説明

アドホックネットワークにおけるパケット送信経路設定方法およびこれを用いたネットワーク装置

【課題】アドホックネットワークにおけるパケット送信経路設定方法およびこれを用いたネットワーク装置を提供する。
【解決手段】パケット送信経路設定方法は、予め設定されたホップ数N(Nは2以上の正数)によってソースノードと目的ノードとの間に少なくとも1つのノードを含むN−1個のルーティング領域を設定するステップと、チャネル利得に基づき、設定されたそれぞれのルーティング領域内のいずれか1つのノードをパケットリレーノードとして決定するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アドホックネットワークにおけるパケットの送信経路設定に関し、より詳細には、送信されるパケットの許容可能な遅延時間およびノード間のチャネル状態に基づいてパケットの送信経路を決定することで、パケットの送信経路を最適化することができるパケット送信経路設定方法およびこれを実行するためのネットワーク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、無線ネットワークは、特定した基盤網の援助なくノード間のマルチホップルーティングによって互いに通信することができるネットワーク構造を有する。無線ネットワークにおいて、通信は、帯域幅が制限されて低いエネルギーの使用が要求される。
【0003】
無線ネットワーク、特にアドホック(ad−hoc)ネットワークにおいてルーティングプロトコルは、ソース(source)ノードから目的(destination)ノードまでの効率的なパケット送信経路を決定する。
【0004】
アドホックネットワークにおいて、従来技術に係るルーティング方法は、ソースまたはリレー(relay)ノードからパケットを受けたノードのうち、目的ノードに最も近いノードが次のホップにおける送信ノードとなってパケットを転送(forwarding)するものである。このようなルーティング方法は、ソースノードから目的ノードまで到達するのに所要する総ホップ数を減らすことができる。
【0005】
しかしながら、このようなルーティング方法は、ネットワーク内に複数のソースノード−目的ノードのペア(S−Dペア)が存在する場合には、パケット送信経路間の衝突が発生する可能性が高い。
【0006】
さらに、ソースノードは、目的ノードにより近いノードが送信パケットを成功裏に受信できるようにするために、より高い送信電力を要するようになる。したがって、上述したルーティング方法は、電力が制限されるアドホックネットワークに適用し難い。
【特許文献1】特開2005−160026号公報
【特許文献2】韓国特許出願公開第2007−074163号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/182126号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記のような問題点を解決するために案出されたものであって、マルチホップ基盤のアドホックネットワークのソースノードと目的ノードとの間でパケットをリレーするリレーノードを決定するためのパケット送信経路設定方法およびこれを用いたネットワーク装置を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、チャネル利得に基づいた機会的な(Opportunistic)パケット送信経路設定方法およびこれを用いたネットワーク装置を提供することを他の目的とする。
【0009】
また、本発明は、パケット遅延を考慮してホップ数を設定し、設定されたホップ数によってルーティング領域を設定することで、干渉に強く送信電力の調整が可能なパケット送信経路設定方法およびネットワーク装置を提供することを他の目的とする。
【0010】
さらに、本発明は、パケット遅延と送信電力間に効率的なトレードオフを提供することができるパケット送信経路設定方法およびこれを用いたネットワーク装置を提供することをさらに他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するために、本発明の実施形態に係るパケット送信経路設定方法は、予め設定されたホップ数N(Nは2以上の正数)によってソースノードと目的ノードとの間に少なくとも1つのノードを含むN−1個のルーティング領域を設定するステップと、チャネル利得に基づいて前記設定されたそれぞれのルーティング領域内のいずれか1つのノードをパケットリレーノードとして決定するステップとを含む。
【0012】
このとき、前記予め設定されたホップ数Nは、送信されるパケットに対して許容可能な遅延時間を基準として決定されるようになる。
