アミロイド結合性金属キレート剤
本発明は、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態の診断、予防および処置に関する。アミロイド沈着物に対して高い親和性を示す二機能性の治療用分子および造影画像化剤、ならびにそれらの薬学的組成物が記載される。本発明はまた、画像化技術を用いてアミロイド沈着物の存在を検出するため、およびアミロイド関連状態(例えば、アルツハイマー病等)を予防または処置するために、これらの二機能性分子、造影画像化剤、および薬学的組成物を使用する方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(政府の利益)
本明細書において記載される研究は、National Institutes of Health/National Institute of Mental Healthによって資金提供された(助成金番号5K01 MH002001−02)。合衆国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0002】
(関連する出願)
本出願は、特許仮出願番号60/441,719(2003年1月22日出願、本明細書において、その全体が参考として援用される)に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
アミロイドーシスは、身体の一以上の器官および組織における、アミロイドと呼ばれるタンパク質様物質の蓄積によって特徴付けられる疾患および障害の群である。アミロイド蓄積は、全身的または局所的に生じ得、正常な生命機能を障害し得、そして器官不全を引き起こし得る。少なくとも15の型のアミロイドーシス(各々が、異なる種類のアミロイドタンパク質の沈着に関連する)が、同定されている。蓄積されたタンパク質の性質および集積の位置は、症状を決定する。これらの症状は、軽度から生命を脅かす程度まで変化し得る。アミロイド沈着は、アルツハイマー病、成人発症糖尿病、慢性炎症性疾患、透析関連関節症、腫瘍および家族性ニューロパシーのような、臨床状態の病理の重要な部分である。
【0004】
アミロイドーシスにおいて、通常の可溶性および機能性タンパク質の、不溶性βシートに富んだ4次構造への異常なフォールディングおよび重合は、その凝集したタンパク質の細胞からの排出、そして細胞外アミロイド沈着(すなわち、原線維、フィラメント、プラーク、およびもつれ)を形成する。このような転換を起こし得る20種のタンパク質の中で、いくつかは、優先的に脳内に蓄積し、神経変性状態に関連する。これらのタンパク質としては、例えば、プリオンタンパク質(これは、プリオン病に関連する);アミロイドβペプチド(Aβ)(この沈着は、アルツハイマー病、ダウン症候群、レヴィー小体痴呆、アミロイドーシスを伴う遺伝性大脳出血(オランダ型)、グアム・パーキンソン痴呆、および頭部外傷の患者の脳内で見出される)、が挙げられる。
【0005】
アミロイドーシスは、一般的に、まれな病態生理学的状態であるが、アルツハイマー病(AD)は、合衆国で最も一般的な痴呆の形態である。疫学的研究は、80代後半の全ての人々の40%〜50%がADを有すると推測している(D.A.Evansら,JAMA,1989,262:2551−2556;R.Katzman,Neurology,1993,43:13−20)。この疾患の最初の症状は、通常、記憶の欠損であり、言語、認識および運動の障害、そして最終的に精神機能の消失が続き、患者は、非常に衰弱し、毎日の世話を全面的に他の人々に依存するようになる。この悪化は、非可逆性であり、最終的に死をもたらす。個人および家族に対して大きな影響を有することに加えて、ADはまた、主要な公衆衛生上の問題を提起する。National Institute on Agingによると、推定400万人の米国人が、現在この疾患を有し、そして各年でおよそ360,000の新規症例が診断されている。(R.Brookmeyerら,Am.J.Public.Health.1998,88:1337−1342)。AD患者に対する介護の、国の年間での直接的および間接的な費用は、およそ1000億ドルと推定されており(R.L.Ernstら,Arch.Neurol.1997,54:687−693)、ADはまた、社会において重大な経済的負担を生じさせている。
【0006】
アルツハイマー病患者において、アミロイド−βペプチドの凝集は、大脳の脈管構造におけるアミロイド沈着物の形成、および新皮質における老人斑を生じさせる(C.L.Mastersら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1985,82:4245−4249)。診断は、侵襲的な生検なしで確定するのは困難であり、脳組織の剖検を通じて明確に達成されるのみであるので(G.McKhannら,Neurology,1984,34:939−944;D.M.Mann,Mech.Ageing Dev.1985,31:213−255)、ADの研究は、依然として困難な課題であり、これまで、処置および治療の開発は、捕らえどころのないものであった。「認知増強剤」として作用する、種々のFDAが認可した治療(例えば、Aricept(登録商標)、Cognex(登録商標)、Exelon(登録商標)およびMentane(登録商標))は、一部のAD患者においてわずかな軽減を提供する。しかし、これらの薬剤は、この疾患の根本的な経過を変化させず、現在のところ、アルツハイマー病に対する療法または有効な処置は、その発症のいずれの段階においても存在しない。
【0007】
アミロイド蓄積は、ニューロンの細胞死が多い領域に最も集中していることが一貫して見出されている。この関係は、アミロイド−βペプチドが、特定のβ−シート構造で凝集する場合、高いニューロン毒性を得るという事実によって支持される(J.Y.Kohら,Brain Res.1990;533:315−320;B.A.Yanknerら,Science,1990,250:279−282)。増加する証拠は、アミロイド沈着が、AD患者において見られるニューロンの機能障害と密接に関連することを示唆する(J.W.Kelly,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1998,95:930−932)が、毒性およびAβ沈着を引き起こす神経化学的現象の機構は、未だ不明である。
【0008】
遷移金属は、近年、アルツハイマー病の病原において重大な役割を果たすことみなされている(C.S.Atwoodら,Met.Ions Biol.Syst.,1999,36:309−364;A.I.Bush,Curr.Opin.Chem.Biol.2000,4:184−191)。マウスおよびヒトにおいて、鉄および銅のレベルが、脳を含むいくつかの組織において正常な加齢とともに増加することが示された(H.R.Massieら,Mech.Ageing Dev.1979,10:93−99;B.Drayerら,Am.J.Roentgenol.1986,147:103−110;G.Bartzokisら,Magn.Reson.Imaging 1997,15:29−35;L.Del Corsoら,Panminerva Med.2000,42:273−277)。遷移金属の不均衡はまた、AD患者の脳において観察されており(J.R.Connorら,J.Neurosci.Res.1992,31:327−335;D.A.Loefflerら,Brain Res.1996,738:265−274;M.A.Deibelら,J.Neurol.Sci.1996,143:137−142;R.Cornetら,Neurotox.1998,19:339−345)、ここで、亜鉛、銅および鉄は、アミロイドプラーク内およびアミロイドプラークの周辺に集中して見出される(M.A.Lovellら,J.Neurol.Sci.1998,158:47−52)。さらに、アミロイド−βペプチドは、遷移金属イオンに高い親和性を示し、AβへのZn2+の結合、およびより低い程度でCu2+およびFe3+の結合は、その凝集およびアミロイド沈着物の形成を顕著に増加させる(A.I.Bushら,Science,1994,265:1464−1467)。どちらのプロセス(凝集および沈着)も、金属キレート剤の存在によって逆転され得る(X.Huangら,J.Biol.Chem.1997,272:26464−26470;C.S.Atwoodら,J.Biol.Chem.1998,273:12817−12826;R.A.Chernyら,J.Biol.Chem.1999,274:23223−23228)。
【0009】
タンパク質凝集およびアミロイド蓄積の促進に加えて、レドックス活性遷移金属(すなわち、Cu2+およびFe3+)のAβへの結合はまた、活性酸素種の生成を引き起こす(X.Huangら,J.Biol.Chem.1999,274:37111−37116;X.Huangら,Biochem.1999,38:7609−7616;L.M.Sayreら,J.Neurochem.2000,74:270−279)。この活性酸素種の生成は、多様な生体分子に対して有害な作用を有することが知られている。生体金属媒介性およびアミロイド媒介性の活性酸素種の生成は、少なくとも部分的に、AD患者の脳で観察される酸化的ストレスの原因であると考えられている(M.A.Pappollaら,Am.J.Pathol.1992;40:621−628;W.R.Markesbery,Free Radic.Biol.Med.1997,23:134−147;P.Gabbitaら,J.Neurochem.1998,71:2034−2040;M.A.Smithら,Antioxid.Redox Signal,2000,2:413−420;M.P.Cuajungcoら,J.Biol.Chem.2000,275:19439−19422)。
【0010】
遷移金属イオンがアルツハイマー病の病理学的作用のいくつかにおける役割を果たし得るという発見は、診断法および治療的処置の開発のための新しい経路を提供した。例えば、米国特許第6,323,218号において、金属キレーターまたは金属錯化化合物(例えば、EDTA、バソフェナントロリン(bathophenanthroline)、バソクプロリン(bathocuproine)、およびペニシラミン)は、アミロイドーシスに関連する病態生理学的状態の処置のための治療法として記載される。近年、クリオキノール(経口の、生体利用可能な金属キレーター)が、アルツハイマー病のためのTg2576トランスジェニックマウスモデルにおいて、大脳皮質アミロイド蓄積の顕著な阻害を誘導することが、示された(R.A.Chernyら,Neuron.2001,30:665−676)。これらの研究の結果は、有望であり、そして金属キレーターがアミロイド蓄積に関連する状態の処置のための治療的価値があるかもしれないことを示唆するが、多くの非特異的金属キレーターは、他の金属を必要とする生物分子の正常な生理学的機能を混乱させ得るので、それらの潜在的な副作用は、臨床的使用のためにはあまりにも大きいことが判明する可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、一般的なアミロイドーシス、および特にアルツハイマー病の、早期診断、予防、ならびに処置のための有効な治療剤および方法の開発が、依然として非常に望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
本発明は、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態の診断、予防および処置に関する。特に、本発明は、アミロイド沈着の存在を検出するため、ならびにアミロイド関連状態を予防または処置するための試薬および戦略を包含する。特定の好ましい実施形態において、本発明は、脳におけるアミロイドおよびアミロイド様タンパク質の凝集および蓄積に関連する病態生理学的状態の、診断、予防および処置を可能にする。
【0013】
一局面において、本発明は、金属キレーターとして作用し、そしてアミロイド沈着に対してある程度の誘引力を示す標的化治療試薬を提供する。より具体的には、本発明は、少なくとも一つのアミロイド結合部分に結合した少なくとも一つの金属キレート部分を含む、二機能性分子を提供する。好ましくは、上記アミロイド結合部分は、Aβアミロイド沈着物に対して高い親和性および特異性を示す。特定の好ましい実施形態において、上記アミロイド結合部分は、血液脳関門透過性である。例えば、特定のこのような実施形態において、上記アミロイド結合部分は、ベンゾチアゾール誘導体であり得る。他の好ましい実施形態において、上記金属キレート部分は、生物学的に関連のある遷移金属イオン(例えば、亜鉛(II)(Zn2+)、銅(II)(Cu2+)、および鉄(III)(Fe3+))と高親和性で結合する。例えば、このような実施形態において、上記金属キレート部分は、DTPAまたはα−リポ酸誘導体であり得る。
【0014】
本発明の好ましい二機能性分子としては、化合物XH1およびそのアナログが挙げられ、これらの化学構造は、図4に提示される。他の好ましい本発明の二機能性分子としては、化合物XH2およびそのアナログが挙げられ、これらの化学構造は、図6に提示される。
【0015】
別の局面において、本発明は、アミロイド沈着に対してある程度の誘引力を示し、そして画像化技術によって検出可能な標的化試薬を提供する。より具体的には、本発明は、少なくとも一つのアミロイド結合部分と結合した少なくとも一つの画像化部分を含む、造影画像化剤を提供する。特定の好ましい実施形態において、上記アミロイド結合部分は、血液脳関門透過性である。好ましくは、上記アミロイド結合部分は、Aβアミロイド沈着物に対する高い親和性および特異性を示す。例えば、好ましいアミロイド結合部分は、ベンゾチアゾール誘導体であり得る。画像化部分は、画像化技術によって検出される、当該分野で公知の任意の適切な実体であり得る。特定の好ましい実施形態において、上記画像化部分は、検出可能な金属実体に対して錯化される少なくとも一つの金属キレート部分を含む。好ましくは、上記金属キレート部分は、生理学的に受容可能な金属実体に対して錯化される。好ましい実施形態において、上記金属実体は、常磁性金属イオンであり、そして上記造影画像化剤は、磁気共鳴画像法(MRI)によって検出可能である。好ましくは、上記常磁性金属イオンは、ガドリニウム(III)(Gd3+)である。他の好ましい実施形態において、上記金属部分は、放射性核種であり、そして上記造影画像化剤は、単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)によって検出可能である。好ましくは、上記放射性核種は、テクネチウム−99m(99mTc)である。
【0016】
本発明はまた、核磁気共鳴(NMR)によって検出可能な安定常磁性同位体で標識された、少なくとも一つのアミロイド結合部分と結合した、少なくとも一つの金属キレート部分を含む、造影画像化剤を提供する。好ましい実施形態において、上記安定常磁性同位体は、炭素−13(13C)またはフッ素−19(19F)であり;そして上記造影画像化剤は、磁気共鳴分光法(MRS)によって検出可能である。
【0017】
好ましい本発明の造影画像化剤は、本明細書において記載される二機能性分子のガドリニウム(III)(Gd3+)錯体である。
【0018】
別の局面において、本発明は、薬学的組成物を提供する。本発明の薬学的組成物は、少なくとも一種の本発明の試薬またはその生理学的に耐容性の塩、および少なくとも一種の薬学的に受容可能なキャリアを含有する。これらの薬学的組成物において、上記試薬は、その意図される目的を果たすのに十分な量で存在する。より具体的には、本発明は、少なくとも一種の有効量の二機能性分子またはその生理学的に耐容性の塩、および少なくとも一種の薬学的に受容可能なキャリアを含有する薬学的組成物を提供する。画像化有効量の少なくとも一種の造影画像化剤またはその生理学的に耐容性の塩、および少なくとも一種の薬学的に受容可能なキャリアを含有する薬学的組成物もまた提供される。好ましい実施形態において、上記造影画像化剤中の画像化部分は、ガドリニウム(III)(Gd3+)またはテクネチウム−99m(99mTc)に対して錯化された、少なくとも一種の金属キレート部分を含む。他の好ましい実施形態において、上記造影画像化剤の中のアミロイド結合部分は、炭素−13(13C)またはフッ素−19(19F)で標識される。
【0019】
なお別の局面において、本発明は、インビトロまたはインビボにおけるアミロイド毒性を減少または阻害するための方法を提供する。特定の好ましい実施形態において、本発明は、アミロイド蓄積を予防、減速もしくは停止するか;および/またはアミロイド沈着物の溶解を促進、誘導もしくは容易にすることによって、アミロイド毒性の減少または阻害を可能にする。他の好ましい実施形態において、本発明は、アミロイド媒介性の活性酸素種産生を、減少、阻害もしくは妨害することによって、アミロイド毒性の減少または阻害を可能にする。
【0020】
より具体的には、系においてアミロイド毒性を減少または阻害するための方法が提供され、この方法は、上記系と、本発明の二機能性分子もしくはその薬学的組成物とを接触させる工程を包含する。上記系は、アミロイド沈着物を産生および/または含有素し得ることが知られているあらゆる生物学的実体であり得る。例えば、上記系は、細胞、生物学的流体、生物組織または動物であり得る。上記系は、生きている患者に由来し得る(例えば、生検によって得られ得る)か、または死亡した患者に由来し得る(例えば、剖検において得られ得る)。患者は、ヒトまたは別の哺乳類であり得る。好ましい実施形態において、上記細胞、生物学的流体または生体組織は、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態を有すると疑われる患者に由来する。
【0021】
本明細書において、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態を有する患者を処置するための方法が提供され、この方法は、患者に、有効量の本発明の二機能性分子またはその薬学的組成物を投与する工程を包含する。特定の好ましい実施形態において、上記病態生理学的状態は、アミロイド−βペプチドの蓄積に関連する。
【0022】
なお別の局面において、本発明は、系または患者におけるアミロイド沈着物の存在を検出するための方法を提供する。好ましい実施形態において、本発明の方法は、標的化造影画像化剤および画像化技術の使用に基づく。
【0023】
より具体的には、本発明は、系におけるアミロイド沈着物の存在を検出するための方法を提供し、この方法は、上記系と、画像化有効量の造影画像化剤またはその薬学的組成物とを、接触させる工程を包含する。この接触は、好ましくは、上記造影画像化剤と上記系に存在するアミロイド沈着物とを相互作用させる条件下で行われ、これによって、この相互作用が、アミロイド沈着物への造影画像化剤の結合を生じさせる。次いで、上記系に存在するアミロイド沈着物に結合する造影画像化剤は、画像化技術を用いて検出され、そしてこの系の少なくとも一部の一以上の画像が作製される。特定の好ましい実施形態において、本発明の方法は、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態の処置のための潜在的な治療剤を同定するために、使用される。本発明は、本方法によって同定される治療剤を包含する。
【0024】
本発明はまた、患者におけるアミロイド沈着物の存在を検出するための方法を提供する。これらの方法は、患者に、画像化有効量の標的化造影画像化剤またはその薬学的組成物を投与する工程を包含する。投与は、好ましくは、上記造影画像化剤と上記患者に存在するアミロイド沈着物とを相互作用させる条件下で行われ、これによって、この相互作用が、アミロイド沈着物への造影画像化剤の結合を生じさせる。投与後、患者中に存在するアミロイド沈着物に結合する造影画像化剤は、画像化技術を用いて検出され、そしてこの患者の身体の少なくとも一部の一以上の画像が作製される。
【0025】
特定の好ましい実施形態において、系または患者におけるアミロイド沈着物の存在を検出するための本発明の方法は、造影画像化剤を用いて行われ、この造影画像化剤において、画像化部分は、常磁性金属イオンに錯化された少なくとも一種の金属キレート部分を含有し;検出は、磁気共鳴画像法(MRI)によって行われ;そしてMR画像が作製される。好ましくは、上記常磁性金属イオンは、ガドリニウム(III)(Gd3+)である。他の好ましい実施形態において、本発明の方法は、造影画像化剤を用いて行われ、この造影画像化剤において、画像化部分は、放射性核種に錯化された少なくとも一種の金属キレート部分を含有し;検出は、単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)によって行われ;そしてSPECT画像が作製される。好ましくは、上記放射性核種は、テクネチウム−99m(99mTc)である。さらに他の好ましい実施形態において、本発明の方法は、造影画像化剤を用いて行われ、この造影画像化剤において、アミロイド結合部分は、安定常磁性同位体で標識され;検出は、磁気共鳴分光法(MRS)によって行われ;そしてMR画像が作製される。好ましくは、上記安定常磁性同位体は、炭素−13(13C)またはフッ素−19(19F)である。
【0026】
特定の実施形態において、本発明の方法は、患者中のアミロイド沈着物を位置決めするために使用される。他の実施形態において、本発明の方法は、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態を診断するために使用される。なお他の実施形態において、本方法は、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態の進行を追跡するために使用される。さらに他の実施形態において、本方法は、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態のための処置に対する患者の応答をモニタリングするために使用される。
【0027】
本明細書に記載される二機能性治療用分子、標的化造影画像化剤、薬学的組成物、および方法はまた、ヒト以外の哺乳動物に影響を及ぼすアミロイド関連状態を診断、予防または処置するために使用され得る。例えば、それらは、ヒトアミロイドーシスのための動物モデルの症例において、および動物プリオン疾患(例えば、ウシにおけるウシ海綿状脳症;ヒツジにおけるスクレイピー;ミンクにおける伝染性脳症;ならびにミュールジカおよびヘラジカにおける慢性消耗病)において有用であり得る。
【0028】
本発明の他の局面、特徴、および利点は、以下の詳細な説明から明らかとなる。しかし、この詳細な説明および特定の実施例が、本発明の好ましい実施形態を示す一方で、説明のみの目的で示されることを、理解すべきである。
【0029】
(定義)
本明細書を通していくつかの用語が使用され、それらは、以下の段落に定義される。
【0030】
用語「アミロイドーシス」および「アミロイド関連状態」は、本明細書中では相互変換可能に使用される。これらは、ヒトおよび他の哺乳動物に影響を与える任意の病態生理学的な状態をいい、身体の任意の器官または組織におけるアミロイドの細胞外蓄積によって特徴付けられる。アミロイドは、広範な医学的障害に関連するが、原発性疾患としても生じ得る。
【0031】
本明細書中で使用される場合、用語「アミロイド」とは、凝集した(重合体)形態のアミロイドタンパク質をいい、その蓄積により、細胞外アミロイド沈着を生じる。アミロイドタンパク質成分の性質にも関わらず、全てのアミロイドは、以下のいくつかの特徴を共有する:アミロイドは、不溶性βプリーツシート構造を形成し、そのβプリーツシート構造は、コンゴレッドに対して高親和性を有する、アミロイドは、偏光に複屈折を生じ、特徴的なX線回折パターンを生じ、そして、プロテアーゼに対して感受性ではない。
【0032】
本明細書中で使用される場合、用語「アミロイド沈着物」は、細胞外アミロイド蓄積によって形成された任意の不溶性の第四級構造をいう。アミロイド沈着物は、フィブリル、フィラメント、プラークおよびもつれの形態をとり得る。
【0033】
用語「アミロイドタンパク質」および「アミロイドペプチド」は、本明細書中で相互変換可能に使用される。これらは、モノマー(すなわち、凝集していない)形態のアミロイドアミノ酸配列をいう。アミロイド(およびアミロイド様)タンパク質の例としては、アミロイド免疫グロブリン軽鎖(AL、プラズマ細胞疾患と関連し、例えば、骨髄腫(すなわち、骨髄癌)を有する患者に見出される);血清アミロイド関連タンパク質(AAまたはSAP、慢性炎症性状態(例えば、慢性関節リウマチおよび骨髄炎)と関連する);アミロイド−βペプチド(Aβ、神経変性障害(例えば、アルツハイマー病、ダウン症候群、レヴィー小体痴呆、アミロイドーシスを伴なった遺伝性脳出血(オランダ型)およびグアム・パーキンソン痴呆と関連し、脳外傷を有する個体の脳にも蓄積し得る);異常トランスサイレチン(ATTR、家族性アミロイドーシスと関連する);膵島アミロイドポリペプチド(IAPPまたはアミリン、これらは、II型糖尿病を有する患者の膵臓に蓄積する)およびプリオンタンパク質(PrP、プリオン病と関連する)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
用語「アミロイド−βペプチド」、「Aβペプチド」および「Aβ」は、本明細書中で相互変換可能に使用される。これらは、当該分野で、β−タンパク質、β−A4およびA4としても公知である。Aβは、低分子で、可溶性であり、4.3kDaであり、39〜43アミノ酸長のペプチドであり、その配列は、以前に公開されている(C.Hilbichら、J.Mol.Biol.1992、228:460〜473を参照のこと)。本発明において、用語アミロイド−βペプチドは、Aβ1〜43ならびにAβ1〜42、Aβ1〜41、Aβ1〜40およびAβ1〜39を含む。用語「Aβアミロイド」とは、凝集状態のアミロイド−βペプチドをいう。Aβアミロイドの沈着は、例えば、アルツハイマー病を有する患者の脳、ダウン症候群を有する成人患者の脳に見出され、脳外傷を有する個体の脳に見出されることもある。
【0035】
用語「結合親和性」および「親和性」は、本明細書中で相互変換可能に使用され、分子実体間の引力のレベルをいう。親和性は、解離定数(Kd)として、またはその逆に、結合定数(Ka)として定量的に表され得る。本発明の文脈において、二つの型の親和性は、以下:(1)アミロイド結合部分のアミロイド沈着物に対する親和性、および(2)金属キレート部分の遷移金属イオンまたは別の金属実体に対する親和性、と考えられる。
【0036】
