説明

アミノアシルプロドラッグ

本願は、5−クロロ−N−({(5S)−3−[2−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)チオフェン−2−カルボキサミドのプロドラッグ誘導体、それらの製造方法、障害の処置および/または予防のためのそれらの使用、並びに、障害、特に血栓塞栓性障害の処置および/または予防用の医薬を製造するためのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、5−クロロ−N−({(5S)−3−[2−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)チオフェン−2−カルボキサミドのプロドラッグ誘導体、それらの製造方法、疾患の処置および/または予防のためのそれらの使用、並びに、疾患、特に血栓塞栓性障害の処置および/または予防用の医薬を製造するためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
プロドラッグは、実際の有効成分が遊離する前に、1つまたはそれ以上の段階において、インビボで酵素的および/または化学的な生物変換を受ける有効成分の誘導体である。プロドラッグの残基は、通常、基礎となる有効成分の特性のプロフィールを改善するために使用される[P. Ettmayer et al., J. Med. Chem. 47, 2393 (2004)]。これに関して、最良の効果のプロフィールを達成するために、プロドラッグの残基の設計および所望の遊離メカニズムを、個々の有効成分、適応症、作用部位および投与経路と非常に正確に調和させることが必要である。多数の医薬が、基礎となる有効成分と比較して改良されたバイオアベイラビリティーを示すプロドラッグとして投与され、それは、例えば、物理化学的プロフィール、特に、溶解性、能動的または受動的吸収特性または組織特異的分布を改良することにより達成される。プロドラッグに関する広範な文献から言及し得る例は、H. Bundgaard (Ed.), Design of Prodrugs: Bioreversible derivatives for various functional groups and chemical entities, Elsevier Science Publishers B.V., 1985 である。
【0003】
5−クロロ−N−({(5S)−3−[2−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)チオフェン−2−カルボキサミド[化合物(A)]は、血液凝固の調節において必須の機能を果たすセリンプロテアーゼXa因子の、経口で有効な直接的阻害剤である。オキサゾリジノン化合物は、現在、血栓塞栓性障害の予防および処置用の潜在的な新しい有効医薬成分として、綿密な臨床試験を受けている [S. Roehrig et al., J. Med. Chem. 48, 5900 (2005)]。
【化1】

【0004】
しかしながら、化合物(A)は、水および生理的媒体において限られた溶解性しか有さず、このことは、例えば、有効成分の静脈内投与を困難にしている。従って、上述の媒体において改善された溶解性を有し、同時に、投与後に患者の体内での有効成分(A)の遊離の制御を可能にする、化合物(A)の誘導体またはプロドラッグを同定することが、本発明の目的であった。
【0005】
WO2005/028473は、経口のバイオアベイラビリティーの上昇に役立つオキサゾリジノンのアシルオキシメチルカルバメートプロドラッグを記載している。WO01/00622は、イノシン−5'−一リン酸デヒドロゲナーゼのカルバメート阻害剤のアシルプロドラッグを開示している。基礎となる有効成分を多段階の活性化メカニズムにより遊離させるオキサゾリジノン類のアミドプロドラッグのさらなるタイプは、WO03/006440に記載されている。
【0006】
本発明は、一般式(I)
【化2】

[式中、
は、水素、または、ヒドロキシもしくは(C−C)−アルコキシにより置換されていてもよい(C−C)−アルキルであり、
は、水素または(C−C)−アルキルであり、
そして、
Lは、1個のCH基がO原子で置き換えられていてもよい(C−C)−アルカンジイル基であるか、または、式
【化3】

{式中、
*は、N原子への結合点を意味し、
は、天然α−アミノ酸またはそのホモログもしくは異性体の側鎖の基であるか、
または、
は、Rに結合しており、この2つが一体となって(CHまたは(CH基を形成しており、
は、水素またはメチルであり、
は(C−C)−アルキルであり、
そして、
は、水素または(C−C)−アルキルである}
の基である]
の化合物、並びに、それらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物に関する。
【0007】
本発明による化合物は、式(I)の化合物およびそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物、式(I)に包含される後述する式の化合物およびそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物、並びに、式(I)に包含される例示的実施態様として後述する化合物およびそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物(後述する式(I)に包含される化合物が、既に塩、溶媒和物および塩の溶媒和物でない場合に)である。
【0008】
本発明による化合物は、それらの構造によって、立体異性体(エナンチオマー、ジアステレオマー)で存在し得る。従って、本発明は、エナンチオマーまたはジアステレオマーおよびそれらの各々の混合物に関する。そのようなエナンチオマーおよび/またはジアステレオマーの混合物から、立体異性的に純粋な構成分を既知の方法で単離できる。
本発明による化合物が互変異性体で存在できる場合、本発明は、全ての互変異性体を含む。
【0009】
本発明の目的上、好ましいは、本発明による化合物の生理的に許容し得る塩である。しかしながら、それら自体は医薬適用に適さないが、例えば本発明による化合物の単離または精製に使用できる塩も含まれる。
【0010】
本発明による化合物の生理的に許容し得る塩には、鉱酸、カルボン酸およびスルホン酸の酸付加塩、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸および安息香酸の塩が含まれる。
【0011】
本発明の目的上、溶媒和物は、固体または液体状態で、溶媒分子との配位により錯体を形成している本発明による化合物の形態を表す。水和物は、配位が水と起こる、溶媒和物の特別な形態である。本発明に関して、好ましい溶媒和物は水和物である。
【0012】
本発明に関して、断りのない限り、置換基は、以下の意味を有する:
(C−C)−アルキルおよび(C−C)−アルキルは、本発明に関して、各々1個ないし4個および1個ないし3個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキルラジカルである。1個ないし3個の炭素原子を有する直鎖のアルキルラジカルが好ましい。好ましく言及し得る例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルである。
【0013】
(C−C)−アルコキシは、本発明に関して、1個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルコキシラジカルである。好ましく言及し得る例は、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシである。
【0014】
(C−C)−アルカンジイルは、本発明に関して、1個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の二価アルキルラジカルである。2個ないし4個の炭素原子を有する直鎖のアルカンジイルラジカルが好ましい。好ましく言及し得る例は、メチレン、1,2−エチレン、エタン−1,1−ジイル、1,3−プロピレン、プロパン−1,1−ジイル、プロパン−1,2−ジイル、プロパン−2,2−ジイル、1,4−ブチレン、ブタン−1,2−ジイル、ブタン−1,3−ジイル、ブタン−2,3−ジイルである。
【0015】
の意味におけるα−アミノ酸の側鎖の基は、天然産生α−アミノ酸の側鎖の基およびこれらのα−アミノ酸のホモログおよび異性体の側鎖の基の両方を含む。α−アミノ酸は、これに関して、α−アミノ酸は、LおよびD配置の両方を有し得るか、または、L体およびD体の混合物であり得る。言及し得る側鎖の基の例は、水素(グリシン)、メチル(アラニン)、プロパン−2−イル(バリン)、プロパン−1−イル(ノルバリン)、2−メチルプロパン−1−イル(ロイシン)、1−メチルプロパン−1−イル(イソロイシン)、ブタン−1−イル(ノルロイシン)、フェニル(2−フェニルグリシン)、ベンジル(フェニルアラニン)、p−ヒドロキシベンジル(チロシン)、インドール−3−イルメチル(トリプトファン)、イミダゾール−4−イルメチル(ヒスチジン)、ヒドロキシメチル(セリン)、2−ヒドロキシエチル(ホモセリン)、1−ヒドロキシエチル(スレオニン)、メルカプトメチル(システイン)、メチルチオメチル(S−メチルシステイン)、2−メルカプトエチル(ホモシステイン)、2−メチルチオエチル(メチオニン)、カルバモイルメチル(アスパラギン)、2−カルバモイルエチル(グルタミン)、カルボキシメチル(アスパラギン酸)、2−カルボキシエチル(グルタミン酸)、4−アミノブタン−1−イル(リジン)、4−アミノ−3−ヒドロキシブタン−1−イル(ヒドロキシリジン)、3−アミノプロパン−1−イル(オルニチン)、3−グアニジノプロパン−1−イル(アルギニン)、3−ウレイドプロパン−1−イル(シトルリン)である。Rの意味における好ましいα−アミノ酸の側鎖の基は、水素(グリシン)、メチル(アラニン)、プロパン−2−イル(バリン)、プロパン−1−イル(ノルバリン)、イミダゾール−4−イルメチル(ヒスチジン)、ヒドロキシメチル(セリン)、1−ヒドロキシエチル(スレオニン)、カルバモイルメチル(アスパラギン)、2−カルバモイルエチル(グルタミン)、4−アミノブタン−1−イル(リジン)、3−アミノプロパン−1−イル(オルニチン)、3−グアニジノプロパン−1−イル(アルギニン)である。各場合でL配置が好ましい。
【0016】
本発明による化合物中のラジカルが置換されている場合、そのラジカルは、断りのない限り、一置換または多置換されていてよい。本発明に関して、1回より多く出てくる全てのラジカルは、相互に独立の意味を有する。1個または2個の同一かまたは異なる置換基による置換が好ましい。1個の置換基による置換がことさら特に好ましい。
【0017】
好ましいのは、式中、
が、水素または(C−C)−アルキルであり、
が水素であり、
そして、
Lが、(C−C)−アルカンジイル基であるか、または、式
【化4】

{式中、
*は、N原子への結合点を意味し、
は、水素、メチル、プロパン−2−イル、プロパン−1−イル、イミダゾール−4−イルメチル、ヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、カルバモイルメチル、2−カルバモイルエチル、4−アミノブタン−1−イル、3−アミノプロパン−1−イルまたは3−グアニジノプロパン−1−イルであるか、
または、
は、Rに結合しており、この2つが一体となって(CHまたは(CH基を形成しており、
は、水素またはメチルであり、
はメチルであり、
そして、
は、水素またはメチルである}
の基である、
式(I)の化合物、並びに、それらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物である。
【0018】
これに関して、特に重要なのは、Rが水素または(C−C)−アルキルである式(I)の化合物である。
また、特に重要なのは、Lが直鎖の(C−C)−アルカンジイル基である式(I)の化合物である。
【0019】
特に好ましいのは、式中、
が、水素、メチルまたはn−ブチルであり、
が水素であり、
そして、
Lが、CHCH基であるか、または、式
【化5】

