる(Knabb et al.,Circ.Res.(1983)53,33−41)。同様に炎症中、アデノシンは炎症活性を阻害するのに役立ち、一方で神経活性が過剰な状態(例えばてんかん)では、アデノシンは神経炎症を阻害する(Klitgaard et al.,Eur J.Pharmacol.(1993)242,221−228)。このシステムまたはその変形は、すべての組織中に存在する。
【0003】
アデノシンそのものは上室性頻脈の診断および治療に用いられることができる。アデノシンA1受容体アゴニストは、強力な鎮痛剤として作用することが知られている(Sawynok,J.Eur J Pharmacol.(1998)347,1−11)。アデノシンA2A受容体アゴニストは抗炎症剤として作用することが知られている(例えば米国特許第5,877,180号およびWO 99/34804)。実験動物中、A2A受容体アゴニストは腎動脈、冠状動脈または大脳動脈の閉塞に起因する敗血症、関節炎および虚血性/再灌流損傷を含む広い範囲の様々な状態に対して有効であることが示されている。これらの状態の共通因子は、すべてではないが大部分の炎症細胞上で、この受容体の阻害効果に起因する炎症応答が減少することである。
【0004】
しかしながら、アデノシン受容体が遍在分布しているということは、アデノシン受容体アゴニストの投与が副作用を起こすことを意味する。一般にこのことはアデノシンに基づく治療の発達を妨げている。選択的A1受容体アゴニストは徐脈をひき起こす。最初の選択的A2A受容体アゴニスト(2−[4−(2−カルボキシエチル)フェニルエチルアミノ]−5’−N−エチルカルボキシアミドアデノシン、またはCGS21680)は、有望な降圧剤として臨床試験(フェーズ2A)で試験された。しかしながら投与は大幅な血圧降下をひき起こし、またその結果として心拍出量が増加した。FR 2162128は、アデノシン誘導体(炭素原子が2つ以上の低級アルキル基を含む2−アルコキシ アデノシン誘導体を包含する)が降圧および冠状動脈の血管拡張活性を有することを開示している。
【0005】
Bartlettら(J.Med.Chem.1981,24,947−954)は、1−メチルイソグアノシンの類似体の評価を開示している。これらの類似体は、2−メトキシアデノシン(スポンゴシンとしても知られている)を含む。この化合物および他の化合物を齧歯類に経口投与後、骨格筋弛緩、体温下降、心血管および抗炎症効果に関して試験した(抗炎症活性はラットの足におけるカラギーナン誘発浮腫の阻害により評価した)。2−メトキシアデノシンは20mg/kg poで、ラットにカラギーナン誘発炎症の25%阻害を起こした。しかしながら、 平均血圧(41%)および心拍数(25%)の減少も、この化合物をこの用量で投与した後に観察された。
【発明の概要】
【0006】
よって、最小の副作用で投与することができるアデノシン受容体アゴニストを提供することが必要である。
【0007】
本発明により、癌、炎症、自己免疫疾患、虚血再灌流損傷、てんかん、敗血症、敗血症ショック、神経変性(アルツハイマー病を含む)、筋肉疲労または筋肉痙攣(特に運動選手の痙攣)の予防、治療または改善のための薬剤製造における、下記式:
【化1】


[式中、RはC1−4アルコキシおよびXはOHである]
の化合物の使用が提供される。
【0008】
本発明により、癌、炎症、自己免疫疾患、虚血再灌流損傷、てんかん、敗血症、敗血症ショック、神経変性(アルツハイマー病を含む)、筋肉疲労または筋肉痙攣(特に運動選手の痙攣)の予防、治療または改善のための薬剤製造における、下記式:
【化2】

[式中、RはC1−4アルコキシおよびXはHである]
の化合物の使用も提供される。
【0009】