【0013】
このとき、前記N−1個のルーティング領域それぞれの中心から境界までの距離rおよび送信されるパケットに対するホップ距離dの比のr/dは、0よりも大きく0.5よりも小さい任意の値で設定されるようになる。
【0014】
このとき、前記ソースノードは、前記予め設定されたホップ数N、ホップ距離、およびルーティング領域中心から境界までの距離rに基づいて送信電力を設定することができる。
【0015】
このとき、前記ルーティング領域内のいずれか1つのノードをパケットリレーノードとして決定するステップは、ソースノードまたは前記ソースノードから送信されたパケットを受信したリレーノードが隣接したルーティング領域内の各ノードに目的ノードのコーディネート情報を含んでいる制御信号を送信し、前記制御信号を受信した各ノードがチャネル利得を推定し、前記推定されたチャネル利得が所定の設定値以上であるノードを次のパケットリレーノードとして決定することを含むことができる。
【0016】
このとき、N−1個のルーティング領域のうちから目的ノードと隣接したルーティング領域内のパケットリレーノードを決定するステップは、前記目的ノードが前記目的ノードと隣接したルーティング領域内の各ノードにRTS信号を送信し、前記RTS信号を受信した各ノードがチャネル利得を推定し、前記推定されたチャネル利得が所定の設定値以上であるノードをパケットリレーノードとして決定することを含むことができる。
【0017】
本発明の他の実施形態に係るパケット送信経路設定方法は、ソースノードまたは前記ソースノードから受信されたパケットを送信する第1リレーノードが予め設定された領域内のノードにRTSメッセージを送信するステップと、前記RTSメッセージを受信した各ノードがチャネル利得を推定するステップと、前記推定されたチャネル利得が所定の設定値以上であるノードが前記推定されたチャネル利得値を含むCTSメッセージを送信するステップと、前記CTSメッセージを送信するノードが1つである場合には、前記CTSメッセージを送信したノードを第2リレーノードとして決定するステップとを含む。
【0018】
本発明のさらに他の実施形態に係るパケット送信経路設定方法は、ソースノードまたは前記ソースノードから受信されたパケットを送信する第1リレーノードが予め設定された領域内のノードにRTSメッセージを送信するステップと、前記RTSメッセージを受信した各ノードがチャネル利得を推定するステップと、前記推定されたチャネル利得値に対応するバック−オフ時間によって前記推定されたチャネル利得値を含むCTSメッセージを送信するステップと、前記CTSメッセージを最初に送信したノードを第2リレーノードとして決定するステップとを含む。
【0019】
本発明のさらに他の実施形態に係るネットワーク装置は、送信パケットに許容される遅延時間に基づいてホップ数を決定するソースノードと、前記ソースノードから目的ノードのコーディネート情報を含んでいる制御信号を受信してチャネル利得を推定し、前記推定されたチャネル利得が所定の設定値以上であれば応答メッセージを前記ソースノードに送信する第1リレーノードと、前記目的ノードからメッセージを受信してチャネル利得を推定し、前記推定されたチャネル利得が所定の設定値以上であれば応答メッセージを前記目的ノードに送信する第2リレーノードとを備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、マルチホップ基盤のアドホックネットワークのソースノードと目的ノードとの間でパケットをリレーするリレーノードを決定するためのパケット送信経路設定方法およびこれを用いたネットワーク装置を提供することができる効果がある。
【0021】
また、本発明によれば、チャネル利得に基づいて機会的なパケット送信経路設定方法およびこれを用いたネットワーク装置を提供することができる効果がある。
【0022】
また、本発明によれば、パケット遅延を考慮してホップ数を設定し、設定されたホップ数によってルーティング領域を設定することで、干渉に強く送信電力の調整が可能なパケット送信経路設定方法およびネットワーク装置を提供することができる効果がある。
【0023】
さらに、本発明によれば、パケット遅延と送信電力間に効率的なトレードオフを提供することができるパケット送信経路設定方法およびこれを用いたネットワーク装置を提供することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付の図面および該当する図面に記載された内容を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0025】
図1は、アドホックネットワークの一例を示した図である。