{式中、
*は、N原子への結合点を意味し、
は、水素、メチル、プロパン−2−イル、プロパン−1−イル、イミダゾール−4−イルメチル、ヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、カルバモイルメチル、2−カルバモイルエチル、4−アミノブタン−1−イル、3−アミノプロパン−1−イルまたは3−グアニジノプロパン−1−イルであるか、
または、
は、Rに結合しており、この2つが一体となって(CHまたは(CH基を形成しており、
は、水素またはメチルであり、
そして、
は、水素またはメチルである}
の基である、
式(I)の化合物、並びに、それらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物である。
【0020】
これに関して、特に重要なのは、Rが水素またはメチルである式(I)の化合物である。
また、特に重要なのは、Lが直鎖のCHCH基である式(I)の化合物である。
【0021】
本発明は、さらに、本発明による式(I)の化合物の製造方法に関し、それは、以下のいずれかを特徴とする;
[A]化合物(A)
【化6】

を、先ず、不活性溶媒中、塩基の存在下、式(II)
【化7】

(式中、Rは上記の意味を有し、
そして、Qは、塩素、臭素またはヨウ素などの脱離基である)
の化合物を用いて、式(III)
【化8】

(式中、QおよびRは、上記の意味を有する)
の化合物に変換し、
【0022】
次いで、最後のものを、不活性溶媒中、式(IV)
【化9】

(式中、R、RおよびRは、上記の意味を有し、
PGは、tert−ブトキシカルボニル(Boc)またはベンジルオキシカルボニル(Z)などのアミノ保護基であり、
そして、Xは、OまたはSである)
のα−アミノカルボン酸またはα−アミノチオカルボン酸のセシウム塩と反応させ、式(V)
【化10】

(式中、R、R、R、R、PGおよびXは、上記の意味を有する)
の化合物を得、続いて、保護基PGを常套の方法により除去し、式(I−A)
【化11】

(式中、R、R、R、RおよびXは、上記の意味を有する)
の化合物をもたらす、
【0023】
または、
[B]化合物(A)を、不活性溶媒中、塩基の存在下で、式(VI)
【化12】

(式中、PGは上記の意味を有し、
1Aは、ヒドロキシまたは(C−C)−アルコキシにより置換されていてもよい(C−C)−アルキルであり、そして、
は、1個のCH基がO原子により置き換えられていてもよい(C−C)−アルカンジイル基である)
の化合物と反応させ、式(VII)
【化13】

(式中、R1A、LおよびPGは、各々上記の意味を有する)
の化合物を得、続いて、保護基PGを常套の方法により除去し、式(I−B)
【化14】

(式中、R1AおよびLは、上記の意味を有する)
の化合物をもたらす、
【0024】
または、
[C]化合物(B)
【化15】

を、先ず、ペプチド化学の標準的な方法により、式(VIII)
【化16】

{式中、PG、R、RおよびRは、各々上記の意味を有し、そして、
は、(CHまたはCR基(式中、RおよびRは、各々上記の意味を有する)である}
の化合物に変換し、次いで、後者を、不活性溶媒中、塩基の存在下、式(IX)
【化17】

の化合物と反応させ、式(X)
【化18】

(式中、PG、L、R、RおよびRは、各々上記の意味を有する)
の化合物を得、続いて、保護基PGを常套の方法により除去し、式(I−C)
【化19】

(式中、L、R、RおよびRは、各々上記の意味を有する)
の化合物をもたらす、
【0025】
または、
[D]化合物(A)を、不活性溶媒中、塩基の存在下で、式(XI)
【化20】

(式中、Lは、1個のCH基がO原子により置き換えられていてもよい(C−C)−アルカンジイル基であり、そして、
PGおよびPGは、相互に独立して、tert−ブトキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Z)またはp−メトキシベンジル(PMB)などのアミノ保護基であり、同一であっても異なっていてもよい)
の化合物と反応させ、式(XII)
【化21】

(式中、L、PGおよびPGは、各々上記の意味を有する)
の化合物を得、続いて、保護基PGおよびPGを常套の方法により同時または連続的に除去し、式(I−D)
【化22】

(式中、Lは上記の意味を有する)
の化合物をもたらし、
そして、各場合で得られる式(I−A)、(I−B)、(I−C)および(I−D)の化合物を、必要に応じて、適当な(i)溶媒および/または(ii)酸により、それらの溶媒和物、塩および/または塩の溶媒和物に変換する。
【0026】
式(I−A)、(I−B)、(I−C)および(I−D)の化合物は、上記の方法による製造中に、それらの塩の形態で直接得てもよい。これらの塩は、必要に応じて、不活性溶媒中で塩基を用いる処理により、クロマトグラフィー的方法により、または、イオン交換樹脂により、各々の遊離塩基に変換できる。
【0027】
ラジカルR、R1Aおよび/またはR中に必要に応じて存在する官能基は、好都合または必要であれば、上記の連続反応において、一時的な保護形態にあってもよい。そのような保護基並びに保護基PG、PGおよびPGの導入および除去は、これに関して、ペプチド化学から知られている常套の方法により行う[例えば、T.W. Greene and P.G.M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, Wiley, New York, 1999; M. Bodanszky and A. Bodanszky, The Practice of Peptide Synthesis, Springer-Verlag, Berlin, 1984 参照]。
【0028】
必要に応じてR、R1Aおよび/またはR中に存在するそのような保護基は、これに関して、PGの除去と同時に、または、PGの除去前または後の別の反応工程で、除去し得る。
【0029】
上記方法において好ましく使用されるアミノ保護基PG、PGまたはPGは、tert−ブトキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Z)またはp−メトキシベンジル(PMB)である。これらの保護基の除去は、常套の方法により、好ましくは、塩化水素、臭化水素またはトリフルオロ酢酸などの強酸と、ジオキサン、ジクロロメタンまたは酢酸などの不活性溶媒中で反応させることにより、実施する;必要に応じて、さらなる不活性溶媒を用いずに除去を実施することも可能である。
【0030】
変換(B)→(VIII)は、化合物(B)を適切に保護されたジペプチド誘導体を用いてアシル化することにより、または、必要に応じて適切に保護された個々のアミノ酸成分を連続的にカップリングすることにより、ペプチド化学の標準的な方法で行う[例えば、M. Bodanszky, Principles of Peptide Synthesis, Springer-Verlag, Berlin, 1993; H.-D. Jakubke and H. Jeschkeit, Aminosaeuren, Peptide, Proteine, Verlag Chemie, Weinheim, 1982 を参照]。
【0031】
工程(A)+(II)→(III)、(A)+(VI)→(VII)、(VIII)+(IX)→(X)および(A)+(XI)→(XII)で好ましく使用される不活性溶媒は、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドである;N,N−ジメチルホルムアミドが特に好ましい。これらの反応において特に適する塩基は、水素化ナトリウムである。上述の反応は、一般的に、0℃ないし+40℃の温度範囲で、大気圧下で実施する。
【0032】
工程(III)+(IV)→(V)は、好ましくは、溶媒としてのN,N−ジメチルホルムアミド中で行う。この反応は、一般的に、0℃ないし+50℃の温度範囲で、好ましくは+20℃ないし+50℃で、大気圧下で実施する。この反応は、また、超音波処理により有利に実施できる。
【0033】
式(II)、(IV)、(VI)、(IX)および(XI)の化合物は、購入できるか、文献から知られているか、または、文献中の常套の方法により製造できる。化合物(A)の製造は、実施例に記載されている。
【0034】
本発明による化合物の製造は、以下の合成スキームにより例示説明できる:
スキーム1
【化23】

