説明

アニオン重合においてそれらを用いるための溶媒およびモノマーの乾燥および精製におけるアルカリ金属−シリカゲル(M−SG)材料の使用

Iステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物またはIIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物は、不純物を除去し、およびアニオン重合で用いられる種々のタイプの溶媒のための、およびオレフィン性モノマーのための乾燥剤として作用するのに有用であることが示される。これらの組成物の1つの重要な利点は、後者の有意な重合を誘導することなく、溶媒およびモノマーを同時に乾燥するそれらの能力である。もう1つの重要な特徴は、それらが重合それ自体の間にイン・サイチュにて残されるのを可能とする、慣用的なアニオン重合に対して全く不活性である組成物の能力である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、ここに引用して援用する、2007年9月28日に出願された米国仮出願第60/976,008号に対する米国特許法119条の下での優先権を主張する。
【0002】
本発明は、アニオン重合での使用のための溶媒およびモノマー双方の乾燥、およびその不純物の除去における1族金属/多孔性酸化物組成物の使用に関する。本発明で用いる1族金属/多孔性酸化物組成物は容易に取り扱われる自由流動粉末であり、これは、めんどうな真空蒸留を行うための純物アルカリ金属または有機リチウム試薬の取り扱いまたは特殊な装置の必要性を回避する。
【背景技術】
【0003】
オレフィンのアニオン重合はよく知られたプロセスであって、種々の産業で用いられる。エチレン性およびビニル性モノマー(典型的には、スチレン性およびジエン性モノマー)およびアニオン重合で用いる溶媒およびモノマーは徹底的に乾燥して、重合反応の終了前に活性中心を増殖させるいずれの脱活性化も回避すべきである。乾燥プロセスはかなり有効な剤を必要とする。というのは、活性種の濃度は非常に低く、かついずれの残存する量の不純物も、重合、およびポリマーモル質量および鎖機能性化の制御をかなり乱してしまうのに十分だからである。例えば、範囲10,000ないし100,000g/モルにおける予測されたかつ制御されたモル質量でもってのポリスチレンの重合、および1モル/lのモノマー濃度での作業を達成するには、開始剤の濃度は10−2ないし10−3モル/lの範囲とすべきである。これは、活性種濃度の10%未満の不純物における濃度が、許容される結果を得るのに存在すべきであることを意味する。有効な乾燥剤もまた、溶媒中の、およびモノマー中の痕跡量の不純物を除去することができるはずである。一般に、溶媒に、およびモノマーに適用された乾燥条件は、モノマーの望まない重合のいずれの危険性も回避するためには異ならなければならない。
【0004】
実験室スケールでの溶媒で用いる典型的な乾燥剤は、ブチルリチウム、ポリスチリルリチウム、ジフェニルヘキシルリチウム、活性化されたナトリウムまたはカリウム(ミラーまたは金属ワイヤー)、またはナトリウム−カリウム合金である。限定された数のいくつかの他のものは、ジアルキルマグネシウム、アルミニウムトリアルキル、および(あまり効果的ではないが)水素化カルシウムのごとき溶媒およびモノマー双方のために用いることができる。産業スケールでの乾燥は、溶媒およびモノマーをモレキュラーシーブに、または活性化されたアルミナに通すことによって達成することもできる。
【0005】
ほとんどの場合、溶媒およびモノマーは、引き続いて、蒸留して、重合反応に影響しかねないいずれの痕跡量の乾燥剤も除去しなければならない。この最後の操作の後に、溶媒および/またはモノマーは、典型的には、不活性雰囲気下の重合リアクターに移動され、用いる準備がなされる。これらの乾燥プロセスは、面倒であって、かつ実験室的および産業的双方のスケールにおける、アニオン重合の開発についてかなりの制限をなす。従って、アニオン重合プロセスのための効果的な乾燥剤および不純物の除去に対する要望が当該分野で存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、アニオン重合適用で溶媒およびモノマー溶液を用いるためにそれらを乾燥し、およびその中の不純物を除去するのに用いられる1族金属/多孔性酸化物組成物の使用に関する。これらのプロセスは、慣用的な撹拌されたリアクター中で、または連続流動リアクター中で行うことができ、ここに、該プロセスはアルカリ金属の取り扱いまたは蒸留のための特殊化された機器を必要としまたは必要としないであろう。
【0007】
さらに詳しくは、本発明は、アニオン重合で用いる溶媒およびモノマーから不純物を除去する方法を提供する。該方法においては、溶媒、液状モノマー、または溶媒−モノマー混合物をIステージ(Stage)1族金属/多孔性金属酸化物組成物またはIIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物と接触させる。
【0008】
本発明はアニオン重合方法を提供する。この方法の工程は:
溶媒、液状モノマー、または溶媒−モノマー混合物を、Iステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物またはIIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物と接触させ;
溶媒またはモノマーを、別々に、Iステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物またはIIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物と接触させる場合、所望により、該液状モノマーおよび溶媒を合わせ;次いで、
該モノマーをアニオン重合条件下で重合する;
工程を含む。
【発明を実施するための形態】
【0009】
前記したように、本発明は、アニオン重合で用いる溶媒およびモノマー溶液から不純物を除去する方法に関する。該方法は、溶媒、液状モノマー、または溶媒−モノマー混合物をIステージアルカリ金属/多孔性金属酸化物組成物またはIIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物と接触させる。該溶媒、液状モノマー、その溶媒−モノマー混合物を乾燥することは、従って、不純物としての、水、およびアルコールのような他のプロトン性化合物を除去することを意味する。本発明の方法は、該接触工程の前に、または後に、溶媒または液状モノマーを蒸留する工程を含んでもよい。
