説明

アミノ基含有トリアジン変性ノボラック樹脂ホウ酸塩、その製造方法及び難燃性樹脂組成物

【課題】 難燃剤を始めとする各種の産業分野で有用なホウ酸エステルで変性したアミノ基含有トリアジン変性ノボラック樹脂ホウ酸塩及かかるアミノ基含有トリアジン変性ノボラック樹脂ホウ酸塩を各種の熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂に添加することにより、優れた難燃性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 数平均分子量300〜1000のアミノ基含有トリアジン変性ノボラック樹脂を、ホウ素元素量がアミノ基1モルに対して0.1〜3モルの範囲となるようにホウ酸系化合物で変性してなるアミノ基含有トリアジン変性ノボラック樹脂ホウ酸塩及びかかる樹脂ホウ酸塩を熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂に相溶叉は微分散させた難燃性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ基含有トリアジン変性ノボラック樹脂ホウ酸塩及びその製造方法に関するものであり、当該変性樹脂を用いることにより、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂に高度な難燃性を賦与することができる。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂は、機械的性質、耐熱性、電気的性質及び成形性などの点で優れた特性を有しており、電気用部品、自動車用部品、精密機械部品などの各種産業分野に広く使用されている。しかし、これらのほとんどは比較的に燃焼しやすい欠点を有していた。
従来、これらの熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂に対して優れた難燃性を賦与するため、ハロゲン系難燃剤やリン系難燃剤の使用が知られているが、環境問題、特に燃焼時のダイオキシンなどの発生から、ハロゲンフリーやリンフリーの難燃剤の開発が強く要求されている。かかる難燃剤としてアミノ基含有トリアジン変性ノボラック樹脂を熱可塑性樹脂に用いることが提案されている(特許文献1)。しかし、該樹脂のみでは難燃性が不十分である。
また、難燃性や耐熱性などの向上を目的として、ホウ酸をノボラック型フェノール樹脂と反応させることによって得られるホウ酸変性フェノール樹脂をエポキシ樹脂硬化剤として用いる技術が提案されている(例えば、特許文献2)。しかしながら、ホウ素を導入することによる難燃性の向上は十分でなく、より高い効果を有する難燃化法が求められていた。
【特許文献1】特開2000-219798号公報
【特許文献2】特開昭63-156814号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、難燃剤を始めとする各種の産業分野で有用なホウ酸系化合物で変性したアミノ基含有トリアジン変性ノボラック樹脂ホウ酸塩及びその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記アミノ基含有トリアジン変性ノボラック樹脂ホウ酸塩を各種の熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂に添加することにより、優れた難燃性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は、トリアジン類のアミノ基及びフェノール樹脂の水酸基とホウ酸系化合物との高い反応性に着目して、前記目的を達成すべく、鋭意検討を重ねた結果、ホウ素を分子レベルで該樹脂に導入することにより、耐熱性に優れたアミノ基含有トリアジン変性ノボラック樹脂ホウ酸塩を見出した。
また、本発明者等は、上記樹脂ホウ酸塩を熱硬化性樹脂、例えばエポキシ樹脂、ノボラックフェノール樹脂又は熱可塑性樹脂、例えばポリスチレンやABS樹脂などに相溶叉は微分散させることによって、優れた難燃性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、数平均分子量300〜1000のアミノ基含有トリアジン変性ノボラック樹脂を、ホウ素元素量がアミノ基1モルに対して0.1〜3モルの範囲となるようにホウ酸系化合物で変性してなるアミノ基含有トリアジン変性ノボラック樹脂ホウ酸塩に関する。
