説明

アミド酸オリゴマー溶液組成物を用いたポリイミド膜の製造方法、及びアミド酸オリゴマー溶液組成物

【課題】 3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、パラフェニレンジアミン及び/又は4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを用いた特定の繰返し単位のアミド酸オリゴマー溶液組成物を、基材に塗布して塗膜を形成し、前記基材上の塗膜を加熱処理することによって、発泡や割れを起こすことなく、また特性を低下させることなく、ポリイミド膜を好適に得る。
【解決手段】 前記組成からなり、対数粘度(ηinh)が0.4以下のアミド酸オリゴマーを、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンから選ばれる2種以上の溶媒からなる混合溶媒に溶解したアミド酸オリゴマー溶液組成物を用いることを特徴とするポリイミド膜の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の繰返し単位からなるアミド酸オリゴマーを特定溶媒の組合せからなる混合溶媒に溶解したアミド酸オリゴマー溶液組成物を、基材に塗布して塗膜を形成し、前記基材上の塗膜を加熱処理することによって、ポリイミド膜を得ることを特徴とするポリイミド膜の製造方法、及び前記アミド酸オリゴマー溶液組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド膜は、通常テトラカルボン酸二無水物とジアミンとからポリアミド酸溶液組成物を調製し、このポリアミド酸溶液組成物を基材に塗布して形成した塗膜を、加熱処理によってイミド化することによって得ることができる。
【0003】
ところで、芳香族ポリアミド酸は溶媒に対する溶解性に限界があり、高濃度化すると容易に高粘度化・ゲル化するので安定して使用することができなかったり、それを用いて塗膜を形成するのが難しくなったりすることがあった。このために、通常の芳香族ポリアミック酸溶液組成物の固形分濃度はせいぜい20質量%程度であり、より高濃度の芳香族ポリアミド酸溶液組成物をポリイミド膜の製造に用いることは困難であった。一方、低濃度のポリアミド酸溶液組成物を用いると、一度により厚いポリイミド膜を形成することが困難であり、多量の溶媒を用いて溶液組成物を調製し且つ前記多量の溶媒を蒸発除去する必要が生じるために経済的ではなかった。
【0004】
この問題を解決するために、ポリアミド酸よりも低分子量のアミド酸オリゴマーを用いて高濃度化したアミド酸オリゴマー溶液組成物を使用してポリイミド膜を製造することが考えられる。
しかしながら、少なくともテトラカルボン酸成分として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ジアミン成分としてパラフェニレンジアミン及び/又は4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを用いて得られる低分子量のアミド酸オリゴマー溶液組成物を使用してポリイミド膜を製造しようとすると、加熱処理の際に発泡や割れが起こってポリイミド膜を得ることができなかったり、或いはポリイミド膜を得ることができてもポリアミック酸溶液組成物を用いて得られるポリイミド膜に比べて特性が著しく劣ったポリイミド膜になるという問題があった。
【0005】
特許文献1には、分子量を所定の低分子量に制御して、高濃度且つ低粘度のアミド酸オリゴマー溶液組成物の調製方法が開示されている。
【0006】
特許文献2には、テトラカルボン酸成分として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ジアミン成分としてパラフェニレンジアミン及び/又は4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを用いて得られるポリアミド酸溶液組成物から半導電性ベルトを製造することが記載されているが、アミド酸オリゴマーを用いたポリイミド膜の製造方法については何ら記載がない。
【0007】
特許文献3には、特定の溶媒の組合せからなる混合溶媒を用いたポリアミド酸溶液組成物からポリイミド無端ベルトを製造することが記載されているが、アミド酸オリゴマー溶液組成物を用いたポリイミド膜の製造方法については記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−144159号公報
【特許文献2】特開2001−142313号公報
【特許文献3】特開2005−163007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、テトラカルボン酸成分として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ジアミン成分としてパラフェニレンジアミン及び/又は4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを用いて得られる特定の繰返し単位からなるアミド酸オリゴマー溶液組成物を、基材に塗布して塗膜を形成し、前記基材上の塗膜を加熱処理することによって、発泡や割れを起こすことなく、また得られるポリイミド膜の特性を低下させることなく、優れた特性を有するポリイミド膜を好適に得ることができるポリイミド膜の製造方法、及び前記アミド酸オリゴマー溶液組成物を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は以下の項に関する。
1) 下記化学式(1)で表される繰返し単位を有し対数粘度(ηinh)が0.4以下、好ましくは0.35以下、より好ましくは0.3以下、さらに好ましくは0.3未満のアミド酸オリゴマーを、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンから選ばれる2種以上の溶媒からなる混合溶媒に溶解したアミド酸オリゴマー溶液組成物を、基材に塗布して塗膜を形成し、前記基材上の塗膜を加熱処理することによって、ポリイミド膜を得ることを特徴とするポリイミド膜の製造方法。
【0011】
【化1】

化学式(1)において、Aは下記化学式(2)であり、Bは下記化学式(3)及び/又は下記化学式(4)である。
【0012】
【化2】

【0013】
【化3】

【0014】
【化4】

【0015】
2) アミド酸オリゴマー溶液組成物のアミド酸オリゴマーに由来する固形分濃度が、アミド酸オリゴマーと混合溶媒との合計量に対して、25質量%を越える、好ましくは27質量%を越える、より好ましくは30質量%を越える高濃度であることを特徴とする前記項1に記載のポリイミド膜の製造方法。
【0016】
3) アミド酸オリゴマー溶液組成物の混合溶媒を構成している各溶媒が、全溶媒100質量%中7〜93質量%、好ましくは15〜85質量%、より好ましくは30〜70質量の範囲で混合されていることを特徴とする前記項1〜2のいずれかに記載のポリイミド膜の製造方法。
【0017】
4) 化学式(1)のBが、10〜100モル%の化学式(3)と90〜0モル%の化学式(4)とからなること、好ましくは20〜100モル%の化学式(3)と80〜0モル%の化学式(4)とからなること、より好ましくは20〜90モル%の化学式(3)と80〜10モル%の化学式(4)とからなること、さらに好ましくは40〜90モル%の化学式(3)と60〜10モル%の化学式(4)とからなることを特徴とする前記項1〜3のいずれかに記載のポリイミド膜の製造方法。
【0018】
5) シームレスベルトを得ることを特徴とする前記項1〜4のいずれかに記載のポリイミド膜の製造方法。
【0019】
6) 下記化学式(1)で表される繰返し単位を有し対数粘度(ηinh)が0.4以下、好ましくは0.35以下、より好ましくは0.3以下、さらに好ましくは0.3未満のアミド酸オリゴマーを、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンから選ばれる2種以上の溶媒からなる混合溶媒に溶解したことを特徴とするアミド酸オリゴマー溶液組成物。
【0020】
【化5】