【0010】
また、本発明はアニオン重合方法を提供する。この方法の工程は:
溶媒、液状モノマー、または溶媒−モノマー混合物を、Iステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物またはIIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物と接触させ;
溶媒またはモノマーを、別々に、Iステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物またはIIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物と接触させる場合、所望により、該液状モノマーおよび溶媒を合わせ;次いで、
アニオン重合条件下で該モノマーを重合する;
工程を含む。
【0011】
モノマー単独の、Iステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物またはIIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物への直接的添加は、スチレンの重合に導く、引き起こされたいずれかの熱の発生のため、貧弱な結果に導くであろう。その反応のためには、Iステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物またはIIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物を溶媒−モノマー混合物に添加するか、あるいはIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物またはIIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物を最初に溶媒に添加し、続いて、モノマーを添加するのが好ましい。これは用いるモノマーに応じて変化するであろう。添加の順序はポリマーの特徴にインパクトを与えるであろう。
【0012】
(SiGNa Chemistry, Inc., New York City, New York, Alfa Aesar, Ward Hill, MassachusettsおよびSigma-Aldrich, Milwaukee, Wisconsinから入手可能な)Iステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物またはIIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物は、通常の有機溶媒およびアニオン重合で用いるモノマーから、不純物(例えば、水、(アルコールのような)他のプロトン性不純物、過酸化物、エーテルなど)を除去するのに、ならびに溶媒またはモノマーに加えられた安定化剤および/または阻害剤を除去するための本発明の方法で非常に有用である。溶媒は、限定されるものではないが、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ペンタン、シクロヘキサン、またはメチルシクロヘキサンのような炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、またはピリジンのような芳香族;およびテトラヒドロフラン(THF)、メチル−THF、ジエチルエーテル、ジ−イソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、ジメトキシエタンのようなエーテルを含む。例示的なモノマーは、限定されるものではないが、スチレン、α−メチルスチレン、環−置換スチレン、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−シクロヘキサジエン、他の共役ジエン、メタクリル酸メチル、および他のメタクリレートモノマーのようなオレフィン性モノマーを含む。IIステージ1族アルカリ金属/多孔性酸化物材料は、還元可能な基を有する溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、メチルエチルケトン、N−メチルピロリジン、アセトニトリル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、イオン性液体、メチルイソブチルケトン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、全てのフッ素化溶媒など)から不純物を除去することもできる。
【0013】
本発明の方法で用いるIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物およびIIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物の量は、特定の溶媒またはモノマーから除去されるべき不純物の量およびタイプに従って変化するであろう。予測されるように、用いるIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物またはIIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物の量は、不純物内の反応性基のモル当たり1族金属(例えば、Na、KまたはNaK合金)の1モルの化学量論に少なくとも基づくべきである。すなわち、もし水HOが除去すべき不純物であれば、Iステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物またはIIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物の2モル当量が用いられるであろう。メタノールまたはエタノールのような一価アルコールでは、1モル当量を用いることができる。しかしながら、少なくとも20ないし50パーセントモル過剰を用いて、望まない不純物の完全な除去を確実とするのが好ましい。