[X=OまたはS;PG=アミノ保護基、例えば、tert−ブトキシカルボニル(Boc)またはベンジルオキシカルボニル(Z)]
【0035】
スキーム2
【化24】

[m=1−4;PG=アミノ保護基、例えば、tert−ブトキシカルボニル(Boc)またはベンジルオキシカルボニル(Z)]
【0036】
スキーム3
【化25】

[n=1または2;PG=アミノ保護基、例えば、tert−ブトキシカルボニル(Boc)またはベンジルオキシカルボニル(Z)]
【0037】
スキーム4
【化26】

[m=1−4;PG、PG=アミノ保護基、例えば、tert−ブトキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Z)またはp−メトキシベンジル(PMB)]
【0038】
本発明による化合物およびそれらの塩は、有効成分化合物(A)の有用なプロドラッグである。一方では、それらは、pH4で良好な安定性を示し、他方では、それらは生理的pHおよびインビボで、有効成分化合物(A)への効率的な変換を示す。本発明による化合物は、さらに、水および他の生理的に耐容される媒体中での良好な溶解性を有し、それらを特に静脈内投与での治療的使用に適するものにしている。
【0039】
本発明はさらに、障害、好ましくは血栓塞栓性障害および/または血栓塞栓性合併症の処置および/または予防のための、本発明による化合物の使用に関する。
【0040】
本発明に関して、「血栓塞栓性障害」には、特に、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)または非ST上昇型心筋梗塞(非STEMI)、安定狭心症、不安定狭心症、血管形成術または大動脈冠動脈バイパス術などの冠動脈介入後の再閉塞および再狭窄、末梢動脈閉塞疾患、肺栓塞症、深部静脈血栓および腎静脈血栓、一過性虚血発作、並びに、血栓性および血栓塞栓性卒中などの障害が含まれる。
【0041】
従って、これらの物質は、例えば心房細動などの急性、間欠性または持続性心不整脈を有する患者、および、電気的除細動を受けている者、また、心臓弁疾患を有するか、または人工心臓弁を有する患者における、心原性血栓塞栓症、例えば、脳虚血、卒中および全身性血栓塞栓症および虚血の予防および処置にも適する。加えて、本発明による化合物は、汎発性血管内凝固症候群(DIC)の処置に適する。
【0042】
血栓塞栓性合併症は、また、微小血管障害性溶血性貧血、血液透析などの体外循環、および、心臓代用弁と関連して起こる。
【0043】
さらに、本発明による化合物は、アテローム硬化性血管障害および炎症障害、例えば筋骨格系のリウマチ性障害の予防および/または処置にも、さらに同様に、アルツハイマー病の予防および/または処置にも適する。さらに、本発明による化合物は、腫瘍成長および転移形成の阻害、微小血管障害、加齢に伴う黄斑変性症、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症および他の微小血管の障害、また、例えば、腫瘍患者における、特に大きい外科手術または化学療法もしくは放射線治療を受けている者における、静脈血栓塞栓症などの血栓塞栓性合併症の予防および処置にも用いることができる。
【0044】
本発明は、さらに、障害、特に上述の障害の処置および/または予防のための、本発明による化合物の使用に関する。
【0045】
本発明は、さらに、障害、特に上述の障害の処置および/または予防用の医薬を製造するための、本発明による化合物の使用に関する。
【0046】
本発明は、さらに、本発明による化合物を使用する、障害、特に上述の障害の処置および/または予防方法に関する。
【0047】
本発明は、さらに、特に上述の障害の処置および/または予防のための、本発明による化合物および1種またはそれ以上のさらなる有効成分を含む医薬に関する。好ましく言及し得る適当な組合せの有効成分の例は、以下のものである:
・脂質低下剤、特にHMG−CoA(3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−補酵素A)リダクターゼ阻害剤;
・冠血管治療剤/血管拡張剤、特にACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害剤;AII(アンジオテンシンII)受容体アンタゴニスト;β−アドレナリン受容体アンタゴニスト;アルファ−1−アドレナリン受容体アンタゴニスト;利尿剤;カルシウムチャネル遮断剤;環状グアノシン一リン酸(cGMP)の上昇をもたらす物質、例えば、可溶性グアニル酸シクラーゼの刺激剤;
・プラスミノーゲン活性化剤(血栓溶解剤/線維素溶解剤)および血栓溶解/線維素溶解を高める化合物、例えば、プラスミノーゲン活性化因子阻害因子の阻害剤(PAI阻害剤)またはトロンビン活性型線維素溶解阻害因子の阻害剤(TAFI阻害剤);
・凝血活性を有する物質(抗凝血剤);
・血小板凝集阻害性物質(血小板凝集阻害剤);
・フィブリノーゲン受容体アンタゴニスト(糖タンパク質IIb/IIIaアンタゴニスト);
・並びに抗不整脈薬。
【0048】
本発明は、さらに、少なくとも1種の本発明による化合物を、通常1種またはそれ以上の不活性、非毒性の医薬的に適する補助剤と共に含む医薬、および上述の目的でのそれらの使用に関する。
【0049】
本発明による化合物は、全身的および/または局所的に作用できる。この目的で、それらは、適する方法で、例えば、経口、非経腸、肺または鼻の経路で、投与できる。本発明による化合物は、これらの投与経路に適する投与形で投与できる。
【0050】
経口投与に適するのは、先行技術に準じて機能し、本発明による化合物を迅速におよび/または改変された様式で送達し、本発明による化合物を結晶および/または無定形および/または溶解形態で含有する投与形であり、例えば、錠剤(非被覆または被覆錠剤、例えば、腸溶性被覆、または、不溶であるか、または、遅れて溶解し、本発明による化合物の放出を制御する被覆を有する錠剤)、口中で迅速に崩壊する錠剤、またはフィルム/オブラート、フィルム/凍結乾燥剤、カプセル剤(例えば、ハードまたはソフトゼラチンカプセル剤)、糖衣錠、顆粒剤、ペレット剤、散剤、乳剤、懸濁剤、エアゾール剤または液剤などである。
【0051】
非経腸投与は、吸収段階を回避して(例えば、静脈内、動脈内、心臓内、脊髄内または腰椎内に)、または吸収を含めて(例えば、筋肉内、皮下、皮内、経皮または腹腔内)、行うことができる。非経腸投与に適する投与形は、なかんずく、液剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥剤または滅菌粉末剤の形態の注射および点滴用製剤である。
【0052】
他の投与経路に適するのは、例えば、粉末吸入器または噴霧器などの吸入用医薬形、または、点鼻薬、液またはスプレーなどの、鼻腔投与できる医薬形である。
非経腸投与、特に静脈内投与が好ましい。
【0053】
本発明による化合物は、上述の投与形に変換できる。これは、不活性、非毒性、医薬的に適する補助剤と混合することにより、それ自体既知の方法で行うことができる。これらの補助剤には、なかんずく、担体(例えば微結晶セルロース、ラクトース、マンニトール)、溶媒(例えば液体ポリエチレングリコール類)、乳化剤および分散剤または湿潤剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシソルビタンオレエート)、結合剤(例えばポリビニルピロリドン)、合成および天然ポリマー(例えばアルブミン)、安定化剤(例えば抗酸化剤、例えばアスコルビン酸など)、着色料(例えば無機色素、例えば酸化鉄など)および香味および/または臭気の隠蔽剤が含まれる。
【0054】
一般に、非経腸投与で約0.001ないし1mg/体重kg、好ましくは約0.01ないし0.5mg/体重kgの量を投与するのが、有効な結果を達成するために有利であると明らかになり、経口投与では、投与量は、約0.01ないし100mg/体重kg、好ましくは約0.01ないし20mg/体重kg、ことさら特に好ましくは約0.1ないし10mg/体重kgである。
【0055】
それにも拘わらず、必要に応じて、特に、体重、投与経路、有効成分に対する個体の応答、製剤の性質および投与を行う時間または間隔に応じて、上述の量から逸脱することが必要であり得る。従って、上述の最小量より少なくても十分な場合があり、一方、上述の上限を超えなければならない場合もある。大量に投与する場合、これらを1日に亘る数回の個別投与に分割するのが望ましいことがある。
【0056】
以下の例示的実施態様は、本発明を例示説明する。本発明は、これらの実施例に限定されない。
以下の試験および実施例における百分率のデータは、断りの無い限り、重量パーセントである;部は、重量部である。液体/液体溶液の溶媒比、希釈比および濃度のデータは、各場合で体積に基づく。
【実施例】
【0057】
A. 実施例
略号および頭字語:
【表1】

【0058】
LC−MSおよびHPLCの方法:
方法1:装置:DAD 検出を備えたHP 1100;カラム:Kromasil 100 RP-18, 60 mm x 2.1 mm, 3.5 μm;移動相A:過塩素酸(70%濃度)5ml/水1l、移動相B:アセトニトリル;グラジエント:0分2%B→0.5分2%B→4.5分90%B→6.5分90%B→6.7分2%B→7.5分2%B;流速:0.75ml/分;カラム温度:30℃;UV検出:210nm。
【0059】
方法2:装置:DAD 検出を備えたHP 1100;カラム:Kromasil 100 RP-18, 60 mm x 2.1 mm, 3.5 μm;移動相A:過塩素酸(70%濃度)5ml/水1l、移動相B:アセトニトリル;グラジエント:0分2%B→0.5分2%B→4.5分90%B→9分0%B→9.2分2%B→10分2%B;流速:0.75ml/分;カラム温度:30℃;UV検出:210nm。
【0060】
方法3(LC−MS):MS装置タイプ:Micromass ZQ;HPLC装置タイプ:HP 1100 Series; UV DAD;カラム:Phenomenex Gemini 3μ 30 mm x 3.00 mm;移動相A:水1l+50%濃度のギ酸0.5ml、移動相B:アセトニトリル1l+50%濃度のギ酸0.5ml;グラジエント:0.0分90%A→2.5分30%A→3.0分5%A→4.5分5%A;流速:0.0分1ml/分,2.5分/3.0分/4.5分2ml/分;オーブン:50℃;UV検出:210nm。
【0061】
方法4(LC−MS):装置:Micromass GCT, GC6890;カラム:Restek RTX-35MS, 30 m x 250 μm x 0.25 μm;一定のヘリウム流速:0.88ml/分;オーブン:60℃;入口:250℃;グラジエント:60℃(0.30分間維持)、50℃/分→120℃、16℃/分→250℃、30℃/分→300℃(1.7分間維持)。
【0062】
方法5(分取HPLC):カラム:GROM-SIL 120 ODS-4 HE, 10 μM, 250 mm x 30 mm;流速:50ml/分;移動相およびグラジエントのプログラム:アセトニトリル/0.1%水性ギ酸10:90(0−3分)、アセトニトリル/0.1%水性ギ酸10:90→95:5(3−27分)、アセトニトリル/0.1%水性ギ酸95:5(27−34分)、アセトニトリル/0.1%水性ギ酸10:90(34−38分);温度:22℃;UV検出:254nm。
【0063】
方法6(LC−MS):装置:HPLC Agilent Series 1100 を備えた Micromass LCT; カラム: Waters Symmetry C18, 3.5 μm, 50 mm x 2.1 mm;移動相A:水1l+98ないし100%濃度のギ酸1ml、移動相B:アセトニトリル1l+98ないし100%濃度のギ酸1ml;グラジエント:0分100%A→1分100%A→6分10%A→8分0%A→10分0%A→10.1分100%A→12分100%A;流速:0−10分0.5ml/分→10.1分1ml/分→12分0.5ml/分;温度:40℃;UV検出DAD:208−500nm。
【0064】
方法7(分析的HPLC):装置:DAD996 を備えた WATERS 2695;カラム:XTerra 3.9 x 150 WAT 186000478;移動相A:水2.5l中の70%濃度過塩素酸10ml、移動相B:アセトニトリル;グラジエント:0.0分20%B→1分20%B→4分90%B→9分90%B;温度:室温;流速:1ml/分。
【0065】
方法8(LC−MS):装置:HPLC Agilent Series 1100 を備えた Micromass Quattro LCZ;カラム:Phenomenex Onyx Monolithic C18, 100 mm x 3 mm;移動相A:水1l+50%濃度のギ酸0.5ml、移動相B:アセトニトリル1l+50%濃度のギ酸0.5ml;グラジエント:0.0分90%A→2分65%A→4.5分5%A→6分5%A;流速:2ml/分;オーブン:40℃;UV検出:208−400nm。
【0066】
方法9(LC−MS):MS装置タイプ:Waters (Micromass) Quattro Micro;HPLC装置タイプ:Agilent 1100 Series;カラム:Thermo Hypersil GOLD 3μ 20 mm x 4 mm;移動相A:水1l+50%濃度のギ酸0.5ml、移動相B:アセトニトリル1l+50%濃度のギ酸0.5ml;グラジエント:0.0分100%A→3.0分10%A→4.0分10%A→4.01分100%A(流速2.5ml)→5.00分100%A;オーブン:50℃;流速:2ml/分;UV検出:210nm。
【0067】
方法10(LC−MS):MS装置タイプ:Micromass ZQ;HPLC装置タイプ:Waters Alliance 2795;カラム:Phenomenex Synergi 2.5 μ MAX-RP 100A Mercury 20 mm x 4 mm;移動相A:水1l+50%濃度のギ酸0.5ml、移動相B:アセトニトリル1l+50%濃度のギ酸0.5ml;グラジエント:0.0分90%A→0.1分90%A→3.0分5%A→4.0分5%A→4.01分90%A;流速:2ml/分;;オーブン:50℃;UV検出:210nm。
【0068】
方法11(分析的HPLC):装置:HP1090 Series II;カラム:Waters XTerra C18-5, 3.9 mm x 150 mm WAT 186000478;移動相A:水2.5l中の70%濃度の過塩素酸10ml、移動相B:アセトニトリル;グラジエント:0.0分20%B→1分20%B→4分90%B→6分90%B→8分20%B。温度:40℃;流速:1ml/分。
【0069】
方法12(分析的HPLC):装置:HP 1090 Series II;カラム:Merck Chromolith Speed ROD RP-18e, 50 mm x 4.6 mm; precolumn Chromolith Guard Cartridge Kit, RP-18e, 5-4.6 mm;移動相A:過塩素酸(70%濃度)5ml/水1l、移動相B:アセトニトリル;グラジエント:0分20%B→0.5分20%B→3分90%B→3.5分90%B→3.51分20%B→4分20%B;流速:5ml/分;カラム温度:40℃;UV検出:210nm。
【0070】
方法13(分取HPLC):装置:UV検出器を備えた Gilson, カラム: Kromasil C18, 5μm/ 250 mm x 20 mm(流速:25ml/分);移動相A:水(0.01%トリフルオロ酢酸)、移動相B:アセトニトリル(0.01%トリフルオロ酢酸);グラジエント:0分5−20%B、10分−15分5−20%B、45分90%B、50分90%B;流速:25ml/分;UV検出:210nm。
【0071】
方法14(分取HPLC):装置:UV検出器を備えた Gilson, カラム: YMC ODS AQ C18, 10μm/ 250 mm x 30 mm (流速:50ml/分);移動相A:水(0.01%トリフルオロ酢酸)、移動相B:アセトニトリル(0.01%トリフルオロ酢酸);グラジエント:0分5−20%B、10分−15分5−20%B、45分90%B、50分90%B;流速:50ml/分;波長:210nm。
【0072】
NMR分光法:
NMR測定は、プロトン周波数400.13MHzで実施した。サンプルを通常はDMSO−dに溶解した;温度:302K。
【0073】
出発化合物:
使用した出発物質は、5−クロロ−N−({(5S)−3−[2−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)チオフェン−2−カルボキサミド[化合物(A)]であった。
【化27】