化学式(1)において、Aは下記化学式(2)であり、Bは下記化学式(3)及び/又は下記化学式(4)である。
【0021】
【化6】

【0022】
【化7】

【0023】
【化8】

【0024】
7) アミド酸オリゴマーに由来する固形分濃度が、アミド酸オリゴマーと混合溶媒との合計量に対して、25質量%を越える、好ましくは27質量%を越える、より好ましくは30質量%を越える高濃度であることを特徴とする前記項6に記載のアミド酸オリゴマー溶液組成物。
【0025】
8) 化学式(1)のBが、10〜100モル%の化学式(3)と90〜0モル%の化学式(4)とからなること、好ましくは20〜100モル%の化学式(3)と80〜0モル%の化学式(4)とからなること、より好ましくは20〜90モル%の化学式(3)と80〜10モル%の化学式(4)とからなること、さらに好ましくは40〜90モル%の化学式(3)と60〜10モル%の化学式(4)とからなることを特徴とする前記項6〜7のいずれかに記載のアミド酸オリゴマー溶液組成物。
【発明の効果】
【0026】
本発明によって、テトラカルボン酸成分として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ジアミン成分としてパラフェニレンジアミン及び/又は4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを用いて得られる特定の繰返し単位からなるアミド酸オリゴマー溶液組成物を、基材に塗布して塗膜を形成し、前記基材上の塗膜を加熱処理することによって、発泡や割れを起こすことなく、また得られるポリイミド膜の特性を低下させることなく、優れた特性を有するポリイミド膜を好適に得ることができるポリイミド膜の製造方法、及び前記アミド酸オリゴマー溶液組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明のアミド酸オリゴマー溶液組成物で用いられる溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンからなる群から選ばれる2種以上の溶媒からなる混合溶媒である。
混合溶媒の組合せは、2種、3種或いは4種の組合せのいずれでも構わないが、混合溶媒における各溶媒の混合割合は、各溶媒が全溶媒100質量%中7〜93質量%、好ましくは15〜85質量%、より好ましくは30〜70質量%の範囲で混合されることが好適である。混合割合が前記範囲よりも低いと混合したことによって得られる効果が十分ではなくなる。
本発明において、ジアミン成分中のパラフェニレンジアミンの割合が高い(40モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上)場合には、N−メチル−2−ピロリドンと、N−エチル−2−ピロリドン及び/又はN,N−ジメチルアセトアミドとの組合せからなる混合溶媒がより好ましい。
【0028】
単独溶媒の場合や、これらの溶媒以外の組合せからなる混合溶媒の場合には、加熱処理の際に発泡や割れが起こってポリイミド膜を得ることができなかったり、或いはポリイミド膜を得ることができても、同じ化学組成からなるポリアミド酸溶液組成物を用いたポリイミド膜に較べてポリイミド膜の特性が著しく劣るものになるので好適ではない。
【0029】
本発明のアミド酸オリゴマー溶液組成物は、前記化学式(1)の繰返し単位からなり、対数粘度(ηinh)が0.4以下、好ましくは0.35以下、より好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.3未満のアミド酸オリゴマーを、前記混合溶媒に溶解したことを特徴とするポリアミド酸オリゴマー溶液組成物である。
対数粘度が前記よりも大きなポリアミド酸を用いると、高濃度且つ低粘度の実用的なポリイミド前駆体溶液組成物を得ることが難しくなる。
なお、本発明のアミド酸オリゴマーは、少なくとも前記化学式(1)の繰返し単位を有するが、いわゆるアミック酸オリゴマーに加え、1分子のジアミンに1分子又は2分子のテトラカルボン酸二無水物が反応したり、或いは1分子のテトラカルボン酸二無水物に1分子又は2分子のジアミンが反応した程度の低分子量アミド酸化合物、末端の酸無水物基が加水分解やエステル化した低分子量アミド酸化合物、さらにカルボン酸化合物やエステル化物やジアミンなどの原料成分などを含んでも構わない。なお、対数粘度(ηinh)は0.01程度以上、好ましくは0.05以上程度である。
【0030】
本発明のアミド酸オリゴマーを製造する方法は、それ自身公知のアミド酸オリゴマーの製造方法を好適に採用することができる。例えば特開昭57−131248号公報には、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを実質的に等モル量使用して、その酸二無水物1モルに対して約0.5〜40モル倍の水を含有する有機極性溶媒中で、100℃以下の反応温度で反応させ、その反応液が均一な溶液となった後、その反応溶液から遊離の水を除去して、その反応溶液中の遊離の水の含有率を、核磁気共鳴スペクトル法で測定して0.5重量%以下にすることを特徴とする製造方法が記載されている。特開2001−163974号公報には、テトラカルボン酸1モルに対してジアミンを0.7〜0.98モルの割合で反応させた後、水又はアルコールで末端の酸無水物基を開環させ、次いでその化合物対して0.95〜1.05モルのジアミンを加える製造方法が記載されている。また特開2008−144159号公報(特許文献1)には、前工程でジアミン成分と前記ジアミン成分に対して過剰モル量のテトラカルボン酸成分とを、前記テトラカルボン酸成分に対して1/3モル倍を越える量の水を含有する溶媒中で反応してアミド酸オリゴマー溶液を調製し、次いで、後工程で前記アミド酸オリゴマー溶液へジアミン成分とテトラカルボン酸成分とが実質的に等モル量になるようにジアミン成分、又はジアミン成分及びテトラカルボン酸成分を加えて更に反応することを特徴とする製造方法が記載されている。
【0031】
以下、特開2008−144159号公報(特許文献1)の方法に基づいて本発明のアミド酸オリゴマー溶液組成物の製造方法について説明する。
本発明のアミド酸オリゴマーは、前工程で、パラフェニレンジアミン及び/又はジアミノジフェニルエーテルからなるアミン成分と、前記ジアミン成分に対して過剰モル量の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなるテトラカルボン酸成分とを、前記テトラカルボン酸成分に対して1/3モル倍を越える量の水を含有する溶媒中で反応してアミド酸オリゴマー溶液を調製する。ここでは主にジアミン成分とテトラカルボン酸成分とのモル比に依存した分子量(低分子量)のアミド酸オリゴマーが形成される。このアミド酸オリゴマーは概ね両末端にテトラカルボン酸二無水物成分が配置し、この末端に配置したテトラカルボン酸二無水物由来の無水物基のうちでアミド酸結合の形成に関与しなかった無水物基は、溶媒中に存在する水によって加水分解されて2つのカルボキシル基になる。
ここで、水の量が少な過ぎると、無水物基の多くがそのまま残り、後工程で追加されたジアミンと反応して高分子量のポリアミド酸を形成することになるので、低分子量のアミド酸オリゴマーを得るのが難しくなる。
前工程においては、0.05〜2重量%、より好ましくは0.05〜1重量%の水を含有する溶媒を用いるのが好適である。2重量%を越える水を含有する溶媒中では、酸無水物基とアミノ基との反応と酸無水物基と水との反応がより競争的になるために、所定の低分子量のアミド酸オリゴマーを再現性よく調製することが難しくなる。しかも、得られたアミド酸オリゴマー溶液中に多量の水が存在すると溶液安定性が悪くなることがある。
【0032】
この前工程では、ジアミン成分とジアミン成分量に対して過剰モル量のテトラカルボン酸成分とを反応するが、テトラカルボン酸成分量のジアミン成分量に対するモル比(テトラカルボン酸成分モル量/ジアミン成分モル量)は、好ましくは1.2以上であり、より好ましくは1.5以上であり、通常は1.5〜5.0程度である。モル比が2以上の場合には、反応後のポリアミック酸溶液内にジアミン成分と反応しなかったテトラカルボン酸成分の酸無水物基が溶媒中の水によって加水分解されて主としてテトラカルボン酸になって共存するが、均一に溶解しているのであれば特に問題はない。
また、この前工程でポリアミック酸溶液を調製するのに用いるテトラカルボン酸成分の全量を溶媒に加えて反応し、後工程ではテトラカルボン酸成分を加えないようにすることもできるが、後工程でジアミン成分のみを加えることは製造上好ましくない。前工程では用いるテトラカルボン酸成分の一部を溶媒に加えて反応し、後工程ではジアミン成分及びテトラカルボン酸成分を加えて更に反応してポリアミック酸溶液を調製することが好ましい。すなわち、後工程でジアミン成分のみを加えて更に反応するためには、イミド化反応を抑制できない程度まで加熱が必要になることがあり、また得られたポリアミック酸溶液は着色したり、溶液安定性が低下したりすることがある。
通常、前工程で反応させるテトラカルボン酸成分の量は、前工程及び後工程において反応させるテトラカルボン酸成分の全量に対して10〜70モル%であることが好ましく、20〜50モル%であることがより好ましい。前工程で用いるテトラカルボン酸成分がこの範囲外になると、得られるアミック酸溶液の溶液安定性(粘度安定性)が悪くなることがある。
【0033】
この前工程の反応条件は、イミド化を抑制し付加反応によってアミド酸結合を生成する反応条件であれば特に限定はない。常圧下で行うのが好適であるが、加圧又は減圧条件下でも構わない。温度条件は好ましくは100℃以下、より好ましくは20〜80℃の温度範囲であり、通常の前工程では、前記温度条件下で1〜100時間程度反応させる。また、反応は窒素ガスなどの不活性ガスの雰囲気中で好適に行うことができる。
【0034】
この前工程で得られるアミド酸オリゴマーの対数粘度は好ましくは0.4以下、より好ましくは0.01〜0.4である。前工程で得られたポリアミック酸の対数粘度が0.4を越える時は、前工程のジアミン成分とテトラカルボン酸成分とのモル比が比較的等モルに近い場合であり、後工程でもジアミン成分とテトラカルボン酸成分とが等モルに近いモル比で反応するから、得られるアミド酸オリゴマーは当然高分子量化したものである。特に高濃度溶液で反応する場合には、前工程のアミド酸オリゴマーが高分子量化すると、得られた溶液が著しく高粘度化し、その結果、後工程で追加したジアミン成分やテトラカルボン酸成分の反応が妨げられ、アミド酸オリゴマー溶液中に未反応で溶解せずに残留するなどの問題を生じることがある。
【0035】
本発明のアミド酸オリゴマーは、後工程で、前工程で得られたアミド酸オリゴマー溶液へ、ジアミン成分の合計量とテトラカルボン酸成分の合計量とが実質的に等モル量になるように、好ましくはモル比(テトラカルボン酸成分/ジアミン成分)が1.05〜0.95程度になるように、ジアミン成分、又はジアミン成分及びテトラカルボン酸成分を加えて更に反応する。この後工程は、前記前工程の反応条件と同様の反応条件下で好適に行うことができる。なお、後工程で加えるテトラカルボン酸成分(テトラカルボン酸二無水物)は、その一部をテトラカルボン酸或いはテトラカルボン酸の低級アルコールエステルで置き換えることもできる。
【0036】
この後工程の結果、対数粘度(ηinh)が0.4以下、より好ましくは0.01〜0.4のアミド酸オリゴマーからなるアミド酸オリゴマー溶液組成物を再現性よく好適に得ることができる。このアミド酸オリゴマー溶液組成物では、アミノ基と反応してアミック酸結合を形成していないテトラカルボン酸二無水物由来の無水物基の実質的にすべて(90%以上、好ましくは95%以上)が加水分解されて2つのカルボキシル基になっている。また、極めて低分子量のアミド酸オリゴマーであるから溶液粘度の増大を抑制できるので、高濃度化が容易である。その結果、固形分濃度が25質量%超、好ましくは25質量%超〜50質量%、より好ましくは27質量%超〜50質量%、特に30質量%超〜45質量%の高濃度アミド酸オリゴマー溶液組成物を好適に得ることができる。この高濃度アミド酸溶液組成物は、30℃における溶液粘度が好ましくは100Pa・sec以下、より好ましくは0.5〜100Pa・sec、さらに好ましくは1〜70Pa・sec、特に好ましくは1〜50Pa・secの低粘度溶液であるから、実用上極めて有用である。
【0037】
さらに、このポリアミック酸溶液は、前工程において0.05〜2重量%、より好ましくは0.05〜1重量%の水を含有する溶媒を用いているが、この水はテトラカルボン酸成分の無水物基を加水分解するために消費され、残りが溶液中に残るが、もともと少量しか用いていないので、反応終了後特に水の量を調節(除去)しなくても構わない。水を除去しなくても、例えば水の含有量が1重量%以下であるポリアミック酸溶液を得ることができる。このアミック酸溶液中の水の量は前述のとおり十分少量であることに加えて、更に、アミノ基と反応してアミック酸結合を形成した無水物基以外のテトラカルボン酸二無水物由来の無水物基が実質的にほとんど全て加水分解されて2つのカルボキシル基になっているから、このポリアミック酸溶液中の各成分は少なくとも低温下の保存中に何らかの反応を起こす可能性が少なく、その結果、溶液安定性が極めて良好である。
