説明

アニサキス種のペプチドおよびヌクレオチド配列、この配列を認識する抗体およびその使用

本発明は、アニサキス属の種に関わるヒトおよび動物感染の診断、予防および治療を包含する分野に関する。本発明はまた、食品中のアニサキスの抗原の検出に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アニサキス属の種によるヒトおよび動物感染の診断、予防および治療の分野に関する。本発明はまた、食品中のアニサキスの抗原の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
アニサキス属(Anisakis)(アニサキス科(Anisakidae))は、いくつかの関連種に属する線虫寄生生物を含む。形態学的および遺伝/分子マーカーを使用して、現在アニサキスの8つの種が認識されており、それらは、a)姉妹種である、「狭義の(strictu sensu)」アニサキス・シンプレックス(Anisakis simplex)(Rudolphi、1809)、A.ペグレッフィ(A.pegreffi)(Campana−RougetおよびBiocca、1955)および以前はA.シンプレックス複合体に含まれたA.シンプレックスC(Nascettiら、1986、Mattiucciら、2002)、A.ティピカ(A.typica)(Dieshing、1860)、c)A.フィセテリス(A.physeteris)(Baylis、1923)、d)A.ブレビスピキュラタ(A.brevispiculata)(Dollfus、1966)、e)A.ジフィダラム(A.ziphidarum)(Paggiら、1998)、およびf)A.パギアエ(A.paggiae)(Mattiucciら、2005)を含む。
【0003】
アニサキス種は、鯨類の胃の中、あるいは頻度は低いが鰭脚類の中で性的成熟に達する。これらの哺乳動物は、a)寄生生物の第三幼虫期(L3)の宿主となる待機宿主、すなわち魚類(主として硬骨魚)および頭足動物(主としてイカ)の摂取によって、およびb)中間宿主として、同じくL3幼虫の宿主となるオキアミの摂取によって感染し得る(たとえば鯨)。
【0004】
海洋哺乳動物の場合と同様に、ヒトも、寄生生物を保有する生魚およびイカの摂取によってL3アニサキス幼虫に感染することがあり、これはアニサキス症(anisakiosisまたはanisakiasis)と呼ばれる臨床疾患を引き起こす。いくつかの魚料理は、アニサキス種による感染の危険度が高いとみなされることが多い。これらは、日本の寿司および刺身、ドイツのソテーまたはスモークしたニシン、スカンジナビアのグラブラクス、ハワイのロミロミ、南アメリカのセビチェおよびスペインの塩漬けアンチョビを含む。
【0005】
L3アニサキス幼虫がヒトに感染すると、胃腸症状を引き起こすことが多く、この症状は様々な重症度のアレルギー反応に結びつくことがある。幼虫の位置および主要症状に応じて、アニサキス症の主たる4つの臨床形態(胃/胃アレルギー、腸、胃腸管外およびアレルギー)がヒトにおいて発現する。胃(急性)形態のアニサキス症では、幼虫が胃壁に侵入し、生L3アニサキス幼虫を含む魚を摂取してから数時間後に、急性上腹部痛、吐気、および嘔吐を特徴とする臨床経過が認められることが多い。そして、内視鏡検査から、しばしば侵入部位の点状出血、溢血点およびびらんから成る病変が明らかになることが多い。さらに、アレルギー症状(すなわち蕁麻疹/血管性浮腫および時としてアナフィラキシー)も症例の約10%において認められる。胃感染とアレルギー症状の併発は「胃アレルギー性アニサキス症」と呼ばれていた(Daschnerら、2000)。一部の患者は亜急性または慢性形態を発症することがあり、その臨床症状発現は、上腹部痛、消化不良、嘔吐、および食欲不振を含み、それらは数ヶ月間、場合によっては数年間持続することもある。
【0006】
腸形態のアニサキス症の場合には、幼虫が回腸末端のレベルで腸壁に侵入することが多い。急性症例の場合には、腹痛がしばしば認められ(通常は汚染された魚の摂取から24〜48時間後)、吐気、嘔吐、腹部腫脹、硬化、および便秘や下痢を伴う腸リズムの逸脱を伴う。感染組織の顕微鏡所見は、腸アニサキス症の症例では、強度の局所浮腫、点状出血、充血、および漿膜と腸間膜のびまん性炎症を特徴とする蜂巣炎性病変を明らかにする。これらの病変は、腸の近位閉塞と拡張を引き起こし得る。相当数の患者において、高い含量の好酸球を有する腹水が認められる。亜急性または慢性腸アニサキス症の場合には、幼虫によって誘導される肉芽腫性の変化が、壁の肥厚、管腔狭窄および慢性腹部症状を招く。
【0007】
胃腸管外または異所性形態では、感染性アニサキス幼虫が胃腸壁を越え、腹腔に達して、肺、膵臓、肝臓等の器官および組織へと移動する。これらの症例の臨床症状は、幼虫の局所位置に依存する。
【0008】
アレルギー性アニサキス症の形態は、アニサキス幼虫による感染後にアレルギー反応を有しつつも胃や腸には症状がない患者に限られる。最初の症状は非常に早く、汚染された魚を摂取してから最初の数時間のうちに発現し、臨床経過はI型アレルギー反応について一般的なパターンをたどることが多い。重症度は、単純な蕁麻疹または血管性浮腫からアナフィラキシーショックまでにわたる。
【0009】
アニサキス幼虫が胃、十二指腸、または結腸内に存在するとき、感染を明らかにするための好ましい方法は内視鏡検査である。この手法は、内視鏡に結合された鋏によって幼虫を除去するためにも有用であり、患者の治癒を導く。しかし、a)幼虫が内視鏡検査によってアクセスできない、b)幼虫が部分的に破壊されているかまたは内視鏡医に見えない、またはc)主要症状がアレルギーであるときには、感染を確認するための好ましい方法は、患者の血清中の特異抗体の存在を明らかにすることである。後者はまた、無症候性被験者においてアニサキスによる以前の感染を明らかにするためにも好ましい方法である。
【0010】
感染の間に産生されるアニサキスの抗原に対する種々のクラスの抗体の中では、IgE抗体が最も関連性がある。なぜなら、1)それらはアニサキスによる感染の間に認められるI型アレルギー反応に関与し、および2)感染患者の血清中に存在するものの中で特異性の見地から最も適切なクラスの免疫グロブリンであるためである。
【0011】
アニサキス幼虫によるヒト感染の最初の症例記述(Van Thiel、1960)以来、種々のクラスの抗アニサキス抗体を検出するための高精度な血清学的検定法を開発するべく数多くの試みがなされてきた。
【0012】
血清中の抗アニサキス抗体を測定することを目的とした最初の方法には、ラテックス凝集法(AkaoとYoshhimura、1989)、二重免疫拡散法および免疫電気泳動(Petithoryら、1986、Tsuji、1990)、間接赤血球凝集反応(Asaishiら、1989、Tsuji、1989)、および補体固定検定法(Oshima、1972、Tsuji、1989)が含まれた。これらの方法はすべて、a)十分な具体性と特異性を欠き、およびb)これらの手法を使用してIgE抗体(レアギン)を測定することができない、という2つの主要な難点を有していた。
【0013】
最近になって、放射性アレルギー吸着試験(Desowitzら、1985、Yamamotoら、1990)、固相酵素免疫検定法(ELISA)(Roderoら、2002)、蛍光酵素免疫検定法(UniCap FEIA、Pharmacia&Upjohn Diagnostics AB、Uppsala、Sweden)および免疫移動法(Del Pozoら、1996、Garciaら、1997)といった他の免疫検定法の実施によって感染患者の血清中の抗アニサキスIgEの測定が行われたが、精度および/または特異性の問題がこれらの方法に関しても発生した。
【0014】
ヒトアニサキス症を診断するための有用な血清学的方法の開発における主な問題は、一方では、(i)すべての感染患者の血清中に存在するIgE抗体によって認識され、かつ(ii)全分子(すなわち選択されたアレルゲン中に存在するすべてのエピトープ)がアニサキス属に特異的である寄生虫抗原(我々の場合はアレルゲン)を入手することにある。さもなければ、低い精度しか得られないか、および/または擬陽性を導く交差反応性が起こる。
【0015】
インビトロで培養されたアニサキス種幼虫の完全な天然排出/分泌抗原(ESA)を使用して(Poggenseeら、1989、Baezaら、2004)、またはL3アニサキス幼虫の粗抽出物から特異的標的抗原を捕捉するモノクローナル抗体を使用して(Yagihashiら、1990、UbeiraおよびIglesias、2000)、ヒトアニサキス症の血清学的診断を改善するための試みが為された。しかし、これらの戦略に基づくELISA法もまた、ESAを含む、アニサキスの糖タンパク質中に存在する交差反応性エピトープ(主としてO−およびN−グリカン)の存在ゆえに十分な特異性を有していなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、それらが由来するアニサキスの天然分子の抗原性を保持するペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質配列、ならびに前記配列をコードする核酸、および前記ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に対する特異的抗体またはそのフラグメントを提供する。開示されるペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質、ならびに前記ペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質に対する特異的抗体またはそのフラグメントは、ヒトおよび動物アニサキス症の血清学的診断のための免疫検定法を開発するために有用であり、上述した方法の難点を有さない。
【課題を解決するための手段】
【0017】
それ故、本発明の第1の態様は、以下の群:
a.配列番号1を含む核酸、
b.配列番号1の相補的核酸を含む核酸、
c.配列番号15または17を含む配列番号1の核酸のフラグメント、
d.抗アニサキス抗体によって認識され得る、8以上連続する配列番号2の隣接アミノ酸をコードする配列番号1のフラグメントを含む核酸、
e.抗アニサキス抗体によって認識され得る、10以上連続する配列番号2の隣接アミノ酸をコードする配列番号1のフラグメントを含む核酸、
f.抗アニサキス抗体によって認識され得る、12以上連続する配列番号2の隣接アミノ酸をコードする配列番号1のフラグメントを含む核酸、