用語「アミロイド結合部分」とは、アミロイド沈着物に対する高親和性および高特異性を示す任意の実体をいう。アミロイド結合部分が分子の一部である場合、アミロイド結合部分は、その分子にその特性を与え、そしてその分子は、「標的化」される(すなわち、その分子は、アミロイド沈着物と効率的に相互作用し、効率的に結合する)。アミロイドとアミロイド結合部分との結合は、共有結合、または非共有結合(例えば、疎水性相互作用、静電相互作用、双極子相互作用、ファンデルワールス相互作用、水素結合など)であり得る。最も多い結合は、非共有結合である。
【0037】
本明細書中で化学的部分、薬剤、化合物または分子に適用される場合、用語「金属キレート」および「キレート」は、遷移金属イオンまたは別の金属実体との錯体(一つより多い配位結合を含む)の形成に関与する二つ以上の極性基の存在により特徴付けられた実体の能力をいう。金属キレート剤は、当該分野で公知である。金属キレーターの例としては、バソクプロイン、エチレンジアミン四酢酸、バソフェナントロリン、デスフェリオキサミンおよびクリオキノールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
本発明の文脈中で、用語「二機能性分子」とは、少なくとも一つのアミロイド結合部分に結合した少なくとも一つの金属キレート部分を含み、その結果、二重選択性を示す分子をいう。より詳細には、本発明の二機能性分子は、(1)遷移金属イオンに高親和性で結合し、そして、(2)アミロイド沈着物に対して高親和性および高特異性を示す。金属キレート部分およびアミロイド結合部分は、共有結合または非共有結合によって結合され得る。好ましくは、その結合は、共有結合である。
【0039】
本明細書中で使用される場合、用語「遷移金属イオン」とは、当該分野で遷移金属として公知の元素のイオン形態をいう。より詳細には、本発明の文脈において、三つの生物学的に関連する遷移金属イオンが想定される:すなわち、他に述べない限り、「亜鉛(II)」、「銅(II)」および「鉄(III)」は、それぞれZn2+、Cu2+およびFe3+をいう。
【0040】
本明細書中で使用される場合、用語「造影画像化剤」とは、画像化技術を使用して特異的生物学的要素を検出するために使用され得る任意の実体をいう。本発明の造影画像化剤は、少なくとも一つのアミロイド結合部分と結合した少なくとも一つの画像化部分を含む分子を目的とする。本発明の好ましい実施形態において、造影画像化剤中の画像化部分は、金属実体に錯化した少なくとも一つの金属キレート剤を含む。本発明の他の造影画像化剤は、NMRにより検出可能である安定常磁性同位体で標識した少なくとも一つのアミロイド結合部分に結合した少なくとも一つの金属キレート部分を含む。本発明の造影画像化剤は、インビトロ系、インビボ系、およびエキソビボ系ならびに生きている患者においてアミロイド沈着物を検出するために使用され得る。
【0041】
本明細書中で使用される場合、用語「金属実体」とは、画像化技術(例えば、磁気共鳴画像法(MRI))により検出可能である常磁性金属イオン、または画像化技術(例えば、単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)および陽電子断層撮影法(PET))により検出可能である放射性核種をいう。
【0042】
本明細書中で使用される場合、用語「常磁性金属イオン」とは、金属キレート剤に錯化され得、MRIにより検出可能である生理学的に耐容性の実体をいう。好ましくは、常磁性金属イオンは、ガドリニウム(III)(Gd3+)、クロミウム(III)(Cr3+)、ジスプロシウム(III)(Dy3+)、鉄(III)(Fe3+)、マンガン(II)(Mn2+)およびイッテルビウム(III)(Yb3+)からなる群より選択される。
【0043】
本明細書中で使用される場合、用語「放射性核種」とは、金属キレート剤によって錯化され得、放射性薬学的技術に使用され得る金属元素の放射性同位体をいう。好ましい放射性核種は、テクネチウム−99m(99mTc)、ガリウム−67(67Ga)、イットリウム−91(91Y)、インジウム−111(111In)、レニウム−186(186Re)およびタリウム−201(201TI)である。
【0044】
本明細書中で使用される場合、用語「安定常磁性同位体」とは、核磁気共鳴分光法(MRS)によって検出可能である常磁性核をいう。本発明において使用するための好ましい安定常磁性同位体は、炭素−13(13C)およびフッ素−19(19F)である。
【0045】
本発明の文脈において、用語「レドックス活性遷移金属イオン」とは、遷移金属イオン(例えば、Cu2+およびFe3+)をいい、これらは、アミロイドタンパク質および/またはアミロイド沈着物および酸素(O2)を含む一連の反応に関与することによって(それぞれCu+およびFe2+に)還元され得、そして、活性酸素種の形成を生じ得る。このような反応を受け得ない亜鉛II(Zn2+)は、「レドックス不活性遷移金属イオン」と呼ばれる。
【0046】
本明細書中で使用される場合、用語「活性酸素種」とは、酸素に由来し、一般に生物系に対して毒性であるか、または毒性副生成物を生成する反応に容易に関与するかのいずれかである。活性酸素種としては、スーパーオキシドラジカルアニオン(O2・−)、ヒドロキシルラジカル(・OH)、過酸化水素(H2O2)および一重項酸素(1O2、1Δg)が挙げられる。
【0047】
用語「アミロイド媒介性」は、活性酸素種の産生に適用される場合、アミロイドタンパク質のモノマー形態またはポリマー形態、レドックス活性遷移金属イオンおよび酸素に関与して活性酸素種の形成を生じる、一連のプロセスをいう。
【0048】
「酸化的ストレス」は、活性酸素種のアミロイド媒介性産生により直接的または間接的に引き起こされた系の損傷状態を記載するために本明細書中で使用される、一般的な用語である。酸化的ストレスは、系の抗酸化防御機構が、産生された活性酸素種の有害な作用をもはや阻害し得ない場合に生じ得る。特定の生体分子(例えば、タンパク質、脂質および核酸)に最初に影響を及ぼし得る酸化的ストレスは、最終的には、細胞突然変異、細胞死および組織破壊を生じ得る大規模な細胞損傷を引き起こす。
【0049】
本発明の文脈において、用語「アミロイド毒性」は、アミロイドタンパク質の、βシート構造に凝集した場合の毒性である能力、ならびに/またはアミロイドタンパク質および/もしくはアミロイド沈着物の、広範な生体分子に対して有害な効果を有し、最終的には酸化的ストレスを誘導し得る活性酸素種を生成する能力をいう。
【0050】
用語「予防」は、本明細書中では、アミロイド蓄積と関連する病態生理学的な状態の発症を遅延させるかまたは防止することを目的とした方法を特徴付けるために使用される。用語「処置」は、本明細書中では、(1)アミロイドーシスと関連する状態の発症を遅延させるかもしくは予防すること;または(2)その状態の症状の進行、悪化(aggravation)、もしくは、悪化(deterioration)を減速させるかもしくは停止させること;または(3)その状態の症状の回復をもたらすこと;または(4)その状態を癒させることを目的とする方法を特徴付けるために使用される。処置は、予防(prophylactic)作用または予防(preventive)作用のために、疾患の発症の前に行なわれ得る。処置はまた、疾患の発症のあとにも、治療作用のために行なわれ得る。
【0051】
用語「個体」および「患者」は、本明細書中で、相互変換可能に使用される。これらの用語は、アミロイド蓄積と関連する病態生理学的状態によって影響され得るが、このような疾患を有していても有していなくてもよいヒトまたは別の哺乳動物をいう。
【0052】
本明細書中で使用される場合、用語「系」とは、アミロイド沈着物を生成し、そして/または含み得ることが当該分野で公知である生物学的実体をいう。本発明の文脈において、インビトロ系、インビボ系およびエキソビボ系が想定され;そして、その系は、細胞、生物学的流体、生物組織、または動物であり得る。系は、例えば、生きている患者に由来し得る(例えば、それは、生検によって入手され得る)か、または死亡した患者(例えば、それは、検死で入手され得る)に由来し得る。その患者は、ヒトまたは別の哺乳動物であり得る。
【0053】
本明細書中で使用される場合、用語「生物学的流体」とは、患者によって産生され、患者から得られた液体をいう。生物学的流体の例としては、脳脊髄液(CSF)、血清、尿および血漿が挙げられるが、これらに限定されない。本発明において、生物学的流体は、精製(例えば、限外ろ過またはクロマトグラフィー)によって得られたこのような液体の全画分または任意の画分を含む。
【0054】
本明細書中で使用される場合、用語「生物組織」とは、患者から得られた組織をいう。生物組織は、身体の任意の器官または系(例えば、脳、膵臓、心臓、腎臓、消化管、甲状腺、神経系、皮膚など)の全体または一部であり得る。
【0055】
本明細書中で使用される場合、用語「有効量」とは、意図された目的を満たすのに十分な、本発明の二機能性分子、それらの薬学的組成物の任意の量をいい、その目的とは、例えば、アミロイド蓄積と関連する病態生理学的な状態の発症の遅延もしくは予防;その状態の症状の進行、悪化(aggravation)、もしくは、悪化(deterioration)の減速もしくは停止;その状態の症状の回復をもたらすこと;またはその状態を治癒させることであり得る。その目的はまた、系または患者におけるアミロイドの蓄積を予防、減速もしくは停止させること;系または患者に存在するアミロイド沈着物の溶解を促進、誘導または、他の方法で容易にすること;または活性酸素種のアミロイド媒介性産生を低減し、阻害し、または他の方法で妨害することであり得る。
【0056】
本明細書中で使用される場合、用語「画像化有効量」とは、画像化技術を用いて、系内、または患者内に存在するアミロイド沈着物の検出を可能にするのに十分である、本発明の造影画像化剤、またはそれらの薬学的組成物の任意の量をいう。
【0057】
本明細書中で使用される場合、「薬学的組成物」は、少なくとも一つの本発明の試薬(二機能性治療分子もしくは標的化造影画像化剤)、またはその生理学的に耐容性の塩、および少なくとも一つの薬学的に受容可能なキャリアを含有すると定義される。
【0058】
用語「生理学的に耐容性の塩」とは、生物学的活性および遊離塩基もしくは遊離酸の特性をそれぞれ保持し、そして、生物学的、または他の点で望ましくなくはない任意の酸付加塩または任意の塩基付加塩をいう。酸付加塩は、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など);および有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、ピルビン酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸など)で形成される。塩基付加塩は、無機塩基(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、アルニウム塩など)および有機塩基(例えば、第一級アミンの塩、第二級アミンの塩および第三級アミンの塩、天然に存在する置換アミンを含む置換アミンの塩、環状アミンの塩、ならびに塩基性イオン交換樹脂の塩(例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2−ジメチル−アミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、トリメタミン、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N−エチルピペリジン、ポリアミンなど))で形成され得る。
【0059】
本明細中で使用される場合、用語「薬学的に受容可能なキャリア」は、活性成分の生物学的活性の有効性を妨害せず、投与される濃度において、宿主に対して過度に毒性ではないキャリア媒体をいう。この用語は、溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤などを含む。薬学的に活性な物質に対するこのような媒体および薬剤の使用は、当該分野では周知である(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、E.W.Martin、第18版、1990、Mack Publishing Co.、Easton、PAを参照のこと)。
【0060】
さらなる定義は、詳細な説明を通して提供される。
【0061】
(特定の好ましい実施形態の詳細な説明)
本発明は、アミロイド蓄積と関連する病態生理学的な状態の診断、予防および処置に関連する。特に、本発明は、アミロイド沈着の存在を検出するための試薬および戦略、アミロイド関連状態を予防または処置するための試薬および戦略を含む。特定の好ましい実施形態において、本発明は、脳におけるアミロイドタンパク質およびアミロイド様タンパク質の凝集および蓄積と関連する病態生理学的な状態の診断、予防および処置を可能にする。
【0062】
(I.二機能性治療分子)
本発明の一局面は、新規クラスの標的化治療試薬に関する。
【0063】
正常に加齢した個体およびアルツハイマー患者の脳における生体金属の役割の研究は、より有効な処置の開発に対して新しい方向性を設定する助けとなった。金属キレート分子を使用する遷移金属イオンのレベルの調節は、インビトロにおいてアミロイド沈着物を溶解し、酸化的損傷を防止することが示されている。金属キレーターはまた、トランスジェニックマウスの脳において、アミロイドの負荷を顕著に低減させることが見出されている(R.A.Chernyら、Neuron.2001、30:665〜676)。これらの結果は、非常に見込みがあり、アミロイド関連状態の処置に対するこのようなアプローチの可能性を示す。しかし、最も良く知られている金属キレーターは、非特異的であり、他の金属を必要とする生体分子の正常な生理学的機能を妨害し得、それによって臨床用途に対して非常に大きいことが証明され得る副作用を生じる。
【0064】
本発明は、他の重要な生体分子の作用を乱すことなく、アミロイドタンパク質およびアミロイド沈着物との相互作用から金属イオンを防ぎ得る標的化金属キレート剤が、望ましくない副作用がより少ないことを示すべきであり、そしてアミロイド関連病態生理学的な状態の処置のための治療剤として現在使用されるか、試験されるか、または提案されているほとんどの非特異的金属キレーターより有効であるべきであるという認識を含む。従って、本発明は、(1)アミロイドに対するある程度の誘引力を有し、そして、(2)金属キレーターとして作用するように設計された治療薬を提供する。より詳細には、本発明は、少なくとも一つのアミロイド結合部分に結合した少なくとも一つの金属キレート部分を含む二機能性分子を提供する。
【0065】
(アミロイド結合部分)
アミロイド結合部分は、アミロイド沈着物に対するある程度の誘引力を有する実体であって、二機能性分子中に含まれる場合に標的化する役割を果たし得る。好ましい実施形態において、アミロイド結合部分は、アミロイド沈着物に対して高い親和性および特異性を示す。すなわち、アミロイド結合部分は、アミロイドに特異的および/または有効に相互作用し、結合し、または標識する。インビトロおよびインビボ条件下で結合特性を保持するアミロイド結合部分は、好ましくは、安定かつ無毒性実体である。特定の好ましい実施形態において、アミロイド結合部分は、Aβアミロイドに対して高い親和性および特異性を有する。より詳細には、これらのアミロイド結合実体は、合成Aβペプチドまたはアルツハイマー病脳組織を用いて決定した(実施例の節において記載されるように)場合、Aβに、0.1nMと10μMとの間の解離定数(Kd)で結合する。他の好ましい実施形態において、アミロイド結合部分は、血液脳関門を通過し得る。この性質は、二機能性分子が、脳内における凝集したアミロイドタンパク質およびアミロイド様タンパク質の蓄積によって特徴付けられる神経変性性障害の処置のために、治療剤として使用される場合に特に重要である。
【0066】
アミロイド結合部分とアミロイド沈着物との間の相互作用は、共有結合性または非共有結合性であり得る。ほとんどの場合、アミロイド結合部分とアミロイド沈着物との間の相互作用は、非共有結合性である(以下を参照のこと)。非共有相互作用の例としては、疎水性相互作用、静電相互作用、双極子相互作用、ファンデルワールス相互作用および水素結合が挙げられるが、これらに限定されない。相互作用の性質にかかわらず、アミロイド沈着物と本発明の二機能性分子内のアミロイド結合部分との間の結合は、金属キレート部分がその役割を果たす(すなわち、遷移金属イオンとアミロイドタンパク質および/またはアミロイド沈着物との間の相互作用を防止し、阻害し、または逆転にする)ことが可能であるように十分に選択的、特異的、かつ強固であるべきである。
【0067】
本発明における使用に適したアミロイド結合部分としては、上に列挙した必要条件を満たす任意のアミロイド結合部分が挙げられる。実際は、アミロイド沈着物の生物学的マーカーの開発は、ここ数年間の研究目的であった(W.E.Klunk、Neurobiol.Aging.1998、19:145〜147)、そして現在は、多数のこのような化合物が利用可能である。コンゴレッド(その化学構造は、図1Aに示される)は、数十年間、インビトロにおけるアミロイド沈着物を染色するために使用されてきた(M.Tubisら、J.Am.Pharm.Assoc.1960、49:422〜425;M.Tubisら、Nukl.Med.1962、3:25〜38)。
【0068】
βシート構造に凝集したアミロイドタンパク質に対するコンゴレッドの特異的な親和性を説明するために、いくつかのモデルが提案されている(W.E.Klungら、J.Histochem.Cytochem.1989、37:1273〜1281;W.E.Klunkら、Neurol.Aging、1994、15:691〜698;D.B.CarterおよびK.−C.Chou、Neurol.Aging、1998、19:37〜40)。全ての提案されたモデルにおいて、コンゴレッドのアニオン性スルホン酸基とアミロイドペプチド上の塩基性アミノ酸(例えば、アルギニンおよびリジン)との間の化学量論的かつ飽和性の静電気的な相互作用が、優先的結合において重要な役割を果たしていると考えられている。提案されたモデルのいくつかにおいて、コンゴレッドのビフェニル部分とアミロイドペプチドのフェニルアラニン残基との間の芳香性の相互作用もまた、上記相互作用に関与していると仮定されている。
【0069】
これらのモデルに基づいて、アミロイド沈着物に特異的に結合する分子は、長鎖の、各末端で負に荷電した基を有する複数のフェニル環を保有する共役系である傾向があると結論付けられた。これらの判定基準を使用して、コンゴレッドに関連するビスジアゾベンジジン化合物(例えば、米国特許第4,933,156号;同第5,008,099号;および同第5,039,511号を参照のこと);クリサミン−G(図1Bに提示される)および誘導体(例えば、米国特許第6,114,175号;同第6,133,259号;および同第6,168,776号を参照のこと);(トランス,トランス)−1−ブロモ−2,5−ビス−(3−ヒドロキシカルボニル−4−ヒドロキシ)−スチリルベンゼン(BSB)(図1C)ならびに種々のアナログが、設計され、合成され(N.A.Dezutterら,Eur.J.Nucl.Med.1999,26:1392−1399;D.M.Skovronskyら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,2000,97:7609−7614)、放射標識され、そしてアミロイド沈着物の潜在的なインビトロプローブおよびインビボプローブとして評価されている(W.E.Klunkら,Neurobiol.Aging,1994,15:691−698;W.Zhenら,J.Med.Chem.1999,42:2805−2815;N.A.Dezutterら,J.Nucl.Med.1999,26:1392−1399;D.M.Skovronskyら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2000,97:7609−7614)。これらの分子の全ては、Aβに対して高い親和性および特異性を保有することが見出された。従って、これらの分子の全ては、本発明での使用に適している。しかし、いくつかのこれらの生物学的マーカー上の極性の高い官能基の存在が、脳内へのこれらの侵入を制限することが実証され、そして極性官能基を有さない誘導体のみが、高い脳取り込みを見せることが示された。本発明の二機能性分子の設計は、その意図される目的によって決定付けられ、そしてアミロイド結合部分は、これらの公知の、観察される特性または予期される特性(例えば、これらの血液脳関門透過性)に基づいて選択される。
【0070】
アミロイド結合部分を選択して二機能性治療分子を設計する場合、毒性もまた、考慮すべき因子である。例えば、アゾ染料は、発癌性であることが当該分野で公知である(D.L.Morganら,Environ.Health Perspec.1994,102:63−78)。アゾ染料の潜在的な発癌性は、腸内細菌による、遊離(毒性)親アミンへのこのアゾ染料の大規模な代謝分解に起因すると考えられる(C.E.Cernigliaら,Biochem.Biophys.Res.Comm.1982,107:1224−1229;C.E.Cernigliaら,Carcinogen.1982,3:1255−1260)。毒性の問題を回避するために、アゾ染料(例えば、コンゴレッド、クリサミン−Gおよびアミロイド結合部分としてのそれらの誘導体)を回避すること、ならびに二機能性治療用分子が腸内細菌を回避するように投与経路を選択することが所望され得る。
【0071】
より低分子もまた、アミロイド沈着物に特異的に結合する能力について評価されている。これらの分子としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アントラサイクリン4’−ヨード−4’−デオキシドキソルビシン(図1Dに示される)(これらは、異なる型のアミロイドタンパク質およびアミロイド沈着物に強固に結合することが見出されている)(G.Merliniら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1995,92:2959−2963)、ならびにチアゾール染料(例えば、プリムリン、チオフラビンS、およびチオフラビンT(これらの化学構造は、図1Eに示される))。これらのチアゾール染料は、組織切片中のアミロイドを染色すること、およびインビトロで合成Aβに効率的に結合することが公知である(G.Kelenyi,Histochem.Cytochem.1967,15:172−180;J.Burnsら,J.Pathol.Bacteriol.1967,94:337−344;R.Gunternら,Experientia 1992,48:8−10;H.LeVine,Meth.Enzymol.1999,309:274−284)。興味深いことに、チオフラビンTの複素環からのメチル基の脱離(これは、正電荷を除去する)が、Aβに対する高い親和性および齧歯動物における良好な脳取り込みを有する一連の親油性染料を提供することが、最近示された(W.E.Klunkら,Life Sci.2001,69:1471−1484;Z.P.Zhuangら,J.Med.Chem.2001,44:1905−1914)。
【0072】
特定の好ましい実施形態において、アミロイド結合部分は、アミロイド沈着物に対して高い親和性を示し、かつ、血液脳関門を横断することが可能であると報告されている低分子の誘導体である(D.M.Skovronskyら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,2000,97:7609−7614)。実施例1および実施例9は、少なくとも1つのこのようなアミロイド結合低分子を含む新規二機能性分子の2つのファミリーの合成を記載する。
【0073】
好ましくは、アミロイド結合部分は、アミロイド結合部分を金属キレート部分に共有結合するために使用され得る、少なくとも1つの官能基を含む(または、アミロイド結合部分を金属キレート部分に共有結合するために使用され得る、種々の官能基に容易に化学的に変換される)。適切な官能基としては、アミン(好ましくは一級アミン)、チオール、カルボキシ基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
(金属キレート部分)
金属キレート部分は、高親和性遷移金属イオンと結合し得る実体である。好ましくは、金属キレート部分によって錯化し得る遷移金属イオンは、生体金属である(すなわち、これらは、生物学的に関連性のある遷移金属イオンである)。最も好ましくは、金属キレート部分は、アミロイド沈着物中およびアミロイド沈着物周囲に高度に濃縮して見出される高親和性遷移金属イオンと結合する。特定の好ましい実施形態において、金属キレート部分は、亜鉛(II)(Zn2+)、銅(II)(Cu2+)、および鉄(III)(Fe3+)からなる群より選択される少なくとも1種の遷移金属イオンと高親和性で結合する。好ましくは、金属キレート部分は、インビトロ条件下およびインビボ条件下でそれらの合特性を保持する安定な無毒性実体である。
【0075】
遷移金属イオンをアミロイド関連臨床状態の病理の少なくとも2つの局面に関連付ける実験的証拠が、蓄積する。研究は、(1)遷移金属とアミロイドタンパク質との間の相互作用は、毒性βシート構造へのアミロイドペプチドの凝集および蓄積を促進することによってアミロイド毒性を増強し得ること、そして(2)レドックス活性遷移金属イオンは、活性酸素種の産生を助けることによってアミロイド毒性を増加させ得ることを示す。
【0076】
特に、アミロイド−βペプチドは、選択的な高親和性および低親和性のCu2+結合部位ならびに選択的な高親和性および低親和性のZn2+結合部位を保有すると示されており(A.I.Bushら,J.Biol.Chem.1994,269:12152−12158)、Cu2+、Zn2+およびFe3+を有するAβの相互作用は、このペプチドの凝集および蓄積を促進すると実証されている(A.I.Bushら,J.Biol.Chem.1994,265:1464−1467)。金属キレート剤は合成Aβペプチドの凝集を逆転させ、死後のヒト脳標本においてアミロイドを溶解し(C.S Atwoodら,J.Biol.Chem.1998,273:12817−12826;X.Huangら,J.Biol.Chem.1997,272:26464−26470;R.A.Chernyら,J.Biol.chem.1999,274:23223−23228)、そしてアルツハイマー病のためのTg2576トランスジェニックマウスモデルの脳におけるアミロイド負荷の顕著な阻害を誘発する(R.A.Chernyら,Neuron.2001,30:665−676)という本出願者らの研究室における認識は、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態の処置のための潜在的な治療剤としての、金属キレート剤および金属錯体分子の提唱をもたらした(米国特許第6,323,218号を参照のこと)。
