説明

アポトーシス阻害タンパク質のアンタゴニストに対する感受性のバイオマーカーとしてTNFα遺伝子の発現を用いる方法

TNFα遺伝子の発現は、アポトーシス阻害タンパク質(IAP)のアンタゴニストに対する細胞の感受性のバイオマーカーとして使用することができる。本発明の方法は、様々な悪性もしくは良性の腫瘍、良性増殖性疾患、または自己免疫疾患を処置するためのIAPアンタゴニストの投与から恩恵を受け得る患者を同定するための、患者のスクリーニングに有用である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年5月7日に出願された米国特許仮出願第60/916,426号の恩典を主張し、これを参照により組み入れる。
【0002】
発明の分野
本発明は、アポトーシス阻害タンパク質(IAP)のアンタゴニストに対する、腫瘍細胞および炎症細胞などの疾患に関連する細胞を含む異常に増殖する細胞の感受性のバイオマーカーとして、TNFα遺伝子の発現をアッセイすることに関する。
【発明の概要】
【0003】
本発明の一つの態様は、ある細胞集団中の細胞においてアポトーシスを誘導する方法である。この方法は、腫瘍壊死因子α(TNFα)遺伝子の発現の可能性を判定するために、ある細胞集団の第1の試料をインビトロでアッセイする段階を含む。第1の試料においてTNFα遺伝子の発現が検出された場合、この細胞集団を、IAPアンタゴニストとインビトロで接触させる。この細胞集団は細胞株であり得る。
【0004】
本発明のもう一つの態様は、IAPアンタゴニストに対する細胞の感受性を判定する方法である。この方法は、TNFα遺伝子の発現の可能性について細胞をアッセイする段階を含む。TNFα遺伝子の発現が検出された場合、この細胞は、IAPアンタゴニストに対して感受性であると同定される。
【0005】
本発明のもう一つの態様は、IAPアンタゴニストを用いた処置に対する、異常に増殖している細胞の感受性を予測する方法である。この方法は、TNFα遺伝子の発現の可能性について、異常に増殖している細胞の試料をアッセイする段階を含む。この異常に増殖している細胞がTNFα遺伝子を発現する場合、この細胞はIAPアンタゴニストを用いた処置に対して感受性であると同定される。
【0006】
本発明のもう一つの態様は、アポトーシスを誘導する方法である。この方法は、TNFα遺伝子の発現の可能性を判定するために、ある細胞集団の細胞をアッセイする段階を含む。TNFα遺伝子の発現が検出された場合、この細胞集団を、IAPアンタゴニストと接触させる。
【0007】
本発明のもう一つの態様は、増殖性障害を処置する方法である。この方法は、TNFα遺伝子を発現する可能性を細胞が有しているかどうかを判定するために、患者から得た病的に増殖している細胞をサンプリングする段階を含む。TNFα遺伝子を発現する可能性が検出された場合、IAPアンタゴニストは患者に投与される。TNFα遺伝子を発現する可能性が検出されなかった場合、代替の治療が患者に施される。
【0008】
本発明のもう一つの態様は、IAPアンタゴニストを用いた処置から恩恵を受け得る患者に関して、患者をスクリーニングする方法である。この方法は、TNFα遺伝子の発現の可能性について、患者から得た異常に増殖している細胞をアッセイする段階、および、発現が検出された場合、患者がIAPアンタゴニストを用いた処置から恩恵を受けるであろうか判定する段階を含む。いくつかの態様において、患者はIAPアンタゴニストを用いて処置される。
【0009】
本発明のもう一つの態様は、IAPアンタゴニストに対する細胞の感受性を判定する方法である。この方法は、核因子κB(NF-kB)に応答してTNFα遺伝子を発現する可能性を判定するために細胞をアッセイする段階を含む。TNFα遺伝子の発現の可能性が検出された場合、この細胞は、IAPアンタゴニストに対して感受性であると同定される。いくつかの態様において、細胞中のTNFα mRNAの存在を判定することにより、TNFα遺伝子を発現する可能性がアッセイされる。
【0010】
本発明のもう一つの態様は、IAPアンタゴニストに対する細胞の感受性を判定する方法である。この方法は、TNFα遺伝子プロモーターがメチル化されているかどうか判定する段階を含む。メチル化が検出されなかった場合、この細胞は、IAPアンタゴニストに対して感受性であると同定される。
【0011】
本発明のもう一つの態様は、IAPアンタゴニストに対する細胞の感受性を判定する方法である。この方法は、突然変異について、細胞試料中のTNFα遺伝子のプロモーター内のNF-κB応答エレメントをアッセイする段階を含む。突然変異が検出されなかった場合、この細胞は、IAPアンタゴニストに対して感受性であると同定される。
【0012】
本発明のもう一つの態様は、病的な増殖が起こっている細胞がTNFα遺伝子を発現する可能性を有していると判定された患者において増殖性障害を処置するための、IAPアンタゴニストの使用である。
【0013】
上記の態様において、細胞は、生検細胞、患者から得た生検細胞を含む、例えば腫瘍細胞、または自己免疫障害において異常に増殖している細胞である。
【0014】
上記の態様において、TNFα遺伝子の発現についてアッセイする前に細胞をサイトカインまたは増殖因子と接触させてもよい。腫瘍壊死因子α遺伝子の発現は、例えばTNFαタンパク質を検出することによって判定され得る。遺伝子の発現は、TNFαのmRNAを検出することによって判定可能である。
【0015】
