説明

アポトーシス抑制剤

【課題】新規なアポトーシス抑制剤の提供。
【解決手段】下記式(1)


で表されるインドール誘導体又はその塩を有効成分とするアポトーシス抑制剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アポトーシス抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アポトーシスは、基本的な生命現象であるが、種々の疾患の原因となること及びその疾患の症状の進行を早めることがある。例えば、神経細胞のアポトーシスは、アルツハイマー症、パーキンソン病、痴呆症、ハンチントン病及び脳虚血等の神経変性疾患の原因となること、エイズなどの疾患において生じる正常細胞(例えば、リンパ球など)の減少がアポトーシスにより生じることが知られている。
また、種々の疾患の治療によりアポトーシスが誘導され、副作用が生じることがある。例えば、放射線、紫外線又は抗がん剤を用いたがん治療において、がん細胞のみならず、正常細胞にもアポトーシスが誘導され、副作用が生じることが知られている。
【0003】
よって、アポトーシスを抑制すれば、上記のような細胞のアポトーシスによる疾患・副作用を予防・改善できるため、アポトーシスを抑制する物質の開発が行われている。
アポトーシスを抑制するタンパク質として、Bcl-2などが知られており、アポトーシスを誘導する遺伝子として、Bax、Bad、Bakなどが知られている(例えば、非特許文献1〜3参照)。
【0004】
一方、下記式(1)
【0005】
【化1】

【0006】
(R1は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキニル基、置換基を有していてもよい芳香族基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルケニルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキニルオキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアラルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基及び水酸基から選ばれる基を示し、R2は、置換基を有していてもよい炭素数1〜21のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキニル基、置換基を有していてもよい芳香族基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルケニルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキニルオキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアラルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基及び水酸基から選ばれる基を示す。)
で表されるインドール誘導体が、α2受容体遮断作用、血管拡張作用を有することが知られている(特許文献1)。
【0007】
また、R1が、置換基を有していてもよい水酸基を示し、R2が、置換基を有していてもよい炭素数1〜21のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキニル基、置換基を有していてもよい芳香族基、置換基を有していてもよいアラルキル基及び置換基を有していてもよい水酸基から選ばれる基を示す式(1)で表されるインドール誘導体が、血小板凝集阻止作用を有することが知られている(特許文献2)。
【特許文献1】特許第3964417号公報
【特許文献2】特許第3795093号公報
【非特許文献1】Cell 74, 597-608, 1993
【非特許文献2】Oncogene 13, 665-675, 1996
【非特許文献3】Genes Dev. 13, 239-252, 1999
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、新規なアポトーシス抑制剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、アポトーシスを抑制する化合物について鋭意研究したところ、下記式(1)
【0010】
【化2】

【0011】
(R1は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキニル基、置換基を有していてもよい芳香族基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルケニルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキニルオキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアラルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基及び水酸基から選ばれる基を示し、R2は、置換基を有していてもよい炭素数1〜21のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキニル基、置換基を有していてもよい芳香族基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルケニルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキニルオキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアラルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基及び水酸基から選ばれる基を示す。)