【0077】
遷移金属イオンとアミロイドタンパク質および/またはアミロイド沈着物との間の相互作用を妨害することことによって、金属キレート剤は、アミロイド毒性に対する効果を有し得る。本発明のこの局面に従って、適切な金属キレート部分は、アミロイドタンパク質の凝集および蓄積を予防するか、減速させるか、または停止させることによって、そして/またはアミロイド沈着物の溶解を促進するか、誘発するか、または別の方法で容易にすることによって、アミロイド毒性を減少または阻害し得る実体である。これは、例えば、金属キレート部分が、亜鉛(II)(Zn2+)、銅(II)(Cu2+)、および鉄(III)(Fe3+)からなる群より選択される少なくとも1種の遷移金属イオンと高親和性で結合する場合に達成され得る。
【0078】
細胞傷害を引き起こす酸化ストレスがアルツハイマー病において観察される神経変性に重大であるという証拠が高まっている(R.N.Martinsら,J.Neurochem.1986,46:1042−1045)。タンパク質ならびに核DNAおよびミトコンドリアDNAの酸化の増大が、AD患者の脳において一貫して観察される(P.Gabbitaら,J.Neurochem.1998,71:2034−2040;W.R.Markesbery,Free Radic.Biol.Med.1997,23:134−147;M.P.Cuajungcoら,J.Biol.Chem.2000,275:19439−19442)。さらに、アミロイド−βペプチドは、神経起源の細胞において、および細胞を含まない培地において、活性酸素種の発生を高める能力を有すると実証されている(C.Behlら,Cell,1994,77:817−827;X.Huangら.,J.Biol.Chem.1999,274:37111−37116;X.Huangら.,Biochem.1999,38:7609−7616)。大規模なレドックス化学反応は、AβがCu2+および/またはFe3+に結合し、両金属の酸化状態を還元し、そして触媒的様式においてO2からH2O2を生成する場合に起こることが観察された(X.Huangら,Biochem.1999,38:7609−7616)。銅(400μM)、亜鉛(1mM)および鉄(1mM)の上昇したレベルがAD罹患脳におけるアミロイド沈着物中に見出されるので(M.A.Lovellら,J.Neurol.Sci.1998,158:47−52;M.A.Smithら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1997,94:9866−9868)、アルツハイマー病に観察される酸化ストレスは、Aβの金属結合形態による活性酸素種の産生に関連すると考えられる。この仮説は、AD脳から単離された老人斑および神経原線維もつれが、活性酸素種を生成し得、そして銅および鉄の存在が、反応が起こるために必要であるという最近の観察によって支持される(L.M.Sayreら,J.Neurochem.2000,74:270−279)。
【0079】
レドックス活性金属(例えば、Cu2+およびFe3+)は、活性酸素種の産生をもたらす反応に関与し得る(W.R.Markesbery,Free Rad.Biol.Med.1997,23:134−147)。一連のこのような反応が、以下に示される。アミロイド−βペプチドおよびAβアミロイドは、Cu2+(またはFe3+)を還元する能力を有し、同時にスーパーオキシドラジカルアニオン(O2・−)への分子酸素(O2)の見かけの還元から過酸化水素(H2O2)を形成する。このプロセスにフェントン様反応が続き、ヒドロキシラジカルを生成する。
【0080】
【化17】
上記の活性酸素種に加えて、他のフリーラジカルが形成され得、そして他のフリーラジカルもまた、アミロイドーシスの病理学に寄与する。これらとしては、アミロイドペプチドおよびアミロイド沈着物のラジカル形態、ならびにペルオキシニトライトが挙げられるが、これらに限定されず、このペルオキシニトライトは、例えば、一酸化窒素を有するスーパーオキシドラジカルアニオンの反応によって産生され得る。
【0081】
本発明のこの局面に従って、適切な金属キレート部分は、活性酸素種(スーパーオキシドラジカルアニオン(O2・−)、過酸化水素(H2O2)、ヒドロキシラジカル(・OH)ならびに一重項酸素(1O2)が挙げられる)の生体金属媒介性産生およびアミロイド媒介性産生を減少するか、阻害するか、または別の方法で妨害することによって、アミロイド毒性を減少または阻害し得る実体である。これは、二機能性分子における金属キレート部分が、銅(II)(Cu2+)および鉄(III)(Fe3+)からなる群より選択される少なくとも1つの高親和性レドックス活性遷移金属イオンと結合する場合に達成され得る。
【0082】
本発明での使用に適切な金属キレート部分は、高親和性遷移金属イオンと結合することが公知の、任意の多くの金属キレーターおよび金属錯体分子であり得る。これらとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:芳香族アミン(例えば、バソフェナントロリン(4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、この化学構造は、図2Aに示される));バソクプロイン(2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、図2B)、およびTPEN(テトラキス−(2−ピリジルメチル)エチレンジアミン、図2I);ならびに脂肪族アミン(例えば、デフェリオキサミン(図2C)、ペニシラミン(2−アミノ−3−ペルカプト−3−メチルブタン酸、図2D)、EDTA(エチレンジアミン−四酢酸、図2E)、EGTA(O,O’−ビス(2−アミノエチル)−エチレングリコール−N,N’,N’’,N’’’−四酢酸、図2F)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸、図2G)、およびTETA(トリエチレンテトラミン、図2H));ならびにこれらの官能性誘導体、ホモログおよびアナログ。
【0083】
αリポ酸誘導体は、本発明の実施において使用され得る金属キレート剤の別のファミリーを構成する。金属キレート特性を示すことに加えて、αリポ酸誘導体はまた、強力な抗酸化活性を有する(概説については、例えば、H.Moiniら,Toxicol.Appl.Pharmacol.2002,182:84−90;またはG.Biewengaら,Gen.Pharmac.1997,29:315−331を参照のこと)。αリポ酸の抗酸化作用は、神経組織および非神経組織の両方において実証されている(M.A.Lynch,Nutr.Neurosci.2001,4:419−438)。インビトロでの、動物の研究および予備的なヒトの研究からの結果は、リポ酸は、多数の神経変性障害に有効であり得ると示す(L.Packerら,Free Radic.Biol.Med.1997,22:359−378)。特に、αリポ酸は、AD患者の死後ヒト脳における神経性アミロイド負荷を減少させることに効果的であり(J.Fonteら,J.Alzheimer Dis.2001,3:209−219)、老齢マウスにおける記憶障害および脳酸化ストレスを逆転させる(S.A.Farrら,J.Neurochem.2003,83:1173−1183)と示されている。
【0084】
αリポ酸誘導体によって示されるさらなる(すなわち、抗酸化)特性(他の金属キレート剤と比較して)は、種々の機構を経てαリポ酸がその抗酸化効果を発揮し得るように二機能性分子の作用範囲を広げることが期待され、この機構としては、金属イオンをキレートすることによる機構、活性酸素種(ROS)もしくは他のラジカルを捕捉することによる機構、内因性抗酸化剤(例えば、ビタミンC、ビタミンEおよびグルタチオン)を再生成することによる機構、ならびに/または酸化傷害を修復することによる機構が挙げられる。
【0085】
本発明の二機能性分子の詳細な設計は、その意図される目的によって影響を受け、そして金属キレート部分は、それらの公知の特性、観察される特性または期待される特性に基づいて選択される。アミロイドタンパク質の凝集を妨害するための、およびアミロイド沈着物の溶解を促進するための好ましい金属キレート部分としては、DTPA、バソクプロイン、バソフェナントロリン、ペニシラミン、ならびにこれらの誘導体、ホモログおよびアナログ、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。活性酸素種の生体金属媒介性産生およびアミロイド媒介性産生を妨害するための好ましい金属キレート部分としては、バソクプロイン、バソフェナントロリン、αリポ酸、ならびにこれらの誘導体、ホモログおよびアナログ、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0086】
2つの同一アミロイド結合部分(ベンゾチアゾール誘導体)に共有結合した、金属キレート部分としてDTPAを含有する新たな二機能性分子の第1のファミリーが開発されており、それらの合成、特性および用途は、実施例の節に記載される(実施例1および実施例4〜6を参照のこと)。金属キレート部分として作用し、1つのアミロイド結合部分に共有結合した、(第1のファミリーで使用されるものと同じベンゾチアゾール誘導体から選択される)、αリポ酸を含有する二機能性分子の第2のファミリーの合成が、実施例9に記載される。
【0087】
好ましくは、金属キレート部分は、アミロイド結合部分を金属キレート部分に共有結合するために使用され得る、少なくとも1つの官能基を含む(または、アミロイド結合部分を金属キレート部分に共有結合するために使用され得る、種々の官能基に容易に化学的に変換される)。適切な官能基としては、アミン(好ましくは一級アミン)、チオール、カルボキシ基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
(二機能性分子の合成)
本発明の二機能性分子は、当該分野で公知の任意の合成法によって調製され得、この方法で唯一必要なことは、反応後に、アミロイド結合部分および金属キレート部分が、それらの結合特性およびキレート特性をそれぞれ維持することである。アミロイド結合部分は、種々の方法で金属キレート部分と結合され得る。好ましくは、アミロイド結合部分は、金属キレート部分に共有結合される。当業者に認識され得るように、アミロイド結合部分および金属キレート部分は、直接的にまたはリンカーを通してのいずれかで、互いに結合され得る。
【0089】
特定の好ましい実施形態において、金属キレート部分およびアミロイド結合部分は、互いに直接的に共有結合される。直接共有結合は、アミド結合、エステル結合、炭素−炭素結合、ジスルフィド結合、カルバメート結合、エーテル結合、チオエーテル結合、尿素結合、アミン結合、または炭酸結合を通してであり得る。共有結合は、アミロイド結合部分および金属キレート部分上に存在する官能基を利用することによって達成され得る。2つの部分を一緒に結合することに使用され得る適切な官能基としては、アミン(好ましくは一級アミン)、無水物、ヒドロキシ基、カルボキシ基、およびチオールが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、実施例1に記載されるように、アミド結合は、アミロイド結合部分上に存在する一級アミノ基と金属キレート部分上の無水物官能基との間の反応によって形成され得る。直接結合はまた、活性化剤(例えば、カルボジイミド)を使用して、例えば、1つの部分上に存在する一級アミノ基をもう1つの部分上に存在するカルボキシ基に結合することによって形成され得る。広範囲の活性化剤が、当該分野で公知であり、本発明での使用に適切である。
【0090】
他の好ましい実施形態において、金属キレート部分およびアミロイド結合部分は、リンカー基を介して互いに間接的に共有結合される。これは、当該分野で周知の任意の数の安定な二機能性薬剤を使用することによって達成され得、この二機能性薬剤は、同種官能性リンカーおよび異種官能性リンカーを含む(例えば、Pierce Catalog and Handbook,1994を参照のこと)。二機能性リンカーの使用は、活性化剤の使用とは異なる。この違いは、前者は、反応後に本発明の二機能性分子中に存在する結合部分をもたらし、一方後者は、反応に関与する2つの部分間の直接結合をもたらすというという点においてである。二機能性リンカーの主な役割は、2つの他の点で化学的に不活性な部分間の反応を可能にすることである。しかし、反応生成物の一部となる二機能性リンカーはまた、この二機能性リンカーが二機能性分子にある程度の構造の柔軟性を与えるように選択され得る(例えば、二機能性リンカーとしては、いくつかの原子を含有する直鎖状アルキル鎖が挙げられ、例えば、この直鎖状アルキル鎖は、2個と10個との間の炭素原子を含む)。
【0091】
当該分野で公知の、広範な適切な同一官能性リンカーおよび異種官能性リンカーは、本発明の状況下で使用され得る。好ましいリンカーとしては、アルキル基およびアリール基(直鎖状および分枝鎖状のアルキル基を含む)、置換アルキル基および置換アリール基、ヘテロアルキル基およびヘテロアリール基(反応性化学官能基(例えば、アミノ基、無水物基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基など)を有する)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
当業者に容易に認識され得るように、本発明の二機能性分子は、任意の数の異なる方法によって互いに結合される、任意の数のアミロイド結合部分および任意の数の金属キレート部分を含み得る。本発明の二機能性分子内のアミロイド結合部分は、同一であり得るか、または別々であり得る。同様に、本発明の二機能性分子内の金属キレート部分は、同一であり得るか、または別々であり得る。二機能性治療分子の詳細な設計は、その使用の特定の状況において所望される、その意図される目的および特性よって影響を受ける。
【0093】
(II.標的化造影画像化剤)
本発明の別の局面は、標的化造影画像化剤の新たな分類に関する。
【0094】
上で既に述べられたように、アミロイドーシスの診断は、生検サンプルまたは組織サンプルの組織病理学に現在のところ関する。アミロイドの存在は、代表的には、コンゴレッドでの染色後に交差偏光下で検出される、青リンゴ色の複屈折によって決定される。しかし、罹患した器官の生検は、合併症を免れず、そしてアミロイド沈着物の程度または分布を十分には明らかにし得ない(C.FrimanおよびT.Pettersson,Curr.Opin.Rheumatol.1996,8:6−71)。アルツハイマー病の場合は、アミロイド沈着物は、死亡後に評価され得るのみである。これは、疾患の研究およびより効果的な治療法の開発への主な障害を構成する。
【0095】
アミロイドーシスの診断のための理想的なプローブは、アミロイドに対して高い親和性および特異性を有し、低い毒性を示し、そして患者におけるアミロイド沈着物の検出、位置測定、および定量を可能にするものである。アルツハイマー病、および脳におけるアミロイド(またはアミロイド様)タンパク質の凝集および蓄積に関連する他の神経変性障害の診断のために、理想的なプローブはまた、血液脳関門透過性であるべきであり、そして生存患者の脳におけるアミロイド沈着物の非侵襲的な検出、位置測定、および定量を可能にするべきである。
【0096】
本発明は、上に列挙した基準のいくつかを満たす、標的化された、検出可能な試薬に関する。従って、本発明は、(1)アミロイドに対してある程度の誘引力を有するように、そして(2)映像技術によって検出可能なように設計される、標的化造影画像化剤を提供する。より詳細には、本発明は、少なくとも1つのアミロイド結合部分に結合する少なくとも1つの画像化部分を含有する、造影画像化剤を提供する。
【0097】
(アミロイド結合部分)
本発明の造影画像化剤中のアミロイド結合部分は、上記の二機能性治療分子中以外でも、同じ役割を果たす:これらは、アミロイドに対してある程度の誘引力を示す標的する実体であり、すなわちこれらは、特異的におよび/または効果的に、アミロイド沈着物と相互作用するか、アミロイド沈着物に結合するか、またはアミロイド沈着物を標識する。従って、造影画像化剤の設計および開発での使用に適切なアミロイド結合部分は、二機能性治療剤に関して上に列挙されるアミロイド結合部分と同一である。
【0098】
特定の好ましい実施形態において、本発明の造影画像化剤中のアミロイド結合部分は、アミロイド沈着物に対して高い親和性および特異性を示す。他の好ましい実施形態において、アミロイド結合部分は、Aβアミロイドに対して高い親和性および特異性を有する。さらに他の好ましい実施形態において、アミロイド結合部分は、血液脳関門を通過することが可能であり、これは、上記のように、この造影画像化剤が、脳に局在化したアミロイド沈着物のインビボ生物学的マーカーとして使用されることが意図される場合、重要な特性である。
【0099】
上記の特定のアゾ染料の潜在的な発癌性は、アミロイドの画像化研究の場合ではあまり関係性がない。なぜなら、非常に微小な、無視できる量の高度に特異的なアミロイド結合部分は、いつでも、腸内細菌と接触するからである。
【0100】
(画像化部分)
本発明の状況において、画像化部分は、画像化技術(例えば、磁気共鳴画像法(MRI)、磁気共鳴分光法(MRS)、単一光子放射コンピュータ断層法(SPECT)および陽電子放射断層法(PET))によって検出可能な実体である。好ましくは、画像化部分は、安定な、インビトロおよびインビボ条件下でそれらの特性を保持する無毒性実体である。
【0101】
(MRI画像化部分)
特定の好ましい実施形態において、本発明の造影画像化剤は、磁気共鳴画像法によって検出可能なように設計される。
【0102】
MRIは、診断的臨床医学および生物医学的研究における最も強力な非侵襲的技術の1つへと発展してきた(P.Caravanら,Chem.Rev.1999,99:2293−2352;W.Khun,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1990,29:1−19;M.M.Huberら,Bioconjug.Chem.1998,9:242−249;R.A.Moatsら,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1997,36:726−728;X.Yuら,Mag.Res.Med.2000,44:867−872)。MRIは、核磁気共鳴(NMR)の適用であり、化学、物理、および分子構造生物学において使用される周知の分析方法である。MRIは、比較的短いタイムスパンで三次元構造情報を生じ得、潜在的に害をなす生理学的異常を同定するか、血流を観察するか、または心血管系の一般状態を決定するための非侵襲的診断手段として広く使用される(P.Caravanら,Chem.Rev.1999,99:2293−2352)。
【0103】
MRIは、(他の高品質の画像化方法に対して)潜在的に有害なイオン化放射線に依存しない利点を有する(A.R.Johnsonら、Inorg.Chem.2000,39:2652〜2660)。MRIにおいて、生物学的サンプルまたは患者の身体のコントラスト画像は、水の濃度の局所的な差異、ならびに水のプロトン(1H)に由来するNMRシグナルのT1(スピン−格子)緩和時間およびT2(スピン−スピン)緩和時間をモニターすることによって提供される。しばしばMRIの明瞭さは、造影画像化剤の使用により改善され得る。その常磁性特性に起因して、これらの因子は、スピン移動を促進するために、その非対電子を用いることによって上記のT1緩和時間およびT2緩和時間を減少させる。これによって、濃度依存性コントラストの増加を生じ、結果として解剖学的構造間に増強された差異を生じる。
【0104】
実体の常磁性帯磁率(従って隣接する水分子のプロトン核のT1緩和時間およびT2緩和時間を短縮するその能力)は、非対電子の数と共に増加するので(F.A.Cottonら、「Basic Inorganic Chemistry」,John Wiley&Sons,New York,1995,p.68)、MRIに用いるための理想的な常磁性金属イオンは、原則として、可能な限り多くの非対電子を有する。しかし、水分子とのこのような常磁性金属イオンの複合体は、毒性が高く、そのためにインビボでの画像化に役に立たない(W.Kuhn,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1990,29:1〜19)。常磁性金属イオンをリガンドまたは金属キレート部分と錯化させ、水分子のために開いている一つの配位部位のみを残すことによって、上記毒性が、減少されることが見出されている。従って、大部分のMRI造影剤は代表的に、キレートされた常磁性金属イオンからなる。
【0105】
従って、本発明の特定の実施形態において、上記MRI造影画像化剤は好ましくは、画像化部分が、常磁性金属イオンに対して錯化された少なくとも一つの金属キレート部分を含むように設計される。
【0106】
本発明に用いるために適切な常磁性金属イオンとしては、生理学的に受容可能であり、MRIにおいて良好な造影増強剤であり、かつ金属キレート部分へ容易に取り込まれる事が公知である任意の常磁性金属イオンが挙げられる。好ましくは、この常磁性金属イオンは、ガドリニウム(III)(Gd3+)、クロム(III)(Cr3+)、ジスプロシウム(III)(Dy3+)、鉄(III)(Fe3+)、マンガン(II)(Mn2+)およびイッテルビウム(III)(Yb3+)からなる群より選択される。より好ましくは、この常磁性金属イオンは、ガドリニウム(III)(Gd3+)である。ガドリニウムは、MRIについてFDAに認可された造影剤であり、異常組織に蓄積し、この異常領域をMRI上で非常に明るく(増強されている)する。ガドリニウムは、身体の異なる領域、特に脳における正常組織と異常組織との間に大きなコントラストを提供することが公知である。
【0107】
本発明に用いるための適切な金属キレート部分は、MRIによって検出可能な常磁性金属イオンを錯化するための当該分野において公知である任意の実体を含む。好ましくは、金属キレート部分は、安定した、非毒性の実体であり、水分子のために開いている一つの配位部位を残す様に常磁性金属イオンに結合し、そしてこのような高い親和性のために、一旦錯化されると、この常磁性金属イオンは、水で置換され得ない。
【0108】
多くのこのような金属キレート部分は、Gd3+の錯体生成のために用いられている。これらとしては、DTPA(図2G);1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N’’,N’’’−テトラ酢酸(DOTA、この化学構造は、図3Aに示される);およびその誘導体が挙げられる(例えば、米国特許第4,885,363号;同第5,087,440号;同第5,155,215号;同第5,188,816号;同第5,219,553号;同第5,262,532号;および同第5,358,704号;ならびにD.Meyerら、Invest.Radiol.1990,25:S53〜55を参照のこと)。しかし、これらのリガンドのガドリニウム錯体は、生理学的な条件下で塩であり、非常磁性カチオン対イオンの必要条件は、溶液のオスモル濃度を増加させる。高い水溶性および緩和性を保持する中性ガドリニウム錯体は、DTPA−ビス(アミド)誘導体を用いて調製されている(米国特許第4,687,659号)。
【0109】
常磁性金属イオンを錯化する他の金属キレート部分としては、アミノポリカルボン酸およびそのリン酸素酸アナログのような非環式実体(例えば、トリエチレンテトラアミンヘキサ酢酸すなわちTTHA(この化学構造は、図3Bに示される)およびジピリドキサルジホスフェート(DPDP)(図3Cに示される)ならびに大環状実体(例えば、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N’’−三酢酸すなわち、DO3A(この化学構造は、図3Dに示される))が挙げられる。金属キレート部分はまた、米国特許第5,410,043号;同第5,277,895号;および同第6,150,376号またはF.H.Arnold,Biotechnol.1991,9:151〜156に記載される実体のいずれかでもあり得る。
【0110】
本発明の治療用の二機能性分子にGd3+を挿入することによって開発された新規MRI造影画像化剤のファミリーの合成は、実施例2に記載される。本発明のMRI画像化剤の特性および用途は、それぞれ実施例7ならびに実施例8に報告される。
【0111】
(MRS画像化部分)
特定の実施形態において、本発明の造影画像化剤は、磁気共鳴分光法(MRS)において有用であるように設計される。より詳細には、本発明はまた、安定した常磁性同位体で標識された少なくとも一つのアミロイド結合部分と関連する少なくとも一つの金属キレート部分を含む造影画像化剤も提供する。好ましい安定した常磁性同位体は、炭素−13(13C)およびフッ素−19(19F)である。
【0112】
(放射活性画像化部分)
他の好ましい実施形態において、本発明の上記造影画像化剤は、単光子放出コンピュータ断層撮影法(SPECT)または陽電子断層撮影法(PET)によって検出可能であるように設計される。
【0113】
SPECTおよびPETは、核医学画像化技術であって、腫瘍、動脈瘤(血管壁の弱い点)、種々の組織への不規則な血流または不十分な血流、血球の障害ならびに器官の不十分な機能(例えば、甲状腺および肺の機能の欠陥)を検出するために用いられている。両技術は、生物学的サンプルまたは患者の身体に導入された放射性核種濃度の情報を必要とする。PETは、放射活性同位体を作製するために中性子に非放射活性化学薬品を曝すことによって形成される、短命の放射活性物質から放出される放射線を検出することによって画像を生じる。PETは、放射活性物質から放出される陽電子が、組織内の電子と衝突した部位で放出されるγ線を検出する。PET分析は、目的の領域(例えば、脳、胸部、肝臓)を覆う身体の一連の薄いスライス画像を生じる。これらの薄いスライス画像は、試験した領域の三次元画像へと組み立てられ得る。しかし、PETセンターは、この技術に用いられる短命の放射性同位体を産生するために必要とされる粒子加速デバイス付近に位置させなければならないので、ほんの僅かのPETセンターしか存在しない。SPECTは、PETに類似するが、SPECTに用いられる放射活性物質(例えば、99mTC、l23I、l33Xe)は、PETに用いられる放射活性物質よりも長い崩壊時間を有し、二重のγ線の代わりに単一のγ線を放出する。SPECT画像は、PET画像よりも感度が低くかつ詳細ではないが、SPECT技術は、粒子加速器に近接していることを必要とせず、かつPETよりもかなり安価であるという、PETに対するいくつかの利点を示す。
【0114】