【0074】
実施例1A
5−クロロチオフェン−2−カルボニルクロリド
【化28】

塩化オキサリル137ml(1.57mol)を、ジクロロメタン307ml中の5−クロロチオフェン−2−カルボン酸51.2g(0.315mmol)の懸濁液に添加した。DMF2滴の添加後、混合物を室温で15時間撹拌した。次いで、溶媒および過剰の塩化オキサリルをロータリーエバポレーターで除去した。残渣を減圧下で蒸留した。生成物は、74−78℃および4−5mbarの圧力で沸騰した。これにより、油状物50.5g(理論値の87%)を得、これは、冷蔵庫での保存で凝固した。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3, δ/ppm): 7.79 (d, 1H), 7.03 (d, 1H).
GC/MS (方法 4): Rt = 5.18 分.
MS (EI+, m/z): 180/182/184 (2 35Cl/37Cl) M+.
【0075】
実施例2A
((S)−2,3−ジヒドロキシプロピル)−5−クロロチオフェン−2−カルボキサミド
(C.R. Thomas, Bayer HealthCare AG, DE-10300111-A1 (2004)より)
【化29】

13−15℃で、重炭酸ナトリウム461g(4.35mol)および(2S)−3−アミノプロパン−1,2−ジオール塩酸塩350g(3.85mol)を、先ず、水2.1lに加え、2−メチルテトラヒドロフラン950mlを添加した。15−18℃で冷却しながら、トルエン180ml中の5−クロロチオフェン−2−カルボニルクロリド(実施例1Aの化合物)535g(2.95mol)をこの混合物に2時間かけて滴下して添加した。後処理に、相を分離し、全部で1.5lのトルエンを数段階で有機相に添加した。沈殿した生成物を吸引濾過し、酢酸エチルで洗浄し、乾燥させた。これにより、生成物593.8g(理論値の92%)を得た。
【0076】
実施例3A
((S)−3−ブロモ−2−ヒドロキシプロピル)−5−クロロチオフェン−2−カルボキサミド
(C.R. Thomas, Bayer HealthCare AG, DE-10300111-A1 (2004)より)
【化30】

30分間かけて、酢酸中の33%濃度の臭化水素の溶液301.7mlを、21−26℃で、氷酢酸250ml中の実施例2Aの化合物100g(0.423mol)の懸濁液に添加した。次いで無水酢酸40mlを添加し、反応混合物を60−65℃で3時間撹拌した。次いで、20−25℃で、メタノール960mlを30分間かけて添加した。反応混合物を還流下で2.5時間撹拌し、次いで20−25℃で終夜撹拌した。後処理に、溶媒を約95mbarの減圧下で蒸留した。n−ブタノール50mlおよび水350mlを残った懸濁液に添加した。沈殿した生成物を吸引濾過し、水で洗浄し、乾燥させた。これにより、生成物89.8g(理論値の71%)を得た。
【0077】
実施例4A
5−クロロ−N−[(2S)−オキシラン−2−イルメチル]チオフェン−2−カルボキサミド
【化31】

粉末状炭酸カリウム155g(1.12mol)を、無水THF500ml中の実施例3Aの化合物50g(0.167mol)の溶液に添加し、混合物を室温で3日間撹拌した。次いで、無機塩を珪藻土層で吸引濾過し、各場合で100mlのTHFで2回洗浄し、濾液をロータリーエバポレーターで室温で濃縮した。これにより、生成物36g(理論値の81%)を得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6, δ/ppm): 8.81 (t, 1H), 7.68 (d, 1H), 7.19 (d, 1H), 3.55-3.48 (m, 1H), 3.29-3.22 (m, 1H), 3.10-3.06 (m, 1H), 2.75-2.72 (m, 1H), 2.57-2.54 (m, 1H).
HPLC (方法 1): Rt = 3.52 分.
MS (DCI, NH3, m/z): (35Cl/37Cl) 218/220 (M+H)+, 235/237 (M+NH4)+.
【0078】
実施例5A
N,N−ジベンジル−2−フルオロ−4−ヨードアニリン
【化32】

水100mlおよびジクロロメタン200mlの混合物中、2−フルオロ−4−ヨードアニリン24.37g(0.103mol)、臭化ベンジル31.8ml(0.267mol)、炭酸ナトリウム23.98g(0.226mol)およびテトラ−n−ブチルアンモニウムヨージド1.9g(5.14mmol)を還流で6日間加熱した。室温に冷却後、相を互いに分離した。有機相を水および飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。得られた残渣をシリカゲルの吸引濾過により、移動相シクロヘキサンを使用して精製した。これにより、表題化合物35g(理論値の82%)を得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6, δ/ppm): 7.48 (1H, dd), 7.32-7.21 (m, 11H), 6.69 (dd, 1H), 4.33 (s, 4H).
HPLC (方法 1): Rt = 5.87 分.
MS (DCI, NH3, m/z): 418 (M+H)+.
【0079】
実施例6A
4−[4−(ジベンジルアミノ)−3−フルオロフェニル]モルホリン−3−オン
【化33】

実施例5Aの化合物1.5g(3.59mmol)を無水ジオキサン20mlに溶解し、モルホリノン0.45g(4.49mmol)、ヨウ化銅(I)137mg(0.719mmol)、リン酸カリウム1.53g(7.19mmol)およびN,N'−ジメチルエチレンジアミン153μl(1.44mmol)を連続的に添加した。還流器具を、僅かな減圧とアルゴンによる換気を繰り返し適用することにより不活性化した。反応混合物を還流で15時間加熱した。この期間の後、混合物を室温に放冷した。水を添加し、混合物を酢酸エチルで抽出した。有機抽出物を水および飽和塩化ナトリウム溶液で連続的に洗浄した。抽出物を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、次いで濾過し、濾液から溶媒を減圧下で除去した。残渣をシリカゲルの吸引濾過により、移動相シクロヘキサン/酢酸エチル1:1を使用して精製した。これにより、表題化合物1.38g(理論値の98%)を得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6, δ/ppm): 7.32-7.28 (m, 9H), 7.26-7.20 (m, 2H), 7.00-6.92 (m, 2H), 4.33 (s, 4H), 4.15 (s, 2H), 3.91 (dd, 2H), 3.55 (dd, 2H).
HPLC (方法 1): Rt = 4.78 分.
MS (DCI, NH3, m/z): 391 (M+H)+.
【0080】
実施例7A
4−(4−アミノ−3−フルオロフェニル)モルホリン−3−オン
【化34】

方法1:
実施例6Aの化合物700mg(1.79mmol)をエタノール70mlに溶解し、パラジウム/活性炭(10%)95mgを添加した。混合物を室温で、水素圧1barで、1時間水素化した。次いで触媒を少量の珪藻土で濾過し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。これにより、表題化合物378mg(理論値の95%)を得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6, δ/ppm): 7.04 (dd, 1H), 6.87 (dd, 1H), 6.73 (dd, 1H), 5.17 (s, broad, 2H), 4.12 (s, 2H), 3.91 (dd, 2H), 3.62 (dd, 2H).
HPLC (方法 1): Rt = 0.93 分.
MS (DCI, NH3, m/z): 211 (M+H)+, 228 (M+NH4)+.
【0081】
方法2:
アルゴン下、ジオキサン300ml中の2−フルオロ−4−ヨードアニリン29.6g(125mmol)、モルホリン−3−オン[J.-M. Lehn, F. Montavon, Helv. Chim. Acta 1976, 59, 1566-1583]15.8g(156mmol、1.25当量)、ヨウ化銅(I)9.5g(50mmol、0.4当量)、リン酸カリウム53.1g(250mmol、2当量)およびN,N‘−ジメチルエチレンジアミン8.0ml(75mmol、0.6当量)の懸濁液を、還流下で終夜撹拌した。室温に冷却後、反応混合物を珪藻土層で濾過し、残渣をジオキサンで洗浄した。合わせた濾液を減圧下で濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル60、ジクロロメタン/メタノール100:1→100:3)により精製した。これにより、表題化合物24g(理論値の74%)を得た。
LC-MS (方法 3): Rt = 0.87 分;
MS (ESIpos): m/z = 211 [M+H]+;
1H-NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ = 7.05 (dd, 1H), 6.87 (dd, 1H), 6.74 (dd, 1H), 5.14 (s, 2H), 4.11 (s, 2H), 3.92 (dd, 2H), 3.63 (dd, 2H).
【0082】
実施例8A
5−クロロ−N−[(2R)−3−{[2−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]アミノ}−2−ヒドロキシプロピル]チオフェン−2−カルボキサミド
【化35】

