説明

アポリポタンパク質A−Iおよびアポリポタンパク質A−IMILANOをコードする組換えアデノ随伴ウイルスベクターによる血管疾患の予防および処置

本明細書において、血管疾患および冠動脈性心臓疾患(特に、アテローム硬化症)を予防および処置するための遺伝子治療アプローチが記載される。本発明の方法は、アテローム硬化症の予防および処置、ならびにアテローム硬化症が一因となる任意の疾患または生理学的状態の予防および処置に使用され得る。本発明の方法は、ApoA−IまたはApoA−IMilanoの遺伝子送達に関する。これは、rAAV技術を使用することにより達成され得る。rAAVビリオンは、種々の方法によって哺乳動物被験体に送達され得る。これらの方法としては、形質導入骨髄細胞の移植、直接的な筋肉内注射、静脈内注射もしくは門脈注入、またはステント送達が挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(政府の権利)
米国政府は、the National Heart,Lung and Blood Instituteにより与えられた助成金番号HL−60898に従って、本発明において一定の権利を有する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、血管疾患の処置に関し、より詳細には、アポリポタンパク質A−I(「ApoA−I」)またはApoA−IMilanoによる血管疾患の処置に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
冠動脈性心臓疾患は、米国における主な死亡原因であり、喫煙に関連した死亡原因である。喫煙は、心臓に対して顕著な、有害な影響をもたらし、そしてタバコの煙の中の毒素は、動脈内にプラークを形成させ、このプラークは、しばしば、アテローム硬化症を引き起こす。アテローム硬化症は、動脈硬化の数種の型のうちの1つであり、動脈壁(例えば、冠状動脈、頚動脈、大動脈、回腸大腿動脈)の肥厚および硬化によって特徴付けられる。長期にわたり、この物質は肥厚し、硬化し、そして最終的に、動脈を遮断するかもしくは大幅に狭める。6,100万人を超える米国人が、高血圧、冠動脈性心臓疾患、卒中、うっ血性心不全および他の状態を含む、何らかの形態の心臓血管疾患に罹患する。2,600人を超える米国人が、毎日、心臓血管疾患が原因で死亡している(33秒ごとに約1人死亡している)。
【0004】
高密度リポタンパク質(「HDL])の主要な構成要素であるApoA−Iは、抗アテローム発生特性を有することが示されている。アポリポタンパク質A−IMilano(「ApoA−IMilano」)は、単一のアミノ酸置換(Arg173からCYS173への置換)を有するApoA−Iの変異形態である(非特許文献1)。この変異は、この遺伝子型を有する個体において、アテローム硬化症に対する強い耐性を与えるようである(非特許文献2)。ApoA−IMilanoの構造変化は、脂質に対するより高い反応速度論的親和性、そして脂質タンパク質複合体からのより容易な解離を伴い、このことは、その代謝の加速および組織脂質の取り込みの増大に寄与する(非特許文献3).ApoA−Iは、コレステロール輸送を逆転させ、HDL中の酸化脂質を減少させ、泡沫細胞形成を妨げ、血小板活性を阻害するように機能すること、ならびに抗炎症作用、好酸化作用、および抗血栓作用を有することによって、抗アテローム発生機能を果たす。しかし、ApoA−IMilanoがアテローム硬化症に対するその耐性を与える正確な機序は、未だ解明されていない。
【0005】
これまでに、組換えapo A−I milanoの5回の静脈内注射が、ウサギにおいて高コレステロールを低下させ、バルーン傷害誘発性回腸大腿アテローム硬化症を減少させることが報告されている(非特許文献4);さらに、40〜80mg/kg用量の組換えApoA−Imilano(rApoA−Imilano)の、5週間にわたる繰り返しの静脈内注射は、ApoE−欠損マウスにおいて、未処置コントロールと比較して、大動脈アテローム硬化症の有意な減少/後退を誘発する(非特許文献5)。さらに、組換えApo A−I milanoの単回大量静脈内投与が、ApoEノックアウトマウスにおいて、48時間以内に、大動脈洞プラークにおける脂質含有量および炎症を低下させ、より安定なプラーク表現型を生じることが示された(非特許文献6)。rApo A−I milanoを使用したさらなる研究はまた、ApoEノックアウトマウスにおける内皮機能不全を改善し、ブタモデルにおいてステント埋入部位に適用した場合にステント狭窄を減少させるという、その能力を示した(非特許文献7;非特許文献8)。より最近の二重盲検無作為偽薬対照研究において、急性冠動脈症候群を有する患者への、隔週で5回の投与による組換えApoA−IMiiano−脂質複合体の注入は、冠動脈アテローム荷重(burden)の有意な後退を生じたことが示された。(非特許文献9)。これらの知見は、ApoA−IMilanoに基づく治療が、有効な抗アテローム発生方法としての可能性を有し得るかもしれないことを示唆する。しかし、頻繁な静脈内注射および組換えタンパク質の生成に関する費用は、ヒトにおけるこのアプローチの実施および広範に適用する可能性を制限する。
【0006】
遺伝子送達は、後天性疾患および遺伝性疾患の処置のための有望な方法である。遺伝子導入目的の多くのウイルスベースの系が記載されている(例えば、レトロウイルス系、これは現在、遺伝子導入のために最も広く使用されているウイルスベクター系である)。種々のレトロウイルス系についての記載は、例えば、以下を参照のこと:特許文献1;非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13;ならびに非特許文献14。しかし、2人の患者におけるレトロウイルスベクターに関連する白血病誘発についての最近の記載は、このベクター系の潜在的な限界を明らかにした。
【0007】
多くのアデノウイルスベースの遺伝子送達系も開発されている。ヒトアデノウイルスは、レセプター媒介性エンドサイトーシスによって細胞に侵入する二本鎖DNAウイルスである。これらのウイルスは、特に、遺伝子導入に非常に適切である。なぜなら、これらは増殖および操作が容易であり、そしてインビボおよびインビトロの両方において、広範な宿主範囲を示すからである。アデノウイルスは、高力価で容易に生成され、安定であるので、精製および保存され得る。種々のアデノウイルスベースの遺伝子送達系の記載については、例えば、以下を参照のこと:非特許文献15;非特許文献16;非特許文献17;非特許文献18;非特許文献19;非特許文献20;ならびに非特許文献21。しかし、アデノウイルスのウイルスベクターは、より新しいヘルパー依存性アデノウイルスベクターを含め、宿主の先天免疫の誘発に関連し、非常に毒性であり得る。
【0008】
組換えヒトApoA−Iアデノウイルスを利用した初期の研究において、De Geestらは、ApoE欠損マウスにおける野生型ヒトApoA−Iの、150mg/dlを超え、6日でピークに達する一過性の発現を示した(非特許文献22)。同様の研究において、Tsukamotoらは、ApoE欠損C57BL/6マウス、低密度リポタンパク質レセプター欠損C57BL/6マウス、および野生型C57BL/6マウスへの静脈内注射により、血漿ヒトApoA−I平均ピーク濃度が、注入3日後、それぞれ235mg/dl、324mg/dlおよび276mg/dlとなり、そしてその後減少したことを示した(非特許文献23。ヒトApoA−I導入遺伝子発現のレベルの全体的な低下は、ウイルス感染細胞の炎症反応に起因し得る(非特許文献24)。別の研究において、アデノウイルスおよび256bp ApoA−Iプロモーター、ゲノムApoA−I DNA、および4つのApoEエンハンサーによる遺伝子導入は、6ヶ月までの間、20mg/dlを超えるApoA−I発現を引き起こした(非特許文献25)。しかし、循環するApoA−IMilanoの有効濃度に関するデータは存在しない。むしろ、過去の研究は、血清タンパク質の循環レベルは、それらの有効生物学的濃度に必ずしも相関しないことを示唆している。例えば、ApoE+/+ドナーマウスおよびApoE−/−レシピエントマウスを使用した骨髄移植研究は、10%キメラ現象を有するレシピエントマウスにおける動脈硬化病変の有意な改善を示した(非特許文献26)。他の研究はまた、野生型骨髄を用いた骨髄移植によるマクロファージ由来ApoEの効果を調べた(非特許文献27;非特許文献28;非特許文献29)。これらの研究は、移植後4〜5週での血漿コレステロールの正常化、および移植後14〜20週でのアテローム硬化症の減少を示した。C57BL/6マウスにおいて、ApoEの循環レベルは、正常レベルの3.8%〜12.5%で変動した(非特許文献27;非特許文献29;非特許文献30)。したがって、かなり低いレベルの循環性生物活性血清分子でも、脈管壁における有効な生物学的作用には十分であり得る。
【0009】
最近の研究において、Van Linthoutらは、ApoA−I導入遺伝子発現の持続時間をどうにか改善する目的で、「中身を抜いた(gutted)」ヘルパーウイルス非依存性アデノウイルスベクターと、ヒトα1−抗トリプシンプロモーター、ヒトゲノムApoA−I DNAおよび4コピーのヒトApoEエンハンサーから構成される発現カセットとを使用した(非特許文献31)。この研究者らは、C57BL/6マウスにおいて、長期かつ高レベルのApoA−I発現を生じさせることができた(6ヶ月において、170±16mg/dl)。しかし、これらのアデノウイルスベクターをヒトで使用することには、なお毒性の不安がいくらか存在する(非特許文献32)。AAVベクターの場合、親の野生型AAVは、非病原性である(非特許文献33)。
【0010】
組換えアデノ随伴ウイルス(「rAAV」)ベクターの構築は、記載されている。例えば、以下を参照のこと:特許文献2および特許文献3;特許文献4(1992年1月23日公開)および特許文献5(1993年3月4日公開);非特許文献34;非特許文献35 ;非特許文献36;非特許文献33;および非特許文献37;非特許文献38;非特許文献39;非特許文献40。
【0011】
非病原性のパルボウイルス、アデノ随伴ウイルス(「AAV」)に基づく真核生物ベクターが、効率的な遺伝子導入のための有望なビヒクルとして、最近出現した。AAVは、パリンドローム逆方向末端反復(「ITR」)を含む4.7kbのゲノムを有する、複製欠損DNAウイルスである。増殖性の感染のためには、ヘルパーウイルス(代表的に、アデノウイルスもしくは単純ヘルペスウイルス)との同時感染が必要とされる。ヘルパーウイルスの同時感染がない場合、AAVは、ITRを介して染色体DNAに安定に組み込まれるか、またはエピソーム状態を持続し得る。野生型AAVは、ヒト第19番染色体上の「AAVS1」と称されるヒトDNAの特定の領域へと組み込まれるその能力の点で、独特である。AAVは、多くの動物種(非ヒト霊長類、イヌ、家禽、およびヒトが挙げられる)に見出されている(非特許文献41)。100を超えるAAVの血清型が存在する。これらの血清型としては、霊長類から単離されたAAV 1型(AAV−1)、ヒトから単離されたAAV−2、AAV−3およびAAV−5、ならびにヒトアデノウイルス調製物から単離されたAAV−6が挙げられる。他の血清型が、遺伝子治療における使用について集中的に調べられている。例えば、非特許文献40を参照のこと。AAV−2は、最も特徴付けされた霊長類血清型である。なぜなら、その感染性クローンは最初に作製されたクローンだからである(非特許文献42)。AAV−3A、AAV−3B、AAV−4およびAAV−6についての完全配列が、最近決定された(非特許文献43;非特許文献44;非特許文献45)。一般的に、霊長類AAVは、ヌクレオチド配列において80%を超える相同性を示す。AAVベクターは、主に、血清型2(ヒト由来パルボウイルス)に基づいている(非特許文献46;非特許文献47)。AAV−2の感染性クローンが早くに利用可能であったことは、複製欠損ベクターの開発に関する研究を刺激した。AAV2ゲノムは、2つの主要なオープンリーディングフレーム(「ORF」)を有する;左は、AAV ori媒介性の複製および部位特異的組み込みのために必要な機能をコードし(Rep)、一方右は、キャプシド形成のために必要な機能をコードする(Cap)。AAVベクターは、多くの異なる型の細胞に形質導入する。複数の研究は、rAAVベクターが静止状態の非増殖性標的に形質導入し得ることを、十分実証している。rAAVベクターは、ウイルスがコードする遺伝子を何もコードせず、それらの内因性の免疫原性を低下させている。さらに、rAAV形質導入後の長期のインビボ導入遺伝子発現が、動物モデルにおいて示されている。最後に、1960年代半ばにおけるその発見以来、野生型AAVは、動物においてもヒトにおいても未だに病原性であるとは明確に同定されていない。これに対して、野生型AAVによる感染が、インビトロにおいてウシおよびヒトのパピローマウイルスならびに活性型H−ras癌遺伝子による形質転換を阻害し、そしてp53欠損悪性細胞においてアポトーシスを誘導するという証拠が存在し、一方疫学的研究は、ヒトにおける前感染が、癌保護効果を実際に与え得ることを示唆する。したがって、上記に概要を述べた理由または本明細書において記載されるデータによって支持される理由から、AAVベースのベクターは、導入遺伝子の造血細胞への安定的導入に非常に適している。
【特許文献1】米国特許第5,219,740号明細書
【特許文献2】米国特許第5,173,414号明細書
【特許文献3】米国特許第5,139,941号明細書
【特許文献4】国際公開第92/01070号パンフレット
【特許文献5】国際公開第93/03769号パンフレット