従って、特定の好ましい実施形態において、本発明の造影画像化剤は、単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)によって検出可能であるように設計される。好ましくは、造影画像化剤中の画像化部分は、SPECTによって検出可能である金属実体に錯化された少なくとも一つの金属キレート部分を含む。
【0115】
本発明に用いるために適切な金属実体は、生理学的に受容可能であり、SPECTによって検出可能であり、かつ金属キレート部分へ容易に取り込まれることが、当該分野において公知である放射性核種である。好ましくは、放射性核種は、テクネチウム−99m(99mTc)、ガリウム−67(67Ga)、イットリウム−91(9lY)、インジウム−111(111In)、レニウム−186(186Re)、およびタリウム−201(201Tl)からなる群より選択される。最も好ましくは、上記放射性核種は、テクネチウム99m(99mTc)である。85%を超える現在実施されている慣習的な核医学手順は、99mTcをベースとする放射性医薬品方法論を用いる。
【0116】
本発明に用いるために適切な金属キレート部分としては、SPECTによって検出可能な短命の放射性核種を錯化することが公知の任意の実体が挙がられる。好ましくは、金属キレート部分は、SPECTによって高親和性で検出可能な、放射性核種に結合する安定した、無毒性の実体である。
【0117】
99mTcのような放射性核種を錯化する金属キレート部分は、当該分野において周知である(例えば、「Technetium and Rhenium in Chemistry and Nuclear Medicine」、M.Nicoliniら(編)、1995,SGEditoriali:Padova,Italyを参照のこと)。適切な金属キレート部分としては、例えば、N2S2キレーターおよびN3Sキレーターが挙げられ(A.R.Fritzbergら、J.Nucl.Med.1982,23:592〜598)、これらは、それぞれ、二個の窒素原子および二個の硫黄原子を介して、または三個の窒素原子および一個の硫黄原子を介して放射性核種を錯化し得る。エチルシステイン二量体(ECD、この化学構造は、図3Cに示される)は、当該分野で周知であるN2S2キレーターである。N2S2キレーターおよびN3Sキレーターは、例えば、米国特許第4,444,690号;同第4,670,545号;同第4,673,562号;同第4,897,255号;同第4,965,392号;同第4,980,147号;同第4,988,496号;同第5,021,556号および同第5,075,099号に記載される。
【0118】
他の適切な金属キレート部分は、ポリリン酸塩(例えば、エチレンジアミンテトラメチレンテトラホスホネート(EDTMP)、この化学構造は、図3Dに示される);アミノカルボン酸(例えば、EDTA、N−(2−ヒドロキシ)エチレンジアミン−三酢酸、ニトリロ三酢酸、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)グリシン、エチレンビス(ヒドロキシ−フェニルグリシン)およびジエチレントリアミン五酢酸);1,3−ジケトン(例えば、アセチルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、およびテノイルトリフルオロアセトン);ヒドロキシカルボン酸(例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、および5−スルホサリチル酸);ポリアミン(例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、およびトリアミノトリエチルアミン);アミノアルコール(例えば、トリエタノールアミンおよびN−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン);芳香族複素環塩基(例えば、2,2’−ジイミダゾール、ピコリンアミン、ジピコリンアミンおよび1,10−フェナントロリン);フェノール(例えば、サリチルアルデヒド、ジスルホピロカテコール、およびクロモトロープ酸);アミノフェノール(例えば、8−ヒドロキシキノリンおよびオキシムスルホン酸);オキシム(例えば、ヘキサメチルプロピレンアミンオキシム(HMPAO)図3Eに示される);シッフ塩基(例えば、ジサリチルアルデヒド1,2−プロピレンジイミン);テトラピロール(例えば、テトラフェニルポルフィンおよびフタロシアニン);硫黄化合物(例えば、トルエンジチオール、メソ−2,3−ジメルカプトコハク酸、ジメルカプトプロパノール、チオグリコール酸、エチルキサントゲン酸カリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジチゾン、ジチオリン酸ジエチルおよびチオ尿素);合成大環状化合物(例えば、ジベンゾ[18]クラウン−6)、または上記因子の二以上の組み合わせから選択され得る。
【0119】
好ましい金属キレート部分は、EDTA、DTPA、DOTA、DO3Aのようなポリカルボン酸;ならびにその誘導体、相同体およびアナログ、またはその組合せからなる群より選択される。
【0120】
他の適切な金属キレート部分は、米国特許第5,559,214号ならびにWO 95/26754、WO 94/09056、WO 94/29333、WO 94/08624、WO 94/08629、WO 94/13327、およびWO 94/12216に記載される。
【0121】
好ましくは、上記金属キレート部分は、この金属キレート部分をアミロイド結合部分に共有結合させるために用いられ得る(かまたは用いられ得る異なる官能基へと容易に化学的に変換される)少なくとも一つの官能基を含む。適切な官能基としては、アミン基(好ましくは第一級アミン)、チオール基、カルボキシル基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0122】
(造影画像化剤の合成)
本発明の二機能性分子を調製するための上記の方法は、造影画像化剤を合成するために用いられ得る。
【0123】
金属実体に対して錯化された少なくとも一つの金属キレート部分を含む画像化部分は、当該分野で公知である任意の方法によって調製され得る。錯体化は、上記金属キレート部分とアミロイド結合部分との間の直接的な共有結合あるいは間接的な共有結合の形成前、形成中または形成後に実施され得る。好ましくは、この錯体化は、出発物質として本発明の二機能性分子を用いて実施される(実施例2および実施例3を参照のこと)。上記金属実体が、短命の放射性核種である場合、この錯体化は、上記造影画像化剤が用いられる直前に実施される。
【0124】
適切な錯体化方法は、例えば、上記金属実体を上記金属キレート部分へ直接組み込む工程および金属転移(transmetallation)工程を包含する。可能な場合には、直接組み込みが好ましい。この方法において、金属キレート部分の水溶液は一般に、金属塩に曝されるか、または金属塩と混合される。この反応混合物のpHは、約pH4と約pH11との間であり得る。好ましくは、このpHは、約pH5と約pH9との間である。より好ましくは、上記反応は、pH6とpH8との間で実施される。直接組み込み法は、当該分野において周知であり、そして異なる手順が、記載されている(例えば、WO 87/06229を参照のこと)。上記金属実体が、組み込み前に異なる酸化状態に還元されることを必要とする場合に、金属転移が、用いられる。金属転移法は、当該分野において周知である。実施例3は、二機能性分子への99mTcの組み込みが、SnCl2を用いて上記金属イオンをTc(V)へと還元することによって実施される反応を示す。
【0125】
当業者によって容易に理解され得るように、造影画像化剤は、任意の数の異なる方法によって互いに結合される、任意の数のアミロイド結合部分および任意の数の画像化部分を含み得る。造影画像化剤内のこのアミロイド結合部分は、全て同一かまたは異なるものであり得る。同様に、造影剤内の画像化部分は、全て同一かまたは異なるものであり得る。造影画像化剤の設計は、その意図される目的およびその用途の特定の状況において所望される特性に左右される。
【0126】
(III.二機能性治療分子の使用)
本発明の別の局面は、アミロイド毒性を減少させるかまたは阻害するための系に関する。従って、本発明は、βシート高次構造に凝集した場合に、その環境に対して有毒であるアミロイド(およびアミロイド様)タンパク質の能力を減少させるかまたは阻害するための試薬およびストラテジーを提供する。本発明はまた、広範な種々の生体分子に悪影響を有しかつ酸化ストレスを誘導し得る活性酸素種のアミロイド媒介性の産生を減少させるかまたは阻害するための試薬および方法も提供する。
【0127】
より詳細には、本発明は、金属キレート剤として作用する標的化試薬、そしてインビトロ、インビボおよびエキソビボの系、ならびに、生存する患者におけるアミロイド毒性を減少させるかまたは阻害するために上記標的試薬化を用いる方法を提供する。本明細書中に提供される方法は、効率的に遷移金属イオンをキレートすると共にアミロイド沈着物に対して高い親和性および特異性を示すことにより、二重の選択性を示す本発明の二機能性分子を用いる工程を包含する。
【0128】
特定の好ましい実施形態において、本発明は、上記の系または患者においてアミロイドの蓄積を阻止、減速、あるいは停止させること;ならびに/あるいは上記の系または患者に既に存在するアミロイド沈着物の分解を誘導するか、他の方法で分解を促進することにより、アミロイド毒性を減少または阻害することを可能とする。上記は、上記二機能性分子内の金属キレート部分が、高親和性で、亜鉛(II)(Zn2+)、銅(II)(Cu2+)、および鉄(III)(Fe3+)からなる群より選択される少なくとも一つの遷移金属イオンと結合する場合に達成され得る。
【0129】
他の好ましい実施形態において、本発明は、活性酸素種のアミロイド媒介性産生を減少させるか、阻害するか、他の方法で干渉することによってアミロイド毒性の減少または阻害を可能とする。これは、上記二機能性分子中の金属キレート部分が、高い親和性で銅(II)(Cu2+)、および鉄(III)(Fe3+)からなる群より選択される少なくとも一つのレドックス活性遷移金属イオンと結合する場合に達成され得る。
【0130】
当業者に理解され得るように、高い親和性でCu2+および/またはFe3+と結合する金属キレート部分を有する二機能性分子の使用を包含する方法は、凝集したアミロイドタンパク質から生じる毒性と活性酸素種の産生から生じる毒性の両方を減少または阻害することが可能である(Cu2+およびFe3+は、アミロイドタンパク質の凝集を促進し得る遷移金属イオンであり、かつ活性酸素種の形成に関与し得るレドックス活性生体金属であるため)。
【0131】
より詳細には、本発明は、系内のアミロイド毒性を減少または阻害するための方法を提供し、この方法は、上記の系を有効量の本発明の二機能性分子、またはその薬学的組成物と接触させる工程を包含する。
【0132】
上記接触工程は、インビトロ、インビボ、またはエキソビボで実施され得る。例えば、この接触工程は、インキュベーションによって実施され得る。
【0133】
上記系は、アミロイド沈着物を産生および/または含むことが可能である公知の任意の生物学的実体であり得る。例えば、この系は、細胞、生物学的流体、生物組織、または動物であり得る。この系が、細胞、生物学的流体または生物組織である場合、これらは生きている患者由来(例えば、生検によって得られ得る)かまたは死亡した患者由来(例えば、剖検で得られ得る)であり得る。上記患者は、ヒトまたは別の哺乳動物であり得る。好ましい実施形態において、上記細胞、生物学的流体または生物組織は、アミロイドの蓄積に関連する病態生理学的状態を有すると推測される患者に由来する。他の好ましい実施形態において、この細胞、生物学的流体または生物組織は、アミロイド−βペプチドの蓄積に関連する病態生理学的状態を有することが疑われる患者に由来する。この特定の場合において、上記二機能性分子中のアミロイド結合部分は好ましくは、Aβアミロイドに対して高い親和性および特異性を示す。
【0134】
本発明はまた、患者におけるアミロイドの蓄積に関連する病態生理学的状態を防止または処置するための方法も提供する。本明細書中に記載される方法は、(1)疾患の発症を遅延もしくは防止する;または(2)疾患の進行、悪化(aggravation)、もしくは悪化(deterioration)を減速または停止する、または(3)疾患の症状および徴候の逆行もしくは改善を引き起こす;または(4)疾患を治癒する、ために実施され得る。上記処置は、予防薬あるいは予防処置を疾患の発症前に、または治療処置を疾患の発症後に与えられ得る。
【0135】
より詳細には、本発明は、アミロイドの蓄積に関連する病態生理学的な状態を有する患者を処置するための方法を提供し、この方法は、この患者に有効量の本発明の二機能性分子、またはその薬学的組成物を投与する工程を包含する。
【0136】
二機能性分子またはその薬学的組成物の投与は、当該分野において公知の任意の適切な方法、例えば、経口投与および非経口投与(静脈内注射、筋肉内注射、および皮下注射を含む)ならびに経皮投与および経腸投与によって実施され得る。
【0137】
患者に影響を及ぼす病態生理学的な状態は、任意のアミロイドタンパク質またはアミロイド様タンパク質(例えば、アミロイド免疫グロブリン軽鎖(AL);血清アミロイド関連タンパク質(AAもしくはSAP);アミロイド−βペプチド(Aβ);改変トランスチレチン(ATTR);非常に小さいアミロイドポリペプチド(IAPPもしくはアミリン);プリオンタンパク質(PrP)など)の蓄積に関連し得る。凝集したアミロイドタンパク質またはアミロイド様タンパク質の蓄積は、身体の任意の器官または組織に生じ得、心臓、脳、胃腸系、肝臓、脾臓、腎臓、膵臓、肺、関節、筋肉などに原線維、単線維、プラークおよび/またはもつれを形成し得る。
【0138】
上記病態生理学的な状態は、アミロイド症と関連することが公知である任意の疾患および障害であり得る。これらの状態としては、II型糖尿病、進行性核上麻痺、チーズ様髄質癌のような内分泌系の特定の型の癌、家族性アミロイド症(フィンランド型);家族性アミロイド多発ニューロパチー(ポルトガル型)、家族性アミロイド多発ニューロパチー(アイオワ型)、家族性アミロイド心筋症(デンマーク型)、じんましんおよび聴覚障害を伴う家族性アミロイド多発ニューロパチー(Muckle−Wells症候群)、遺伝性非神経障害性全身性アミロイド症(Ostertag型)、遺伝性腎アミロイドーシス、アミロイドに関連する骨髄腫またはマクログロブリン関連特発症、全身性老人性アミロイドーシス、ホジキン病、ランゲルハンス島、単離された心房性アミロイド、ならびに家族性地中海熱が挙げられるが、これらに限定されない。
【0139】
特定の好ましい実施形態において、本発明の方法は、脳に優先的に凝集かつ蓄積するアミロイドタンパク質およびアミロイド様タンパク質と関連する病態生理学的な状態の予防および処置に関する。これらの病態生理学的な状態としては、例えば、ヒトに発病するプリオン疾患(例えば、クロイツフェルト・ヤコブ病、ゲルストマン−シュトロイスラー−シャインカー症候群、致死性家族性不眠症、およびクールー疾患)ならびに他のホニュウ動物に発病するプリオン疾患(例えば、ウシにおけるウシ海綿状脳症、ヒツジにおけるスクラピー、ミンクにおける遺伝性脳障害ならびにラバおよびヘラジカにおける慢性消耗病)に発病するプリオン疾患;頭部外傷を伴う個々の脳においてしばしば観察されるアミロイド症;ならびにアルツハイマー病、レヴィー小体痴呆、アミロイド症(オランダ型およびアイスランド型)を伴う遺伝性脳出血、グアムパーキンソン痴呆症候群、ならびに成人のダウン症患者に発症するアルツハイマー病の形態のような神経変性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。これらの場合において、本発明の二機能性分子中のアミロイド結合部分は、血液脳関門を越える能力を有するように選択される。
【0140】
(IV.検出方法)
別の局面において、本発明は、アミロイドの蓄積に関連する病態生理学的な状態の診断を可能とする。特に、本発明は、患者の脳内におけるアミロイドタンパク質の凝集および蓄積によって特徴付けられる神経変性疾患の非侵襲的な診断を可能とする。従って、本発明は、アミロイド沈着物の存在を検出するための試薬および方法を提供する。より詳細には、本発明は、インビトロ、インビボ、およびエキソビボの系、ならびに生きている患者におけるアミロイド沈着物の検出、限局化および定量を可能とする画像化技術および画像化方法によって検出可能である標識化試薬を提供する。本明細書中で提供される方法は、画像化技術によって検出可能である少なくとも一つの画像化部分と関連するアミロイド沈着物に対して高い親和性および特異性を有する、少なくとも一つのアミロイド結合部分を含む、本発明の造影画像化剤の使用に基づく。あるいは、本明細書中に提供される方法は、安定した常磁性同位元素を用いて標識した少なくとも一つのアミロイド結合部分と関連する少なくとも一つの金属キレート部分を含む、本発明の造影画像化剤の使用を包含し得る。
【0141】
より詳細には、本発明は、画像化有効量の本発明の造影画像化剤またはその薬学的組成物と系とを接触させる工程を包含する系においてアミロイド沈着物の存在を検出するための方法を提供する。この接触工程は好ましくは、上記造影画像化剤が上記系の存在下においてアミロイド沈着物と相互作用し、その結果この相互作用によってアミロイド沈着物に対する造影画像化剤の結合を生じ得る条件下で実施される。次いでこの系存在下でアミロイド沈着物に対して結合される造影画像化剤は、画像化技術を用いて検出され、そして上記系の少なくとも一部分の一以上の画像が、作製される。
【0142】
この接触工程は、当該分野において公知である任意の適切な方法によって実施され得る。例えば、この接触工程は、インキュベートすることによって実施され得る。
【0143】
この系は、アミロイド沈着物を生成および/または含むことが可能なことが公知の、任意の生物学的実体であり得、例えば、この系は、細胞、生物学的流体、生物組織、または動物であり得る。この系が細胞、生物学的流体または生物組織である場合、この系は、生きている患者(例えば、生検によって得られ得る)または死亡した患者(例えば、剖検において得られ得る)が起源であり得る。この患者は、ヒトであってもよく、または別の哺乳動物であってもよい。
【0144】
好ましい実施形態において、細胞、生物学的流体、または生物組織は、アミロイド蓄積と関連する病態生理学的状態を有することが疑われる患者が起源である。例えば、細胞、生物学的流体または生物組織は、アミロイド−βペプチドの蓄積と関連する病態生理学的状態を有することが疑われる患者が起源であり得る。この特定の場合において、造影画像化剤中のアミロイド結合部分は、Aβアミロイドに対する高い親和性および特異性について選択される。他の好ましい実施形態において、細胞、生物学的流体または生物組織は、アミロイド蓄積と関連する病態生理学的状態の処置のために、潜在的な治療剤と(インビトロまたはエキソビボで)接触される。
【0145】
本発明のある局面において、上に記載される方法は、潜在的な治療薬剤を同定するために使用される。例えば、細胞、生物学的流体または生物組織の少なくとも一部の画像は、細胞、生物学的流体または生物組織を、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態の処置のための潜在的な治療剤と接触させる前および後に作成され得る。「前」と「後」との画像の比較は、この系に存在するアミロイド沈着物に対する薬剤の効果を決定することを可能にする。本発明はまた、この方法によって同定される治療剤を含む。
【0146】
本発明はまた、患者中のアミロイド沈着物の存在を検出するための方法を提供する。この方法は、画像化有効量の本発明の標的化造影画像化剤、またはこれらの薬学的組成物を患者に投与する工程を包含する。この投与は、好ましくは造影画像化剤が、(1)アミロイド沈着物を含み得る患者の体の領域に到達すること、および(2)存在する任意のアミロイド沈着物と相互作用し、この相互作用が造影画像化剤のアミロイド沈着物への結合をもたらすことを可能にする条件下で実施される。造影画像化剤の投与後であり、そして相互作用が起こるための十分な時間(例えば、30分と48時間との間)が経過した後、患者に存在するアミロイド沈着物に結合する造影画像化剤は、画像化技術を用いて検出され、患者の体の少なくとも一部分の、一以上の画像が作成される。
【0147】
一実施形態において、この方法は、患者のアミロイド沈着物を位置決めするために使用され得る。アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態を有することが疑われる患者から得られる結果と、臨床的に健康な個体の研究から得られる画像とを比較することによって、アミロイド沈着物の存在および分布が決定され得、アミロイドーシスの診断が確認され得る。例えば、この方法は、患者の脳におけるアミロイド斑を位置決めするために使用され得る。この場合において、造影画像化剤中のアミロイド結合部分は、血液脳関門を通過することが可能なように選択される。特に、この方法は、アルツハイマー病を有することが疑われる患者の脳におけるアミロイド斑を検出し、そして位置決めするために使用され得る。この場合において、造影画像化剤中のアミロイド結合部分は、Aβアミロイドに対して高い親和性および特異性を有し、血液脳関門透過性である。脳のイメージングのために、結合する造影画像化剤の量が測定され、患者の小脳に結合した造影画像化剤の量と(比率として)比較される。次いでこの比率は、年齢が一致する臨床的に健康な患者の脳における同じ比率と比較される。
【0148】
この造影画像化剤、またはこれの薬学的組成物の投与は、当該分野で公知の任意の適切な方法(例えば、経口方法および非経口方法(静脈内投与、動脈内投与、くも膜下腔内投与、皮内投与、および腔内投与を含む)ならびに経腸方法による投与)によって実施され得る。
【0149】
好ましい実施形態において、本明細書中で提供される、ある系または患者におけるアミロイド沈着物の存在を検出するための方法は、本発明の造影画像化剤を使用することによって実施され、造影画像化剤中の金属キレート部分は、上に記載のような常磁性金属イオンと錯体を形成する。アミロイド沈着物の検出は、次いで磁気共鳴画像法(MRI)によって行われ、MR画像が作成される。好ましくは、この常磁性金属イオンは、ガドリニウム(III)(Gd3+)である。
【0150】
他の好ましい実施形態において、この検出方法は、本発明の造影画像化剤を使用することによって実施され、造影画像化剤中の金属キレート部分は、上に記載のような放射性核種と錯体を形成する。アミロイド沈着物の検出は、次いで単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)によって行われ、SPECT画像が作成される。好ましくは、この放射性核種は、テクネチウム99m(99mTc)である。
【0151】
さらなる他の好ましい実施形態において、この検出方法は、本発明の造影画像化剤を使用することによって実施され、造影画像化剤中のアミロイド結合部分は、上に記載のような安定な常磁性同位体で標識される。アミロイド沈着物の検出は、次いで磁気共鳴分光法(MRS)によって行われ、MR画像が作成される。好ましくは、この安定な常磁性同位体は、炭素−13(13C)またはフッ素−19(19F)である。
【0152】
患者または系中のアミロイド沈着物の存在を検出するために提供される本発明の方法は、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態を診断するために使用され得る。この診断は、患者の体の一部分または全体を試験し、画像化することによってか、あるいは患者から得られる生物学的系(例えば、生物学的流体または生物組織の一以上のサンプル)を試験し、イメージングすることによって達成され得る。一つの方法もしくは他の方法、または両方の組み合わせは、患者に影響することが疑われる臨床的状態の性質に依存して選択される。患者から得られる結果と、臨床的に健康な個体の研究からのデータとの比較は、診断の決定および確認を可能にする。
【0153】
これらの方法はまた、アミロイドーシスに関連する病態生理学的状態の進行を追跡するために、使用され得る。例えば、このことは、患者のアミロイド沈着物の存在、局在化、分布、および定量化についての時間的経過を確立するために、ある期間にわたってこの方法を繰り返すことによって達成され得る。
【0154】
これらの方法はまた、アミロイド蓄積と関連する病態生理学的状態の処置に対する患者の反応をモニタリングするために使用され得る。例えば、アミロイド沈着物を含む患者の体の一部の画像(または、患者が起源であって、かつアミロイド沈着物を含む細胞、生物学的流体もしくは生物組織の一部分の像)は、患者が処置を受ける前および後に作成される。「前」と「後」の画像の比較は、アミロイド沈着物に対する処置の効果を決定することを可能にし、従って特定の処置に対する患者の反応をモニタリングすることを可能にする。
【0155】
診断され得るか、または進行が本明細書中で提供される方法によって追跡され得る病態生理学的状態は、上に列挙されるような任意のアミロイドまたはアミロイド様タンパク質の蓄積に関連し得る。凝集したアミロイドまたはアミロイド様タンパク質は、身体の任意の器官または組織に蓄積し得、原線維、フィラメント、プラーク、および/またはもつれを形成し得る。器官(例えば、心臓、脳、胃腸系、肝臓、脾臓、腎臓、膵臓、肺、関節、筋肉など)は、本明細書中に提供される本発明の方法を使用して試験され、画像化され得る。
【0156】
診断され得るか、または進行が本明細書中で提供される本発明の方法によって追跡され得る病態生理学的状態は、アミロイドーシスと関連することが公知の任意の疾患および障害であり得る。例えば、本発明の方法は、II型糖尿病、進行性核上性麻痺、内分泌系の特定の型の癌(例えば、チーズ様の家族性アミロイドーシスの髄様癌(フィンランド型);家族性アミロイド多発ニューロパチー(ポルトガル型)、家族性アミロイド多発ニューロパチー(アイオワ型)、家族性アミロイド心筋症(デンマーク型)、蕁麻疹および難聴を伴う家族性アミロイドニューロパチー(マックル−ウェルズ症候群)、遺伝性非ニューロパチー系アミロイドーシス(Osterta)型)、遺伝性腎アミロイドーシス、アミロイドに関連する骨髄腫アイドパシー(idopathy)またはマクログロブリン血症(macroglobulinernia)関連アイドパシー、全身性老年性アミロイドーシス、ホジキン病、ランゲルハンス島、単離された関節性アミロイド、および家族性地中海熱)のような状態を診断するために使用され得る。
【0157】