過塩素酸マグネシウム600mg(2.69mmol)を、アセトニトリル10ml中の実施例7Aの生成物376mg(1.79mmol)および実施例4Aの化合物429mg(1.97mmol)の溶液に添加し、混合物を室温で15時間撹拌した。水を添加し、混合物を酢酸エチルで抽出した。有機抽出物を水および飽和塩化ナトリウム溶液で連続的に洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾過後、溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。残渣を分取HPLC(方法5)により精製した。これにより、表題化合物503mg(理論値の64%)を得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6, δ/ppm): 8.61 (t, 1H), 7.68 (d, 1H), 7.18 (d, 1H), 7.11 (dd, 1H), 6.97 (dd, 1H), 6.73 (dd, 1H), 5.33 (t, 1H), 5.14 (d, 1H), 4.13 (s, 2H), 3.92 (dd, 2H), 3.87-3.79 (m, 1H), 3.63 (dd, 2H), 3.39-3.22 (m, 2H, 部分的に水のシグナルが重なる), 3.21-3.15 (m, 1H), 3.08-3.02 (m, 1H).
HPLC (方法 1): Rt = 3.75 分.
MS (DCI, NH3, m/z): 428/430 (35Cl/37Cl) (M+H)+, 445/447 (M+NH4)+.
【0083】
実施例9A(化合物A)
5−クロロ−N−({(5S)−3−[2−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)チオフェン−2−カルボキサミド
【化36】

4−ジメチルアミノピリジン2.7mg(0.022mmol)を、ブチロニトリル10ml中の実施例8Aの生成物478mg(1.12mmol)およびカルボニルジイミダゾール363mg(2.24mmol)の溶液に添加し、混合物を70℃で加熱した。3日後、溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。生成物を残渣から分取HPLC(方法5)により単離した。これにより、表題化合物344mg(理論値の68%)を得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6, δ/ppm): 8.98 (t, 1H), 7.70 (d, 1H), 7.52 (dd, 1H), 7.48 (dd, 1H), 7.31 (dd, 1H), 7.21 (d, 1H), 4.91-4.84 (m, 1H), 4.21 (s, 2H), 4.12 (t, 1H), 3.98 (dd, 2H), 3.80 (dd, 1H), 3.76 (dd, 2H), 3.68-3.57 (m, 2H).
HPLC (方法 1): Rt = 3.82 分.
MS (DCI, NH3, m/z): 471/473 (35Cl/37Cl) (M+NH4)+.
【0084】
実施例10A
5−クロロ−N−(クロロアセチル)−N−({(5S)−2−オキソ−3−[2−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)チオフェン−2−カルボキサミド
【化37】

この化合物は、実施例13、19または22の工程a)と同様に、化合物(A)をクロロアセチルクロリドと反応させることにより製造できる。
【0085】
実施例11A
ベンジル(4−クロロ−4−オキソブチル)メチルカルバメート
【化38】

まず、4−[[(ベンジルオキシ)カルボニル](メチル)アミノ]酪酸を、ベンジルオキシカルボニル保護基を対応するω−N−メチルアミノアルキルカルボン酸(P. Quitt et al. [Helv. Chim. Acta 46, 327 (1963)]に従い得ることができる)に導入することにより製造した。あるいは、4−[[(ベンジルオキシ)カルボニル](メチル)アミノ]酪酸は、文献の方法[Y. Aramaki et al., Chem. Pharm. Bull. 52, 258 (2004)]に従い、購入できる4−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}酪酸から製造できる。
4−[[(ベンジルオキシ)カルボニル](メチル)アミノ]酪酸1.74g(6.92mmol)を、ジクロロメタン35mlに溶解し、塩化チオニル3.5ml(48mmol)を添加した。混合物を還流下で1時間加熱した。次いで、混合物を減圧下で濃縮し、さらなるジクロロメタンを残渣に添加し、混合物を再度濃縮した。残ったものは、粘性の油状物であった。それを高真空下で乾燥させた。これにより、標題化合物1.8g(理論値の96%)を得、これをさらに精製および特徴解析せずに、さらに反応させた。
【0086】
実施例12A
ベンジル(5−クロロ−5−オキソペンチル)メチルカルバメート
【化39】

まず、5−[[(ベンジルオキシ)カルボニル](メチル)アミノ]吉草酸を、既知方法に従い製造した。ここで、ω−ブロモ吉草酸とメチルアミンとの反応により事前に製造したω−N−メチルアミノ吉草酸に、ベンジルオキシカルボニル保護基を導入した。
5−[[(ベンジルオキシ)カルボニル](メチル)アミノ]吉草酸1.97g(7.43mmol)をジクロロメタン30mlに溶解し、塩化チオニル4.9ml(67.3mmol)を添加した。混合物を還流下で1時間加熱した。次いで、混合物を減圧下で濃縮し、さらなるジクロロメタンを残渣に添加し、混合物を再度濃縮した。残ったものは、粘性の油状物であった。それを高真空下で乾燥させた。これにより、標題化合物2g(理論値の95%)を得、これをさらに精製および特徴解析せずに、さらに反応させた。
【0087】
実施例13A
ベンジル(3−クロロ−3−オキソプロピル)メチルカルバメート
【化40】

まず、3−[[(ベンジルオキシ)カルボニル](メチル)アミノ]プロピオン酸を、対応するω−N−メチルアミノアルキルカルボン酸(P. Quitt et al. [Helv. Chim. Acta 46, 327 (1963)] に従って得られる)にベンジルオキシカルボニル保護基を導入することにより製造した。あるいは、3−[[(ベンジルオキシ)カルボニル](メチル)アミノ]プロピオン酸は、購入できる3−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}プロピオン酸から、文献の方法[Y. Aramaki et al., Chem. Pharm. Bull. 52, 258 (2004)]に従って製造できる。
3−[[(ベンジルオキシ)カルボニル](メチル)アミノ]プロピオン酸850mg(3.58mmol)を、ジクロロメタン15mlに溶解し、塩化オキサリル1.5mlを添加した。混合物を還流下で3時間加熱した。次いで、混合物を減圧下で濃縮し、さらなるジクロロメタンを残渣に添加し、混合物を再度濃縮した。残ったものは、粘性の油状物であり、これを高真空下で乾燥させた。これにより、標題化合物915mg(定量的)を得、これをさらに精製および特徴解析せずに、さらに反応させた。
【0088】
実施例14A
ベンジル(6−クロロ−6−オキソヘキシル)メチルカルバメート
【化41】

まず、6−[[(ベンジルオキシ)カルボニル](メチル)アミノ]カプロン酸を、対応するω−N−メチルアミノアルキルカルボン酸(P. Quitt et al. [Helv. Chim. Acta 46, 327 (1963)]に従い製造できる)にベンジルオキシカルボニル保護基を導入することにより製造した。あるいは、6−[[(ベンジルオキシ)カルボニル](メチル)アミノ]カプロン酸は、文献の方法[Y. Aramaki et al., Chem. Pharm. Bull. 52, 258 (2004)]に従い、購入できる6−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}カプロン酸から製造できる。
6−[[(ベンジルオキシ)カルボニル](メチル)アミノ]カプロン酸3850mg(13.8mmol)を、ジクロロメタン60mlに溶解し、塩化オキサリル4mlを添加した。混合物を還流下で3時間加熱した。次いで、混合物を減圧下で濃縮し、さらなるジクロロメタンを残渣に添加し、混合物を再度濃縮した。残ったものは、粘性の油状物であり、これを高真空下で乾燥させた。これにより、標題化合物4.1g(定量的)を得、これをさらに精製および特徴解析せずに反応させた。
【0089】
実施例15A
ベンジル(5−クロロ−5−オキソペンチル)(4−メトキシベンジル)カルバメート
【化42】

工程a):
5−アミノ吉草酸10g(85.4mmol)、p−アニスアルデヒド17.4g(128mmol)および硫酸マグネシウム10.3g(85.4mmol)を、エタノール330mlに取り、還流下で1時間加熱した。次いで、混合物を濾過し、フィルターの残渣をエタノールで洗浄し、次いで、全部で1.94g(51.2mmol)の水素化ホウ素ナトリウムを少しずつ15分間かけて濾液に添加した。先ず、水10mlを添加し、次いで2M水酸化ナトリウム水溶液128mlを添加した。5分後に、混合物を水300mlで希釈し、次いで各場合で酢酸エチル200mlで3回抽出した。4M塩酸を使用して水相をpH2に調節し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより、移動相アセトニトリル/水/酢酸5:1:0.1を使用して精製した。生成物画分を濃縮し、酢酸エチルおよびジエチルエーテルでトリチュレートした。次いで、残渣を吸引濾過し、高真空下で乾燥させた。これにより、p−メトキシベンジル保護5−アミノ吉草酸9.1g(理論値の45%)を得た。
【0090】
工程b):
かくして得られた5−アミノ吉草酸誘導体をジオキサン/水(1:1)に取り、水酸化ナトリウム水溶液を使用してpH10に調節し、次いで、クロロ炭酸ベンジル12.97g(76mmol)を滴下して添加した。室温で15分間撹拌した後、ジオキサンを減圧下で除去し、2M塩酸を使用して残った溶液をpH2に調節した。混合物を酢酸エチルで抽出し、次いで有機相を水で2回洗浄した。次いで、有機相を濃縮し、残渣を高真空下で乾燥させた。これに続き、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより、移動相アセトニトリルを使用して精製した。生成物画分を濃縮し、残渣を高真空下で乾燥させた。これにより、Z−保護アミノ酸5.6g(理論値の38%)を得た。
LC-MS (方法 6): Rt = 2.47 分; m/z = 372 (M+H)+.
【0091】
工程c):
かくして得られた5−{[(ベンジルオキシ)カルボニル](4−メトキシベンジル)アミノ}吉草酸5.6g(15mmol)を、ジクロロメタン60mlに溶解し、塩化チオニル2.2mlを添加した。混合物を還流下で30分間加熱した。次いで混合物を減圧下で濃縮し、さらなるジクロロメタンを残渣に添加し、混合物を再度濃縮した。残った物は、粘性の油状物であり、それを高真空下で乾燥させた。これにより、標題化合物5.7g(理論値の98%)を得、これをさらに精製および特徴解析せずに、さらに反応させた。
【0092】
実施例16A
ベンジル(6−クロロ−6−オキソヘキシル)(4−メトキシベンジル)カルバメート
【化43】