特に本発明により、関節リウマチ、骨関節炎、リュウマチ様脊椎炎、痛風性関節炎および他の関節炎状態、乾癬、喘息、慢性閉塞性肺疾患、線維症、多発性硬化症、内毒素ショック、グラム陰性のショック、毒素ショック、出血性ショック、成人呼吸窮迫症候群、脳性マラリア、TNFにより増強したHIV複製、AZTおよびDDI活性のTNF阻害、器官移植の拒絶反応、 癌悪液質、HIV、慢性肺性炎症性疾患、ケイ肺症、肺性肉腫、骨吸収の疾患、再灌流損傷(心筋梗塞、脳卒中のような虚血性症状後の再灌流に起因する器官損傷を含む)、自己免疫疾患(多発性硬化症、 ギランバレー症候群、重症筋無力症を含む)、移植片対宿主の拒絶反応、同種移植の拒絶反応、感染症起因の発熱および筋肉痛、 感染症または悪性腫瘍に伴う悪液質、後天性免疫不全症候群(AIDS)に伴う悪液質、AIDS関連合併症(ARC)、ケロイド形成、瘢痕組織形成、クローン病、潰瘍性大腸炎およびパイレシス(pyresis)、過敏性腸症候群、骨粗鬆症、脳性マラリア、細菌性髄膜炎、 アムホテリシンB治療の副作用、インターロイキン−2治療の副作用、OKT(登録商標)3治療の副作用、およびGM−CSF治療の副作用を含む、炎症性または自己免疫疾患の予防、治療または改善のための薬剤製造における、式IまたはIIの化合物の使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、2−メトキシアデノシンが血圧に影響することなくカラギーナン誘発炎症を阻害することを示す。
【図2】図2は、2−メトキシアデノシン(0.6mg/kg p.o.)が血圧または心拍数に有意な効果を全く有さないことを示す。
【図3】図3は、2−メトキシアデノシン投与後の経時の血漿濃度変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
アデノシンA2Aおよび/またはA3受容体の選択的アゴニストである式(I)または(II)の化合物はとりわけ好ましく、というのもかかる化合物は強力な抗炎症活性を有するだろうと信じられるからである。アデノシンA2Aおよび/またはA3受容体の選択的アゴニストとは、アデノシンA1受容体を活性化するのに必要であるものより低い濃度(好ましくは1000分の1ないし5分の1)で、アデノシンA2Aおよび/またはA3受容体を活性化するアゴニストを意味する。さらにA1受容体は炎症促進活性を有し、よってかかる効果がA2Aおよび/またはA3受容体に選択的である化合物について最小化されることが期待される。
【0012】
式(I)の化合物は:2−メトキシアデノシン、2−エトキシアデノシン、2−プロポキシアデノシン、2−イソプロポキシアデノシン、および2−ブトキシアデノシンを含む。好ましい式(I)の化合物は、2−メトキシアデノシン、2−エトキシアデノシン、および2−ブチルオキシアデノシンである。
【0013】
式(II)の化合物は:3’−デオキシ−2−メトキシアデノシン、3’−デオキシ−2−エトキシアデノシン、3’−デオキシ−2−プロポキシアデノシン、3’−デオキシ−2−イソプロポキシアデノシン、および3’−デオキシ−2−ブトキシアデノシンを含む。好ましい式(II)の化合物は、3’−デオキシ−2−プロポキシアデノシン、3’−デオキシ−2−イソプロポキシアデノシン、および3’−デオキシ−2−ブトキシアデノシンである。
【0014】
2−メトキシアデノシンは3μMのアデノシンA2A受容体のEC50値を有することが報告されている(Daly,J.W.et al.,(1993)Pharmacol.46,91−100)。しかしながら、驚くことに、この化合物は0.2μMまたはそれ未満の血漿濃度で強い抗炎症活性を有する。このような低い投与量では、2−メトキシアデノシンは副作用の確率および重篤度を下げる。2−メトキシアデノシンは、抗炎症剤として有効であるが副作用が観察されるより低い濃度で投与されることが可能である。
【0015】