特定の好ましい実施形態において、本発明の方法は、脳において優先的に凝集し蓄積するアミロイドおよびアミロイド様タンパク質に関連する病態生理学的状態の診断に関する。これらの病態生理学的状態としては、例えば、ヒト(例えば、クロイツフェルト−ヤーコプ病、ゲルストマン−シュトロイスラー−シャインカー症候群、致死性家族性不眠症、およびクールー病)ならびに他の動物(例えば、ウシにおけるウシ海綿状脳症、ヒツジにおけるスクレイピー、ミンクにおける感染性脳症、およびミュールジカおよびオオジカにおける慢性消耗病)を発症し得るプリオン病;頭の外傷を有する個体の脳において時々観察されるアミロイドーシス;ならびに神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、レヴィー小体痴呆、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型およびアイスランド型)、グァム・パーキンソン痴呆および成人のダウン症患者に影響を与えるアルツハイマー病の形態)が挙げられる。これらの場合において、本発明の造影画像化剤中のアミロイド結合部分は、血液脳関門を通過する能力を有するように選択される。
【0158】
(V.処方、診断および投与)
(二機能性治療分子)
本明細書中に記載される二機能性治療分子は、それ自体でか、または薬学的組成物の形態で投与され得る。従って、本発明は、有効量の少なくとも一つの二機能性分子、または生理的に許容されるそれらの塩、および少なくとも1つの薬学的に受容可能なキャリアを含有する薬学的組成物を提供する。この特定の処方物は、選択される投与の経路に依存する。二機能性治療分子、またはこれらの薬学的組成物は、当該分野で公知の任意の適切な方法によって投与され得る。適切な経路の例としては、経口投与および非経口投与(静脈内、筋肉内、腹腔内、および皮下の注射を含む)、経皮投与および経腸投与などが挙げられる。
【0159】
経口投与のための薬学的組成物は、本発明の二機能性分子を一以上の薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤と組み合わせることによって得られ得る。このようなキャリアの使用は、本発明の二機能性分子が、例えば、錠剤、カプセル剤、丸剤、糖剤、液体、ゲル、シロップ剤、スラリー、および懸濁剤として処方されることを可能にする。経口投与のための薬学的に受容可能なキャリアおよび賦形剤は、当該分野で周知であり(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,1990を参照のこと)、任意およびすべての溶媒、分散媒、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤などが挙げられる。このような薬学的組成物は、少なくとも1重量%の活性型化合物を含有するべきである。組成物のパーセンテージは変動し得、都合よくは、単位の重量の約5%〜約80%の間であり得る。治療上有用な組成物中の活性型化合物の量は、得られる適切な投薬量である。本発明に従う好ましい組成物は、経口の投薬単位形態が約0.5μgと約2000mgとの間の活性型化合物を含有するように調製される。
【0160】
経口処方物は、必要に応じて他の従来の無毒性成分を含み得る。これらの成分としては、例えば、充填剤および結合剤(例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール、およびソルビトールのような糖類;ならびにデンプン、ゼラチン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびポリビニルピロリドンのようなセルロース調製物);賦形剤(例えば、リン酸二カルシウム);崩壊剤(例えば、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸およびアルギン酸ナトリウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム);ならびに矯味剤(例えば、ペパーミント、冬緑油、およびチェリーの矯味)が挙げられる。処方物がカプセル剤を形成する場合、そのカプセル剤は上に列挙される物質に加えて、液体ビヒクルまたは半液体ビヒクル(例えば、脂肪油、液体パラフィン、および液体ポリエチレングリコール)を含み得る。種々の他の物質は、コーティングとしてか、またはさもなければ投薬単位の物理的形態を改変するために存在し得る。例えば、錠剤、丸剤、またはカプセル剤は、シェラック、砂糖または両方でコーティングされ得る。シロップ剤またはエリキシル剤は、活性型化合物、甘味剤としてのスクロース、保存剤としてのメチルパラベンおよびプロピルパラベン、色素、チェリーフレーバーまたはオレンジフレーバーのような矯味を含み得る。経口の薬学的組成物の調製に使用される任意の材料は、薬学的に純粋であり、適用される量において実質的に無毒性であるべきである。
【0161】
本発明の二機能性分子はまた、注射による非経口投与(例えば、ボーラス注射または持続的注入による)のために処方され得、単位投薬形態中(例えば、アンプル中かまたは複数用量の容器中)に存在し得る。注射のための投薬単位形態は、投与の簡単さおよび投薬の均一性のために特に有利である。本明細書で使用される場合、用語「投薬単位形態」は、処置される患者のための単位用量として適した物理的な分散型単位をいう。それぞれの単位は、所望される治療効果をもたらすために計算される所定の量の活性型物質を含む。この投薬単位形態は、活性型化合物の特徴および所望される治療効果に直接的に依存する。例えば、単位用量形態は、主要な活性型化合物を0.5μg〜約2000mgの範囲の量で含む。あるいは、体重1kgあたり200ng〜10mg以上の範囲の量が、投与され得る。この量は、個々の活性型化合物についてか、または組み合わせる全体の活性型化合物についてであり得る。
【0162】
非経口組成物は、懸濁剤、乳濁剤、または活性な二機能性分子の水性溶液および非水性溶液であり得、必要に応じて他の助剤(例えば、懸濁剤、安定化剤、および/または分散剤)を含み得る。脂肪親和性溶媒またはビヒクル(例えば、脂肪油、合成脂肪酸エステル、およびリポソーム)は、懸濁剤および乳濁剤を調製するために使用され得る。水性の非経口処方物の粘度は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、およびデキストランのような物質を添加することによって増加させ得る。
【0163】
あるいは、本発明の二機能性分子は、活性成分の制御される送達を可能にするために処方され得る。制御放出組成物は、当該分野で周知であり(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,1990を参照のこと)、マイクロカプセル、坐剤、またはデポー(depot)調製物の形態をとり得る。これらの薬学的組成物は、高分子材料(例えば、ポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニルピロリドン、ヒドロゲル、ポリ乳酸、エチレンビニルアセテート、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、およびカルボキシ−メチルセルロース)の粒子中に活性型分子を組み込むかもしくは封入することによって、またはコロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、マクロスフェア、マイクロ乳濁剤またはマクロ乳濁剤、ナノ粒子、およびナノカプセル剤)中に活性型分子を組み込むかもしくは封入するによって得られ得る。デポー調製物は、移植または経皮送達、筋肉内注射によってか、または経皮パッチの使用(例えば、米国特許第4,708,716号および同第5,372,579号に記載されるデバイス)を介して投与され得る。
【0164】
本発明の二機能性治療分子、またはこれらの薬学的組成物は、単独で、本発明の他の試薬と組み合わせて、および/または他の治療剤との組み合わせて投与され得、その性質は、部分的に処置される状態に依存する。例えば、アルツハイマー病の場合、本発明の二機能性分子は、FDAに認可された治療剤(例えば、塩酸ドネベジル(Aricept(登録商標))、タクリン(Cognex(登録商標))、リバスチグミン(Exelon(登録商標))、およびベルナクリン(Mentane(登録商標)))と組み合わせて投与され得、これらは向知性薬として作用するアセチルコリンエステラーゼであり、一部のAD患者においてわずかな軽減を提供することが公知である。特定の障害を処置するために適切な化合物の組み合わせを決定する能力は、訓練された医師の能力の十分に範囲内である。
【0165】
本発明の二機能性分子、またはこれらの薬学的組成物は、アミロイド蓄積と関連する種々の病態生理学的状態を処置するために治療的に(すなわち、疾患の発症の後に)投与され得るか、またはこれらの病態生理学的状態を防ぐために予防的に投与され得る。
【0166】
本発明の二機能性分子、またはこれらの薬学的組成物の投与は、送達される量が意図される目的のために有効であるような投薬量においてである。投与の経路、処方および投与される投薬量は、患者の年齢、性別、体重および健康状態;処置される特定の病態生理学的状態(全身性または局所性、原発性または続発性アミロイドーシス);疾患の程度;二機能性治療分子の効力、バイオアベイラビリティ、インビボでの半減期、副作用の重症度に依存する。これらの因子は、治療の過程で容易に決定可能である。あるいは、またはさらに、投与される投薬量は、処置される特定の状態についての動物モデルを使用した研究から、および/または同様な薬理学的活性を示すことが公知である化合物について得られた動物のデータもしくはヒトのデータから決定され得る。各処置のために必要とされる総用量は、複数回用量または単回用量によって投与され得る。これらの方法または他の方法に基づく最大限の効力を達成するよう用量を調節することは、当該分野で周知であり、訓練された医師の能力の範囲内である。
【0167】
アミロイド蓄積と関連する病態生理学的状態を有する適切な患者は、検査室検査と病歴とによって同定され得る。特に、アミロイド沈着物の存在、局在化、分布および定量化は、本明細書中に記載の本発明の方法の1つによって決定され得る。この方法は、標的化造影画像化剤および画像化技術の使用を包含する。
【0168】
(標的化造影画像化剤)
本発明はまた、標的化造影画像化剤を含有する薬学的組成物を提供する。より詳細には、本発明の薬学的組成物は、上に記載される画像化有効量の少なくとも1つの造影画像化剤、または生理的に耐容性のそれらの塩、および少なくとも1つの薬学的に受容可能なキャリアを含有する。特定の好ましい薬学的組成物において、造影画像化剤の画像化部分は、常磁性金属イオンまたは放射性核種と錯体化する少なくとも1つの金属キレート部分を含む。好ましくは、この常磁性金属イオンはガドリニウムIII(Gd3+)であり;この放射性核種はテクネチウム99m(99mTc)である。他の好ましい実施形態において、造影画像化剤中のアミロイド結合部分は、安定な常磁性同位体で標識される。好ましくは、この安定な常磁性同位体は、炭素−13(13C)またはフッ素19(19F)である。
【0169】
造影画像化剤、またはこれらの薬学的組成物の投与は、当該分野で公知の任意の適切な方法によって実施され得、これらの方法は、Remington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。患者が罹患したことが疑われるアミロイドーシスの特定の型および試験される体の部位に依存して、造影画像化剤は局所的にかまたは全身的に投与され得、そして経口的(固体、液剤または懸濁剤として)にか、または注射(例えば、静脈内注射、動脈内注射、くも膜下腔内注入(すなわち、脊髄液を介して)、皮内注入、または腔内注入)によって送達され得る。
【0170】
経口投与のために、二機能性治療分子の場合には、本発明の造影画像化剤は、上に記載のように処方され得る。
【0171】
注射による投与のために、造影画像化剤の薬学的組成物は、滅菌の水溶液もしくは非水性溶液として、または代替的に滅菌の注射可能溶液の即座の調製のための滅菌散剤として処方され得る。このような薬学的組成物は、製造および貯蔵の条件下で安定であるべきであり、かつ微生物(例えば、細菌および真菌)の汚染行為に対して保護されなければならない。
【0172】
薬学的に受容可能なキャリアは、溶媒または分散媒(例えば、水溶液(例えば、ハンクス溶液、アルコール性/水溶性溶液、または食塩水)、および非水性キャリア(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油および注射可能なエチルオレアートのような有機エステル)である。注射可能な薬学的組成物はまた、非経口ビヒクル(例えば、塩化ナトリウムおよびリンガーデキストロース(Ringer’s dextrose))、および/または静脈内ビヒクル(例えば、流体および栄養補充剤);ならびに他の従来の薬学的に受容可能な、無毒性の賦形剤および添加剤(塩、緩衝剤および抗菌剤または抗真菌剤のような保存剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チーメローサル(thirmerosal)など)を含む)を含む。注射可能な組成物の長期の吸収は、吸収を遅らせ得る薬剤(例えば、アルミニウムモノステアレートおよびゼラチン)を加えることによって、もたらされ得る。種々の成分のpHおよび濃度は、当業者によって容易に決定され得る。
【0173】
滅菌の注射可能溶液は、必要量の適切な溶媒中に、活性化合物を上に列挙される種々の他の成分と共に組み込み、続いて滅菌(例えば、フィルター処理または照射)することによって調製される。滅菌の注射可能溶液の調製のための滅菌散剤の場合、調製の好ましい方法は、真空乾燥技術および凍結乾燥技術である。
【0174】
概して、検出可能な造影画像化剤の投薬は、例えば、患者の年齢、性別および体重、ならびに患者が罹患したことが疑われる特定の病態生理学的状態、疾患の程度、ならびに試験される体の領域など考慮すべき事柄に依存して変動する。禁忌、併用治療および他の変動のような要因もまた、投与される検出可能な造影画像化剤の投薬を調節するために考慮される。しかし、このことは、訓練された医師によって容易に達成され得る。
【0175】
概して、本発明の薬学的組成物の適切な1日の用量は、患者に存在する任意のアミロイド沈着物の検出を可能にするために十分な造影画像化剤の最小量に対応する。この用量を最小化するために、投与は、静脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下であることが好ましく、好ましくは試験される部位の近位である。例えば、静脈内投与は、尿路のイメージングのために適切であり;髄腔内投与は、脳および中枢神経系のイメージングのためにより適しており;一方、食事を与えられていない患者への経口投与は、胃腸管のイメージングのために適切である。
【0176】
本発明の放射性造影画像化剤は、好ましくは、1日あたり体重1kgあたり0.1mCurie〜約10mCurieの範囲において投与される。本発明の常磁性造影画像化剤は、好ましくは、1日あたり体重1kgあたり0.02mmole〜1,3mmoleの範囲において投与される。
【実施例】
【0177】
以下の実施例は、本発明を作製し実践する、いくつかの好ましい様式を記載する。しかし、これらの実施例は、説明の目的のためだけであり、本発明の範囲を限定することを意味しないということが理解されるべきである。
【0178】
(実施例1:アミロイド結合、金属キレート薬剤のファミリーの合成)
新規の二機能性分子のファミリーが設計されており、開発されている。新しい二機能性分子は、1つの金属キレート部分を含み、直接的に2つの同一のアミロイド結合部分に共有結合する。このファミリーのすべての二機能性分子に共通である金属キレート部分は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)であり、当該分野で周知の金属キレート剤である。図4Aに示すように、このファミリーの親分子(parent molecule)のアミロイド結合部分は、ベンゾチオフラビン誘導体である。この誘導体は、チオフラビンアナログのファミリーに属し、げっ歯動物において血液脳関門透過性であり、Aβアミロイドに対して高親和性を示すことが報告されている(W.E.Klunkら,Life Sci.2001,69:1471−1484)。
【0179】
このファミリーの他のメンバーは、親の二機能性分子のアナログであり、ベンゾチアゾール部分の芳香環は、一以上の官能基(例えば、4−ジメチルアミノ;4−アミノ;4−クロロ;4−クロロ−5−エチル;4−アセチル;5−カルボキシル;5−スルホノキシル;5−ブロモ;4−、5−または6−メチル;5−トリフルロメチル;4−エトキシ;4−、5−または6−メチルスルホニル;および4−、5−または6−ヒドロキシルを含む(図4Bを参照のこと))で置換されている。
【0180】
下に報告される合成において使用するすべての試薬および溶媒を、Aldrich Chemical(St.Louis,MO)Acros Organics(Pittsburg,PA)、またはLancaster Synthesis Inc.(Windham,NH)から利用可能な高い純度グレードで得て、事前の精製なしに使用した。
【0181】
このファミリーの親の二機能性分子の合成(化合物XH1)を、本明細書中に記載する。以下のスキームに示されるとおり、XH1の調製は、金属キレート部分とアミロイド結合部分との間のアミド結合の形成を包含する。以前に刊行された合成方法(W.E.Klunkら,Life Sci.2001,69:1471−1484;D.Shiら,J.Med.Chem.1996,39:3375−3384;およびM.S.Koningsら,Inorg.Chem.1990,29:1488−1491))から適合した手順に従って、この反応を実施した。
【0182】
【化18】
合成の工程(a)は、チオフラビンアナログである、2−(4’−アミノフェニル)−ベンゾチアゾール(化合物III)を提供し、これを塩化4−ニトロベンゾイル(化合物II)と2−アミノチオフェノール(化合物I)との間の直接結合の生成物を還元することによって調製した。合成の工程(b)は、化合物IVであるDTPA−ビス(無水物)を、過剰のチオフラビンアナログと反応させて所望の化合物XH1を形成した。
【0183】
より正確には、無水ベンゼン(200mL)中の化合物I(10g、80mmol)および化合物II(15g、80mmol)を、室温で16時間攪拌した。酢酸エチルでの抽出に続いて、溶媒をエバポレートし、その残分をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル;85:15、v:v)によって精製し、薄い黄色の固体として15g(73%)の2−(4’−ナフトフェニル)−ベンゾチアゾールを得た。エタノール中のこの中間体(10g、40mmol)と塩化スズ(II)二水和物(20g、90mmol)との混合物を、次いで窒素下で4時間還流した。エバポレーションによりエタノールを除去し、その残分を酢酸エチル(200mL)中に溶解させた。1M NaOH(3×200mL)と水(3×200mL)とを用いて、得た溶液を洗浄した。溶媒のエバポレーションから、10g(97%)の2−(4’−アミノフェニル)−ベンゾチアゾールを得た。
【0184】
次いで、DTPA−ビス(無水物)(2.5g、7.0mmol)を、氷冷し、攪拌したエタノール中の化合物III(8.85g、7.8mmol)の溶液に30分にわたって部分的に加えた。水(150mL)を加えた後、結果として生じた反応混合物を、さらに12時間周囲温度において攪拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、水(500mL)を加えることによって得た溶液を、濃HClを用いてpH 2.5に調整し、結晶の形成を誘導した。収集した後、エタノールから結晶を再結晶化し、純粋なXH1(収量:71%)を得た。
【0185】
LC/MSおよび1H−NMRによって、得た親の二機能性分子を特徴付けた。250MHzで操作したBruker AVANT機器を使用して、プロトン−NMRスペクトルを記録した。参照としてDMSOを使用して、化学シフトをppmで報告した。FAB−MSを介したM−Scan,Inc.(West Chester,PA)により、逆相LC/MS分析を実施した。SymmetryTM C18、3.5μM、2.1×50mmカラム(Waters Corporation,Milord,MA)上で、LC−MSクロマトグラフィーを行った。これには、流速1mL/分かつ水中の10分勾配の15〜85%アセトニトリル(0.1%ギ酸の不変濃度を有する)を使用した。XH1の質量スペクトルおよび1H−NMRスペクトルを、図5に提示する。
【0186】
上に記載の合成経路を、このファミリーの他の二機能性分子の調製のために使用し、適合し得る。
【0187】
(実施例2:MRI造影画像化剤のファミリーの合成)
磁気共鳴画像法(MRI)によって検出可能な造影画像化剤を、実施例1に記載の二機能性分子から調製し得る。親の化合物の場合において下に示すように、MRI造影画像化剤Gd−XHlの合成は、ガドリニウム(III)(Gd3+)のXH1への挿入を含む。以前に報告された方法(M.S.Koningsら,Inorg.Chem.1990,29:1488−1491)に従って、この反応を実施した。
【0188】
【化19】
より詳細には、水(30mL)中のXH1(12.1g、25.0mmol)とガドリニウム酸化物であるGd2O3(4.53g、12.4mmol)との混合物を、5時間還流した。ガドリニウム錯体の透明の結晶を、1M NaOHで溶液のpHを6.5に調整することによって、定量的に形成した。
【0189】
(実施例3:SPECT造影画像化剤のファミリーの合成)
同様に、単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)によって検出可能な造影画像化剤を、実施例1に記載の二機能性分子から調製し得る。親の二機能性分子の場合において、この反応を下に示し、米国特許第4,434,151号に記載のpH6.5におけるスズの還元の手順を使用したテクネチウム99mの挿入によって、この反応を実施した。この反応は、テクネチウム錯体である化合物99mTc−XH1を定量的に生じる。
【0190】
【化20】
より詳細には、XH1(8.25g、0.17mmol)を、1.0mLのエタノールおよび1.0M酢酸ナトリウム(pH5.5)中に溶解し、そして生理食塩水中の99mTcO4−(5〜50mCi)の1.0mLのジェネレーター溶出物質(generator eluant)を、反応混合物に加える。エタノール1mLあたり2.0mgのSnCl2・H2Oを溶解することによって調製した0.2mLのスズ溶液の添加は、テクネチウム錯体を生成する。15〜30分後、標識効力を、電気泳動により決定し得る。
【0191】
(実施例4:二機能性分子の生物学的活性を試験するための無細胞アッセイ)
以下の段落において、本発明の二機能性分子の生物学的活性を試験するために使用し得る種々の無細胞アッセイを記載する。より詳細には、第1の一連のアッセイは、注目する二機能性分子の、Aβ凝集をもたらすアミロイド−βペプチドへのレドックス活性遷移金属イオンの結合を減少、阻害または、さもなくば干渉する能力を評価することを可能にする。第2の一連のアッセイは、注目する二機能性分子の、レドックス活性遷移金属イオンのアミロイド媒介性還元を阻害する能力を評価することを可能にする。第3の一連のアッセイは、本発明の二機能性分子の、活性酸素種(例えば、H2O2、O2・−、および・OH)の金属媒介性またはアミロイド媒介性の生成に対する阻害効果を評価することを可能にする。この節に記載する最後のアッセイは、二機能性分子の、金属誘導性Aβ凝集を分解する能力を評価することを可能にする。
【0192】
(金属−アミロイド−βペプチド結合の阻害)
レドックス活性遷移金属イオンのアミロイドタンパク質への結合は、(1)タンパク質の凝集および蓄積を促進すること、(2)遷移金属イオンを還元すること、および(3)活性酸素種(例えば、過酸化水素(H2O2)、スーパーオキシドラジカルアニオン(O2・−)およびヒドロキシラジカル(・OH))を作製することが公知である。本発明の二機能性分子の存在下において、これら3つのプロセスの効力は、少なくとも減少されるべきであり、最もよくて完全に阻害されるべきである。以下の無細胞アッセイを使用して、レドックス活性遷移金属イオンのアミロイド−βペプチドへの結合に対する本発明の二機能性分子の効果を、これら3つの二次的なプロセスに対する効果を評価することによって評価し得る。
【0193】
((a)Aβペプチドの合成)
W.M.Keck Foundation Biotechnology Resource Laboratory(Yale University,New Haven,CT)における固相Fmoc化学;Glabe Laboratory(University of California,Irvine,CA);またはMulthaup Laboratory(University of Heidelberg,Germany);またはU.S.Peptide,Inc.(Rancho Cucamonga,CA)から購入;またはAldrich−Sigma(St.Louis,MO)を使用して、ヒトAβペプチド(Aβ1〜40およびAβ1〜42)を合成した。逆相HPLC、アミノ酸配列決定、および質量分析による精製により、この合成を確認した。合成Aβペプチドを、トリフルオロエタノール(Milli−Q水中30%(Millipore Corporation,Milord,MA))または20mM HEPES(pH8.5)中に0.5〜1.0g/mLの濃度において溶解し、20分間10,000×gにおいて遠心分離した。この上清(ストックAβ)を、実験の日に続く実験のために使用した。
【0194】
Aβのストック溶液の濃度を、214nmにおけるUV分光またはMicro BCAタンパク質アッセイ(Pierce,Rockford,IL)によって決定した。10μLのストックAβ(またはウシ血清アルブミン(BSA)標準)を140μLの蒸留水に加え、次いで等しい体積のMicro BCAタンパク質アッセイ試薬(150μL)を96ウェルプレートに加え、562nmにおける吸光度を測定することによって、Micro BCAアッセイを行った。BSA標準曲線を使用して、Aβの濃度を決定した。使用のまえに、金属イオンのすべての緩衝液およびストック溶液(例えば、塩化物塩)を、0.22μmフィルター(Gelan Sciences,Ann Arbor,MI)を介してフィルター処理し、任意の粒子状物質を除去した。
【0195】
2つの異なる方法を使用して、XH1によるZn2+誘導性Aβ凝集の可逆性:混濁度および免疫濾過(immuno−filtration)を調べ得る。
【0196】
((b)濁度によって測定されるAβの金属誘導性凝集の阻害)