実施例15Aと同様に、6−アミノカプロン酸から表題化合物を製造した。
【0093】
実施例17A
ベンジル(4−クロロ−4−オキソブチル)(4−メトキシベンジル)カルバメート
【化44】

実施例15Aと同様に、4−アミノ酪酸から表題化合物を製造した。
【0094】
実施例18A
ベンジルブチル(4−クロロ−4−オキソブチル)カルバメート
【化45】

まず、4−{[(ベンジルオキシ)カルボニル](ブチル)アミノ}酪酸を、文献の方法[Org. Prep. Proc. Int. 9 (2), 49 (1977)]に従い、N−ブチルピロリドンからのラクタム開環とその後のZ保護基の導入により製造した。あるいは、製造は、[J. Org.Chem. 1985, 50, 1303]に従って実施することもできる。次いで、対応する酸塩化物を、実施例11Aに記載の通りに製造した。
【0095】
例示的実施態様:
カルボン酸または適切に保護されたアミノ酸誘導体のセシウム塩の製造のための一般的方法1:
適当なカルボン酸またはチオカルボン酸1mmolを、ジオキサン10mlと水10mlの混合物に溶解し、炭酸セシウム0.5mmolを添加する。続いて凍結乾燥する。
【0096】
下記の実施例1ないし11は、スキーム1に記載の通り、実施例10Aの化合物を、一般的方法1に従って得られる適当なカルボン酸またはチオカルボン酸のセシウム塩と反応させることにより製造できる。
【0097】
実施例1
2−[[(5−クロロ−2−チエニル)カルボニル]({(5S)−2−オキソ−3−[2−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)アミノ]−2−オキソエチルグリシネート塩酸塩
【化46】

【0098】
実施例2
2−[[(5−クロロ−2−チエニル)カルボニル]({(5S)−2−オキソ−3−[2−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)アミノ]−2−オキソエチル2−メチルアラニネート塩酸塩
【化47】

【0099】
実施例3
2−[[(5−クロロ−2−チエニル)カルボニル]({(5S)−2−オキソ−3−[2−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)アミノ]−2−オキソエチルL−バリネート塩酸塩
【化48】

【0100】
実施例4
2−[[(5−クロロ−2−チエニル)カルボニル]({(5S)−2−オキソ−3−[2−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)アミノ]−2−オキソエチルL−プロリネート塩酸塩
【化49】

【0101】
実施例5
2−[[(5−クロロ−2−チエニル)カルボニル]({(5S)−2−オキソ−3−[2−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)アミノ]−2−オキソエチルN−メチルグリシネート塩酸塩
【化50】

【0102】
実施例6
2−[[(5−クロロ−2−チエニル)カルボニル]({(5S)−2−オキソ−3−[2−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)アミノ]−2−オキソエチルD−バリネート塩酸塩
【化51】

【0103】
実施例7
2−[[(5−クロロ−2−チエニル)カルボニル]({(5S)−2−オキソ−3−[2−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)アミノ]−2−オキソエチルL−リジネート二塩酸塩
【化52】

【0104】
実施例8
2−[[(5−クロロ−2−チエニル)カルボニル]({(5S)−2−オキソ−3−[2−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)アミノ]−2−オキソエチルL−ヒスチジネート二塩酸塩
【化53】

【0105】
実施例9
2−[[(5−クロロ−2−チエニル)カルボニル]({(5S)−2−オキソ−3−[2−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)アミノ]−2−オキソエチルD−ヒスチジネート二塩酸塩
【化54】

【0106】
実施例10
S−{2−[[(5−クロロ−2−チエニル)カルボニル]({(5S)−2−オキソ−3−[2−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)アミノ]−2−オキソエチル}(2S)−2−アミノ−3−メチルブタンチオエート臭化水素酸塩
【化55】

【0107】
実施例11
S−{2−[[(5−クロロ−2−チエニル)カルボニル]({(5S)−2−オキソ−3−[2−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)アミノ]−2−オキソエチル}(2S)−2−アミノ−3−メチルブタンチオエート塩酸塩
【化56】

【0108】
実施例12
5−クロロ−N−[4−(メチルアミノ)ブタノイル]−N−({(5S)−2−オキソ−3−[2−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)チオフェン−2−カルボキサミド臭化水素酸塩
【化57】

【0109】
下記の化合物は、実施例13と同様に、適当な出発化合物から製造できる。ベンジルオキシカルボニル保護基は、直接的に臭化水素を氷酢酸中で使用して標題化合物を得るか、または、化合物をまずトリフルオロ酢酸と反応させ、後続の氷酢酸中での臭化水素との反応の後に標題化合物を単離することにより、除去できる。
【0110】
実施例13
5−クロロ−N−[4−(メチルアミノ)ブタノイル]−N−({(5S)−2−オキソ−3−[2−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)チオフェン−2−カルボキサミド塩酸塩
【化58】

工程a):
化合物(A)300mg(0.661mmol)を、DMF20mlに溶解し、水素化ナトリウム48mg(1.98mmol)を添加し、混合物を室温で30分間撹拌した。実施例11Aの化合物892mg(3.3mmol)をDMF2mlに溶解し、次いで添加した。混合物を室温でさらに15分間撹拌し、次いで数滴の水を混合物に添加した。次いで、混合物を濃縮し、残渣をジクロロメタン100mlに取った。塩化水素をこの溶液に飽和まで導入し、次いで、混合物を終夜静置した。溶液を濃縮し、残渣を酢酸エチル100mlに取った。混合物を、最初の3回は各50mlの5%濃度の重炭酸ナトリウム溶液で、次いで水50mlで1回、抽出した。有機相を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、次いで濃縮した。残渣をシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより、移動相トルエン/エタノール10:1を使用して精製した。適当な画分を合わせ、濃縮した。残渣を酢酸エチル50mlの超音波浴で2回処理し、溶媒をデカンタし、次いで残渣を高真空下で乾燥させた。これにより、保護化合物130mg(29%)を得た。
HPLC (方法 7): Rt = 5.37 分;
LC-MS (方法 9): Rt = 2.34 分; m/z = 687 (M+H)+.
【0111】
工程b):
上記で得られるZ−保護中間体127mg(0.185mmol)を、トリフルオロ酢酸15mlに取り、溶液を室温で3日間撹拌した。溶液を濃縮し、残渣を水50mlに取った。混合物を各50mlの酢酸エチルで3回抽出し、濃縮した。残渣を水性塩酸に溶解し、これをpH3に調節し、凍結乾燥した。凍結乾燥物をもう一度水性塩酸に取り、それをpH3に調節し、再度凍結乾燥した。残ったものは、表題化合物67mg(62%)であった。
HPLC (方法 7): Rt = 4.15 分;
LC-MS (方法 9): Rt = 0.79 分; m/z = 553 (M+H)+.
【0112】
下記の化合物は、実施例13と同様に、適当な出発化合物から製造できる。まず得られるトリフルオロ酢酸塩を、各場合で、適当な酸との反応により他の塩形態を製造するために使用できる。
【0113】
実施例14
5−クロロ−N−[5−(メチルアミノ)ペンタノイル]−N−({(5S)−2−オキソ−3−[2−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)チオフェン−2−カルボキサミド臭化水素酸塩
【化59】

【0114】
実施例15
N−メチルグリシル−N−[(5−クロロ−2−チエニル)カルボニル]−N−メチル−N−({(5S)−2−オキソ−3−[2−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)グリシンアミド臭化水素酸塩
【化60】

【0115】
実施例16
N−メチル−β−アラニル−N−[(5−クロロ−2−チエニル)カルボニル]−N−メチル−N−({(5S)−2−オキソ−3−[2−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)グリシンアミド臭化水素酸塩
【化61】

【0116】
実施例17
5−クロロ−N−[5−(メチルアミノ)ペンタノイル]−N−({(5S)−2−オキソ−3−[2−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)チオフェン−2−カルボキサミド塩酸塩
【化62】

【0117】
実施例18
5−クロロ−N−[6−(メチルアミノ)ヘキサノイル]−N−({(5S)−2−オキソ−3−[2−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)チオフェン−2−カルボキサミド塩酸塩
【化63】

【0118】
実施例19
N−(4−アミノブタノイル)−5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[2−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)チオフェン−2−カルボキサミド塩酸塩
【化64】

工程a):
アルゴン雰囲気下、化合物(A)0.5g(1.1mmol)を、DMF27mlに溶解し、水素化ナトリウム79mg(3.31mmol)を添加し、混合物を室温で30分間撹拌した。次いで、DMF3mlに溶解した新たに製造した実施例17Aの化合物4.14g(11mmol)を添加した。室温での撹拌をさらに15分間継続し、次いでメタノール1mlを混合物に添加した。混合物を10%濃度の重炭酸ナトリウム溶液および酢酸エチルの1:1混合物に注いだ。有機相を分離し、10%濃度の重炭酸ナトリウム溶液でもう2回洗浄した。次いで、有機相を濃縮し、残渣を室温で、ジクロロメタン中の塩化水素の飽和溶液5mlと共に20時間撹拌し、最初に形成されたエノールエステルを開裂した。次いで、混合物を濃縮し、残った残渣をシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより移動相トルエン/酢酸エチルを用いて精製し、混合比を1:1から1:2を経て1:3に高めた。適当な画分を濃縮し、二重に保護された化合物124mg(理論値の8%)を泡状物として得た。
HPLC (方法 12): Rt = 2.3 分;
LC-MS (方法 10): Rt = 2.33 分; m/z = 793 (M+H)+.
【0119】
工程b):
上記で得られた中間体118mg(0.149mmol)を、無水トリフルオロ酢酸6ml中、室温で終夜撹拌した。次いで、温度を約20℃で維持しながら、混合物を高真空下で濃縮した。残渣をpH3に調節した水性塩酸50mlに取り、ジクロロメタン75mlを溶液に添加した。混合物を振盪し、次いで水相を分離し、高真空下で濃縮した。残渣を分取HPLC(方法13)により精製した。適当な画分を合わせ、濃縮し、次いで1N塩酸から凍結乾燥した。収量:59mg(理論値の69%)
HPLC (方法 12): Rt = 0.98 分;
LC-MS (方法 10): Rt = 0.98 分; m/z = 539 (M+H)+.
【0120】
下記の化合物は、実施例19と同様に、適当な出発化合物から製造できる:
実施例20
N−(5−アミノペンタノイル)−5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[2−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)チオフェン−2−カルボキサミド塩酸塩
【化65】