以下に議論するように、Iステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物またはIIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物は、アニオン重合を妨げないので、イン・サイチュで用いる場合、過剰の材料の使用は許容される。本発明の他の具体例において、溶媒またはモノマーは、過剰の材料の使用が重合を妨げないように、重合に先立って、Iステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物またはIIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物から蒸留して除去される。本発明のもう1つの具体例は、Iステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物またはIIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物を充填したカラムを用いて、カラム通過した溶媒またはモノマーから不純物を除去する。カラム精製の具体例において、Iステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物またはIIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物は過剰である。
【0014】
Iステージ1族金属/多孔性酸化物またはIIステージ1族金属/多孔性酸化物組成物
最近、改良された取り扱い性および安全性の特徴を有する新しい1族金属/多孔性酸化物組成物が記載されている。これらの新しい材料は、シリカゲルおよびアルミナゲルのような多孔性酸化物に吸収されたアルカリ金属またはアルカリ金属合金を有する。バルク金属よりも危険性はかなり低いが、該新しい材料は天然金属の反応性を保持する。従って、本明細書中で用いる用語「1族金属/多孔性酸化物組成物」とは、アルカリ金属、またはアルカリ金属合金が多孔性酸化物組成物に吸収された場合に形成される材料をいう。本発明で用いるIステージ1族金属/多孔性酸化物またはIIステージ1族金属/多孔性酸化物組成物は、その双方をここに引用してその全体を援用する米国特許第7,211,539 B2号および米国特許第7,259,128号に開示されているように調製することができる。
【0015】
米国特許第7,211,539 B2および米国特許第7,259,128号に開示されているように、アルカリ金属およびそれらの合金の自然発火性を仮定すれば、便宜な形態のアルカリ金属またはそれらの同等物を利用する能力は、化学産業において継続的に必要である。しかしながら、空気中でのアルカリ金属およびアルカリ金属合金の安定性は、アルカリ金属を多孔性酸化物支持体に吸収させることによって劇的に改良することができる。例えば、これらの金属は、シリカゲルへの吸収によって有意により安定として、アルカリ金属−シリカゲル材料を形成することができ、あるいは多孔性アルミナ粉末に吸収させることによって有意により安定として、アルカリ金属−アルミナ材料を形成することができる。
【0016】
乾燥剤としてのIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物またはIIステージ1族金属/多孔性酸化物材料の使用は、制御されたアニオン重合を達成するのに必要な手法を強力に単純化する。本発明による異なる乾燥アプローチおよび方法を、Iステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物またはIIステージ1族金属/多孔性酸化物材料の使用に基づいて慣用的な乾燥剤および手法を用いて行われる重合を例として、以下に説明する。乾燥の効率をチェックするのに用いる主なパラメーターは、1)開始剤としてのブチルリチウムの存在下でのモノマーのポリマーへの定量的変換、2)理論的および実験的ポリマーモル質量の間の良好な合致である。全モノマー消費前に種を増殖させる完全な脱安定化の結果、不完全なポリマー収率がもたらされ、他方、部分的脱活性化の結果、予測されるよりも高いモル質量を持つポリマーが得られる。これらの重合データは、アルカリ金属/多孔性酸化物材料での処理、または精製用の慣用的な技術での処理の後に、全系に依然として残存する不純物の存在および量についての直接的情報を与える。
【0017】
好ましいIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物およびIIステージアルカリ金属/多孔性酸化物材料は、シリカゲルまたはアルミナゲル中に35ないし40重量%のアルカリ金属またはアルカリ金属合金を含む。IIステージ組成物では、Na、K、NaK、NaK、KNaおよびKNaが好ましい金属である。特に好ましい材料は、40重量%Na負荷を有するIステージ1族金属−シリカゲル材料、Na−SG−I;40重量%NaK負荷を有するIステージNaK−シリカゲル材料、NaK−SG−I;および対応するIIステージNa−シリカゲル材料、Na−SG−IIを含む。
【0018】
重合効率測定を伴う溶媒の精製および乾燥
水および他の不純物の除去を示すために、典型的には、アニオン重合で用いるいくつかの例示的な溶媒を本発明に従ってNa−SG−Iと接触させた。適当な溶媒はヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼンおよび他の適当なベンゼン誘導体のような線状炭化水素、テトラヒドロフラン、および他のエーテル溶媒を含む。以下の手法において、慣用的な(方法A)およびアルカリ金属/多孔性酸化物材料系(方法B)乾燥手法の間で比較を行う。各方法の効率は、アルキルリチウム開始剤を用いて標準的なアニオン重合テストを行うことによって測定した。全ての重合反応は、磁気スターラーおよびPTFE栓を備えた、真空下で従前に火炎処理したガラス機器中にて真空条件下で室温で行った。
【実施例】
【0019】
実施例1:重合溶媒として用いるシクロヘキサンについての乾燥剤として用いる異なる技術の効果
