説明

アミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン及びそれを含有する有機媒体のゲル化剤

【課題】新規なアミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン及びそれを含有する有機媒体のゲル化剤の提供。
【解決手段】下記式(1)で示されるアミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン、またはこれを少なくとも1種含有する有機媒体のゲル化剤;


(式(1)中、Aは、炭素数2〜20のα−オレフィンの(共)重合体セグメントであって重量平均分子量が400〜30,000のものを表し、Ra、Rbは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜18のアルキル基もしくはアラルキル基を表す。X、Yは、いずれか一方が−OR1、−NR23(R1〜R3は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜3
0の炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。)を表し、他方は特定のアミノ酸誘導体セグメントを表す。)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温(とくに室温)で液状を呈する有機媒体を増粘化、ゲル化するのに有用なアミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン及びそれを含有するゲル化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機媒体に添加し、必要に応じて加熱および放冷するという単純な操作によりゲルを形成しうる低分子化合物の開発が進んでいる。ゲルは、常温(とくに室温)で液状を呈する化粧品、医薬品、接着剤、樹脂、塗料等の流動性の制御、これらの製造加工等の技術への応用が期待される。例えば、油の流出事故による廃油や家庭内廃油のゲル化が可能となれば、それらの容易かつ効率の良い回収処理と廃棄ができる。また、このゲル化技術は、廃溶剤の燃料としての再利用にも有効であると考えられる。また、色素増感型太陽電池の電解液においても、液の蒸発を防止するために、ゲル化剤の使用が検討されている。さらに、磁気記録媒体等においても、ゲル化剤を、各種塗料の粘度調整剤またはコーティング材料とすることが検討されている。
【0003】
このような液状有機媒体をゲル化させる機能を有する低分子化合物としては、ステアリン酸ナトリウムなどの長鎖脂肪酸のアルカリ金属塩(特許文献1)、12−ヒドロキシステアリン酸(特許文献2)、N−アシルアミノ酸アミド(特許文献3)等が知られていた。しかしながら、これらには、液状有機媒体をゲル化させるのに多量の添加を必要とすること、pH等の使用条件に制約があること、ゲル化できる液状有機媒体の種類が少ないこと等の欠点があった。
【0004】
上記のような欠点を解決するために、他の化合物のゲル化剤としての使用も提案されている。その一例として、シクロヘキサントリカルボキサミド(特許文献4)、ジアミノシクロヘキサンとアルキルイソシアネートとを反応させて得られるジアルキルウレア誘導体(特許文献5)、環状ジペプチド(特許文献6)等が挙げられる。これら低分子化合物は、ゲル化剤として、広範な種類の液状有機媒体への適用が可能であり、また、形成されるゲルは熱可逆性であり、このため液状有機媒体にゲル化剤としてこれらの化合物を少量添加して加熱溶解させて放冷するだけでゲルを形成できる等の優れた特徴を有している。しかしながら、低分子化合物が形成するゲルは、結晶状態と溶液状態との間の準安定状態であるため、長期間放置すると結晶転移してしまう場合があり不安定である等の欠点を持ち、形成したゲルの安定性を長期間にわたって保つことに限界があった。このようなゲルの安定性は、上記した用途においても重要な場合がある。
【特許文献1】特開昭55−75493号公報
【特許文献2】特公昭60−44968号公報
【特許文献3】特公昭54−33798号公報
【特許文献4】特開平10−273477号公報
【特許文献5】特開平8−231942号公報
【特許文献6】特開平7−247474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述の問題点を解決するために、簡便な方法で製造できるにもかかわらず、広範な種類の液状有機媒体を少量の添加量でゲル化させることが可能であり、しかも得られたゲル化物が常温付近で長期間にわたって安定に存在し、かつ一度有機媒体に加熱溶解させると析出してこないという特徴を有する新規なアミノ酸誘導体セグメント含有ポリオ
レフィン及びそれを含有する有機媒体のゲル化剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、下記の特定の構造を有するアミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィンによれば、上記課題を解決できることを見出して本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明はたとえば、下記[1]〜[5]の事項に関する。
[1]下記式(1)で示されるアミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン;
【0008】
【化8】

【0009】
(式(1)中、Aは、炭素数2〜20のα−オレフィンの(共)重合体セグメントであって重量平均分子量が400〜30,000のものを表し、Ra、Rbは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜18のアルキル基もしくはアラルキル基を表す。X、Yは、いずれか一方が−OR1、−NR23(R1〜R3は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜3
0の炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。)を表し、他方は下記式(2)で示される基を表す。)
【0010】
【化9】

【0011】
(式(2)中、R4は、炭素数1〜4の分岐または直鎖のアルキル基、あるいは該アルキ
ル基の1以上の水素原子が、フェニル基、アルキルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基および-NR67(R6、R7は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜30
の炭化水素基またはアシル基を表す。)で示される基で置換された基を表し、Zは、酸素原子、−NR'−(R'は水素原子、炭素数1〜30のアルキル基を表す。)を表し、R5
は、炭素数1〜30の炭化水素基を表し、Eは、直結または下記式(3)で示される基を表す。)
【0012】
【化10】

【0013】
(式(3)中、Z1は、酸素原子、−NR'−(R'は水素原子、炭素数1〜30のアルキ
ル基を表す。)または下記式(4)で示される基を表し、Z2は、直結または下記式(5
)で示される基を表し、E1は、直結または炭素数1〜30の2価の炭化水素基を表す。

【0014】
【化11】

【0015】
(式(4)中、Z3は、酸素原子、−NR'−(R'は水素原子、炭素数1〜30のアルキ
ル基を表す。)を表し、Z4は、直結、酸素原子または−NR'−(R'は、水素原子、炭
素数1〜30のアルキル基を表す。)を表す。)
【0016】
【化12】

【0017】
(式(5)中、Z5は、直結、酸素原子または−NR'−(R'は水素原子、炭素数1〜3
0のアルキル基を表す。)を表す。)。
[2]前記式(2)で示される基が、下記式(2a)であることを特徴とする上記[1]に記載のアミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン;
【0018】
【化13】

【0019】
(式(2a)中、EおよびR5は、式(2)で定義した基と同じであり、R8は、メチル基またはエチル基を表す。)。
[3]前記式(2)で示される基が、下記式(2b)であることを特徴とする上記[1]に記載のアミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン;
【0020】
【化14】