g.(a)〜(f)の項で述べた核酸配列のいずれかと少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列
から選択される単離核酸配列(以下、本発明の核酸配列と称する)を提供する。本発明の好ましい実施形態では、ヌクレオチド配列は、(a)〜(f)の項で前述した核酸配列のいずれかと少なくとも80%の同一性を有し、さらに一層好ましい実施形態では、前記ヌクレオチド配列は、(a)〜(f)の項で前述した核酸配列のいずれかと少なくとも90%の同一性を有する。
【0018】
本発明の第2の態様は、以下の群:
a.配列番号2を含むポリペプチド、
b.配列番号16または18を含む配列番号2のフラグメント、
c.抗アニサキス抗体によって認識され得る、8以上連続する隣接アミノ酸を含む配列番号2のフラグメント、
d.抗アニサキス抗体によって認識され得る、10以上連続する隣接アミノ酸を含む配列番号2のフラグメント、
e.抗アニサキス抗体によって認識され得る、12以上連続する隣接アミノ酸を含む配列番号2のフラグメント、
f.この項目の(a)〜(e)の項で述べたアミノ酸配列のいずれかと少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列
から選択される、単離ポリペプチド、ペプチド、またはタンパク質(以下、本発明のアミノ酸配列と称する)を提供する。本発明の好ましい実施形態では、アミノ酸配列は、この項目の(a)〜(e)の項で前述したアミノ酸配列のいずれかと少なくとも80%の同一性を有し、さらに一層好ましい実施形態では、前記アミノ酸配列は、この項目の(a)〜(e)の項で前述したアミノ酸配列のいずれかと少なくとも90%の同一性を有する。
【0019】
これらのペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質はすべて、アニサキスに感染したすべての患者の血清中に存在するIgE分子によって認識されるアニサキス属寄生虫の特異的抗原を提供することにより、ヒトアニサキス症を診断するための有用な血清学的方法を開発する上での主要な問題を克服するために使用され得る。
【0020】
本発明の好ましい実施形態は、抗アニサキス抗体によって認識され得るアミノ酸配列に関し、前記アミノ酸配列は、以下のアミノ酸配列:
a.配列番号7を含むアミノ酸配列、
b.配列番号8を含むアミノ酸配列、
c.配列番号9を含むアミノ酸配列、
d.配列番号10を含むアミノ酸配列、
e.配列番号11を含むアミノ酸配列、
f.配列番号12を含むアミノ酸配列、
g.配列番号13を含むアミノ酸配列、
h.配列番号14を含むアミノ酸配列
から選択される、8以上連続する配列番号2の隣接アミノ酸を有し、かつ配列番号2にいずれかのフラグメントと少なくとも70%の同一性を有するフラグメントを含む。
【0021】
第3の態様では、本発明のアミノ酸配列は、以下の手法:
a.組換え手法
b.化学合成
c.アニサキス科の線虫の実質的精製
を含むが、これらに限定されない手法のいずれかによって作製される。
【0022】
本発明の第4の態様は、本発明のアミノ酸配列の2つ以上を含むペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に関する。
【0023】
本発明の第5の態様は、本発明のアミノ酸配列の1つ以上をコードする核酸配列を含む合成または組換え核酸分子に関する。
【0024】
本発明の第6の態様は、シグナル分子で標識された、本発明の単離核酸またはアミノ酸配列に関する。本発明の好ましい実施形態では、前記標識分子は、以下の群:
a.放射性
b.酵素
c.蛍光性
d.発光性
e.化学発光性
f.呈色性
を含むが、これらに限定されないシグナル分子のいずれかから選択される。
【0025】
本発明の好ましい実施形態では、標識分子は、以下の群:
a.ビオチンまたはその誘導体
b.ニトロフェノール誘導体
c.コロイド状金
d.ラテックス
e.フルオレセイン
を含むが、これらに限定されないシグナル分子のいずれかから選択される。
【0026】
本発明の第7の態様は、本発明のアミノ酸配列のいずれかと相互作用することができる抗体またはそのフラグメント(以下本発明の抗体と称する)に関する。本発明の抗体のいずれかをコードすることができる核酸配列も本発明の一部である。
【0027】
好ましい実施形態では、本発明の前記抗体は、2006年6月15日にドイツ微生物および培養細胞保存機関(Geman Collection of Microorganisms and Cell Cultures)(DSMZ)に寄託された、寄託番号DSM ACC2793を有するハイブリドーマ細胞系によって産生される抗体(以下UA3抗体)である。
【0028】
さらなる実施形態は、2006年6月15日にDSMZ機関に寄託された、寄託番号DSM ACC2793を有するハイブリドーマ細胞系に関する。
【0029】
本発明のさらなる実施形態は、本発明の抗体のいずれかの抗原認識配列、特にUA3抗体の抗原認識配列に関する。
【0030】
本発明の別の態様は、付加的なペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に化学的に結合または連結されている、本発明の単離アミノ酸配列を提供する。
【0031】
本発明の別の態様は、本発明のヌクレオチド配列を含む発現ベクターまたは発現系(以下本発明の発現系と称する)に関する。
【0032】
本発明の別の態様は、本発明の核酸配列でもしくは本発明の発現ベクターまたは発現系で形質転換またはトランスフェクトされた単離原核または真核宿主細胞(以下本発明の宿主細胞と称する)を提供する。
【0033】
本発明の第8の態様は、本発明の核酸配列によってコードされる組換えペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を生産する方法に関し、前記方法は、前記ヌクレオチドが発現され、生産される条件下で本発明の宿主細胞を培養し、その後前記ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を単離することを含む。
【0034】
本発明の第9の態様は、
a.生物学的試料を、本発明のアミノ酸配列と、前記ポリペプチドと試料中の抗体との間で免疫複合体を形成するために十分な条件下で接触させることと、
b.前記免疫複合体を検出することと、
を含む、単離された生物学的試料、好ましくは血清中のアニサキス種に対する抗体を検出するインビトロ法に関する。
【0035】
本発明の好ましい実施形態では、インビトロ法は、免疫検定法または酵素免疫検定法である。
【0036】
本発明の第10の態様は、
a.生物学的試料または食品抽出物を、本発明の抗体と、前記抗体と試料中の抗原の間で免疫複合体を形成するために十分な条件下で接触させることと、
b.前記免疫複合体を検出することと、
を含む、試料、好ましくは生物学的試料、または食品抽出物中のアニサキス種の抗原を検出するインビトロ法に関する。
【0037】
好ましい実施形態では、インビトロ試料中のアニサキス種の抗原を検出するために使用される本発明の抗体は、UA3抗体である。
【0038】
本発明の1つの好ましい態様は、被験者を本発明のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に曝露し、被験者の反応を観測することを含む、被験者におけるアニサキス種に対するアレルギーを診断または予後判定するインビボ法に関する。
【0039】
アニサキス種に対する抗体を検出する本発明のインビボ法のさらに一層好ましい態様は、プリック試験を使用することである。
【0040】
本発明の別の好ましい態様は、
a.少なくとも1つの本発明の抗体またはそのフラグメント、および
b.免疫複合体の検出手段
を含む、生物学的試料または食品抽出物中のアニサキス種の抗原を検出するのに適したキット(以下本発明のキット)である。
【0041】
本発明の別の好ましい態様は、
a.少なくとも1つの本発明のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質、および
b.免疫複合体の検出手段
を含む、生物学的試料、好ましくは血清中の抗アニサキス種抗体を検出するのに適したキットである。
【0042】
好ましい実施形態では、本発明のキットにおいて使用される検出手段は、免疫複合体の形成を認識することができる標識二次抗体から成る。
【0043】
さらに一層好ましい実施形態では、本発明のキットにおいて使用される検出手段は、免疫複合体の形成を認識することができる標識二次試薬である。
【0044】
本発明の別の態様は、アニサキス種に対する何らかの型のアレルギー反応の治療のための医薬組成物を製造するための、本発明のアミノ酸配列の使用に関する。本発明の1つの好ましい実施形態は、医薬組成物それ自体に関する。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本明細書において使用される「核酸」または「核酸分子」は、ホスホジエステル架橋によって互いに結合された、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドである2つ以上のサブユニットから成るヌクレオチドのポリマーを指す。「核酸」または「核酸分子」は、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、オリゴヌクレオチド、およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってまたは連結、スプライシング、エンドヌクレアーゼ作用またはエキソヌクレアーゼ作用のような他の方法によって生成されるフラグメントを含む。本明細書において使用される「ヌクレオチド」という用語は、糖(五炭糖)の残りの部分(a remainder of sugar)、リン酸および含窒素複素環式塩基を含むDNAまたはRNAの単量体単位を意味する。DNAの4つの塩基は、アデニン(「A」)、グアニン(「G」)、シトシン(「C」)およびチミン(「T」)である。RNAの4つの塩基は、A、G、Cおよびウラシル(「U」)である。
【0046】
本明細書において使用される「単離核酸分子」は、生物のゲノムDNAに組み込まれていない核酸分子である。前記核酸分子は、細胞のゲノムDNAから分離され得るか、組換えDNA技術(たとえばPCR増幅、クローニング等)を用いて生産され得るか、または化学合成され得る。単離核酸分子は、完全な遺伝子としてまたはその遺伝子と安定なハイブリッドを形成することができるその部分として、その天然ソースから得られ得る。核酸分子は一本鎖または二本鎖であり得る。