【0038】
アミド酸オリゴマーを製造する反応の溶媒は、従来公知のアミド酸オリゴマーやポリアミック酸を製造する際に採用される溶媒を用いることができるが、そうするとアミド酸オリゴマーを製造した後に、アミド酸オリゴマーを単離して、本発明のアミド酸オリゴマー溶液組成物で採用される混合溶媒に再溶解するなどの追加の工程が必要になる。アミド酸オリゴマーを製造したアミド酸オリゴマー溶液をそのまま本発明のアミド酸オリゴマー溶液組成物として好適に使用するためには、アミド酸オリゴマーを製造する反応の溶媒として、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンから選ばれる2種以上の溶媒の混合物からなる混合溶媒を用いることが好適である。
【0039】
本発明のアミド酸オリゴマーを構成するテトラカルボン酸成分は、実質的に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(及びその加水分解物やエステル化物などの誘導体)を用いて構成される。本発明の効果の範囲内で他のテトラカルボン酸成分を少量用いても構わないが、概ね全テトラカルボン酸成分の10モル%以下、好ましくは5モル%以下、より好ましくは0モル%である。
本発明のアミド酸オリゴマーを構成するジアミン成分は、実質的にパラフェニレンジアミン及び/又は4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを用いて構成される。本発明の効果の範囲内で他のジアミン成分を少量用いても構わないが、概ね全ジアミン成分の10モル%以下、好ましくは5モル%以下、より好ましくは0モル%である。
本発明のアミド酸オリゴマーのジアミン成分は、好ましくは10〜100ル%パラフェニレンジアミンと90〜0モル%の4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、より好ましくは20〜100ル%パラフェニレンジアミンと80〜0モル%の4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、さらに好ましくは20〜90ル%パラフェニレンジアミンと80〜10モル%の4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、特に好ましくは40〜90モル%のパラフェニレンジアミンと60〜10モル%の4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとからなることが好適である。
ジアミン成分中のパラフェニレンジアミンの割合がより多い前記好ましい範囲であるほど、発泡や割れを起こすことなく、また得られるポリイミド膜の特性を低下させることなく、ポリイミド膜を好適に得ることができるという本発明の効果を顕著に発現することができる。
【0040】
本発明のアミド酸オリゴマー溶液組成物は、高濃度溶液にのみ限定されるものではなく、ポリイミド前駆体として種々の用途に種々の濃度で好適に用いることが可能であるが、高濃度でありながら低粘度の溶液組成物として極めて有用に用いることができる。すなわち、本発明のアミド酸オリゴマー溶液組成物は、アミド酸オリゴマーに起因する固形分濃度が、混合溶媒とアミド酸オリゴマーとの合計量に対して25質量%超、好ましくは25質量%超〜50質量%、より好ましくは27質量%超〜50質量%、特に30質量%超〜45質量%の高濃度ポリイミド前駆体溶液組成物として好適に用いることができる。また溶液粘度は、30℃における溶液粘度が、好ましくは100Pa・sec以下、より好ましくは0.5〜100Pa・sec、さらに好ましくは1〜70Pa・sec、特に好ましくは1〜50Pa・secの実用的な低粘度ポリイミド前駆体溶液組成物として好適に用いることができる。
【0041】
本発明のアミド酸オリゴマー溶液組成物は、ポリイミド前駆体であるアミド酸オリゴマーと、それを溶解する混合溶媒以外に、微粉状シリカ、窒化ホウ素、アルミナ、カーボンブラックなどの微細な無機又は有機充填材を配合してもよく、また必要に応じて更に他の配合成分を配合しても構わない。他の配合成分としては、用途や要求性能に応じて決定されるが、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、染料や顔料などの着色剤、金属粉などの導電剤、離型剤、表面処理剤、粘度調節剤、カップリング剤、界面活性剤などを好適に配合することができる。これらの配合成分は、予め溶液組成物に配合してもよいし、使用に際して添加配合して用いても差し支えない。
【0042】
なお、アミド酸オリゴマー溶液組成物に微細な充填材を配合すると、製膜工程における発泡の生成を抑制し易いので製膜性(成形性)の向上において有利になることがある。本発明のアミド酸オリゴマー溶液組成物を用いたポリイミド膜の製造方法において、微細な充填材を配合したアミド酸オリゴマー溶液組成物を用いると、充填材による発泡の抑制効果と混合溶媒による発泡の抑制効果とが相乗されて、製膜性(成形性)はより向上することがある。しかし微細な充填材を配合しても混合溶媒を用いない場合には、製膜性の向上は必ずしも十分ではなくて、膜厚や製膜条件が制限されたり、膜厚や製膜条件によって発泡や割れを抑えきれなくなったりすることがある。
【0043】
本発明のポリイミド膜の製造方法は、前記化学式(1)の繰返し単位を有し対数粘度(ηinh)が0.4以下、好ましくは0.35以下、より好ましくは0.3以下、さらに好ましくは0.3未満のアミド酸オリゴマーを、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンから選ばれる2種以上の溶媒の混合物からなる混合溶媒に溶解したアミド酸オリゴマー溶液組成物を、基材に塗布して塗膜を形成し、前記基材上の塗膜を加熱処理することによって、発泡や割れを生じることなく、優れた特性を有するポリイミド膜を得ることを特徴とするポリイミド膜の製造方法である。
【0044】
発泡や割れで例示した製膜性(成形性)の改良は、その効果が発泡や割れの有無のみ限定されるものではない。製膜条件が限定されず、幅広い条件を容易に採用できるようになる点で実用上極めて有用である。
また、優れた特性を有するポリイミド膜を得るとは、アミド酸オリゴマーを用いたことに起因する得られるポリイミド膜の特性の低下を生じさせないで、同じ原料組成の高分子料のポリアミド酸溶液組成物を用いた場合と同様に優れた特性(機械的特性)を有するポリイミド膜を得ることを意味する。
【0045】
本発明のポリイミド膜の製造方法は、本発明のアミド酸オリゴマー溶液組成物を基材に塗布して塗膜を形成し、前記基材上の塗膜を基材上で加熱処理することによって、ポリイミド膜を得ることを特徴の一つとする。
本発明において、基材とは、表面にポリアミック酸を塗布して塗膜が形成できるものであり、液体及び気体を実質的に透過させることがない緻密構造を有したものであれば、形状や材質で特に限定されるものではない。通常のフィルムを製造する際に用いられるそれ自体公知のベルト、ロール或いは金型などのフィルム形成用基材、その表面にポリイミド膜を保護膜として形成する回路基板や電子部品、摺動部品などの表面に皮膜が形成される部品や製品、ポリイミド膜を形成して多層化フィルムを形成する際の一方のフィルムなどを好適に挙げることができる。
【0046】
基材上に塗膜を形成する塗布の方法としては、例えばスプレー法、ロールコート法、回転塗布法、バー塗布法、インクジェット法、スクリーン印刷法、スリットコート法などのそれ自体公知の方法を適宜採用することができる。
【0047】
この基材上に塗布されて形成された塗膜は、例えば減圧下に比較的低温で加熱する方法で脱泡しても構わない。
基材上に塗布されて形成されたポリアミック酸溶液組成物からなる塗膜は、加熱処理することによって溶媒を除去し且つイミド化されてポリイミド膜が形成される。加熱処理は、いきなり高温で加熱処理するよりも最初に140℃以下の比較的低温で溶媒を除去し、次いで最高加熱処理温度まで温度を上げてイミド化する段階的な加熱処理が好適である。また、140℃以上で0.01〜30時間好ましくは0.01〜10時間より好ましくは0.01〜6時間の加熱処理を行って実質的にアミド酸基が残らないようにイミド化することが好適である。最高加熱処理温度は250〜600℃好ましくは300〜550℃より好ましくは350〜450℃の温度範囲とし、この温度範囲で0.01〜20時間好ましくは0.01〜6時間より好ましくは0.01〜5時間加熱処理することが好適である。このように段階的に温度を上げる加熱処理条件としては、例えば80℃で30分間、130℃で10分間、200℃で10分間、そして最後に400℃で10分間加熱処理する(但し、次の段階へは10分間で昇温する)加熱処理条件を例示することができる。
【0048】
本発明のポリイミド膜の製造方法によれば、極めて安定した製膜が可能になる。特に発泡や割れがより容易に起こりやすくなる膜厚が40μmを越える場合であってもポリイミド膜を発泡や割れなどの製膜時の問題を生じることがなしに得ることができる。すなわち本発明のポリイミド膜の製造方法は、得られるポリイミド膜の膜厚が、好ましくは40μm超、より好ましくは45μm超、さらに好ましくは50μm超、特に好ましくは55μm超であって、通常200μm以下、特に150μm以下である。
【0049】
さらに、本発明のポリイミド膜の製造方法によれば、引張り破断強度が230MPa以上好ましくは250MPa以上より好ましくは300MPa以上さらに好ましくは350MPa以上特に好ましくは400MPa以上であり、且つ引張り破断伸度が25%以上好ましくは30%以上より好ましくは40%以上であり、さらに引張り弾性率が3.3GPa以上好ましくは5.0GPa以上より好ましくは6.0GPa以上さらに好ましくは7.0GPa以上の極めて高い機械的強度を有するポリイミド膜を好適に得ることができる。
【0050】
本発明で得られるポリイミド膜の製造方法は、高濃度且つ実用的な低粘度の溶液組成物を用いて、製膜性(成形性)が改善され、且つ極めて優れた機械的特性を有したポリイミド膜を経済的に容易に得ることができるので、オーバーコート膜、銅箔と積層して得られる2層CCLなどの銅張積層基板、特に遠心成形法等に適用して得られるシームレスベルトなどにおいて好適に採用することができる。
【0051】
シームレスベルトは、基材として円筒状の金型の内周面或いは外周面を用い、金型を回転させながら製膜(成形)が行われる点を除いて、前述の製膜方法や製膜条件を好適に採用できる。ただし、シームレスベルトは通常膜厚がより厚く(通常の膜厚は40μm超、特に50〜150μm程度)更に充填材を比較的多く含有する場合が多いので、溶媒の乾燥除去をより長時間行う或いは加熱処理の時間や昇温速度をより長くゆっくりと行うなどの条件選定が好適である。
【0052】
またシームレスベルトは、その用途に応じて種々の充填材などが配合される。配合成分はアミド酸オリゴマー溶液に添加配合されることで好適に行われる。またアミド酸オリゴマーを調製する際に反応溶液にあらかじめ配合しておいても構わない。
例えば、ポリイミド無端管状ベルトが複写機の定着ベルトとして用いられるときは、熱伝導性を向上させるためにシリカ、窒化ホウ素、アルミナなどが好適に配合される。また表面に付着するトナーの融着防止のためにベルト表面にポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素樹脂からなる非粘着性の層を積層しても構わない。
また、ポリイミド無端管状ベルトが複写機の転写ベルトとして用いられるときには、半導電性を付与するためにカーボンブラックなどが好適に配合される。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0054】
以下の例で用いた測定方法について説明する。水の含有量については、前工程の反応については、用いた溶媒(NMP、DMAcなど)に不純物として含まれる水の含有量は無視できるので、加えた水の量を基に算出した「水の含有率」で示した。一方、得られたポリアミック酸溶液の水の量は、ポリアミック酸溶液の水の量を以下の測定方法で測定した「含水率」で示した。
〔固形分濃度〕
試料溶液(その重量をw1とする)を、熱風乾燥機中120℃で10分間、250℃で10分間、次いで350℃で30分間加熱処理して、加熱処理後の重量(その重量をw2とする)を測定する。固形分濃度[重量%]は、次式によって算出した。
固形分濃度=(w2/w1)×100
【0055】
〔対数粘度〕
試料溶液を、固形分濃度に基づいて濃度が0.5g/dl(溶媒はNMP)になるように希釈した。この希釈液を、30℃にて、キャノンフェンスケNo.100を用いて流下時間(T)を測定した。対数粘度は、ブランクのNMPの流下時間(T)を用いて、次式から算出した。