上記のいくつかの態様において、IAPアンタゴニストは、細胞性アポトーシス阻害タンパク質(cellular inhibitor of apoptosis protein)1(cIAP-1)および細胞性アポトーシス阻害タンパク質2(cIAP-2)の少なくとも一つに対して結合親和性を有しており、この結合親和性は、IAPアンタゴニストの、X連鎖アポトーシス阻害タンパク質(XIAP)に対する結合親和性よりも大きい。いくつかの態様において、IAPアンタゴニストの結合親和性は、cIAP-1に対する親和性がXIAPに対する親和性よりも少なくとも3倍大きい。他の態様において、cIAP-1に対するIAPアンタゴニストの結合親和性は、XIAPに対する親和性よりも少なくとも100倍大きい。さらに別の態様において、IAPアンタゴニストは細胞性のIAPアンタゴニストおよびXIAPアンタゴニストである。
【0016】
上記のいくつかの態様において、IAPアンタゴニストは、cIAP-1およびcIAP-2の少なくとも1つに対するIAPアンタゴニストの結合親和性よりも大きい、XIAPに対する結合親和性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】OVCAR-8細胞における、IAPアンタゴニスト化合物Cの典型的なCC50曲線を示す。「CC50」は、50%の細胞が死ぬ濃度である。
【図2】SKOV3細胞における、IAPアンタゴニスト化合物Cの典型的なCC50曲線を示す。
【図3】IAPアンタゴニスト(化合物C)に対する細胞の応答に相関する、様々な細胞株によって3日間にわたって培養用培地中に分泌された、TNFαタンパク質の平均レベルを示す棒グラフである。μMで示された各細胞株のCC50は、X軸上の括弧内に示されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
本発明は、アポトーシス阻害タンパク質のアンタゴニスト(IAPアンタゴニスト)を用いた処置に対する細胞の感受性を予測する方法を提供する。IAPアンタゴニストに応答して細胞にアポトーシスが起こる場合、この細胞は、IAPアンタゴニストに対して感受性である。本発明の方法は、アポトーシスが起こることにより、IAPアンタゴニストに対して応答する可能性がより高い細胞を予測するのに有用である。この方法は、実験室または臨床状況のいずれかにおいて使用され得る。
【0019】
本発明の方法は、様々な良性腫瘍もしくは悪性腫瘍(がん)、良性増殖性疾患(例えば、乾癬、良性前立腺肥大症、および再狭窄)、または自己免疫疾患(例えば、自己免疫性増殖性糸球体腎炎、リンパ組織増殖性自己免疫性応答)を処置するためのIAPアンタゴニスト投与から恩恵を受け得る患者を同定するための、患者のスクリーニングに特に有用である。IAPアンタゴニストを用いて処置され得るがんには以下のうちの一つまたは複数が含まれるがこれらに限定はされない:肺腺癌、膵臓癌、大腸癌、卵巣癌、乳癌、中皮腫、末梢神経腫、膀胱癌、グリア芽細胞腫、黒色腫、副腎皮質癌腫、AIDS関連リンパ腫、肛門癌、膀胱癌、髄膜腫、神経膠腫、星状細胞腫、乳癌、子宮頚癌、慢性骨髄増殖性疾患(例えば、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病)、大腸癌、内分泌性がん、子宮内膜癌、上衣細胞腫、食道癌、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外生殖細胞腫瘍、肝臓外胆管癌、胆嚢癌、胃癌、消化管類癌腫、妊娠性絨毛腫瘍、ヘアリーセル白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、眼内黒色腫、島細胞癌、カポージ肉腫、喉頭癌、白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、口唇癌、口腔癌、肝臓癌、男性乳房癌、悪性中皮腫、髄芽細胞腫、黒色腫、メルケル細胞癌腫、転移性扁平頸部癌、多発性骨髄腫および他のプラスマ細胞新生物、菌状息肉腫およびセザール症候群、骨髄異形成症候群、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、口腔咽頭癌、骨肉腫および骨の悪性線維性組織球腫を含む骨癌、卵巣上皮癌、卵巣生殖細胞腫、卵巣低悪性度腫瘍(low malignant potential tumor)、膵臓癌、副鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、皮膚癌、小腸癌、軟部組織肉腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍(supratentorial primitive neuroectodermal tumor)、松果体芽細胞腫、精巣癌、胸腺腫、胸腺癌、甲状腺癌、腎盂および尿管の移行細胞癌、尿道癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌、ならびにウィルムス腫瘍および他の小児期腎臓腫瘍。
【0020】
本発明のいくつかの方法は、TNFα遺伝子の発現またはTNFα遺伝子発現の可能性について細胞をアッセイする段階を含む。TNFα遺伝子を発現する細胞またはTNFα遺伝子を発現する可能性を有する細胞は、一種または複数種のIAPアンタゴニストに対して感受性である。TNFα遺伝子の発現は、当技術分野において公知の任意の手法によりアッセイ可能である。いくつかの態様において、遺伝子の発現は、TNFαタンパク質を検出することによってアッセイされる。ヒトTNFαのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:2に示されている。TNFαタンパク質(例えば、分泌された、細胞中に含有されている、細胞表面上に発現されているTNFαタンパク質)は、例えば、様々なイムノアッセイ(ELISA、ウエスタンブロット、フローサイトメトリー、放射免疫アッセイ法等)を使用して検出することが可能である。他の態様において、遺伝子の発現は、TNFαのmRNAを検出することにより(例えば、ノーザンブロット、ドットブロット、RT-PCR等により)アッセイされる。ヒトTNFαのmRNAの配列は、SEQ ID NO:1に示されている。任意の検出可能なレベルのTNFαタンパク質またはmRNAを産生する細胞は、TNFα遺伝子を発現する細胞であるが、検出され得る遺伝子発現レベルは使用したアッセイ法に依存すると考えられる。
