説明

アミノ酸の製造方法

【課題】 安価で工業的な利用に適した試薬を用いて、光学活性アミノ酸を簡便に製造する方法を提供する。
【解決手段】 化学式(1);
【化30】


で表される構造を有するイミダゾリジノン誘導体に非水系で酸を作用させる。これにより、従来法では困難である、触媒を被毒する官能基を有するイミダゾリジノン誘導体の1−アリールエチル基を脱離でき、更には、一段階でイミダゾリジノン環を構成しているN,N−架橋型置換基を脱保護し、アミノ酸またはアミノ酸エステルを簡便に製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イミダゾリジノン誘導体を利用したアミノ酸の製造法に関する。アミノ酸は、医薬品、農薬、化成品等の製造上重要な中間体である。
【背景技術】
【0002】
非天然型アミノ酸を合成するために開発されたキラルグリシンシントンとしては、窒素原子上に1−アリールエチル基を有するものが多く知られている。これらのキラルグリシンシントンをアミノ酸へ誘導する際は、1−アリールエチル基を脱離する必要があり、1−アリールエチル基を脱離する方法としてはつぎのようなものが知られている。
i)接触水素添加反応による方法(非特許文献1、2)
ii)57%ヨウ化水素酸を用いた方法(非特許文献3、4、5)
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.,1988,110,1547.
【非特許文献2】J.Org.Chem.,1989,54,3916.
【非特許文献3】J.Org.Chem.,1992,57,6532.
【非特許文献4】J.Org.Chem.,1999,64,2914.
【非特許文献5】Chirality,2002,14,144.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
i)の接触水素添加反応は官能基選択性が低く、基質内に多重結合を持つ化合物への適用が困難である。また適用基質内に触媒活性を低下させる官能基が存在する場合、この方法は適用できない。ii)の方法で使用しているヨウ化水素酸は、人体や金属に対する腐食性が強い。また一般的にヨウ素化合物は非常に高価であり、工業的な利用に適していない。
【0004】
また、従来のキラルグリシンシントンからアミノ酸を合成する際は、ジアステレオマー塩分割や光学活性アミノ酸からの誘導、シリカゲルカラムによる異性体分離といった、煩雑な操作を実施する必要があった。
【0005】
このように、従来のいずれの製法も、工業的製法としては解決すべき課題を有している。従って、本発明は、上記現状に鑑み、接触水素添加を必要とせず、かつ、安価で工業的な利用に適した試薬を用いて、光学活性アミノ酸を簡便に製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、かかる課題を解決するため鋭意検討を行い、所定の構造を有するイミダゾリジノン誘導体に非水系で酸を作用させることで1−アリールエチル基を脱離でき、更には、イミダゾリジノン環を構成しているN,N-架橋型置換基を一段階で脱保護し、アミノ酸またはアミノ酸エステルを簡便に合成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本願発明は、一般式(1);
【0008】
【化3】

(式中、Arは置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基を示す。Rは水素原子、または窒素原子の保護基を示す。R、Rは独立して、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜30のアルキル基、置換されていてもよい炭素数2〜18のアルケニル基、置換されていてもよい炭素数2〜18のアルキニル基、置換されていてもよい炭素数7〜18のアラルキル基、置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基を示す。Rは置換されていてもよい炭素数1〜30のアルキル基、置換されていてもよい炭素数2〜18のアルケニル基、置換されていてもよい炭素数2〜18のアルキニル基、置換されていてもよい炭素数7〜18のアラルキル基、置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基を示し、*1、*2、*3は不斉炭素原子を示す)で表されるイミダゾリジノン誘導体に、非水系で酸を作用させた後、一般式(2);
OH (2)
(Rは水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数2〜18のアルキニル基、炭素数7〜18のアラルキル基、炭素数6〜18のアリール基を示す)で表される化合物を作用させることを特徴とする一般式(3);
【0009】
【化4】

(式中、R、R、R、*3は前記に同じ)で表されるアミノ酸またはアミノ酸エステルの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる方法よれば、医薬分野を始め多方面において製造上重要なアミノ酸を簡便に製造することができる。また、アミノ酸の製造工程を短縮することが可能であるため、生産性を向上させることができ、アミノ酸を安価に提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
まず、本発明で用いる化合物について説明する。
【0013】
本発明で用いる一般式(1);
【0014】
【化5】