【0121】
実施例21
N−(6−アミノヘキサノイル)−5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[2−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)チオフェン−2−カルボキサミド塩酸塩
【化66】

【0122】
実施例22
N−[4−(ブチルアミノ)ブタノイル]−5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[2−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)チオフェン−2−カルボキサミド
【化67】

工程a):
化合物(A)790mg(1.74mmol)を、DMF60mlに溶解し、水素化ナトリウム125mg(5.22mmol)を添加し、混合物を室温で15分間撹拌した。次いで、DMF10mlに溶解した実施例18A5.43g(17.4mmol)を添加した。室温での撹拌をさらに20分間継続し、次いで、水10mlを混合物に添加した。混合物を濃縮し、残渣を酢酸エチル300mlに取り、各50mlの10%濃度の炭酸ナトリウム溶液で2回、そして、飽和塩化ナトリウム溶液で1回抽出した。酢酸エチル相を分離し、濃縮した。移動相ジクロロメタン/アセトニトリルを使用して、混合比を5:1から2:1に高めて、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより残渣を精製した。適当な画分を濃縮した。残った生成物を分取HPLC(方法1)により精製した。表題化合物のZ−保護中間体を含有する画分を合わせ、溶媒を減圧下で除去した。続いて、高真空下で乾燥させ、生成物140mg(理論値の11%)を得た。
HPLC (方法 7): Rt = 6.0 分;
LC-MS (方法 8): Rt = 4.0 分; m/z = 729 (M+H)+.
【0123】
工程b):
保護中間体4.7mg(0.006mmol)を無水トリフルオロ酢酸5mlに取り、混合物を室温で終夜撹拌した。次いで、温度を約20℃に維持しながら、混合物を減圧下で濃縮した。残渣をpH3に調節した希塩酸30mlに取り、ジクロロメタン10mlを添加した。相を分離し、次いで、水相をジクロロメタンで1回、続いて酢酸エチル5mlで抽出した。水相を減圧下で約20mlの体積に濃縮し、次いで凍結乾燥した。次いで、凍結乾燥物をもう一度塩酸(pH3)に取り、濾過し、再度凍結乾燥した。これにより、生成物2.7mg(理論値の66%)を得た。
HPLC (方法 7): Rt = 4.57 分;
LC-MS (方法 8): Rt = 1.97 分; m/z = 595 (M+H)+.
【0124】
下記の化合物は、実施例19と同様に、適当な出発化合物から製造できる:
実施例23
N−[(2−アミノエトキシ)アセチル]−5−クロロ−N−({(5S)−2−オキソ−3−[2−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−1,3−オキサゾリジン−5−イル}メチル)チオフェン−2−カルボキサミド塩酸塩
【化68】

【0125】
B. 溶解性、安定性および遊離挙動の測定
a)溶解度の決定:
試験物質を水または希塩酸(pH4)に懸濁する。この懸濁液を室温で24時間振盪する。224000gで30分間の超遠心の後、上清をDMSOで希釈し、HPLCにより分析する。DMSO中の試験化合物の2点較正プロットを定量に使用する。
【0126】
HPLCの方法:
DAD (G1315A)、quat. ポンプ (G1311A)、オートサンプラー CTC HTS PAL、脱気装置(G1322A) およびカラムサーモスタット (G1316A) を備えた Agilent 1100; カラム: Zorbax Extend-C18 3.5 μ;温度:40℃;移動相A:水+過塩素酸5ml/l、移動相B:アセトニトリル;流速:0.7ml/分;グラジエント:0−0.5分98%A、2%B;勾配0.5−4.5分10%A、90%B;4.5−6分10%A、90%B;勾配6.5−6.7分98%A、2%B;6.7−7.5分98%A、2%B。
【0127】
b)様々なpH値のバッファー中での安定性:
試験物質0.25mgを、2mlのHPLCバイアルに量り入れ、アセトニトリル0.5mlを添加する。物質を、サンプル容器を超音波浴に約10秒間置くことにより溶解させる。次いで、各バッファー溶液0.5mlを添加し、サンプルを再度超音波浴で処理する。
【0128】
用いるバッファー溶液:
pH4.0:Millipore 水1lを、1N塩酸でpH4.0に調節する;
pH7.4:塩化ナトリウム90g、リン酸二水素カリウム13.61gおよび1M水酸化ナトリウム溶液83.35gを、Millipore 水で1lとし、次いで1:10に希釈する。
試験溶液10μl分を、HPLCにより、未変化の試験物質の含有量について、37℃で24時間にわたり毎時間分析する。適切なピークのパーセントの面積を定量に使用する。
【0129】
HPLCの方法:
DAD (G1314A)、バイナリーポンプ (G1312A)、オートサンプラー (G1329A)、カラムオーブン (G1316A)、サーモスタット (G1330A) を備えた Agilent 1100; カラム: Kromasil 100 C18, 125 mm x 4.6 mm, 5 μm;カラム温度:30℃;移動相A:水+過塩素酸5ml/l、移動相B:アセトニトリル。
グラジエント:
0−1.0分98%A、2%B→1.0−13.0分50%A、50%B→13.0−17.0分10%A、90%B→17.018.0分10%A、90%B→18.0−19.598%A、2%B→19.5−23.0分98%A、2%B;流速:2.0ml/分;UV検出:210nm。
pH4の溶液中で、実施例22の化合物は、16時間を超えて安定であった。
【0130】
c)ラット血漿およびヒト血清におけるインビトロの安定性(HPLC検出):
物質0.5mgを1mlのジメチルスルホキシド/水1:1に溶解する。このサンプル溶液500μlをラット血漿500μlと37℃で混合し、振盪する。最初のサンプル(10μl)をすぐにHPLC分析用に取る。インキュベーションの開始後2時間までの期間に、さらなるアリコートを2、5、10、30、60および90分後に取り、各試験物質およびそこから遊離した有効成分化合物(A)の含有量を決定する。
【0131】
HPLCの方法:
DAD (G1314A)、バイナリーポンプ (G1312A)、オートサンプラー (G1329A)、カラムオーブン (G1316A)、サーモスタット (G1330A) を備えた Agilent 1100; カラム: Kromasil 100 C18, 250 mm x 4.6 mm, 5 μm;カラム温度:30℃;溶離剤A:水+過塩素酸5ml/l、溶離剤B:アセトニトリル。
グラジエント:
0−3.0分69%A、31%B→3.0−18.0分69%A、31%B→18.0−20.0分10%A、90%B→20.0−21.090%A、10%B→21.0−22.5.0分98%A、2%B→22.5−25.0分98%A、2%B;流速:2.0ml/分;UV検出:248nm。
【0132】
結果:
この試験では、実施例22の化合物は、ラット血漿およびヒト血漿の両方で、2分より短い半減期で、有効成分の化合物(A)の放出を伴って分解された。ラット血漿では、実施例13および19の化合物は、5分以内に、有効成分の化合物(A)に完全に変換された。
【0133】
d)ラットおよびヒト血漿におけるインビトロの安定性(LC/MS−MS検出):
所定の血漿体積(例えば2.0ml)を、水浴中の密閉試験管で37℃に温める。意図した温度に達した後、所定の量の試験物質を溶液(溶媒の体積は、血漿体積の2%以下である)として添加する。血漿を振盪し、最初のサンプル(50−100μl)をすぐに取る。次いで4−6個のさらなるアリコートを、インキュベーション開始後2時間までの期間中に取る。
【0134】
アセトニトリルを血漿サンプルに添加し、タンパク質を沈殿させる。遠心分離後、上清中の試験物質および、必要に応じて、試験物質の既知の切断生成物を、適するLC/MS−MSの方法により定量的に測定する。
ヘパリン化ラットまたはヒト血液における安定性の決定は、血漿について記載した通りに実施する。
【0135】
e)Wistar ラットにおけるi.v.薬物動態:
物質投与の前日に、実験動物(オスの Wistar ラット、体重200−250g)の頸静脈に、血液を得るためのカテーテルを、イソフルラン(登録商標)麻酔下で移植する。
実験当日、所定の用量の試験物質を、Hamilton(登録商標)ガラスシリンジを使用して、溶液として尾静脈に投与する(ボーラス投与、投与期間<10秒)。血液サンプル(8−12時点)を、カテーテルを通して、物質投与後24時間の期間にわたり連続的に取る。ヘパリン処理管中でサンプルを遠心分離することにより、血漿を得る。アセトニトリルを時点毎に所定の血漿体積に添加し、タンパク質を沈殿させる。遠心分離後、上清中の試験物質、および、必要に応じて、試験物質の既知の切断生成物を、適するLC/MS−MSの方法を使用して定量的に測定する。
【0136】
測定される血漿濃度を使用して、試験物質およびそこから遊離した有効成分化合物(A)の、AUC、Cmax、T1/2(半減期)およびCL(クリアランス)などの薬物動態的パラメーターを算出する。
【0137】
f)代謝的安定性を測定するための肝細胞アッセイ:
肝細胞の存在下の試験化合物の代謝的安定性は、実験において可能な限り線形の動態学的条件を確実にするために、化合物を低濃度(好ましくは1μM未満)で、かつ、少数の細胞(好ましくは1x10細胞/ml)とインキュベートすることにより測定する。化合物の半減期(即ち、分解)を測定するために、インキュベーション溶液の7個のサンプルを、固定した時間パターンで、LC−MS分析用に取る。様々なクリアランスパラメーター(CL)およびFmax値をこの半減期から算出する(下記参照)。
【0138】
CLおよびFmax値は、肝細胞における第1相および第2相の化合物の代謝の測定を表す。インキュベーション混合物中の酵素に対する有機溶媒の影響を最小にするために、その濃度を一般的に1%(アセトニトリル)または0.1%(DMSO)に限定する。
【0139】
1.1x10細胞/肝臓1gの肝臓中の肝細胞の細胞数を、全ての種(species and breeds)について計算に使用する。インキュベーション時間(通常90分間)を超えて延びる半減期に基づいて算出したCLパラメーターは、大まかなガイドラインと見なし得るだけである。
【0140】
算出したパラメーターおよびそれらの意味は、以下の通りである:
max十分に撹拌[%] 経口投与後の最大の可能なバイオアベイラビリティー
計算: (1−CL血液十分に撹拌/QH)*100
CL血液十分に撹拌[L/(h*kg)] 算出される血液クリアランス(十分に撹拌したモデル)
計算: (QH*CL'内因性)/(QH+CL'内因性
CL'内因性[ml/(分*kg)] 化合物を代謝する肝臓の(肝細胞の)最大能力(肝臓の血流が律速ではないと仮定して)
計算: CL'内因性、明白*種特異的肝細胞数[1.1*10/肝臓1g]*種特異的肝臓重量[g/kg]
CL'内因性、明白[ml/(分*mg)] 用いた肝細胞の細胞数x(x*10/ml)で除去定数(elimination constant)を除すことにより、それを標準化する
計算: kel[1/分]/(細胞数[x*10]/インキュベーション体積[ml])
(QH=種特異的な肝臓の血流)
【0141】
g)ラットの動静脈シャントモデルにおける抗血栓効果の測定:
絶食中のオスのラット (系統: HSD CPB:WU) を、Rompun/Ketavet 溶液(12mg/kg/50mg/kg)の腹腔内投与により麻酔する。P.C. Wong et al. [Thrombosis Research 83 (2), 117-126 (1996)] により記載された方法に基づき、動静脈シャントで血栓形成を誘導する。この目的で、左頸静脈および右頸動脈を露出させる。長さ8cmのポリエチレンカテーテル(PE60、Becton-Dickinsonより)を動脈に設置し、続いて、血栓形成性表面をもたらすために、二重ループにした粗いナイロン糸(60 x 0.26 mm、Berkley Trileneより)を含む長さ6cmの Tygon チューブ (R-3606, ID 3.2 mm, Kronlabより)を設置する。長さ2cmのポリエチレンカテーテル(PE60、Becton-Dickinson より)を頸静脈に設置し、長さ6cmのポリエチレンカテーテル(PE160、Becton-Dickinson より) により Tygon チューブに連結する。シャントを開く前に、チューブを生理塩水で満たす。体外循環を15分間維持する。次いで、シャントを取り除き、血栓を伴うナイロン糸の重量をすぐに量る。ナイロン糸の空の重量は、実験開始前に測定した。体外循環を取り付ける前に、試験物質(0.1N塩酸でpH4に調節した生理塩水中の溶液として)をボーラス注射として投与する。
【0142】
C. 医薬組成物の例示的実施態様
本発明による化合物は、例えば、以下の方法で医薬製剤に変換できる:
i.v.溶液:
本発明による化合物を、生理的に耐容される溶媒に飽和溶解度より低い濃度で溶解させる(例えば、等張塩水、5%グルコース溶液および/または30%PEG 400溶液、各々pH3−5に調節する)。溶液を必要に応じて濾過滅菌し、かつ/または、無菌かつパイロジェン不含の注射容器に分配する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式中、
は、水素、または、ヒドロキシもしくは(C−C)−アルコキシにより置換されていてもよい(C−C)−アルキルであり、
は、水素または(C−C)−アルキルであり、
そして、
Lは、1個のCH基がO原子で置き換えられていてもよい(C−C)−アルカンジイル基であるか、または、式
【化2】