【0021】
(式(2b)中、EおよびR5は、式(2)で定義した基と同じであり、R9は、炭素数1〜30の炭化水素基またはアシル基を表す。)。
[4]前記式(1)中のAが、エチレン−プロピレン共重合体セグメントを表すことを特徴とする上記[1]に記載のアミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン。
【0022】
[5]上記[1]〜[4]のいずれかに記載のアミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィンを少なくとも1種含有することを特徴とする有機媒体のゲル化剤。
【発明の効果】
【0023】
本発明のアミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィンによれば、広範な種類の液状有
機媒体を少量の添加量でゲル化させることが可能である。また、本発明のアミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィンによれば、簡便な方法で合成できるゲル化剤が提供される。さらに、本発明の有機媒体のゲル化剤により形成されたゲル化物は、常温付近での長期安定性に優れるため、本発明によれば安定なゲル化技術が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明について具体的に説明する。
<アミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン>
本発明に係るアミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィンは、上記式(1)で表される特定の構造を有している。なお、上記式(1)から明らかなように、該アミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィンは、不斉炭素原子を有するため、光学異性体が存在し得るが、そのいずれであってもよく、とくに限定されない。
【0025】
上記式(1)中、Aで表される、α−オレフィンの(共)重合体セグメントを形成する炭素数2〜20のα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、アリルシクロペンタン、アリルベンゼン、ビニルシクロヘキサン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセンなどを例示することができる。なお、α−オレフィンの(共)重合体とは、これらα−オレフィンの単独重合体および共重合体をも含む意味である。すなわち、該α−オレフィンの(共)重合体セグメントを形成する炭素数2〜20のα−オレフィンとしては、上記例示中の1種または2種以上を用いることができる。この中でも、(共)重合体の製造および得られる(共)重合体の分子量の調節が容易であるなどの点から、とくにエチレン、プロピレン、1−ブテンが好ましい。
【0026】
より具体的には、上記式(1)においてAで表される、α−オレフィンの(共)重合体セグメントとしては、エチレン−プロピレン共重合体セグメントなどのエチレン−(α−オレフィン)ランダム共重合体が好ましく挙げられる。
【0027】
上記式(1)においてAで表される、α−オレフィンの(共)重合体セグメントのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略す。)により測定した重量平均分子量(Mw)は400〜30,000であり、好ましくは800〜20,000、更に好ましくは1,000〜10,000である。
【0028】
さらに、該α−オレフィンの(共)重合体セグメントのGPCにより測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比、すなわち分子量分布(Mw/Mn)は、4.0以下が好ましく、より好ましくは3.0以下、更に好ましくは2.5以下である。
【0029】
重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、例えば、ミリポア社製GP
C−150を用い以下のようにして測定できる。
分離カラム:TSK GNH HT(カラムサイズ:直径7.5mm,長さ:300mm)
カラム温度:140℃
移動相:オルトジクロルベンゼン(和光純薬社製)
酸化防止剤:ブチルヒドロキシトルエン(武田薬品工業社製)0.025質量%
移動速度:1.0ml/分
試料濃度:0.1質量%
試料注入量:500マイクロリットル
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン。
【0030】
上記式(1)における、Ra、Rbとしては、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜18のアルキル基もしくはアラルキル基が挙げられる。
該アルキル基としては、直鎖、分岐または環状の炭素数1〜18のアルキル基が挙げられる、具体的には、例えばメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシルメチル基等が挙げられる。
【0031】
該アラルキル基としては、炭素数7〜15のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ベンズヒドリル基等が挙げられる。
これらのうち、Ra、Rbとして好ましくは、それぞれ独立に水素原子、直鎖の炭素数1〜18のアルキル基であり、より好ましくは、それぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基であり、さらに好ましくは、それぞれ独立に水素原子またはメチル基である。
【0032】
上記式(1)中、X、Yは、いずれか一方が−OR1、−NR23(R1〜R3は、それ
ぞれ独立に水素原子、炭素数1〜30の炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。)を表し、他方は上記式(2)で示される基であるアミノ酸誘導体セグメントを表す。
【0033】
なかでも、上記式(1)中、XおよびYのいずれか一方が−OR1を表し、他方が上記
式(2)で示される基であるアミノ酸誘導体セグメントを表す態様が好ましい。
ここで、R1〜R3で表される炭素数1〜30の炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基が好ましく挙げられる。
【0034】
この場合のアルキル基としては、直鎖、分岐または環状の炭素数1〜18のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシルメチル基等が挙げられる。
【0035】
アルケニル基としては、直鎖または分岐の炭素数2〜6のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。
アラルキル基としては、炭素数7〜15のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ベンズヒドリル基等が挙げられる。
【0036】
アリール基としては、炭素数6〜15のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。
また、R1〜R3で表される炭素数1〜30のヘテロ原子含有炭化水素基としては、上述した炭素数1〜30の炭化水素基の1以上の水素原子および/または炭素原子がヘテロ原
子と置換した基が好ましく挙げられる。ヘテロ原子としては、ハロゲン原子、窒素原子、酸素原子などが挙げられる。
【0037】
該へテロ原子含有炭化水素基としては、たとえば、メトキシエチル基、ジヒドロキシプロピル基、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ヒドロキシプロパン、ブロモデシル
基、トリフルオロエチル基、ヘキサフルオロ−2−プロピル基、パーフルオロオクチル基、フルオロアリル基、ジフルオロベンジル基、ペンタフルオロフェニルメチル基、ジクロロフェニル基、メトキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、ニトロフェニル基、ヘキサフルオロフェニル基などが挙げられる。
【0038】
また、上記式(2)において、R4は、炭素数1〜4の分岐または直鎖のアルキル基を
表すか、あるいは、該アルキル基の1以上の水素原子が、フェニル基、アルキルオキシカ
ルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基および−NR67(R6、R7は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜30の炭化水素基またはアシル基を表す。)で示される基で置換された基を表す。なお、これら置換基が置換するアルキル基の水素原子は、上記アルキル基の末端炭素原子に結合している水素原子であることが好ましい。
【0039】
上記アルキル基の1以上の水素原子の置換基であるアルキルオキシカルボニル基とは、炭素数1〜30の直鎖または分岐のアルキルオキシ基を含むものであり環状構造を有していてもよい。例えば、メトキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基などを挙げることができる。
【0040】
6、R7の炭素数1〜30の炭化水素基とは、直鎖または分岐の炭化水素基であり環状構造を有していてもよい。例えば、エチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、オクタデシル基、シクロオクチル基などの直鎖、分岐または環状アルキル基;直鎖、分岐または環状アルケニル基;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基;フェニル基、ナフチル基などのアリール基を挙げることができる。
【0041】
また、R6、R7の炭素数1〜30のアシル基とは、直鎖または分岐のアシル基であり環状構造を有していてもよい。例えば、アセチル基、ウンデシルカルボニル基、シクロヘキサンカルボニル基などを挙げることができる。
【0042】
これらのうち、R4としては、イソプロピル基、sec−ブチル基および−(CH2)4NHR9(R9は、炭素数1〜30の炭化水素基またはアシル基を表す。)が好ましい。ここで、R9は炭素数1〜30の炭化水素基またはアシル基を表す。
【0043】
9の炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアシル基とは、それぞれ上述し
たR6、R7の場合と同じである。
上記式(2)中、Zは、酸素原子または−NR'−を表す。ここで、R'は水素原子、炭素数1〜30のアルキル基を表す。R'のアルキル基は、好ましくは、炭素数1〜18の
直鎖または分岐のアルキル基であり、環状構造を有していても良く、例えば、メチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。これらのうち、Zとしてより好ましくは、酸素原子または−NH−である。
【0044】
また、上記式(2)中、R5は炭素数1〜30の炭化水素基であり、R6、R7で定義さ
れた炭化水素基と同様のものを表す。これらのうち、R5としては、直鎖の炭素数1〜1
8のアルキル基が好ましい。
【0045】
また、上記式(2)中、Eは直結または下記式(3)で表される2価の基を表す。
【0046】
【化15】