方法A。シクロヘキサン(50ml)を、PTFE栓を備えた100mlガラス製フラスコに注いだ。連続的に、スチレン(0.3ml)およびsec-ブチルリチウム(シクロヘキサン中の1.4M溶液の〜0.5ml)を溶媒に加える。数分後、明るいオレンジ色の出現はポリスチリルリチウムの形成を示し、溶媒は乾燥していることを意味する。使用に先立って、真空条件下で溶媒をポリスチリルリチウム溶液から蒸留し、重合容器に移す。
【0020】
方法B。Na−SG−I(100mg)を、PTFE栓を備えた100mlガラス製フラスコに導入した。この操作はグローブボックス中で行った。次いで、シクロヘキサン(50ml)を不活性雰囲気下でフラスコに注ぎ、Na−SG−Iと共に一日間撹拌した。シクロヘキサンおよびNa−SG−Iを混合した直後に、微細な気泡(H)が、Na−SG−Iと水分との反応により生じる。撹拌を行わない数時間後に、バブリングを停止する。撹拌しないで放置すると、Na−SG−Iは沈降し、透明かつ無色のシクロヘキサンに戻る。丁度用いる前に、シクロヘキサンをNa−SG−Iから蒸留し、乾燥雰囲気下で重合リアクターに移した。
【0021】
方法C。精製を行わずして、商業的ビンから直接的に用いる通常のシクロヘキサン
sec−BuLiによって開始したアニオンスチレン重合は、異なる前記した方法に従って精製されたシクロヘキサンを用いて行った。3つの系において、スチレンモノマーはBuMgで乾燥した(方法A)。sec−BuLiの添加の後に、反応媒体の色はオレンジに変化し、これはリビングポリスチレンの特徴である。エタノールを加えて、反応を停止させた。行った異なるテストの中で、最も代表的なテストからの結果を表1に示す。これらの結果は、標的化ポリマーのモル質量が低い(M=10,000)場合、全てのポリマーは、精製方法から独立して、理論的に予測されるモル質量を呈することを示す(実施例1a、1bおよび1c参照)。しかしながら、活性な種における5倍低い濃度に対応する、より高い標的化モル質量(M=50,000)については、非−乾燥溶媒で有意な偏りが生じる(実施例1f参照)。他方、sec−BuLi(実施例1d参照)またはNa−SG−I(実施例1e参照)の使用に基づく乾燥方法は、理論と良好に合致する実験的モル質量を与える。これは、これらの2つの系における不純物の無視できる寄与に一致する。
【0022】
【表1】


【0023】
実施例2:テトラヒドロフラン(THF)
方法A。THF(50ml)をCaH上で3時間還流した。これに続いて、金属ナトリウム(〜0.2g)およびベンゾフェノン(〜0.2g)を含有するPTFE栓を備えたフラスコに引き続いて蒸留した。数秒後にTHF溶液は青色となった。さらに1日間撹拌した後、THFの色は青色から深い紫色に変化した。ナトリウム−ベンゾフェノンのジアニオンによる深い紫色は、THFが完全に乾燥していることを示す。次いで、ナトリウム−ベンゾフェノンからの不活性雰囲気下での蒸留に続き、THFを重合で用いるように用意する。
【0024】
方法B。THFをシクロヘキサンと同様な方法で精製した(方法B)。ビンからのTHF(50ml)をNa−SG−I(200mg)の存在下で室温にて2日間撹拌し、不活性雰囲気下で重合リアクターに蒸留した。シクロヘキサンに関しては、微細な気泡の発生がTHF乾燥手法の間に観察される。Na−SG−I上でのTHFの撹拌の間に、溶液は茶色に変化した。しかしながら、撹拌することなく1時間放置すると、茶色の粒子がフラスコの底に沈降し、THFは透明かつ無色となった。
【0025】
方法C。精製せずに市販のビンから直接用いた通常のTHF。
炭化水素よりも多量の不純物を含有するかもしれないアニオン重合の典型的な溶媒であるTHFを精製するために、実施例1と同様なアプローチを続けた。活性種の高い反応性のため、重合反応は非常に低温(−80℃)で行わなければならない。これらの条件においてさえ、重合反応は非常に速い(通常、重合は数秒以内に完了する)。THFおよびスチレンをNa−SG−Iで別々に乾燥した。THFを重合フラスコに加えた後に、sec−BuLi(0.182ミリモル)を−80℃で注入した。最後に、スチレン(2.0ml、17.5ミリモル)を注入し、−80℃で20分間反応させた。重合の停止およびポリマーの回収を行った(実施例2b参照)。THF精製/乾燥プロセスの3つの異なるタイプを比較し、3つの方法において前記にてリストする。
【0026】
代表的な結果を集め、表2に示す。THFについての乾燥プロセスの不存在下においては、ポリスチレン産物の結果、予測されたよりもかなり高いモル質量となった(実施例2c参照)。これは、約90%の活性種が重合開始に先立って脱活性化されたことを示唆する。慣用的な乾燥剤(Na/ベンゾフェノン)(実施例2a参照)および新しいNa−SG−I(実施例2b参照)で得られた結果は最適に非常に近いが、完全ではない。双方の場合において、sec−BuLiの約1/3は重合に先立って脱活性化されていた。それにもかかわらず、結果は、有意により小さくかつ良好な多分散性を有するNa−SG−Iを伴う慣用的なNa/ベンゾフェノンと比較して、乾燥THFに対するNa−SG−Iの明瞭かつほとんど同等な能力を示す。表2に示す結果は、Na−SG−Iがアニオン重合で用いられる乾燥THFに対してNa/ベンゾフェノンと同程度に効果的であることを示す。
【0027】
【表2】

【0028】
重合効率測定を伴う、モノマーの精製および乾燥
液状モノマーからの水および他の不純物の除去を示すために、アニオン重合で典型的に用いるいくつかの例示的なモノマーを本発明によるNa−SG−Iと接触させた。
【0029】
実施例3:スチレン
方法A。スチレン(125ml)をガラス製フラスコ中で蒸留し、それをジ−n−ブチルマグネシウム(BuMg、ヘプタン中1M、〜2ml)上で1時間室温(20℃)に保った。次いで、真空条件下でスチレンをBuMg溶液から蒸留し、重合で用いた。
【0030】
方法B。スチレンをシクロヘキサンと同様な方法で精製した(方法B)。スチレン(15ml)をNa−SG−I(75mg)の存在下で室温にて1日間撹拌し、次いで、真空下で蒸留し、重合で用いた。Na−SG−Iのスチレンへの添加に際して、明るい青色が出現し、他方、最初に微細な気泡が生じる。バブリングを数分後に停止させ、青色は翌日に消失した。スチレンをNa−SG−Iと共に室温にて1週間より長い間保持した後においてさえ、痕跡量のポリスチレンが形成されたに過ぎなかった(〜1%)。同様な手法を45℃で行うと、スチレンの重合が1日後に観察され、高いモル質量ポリスチレンが得られた。