【非特許文献1】Weisgraber,K.H.ら,「A−IMilanoapoprotein,isolation and characterization of a cysteine−containing variant of the A−I apoprotein from human high density lipoproteins」,J Clin Invest,1980年,第66巻,p.901−7
【非特許文献2】Franceschini,G.ら,「A−IMilanoapoprotein.Decreased high density lipoprotein cholesterol levels with significant lipoprotein modifications and without clinical atherosclerosis in an Italian family」,J Clin Invest,1980年,第66巻,p.892−900
【非特許文献3】Franceschini,G.ら,「apolipoprotein A−IMilano.Accelerated binding and dissociation from lipids of a human apolipoprotein variant」,J Biol Ch” em,1985年,第260巻,p.16321−5
【非特許文献4】Ameli,S.ら,「Recombinant apolipoprotein A−I Milano reduces intimal thickening after balloon injury in hypercholesterolemic rabbits」,Circulation,1994年,第90巻,p.1930−1941
【非特許文献5】Shah,P.K.ら,「Effects of recombinant apolipoprotein A−I(Milano)on aortic atherosclerosis in apolipoprotein E−deficient mice」,Circulation,1998年,第97巻,p.780−5
【非特許文献6】Shah,P.K.ら,「High−Dose Recombinant Apolipoprotein A−IMilano Mobilizes Tissue Cholesterol and Rapidly Reduces Plaque Lipid and Macrophage Content in Apolipoprotein E−Deficient Mice:Potential Implications for Acute Plaque Stabilization」,Circulation,2001年,第103巻,p.3047−3050
【非特許文献7】Kaul,S.ら,「Intramural Delivery of Recombinant Apolipoprotein A−IMilano/Phospholipid Complex(ETC−216)Inhibits In−Stent Stenosis in Porcine Coronary Arteries」,Circulation,2003年,第107巻,p.2551−2554
【非特許文献8】Kaul,S.ら,「Rapid reversal of endothelial dysfunction in hypercholesterolemic apolipoprotein E−null mice by recombinant apolipoprotein A−I−phospholipid complex」,J Am Coll of Cardiology,2004年,第44巻,第6号,p.1311−1319
【非特許文献9】Nissen,S.E.ら,「Effect of recombinant ApoA−1 Milano on coronary atherosclerosis in patients with acute coronary syndromes:a randomized controlled trial」,JAMA,2003年,第290巻,p.2292−300
【非特許文献10】MillerおよびRosman,「BioTechniques」,1989年,第7巻,p.980−990
【非特許文献11】Miller,A.D.,「Human Gene Therapy」,1990年,第1巻,p.5−14
【非特許文献12】Scarpaら,「Virology」,1991年,第180巻,p.849−852
【非特許文献13】Burnsら,「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」,1993年,第90巻,p.8033−8037
【非特許文献14】Boris−LawrieおよびTemin,「Cur.Opin.Genet.Develop.」,1993年,第3巻,p.102−109
【非特許文献15】Haj−AhmadおよびGraham,「J.Virol.」,1986年,第57巻,p.267−274
【非特許文献16】Bettら,「J.Virol.」,1993年,第67巻,p.5911−5921
【非特許文献17】Mitterederら,「Human Gene Therapy」,1994年,5巻,p.717−729
【非特許文献18】Sethら,「J.Virol.」,1994年,第68巻,p.933−940
【非特許文献19】Barrら,「Gene Therapy」,1994年,第1巻,p.51−58
【非特許文献20】Berkner,K.L.,「BioTechniques」,1988年,第6巻,p.616−629
【非特許文献21】Richら,「Human Gene Therapy」,1993年,第4巻,p.461−476
【非特許文献22】De Geest,B.ら,「Effects of adenovirus−mediated human apo A−I gene transfer on neointima formation after endothelial denudation in apo E−deficient mice」,Circulation,1997年,第96巻,p.4349−56
【非特許文献23】Tsukamoto,K.ら,「Comparison of human apoA−1 expression in mouse models of atherosclerosis after gene transfer using a second generation adenovirus」,J Lipid Res,1997年,第38巻,p.1869−76
【非特許文献24】Engelhardt,J.F.ら,「Ablation of E2A in recombinant adenoviruses improves transgene persistence and decreases inflammatory response in mouse liver」,Proc Natl Acad Sci USA,1994年,第91巻,p.6196−200
【非特許文献25】De Geest,B.ら,「Sustained expression of human apolipoprotein A−I after adenoviral gene transfer in C57BL/6 mice:role of apolipoprotein A−I promoter,apolipoprotein A−I introns,and human apolipoprotein E enhancer」,Hum Gene Ther,2000年,第11巻,p.101−12
【非特許文献26】Sakai,Y.ら,「Bone marrow chimerism prevents atherosclerosis in arterial walls of mice deficient in apolipoprotein E」,Atherosclerosis,2002年,第161巻,p.27−34
【非特許文献27】Linton,M.F.ら,「Prevention of atherosclerosis in apolipoprotein E−deficient mice by bone marrow transplantation」,Science,1995年,第267巻,p.1034−7
【非特許文献28】Boisvert,W.A.ら,「Treatment of severe hyper−cholesterolemia in apolipoprotein E−deficient mice by bone marrow transplantation」,J Clin Invest,1995年,第96巻,p.1118−24
【非特許文献29】Van Eck,M.ら,「Bone marrow transplantation in apolipoprotein E−deficient mice.Effect of ApoE gene dosage on serum lipid concentrations,(beta)VLDL catabolism,and atherosclerosis」,Arterioscler Thromb Vasc Biol,1997年,第17巻,p.3117−26
【非特許文献30】Spangenberg,J.ら,「Influence of macrophage−derived apolipoprotein E on plasma lipoprotein distribution of apolipoprotein A−I in apolipoprotein E−deficient mice」,Biochim Biophys Acta,1997年,第1349巻,p.109−21
【非特許文献31】Van Linthout,S.ら,「Persistent hepatic expression of human apo A−I after transfer with a helper−virus independent adenoviral vector」,Gene Ther,2002年,第9巻,p.1520−8
【非特許文献32】St George,J.A.,「Gene therapy progress and prospects:adenoviral vectors」,Gene Ther,2003年,第10巻,p.1135−41
【非特許文献33】Muzyczka,N.,「Use of adeno−associated virus as a general transduction vector for mammalian cells」,Curr Top Microbiol Immunol,1992年,第158巻,p.97−129
【非特許文献34】Lebkowskiら,「Molec.Cell.Biol.」,1988年,第8巻,p.3988−3996
【非特許文献35】Vincentら,「Vaccines」,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1990年,第90巻
【非特許文献36】Carter,B.J.,「Current Opinion in Biotechnology」,1992年,第3巻,p.533−539
【非特許文献37】Kotin,R.M.,「Human Gene Therapy」,1994年,第5巻,p.793−801
【非特許文献38】Gao,G.,「Proc Natl Acad Sci USA」,2002年,第99巻,p.11854−11859
【非特許文献39】Hauck,B.,「Journal of Virology」,2003年,第77巻,第4号,p.2768−2774
【非特許文献40】Gao,G.,「Journal of Virology」,2004年,第78巻,第12号,p.6381−6388
【非特許文献41】Murphy,F.A.ら,「Classification and nomenclature of viruses:sixth report of the International Committee on Taxonomy of Viruses」,Arch.Virol.,1995年,第1995巻,p.169−175
【非特許文献42】Samulski,R.J.ら,「Cloning of adeno−associated virus into pBR322:rescue of intact virus from the recombinant plasmid in human cells」,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,1982年,第79巻,p.2077−2081
【非特許文献43】Chiorini,J.A.ら,「Cloning of adeno−associated virus type 4(AAV4)and generation of recombinant AAV4 particles」,J.Virol.,1997年,第71巻,p.6823−6833
【非特許文献44】Muramatsu,S.ら,「Nucleotide sequencing and generation of an infectious clone of adeno−associated virus 3」,Virology,1996年,第221巻,p.208−217
【非特許文献45】Rutledge,E.A.ら,「Infectious clones and vectors derived from adeno−associated virus(AAV)serotypes other than AAV type 2」,J.Virol.,1998年,第72巻,p.309−319