【0047】
上記式(3)において、Z1は、酸素原子または−NR'−または下記式(4)で表される2価の基を表す。R'は上記式(2)のZにおいて、定義したものと同じである。これ
らのうち、Z1としてより好ましくは、−NH−または下記式(4)で表される基である

【0048】
【化16】

【0049】
上記式(4)において、Z3は酸素原子、−NR'−を表し、Z4は直結、酸素原子また
は−NR'−を表す。ここで、R'は一般式(2)のZにおいて定義したものと同じである。これらのうち、Z3として好ましくは、酸素原子、Z4として好ましくは、−NH−である。
【0050】
また、上記式(3)において、Z2は、直結、または下記式(5)で示される基を表す

【0051】
【化17】

【0052】
上記式(5)において、Z5は、直結、酸素原子、−NR'−を表す。ここで、R'は一
般式(2)のZで定義したものと同じものである。これらのうち、Z5として好ましくは
、直結、−NH−である。
【0053】
また、上記式(3)において、E1は、直結または炭素数1〜30の2価の炭化水素基
を表す。ここで、2価の炭化水素基とはアルキレン基またはアルケニレン基を意味しており、炭素数1〜30の直鎖または分岐のアルキレン基またはアルケニレン基が挙げられ、環状構造を有していてもよい。これらのうち、好ましくは炭素数1〜30のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数1〜18のアルキレン基であり、さらに好ましくは炭素数1〜10の直鎖のアルキレン基である。
【0054】
前記アルキレン基とは、対応する1価の炭化水素基であるアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基などから1つの水素原子を除いた2価の飽和炭化水素基を意味する。
【0055】
また、アルケニレン基とは、対応するアルキレン基の、任意の炭素炭素結合の少なくとも1つが2重結合である2価の脂肪族不飽和炭化水素基を意味する。
<アミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィンの製造方法>
上記式(1)で示されるアミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィンは、対応する下記式(6)で示される末端エポキシ基含有重合体とアミノ酸誘導体とを結合させることにより製造できる。
【0056】
【化18】

【0057】
上記式(6)中、A、Ra、Rbは、式(1)で定義した基と同じである。
当該末端エポキシ基含有重合体は下記式(7)で示される片末端二重結合含有ポリオレフィンをエポキシ化することにより得ることができる。
【0058】
【化19】

【0059】
上記式(7)中、A、Ra、Rbは、式(1)で定義した基と同じである。
この片末端二重結合含有ポリオレフィンは、以下の公知の方法(a1)〜(a4)のいずれかによって製造できる。
【0060】
(a1)特開2000−239312号公報、特開2001−2731号公報、特開2003−73412号公報などに示されているような、サリチルアルドイミン配位子を有する遷移金属化合物を重合触媒として用いる重合方法。
【0061】
(a2)チタン化合物と有機アルミニウム化合物とからなるチタン系触媒を用いる重合方法。
(a3)バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなるバナジウム系触媒を用いる重合方法。
【0062】
(a4)ジルコノセンなどのメタロセン化合物と有機アルミニウムオキシ化合物(アルミノキサン)とからなるメタロセン型触媒を用いる重合方法。
上記(a1)〜(a4)の方法の中でも、とくに(a1)の方法によれば、上記片末端二重結合含有ポリオレフィンを収率よく製造することができる。(a1)の方法では、上記サリチルアルドイミン配位子を有する遷移金属化合物の存在下で、前述したα−オレフィンを重合または共重合することで、主鎖の片方の末端に二重結合を有するポリオレフィンを製造できる。
【0063】
(a1)の方法によるα−オレフィンの重合は、溶液重合、懸濁重合などの液相重合法、または気相重合法のいずれによっても実施できる。詳細な条件などは既に公知であり上記特許文献を参照することで製造可能である。
【0064】
なお、上記片末端二重結合含有ポリオレフィン中の、1H-NMRで測定されたビニル型またはビニリデン型の二重結合の割合(以下、この割合を「片末端ビニル基含有率」と称する。)は、全片末端の70モル%以上であり、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。
【0065】
(a1)の方法によって得られる片末端二重結合含有ポリオレフィンの分子量は、重合系に水素を存在させるか、重合温度を変化させるか、または使用する触媒の種類を変えることによって調節できる。
【0066】
次に、上記片末端二重結合含有ポリオレフィンをエポキシ化して、すなわち上記ポリオレフィンの末端の二重結合を酸化して、上記式(6)で示される、末端にエポキシ基を含有する重合体(末端エポキシ基含有重合体)を得る。なお、上記式(6)中、Aで表されるポリオレフィンセグメントの重量平均分子量は、該末端エポキシ基含有重合体の重量平均分子量から、エポキシ基の2個の水素原子がRaおよびRbで置換されてなる基の分子量
を差し引いた値として求めることができる。
【0067】
上記片末端二重結合含有ポリオレフィンをエポキシ化する方法は特に限定されるものではないが、以下の(b1)〜(b7)の方法を例示できる。
(b1)過ギ酸、過酢酸、過安息香酸などの過酸による酸化。
【0068】
(b2)チタノシリケートおよび過酸化水素による酸化。
(b3)メチルトリオキソレニウム等のレニウム酸化物触媒と過酸化水素による酸化。
(b4)マンガンポルフィリンまたは鉄ポルフィリン等のポルフィリン錯体触媒と過酸化水素または次亜塩素酸塩による酸化。
【0069】
(b5)マンガンSalen等のSalen錯体と過酸化水素または次亜塩素酸塩による酸化。
(b6)マンガン−トリアザシクロノナン(TACN)錯体等のTACN錯体と過酸化水素による酸化。
【0070】
(b7)タングステン化合物などのVI族遷移金属触媒と相間移動触媒存在下、過酸化水素による酸化。
上記(b1)〜(b7)の方法の中でも、反応活性の点からはとくに(b1)および(b7)の方法が好ましい。
【0071】
また、このような方法を採用せず、Mw400〜600程度の低分子量の末端エポキシ基含有重合体として、例えば、VIKOLOX(登録商標、Arkema社製)などの市販品を使用してもよい。
【0072】
アミノ酸誘導体としては、アミノ酸エステルまたはアミノ酸アミドならばどのようなものでも良いが、L−イソロイシンエステル、L−イソロイシンアミド、L−バリンエステル
、L−バリンアミド、L−リジンエステル、L−リジンアミドが好ましい。なお、L−リジンエステル、L−リジンアミドを使用する場合には、側鎖アミノ基をアルキル基またはアシ
ル基で保護しても良い。
【0073】
上記式(6)で示される末端エポキシ基含有重合体とアミノ酸誘導体との反応によるアミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィンの製法としては例えば、以下の3種類((c1)〜(c3))を挙げることができる。
【0074】
(c1)アミノ酸誘導体のアミノ基と末端エポキシ基含有重合体のエポキシ基とを直接反応させる方法。
(c2)アミノ酸誘導体のアミノ基に、エポキシ基と反応する官能基を含有するスペーサーを結合させた後、該官能基と末端エポキシ基含有重合体のエポキシ基とを反応させる方法。
【0075】
(c3)末端エポキシ基含有重合体のエポキシ基をアルコール類またはアミン類と反応させて、下記式(8)で示される水酸基含有ポリオレフィンを製造する。次に、アミノ酸誘導体のアミノ基に、水酸基と反応する官能基を含有するスペーサーを結合させ、該官能基と水酸基含有ポリオレフィンの水酸基とを反応させる方法。
【0076】
【化20】