【0031】
方法C。精製を行わずして市販のビンから直接用いた通常のスチレン。
前記リストの3つの異なる乾燥および精製方法を含めて、重合で用いたシクロヘキサン溶媒をNa−SG−Iで別々に乾燥した。Na−SG−Iの存在下で別々に乾燥し、次いで蒸留したシクロヘキサン(15mL)およびスチレン(2.0ml、17.5ミリモル)を、PTFE栓を備えた50mL丸底フラスコに加えた。次いで、sec−BuLi(0.037ミリモル)のシクロヘキサン溶液を、アルゴン下で乾燥シリンジを用いてフラスコに注入した。少量のエタノールを用いて停止する前に、重合を室温にて12時間放置し、多量のエタノールへの沈殿によってポリマーを回収した(実施例3a参照)。
【0032】
いずれの精製もなくしてスチレンを用い(実施例3b参照)、高モル質量(M=170,000)のポリマーを得た。理論的な計算値(M=50,000)はかなり低かった。これは、重合開始剤分子のほぼ70%の脱活性化と合致する。古典的な乾燥および精製方法(実施例1e)と新しいNa−SG−I(実施例3a参照)技術の間には、有意な差は観察されない。双方の場合において、実験は予測されるモル質量および狭い分子質量分布、または分散度を持つポリスチレンを得るのに成功した。商業的に入手可能なスチレンが、アニオン性の活性な種と反応して重合を妨げる、重合開始剤としての4−tert−ブチルカテコール(10ないし15ppm)を含有することが知られている。これは、Na−SG−Iがスチレンに存在する水と反応できるが、スチレン内の他の不純物とも反応でき、重合のための優れた純度のスチレンの調製を可能とする表3に示された結果から帰結される。結論として、Na−SG−Iは、BuMgを用いる市販の手法としてのスチレンの乾燥および精製に対してほぼ同一の有効性を示した。
【0033】
【表3】

【0034】
実施例4:イソプレン
方法A。イソプレン(125ml)を、室温にて、PTFE栓を備えたガラス製フラスコ中でBuMg(ヘプタン中1M,〜2ml)上で1時間貯蔵し、真空条件下で蒸留した。
【0035】
方法B。イソプレンをシクロヘキサン方法Aと同様にして精製した。イソプレン(15ml)をNa−SG−I(120mg)の存在下で撹拌した。ほとんど同一の挙動がスチレンに関して観察された。
【0036】
方法C。精製することなく、市販のビンから直接用いた通常のイソプレン。
ここに用いた手法は、実施例3におけるスチレンの重合について先に議論したのと同様であった。スチレンに関するのと同一の技術をイソプレンの精製で用いた。重合で用いたシクロヘキサンをその使用に先立ってNa−SG−Iで乾燥した。まず、ポリイソプレンの標的モル質量はM=16,000となるように設定した。良好な合致が、BuMgおよびNa−SG−Iで乾燥したイソプレン双方についての理論的および実験的モル質量の間で観察された。いずれの精製もなくしてイソプレンを用いる場合には、実験的モル質量は予測される値(実施例4c参照)の約2倍高く、これは、活性な種のほぼ50%の脱活性化を示す。理論的モル質量を32,000g/モルまで増加させ、ビンイソプレンから精製しない結果、広い分子量分布を持つ110,000g/モルよりも高いモル質量のポリイソプレンの生産での低いイソプレン変換をもたらしたに過ぎなかった(実施例4f参照)。これにより、商業的に入手可能なイソプレンはスチレンよりも多くの不純物を含有することが確認される。
【0037】
対照的に、慣用的なBuMg(実施例4aおよび4b参照)または新しいNa−SG−I方法(実施例4bおよび4e参照)で乾燥したイソプレンのアニオン重合は定量的に進行して、予測される分子量および狭い分子質量分布を持つよく制御されたポリイソプレンを与えた。シクロヘキサン(15ml)およびイソプレン(3.0mg,30.0ミリモル)をNa−SG−I上で別々に乾燥し、次いで、乾燥雰囲気下でガラス製リアクターに蒸留した。sec−BuLi(0.0638ミリモル)を加えることによってイソプレンの重合を開始し、反応を室温で1晩放置し、しかる後、それを停止し、エタノール中にポリマーを沈殿させた(実施例4e参照)。これらの結果は表4に示され、Na−SG−Iを用いる市販のイソプレンに対するかなり有効な精製方法を証明する。
【0038】
【表4】

【0039】
重合効率測定を伴う、モノマー/溶媒混合物の精製および乾燥
実施例5:シクロヘキサンおよびスチレン双方の精製および乾燥、続いての、蒸留を伴うおよび伴わない重合
シクロヘキサン(15ml)およびスチレン(17.5ミリモル)の混合物を室温にてNa−SG−I(100mg)と共に2日間撹拌し、真空下でNa−SG−Iから蒸留した。次いで、モノマーおよび溶媒混合物を重合で用いた。
【0040】
既に述べたように、Na−SG−Iで乾燥し、かつ真空蒸留したスチレンの重合は進行して、よく制御されたポリスチレンを与えた(実施例3b)。ほとんど同一の結果が、Na−SG−I上でのスチレンおよびシクロヘキサンの混合物を乾燥し、続いて、真空蒸留し、およびsec−BuLiを蒸留した混合物に加えることによる重合の開始の場合に得られる(実施例5a参照)。
【0041】
Na−SG−I粉末を用いるもう1つの重要な利点を示すために、現実の重合を蒸留なくしてNa−SG−Iの存在下で行った。シクロヘキサンをNa−SG−Iで乾燥し、乾燥しかつ蒸留したスチレンおよびsec−BuLiを、Na−SG−I上のシクロヘキサンに直接的に加えた。15mLのシクロヘキサンをNa−SG−I(100mg)で乾燥した。Na−SG−Iで精製し、次いで、蒸留したスチレン(2.0ml,17.5ミリモル)を、Na−SG−Iを含有するシクロヘキサンに加えた。スチレン重合は、sec−BuLi(0.037ミリモル)を、シクロヘキサン、スチレンおよびNa−SG−Iの混合物に加えることによって開始した。反応を室温にて1晩保持した。これにより、Na−SG−I産物の存在下において重合を行う能力が証明される(実施例5b参照)。エタノールを反応に加えて、リビングポリスチレンをクエンチし、微細な気泡の発生によって示されるようにNa−SG−Iを脱活性化した。
【0042】