【0026】
図1を参照すれば、アドホックネットワークは、n個のノードがランダム(random)に分布している。アドホックネットワークは、nよりも小さいか同じ数のS−Dペアがランダムに存在している。図1において、ソースノード1−目的ノード1およびソースノード2−目的ノード2は、マルチホップ通信によるルーティングの一例を示している。
【0027】
下記の説明において、アドホックネットワークのチャネルモデルは、下記の数式1のように定義することができるが、これに制限されることはない。
【0028】
【数1】

【0029】
前記の数式1において、gijは、
【0030】
【数2】

【0031】
を満たすレーリー(Rayleigh)フェージングチャネルを示す。γは経路損失指数(path loss exponent)であって、2よりも大きい値であると仮定する。一方、チャネル状態情報は、ソースノードなどの送信端では分からず、受信端で測定が可能なものと仮定する。
【0032】
図2は、本発明の実施形態に係るパケット送信経路設定方法を示したフローチャートである。
【0033】
図2を参照すれば、本発明の実施形態に係るパケット送信経路設定方法は、予め設定されたホップ数N(Nは2以上の正数)によってソースノードと目的ノードとの間に少なくとも1つのノードを含むN−1個のルーティング領域(region)を設定するルーティング領域設定ステップS201と、チャネル利得に基づき、設定されたそれぞれのルーティング領域内のいずれか1つのノードをパケットリレーノードとして決定するチャネル利得に基づいた経路設定ステップS203とを含む。
【0034】
ルーティング領域を設定するステップS201において、ホップ数Nは、送信されるパケットに対して許容される遅延時間に基づいてソースノードで設定される。このとき、送信されるパケットに対して許容される遅延時間は、システム容量やS−Dペアあたりの平均送信電力などを考慮して設定されるようになる。したがって、送信されるパケットに対して許容される遅延時間が短いほどホップ数は少なく設定される。
【0035】
ルーティング領域は、図3に示すように、ソースノード301と目的ノード309との間に設定される。
【0036】
図3を参照すれば、それぞれのルーティング領域303,305,307は、少なくとも1つのノードを含む。
【0037】
ソースノード301は、隣接したルーティング領域303内において、チャネル利得が所定の設定値以上であるノードのうちのいずれか1つのノードを最初のホップにおけるパケット受信ノードとして決定する。最初のホップにおけるパケット受信ノードは、結局、次のホップ(2番目のホップ)におけるリレーノードとなる。また、2番目のホップで決定されたリレーノードは、隣接したルーティング領域305内において、チャネル利得が所定の設定値以上であるノードのうちのいずれか1つを次のホップ(三番目のホップ)におけるリレーノードとして決定される。
【0038】
このように、本発明に係る実施形態は、1つのルーティング領域内からチャネル利得が優れたノードをリレーノードとして選択することで、MUD(Multi User Diversity)利得を得ることができる。このとき、MUD利得は、理論的に、ルーティング領域303内のノード数の対数(logarithm)に等しい。
【0039】
設定されたルーティング領域303,305,307内に十分に多くのノードが存在すれば、チャネル利得が高いノードを選択することができる。
【0040】
したがって、送信ノードは、チャネル利得に対応して送信電力を減少させることができる。このような送信電力の減少は、より多くのS−Dペアを収容することができる上に、全体システムの容量を増加させることができる。
【0041】
目的ノード309と隣接したルーティング領域307は、目的ノード309から受信される信号のチャネル利得が所定の設定値以上であるノードをリレーノードとして決定する。
【0042】
したがって、目的ノード309から2ホップ前のリレーノードは、ルーティング領域307内のリレーノードにパケットを送信するようになる。
【0043】
図4は、図3に示したルーティング領域の決定方法を説明するための図である。
【0044】
図4を参照すれば、各ルーティング領域は四角形(square)で設定されるようになるが、これに制限されることはない。各ルーティング領域の大きさは下記の数式2に関連する。
【0045】
【数3】

【0046】
前記の数式2において、rはルーティング領域403の中心(X1,Y1)から境界までの距離、dはホップ距離である。dおよびrは、ネットワークの要求条件に応じて予め設定することができる。
【0047】