他の式(I)の化合物および式(II)の化合物もまた、他のアデノシン受容体アゴニストより低い投与量でよりいっそう有効であるということが信じられる。よって、式(I)の化合物および式(II)の化合物は、副作用の確率および重篤度が減少しているか、または副作用が観察されない量で効果的に投与されることが可能であるということが期待されている。かかる化合物は、同濃度では重大な副作用が観察される抗炎症効果しか有さない、大部分の他のアデノシン受容体アゴニストよりも有意な利点を提供する。
【0016】
あるいは、またはさらに、式(I)または(II)の化合物は、他のアデノシン受容体アゴニストに比べて副作用の確率および重篤度が減少していてもよい。
式(I)または(II)の化合物の対象への投与量は、アデノシン受容体の化合物のpH7.4でのEC50値より低いピーク血漿濃度を生じる量であるべきである。
【0017】
化合物のEC50値はアデノシン受容体(すなわちA1、A2A、A2B、A3アデノシン受容体)によって異なるだろうことは理解されよう。化合物の投与量は、異なる受容体の化合物のEC50値のうちもっとも低いものに対して算出されるべきである。
【0018】
好ましくは、ピーク血漿濃度は、EC50値の1000分の1ないし5分の1、または50分の1ないし3分の1(より好ましくは、1000分の1ないし20分の1、100分の1または50分の1ないし5分の1、50分の1ないし10分の1、または10分の1ないし5分の1)である。好ましくは、投与量は、アデノシン受容体の化合物のpH7.4でのEC50値の1000分の1ないし5分の1、より好ましくは、1000分の1ないし20分の1、または100分の1ないし5分の1、または50分の1ないし5分の1の間に、化合物の血漿濃度を1時間以上保つ量である。
【0019】
誤解を避けるために、本明細書では「化合物のEC50値」は、ベースラインの受容体応答と最大受容体応答の中間の受容体応答(例えば投与量−反応曲線を用いて決定されるような)を引き起こす化合物濃度として定義される。
【0020】
EC50値は標準的な条件下(平衡塩類溶液(pH7.4に緩衝))で決定されるべきである。単離した膜、細胞および組織を用いてEC50を決定するには、この条件は例えばDalyら(Pharmacol.(1993)46,91−100)のように、または好ましくは、Tilburgら(J.Med.Chem.(2002)45,91−100)のように、緩衝塩類溶液(pH7.4)(例えば細胞培養液)中であろう。EC50値は、健康な正常動物中か、またはさらには正常条件下(すなわち酸素添加血液または酸素添加した等張媒体(pH7.4に緩衝))で灌流させた健康な正常動物の組織中の、応答を仲介するアデノシン受容体を測定することにより、インビボで決定することもできる。
【0021】
あるいは、 式(I)または(II)の化合物の投与量は、アデノシン受容体のKd値の1000分の1ないし20分の1、1000分の1ないし3分の1、より好ましくは、100分の1ないし5分の1、または50分の1ないし10分の1のピーク血漿濃度を生じる量であってよい。
【0022】
化合物のKd値はアデノシン受容体(すなわちA1、A2A、A2B、A3アデノシン受容体)によって異なるだろうことは理解されよう。化合物の投与量は、異なる受容体の化合物のKd値のうちもっとも低いものに対して算出されるべきである。
【0023】
好ましくは、化合物の投与量は、アデノシン受容体の化合物のKd値の1000分の1ないし5分の1、より好ましくは、1000分の1ないし20分の1、または100分の1ないし5分の1、または50分の1ないし5分の1の間に、少なくとも1時間以上保たれる血漿濃度を生じる量である。
【0024】
各受容体の化合物のKd値は、原形質膜をアデノシン受容体の供給源として用いて、標準的な条件下で決定されるべきであり、このアデノシン受容体は、内因的にこれらの受容体を発現する組織または細胞か、もしくはアデノシン受容体遺伝子をコードするDNAベクターで形質移入された細胞由来のものである。あるいは、アデノシン受容体を発現する細胞を用いてすべての細胞の調製が行われてよい。受容体選択性を有する標識(例えば放射標識)されたリガンドは、結合親和性、またそれゆえに各受容体の化合物のKd値を決定するために、緩衝塩溶液(pH7.4)(例えば、Tilburg et al,J.Med.Chem.(2002)45,420−429参照)中で用いられるべきである。