対数粘度={ln(T/T)}/0.5
【0056】
〔溶液粘度(回転粘度)〕
トキメック社製E型粘度計を用いて30℃で測定した。
【0057】
〔含水率〕
シグマアルドリッチ社製カールフィッシャー試薬(ハイドラナールコンポジット5K)を用いて平沼産業社製水分測定装置(AQV−2000)によって測定した。
【0058】
〔製膜性(ポリイミド膜の状態)〕
ガラス基板上に、得られるポリイミド膜の厚みが50μmとなるように試料溶液を塗布し、熱風乾燥機中で120℃で30分間、150℃で10分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで350℃で10分間加熱処理して、溶媒の除去及び重合イミド化反応を行わせてポリイミド膜を製造した。そして、得られたポリイミド膜の状態を次のとおり目視観察した。すなわち、目視によってフクレ、割れ、割れ等の不具合の有無を確認し、フクレ、割れ、割れ等の不具合がないものを○、不具合が全面積の20〜40%程度のものを△、これ以上生じるものを×とした。
【0059】
〔引張破断強度〕
前記のようにして製造したポリイミド膜の引張破断強度を、引張り試験機(オリエンテック社製RTC−1225A)を用いて、ASTM D882に準拠して測定した。
【0060】
〔引張破断伸度〕
前記のようにして製造したポリイミド膜の引張破断伸度を、引張り試験機(オリエンテック社製RTC−1225A)を用いて、ASTM D882に準拠して測定した。
【0061】
〔引張弾性率〕
前記のようにして製造したポリイミド膜の引張弾性率を、引張り試験機(オリエンテック社製RTC−1225A)を用いて、ASTM D882に準拠して測定した。
【0062】
以下の例で使用した化合物の略号について説明する。
s−BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、
DADE:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、
PPD:p−フェニレンジアミン、
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
NEP:N−エチル−2−ピロリドン、
DMAc:N,N−ジメチルアセトアミド、
DMI:1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン。
【0063】
〔実施例1〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積1000mlのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの335g(溶媒全量のうち50質量%)、DMAcの335g(溶媒全量のうち50質量%)、水4.43g、s−BPDA96.52g、及びPPD17.74g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.56重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、70℃の反応温度で3時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へPPD70.96gを溶解させ、さらにs−BPDA144.78gを添加して、反応温度50℃で10時間撹拌して、固形分濃度31.0重量%、溶液粘度38.5Pa・s、対数粘度0.31のポリアミック酸溶液を得た。
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で60分間、150℃で30分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで400℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmのポリイミド膜を形成した。このポリイミド膜には発泡、割れなどは見られなかった。
このポリイミド膜の特性等について結果を表1に示した。
【0064】
〔比較例1〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積1000mlのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの670g(溶媒全量のうち100質量%)、水4.43g、s−BPDA96.52g、及びPPD17.74g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.56重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、70℃の反応温度で3時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へPPD70.96gを溶解させ、さらにs−BPDA144.78gを添加して、反応温度50℃で10時間撹拌して、固形分濃度30.2重量%、溶液粘度51.0Pa・s、対数粘度0.29のポリアミック酸溶液を得た。
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で60分間、150℃で30分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで400℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmのポリイミド膜を形成した。このポリイミド膜には全体に渡って発泡、及び割れが見られた。
この結果を表2に示した。
【0065】
〔比較例2〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積1000mlのガラス製の反応容器に、溶媒としてNEPの670g(溶媒全量のうち100質量%)、水4.43g、s−BPDA96.52g、及びPPD17.74g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.56重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、70℃の反応温度で3時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へPPD70.96gを溶解させ、さらにs−BPDA144.78gを添加して、反応温度50℃で10時間撹拌して、固形分濃度30.2重量%、溶液粘度51.0Pa・s、対数粘度0.29のポリアミック酸溶液を得た。
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で60分間、150℃で30分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで400℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmのポリイミド膜を形成した。このポリイミド膜には全体に渡って発泡、及び割れが見られた。
この結果を表2に示した。
【0066】
〔比較例3〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積1000mlのガラス製の反応容器に、溶媒としてDMAcの670g(溶媒全量のうち100質量%)、水4.43g、s−BPDA96.52g、及びPPD17.74g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.56重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、70℃の反応温度で3時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へPPD70.96gを溶解させ、さらにs−BPDA144.78gを添加して、反応温度50℃で10時間撹拌して、固形分濃度30.4重量%、溶液粘度34.0Pa・s、対数粘度0.32のポリアミック酸溶液を得た。
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で60分間、150℃で30分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで400℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmのポリイミド膜を形成した。このポリイミド膜には全体に渡って発泡、及び割れが見られた。
この結果を表2に示した。
【0067】
〔比較例4〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積1000mlのガラス製の反応容器に、溶媒としてDMIの670g(溶媒全量のうち100質量%)、水4.43g、s−BPDA96.52g、及びPPD17.74g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.56重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、70℃の反応温度で3時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へPPD70.96gを溶解させ、さらにs−BPDA144.78gを添加して、反応温度50℃で10時間撹拌して、固形分濃度30.5重量%、溶液粘度85.0Pa・s、対数粘度0.30のポリアミック酸溶液を得た。
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で60分間、150℃で30分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで400℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmのポリイミド膜を形成した。このポリイミド膜には全体に渡って発泡、及び割れが見られた。
この結果を表2に示した。
【0068】
〔実施例2〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積1000mlのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの335g(溶媒全量のうち50質量%)、DMAcの335g(溶媒全量のうち50質量%)、水4.33g、s−BPDA94.36g、PPD8.67g、及びDADE16.06g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.55重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、70℃の反応温度で3時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へPPD69.38gを溶解させ、さらにs−BPDA141.54gを添加して、反応温度50℃で10時間撹拌して、固形分濃度30.8重量%、溶液粘度10.4Pa・s、対数粘度0.27のポリアミック酸溶液を得た。
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で60分間、150℃で30分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで300℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmのポリイミド膜を形成した。このポリイミド膜には発泡、割れなどは見られなかった。
このポリイミド膜の特性等について結果を表1に示した。
【0069】
〔実施例3〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積1000mlのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの335g(溶媒全量のうち50質量%)、DMAcの335g(溶媒全量のうち50質量%)、水4.24g、s−BPDA92.29g、及びDADE31.41g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.53重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、70℃の反応温度で3時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へPPD67.86gを溶解させ、さらにs−BPDA138.44gを添加して、反応温度50℃で10時間撹拌して、固形分濃度30.6重量%、溶液粘度10.0Pa・s、対数粘度0.26のポリアミック酸溶液を得た。