また、本発明は、前記数平均分子量300〜1000のアミノ基含有トリアジン変性ノボラック樹脂とホウ酸系化合物とを該樹脂の融点以上の温度で溶融混合して、叉はアミド系溶剤中に溶解して反応することからなるアミノ基含有トリアジン変性ノボラック樹脂ホウ酸塩の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0005】
本発明でのアミノ基含有トリアジン変性ノボラック樹脂ホウ酸塩は、耐熱性に優れ、各種の熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の難燃剤として用いることができ、従来のハロゲン系、リン系難燃剤と比べて低毒性で環境に優しい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明で用いるアミノ基含有トリアジン変性ノボラック樹脂(以下、ATN樹脂という)は、フェノール類とアミノ基含有トリアジン類とアルデヒト類とを反応して得られるアミノ基含有トリアジン変性ノボラック樹脂であって、該ノボラック樹脂が、フェノール類とアミノ基含有トリアジン類とアルデヒト類との縮合物との他に、アミノ基含有トリアジン類とアルデヒト類との縮合物、フェノール類とアルデヒト類との縮合物、未反応のフェノール類及びアミノ基含有トリアジン類を含んでいても構わない。また、用いられるATN樹脂の数平均分子量は300〜1000の範囲にあり、その分子中に平均0.5〜4個のアミノ基を有するものが最も好ましい。
【0007】
上記のATN樹脂を得るためのフェノール類としては、フェノール、ナフトール、ビスフェノールAなどの一価のフェノール性化合物、又はレゾルシン、キシレノールなどの二価のフェノール性化合物、又はピロガロール、ヒドロキシヒドロキノンなどの三価のフェノール性化合物、及びこれらフェノール性化合物のアルキル、カルボキシル、ハロゲン、アミンなどの誘導体などが挙げられる。また、これらのフェノール類は、単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0008】
また、ATN樹脂に用いるアミノ基含有トリアジン類としては、特に限定されるものではなく、アミノ基含有トリアジン環を有すれば構造の如何を問わないが、メラミン、アセトグアナミン叉はベンゾグアナミンが好ましい。これらは単独又は二種以上の併用も可能である。
【0009】
本発明のATN樹脂を得るためのアルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシフェニルアルデヒド、フルフラール、アクロレイン等が挙げられる。中でも、取り扱いの容易さの点からホルムアルデヒドが好ましい。ホルムアルデヒドとしては、特に限定するものではないが、代表的な供給源としてホルマリン、パラホルムアルデヒド等が挙げられる。
【0010】
本発明でのホウ酸系化合物としては、一般式(1)
B(OR)n(OH)3−n (1)
(式中、nは0〜3までの整数、RはC2m+1のアルキル基であり、mは1〜10の整数を表す。)で表わされるホウ酸およびホウ酸エステル、ホウ酸エステルの部分重縮合物が用いられる。ホウ酸の具体的なものとしては、例えばオルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、およびそれらの混合物であり、また、ホウ酸エステルの具体的なものとしては、例えばホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸トリブチル等が挙げられる。これらのホウ酸及びホウ酸エステルは、単独又は2種以上組み合わせて使用できる。また、それらの部分加水分解物や部分重縮合物も用いることができる。上記の中ではホウ酸が最も好ましく用いられる。
なお、前記の部分重縮合物は、一般式(1)で表されるホウ酸エステルを、水、溶媒、及び必要により酸又は塩基触媒と共に混合攪拌する方法によって得ることができる。
【0011】