【0021】
いくつかの態様において、IAPアンタゴニストに対して応答する細胞は、培養用培地中にTNFαタンパク質を約3 pg/mlよりも高いレベルで分泌する。このようなインビトロのアッセイにおいて分泌されたTNFαのレベルは、約3 pg/ml〜約14 pg/mlの範囲(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14 pg/ml)であり得る。培養用培地の収集およびアッセイに有用な時点は、1日目、2日目、および3日目を含む。実施例3および図3を参照されたい。
【0022】
TNFα遺伝子の発現について、任意の細胞型をアッセイすることが可能である。細胞は、初代細胞(例えば、患者から得た生検細胞)または細胞株であり得る。特に関心の高いものは、病的に増殖し、疾患症状を引き起こすまたはこれをもたらす細胞を含む、異常に増殖する細胞である。異常に増殖する細胞は、例えば、がん、良性増殖性障害、および自己免疫疾患において発生する。
【0023】
NF-κBに応答してTNFα遺伝子を発現する可能性を有する細胞は、一種または複数種のIAPアンタゴニストに対して感受性である。したがって、いくつかの態様では、TNFα遺伝子の発現についてアッセイする前にNF-κB経路を刺激するために、サイトカインまたは増殖因子(例えば、インターロイキン-1、インターロイキン-6、インターフェロンγ、腫瘍壊死因子、またはトランスフォーミング増殖因子β)と細胞を接触させる。サイトカインに応答してTNFαを発現する細胞の能力は、IAPアンタゴニストに対する細胞の感受性を予測させるものである。遺伝子を発現する可能性は、例えば、細胞中のTNFα mRNAの存在を判定することによりアッセイ可能である。
【0024】
TNFα遺伝子を発現する可能性はまた、TNFα遺伝子プロモーターがメチル化されているかどうかを判定することにより、または突然変異についてTNFα遺伝子のプロモーター内のNF-κB応答エレメントをアッセイすることにより、評価することが可能である。NF-κB応答エレメントにおける突然変異またはメチル化事象の欠如は、IAPアンタゴニストに応答して細胞にアポトーシスが起こる可能性があることを予測させる。TNFαプロモーターにおけるメチル化または突然変異の存在は、IAPアンタゴニストが有効ではないことを示し得る。TNFαコード配列における突然変異は、IAPアンタゴニストに対する応答性の欠如も示し得る。
【0025】
本発明のいくつかの態様は、細胞、特に病的に増殖している細胞のアポトーシスを誘導する段階を含む。この方法は、インビトロまたはインビボで行うことが可能であり、IAPアンタゴニストを用いた患者の処置を含み得る。このような処置には、単一のIAPアンタゴニストの投与、IAPアンタゴニストの組み合わせの投与、または一種または複数種のIAPアンタゴニストと一種または複数種の化学療法剤の投与が含まれてもよい。複数の剤の投与は、同時にまたは順番に行ってもよい。有用な化学療法剤には次のものが含まれるがこれらに限定はされない:アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、メクロレタミン、クロラムブチル、メルファラン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、バルルビシン)、細胞骨格ディスラプター(cytoskeletal disruptor)(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル)、エポチロン(例えば、エポチロンA、エポチロンB、エポチロンD)、トポイソメラーゼII型の阻害因子(例えば、エトポシド、テニポシド、タフルポシド(tafluposide))、ヌクレオチド類似体前駆物質類似体(例えば、アザシチジン、アザチオプリン、カペシタビン、シタラビン、ドキシフルリジン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、メルカプトプリン、メトトレキサート、チオグアニン)、ペプチド抗生物質(例えば、ブレオマイシン)、白金ベースの剤(例えば、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン)、レチノイド(例えば、オール-トランスレチノイン酸)、ならびにビンカアルカロイドおよび誘導体(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン)。いくつかの態様において、化学療法剤は次ものを含む:フルダラビン、ドキソルビシン、パクリタクセル、ドセタキセル、カンプトテシン、エトポシド、トポテカン、イリノテカン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、アムサクリン、ミトキサントロン、5-フルオロ-ウラシル、またはゲムシタビン。
【0026】
IAPアンタゴニスト
本発明における使用のためのIAPアンタゴニストは、細胞性IAP(cIAP、例えばcIAP-1またはcIAP-2)またはX連鎖IAP(XIAP)などの一種または複数種のIAPに結合して活性を阻害する任意の分子である。いくつかの態様において、IAPアンタゴニストは、XIAP に結合する親和性よりも高い親和性でcIAP-1およびcIAP-2に結合する。いくつかの態様において、IAPアンタゴニストは、XIAPに対する親和性よりも少なくとも3倍高い親和性でcIAP-1に結合し、その他の場合、IAPアンタゴニストは、XIAPに対する親和性よりも少なくとも100倍高い親和性でcIAP-1に結合する。さらに別の態様において、IAPアンタゴニストはXIAPアンタゴニストでもあり;これらのアンタゴニストのいくつかはcIAPに対する親和性よりも高い親和性でXIAPに結合する。いくつかの態様において、IAPアンタゴニストはSmac(second mitochondrial activator of caspases)の模倣物であり、特定の態様において、このSmac模倣物は、成熟SmacのN末端の4アミノ酸(Ala-Val-Pro-Ile)の模倣物またはペプチド模倣物、または、より一般には、Xaa がPhe、Tyr、Ile、またはValであり、好ましくはPheまたはIleである、Ala-Val-Pro-Xaaである。