で表されるインドール誘導体が、従来知られている薬理作用とは全く相違する薬理作用である、優れたアポトーシス抑制作用を有することを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、式(1)で表されるインドール誘導体又はその塩を有効成分とするアポトーシス抑制剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
式(1)で表されるインドール誘導体又はその塩はアポトーシス抑制作用を有することから、本発明のアポトーシス抑制剤は、アルツハイマー症、パーキンソン病、痴呆症、ハンチントン病及び脳虚血等の神経変性疾患、エイズなどの疾患において生じる正常細胞の減少、心筋梗塞、動脈硬化、癌、血液再灌流障害並びに皮膚血管炎等の細胞のアポトーシスによる種々の疾患、並びに放射線等の紫外線又は抗がん剤を用いたがん治療の副作用等の細胞のアポトーシスによる副作用を予防・改善する医薬又は医薬部外品として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のアポトーシス抑制剤の有効成分は、式(1)で表されるインドール誘導体である。
式(1)中、R1で示される炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
【0015】
式(1)中、R1で示される炭素数2〜6のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基が挙げられる。
【0016】
式(1)中、R1で示される炭素数2〜6のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル(プロパルギル)基、3−ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基が挙げられる。
【0017】
式(1)中、R1で示される芳香族基としては、炭素数6〜14の芳香族基が好ましく、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基;フリル基、チエニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、キノリル基、イソキノリル基等の芳香族複素環基が挙げられる。
【0018】
式(1)中、R1で示されるアラルキル基としては、総炭素数7〜20のアラルキル基が好ましく、例えばベンジル基、フェネチル基が挙げられる。
【0019】
式(1)中、R1で示されるアシル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基(プロパノイル基)、ブチリル基(ブタノイル基)、バレリル基(ペンタノイル基)、ヘキサノイル基等の炭素数1〜6の脂肪族アシル基;ベンゾイル基、トルオイル基等の総炭素数7〜15の芳香族アシル基(アロイル基)が挙げられる。
【0020】
式(1)中、R1で示されるアリールスルホニル基としては、炭素数6〜14のアリールスルホニル基が好ましく、例えば、フェニルスルホニル基(ベンゼンスルホニル基)、p−トルエンスルホニル(トシル)基、ナフタレンスルホニル基等の芳香族炭化水素−スルホニル基;フランスルホニル基、チオフェンスルホニル基、ピロールスルホニル基、オキサゾールスルホニル基、イソオキサゾールスルホニル基、チアゾールスルホニル基、イソチアゾールスルホニル基、イミダゾールスルホニル基、ピラゾールスルホニル基、ピリジンスルホニル基、ピリミジンスルホニル基、ピリダジンスルホニル基、ピラジンスルホニル基、キノリンスルホニル基、イソキノリンスルホニル基等の芳香族複素環−スルホニル基が挙げられる。
【0021】
式(1)中、R1で示される炭素数1〜6のアルキルスルホニル基としては、例えば、メタンスルホニル(メシル)基、エタンスルホニル基が挙げられる。
【0022】
式(1)中、R1で示される炭素数1〜6のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基が挙げられる。
【0023】
式(1)中、R1で示される炭素数2〜6のアルケニルオキシ基としては、例えば、ビニルオキシ基、1−プロペニルオキシ基、アリルオキシ基、1−ブテニルオキシ基、2−ブテニルオキシ基、ペンテニルオキシ基、ヘキセニルオキシ基が挙げられる。
【0024】
式(1)中、R1で示される炭素数2〜6のアルキニルオキシ基としては、例えば、エチニルオキシ基、1−プロピニルオキシ基、プロパルギルオキシ基が挙げられる。
【0025】
式(1)中、R1で示されるアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等の芳香族炭化水素−オキシ基;フリルオキシ基、チエニルオキシ基、ピロリルオキシ基、オキサゾリルオキシ基、イソオキサゾリルオキシ基、チアゾリルオキシ基、イソチアゾリルオキシ基、イミダゾリルオキシ基、ピラゾリルオキシ基、ピリジルオキシ基、ピリミジニルオキシ基、ピリダジニルオキシ基、ピラジニルオキシ基、キノリルオキシ基、イソキノリルオキシ基等の芳香族複素環−オキシ基が挙げられる。
【0026】
式(1)中、R1で示されるアラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基が挙げられる。
【0027】
式(1)中、R1で示されるアシルオキシ基としては、例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、プロパノイルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基等のC1-6−脂肪族アシルオキシ基;ベンゾイルオキシ基、トルオイルオキシ基等のアロイルオキシ基が挙げられる。
【0028】
式(1)中、R2で示される炭素数1〜21のアルキル基としては、直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられ、アポトーシス抑制作用の点で、炭素数1〜9のアルキル基が好ましい。
【0029】
式(1)中、R2で示される炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、芳香族基、アラルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜6のアルケニルオキシ基、炭素数2〜6のアルキニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基及びアシルオキシ基としては、R1と同様である。