dは、パケット送信ノード(ソースノードまたはリレーノード)から隣接ルーティング領域403内のリレーノードまでの距離、または以前のルーティング領域の中心(X0,Y0)から次のルーティング領域の中心(X1,Y1)までの距離である。
【0048】
このとき、隣接したノードへのホッピング(hopping)は大きい干渉を引き起こすため、rはdに比べて十分に小さい値となるように設定する。ホップ距離dはrに比べて十分に大きい値であるため、dは毎ホップあたり同じ値を有するものと仮定することができる。
【0049】
アドホックネットワークにおいて、各ノードは、GPS装置によって自分のコーディネート(coordinate)情報を知っている。したがって、各ノードは、どのようなルーティング領域に属しているのか、またはdおよびrに関連する情報を知ることができるのである。
【0050】
ソースノード301およびそれぞれのリレーノードは、予め設定されたホップ数N、ホップ距離、およびルーティング領域中心から境界までの距離rに基づいて送信電力を設定することができる。すなわち、ホップ距離を大きく設定すればこれに対応して送信電力は大きく設定され、ホップ距離を小さく設定すればホップ数Nは大きく設定されなければならないが、これに対応して送信電力を小さく設定することができる。
【0051】
図5は、本発明の他の実施形態に係るパケット送信経路設定方法を示したフローチャートである。
【0052】
図5を参照すれば、パケット送信経路設定方法は、ソースノードまたはソースノードから受信されたパケットを送信する第1リレーノード501が予め設定された領域内のノード503にRTSメッセージを送信するステップ505と、RTSメッセージを受信した各ノードがチャネル利得を推定するステップ507と、推定されたチャネル利得が所定の設定値よりも大きいノードが推定されたチャネル利得値を含むCTSメッセージを送信するステップ509,511と、CTSメッセージを送信するノードが1つである場合には、CTSメッセージを送信したノードを第2リレーノードと決定してパケットを送信するステップ513とを含む。
【0053】
ステップ505で、ソースノード(または第1リレーノード)501は、目的ノードのコーディネート情報を含むRTS(Request To Send)メッセージを隣接ルーティング領域内の各ノード(候補ノード)503に送信する。
【0054】
ステップ507で、ルーティング領域内の各候補ノード503は、RTSメッセージを用いてチャネル利得を推定する。
【0055】
RTSメッセージおよびCTSメッセージは、パケット送信時に用いる周波数とは異なる任意の周波数を用いて送信することができる。
【0056】
ステップ509で、各ノードは、推定されたチャネル利得が閾値よりも大きいか否かを判断する。ステップ511で、チャネル利得が閾値よりも大きいノードは、推定されたチャネル利得値を含むCTS(Clear To Send)メッセージをソースノード(または第1リレーノード)501に送信する。
【0057】
閾値は、下記の数式3のように表すことができる。
【0058】
【数4】

【0059】
前記の数式3において、mは、ルーティング領域内に存在するノードの数である。mが十分に大きいと仮定すれば、最大のチャネル利得は理論的にlogmに等しい。
【0060】
しかしながら、実際的なmを考慮すれば、チャネル利得に対する誤差ε(ε>0)が発生する。閾値は総TTH個が設定されるようになり、チャネル利得に対する誤差ε
【0061】
【数5】

【0062】
のようになる。
【0063】
ステップ513で、ソースノード(または第1リレーノード)501は、CTSメッセージを送信したノードを次のホップにおけるリレーノードとして決定してパケットを送信する。
【0064】
ステップ515で、CTSを送信したノードは、パケットが受信されればACKメッセージを送信する。
【0065】
もし、予め設定された時間区間内にいずれか1つのノードもCTSメッセージを送信しなければ、閾値はγTH,i+1に変更される。
【0066】
図6は、目的ノードにパケットを送信するリレーノードの選択方法を説明するための図である。
【0067】
図6を参照すれば、目的ノード609は予め決定されているため、目的ノード609と隣接したルーティング領域605内のリレーノード選択は、受信ダイバーシティ利得を考慮して決定される。
【0068】
すなわち、目的ノード609から2ホップの前のリレーノード603は、目的ノード609と隣接したルーティング領域605内の代表ノード607にリレーノード決定要請メッセージを送信するのである。
【0069】
目的ノード609から2ホップの前のリレーノード603は、N−2(Nは予め決定されたホップ数)番目のルーティング領域601内に存在する。さらに、目的ノード609と隣接したルーティング領域605は、N−1番目のルーティング領域を示す。