本発明におけるATN樹脂ホウ酸塩の製造方法の一つは、ATN樹脂とホウ酸系化合物とを反応させて行う方法であって、その具体例としては、例えば次のようにして行うことができる。即ち、アミド系溶剤にホウ酸とATN樹脂を溶解させて攪拌しながら、80℃に昇温した。続いて、80℃加熱下、一定時間において反応を行う。得られた透明溶液をエパポレーターにより溶剤を留去する。このように得られた反応生成物をエーテルで数回繰り返し洗浄した後、真空乾燥により黄土色粉末のATN樹脂ホウ酸塩が得られる。
【0012】
上述のアミド系溶剤としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミドなどが挙げられ、これらは単独又は二種以上の混合で使用できる。溶剤の使用量は、ホウ酸系化合物およびATN樹脂の合計100質量部に対して溶剤が300〜1500質量部となるように用いることが好ましい。
【0013】
上述のATN樹脂ホウ酸塩の製造方法の製造条件として、ATN樹脂の中のアミノ基及びフェノール性水酸基とホウ酸系化合物のホウ素とのモル比が重要である。ホウ酸系化合物の比率を増やすと、高いホウ素含有量のATN樹脂ホウ酸塩が得られる。これに対してATN樹脂の比率を増やすと、より低いホウ素含有量のATN樹脂ホウ酸塩を得ることができる。一般的にATN樹脂の中のアミノ基及びフェノール性水酸基の合計1モルに対して、ホウ素が0.1〜3モルが好ましく、より好ましくは0.25〜2.5モル、特に好ましくは0.5〜2モルである。0.1モル未満の場合、得られたATN樹脂ホウ酸塩の難燃効果が不十分であり、3モルを超える場合、ホウ酸系化合物とアミド系溶剤との反応生成物を生じる恐れがあり、好ましくない。また、反応温度について、用いるポリアミン系化合物の種類によっては異なるが、一般的に20℃〜130℃が好ましく、より好ましくは25℃〜110℃であり、特に好ましくは30℃〜90℃である。反応時間は反応温度にもよるが、通常1〜30時間が好ましく用いられる。
【0014】
上述のATN樹脂ホウ酸塩の製造方法のもう一つ具体例としては、溶剤を使用せず、ATN樹脂の融点以上の温度でホウ酸系化合物とATN樹脂との反応を行うことが例示できる。即ち、ATN樹脂を加熱溶融させて攪拌しながら、ホウ酸を加えて、一定温度と時間において反応を行う。得た透明融液を冷却した後、粉砕により黄土色粉末のATN樹脂ホウ酸塩が得られる。反応温度について、一般的にATN樹脂の融点より30℃以上が好ましく、より好ましくは融点より40℃以上であり、特に好ましくは融点より50℃以上である。反応時間は反応温度にもよるが、通常0.5〜10時間が好ましく用いられる。
【0015】
本発明におけるATN樹脂ホウ酸塩の他の製造方法は、ホウ素変性トリアジン類とフェノール類とアルデヒド類との縮合反応を行わせる方法であって、例えば次のようにして行うことができる。ホウ素変性トリアジン類とフェノール類とアルデヒド類との混合物を、(i)系のpHを5〜10に調整する工程、(ii)アルデヒド類が揮散しない条件下で該混合物を反応させる工程及び(iii)系内の反応水を除去する工程を含み、第1段反応として工程(i)、工程(ii)及び工程(iii)を順次実施し、続いて第2段反応として工程(ii)及び工程(iii)を第1段反応より高い温度下に順次実施し、第3段反応として工程(ii)及び工程(iii)を第2段反応より高い温度下に順次実施し、更に必要に応じて第2段反応と第3段反応を繰り返し実施することによりATN樹脂ホウ酸塩が得られる。かかるフェノール類及びアルデヒド類とホウ素変性トリアジン類とのモル比が1:0.02〜0.15になるように配合することが好ましい。
【0016】
上述のATN樹脂ホウ酸塩の製造に用いるホウ素変性トリアジン類は、アミノ基含有トリアジン類とホウ酸系化合物との反応によって得ることができる。例えば、水にメラミンとホウ酸を加え、攪拌しながら、一定温度と時間で反応させた。得た反応生成物を濾過により回収し、更に水とアセトンの順に洗浄した後、真空乾燥によりホウ酸メラミンの白色粉末が得られる。反応温度について、一般的に30℃〜140℃が好ましく、より好ましくは40℃〜120℃であり、特に好ましくは50℃〜100℃である。反応時間は反応温度にもよるが、通常1〜30時間が好ましく用いられる。また、アミノ基含有トリアジン類とホウ酸系化合物とのモル比については、一般的にアミノ基含有トリアジン類の中のアミノ基1モルに対して、ホウ素が0.1〜3モルが好ましく、より好ましくは0.3〜2.5モル、特に好ましくは0.5〜2モルである。