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で60分間、150℃で30分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで300℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmのポリイミド膜を形成した。このポリイミド膜には発泡、割れなどは見られなかった。
このポリイミド膜の特性等について結果を表1に示した。
【0070】
〔比較例5〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積1000mlのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの670g(溶媒全量のうち100質量%)、水4.24g、s−BPDA92.29g、及びDADE31.41g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.53重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、70℃の反応温度で3時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へPPD67.86gを溶解させ、さらにs−BPDA138.44gを添加して、反応温度50℃で10時間撹拌して、固形分濃度30.5重量%、溶液粘度10.5Pa・s、対数粘度0.24のポリアミック酸溶液を得た。
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で60分間、150℃で30分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで300℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmのポリイミド膜を形成した。このポリイミド膜には発泡、割れなどは見られなかった。
このポリイミド膜の特性等について結果を表2に示した。
【0071】
〔実施例4〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積1000mlのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの335g(溶媒全量のうち50質量%)、DMAcの335g(溶媒全量のうち50質量%)、水4.15g、s−BPDA90.32g、及びDADE30.74g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.52重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、70℃の反応温度で3時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へPPD58.10g、及びDADE15.37gを溶解させ、さらにs−BPDA135.47gを添加して、反応温度50℃で10時間撹拌して、固形分濃度30.7重量%、溶液粘度11.0Pa・s、対数粘度0.24のポリアミック酸溶液を得た。
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で60分間、150℃で30分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで300℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmのポリイミド膜を形成した。このポリイミド膜には発泡、割れなどは見られなかった。
このポリイミド膜の特性等について結果を表1に示した。
【0072】
〔比較例6〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積1000mlのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの670g(溶媒全量のうち100質量%)、水4.15g、s−BPDA90.32g、及びDADE30.74g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.52重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、70℃の反応温度で3時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へPPD58.10g、及びDADE15.37gを溶解させ、さらにs−BPDA135.47gを添加して、反応温度50℃で10時間撹拌して、固形分濃度30.4重量%、溶液粘度10.6Pa・s、対数粘度0.24のポリアミック酸溶液を得た。
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で60分間、150℃で30分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで300℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmのポリイミド膜を形成した。このポリイミド膜には発泡、割れなどは見られなかった。
このポリイミド膜の特性等について結果を表2に示した。
【0073】
〔実施例5〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積1000mlのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの335g(溶媒全量のうち50質量%)、DMAcの335g(溶媒全量のうち50質量%)、水4.06g、s−BPDA88.42g、及びDADE30.09g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.51重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、70℃の反応温度で3時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へPPD48.76g、及びDADE30.09gを溶解させ、さらにs−BPDA132.63gを添加して、反応温度50℃で10時間撹拌して、固形分濃度30.5重量%、溶液粘度10.5Pa・s、対数粘度0.25のポリアミック酸溶液を得た。
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で60分間、150℃で30分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで300℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmのポリイミド膜を形成した。このポリイミド膜には発泡、割れなどは見られなかった。
このポリイミド膜の特性等について結果を表1に示した。
【0074】
〔比較例7〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積1000mlのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの670g(溶媒全量のうち100質量%)、水4.06g、s−BPDA88.42g、及びDADE30.09g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.51重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、70℃の反応温度で3時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へPPD48.76g、及びDADE30.09gを溶解させ、さらにs−BPDA132.63gを添加して、反応温度50℃で10時間撹拌して、固形分濃度30.3重量%、溶液粘度10.2Pa・s、対数粘度0.25のポリアミック酸溶液を得た。
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で60分間、150℃で30分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで300℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmのポリイミド膜を形成した。このポリイミド膜には発泡、割れなどは見られなかった。
このポリイミド膜の特性等について結果を表2に示した。
【0075】
〔実施例6〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積1000mlのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの536g(溶媒全量のうち80質量%)、DMAcの134g(溶媒全量のうち20質量%)、水3.98g、s−BPDA86.61g、及びDADE29.47g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.50重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、70℃の反応温度で3時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へPPD39.80g、及びDADE44.21gを溶解させ、さらにs−BPDA129.91gを添加して、反応温度50℃で10時間撹拌して、固形分濃度30.4重量%、溶液粘度10.4Pa・s、対数粘度0.22のポリアミック酸溶液を得た。
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で60分間、150℃で30分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで300℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmのポリイミド膜を形成した。このポリイミド膜には発泡、割れなどは見られなかった。
このポリイミド膜の特性等について結果を表1に示した。
【0076】
〔実施例7〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積1000mlのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの335g(溶媒全量のうち50質量%)、DMAcの335g(溶媒全量のうち50質量%)、水3.98g、s−BPDA86.61g、及びDADE29.47g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.50重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、70℃の反応温度で3時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へPPD39.80g、及びDADE44.21gを溶解させ、さらにs−BPDA129.91gを添加して、反応温度50℃で10時間撹拌して、固形分濃度30.4重量%、溶液粘度10.6Pa・s、対数粘度0.24のポリアミック酸溶液を得た。
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で60分間、150℃で30分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで300℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmのポリイミド膜を形成した。このポリイミド膜には発泡、割れなどは見られなかった。
このポリイミド膜の特性等について結果を表1に示した。
【0077】
〔実施例8〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積1000mlのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの134g(溶媒全量のうち20質量%)、DMAcの536g(溶媒全量のうち80質量%)、水3.98g、s−BPDA86.61g、及びDADE29.47g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.50重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、70℃の反応温度で3時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へPPD39.80g、及びDADE44.21gを溶解させ、さらにs−BPDA129.91gを添加して、反応温度50℃で10時間撹拌して、固形分濃度30.4重量%、溶液粘度10.5Pa・s、対数粘度0.28のポリアミック酸溶液を得た。