で表されるイミダゾリジノン誘導体におけるArは置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基を示す。
【0015】
置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基としては、例えばフェニル基、p−メトキシフェニル基、ナフチル基、p−ニトロフェニル基などが挙げられる。光学活性アミノ酸を製造するにあたって、Arとしては、フェニル基が好ましい。
【0016】
は水素原子、または窒素原子の保護基を示す。窒素原子の保護基としては、通常用いられる窒素原子の保護基全てが挙げられる。例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基等のシリル基、ベンジル基、2,4−ジメトキシベンジル基、ジ−(p−アニシル)メチル基等のベンジル基、フェニル基、p−アニシル基等のアリール基、メトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等のアシル基、メトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、アセトキシメチル基等のアセタール型保護基、2−ニトロフェニルスルホニル基、p−トルエンスルホニル基、クロロスルホニル基等のスルホニル基、メトキシ、ベンジルオキシ基等のアルコキシ基、水酸基等が挙げられる。
【0017】
なお、光学活性アミノ酸を製造するにあたっては、Rとしてtert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基が好ましい。
【0018】
、Rはそれぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜30のアルキル基、置換されていてもよい炭素数2〜18のアルケニル基、置換されていてもよい炭素数2〜18のアルキニル基、置換されていてもよい炭素数7〜18のアラルキル基、置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基を示す。
【0019】
置換されていてもよい炭素数1〜30のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、1−メチル−プロピル基、2−メチル−プロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基などが挙げられ、これらの任意の位置に置換基を有していてもよい。
【0020】
置換基の種類としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシル基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、アルキルシリルオキシ基、アリールアルキルシリルオキシ基などが挙げられる。例として、3−クロロプロピル基、2−メトキシエチル基、ベンジルオキシメチル基、2−ベンジルオキシエチル基、2−(メルカプトメチル)エチル基、2−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)エチル基、2−(t−ブチルジフェニルシリルオキシ)エチル基、2−トリメチルシリルオキシエチル基などが挙げられる。
【0021】
置換されていてもよい炭素数2〜18のアルケニル基としては、例えばアリル基、ビニル基、3−ブテニル基、2−メチル−2−プロペニル基、3−フェニル−2−プロペニル基などが挙げられる。
【0022】
置換されていてもよい炭素数2〜18のアルキニル基としては、例えばプロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、2−ペンチニル基などが挙げられる。
【0023】
置換されていてもよい炭素数7〜18のアラルキル基としては、例えばベンジル基、p−メトキシフェニルメチル基、p−ニトロフェニルメチル基、p−ブロモフェニルメチル基、p−クロロフェニルメチル基、p−フルオロフェニルメチル基、2,4−ジクロロフェニルメチル基、ナフチルメチル基、1−インダノイル基、ジフェニルメチル基などが挙げられる。
【0024】
置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基としては、例えばフェニル基、p−メトキシフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0025】
光学活性アミノ酸を製造するにあたって、R、Rとしては、例えば水素原子、メチル基、エチル基、ベンジル基、プロピル基、アリル基、プロピニル基、1−メチル−プロピル基、2−メチル−プロピル基、ベンジルオキシメチル基、2−(メルカプトメチル)エチル基、p−メトキシフェニルメチル基、2−トリメチルシリルオキシエチル基、ジフェニルメチル基、チアゾリルメチル基などが効果的である。
【0026】
は置換されていてもよい炭素数1〜30のアルキル基、置換されていてもよい炭素数2〜18のアルケニル基、置換されていてもよい炭素数2〜18のアルキニル基、置換されていてもよい炭素数7〜18のアラルキル基、置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基を示している。
【0027】
置換されていてもよい炭素数1〜30のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、1−メチル−プロピル基、2−メチル−プロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基などが挙げられ、これらの任意の位置に置換基を有していてもよい。
【0028】
置換基の種類としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシル基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、アルキルシリルオキシ基、アリールアルキルシリルオキシ基などが挙げられる。より具体的には、3−クロロプロピル基、2−メトキシエチル基、ベンジルオキシメチル基、2−ベンジルオキシエチル基、2−(メルカプトメチル)エチル基、2−(t−ブチルジメチルシリルオキシ)エチル基、2−(t−ブチルジフェニルシリルオキシ)エチル基、2−トリメチルシリルオキシエチル基などが挙げられる。
【0029】
置換されていてもよい炭素数2〜18のアルケニル基としては、例えばアリル基、ビニル基、3−ブテニル基、2−メチル−2−プロペニル基、3−フェニル−2−プロペニル基などが挙げられる。
【0030】
置換されていてもよい炭素数2〜18のアルキニル基としては、例えばプロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、2−ペンチニル基などが挙げられる。
【0031】
置換されていてもよい炭素数7〜18のアラルキル基としては、例えばベンジル基、p−メトキシフェニルメチル基、p−ニトロフェニルメチル基、p−ブロモフェニルメチル基、p−クロロフェニルメチル基、2,4−ジクロロフェニルメチル基、ナフチルメチル基、1−インダノイル基、ジフェニルメチル基などが挙げられる。
【0032】
置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基としては、例えばフェニル基、p−メトキシフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0033】
光学活性アミノ酸を製造するにあたって、Rとしては2,6−ジクロロフェニル基が好ましい。
【0034】
*1、*2、*3は不斉炭素原子を表しており、その絶対立体配置は、RまたはSである。なお、本明細書において、「立体配置がRである」とは、不斉炭素原子に関してS配置のものよりR配置のものが過剰に存在していることを意味し、「立体配置がSである」とは、R配置のものよりS配置のものが過剰に存在していることを意味する。
【0035】
一般式(1)で表されるイミダゾリジノン誘導体は、例えば、後述するような一般式(4);
【0036】
【化6】

(式中、Ar、R、*1、*2、*3は前記に同じ)で表される化合物を経る方法にて製造することができる。
【0037】
まず、一般式(4)で表されるイミダゾリジノン誘導体の製造方法について説明する。
【0038】
上記一般式(4)で表されるイミダゾリジノン誘導体は、例えば、一般式(5)
【0039】
【化7】

(式中、Ar、*1、*3は前記と同じ)で表されるグリシンアミド誘導体と、一般式(6);
CHO (6)
(式中、Rは前記と同じ)で表されるアルデヒドを、酸性触媒の存在下縮合させることにより製造することができる。
【0040】
一般式(5)で表されるグリシンアミド誘導体は、例えば、合成例1に示す方法等で、容易に製造できる。また一般式(6)で表されるアルデヒドは、市販品として容易に入手可能である。
【0041】
一般式(5)で表されるグリシンアミド誘導体の使用量は、特に制限されるものではないが、一般式(6)で表されるアルデヒドのモル当量を基準として、一般的に、0.1〜10.0モル当量の範囲内が好ましい。
【0042】
この反応は、酸性触媒の存在下で行われる。用いる酸性触媒は、通常、当業者が使用するものであれば特に制限されず、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸などの鉱酸類;メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのスルホン酸類;トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸などのハロゲノ脂肪酸等を用いることができる。中でもスルホン酸類の使用が好ましく、より好ましいのはp−トルエンスルホン酸である。
【0043】
酸性触媒の量は、特に限定されるものではないが、一般式(6)で表されるアルデヒドのモル当量を基準として、好ましくは0.001〜1.0モル当量の範囲である。
【0044】
この反応には、通常、有機溶媒が使用される。用いる有機溶媒としては、通常、当業者が使用するものであれば特に制限されず、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類等を用いることができる。
【0045】
用いる溶媒の使用量は、特に制限されるものではないが、一般的に、前記式(6)で表されるアルデヒドの重量1gに対して、0.5〜50mlの範囲内が好ましい。
【0046】
反応の温度は、一般式(5)で表されるグリシンアミド誘導体と、一般式(6)で表されるアルデヒドとが縮合反応を起こす温度であれば、特に制限されるものではない。
【0047】
上記一般式(4)で表されるイミダゾリジノン誘導体は、以下のようにして、一般式(7);
【0048】
【化8】

(式中、Ar、R、R、*1、*2、*3は前記と同じ)で表されるイミダゾリジノン誘導体に変換することができる。
【0049】
一般式(7)で表されるイミダゾリジノン誘導体は、例えば、一般式(4)で表されるイミダゾリジノン誘導体に、塩基の存在下において、一般式(8);
X (8)
(式中、Rは前記と同じ、Xはハロゲン原子を示している)で表される化合物、または一般式(9);
OR (9)
(式中、Rは前記と同じ)で表される化合物を作用させることにより製造することができる。
【0050】
使用される一般式(8)または(9)で表される化合物としては、例えば、ジt−ブチルジカーボネート、クロロギ酸メチル、クロロギ酸エチル、クロロギ酸イソプロピル、塩化ベンジルオキシカルボニル、塩化2,2,2−トリクロロエチルオキシカルボニル、塩化アリルオキシカルボニル等が挙げられる。
【0051】
このとき用いられる一般式(8)の化合物または一般式(9)の化合物のモル当量は、一般式(4)で表されるイミダゾリジノン誘導体のモル当量を基準として、一般的に、0.1〜10モル当量が好ましい。
【0052】
この反応は、塩基の存在下で行われる。用いる塩基としては、通常、当業者が使用するものであれば特に制限されず、一般的な無機塩基や有機塩基を用いることができる。
【0053】
このとき用いられる塩基の総モル当量は、特に制限されるものではないが、一般式(1)で表されるイミダゾリジノン誘導体のモル当量を基準として、一般的に、0.001〜10.0モル当量の範囲内が好ましい。
【0054】
反応には通常溶媒が使用される。用いる溶媒は、通常、当業者が使用するものであれば特に制限されない。
【0055】
用いる溶媒の使用量は、特に制限されるものではないが、一般的に、イミダゾリジノン誘導体の重量1gに対して、1.5〜50mlの範囲内が好ましい。
【0056】
反応の温度は、特に制限されるものではないが、−50〜100℃の範囲内が好ましい。
【0057】
反応を行う時間は特に制限されるものではないが、好ましくは0.1〜50時間である。
【0058】
以上のようにして得られた前記式(7)で表されるイミダゾリジノン誘導体は、塩基の存在下、一般式(10);
Y (10)
(式中、Rは前記と同じ)で表される親電子剤を作用させることにより、一般式(11);
【0059】
【化9】

