説明

アブソーバ用シール

【課題】外部からの泥水、ダストの影響により、ダストリップ摺動面の傷付きによるシール性能の低下、及びリップの異常摩耗によるしめしろの低下の回避を図る。
【解決手段】互いに同心的に往復動可能に組み付けたハウジングと往復動軸との環状間隙を密封するものであって、前記ハウジング側に保持された環状部材の内周側に一体的に設けられ、前記往復動軸の外周面と密封接触しているオイルリップと、前記オイルリップよりも外側に位置し、前記往復動軸の外周面と密封接触しているダストリップとよりなるアブソーバ用シールにおいて、前記ダストリップの前記往復動軸との摺動面にキャンバス層を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アブソーバ用シールに係り、更に詳しくは、ショックアブソーバのロッドシール部に用いられるアブソーバ用シールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ショックアブソーバのロッドシール等として用いられるアブソーバ用シールとしては、図4に示すようなものがある。
【0003】
図4に示すアブソーバ用シールは、往復動する往復動軸200に摺動自在に密封接触するオイルリップ320及びダストリップ420と、外径側からの漏れを防止するガスケット500とが、金属材製の環状部材310に接着固定されたゴム状弾性体で形成されていた(特許文献1)。
【0004】
そして、この種従来のアブソーバ用シールにおいて、ダストリップ420は、外部からの泥水やダストが、アブソーバ内へ浸入することを阻止する機能を発揮している。
しかし、ゴム状弾性材製であるダストリップ420は、外部からの泥水、ダストの影響により、ダストリップ420摺動面の傷付きによるシール性能の低下、及びリップの異常摩耗によるしめしろの低下等の問題を惹起した。
特に、リップの摺動抵抗を下げる為に、摺動面にフッソ樹脂層を設けた態様のアブソーバ用シールにおいては、ダストリップ摺動面の傷付きによるシール性能の低下、及びリップの異常摩耗によるしめしろの低下の問題が顕著であった。(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−173797号公報
【特許文献2】特開2000−161497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなアブソーバ用シールは、外部からの泥水、ダストの影響により、ダストリップ摺動面の傷付きによるシール性能の低下、及びリップの異常摩耗によるしめしろの低下を回避すること目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のアブソーバ用シールは、互いに同心的に往復動可能に組み付けたハウジングと往復動軸との環状間隙を密封するものであって、前記ハウジング側に保持された環状部材の内周側に一体的に設けられ、前記往復動軸の外周面と密封接触しているオイルリップと、前記オイルリップよりも外側に位置し、前記往復動軸の外周面と密封接触しているダストリップとよりなるアブソーバ用シールにおいて、前記ダストリップの前記往復動軸との摺動面にキャンバス層を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
請求項1記載の発明のアブソーバ用シールによれば、外部からの泥水、ダストの影響により、ダストリップ摺動面の傷付きによるシール性能の低下、及びリップの異常摩耗によるしめしろの低下を来すことが無い。
また、請求項2記載の発明のアブソーバ用シールによれば、ダストリップの緊迫力を長期間安定して維持出来る。
【0009】
更に、請求項3記載の発明のアブソーバ用シールによれば、ダストリップの軸偏芯に対する追随性能を阻害しない。
更にまた、請求項4記載の発明のアブソーバ用シールによれば、成形コストを低く抑えることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るアブソーバ用シールの断面図である。
【図2】図1の本発明に係るアブソーバ用シールを組み込んだ状態の断面図である。
【図3】本発明に係る他の実施態様のアブソーバ用シールの断面図である。
【図4】従来技術に係る他のアブソーバ用シールの組立て状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1乃至図3に基づき発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0012】
図1及び図2において、本発明に係るアブソーバ用シールは、互いに同心的に往復動可能に組み付けたハウジング1と往復動軸2との環状間隙を密封するもので、ハウジング1側に保持された環状部材3の内周側に一体的に設けられ、往復動軸2の外周面と密封接触しているオイルリップ4と、オイルリップ4よりも外側に位置し、往復動軸2の外周面と密封接触しているダストリップ5とを備えている。
そして、このアブソーバ用シールは、図2に示すように、アブソーバに組み込まれる。
また、ダストリップ5の往復動軸2との摺動面には、キャンバス層51が設けられている。
このキャンバス層51は、ゴム状弾性材製のダストリップ5の加硫成形時に、キャンバスのゴムと接する側にゴムノリを塗布しておくことにより、一体焼付けが可能である。
更に、このキャンバスは、バイアス編みにしてあるため、ダストリップの軸偏芯に対する追随性能を阻害しない。
図3は、本発明に係る他の実施態様のアブソーバ用シールである。
図1に示した、本発明に係る実施態様のアブソーバ用シールと相違する点は、ダストリップ5にガータスプリング52を装着した点である。
このことにより、ダストリップの緊迫力を長期間安定して維持出来る。
【0013】
また、本発明は上述の発明を実施するための最良の形態に限らず本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0014】
1 ハウジング
2 往復動軸
3 環状部材
4 オイルリップ
5 ダストリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに同心的に往復動可能に組み付けたハウジング(1)と往復動軸(2)との環状間隙を密封するものであって、前記ハウジング(1)側に保持された環状部材(3)の内周側に一体的に設けられ、前記往復動軸(2)の外周面と密封接触しているオイルリップ(4)と、前記オイルリップ(4)よりも外側に位置し、前記往復動軸(2)の外周面と密封接触しているダストリップ(5)とよりなるアブソーバ用シールにおいて、前記ダストリップ(5)の前記往復動軸(2)との摺動面にキャンバス層(51)を設けたことを特徴とするアブソーバ用シール。
【請求項2】
前記ダストリップ(5)にガータスプリング(52)を装着したことを特徴とする請求項1記載のアブソーバ用シール。
【請求項3】
前記キャンバス層(51)に用いられるキャンバスがバイアス編みであることを特徴とする請求項1または2記載のアブソーバ用シール。
【請求項4】
前記キャンバス層(51)が、前記ダストリップ(5)の加硫成形時に、キャンバスが一体焼付けされることにより形成されることを特徴とする請求項1〜3いずれか一項に記載のアブソーバ用シール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−281373(P2010−281373A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134758(P2009−134758)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】