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で60分間、150℃で30分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで300℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmのポリイミド膜を形成した。このポリイミド膜には発泡、割れなどは見られなかった。
このポリイミド膜の特性等について結果を表1に示した。
【0078】
〔実施例9〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積1000mlのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの335g(溶媒全量のうち50質量%)、NEPの335g(溶媒全量のうち50質量%)、水3.98g、s−BPDA86.61g、及びDADE29.47g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.50重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、70℃の反応温度で3時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へPPD39.80g、及びDADE44.21gを溶解させ、さらにs−BPDA129.91gを添加して、反応温度50℃で10時間撹拌して、固形分濃度30.3重量%、溶液粘度10.8Pa・s、対数粘度0.21のポリアミック酸溶液を得た。
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で60分間、150℃で30分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで300℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmのポリイミド膜を形成した。このポリイミド膜には発泡、割れなどは見られなかった。
このポリイミド膜の特性等について結果を表1に示した。
【0079】
〔実施例10〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積1000mlのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの335g(溶媒全量のうち50質量%)、DMIの335g(溶媒全量のうち50質量%)、水3.98g、s−BPDA86.61g、及びDADE29.47g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.50重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、70℃の反応温度で3時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へPPD39.80g、及びDADE44.21gを溶解させ、さらにs−BPDA129.91gを添加して、反応温度50℃で10時間撹拌して、固形分濃度30.2重量%、溶液粘度10.6Pa・s、対数粘度0.23のポリアミック酸溶液を得た。
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で60分間、150℃で30分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで300℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmのポリイミド膜を形成した。このポリイミド膜には発泡、割れなどは見られなかった。
このポリイミド膜の特性等について結果を表1に示した。
【0080】
〔実施例11〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積1000mlのガラス製の反応容器に、溶媒としてNEPの335g(溶媒全量のうち50質量%)、DMAcの335g(溶媒全量のうち50質量%)、水3.98g、s−BPDA86.61g、及びDADE29.47g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.50重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、70℃の反応温度で3時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へPPD39.80g、及びDADE44.21gを溶解させ、さらにs−BPDA129.91gを添加して、反応温度50℃で10時間撹拌して、固形分濃度30.1重量%、溶液粘度10.7Pa・s、対数粘度0.24のポリアミック酸溶液を得た。
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で60分間、150℃で30分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで300℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmのポリイミド膜を形成した。このポリイミド膜には発泡、割れなどは見られなかった。
このポリイミド膜の特性等について結果を表1に示した。
【0081】
〔実施例12〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積1000mlのガラス製の反応容器に、溶媒としてDMAcの335g(溶媒全量のうち50質量%)、DMIの335g(溶媒全量のうち50質量%)、水3.98g、s−BPDA86.61g、及びDADE29.47g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.50重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、70℃の反応温度で3時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へPPD39.80g、及びDADE44.21gを溶解させ、さらにs−BPDA129.91gを添加して、反応温度50℃で10時間撹拌して、固形分濃度30.3重量%、溶液粘度10.2Pa・s、対数粘度0.24のポリアミック酸溶液を得た。
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で60分間、150℃で30分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで300℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmのポリイミド膜を形成した。このポリイミド膜には発泡、割れなどは見られなかった。
このポリイミド膜の特性等について結果を表1に示した。
【0082】
〔比較例8〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積1000mlのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの670g(溶媒全量のうち100質量%)、水3.98g、s−BPDA86.61g、及びDADE29.47g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.50重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、70℃の反応温度で3時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へPPD39.80g、及びDADE44.21gを溶解させ、さらにs−BPDA129.91gを添加して、反応温度50℃で10時間撹拌して、固形分濃度30.8重量%、溶液粘度10.3Pa・s、対数粘度0.25のポリアミック酸溶液を得た。
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で60分間、150℃で30分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで300℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmのポリイミド膜を形成した。このポリイミド膜には全体の30%程度に発泡、及び割れが見られた。
この結果を表2に示した。
【0083】
〔実施例13〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積1000mlのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの335g(溶媒全量のうち50質量%)、DMAcの335g(溶媒全量のうち50質量%)、水3.90g、s−BPDA84.86g、及びDADE28.88g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.49重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、70℃の反応温度で3時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へPPD31.20g、及びDADE57.76gを溶解させ、さらにs−BPDA127.30gを添加して、反応温度50℃で10時間撹拌して、固形分濃度30.3重量%、溶液粘度10.2Pa・s、対数粘度0.26のポリアミック酸溶液を得た。
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で60分間、150℃で30分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで300℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmのポリイミド膜を形成した。このポリイミド膜には発泡、割れなどは見られなかった。
このポリイミド膜の特性等について結果を表1に示した。
【0084】
〔実施例14〕
実施例13で得られたポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で60分間、150℃で30分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで350℃で10分間加熱処理して、厚さが75μmのポリイミド膜を形成した。このポリイミド膜には発泡、割れなどは見られなかった。
このポリイミド膜の特性等について結果を表1に示した。
【0085】
〔実施例15〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積1000mlのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの335g(溶媒全量のうち50質量%)、DMAcの335g(溶媒全量のうち50質量%)、水3.82g、s−BPDA83.19g、及びDADE28.31g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.49重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、70℃の反応温度で3時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へPPD22.94g、及びDADE70.78gを溶解させ、さらにs−BPDA124.78gを添加して、反応温度50℃で10時間撹拌して、固形分濃度30.4重量%、溶液粘度10.7Pa・s、対数粘度0.25のポリアミック酸溶液を得た。
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で60分間、150℃で30分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで300℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmのポリイミド膜を形成した。このポリイミド膜には発泡、割れなどは見られなかった。
このポリイミド膜の特性等について結果を表1に示した。
【0086】
〔実施例16〕
実施例15で得られたポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で60分間、150℃で30分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで350℃で10分間加熱処理して、厚さが75μmのポリイミド膜を形成した。このポリイミド膜には発泡、割れなどは見られなかった。