【0077】
上記式(8)中、A、Ra、Rbは式(1)で定義した基と同じであり、X1、Y1は、いずれか一方が水酸基を表し、他方が−OR1、−NR23(R1〜R3は式(1)と同じで
ある。)を表す。
【0078】
上記方法の内、(c1)の方法は、エポキシ化合物とアミン化合物とを反応させる一般的な公知方法に従い行えばよい。
また、(c2)の方法では、下記式(9)で表される、エポキシ基と反応する官能基を含有するスペーサーをアミノ基に結合したアミノ酸誘導体と、上記式(6)で表される、末端エポキシ基含有重合体とを反応させる。
【0079】
【化21】

【0080】
上記式(9)中、E1、Z、Z2、R4、R5は式(2)で定義した基と同じであり、Z6
はエポキシ基と反応する官能基を表す。
ここで、Z6は、エポキシ基と反応する官能基ならばどのようなものでも良いが、水酸
基、HNR'−(R'は式(2)と同じである。)が好ましい。上記式(9)で表される、エポキシ基と反応する官能基を含有するスペーサーをアミノ基に結合したアミノ酸誘導体と、末端エポキシ基含有重合体とは、エポキシ化合物とアルコール化合物またはアミン化合物とを反応させる公知の方法に従い反応させればよい。
【0081】
なお、上記式(9)で表されるアミノ酸誘導体は、下記式(10)で示されるアミノ酸誘導体と下記式(11)で示される化合物とを公知の方法で反応させることにより容易に製造できる。
【0082】
【化22】

【0083】
上記式(10)中、Z、R4、R5は、式(2)で定義した基と同じである。また、上記式(11)中、E1、Z6は、式(9)で定義した基と同じであり、Z7はアミノ基と反応
する官能基を表す。
【0084】
ここで、Z7はアミノ基と反応し、結合を形成する官能基ならばどのようなものでも良
いが、ハロゲン原子、イソシアネート基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン化カルボニル基、ホルミル基、ハロゲン化カルボニルオキシ基などを挙げることができる。なお、必要な場合には、Z6は保護基で保護されていても良い。
【0085】
また、(c3)の方法では、上記式(8)で表される水酸基含有ポリオレフィンと、下記式(12)で表される、水酸基と反応する官能基を含有するスペーサーをアミノ基に結合したアミノ酸誘導体とを反応させる。
【0086】
【化23】

【0087】
上記式(12)中、E1、Z、Z2、R4、R5は式(2)で定義した基と同じであり、Z8は水酸基と反応する官能基を表す。
ここで、Z8は、水酸基と反応する官能基ならばどのようなものでも良いが、イソシア
ネート基、ハロゲン基等を挙げることができる。
【0088】
なお、上記式(12)で表されるアミノ酸誘導体は、上記式(10)で表されるアミノ酸誘導体と、下記式(13)で表される化合物を公知な方法で反応させることにより容易に製造できる。
【0089】
【化24】

【0090】
上記式(13)中、E1、Z8は式(12)で定義した基と同じであり、Z7は式(11
)で定義した基と同じである。
このように、本発明のアミノ酸誘導体セグメン含有ポリオレフィンは、工業的に製造されている入手可能な原料から簡便な方法で合成できる。
【0091】
<アミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィンのゲル化剤としての用途>
上述した本発明のアミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィンは、広範な種類の液状有機媒体を少量の添加量でゲル化させる作用に優れている。なお、ゲル化剤のうち、媒体を固形状にゲル化するものを固化剤と称する場合もあるが、本明細書においては、固化剤もゲル化剤の一部として記述する。
【0092】
ここでいう液状有機媒体としては、常温(とくに室温)で液状の有機媒体が挙げられ、具体的には、例えば、ガソリン、灯油、軽油、重油等の鉱物油;石油ベンジン、流動パラフィン、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、α−オレフィンオリゴマー等の炭化水素類;クロロベンゼン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;ニトロベンゼン等のニトロ化炭化水素類;ブタノール、ヘキサノール等のアルコール類;ポリオキシブチレンモノブチルエーテル、アルキルジフェニルエーテル、パーフルオロアルキルポリエーテル等のエーテル類;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等の環状エーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アニスアルデヒド等のケトン類;ジメチルホルムアミド(DMF)等のホルムアミド類;ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド類;鯨油、ニシン油等の動物油;大豆油、
オリーブ油、ひまし油、アマニ油、コーン油、ヒマワリ油、ナタネ油、綿実油等の植物油;オレイン酸、リノール酸等のカルボン酸類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、セバシン酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、ポリオキシアルキレングリコール脂肪酸、エステルペンタエリスリトールテトラエステル、トリオレイン、トリカプリリン等のエステル類;メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等のシリコーン油類などが挙げられる。
【0093】
本発明のアミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィンは、このような可燃性および不燃性の有機媒体など、極めて広範な種類の有機媒体のゲル化に有効であり、これらの有機媒体の2種以上が混合されたもの、ならびにこれらの有機媒体を主成分として含む媒体に対しても有効である。
【0094】
本発明のアミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィンのゲル化剤としての具体的な使用態様としては、例えば、上述したアミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィンを上記液状有機媒体に添加し、必要に応じて、50〜120℃程度に加熱し均一状態になるように撹拌した後、常温にて静置することにより、ゲル化物を調製するといった態様が挙げられる。この場合、アミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィンの添加量としては、ゲル化せしめる液状有機媒体の種類にもよるが、液状有機媒体1000重量部に対し、通常は1〜500重量部、好ましくは5〜100重量部、より好ましくは10〜50重量部である。添加量が1重量部より少ない場合には、高粘度液体を得ることができるにすぎない。
【0095】
得られるゲル化物の固さは、該アミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィンの添加量によって所望の範囲に調節できる。
該アミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィンはポリオレフィンセグメントを有していることから、低分子量化合物(とくに低分子量アミノ酸誘導体)を主成分とする従来のゲル化剤とは異なり、使用中に結晶が析出してゲル化能力が低減することがない。また、高分子量体であるため、生体への吸収が極めて少なく、低分子量アミノ酸誘導体を主成分とする従来のゲル化剤の懸念材料の一つである感作性等の問題が無い。したがって、上述のような液状有機媒体を含有する香粧品、医薬品、農薬、接着剤、樹脂、塗料等に添加することより、生体に負の作用を与えることなく安全に、それらの流動性を制御することが可能である。
【実施例】
【0096】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の例中、MwおよびMw/MnはGPCを用い、本文中に記載した方法で測定した。
【0097】
また、融点(Tm)は、DSC(示差走査熱量計;DSC-60、島津製作所製)を用い、昇温レート10℃/minで室温から昇温しながら、測定して得られたピークトップ温度を採用した。
【0098】
[合成例1]
片末端二重結合含有重合体(P−1)の合成
触媒として下記式(14)に示した化合物を使用した。該化合物は特開2003−73412号公報の合成例6に従って合成した。
「〔配位子(L-6)の合成〕充分に乾燥、窒素置換した100mlの反応器に、3−クミ
ル−5−メチルサリチルアルデヒド3.89g(15.0mmol)、トルエン30ml、メチルアミン1.75g(40%水溶液、22.5mmol)を仕込み、室温で5時間攪拌した。この反応溶液を減圧濃縮して、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製す
ることにより、下記式 (L-6)で示される黄色オイル3.87g(収率97%)を得た。1H-NMR(CDCl3):1.69(s,6H),2.34(s,3H),3.33(s,3H),6.93-7.29(m,7H),
8.21(s,1H),13.5(s,1H)
【0099】
【化25】