【0070】
リレーノード決定要請メッセージを受信した代表ノード607は、目的ノード609にリレーノード決定要請メッセージを伝達する。
【0071】
目的ノード609がリレーノード決定要請メッセージを受信すれば、隣接したルーティング領域605内の各ノードにRTS機能のメッセージを送信する。
【0072】
RTS機能のメッセージは、目的ノードが経路設定のために送信するものである。一般的に、RTSメッセージは、データを送信するノードから送信するメッセージである。RTS機能のメッセージは、目的ノードが経路設定のために送信する点を除けば、RTSメッセージと同じ機能を有する。
【0073】
RTS機能のメッセージを受信した各ノードは、受信されたRTS機能のメッセージを用いてチャネル利得を推定する。推定されたチャネル利得が所定の設定値よりも大きいノードが推定されたチャネル利得値を含むCTS機能のメッセージを目的ノード609に送信する。
【0074】
CTS機能のメッセージは、RTS機能のメッセージに対応する。したがって、CTS機能のメッセージは、データを送信するためのノードから目的ノードに送信する点を除けば、CTSメッセージと同じ機能を有する。
【0075】
次に、代表ノード607は、CTS機能のメッセージを目的ノード609に送信したノード(最終ホップにおけるリレーノード)を2ホップ前のリレーノード603に知らせる。
【0076】
この後、2ホップ前のリレーノード603は、パケットを最終ホップにおけるリレーノードに送信する。
【0077】
前記の閾値の変更過程とCTS機能のメッセージの衝突防止過程は、最終ホップにおけるリレーノード決定過程に同じように適用される。
【0078】
図7は、図5において、いずれか1つのノードもCTSメッセージを送信しない場合のパケット送信経路設定方法を示したフローチャートである。
【0079】
図7を参照すれば、予め設定された時間区間内にCTSメッセージを送信するノードがない場合には、閾値が変更される(S701)。ソースノード(または第1リレーノード)501は、予め設定された時間区間内にCTSメッセージを受信することができなければ閾値をγTH,i+1に変更し、変更されたγTH,i+1を含むRTSメッセージを送信する。
【0080】
隣接ルーティング領域内の各ノード(候補ノード)503は、変更されたγTH,i+1と推定されたチャネル利得とを比較する(S703)。推定されたチャネル利得が変更されたγTH,i+1よりも大きいノードは、CTSメッセージを送信する(S705)。もし、閾値がT−1番目に変更された場合にも、CTSが送信されなければノード決定失敗(outage)が発生する(S707)。ノード決定失敗が発生すれば、ルーティング領域内の代表ノードは、NACKメッセージを送信する。ルーティング領域内の代表ノードは、ルーティング領域の中心に位置したノードまたは予め設定されたコーディネーターノードであると言える。
【0081】
このとき、2つ以上のノードからCTSメッセージを送信する場合には、衝突(collision)が発生することがある。
【0082】
図8は、2つ以上のノードからCTSメッセージを送信する場合のパケット送信経路設定方法を示したフローチャートである。
【0083】
図8を参照すれば、ルーティング領域内の各候補ノード503は、RTSメッセージを用いてチャネル利得を推定する(S801)。
【0084】
前記のように、推定されたチャネル利得が閾値よりも大きいノードは、CTSメッセージをソースノード(または第1リレーノード)501に送信する。
【0085】
CTSメッセージを送信したノードは、ルーティング領域内の2つ以上のノードからCTSメッセージが送信されたのか否かを判断する(S803)。このとき、ルーティング領域内の代表ノードが2つ以上のノードからCTSメッセージが送信されたのかを判断し、これをCTSメッセージを送信した各ノードに知らせることができる。
【0086】
もし、1つのノードからCTSメッセージをソースノード(または第1リレーノード)501に送信した場合には、前記のように第2リレーノードが決定される(S805)。
【0087】
もし、2つ以上のノードからCTSメッセージをソースノード(または第1リレーノード)501に送信した場合には、CTSメッセージを送信した各ノードは、チャネル利得に対応する確率値によってCTSメッセージを再送信する(S807)。
【0088】
このとき、チャネル利得に対応する確率値は予め設定された値であって、チャネル利得が高いほど1に近い確率値で設定することができる。
【0089】