濁度測定を、以前に記載されたように行った(X.Huangら,J.Biol.Chem.1997,272:26464−26470)。67mMリン酸緩衝液、150mM NaCl(pH7.4)中で1時間、25μMの化合物XH1(親の二機能性分子)の存在下または非存在下において、Aβ1〜40(10μM)をZn2+(25μM)と共培養し、混濁度測定を1分間隔で4回行った。続いて、試験される10mMの二機能性分子の20μLアリコートまたは10mM Zn2+を代替的に混合物に加え、続いて2分遅れで、さらなる4回の測定を1分間隔で行った。二機能性分子の最後の添加および混濁度測定の後に、最後の測定を行う前に、この混合物をさらに30分間インキュベートした。コントロールの目的のために、化合物XH1の代わりにジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)を使用して、同じ実験を実施した(DTPAは、周知の金属キレート剤でもあり、XH1中に含まれる金属キレート部分でもある)。
【0197】
これらの実験の結果は、図8に提示され、DTPAと本発明の親の二機能性分子との両方が、溶液中のAβ1〜40のZn2+誘導性凝集を顕著に減少させ、DTPAについて観察される最も強力な効果を有することを示す。
【0198】
((c)免疫濾過(Immunofiltration)によって測定されるAβの金属誘導性凝集の阻害)
第2の方法において、本発明の二機能性分子の金属誘導性Aβ凝集に対する効果を評価するために、この第2の方法を使用し得、生理学的濃度のAβ(8nM)を、150mM NaCl、20mM HEPES(pH7.4)、100nM BSAをZnCl2(0、0.1μM、0.2μM、0.5μMおよび2μM)と共に含む混合物中に加え、試験される二機能性分子の存在下(1〜5μM)または非存在下においてインキュベートする(30分、37℃)。次いで、この反応混合物(200μL)を、96ウェルEasy−Titer ELISAシステム(Pierce,Rockford,IL)に配置し、0.22μmセルロースアセテートフィルター(MSI,Westboro,MA)を介してフィルター処理する。凝集した粒子を膜に固定し(0.1%グルタルアルデヒド,15分)、完全に洗浄し、次いで抗Aβモノクローナル抗体6E10(Senetek,Maryland Leights,MI)を用いて調査する。ブロットを洗浄し、ECL化学発光試薬(Amersham Biosciences Corp.,Piscataway,NJ)の存在下で、フィルムに感光させる。次いで、免疫ブロットからのECLフィルムの透過率の分析によって、免疫反応性を定量化する。
【0199】
(レドックス活性遷移金属イオンのアミロイド媒介性還元の阻害)
確立されたプロトコル(J.W.Landersら,Amer.Clin.Path.1958,29:590−592)の改変に基づく方法に従って、96ウェルマイクロタイタープレート(Corning Costar,Acton,MA)を使用して金属還元アッセイを行い得る。Aβペプチド(10μM)またはビタミンC(100μM)、金属イオン(10μM、Fe(NO3)3またはCu(NO3)2)、および還元した金属イオン指示薬であるバソフェナントロリンジスルホン酸(bathophenanthrolinedisulfonic acid)(BP、Fe2+について、200μM、Aldrich−Sigma)またはバソキュプロインジスルホン酸(bathocuproinedisulfonic acid)(BC、Cu+について、200μM、Aldrich−Sigma)を、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)(pH7.4)中で1時間37℃において、試験される発明の二機能性分子の存在下(200μM)または非存在下で同時にインキュベートする。この金属イオン溶液を、米国標準技術局(NIST)から購入する水溶性ストックから緩衝液中に直接的に希釈することによって、調製する。次いで、96ウェルプレートリーダー(SPECTRAmax 250,Molecular Devices,CA)を用いて、536nm(Fe2+−BP錯体)および483nm(Cu+−BC錯体)において、それぞれ吸光度を測定する。コントロールサンプルの吸光度をまた測定し、光散乱の寄与を評価し、これらの波長におけるバックグラウンドの緩衝液シグナルを決定する。それぞれの指示薬および二機能性分子の存在下で、ペプチドと金属によって作成される吸光度から、これらのコントロールからの吸光度を差し引くことによって、536nmまたは483nmにおける正味の吸光度(ΔA)を得る。
【0200】
還元金属イオン(Fe2+またはCu+)の濃度を、式:[Fe2+]または[Cu+]=(ΔA×106)/(ε×l)に基づいて定量化し、ここでlは、機器の仕様マニュアルで記載されるとおり(Fe2+について0.856cm;Cu+について1.049cm)、測定したウェルの300μLの容積についての等価垂直パスレングス(vertical pathlength)であり;εは、錯体についての公知の分子吸光度(すなわち、Fe2+−BPについての7124M−1cm−1およびCu+−BPについての2762M−1cm−1)である。
【0201】
(活性酸素種の金属媒介性生成およびアミロイド媒介性生成の阻害)
H2O2アッセイ。UV−透過96ウェルマイクロタイタープレート(Molecular Devices,CA)中で、既存のプロトコル(J.C.Hanら,Anal.Biochem.1996,234:107−109;およびJ.C.Hanら,Biochem.1994,220:5−10)から調整した手順に従って、H2O2アッセイを行い得る。Aβペプチド(Aβ1〜42またはAβ1〜40;10μM)またはビタミンC(10μM)、Fe3+もしくはCu2+(1μM)およびH2O2トラップ剤であるトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィンハイドロクロライド(TCEP,Pierce,50μM)を、PBS緩衝液(300mL,pH7.4)中で1時間37℃において、試験する本発明の二機能性分子の存在下(1〜5μM)または非存在下で、同時インキュベートする。同一の条件下で、カタラーゼ(Aldrich−Sigma,100U/mL)を、このペプチドと置き換え、H2O2なしを表すコントロールシグナルとする。インキュベーションに続いて、未反応のTCEPを、5,5−ジチオ−ビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB,Aldrich−Sigma)によって検出する。これは、2モルの有色生成物、2−(ニトロ−5−チオベンゾエート)(NTB)を作成する。この反応は、以下:
TCEP+H2O2→TCEP=O+H2O
のとおりであり、次いで残りのTCEPは、DTNBと反応する:
TCEP+DTNB+H2O→TCEP=O+2NTB
生成したH2O2の量を、以下の式:
H2O2(μM)=(ΔA*×106)/(2×l×ε)に基づいて定量化する。ここで、ΔA*は、412 nmにおけるサンプルとカタラーゼのみのコントロールとの間の絶対的な吸光度の差であり;l=0.875cm(プレートリーダーの製造者の仕様書から得る等価垂直パスレングス);そしてεは、NTBについての分子吸光度(412nmにおいて14,150M−1cm−1)である。TCEPは、強力な還元剤であって、ジスルフィド結合を含むポリペプチドと人為現象的に反応し得る。しかし、Aβはこのような化学結合を有していないので、この反応は、Aβとは起こり得ない。
【0202】
O2・−の検出のためのアッセイ。37℃のPBS(pH7.4)中で1時間、試験する本発明の二機能性分子の存在下(1〜5μM)または非存在下でインキュベーションした後に、Aβペプチド(Aβ1〜42またはAβ1〜40、10μM、1ウェルあたり300μL)の吸光度を測定する(96ウェルプレートリーダーを使用)ことによって、O2・−の生成を評価し得る。対応するブランクは、PBS単独由来のシグナルである。ペプチドが生成するシグナルについての絶対的な基線は、このアッセイにおいては達成できない。なぜならば、チロシン(Aβの残基10)についての吸収ピークが、O2・−についての吸光ピークと近い(254nm)からである。しかし、スーパーオキシドジスムターゼ(100U/mL)との同時インキュベーションによる吸光度の弱化は、吸光度シグナルの大部分は、O2・−の存在のためであるということを確認することを助ける。
【0203】
・OHの検出のためのチオバルビツール酸反応物質(TBARS)アッセイ。Fe3+またはCu2+とのインキュベーション混合物についてのチオバルビツール酸反応性物質(TBARS)アッセイを、確立されたプロトコル(J.M.Gutteridgeら,Biochim.Biophys.Acta,1983,759:38−41)から改変した96ウェルマイクロタイターフォーマットにおいて行い得る。アミロイド−βペプチド(Aβ1〜42またはAβ1〜40;10μM)またはビタミンC(100μM)を、試験する本発明の二機能性分子の存在下または非存在下で、PBS(pH7.4)中でFe3+またはCu2+(1μM)およびデオキシリボース(7.5mM,Aldrich−Sigma)と共にインキュベーションする。インキュベーション(37℃、1時間)に続き、氷酢酸および2−チオバルブリック酸(thiobarburic acid)(1%,0.05M NaOH中のw/v,Aldrich−Sigma)を加え、加熱する(100℃、10分)。最終的な混合物を、532nmにおける吸光度を測定する前に、氷上に3分間配置する。ビタミンCまたはAβペプチドを除いて同一の化学的成分からなるコントロールサンプル由来の吸光度を差し引くことによって、各サンプルについての正味の吸光度変化を得る。
【0204】
(金属誘導性Aβ凝集の再可溶化)
金属誘導性Aβ凝集の再可溶化を引き起こす本発明の二機能性分子の能力を評価するために、Aβ(Aβ1〜40またはAβ1〜42;10ng/ウェル(PBS中))凝集を、ZnCl2(25μM)、またはCuCl2(5μM)を加えることによって、最初に誘導する。次いで、フィルター処理によって、凝集を0.22μmのナイロン膜に移す。PBS単独、または2μMの試験する本発明の二機能性分子を含有するPBS、または2μMのClioquinolを含有するPBS(コントロールとして使用)を用いて、凝集を洗浄する(200μL/ウェル)。この膜を固定し、抗Aβモノクローナル抗体6E10を用いて調査し、ECLフィルムへの露光のために現像する。相対シグナル強度をECLフィルムの濃度測定分析によって決定し、既知の量のペプチドについて較正する。PBS単独で洗浄した後のフィルター上に残るAβシグナルのパーセンテージとして、値を表現する。
【0205】
(実施例5:二機能性分子を試験するための細胞ベースアッセイ)
(二機能性分子の神経毒性)
((a)E17ラット皮質一次ニューロン)
初代ニューロン培養物を使用して、親の二機能性分子(XH1)の神経毒性を試験した。G.J.BrewerおよびC.W.Cotman(Brain Res.1989,494:65−74において)によって記載のように、妊娠17日後の病原体を含まないメスSprague−Dawleyラット(Taconic Farms,MAから購入)から、E17ラット皮質一次ニューロンを得た。使用したプロトコルは、正確に定義した培養条件のもとで、低密度でのニューロンの長期間の培養を可能にした。このプロトコルは、90%までのニューロン培養を提供した。グリア細胞の小さな集団を、ラット皮質一次ニューロンと一緒に培養することが好ましい。なぜならこれらの細胞は、ニューロンの生存を補助するからである。シトシンアラビノシド(1μM)を使用して、培養調製物中のグリア細胞の増殖を制御した。ニューロン特異的エノラーゼ(および/または大グリア細胞特異的S100β)免疫組織化学を用いて、ニューロン集団を定期的に調べた。
【0206】
95%O2、5%CO2、湿度85%の条件の下で、37℃で4日間、B−27サプリメント(Life Technologies,Inc.)、20μM L−グルタミン酸、100単位/mL ペニシリン、0.1g/mL ストレプトマイシン、および2mM L−グルタミンを含む無血清NeurobasalTM培地中で、E17ラット皮質一次ニューロンを増殖させた。5日目(処置日)に、B−27サプリメントを含まない無血清NeurobasalTM培地+L−グルタミンで、培地を置き換えた。次いで、XH1(0、1または10μM)の存在下で、細胞をインキュベートし、XH1での処理の48時間後に、細胞生存率をアッセイした。LDH放出アッセイおよびMTTアッセイを、Roche(Nutley,NJ)から市販されるキットを使用して行い、それぞれ壊死性細胞死を評価し、細胞の代謝活性を決定した。
【0207】
これらのアッセイの結果を、3つのセットの実験において得られるデータを使用して計算した平均値として、図9Aに報告する。この結果は、XH1は、E17ラット皮質一次ニューロン中の低い高分子濃度において、任意の有意な細胞死を誘導しないことを示す。
【0208】
((b)ヒトSH−SY5Y神経芽腫細胞)
XH1の神経毒性をまた、ヒトSH−SY5Y神経芽腫細胞について試験した。SH−SY5Y細胞株を一般に使用し、神経突起生成、分化、および腫瘍形成を研究する(D.Vuら,Brain Res.Mol.Brain Res.2003,115:93−103)。SH−SY5Y細胞を、American Type Culture Collectionから得て、10%ウシ胎児血清(Gibco−BRL)および抗生物質を添加したダルベッコ改変イーグル培地中で増殖させた。
【0209】
ヒトSH−SY5Y神経芽腫細胞を、XH1の存在下(0、1、5または10μM)でインキュベートし(95%O2、5%CO2、湿度85%、37℃)、そして処理の48時間後に上に記載されるLDH放出アッセイを使用して、細胞生存を評価した。これらの実験の結果を図9Bに報告する。図9Bは、XH1は、ヒトSH−SY5Y神経芽腫細胞中の低い高分子濃度において、いかなる有意な細胞死をも引き起こさないことを示す。
【0210】
(金属調節性APPタンパク質発現に対する二機能性分子の効果)
いくつかの因子は、アミロイドタンパク質前駆体(APP)のレベルの増加とアルツハイマー病の発生との間の直接の関連を示唆する。APPは、ADと関連する。なぜならば、APPは、タンパク質切断を介してアミロイド斑中に蓄積するβ−ペプチドに処理され、そして、APP遺伝子変異は、早期のAD発症をもたらし得るからである。しかし、家族性ADの変異の存在下においてでさえも、トランスジェニックマウスにおけるAPPの過剰発現により、アミロイドフィラメント沈着とアルツハイマー様病理との発達の原因となるには十分なAβペプチド生成物を必要とすることが分かった。現在、生物学的関連状態におけるAPP合成および起こり得るAβペプチド分泌を制御する、翻訳調整機構についての重要な役割を支持する幾つかの報告が存在する(van Leeuwenら,Science,1998,279:242−247)。
【0211】
異なる実験を行って、APP合成およびその結果のAβ生成物を減少させるか、または阻害する、XH1およびそのアナログの能力を評価し得る。
【0212】
((a)APPタンパク質合成の決定)
SH−SY5Yヒト神経芽腫細胞において、APP合成を抑制するXH1の容量を、SDS−PAGEによって測定した。コントロールタンパク質(β−チューブリンおよび/または2つのアミロイド−前駆体様タンパク質(APLP1およびAPLP2)を使用して、本発明の二機能性分子の標的の抑制特異性を確認した。
【0213】
SDS−PAGE。SH−SY5Yヒト神経芽腫細胞を収集し、冷却PBSで3回洗浄し、次いでプロテアーゼインヒビターカクテル(Roche)と混合したM−PERTM哺乳動物タンパク質抽出試薬(Pierce)で溶解した。細胞溶解物を、低温度室の中で15分間13,000rpmにおいてボルテックスし、その上清を全体のタンパク質濃度についてBCAアッセイを行った。成形済みNuPAGETM4−12%ビス−トリスゲル(Invitrogen)上で、等しくタンパク質をローディングし(15μg/ウェル)、タンパク質ブロットを行った。200Vにおいて45分間電気泳動し、75mA/ゲルで95分間転写した。製造者の指示に従って、このブロットを一次抗体および二次抗体によって調べ、最後に15分間隔で2〜3時間洗浄した。次いで、このブロットを化学発光キット(Pierce)を使用して発光させた。
【0214】
この実験の結果を、図10に報告する。図10Aで示すとおり、XH1濃度における増加は、APP合成における減少をもたらしたが、同じ条件のもとでβ−チューブリン発現への効果はみられなかった。同様に、図10Bで示すとおり、XH1の存在は(10μMの濃度まで)、APLP1合成またはAPLP2合成に影響を与えなかった。これらのデータは、XH1の標的の抑制特異性を実証する。
【0215】
神経芽腫細胞の代謝標識。各処理の前に等しい数(96ウェルディッシュ中、1×105細胞/ウェル)で8マイクロタイターウェルに細胞をプレートした後、初代神経芽腫において、細胞内APPタンパク質合成を決定し得る。XH1、DPTAの存在下、または未処理のままで、細胞を48時間処理する。各処理の始めにおいて、1ウェルあたり1×105細胞が一致して存在することを確認するために、ランダムなウェルからの細胞をカウントする。神経芽腫細胞をメチオニンのない培地中で15分間プレインキュベートし、メチオニンのない培地(RPMI 1640;GIBCO)中で、300μCi/mL[35S]−メチオニンを用いて30分間パルス標識(pulse−labeled)した。各マイクロタイタープレートを、25mL STEN緩衝液(STEN緩衝液は、0.2%NP−40、2mM EDTA、50mMトリス、pH7.6であった)および無菌のガラス棒を用いて、神経芽腫細胞を溶解する前に、4℃の冷却PBS中で2回洗浄した。20mM PMSF、5mg/mLロイペプチンの溶解緩衝液への添加は、タンパク質分解を防ぐ。各ウェルからの緩衝液を、総量の300μLへプールする。各プールした溶解物の半分を、APPのカルボキシル末端に対して惹起した抗血清(APP−695のアミノ酸残基676〜695に対して惹起されたC−8抗体の1:500希釈)を用いて免疫沈降する。各溶解物の残りの部分を、ヒトフェリチン抗血清(1:500希釈、Boehringer)を用いて免疫沈降する。
【0216】
すべての標識実験において、免疫沈降したタンパク質を、抗体標識した抗原複合体のプロテインAセファロースTMビーズへの結合を介して収集する。免疫沈降したサンプルを、10〜20%トリス−トリシンゲル(Novex)に適用し、製造者の指示に従って、このサンプルをトリス−トリシン緩衝液中で電気泳動する。このゲルを、25%メタノール、7%(v/v)メタノールで1時間固定し、フルオログラフィック(fluorographic)試薬(Amplify,Amersham)で30分間処理し、乾燥させ、そして一晩−80℃でX−omat Kodakフィルムに感光させる。
【0217】
((b)APP mRNAレベルの決定)
比較のために、XH1のAPPプロセッシングに影響する能力を、リアルタイムRT−PCRによってAPPのmRNAレベルを測定することによって評価し得る。
【0218】
((c)細胞内Aβ1〜40およびAβ1〜42ならびに分泌Aβ1〜40およびAβ1〜42濃度の決定)
SH−SY5Y細胞のXH1での処理の後のAβ1〜40およびAβ1〜42の細胞内濃度と分泌濃度の両方を、Aβ40/42レベルについての市販のELISAキット(BioSource International)を使用して決定し得る。
【0219】
((d)スクリーニングアッセイ)
APPをコードするmRNAの5’非翻訳領域(5’−UTR)が、鉄反応性要素(J.T.Rogersら,J.Biol.Chem.2002,47:45518−45528)、すなわち、RNAステムループを含有することを実証した。RNAステムループは、フェリチンの翻訳およびトランスフェリチンレセプターmRNAの安定性を調節することによって、細胞内の鉄ホメオスタシスを制御する。鉄のレベルは、星状細胞中のAPP mRNAの翻訳を調節することが示されているが(J.T.Rogersら,J.Biol.Chem.1999,274:6421−6431)、一方、細胞内の鉄レベルは、神経芽腫細胞中のAPP合成を調節することが見出されている(J.T.Rogersら,J.Biol.Chem.2002,47:45518−45528)。さらに、鉄キレート剤(例えば、デスフェリオキサミン)の存在は、APP 5’−UTRが与える翻訳のダウンレギュレーションを誘導することを報告した。これは、鉄の流入によって、逆転することを観察した。
【0220】
J.T.Rogersおよび共同研究者は(J.Mol.Neurosci.2002,19:77−82)、潜在的な薬物が、APPをコードするmRNAの5’−UTRと相互作用することによって、APP発現を阻害するそれらの能力についてスクリーニングするためのトランスフェクションベースのアッセイを発展した。彼らは、このアッセイを使用して、異なる分類の薬物(レセプターリガンド相互作用の公知のブロッカー、細菌性抗生物質、脂質代謝に関わる薬物、金属キレート剤を含む)をスクリーニングする。
【0221】
Dr.Rogersとの共同研究において、初期に報告されたアッセイと類似のアッセイを使用して、mRNA 5’−UTRとの相互作用を介したAPP発現および必然的なAβ生成を減少させる、XH1ならびにそのアナログの能力を試験する。
【0222】
構築物調製。pSV2(APP)ルシフェラーゼおよびpSV2(APP)GFP構築物を、APP遺伝子の5’−UTR配列をそれぞれ下流のレポーター遺伝子(ルシフェラーゼおよび緑色蛍光タンパク質、GFP)と融合することによって作製した。これは、J.T.Rogersら,J.Mol.Neurosci.2002,19:77−82に記載される。
【0223】
トランスフェクション。ヒトSH−SY5Y神経芽腫細胞を、pGL−3、pGALおよびpGALA構築物由来の10μgのDNAを用いてトランスフェクトし、緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現する構築物に由来する5μgのDNAを用いて共トランスフェクトする。ルシフェラーゼおよびGFPレポーター遺伝子を、SV40プロモーターから発現する。製造者(Invitrogen)の指示に従って、LipofectAMINE−2000の存在下でトランスフェクションを行う。代表的には、各処理について、神経芽腫細胞をフラスコ(100mm2)中で増殖させる。各フラスコをトランスフェクトし(12時間)、続いて96ウェルプレートに等しく継代する。これは、各処理についてXH1(または別の試験する二機能性分子)およびデスフェリオキサミン(コントロールとして)へ48時間曝露するためである。
【0224】
48時間の処理の後、細胞生存度を各ウェルの顕微鏡検査によって確立する。自動化Wallac 1420マルチラベルカウンターを使用して、480/509nmの波長(GFP)を測定することによる各96ウェル中のGFPの相対発現によって、細胞生存度を確認する。GFPの読み出し情報を得た後、各96ウェルプレート中の細胞を、50μLのレポーター溶解緩衝液(Promega,Madison,WI)に溶解し、Wallac 1420カウンターを使用するルシフェラーゼアッセイを続ける。
【0225】
本発明の二機能性分子が、翻訳全体に対して非特異的な負の調節効果を示すという可能性を除外するために、レポーター(すなわち、APP、CAT、ルシフェラーゼ、およびGFP)の前のAPP 5’UTR配列のアンチセンス版を発現する構築物を使用することもまた、必要とされる。これらの構築物とのトランスフェクションは、スクリーニングする化合物が、APP−mRNAの正しい二次構築物に高い選択性を有して標的化されることを確実にする。特異性について最も基準になる検査は、APP遺伝子発現、合成、およびAβレベルが抑制される一方で、APLP1合成およびAPLP2合成ならびに5’−UTR駆動性遺伝子発現が、変化しないままかどうかを調べることである。
【0226】
(実施例6:本発明の二機能性分子によるAβアミロイドのエキソビボ溶解)
下に記載のアッセイを使用して、本発明の二機能性分子の、ヒト脳組織からAβ沈着物を抽出する能力を評価し得る。
【0227】
サンプルの調製。−80℃で保存した死後の組織を、組織病理学データおよび臨床的データを伴って得る。このサンプルの半分は、アルツハイマー病を有する患者由来であり、残りの半分は、年齢適合の健康な患者に由来する。アルツハイマー病を、Consortium to Establish a Register for Alzheimer’s Disease(CERAD)基準に従って神経炎性局面および神経細線維もつれの存在に特定の注意を払って、評価する(S.S.Mirraら,Neurology,1997,49:S14−16)。
【0228】
死後の脳組織からのAβアミロイドの抽出。前頭葉の同一の領域(0.5g)を、DIAX 900ホモジナイザー(Heidolph & Co,Kelheim,Germany)を使用してホモジナイズする。このホモジナイズは、EDTAを除いたプロテアーゼインヒビターの混合物(BioRad,Hercules,CA)を含む3mLの氷冷PBS(pH7.4)中か、または0.1〜2mMの本発明の二機能性分子もしくはClioquinol(コントロールとして使用)のどちらかの存在下において、十分な速度において、3回の30秒期間をストロークの間に30秒の休憩を伴って行う。PBS抽出可能画分を得るために、ホモジネートを、100,000×gにおいて30分間遠心分離し(Beckman J180,Beckman instruments,Fullerton,CA)、そして上清を収集し、1−mLのアリコートに分割し、氷上貯蔵するか、または即座に−70℃において凍結する。1−mLの上清サンプル中のタンパク質を、1:5の氷冷の10%トリクロロ酢酸を使用して沈殿させ、10,000×gにおいて20分間遠心分離することによってペレットとする。このペレットを、8%SDS、10%メルカプトエタノール、および8M尿素を含有するトリス−トリシンSDS−サンプル緩衝液中で10分間煮沸することによって、ポリアクリルアミドゲル電気泳動のために調製する。1mLのPBS中でホモジナイズし、上に記載のサンプル緩衝液中で煮沸することによって、皮質サンプル中の総Aβを得る。
【0229】