【0047】
本明細書において使用される「プライマー」は、プライマー鋳型二本鎖を形成するように相補的DNAまたはRNA鋳型とハイブリダイズし得る天然または合成オリゴヌクレオチド(好ましくは15〜40ヌクレオチド長の範囲である)を指す。典型的には、プライマーは一本鎖オリゴデオキシリボヌクレオチドであり、DNAまたはRNA鎖とのハイブリダイゼーション後にポリメラーゼによる核酸合成のための出発点として働く。
【0048】
本明細書において使用される「をコードするヌクレオチド配列」という表現は、特定ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の発現を指令する核酸配列を指す。核酸配列は、RNAに転写されるDNA鎖の配列と、タンパク質へと翻訳されるRNA配列とを含む。本発明の核酸配列は、完全長核酸配列と完全長タンパク質に由来するトランケート型配列(完全長を有さないもの)との両方を含む。それらはまた、特定宿主細胞においてコドン選択を与えるように構築され得る、天然配列と同じペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質をコードするヌクレオチド配列の変異体を含む。
【0049】
本明細書において使用される「の相補物」は、2本のポリヌクレオチド鎖の領域の間または塩基対の形成を通じた2つのヌクレオチド間の逆対応の概念を指す。その結果として、「相補的塩基の配列」は、その中のすべての塩基がもう1つ別のポリヌクレオチド鎖内の塩基の配列と塩基対を形成し得るポリヌクレオチド鎖を指す。周知のように、アデニンヌクレオチドはチミン(A−T)またはウラシル(A−U)と塩基対を形成することができ、シトシンヌクレオチドはグアニン(C−G)と塩基対を形成し得る。
【0050】
本明細書において使用される「発現ベクター」は、対象とする配列または遺伝子の発現を指令することができる集合体を指す。本発明によれば、発現ベクターは、プラスミドまたはファージのような、アニサキス種の抗原を発現することができる何らかのDNAまたはRNA発現ベクターであり得る。好ましくは、本発明における発現ベクターはプラスミド(たとえばpQE31およびpTARGET)である。
【0051】
本明細書において使用される「プラスミド」という用語は、染色体DNAから独立した細胞中で複製することができる自律環状DNAを指し、発現型および非発現型の両方を含む。
【0052】
本明細書において使用される「組換え」という用語は、天然または合成DNA分子を、生細胞において複製し得るDNA分子またはその複製の結果である分子に人為的に結合することにより、生細胞の外部で作製される複合DNA分子を指す。この文書では、「組換え」という用語はまた、組換えDNA分子を使用して発現されるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を指す。
【0053】
「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、1つのアミノ酸のα−アミノ基と隣接アミノ酸のα−カルボキシル基の間のアミド結合によって互いに結合されたアミノ酸の直鎖状配列を表わすために、この文書では交換可能に使用される。25のアミノ酸以下の長さを有するポリペプチドは「ペプチド」とみなされる。好ましくは、シストロンによってコードされるポリペプチドは「タンパク質」とみなされる。
【0054】
本明細書において使用される「アミノ酸配列のフラグメント」という表現は、特定ペプチド、ポリペプチド、タンパク質またはアミノ酸配列内の隣接アミノ酸の部分を意味する。
【0055】
本明細書において使用される「単離ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質」は、自然界においてポリペプチドと結合している脂質、炭水化物または他の不純物のような細胞夾雑物を本質的に含まないペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質である。単離ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、従来のクロマトグラフィー手法によってその天然媒質から精製され得る。単離ペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質はまた、組換え法によってまたは化学合成によっても入手され得る。典型的には、「実質的に精製されたポリペプチド」は、それが細胞、組織、または生物において天然に共存するその他のポリペプチドの少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、さらに一層好ましくは少なくとも90%から分離されるときに得られる。
【0056】
本明細書において使用される「アミノ酸(単数および複数)」という用語は、すべての天然起源のL−α−アミノ酸またはその残りのものを指す。以下の表(表1)は、天然アミノ酸を表わすために使用される3文字表記および1文字表記(生化学命名法に関するIUPAC−IUB委員会によって推奨される)を示す。
【0057】
Asp D アスパラギン酸 Ile I イソロイシン
Thr T トレオニン Leu L ロイシン
Ser S セリン Tyr Y チロシン
Glu E グルタミン酸 Phe F フェニルアラニン
Pro P プロリン His H ヒスチジン
Gly G グリシン Lys K リシン
Ala A アラニン Arg R アルギニン
Cyc C システイン Trp W トリプトファン
Val V バリン Gln Q グルタミン
Met M メチオニン Asn N アスパラギン
【0058】
本明細書において使用される「哺乳動物」という用語は、ヒト、マウス、ラット、海洋哺乳動物および家畜(domestic and farm animals)を含む、哺乳動物として分類される何らかの動物を指す。好ましくは、この文書における哺乳動物はヒトである。
【0059】
本明細書において使用される「抗体」という用語は、抗原結合特性を有し、形質細胞によって産生されることを特徴とする、免疫グロブリンファミリーの糖タンパク質を指す。「抗体」という用語は、抗体のあらゆるクラス、たとえばIgG、IgD、IgM、IgA、IgEまたはその誘導体に属するモノクローナルおよびポリクローナル抗体の両方を含む。
【0060】
本明細書において使用される「モノクローナル抗体」という表現は、抗体の均一な集団を有する抗体の組成物を指す。抗体の特定ソースまたはそれらが生産される方法に限定されることは意図されておらず、細胞融合または組換え手法によって生産される抗体およびそのフラグメントを包含する。
【0061】
本明細書において使用される「抗原」という用語は、免疫適格宿主に導入されたときに特異的抗体の産生を誘導することができる何らかの分子または物質を指す。本明細書において使用される「抗原」という用語はまた、特異的抗体によって認識され得る何らかの分子または物質を指す。典型的には、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、炭水化物、脂質、核酸またはこれらの分子の組合せは抗原として認識され得る。これらの抗原はまた、結合有機および無機化学基を含み得る。
【0062】
本明細書において使用される「エピトープ」という用語は、(モノクローナルまたはポリクローナル)抗体によって、または細胞の抗原特異的受容体によって認識される抗原の部分を指す。抗原がペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質であるとき、エピトープは、一次アミノ酸配列の少なくとも5アミノ酸のフラグメントであり得るが、5またはそれ以上のアミノ酸から成る成熟折りたたみタンパク質(三次(三次元)構造)の表面の露出領域でもあり得る。典型的には、エピトープは、それらが生じさせる免疫応答の種類に基づき、B細胞エピトープおよびT細胞エピトープとして分類され得る。
【0063】
本明細書において使用される「生物学的試料」という用語は、本発明の核酸、抗体、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の1つ以上を含む生体組織または液体の何らかの試料に適用される。本発明において、「生物学的試料」という用語はまた、抗アニサキス抗体を測定するためのソースとして使用し得る生体組織または液体の何らかの試料に適用される。前記試料は、単離組織、血液、血清、血漿、脳脊髄液、腹水、滑液、唾液、尿または糞便を含むが、これらに限定されない。生物学的試料はまた、組織学的検査のために採取された凍結切片のような組織切片も包含し得る。生物学的試料は、何らかの真核生物、好ましくはラット、マウス、ウサギ、海洋哺乳動物またはヒトのような哺乳動物から入手され得る。
【0064】
本明細書において使用される「食品試料」という用語は、広範囲の食用材料から得られる何らかの試料を指す。これらの試料は、生魚、スモークされた魚および調理された魚の部分、およびその組成物中に魚材料を含有する食品を含むが、これらに限定されない。「食品試料」という用語はまた、乳児用栄養食品を含む。
【0065】
本明細書において使用される「抗アニサキス抗体」という表現は、アニサキス属の何らかの種の抗原中に存在する少なくとも1つのエピトープを認識することができる、試料中に存在する何らかのクラスまたはサブクラスの抗体を指す。この表現は、寄生生物によるヒトおよび動物の自然感染または実験的感染の間に産生される抗体、ならびにアニサキス属の種から得られた、精製されていないかまたは実質的に精製された組換えまたは合成抗原によるヒトまたは動物の免疫後に産生されるモノクローナルおよびポリクローナル抗体を包含する。この表現はまた、組換え手法、化学合成または等価手法によって作製される抗原結合抗体およびフラグメントを含む。
【0066】
本明細書において使用される「同一性の割合」という表現は、2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列が互いに隣接して整列したとき同じ相対位置を占めるアミノ酸またはヌクレオチドの割合を指す。本発明に関して、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間の配列同一性の割合を算定するための適切な方法は、参照としてこの文書に組み込まれる、Adv.Appl.Math.(1991)12:337−357に公表されたHuangとMillerのアルゴリズムを適用する、William Pearonのlalignプログラムである。このプログラムは、[http://www.ch.embnet.org/software/LALIGN_form.html]においてオンラインで処理され得る。