【0100】
〔下記式(14)で示される化合物の合成〕充分に乾燥、アルゴン置換した100mlの反
応器に、化合物(L-6) 1.12g(4.00mmol)とジエチルエーテル25mlを仕込み、-78℃に冷
却し攪拌した。これにn-ブチルリチウム2.58ml(n-ヘキサン溶液、1.55M、4.00mmol)を5
分かけて滴下し、そのままの温度で2時間攪拌した後、ゆっくりと室温まで昇温し、室温
でさらに3時間攪拌してリチウム塩を調製した。この溶液を、-78℃に冷却したZrCl4(THF)2錯体0.76g(2.00mol)を含むテトラヒドロフラン溶液25mlに滴下した。滴下終了後、ゆっくりと室温まで昇温しながら攪拌を続けた。さらに室温で12時間攪拌した後、反応液を溶媒留去した。得られた固体を塩化メチレン50mlに溶解し、不溶物をガラスフィルターで除去した。ろ液を減圧濃縮し、析出した固体をn-ヘキサンで再沈し、減圧乾燥することにより下記式(14)で示される黄色粉末の化合物を1.10g(収率79%)を得た。1H-NMR(CDCl3):0.86-1.91(m,18H),2.35(s,6H),6.92-7.52(m,14H),7.78(s,2H) FD-質量分析:694」
【0101】
【化26】

【0102】
充分に窒素置換した内容積1000mlのステンレス製オートクレーブに、ヘプタン440mlを装入し、室温でプロピレン100リットル/hrで15分間、液相及び気相を
飽和させた。続いて80℃に昇温した後、温度を保ちながらプロピレンを6.75kg/cm2G(ゲージ圧 0.66MPa)に昇圧し、温度を維持した。続いてエチレンを導入し、全圧を8kg/cm2G(ゲージ圧 0.78MPa)に調整した。修飾メチルアルミノキサン(MMAO;東ソーファインケム社製)のヘキサン溶液(アルミニウム原子換算1.00mmol/ml)0.25ml(0.25mmol)を圧入し、ついで上記式(14)で示される化合物のトルエン溶液(0.0001mmol/ml)1.5ml(0.00015mmol)を圧入し、重合を開始した。エチレンガスを連続的に供給しながら圧力を保ち、80℃で20分間重合を行った後、5mlのメタノールを圧入することにより重合を停止した。
【0103】
得られたポリマー溶液を、少量の塩酸を含む3リットルのメタノール中に加えてポリマーを析出させた。メタノールで洗浄後、130℃にて10時間減圧乾燥した。得られたエチレン−プロピレン共重合は18.19gであり、重合活性は363kg/mmol-Zr・hr、C3含有量は4.0mol%、Mw=1220、Mw/Mn=1.96、密度は0.919g/cm3、融点(Tm)が102℃、1H-NMRで測定したビニル基/ビニレン基/ビニリデン基(モル比)=78/18/4であった。
【0104】
[合成例2]
片末端二重結合含有重合体(P−2)の合成
プロピレン圧を6kg/cm2G(ゲージ圧 0.59MPa)に変えた以外は合成例1と同様に重合を行い、エチレン−プロピレン共重合体である片末端二重結合含有重合体(P−2)34.44gを得た。重合活性は690kg/mmol-Zr・hrであり、C3含有量は2.2mol%、Mw=1360、Mw/Mn=1.97、密度は0.930g/cm3、融点が104℃、1H-NMRで測定したビニル基/ビニレン基/ビニリデン基(モル比)=81/16/3であった。
【0105】
[合成例3]
末端エポキシ基含有重合体(E−1)の合成
500mlセパラブルフラスコに上記片末端二重結合含有エチレン系重合体(P−1)100g(Mn=620として、二重結合161mmol)、トルエン300g、Na2
WO4・2H2O 1.26g(3.8mmol)、CH3(n-C817)3NHSO4 0.89g(1.9mmol)、およびリン酸 0.16g(1.9mmol)を仕込み、撹
拌しながら30分間加熱還流し、重合物を完全に溶融させた。内温を90℃にした後、30%過酸化水素水55g(486mmol)を3時間かけて滴下した後、内温90〜92℃で3時間撹拌した。その後、90℃に保ったまま25%チオ硫酸ナトリウム水溶液51.2g(81.0mmol)を添加して30分撹拌し、過酸化物試験紙で反応系内の過酸
化物が完全に分解されたことを確認した。
【0106】
次いで、内温90℃でジオキサン200gを加え、生成物を晶析させ、固体をろ取しジオキサンで洗浄した。得られた固体を室温下、50%メタノール水溶液中で撹拌、固体をろ取しメタノールで洗浄した。更に当該固体をメタノール400g中で撹拌して、ろ取しメタノールで洗浄した。室温、1〜2hPaの減圧下乾燥させることにより、末端エポキシ基含有重合体(E−1)の白色固体96gを得た(収率99%,オレフィン転化率100%)。
【0107】
この末端エポキシ基含有重合体(E−1)の1H-NMRの測定結果および物性は以下の通りであった。
融点(Tm)=104℃
Mw=1500
Mw/Mn=1.78
1H NMR (C2D2Cl4): δ 0.80 - 0.88 (m), 0.9 - 1.6 (m), 2.37 - 2.40 (1H, dd, J = 2.64, 5.28 Hz), 2.50 (m), 2.66 (1H, dd, J = 3.96, 5.28 Hz), 2.80 - 2.86 (1H, m),
2.94 (m)
得られた末端エポキシ基含有重合体(E−1)は、以下の式(E−1a)、(E−1b
)、(E−1c)で示される3種の重合体の混合物であり、モル比は(E−1a)/(E
−1b)/(E−1c)=78/18/4であった。
【0108】
【化27】