【非特許文献46】Parks,W.P.ら,「Seroepidemiological and ecological studies of the adenovirus−associated satellite viruses」,J.Virol.,1970年,第2巻,p.716−722
【非特許文献47】Samulski,R.J.,「Adeno−associated virus:integration at a specific chromosomal locus」,Curr.Opin.Genet.Dev.,1993年,第3巻,p.74−80
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、当該分野において、アテローム硬化症ならびにそれに関連する一連の疾患および生理学的状態を処置するための遺伝子治療方法に対する必要性が存在する。rAAVベクターの使用は、インビボ遺伝子導入に関して実質的に無害であり、そしてApoA−IMilano発現のレベルの上昇および維持のための実行可能なアプローチを提供し得るという可能性がある。したがって、特にrAAVベクター技術を介して送達された場合、循環するApoA−Iタンパク質および/もしくは循環するApoA−IMilanoタンパク質の恒常的および持続的なレベルを生じる、遺伝子送達および遺伝子発現のための方法が、特に所望される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
アテローム硬化症を防止するための組成物および方法が、本明細書中に記載される。この組成物および方法は、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを提供する工程およびrAAVベクターを哺乳動物に送達する工程を含む。本発明は、アポリポタンパク質A−I(ApoA−I)またはApoA−IMilanoをコードするrAAVベクターを形質導入する工程をさらに包含する。本発明は、ApoA−IまたはApoA−IMilanoをコードする精製されたrAAVベクター、およびrAAV−ApoA1またはrAAV−ApoA1 milanoによって遺伝子的に改変された宿主細胞を含む。
【0014】
本発明の別の実施形態において、このrAAV−ApoA−IベクターまたはrAAV−ApoA−IMilanoベクターは、第1に、多能性幹細胞中に形質転換される。本発明は、哺乳動物中にこの多能性幹細胞を移植する工程を、さらに包含する。この多能性幹細胞は、骨髄細胞、臍帯血細胞またはサイトカインで初回刺激された末梢血細胞であり得る。
【0015】
本発明の他の実施形態において、キットは、本発明のrAAVベクター、および哺乳動物におけるアテローム硬化症の処置にこのベクターを使用するための指示書を備える。
【0016】
(発明の詳細な説明)
本明細書中に引用される全て刊行物は、あたかも完全に示されるかのように、その全体が参考として援用される。特に明記されない限り、本明細書中で使用される技術的用語および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。Singletonら、Dictionary of Microbiology and Molecular Biology、第2版、J.Wiley & Sons(New York、NY 1994);March、Advanced Organic Chemistry Reactions、Mechanisms and Structure、第4版、J.Wiley & Sons (New York、NY 1992);ならびにSambrookおよびRussel、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press(Cold Spring Harbor、NY 2001)は、本願において使用される多くの用語に対する一般的な指針を当業者に提供する。
【0017】
当業者は、本明細書中に記載される方法および材料と同様であるか、またはそれらと等価である多くの方法および材料を認識し、これらは、本発明の実施に使用され得る。実際に、本発明は、決して記載される方法および材料に限定されない。本発明の目的に関して、下記の用語が、以下に定義される。
【0018】
本明細書中で使用される場合、「状態」および「疾患状態」としては、冠状動脈性心疾患および/もしくは血管疾患ならびに/またはこれらの病理の任意の形態(特に、アテローム硬化症)が挙げられるが、決してこれらに限定されない。
【0019】
冠状動脈性心疾患および/または血管疾患の「病理」としては、患者の幸福を危うくする全ての現象が挙げられる。これらとしては、アテローム硬化症、アテローム発生、血管の炎症、異常なレベルでのサイトカインまたは他の分泌産物の放出、炎症もしくは免疫応答の抑制または悪化などを含む動脈硬化の全ての形態が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
「アテローム硬化症」は、長期にわたる動脈の進行性の狭窄および硬化を記述する。これは、ある程度、老化に伴って生じることが公知であるが、このプロセスを促進する他の危険因子が、同定された。これらの因子としては、高コレステロール、高血圧、喫煙、糖尿病およびアテローム硬化型の疾患に関する家族歴が挙げられる。一般的に、「アテローム発生」は、「アテローム性動脈硬化症」およびアテローム硬化症の病因において重要であるアテロームの形成に関連する。
【0021】
「遺伝子導入」または「遺伝子送達」とは、宿主細胞中に外来DNAを容易に挿入するための方法またはシステムをいう。このような方法は、組み込まれずに移入されるDNAの一過性の発現、染色体外の複製および移入されるレプリコン(例えば、エピソーム)の複製、または宿主細胞のゲノムDNA中への移入される遺伝物質の組み込みを生じ得る。遺伝子導入は、急性疾患および遺伝性疾患の処置のための独特なアプローチを提供する。多くのシステムが、哺乳動物細胞中への遺伝子導入のために開発された。例えば、米国特許第5,399,346号を参照のこと。
【0022】
「ベクター」とは、任意の遺伝的エレメント(例えば、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、ウイルス、ビリオンなど)をいい、これらは、適切な制御エレメントに付随して複製が可能であり、そしてこれらの遺伝的エレメントは、細胞間で遺伝子配列を移入し得る。したがって、この用語は、クローニングビヒクルおよび発現ビヒクル、ならびにウイルスベクターを含む。
【0023】
「AAVベクター」とは、任意のアデノ随伴ウイルスの血清型に由来する任意のベクターをいい、これらとしては、AAV−1、AAV−2、AAV−3、AAV−4、AAV−5、AAV−7およびAAV−8などが挙げられるが、これらに限定されない。AAVベクターは、1種以上の、全体的または部分的に欠失したAAV野生型遺伝子(好ましくはRep遺伝子および/またはCap遺伝子)を有し得るが、機能的フランキングITR配列を保持し得る。機能的ITR配列は、一般的にはAAVゲノムのレスキュー、複製、パッケージングおよび強力な染色体への組み込みに必要である。したがって、AAVベクターは、少なくともウイルスの複製およびパッケージングのためにシスで必要とされる配列(例えば、機能的ITR)を含むことが、本明細書中で定義される。このITRは、野生型ヌクレオチド配列である必要はなく、そしてこの配列が機能的なレスキュー、複製およびパッケージングを提供する限り、(例えば、ヌクレオチドの挿入、欠失または置換によって)変更され得る。
【0024】
「組換えウイルス」とは、遺伝子的に変更されたウイルス(例えば、この粒子への異種核酸構築物の付加または挿入によって)をいう。
【0025】
「AAVビリオン」とは、野生型(「wt」)AAVウイルス粒子(すなわち、AAVカプシドタンパク質外皮に結合した直鎖状の、一本鎖のAAV核酸ゲノムを含む)のような完全なウイルス粒子をいう。このことに関して、相補的なセンス(すなわち、「センス」鎖または「アンチセンス」鎖)のいずれかの一本鎖のAAV核酸分子は、いずれか1つAAVビリオン中にパッケージングされ得;両方の鎖は、等しく感染性である。さらに、このAAVカプシドタンパク質外皮は、上記AAVビリオンの標的に依存する種々のAAVの血清型のいずれかに由来し得る。
【0026】
「組換えAAVビリオン」または「rAAVビリオン」は、目的の異種DNA分子(例えば、ApoA−I、ApoA−IMilanoをコードする遺伝子)をカプシド形成するAAVタンパク質の殻からなる感染性の複製欠損ウイルスとして定義され、このDNA分子は、AAVのITRによって隣接される。rAAVビリオンは、AAVベクター、AAVのRep機能およびCap機能、ならびにその細胞に導入されるヘルパーウイルス機能を有した適切な宿主細胞中で産生され得る。この様式において、この宿主細胞は、AAVベクター(すなわち、目的の組換えヌクレオチド配列を含む)を複製し、そしてパッケージングし、次いで遺伝子送達を行うために必要とされるAAVの複製およびカプシドタンパク質を形成する能力を、組換えビリオン粒子に与える。完全な導入遺伝子は、プロモーター、コード配列、通常はcDNAおよびポリアデニル化シグナルからなり得る。導入遺伝子はまた、調節塩基配列およびイントロン領域を含み得る。導入遺伝子の発現を調節するプロモーターとしては、恒常的な、誘導性でありかつ組織特異的なプロモーターが挙げられ得る。
【0027】
用語「トランスフェクション」は、細胞による外来DNAの取り込みをいうために本明細書中で使用される。細胞は、外来のDNAがその細胞膜の内側に導入されたときに「トランスフェクトされ」る。多くのトランスフェクション技術は、一般的には当該分野において公知である。例えば、Grahamら、(1973)Virology、52:456、Sambrookら、(1989)Molecular Cloning、a laboratory manual、Cold Spring Harbor Laboratories、New York、Davisら、(1986)Basic Methods in Molecular Biology、Elsevier、およびChuら、(1981)Gene 13:197を参照のこと。このような技術が使用されて、適切な宿主細胞中に1種以上の異種DNA部分(例えば、プラスミドベクターおよび他の核酸分子)が導入され得る。この用語は、遺伝物質の安定した取り込みおよび一過性の取り込みの両方を指す。
【0028】
用語「形質転換」は、インビボまたはインビトロのいずれかにおける、遺伝子送達の任意の方法を介するDNA分子のレシピエント細胞への送達を示し、これらの方法としては、複製欠損ウイルスベクター(例えば、rAAVを介する)が挙げられる。
【0029】
用語「異種」は、それが核酸配列(例えば、遺伝子配列および制御配列)に関連する場合、通常は一緒に連結されずそして/または特定のウイルスに通常は付随しない配列を示す。対立遺伝子の変化または天然に存在する変異的な事象は、本明細書中で使用されるような異種DNAを生じない。
【0030】
「DNA」は、緩んでいるかまたはスーパーコイルのいずれかの、二本鎖または一本鎖の形態にあるデオキシリボヌクレオチド(すなわち、アデニン、グアニン、チミンおよびシトシン)のポリマー形態をいうことが意味される。この用語は、上記分子の一次構造および二次構造のみを指し、そしてそれを任意の特定の三次形態に限定しない。したがって、この用語は、とりわけ直鎖状DNA分子(例えば、制限酵素断片)、ウイルス、プラスミド、および染色体において見出される一本鎖のDNAおよび二本鎖のDNAを含む。特定のDNA分子の構造を議論することにおいて、配列は、DNAの転写されない鎖(すなわち、mRNAと相同な配列を有する鎖)に沿った5’方向から3’方向の配列のみを与えるという通常の慣習に従って、本明細書中に記載され得る。この用語は、4種の塩基アデニン、グアニン、チミンおよびシトシンを含む分子、ならびに当該分野において公知である塩基アナログを含む分子を包含する。
【0031】
「遺伝子」または「コード配列」または特定のタンパク質を「コードする」配列は、適切な調節塩基配列の制御下にある場合に、インビトロまたはインビボで転写(DNAの場合において)され、そしてポリペプチドに翻訳(mRNAの場合において)される核酸分子であるが;当業者は、種々のポリヌクレオチド(例えば、RNA転写物がそれらの生成物であるアンチセンスRNA、siRNA、リボザイム)は、この様式で作動しないことを容易に理解する。タンパク質生成物(すなわち、RNA生成物ではない)に関して、上記コード配列の境界は、5’(すなわち、アミノ)末端における開始コドンおよび3’(すなわち、カルボキシ)末端における翻訳終止コドンによって決定される。遺伝子としては、原核生物mRNAまたは真核生物mRNAからのcDNA、原核生物DNAまたは真核生物DNAからのゲノムDNA配列、および合成DNA配列さえも挙げられ得るが、これらに限定されない。転写終止配列は、通常は遺伝子配列に対して3’に位置決めされる。さらに、「遺伝子」は、(i)コード領域配列の転写を方向付けるために複数の調節エレメントを含む(おそらく、エンハンサーを含む)プロモーター領域で始まり;(ii)翻訳の開始部位の上流に位置決めされる転写の開始部位で始まり、そして終止コドンのかなり下流であり得る転写の終止部位(ポリアデニル化シグナルは、通常は転写の終止部位に結合し、そして転写の終止の下流に位置決めされる)で終わるコード配列を含み;そして(iii)発現を変調し、そしてRNA転写物の安定性を改良するイントロンおよび他の調節塩基配列を含み得る。
【0032】