【0067】
本明細書において使用される「免疫検定法」という用語は、抗原−抗体反応によって試料中の分析物を検出する方法を指す。分析物は、低分子(ハプテン)または多くの血漿タンパク質のような高分子であり得る。分析物は、抗体とリガンドの間の特異的結合によって検出され得る抗体であることが多い。本明細書において使用される「酵素免疫検定法」(EIA)という用語は、試薬の少なくとも1つが酵素で標識されていることを特徴とする、広い範囲の免疫検定法を指す。典型的なEIAは、多くの変法を有する、固相酵素免疫検定法(ELISA)を含む。免疫検定法形式の分類または詳細な説明については、PriceとNewman(1997).Principles and Practice of Immunoassay、Macmillan Rerenece LTD、New York、Tijssen(1985)、および酵素免疫検定法の理論については、Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology(R.H.BurdonとPH van Knippenberg編集)、Elsevier、Amsterdam、Deshpande(1996)Enzyme immnunoassays,from concept to product development、Chapman&Hall、New York参照。
【0068】
本明細書において使用される「医薬組成物」は、哺乳動物被験者に投与されるのに適した化学的または生物学的組成物を指す。典型的には、医薬組成物は、一定量の薬理的に有効な活性物質と医薬的に許容される担体を含む。適切な担体および医薬製剤の例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,20th edition,Mack Publishing Company,Easton,2000に述べられている。医薬組成物は、経口、非経口、静脈内、動脈内、皮下、鼻内、舌下および同様の経路を含むが、これらに限定されない、種々の経路による投与のために特に製剤され得る。
【0069】
本明細書において使用される「診断方法」という表現は、動物または被験者において病的状態を特定する方法を指す。前記病的状態が病原体によって生じるとき、診断は、宿主において病原体によって放出される抗原、または前記病原体によって誘導される抗体を検出することを可能にする免疫検定法(上記参照)を使用して行われ得ることが多い。本発明の診断方法は、インビトロ検定法(ELISA検定法または好塩基球ヒスタミン放出試験など)および、しばしばアレルギーを診断するために使用される、皮膚試験(たとえばプリック試験を含むが、これに限定されない)、皮内反応試験または表皮試験(たとえばパッチテスト)のようなインビボ検定法を含む。「診断方法」という表現はまた、経口、結膜、鼻、気管支等、種種の経路でアレルギー症状を引き起こすことが疑われる物質に対する耐性を調べるために、制御しながら段階的に投与することから成る、誘発試験を含む。後者の方法のより詳細な説明は、「Comite de Reacciones Adversas a Alimentos:Metodologia diagnostica en la alergia a alimentos”.Alergologia e Immunologia Clinica,14:50−52(1999)、ならびに臨床アレルギー学および免疫学診療科に関する様々な手引書に見出され得る。
【0070】
本明細書において使用される「配列反復」という表現は、所与のタンパク質または核酸分子の配列内の反復モチーフを指す。本発明のポリペプチド配列における配列反復は、RADARプログラムを使用して実施した(実施例12参照)。
【0071】
異なる定義がある場合を除き、この文書において使用される技術および学術用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本発明の実施においては、この文書の中で開示されるのと類似または等価の方法および材料が使用され得る。明細書全体および特許請求の範囲を通じて、「含む」という語およびその変形は、他の技術的特徴、付加物、成分または工程を排除することを意図しない。本発明の他の目的、利点および特徴は、明細書を検討した後当業者に明白となるかまたは本発明の実施によって学習され得る。以下の実施例は例示のために提供するものであり、本発明を限定することを意図しない。
【実施例1】
【0072】
アニサキス・シンプレックスからのmRNAの単離および発現ライブラリーの構築
L3幼虫期(L3)のアニサキス・シンプレックス幼虫をブルーホワイティング(またはプタスダラ)(Micromesistius poutassou)の内臓および腹腔から手操作で抽出し、cDNAライブラリーの構築を開始するまで液体窒素中で保存した。全メッセンジャーRNA(mRNA)を、Fast Track 2.0 mRNA単離キット(Invitrogen S.A.,Barcelona,Spain)を製造者の指示に従って使用して凍結L3アニサキス・シンプレックス1gから得た。
【0073】
ZAP−cDNA Gigapack III Gold Cloning Kit(Stratagene,La Jolla,CA)を用いてアニサキスcDNAライブラリーを構築するために得たポリ(A)RNA 5μgを、製造者の指示に従って使用した。提供される指示に従い、アニサキス・シンプレックスのポリ(A)RNAを最初に二本鎖cDNAに変換した、その後、それをλ−ZAP発現ベクターに結合し、ベクターをGigapack IIIパッキング抽出物を使用して挿入した。大腸菌のXL1−Blue MRF’株を宿主として使用した。生じたライブラリーを増幅したところ、約1.3×1010pfu/mlおよび1%の非組換えファージを含有していた。
【0074】
アニサキス・シンプレックスのcDNAライブラリーの探査
増幅した後、A.シンプレックスのcDNAライブラリーを、UA3モノクローナル抗体を用いた免疫学的スクリーニングに供した。ZAP−cDNA Gigapack III Gold Cloning Kit(Stratagene)の中で提供される推奨に従って、XL1−Blue MRF’宿主細胞を補足LBブロス中で増殖させ、1,000×gで遠心分離して、沈降物を10mM硫酸マグネシウムに再懸濁した。組換えファージのアリコートをこの懸濁液に加え、ファージを細胞に結合させるために混合物を37℃で15分間インキュベートした。その後、結合ファージを含む細胞懸濁液を溶融NZY寒天(約55℃に冷却)と混合し、この混合物を、新たに注ぎ入れたNZY寒天を含む直径150mmのプレート上に均一に塗布した。42℃で約3時間インキュベーショトし、ファージプラークの形成を開始させた後、あらかじめ水中の10mMイソプロピルチオ−β−D−ガラクトシド(IPTG)に含浸したニトロセルロースフィルター(Schleicher&Schuell,Dassel,Germany)でプレートを被覆することによって組換えタンパク質の発現を誘導した。その後、プレートを37℃で3時間半インキュベートし、吸着したファージプラークを含むニトロセルロースフィルターを慎重に取り出し、TBS(50mMトリス−HCl、150mM NaCl、pH7.5)中の3%BSAにより37℃で30分間ブロックして、その後IgG1/κUA3モノクローナル抗体(MAb)(TBS中1:10,000希釈)と共に4℃で一晩インキュベートした。ニトロセルロース膜を、0.05%トゥイーン20を含むTBS(TBS−T)中で洗浄し、1:10,000のアルカリホスファターゼ結合ヤギ抗ウサギIgG(Pierce,Rockford,IL,USA)と共に周囲温度で2時間インキュベートした。再び1回洗浄した後、NBT(ニトロブルーテトラゾリウム)およびBCIP(p−トルイジン−5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート)(Sigma Chemical Corp.,St Louis,MO,USA)を用いて免疫複合体を観察した。
【0075】
単一クローンのインビボスプライシングおよびcDNA塩基配列決定
無傷λZAPベクターの免疫学的スクリーニングにより、MAb UA3によって認識されるタンパク質をコードするcDNAを同定した後、対応するファージプラーク(UAR−H5クローン)を精製した。ZAP−cDNA Gigapack III Gold Cloning Kit(Stratagene)の中で与えられる指示に従って、ファージを選択した陽性プレートの中央部分を微量遠心管に移し、組換えファージ粒子をSM緩衝液中に放出した。その後、XL1−Blue MRF’宿主細胞を組換えファージおよびキットと共に供給されるExAssist補助ファージに重複感染させることにより、λZAPベクターのpBluescriptファージミドのインビボスプライシングを実施した。この手順の最後に、糸状ファージ粒子の形態で充填されて得られるスプライシングされたpBluescriptファージミドを使用して、SOLR宿主細胞に感染させた。クローニングされた対象DNA挿入物を有する二本鎖pBluescriptファージミドを含むトランスフェクトされたSOLR細胞のコロニーを得、アンピシリン(100μg/ml)を含むルリア−ベルタニ(LB)寒天プレートで細胞を増殖させた。個々の細菌コロニーをLBブロス−アンピシリン中で増殖させ、Perfectprep Plasmid Maxiキット(Eppendorf)を使用してpBluescriptファージミドDNAを精製した。pBluescript SK配列の正(5’配列番号19 3’)および逆(5’配列番号20 3’)M13プライマーを、いくつかの内部プライマーと共に、Big−Dye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit(PE Biosystems,Foster City,CA)およびApplied Biosystems 377 DNAシーケンサー(PE Biosystems)を使用したファージミドDNAの自動塩基配列決定のために使用した。DNA配列および推定アミノ酸配列を、the Swiss Institute of Bioinformaticsからの、ExPASyソフトウエアパッケージ(the Expert Protein Analysis System)、World Wide Webサーバー(http://www.expasy.org/)を使用してEMBLおよびSWISS−PROTデータバンクと比較した(Gateigerら、2003)。記述されているヌクレオチド配列は、配列番号1の配列によって表わされる3,288ヌクレオチドの配列を含み、配列番号2によって表わされる1,096アミノ酸の推定アミノ酸配列をコードする。