【0109】
(A1a、A1b、A1c:エチレン−プロピレン共重合体(C3含有量4.0 mol%)、A1a:Mw 1457、A1b:Mw 1443、A1c:Mw 1443)
[合成例4]
末端エポキシ基含有重合体(E−2)の合成
合成例2で合成した片末端二重結合含有エチレン系重合体(P−2)を用いた以外、合成例3と同様に行うことにより、末端エポキシ基含有重合体(E−2)を得た(収率99%,オレフィン転化率100%)。
【0110】
融点(Tm)=107℃
Mw=1600
Mw/Mn=1.87
1H NMR (C2D2Cl4): δ 0.80 - 0.88 (m), 0.9 - 1.6 (m), 2.37 - 2.40 (1H, dd, J = 2.64, 4.95 Hz), 2.50 (m), 2.66 (1H, dd, J = 3.96, 5.28 Hz), 2.80 - 2.86 (1H, m),
2.94 (m)
IR (neat) 4322, 4250, 4192, 3603, 2839, 2635, 2345, 2018, 1896, 1719, 1474, 1411, 1129, 1064, 915, 848, 731 cm-1
【0111】
[合成例5]
α−メトキシエトキシ−β−ヒドロキシ重合体(H−1)の合成
500mLセパラブルフラスコにKOH 16g(245 mmol)、メトキシエタノール19g(250 mmol)、トルエン 70gを仕込み、110℃で30分撹拌した。ついで、この溶液に末端エポキシ基含有重合体(E−2) 50g(Mn 855として58 mmol)
を加え、110℃にて8時間撹拌した。その後、1モル/L塩酸水溶液を添加し反応を停止させ、更にアセトンを加えて反応生成物を晶析させた後、固体をろ取した。得られた固体を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液とアセトンの混合溶液で撹拌洗浄し、更にアセトン水溶液で1回、アセトンで2回撹拌洗浄した後、固体をろ取した。その後、室温にて減圧下乾燥させることにより、エポキシ転化率100%で、α−メトキシエトキシ−β−ヒドロキシ重合体(H−1)の白色固体60gを得た。
【0112】
得られたα−メトキシエトキシ−β−ヒドロキシ重合体(H−1)の物性は以下の通りであった。
1H-NMR(C2D2Cl4): 0.80-0.92 (m), 0.9-1.6 (m), 3.30 (dd, 1H, J = 7.6, 9.9 Hz ) 3.33 (s, 3H), 3.40-3.54 (m, 3H), 3.55-3.66 (m, 2H), 3.66-3.76 (m, 1H)
融点 (Tm) = 106℃
得られたα−メトキシエトキシ−β−ヒドロキシ重合体(H−1)は、以下の式(H−1a)、(H−1b)、(H−1c)で示される3種の重合体の混合物であり、モル比は
(H−1a)/(H−1b)/(H−1c)=81/16/3であった。
【0113】
【化28】

【0114】
(A2a、A2b、A2c:エチレン−プロピレン共重合体(C3含有量2.2 mol%)、A2a:Mw 1557、A2b:Mw 1543、A2c:Mw 1543)
【0115】
[実施例1]
<アミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン(A−1)の製造>
(I)N−(6−(ベンジルオキシカルボニルアミノ)ヘキサノイル)−L−イソロイ
シルアミノオクタデカン(16)の合成
1g (2.61mmol)の L−イソロイシルアミノオクタデカン(15)を100mlのナスフラスコに量り取り約10mlのdry THFに溶かし、氷浴中で攪拌した。ここに、0.814g (2.87mmol)の
6−(ベンジルオキシカルボニルアミノ)ヘキサノイッククロリドをサンプル瓶に量り
取りdry THFに溶かしたものを加え、さらに0.44ml (3.13mmol)のdry トリエチルアミンを加えた。氷浴中で1時間、室温で1晩攪拌した。熱ろ過し、ろ液をエバポレーターで減圧乾固させ、約15mlのエタノールと約100mlのジエチルエーテルから再結晶することによりN
−(6−(ベンジルオキシカルボニルアミノ)ヘキサノイル)−L−イソロイシルアミノ
オクタデカン(16)を得た(収量:1.26g、収率:77%)。
FT-IR(HBr);3292cm-1(ν NH, amide)、2918cm-1(ν -CH2-)、1692cm-1(ν C=O, urethane)、1635cm-1(ν C=O, amideI)、1542cm-1(δ NH, amideII)
【0116】
【化29】

【0117】
(II)アミノ酸誘導体(17)の合成
1g (1.59mmol)のN−(6−(ベンジルオキシカルボニルアミノ)ヘキサノイル)−L−イソロイシルアミノオクタデカン(16)を50mlのナスフラスコに量り取り、0.40ml(2.8
8mmol)の2−メトキシエタノールに溶かした。ついで、100mlのビーカーに2−メトキシ
エタノールを入れ、窒素気流下でパラジウム炭素を加えた。上記50mlのナスフラスコにこれを加えて、攪拌しながら水素を添加した。約6時間攪拌した後、シリカゲルTLCで反応が完了していることを確認し、ろ過してパラジウム炭素を取り除いた。ろ液を回収し、エバポレーターで溶媒を除去し、約10mlのTHFと約50mlのヘキサンとの混合溶液から再結晶を
行い、アミノ酸誘導体(17)を得た(収量:0.5g、収率:63%)。
【0118】
FT-IR(HBr);3290cm-1(ν -NH, amide)、2919 cm-1(ν -CH2-)、2850 cm-1(ν -CH2-)
、1636cm-1(ν C=O, amideI)、1545cm-1(δ -NH, amideII)
【0119】
【化30】