(式中、Ar、R、R、R、*1、*2、*3は前記に同じ)で表される化合物とすることができる。一般式(11)で表される化合物は、更に一般式(12);
Y (12)
で表される化合物と反応させることにより、前記一般式(1)で表される化合物とすることができる。
【0060】
また、2種類の親電子剤、即ち、一般式(10)で表された親電子剤と、一般式(12)で表された2種類の親電子剤を一つの反応で使用すれば、一般式(1);
【0061】
【化10】

(式中、Ar、R、R、R、R、*1、*2、*3は前記に同じ)で表される化合物を製造することができる。
【0062】
ここで、一般式(10)および一般式(12)において、Yは脱離能を有する置換基であり、例えば、ハロゲン原子、スルホニルオキシ基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を挙げることができ、またスルホニルオキシ基としては、例えばメタンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基等が挙げられる。
【0063】
塩基、前記式(7)で表されるイミダゾリジノン誘導体、前記式(10)で表される親電子剤、前記式(12)で表される親電子剤、および反応溶媒の添加順序に特に制限はない。
【0064】
一般式(10)および一般式(12)で表される親電子剤の使用量としては、特に制限されるものではないが、一般的に、前記式(7)で表されるイミダゾリジノン誘導体のモル当量を基準として、0.1〜5当量が好ましい。
【0065】
反応は不活性気体雰囲気下で行うのが好ましい。特に窒素、またはアルゴン雰囲気下で行うのが好適である。
【0066】
反応には塩基が用いられる。用いる塩基は、通常、当業者が使用するものであれば特に制限されず、一般的な無機塩基や有機塩基を用いることができる。このうち、有機塩基を用いるのが好ましく、特に、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムジシラジド、ナトリウムジシラジド、カリウムジシラジド等の有機金属塩基を用いるのが好ましい。
【0067】
これらの塩基の使用量は、特に制限されないが、一般式(7)で表されるイミダゾリジノン誘導体のモル当量を基準として、一般的に、0.1〜2.0モル当量の範囲内が好ましい。
【0068】
反応には、通常、溶媒が使用される。使用できる溶媒は、特に制限されるものではないが、塩基との反応を避けるため、上述の塩基と反応しない溶媒が好ましい。
【0069】
用いる溶媒の使用量は、特に制限されるものではないが、イミダゾリジノン誘導体の重量1gに対して、一般的に1.0〜50mlの範囲内が好ましい。
【0070】
反応時の温度は、特に制限されるものではないが、例えば、一般的に、30℃以下で実施される。中でも、−100〜20℃の範囲内が好ましい。
【0071】
反応を行う時間は特に制限されるものではないが、好ましくは0.1〜48時間である。
【0072】
以上のようにして、一般式(1)で表される化合物を製造できる。
【0073】
次に、この一般式(1)で表されるイミダゾリジノン誘導体に対して、非水系(有機溶媒中または無溶媒)で酸を作用させた後、加水分解することにより、一般式(13);
【0074】
【化11】

(式中、R、R、*3は前記に同じ)で表されるアミノ酸を製造できる。
【0075】
この反応において、酸を作用させる段階では、無溶媒で行ってもよいし、有機溶媒を用いてもよい。なお、反応は、原則、非水系で行われるものの、系中にわずかに水が存在する場合などに、直接アミノ酸が生成する可能性があるが、本発明においては、酸を作用させた後、加水分解することにより直接アミノ酸が生成する限りにおいては、水が系中に存在する態様も含むものとする。
【0076】
用いられる有機溶媒の種類は、特に制限されるものではなく、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸t−ブチル、酢酸イソプロピルなどの酢酸エステル類;ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル類;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドンなどのアミド類等が挙げられる。中でも、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類の使用が好ましく、より好ましいのはヘキサン、トルエン、クロロベンゼン、2,4,6−トリメチルベンゼンである。
【0077】
これらの有機溶媒は、単独で用いてもよい。また、2種類以上の有機溶媒を任意の割合で組み合わせて使用してもよい。また、二相を形成する溶媒による非相溶溶媒系で用いてもよい。
【0078】
用いる有機溶媒の使用量は、特に制限されるものではないが、一般式(1)で表される、イミダゾリジノン誘導体の重量1gに対して、一般的に1〜100mlの範囲内である。中でも、1〜80mlが好ましく、更に1〜50mlがより好ましく、最も好ましくは1〜30mlである。
【0079】
上記のような一般式(1)で表されるイミダゾリジノン誘導体溶液に、非水系で酸を添加し、反応を行う。
【0080】
用いる酸は、特に制限されるものではないが、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、発煙硝酸などの鉱酸類;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのスルホン酸類;トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸などの脂肪酸などが挙げられる。中でも鉱酸、ハロゲノ脂肪酸の使用が好ましく、より好ましいのは、塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸である。
【0081】
これらの酸使用量についても、特に制限されるものではないが、用いるイミダゾリジノン誘導体のモル当量に対して、一般的に、0.1〜100モル当量の範囲内であり、好ましくは1〜80モル当量であり、より好ましくは1〜50モル当量、特に好ましくは1〜40モル当量の範囲内である。
【0082】
このように酸を作用させて反応を行う際の温度については、特に制限されるものではない。通常、−78〜180℃の範囲内であり、中でも−20〜150℃が好ましく、より好ましくは0〜100℃の範囲内である。
【0083】
反応を行う時間は特に制限されるものではないが、好ましくは0.1〜72時間、より好ましくは0.1〜60時間である。
【0084】
以上のようにして、イミダゾリジノン誘導体に非水系で酸を作用させた後、水または酸水溶液を作用させて加水分解を実施する。用いられる酸水溶液の種類は、特に制限されるものではなく、例えば、希塩酸、希硫酸、希硝酸等が挙げられる。なお、イミダゾリジノン誘導体に作用させる酸として酸水溶液を用いた場合は、その後に水を加えなくてもよい。
【0085】
用いる水または酸水溶液の使用量は、特に制限されるものではないが、一般式(1)で表される、イミダゾリジノン誘導体の重量1gに対して、一般的に1〜100mlの範囲内である。中でも、1〜80mlが好ましく、更に1〜50mlがより好ましく、最も好ましくは1〜30mlである。
【0086】
加水分解する際の温度についても特に制限されるものではない。通常、−78〜180℃の範囲内であり、中でも−20〜150℃が好ましく、より好ましくは0〜100℃の範囲内である。
【0087】
反応を行う時間は特に制限されるものではないが、好ましくは0.1〜72時間、より好ましくは0.1〜60時間である。
【0088】
以上のように反応を行うことにより、一般式(4)で表される、アミノ酸を合成できる。このアミノ酸は、イオン交換カラム、中和晶析、造塩晶析など、通常、アミノ酸を単離するために使用される諸方法により取得できることは勿論のこと、反応液から直接、N−カルバモイル化やN−アシル化を行い、N−誘導化アミノ酸とすることも可能である。得られたN−誘導化アミノ酸も、抽出、晶析などの操作によって単離することが可能である。
【0089】
次に、一般式(1)で表されるイミダゾリジノン誘導体に対して、有機溶媒を用いた溶媒中または無溶媒で酸を作用させた後、一般式(2);
OH (2)
(Rは炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数2〜18のアルキニル基、炭素数7〜18のアラルキル基、炭素数6〜18のアリール基を示す)で表されるアルコールを作用させることにより一般式(3);
【0090】
【化12】