{式中、
*は、N原子への結合点を意味し、
は、天然α−アミノ酸またはそのホモログもしくは異性体の側鎖の基であるか、
または、
は、Rに結合しており、この2つが一体となって(CHまたは(CH基を形成しており、
は、水素またはメチルであり、
は(C−C)−アルキルであり、
そして、
は、水素または(C−C)−アルキルである}
の基である]
の化合物、並びに、その塩、溶媒和物および塩の溶媒和物。
【請求項2】
式中、
が、水素または(C−C)−アルキルであり、
が水素であり、
そして、
Lが、(C−C)−アルカンジイル基であるか、または、式
【化3】

{式中、
*は、N原子への結合点を意味し、
は、水素、メチル、プロパン−2−イル、プロパン−1−イル、イミダゾール−4−イルメチル、ヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、カルバモイルメチル、2−カルバモイルエチル、4−アミノブタン−1−イル、3−アミノプロパン−1−イルまたは3−グアニジノプロパン−1−イルであるか、
または、
は、Rに結合しており、この2つが一体となって(CHまたは(CH基を形成しており、
は、水素またはメチルであり、
はメチルであり、
そして、
は、水素またはメチルである}
の基である、
請求項1に記載の式(I)の化合物、並びに、その塩、溶媒和物および塩の溶媒和物。
【請求項3】
式中、
が、水素、メチルまたはn−ブチルであり、
が水素であり、
そして、
Lが、CHCH基であるか、または、式
【化4】

{式中、
*は、N原子への結合点を意味し、
は、水素、メチル、プロパン−2−イル、プロパン−1−イル、イミダゾール−4−イルメチル、ヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、カルバモイルメチル、2−カルバモイルエチル、4−アミノブタン−1−イル、3−アミノプロパン−1−イルまたは3−グアニジノプロパン−1−イルであるか、
または、
は、Rに結合しており、この2つが一体となって(CHまたは(CH基を形成しており、
は、水素またはメチルであり、
そして、
は、水素またはメチルである}
の基である、
請求項1または請求項2に記載の式(I)の化合物、並びに、その塩、溶媒和物および塩の溶媒和物。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3に記載の式(I)の化合物の製造方法であって、以下を特徴とする方法;
[A]化合物(A)
【化5】

を、先ず、不活性溶媒中、塩基の存在下、式(II)
【化6】

(式中、Rは請求項1ないし請求項3に記載の意味を有し、
そして、Qは、塩素、臭素またはヨウ素などの脱離基である)
の化合物を用いて、式(III)
【化7】

(式中、QおよびRは、上記の意味を有する)
の化合物に変換し、次いで、最後のものを、不活性溶媒中、式(IV)
【化8】

(式中、R、RおよびRは、各々請求項1ないし請求項3に記載の意味を有し、
PGは、tert−ブトキシカルボニル(Boc)またはベンジルオキシカルボニル(Z)などのアミノ保護基であり、
そして、Xは、OまたはSである)
のα−アミノカルボン酸またはα−アミノチオカルボン酸のセシウム塩と反応させ、式(V)
【化9】

(式中、R、R、R、R、PGおよびXは、各々上記の意味を有する)
の化合物を得、続いて、保護基PGを除去し、式(I−A)
【化10】

(式中、R、R、R、RおよびXは、各々上記の意味を有する)
の化合物をもたらす、
または、
[B]化合物(A)を、不活性溶媒中、塩基の存在下で、式(VI)
【化11】

(式中、PGは上記の意味を有し、
1Aは、ヒドロキシまたは(C−C)−アルコキシにより置換されていてもよい(C−C)−アルキルであり、そして、
は、1個のCH基がO原子により置き換えられていてもよい(C−C)−アルカンジイル基である)
の化合物と反応させ、式(VII)
【化12】

(式中、R1A、LおよびPGは、各々上記の意味を有する)
の化合物を得、続いて、保護基PGを除去し、式(I−B)
【化13】

(式中、R1AおよびLは、上記の意味を有する)
の化合物をもたらす、
または、
[C]化合物(B)
【化14】

を、先ず、式(VIII)
【化15】

{式中、PG、R、RおよびRは、各々請求項1ないし請求項3に記載の意味を有し、そして、
は、(CHまたはCR基(式中、RおよびRは、各々請求項1ないし請求項3に記載の意味を有する)である}
の化合物に変換し、次いで、後者を、不活性溶媒中、塩基の存在下、式(IX)
【化16】

の化合物と反応させ、式(X)
【化17】

(式中、PG、L、R、RおよびRは、各々上記の意味を有する)
の化合物を得、続いて、保護基PGを除去し、式(I−C)
【化18】

(式中、L、R、RおよびRは、各々上記の意味を有する)
の化合物をもたらす、
または、
[D]化合物(A)を、不活性溶媒中、塩基の存在下で、式(XI)
【化19】

(式中、Lは、1個のCH基がO原子により置き換えられていてもよい(C−C)−アルカンジイル基であり、そして、
PGおよびPGは、相互に独立して、tert−ブトキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Z)またはp−メトキシベンジル(PMB)などのアミノ保護基であり、同一であっても異なっていてもよい)
の化合物と反応させ、式(XII)
【化20】

(式中、L、PGおよびPGは、各々上記の意味を有する)
の化合物を得、続いて、保護基PGおよびPGを同時または連続的に除去し、式(I−D)
【化21】

(式中、Lは上記の意味を有する)
の化合物をもたらし、
そして、各場合で得られる式(I−A)、(I−B)、(I−C)および(I−D)の化合物を、必要に応じて、適当な(i)溶媒および/または(ii)酸により、それらの溶媒和物、塩および/または塩の溶媒和物に変換する。
【請求項5】
疾患の処置および/または予防のための、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の式(I)の化合物。
【請求項6】
血栓塞栓性障害の処置および/または予防用の医薬を製造するための、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項7】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の式(I)の化合物を、必要に応じて、不活性、非毒性の医薬的に適する補助剤と組み合わせて含む、医薬。
【請求項8】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の式(I)の化合物を、さらなる有効成分と組み合わせて含む、医薬。
【請求項9】
血栓塞栓性障害の処置および/または予防のための、請求項7または請求項8に記載の医薬。
【請求項10】
静脈内使用のための請求項7ないし請求項9のいずれかに記載の医薬。
【請求項11】
少なくとも1種の請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の式(I)の化合物または請求項7ないし請求項10のいずれかに記載の医薬を使用する、ヒトおよび動物における血栓塞栓性障害の処置および/または予防方法。

【公表番号】特表2010−532771(P2010−532771A)
【公表日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−515378(P2010−515378)
【出願日】平成20年6月28日(2008.6.28)
【国際出願番号】PCT/EP2008/005303
【国際公開番号】WO2009/007027
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(507113188)バイエル・シェーリング・ファルマ・アクチェンゲゼルシャフト (141)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Schering Pharma Aktiengesellschaft
【Fターム(参考)】