用語「制御エレメント」とは、まとめて、プロモーター領域、ポリアデニル化シグナル、転写終止配列、上流調節ドメイン、複製起点、配列内リボソーム進入部位(internal ribosome entry site)(「IRES」)、エンハンサーなどをいい、これらは、レシピエント細胞におけるコード配列の複製、転写および翻訳を集合して提供する。選択されたコード配列が適切な宿主細胞中で複製され、転写されそして翻訳され得る限り、制御エレメントが、常に全て存在する必要はない。
【0033】
用語「プロモーター領域」は、DNA制御配列を含むヌクレオチド領域を指す通常の意味において本明細書中で使用され、この制御配列は、RNAポリメラーゼに結合し、そしてコード配列の下流(3’方向)への転写を開始し得る遺伝子に由来する。
【0034】
「作動可能に連結された」とは、エレメントの配置をいい、このように記載される構成要素は、それらの通常の機能を果たすように構成される。したがって、コード配列に作動可能に連結された制御エレメントは、このコード配列の発現を達成し得る。この制御エレメントは、このエレメントがその発現を方向付けるように機能する限り、コード配列に隣接する必要はない。したがって、例えば、転写されるが翻訳されない介在性の配列は、プロモーター配列とコード配列との間に存在し得、そしてこのプロモーター配列は、すでにこのコード配列に「作動可能に連結された」と見なされ得る。
【0035】
本願全体を通して、特定の核酸分子におけるヌクレオチド配列の相対的位置を記載する目的に関して、ある特定のヌクレオチド配列が、別の配列に対して、「上流」、「下流」、「5’」、または「3’」に位置すると記載されるような場合、これらが、DNA分子の転写されない鎖中の配列の位置であり、この位置が、当該分野において慣習的であると見なされることが理解されるべきである。
【0036】
「幹細胞」は、複数の組織型の細胞を生じ得る全ての細胞を記載するために使用される用語である。本明細書中で使用される場合、「多能性幹細胞」とは、広範に増殖する能力を有する未分化細胞をいい、この増殖は、さらなる細胞および最終的にそれらが得られた組織において見出される細胞の型(例えば、赤血球、白血球および血小板のみを生じる血液幹細胞、または種々の型の皮膚細胞のみを生じる皮膚幹細胞)へと分化し得る子孫を生じる。他の例としては、例えば、骨髄細胞、造血幹細胞、間葉細胞などが挙げられる。
【0037】
本明細書中で使用される場合、「相同性」および「相同な」とは、2つのポリヌクレオチドの間または2つのポリペプチド部分の間の同一性の割合をいう。一方の部分の他方に対する配列間の一致は、当該分野において公知である技術によって決定され得る。例えば、相同性は、配列情報を整列し、そして容易に入手可能なコンピュータープログラムを使用することにより、2つのポリペプチド分子の間で配列情報を直接比較することによって決定され得る。あるいは、相同性は、相同な領域の間で安定な二重鎖を形成する条件下においてポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションを行い、次いで一本鎖に特異的なヌクレアーゼによって消化し、そして消化したフラグメントのサイズを決定することによって決定され得る。2つのDNA配列または2つのポリペプチド配列は、上記の方法を使用して決定されるように、少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約90%、および最も好ましくは少なくとも約95%のヌクレオチドまたはアミノ酸が、それぞれ、これらの分子の定義される長さにわたって一致する場合、互いに対して「実質的に相同」である。
【0038】
本明細書中で使用される場合、ヌクレオチド配列、ベクターなどに関して、「単離された」とは、示された分子が、同じ型の他の生物学的高分子の実質的な非存在下において存在する事実をいう。したがって、「特定のポリペプチドをコードする単離された核酸分子」とは、対象ポリペプチドをコードしない他の核酸分子を実質的に含まない核酸分子をいう。同様に、「単離されたベクター」とは、対象ベクターと異なる他のベクターを実質的に含まないベクターをいう。しかし、対象分子またはベクターは、上記組成物の基本的な特徴に有害な影響を与えない、ある程度のさらなる塩基または部分を含み得る。
【0039】
本明細書中で使用される場合、ベクターに関して、「精製された」とは、他の生物学的高分子の実質的な非存在下において存在する多量の示されたベクターをいう。したがって、「精製されたベクター」とは、組成物の他の構成要素に対して、少なくとも80%の対象ベクター、好ましくは少なくとも90%の対象ベクター、最も好ましくは少なくとも95%の対象ベクターを含む組成物をいう。
【0040】
本明細書中で使用される場合、「哺乳動物」とは、哺乳類の任意のメンバーをいい、これらとしては、ヒトおよび非ヒト霊長類(例えば、チンパンジーおよび他のサル(ape)の種およびサル(monkey)の種;家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギおよびウマ);家庭内の哺乳動物(例えば、イヌおよびネコ);げっ歯類(例えば、マウス、ラットおよびモルモットなど)を含む実験動物が挙げられるが、これらに限定されない。この用語は、特定の年齢または性別を示さない。したがって、雄であっても雌であっても、成体被験体および新生児(新生仔)被験体、ならびに胎児(胎仔)は、この用語の範囲内に含まれることが意図される。
【0041】
本発明は、アテローム硬化症の防止および処置のために、哺乳動物においてApoA−IMilanoの発現を増加させる遺伝子治療のアプローチに基づく。この遺伝子治療は、非病原性であり、そして循環するApoA−IMilanoの持続的なレベルをもたらす。
【0042】
ApoA−IMilanoは、動物モデルにおいてアテローム硬化症を減少させる、実証された顕著な能力を有する。組換えApoA−IMilano注入の最近の臨床試験は、同様に、アテロームの体積の顕著な減少を示した。ここで、rAAV形質転換骨髄細胞の筋肉内注射または移植のいずれかによるインビボでのアテローム硬化症の遺伝子治療のために、ApoA−IMilanoをコードするrAAVベクターの能力が試験された。
【0043】
本発明のベクターは、米国特許第5,474,935号に記載されるベクターに基づき、このベクターは、アテローム硬化症の処置のために、ApoA−IMilianoである導入遺伝子を有する。rAAVベクターの調製は、これまでに記載される通りに完了された(「Intracellular Ribozyme Applications:Principles and Protocols」のChatterjee,S.&K.K.Wong、Adeno−associated virus vectors for the delivery of ribozymes、JJ RossiおよびL.Couture(編)、Horizon Scientific Press、pp.189−215(2000);Chatterjee,S.ら、「Transduction of primitive human marrow and cord blood−derived hematopoietic progenitor cells with adeno−associated virus vector」、Blood、第93巻、pp.1882−1894(1999))。CMV最初期プロモーターは、特定の宿主細胞の型を要求しないウイルス種および真核生物種の間で最も活性なプロモーターの1つであるので、導入遺伝子送達システムは、CMV最初期プロモーターの使用を頻繁に含んだ(Fitzsimons,H.L.ら、「Promoters and regulatory elements that improve adeno−associated virus transgene expression in the brain」、Methods、第28巻、pp.227−36(2002);Phillips,M.I.、「Gene therapy for hypertension:sense and antisense strategies」、Expert Opin Biol Ther、第1巻、pp.655−62(2001);Smith,L.C.ら、「Advances in plasmid gene delivery and expression in skeletal muscle」、Curr Opin Mol Ther、第2巻、pp.150−4(2000);Keating,A.ら、「Effect of different promoters on expression of genes introduced into hematopoietic and marrow stromal cells by electroporation」、Exp Hematol、第18巻、pp.99−102(1990);Muller,S.R.ら、「Efficient transfection and expression of heterologous genes in PC12 cells」、DNA Cell Biol、第9巻、pp.221−9(1990))。しかし、多くのプロモーターが、当業者に認識されるような本発明のrAAVベクターの構築に使用され得る。例えば、本発明において使用されるrAAV−5ベクターは、CBAプロモーターを組み込む。
【0044】
本発明のベクターの構築は、AAVビリオンを生産するための広く認識された手段によって完了され、この手段は、2つの異なるが補完するプラスミドによる宿主細胞の同時トランスフェクションを伴う。これらの1つは、2つのシス活性AAV ITRの間に挟まれる、治療用導入遺伝子またはレポーター導入遺伝子を含む。レスキューおよびこれに続く子孫の組換えゲノムのパッケージングに必要とされるAAV構成要素は、repタンパク質およびcapタンパク質のためのウイルスのオープンリーディングフレームをコードする第2のプラスミドによってトランスで提供される。しかし、当業者に認識されるように、本発明のベクターの構築に関する多くの他の技術は、使用され得る。例えば、Gao,G.(2002)Proc Natl Acad Sci USA 99:11854−11859;Hauck,B.(2003)Journal of Virology 77(4):2768−2774;Gao,G.(2004)Journal of Virology 78(12):6381−6388を参照のこと。さらに他の方法が、本発明のベクターの構築のために使用され得る。例えば、米国特許第5,658,776号は、パッケージングシステム、およびAAV P5プロモーターを異種プロモーターで置換するAAVベクターをパッケージングするためのプロセスについて言及する。あるいは、米国特許第5,622,856号は、AAVベクターの生成のための構築物および方法について言及し、これは、相同なP5プロモーターを遺伝子に対して3’の位置に移動し、そして必要に応じてrep−capと、位置を移されたP5プロモーターとをFRT配列を用いて隣接させることによって形成される構築物を提供する。
【0045】
さらに、本発明の種々の実施形態において、ITRおよび第1のプラスミドの部分ならびに第2のプラスミドのrepタンパク質およびcapタンパク質は、AVVベクターの任意の血清型に由来し得る。このように、本発明のrAAVビリオンは、より高い特異性で被験組織を標的する目的に合わせて特別に作製される。AAV血清型が、組織特異的遺伝子発現に有意な影響を及ぼすことは、当該分野で公知である(Hauck,B.ら、「Generation and characterization of chimeric recombinant AAV vectors」、Mol Ther、Vol.7、pp.419−25(2003);Chao,H.ら、「Several log increase in therapeutic transgene delivery by distinct adeno−associated viral serotype vectors」、Mol Ther、Vol.2、pp.619−23(2000);Xiao,W.ら、「Gene therapy vectors based on adeno−associated virus type 1」、J Virol、Vol.73、pp.3994−4003(1999);Rabinowitz,J.E.ら、「Cross−packaging of a single adeno−associated virus (AAV) type 2 vector genome into multiple AAV serotypes enables transduction with broad specificity」、J Virol、Vol.76,pp.791−801(2002);Alisky,J.M.ら、「Transduction of murine cerebellar neurons with recombinant FIV and AAV5 vectors」、Neuroreport、Vol.11、pp.2669−73(2000);Chiorini,J.A.ら、「Cloning and characterization of adeno−associated virus type 5」、J Virol、Vol.73、pp.1309−19(1999);Davidson,B.L.ら、「Recombinant adeno−associated virus type 2,4, and 5 vectors:transduction of variant cell types and regions in the mammalian central nervous system」、Proc Natl Acad Sci USA、Vol.97、pp.3428−32(2000);Rutledge,E.A.