【0025】
あるいは、 式(I)または(II)の化合物の投与量は、投与されるべき対象と同種の動物において徐脈、低血圧または頻脈の副作用を起こす化合物の最小投与量の1000分の1ないし5分の1、または50分の1ないし3分の1(好ましくは1000分の1ないし20分の1、もしくは100分の1または50分の1ないし5分の1)の量であってよい。好ましくは、該量は、副作用を起こす最小投与量の10分の1ないし5分の1である。好ましくは、投与量は、副作用を起こす最小投与量の1000分の1ないし20分の1、もしくは100分の1または50分の1ないし5分の1の間に、1時間以上保たれる血漿濃度を生じる。
【0026】
あるいは、 式(I)または(II)の化合物の投与量は、投与されるべき対象と同種の動物において徐脈、低血圧、または頻脈の副作用を起こす最小血漿濃度の1000分の1ないし5分の1、または50分の1ないし3分の1(好ましくは1000分の1ないし20分の1、もしくは100分の1または50分の1ないし5分の1)の血漿濃度を生じる量であってよい。好ましくは、該量は、副作用を起こす最小血漿濃度の10分の1ないし5分の1の血漿濃度を生じる。好ましくは、投与量は、副作用を起こす最小血漿濃度の1000分の1ないし20分の1、もしくは100分の1または50分の1ないし5分の1の間に、1時間以上保たれる血漿濃度を生じる。
【0027】
式(I)または(II)の化合物の投与量は、0.01ないし15mg/kg、例えば0.01ないし5または10mg/kgであるべきということが期待される。該量は6mg/kg未満、例えば0.01ないし2mg/kgであってよい。該量は少なくとも0.01または0.1mg/kg、例えば0.1ないし2mg/kg、または0.2ないし1mg/kgであってよい。典型量は0.2または0.6ないし1.2mg/kgである。
【0028】
70kgヒト対象のための好ましい投与量は420mg未満、好ましくは、少なくとも0.7mg、より好ましくは、少なくとも3.5mg、もっとも好ましくは、少なくとも7mgである。より好ましくは、7ないし70mg、または14ないし70mgである。
【0029】
上で特定した投与量は、式(I)の化合物が有利な治療効果を有するのに必要であろうと(アデノシンA2A受容体のスポンゴシンのEC50値に基づいて)予想される量より、有意に低い(およそ100分の1に至るまで)。
【0030】
式(I)または(II)の化合物の適正投与量は、治療される対象の年齢、性別、体重および状態、化合物の力価および投与経路等によって異なるだろう。適正投与量は当業者によって容易に決定されることができる。
【0031】
式(I)の化合物および式(II)の化合物は、関節炎(特に関節包の関節炎)、喘息、乾癬、および腸炎を含む特定の型の炎症の予防、治療または改善のために、特に有効であってよい。
【0032】
式(I)の化合物および式(II)の化合物は、関節リウマチ、過敏性腸症候群または骨関節炎の予防、治療または改善に特に有効であってよい。
【0033】
本発明によりさらに、癌、炎症、虚血再灌流損傷、てんかん、敗血症、敗血症ショック、神経変性(アルツハイマー病を含む)、筋肉疲労または筋肉痙攣(特に運動選手の痙攣)の予防、治療または改善方法であって、かかる予防、治療または改善を必要とする対象へ、式(I)または(II)の化合物を投与することを含む方法が提供される。
【0034】
式(I)の化合物の(特に炎症の予防、治療または改善のための)使用に関連する本発明の具体例は、2−メトキシアデノシンを除いてよい。
【0035】