【0030】
また、本発明において、置換基としては、例えば、上記と同様の芳香族基、上記と同様の炭素数1〜6のアルキル基、上記と同様の炭素数2〜6のアルケニル基、上記と同様の炭素数2〜6のアルキニル基、上記と同様のアシル基、上記と同様のアラルキル基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、上記と同様の炭素数1〜6のアルコキシ基等から選ばれる1以上の置換基が挙げられる。
【0031】
上記置換基のうち、R1で示される炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基及び炭素数1〜6のアルキルスルホニル基並びにR2で示される炭素数1〜21のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、芳香族基、アラルキル基及びアルコキシ基に置換してもよい置換基としては、芳香族基、アシル基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基等から選ばれる1以上の置換基が好ましい。
【0032】
また、上記置換基のうち、R1で示される芳香族基、アラルキル基、アシル基及びアリールスルホニル基に置換していてもよい置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基等から選ばれる1以上の置換基が好ましい。
【0033】
また、上記置換基のうち、R2で示されるアミノ基に置換していてもよい置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、アラルキル基、アシル基等から選ばれる1以上の置換基が好ましい。
【0034】
また、本発明において、R1としては、水素原子及び水酸基が好ましく、水素原子がより好ましい、R2としては、ノニル基及びメトキシ基が好ましく、ノニル基がより好ましい。
【0035】
すなわち、本発明において、式(1)で表されるインドール誘導体としては、アポトーシス抑制作用の点で、1−ヒドロキシ−N−メトキシカルボニルトリプタミン及びN-ノニルトリプタミンが好ましく、N−ノニルトリプタミンが特に好ましい。
【0036】
式(1)で表されるインドール誘導体の塩としては、薬学的に許容される塩であればよく、例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、ピロ硫酸塩、メタリン酸塩等の無機酸塩;クエン酸塩、安息香酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、スルホン酸塩(例えば、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩)等の有機酸塩が挙げられる。また、式(1)で表されるインドール誘導体がフェノール性水酸基又はカルボキシル基を有する場合は、当該塩は、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩であってもよい。
【0037】
本発明の式(1)で表されるインドール誘導体は、例えば、特許文献1及び2記載の方法により得ることができる。
【0038】
式(1)で表されるインドール誘導体及びその塩は、後記実施例に示すとおり、優れたアポトーシス抑制作用を有する。
従って、当該式(1)で表されるインドール誘導体又はその塩を有効成分とするアポトーシス抑制剤は、アルツハイマー症、パーキンソン病、痴呆症、ハンチントン病及び脳虚血等の神経変性疾患、エイズなどの疾患において生じる正常細胞の減少、心筋梗塞、動脈硬化、癌、血液再灌流障害並びに皮膚血管炎等の細胞のアポトーシスによる種々の疾患、並びに放射線等の紫外線又は抗がん剤を用いたがん治療の副作用等の細胞のアポトーシスによる副作用を予防・改善するための医薬品又は医薬部外品として有用である。
【0039】
医薬品、医薬部外品として使用する場合、本発明アポトーシス抑制剤は、任意の投与形態で投与することができる。投与形態としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、糖衣錠、丸剤、細粒剤、散剤、粉剤、徐放性製剤、懸濁液、エマルジョン剤、シロップ剤、液剤及びエリキシル剤等の経口剤;静脈内注射用、筋肉内注射用、皮下注射用若しくは点滴注射用等の注射剤、塗布剤若しくは貼付剤等の外用剤、坐剤、輸液、経皮、経粘膜、経鼻、吸入及びポーラス等の非経口剤が挙げられる。
【0040】
また、医薬品又は医薬部外品として使用する場合の製剤は、常法によって製造でき、本発明の式(1)で表されるインドール誘導体又はその塩を単独で使用してもよく、薬学的に許容される担体と組み合わせて使用してもよい。当該薬学的に許容される担体としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料、希釈剤、殺菌剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、乳化剤、防腐剤、安定化剤、吸収助剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、保湿剤、増粘剤、光沢剤、活性増強剤、抗炎症剤、殺菌剤、等張化剤、無痛化剤、矯味剤、矯臭剤等が挙げられる。
【0041】
結合剤としては、例えば、デンプン、デキストリン、アラビアゴム末、ゼラチン、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴールが挙げられる。
【0042】
崩壊剤としては、例えば、デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。
【0043】
界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリソルベ-ト80が挙げられる。