【実施例2】
【0076】
pQE−31ベクターへのアニサキス・シンプレックスのcDNA配列(配列番号1)のフラグメントのサブクローニング
好ましい実施形態では、279アミノ酸のポリペプチド配列(配列番号16)をコードする、配列番号1のヌクレオチド1303−2139の位置に対応する組換え内部DNAのフラグメント(配列番号15)を、QIAexpress Type IVキット(Qiagen,IZASA S.A.,Barcelona,Spain)を製造者の指示に従って用いて、pQE−31のマルチクローニングサイトの制限部位Sal IおよびHind IIIを使用して発現ベクターpQE−31にサブクローニングした。もう1つの類似の方法が、Molecular Cloning:a Laboratory Manual(Sambrookら、2001)またはCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubelら、1998)などの手引書において入手可能である。
【0077】
クローニングの前に、配列番号15に対応するcDNAフラグメントの配列をPCRによって増幅して、組換えpBluescriptファージミドを鋳型として使用し、制限部位Sal IおよびHind IIIを含む正プライマー(5’配列番号21 3’)と逆プライマー(5’配列番号22 3’)のセットを用いて配列の末端を修飾した。このPCR修飾は、組換え挿入物が消化されたプラスミドに対して粘着末端を有するために、制限酵素Sal IおよびHind IIIについての特異的ヌクレオチド配列を提供した。配列番号15に対応するDNAフラグメントの配列の増幅および修飾のためのPCR条件は、94℃で4分間の変性サイクルとそれに続く(94℃で30秒間の変性、55℃で30秒間のハイブリダイゼーション、および72℃で1分間の伸長)の35サイクル、および72℃で7分間の最終伸長サイクルを含んだ。PCRが完了した後、増幅されたアニサキスの組換えDNAをQiaQuickゲル精製キット(Qiagen)を用いて精製した。その後、プラスミドDNA 1μgおよび挿入するフラグメントをコードするDNA 2μgを、製造者(Invitrogen S.A.,Barcelona,Spain)によって推奨される緩衝液およびインキュベーション条件に従って、制限酵素Sal IおよびHind IIIで消化した。最後に、消化したベクターとDNA挿入物の両方をQiaQuickゲル精製キット(Qiagen)で精製し、16℃で一晩、T4 DNAリガーゼを使用してベクターと挿入物を1:3の割合で連結した。pQE−31のマルチクローニングサイトの部位Sal IとHind IIIの間に配列番号15のアニサキス・シンプレックス組換えDNAを挿入することは、アニサキスの配列番号16(中央部分)および2つの付加的なアミノ酸配列(尾部):それぞれクローニングされたアニサキス配列のアミノ末端とカルボキシル末端部分に位置する、配列番号23および配列番号24を含む、配列番号4のアミノ酸配列をコードする915ヌクレオチドのプラスミドオープンリーディングフレーム(ORF)(配列番号3)を導いた。コードされるポリペプチドのアミノ部分における6xヒスチジンシグナルの存在は組換えポリペプチドの精製を促進し得るが、他のベクターおよび精製方法も、都合によって使用し得る。
【実施例3】
【0078】
組換えpQE−31によるM15細胞(pREP4)の形質転換
組換えベクターpQE−31による大腸菌のM15細胞[pREP4]の形質転換を、製造者(Qiagen)の手引書(The QIAexpressionist:A handbook for high−level expression and purification of 6xHis−tagged proteins)の中で与えられる指示に従って実施した。このプロトコルに従って、あらかじめ作製したコンピテントM15細胞のアリコートを連結混合物のアリコートと共に氷中で20分間インキュベートし、その後42℃で90分間インキュベートした。前記インキュベーション後、細胞をΨブロスに再懸濁し、37℃で90分間インキュベートした。その後、M15細胞を、カナマイシン25μg/mlおよびアンピシリン100μgを含むLB寒天プレートに接種し、37℃で一晩インキュベートした。陽性コロニーを、カナマイシンとペニシリンを添加したLBブロス中で増殖させ、遠心分離して、沈降した細胞をグリセロール含有SOB培地において−80℃で保存した。
【実施例4】
【0079】
アニサキス・シンプレックスの組換えポリペプチドの発現
実施例2の組換えアニサキスの組換えポリペプチドを生産するために、形質転換したM15細胞を解凍し、0.5のOD600が達成されるまで、軌道攪拌(200rpm)しながら、カナマイシンおよびアンピシリンを添加したLBブロスにおいて37℃で増殖させた。その後、1mM IPTGを添加することによってポリペプチドの発現を誘導し、細胞を同じ攪拌条件下にて37℃でさらに4時間インキュベートした。その後、細胞を5000×gで遠心分離し、実施例5に述べられているように、発現されたポリペプチドの精製が達成されるまで、−30℃で凍結保存した。これらの培養条件下で、M15細胞は、封入体の形態で沈殿した配列番号4の組換えポリペプチドを生産する。
【実施例5】
【0080】
アニサキス・シンプレックスの組換えポリペプチドの精製
好ましい実施形態では、250mlの培養物から得た、沈降したM15細胞の封入体を以下の工程に従って精製した。a)細菌沈降物をB−PER試薬(Pierce,Rockford,IL,USA)15mlに再懸濁し、10分間静かに攪拌した。b)試料を15,000×gで遠心分離し、可溶性タンパク質を含む上清を廃棄した。c)封入体を含む沈降物を別途のB−PER 15mlに再懸濁し、最終濃度200μgのリゾチーム(Sigma−Aldrich,Madrid,Spain)を細胞懸濁液に添加して、周囲温度で5分間インキュベートした。d)懸濁液を1:10希釈のB−PER 100mlで希釈し、ボルテックス攪拌器を用いて細胞を再懸濁した。e)細胞懸濁液を15,000×gで15分間遠心分離し、沈降物を別途のB−PER 100mlに再懸濁して、ボルテックスで攪拌した。f)希釈したB−PERを15,000×gで遠心分離し、沈降物を、100mM NaHPO、10mMトリスClおよび6M尿素、pH8.0から成る変性緩衝液50mlに再懸濁して、その後ボルテックスで攪拌した。g)懸濁液を15,000×gで20分間遠心分離し、100mM NaHPO、10mMトリスClおよび8M尿素、pH8.0から成る変性緩衝液(負荷緩衝液)10mlに溶解した。h)50%Ni−NTA樹脂懸濁液(Qiagen)2.5mlを、ペプチドを含む溶液に添加し、混合物を軌道攪拌器において周囲温度で30分間攪拌した。その後、樹脂懸濁液を空のカラムに負荷し、2容の負荷緩衝液で洗浄した。i)保持されたポリペプチドを、250mMイミダゾールを含有する、0.15mMトリスCl、pH10.5を含む溶液で溶出し、使用するときまで−30℃で凍結保存した。
【実施例6】
【0081】
pTARGETベクターへの配列番号17のアニサキス・シンプレックスcDNA配列のフラグメントのサブクローニングおよびコンピテントJM109細胞の形質転換
もう1つの好ましい実施形態では、配列番号18によって表わされるポリペプチドのアミノ酸配列をコードする、配列番号1のヌクレオチド1306−2139の位置に対応する834アミノ酸の内部フラグメント(配列番号17)をpTARGETベクター(Promega)にサブクローニングした。そのために、配列番号17を、正プライマー(5’配列番号25 3’)と逆プライマー(5’配列番号26 3’)のセットを使用し、実施例3の形質転換pQE−31ベクターを鋳型として用いて、PCRによって増幅した。PCR条件は以下の通りであった。94℃で5分間の変性サイクルとそれに続く(94℃で45秒間の変性、55℃で45秒間のハイブリダイゼーション、および72℃で1.5分間の伸長)の35サイクル、および72℃で10分間の最終伸長サイクル。PCR産物を2%アガロースゲルで分析し、その後pTARGETベクターにクローニングした。pTARGETとアニサキス挿入物の連結、およびコンピテントJM109細胞の形質転換を、製品の使用指示書に記載されているように実施した。陽性JM109形質転換体を、製造者によって記述されているように、アンピシリン/IPTG/X−Galを添加したLB寒天プレートを用いて白色コロニー選択によって選択した。
【0082】
記述した実験条件下で、pTARGETベクターへの配列番号17に対応するcDNA配列のフラグメントのサブクローニングは、配列番号17のアニサキスポリペプチド、および配列番号17のカルボキシル末端部分に位置する4アミノ酸の付加的な配列(配列番号24)を含む、配列番号6の282アミノ酸の配列をコードする846ヌクレオチドのプラスミドORF(配列番号5)を導いた。
【実施例7】
【0083】
JM109細胞の組換えプラスミドDNAの単離およびプラスミドDNAによるマウスのワクチン接種
JM109細胞の陽性コロニーをLBブロス−アンピシリン中で増殖させ、15,000×gで15分間遠心分離して、沈降物を、Plasmid Maxiキット(Qiagen)を用いてプラスミドDNAを抽出するために使用した。合計50μl(1μg/μlの濃度)の内毒素不含プラスミドDNAを、10〜20週齢のBalb/cマウスの2本の脚の四頭筋に接種した。接種は、Leiroら(2002)によって述べられているようにインスリン注射器を使用して実施した。
【実施例8】
【0084】
感染患者の血清中の抗アニサキス抗体の測定のための免疫検定法
本発明における免疫検定法は、動物被験者または種からの何らかの生体液中の抗アニサキス抗体の存在を検出することができる任意の免疫検定法であって良い。
【0085】
免疫検定法の種類の例は、液相および固相免疫検定法、および直接または間接形式の競合および非競合免疫検定法を含む。
【0086】
典型的には、血清または血漿のような生体液中の抗アニサキス抗体のレベルの測定は、この実施例において述べるELISA法のような、ELISA法を用いて実施し得る。
【0087】
a)血清試料