(式中、R、R、R、*3は前記に同じ)で表されるアミノ酸エステルを製造する方法について説明する。
【0091】
ここでRにおける炭素数1〜30のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、1−メチル−プロピル基、2−メチル−プロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基などが挙げられる。これらは、任意の位置に置換基を有していてもよい。置換基としては、上述のものが挙げられる。以下においても同様である。
【0092】
炭素数2〜18のアルケニル基としては、例えばアリル基、ビニル基、3−ブテニル基、2−メチル−2−プロペニル基、3−フェニル−2−プロペニル基などが挙げられる。
【0093】
炭素数2〜18のアルキニル基としては、例えばプロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、2−ペンチニル基などが挙げられる。
【0094】
炭素数7〜18のアラルキル基としては、例えばベンジル基、p−メトキシフェニルメチル基、p−ニトロフェニルメチル基、p−ブロモフェニルメチル基、p−クロロフェニルメチル基、2,4−ジクロロフェニルメチル基、ナフチルメチル基、1−インダノイル基、ジフェニルメチル基などが挙げられる。
【0095】
炭素数6〜18のアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0096】
使用される一般式(3)で表されるアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。
【0097】
この反応において、酸を作用させる段階では、無溶媒で行ってもよいし、有機溶媒を用いてもよい。なお、反応は、原則、非水系で行われるものの、系中にわずかに水が存在する場合などに、直接アミノ酸エステルが生成する可能性があるが、本発明においては、酸を作用させた後、アルコールを作用することにより直接アミノ酸エステルが生成する限りにおいては、水が系中に存在する態様も含むものとする。
【0098】
用いられる有機溶媒の種類は、特に制限されるものではなく、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸t−ブチル、酢酸イソプロピルなどの酢酸エステル類;ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル類;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドンなどのアミド類等が挙げられる。中でも、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類の使用が好ましく、より好ましいのはヘキサン、トルエン、クロロベンゼン、2,4,6−トリメチルベンゼンである。
【0099】
これらの有機溶媒は、単独で用いてもよい。また2種類以上の有機溶媒を任意の割合で組み合わせて使用してもよい。また、二相を形成する溶媒による非相溶溶媒系で用いてもよい。
【0100】
用いる有機溶媒の使用量は、特に制限されるものではないが、一般式(1)で表される、イミダゾリジノン誘導体の重量1gに対して、一般的に1〜100mlの範囲内である。中でも、1〜80mlが好ましく、更に1〜50mlがより好ましく、最も好ましくは1〜30mlである。
【0101】
上記のようにして調製した一般式(1)で表されるイミダゾリジノン誘導体溶液に、非水系で酸を添加し、反応を行う。
【0102】
用いる酸は、特に制限されるものではないが、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、発煙硝酸などの鉱酸類;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのスルホン酸類;トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸などの脂肪酸などが挙げられる。中でも鉱酸、ハロゲノ脂肪酸の使用が好ましく、より好ましいのは、塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸である。
【0103】
これらの酸使用量についても、特に制限されるものではないが、用いるイミダゾリジノン誘導体のモル当量に対して、一般的に、0.1〜100モル当量の範囲内であり、好ましくは1〜80モル当量であり、より好ましくは1〜50モル当量、特に好ましくは1〜40モル当量の範囲内である。
【0104】
このように酸を作用させて反応を行う際の温度についても特に制限されるものではない。通常、−78〜180℃の範囲内であり、中でも−20〜150℃が好ましく、より好ましくは0〜100℃の範囲内である。
【0105】
反応を行う時間は特に制限されるものではないが、好ましくは0.1〜72時間、より好ましくは0.1〜60時間である。
【0106】
このように、イミダゾリジノン誘導体に非水系で酸を作用させた後、一般式(2)で表されるアルコールを作用させる。
【0107】
用いるアルコールの使用量は、特に制限されるものではないが、一般式(1)で表される、イミダゾリジノン誘導体の重量1gに対して、一般的に1〜100mlの範囲内である。中でも、1〜80mlが好ましく、更に1〜50mlがより好ましく、最も好ましくは1〜30mlである。
【0108】
アルコールを作用させる際の温度についても、特に制限されるものではない。通常、−78〜180℃の範囲内であり、中でも−20〜150℃が好ましく、より好ましくは0〜100℃の範囲内である。
【0109】
反応を行う時間は特に制限されるものではないが、好ましくは0.1〜72時間、より好ましくは0.1〜60時間である。
【0110】
このようにして、一般式(3)で表されるアミノ酸エステルを合成できる。このアミノ酸エステルは、抽出、晶析など、通常、アミノ酸エステルを単離するために使用される諸条件により取得できる。
【実施例】
【0111】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0112】
(実施例1)(S)−3−(4−チアゾリル)アラニン
【0113】
【化13】

1,1−ジメチルエチル−(2R)−(2,6−ジクロロフェニル)−5−オキソ−3−((1’R)−フェニルエチル)−(4S)−(4−チアゾリルメチル)テトラヒドロ−1H−1−イミダゾールカルボキシレート53mg(0.1mmol)の濃硫酸溶液(1ml)を、窒素気流下、20℃で1時間反応した。これに、水1mlを滴下し、100℃で4時間撹拌した。反応液をトルエンで洗浄し、水層の3−(4−チアゾリル)アラニンを高速液体クロマトグラフィーで定量した結果、標題化合物が14.3mg、光学純度100%eeで得られた。
【0114】
(定量方法)
カラム :ダイセル化学社製 CROWNPAK CR(+)(内径0.4cm×15cm)
移動層 :pH1.5過塩素酸水溶液
流速 :0.5ml/min
検出器 :UV254nm
保持時間:(R)−3−(4−チアゾリル)アラニン 4.9分
(S)−3−(4−チアゾリル)アラニン 6.3分
【0115】
(実施例2)(S)−3−(4−チアゾリル)アラニン
【0116】
【化14】

【0117】
1,1−ジメチルエチル−(2R)−(2,6−ジクロロフェニル)−5−オキソ−3−((1’R)−フェニルエチル)−(4S)−(4−チアゾリルメチル)テトラヒドロ−1H−1−イミダゾールカルボキシレート3.8g(7.1mmol)の6M塩酸溶液(20ml)を、窒素気流下、100℃で15時間撹拌した。反応液をトルエンで洗浄し、水層の3−(4−チアゾリル)アラニンを高速液体クロマトグラフィーで定量した結果、標題化合物が264.7mg、光学純度92.8%eeで得られた。
【0118】
(実施例3)(S)−3−(4−チアゾリル)アラニン
【0119】
【化15】