【0017】
本発明でのATN樹脂ホウ酸塩は、分子中でATN樹脂中のアミノ基とホウ酸系化合物とでホウ酸塩を形成しているものであるが、ホウ酸系化合物の量及び反応条件によってはホウ酸系化合物叉はホウ酸塩基がATN樹脂中のフェノール性水酸基とも反応してホウ酸エステルを形成しているものと推察される。
尚、本発明のATN樹脂ホウ酸塩は、溶剤溶解性と加熱溶融性を持ち、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂に相溶叉は微分散させることにより、優れた難燃性をもたらせることができる。
【0018】
本発明の難燃性樹脂組成物に用いられる熱硬化性樹脂は特に限定されるものでなく市販されているものである。例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキッド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。この中、ATN樹脂ホウ酸塩がエポキシ樹脂の硬化剤としても用いられる。この場合、硬化反応によりATN樹脂ホウ酸塩が分子レベルにエポキシ樹脂に分散され、得られる硬化物の難燃効果が一層顕著なものになる。
【0019】
また、本発明の難燃性樹脂組成物に用いられる熱可塑性樹脂は特に限定されるものでなく市販されているものである。これらの中でも、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂が好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂が挙げられる。また、ポリスチレン樹脂としては、スチレン並びにα-スチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体の重合体及びそのゴム変性物、また、これらの単量体を主とし、これに共重合可能な単量体、例えばアクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン等の一種以上を共重合したもの及びその水素添加物が挙げられる。
【0020】
本発明の難燃性樹脂組成物には、更に用途、目的に応じて他の配合剤、例えばタルク、マイカ、炭酸カルシウムのような無機充填剤、カップリング剤あるいはガラス繊維、カーボン繊維などのような補強剤、難燃剤、難燃助剤、静電剤、安定剤、顔料、離型剤、エラストマーなどの耐襲撃改良剤などを配合することができる。
【0021】
本発明の難燃性樹脂組成物の調製方法としては、一般に溶液法と溶融法が用いられる。溶液法としては、前述した樹脂とATN樹脂ホウ酸塩及びその他の成分を有機溶剤に溶解させ、得られる均一溶液を脱溶剤によりATN樹脂ホウ酸塩の相溶叉は微分散した樹脂組成物を得ることができる。また、溶融法としては、前述した樹脂とATN樹脂ホウ酸塩及びその他の成分を配合し、押出成形機や熱ロールによる溶融混練処理を行い、続いて冷却固化させ、適当な大きさに粉砕叉はペレット化して樹脂組成物とすることができる。
【0022】
本発明の難燃性樹脂組成物において、ATN樹脂ホウ酸塩と熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の配合比率は特に限定されるものではないが、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂100質量部に対してATN樹脂ホウ酸塩が5〜80質量部配合することが好ましい。ATN樹脂ホウ酸塩が5質量部を下回ると難燃効果が少なく、80質量部を上回ると得られる樹脂組成物の力学物性が低下する傾向となる。
【実施例】
【0023】
以下実施例により本発明を更に詳しく説明する。
また、以下の実施例において、熱硬化性樹脂組成物の酸素指数は酸素指数方式燃焼性試験機ON-2M(スガ試験器(株)製)を用いて、粉末法によって測定した。
熱可塑性樹脂組成物の酸素指数は酸素指数方式燃焼性試験機ON-2M(スガ試験器(株)製)を用いてJIS K7201 1999 によって測定した。
ホウ素含有量はPerkn Elmer社製 Optima 3300DVを用いて、ICPの測定を行い、予めホウ酸を用いて作成しておいた検量線により定量した。