滑沢剤としては、例えば、タルク、ロウ類、水素添加植物油、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ポリエチレングリコールが挙げられる。
流動性促進剤としては、例えば、軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムが挙げられる。
【0044】
希釈剤としては、例えば、注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、オリブ油、ゴマ油、ラッカセイ油、ダイズ油、トウモロコシ油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールが挙げられる。
【0045】
また、剤形が経口剤の場合の製造法の好適な具体例としては、デンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等を用いて常法に従って製造する方法が挙げられる。剤形が注射剤の場合の製造法の好適な具体例としては、希釈剤を組み合わせて、殺菌剤、防腐剤、安定化剤を加え、バイアル等に充填後冷凍し、通常の凍結乾燥技術により水分を除去し、使用直前に凍結乾燥物から液剤を再調製する方法が挙げられる。
【0046】
上記製剤中の本発明の式(1)で表されるインドール誘導体又はその塩の含有量は、0.1〜100質量%とするのが好ましい。
また、本発明のアポトーシス抑制剤を経口剤として使用する場合、患者の年令、体重、疾患の程度により異なるが、成人1人当たりの1日の投与量は、式(1)で表されるインドール誘導体又はその塩として、例えば1〜200mgとすればよく、1日数回に分けての服用が適当である。
また、本発明のアポトーシス抑制剤を非経口剤として使用する場合、患者の年令、体重、疾患の程度により異なるが、成人1人当たりの1日の投与量は、式(1)で表されるインドール誘導体又はその塩として、例えば1〜50mgとすればよい。
【実施例】
【0047】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。
【0048】
1)インドール誘導体の調製
本試験ではN−ノニルトリプタミン(図中にはインドール誘導体Aで示した。)及び1−ヒドロキシ−N−メトキシカルボニルトリプタミン(図中にはインドール誘導体Bで示した。)を用いた。
合成方法は特許文献1および2に記載の方法に従った。
合成した化合物はDimethyl sulfoxide に10-2Mで溶解したものを Stock Solutionとし、これを最終濃度が10-6M〜10-11Mになるように細胞培養液に添加した。また、インドール誘導体非添加の培養系にはDimethyl sulfoxideのみを添加した(図中にはコントロールとして示した)。
【0049】
2)細胞および培養
本試験ではラット骨肉腫由来の培養細胞株であるROS17/2.8を用いた。細胞は10%FBS(JRH)、100U/ml Penicillin (GIBCO)、100μg/ml streptomycin (GIBCO)を含むα−MEM(Wako)で培養した。細胞培養は通法に従い、37℃、5% CO2の条件下で行った。コンフルエント状態になるまでの培地の交換は2日ごとに行った。
【0050】
3)細胞数の測定
細胞を96-ウェルプレートに各ウェル1200個の細胞密度になるように播種し、コンフルエントになるまで前述の条件で前培養した(培地量は100μl/ウェル)。その後、培地にインドール誘導体を添加(濃度は図中に記載)、あるいは非添加の条件で1日〜5日間培養した。
コンフルエント後の培養では、アポトーシスを誘導するため、培地の交換は行わなかった。
培養後、各ウェルに水溶性テトラゾリウム塩*(同仁化学:Cell Counting Kit-8)を10μlづつ添加し、37℃、5% CO2の条件下で1時間呈色反応を行った。その後、マイクロプレートリーダーで450nmの吸光度を測定した。
*(水溶性テトラゾリウム塩は細胞中の脱水素酵素によって還元され、460nm付近に極大吸収をもつ水溶性ホルマザンを生じる。このため、細胞内脱水素酵素活性に応じて生産されるホルマザン色素の量は生細胞数に比例する。)
【0051】
4)細胞の観察
細胞はOlympus社の光学顕微鏡 (AX80) を用いて観察し、撮影はOlympus社のデジタルカメラ(CAMDIA C-4040 ZOOM)を用いて行った。
【0052】
5)リアルタイムRT−PCRによるmRNA発現量の測定
RNA抽出
6ウェルプレートでコンフルエントになるまで培養した細胞について、培地にインドール誘導体を添加(濃度は図中に記載)、あるいは非添加の条件でさらに48時間培養した。
培養後、培地を除去し、トライゾール(Invitrogen)を1 ml 加え、撹拌し、溶液を1.5mlチューブに移した。クロロホルムを200μl加えて30 秒間激しく撹拌し、15000 rpm で15 分間遠心した。上清400 μl を新しいチューブに移し、イソプロパノール400 μlを加えて振とうした後、5 分間室温で放置した。 15000 rpm ×15 min で遠心した後、上清を捨て、沈殿物を70 %エタノール1 mlで洗浄した。エタノール除去後、残留物(total RNA)に50μlの滅菌処理蒸留水を加え、溶解した。
【0053】
cDNA合成
2μg total RNAに200ng random primer、2.5mM each dNTP mixを加え、滅菌処理蒸留水で総量12 μlに調整した。60 ℃で10 分間加温後、氷冷した。5×First strand buffer (Invitrogen) 4μl、0.1 M DTT 2 μl、RNaseOUT (Invitrogen) 1μlを加えて攪拌後、室温で2分置いた。Reverse transcriptase (Invitrogen) 1 μl を加えて25 ℃で10 分間、42℃50分間、70℃15分間インキュベートした。
【0054】
リアルタイム‐RT-PCR
合成したcDNAを鋳型に下記試薬を調整した。
cDNA 0.1μl
Forward primer (10μM) 0.5μl
Reverse primer (10μM) 0.5μl