【0120】
1,1−ジメチルエチル−(2R)−(2,6−ジクロロフェニル)−5−オキソ−3−((1’R)−フェニルエチル)−(4S)−(4−チアゾリルメチル)テトラヒドロ−1H−1−イミダゾールカルボキシレート50mg(0.1mmol)のトリフルオロ酢酸溶液(1ml)を、窒素気流下、10℃で15時間反応した。これに、6M塩酸1mlを滴下し、100℃で4時間撹拌した。反応液をトルエンで洗浄し、水層の3−(4−チアゾリル)アラニンを高速液体クロマトグラフィーで定量した結果、標題化合物が9.3mg、光学純度87.4%eeで得られた。
【0121】
(実施例4)(S)−3−(4−チアゾリル)アラニン
【0122】
【化16】

【0123】
1,1−ジメチルエチル−(2R)−(2,6−ジクロロフェニル)−5−オキソ−3−((1’R)−フェニルエチル)−(4S)−(4−チアゾリルメチル)テトラヒドロ−1H−1−イミダゾールカルボキシレート50mg(0.1mmol)に濃硫酸(0.1ml)とクロロベンゼン(1ml)を添加し、窒素気流下、20℃で1時間反応した。これに、6M塩酸1mlを滴下し、100℃で4時間撹拌した。反応液をトルエンで洗浄し、水層の3−(4−チアゾリル)アラニンを高速液体クロマトグラフィーで定量した結果、標題化合物が12.3mg、光学純度100%eeで得られた。
【0124】
(実施例5)(S)−3−(4−チアゾリル)アラニン
【0125】
【化17】

【0126】
1,1−ジメチルエチル−(2R)−(2,6−ジクロロフェニル)−5−オキソ−3−((1’R)−フェニルエチル)−(4S)−(4−チアゾリルメチル)テトラヒドロ−1H−1−イミダゾールカルボキシレート50mg(0.1mmol)に濃硫酸(0.1ml)と1,3,5−トリメチルベンゼン(1ml)を添加し、窒素気流下、20℃で1時間反応した。これに、6M塩酸1mlを滴下し、100℃で4時間撹拌した。反応液をトルエンで洗浄し、水層の3−(4−チアゾリル)アラニンを高速液体クロマトグラフィーで定量した結果、標題化合物が12.6mg、光学純度100%eeで得られた。
【0127】
(実施例6)(S)−フェニルアラニン
【0128】
【化18】

【0129】
1,1−ジメチルエチル−(2R)−(2,6−ジクロロフェニル)−5−オキソ−3−((1’R)−フェニルエチル)−(4S)−(フェニルメチル)テトラヒドロ−1H−1−イミダゾールカルボキシレート50mg(0.1mmol)に濃硫酸(0.1ml)とクロロベンゼン(1ml)を添加し、窒素気流下、20℃で1時間反応した。これに、6M塩酸1mlを滴下し、100℃で4時間撹拌した。反応液をトルエンで洗浄し、水層のフェニルアラニンを高速液体クロマトグラフィーで定量した結果、標題化合物が13.8mg、光学純度100%eeで得られた。
【0130】
(定量方法)
カラム :ダイセル化学社製 CROWNPAK CR(+)(内径0.4cm×15cm)
移動層 :pH1.5過塩素酸水溶液
流速 :1.0ml/min
検出器 :UV200nm
保持時間:(R)−フェニルアラニン 9.8分
(S)−フェニルアラニン 14.8分
【0131】

(実施例7)(S)−2−アミノ−3−(4−チアゾリル)プロパン酸エチル
【0132】
【化19】

【0133】
1,1−ジメチルエチル−(2R)−(2,6−ジクロロフェニル)−5−オキソ−3−((1’R)−フェニルエチル)−(4S)−(4−チアゾリルメチル)テトラヒドロ−1H−1−イミダゾールカルボキシレート99mg(0.2mmol)に濃硫酸(0.2ml)とクロロベンゼン(2.0ml)を添加し、窒素気流下、20℃で1時間反応した。これに、エタノール2mlを滴下し、60℃で15時間撹拌した。反応液を0℃に冷却にした後、蒸留水を5ml添加し、水層を分離した。水層をpH9.5に調整した後、酢酸エチルで抽出した。有機層を減圧濃縮し、標題化合物22.7mgを得た。
【0134】
(実施例8〜18) 光学活性アミノ酸の合成
下記反応式、操作手順に従って操作を行い、光学活性アミノ酸を合成した。
【0135】
【化20】

【0136】
操作手順
アルキル化工程: 1,1−ジメチルエチル−(2R)−(2,6−ジクロロフェニル)−5−オキソ−3−((1’R)−フェニルエチル)テトラヒドロ−1H−1−イミダゾールカルボキシレート5.0g(11.5mmol)とハロゲン化アルキル(R−X)を含む無水テトラヒドロフラン(25ml)溶液に、窒素気流下−20℃で、ナトリウムヘキサメチルジシラジド/テトラヒドロフラン溶液を滴下した。反応終了後、飽和塩化アンモニウム水溶液(50ml)を加えて反応を停止し、エチルエーテル(70ml)で希釈し、分液操作を行った。有機層を蒸留水、および飽和食塩水で洗浄したのち、減圧下溶媒を留去し粗生成物を得た。これは直接次工程に使用した。
【0137】
加水分解工程: 前工程で得られた粗生成物をクロロベンゼン(30ml)に溶解したのち、濃硫酸(6.1ml)を加え、室温で1時間撹拌した。反応液に蒸留水(12ml)を加えたのち、窒素気流下、外温120℃にて4時間加熱還流した。室温に冷却後、エチルエーテル50mlを加え有機層を分離したのち、水層をエチルエーテル20mlで3回洗浄した。水層を冷却したのち(0℃)、30wt%水酸化ナトリウム水溶液で中和操作を行った。生成した光学活性アミノ酸は、高速液体クロマトグラフィーで定量した。結果を表1に示す。
【0138】
【表1】