ら、「Infectious clones and vectors derived from adeno−associated virus (AAV) serotypes other than AAV type 2」、J Virol、Vol.72、pp.309−19(1998))。例えば、第1のプラスミドのDNAエレメントは、1つのAAV血清型に由来し得、repタンパク質は、別の血清型に由来し得、そしてcapタンパク質は、なお別のAAV血清型に由来し得る。特に、AAVベクターゲノムは、異なるAAV血清型で包み込まれる(packaging)ことにより偽型化(pseudotyped)され得、これは、rAAV遺伝子治療を特定の組織に方向付けることにおいて、有効である(Weitzman,M.ら、「Breakinig the barriers to global gene delivery」、Nature Biotechnology、Vol.23、Issue 3、pp.305−306(2005);Wang,Z.ら、「Adeno−associated virus serotype 8 efficiently delivers genes to muscle and heart」、Nature Biotechnology、Vol.23、Issue 3、pp.321−328(2005);Wang,L.ら、「Sustained correction of disease in naive and AAV2−pretreated hemophilia B dogs: AAV2/8−mediated, liver−directed gene therapy」、Gene Therapy、Vol.105、Issue 8、pp.3079−3086(2005))。本発明の種々の実施形態において、AAV血清型1、8、9および10に由来するカプシドは、筋肉内注射において特に有効であり得る。さらに、AAV血清型1、7および8に由来するカプシドは、造血幹細胞形質導入のために、特に有効であり得る。なおさらに、AAV血清型8に由来するカプシドは、肝臓を標的するために特に有効であり得る。
【0046】
本発明が基づくところの動物モデルにおいて、ApoE−/−マウスは、6〜8週齢で、約1012ベクターゲノム/kgを注射され、そして2週間後に高脂肪食餌におかれた。処置群の間に、大きな体重の相違は観察されなかった。注射の約20〜24週間後、マウスは回収され、大動脈が洗浄され、固定され、マウントされ、オイルレッドOで染色され、そしてアテローム性斑領域が定量された。コントロール未処置マウスまたは無関係なrAAVベクターで処置したマウスは、著しいアテローム硬化症病変形成を示した。対照的に、血漿総コレステロール値に大きな相違はないにもかかわらず、rAAV−2−ApoA−IMilanoおよびrAAV−5−ApoA−IMilano注射群は、斑形成における有意な減少(それぞれ58%および50%)を示した骨髄由来の単球およびマクロファージが、アテローム発生において中心的な役割を果たすので、rAAVおよびApoA−IMilano形質導入骨髄細胞の移植もまた、おそらくアテローム硬化症病変における形質導入マクロファージの局在化に起因して、斑形成を減少させるという仮説が立てられた。致死的に放射線照射されたApoE−/−マウスは、rAAV形質導入細胞を移植され、そして高脂肪食餌が3週間後に開始された。移植の22〜24週間後、マウスを安楽死させ、そして大動脈を、アテローム性斑について分析した。未移植マウスならびに非形質導入骨髄移植マウスおよびコントロールrAAV形質導入骨髄移植マウスは、ネガティブコントロールとして役立った。野生型B6からApoE−/−への移植体は、斑減少についてのポジティブコントロールとして役立った。結果は、ApoA−IMilanoをコードするrAAV−2ベクターおよびrAAV−5ベクターを形質導入した細胞を移植した後の、大動脈形成におけるそれぞれ41%および47%の減少を明らかにした。これらの結果は、rAAV−ApoA−IMilanoの筋肉内注射またはrAAV−ApoA−IMilano形質導入骨髄細胞の移植のどちらも、rAAV−ApoA−IMilanoベクターでの単回治療後の、アテローム発生の有意な長期的阻害をもたらすことを示唆する。
【0047】
本発明の方法は、アテローム硬化症の処置、予防、阻害、安定化および/または後退の誘導、ならびに、アテローム硬化症(またはアテローム発生)が役割を果たしている任意の疾患または生理学的状態の処置、予防、阻害および/または安定化に関連する。さらに、本発明の方法は、以下のような侵襲性技術によって惹起される、アテローム硬化症の標的化において特に有用であり得る:経皮経管冠状動脈形成(「PTCA」);バイパス移植片の挿入またはステントの挿入;ステント設置後の再狭窄の処置;または、バイパス移植片挿入の結果。上述の適用の各々は、本発明の範囲内であることが企図される。なおさらに、本発明の方法から利益を受け得る他の疾患および生理学的状態は、当業者に容易に理解され、そしてまた本発明の範囲内であることが企図される。
【0048】
本発明は、冠状動脈性の心臓病および/または血管疾患の処置のための、遺伝子治療アプローチに基づく。本発明の1つの実施形態において、ApoA−Iコード配列またはApoA−IMilanoコード配列に関連する異種DNAを含むrAAVビリオンは、当該分野で公知の任意の従来技術によって作製される。例として、目的のApoA−I DNAまたはApoA−IMilano DNAを含む本発明の組換えAAVビリオンは、標準的方法論によって作製され得、この方法論は、以下の工程を包含する:(1)AAVベクタープラスミドを宿主細胞内に導入する工程;(2)AAVヘルパー構築物を宿主内に導入する工程であって、このヘルパー構築物は、AAVベクターから失われているAAVヘルパー機能を補完するために宿主細胞内に発現され得るAAVコード領域を含む工程;(3)1以上のヘルパーウイルスおよび/または付属機能(accessory function)ベクターを宿主細胞に導入する工程であって、ここで、このヘルパーウイルスおよび/または付属機能ベクターは、宿主細胞における効率的なrAAVビリオン産生を支持可能な付属機能を提供する工程;ならびに(4)宿主細胞を培養し、rAAVビリオンを産生する工程。AAVベクター、AAVヘルパー構築物およびヘルパーウイルスまたは付属機能ベクターは、標準的トランスフェクション技術を用いて、同時的または連続的に宿主細胞内に導入される。当業者に容易に理解されるように、任意の数の他のアプローチもまた使用され得る。
【0049】
AAVベクターは、少なくとも以下の、転写の方向で作動可能に連結した構成部分を提供するように、公知の技術を用いて構築される:(a)転写開始領域を含む制御エレメント、(b)目的のApoA−I DNAまたはApoA−IMilano DNAおよび(c)転写終止領域。さらに、ApoA−IまたはApoA−IMilanoに相同な任意のコード配列が、(ApoA−Iコード配列またはApoA−IMilanoコード配列と実質的に同様の機能特性を示すように)本発明の代替の実施形態に関連して使用され得る。制御エレメントは、標的細胞内で機能的であるように選択される。得られた構築物(作動可能に連結した構成部分を含む)は、5’および3’で機能的AAV ITR配列と結合され得る。AAV ITR領域のこのヌクレオチド配列は、公知である。例えば、以下を参照:Kotin,R.M.(1994)Human Gene Therapy 5:793−801;Berns,K.I.、「Parvoviridae and their Replication」Fundamental Virology、第2版、(B.N.FieldsおよびD.M.Knipe編)(AAV−2配列について)。AAV ITRは、本発明のベクターにおいて使用され、野生型ヌクレオチド配列を有する必要はなく、そして(例えば、ヌクレオチドの挿入、欠失または置換によって)改変されていてもよい。さらに、AAV ITRは、いくつかのAAV血清型のいずれに由来してもよく、これらの血清型としては、非限定で、AAV−1、AAV−2、AAV−3、AAV−4、AAV−5、AAV−7、AAV−8、AAV−9、AAV−10などが挙げられる。例えば、Gaoら、J Virol.2004 Jun;78(12):6381−8;Weitaman M.ら(2005);Wang,Z.ら(2005);およびWang,ら(2005)を、参照。その上さらに、AAV発現ベクター中の選択されたヌクレオチド配列に隣接する5’ITRおよび3’ITRは、意図されるように(すなわち、結合した目的のApo−Iヌクレオチド配列またはApo−IMilanoヌクレオチド配列の切り出しおよび複製を可能にするように)機能する限り、同一である必要はなく、または同じAAV血清型に由来するかまたは異なるAAV血清型に由来する。
【0050】
AAV ITR内のApo−I導入遺伝子またはApo−IMilano導入遺伝子をコードするrAAVゲノムは、いずれかのAAV血清型(AAV−1、AAV−2、AAV−4、AAV−5、AAV−6、AAV−7、AAV−8、AAV−9、AAV−10などが挙げられる)に由来するビリオンカプシド内に包まれ得る。例えば、Gaoら(2004);Weitzman,M.ら(2005);Wang,Z.ら(2005);およびWang,L.ら(2005)を、参照。
【0051】
上述のビリオンは、冠状動脈性の心臓病および/または血管疾患の予防および処置のために有用であり、したがって、有効量のrAAV−ApoA−IMilanoベクターを、無機または有機の、固体または液体の、薬学的に受容可能なキャリアと混合して含む、薬学的組成物の製造のために有用である。したがって、本発明の別の局面は、本明細書中で記載される冠状動脈性の心臓病および/または血管疾患を予防しそして処置するための組成物であり、この組成物は、薬学的に受容可能な賦形剤と併用される。
【0052】
本発明に従う薬学的組成物は、ヒトへの経口投与、経皮投与、局所投与または非経口投与(例えば、筋肉内投与または静脈内投与)に適した薬学的組成物であり、薬学的に活性なrAAVでトランスフェクトされたベクターを、薬学的に受容可能なキャリアとともに含有する。用量は、種々の因子(例えば、年齢、体重、血管状態の重篤度および医師によって認められる他の因子)に依存する。
【0053】
特定の実施形態において、治療的組成物は、坐剤を介して、または経口送達のための錠剤処方物もしくはカプセル剤処方物中で、投与される。通常、経口処方物は、結合剤、フィラー、キャリア、保存剤、安定剤、乳化剤、緩衝液、および、薬学等級のマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの賦形剤のような、普通に使用される添加剤を含む。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、腸溶性薬物(enteric)、徐放性処方物、散剤などの形態をとる。遺伝子治療のための経口処方物は、当該分野で公知である。例えば、Chen,J.ら(2004)World J.Gastroenterol 10(1):112−116を参照のこと。さらに、他の経口処方物が、当業者に理解されるように、本発明における使用を意図される。
【0054】
他の投与様式(例えば、経皮投与および局所投与)に適したさらなる処方物としては、軟膏、チンキ剤、クリーム剤、ローション剤、経皮パッチ、移植皮膚、遺伝子改変した皮膚、ステントコーティングおよび坐剤が挙げられる。軟膏およびクリーム剤については、代表的な結合剤、キャリアおよび賦形剤として、例えば、ポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドが挙げられる。特定の実施形態において、経皮パッチが、治療法を送達するために使用され得る。例えば、米国特許第4,638,043号を参照。遺伝子治療のための経皮処方物および局所処方物は、当該分野で公知である。例えば、Jensen,TG(2004)Expert Opin Biol Ther.4(5):677−82を参照。さらに、他の経皮処方物および局所処方物が、当業者に理解されるように、本発明における使用を企図される。
【0055】
非経口投与のために特に適した投薬形態は、水溶性形態(例えば、水溶性の塩または滅菌水溶性注射用懸濁液)の薬学的に活性なrAAVでトランスフェクトされたベクターの、滅菌水溶液であって、これらは、粘性を高める物質(例えば、ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ソルビトールおよび/またはデキストラン)および必要に応じて安定剤を含有する。さらに、薬学的に活性なrAAVでトランスフェクトされたベクターは、アジュバントとともにまたはアジュバントなしで、凍結乾燥形態になり得、適切な溶媒の添加により、非経口投与の前に溶液中に入れられる。
【0056】
一般に、本発明の注射可能組成物は、注射のために準備された溶液、もしくは、使用直前に溶媒と合わせるように準備された乾燥水溶性組成物、または、投与の前に希釈するように準備された液体濃縮物であり得る。注射用の組成物の調製においては、刺激を避けるため、張度の調節に非常に注意を払わなければならない。
【0057】
このビヒクルは、普通は治療活性を有さずかつ非毒性であるであるが、吸収に適した形態において、身体組織に対し、薬学的に活性なrAAVでトランスフェクトされたベクターを提示する。吸収は、薬学的に活性なrAAVでトランスフェクトされたベクターが水溶液として提示される時に、迅速かつ完全に起こる。しかし、水混和性の液体でのヒビクルの改変または水非混和性の液体との置き換えは、吸収速度に影響し得る。皮下注射に適した組成物の調製において、水溶性ビヒクル、水混和性ビヒクルおよび非水溶性ビヒクルを使用し得る。特定の水溶性ビヒクルは、その非経口の正当な使用のために、公的に認識されている。