本発明の実施形態は、チャネル利得が高いほど高い確率値でCTSメッセージを再送信するため、CTSメッセージの衝突問題を解決することができる。
【0090】
図9は、複数の送信ノードが存在する場合の一例を示した図である。
【0091】
図9は、ルーティング領域909内のノード905,907が2つ以上の送信ノード901,903からRTSメッセージを受信した場合を示している。
【0092】
このとき、ルーティング領域909内のノード905,907は、それぞれのRTSメッセージに対するチャネル利得を推定する。
【0093】
このとき、推定されたチャネル利得が所定の設定値以上であれば、RTSメッセージを送信したソースノードまたは第1リレーノードの識別情報(ID)および推定されたチャネル利得値を含んでCTSメッセージを送信する。
【0094】
このとき、それぞれの送信ノード901,903は、識別情報によってCTSメッセージを送信したノードを知ることができる。それぞれの送信ノード901,903は、いずれか1つのノードがチャネル利得が最も良い候補ノードを選択し、他の1つのノードがチャネル利得が二番目に良いノードを選択することで、リンク間の衝突を防ぐことができる。
【0095】
また、複数の送信ノードが存在する場合に、閾値およびCTSメッセージの衝突に対する処理過程は、1つの送信ノードが存在する場合と同じように処理される。
【0096】
図10は、本発明のさらに他の実施形態に係るパケット送信経路設定方法を示したフローチャートである。
【0097】
図10を参照すれば、パケット送信経路設定方法は、ソースノードまたはソースノードから受信されたパケットを送信する第1リレーノード1001が予め設定された領域内のノード1003にRTSメッセージを送信するステップ1005と、RTSメッセージを受信した各ノードがチャネル利得を推定するステップ1007と、推定されたチャネル利得値に対応するバック−オフ時間によって推定されたチャネル利得値を含むCTSメッセージを送信するステップ1009,1011と、CTSメッセージを最初に送信したノードを第2リレーノードとして決定するステップ1013,1015とを含む。
【0098】
ステップ1005で、ソースノード(または第1リレーノード)1001は、目的ノードのコーディネート情報を含むRTSメッセージを隣接ルーティング領域内の候補ノード1003に送信する。
【0099】
ステップ1007で、隣接ルーティング領域内の候補各ノード1003は、RTSメッセージを用いてチャネル利得を推定する。
【0100】
RTSメッセージおよびCTSメッセージは、パケット送信時に用いる周波数とは異なる任意の周波数を用いて送信することができる。
【0101】
ステップ1009で、隣接ルーティング領域内の候補各ノード1003は、予め設定されたバック−オフ時間によってタイマー(図示せず)を作動させる。
【0102】
バック−オフ時間Uは、図11に示すように、チャネル利得値に基づくユーティリティ関数である。ユーティリティ関数は、チャネル利得値に対して単調減少する特性を有するように任意の関数でモデリングして生成することができる。
【0103】
ステップ1007で、隣接ルーティング領域内の候補各ノード1003は、RTSメッセージを2つ以上のソースノードまたは第1リレーノードから受信した場合には、各RTSメッセージに対するチャネル利得を推定する。
【0104】
ステップ1011で、バック−オフ時間によって作動したタイマーが0となるノードは、推定されたチャネル利得値を含むCTSメッセージをソースノード(または第1リレーノード)1001に送信する。
【0105】
ステップ1013で、ソースノード(または第1リレーノード)901は、CTSメッセージを送信したノードにパケットを送信する。パケットを受信したノードは、ACK信号をソースノード(または第1リレーノード)1001に送信する。
【0106】
上述したように、本発明の好ましい実施形態を参照して説明したが、該当の技術分野において熟練した当業者にとっては、特許請求の範囲に記載された本発明の思想および領域から逸脱しない範囲内で、本発明を多様に修正および変更させることができることを理解することができるであろう。すなわち、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲に基づいて定められ、発明を実施するための最良の形態により制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】アドホックネットワークの一例を示した図面である。
【図2】本発明の実施形態に係るパケット送信経路設定方法を示したフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態に係るルーティング領域設定例を示した図である。