理論的および実験的ポリスチレンモル質量、ならびに多分散度の間の合致は優れたままであり、これは、重合工程に先だってNa−SG−Iを除去する必要がないことを示す。Na−SG−Iは、イン・サイチュ乾燥剤として作用するが、ポリスチレン重合のための開始剤としては作用しない能力を有する。従って、Na−SG−Iの使用は、アニオン重合を劇的に促進する。このアプローチは、実験室的スケールについて、およびリビングアニオン重合の産業的適用について興味深いものである。
【0043】
スチレンのさらなる蒸留なくしてNa−SG−I上でシクロヘキサンおよびスチレンの混合物を乾燥する試みは、Na−SG−Iのみでは成功しなかった(50,000g/モルの代わりに約80,000g/モルのモル質量を例示する実施例5c参照)。PTFE栓を備えたガラス製フラスコ中のシクロヘキサン(15ml)およびスチレン(17.5ミリモル)の混合物を、室温にて、Na−SG−I(100mg)と共に2日間撹拌した。溶媒+モノマー+Na−SG−Iの混合物は、いずれの蒸留工程または濾過もなくして重合で直接的に用いた。この実験を反復し、同様な結果を得た。スチレン中に存在する安定化剤(4−tert−ブチルカテコール)または他の不純物は、かなり過剰のNa−SG−Iを用いることなくNa−SG−Iによって完全に中和することはできなかったと考えられる。結果を表5に示す。
【0044】
【表5】

【0045】
本発明によるNa−SG−I上でのスチレンの精製、続いての、真空蒸留は、ジブチルマグネシウムまたはトリアルキルアンモニウムを用いるのと少なくとも同程度に効果的である。この処理、続いての、スチレン蒸留によって排除することができる対応するフェノレートへ変換されるようなのは水のみならず安定化剤4−tert−ブチルカテコールである。蒸留工程を抑制し、重合をイン・サイチュで行う場合、全く不活性であるというのではないフェノレート塩は成長する種と相互作用し、部分的な脱活性化を生じる。
【0046】
実施例6:シクロヘキサンおよびイソプレン双方の精製および乾燥、続いての、蒸留の有りおよび無しでの重合
実施例5におけるのと同一のプロセスを行って、Na−SG−I乾燥後の反応体および溶媒の蒸留が必要であるか否かを調べた。異なるタイプのイソプレンおよびシクロヘキサン精製/乾燥方法の下で行った3つの実験を比較した:
実施例6a:イソプレンおよびシクロヘキサンを別々にNa−SG−I上で乾燥し、次いで、真空蒸留した。
実施例6b:イソプレンおよびシクロヘキサンの混合物をNa−SG−I上で乾燥し、次いで、sec−BuLiの添加前に真空蒸留した。
実施例6c:イソプレンおよびシクロヘキサンの混合物をNa−SG−I上で乾燥し、真空蒸留無しでsec−BuLiを加えることによって直接的に重合で用いた。
【0047】
全ての場合において、表6に示すように、理論的および実験的ポリイソプレンモル質量の間で優れた合致が観察された。従って、イソプレンの制御された重合がNa−SG−Iの存在下で進行したことが理解できる。イソプレンの重合は、かくして、一緒にした全ての成分、溶媒、イソプレン、およびNa−SG−Iによって室温にて数時間で、およびブチルリチウムを混合物に直接的に加えることによって容易に達成して、ジエン性モノマーのリビング/制御重合を得ることができる。
【0048】
【表6】

【0049】
Na−SG−Iで乾燥したイソプレンのアニオン重合は定量的に進行して、よく制御されたポリイソプレンを与え、これは予測されたモル重量および狭い分布を保有する。これらの結果は、市販のイソプレン中に含有される不純物を中和する強い能力と合致する。スチレンとは対照的に、イソプレンおよびシクロヘキサンの混合物を最小量のNa−SG−Iで乾燥し、真空蒸留の必要性なくして重合調製で直接的にイン・サイチュにて用いることができる。理論的および実験的モル質量の間で合致が観察された。
【0050】
実施例7:メタクリル酸メチル(MMA)の乾燥
メタクリル酸メチル(MMA,10ml)およびNa−SG−I(80mg)との室温での1晩の混合の後、高モル質量(M=105,000)のポリマーが約25%収率で得られた。Na−SG−II化合物(MMA;10ml,Na−SG−II;100mg)を用いる場合には、24時間後に重合は起こらない。これは、Na−SG−IがMMAとのより高い反応性を保有し、その重合を開始することができるのを示す。対照的に、Na−SG−IIは重合を開始させず、乾燥剤として用いることができる。
【0051】
実施例8:シクロヘキサンおよびスチレンの精製/乾燥のためのNa−SG−IIの使用
スチレンおよびシクロヘキサンをNa−SG−II上で別々に乾燥し、次いで、真空蒸留した。引き続いての重合に際して、理論的および実験的モル質量(M(計算値)=50,000,M(実測値)=51,000)の間で良好な合致が観察された。
【0052】
Na−SG−IIで精製し、続いて蒸留したスチレンをNa−SG−II上のシクロヘキサンに加えた。観察されたモル質量(M(観察値)=67,000)は目標モル質量(M(計算値)=50,000)よりも僅かに高い。これは、Na−SG−IIを乾燥系として用いることができることを示す。
【0053】
実施例9:さらなる蒸留なくして溶媒/モノマーをSiGNaカラムに通すことによる精製
アニオン重合のために、Iステージ1族/多孔性金属酸化物組成物またはIIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物の利用性をさらに増強させるために、Na−SG−Iを充填したカラムを調製し、シクロヘキサンおよびスチレンの乾燥/精製で用いた。
【0054】
方法A:シクロヘキサンを、その重合フラスコへの移動の間にNa−SG−Iカラムに通し、従前に、別のフラスコ中でNa−SG−Iで乾燥したスチレンを、次いで、重合フラスコ中に真空蒸留した。BuLiを加えて、重合を開始させた。
【0055】
方法B:シクロヘキサンをNa−SG−Iカラムを通し、続いて、同一Na−SG−Iカラムを通したスチレンを通し、あるいはシクロヘキサンおよびスチレンの混合物をNaK−SG−Iカラムに通し、重合フラスコ中に直接的に貯蔵した。BuLiを加えて、重合を開始させた。
【0056】
【表7】

【0057】
方法Aを用い、同一のカラムおよび反応条件を用いて3つの連続的な重合反応を行った。制御された分子量(実験誤差内)、および狭い分子量分布を持つポリスチレンは、常に、定量的な収率で得られた。Na−SG−Iカラムは良好に作動して、シクロヘキサンの不純物を除去し、このカラムを反復方法で用いることができる。