式(I)または(II)の化合物は、他の治療剤、例えば鎮痛剤(例えばオピエート、NSAIDs、カンナビノイド、タキキニン修飾剤またはブラジキニン修飾剤)、または抗痛覚過敏剤(例えばガバペンチン、プレガバリン、カンナビノイド、ナトリウムまたはカルシウムチャネル修飾剤、抗てんかん剤または抗うつ剤)と併用投与されても、されなくてもよい。
【0036】
一般に、式(I)または(II)の化合物は、既知法により適当な剤形、適当な経路で投与されてよい。好ましくは、本発明の化合物は、経口、非経口、舌下、経皮、くも膜下腔内または経粘膜投与される。他の適当な経路は静脈内、筋肉内、皮下、吸入および局所的経路を含む。典型的に、薬剤の投与量は例えば静脈内投与される場合より経口投与される場合の方が多いだろう。
【0037】
例えば経口投与のための適当な組成物は錠剤、カプセル剤のごとき固形単位投与形を含み、またそれらは例えばバイアルおよびアンプルのごとき注射用の液体を含む。かかる組成物中に活性剤が既知法により、生理学上許容される賦形剤、希釈剤または担体と共に処方される。適当な希釈剤および担体が知られており、またそれらは適当な結合剤等とともに、例えばラクトースおよびタルクを含む。
【0038】
典型的に、本発明の化合物の単位用量は5ないし500mgの活性剤を含む。好ましくは、活性剤は、活性剤および生理学上許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む医薬組成物の形態である。好ましい投与量は、(ヒト)対象1kgあたり0.1ないし2、例えば0.5ないし1、典型的に約0.2または0.6mgの活性剤である。これらのレベルでは血圧降下(例えば10%以下)を伴うことなしに有効な治療を実質的に達成することが可能である。
【0039】
好ましくは、本発明の化合物は1日に2または3回投与されることが期待される。
【0040】
本発明の化合物は、より有効な薬剤、またはさらには副作用が減少した薬剤を特定するための基礎としても役立つことが可能である。
【0041】
式(I)の化合物に関連する本発明の具体例は、2−プロポキシアデノシンおよび/または2−イソプロポキシアデノシンを除いてもよい。
式(II)の化合物に関連する本発明の具体例は、3’−デオキシ−2−メトキシアデノシンおよび/または3’−デオキシ−2−エトキシアデノシンを除いてもよい。
本発明の具体例は添付の図に関連して、下記の実施例で述べる。
【実施例】
【0042】
実施例1
図1:A.2−メトキシアデノシン(62.4および624μg/kg i.p.)は、血圧に影響することなしに、インドメタシン(3mg/kg,po)に相当する有効性をもって、カラギーナン(CGN)誘発炎症を阻害する。カラギーナン(2%,10マイクロリットル)を右後足へ投与し、また足体積をプレチスモメトリ(plethysomometry)で評価した。2−メトキシアデノシンをカラギーナンと同時に投与した。2−メトキシアデノシンはインドメタシン(Indo,3mg/kg p.o.)と同等の効果があった。
【0043】
実施例2
図2:移植可能なラジオテレメトリー装置を1グループあたり6ラットの腹腔に設置した。装置の圧力カテーテルを腹大動脈に挿入し、皮膚下のリードIIポジション(腹腔/右肩部の左側)に2つの電極を通した。データ獲得のために、個々のラットはラジオレセプター(DSI)上の各々のケージに入れた。血圧に与える0.6mg/kgの2−メトキシアデノシンまたは賦形剤(p.o.)の効果を評価した。A:血圧;B:心拍数
【0044】
実施例3