【0027】
多くのIAPアンタゴニストが、当技術分野において公知である。特定の態様において、IAPアンタゴニストは、以下の構造を有する化合物Aである。

【0028】
他の態様において、IAPアンタゴニストは、以下の構造を有する化合物Cである。

【0029】
本発明において有用なIAPアンタゴニストの他の例は次に開示されているものを含むが、これらに限定されない:US 2006/0025347; US 2006/0194741; US 2007/0042428; US 2006/0128632; US 2006/0052311; US 2005/0261203; WO 2005/069888; WO 2005/069894; US 2005/0234042; US 2006/0014700; WO 2006/010118; WO 2006/122408; US 2006/0167066; WO 2006/017295; WO 2006/133147; WO 2006/128455; WO 2006/091972; WO 2006/020060; WO 2006/014361; WO 2006/097791; WO 2005/094818; WO 2008/045905; WO 2008/016893; WO 2007/136921; WO 2007/021825; WO 2007/130626; WO 2007/106192; およびWO 2007/101347。
【0030】
いくつかの態様において、IAPアンタゴニスト含む薬学的組成物は、ヒトまたは獣医学的処置対象(veterinary patient)に投与される。この薬学的組成物は典型的に、薬学的に許容される担体または希釈剤を含み、かつ全身的、局所的、または経口的経路を含む経路により従来の様式で投与され得る。例えば、投与は、非経口的投与、皮下的投与、静脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、経皮的投与、経口投与、頬側投与、膣内投与、または目からの経路による投与、吸入による投与、蓄積注射による投与、もしくはインプラントによる投与であり得るがこれらに限定されない。投与の特定の様式は、適応、または投与された特定の化合物を含む他の要因に左右される。投与する化合物の量は、治療的に有効な量である。投与する用量は、処置中の対象の特徴、例えば、処置される特定の患者、年齢、体重、健康、同時に何らかの処置を行っている場合はその処置の種類に左右される。処置の頻度は、当業者(例えば臨床医)により容易に決定することが可能である。
【0031】
本発明のいくつかの態様は、TNFαプロモーターまたはTNFα遺伝子発現の評価および分析を実施するためのキットを含む。このようなキットには、上記のようにIAPアンタゴニスト処置の評価および分析を実施するために必要な、Qiagen EPITECT(登録商標)Bisulfite Conversion Kit、続いてTNFαプロモーター配列決定、抗体、プローブ、および検出可能マーカー等、ならびに試薬、ゲル、器具、ならびに分析ツール等が含まれる。
【0032】
本発明は、IAPアンタゴニスト、キット、システムを作製するための方法、およびIAPアンタゴニストを用いた処置の成功の可能性の判定において有用なバイオマーカーを使用するための方法を含む。一つの態様において、そのような方法、システム、およびキットの効果に関するデータは、例えば除外基準もしくは選択基準を確立するために、または臨床試験データの評価を容易にするためにIAPアンタゴニストを用いるヒト臨床試験を実施する許可を求める書類の一部として、規制機関に提出される。そのようなデータは、IAPアンタゴニストを使用する処置に関連するバイオマーカーを使用するための方法、システム、およびキットの販売の承認のための申請書を支持するために規制機関に提出され得る。例えば、そのようなデータは、新薬承認申請書(NDA)の一部として米国食品医薬品局(FDA)に提出される。
【0033】
本発明の様々な態様は、IAPアンタゴニストを用いた処置に応答してTNFαを発現することが可能な細胞の応答性に関する情報を提供すること、およびこの情報を、IAPアンタゴニストを含有する薬学的組成物に関心を有し得る個人に広めることを含む。このような個人には、増殖性障害を有しているもの、このような障害を処置する医療関係者、および薬剤を調剤または流通させる個人が含まれる。
【0034】
ヒト臨床試験に対する許可が下りた場合、以前に説明した情報は、IAPアンタゴニストおよびIAPアンタゴニストを含有する薬学的組成物の販売を承認する規制機関に提出され得る書類において、増殖性障害を示すヒト対象に対する薬学的組成物の有効性を支持するデータ、ならびに用量情報および細胞毒性データなどの他のデータに含まれ得る。
【0035】
態様はまた、承認された後にIAPアンタゴニストまたはIAPアンタゴニストを含有する薬学的組成物を販売する方法も含む。このような方法において、TNFαを発現することが可能である細胞においてIAPアンタゴニストが効果を有するであろう事実に関する情報は、例えば医師、薬剤師、処方者、保険プロバイダ、販売業者、および患者等、またはその組み合わせに広めることが可能である。さらに別の態様において、予想される患者、および/または予想される処方者、および/または予想される販売業者に情報に広めることができる。