ポリアクリルアミドゲル電気泳動およびウエスタンブロッティング。トリス−トリシンポリアクリルアミドゲル電気泳動を、10ウェルの10〜20%勾配ゲルに(Novex,San Diego,CA)サンプルをロードすることによって行い、0.2mmニトロセルロース膜(BioRad,Hercules,CA)上へのウエスタントランスファーを続ける。モノクローナル抗体WO2(5と8との間のエピトープにおいてAβ1〜40およびAβ1〜42を検出する)、G210(カルボキシル残基40において終結するAβ種について特異的である)またはG211(残基42において終結するAβ種について特異的である)(N.Idaら,J.Biol.Chem.1996,271:22908−22914)を、ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ウサギ抗マウスIgG(Dako,Denmark)と一緒に使用してAβペプチドを検出し、化学発光(ECL,Amersham Biosciences Corp.,Piscataway,NJ)を使用して可視化する。各ゲルは、内部基準標準となる公知の量の合成Aβを含む2以上のレーンを含む。
【0230】
ブロットのスキャニングおよびAβについての透過濃度測定アッセイ。ブロットイメージを、透明性アダプターを有するRelisysスキャナー(Teco Information Systems,Taiwan)を使用してスキャンし、PCのために改変された(Scion Corporation,Frederick,MDによる)Image 1.6ソフトウェア(NIH,Bethesda,MD)を使用して、濃度測定を行い、段階拡散チャート(step diffusion chart)を使用して校正する。脳の抽出物中のAβの定量化のために、内部基準標準の合成Aβを利用して値が挿入される標準曲線を生成する。
【0231】
(実施例7:本発明のMRI造影画像化剤の特性)
(球状ファントム由来のMRIシグナル)
異なる溶液混合物(PBS(pH7.4)中で、Aβ1〜40、Aβ1〜42またはHSAの存在下もしくは非存在下において、造影画像化剤Gd−XH1またはGd−DTPAを含む)を、4.5−mLの中空の球(ポリプロピレン製)に注入し、3−T磁気スキャナー(Simens)に供した。Spin−Echoスキャニング様式を使用し、12TR値(TE=5ms)をR1=1/T1、およびR1(obs)=R1(0)+R1(Gd−XH1−Aβ1〜40またはGd−XH−Aβ1〜42)と一緒に使用して、各溶液についてT1シグナルを測定した。
【0232】
この実験の結果を、図11に報告する。この結果は、縦軸(T1)の磁気緩和(magnetic relaxation)速度に対するGd−XH1の効果を示す。Gd−XH1の濃度が増加するにつれて、T1は減少し、シグナルはより鮮やかになる。Gd−DTPA(コントロールとして使用した小さな親水性分子)とHSAまたはAβとの組み合わせについての効果は、観察されなかった。
【0233】
これらの実験の結果をまた、図12および図13に報告する。これらの図は、Gd−XH1は、特異的にAβ1〜40ペプチドと相互作用をする一方、HSAとはわずかにしか相互作用しないことを示す(図12)。さらに、図13で示すように、β−シートが豊富なAβ1〜42と結合する場合、低いβ−シート含有量を示す天然のAβ1〜40との結合と比較して、Gd−XH1の緩和速度が増加する。
【0234】
(ADマウスおよびヒトの脳組織抽出物由来のMRIシグナル)
ADマウス(PS1(M146V)xAPPTg2576)脳組織抽出物とヒト脳組織抽出物を、プロテアーゼインヒビターカクテル(Roche)と混合したT−PERTM組織タンパク質抽出試薬(Pierce)を用いて組織を溶解することによって、調製した。次いで、0.25mM Gd−XH1および10μg/mL(総タンパク質)抽出物を含む異なる溶液混合物を、4.5−mLの中空の球に注入し、そして上に記載の同じ実験プロトコルに供した。
【0235】
これらの実験の結果を、図14に報告する。これらの結果は、Gd−XH1と混合する場合、MRIシグナルが、ADマウスおよびヒトの脳組織抽出物中で増強されることを示す。
【0236】
(実施例8:ADの動物モデル中のAβアミロイド沈着物のMRI検出)
アルツハイマー病の動物モデルにおけるアミロイド沈着物の存在を検出するための方法を、本明細書中に記載する。この方法は、Gd−XH1の使用に基づいた。上に示すように、Gd−XH1は、特異的にAβ1〜40およびAβ1〜42と相互作用する。さらに、ADマウスおよびヒトの脳組織抽出物由来のMRIシグナルは、これらの抽出物をGd−XH1と混合した場合に増強することを見出した。
【0237】
この一連の実験において使用した動物モデルは、トランスジェニックTg2576マウス系統であり、Tg2576マウス系統は、家族性AD遺伝子変異を有するヒトアミロイド前駆体タンパク質(APP)を過剰発現し、ADの神経病理学的特性(例えば、記憶の欠損(memory deficit)および脳の特定の領域におけるアミロイド沈着物の加齢性形成)を示す。MGH/MIT/HMS Athinoula A.Martinos Center for Functional and Structural Biomedical Imaging(Department of Radiology,Massachusetts General Hospital,Boston,MA)において、小さな9.4 T MRIシステム(400MHz;Magnex Scientific,Kidlington,UK)を使用して、イメージングを実施した。
【0238】
インビボでのGd−XH1の毒性をまず評価するために、PS1(M146V)xAPPTg2576マウス(約6ヶ月齢;1群あたり5匹)に、体重1kgあたり30mgの用量のGd−XH1を、4週間毎日腹腔内に注射した。コントロールは、同じ用量のGd−DTPAの注射、および未処置を含む。Gd−XH1の急性毒性は、観察されなかった。
【0239】
第1の一連の試験実験を実施し、Gd−XH1のMRIイメージング造影能力を評価した。Gd−XH1をメチルセルロースと混合し、懸濁剤として調製した。1匹の雄Sprague−Dawleyラット(8ヶ月齢)に、体重1kgあたり10mgの一回用量のこの懸濁剤を、腹腔内に注射した。注射の1時間後、連続スキャニング様式を使用して、4.7 T MRI機器(GE)でその動物をイメージングした。形態MRI像とS/NレシオメトリックMRI像との両方を、記録した。得たイメージの一部を、図15に示す。i.p.注射の1時間後、シグナル対ノイズ比の8%増加を観察した。T1加重したシグナル強度における増加は、広範囲に及ぶように見え、これは、Gd−XH1が、BBB透過性でもあり骨格筋透過性でもあることを示す。
【0240】
ラットの代わりにAPPトランスジェニックマウスを使用して、さらなる実験を実施する。より詳細には、5〜10匹のAPPトランスジェニックTg2576マウスの一群に、体重1kgあたり0.1mmolの一回用量の発明のMRI造影画像化剤(例えば、DMSOおよびPBSの混合物(60:40;v:v)中のGd−XH1)を腹腔内に注射した。比較のために、5〜10匹のPS1(M146V)xAPPTg2576マウスの別の群に、体重1kgあたり0.1mmolの一回用量のコントロールの造影剤(PBS中)を腹腔内に注射する。このコントロールのイメージング薬剤は、本発明の造影画像化剤よりも同じ常磁性金属に錯化する同じ金属キレート部分を含むが、本発明の造影画像化剤と逆に、いずれのアミロイド結合部分も含まない。例えば、造影画像化剤Gd−XH1の場合において、Gd−DTPAをコントロールとして使用する。注射の後、両方の群の動物をMRIによって画像化する。トランスジェニックマウスにおける脳のAβアミロイド像の増強に対する本発明のMRI造影画像化剤の効果を、動物の屠殺後のAβ免疫染色によって評価し、確認する。
【0241】
(実施例9:α−リポ酸部分を含有する二機能性分子のファミリーの合成)
新規な二機能性分子の第2のファミリーを設計し、発展させる。新しい二機能性分子は、直接的に1つのアミロイド結合部分と共有結合する1つの金属キレート部分を含む。この金属キレート部分は、このファミリーのすべての二機能性分子に共通であり、α−リポ酸である。α−リポ酸は、強力な抗酸化特性を有することがまた公知である。図6Aに示されるように、このファミリーの親の分子のアミロイド結合部分は、第1のファミリーの二機能性分子において使用されるものよりも、同じベンゾチオフラビン誘導体である(実施例1)。
【0242】
このファミリーの他のメンバーは、親の二機能性分子のアナログであり、ここでベンゾチアゾール部分の芳香環は、1以上の1つの官能基(例えば、4−ジメチルアミノ;4−アミノ;4−クロロ;4−クロロ−5−エチル;4−アセチル;5−カルボキシル;5−スルホノキシル;5−ブロモ;4−メチル、5−メチルまたは6−メチル;5−トリフルオロメチル;4−エトキシル;4−メチルスルホニル、5−メチルスルホニルまたは6−メチルスルホニル;および4−ヒドロキシ、5−ヒドロキシまたは6−ヒドロキシルを含む)で置換される(図6Bを参照のこと)。
【0243】
このファミリーの親の二機能性分子(化合物XH2)の合成を、本明細書中に記載する。XH2の調製は、金属キレート部分とアミロイド結合部分との間のアミド結合の形成を包含する。以前に刊行された合成方法(W.E.Klunkら,Life Sci.2001,69:1471−1484;D.Shiら,J.Med.Chem.1996,39:3375−3384;およびM.S.Koningsら,Inorg.Chem.1990,29:1488−1491)から適合する手順に従って、この反応を実施する。
【0244】
室温の塩化メチレン中の1mgリポ酸(Aldrich Chemical)の攪拌溶液に対して、2滴のDMFを添加した。この溶液に、0.5mLの塩化オキサリルを滴下した。反応の表面は、少量のガスの発生を示した。発泡が止んだ場合、この混合物を、15mLの塩化メチレン中の1.2mgの4−ベンゾチアゾール−2−イル−フェニルアミンおよび1mLのN,N−ジイソプロピルエチルアミンの溶液で処理した。濃い緑色の混合物を、室温で1時間攪拌した。この混合物を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過してエバポレートし、固体を生じた。これを酢酸エチルで砕き
、真空下で乾燥させXH2を得た(90%)。この構造を、1H−NMRによって確認した(図7を参照のこと)。
【図面の簡単な説明】
【0245】
【図1】図1は、コンゴレッド(図1A);クリサミン−G(図1B);(トランス,トランス)−1−ブロモ−2,5−bis−(3−ヒドロキシカルボニル−4−ヒドロキシ)−スチリルベンゼン(Fig.1C);4’−ヨード−4’−デオキシドキソルビシン(Fig.1D);およびチオフラビンT(図1E)の化学構造を示す。これらがアミロイドに対して高い親和性を示すことが、当該分野において公知である。
【図2】図2は、バソフェナントロリン(bathophenanthroline)(図2A)、バソクプロイン(bathocuproine)(図2B)、デスフェリオキサミン(図2C)、ペニシラミン(図2D)、EDTA(図2E)、EGTA(図2F)、DTPA(図2G)、TETA(図2H)、TPEN(図2I)、およびα−リポ酸(図2J)の化学構造を示す。これらは、周知の金属キレーターである。
【図3】図3は、DOTA(図3A)、TTHA(図3B)、ECD(図3C)、EDTMP(図3D)、およびHMPAO(図3E)の化学構造を示す。これらが画像化技術によって検出可能な金属実体を錯化することが、当該分野で公知である。
【図4】図4は、DTPAを含み、金属キレート部分として作用し、2つの同一のアミロイド結合部分に共有結合する新しい二機能性分子のファミリーの化学構造を示す。これらは、チオフラビン誘導体である。このファミリーの親分子(化合物XH1)および種々のアナログは、図4Aおよび図4Bにそれぞれ提示される。
【図5】図5は、化合物XH1の化学的特徴付けの結果を示す。XH1の質量スペクトルおよび1H−NMRスペクトルは、図5Aおよび図5Bにそれぞれ提示される。
【図6】図6は、α−リポ酸を含み、金属キレート部分として作用し、1つのアミロイド結合部分に共有結合する新しい二機能性分子のファミリー、チオフラビン誘導体の化学構造を示す。このファミリーの親分子(化合物XH2)および種々のアナログは、図6Aおよび図6Bにそれぞれ提示される。
【図7】図7は、化合物XH2の化学的特徴付けの結果を示す。XH2の質量スペクトルおよび1H−NMRスペクトルは、図7Aおよび図7Bにそれぞれ提示される。
【図8】図8は、二機能性分子XH1および金属キレート化合物DTPAの存在の、Aβ1〜40の凝集に対する効果を示すグラフである。凝集は、400nmにおける濁度の測定によって評価される。
【図9】図9は、E17ラット皮質一次ニューロンの生存度(図9A)、およびヒトSH−SY5Y神経芽細胞腫細胞(図9B)に対するXH1の効果を示す。細胞の生存度を、XH1による処置の48時間後、MTTアッセイおよび/またはLDH放出アッセイを用いて評価した。データは、平均細胞生存(未処理培養物の%)±標準偏差として報告される。少なくとも3回の実験がXH1の各濃度について行われた。
【図10】図10は、APP発現に対するXH1濃度の上昇の効果(図10A)およびコントロールとして使用された種々のタンパク質:β−チューブリン(図10A)、APLP1およびAPLP2(図10B)の効果を示すSDS−PAGEゲルを提示する。タンパク質合成を、SH−SY5Yヒト神経細胞芽種細胞をXH1で処理した48時間後に測定した。A8717を、APPのための検出抗体として使用した。
【図11】図11は、Aβ1〜40またはHSAの存在下または非存在下で造影画像化剤(Gd−XH1またはGd−DTPA)とともにインキュベートされた球状ファントムから測定されたT1−加重MRIシグナルを示す。A1−5において、Gd−XH1は、0mM(A1)と0.5mM(A5)との間の濃度で存在する。B1−5において、Gd−DTPAは、0mM(B1)と1mM(B5)との間の濃度で存在する。レーンCの球状ファントムの全ては、0.025mMのHSAおよび0mM(C1)と0.25mM(C5)との間の濃度で存在するGd−XH1を含む。レーンDの球状ファントムは、0.5mMのGd−XH1および0mM(D1)と0.025mM(D5)との間のAβ1〜40を含み、一方レーンEの球状ファントムの全ては、1mMのGd−XH1および0mM(E1)と0.025mM(E5)との間のAβ1〜40を含む。造影画像化剤濃度の上昇は、より短いT1、したがってより明るいシグナルを生じる。これらの実験において、シグナルの飽和は観察されなかった。
【図12】図12は、球状ファントムからのMRIシグナルの変動を、ファントム中に存在する造影画像化剤(Gd−XH1またはGd−DTPA)およびタンパク質(HSAまたはAβ1〜40)の関数として示す2つのグラフを提示する。図12Aにおいて、R1(すなわち、1/T1)のパーセント上昇が、Aβ1〜40の濃度の関数として、造影画像化剤、Gd−XH1およびGd−DTPAの両方に関して報告される。図12Bにおいて、R1は、HSA(0.025mM)の存在下または非存在下で、種々の濃度のGd−XH1に関して報告される。
【図13】図13は、Gd−DTPA(0.25mM)またはGd−XH1(0.25mM)、および種々の濃度のAβ1〜42を含む球状ファントムから測定された、R1(すなわち、1/T1)として報告されるMRIシグナルの変動を示すグラフである。
【図14】図14は、MRIシグナルを示す。このシグナルは、Gd−XH1(0.025mM)と混合される場合、ADマウスおよびADのヒトの脳組織抽出物において増強される。
【図15】図15は、MRI画像を示す。第一の画像のシリーズ(図15Aに示される)は、ラット脳の基線画像であり、解剖学的特徴を示す。第二の画像のシリーズ(図15Bに示される)は、Gd−XH1のi.p.注入の約1時間後に測定された、MRIシグナルの上昇のパーセントをマッピングする。
【技術分野】
【0001】
(政府の利益)
本明細書において記載される研究は、National Institutes of Health/National Institute of Mental Healthによって資金提供された(助成金番号5K01 MH002001−02)。合衆国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0002】
(関連する出願)
本出願は、特許仮出願番号60/441,719(2003年1月22日出願、本明細書において、その全体が参考として援用される)に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
アミロイドーシスは、身体の一以上の器官および組織における、アミロイドと呼ばれるタンパク質様物質の蓄積によって特徴付けられる疾患および障害の群である。アミロイド蓄積は、全身的または局所的に生じ得、正常な生命機能を障害し得、そして器官不全を引き起こし得る。少なくとも15の型のアミロイドーシス(各々が、異なる種類のアミロイドタンパク質の沈着に関連する)が、同定されている。蓄積されたタンパク質の性質および集積の位置は、症状を決定する。これらの症状は、軽度から生命を脅かす程度まで変化し得る。アミロイド沈着は、アルツハイマー病、成人発症糖尿病、慢性炎症性疾患、透析関連関節症、腫瘍および家族性ニューロパシーのような、臨床状態の病理の重要な部分である。
【0004】
アミロイドーシスにおいて、通常の可溶性および機能性タンパク質の、不溶性βシートに富んだ4次構造への異常なフォールディングおよび重合は、その凝集したタンパク質の細胞からの排出、そして細胞外アミロイド沈着(すなわち、原線維、フィラメント、プラーク、およびもつれ)を形成する。このような転換を起こし得る20種のタンパク質の中で、いくつかは、優先的に脳内に蓄積し、神経変性状態に関連する。これらのタンパク質としては、例えば、プリオンタンパク質(これは、プリオン病に関連する);アミロイドβペプチド(Aβ)(この沈着は、アルツハイマー病、ダウン症候群、レヴィー小体痴呆、アミロイドーシスを伴う遺伝性大脳出血(オランダ型)、グアム・パーキンソン痴呆、および頭部外傷の患者の脳内で見出される)、が挙げられる。
【0005】
アミロイドーシスは、一般的に、まれな病態生理学的状態であるが、アルツハイマー病(AD)は、合衆国で最も一般的な痴呆の形態である。疫学的研究は、80代後半の全ての人々の40%〜50%がADを有すると推測している(D.A.Evansら,JAMA,1989,262:2551−2556;R.Katzman,Neurology,1993,43:13−20)。この疾患の最初の症状は、通常、記憶の欠損であり、言語、認識および運動の障害、そして最終的に精神機能の消失が続き、患者は、非常に衰弱し、毎日の世話を全面的に他の人々に依存するようになる。この悪化は、非可逆性であり、最終的に死をもたらす。個人および家族に対して大きな影響を有することに加えて、ADはまた、主要な公衆衛生上の問題を提起する。National Institute on Agingによると、推定400万人の米国人が、現在この疾患を有し、そして各年でおよそ360,000の新規症例が診断されている。(R.Brookmeyerら,Am.J.Public.Health.1998,88:1337−1342)。AD患者に対する介護の、国の年間での直接的および間接的な費用は、およそ1000億ドルと推定されており(R.L.Ernstら,Arch.Neurol.1997,54:687−693)、ADはまた、社会において重大な経済的負担を生じさせている。
【0006】
アルツハイマー病患者において、アミロイド−βペプチドの凝集は、大脳の脈管構造におけるアミロイド沈着物の形成、および新皮質における老人斑を生じさせる(C.L.Mastersら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1985,82:4245−4249)。診断は、侵襲的な生検なしで確定するのは困難であり、脳組織の剖検を通じて明確に達成されるのみであるので(G.McKhannら,Neurology,1984,34:939−944;D.M.Mann,Mech.Ageing Dev.1985,31:213−255)、ADの研究は、依然として困難な課題であり、これまで、処置および治療の開発は、捕らえどころのないものであった。「認知増強剤」として作用する、種々のFDAが認可した治療(例えば、Aricept(登録商標)、Cognex(登録商標)、Exelon(登録商標)およびMentane(登録商標))は、一部のAD患者においてわずかな軽減を提供する。しかし、これらの薬剤は、この疾患の根本的な経過を変化させず、現在のところ、アルツハイマー病に対する療法または有効な処置は、その発症のいずれの段階においても存在しない。
【0007】
アミロイド蓄積は、ニューロンの細胞死が多い領域に最も集中していることが一貫して見出されている。この関係は、アミロイド−βペプチドが、特定のβ−シート構造で凝集する場合、高いニューロン毒性を得るという事実によって支持される(J.Y.Kohら,Brain Res.1990;533:315−320;B.A.Yanknerら,Science,1990,250:279−282)。増加する証拠は、アミロイド沈着が、AD患者において見られるニューロンの機能障害と密接に関連することを示唆する(J.W.Kelly,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1998,95:930−932)が、毒性およびAβ沈着を引き起こす神経化学的現象の機構は、未だ不明である。
【0008】
遷移金属は、近年、アルツハイマー病の病原において重大な役割を果たすことみなされている(C.S.Atwoodら,Met.Ions Biol.Syst.,1999,36:309−364;A.I.Bush,Curr.Opin.Chem.Biol.2000,4:184−191)。マウスおよびヒトにおいて、鉄および銅のレベルが、脳を含むいくつかの組織において正常な加齢とともに増加することが示された(H.R.Massieら,Mech.Ageing Dev.1979,10:93−99;B.Drayerら,Am.J.Roentgenol.1986,147:103−110;G.Bartzokisら,Magn.Reson.Imaging 1997,15:29−35;L.Del Corsoら,Panminerva Med.2000,42:273−277)。遷移金属の不均衡はまた、AD患者の脳において観察されており(J.R.Connorら,J.Neurosci.Res.1992,31:327−335;D.A.Loefflerら,Brain Res.1996,738:265−274;M.A.Deibelら,J.Neurol.Sci.1996,143:137−142;R.Cornetら,Neurotox.1998,19:339−345)、ここで、亜鉛、銅および鉄は、アミロイドプラーク内およびアミロイドプラークの周辺に集中して見出される(M.A.Lovellら,J.Neurol.Sci.1998,158:47−52)。さらに、アミロイド−βペプチドは、遷移金属イオンに高い親和性を示し、AβへのZn2+の結合、およびより低い程度でCu2+およびFe3+の結合は、その凝集およびアミロイド沈着物の形成を顕著に増加させる(A.I.Bushら,Science,1994,265:1464−1467)。どちらのプロセス(凝集および沈着)も、金属キレート剤の存在によって逆転され得る(X.Huangら,J.Biol.Chem.1997,272:26464−26470;C.S.Atwoodら,J.Biol.Chem.1998,273:12817−12826;R.A.Chernyら,J.Biol.Chem.1999,274:23223−23228)。
【0009】
タンパク質凝集およびアミロイド蓄積の促進に加えて、レドックス活性遷移金属(すなわち、Cu2+およびFe3+)のAβへの結合はまた、活性酸素種の生成を引き起こす(X.Huangら,J.Biol.Chem.1999,274:37111−37116;X.Huangら,Biochem.1999,38:7609−7616;L.M.Sayreら,J.Neurochem.2000,74:270−279)。この活性酸素種の生成は、多様な生体分子に対して有害な作用を有することが知られている。生体金属媒介性およびアミロイド媒介性の活性酸素種の生成は、少なくとも部分的に、AD患者の脳で観察される酸化的ストレスの原因であると考えられている(M.A.Pappollaら,Am.J.Pathol.1992;40:621−628;W.R.Markesbery,Free Radic.Biol.Med.1997,23:134−147;P.Gabbitaら,J.Neurochem.1998,71:2034−2040;M.A.Smithら,Antioxid.Redox Signal,2000,2:413−420;M.P.Cuajungcoら,J.Biol.Chem.2000,275:19439−19422)。
【0010】
遷移金属イオンがアルツハイマー病の病理学的作用のいくつかにおける役割を果たし得るという発見は、診断法および治療的処置の開発のための新しい経路を提供した。例えば、米国特許第6,323,218号において、金属キレーターまたは金属錯化化合物(例えば、EDTA、バソフェナントロリン(bathophenanthroline)、バソクプロリン(bathocuproine)、およびペニシラミン)は、アミロイドーシスに関連する病態生理学的状態の処置のための治療法として記載される。近年、クリオキノール(経口の、生体利用可能な金属キレーター)が、アルツハイマー病のためのTg2576トランスジェニックマウスモデルにおいて、大脳皮質アミロイド蓄積の顕著な阻害を誘導することが、示された(R.A.Chernyら,Neuron.2001,30:665−676)。これらの研究の結果は、有望であり、そして金属キレーターがアミロイド蓄積に関連する状態の処置のための治療的価値があるかもしれないことを示唆するが、多くの非特異的金属キレーターは、他の金属を必要とする生物分子の正常な生理学的機能を混乱させ得るので、それらの潜在的な副作用は、臨床的使用のためにはあまりにも大きいことが判明する可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、一般的なアミロイドーシス、および特にアルツハイマー病の、早期診断、予防、ならびに処置のための有効な治療剤および方法の開発が、依然として非常に望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
本発明は、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態の診断、予防および処置に関する。特に、本発明は、アミロイド沈着の存在を検出するため、ならびにアミロイド関連状態を予防または処置するための試薬および戦略を包含する。特定の好ましい実施形態において、本発明は、脳におけるアミロイドおよびアミロイド様タンパク質の凝集および蓄積に関連する病態生理学的状態の、診断、予防および処置を可能にする。
【0013】