アデノシンA2A受容体の2−メトキシアデノシンのEC50値は900ng/ml(3μM)である。図3はラットへ0.6mg/kgの2−メトキシアデノシンを投与した後の経時の血漿濃度変化を示す。血漿濃度は3時間以上EC50値の2%を超えたままであるということがわかる。抗炎症効果は、ピークおよび保たれる血漿濃度が8ng/ml(すなわちインビトロで決定されたEC50値の2%)より低い場合に(血圧の変化なく)観察された。ピーク血漿濃度が900ng/mlのレベル(すなわちEC50値)に達するならば、血圧の著しい降下が数時間続く。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌、炎症、自己免疫疾患、虚血再灌流損傷、てんかん、敗血症、敗血症ショック、神経変性(アルツハイマー病を含む)、筋肉疲労または筋肉痙攣の予防、治療または改善のための薬剤製造における、式(I):
【化1】

[式中、RはC1−4アルコキシおよびXはOHである]
の化合物の使用であって、対象へ投与後に、アデノシン受容体の化合物のpH7.4でのEC50値より低いピーク血漿濃度しか生じない量で投与される、化合物の使用。
【請求項2】
癌、炎症、自己免疫疾患、虚血再灌流損傷、てんかん、敗血症、敗血症ショック、神経変性(アルツハイマー病を含む)、筋肉疲労または筋肉痙攣の予防、治療または改善のための薬剤製造における、式(II):
【化2】

[式中、RはC1−4アルコキシおよびXはHである]
の化合物の使用であって、対象へ投与後に、アデノシン受容体の化合物のpH7.4でのEC50値より低いピーク血漿濃度しか生じない量で投与される、化合物の使用。
【請求項3】
化合物が2−メトキシアデノシン、2−エトキシアデノシン、または2−ブチルオキシアデノシンである、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
化合物が3’−デオキシ−2−プロポキシアデノシン、3’−デオキシ−2−イソプロポキシアデノシン、または3’−デオキシ−2−ブトキシアデノシンである、請求項2に記載の使用。
【請求項5】
関節炎、腸炎、関節リウマチ、骨関節炎、リュウマチ様脊椎炎、痛風性関節炎および他の関節炎状態、乾癬、喘息、慢性閉塞性肺疾患、線維症、多発性硬化症、内毒素ショック、グラム陰性のショック、毒素ショック、出血性ショック、成人呼吸窮迫症候群、脳性マラリア、TNFにより増強したHIV複製、AZTおよびDDI活性のTNF阻害、器官移植の拒絶反応、癌悪液質、HIV、慢性肺性炎症性疾患、ケイ肺症、肺性肉腫、骨吸収の疾患、再灌流損傷(心筋梗塞、脳卒中のような虚血性症状後の再灌流に起因する器官損傷を含む)、自己免疫性損傷(多発性硬化症、ギランバレー症候群、重症筋無力症を含む)、移植片対宿主の拒絶反応、同種移植の拒絶反応、感染症起因の発熱および筋肉痛、感染症または悪性腫瘍に伴う悪液質、後天性免疫不全症候群(AIDS)に伴う悪液質、AIDS関連合併症(ARC)、ケロイド形成、瘢痕組織形成、クローン病、潰瘍性大腸炎およびパイレシス、過敏性腸症候群、骨粗鬆症、脳性マラリア、細菌性髄膜炎、アムホテリシンB治療の副作用、アルツハイマー病を含む神経変性疾患、インターロイキン−2治療の副作用、OKT3治療の副作用、およびGM−CSF治療の副作用の予防、治療または改善のための、前記請求項いずれかに記載の使用。
【請求項6】
アデノシン受容体の化合物のpH7.4でのEC50値の1000分の1ないし5分の1の間に、血漿濃度を1時間以上保つ量で化合物が投与される、前記請求項いずれかに記載の使用。
【請求項7】
投与されるべき対象と同種の動物において、徐脈、低血圧または頻脈の副作用を起こす化合物の最小血漿濃度の1000分の1ないし5分の1の間に、血漿濃度を1時間以上保つ量で化合物が投与される、請求項1ないし5いずれかに記載の使用。
【請求項8】
0.01ないし15mg/kgで投与される、前記請求項いずれかに記載の使用。
【請求項9】
0.1ないし2mg/kgで投与される、前記請求項いずれかに記載の使用。
【請求項10】
0.6ないし1.2mg/kgで投与される、前記請求項いずれかに記載の使用。
【請求項11】
薬剤が1ないし500mgの化合物を含む単位投与の形態である、前記請求項いずれかに記載の使用。
【請求項12】