【0120】
(III)アミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン(A−1)の合成
100mlナスフラスコに合成例3で得られた末端エポキシ基含有重合体(E−1)1.2g(1mmol)、脱水トルエン30mlを加え、加熱溶解させたのち、アミノ酸誘導体
(17)0.5g(1mmol)を加え溶解させ、12時間加熱還流した。トルエンを濃縮後
、アセトンでリスラリーし、不溶成分をろ取し乾燥させたところ、アミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン(A−1)が1.63g得られた。
【0121】
FT-IR (KBr/cm-1) : 3289 (ν-NH, amide), 2918 (ν-CH2-), 2849 (ν-CH2-), 1634 (δ-NH, amine), 1560 (δ-NH, amide)
アミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン(A−1)の構造式として、末端エポキシ基含有重合体(E−1a)由来の構造を以下に示すが、アミノ酸誘導体セグメント含有
ポリオレフィン(A−1)は、下記構造式のもの以外に(E−1b)、(E−1c)由来のものを含む混合物であった。なお、下記式中、A1aは合成例3で示したものと同じである。
【0122】
【化31】

【0123】
[実施例2]
<アミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン(A−2)の製造>
(I)アミノ酸誘導体(18)の合成
200mlビーカーに10 g (0.026 mol)のL−イソロイシルアミノオクタデカン(15)をはかり取り、150 ml のクロロホルムと50 ml の THFに加熱溶解した。
【0124】
ついで、1 Lナスフラスコに42 ml (0.26 mol) の1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートをはかり取り、400 ml のクロロホルムを加えた。これを撹拌しながら、このなかに
、200 ml滴下ロートにてL−イソロイシルアミノオクタデカン溶液を滴下した。溶液がゲ
ル化したら加熱溶解し、再び滴下した。すべて滴下し終えたら減圧濃縮し、500 ml の石
油エーテルを加え、析出した結晶を細かく砕いた。この結晶をジエチルエーテルで洗いながら吸引ろ過し、真空ポンプにて一晩減圧乾燥することによってアミノ酸誘導体(18)を得た(収量:12.17g、収率: 85%)。
【0125】
FT-IR (KBr法): 3335 cm-1 (υ N-H, urea), 3275 cm-1 (υ N-H, amide A), 2274 cm-1 (υ C≡N, NCO), 1626 cm-1 (υ C=O, amideI), 1570 cm-1 (δ N-H, amideII).
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS, 25℃): δ=0.86-0.92 (m, 9H; CH3), 1.25 (br, 38H; alkyl), 1.55-1.64 (m, 4H; CH2CH2NHCOCH), 1.74-1.80 (br, 1H; CH3CH(CH3CH2)), 3.10-3.19 (m, 2H; NHCONHCH2), 3.27-3.30 (m, 4H; CH2NHCOCH, CH2NCO), 4.02 (t, J = 8.3 Hz, 1H; COCHNH), 4.92 (t, J = 5.3 Hz, 1H; NHCONHCH2), 5.44 (d, J = 8.6 Hz, 1H; NHCONHCH2), 6.17 (t, J = 6.2 Hz, 1H; NHCOCH).
【0126】
【化32】

【0127】
(II)アミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン(A−2)の合成
100mlナスフラスコに、合成例5で得られたα−メトキシエトキシ−β−ヒドロキシ重合体(H−1)1.2g(1mmol)、脱水トルエン30mlを加え加熱溶解させたの
ち、アミノ酸誘導体(18)0.5g(1mmol)を加え溶解させ、12時間加熱還流した
。トルエンを濃縮後、アセトンでリスラリーし、不溶成分をろ取し乾燥させたところ、アミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン(A−2)が1.63g得られた。
【0128】
FT-IR (KBr/cm-1) : 3243 (ν-NH, amide), 2918 (ν-CH2-), 2849 (ν-CH2-), 1685 (δ-NH, amine), 1625 (ν-CO, urea), 1561 (δ-NH, amide II)
アミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン(A−2)の構造式として、α−メトキシエトキシ−β−ヒドロキシ重合体(H−1a)由来の構造を以下に示すが、アミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン(A−2)は、下記構造式のもの以外に(H−1b)、(H−1c)由来のものを含む混合物であった。なお、下記式中、A2aは合成例5で示したものと同じである。
【0129】
【化33】

【0130】
[実施例3]
<アミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン(A−3)の製造>
実施例2において、L−イソロイシルアミノオクタデカン(15)の代わりにL−バリルアミノオクタデカンを用いた以外は同様の反応を行い、アミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン(A−3)を得た。
【0131】
FT-IR (KBr/cm-1) : 3338 (ν-NH, amide), 2918 (ν-CH2-), 2849 (ν-CH2-), 1683 (δ-NH, amine), 1621 (ν-CO, urea), 1569 (δ-NH, amide II)
アミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン(A−3)の構造式として、α−メトキシエトキシ−β−ヒドロキシ重合体(H−1a)由来の構造を以下に示すが、アミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン(A−3)は下記構造式のもの以外に(H−1b)、(H−1c)由来のものを含む混合物であった。なお、下記式中、A2aは合成例5で示したものと同じである。
【0132】
【化34】

【0133】
[実施例4]
<アミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン(A−4)の製造>
実施例2において、L−イソロイシルアミノオクタデカン(15)の代わりに Chemistry Letter, 1070 (2000) に従い合成したNε−ラウロイル−L−リジン エチルエステルを用いた以外は同様の反応を行い、アミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン(A−4)を得た。
【0134】
FT-IR (KBr/cm-1) : 3338 (ν-NH, amide), 2918 (ν-CH2-), 2849 (ν-CH2-), 1730 (ν-CO, ester), 1683 (ν-CO, urethane), 1639 (ν-CO, amide II), 1621 (ν-CO, urea), 1569 (δ-NH, amide II)
アミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン(A−4)の構造式として、α−メトキシエトキシ−β−ヒドロキシ重合体(H−1a)由来の構造を以下に示すが、アミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン(A−4)は下記構造式のもの以外に(H−1b)、(H−1c)由来のものを含む混合物であった。なお、下記式中、A2aは合成例5で示したものと同じである。
【0135】
【化35】

【0136】
[実施例5]
<アミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン(A−5)の製造>
実施例4において原料としてNε−ラウロイル−L−リジン オクチルエステルを用いた以外は同様に反応を行い、アミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン(A−5)を得た。
【0137】
FT-IR (KBr/cm-1) : 3290 (ν-NH, amide), 2918 (ν-CH2-), 2849 (ν-CH2-), 1729 (ν-CO, ester), 1683 (ν-CO, urethane), 1639 (ν-CO, amide II), 1619 (ν-CO, urea), 1566 (δ-NH, amide II)
アミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン(A−5)の構造式として、α−メトキシエトキシ−β−ヒドロキシ重合体(H−1a)由来の構造を以下に示すが、アミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン(A−5)は下記構造式のもの以外に(H−1b)、(H−1c)由来のものを含む混合物であった。なお、下記式中、A2aは合成例5で示したものと同じである。
【0138】
【化36】