このポリイミド膜の特性等について結果を表1に示した。
【0087】
〔比較例9〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積1000mlのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの670g(溶媒全量のうち100質量%)、水3.82g、s−BPDA83.19g、及びDADE28.31g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.49重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、70℃の反応温度で3時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へPPD22.94g、及びDADE70.78gを溶解させ、さらにs−BPDA124.78gを添加して、反応温度50℃で10時間撹拌して、固形分濃度30.5重量%、溶液粘度10.6Pa・s、対数粘度0.25のポリアミック酸溶液を得た。
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で60分間、150℃で30分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで300℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmのポリイミド膜を形成した。このポリイミド膜には全体の30%程度に発泡、及び割れが見られた。
この結果を表2に示した。
【0088】
〔実施例17〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積1000mlのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの502.5g(溶媒全量のうち75質量%)、DMAcの167.5g(溶媒全量のうち25質量%)、水3.75g、s−BPDA81.58g、及びDADE27.76g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.48重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、70℃の反応温度で3時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へPPD15.00g、及びDADE83.29gを溶解させ、さらにs−BPDA122.37gを添加して、反応温度50℃で10時間撹拌して、固形分濃度30.3重量%、溶液粘度10.2Pa・s、対数粘度0.24のポリアミック酸溶液を得た。
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で60分間、150℃で30分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで300℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmのポリイミド膜を形成した。このポリイミド膜には発泡、割れなどは見られなかった。
このポリイミド膜の特性等について結果を表1に示した。
【0089】
〔実施例18〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積1000mlのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの335g(溶媒全量のうち50質量%)、DMAcの335g(溶媒全量のうち50質量%)、水3.75g、s−BPDA81.58g、及びDADE27.76g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.48重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、70℃の反応温度で3時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へPPD15.00g、及びDADE83.29gを溶解させ、さらにs−BPDA122.37gを添加して、反応温度50℃で10時間撹拌して、固形分濃度30.2重量%、溶液粘度10.3Pa・s、対数粘度0.25のポリアミック酸溶液を得た。
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で60分間、150℃で30分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで300℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmのポリイミド膜を形成した。このポリイミド膜には発泡、割れなどは見られなかった。
このポリイミド膜の特性等について結果を表1に示した。
【0090】
〔実施例19〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積1000mlのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの335g(溶媒全量のうち50質量%)、DMAcの335g(溶媒全量のうち50質量%)、水3.68g、s−BPDA80.03g、及びDADE27.24g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.47重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、70℃の反応温度で3時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へPPD7.36g、及びDADE95.33gを溶解させ、さらにs−BPDA120.05gを添加して、反応温度50℃で10時間撹拌して、固形分濃度30.4重量%、溶液粘度10.1Pa・s、対数粘度0.26のポリアミック酸溶液を得た。
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で60分間、150℃で30分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで300℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmのポリイミド膜を形成した。このポリイミド膜には発泡、割れなどは見られなかった。
このポリイミド膜の特性等について結果を表1に示した。
【0091】
〔実施例20〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積1000mlのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの335g(溶媒全量のうち50質量%)、DMAcの335g(溶媒全量のうち50質量%)、水3.61g、s−BPDA78.54g、及びDADE26.73g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.46重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、70℃の反応温度で3時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へDADE106.92gを溶解させ、さらにs−BPDA117.81gを添加して、反応温度50℃で10時間撹拌して、固形分濃度30.3重量%、溶液粘度10.5Pa・s、対数粘度0.24のポリアミック酸溶液を得た。
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で60分間、150℃で30分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで300℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmのポリイミド膜を形成した。このポリイミド膜には発泡、割れなどは見られなかった。
このポリイミド膜の特性等について結果を表1に示した。
【0092】
〔比較例10〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積1000mlのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの670g(溶媒全量のうち100質量%)、水3.68g、s−BPDA80.03g、及びODA27.24g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.47重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、70℃の反応温度で3時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へPPD7.36g、及びODA95.33gを溶解させ、さらにs−BPDA120.05gを添加して、反応温度50℃で10時間撹拌して、固形分濃度30.4重量%、溶液粘度10.3Pa・s、対数粘度0.25のポリアミック酸溶液を得た。
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で60分間、150℃で30分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで300℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmのポリイミド膜を形成した。このポリイミド膜には全体の30%程度に発泡、及び割れが見られた。
この結果を表2に示した。
【0093】
〔比較例11〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積1000mlのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの335g(溶媒全量のうち50質量%)、γ−ブチロラクトンの335g(溶媒全量のうち50質量%)、水3.98g、s−BPDA86.61g、及びDADE29.47g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.50重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、70℃の反応温度で3時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へPPD39.80g、及びDADE44.21gを溶解させ、さらにs−BPDA129.91gを添加して、反応温度50℃で10時間撹拌して、固形分濃度30.5重量%、溶液粘度185.0Pa・s、対数粘度0.29のポリアミック酸溶液を得た。
このポリアミック酸溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、窒素ガス雰囲気下に熱風乾燥器に入れて、120℃で60分間、150℃で30分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで400℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmのポリイミド膜を形成した。このポリイミド膜には全体に渡って発泡、及び割れが見られた。
この結果を表2に示した。
【0094】
〔比較例12〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積1000mlのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの335g(溶媒全量のうち50質量%)、シクロヘキサノンの335g(溶媒全量のうち50質量%)、水3.98g、s−BPDA86.61g、及びDADE29.47g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.50重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、70℃の反応温度で3時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へPPD39.80g、及びDADE44.21gを溶解させ、さらにs−BPDA129.91gを添加して、反応温度50℃で反応を行ったが、ゲル化のためポリアミック酸が得られなかった。
この結果を表2に示した。
【0095】
【表1】