【0139】
(光学活性アミノ酸の定量方法)
カラム :スミキラルOA−6000
移動層 :2mM硫酸銅水溶液/アセトニトリル=100/0〜85/15
検出器 :UV254nm
移動層は分析するアミノ酸により適切な組成比を選択した。
【0140】
(実施例8) (S)−アラニン
実施例8のみ下記手順で反応を実施した。1,1−ジメチルエチル−(2R)−(2,6−ジクロロフェニル)−5−オキソ−3−((1’R)−フェニルエチル)テトラヒドロ−1H−1−イミダゾールカルボキシレート1.0g(2.3mmol)とヨウ化メチル(652mg、4.6mmol)を含む無水テトラヒドロフラン(10ml)溶液に、窒素気流下−20℃で、ナトリウムヘキサメチルジシラジド/テトラヒドロフラン溶液(1.9M、1.3ml、2.4mmol)を滴下した。反応終了後(3時間)、飽和塩化アンモニウム水溶液(20ml)を加えて反応を停止し、エチルエーテル(50ml)で希釈し、分液操作を行った。有機層を蒸留水、および飽和食塩水で洗浄したのち、減圧下溶媒を留去し粗生成物を得た。これは直接次工程に使用した。
【0141】
加水分解工程: 前工程で得られた粗生成物をクロロベンゼン(14ml)に溶解したのち、濃硫酸(1.2ml)を加え、室温で1時間撹拌した。反応液に蒸留水(2.5ml)を加えたのち、窒素気流下、外温120℃にて4時間加熱還流した。室温に冷却後、エチルエーテル20mlを加え有機層を分離したのち、水層をエチルエーテル20mlで3回洗浄した。水層を冷却したのち(0℃)、30wt%水酸化ナトリウム水溶液で中和操作を行った。生成した光学活性アミノ酸を、高速液体クロマトグラフィーで定量した結果、表題の化合物が194.4mg(95%収率、96%ee)生成していた。
【0142】
(実施例9)(S)−2−アミノブタン酸
前記操作手順に従い、ハロゲン化アルキルとしてヨウ化エチル(3.6g、23mmol)を用い、ナトリウムヘキサメチルジシラジド(1.9M、7.0ml、13.2mmol)にてアルキル化反応を行った(反応時間3時間)。前記操作手順に従って加水分解/定量操作を行った結果、表題の化合物が1.13g(96%収率、93%ee)生成していた。
【0143】
(実施例10) (S)−バリン
前記操作手順に従い、ハロゲン化アルキルとしてヨウ化イソプロピル(3.9g、23mmol)を用い、ナトリウムヘキサメチルジシラジド(1.9M、7.0ml、13.2mmol)にてアルキル化反応を行った(反応時間19時間)。前記操作手順に従って加水分解/定量操作を行った結果、表題の化合物が1.21g(90%収率、98%ee)生成していた。
【0144】
(実施例11) (S)−ノルロイシン
前記操作手順に従い、ハロゲン化アルキルとしてヨウ化n−ブチル(4.2g、23mmol)を用い、ナトリウムヘキサメチルジシラジド(1.9M、7.0ml、13.2mmol)にてアルキル化反応を行った(反応時間3時間)。前記操作手順に従って加水分解/定量操作を行った結果、表題の化合物が1.38g(92%収率、98%ee)生成していた。
【0145】
(実施例12) (S)−ノルロイシン
前記操作手順に従い、ハロゲン化アルキルとして臭化n−ブチル(3.2g、23mmol)を用い、ナトリウムヘキサメチルジシラジド(1.9M、7.0ml、13.2mmol)にてアルキル化反応を行った(反応時間23時間)。前記操作手順に従って加水分解/定量操作を行った結果、表題の化合物が1.24g(82%収率、99%ee)生成していた。
【0146】
(実施例13) (S)−フェニルアラニン
前記操作手順に従い、ハロゲン化アルキルとして臭化ベンジル(3.0g、17.2mmol)を用い、ナトリウムヘキサメチルジシラジド(1.9M、7.0ml、13.2mmol)にてアルキル化反応を行った(反応時間2時間)。前記操作手順に従って加水分解/定量操作を行った結果、表題の化合物が1.58g(83%収率、99%ee)生成していた。
【0147】
(実施例14) (S)−4−フルオロフェニルアラニン
前記操作手順に従い、ハロゲン化アルキルとして臭化4−フルオロベンジル(3.3g、17.2mmol)を用い、ナトリウムヘキサメチルジシラジド(2.0M、6.3ml、12.6mmol)にてアルキル化反応を行った(反応時間2.5時間)。前記操作手順に従って加水分解/定量操作を行った結果、表題の化合物が1.90g(90%収率、97%ee)生成していた。
【0148】
(実施例15) (S)−4−フルオロフェニルアラニン
前記操作手順に従い、ハロゲン化アルキルとして塩化4−フルオロベンジル(2.5g、17.2mmol)を用い、ナトリウムヘキサメチルジシラジド(2.0M、6.3ml、12.6mmol)にてアルキル化反応を行った(反応時間20時間)。前記操作手順に従って加水分解/定量操作を行った結果、表題の化合物が1.80g(86%収率、96%ee)生成していた。
【0149】
(実施例16) (S)−4−クロロフェニルアラニン
前記操作手順に従い、ハロゲン化アルキルとして臭化4−クロロベンジル(3.5g、17.2mmol)を用い、ナトリウムヘキサメチルジシラジド(2.0M、6.3ml、12.6mmol)にてアルキル化反応を行った(反応時間3.5時間)。前記操作手順に従って加水分解/定量操作を行った結果、表題の化合物が2.0g(87%収率、98%ee)生成していた。
【0150】
(実施例17) (S)−4−クロロフェニルアラニン
前記操作手順に従い、ハロゲン化アルキルとして塩化4−クロロベンジル(2.8g、17.2mmol)を用い、ナトリウムヘキサメチルジシラジド(2.0M、6.3ml、12.6mmol)にてアルキル化反応を行った(反応時間5時間)。前記操作手順に従って加水分解/定量操作を行った結果、表題の化合物が1.85g(81%収率、97%ee)生成していた。
【0151】
(実施例18) (S)−4−ブロモフェニルアラニン
前記操作手順に従い、ハロゲン化アルキルとして臭化4−ブロモベンジル(4.3g、17.2mmol)を用い、ナトリウムヘキサメチルジシラジド(2.0M、6.3ml、12.6mmol)にてアルキル化反応を行った(反応時間3時間)。前記操作手順に従って加水分解/定量操作を行った結果、表題の化合物が1.96g(70%収率、77%ee)生成していた。
【0152】
(実施例19) (S)−α−メチルーフェニルアラニン
【0153】
【化21】