【0058】
水混和性ビヒクルはまた、本発明の非経口組成物の処方においても有用である。これらの溶媒は、主に、薬学的に活性なrAAVでトランスフェクトされたベクターの、水溶性に影響を与えるために使用される。これらの溶媒としては、例えば、エチルアルコール、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールが挙げられ得る。
【0059】
本発明の注射可能組成物中に、組成物の品質を改善するかまたは保護するために、さらなる物質が含まれ得る。したがって、加えられた物質は、水溶性に影響し得、患者の快適さ、化学的安定性の増大、または微生物の増殖に対する保護調製を提供する。したがって、この組成物は、適切な水溶化剤、溶液を等張にする物質、抗酸化剤として作用する物質、および微生物の増殖を阻止するための保存剤として作用する物質を含有し得る。これらの物質は、本明細書中で企図されるような疾患状態の処置の折に、その機能のために適切であるが組成物の作用に悪影響を及ぼさない量で存在する。
【0060】
一般に、本発明の種々の実施形態に従って哺乳動物に送達されるのに適した、本発明の滅菌非経口注射可能組成物および他の治療処方物は、当業者により、慣用的な実験によって容易に調製され得る。適切な薬学的処方物が提供されるための手引きは、以下による:The Science and Practice of Pharmacy、第19版。
【0061】
本発明の実施形態に従い、ApoA−IまたはApoA−IMilanoをコードするrAAVビリオンは、遺伝子導入に影響を及ぼすのに十分な量かつ十分な送達経路で、哺乳動物に送達される。以下の実施例に記載されるように、本発明は、哺乳動物におけるアテローム硬化症に対する有効な処置を提供する。種々の実施形態において、十分かつ治療的な量は、インビボで、約1×1010ベクターゲノム/kgから約1×1014ベクターゲノム/kgまでのrAAV−ApoA−IベクターまたはrAAV−ApoA−IMilanoベクターであり得る。本発明の1つの実施形態において、rAAV−ApoA−IMilanoベクターは、まず、多分化能幹細胞(例えば、骨髄細胞、血液幹細胞、間質細胞、間葉幹細胞など)を、一定量のrAAV−ApoA−IMilanoベクターで形質導入し、次いで、これらの細胞を哺乳動物内に移植することによって、被験体に送達され得る。代替の実施形態において、rAAV−ApoA−IMilanoベクターは、当業者に容易に理解されるように、哺乳動物内に、直接、筋肉内注射または静脈内注射により導入され得るか、PTCAの部位またはステント設置により直接的に動脈内に導入され得る。これは、ApoA−IMilanoの循環への直接的な分泌か、またはアテローム性(atherosclerotic)斑領域における局所的な分泌をもたらす。さらに、本発明のrAAVビリオンは、当業者に容易に理解されるように、単回投与として送達され得るか、または(例えば、毎日、毎週または任意の他の適切な時間間隔での)処置レジメンとして送達され得る。本発明の別の実施形態において、rAAVビリオンの1つの血清型が、単回投与として送達され得、その後、rAAVビリオンの異なる血清型が送達される。
【0062】
本発明はまた、被験体におけるアテローム硬化症および関連疾患状態の処置のためのキットに関する。このキットは、材料および構成要素の集合であり、本発明の種々の実施形態に従い、ApoA−IまたはApoA−IMilanoの被験体への有効な遺伝子導入の少なくとも1つの手段を備える。本発明のキットを構成する構成要素の正確な性質は、意図する目的および使用される特定の方法論に依存する。例えば、このキットのいくつかの実施形態は、哺乳動物被験体におけるアテローム硬化症および/または関連疾患状態を処置する目的のために構成されている。他の実施形態は、例えば血管形成またはステント設置のような別の治療の結果であるアテローム硬化症の発症を予防する目的で構成されている。1つの実施形態において、このキットは、特にヒト被験体を処置する目的で、構成される。
【0063】
指示書が、キットの中に含まれ得る。「指示書」は、代表的に、ビリオンの調製および/または少なくとも1つの方法パラメータ(例えば、AAV−ApoA−Iベクターゲノムおよび/またはrAAV−ApoA−IMilanoベクターゲノムの相対量、投薬条件および投与指示など)を、代表的に意図される目的のために記載する、具体的な表現を含む。必要に応じて、このキットは、他の有用な構成要素(例えば、希釈剤、緩衝液、薬学的に受容可能なキャリア、生検容器、シリンジ、ステント、カテーテル、ならびにピペット用具および測定用具)を含み得る。
【0064】
キット中に集められた材料および構成要素は、任意の便利かつ適切な(その操作性および有用性を保存する)方法で保管されて、医師に提供され得る。例えば、構成要素は、溶解形態、脱水形態または凍結乾燥形態であり得る;これらは、室温、冷蔵温度、または冷凍温度で提供され得る。構成要素は、代表的に、適切な包装材の中に含まれる。本明細書中に使用されるように、語句「包装材」は、このキットの内容物を収容するために使用される、1以上の物理的構造体をいう。包装材は、周知の方法によって構築され、好ましくは、滅菌の汚染物を含まない環境を提供する。このキットにおいて使用される包装材は、当該分野で慣習的に利用されている。本明細書中で使用される場合、用語「包装」は、適切なしっかりした母型または材質(例えば、ガラス、プラスチック、紙、箔など)であり、個々のキット構成要素を包むことが可能である。したがって、例えば、包装は、一定容量のrAAV−ApoA−IベクターおよびrAAV−ApoA−IMilanoを含有する適切な量の組成物を含むために使用される、ガラスバイアルであり得る。包装材は、一般に、内容物および/またはキットの目的および/またはその構成要素を示す、外側ラベルを有する。
【0065】
本発明のツール、キットおよび方法は、アテローム硬化症および関連の疾患状態を処置するための遺伝子治療アプローチに関連して実施され得る。したがって、本発明の種々の実施形態は、上述の疾患状態の予防のための手段を提供する。本発明の実施形態はまた、進行中または完了した治療的介入の成功のモニタリングに関連する。例えば、被験体の血清は、処置の前(ApoA−Iおよび/またはApoA−IMilanoの循環レベルについてスクリーニングするため);処置の経過の間(例えば、有効な処置レジメンを実施する医師の能力を増強するため);および/または介入の完了後(例えば、生活様式の変化、血管形成手術およびバイパス手術のような成功のレベルを決定するため)に試験され得る。
【実施例】
【0066】
(実施例)
以下の実施例は、ApoA−IMilanoをコードするrAAVベクターを使用してアテローム硬化症を処置する遺伝子治療の成功を実証する。これらの実施例は、インビボ(筋肉内注射またはrAAV形質導入造血前駆細胞の移植のいずれか)で、ベクターの成功をさらに実証する。これらの例は、例示の目的にのみ関し、本発明は、これらの実施例に記載されない多くの方法において実施され得る。
【0067】
(実施例1)
(組換えアデノ関連ウイルスベクター)
本発明のrAAVベクターの構築を、宿主細胞の2つの異なるプラスミドでの共トランスフェクションによって完了した。rAAVビリオンを、種々のAAV血清型に由来するプラスミドで調製した。第1のプラスミドの各々において、ApoA−IMilanoを、2つのシス作動性AAV ITRの間にはさんだ。AAV repタンパク質およびAAVcapタンパク質は、AAVのrepタンパク質およびcapタンパク質についてのウイルスオープンリーディングフレームをコードする第2のプラスミドにより、トランスで提供された。1つのビリオンにおいて、第1のプラスミドゲノムは、AAV血清型2に由来し、そして第2のプラスミドは、AAV血清型2に由来した(Rep2Cap2)。第2のビリオン(rAAV5)において、第1のプラスミドゲノムは、AAV血清型5に由来し、そして第2のプラスミドは、AAV血清型5に由来した(Rep5Cap5)。第3のビリオン(rAAV1)において、第1のプラスミドゲノムは、AAV血清型2に由来し、そして第2のプラスミドは、AAV血清型2およびAAV血清型1に由来する(Rep2Cap1)。第4のビリオン(rAAV7)において、第1のプラスミドゲノムは、AAV血清型2に由来し、そして第2のプラスミドは、AAV血清型2およびAAV血清型7に由来する(Rep2Cap7)。第5のビリオン(rAAV8)において、第1のプラスミドゲノムはAAV血清型2に由来し、そして第2のプラスミドゲノムは、AAV血清型2およびAAV血清型8に由来する(Rep2Cap8)。第6のビリオン(rAAV9)において、第1のプラスミドゲノムは、AAV血清型2に由来し、第2のプラスミドは、AAV血清型2およびAAV血清型9に由来する(Rep2Cap9)。他のビリオンは、当業者に理解されるように、本発明の一部として容易に実施され得る。
【0068】
(実施例2)
(動物手順)
8〜12週齢のApoA−I欠損マウス(Jackson Laboratoryから入手;Bar Harbor,ME)を、ウイルス導入のために使用した。マウスを、rAAVの尾静脈内注射および後脚への筋肉内注射のために拘束した。血液サンプルを、眼窩後採血(retro−orbital bleeding)により得、ここで、動物をイソフルレンで安楽死させた。実験動物の使用は、CSHS Institutional Animal Care and Uses Committeeのガイドラインに従った。
【0069】
(実施例3)
(ApoA−IMilanoをコードするrAAVベクターは、動物モデルにおいて抗アテローム発生特性を示す)
ApoA−IMilanoをコードするrAAVベクターの抗アテローム発生特性を、ホモ接合体トランスジェニックアポリポタンパク質E(「ApoE」)−/−マウスにおいて試験した。これらのマウスは、高脂肪食餌を与えた場合、大血管アテローム性斑を発達させる。アテローム発生において中心的役割を果たす泡沫細胞は、骨髄由来のマクロファージから生じ、野生型骨髄細胞の移植は、ApoE−/−マウスにおいてアテローム硬化症の発症を予防することが示されている。この研究において、形質導入した骨髄細胞の移植は、アテローム硬化症の発達から防護するという仮説を、試験した。ApoA−IMilano形質導入骨髄細胞の移植の、アテローム硬化症の程度の低減における効力を、直接の筋肉内ベクター注射と比較した。直接の筋肉内ベクター注射は、ApoA−IMilanoの循環中への直接的な分泌をもたらす。
【0070】
移植片について、10,000,000のApoE−/−骨髄細胞を、rAAV−ApoA−IMilanoで、5000の感染効率(MOI)で一晩形質導入し(37℃、IL−3 10ng/ml、IL−6 10ng/mlおよびSCF 1ng/ml)、洗浄し(3回)、そして6〜8週齢の、致死的に放射線照射した雄ApoE−/−マウスに、尾静脈を介して(1100cGy、2回に分けて)移植した。筋肉内注射について、6〜8週齢ApoE−/−マウスに、1〜5×1012ベクターゲノム/kgを(2×50μLを腓腹筋(Gastrocnemeus muscle)中に)注射した。高脂肪食餌を、骨髄移植の3週間後、筋肉内注射の2週間後から開始した。測量および後眼窩採血を、2週間の間隔で行った。
【0071】
約20〜24週間後、大動脈弓から大腿の分岐部に広がる大動脈および大血管を単離し、オイルレッドOで染色し、そしてアテローム性斑の拡大を定量した。ネガティブコントロールとしては、無関係のrAAVで形質導入した細胞の移植、非形質導入移植片、および未操作マウスが挙げられる。ポジティブコントロールとしては、野生型C57BL6/J骨髄細胞の放射線照射ApoE−/−マウスへの移植が挙げられる。
【0072】
全てのApoA−IMilano処理群は、斑形成における著しい減少を示したが、rAAV−ApoA−IMilano形質導入骨髄の移植およびrAAV−ApoA−IMilanoの筋肉内注射は、コントロールと比較して、大動脈アテローム性斑形成における有意な(約50〜60%)減少を示した。これらの結果は、rAAV−ApoA−IMilano形質導入多分化能幹細胞の移植および直接筋肉内注射は、アテローム硬化症の発達を制御するための新規の有効な戦略を示唆する。
【0073】
(実施例4)
(動物モデルにおいて実証される、筋肉内注射またはrAAV形質誘導骨髄細胞の移植によるアテローム発生の長期的阻害)
ApoA−IMilanoをコードするrAAVベクターのアテローム硬化症の遺伝子治療へのインビボの有効性を、試験した。特に、筋肉内注射またはrAAV形質導入骨髄細胞の移植のいずれかの後の、これらのベクターの有効性を、試験した。
【0074】
ApoE−/−マウスに、約1012ベクターゲノム/kgを、6〜8週齢で注射し、そして2週間後、高脂肪食餌に置いた。処置群の間に、主要な体重の相違は観察されなかった。注射の20〜24週間後、マウスを回収し、大動脈を洗浄し、固定し、マウントし、オイルレッドOで染色して、アテローム性斑領域を定量した。コントロール未処置マウスまたは無関係なrAAVベクターで処置したマウスは、著しいアテローム硬化症病変の形成を示した。対照的に、血漿総コレステロール値には大きな相違がないにもかかわらず、rAAV−2−ApoA−IMilano注射群およびrAAV−5−ApoA−IMilano注射群は、斑形成において有意な減少(それぞれ58%および50%)を示した。
【0075】