【図4】図3に示したルーティング領域の決定方法を説明するための図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係るパケット送信経路設定方法を示したフローチャートである。
【図6】目的ノードにパケットを送信するリレーノードの選択方法を説明するための図である。
【図7】図5において、いずれか1つのノードもCTSメッセージを送信しない場合のパケット送信経路設定方法を示したフローチャートである。
【図8】2つ以上のノードにCTSメッセージを送信する場合のパケット送信経路設定方法を示したフローチャートである。
【図9】複数の送信ノードが存在する場合の一例を示した図である。
【図10】本発明のさらに他の実施形態に係るパケット送信経路設定方法を示したフローチャートである。
【図11】本発明の実施形態に係るバック−オフ時間に対するユーティリティ関数の一例を示した図である。
【符号の説明】
【0108】
301 ソースノード
303,305,307 ルーティング領域
309 目的ノード
403 ルーティング領域
501 ソースノード(またはリレーノード)
503 候補ノード
601 ルーティング領域
603 リレーノード
605 ルーティング領域
607 代表ノード
609 目的ノード
901,903 送信ノード
905,907 ノード
909 ルーティング領域
1001 ソースノード(またはリレーノード)
1003 候補ノード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信ネットワークにおけるパケット送信経路の設定方法であって、
予め設定されたホップ数N(Nは2以上の正数)によって少なくとも1つのノードを含むN−1個のルーティング領域をソースノードと目的ノードとの間に設定するステップと、
チャネル利得に基づいて前記設定されたN−1個のルーティング領域内のいずれか1つのノードをリレーノードとして決定するステップと、
を含むことを特徴とするパケット送信経路設定方法。
【請求項2】
前記予め設定されたホップ数Nは、送信されるパケットに対して許容される遅延時間を基準として決定されることを特徴とする請求項1に記載のパケット送信経路設定方法。
【請求項3】
前記N−1個のルーティング領域それぞれの中心から境界までの距離rおよび送信されるパケットに対するホップ距離dの比のr/dは、0よりも大きく0.5よりも小さい値であることを特徴とする請求項1に記載のパケット送信経路設定方法。
【請求項4】
前記ソースノードおよびリレーノードは、前記予め設定されたホップ数N、ホップ距離、およびルーティング領域中心から境界までの距離rに基づいて送信電力を設定することを特徴とする請求項3に記載のパケット送信経路設定方法。
【請求項5】
前記ルーティング領域内のいずれか1つのノードをリレーノードとして決定するステップは、
ソースノードまたは前記ソースノードから送信されたパケットを受信したリレーノードが、それぞれ隣接したルーティング領域内の各ノードに目的ノードのコーディネート情報を含む制御信号を送信し、
前記制御信号を受信したノードがチャネル利得を推定し、
前記推定されたチャネル利得が所定の設定値よりも大きいノードを次のリレーノードとして決定することを含むことを特徴とする請求項1に記載のパケット送信経路設定方法。
【請求項6】
N−1個のルーティング領域のうちから目的ノードと隣接したルーティング領域内のリレーノードを決定するステップは、
前記目的ノードが前記目的ノードと隣接したルーティング領域内の各ノードにRTS機能の信号を送信し、
前記RTS機能の信号を受信した各ノードがチャネル利得を推定し、
前記推定されたチャネル利得が所定の設定値よりも大きいノードをリレーノードとして決定することを含むことを特徴とする請求項1に記載のパケット送信経路設定方法。
【請求項7】
前記無線通信ネットワークは、マルチホップ基盤のアドホックネットワークであることを特徴とする請求項1に記載のパケット送信経路設定方法。
【請求項8】
無線通信ネットワークにおいてソースノードと目的ノードとの間でパケットをリレーするリレーノードを決定するためのパケット送信経路設定方法であって、
前記ソースノードまたは前記ソースノードから受信されたパケットを送信する第1リレーノードが予め設定された領域内のノードにRTSメッセージを送信するステップと、
前記RTSメッセージを受信した各ノードがチャネル利得を推定するステップと、
前記推定されたチャネル利得が設定値よりも大きいノードが前記推定されたチャネル利得値を含むCTSメッセージを送信するステップと、
前記CTSメッセージを送信したノードを第2リレーノードとして決定するステップと、