【0036】
この情報は、以下を含むがそれらに限定されない当技術分野において公知の任意の方法により広めることができる:顧客への直接的な広告、テレビ広告、ラジオ広告、新聞広告、印刷物(例えば、パンフレット、リーフレット、ポストカード、および書簡等)による広告、ウェブサイトを介したまたはウェブサイト上での広告(例えば、ウェブサイト上の「バナー」広告を使用する)、ビルボード広告、ダイレクトメール、電子メール、口コミ、およびこれらの任意の組み合わせ。
【0037】
他の態様において、データはユーザーがアクセス可能なデータベースに保存される。データベースに保存されたデータは、例えば、IAPアンタゴニストを用いる処置に関連するバイオマーカーを使用するための方法、システム、およびキットの試験中に作成されたデータ、IAPアンタゴニスト、薬学的組成物、方法、システム、およびキットの安全性および/または効果に関する情報、用量情報、この化合物を使用して処置され得る障害のリスト、一つまたは複数の規制機関からの承認情報、販売業者情報、処方情報、ならびにこれらの組み合わせを含む、IAPアンタゴニストまたは薬学的組成物に関する任意のデータを含みうる。
【0038】
様々な態様は、IAPアンタゴニスト;薬学的組成物;IAPアンタゴニストを用いる処置に関連するバイオマーカーを使用するための方法、システム、およびキットの販売のためのシステムも含み、このシステムには、方法、システム、およびキット、ならびにIAPアンタゴニストを用いる処置に関連するバイオマーカーを使用するための方法、システム、およびキットの効果についてのデータに関する情報を含む上記のデータベースなどのデータベースが含まれる。そのような態様において、データベース内に保持された情報は、例えば、管理者、販売者、マーケティング担当者、およびその組み合わせなどの選択された個人のみ入手可能であり得る。システムはまた、例えば、医師、薬剤師、処方者、保険プロバイダ、患者、販売業者、およびその組み合わせなどの、選択された個人ではない任意の人であり得る無選別個人に広められる、データベース内に保持された情報のサブセットを含むことも可能である。流布は、上記のように当技術分野において公知の任意の流布方法によって行うことが可能である。
【0039】
データのサブセットは、例えば、安全性および/または効果のデータ、この化合物を使用して処置され得る障害のリスト、この薬剤の投与の潜在的な副作用、薬学的組成物中の成分または活性作用物質のリスト、一つまたは複数の規制機関からの承認情報、販売業者情報、処方情報、ならびにこれらの組み合わせなどの、データベース内に保持された任意の情報を含み得、かつ方法、システム、およびキットを販売可能にすると考えられる情報を含み得る。特定の態様において、選択された個人は、データのサブセットに提供された情報を選ぶおよび/または認めることが可能である。
【0040】
上記態様のそれぞれにおいて、提供および/または広められた情報ならびにデータベース内に保存されたデータは、組成物、別の抗自己免疫剤もしくは抗増殖剤を含み得る併用された治療薬のための方法もしくはプロトコールをさらに含む。
【0041】
本開示に引用された全ての特許、特許出願、および参考文献は、参照により明確に本明細書に組み入れられる。上記の開示は、概して本発明を説明するものである。以下の具体的な実施例の参照によってより完全な理解を得ることができるが、これらは説明の目的のみに提供されるものであって、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0042】
実施例1
IAP BIR3ドメインに結合するIAPアンタゴニストの分析
IAPは、一つまたは複数のバキュロウイルスIAP反復(BIR)の存在により特徴付けられる。XIAP、cIAP-1、およびcIAP-2のBIRドメインは、アポトーシスの重要なエフェクタープロテアーゼであるカスパーゼに結合し、かつ、XIAPは、カスパーゼ9およびカスパーゼ3の強力な生理的阻害因子であることが示されている。
【0043】
しかしながら、cIAP-1およびcIAP-2は元々、それらの、TRAF1およびTRAF2を介したTNF-R2との関連により同定されており、それらはカスパーゼ7および9と結合しうるが、直接的にこれらのタンパク質分解作用を阻害することはできない。したがって、TNF受容体スーパーファミリーによって誘発されるシグナル伝達経路に影響を及ぼすことによって、それらがアポトーシスを間接的に調節する可能性があることが示唆される。
【0044】
IAPの天然のアンタゴニストは、ショウジョウバエ(Drosophila)のGrimおよび哺乳動物のSmac/DIABLOを含む。これらのタンパク質は、カスパーゼと同様にXIAPのBIRの同一の溝に結合することが示されており、そのためインビトロでXIAP抗カスパーゼ活性に拮抗することが可能である。cIAPアンタゴニストを模倣するために、化合物は、XIAPがカスパーゼを阻害することを防止し、それによりがん細胞がアポトーシスを起こすように設計される。XIAPはApaf-1およびチトクロームcにより活性化されているカスパーゼを阻害するが、カスパーゼ8は阻害しないことから、cIAPアンタゴニスト単独により引き起こされる細胞死は、カスパーゼ8阻害因子であるcrmAの影響を比較的受けないことが予想されると考えられる。
【0045】