この実施例のELISA法において使用する血清試料は、非感染被験者(健常供血者)およびアニサキス・シンプレックス寄生虫に感染した被験者から得た。血清は、最近生魚を食したことがあり、内視鏡検査によって寄生生物の存在が確認された被験者から得たものであるとき、陽性とみなした。
【0088】
b)O−脱グリコシル化抗原およびUA3モノクローナル抗体による捕捉ELISA
固定化UA3モノクローナル抗体によるアニサキス種の特異的O−脱グリコシル化抗原の捕捉に基づく、捕捉ELISA法(UA3−ELISA)を述べる。
【0089】
この免疫検定法において使用するO−脱グリコシル化抗原は、上述したように入手されたものであり、50℃で16時間の0.02mM NaOHによるアニサキスの無傷抗原の処理、およびHClによるpHの付加的な中和に基づく。
【0090】
捕捉ELISAを実施するため、以下の工程を行った。a)精製UA3モノクローナル抗体(100μl/ウエル、10μg/mlの抗体濃度)を一晩結合した。b)吸引後、PBSでELISAプレートを3回洗浄した。c)吸引後、3%脱脂粉乳および0.2%トゥイーン20を含むPBS溶液(PBS−TM)を使用してELISAウエルを37℃で1時間ブロックした。d)吸引後、非希釈ヒト血清100μlを使用して37℃で1時間半インキュベートした。e)0.2%トゥイーン20を含むPBS(PBS−T)200μl/ウエルで3回洗浄した。f)1:2,500希釈のFITC標識ヒト抗IgEモノクローナル抗体(Ingenasa,Madrid,Spain。FITCによる標識は、LiddelとCryer、1991によって述べられた方法に従って実施した)100μlを使用してインキュベートした。g)吸引に加え、200μl/ウエルをPBS−Tで3回洗浄した。h)吸引に加え、1:1,500希釈のペルオキシダーゼ結合ウサギ抗FITC抗体(Dako,Barcelona,Spain)100μlでインキュベートした。i)吸引に加え、200μl/ウエルをPBS−Tで洗浄した。j)吸引に加え、ペルオキシダーゼ基質(Sigma Fast OPD,Sigma)でインキュベートした。k)マルチウエルリーダー(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)を使用して492nmで光学密度(OD)を読み取った。
【0091】
c)形質転換M15細胞において発現されたアニサキスの組換えポリペプチドに関する間接ELISA
好ましい実施形態では、アニサキスに感染した被験者の血清中の抗アニサキス抗体を測定するために、配列番号4の組換えポリペプチドを使用して間接ELISAを実施した。
【0092】
この実施例では、ヒト血清試料中のIgE抗体の測定のためのELISA法を述べるが、他のクラス(IgA、IgG、IgM)およびサブクラス(IgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4)の抗体も、二次抗ヒト抗体の特異性を変えることによって測定し得る。同様に、この免疫検定法はまた、適切な二次抗種抗体を選択することにより、他の動物種(たとえば他の哺乳動物、鳥類または魚類)の生体液中の抗体の測定のためにも適合させ得る。
【0093】
好ましい実施形態では、この実施例の間接ELISA(rUA3−ELISA)を実施するための方法を以下の工程に従って行った。a)0.1MトリスCl、pH10.5中の配列番号4のアニサキスの組換え抗原とELISAプレートとを結合した。b)吸引後、PBSでELISAプレートを3回洗浄した。c)吸引後、3%脱脂粉乳および0.2%トゥイーン20を含むトリス緩衝生理食塩水(TBS)(TBS−TM)を使用して37℃で1時間ELISAウエルをブロックした。d)吸引後、非希釈ヒト血清100μlを使用してプレートを37℃で1時間半インキュベートした。e)0.2%トゥイーン20を含むTBS(TBS−T)200μl/ウエルで3回洗浄した。f)1:2,500希釈のFITC標識ヒト抗IgEモノクローナル抗体(Ingenasa、LiddelとCryer、1991によって述べられた方法に従ってFITCで標識した)100μlでインキュベートした。g)吸引後、200μl/ウエルをTBS−Tで3回洗浄した。h)吸引後、1:1,500希釈のペルオキシダーゼ結合ウサギ抗FITC抗体(Dako)100μlでインキュベートした。i)吸引後、200μl/ウエルをPBS−Tで洗浄した。j)吸引に加え、ペルオキシダーゼ基質(Sigma Fast OPD,Sigma)でインキュベートした。k)マルチウエルリーダー(Molecular Devices)を使用して、492nmで光学密度(OD)を読み取った。
【0094】
以下の表Iは、本発明の実施例8で述べる捕捉ELISA(UA3−ELISA)法および間接ELISA(rUA3−ELISA)法によって検定した、アニサキス・シンプレックス線虫に感染した患者からの22の陽性血清試料について得たIgE値の比較を示す。表は、各々血清について492nmで測定した平均吸光度値を示す。IgEの定量のためのカットオフ値は、UA3−ELISA法についてはOD=0.105およびrUA3−ELISA法についてはOD=0.049であった。試料2はrUA3−ELISA法に関してのみ陽性であったことに留意されたい。これらの結果は、UA3−ELISA法(95.45%の感受性)およびrUA3−ELISA法(100%の感受性)の両方が、アニサキス種によるヒト感染の血清学的診断のための有効な方法であることを示す。
【表I】

【実施例9】
【0095】
配列番号6のポリペプチドをコードする組換えpTARGETベクターでトランスフェクトしたマウスにおける抗体の産生
この実施例では、配列番号6のポリペプチドをコードする組換えpTARGETベクターでトランスフェクトしたマウスから麻酔下で血液を採取し(実施例7参照)、ELISAプレートに固定化した配列番号4のポリペプチドで反応性IgG1抗体の存在を判定するため、得られた血清を間接ELISAにおいて検定した。ELISA法は、二次抗ヒト試薬の代わりにペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスIgG抗体(Caltag Laboratories,Burlingame,CA,USA、1:3,000希釈)を使用したことを除き、実施例8bで述べたのと同じであった。
【0096】
以下の表IIは、配列番号6のポリペプチドをコードするアニサキス・シンプレックスのDNA挿入物を含む組換えpTARGETプラスミド100μg/マウスによるワクチン接種(非経口経路)後のBALB/cマウスにおいて得られたIgG1抗体の反応を示す。免疫の1ヵ月後にマウスからの血液採取を実施した。表は、492nmで測定した(3回の独立した測定)、各々の血清についての平均吸光度値±SDを示す。
【0097】
これらの結果は、アニサキスのDNA配列(この実験では本発明の配列番号6によって示される)を含む組換えDNAワクチンが抗アニサキス抗体のインビボ誘導のために有用であり得ることを示す。ワクチンによる抗体のインビボ誘導は、a)病原菌に対する免疫防御の誘導、およびb)アレルギー反応の予防のために興味深い。
【表II】

【実施例10】
【0098】
本発明のアニサキス・シンプレックスの組換えペプチドおよびポリペプチドの標識と適用
検出可能な生体分子または化学分子による本発明のペプチドおよびポリペプチドの標識は、インビボおよびインビトロ診断および実験研究などの目的のために有用である。当業者に公知の様々な標識および方法がある(たとえばKessler(編集).Nonradioacive labeling and detection of biomoleculrs.Springer−Verlag,Berlin 1992)、Walker(編集).The protein protocols handbook.Humana Press,Totowa,New Jersey(1996))。
【0099】
本発明において使用し得る標識の種類の例は、酵素、放射性同位体、蛍光化合物、化学発光化合物、生物発光化合物および、コロイド状金およびラテックス粒子などの呈色粒子を含む発色物質を包含する。
【0100】
好ましい実施形態では、本発明のペプチドおよびポリペプチドは、32P、14C、H、35S、125Iまたは131Iで放射性標識されるが、これらに限定されない。標識ペプチドは、シンチレーション計数、ガンマ線スペクトロメトリーまたはオートラジオグラフィーなどの方法によって検出し得る。
【0101】
もう1つの好ましい実施形態では、本発明のペプチドおよびポリペプチドは、ホタルルシフェリンで標識し得る。生物発光化合物は従来の方法によって選択ペプチドまたはポリペプチドに共有結合でき、標識ペプチドまたはポリペプチドは、酵素、たとえばルシフェラーゼが、生物発光分子に光量子を放出させるATPとの反応を触媒するとき、検出され得る。
【0102】
蛍光物質も標識として広く使用される。蛍光物質の例は、フルオレセインおよび誘導体、ローダミン、テキサスレッド、フィコエリトリン、フィコシアニンその他を含む。一般に、蛍光物質分子は蛍光検出器によって検出される。
【0103】
もう1つの好ましい実施形態では、本発明のペプチドおよびポリペプチド(たとえば配列番号4のポリペプチド)はビオチンで標識され、アビジンまたはストレプトアビジンのような特異的ビオチンリガンドによって液体支持体中で捕捉され得る。ひとたび標識ポリペプチドが固体支持体(たとえばELISAプレートのウエル)上に固定化されれば、本発明の実施例8bで述べたような典型的インキュベーションおよび洗浄工程を実施することにより、選択ポリペプチドに対する抗体を検出するために使用し得る。
【0104】
代替法として、本発明のペプチドおよびポリペプチドは、酵素(たとえばペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、および適切な基質の添加後に発色または発蛍光反応を与える他の酵素)で標識し得る。選択酵素で標識されたペプチドおよびポリペプチドは、たとえば、捕捉ELISA法において前記ペプチドまたはポリペプチドを認識する特異的抗体を検出するために使用でき、前記捕捉ELISA法では、検出する抗体を、固体支持体に固定化されたもう1つ別の抗体によってまず捕捉し、標識ペプチドまたはポリペプチドおよび適切な基質を、抗体−ポリペプチド結合が形成されたことを示すために使用する。
【0105】
もう1つの好ましい実施形態では、本発明のポリペプチドおよびポリペプチドは、当業者に周知の方法に従って、側方流免疫クロマトグラフィー検定法において使用されるコロイド状金で標識し得る。たとえば様々な大きさの金粒子を生産する方法およびタンパク質と金の結合のための方法は、Dykstra(編集).A manual of applied techniques for biological electron microscopy.Plenum Press,New York(1993)に述べられている。