500mgまでの量で、請求項1ないし4いずれかで定義される化合物、および生理学上許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む単位投与形である、医薬組成物。
【請求項13】
癌、炎症、自己免疫疾患、虚血再灌流損傷、てんかん、敗血症、敗血症ショック、神経変性(アルツハイマー病を含む)、筋肉疲労または筋肉痙攣の予防、治療または改善方法であって、請求項1ないし4いずれかで定義される化合物を、かかる予防、治療または改善を必要とする対象へ、対象中にアデノシン受容体の化合物のpH7.4でのEC50値より低いピーク血漿濃度しか生じない量で投与することを含む方法。
【請求項14】
関節炎、腸炎、関節リウマチ、骨関節炎、リュウマチ様脊椎炎、痛風性関節炎および他の関節炎状態、乾癬、喘息、慢性閉塞性肺疾患、線維症、多発性硬化症、内毒素ショック、グラム陰性のショック、毒素ショック、出血性ショック、成人呼吸窮迫症候群、脳性マラリア、TNFにより増強したHIV複製、AZTおよびDDI活性のTNF阻害、器官移植の拒絶反応、癌悪液質、HIV、慢性肺性炎症性疾患、ケイ肺症、肺性肉腫、骨吸収の疾患、再灌流損傷(心筋梗塞、脳卒中のような虚血性症状後の再灌流に起因する器官損傷を含む)、自己免疫性損傷(多発性硬化症、ギランバレー症候群、重症筋無力症を含む)、移植片対宿主の拒絶反応、同種移植の拒絶反応、感染症起因の発熱および筋肉痛、感染症または悪性腫瘍に伴う悪液質、後天性免疫不全症候群(AIDS)に伴う悪液質、AIDS関連合併症(ARC)、ケロイド形成、瘢痕組織形成、クローン病、潰瘍性大腸炎およびパイレシス、過敏性腸症候群、骨粗鬆症、脳性マラリア、細菌性髄膜炎、アムホテリシンB治療の副作用、インターロイキン−2治療の副作用、OKT3治療の副作用、およびGM−CSF治療の副作用の予防、治療または改善のための、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
アデノシン受容体の化合物のpH7.4でのEC50値の1000分の1ないし5分の1の間に、対象中に血漿濃度を1時間以上保つ量で化合物が投与される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
投与されるべき対象と同種の動物において徐脈、低血圧または頻脈の副作用を起こす化合物の最小血漿濃度の1000分の1ないし5分の1の間に、対象中に血漿濃度を1時間以上保つ量で化合物が投与される、請求項13ないし15いずれかに記載の方法。
【請求項17】
化合物が0.01ないし15mg/kgで投与される、請求項13ないし16いずれかに記載の方法。
【請求項18】
化合物が0.1ないし2mg/kgで投与される、請求項13ないし17いずれかに記載の方法。
【請求項19】
化合物が0.6ないし1.2mg/kgで投与される、請求項13ないし18いずれかに記載の方法。
【請求項20】
癌、炎症、虚血再灌流損傷、てんかん、敗血症、敗血症ショック、神経変性(アルツハイマー病を含む)、筋肉疲労または筋肉痙攣の予防、治療または改善のための薬剤を見出すための、請求項1ないし4いずれかで定義される化合物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−111764(P2012−111764A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−1451(P2012−1451)
【出願日】平成24年1月6日(2012.1.6)
【分割の表示】特願2006−505924(P2006−505924)の分割
【原出願日】平成16年3月5日(2004.3.5)
【出願人】(510299260)シービーティ・デベロップメント・リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】CBT DEVELOPMENT LIMITED
【Fターム(参考)】