【0024】
(実施例1)
コンデンサを備えたフラスコに、ATN樹脂フェノライトLA-1356(大日本インキ化学工業(株)製、窒素含有量19%、水酸基当量146、不揮発分60%のメチルエチルケトン溶液)固形105部とホウ酸51.6部とジメチルホルムアミド(DMF)480部とを仕込み、80℃にて攪拌しながら均一に溶解させた。引き続き、80℃で3時間反応を行った。そして、エパポレーターで溶剤を留去し、得た固体をエーテルで3回繰り返して洗浄した。更に70℃、2時間真空乾燥により、原料に対して収率90%で反応生成物の黄土色粉末1a 140.9部を得た。プラズマ発光分析によりホウ素含有率が5.5%であった。また、FT-IRのスベクトルからホウ酸塩基に由来する吸収が1440cm-1に観測され、目的の反応生成物ATN樹脂ホウ酸塩が得られたことを確認した。
【0025】
(実施例2)
実施例2は、ホウ酸102.6部を用いた以外は実施例1と同様にしてATN樹脂ホウ酸塩粉末2aを合成した。プラズマ発光分析によりホウ素含有率が8.2%であった。
【0026】
(実施例3)
攪拌機を備えたフラスコに、ATN樹脂フェノライトKA-7052-L2(大日本インキ化学工業(株)製、軟化点80℃) 100部とホウ酸20部とを仕込み、窒素気流下、攪拌しながら150℃に升温して溶融させた。引き続き、150℃で3時間反応を行った。得た融液を冷却固化させ、粉砕によりATN樹脂ホウ酸塩の黄土色粉末3a 115部を得た。プラズマ発光分析によりホウ素含有率が3.3%であった。また、FT-IRのスベクトルからホウ酸塩基に由来する吸収が1440cm-1に現れることを確認した。
【0027】
(実施例4)
コンデンサを備えたフラスコに、ホウ酸14.7部と水80部を仕込み、100℃に升温して均一に溶解させた。続いて、攪拌しながらメラミン粉末10部を添加し、100℃で6時間反応を行った。次に、濾過により固体分を回収し、水、アセトンの順で洗浄した。更に、70℃、2時間真空乾燥により、原料に対して収率69%でホウ酸メラミン1b 17.1部を得た。プラズマ発光分析によりホウ素含有率が9.1%であった。
【0028】
(実施例5)
フェノール37.7部、ホウ酸メラミン1b 10部に41.5%ホルマリン14.5部及びトリエチルアミン0.15部を加え、系のPHを8に調製し、発熱を注意しながら徐々に100℃まで升温した。100℃にて2時間反応させた後、常圧下にて水を除去しながら145℃まで2時間かけて升温した。次に環流下にて2時間反応させた後、常圧下にて水を除去しながら160℃まで2時間かけて升温した。更に環流下にて2時間反応させた後、常圧下にて水を除去しながら175℃まで2時間かけて升温した。次に90℃、14時間、真空下にて未反応のフェノールを除去し、原料に対して収率55%で反応生成物4a 29.3部を得た。プラズマ発光分析によりホウ素含有率が2.7%であった。また、FT-IRのスベクトルからホウ酸塩基に由来する吸収が1440cm-1に観測され、更には13C-NMR(D6-DMSO溶液)スベクトルからメラミンとフェノールとのメチレン架橋に由来するピーク(45.8ppm)が観測されており、目的の反応生成物ATN樹脂ホウ酸塩が得られたことを確認した。
【0029】
(実施例6と比較例1)
ATN樹脂ホウ酸塩1a 28.5gをメタノール38gとメチルエチルケトン(MEK) 38gの混合溶液に加えて溶解させた。得た均一溶液にエピクロン850 37.5gを加え、攪拌混合した後、50℃で10時間の溶液状態での加熱処理を行い、エポキシ樹脂組成物溶液を得た。続いて該溶液をトレーに流延し、大気中、室温で12時間、溶媒キャストを行った後、熱風乾燥機にて50℃、60℃、70℃、80℃、90℃で各1時間乾燥し、更に、150℃で2時間の熱処理を行った。得られた試料を180μm以下の大きさに粉砕した。引き続き得た粉末を真空下70℃で2時間乾燥し、粉末状のエポキシ樹脂硬化物を得た。このようにして得られた硬化粉末を用いて、難燃性評価を行った。また、ATN樹脂ホウ酸塩の変わりにATN樹脂19.1部を用いた以外は実施例6と同一組成のエポキシ樹脂組成物である比較例1の硬化粉末も同様に調製した。表1に示したように、通常のATN樹脂を用いた比較例1の硬化粉末の酸素指数に比べ、ATN樹脂ホウ酸塩を使用した実施例6の硬化粉末の酸素指数が大幅に向上した。