【0154】
(工程1)
1,1−ジメチルエチル−(2S)−(2,6−ジクロロフェニル)−5−オキソ−3−((1’S)−フェニルエチル)テトラヒドロ−1H−1−イミダゾールカルボキシレート22.2g(51.0mmol)と臭化ベンジル(10.9g、63.7mmol)の無水テトラヒドロフラン(110ml)溶液に、窒素気流下−20℃で、ナトリウムヘキサメチルジシラジド/THF溶液(29ml、56.1mmol)を滴下した。反応終了後(3時間)、飽和塩化アンモニウム水溶液(100ml)を加えて反応を停止し、酢酸エチル(300ml)で希釈し、分液操作を行った。有機層を蒸留水、および飽和食塩水で洗浄したのち、減圧下溶媒を留去し粗生成物を得た。これを酢酸エチル(45ml)、およびヘキサン(180ml)から晶析し、1,1−ジメチルエチル−(2S)−(2,6−ジクロロフェニル)−5−オキソ−3−((1’S)−フェニルエチル)−(4R)−(フェニルメチル)テトラヒドロ−1H−1−イミダゾールカルボキシレートを21.7g(81%収率)無色固体として得た。
【0155】
1H−NMR(400MHz、CDCl):δ7.33−7.25(6H、m)、7.19−7.17(3H、m)、7.14−7.10(1H,t,J=8.1Hz)、7.10−7.01(3H、m)、6.17(1H、d、J=2.2Hz)、4.27(1H、m)、3.98(1H、q、J=6.8Hz)、3.28(1H、dd、J=2.7、14.2Hz)、3.08(1H、dd、J=5.8、14.2Hz)、1.31(1H、d、J=6.8Hz)、1.21(9H、s)
【0156】
(工程2)
ジイソプロピルアミン(1.7ml、11.9mmol)を含む無水テトラヒドロフラン(10ml)溶液に、窒素気流下−22℃でn−ブチルリチウム(1.58M、n−ヘキサン溶液、7.0ml、10.9mmol)を滴下し、30分間撹拌した。これに工程1で得た1,1−ジメチルエチル−(2S)−(2,6−ジクロロフェニル)−5−オキソ−3−((1’S)−フェニルエチル)−(4R)−(フェニルメチル)テトラヒドロ−1H−1−イミダゾールカルボキシレート5.0g(9.5mmol)の無水テトラヒドロフラン(10ml)溶液を滴下した。滴下流路を無水テトラヒドロフラン(5ml)で洗浄したのち、1時間熟成した。これにヨウ化メチル2.7g(19.0mmol)を滴下したのち、−22℃で1時間、0℃で24時間反応した。飽和塩化アンモニウム水溶液(50ml)を加えて反応を停止し、エチルエーテル(70ml)で希釈し、分液操作を行った。有機層を蒸留水、および飽和食塩水で洗浄したのち、減圧下溶媒を留去し粗生成物を得た(5.35g)。これはそのまま次工程に用いた。
【0157】
(工程3)
工程2で得た粗生成物を、クロロベンゼン(25ml)に溶解したのち、濃硫酸(5.1ml)を加え、室温で1時間撹拌した。反応液に蒸留水(11ml)を加えたのち、窒素気流下、外温120℃にて4時間加熱還流した。室温に冷却後、エチルエーテル50mlを加え有機層を分離したのち、水層をエチルエーテル20mlで3回洗浄した。水層を冷却したのち(0℃)、30wt%水酸化ナトリウム水溶液で中和操作を行った。生成した光学活性アミノ酸を、高速液体クロマトグラフィーで定量した結果、α−メチルフェニルアラニンが895mg(53%収率、99.9%ee)含まれていた。
【0158】
(定量方法)
カラム :Cosmosil 5C18AR
移動層 :リン酸2水素ナトリウム水溶液(pH3.0)/アセトニトリル
=80/20(容量比)
流速 :0.4ml/min; 0〜10分
1.0ml/min;10〜30分
検出器 :UV254nm
保持時間:α−メチルフェニルアラニン 約7.3分
【0159】
(光学純度の決定)
カラム :スミキラルOA−6000
移動層 :2mM硫酸銅水溶液/アセトニトリル=85/15(容量比)
流速 :0.8ml/min
検出器 :UV254nm
保持時間:(R)−α−メチルフェニルアラニン 約9.4分
(S)−α−メチルフェニルアラニン 約 30分
【0160】
(比較例1)(S)−3−(4−チアゾリル)アラニン
【0161】
【化22】

【0162】
1,1−ジメチルエチル−(2R)−(2,6−ジクロロフェニル)−5−オキソ−3−((1’R)−フェニルエチル)−(4S)−(4−チアゾリルメチル)テトラヒドロ−1H−1−イミダゾールカルボキシレート190mgに、テトラヒドロフラン10mlと1M塩酸1mlを添加したのち、窒素気流下、室温でパラジウム−炭素500mgを加えた。反応系内を水素ガスで置換し、60℃で15時間反応した後、触媒を濾別した。溶媒を留去した後、6M塩酸(5ml)を添加し、100℃で4時間撹拌したが、標題の化合物は得られなかった。
【0163】
(参考例1)(S)−フェニルアラニン
【0164】
【化23】

【0165】
(工程1)
1,1−ジメチルエチル−(2R)−(2,6−ジクロロフェニル)−5−オキソ−3−((1’R)−フェニルエチル)−(4S)−(フェニルメチル)テトラヒドロ−1H−1−イミダゾールカルボキシレート1.6gをエタノール8mlと蒸留水11mlに懸濁し、濃硫酸3.0gを添加後、60℃で24時間反応させた。蒸留水3.2mlを添加し、減圧下エタノールを留去した。この水溶液をトルエン20mlにて4回洗浄したのち、再び減圧下有機溶媒を留去した。得られた水溶液に濃硫酸1.5gを加え、外温120〜130℃にて16.5時間反応させ(変換率99.8%)、3−フェニル−(2S)−[(1’R)−フェニルエチルアミノ]プロピオン酸を得た。このものはこれ以上精製することなく次工程へと導いた。
【0166】
(工程2)
工程1で得た3−フェニル−(2S)−[(1’R)−フェニルエチルアミノ]プロピオン酸の水溶液に、エタノール12mlと蒸留水2mlを添加したのち、窒素気流下、室温で20%パラジウム−炭素(50%含水品)200mgを加えた。反応系内を水素ガスで置換し、50℃で2.5時間反応した(変換率99.6%)。触媒を濾別し蒸留水で洗浄後、30%水酸化ナトリウム水溶液でpHを3.5に調整した。この溶液中のフェニルアラニンを高速液体クロマトグラフィーで定量した結果、(S)−フェニルアラニンが218.1mg、光学純度99.5%eeで得られた。
【0167】
(定量方法)
カラム :ダイセル化学社製 キラルパックWH(内径4.6mm×25cm)
移動層 :0.25mM硫酸銅水溶液
流速 :1.0ml/min
検出器 :UV254nm
保持時間:(R)−フェニルアラニン 25.8分
(S)−フェニルアラニン 46.8分
【0168】
(合成例1)(S)−2−[(1−フェニルエチル)アミノ]−エタナミド
【0169】
【化24】

【0170】
クロロアセトアミド386g(4.1mol)、炭酸カリウム569g(4.1mol)とヨウ化ナトリウム32g(0.2mol)を含む無水アセトニトリル溶液(1920ml)に、窒素気流下40℃で(S)−フェニルエチルアミン501g(4.1mol)を1.75時間かけて滴下した。外温70℃へと昇温し13.5時間反応した。室温へと冷却して不溶物をろ過後、ケーキをアセトニトリル780mlで洗浄した。母洗液を濃縮後、酢酸エチル1150mlを加え濃縮操作を行った。酢酸エチル3500mlにて希釈し、水および10%硫酸ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を濃縮したのち、酢酸エチル580mlを加え濃縮する操作を2回繰り返し、最終的に全量1360gとした。これにヘキサン2600mlを滴下して晶析操作を行い、458gの白色結晶を得た。ろ液、洗浄液を濃縮後、酢酸エチル410ml、アセトニトリル40mlで希釈した。これにヘキサン2715mlを滴下して晶析操作を行い、223gの白色結晶を得た。含量分析を行った結果、これらの結晶は620g(84%収率)の(S)−2−[(1−フェニルエチル)アミノ]−エタナミドを含んでいた。
【0171】
(合成例2)(2,6−ジクロロフェニル)−1−((1’S)−フェニルエチル)テトラヒドロ−1H−4−イミダゾロン
【0172】
【化25】