【0139】
[実施例6]
<アミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン(A−6)の製造>
実施例4において原料としてNε−ラウロイル−L−リジン ドデシルエステルを用いた以外は同様に反応を行い、アミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン(A−6)を得た。
【0140】
FT-IR (KBr/cm-1) : 3299 (ν-NH, amide), 2920 (ν-CH2-), 2850 (ν-CH2-), 1729 (ν-CO, ester), 1684 (ν-CO, urethane), 1639 (ν-CO, amide II), 1623 (ν-CO, urea), 1566 (δ-NH, amide II)
アミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン(A−6)の構造式として、α−メトキシエトキシ−β−ヒドロキシ重合体(H−1a)由来の構造を以下に示すが、アミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン(A−6)は下記構造式のもの以外に(H−1b)、(H−1c)由来のものを含む混合物であった。なお、下記式中、A2aは合成例5で示したものと同じである。
【0141】
【化37】

【0142】
[実施例7]
<アミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン(A−7)の製造>
実施例4において原料としてNε−ラウロイル−L−リジン オクタデシルエステルを用いた以外は同様に反応を行い、アミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン(A−7)を得た。
【0143】
FT-IR (KBr/cm-1) : 3304 (ν-NH, amide), 2918 (ν-CH2-), 2849 (ν-CH2-), 1728 (ν-CO, ester), 1685 (ν-CO, urethane), 1638 (ν-CO, amide II), 1619 (ν-CO, urea), 1567 (δ-NH, amide II)
アミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン(A−7)の構造式として、α−メトキシエトキシ−β−ヒドロキシ重合体(H−1a)由来の構造を以下に示すが、アミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン(A−7)は下記構造式のもの以外に(H−1b)、(H−1c)由来のものを含む混合物であった。なお、下記式中、A2aは合成例5で示したものと同じである。
【0144】
【化38】

【0145】
[実施例8〜14]
実施例1〜7で合成した各アミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン(A−1)〜(A−7)(表1では単に(A−1)〜(A−7)と表記した。)40mgを、それぞれ、ふた付き試験管に秤量して入れ、さらに各有機媒体1mlを加え、ふたをして完全に溶解するまで加熱した。溶解後、25℃の恒温槽に2時間静置し、様子を観察した。ゲルが不完全な場合は、アミノ酸誘導体含有ポリオレフィンを追加した。ただし、使用したアミノ酸誘導体含有ポリオレフィンの最大量は有機媒体1ml当たり100mgまでとした。
【0146】
その結果を表1に各有機媒体に対するゲル化能の有無として示す。なお、表記は以下の通りとする。
ゲル化したもの:Gel
ゲル化しないもの:
S:溶解、I:不溶、V:増粘、P:一部ゲル化、L:ルーズゲル(流動性有り)
【0147】
【表1】

【0148】
また、上述した条件に従いアミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン(A−6)の添加によって得た、クロロベンゼンのゲル化物を、室温で保存し、様子を観察したところ、ゲル化物は3ヶ月経過後もゲルの状態を保っていた。一方、比較対照として、(A−6)の合成原料である下記式で示される低分子化合物を使用して、上記と同様の条件でクロロベンゼンに添加したところ、クロロベンゼンをゲル化したものの、そのゲル化物は1ヵ月後には結晶化し、ゲルは崩壊した。
【0149】
【化39】

【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明のアミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン、すなわち、アミノ酸誘導体セグメントを有するポリオレフィンは、工業的に製造されている入手可能な原料から簡便な方法で合成でき、広範な種類の液状有機媒体を少量の添加量でゲル化させる作用が優れて
おり、これらの有機媒体を含有する香粧品、医薬品、農薬、接着剤、樹脂、塗料等に添加することより流動性を制御して、その機能を改善することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示されるアミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン;
【化1】

(式(1)中、Aは、炭素数2〜20のα−オレフィンの(共)重合体セグメントであって重量平均分子量が400〜30,000のものを表し、Ra、Rbは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜18のアルキル基もしくはアラルキル基を表す。X、Yは、いずれか一方が−OR1、−NR23(R1〜R3は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜3
0の炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。)を表し、他方は下記式(2)で示される基を表す。)
【化2】

(式(2)中、R4は、炭素数1〜4の分岐または直鎖のアルキル基、あるいは該アルキ
ル基の1以上の水素原子が、フェニル基、アルキルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基および-NR67(R6、R7は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜30
の炭化水素基またはアシル基を表す。)で示される基で置換された基を表し、Zは酸素原子、−NR'−(R'は水素原子、炭素数1〜30のアルキル基を表す。)を表し、R5
炭素数1〜30の炭化水素基を表し、Eは直結または下記式(3)で示される基を表す。)
【化3】

(式(3)中、Z1は、酸素原子、−NR'−(R'は水素原子、炭素数1〜30のアルキ
ル基を表す。)または下記式(4)で示される基を表し、Z2は、直結または下記式(5
)で示される基を表し、E1は、直結または炭素数1〜30の2価の炭化水素基を表す。

【化4】

(式(4)中、Z3は酸素原子、−NR'−(R'は水素原子、炭素数1〜30のアルキル
基を表す。)を表し、Z4は、直結、酸素原子または−NR'−(R'は水素原子、炭素数
1〜30のアルキル基を表す。)を表す。)
【化5】

(式(5)中、Z5は、直結、酸素原子または−NR'−(R'は水素原子、炭素数1〜3
0のアルキル基を表す)を表す。)。
【請求項2】
前記式(2)で示される基が、下記式(2a)であることを特徴とする請求項1に記載のアミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン;
【化6】

(式(2a)中、EおよびR5は、式(2)で定義した基と同じであり、R8は、メチル基またはエチル基を表す。)。
【請求項3】
前記式(2)で示される基が、下記式(2b)であることを特徴とする請求項1に記載のアミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン;
【化7】

(式(2b)中、EおよびR5は、式(2)で定義した基と同じであり、R9は、炭素数1〜30の炭化水素基またはアシル基を表す。)。
【請求項4】
前記式(1)中のAが、エチレン−プロピレン共重合体セグメントを表すことを特徴とする請求項1に記載のアミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィン。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のアミノ酸誘導体セグメント含有ポリオレフィンを少なくとも1種含有することを特徴とする有機媒体のゲル化剤。

【公開番号】特開2007−297426(P2007−297426A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−124211(P2006−124211)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【Fターム(参考)】