結合定数(Kd)は、蛍光偏光法を使用して測定されうる。簡単に述べると、変動する濃度のIAPアンタゴニストが、15分間室温で、100 μg/ml のウシγグロブリンを含有するpH 7.5、100 μLの0.1Mリン酸カリウム緩衝液中で、5 nMの蛍光標識されたペプチド(例えば、AbuRPF-K(5-Fam)-NH2)および40 nMのIAP-BIR3と混合される。インキュベーション後、485nm の励起フィルターおよび520nmの吸収フィルター(emission filter)を使用してVictor2Vで偏光値(mP)を測定する。IC50値を、例えばGraphPad Prism (San Diego, CA)を使用して、非線形最小自乗解析を使用して、プロットから決定する。競合的阻害因子のKd値は、競合アッセイにおける、測定されたIC50値、プローブとIAP BIR3との複合体のKd値、ならびにタンパク質およびプローブの濃度に基づいて説明した新しく導いた方程式を使用して算出する。
【0046】
実施例2
タンパク質のIAPファミリーは、プロカスパーゼの活性化を防止し、成熟カスパーゼの酵素活性を阻害することによってアポトーシスを抑制する。XIAP、cIAP-1、cIAP-2、ML-IAP、NAIP(neuronal apoptosis inhibiting protein)、Bruce、およびサバイビンを含むいくつかの異なる哺乳動物IAPが同定されており、これらは全て、細胞培養物において抗アポトーシス活性を示す。
【0047】
Smacは、成熟ポリペプチドへの成熟化の過程でタンパク質分解により除去されるN末端ミトコンドリア標的化配列を用いて細胞質において合成され、次いで、ミトコンドリアの膜内空間へ標的指向化される。
【0048】
Smacがプロカスパーゼのタンパク質分解活性だけでなく成熟カスパーゼの酵素活性も促進し、これらの両方はIAPと物理的に相互作用するその能力に依存することが示されている。このN末端配列は、IAPへの結合およびそれらの抗アポトーシス効果の阻止に必須である。
【0049】
cIAPアンタゴニストの基本的な生物学は、これらが、cIAP-1分解に応答して細胞株により産生されたサイトカインを補完またはこれと相乗作用することを示唆している。本発明者らは、本発明者らの化合物がcIAP-1の迅速な分解を促進することを以前に観察していた。したがって、本発明者らは、cIAP-1の分解が結果としてTNFαによるデスレセプター経路の自己分泌活性化をもたらし得るという仮説を立てた。これを試験するために、本発明者らはMTTアッセイにおいてTNFα遮断抗体を使用した。簡単に述べると、処置の必要を示す卵巣癌細胞株を、1ウェル当たり細胞5,000個の密度で96ウェル細胞培養プレートに蒔いた。次の日、抗TNFα抗体(MAB610, R&D Systems, Minneapolis, MN)を、最終濃度10g/mLで細胞に加え、37℃、5%CO2で1時間インキュベートした。インキュベーション後、ある濃度範囲のcIAPアンタゴニスト化合物Cを細胞に加えた。抗TNFα抗体を加えた化合物Cの存在下、または対照として化合物C単独の存在下で、さらに72時間細胞をインキュベートした。72時間のインキュベーション後、MTT試薬(3-(4,5-ジメチルチアゾリル-2)-2, 5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド; SIGMA, St. Louis, Mo)を、1mg/mLの最終濃度で全てのウェルに加え、37℃、5% CO2で2時間インキュベートした。2時間のインキュベーション後、ウェルから全ての培地を除去し、ホルマザン結晶を可溶化するために50LのDMSOを加えた。室温でマイクロプレート振とう機上で短いインキュベーションを行った後、Victor2V蛍光マイクロプレート読み取り器(Perkin-Elmer, Turku, Finland)を使用して570nMで吸光度を測定した。データを、無処置対照を元にしたパーセントに変換し、GraphPad PRISMソフトウェアを使用してCC50曲線を作成した。図1および2は、抗TNFα抗体の使用が、cIAPアンタゴニストにより誘導された細胞毒性を排除することを示しており、結果として、細胞により産生されたTNFαがcIAPアンタゴニストと相乗作用し得ることを示唆する。
【0050】
TNFα産生は、細胞または組織がcIAPアンタゴニストなどのアポトーシス誘導作用物質に対して感受性であろうことを示すバイオマーカーである。さらに、化合物により誘導されたアポトーシスは、TNFαによるデスレセプター経路の自己分泌活性に依存することが示されている。この場合、遺伝子中の突然変異(一塩基多型:SNP)の蓄積に起因する、またはプロモーターのメチル化などの後成的な手段によるTNFα遺伝子の転写抑制は、cIAPアンタゴニストに対する特定の腫瘍細胞の耐性に関与する潜在的な機序を説明する。したがって、本発明者らは、メチル化の増加を検出するためにTNFαプロモーター領域の分析を提案し、不活性化されている突然変異についてのTNFα遺伝子のスクリーニングは、cIAPアンタゴニストに対する感度に関して患者が満足し得る迅速な手段を提供する。TNFα mRNAの存在についてのmRNAの分析もまた使用することができる。患者から得た腫瘍生検材料およびパラフィンに包埋した組織に対してプレスクリーニングを実施することが可能であり、結果は、下記のように最短3日で得ることができる。
【0051】
TNFαプロモーターのメチル化の調査
ゲノムDNA内、特に遺伝子のプロモーター領域内のシトシン-グアニン(CpG)ジヌクレオチドのメチル化は、転写抑制および遺伝子サイレンシングをもたらす最も頻度の高い後成的事象の一つである。TNF-α遺伝子のプロモーター領域のメチル化を検出するために、腫瘍生検材料および正常な組織試料からゲノムDNAを調製し、その後亜硫酸水素転換および配列決定を行った。メチル化したシトシンの存在の検出の、この簡易な方法は、広く認知されている。
【0052】
TNFα中のSNPの検出