【0106】
さらに、もう1つの好ましい実施形態では、標識分子は磁性マイクロ粒子であり得、固定化系は磁石であり得る。
【実施例11】
【0107】
本発明のアニサキス・シンプレックス核酸分子の標識と適用
標識核酸分子は、サザントランスファー法、ノーザントランスファー法、スロットブロット法およびドットブロット法、インサイチューハイブリダイゼーション(ISH)およびマイクロアレイなどの特異的ハイブリダイゼーション法によって複雑な核酸混合物中の相補的標的配列を検出するためのプローブとして使用し得る。核酸分子を標識する方法は当分野の技術水準において周知であり、放射性物質、蛍光呈色物質、化学発光物質、マイクロ粒子、酵素、比色標識(たとえば呈色剤、コロイド状金など)、磁気標識およびハプテン(たとえばビオチン、ジオキシゲニン(DIG)および抗血清またはモノクローナル抗体が使用可能であるその他のものを含むが、これらに限定されない、種々の標識物質を使用して実施し得る。
【0108】
本発明の標識プローブは、たとえばヒトおよび/または動物感染組織中のアニサキス種DNAを検出および研究するための診断ツールとして使用し得る。
【0109】
好ましい実施形態では、本発明の選択核酸配列は、DIG標識ヌクレオチド(Boehringer−Mannheim,Germany)を用いたPCR増幅によってDIGで標識し得る。
【0110】
一例として、配列番号1のヌクレオチド1490−1971の位置に対応する、選択DIG標識ヌクレオチド配列プローブ(482塩基対)は、実施例3の形質転換pQE−31ベクターを鋳型として使用し、正プライマー(5’配列番号27 3’)と逆プライマー(5’配列番号28 3’)のセットを用いて入手し得る。感染したヒトまたは動物の生検から得た、分析しようとする組織試料を、4%パラホルムアルデヒド中に固定し、その後ISH法および上記DIG標識プローブを使用してアニサキス種DNAの存在を検出するために分析し得る。この実施例のISHを実施する方法の詳細な説明は、参照としてこの文書に組み込まれる、Leiroら(2001)によって提供されている。
【実施例12】
【0111】
アニサキス・シンプレックスペプチドおよび本発明のポリペプチドへのモノクローナル抗体US3の結合を阻害する合成ペプチド配列の分析
本発明の1つの態様では、モノクローナル抗体UA3によって認識されるペプチド配列について述べる。前記ペプチド配列は、EMBL−EBI(欧州バイオインフォマティクス研究所(European Bioinformatics Institute))の、RADARプログラム、http://www.ebi.ac.uk/Radar/を使用して配列番号2のアミノ酸配列を分析することにより、アミノ酸の「反復配列」として認識された。選択された12のアミノ酸の配列をこれらの「反復配列」から化学合成し、ELISAプレートのウエルに固定化した配列番号4の組換えポリペプチドへのUA3モノクローナル抗体の結合の阻害に関して競合ELISAにおいて検定した。
【0112】
アミノ酸配列番号7−11に対応するペプチドの阻害活性を、以下の典型的工程に従って捕捉ELISAにおいて検定した。a)ELISAプレートのウエルに配列番号4のポリペプチドを一晩結合した。b)吸引後、3%脱脂粉乳および0.2%トゥイーン20を含むTBS緩衝液(TBS−TM)を使用して37℃で1時間ELISAウエルをブロックした。c)吸引後、検定対象の阻害性ペプチドでプレインキュベートした適切な希釈のMAb UA3 100μlを使用して37℃で2時間インキュベートした。d)0.2%トゥイーン20を含むTBS(TBS−T)200μl/ウエルで3回洗浄した。e)1:3,000希釈のペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウスIgG(Nordic Immunological Laboratory,Tilburg,The Netherlands)100μlでインキュベートした。f)吸引に加え、200μl/ウエルをTBS−Tで3回洗浄した。g)吸引に加え、200μl/ウエルをPBS−Tで洗浄した。h)吸引に加え、ペルオキシダーゼ基質(Sigma Fast OPD,Sigma)でインキュベートした。i)マルチウエルリーダー(Molecular Devices)を使用して492nmで光学密度(OD)を読み取った。
【0113】
以下の表IIIは、ELISAプレートに固定化された配列番号4のポリペプチドにモノクローナル抗体UA3を結合した場合に配列番号7−11の合成ペプチド(3つの濃度で検定)について得られた阻害値を示す。結果は、対照(阻害なし)に対する各々のペプチド希釈液の阻害率として表わした。ND:実施せず。認められた結果から推定されるように、モノクローナル抗体UA3は、1個のアミノ酸だけが異なる配列番号7および8のペプチドに対して選択性を有する。
【表III】

【実施例13】
【0114】
感染患者の血清中に存在する抗アニサキスIgE抗体についての標的としての配列番号7−11の合成アミノ酸配列の重要性
もう1つの好ましい実施形態では、配列番号4のポリペプチドへのヒト抗アニサキス抗体の結合に対するアミノ酸配列(配列番号7−11)の阻害活性を以下のように間接競合ELISAにおいて検定した。a)ELISAプレートのウエルに配列番号4のポリペプチドを一晩結合した。b)吸引後、3%脱脂粉乳および0.2%トゥイーン20を含むTBS緩衝液(TBS−TM)を使用して37℃で1時間ELISAウエルをブロックした。c)吸引後、1:1希釈の対応する患者の血清100μlおよびTBS中のペプチド溶液(1.5×10−3M、上記ペプチドの各々についての最終濃度)を使用して37℃で2時間インキュベートした。d)0.2%トゥイーン20を含むTBS(TBS−T)200μl/ウエルで3回洗浄した。e)1:2,500希釈のFITC標識ヒト抗IgEモノクローナル抗体100μlでインキュベートした。f)吸引後、200μl/ウエルのTBS−Tで3回洗浄した。g)吸引後、1:1,500希釈のペルオキシダーゼ結合ウサギ抗FITC抗体(Dako)100μlでインキュベートした。h)吸引後、200μl/ウエルをPBS−Tで洗浄した。i)吸引に加え、ペルオキシダーゼ基質(Sigma Fast OPD,Sigma)でインキュベートした。j)マルチウエルリーダー(Molecular Devices)を使用して492nmで光学密度(OD)を読み取った。
【0115】
以下の表IVは、ELISAプレートに固定化された配列番号4のポリペプチドに、5名の感染患者の血清中に存在するIgE抗体を結合した場合の、配列番号7−11に対応する合成ペプチドの混合物の阻害活性を示す。ペプチド混合物は、各ペプチドについて1.5×10−3Mの最終濃度で検定した。結果は、(同じ最終濃度の無関係なペプチドの混合物で阻害された)対照に対する各々のペプチド混合物の阻害率として表わした。表に認められるように、検定した配列は、感染患者の血清中に存在するすべての抗アニサキスIgE抗体の25〜74%の範囲に関して標的であった。しかし、8以上連続する配列番号2の隣接アミノ酸、または前記配列の反復配列を含む他の組換えまたは合成ペプチドおよびポリペプチドもおそらく、感染患者の血清中に存在するいくつかのアイソタイプの抗アニサキス抗体によって認識され得る。
【表IV】

【実施例14】
【0116】
生体組織中のアニサキス幼虫の抗原の特性決定
好ましい実施形態では、本発明のペプチドまたはポリペプチドは、哺乳動物(たとえばウサギ、ヒツジ、ヤギ、マウスまたはラットなど)を免疫するために使用して良く、得られる特異的ポリクローナル抗体は、ヒトまたは動物の感染組織中のアニサキス幼虫の存在を示すために使用して良い。典型的には、寄生生物を含む組織中のアニサキスの抗原を明らかにするための手順は、以下の一般的工程に従って従来の免疫組織化学的方法によって実施し得る。a)パラフィン中に包埋された組織切片を含むスライドガラスの調製、b)TBS−TMまたは他の何らかのブロッキング試薬による組織のブロッキング、c)洗浄工程、d)抗アニサキスポリクローナル抗体とのインキュベーション、e)洗浄工程、f)免疫のために使用された動物種のIgG抗体を認識する標識二次抗体とのインキュベーション(この実施例では、好ましい標識分子はペルオキシダーゼ酵素であるが、本発明の実施例10で特定される標識など、他の任意の標識を使用して二次抗体を標識して良い)、g)洗浄工程、h)適切な酵素基質(たとえばH±DABなど)とのインキュベーション、i)顕微鏡観察。
【0117】
もう1つの好ましい実施形態では、ヒトまたは動物の感染組織中の、本発明のアミノ酸配列を含むアニサキス種タンパク質の存在は、従来の免疫組織化学的方法により、モノクローナル抗体UA3を一次抗体として使用して明らかにし得る。
【実施例15】
【0118】
本発明のモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を使用した、食品抽出物中のアニサキスの抗原の存在の検出
もう1つの好ましい実施形態では、本発明のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に対して得られるMAb(たとえばMAb UA3)およびポリクローナル抗体は、その組成物中に魚を含む食品抽出物においてアニサキスの抗原の存在を検出することを目的とした捕捉ELISA法を設計するために使用し得る。
【0119】
さらに一層好ましい実施形態では、食品抽出物におけるアニサキスの抗原の測定のための捕捉ELISA法は、以下の工程に従って実施し得る。a)抗アニサキスポリクローナル抗体(100μl/ウエル。10μg/mlの抗体濃度)を一晩結合する。b)吸引後、PBSでELISAプレートを3回洗浄する。c)吸引後、3%脱脂粉乳および0.2%トゥイーン20を含むPBS溶液(PBS−TM)を使用して37℃で1時間ELISAウエルをブロックする。d)吸引後、対応する食品抽出物100μlを使用して4℃で一晩インキュベートおよび軌道攪拌する(PBS中の試料を均質化した後に3,000gで30分間遠心分離して得られた上清)。e)0.2%トゥイーン20を含むPBS(PBS−T)200μl/ウエルで3回洗浄する。f)1:2,500希釈のビオチン標識UA3モノクローナル抗体(標識は、Wlker(1996)の参考文献に述べられているように実施した)100μlでインキュベートする。g)吸引に加え、200μl/ウエルをPBS−Tで3回洗浄する。h)吸引に加え、1:1,500のアビジン−ペルオキシダーゼ希釈液(Pierce,Rockford,IL,USA)100μlでインキュベートする。i)吸引に加え、200μl/ウエルをPBS−Tで洗浄する。j)吸引に加え、ペルオキシダーゼ基質(Sigma Fast OPD,Sigma)でインキュベーションする。k)マルチウエルリーダー(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)を使用して492nmで光学密度(OD)を読み取る。