【0058】
方法Bを用い、2つの連続的重合反応を行った。該2つの重合(実施例9dおよび9e)は定量的に進行して、ポリスチレンを生じたが、予測される分子量(M=50,000)よりも有意に高い分子量(M=76,000−78,000)であった。これは、スチレンの不完全な精製による活性種の喪失を示す。これはおそらくは安定化剤である。というのは、実験的分子量値(M=76,000−78,000)はイン・サイチュ重合の場合におけるのとほとんどの同一だからである(実施例3c:M=80,000 M/M=1.30)。いずれの精製もなくしてスチレンを用いる場合には(実施例3b)、得られるポリマーはかなり高い分子量(M=170,000)およびかなり広い分子量分布(M/M=1.65)を有するのを思い出すのは価値があることである。
【0059】
これらの結果は、Na−SG−Iカラムが良好な有効性を示すが、定量的なスチレン精製を生じないことを示す。しかしながら、制御されたアニオンスチレン重合は、NaK−SG−Iカラムによって達成できた(実施例9f)。また、NaK−SG−Iカラムもまた、スチレン乾燥/精製についてさえ、反復可能な使用(3サイクル)の能力を保有するのに注意するのは興味深い。
【0060】
これらの結果は、シクロヘキサンのためのNa−SG−Iのカラム、およびシクロヘキサンおよびスチレンのためのNaK−SG−Iのカラムが有効な乾燥剤として働くことができ、さらなる手法なくして反復可能な使用を可能とすることを示唆する。この手法の利点は、(本発明によるイン・サイチュ乾燥におけるような)得られるポリマーから金属化合物を除去する必要性がなく、かつ引き続いての蒸留の必要性がないことである。これらの2つの利点は、実験室的スケールについて、およびリビングアニオン重合の産業的適用について価値がある。溶媒および/またはモノマーを液体としてカラムに通してもよく、あるいはカラムを通して蒸留して、本発明の方法に従って不純物を除去してもよい。ここに使用されるカラムはIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物またはIIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物を充填したに過ぎないが、Iステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物またはIIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物それ自体を混合することが可能であり、あるいはさらなるカラム材料がIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物またはIIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物の有効性に有意にインパクトを与えない限りは、他の通常のカラム材料と混合することが可能である。例えば、Iステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物および/またはIIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物をさらなる多孔性金属酸化物(例えば、シリカまたはアルミナ)、ゼオライト材料、活性炭、珪藻土、または当該分野で知られた他の材料と混合することが可能である。
【0061】
前記実施例の全てのよって示されるように、Na−SG−IまたはNa−SG−IIのような、Iステージ1族金属/多孔性酸化物組成物またはIIステージ1族金属/多孔性酸化物組成物は、アニオン重合用の溶媒を調製するための他の報告された乾燥剤および不純物除去剤とほとんど同一の条件、例えば、Na−SG−Iの溶媒への混合、続いての、使用前の溶媒の不活性雰囲気下での蒸留で用いることができる。Na−SG−Iは、オレフィン性モノマーのための乾燥剤および不純物除去剤として非常に同一の方法で用いることができる。精製は、数日後にいずれの有意な重合もなくして室温にてバルクモノマーで行うことができる。かくして、モノマーは不活性雰囲気下での蒸留によって回収され、アニオン重合の用意がなされる。この新しいプロセスに対する現実の利点は、溶媒およびモノマーを混合し、Iステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物またはIIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物上で一緒に乾燥することができ、この溶媒/モノマー混合物は不活性雰囲気下で蒸留によって回収でき、重合のために直接的に用いることができることである。スチレン性およびジエン性モノマーの重合に向けてのこれらの組成物の一般的不活性は、重合が、イン・サイチュにて、すなわち、アルカリ金属/多孔性酸化物組成物の存在下で行われるのを可能とする。これは、モノマー、Iステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物またはIIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物、および開始剤(典型的にはアルキルリチウム)を、直接的に、溶媒を含有する系に加えて、アニオン重合を開始することによって達成することができる。バッチ方式でのそれらの使用に加えて、流動床を用い、あるいはそれらを、Iステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物またはIIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物を含有する乾燥カラムに通すことによって、溶媒およびモノマーを乾燥することが可能となり、重合媒体中の残存する乾燥剤の存在はアニオンプロセスに対して影響を示さない。
【0062】