サイズの小さいTNF-α遺伝子(2763 bp)は、この遺伝子をコードするゲノムDNA(GenBankアクセッション番号NC_000006、領域:31651329..31654091)の迅速な配列決定を可能にする。TNFα遺伝子内の突然変異の検出は、腫瘍生検材料からのゲノム DNAの調製およびその後のTNFα遺伝子のPCR増幅を通して実施することが可能である。PCR産物をその後、ヌクレオチド配列解析に供し、正常な組織から得た配列と比較する。
【0053】
本明細書において開示する本発明は、哺乳動物の組織または細胞の試料中のバイオマーカーの発現を試験する方法およびアッセイ法を提供し、この方法およびアッセイ法において、一種または複数種のこのようなバイオマーカーの発現は、組織または細胞の試料がcIAPアンタゴニストに対して感受性であるかどうかを予測させるものである。方法およびアッセイ法は、TNFαの発現を試験する。
【0054】
実施例3
TNFαタンパク質発現とIAPアンタゴニストに対する感受性との相関
以下のヒトがん細胞株を試験した:A375(黒色腫)、A549(肺腺癌)、BXPC3(膵臓癌)、EVSA-T(乳癌)、HCT-116(大腸癌)、HCT-15(大腸癌)、HT29(大腸癌)、HUVEC(ヒト臍帯静脈細胞)、IGROV1(卵巣癌)、NCIH 2052(中皮腫)、NCIH-1975(肺癌)、Ovcar4(卵巣癌腫)、Ovcar 8(卵巣癌腫)、Ovcar3(卵巣癌腫)、Piedmont 231(乳房)、MDA-MB231(PU-MB231; 乳房)、RPMI7951(黒色腫)、RT4(膀胱)、SKOV3(卵巣癌)、T24(膀胱癌)、T98G(グリア芽細胞腫)、KYM-1(横紋肉腫)、およびMia-PaCa(膵臓癌)。
【0055】
細胞(1×106)を、6ウェル組織培養皿の各ウェルにプレーティングし、コンフルエントまで増殖させた。培養用培地を交換し、100μlの培地を24時間ごとに3日間収集した。培地中に分泌されたTNFαタンパク質の量を、ヒトTNF ELISA Kit II (Becton Dickinson Biosciences, catalog No. 550610)を使用して測定した。試料(250、125、62.5、31.3、15.6、および7.8 pg/ml)を得るために500 pg/mlの組換えヒトTNFαの段階的な希釈を行い、標準曲線を作成した。結果を図3に示す。これは、各細胞株に対するIAPアンタゴニスト化合物Cの50%の細胞毒性濃度(μM CC50)も示す。実施例2において説明したように、MTTアッセイによりCC50を決定した。
【0056】
図3に示されるデータは、TNF-αを分泌する細胞の能力とインビトロでのIAPアンタゴニストに対する感受性との間に強い相関が存在していることを証明している。以下の表1も参照されたい。
【0057】
【表1】

【0058】
IAPアンタゴニストに応答する細胞株は、IAPアンタゴニストの存在下または非存在下のいずれかにおいてTNFαを分泌する。HUVEC細胞を含む耐性細胞株は、TNFαをほとんど分泌しない。感受性である細胞の中で、分泌されたTNFαの量は、単一の作用物質の作用強度と直接的には相関しない(例えば、EVSA-T 対 SKOV3)。TNFαにより誘導されるアポトーシスに対して感受性である細胞株(例えば、Kym-1、Mia-Pa-Ca)は、予想通り、有意な量のTNFαを分泌しなかった。これらの結果は、IAPアンタゴニストに対する感受性を予測させるバイオマーカーとしての分泌されたTNFαの使用を支持する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、ある細胞集団中の細胞においてアポトーシスを誘導する方法:
腫瘍壊死因子α遺伝子の発現の可能性を判定するために、ある細胞集団の第1の試料をインビトロでアッセイする段階;および
前記第1の試料において腫瘍壊死因子α遺伝子の発現が検出された場合、前記細胞集団を、アポトーシス阻害タンパク質アンタゴニストとインビトロで接触させる段階。
【請求項2】
細胞集団が細胞株である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
以下を含む、アポトーシス阻害タンパク質アンタゴニストに対する細胞の感受性を判定する方法:
腫瘍壊死因子α遺伝子の発現の可能性について細胞をアッセイする段階;および
腫瘍壊死因子α遺伝子の発現が検出された場合、アポトーシス阻害タンパク質アンタゴニストに対して感受性であると細胞を同定する段階。
【請求項4】
以下を含む、アポトーシス阻害タンパク質アンタゴニストを用いた処置に対する、異常に増殖している細胞の感受性を予測する方法:
腫瘍壊死因子α遺伝子の発現の可能性について、異常に増殖している細胞の試料をアッセイする段階;および
前記細胞が腫瘍壊死因子α遺伝子を発現する場合、アポトーシス阻害タンパク質アンタゴニストを用いた処置に対して感受性であると、異常に増殖している細胞を同定する段階。
【請求項5】
以下を含む、アポトーシスを誘導する方法:
腫瘍壊死因子α遺伝子の発現の可能性について判定するために、ある細胞集団の細胞をアッセイする段階;および
腫瘍壊死因子α遺伝子の発現が検出された場合、前記細胞集団を、アポトーシス阻害タンパク質アンタゴニストと接触させる段階。
【請求項6】
以下を含む、増殖性障害を処置する方法:
(a)細胞が腫瘍壊死因子α遺伝子を発現する可能性を有しているかどうかを判定するために、患者から得た病的に増殖している細胞をサンプリングする段階;および
(b)(1)腫瘍壊死因子α遺伝子を発現する可能性が検出された場合、アポトーシス阻害タンパク質アンタゴニスト、または
(2)腫瘍壊死因子α遺伝子を発現する可能性が検出されなかった場合、代替の治療
を患者に投与する段階。
【請求項7】
以下を含む、アポトーシス阻害タンパク質アンタゴニストを用いた処置から恩恵を受け得る患者に関して、患者をスクリーニングする方法:
腫瘍壊死因子α遺伝子の発現の可能性について、患者から得た異常に増殖している細胞をアッセイする段階;および