を含むことを特徴とするパケット送信経路設定方法。
【請求項9】
前記CTSメッセージを送信したノードを第2リレーノードとして決定するステップにおいて、
前記CTSメッセージを送信するノードが1つであることを特徴とする請求項8に記載のパケット送信経路設定方法。
【請求項10】
前記CTSメッセージを送信するノードがない場合には、
前記設定値を変更し、前記推定されたチャネル利得を前記変更された設定値と比較することを特徴とする請求項8に記載のパケット送信経路設定方法。
【請求項11】
前記CTSメッセージを送信するノードが2つ以上である場合には、
前記CTSメッセージを送信した各ノードは、チャネル利得に対応する確率値によってCTSメッセージを再送信することを含むことを特徴とする請求項8に記載のパケット送信経路設定方法。
【請求項12】
前記予め設定された領域内のノードが前記RTSメッセージを2つ以上のソースノードまたは第1リレーノードから受信した場合には、各RTSメッセージに対するチャネル利得を推定し、
前記推定されたチャネル利得が設定値よりも大きければ、前記RTSメッセージを送信したソースノードまたは第1リレーノードの識別情報を含んで前記CTSメッセージを送信することを含むことを特徴とする請求項8に記載のパケット送信経路設定方法。
【請求項13】
マルチホップ基盤のアドホックネットワークにおいてソースノードと目的ノードとの間でパケットをリレーするリレーノードを決定するためのパケット送信経路設定方法であって、
前記ソースノードまたは前記ソースノードから受信されたパケットを送信する第1リレーノードが予め設定された領域内のノードにRTSメッセージを送信するステップと、
前記RTSメッセージを受信した各ノードがチャネル利得を推定するステップと、
前記推定されたチャネル利得値に対応するバック−オフ時間によって前記推定されたチャネル利得値を含むCTSメッセージを送信するステップと、
前記CTSメッセージを最初に送信したノードを第2リレーノードとして決定するステップと、
を含むことを特徴とするパケット送信経路設定方法。
【請求項14】
前記予め設定された領域内のノードが前記RTSメッセージを2つ以上のソースノードまたは第1リレーノードから受信した場合には、各RTSメッセージに対するチャネル利得を推定し、
前記推定されたチャネル利得値に対応するバック−オフ時間によって前記RTSメッセージを送信したソースノードまたは第1リレーノードの識別情報を含んで前記CTSメッセージを送信することを含むことを特徴とする請求項13に記載のパケット送信経路設定方法。
【請求項15】
マルチホップ基盤のアドホックネットワーク装置であって、
送信パケットに許容される遅延時間に基づいてホップ数を決定するソースノードと、
前記ソースノードから目的ノードのコーディネート情報を受信してチャネル利得を推定し、前記推定されたチャネル利得が所定の設定値以上であれば応答メッセージを前記ソースノードに送信する第1リレーノードと、
前記目的ノードからメッセージを受信してチャネル利得を推定し、前記推定されたチャネル利得が所定の設定値よりも大きければ応答メッセージを前記目的ノードに送信する第2リレーノードと、
を備えることを特徴とするネックワーク装置。
【請求項16】
前記第1リレーノードおよび第2リレーノードは、それぞれ前記ホップ数に基づいて予め設定される互いに異なるルーティング領域内に位置することを特徴とする請求項15に記載のネットワーク装置。
【請求項17】
前記第1リレーノードは、前記推定されたチャネル利得値に対応するバック−オフ時間によって前記応答メッセージを送信することを特徴とする請求項15に記載のネックワーク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−100443(P2009−100443A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177328(P2008−177328)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG ELECTRONICS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do 442−742(KR)
【出願人】(592127149)韓国科学技術院 (129)
【氏名又は名称原語表記】KOREA ADVANCED INSTITUTE OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】373−1,Gusung−dong,Yuseong−ku,Daejeon 305−701 KR
【Fターム(参考)】