本発明によると、Iステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物またはIIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物は、不純物を除去し、アニオン重合で用いられる溶媒およびモノマー、例えば、スチレン性およびエチレン性モノマーを乾燥するのに有用である。これらの組成物の1つの重要な利点は、不純物を精製し、すなわち、不純物を除去し、および/または後者の有意な重合を誘導することなく溶媒およびモノマーの混合物を同時に乾燥するそれらの能力である。もう1つの重要な特徴は、重合の間にそれらがイン・サイチュにて残されるのを可能とする、慣用的なアニオン重合に対して全く不活性である組成物の能力である。本発明のもう1つの重要な利点は、重合の間にイン・サイチュにて好ましくは残存するIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物またはIIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物が、先行技術のプロセスにおける蒸留工程を冗長なものとすることである。さらに、本発明に従って用いられるIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物またはIIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物は、アニオン重合の試薬の乾燥/精製用のカラム充填材料として有用である。これらの2つの態様は、アニオン重合の取り扱いを容易とする重要かつ意義のある進歩を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒、液状モノマー、または溶媒−モノマー混合物をIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物またはIIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物と接触させる工程を含む、アニオン重合で用いる溶媒およびモノマーから不純物を除去する方法。
【請求項2】
該不純物がプロトン性不純物である請求項1記載の方法。
【請求項3】
該プロトン性不純物が水である請求項2記載の方法。
【請求項4】
該不純物が安定化剤または阻害剤である請求項1記載の方法。
【請求項5】
接触工程の前に、さらに、溶媒または液状モノマーを蒸留する工程を含む請求項1記載の方法。
【請求項6】
乾燥剤が溶媒および液状モノマー混合物に含まれる請求項1記載の方法。
【請求項7】
重合が、開始剤を直接的に加えることによってイン・サイチュで行われる請求項6記載の方法。
【請求項8】
さらに、接触工程の後に、溶媒または液状モノマーを蒸留する工程を含む請求項1記載の方法。
【請求項9】
該接触工程が、溶媒、液状モノマー、またはその溶媒−モノマー混合物を、Iステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物またはIIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物、またはその混合物を含有するカラムに通すことを含む請求項1記載の方法。
【請求項10】
該接触工程が、溶媒、液状モノマー、またはその溶媒−モノマー混合物を、Iステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物またはIIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物、またはその混合物を含有するカラムに通して蒸留することを含む請求項1記載の方法。
【請求項11】
該モノマーがオレフィン性モノマーである請求項1記載の方法。
【請求項12】
該オレフィン性モノマーがスチレン性モノマー、ジエン性モノマー、またはメタクリレートモノマーである請求項11記載の方法。
【請求項13】
溶媒、液状モノマー、または溶媒−モノマー混合物をIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物またはIIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物と接触させ;
溶媒またはモノマーが、別々に、Iステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物またはIIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物と接触させる場合には、所望により、該液状モノマーおよび溶媒を合わせ;次いで、
アニオン重合条件下でモノマーを重合する;
工程を含む、アニオン重合方法。
【請求項14】
さらに、接触工程後に、溶媒または液状モノマーを蒸留する工程を含む請求項13記載の方法。
【請求項15】
該接触工程が、溶媒、液状モノマー、またはその溶媒−モノマー混合物を、Iステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物またはIIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物を含有するカラムに通すことを含む請求項13記載の方法。
【請求項16】
溶媒を、Iステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物またはIIステージ1族金属/多孔性金属酸化物組成物と接触させる工程を含む、溶媒から不純物を除去する方法。

【公表番号】特表2010−540558(P2010−540558A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527199(P2010−527199)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【国際出願番号】PCT/US2008/077920
【国際公開番号】WO2009/045914
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(508010145)シグナ・ケミストリー・インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】SiGNa Chemistry, Inc.
【出願人】(510086523)
【氏名又は名称原語表記】LABORATOIRE de CHIMIE des POLYMERES ORGANIQUES, ENSCPB−CNRS
【Fターム(参考)】