発現が検出された場合、患者がアポトーシス阻害タンパク質アンタゴニストを用いた処置から恩恵を受けると考えられると判定する段階。
【請求項8】
アポトーシス阻害タンパク質アンタゴニストを用いて患者を処置する段階をさらに含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
以下を含む、アポトーシス阻害タンパク質アンタゴニストに対する細胞の感受性を判定する方法:
細胞がNF-κBに応答して腫瘍壊死因子α遺伝子を発現する可能性を判定するために、細胞をアッセイする段階;および
腫瘍壊死因子α遺伝子の発現の可能性が検出された場合、アポトーシス阻害タンパク質アンタゴニストに対して感受性であると細胞を同定する段階。
【請求項10】
腫瘍壊死因子α遺伝子を発現する可能性が、細胞中の腫瘍壊死因子αのmRNAの存在を判定することによってアッセイされる、請求項8記載の方法。
【請求項11】
以下を含む、アポトーシス阻害タンパク質アンタゴニストに対する細胞の感受性を判定する方法:
腫瘍壊死因子α遺伝子プロモーターがメチル化されているかどうかを判定する段階;および
メチル化が検出されなかった場合、アポトーシス阻害タンパク質アンタゴニストに対して感受性であると細胞を同定する段階。
【請求項12】
以下を含む、アポトーシス阻害タンパク質アンタゴニストに対する細胞の感受性を判定する方法:
突然変異について、細胞試料中の腫瘍壊死因子α遺伝子のプロモーター内の核因子κB応答エレメントをアッセイする段階;および
突然変異が検出されなかった場合、アポトーシス阻害タンパク質アンタゴニストに対して感受性であると細胞を同定する段階。
【請求項13】
細胞が、腫瘍細胞、および自己免疫障害において異常に増殖している細胞からなる群より選択される、請求項1〜12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
試験細胞が、患者から得た生検細胞である、請求項3〜13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
腫瘍壊死因子α遺伝子の発現についてアッセイする前に、細胞がサイトカインまたは増殖因子と接触させられる、請求項1〜14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
腫瘍壊死因子α遺伝子の発現が、腫瘍壊死因子αタンパク質を検出することによって判定される、請求項1〜15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
遺伝子の発現が、腫瘍壊死因子αのmRNAを検出することによって判定される、請求項1〜15のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
アポトーシス阻害タンパク質アンタゴニストが、細胞性アポトーシス阻害タンパク質(cellular inhibitor of apoptosis protein)1および細胞性アポトーシス阻害タンパク質2の少なくとも一つに対して結合親和性を有しており、この結合親和性が、細胞性アポトーシス阻害タンパク質アンタゴニストの、X連鎖アポトーシス阻害タンパク質に対する結合親和性よりも大きい、請求項1〜17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
アポトーシス阻害アンタゴニストの、細胞性アポトーシス阻害タンパク質1に対する結合親和性が、X連鎖アポトーシス阻害タンパク質に対する結合親和性よりも少なくとも3倍大きい、請求項1〜18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
アポトーシス阻害タンパク質アンタゴニストの、細胞性アポトーシス阻害タンパク質1に対する結合親和性が、X連鎖アポトーシス阻害タンパク質に対する結合親和性よりも少なくとも100倍大きい、請求項1〜19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
アポトーシス阻害タンパク質アンタゴニストが、細胞性アポトーシス阻害タンパク質アンタゴニストおよびX連鎖アポトーシス阻害タンパク質アンタゴニストである、請求項1〜20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
アポトーシス阻害タンパク質アンタゴニストが、X連鎖アポトーシス阻害タンパク質に対して結合親和性を有しており、この結合親和性が、アポトーシス阻害タンパク質アンタゴニストの、細胞性アポトーシス阻害タンパク質1および細胞性アポトーシス阻害タンパク質2の少なくとも一つに対する結合親和性よりも大きい、請求項1〜17のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
病的な増殖を行っている細胞が腫瘍壊死因子α遺伝子を発現する可能性を有していると判定された患者において増殖性障害を処置するための、アポトーシス阻害タンパク質アンタゴニストの使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2010−528587(P2010−528587A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507619(P2010−507619)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/062902
【国際公開番号】WO2008/137930
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(507013626)テトラロジック ファーマシューティカルズ コーポレーション (12)
【出願人】(509307705)ラ トローブ ユニバーシティー (1)
【Fターム(参考)】