骨髄由来の単球およびマクロファージが、アテローム発生において中心的な役割を果たすので、rAAV−ApoA−IMilano形質誘導骨髄細胞もまた、形質誘導マクロファージのアテローム硬化症病変内の局在に起因して、斑形成における減少をもたらすとの仮説を立てた。
【0076】
致死的に放射線照射したApoE−/−マウスに、rAAV形質誘導細胞を移植し、そして2週間後に高脂肪食餌を開始した。移植の約22〜24週間後、マウスを安楽死させ、そして大動脈を、アテローム性斑について分析した。未移植マウスならびに未形質導入骨髄移植マウスおよびコントロールrAAV形質導入骨髄移植マウスは、ネガティブコントロールとして役立った。野生型B6からApoE−/−への移植体は、斑減少についてのポジティブコントロールとして役立った。結果は、ApoA−IMilanoをコードするrAAV−2ベクターおよびrAAV−5ベクターで形質導入した骨髄細胞移植後の、アテローム形成における、それぞれ47%および49%の減少を明らかにした。
【0077】
これらの結果は、rAAV−ApoA−IMilanoの筋肉内注射またはrAAV形質導入骨髄細胞の移植が、rAAVベクターでの単回処理後の、アテローム発生の長期的阻害をもたらすことを示唆する。
【0078】
(実施例5)
(rAAV−ApoA−IMilanoの骨髄移植(translant))
10,000,000のApoE−/−骨髄細胞を、rAAV−ApoA−IMilanoで、5000の感染効率(MOI)で、一晩形質導入し(37℃、IL−3 10ng/ml、IL−6 10ng/mlおよびSCF 1ng/ml)、洗浄し(3回)、そして尾静脈を介して6〜8週齢の致死的に放射線照射したApoE−/−マウスに(1100cGy、2回に分けて)移植した。高脂肪食餌を、全ての処置群について、手順の3週間後に開始した。野生型骨髄を移植したApoE−/−マウスを、実験のポジティブコントロールとして使用した。図13参照。
【0079】
(実施例6)
(rAAV−ApoA−IMilanoの筋肉内注射)
筋肉内注射について、6〜8週齢のApoE−/−マウスに、1〜5×1012ベクターゲノム/kgを(2×50μLを腓腹筋(Gastrocnemeus muscle)中に)注射した。高脂肪食餌を、注射の2週間後に開始した。図14参照。
【0080】
上の記載は、本発明の特定の実施形態を言及するが、多くの改変が本発明の精神から逸脱することなくなされることが、理解される。例えば、当業者に周知の代替の方法論および手順は、本発明と関連して記載されるrAAV形質導入手順に置き換えられ得る。このような代替の方法論および手順は、過度の実験を要せずに容易に実施され得る。従って、ここで開示された実施形態は、全ての局面において例示としてみなされるべきであり、限定としてみなされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1は、本発明の実施形態に従う、ApoE−/−マウスのrAAV2−ApoA−IMilanoベクターによる筋肉内注射後の上清ApoA−Iレベルを示す。
【図2】図2は、本発明の実施形態に従う、筋肉内注射後のApoE−/−マウスの体重を、コントロールベクター処置、rAAVベクター処置、rAAV2−ApoA−IMilanoベクター処置およびrAAV5−ApoA−IMilanoベクター処置について示す。
【図3】図3は、本発明の実施形態に従う、筋肉内注射後のApoE−/−マウスの血漿コレステロールレベルを、コントロールベクター処置、rAAVベクター処置、rAAV2−ApoA−IMilanoベクター処置およびrAAV5−ApoA−IMilanoベクター処置について示す。
【図4】図4は、本発明の実施形態に従う、筋肉内へのrAAV2−ApoA−IMilano遺伝子導入において、体重(図4A)または血漿コレステロールレベル(図4B)で違いがないことを示す。
【図5A】図5は、本発明の実施形態に従う、ネイティブな大動脈のアテローム硬化症に対する筋肉内へのrAAV2−ApoA−IMilano遺伝子導入の効果を示す。図5Aは、PBS処置マウス、コントロールのベクター処置マウスおよびrAAV2−ApoA−IMilano処置マウスの切除した大動脈サンプルの写真を示す。図5Bは、図5Aの写真の大動脈サンプルにおけるプラークの相対的な%を示す。
【図5B】図5は、本発明の実施形態に従う、ネイティブな大動脈のアテローム硬化症に対する筋肉内へのrAAV2−ApoA−IMilano遺伝子導入の効果を示す。図5Aは、PBS処置マウス、コントロールのベクター処置マウスおよびrAAV2−ApoA−IMilano処置マウスの切除した大動脈サンプルの写真を示す。図5Bは、図5Aの写真の大動脈サンプルにおけるプラークの相対的な%を示す。
【図6】図6は、本発明の実施形態に従う、筋肉内へのrAAV2−ApoA−IMilano遺伝子導入の静脈移植片プラークのサイズに対する効果を示す。
【図7A】図7は、本発明の実施形態に従う、筋肉内へのrAAV2−ApoA−1Milano遺伝子導入の静脈移植片におけるマクロファージ(MOMA)免疫反応性に対する効果を示す。図7Aは、PBS、コントロールベクター、およびrAAV2−ApoA−IMilanoによって処置され、染色されたサンプルのマクロファージの写真を示す。図7Bは、図7Aの写真におけるMOMA免疫反応性の相対的な%を示す。
【図7B】図7は、本発明の実施形態に従う、筋肉内へのrAAV2−ApoA−1Milano遺伝子導入の静脈移植片におけるマクロファージ(MOMA)免疫反応性に対する効果を示す。図7Aは、PBS、コントロールベクター、およびrAAV2−ApoA−IMilanoによって処置され、染色されたサンプルのマクロファージの写真を示す。図7Bは、図7Aの写真におけるMOMA免疫反応性の相対的な%を示す。
【図8A】図8は、本発明の実施形態に従う、筋肉内へのrAAV2−ApoA−IMilano遺伝子導入の静脈移植片中の脂質内容物に対する効果を示す。図8Aは、PBS、コントロールベクター、およびrAAV2−ApoA−IMilanoによって処置されたマウスにおいて、脂質の蓄積を示す染色されたサンプルの写真を示す。図8Bは、図8Aの写真における脂質内容物の相対的な%を示す。
【図8B】図8は、本発明の実施形態に従う、筋肉内へのrAAV2−ApoA−IMilano遺伝子導入の静脈移植片中の脂質内容物に対する効果を示す。図8Aは、PBS、コントロールベクター、およびrAAV2−ApoA−IMilanoによって処置されたマウスにおいて、脂質の蓄積を示す染色されたサンプルの写真を示す。図8Bは、図8Aの写真における脂質内容物の相対的な%を示す。
【図9】図9は、本発明の実施形態に従う、筋肉内へのrAAV2−ApoA−IMilano遺伝子導入の、大動脈洞プラークのサイズに対する効果を示す。
【図10A】図10は、本発明の実施形態に従う、筋肉内へのrAAV2−ApoA−IMilano遺伝子導入の、大動脈洞中のマクロファージ免疫反応性に対する効果を示す。図10Aは、PBS処置マウス、コントロールベクター処置マウス、およびrAAV2−ApoA−IMilano処置マウスの染色されたサンプルの写真を示す。図10Bは、図10Aの写真におけるマクロファージ免疫反応性の相対的な%を示す。
【図10B】図10は、本発明の実施形態に従う、筋肉内へのrAAV2−ApoA−IMilano遺伝子導入の、大動脈洞中のマクロファージ免疫反応性に対する効果を示す。図10Aは、PBS処置マウス、コントロールベクター処置マウス、およびrAAV2−ApoA−IMilano処置マウスの染色されたサンプルの写真を示す。図10Bは、図10Aの写真におけるマクロファージ免疫反応性の相対的な%を示す。
【図11A】図11は、本発明の実施形態に従う、筋肉内へのrAAV2−ApoA−IMilano 遺伝子導入の大動脈洞中の脂質内容物に対する効果を示す。図11Aは、PBS処置マウス、コントロールベクター処置マウス、およびrAAV2−ApoA−IMilano処置マウスの、脂質の蓄積を示す染色されたサンプルの写真を示す。図11Bは、図11Aの写真における脂質内容物の相対的な%を示す。
【図11B】図11は、本発明の実施形態に従う、筋肉内へのrAAV2−ApoA−IMilano 遺伝子導入の大動脈洞中の脂質内容物に対する効果を示す。図11Aは、PBS処置マウス、コントロールベクター処置マウス、およびrAAV2−ApoA−IMilano処置マウスの、脂質の蓄積を示す染色されたサンプルの写真を示す。図11Bは、図11Aの写真における脂質内容物の相対的な%を示す。
【図12】図12は、本発明の実施形態に従う、高脂肪食を与えたマウスにおける大動脈弓の病変の写真を示す。図12Aは、コントロールの大動脈弓を示し、そして図12Bは、rAAV2−ApoA−IMilanoによって形質転換された骨髄移植組織を受容するマウスの大動脈弓を示す。図12Cは、コントロールの大動脈弓およびrAAV2−ApoA−IMilanoの筋肉内注射を受けるマウスの大動脈弓を示す。
【図13】図13は、本発明の実施形態に従う、単離され、そしてオイルレッドOによって染色された大動脈弓から大腿の分岐まで延びる大動脈および大血管を、高脂肪食における20〜24週間後のアテローム斑の程度について示す。1000万個のApoE−/−骨髄細胞は、5000の感染効率(MOI)でrAAV−ApoA−IMilanoによって一晩形質転換され(37℃、10ng/mlのIL−3、10ng/mlのIL−6および1ng/mlのSCF)、洗浄され(3回)、そして尾静脈を介して6〜8週齢の、致死的に放射線照射された雄ApoE−/−マウス(1100cGy、分割用量)中に移植された。高脂肪食は、全ての処置群に対して、上記手順の3週間後に開始された。図13Aは、野生型の骨髄を移植されたApoE−/−マウスについての結果を示す。これは、この実験のポジティブコントロールである。図13Bは、rAAV−2−Apo A1 milano形質転換された骨髄細胞を移植されたApoE−/−マウスについての結果を示す。オイルレッド染色されたプラークを欠くマウス(mthe)に注目する。図13Cは、高脂肪食下における移植物を有さないApoE−/−マウスについての結果を示す。多くのアテローム斑が、目視できる。図13Dは、高脂肪食下における形質転換されていない骨髄移植物を有するApoE−/−マウスについての結果を示す。
【図14】図14は、本発明の実施形態に従う、単離され、そしてオイルレッドOによって染色された大動脈弓から大腿の分岐まで延びる大動脈および大血管を、高脂肪食における20〜24週間後のアテローム斑の程度について示す。筋肉内注射に関して、6〜8週齢のApoE−/−マウスは、1×10−12ベクターゲノム/kg〜5×10−12ベクターゲノム/kg(腓腹筋中に2×50μL)を注射された。高脂肪食は、注射の2週間後に開始された。図14Aは、注射を伴わないマウスについての結果を示す。図14Bは、コントロールの無関係なrAAV−2ベクターを伴うマウスについての結果を示す。図14Cは、rAAV2−ApoA−IMilanoをIM注射した後の結果を示す。図14Dは、rAAV5−ApoA−IMilanoをIM注射した後の結果を示す。
【図15】図15は、本発明の実施形態に従う、単回rAAV−ApoA−IMilano筋肉内注射の抗アテローム発生効果を示す。グラフは、コントロール処置マウス、非トランスフェクトrAAVベクター処置マウスおよびrAAV2−ApoA−IMilano処置マウスにおけるプラークを有する大動脈の表面の%を示す。
【図16】図16は、本発明の実施形態に従う、rAAV−ApoA−IMilanoの単回筋肉内注射後におけるプラーク形成の阻害を示す。グラフは、コントロール処置マウス、非トランスフェクトrAAVベクター処置マウス、ならびにrAAV1−ApoA−IMilano処置マウス、rAAV2−ApoA−IMilano処置マウスおよびrAAV5−ApoA−IMilano処置マウスにおけるプラークを有する大動脈の表面の%を示す。
【図17】図17は、本発明の実施形態に従う、rAAV−ApoA−IMilanoの単回筋肉内注射後におけるApoE欠損マウスの大動脈プラーク中の脂質内容物およびマクロファージ内容物の減少を示す。グラフは、コントロール処置マウスおよびrAAV2−ApoA−IMilano処置マウスにおける、大動脈洞中の脂質の%およびマクロファージ免疫反応性の%を示す。
【図18】図18は、本発明の実施形態に従う、rAAV−ApoA−IMilanoによって形質転換された骨髄の移植後のApoEヌルマウスにおけるアテローム硬化症の減少を示す。グラフは、コントロール処置マウス、非形質転換の骨髄移植物処置マウス、非トランスフェクトrAAVベクター処置マウス、rAAV1−ApoA−IMilano処置マウス、rAAV2−ApoA−IMilano処置マウスおよびrAAV5−ApoA−IMilano処置マウス、ならびにApoE−/−骨髄処置マウスにおける大動脈プラークの%を示す。
【図19】図19は、本発明の実施形態に従う、rAAV−ApoA−IMilanoによって形質転換された骨髄の移植後における、ApoE欠損マウスの大動脈プラークの脂質内容物およびマクロファージ内容物の減少を示す。グラフは、コントロール処置マウスおよびrAAV2−ApoA−IMilano処置マウスにおける、大動脈洞中の脂質の%およびマクロファージ免疫反応性の%を示す。
【図20】図20は、本発明の実施形態に従う、ApoA−1(野生型)およびApoA−IMilano遺伝子を保有するレトロウイルスによって形質転換された骨髄の移植における、顕著な抗アテローム発生効果を示す。グラフは、コントロール処置マウス、ApoA−I野生型処置マウスおよびApoA−IMilano処置マウスにおける大動脈のアテロームの%を示す。