【0096】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明によって、テトラカルボン酸成分として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ジアミン成分としてパラフェニレンジアミン及び/又は4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを用いて得られる特定の繰返し単位からなるアミド酸オリゴマー溶液組成物を、基材に塗布して塗膜を形成し、前記基材上の塗膜を加熱処理することによって、発泡や割れを起こすことなく、また得られるポリイミド膜の特性を低下させることなく、優れた特性を有するポリイミド膜を好適に得ることができるポリイミド膜の製造方法、及び前記アミド酸オリゴマー溶液組成物を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)で表される繰返し単位を有し対数粘度(ηinh)が0.4以下のアミド酸オリゴマーを、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンから選ばれる2種以上の溶媒からなる混合溶媒に溶解したアミド酸オリゴマー溶液組成物を、基材に塗布して塗膜を形成し、前記基材上の塗膜を加熱処理することによって、ポリイミド膜を得ることを特徴とするポリイミド膜の製造方法。
【化1】

化学式(1)において、Aは下記化学式(2)であり、Bは下記化学式(3)及び/又は下記化学式(4)である。
【化2】

【化3】

【化4】

【請求項2】
アミド酸オリゴマー溶液組成物のアミド酸オリゴマーに由来する固形分濃度が、アミド酸オリゴマーと混合溶媒との合計量に対して、25質量%を越える高濃度であることを特徴とする請求項1に記載のポリイミド膜の製造方法。
【請求項3】
アミド酸オリゴマー溶液組成物の混合溶媒を構成している各溶媒が、全溶媒100質量%中7〜93質量%の範囲で混合されていることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のポリイミド膜の製造方法。
【請求項4】
化学式(1)のBが、10〜100モル%の化学式(3)と90〜0モル%の化学式(4)とからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリイミド膜の製造方法。
【請求項5】
シームレスベルトを得ることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリイミド膜の製造方法。
【請求項6】
下記化学式(1)で表される繰返し単位を有し対数粘度(ηinh)が0.4以下のアミド酸オリゴマーを、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンから選ばれる2種以上の溶媒からなる混合溶媒に溶解したことを特徴とするアミド酸オリゴマー溶液組成物。
【化5】

化学式(1)において、Aは下記化学式(2)であり、Bは下記化学式(3)及び/又は下記化学式(4)である。
【化6】

【化7】

【化8】

【請求項7】
アミド酸オリゴマーに由来する固形分濃度が、アミド酸オリゴマーと混合溶媒との合計量に対して、25質量%を越える高濃度であることを特徴とする請求項6に記載のアミド酸オリゴマー溶液組成物。
【請求項8】
化学式(1)のBが、10〜100モル%の化学式(3)と90〜0モル%の化学式(4)とからなることを特徴とする請求項6〜7のいずれかに記載のアミド酸オリゴマー溶液組成物。

【公開番号】特開2010−168517(P2010−168517A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14545(P2009−14545)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】