【0120】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の群:
a.配列番号1を含む核酸、
b.配列番号1の相補物を含む核酸、
c.配列番号15または配列番号17を含む配列番号1の核酸のフラグメント、
d.抗アニサキス抗体によって認識され得る、8以上連続する配列番号2の隣接アミノ酸をコードする配列番号1のフラグメントを含む核酸、
e.抗アニサキス抗体によって認識され得る、10以上連続する配列番号2の隣接アミノ酸をコードする配列番号1のフラグメントを含む核酸、
f.抗アニサキス抗体によって認識され得る、12以上連続する配列番号2の隣接アミノ酸をコードする配列番号1のフラグメントを含む核酸、
g.上記の核酸配列のいずれかと少なくとも70%の同一性を有する核酸
から選択される単離核酸配列。
【請求項2】
以下の群:
a.配列番号2を含むポリペプチド、タンパク質、またはペプチド、
b.配列番号16または配列番号18を含む配列番号2のフラグメント、
c.抗アニサキス抗体によって認識され得る、8以上連続する隣接アミノ酸を含む配列番号2のフラグメント、
d.抗アニサキス抗体によって認識され得る、10以上連続する隣接アミノ酸を含む配列番号2のフラグメント、
e.抗アニサキス抗体によって認識され得る、12以上連続する隣接アミノ酸を含む配列番号2のフラグメント、
f.前記ポリペプチド、タンパク質またはペプチド配列のいずれかと少なくとも70%の同一性を有するポリペプチド、ペプチド、またはタンパク質
から選択される、請求項1の単離核酸配列のいずれかによってコードされる単離ポリペプチド、ペプチド、またはタンパク質。
【請求項3】
請求項2(a)〜2(e)に記載の単離ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質、もしくは請求項1(a)〜1(f)に記載の単離核酸配列であって、これらの配列のいずれかと少なくとも80%の同一性を有する、単離ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質、もしくは単離核酸配列。
【請求項4】
請求項2(a)から2(e)に記載の単離ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質。もしくは請求項1(a)〜1(f)に記載の単離核酸配列であって、これらの配列のいずれかと少なくとも90%の同一性を有する、単離ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質、もしくは単離核酸配列。
【請求項5】
以下の群:
a.配列番号7を含むアミノ酸配列、
b.配列番号8を含むアミノ酸配列、
c.配列番号9を含むアミノ酸配列、
d.配列番号10を含むアミノ酸配列、
e.配列番号11を含むアミノ酸配列、
f.配列番号12を含むアミノ酸配列、
g.配列番号13を含むアミノ酸配列、
h.配列番号14を含むアミノ酸配列
から選択される、請求項2(c)〜2(f)、3、または4のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む単離ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質。
【請求項6】
前記請求項に記載のペプチドのいずれかをコードすることができる単離核酸配列。
【請求項7】
請求項2から5のいずれかのアミノ酸配列を2つ以上含む、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質。
【請求項8】
請求項7のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質をコードする核酸配列。
【請求項9】
請求項2〜5のいずれかに記載のいずれかのペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を認識することができる抗体またはそのフラグメント。
【請求項10】
前記抗体が、寄託番号DSM ACC2793を有するハイブリドーマ細胞系によって産生されるモノクローナル抗体である、前記請求項に記載の抗体。
【請求項11】
寄託番号DSM ACC2793を有する、前記請求項に記載の抗体を産生することができるハイブリドーマ細胞系。
【請求項12】
請求項9〜10に記載の抗体のいずれかによって特異的に認識されるエピトープ。
【請求項13】
寄託番号DSM ACC2793を有するハイブリドーマ細胞系によって産生されるモノクローナル抗体によって認識される1つ以上のエピトープを含有する、アニサキス属の線虫から得られる合成、組換え、または実質的に精製されたペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質。
【請求項14】
請求項13に記載のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質をコードする核酸配列。
【請求項15】
前記核酸またはアミノ酸配列がシグナル分子で標識されている、前記請求項のいずれかに記載の単離核酸配列またはアミノ酸配列。
【請求項16】
前記標識分子が、以下の群:
a.放射性
b.酵素
c.蛍光性
d.発光性
e.化学発光性
f.ハプテン
g.呈色性
から選択される、請求項13に記載の単離核酸配列またはアミノ酸配列。
【請求項17】
前記標識分子が、以下の群:
a.ビオチンまたはその誘導体
b.ニトロフェノール誘導体
c.コロイド状金
d.ラテックス
から選択される、前記請求項に記載の単離核酸配列またはアミノ酸配列。
【請求項18】
付加的なペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に化学的に融合または結合した、請求項2〜5のいずれかに記載の単離ポリペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質。
【請求項19】
請求項1、3〜4、6〜8または13〜15のいずれかに記載のヌクレオチド配列を含む発現ベクターまたは発現系。
【請求項20】
請求項1、3〜4、6〜8、または13〜15のいずれかに記載の核酸配列で、または請求項17に記載の発現ベクターまたは発現系で形質転換またはトランスフェクトされた単離原核または真核宿主細胞。
【請求項21】
以下の手法:
a.組換え手法
b.化学合成
c.アニサキス科の線虫の実質的精製
のいずれかによって、請求項2〜5のいずれかに記載のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を作製する方法。
【請求項22】
前記ヌクレオチド配列が発現される条件下で請求項18に記載の宿主細胞を培養すること、および前記ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を生産し、その後単離することと、を含む方法。
【請求項23】
a.生物学的試料、好ましくは血清を、請求項2〜5、7、または13のいずれかのペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質と、前記ポリペプチドと前記試料中の抗体との間で免疫複合体を形成するために十分な条件下で接触させることと、
b.前記免疫複合体を検出することと、
を含む、生物学的試料中のアニサキス種に対する抗体を検出するインビトロ法。
【請求項24】
前記方法が、免疫検定法または酵素免疫検定法である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
a.生物学的試料または食品抽出物を、請求項9〜10のいずれかの抗体と、前記抗体と前記試料中の抗原との間で免疫複合体を形成するために十分な条件下で接触させることと、
b.前記免疫複合体を検出することと、
を含む、生物学的試料または食品抽出物中のアニサキス種の抗原を検出するインビトロ法。
【請求項26】
免疫複合体を形成するために使用される抗体がUA3である、請求項23に記載のインビトロ法。
【請求項27】
請求項2〜5、7のいずれかに記載のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質、もしくは請求項1、3〜4、6、8、または10のいずれかに記載のヌクレオチド配列を含む免疫学的組成物。
【請求項28】
アニサキス種に対するアレルギーの治療のための薬剤の製造における、請求項2〜5または7のいずれかに記載のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の使用。
【請求項29】
請求項2〜5、7、または13のいずれかに記載のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を含む、生物学的試料中の抗アニサキス種抗体を検出するための適切なキット。
【請求項30】
請求項9〜10のいずれかに記載の抗体またはそのフラグメントを含む、生物学的試料または食品抽出物中のアニサキス種の抗原の検出のための適切なキット。

【公表番号】特表2009−542243(P2009−542243A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518907(P2009−518907)
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際出願番号】PCT/ES2007/070130
【国際公開番号】WO2008/006927
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(509064808)
【氏名又は名称原語表記】Martinez Ubeira, Florencio
【住所又は居所原語表記】Edif.Cactus−citt−Campus Sur,E−15782 Santiago De Compostela(ES)
【Fターム(参考)】