【図21】図21は、本発明の実施形態に従う、ゲノム中に挿入されるヒトApoA−IMilano遺伝子をコードする野生型rAAVベクターの構造を示す。この構築物は、遺伝子送達の後にゲノム中に挿入されるか、またはこの構築物は、ゲノムへの挿入を伴わずに細胞中で残存し得、これらの両方は、AAVに関して可能である。
【図22】図22は、本発明の実施形態に従う、ゲノム中に挿入されるヒトApoA−IMilano遺伝子をコードするrAAVベクターの、血清型2および血清型5のベクター地図を示す。これらの構築物は、遺伝子送達の後にゲノム中に挿入されるか、またはこの構築物は、ゲノムへの挿入を伴わずに細胞中で残存し得、これらの両方は、AAVに関して起こり得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを保有する細胞であって、アポリポタンパク質A−I(ApoA−I)、ApoA−IMilano、ApoA−1もしくはApoA−IMilanoのフラグメント、またはApoA−1もしくはApoA−IMilanoの誘導体をコードする外来遺伝子をさらに含む、細胞。
【請求項2】
前記外来遺伝子がApoA−IMilanoである、請求項1に記載の細胞。
【請求項3】
請求項1に記載の細胞であって、前記rAAVベクターが、以下:
(i)前記外来遺伝子を含む第1のプラスミドを提供する工程、
(ii)該第1のプラスミドに相補的であり、かつレスキューおよびパッケージングのための構成要素を含む第2のプラスミドを提供する工程、
(iii)該第1のプラスミドと該第2のプラスミドとを宿主細胞に同時トランスフェクトする工程、および
(iv)該同時トランスフェクトされた宿主細胞から一定量の該rAAVベクターを生成する工程、
のプロセスによって生成され、ここで、該第1のプラスミドと該第2のプラスミドとの対が、該rAAVベクターが特定の組織型への送達を目標とするように選択される、細胞。
【請求項4】
請求項3に記載の細胞であって、前記第2のプラスミドが、あるAAV血清型に由来するAAVレスキュー構成要素およびAAVパッケージング構成要素をさらに含み、該血清型が、AAV1、AAV2、AAV5、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、細胞。
【請求項5】
前記細胞が幹細胞である、請求項1に記載の細胞。
【請求項6】
前記細胞が多能性幹細胞である、請求項1に記載の細胞。
【請求項7】
前記細胞が骨髄細胞である、請求項1に記載の細胞。
【請求項8】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターであって、以下:
(a)アポリポタンパク質A−I(ApoA−I);
(b)ApoA−IMilano
(c)(a)もしくは(b)のフラグメント;または
(d)(a)もしくは(b)の誘導体、
をコードする外来遺伝子を含む、ベクター。
【請求項9】
前記外来遺伝子がApoA−IMilanoである、請求項8に記載のベクター。
【請求項10】
請求項8に記載のベクターであって、該rAAVベクターが、以下:
(i)前記外来遺伝子を含む第1のプラスミドを提供する工程、
(ii)該第1のプラスミドに相補的であり、かつレスキューおよびパッケージングのための構成要素を含む第2のプラスミドを提供する工程、
(iii)該第1のプラスミドと該第2のプラスミドとを宿主細胞に同時トランスフェクトする工程、および
(iv)該同時トランスフェクトされた宿主細胞から一定量の該rAAVベクターを生成する工程、
のプロセスによって生成され、ここで、該第1のプラスミドと該第2のプラスミドとの対が、該rAAVベクターが特定の組織型への送達を目標とするように選択される、ベクター。
【請求項11】
請求項10に記載のベクターであって、前記第2のプラスミドが、あるAAV血清型に由来するAAVレスキュー構成要素およびAAVパッケージング構成要素をさらに含み、該血清型が、AAV1、AAV2、AAV5、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、ベクター。
【請求項12】
組成物であって、以下:
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターであって、アポリポタンパク質A−I(ApoA−I)、ApoA−IMilano、ApoA−IもしくはApoA−IMilanoのフラグメント、またはApoA−IもしくはApoA−IMilanoの誘導体をコードする外来遺伝子をさらに含む、ベクター;および
キャリア、
を含有する、組成物。
【請求項13】
前記ベクターが哺乳動物への送達のために処方されている、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記外来遺伝子がApoA−IMilanoである、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
請求項12に記載の組成物であって、前記rAAVベクターが、以下:
(i)前記外来遺伝子を含む第1のプラスミドを提供する工程、
(ii)該第1のプラスミドに相補的であり、かつレスキューおよびパッケージングのための構成要素を含む第2のプラスミドを提供する工程、
(iii)該第1のプラスミドと該第2のプラスミドとを宿主細胞に同時トランスフェクトする工程、および
(iv)該同時トランスフェクトされた宿主細胞から一定量の該rAAVベクターを生成する工程、
のプロセスによって生成され、ここで、該第1のプラスミドと該第2のプラスミドとの対が、該rAAVベクターが特定の組織型への送達を目標とするように選択される、組成物。
【請求項16】
請求項15に記載の組成物であって、前記第2のプラスミドが、あるAAV血清型に由来するAAVレスキュー構成要素およびAAVパッケージング構成要素をさらに含み、該血清型が、AAV1、AAV2、AAV5、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、組成物。
【請求項17】
哺乳動物における状態を処置する方法であって、以下:
アポリポタンパク質A−I(ApoA−I)、ApoA−IMilano、ApoA−IもしくはApoA−IMilanoのフラグメント、またはApoA−IもしくはApoA−IMilanoの誘導体をコードする外来遺伝子を含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを提供する工程;および
該哺乳動物に、該状態を処置するのに十分な量の該rAAVベクターを送達する工程、
を包含する、方法。
【請求項18】
前記外来遺伝子がApoA−IMilanoである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法であって、前記rAAVベクターが、以下:
(i)前記外来遺伝子を含む第1のプラスミドを提供する工程、
(ii)該第1のプラスミドに相補的であり、かつレスキューおよびパッケージングのための構成要素を含む第2のプラスミドを提供する工程、
(iii)該第1のプラスミドと該第2のプラスミドとを宿主細胞に同時トランスフェクトする工程、および
(iv)該同時トランスフェクトされた宿主細胞から一定量の該rAAVベクターを生成する工程、
のプロセスによって生成され、ここで、該第1のプラスミドと該第2のプラスミドとの対が、該rAAVベクターが特定の組織型への送達を目標とするように選択される、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、前記第2のプラスミドが、あるAAV血清型に由来するAAVレスキュー構成要素およびAAVパッケージング構成要素をさらに含み、該血清型が、AAV1、AAV2、AAV5、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、方法。
【請求項21】
請求項17に記載の方法であって、前記状態が、冠動脈性心臓疾患、動脈硬化症、アテローム硬化症、アテローム発生、血管炎症、サイトカインもしくは他の分泌産物の異常なレベルでの放出、炎症反応もしくは免疫応答の抑制もしくは悪化、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、方法。
【請求項22】
前記哺乳動物がヒトである、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記状態の処置に十分な量が、前記哺乳動物1kgあたり約1×1010ベクターゲノム〜該哺乳動物1kgあたり約1×1014ベクターゲノムである、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記ベクターが、前記哺乳動物に、筋肉内送達されるか、静脈内送達されるか、または筋肉内送達かつ静脈内送達される、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
請求項17に記載の方法であって、前記rAAVベクターを提供する工程が、一定量の該rAAVベクターで多能性幹細胞に形質導入する工程をさらに包含し、そして該rAAVベクターを送達する工程が、該多能性幹細胞を前記哺乳動物に移植する工程をさらに包含する、方法。
【請求項26】
前記細胞が骨髄細胞である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
哺乳動物における疾患状態を処置するためのキットであって、以下:
アポリポタンパク質A−I(ApoA−I)、ApoA−IMilano、ApoA−IもしくはApoA−IMilanoのフラグメント、またはApoA−IもしくはApoA−IMilanoの誘導体をコードする外来遺伝子を含む、一定量の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター;および
該哺乳動物における状態を処置するために該量のrAAVベクターを使用するための、指示書、
を備える、キット。
【請求項28】
前記外来遺伝子がApoA−IMilanoである、請求項27に記載のキット。
【請求項29】
請求項27に記載のキットであって、前記rAAVベクターが、以下:
(i)前記外来遺伝子を含む第1のプラスミドを提供する工程、
(ii)該第1のプラスミドに相補的であり、かつレスキューおよびパッケージングのための構成要素を含む第2のプラスミドを提供する工程、
(iii)該第1のプラスミドと該第2のプラスミドとを宿主細胞に同時トランスフェクトする工程、および
(iv)該同時トランスフェクトされた宿主細胞から一定量の該rAAVベクターを生成する工程、
のプロセスによって生成され、ここで、該第1のプラスミドと該第2のプラスミドとの対が、該rAAVベクターが特定の組織型への送達を目標とするように選択される、キット。
【請求項30】
請求項29に記載のキットであって、前記第2のプラスミドが、あるAAV血清型に由来するAAVレスキュー構成要素およびAAVパッケージング構成要素をさらに含み、該血清型が、AAV1、AAV2、AAV5、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、キット。
【請求項31】
請求項27に記載のキットであって、前記状態が、冠動脈性心臓疾患、動脈硬化症、アテローム硬化症、アテローム発生、血管炎症、サイトカインもしくは他の分泌産物の異常なレベルでの放出、炎症反応もしくは免疫応答の抑制もしくは悪化、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、キット。
【請求項32】
前記哺乳動物がヒトである、請求項27に記載のキット。
【請求項33】
前記ベクターが多能性幹細胞へと形質導入される、請求項27に記載のキット。
【請求項34】
前記細胞が骨髄細胞である、請求項33に記載のキット。
【請求項35】
rAAVベクターを調製する方法であって、以下:
(i)アポリポタンパク質A−I(ApoA−I)、ApoA−IMilano、ApoA−IもしくはApoA−IMilanoのフラグメント、またはApoA−IもしくはApoA−IMilanoの誘導体をコードする外来遺伝子を含む、第1のプラスミドを提供する工程、
(ii)該第1のプラスミドに相補的であり、かつレスキューおよびパッケージングのための構成要素を含む第2のプラスミドを提供する工程、
(iii)該第1のプラスミドと該第2のプラスミドとを宿主細胞に同時トランスフェクトする工程、および
(iv)該同時トランスフェクトされた宿主細胞から一定量の該rAAVベクターを生成する工程、
を包含し、ここで、該第1のプラスミドと該第2のプラスミドとの対が、該rAAVベクターが特定の組織型への送達を目標とするように選択される、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2007−531537(P2007−531537A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507425(P2007−507425)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【国際出願番号】PCT/US2005/011466
【国際公開番号】WO2005/097206
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(398062149)セダーズ−シナイ メディカル センター (34)
【出願人】(598004424)シティ・オブ・ホープ (15)
【氏名又は名称原語表記】City of Hope
【住所又は居所原語表記】1500 East,Duarte Road,Duarte,California 91010−0269,United States of America
【Fターム(参考)】