【0173】
合成例1の方法で得られた(S)−2−[(1−フェニルエチル)アミノ]−エタナミド679g(91.0wt%、含量618g、3.5mol)、2,6−ジクロロベンズアルデヒド668g(3.8mol)、およびp−トルエンスルホン酸20g(0.1mol)のトルエン溶液(1400ml)を、窒素気流下において、外温120〜130℃にて20.5時間加熱還流を行った。60℃に冷却後、ヘキサン446mlを滴下し晶析操作を行い、1200gの褐色結晶を得た。含量分析を行った結果、1012g(87%収率)の(2,6−ジクロロフェニル)−1−((1’S)−フェニルエチル)テトラヒドロ−1H−4−イミダゾロンを含んでいた。
【0174】
(合成例3)(2S)−(2,6−ジクロロフェニル)−1−((1’S)−フェニルエチル)テトラヒドロ−1H−4−イミダゾロン
【0175】
【化26】

【0176】
合成例2の方法で得られた(2,6−ジクロロフェニル)−1−((1’S)−フェニルエチル)テトラヒドロ−1H−4−イミダゾロン1198g(84.3wt%、含量1011g、3.0mol)を酢酸エチル900ml、ヘキサン900mlに懸濁したのち、トリフルオロ酢酸(71g,0.6mol)を加え、外温80℃として4時間加熱還流を行った。これにヘキサン900mlを滴下し、更に20時間加熱還流を継続した。6時間かけて外温45℃に冷却した後16時間熟成した。更に5時間かけて外温31℃に冷却した後、24時間熟成を行った。析出した結晶をろ取し787gの褐色結晶を得た。これをアセトニトリル1750mlにてスラリー洗浄し、699gの白色結晶を得た。含量分析を行った結果、690g(68%収率、99.2%de)の(2S)−(2,6−ジクロロフェニル)−1−((1’S)−フェニルエチル)テトラヒドロ−1H−4−イミダゾロンを含んでいた。
【0177】
(合成例4)1,1−ジメチルエチル−(2S)−(2,6−ジクロロフェニル)−5−オキソ−3−((1’S)−フェニルエチル)テトラヒドロ−1H−1−イミダゾールカルボキシレート
【0178】
【化27】

【0179】
合成例3で得られた(2S)−(2,6−ジクロロフェニル)−1−((1’S)−フェニルエチル)テトラヒドロ−1H−4−イミダゾロン699g(99wt%、含量690g、2.1mol)の酢酸エチル2800ml溶液に、0℃窒素気流下においてジt−ブチルジカーボネート485g(2.2mol)、トリエチルアミン224g(2.2mol)、および4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン6.4g(50mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。異物ろ過後反応液を濃縮し、酢酸エチル1100mlで再希釈した。これにヘキサン4400mlを滴下して晶析操作を行い、標題化合物を521g(58%収率)黄色結晶として得た。ろ液および洗浄液を濃縮後、酢酸エチル230ml、ヘキサン3680mlから晶析操作を行って265g(29%収率)黄色結晶として得た(合計87%収率)。
【0180】
(合成例5)1,1−ジメチルエチル−(2R)−(2,6−ジクロロフェニル)−5−オキソ−3−((1’R)−フェニルエチル)テトラヒドロ−1H−1−イミダゾールカルボキシレート
【0181】
【化28】

【0182】
合成例1〜4と同様の方法で(R)−フェニルエチルアミン28gとクロロアセトアミド21gから、標題化合物58gを合成した。
【0183】
(合成例6)1,1−ジメチルエチル−(2R)−(2,6−ジクロロフェニル)−5−オキソ−3−((1’R)−フェニルエチル)−(4S)−(フェニルメチル)テトラヒドロ−1H−1−イミダゾールカルボキシレート
【0184】
【化29】

【0185】
微量(5mg以下)の1,10−フェナンスロリンとジイソプロピルアミン1.15ml(8.2mmol)を含む無水テトラヒドロフラン(11.5ml)溶液に、窒素気流下、−20℃でn−ブチルリチウム4.5ml(1.6mol/L;n−ヘキサン溶液、7.2mmol)を10分かけて滴下した。20分後に実施例9で得られた1,1−ジメチルエチル−(2R)−(2,6−ジクロロフェニル)−5−オキソ−3−((1’R)−フェニルエチル)テトラヒドロ−1H−1−イミダゾールカルボキシレート3.0g(6.8mmol)の無水テトラヒドロフラン(6ml)溶液を10分かけて滴下した。滴下ラインを無水テトラヒドロフラン1.5mlで洗浄したのち、−20℃で20分間熟成した。これに臭化ベンジル1.75g(10.2mmol)を滴下し、−20℃で1時間攪拌後0℃で15.5時間攪拌した。反応液を酢酸エチル(100ml)にて希釈後、塩化アンモニウム水溶液、蒸留水、飽和食塩水で各2回ずつ洗浄し、有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥した。固体を濾別後、減圧下溶媒を留去し粗生成物を4.51g得た。これをヘキサンにてリスラリー洗浄し、標題化合物を2.8g(77%収率)微褐色結晶として得た。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1);
【化1】

(式中、Arは置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基を示す。Rは水素原子、または窒素原子の保護基を示す。R、Rは独立して、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜30のアルキル基、置換されていてもよい炭素数2〜18のアルケニル基、置換されていてもよい炭素数2〜18のアルキニル基、置換されていてもよい炭素数7〜18のアラルキル基、置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基を示す。Rは置換されていてもよい炭素数1〜30のアルキル基、置換されていてもよい炭素数2〜18のアルケニル基、置換されていてもよい炭素数2〜18のアルキニル基、置換されていてもよい炭素数7〜18のアラルキル基、置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基を示し、*1、*2、*3は不斉炭素原子を示す)で表されるイミダゾリジノン誘導体に非水系で酸を作用させた後、一般式(2);
OH (2)
(Rは水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数2〜18のアルキニル基、炭素数7〜18のアラルキル基、炭素数6〜18のアリール基を示す)で表される化合物を作用させることを特徴とする一般式(3);
【化2】

(式中、R、R、R、*3は前記に同じ)で表されるアミノ酸またはアミノ酸エステルの製造方法。
【請求項2】
酸が鉱酸及び有機酸からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のアミノ酸またはアミノ酸エステルの製造方法。
【請求項3】
鉱酸が塩酸、臭化水素酸、硫酸、または硝酸であることを特徴とする、請求項2に記載のアミノ酸またはアミノ酸エステルの製造方法。
【請求項4】
有機酸がスルホン酸またはカルボン酸であることを特徴とする、請求項2に記載のアミノ酸またはアミノ酸エステルの製造方法。


【公開番号】特開2009−96791(P2009−96791A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38231(P2008−38231)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】