SYBER Premix EX Taq (TaKaRa) 12.5μl
H2O 10.5μl
Total 25μl
【0055】
2ステップPCRはSmart Cycler II System (TaKaRa)を使用して,95℃ 3秒間,60℃ 20秒間のサイクルで行った。内部標準遺伝子としてGAPDHの発現値を用いてターゲット 遺伝子の相対的な発現量を算出した。リアルタイムRT-PCRに用いたプライマー配列を以下に示す。
【0056】
Bcl-2 Fw 5'- TGTCCAGTCAGCTGCA-3'(配列番号1)
Bcl-2 Rv 5'- TGACCCCACCGAACTCA-3'(配列番号2)

Bax Fw 5'- GGGTGGCAGCTGACATGTTT-3'(配列番号3)
Bax Rw 5'- CGCTCACGGAGGAAGTCCAG-3'(配列番号4)
【0057】
Bad Fw 5'- CTCGCTGGCTCCTGCACACG-3'(配列番号5)
Bad Rv 5'- GCGTCTTCCTGCTCACTCGG-3'(配列番号6)
【0058】
Bak Fw 5'- GCTTCAGCCCACCGCTGGGA-3'(配列番号7)
Bak Rw 5'- CACGCTGGTAGACATACAGG-3'(配列番号8)
【0059】
GAPDH Fw 5'- GTGAAGGTCGGTGTGAACGG-3'(配列番号9)
GAPDH Rv 5'- GAGTCATACTGGAACATGTAG-3(配列番号10)
【0060】
データ分析
本試験では、3回の実験結果から標準偏差を算出した。また、各コントロール実験とのデータの比較ではStudent's t-testによる有意差検定を行い、 p 値が0.05未満の場合に有意差を認め、図中に*で示した。p 値が0.05以上の場合には図中に#で示した。
【0061】
6)結果
アポトーシスに対するインドール誘導体の影響の結果を図1及び2に示す。
それぞれのインドール誘導体を10-7M、および10-9Mの濃度で添加したウェルで培養した細胞は、非添加で培養した細胞と比較して、培養4日目〜5日目において、顕著に生細胞数の減少が抑制された。これは、インドール誘導体の作用により、飢餓状態によるアポトーシスの誘導が抑制されたことを示している。
アポトーシス抑制遺伝子およびアポトーシス誘導遺伝子の発現量に対するインドール誘導体の影響を図3〜6に示す。インドール誘導体を10-7Mの濃度で添加したウェルで培養した細胞では、非添加で培養した細胞と比較して、アポトーシス抑制遺伝子であるBcl-2のmRNAの発現量が増加し、アポトーシス誘導遺伝子であるBax、BakおよびBadのmRNAの発現量が減少した。
これらの結果は、インドール誘導体がアポトーシスの抑制に効果的であることを示している。さらに、このインドール誘導体のアポトーシス抑制効果はBcl-2のmRNAの発現を誘発し、Bax,BakおよびBadのmRNAの発現量を抑制することによると考えられる。
すなわち、インドール誘導体は、アポト-シス抑制剤として有用であり、アルツハイマー症、パーキンソン病、痴呆症、ハンチントン病及び脳虚血等の神経変性疾患、エイズなどの疾患において生じる正常細胞の減少、筋梗塞、動脈硬化、癌、血液再灌流障害並びに皮膚血管炎等の細胞のアポトーシスによる種々の疾患、並びに放射線等の紫外線又は抗がん剤を用いたがん治療の副作用等の細胞のアポトーシスによる副作用に対して有用である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】アポトーシスに対するインドール誘導体Aの影響を示す図である。
【図2】アポトーシスに対するインドール誘導体Bの影響を示す図である。
【図3】アポトーシス抑制遺伝子の発現量に対するインドール誘導体の影響を示す図である。
【図4】アポトーシス誘導遺伝子の発現量に対するインドール誘導体の影響を示す図である。
【図5】アポトーシス誘導遺伝子の発現量に対するインドール誘導体の影響を示す図である。
【図6】アポトーシス誘導遺伝子の発現量に対するインドール誘導体の影響を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

(R1は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキニル基、置換基を有していてもよい芳香族基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルケニルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキニルオキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアラルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基及び水酸基から選ばれる基を示し、R2は、置換基を有していてもよい炭素数1〜21のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキニル基、置換基を有していてもよい芳香族基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルケニルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキニルオキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアラルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基及び水酸基から選ばれる基を示す。)
で表されるインドール誘導体又はその塩を有効成分とするアポトーシス抑制剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−47500(P2010−47500A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212044(P2008−212044)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【Fターム(参考)】