【0030】
(実施例7,8と比較例2,3)
実施例7はポリスチレン(PS)(大日本インキ化学工業(株)製 クリアパクトTI-300)を使用し、実施例8はABS樹脂(東レ(株)製 トヨラック920)を使用した。これらの熱可塑性樹脂を、表2に示した割合でATN樹脂ホウ酸塩2aと混合し、シリンダー温度が230℃に設定された2軸押出機で混練造粒した後、圧縮成形機を用いて燃焼試験用試験片を得た。表1に得られた試験片を用いた難燃性評価結果を示す。また、ポリスチレン(比較例2)とABS樹脂(比較例3)の難燃性評価結果も併せて表2に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量300〜1000のアミノ基含有トリアジン変性ノボラック樹脂を、ホウ素元素量がアミノ基1モルに対して0.1〜3モルの範囲となるようにホウ酸系化合物で変性してなるアミノ基含有トリアジン変性ノボラック樹脂ホウ酸塩。
【請求項2】
前記アミノ基含有トリアジン変性ノボラック樹脂中に平均0.5〜4個のアミノ基を有するものである請求項1に記載のアミノ基含有トリアジン変性ノボラック樹脂ホウ酸塩。
【請求項3】
前記ホウ酸系化合物が、一般式
B(OR)n(OH)3-n
(式中、nは0〜3までの整数、RはCmH2m+1のアルキル基であり、mは1〜10の整数を表す。)である請求項1又は2に記載のアミノ基含有トリアジン変性ノボラック樹脂ホウ酸塩。
【請求項4】
前記数平均分子量300〜1000のアミノ基含有トリアジン変性ノボラック樹脂とホウ酸系化合物とを該樹脂の融点以上の温度で溶融混合して、叉はアミド系溶剤中に溶解して反応することからなるアミノ基含有トリアジン変性ノボラック樹脂ホウ酸塩の製造方法。
【請求項5】
前記アミノ基含有トリアジン変性ノボラック樹脂が、フェノール類とアミノ基含有トリアジン類とアルデヒド類とから得られる請求項4に記載のアミノ基含有トリアジン変性ノボラック樹脂ホウ酸塩の製造方法。
【請求項6】
ホウ酸系化合物変性アミノ基含有トリアジン類とフェノール類とアルデヒド類との混合物を、PH 5〜10及び環流条件で反応を行わせた後、系内の水及び反応水を除き、次いで縮合反応と脱水を繰り返して行うことからなるアミノ基含有トリアジン変性ノボラック樹脂ホウ酸塩の製造方法。
【請求項7】
前記ホウ酸系化合物変性アミノ基含有トリアジン類が、アミノ基含有トリアジン類とホウ酸系化合物とを反応させて得られるものである請求項6に記載のアミノ基含有トリアジン変性ノボラック樹脂ホウ酸塩の製造方法。
【請求項8】
前記アミノ基含有トリアジン類が、メラミン、アセトグアナミン及びベンゾグアナミンからなる群から選ばれる一種以上の化合物である請求項5〜7のいずれかに記載のアミノ基含有トリアジン変性ノボラック樹脂ホウ酸塩の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜3に記載のアミノ基含有トリアジン変性ノボラック樹脂ホウ酸塩と熱硬化性樹脂とを含んでなる難燃性樹脂組成物。
【請求項10】
熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂からなる群から選ばれる一種以上である請求項9に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜3に記載のアミノ基含有トリアジン変性ノボラック樹脂ホウ酸塩と熱可塑性樹脂とを含んでなる難燃性樹脂組成物。
【請求項12】
熱可塑性樹脂が、ポリスチレン、ポリウレタン樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、不飽和ポリエステル樹脂からなる群から選ばれる一種以上である請求項11に記載の難燃性樹脂組成物。

【公開番号】特開2006−225424(P2006−225424A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−37555(P2005−37555)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【出願人】(000173751)財団法人川村理化学研究所 (206)
【Fターム(参考)】