一局面において、本発明は、金属キレーターとして作用し、そしてアミロイド沈着に対してある程度の誘引力を示す標的化治療試薬を提供する。より具体的には、本発明は、少なくとも一つのアミロイド結合部分に結合した少なくとも一つの金属キレート部分を含む、二機能性分子を提供する。好ましくは、上記アミロイド結合部分は、Aβアミロイド沈着物に対して高い親和性および特異性を示す。特定の好ましい実施形態において、上記アミロイド結合部分は、血液脳関門透過性である。例えば、特定のこのような実施形態において、上記アミロイド結合部分は、ベンゾチアゾール誘導体であり得る。他の好ましい実施形態において、上記金属キレート部分は、生物学的に関連のある遷移金属イオン(例えば、亜鉛(II)(Zn2+)、銅(II)(Cu2+)、および鉄(III)(Fe3+))と高親和性で結合する。例えば、このような実施形態において、上記金属キレート部分は、DTPAまたはα−リポ酸誘導体であり得る。
【0014】
本発明の好ましい二機能性分子としては、化合物XH1およびそのアナログが挙げられ、これらの化学構造は、図4に提示される。他の好ましい本発明の二機能性分子としては、化合物XH2およびそのアナログが挙げられ、これらの化学構造は、図6に提示される。
【0015】
別の局面において、本発明は、アミロイド沈着に対してある程度の誘引力を示し、そして画像化技術によって検出可能な標的化試薬を提供する。より具体的には、本発明は、少なくとも一つのアミロイド結合部分と結合した少なくとも一つの画像化部分を含む、造影画像化剤を提供する。特定の好ましい実施形態において、上記アミロイド結合部分は、血液脳関門透過性である。好ましくは、上記アミロイド結合部分は、Aβアミロイド沈着物に対する高い親和性および特異性を示す。例えば、好ましいアミロイド結合部分は、ベンゾチアゾール誘導体であり得る。画像化部分は、画像化技術によって検出される、当該分野で公知の任意の適切な実体であり得る。特定の好ましい実施形態において、上記画像化部分は、検出可能な金属実体に対して錯化される少なくとも一つの金属キレート部分を含む。好ましくは、上記金属キレート部分は、生理学的に受容可能な金属実体に対して錯化される。好ましい実施形態において、上記金属実体は、常磁性金属イオンであり、そして上記造影画像化剤は、磁気共鳴画像法(MRI)によって検出可能である。好ましくは、上記常磁性金属イオンは、ガドリニウム(III)(Gd3+)である。他の好ましい実施形態において、上記金属部分は、放射性核種であり、そして上記造影画像化剤は、単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)によって検出可能である。好ましくは、上記放射性核種は、テクネチウム−99m(99mTc)である。
【0016】
本発明はまた、核磁気共鳴(NMR)によって検出可能な安定常磁性同位体で標識された、少なくとも一つのアミロイド結合部分と結合した、少なくとも一つの金属キレート部分を含む、造影画像化剤を提供する。好ましい実施形態において、上記安定常磁性同位体は、炭素−13(13C)またはフッ素−19(19F)であり;そして上記造影画像化剤は、磁気共鳴分光法(MRS)によって検出可能である。
【0017】
好ましい本発明の造影画像化剤は、本明細書において記載される二機能性分子のガドリニウム(III)(Gd3+)錯体である。
【0018】
別の局面において、本発明は、薬学的組成物を提供する。本発明の薬学的組成物は、少なくとも一種の本発明の試薬またはその生理学的に耐容性の塩、および少なくとも一種の薬学的に受容可能なキャリアを含有する。これらの薬学的組成物において、上記試薬は、その意図される目的を果たすのに十分な量で存在する。より具体的には、本発明は、少なくとも一種の有効量の二機能性分子またはその生理学的に耐容性の塩、および少なくとも一種の薬学的に受容可能なキャリアを含有する薬学的組成物を提供する。画像化有効量の少なくとも一種の造影画像化剤またはその生理学的に耐容性の塩、および少なくとも一種の薬学的に受容可能なキャリアを含有する薬学的組成物もまた提供される。好ましい実施形態において、上記造影画像化剤中の画像化部分は、ガドリニウム(III)(Gd3+)またはテクネチウム−99m(99mTc)に対して錯化された、少なくとも一種の金属キレート部分を含む。他の好ましい実施形態において、上記造影画像化剤の中のアミロイド結合部分は、炭素−13(13C)またはフッ素−19(19F)で標識される。
【0019】
なお別の局面において、本発明は、インビトロまたはインビボにおけるアミロイド毒性を減少または阻害するための方法を提供する。特定の好ましい実施形態において、本発明は、アミロイド蓄積を予防、減速もしくは停止するか;および/またはアミロイド沈着物の溶解を促進、誘導もしくは容易にすることによって、アミロイド毒性の減少または阻害を可能にする。他の好ましい実施形態において、本発明は、アミロイド媒介性の活性酸素種産生を、減少、阻害もしくは妨害することによって、アミロイド毒性の減少または阻害を可能にする。
【0020】
より具体的には、系においてアミロイド毒性を減少または阻害するための方法が提供され、この方法は、上記系と、本発明の二機能性分子もしくはその薬学的組成物とを接触させる工程を包含する。上記系は、アミロイド沈着物を産生および/または含有素し得ることが知られているあらゆる生物学的実体であり得る。例えば、上記系は、細胞、生物学的流体、生物組織または動物であり得る。上記系は、生きている患者に由来し得る(例えば、生検によって得られ得る)か、または死亡した患者に由来し得る(例えば、剖検において得られ得る)。患者は、ヒトまたは別の哺乳類であり得る。好ましい実施形態において、上記細胞、生物学的流体または生体組織は、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態を有すると疑われる患者に由来する。
【0021】
本明細書において、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態を有する患者を処置するための方法が提供され、この方法は、患者に、有効量の本発明の二機能性分子またはその薬学的組成物を投与する工程を包含する。特定の好ましい実施形態において、上記病態生理学的状態は、アミロイド−βペプチドの蓄積に関連する。
【0022】
なお別の局面において、本発明は、系または患者におけるアミロイド沈着物の存在を検出するための方法を提供する。好ましい実施形態において、本発明の方法は、標的化造影画像化剤および画像化技術の使用に基づく。
【0023】
より具体的には、本発明は、系におけるアミロイド沈着物の存在を検出するための方法を提供し、この方法は、上記系と、画像化有効量の造影画像化剤またはその薬学的組成物とを、接触させる工程を包含する。この接触は、好ましくは、上記造影画像化剤と上記系に存在するアミロイド沈着物とを相互作用させる条件下で行われ、これによって、この相互作用が、アミロイド沈着物への造影画像化剤の結合を生じさせる。次いで、上記系に存在するアミロイド沈着物に結合する造影画像化剤は、画像化技術を用いて検出され、そしてこの系の少なくとも一部の一以上の画像が作製される。特定の好ましい実施形態において、本発明の方法は、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態の処置のための潜在的な治療剤を同定するために、使用される。本発明は、本方法によって同定される治療剤を包含する。
【0024】
本発明はまた、患者におけるアミロイド沈着物の存在を検出するための方法を提供する。これらの方法は、患者に、画像化有効量の標的化造影画像化剤またはその薬学的組成物を投与する工程を包含する。投与は、好ましくは、上記造影画像化剤と上記患者に存在するアミロイド沈着物とを相互作用させる条件下で行われ、これによって、この相互作用が、アミロイド沈着物への造影画像化剤の結合を生じさせる。投与後、患者中に存在するアミロイド沈着物に結合する造影画像化剤は、画像化技術を用いて検出され、そしてこの患者の身体の少なくとも一部の一以上の画像が作製される。
【0025】
特定の好ましい実施形態において、系または患者におけるアミロイド沈着物の存在を検出するための本発明の方法は、造影画像化剤を用いて行われ、この造影画像化剤において、画像化部分は、常磁性金属イオンに錯化された少なくとも一種の金属キレート部分を含有し;検出は、磁気共鳴画像法(MRI)によって行われ;そしてMR画像が作製される。好ましくは、上記常磁性金属イオンは、ガドリニウム(III)(Gd3+)である。他の好ましい実施形態において、本発明の方法は、造影画像化剤を用いて行われ、この造影画像化剤において、画像化部分は、放射性核種に錯化された少なくとも一種の金属キレート部分を含有し;検出は、単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)によって行われ;そしてSPECT画像が作製される。好ましくは、上記放射性核種は、テクネチウム−99m(99mTc)である。さらに他の好ましい実施形態において、本発明の方法は、造影画像化剤を用いて行われ、この造影画像化剤において、アミロイド結合部分は、安定常磁性同位体で標識され;検出は、磁気共鳴分光法(MRS)によって行われ;そしてMR画像が作製される。好ましくは、上記安定常磁性同位体は、炭素−13(13C)またはフッ素−19(19F)である。
【0026】
特定の実施形態において、本発明の方法は、患者中のアミロイド沈着物を位置決めするために使用される。他の実施形態において、本発明の方法は、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態を診断するために使用される。なお他の実施形態において、本方法は、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態の進行を追跡するために使用される。さらに他の実施形態において、本方法は、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態のための処置に対する患者の応答をモニタリングするために使用される。
【0027】
本明細書に記載される二機能性治療用分子、標的化造影画像化剤、薬学的組成物、および方法はまた、ヒト以外の哺乳動物に影響を及ぼすアミロイド関連状態を診断、予防または処置するために使用され得る。例えば、それらは、ヒトアミロイドーシスのための動物モデルの症例において、および動物プリオン疾患(例えば、ウシにおけるウシ海綿状脳症;ヒツジにおけるスクレイピー;ミンクにおける伝染性脳症;ならびにミュールジカおよびヘラジカにおける慢性消耗病)において有用であり得る。
【0028】
本発明の他の局面、特徴、および利点は、以下の詳細な説明から明らかとなる。しかし、この詳細な説明および特定の実施例が、本発明の好ましい実施形態を示す一方で、説明のみの目的で示されることを、理解すべきである。
【0029】
(定義)
本明細書を通していくつかの用語が使用され、それらは、以下の段落に定義される。
【0030】
用語「アミロイドーシス」および「アミロイド関連状態」は、本明細書中では相互変換可能に使用される。これらは、ヒトおよび他の哺乳動物に影響を与える任意の病態生理学的な状態をいい、身体の任意の器官または組織におけるアミロイドの細胞外蓄積によって特徴付けられる。アミロイドは、広範な医学的障害に関連するが、原発性疾患としても生じ得る。
【0031】
本明細書中で使用される場合、用語「アミロイド」とは、凝集した(重合体)形態のアミロイドタンパク質をいい、その蓄積により、細胞外アミロイド沈着を生じる。アミロイドタンパク質成分の性質にも関わらず、全てのアミロイドは、以下のいくつかの特徴を共有する:アミロイドは、不溶性βプリーツシート構造を形成し、そのβプリーツシート構造は、コンゴレッドに対して高親和性を有する、アミロイドは、偏光に複屈折を生じ、特徴的なX線回折パターンを生じ、そして、プロテアーゼに対して感受性ではない。
【0032】
本明細書中で使用される場合、用語「アミロイド沈着物」は、細胞外アミロイド蓄積によって形成された任意の不溶性の第四級構造をいう。アミロイド沈着物は、フィブリル、フィラメント、プラークおよびもつれの形態をとり得る。
【0033】
用語「アミロイドタンパク質」および「アミロイドペプチド」は、本明細書中で相互変換可能に使用される。これらは、モノマー(すなわち、凝集していない)形態のアミロイドアミノ酸配列をいう。アミロイド(およびアミロイド様)タンパク質の例としては、アミロイド免疫グロブリン軽鎖(AL、プラズマ細胞疾患と関連し、例えば、骨髄腫(すなわち、骨髄癌)を有する患者に見出される);血清アミロイド関連タンパク質(AAまたはSAP、慢性炎症性状態(例えば、慢性関節リウマチおよび骨髄炎)と関連する);アミロイド−βペプチド(Aβ、神経変性障害(例えば、アルツハイマー病、ダウン症候群、レヴィー小体痴呆、アミロイドーシスを伴なった遺伝性脳出血(オランダ型)およびグアム・パーキンソン痴呆と関連し、脳外傷を有する個体の脳にも蓄積し得る);異常トランスサイレチン(ATTR、家族性アミロイドーシスと関連する);膵島アミロイドポリペプチド(IAPPまたはアミリン、これらは、II型糖尿病を有する患者の膵臓に蓄積する)およびプリオンタンパク質(PrP、プリオン病と関連する)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
用語「アミロイド−βペプチド」、「Aβペプチド」および「Aβ」は、本明細書中で相互変換可能に使用される。これらは、当該分野で、β−タンパク質、β−A4およびA4としても公知である。Aβは、低分子で、可溶性であり、4.3kDaであり、39〜43アミノ酸長のペプチドであり、その配列は、以前に公開されている(C.Hilbichら、J.Mol.Biol.1992、228:460〜473を参照のこと)。本発明において、用語アミロイド−βペプチドは、Aβ1〜43ならびにAβ1〜42、Aβ1〜41、Aβ1〜40およびAβ1〜39を含む。用語「Aβアミロイド」とは、凝集状態のアミロイド−βペプチドをいう。Aβアミロイドの沈着は、例えば、アルツハイマー病を有する患者の脳、ダウン症候群を有する成人患者の脳に見出され、脳外傷を有する個体の脳に見出されることもある。
【0035】
用語「結合親和性」および「親和性」は、本明細書中で相互変換可能に使用され、分子実体間の引力のレベルをいう。親和性は、解離定数(Kd)として、またはその逆に、結合定数(Ka)として定量的に表され得る。本発明の文脈において、二つの型の親和性は、以下:(1)アミロイド結合部分のアミロイド沈着物に対する親和性、および(2)金属キレート部分の遷移金属イオンまたは別の金属実体に対する親和性、と考えられる。
【0036】
用語「アミロイド結合部分」とは、アミロイド沈着物に対する高親和性および高特異性を示す任意の実体をいう。アミロイド結合部分が分子の一部である場合、アミロイド結合部分は、その分子にその特性を与え、そしてその分子は、「標的化」される(すなわち、その分子は、アミロイド沈着物と効率的に相互作用し、効率的に結合する)。アミロイドとアミロイド結合部分との結合は、共有結合、または非共有結合(例えば、疎水性相互作用、静電相互作用、双極子相互作用、ファンデルワールス相互作用、水素結合など)であり得る。最も多い結合は、非共有結合である。
【0037】
本明細書中で化学的部分、薬剤、化合物または分子に適用される場合、用語「金属キレート」および「キレート」は、遷移金属イオンまたは別の金属実体との錯体(一つより多い配位結合を含む)の形成に関与する二つ以上の極性基の存在により特徴付けられた実体の能力をいう。金属キレート剤は、当該分野で公知である。金属キレーターの例としては、バソクプロイン、エチレンジアミン四酢酸、バソフェナントロリン、デスフェリオキサミンおよびクリオキノールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
本発明の文脈中で、用語「二機能性分子」とは、少なくとも一つのアミロイド結合部分に結合した少なくとも一つの金属キレート部分を含み、その結果、二重選択性を示す分子をいう。より詳細には、本発明の二機能性分子は、(1)遷移金属イオンに高親和性で結合し、そして、(2)アミロイド沈着物に対して高親和性および高特異性を示す。金属キレート部分およびアミロイド結合部分は、共有結合または非共有結合によって結合され得る。好ましくは、その結合は、共有結合である。
【0039】
本明細書中で使用される場合、用語「遷移金属イオン」とは、当該分野で遷移金属として公知の元素のイオン形態をいう。より詳細には、本発明の文脈において、三つの生物学的に関連する遷移金属イオンが想定される:すなわち、他に述べない限り、「亜鉛(II)」、「銅(II)」および「鉄(III)」は、それぞれZn2+、Cu2+およびFe3+をいう。
【0040】
本明細書中で使用される場合、用語「造影画像化剤」とは、画像化技術を使用して特異的生物学的要素を検出するために使用され得る任意の実体をいう。本発明の造影画像化剤は、少なくとも一つのアミロイド結合部分と結合した少なくとも一つの画像化部分を含む分子を目的とする。本発明の好ましい実施形態において、造影画像化剤中の画像化部分は、金属実体に錯化した少なくとも一つの金属キレート剤を含む。本発明の他の造影画像化剤は、NMRにより検出可能である安定常磁性同位体で標識した少なくとも一つのアミロイド結合部分に結合した少なくとも一つの金属キレート部分を含む。本発明の造影画像化剤は、インビトロ系、インビボ系、およびエキソビボ系ならびに生きている患者においてアミロイド沈着物を検出するために使用され得る。
【0041】
本明細書中で使用される場合、用語「金属実体」とは、画像化技術(例えば、磁気共鳴画像法(MRI))により検出可能である常磁性金属イオン、または画像化技術(例えば、単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)および陽電子断層撮影法(PET))により検出可能である放射性核種をいう。
【0042】
本明細書中で使用される場合、用語「常磁性金属イオン」とは、金属キレート剤に錯化され得、MRIにより検出可能である生理学的に耐容性の実体をいう。好ましくは、常磁性金属イオンは、ガドリニウム(III)(Gd3+)、クロミウム(III)(Cr3+)、ジスプロシウム(III)(Dy3+)、鉄(III)(Fe3+)、マンガン(II)(Mn2+)およびイッテルビウム(III)(Yb3+)からなる群より選択される。
【0043】
本明細書中で使用される場合、用語「放射性核種」とは、金属キレート剤によって錯化され得、放射性薬学的技術に使用され得る金属元素の放射性同位体をいう。好ましい放射性核種は、テクネチウム−99m(99mTc)、ガリウム−67(67Ga)、イットリウム−91(91Y)、インジウム−111(111In)、レニウム−186(186Re)およびタリウム−201(201TI)である。
【0044】
本明細書中で使用される場合、用語「安定常磁性同位体」とは、核磁気共鳴分光法(MRS)によって検出可能である常磁性核をいう。本発明において使用するための好ましい安定常磁性同位体は、炭素−13(13C)およびフッ素−19(19F)である。
【0045】
本発明の文脈において、用語「レドックス活性遷移金属イオン」とは、遷移金属イオン(例えば、Cu2+およびFe3+)をいい、これらは、アミロイドタンパク質および/またはアミロイド沈着物および酸素(O2)を含む一連の反応に関与することによって(それぞれCu+およびFe2+に)還元され得、そして、活性酸素種の形成を生じ得る。このような反応を受け得ない亜鉛II(Zn2+)は、「レドックス不活性遷移金属イオン」と呼ばれる。
【0046】
本明細書中で使用される場合、用語「活性酸素種」とは、酸素に由来し、一般に生物系に対して毒性であるか、または毒性副生成物を生成する反応に容易に関与するかのいずれかである。活性酸素種としては、スーパーオキシドラジカルアニオン(O2・−)、ヒドロキシルラジカル(・OH)、過酸化水素(H2O2)および一重項酸素(1O2、1Δg)が挙げられる。
【0047】
用語「アミロイド媒介性」は、活性酸素種の産生に適用される場合、アミロイドタンパク質のモノマー形態またはポリマー形態、レドックス活性遷移金属イオンおよび酸素に関与して活性酸素種の形成を生じる、一連のプロセスをいう。
【0048】
「酸化的ストレス」は、活性酸素種のアミロイド媒介性産生により直接的または間接的に引き起こされた系の損傷状態を記載するために本明細書中で使用される、一般的な用語である。酸化的ストレスは、系の抗酸化防御機構が、産生された活性酸素種の有害な作用をもはや阻害し得ない場合に生じ得る。特定の生体分子(例えば、タンパク質、脂質および核酸)に最初に影響を及ぼし得る酸化的ストレスは、最終的には、細胞突然変異、細胞死および組織破壊を生じ得る大規模な細胞損傷を引き起こす。
【0049】
本発明の文脈において、用語「アミロイド毒性」は、アミロイドタンパク質の、βシート構造に凝集した場合の毒性である能力、ならびに/またはアミロイドタンパク質および/もしくはアミロイド沈着物の、広範な生体分子に対して有害な効果を有し、最終的には酸化的ストレスを誘導し得る活性酸素種を生成する能力をいう。
【0050】
用語「予防」は、本明細書中では、アミロイド蓄積と関連する病態生理学的な状態の発症を遅延させるかまたは防止することを目的とした方法を特徴付けるために使用される。用語「処置」は、本明細書中では、(1)アミロイドーシスと関連する状態の発症を遅延させるかもしくは予防すること;または(2)その状態の症状の進行、悪化(aggravation)、もしくは、悪化(deterioration)を減速させるかもしくは停止させること;または(3)その状態の症状の回復をもたらすこと;または(4)その状態を癒させることを目的とする方法を特徴付けるために使用される。処置は、予防(prophylactic)作用または予防(preventive)作用のために、疾患の発症の前に行なわれ得る。処置はまた、疾患の発症のあとにも、治療作用のために行なわれ得る。
【0051】
用語「個体」および「患者」は、本明細書中で、相互変換可能に使用される。これらの用語は、アミロイド蓄積と関連する病態生理学的状態によって影響され得るが、このような疾患を有していても有していなくてもよいヒトまたは別の哺乳動物をいう。
【0052】
本明細書中で使用される場合、用語「系」とは、アミロイド沈着物を生成し、そして/または含み得ることが当該分野で公知である生物学的実体をいう。本発明の文脈において、インビトロ系、インビボ系およびエキソビボ系が想定され;そして、その系は、細胞、生物学的流体、生物組織、または動物であり得る。系は、例えば、生きている患者に由来し得る(例えば、それは、生検によって入手され得る)か、または死亡した患者(例えば、それは、検死で入手され得る)に由来し得る。その患者は、ヒトまたは別の哺乳動物であり得る。
【0053】
本明細書中で使用される場合、用語「生物学的流体」とは、患者によって産生され、患者から得られた液体をいう。生物学的流体の例としては、脳脊髄液(CSF)、血清、尿および血漿が挙げられるが、これらに限定されない。本発明において、生物学的流体は、精製(例えば、限外ろ過またはクロマトグラフィー)によって得られたこのような液体の全画分または任意の画分を含む。
【0054】
本明細書中で使用される場合、用語「生物組織」とは、患者から得られた組織をいう。生物組織は、身体の任意の器官または系(例えば、脳、膵臓、心臓、腎臓、消化管、甲状腺、神経系、皮膚など)の全体または一部であり得る。
【0055】
本明細書中で使用される場合、用語「有効量」とは、意図された目的を満たすのに十分な、本発明の二機能性分子、それらの薬学的組成物の任意の量をいい、その目的とは、例えば、アミロイド蓄積と関連する病態生理学的な状態の発症の遅延もしくは予防;その状態の症状の進行、悪化(aggravation)、もしくは、悪化(deterioration)の減速もしくは停止;その状態の症状の回復をもたらすこと;またはその状態を治癒させることであり得る。その目的はまた、系または患者におけるアミロイドの蓄積を予防、減速もしくは停止させること;系または患者に存在するアミロイド沈着物の溶解を促進、誘導または、他の方法で容易にすること;または活性酸素種のアミロイド媒介性産生を低減し、阻害し、または他の方法で妨害することであり得る。
【0056】
本明細書中で使用される場合、用語「画像化有効量」とは、画像化技術を用いて、系内、または患者内に存在するアミロイド沈着物の検出を可能にするのに十分である、本発明の造影画像化剤、またはそれらの薬学的組成物の任意の量をいう。
【0057】
本明細書中で使用される場合、「薬学的組成物」は、少なくとも一つの本発明の試薬(二機能性治療分子もしくは標的化造影画像化剤)、またはその生理学的に耐容性の塩、および少なくとも一つの薬学的に受容可能なキャリアを含有すると定義される。
【0058】
用語「生理学的に耐容性の塩」とは、生物学的活性および遊離塩基もしくは遊離酸の特性をそれぞれ保持し、そして、生物学的、または他の点で望ましくなくはない任意の酸付加塩または任意の塩基付加塩をいう。酸付加塩は、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など);および有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、ピルビン酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸など)で形成される。塩基付加塩は、無機塩基(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、アルニウム塩など)および有機塩基(例えば、第一級アミンの塩、第二級アミンの塩および第三級アミンの塩、天然に存在する置換アミンを含む置換アミンの塩、環状アミンの塩、ならびに塩基性イオン交換樹脂の塩(例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2−ジメチル−アミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、トリメタミン、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N−エチルピペリジン、ポリアミンなど))で形成され得る。
【0059】
本明細中で使用される場合、用語「薬学的に受容可能なキャリア」は、活性成分の生物学的活性の有効性を妨害せず、投与される濃度において、宿主に対して過度に毒性ではないキャリア媒体をいう。この用語は、溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤などを含む。薬学的に活性な物質に対するこのような媒体および薬剤の使用は、当該分野では周知である(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、E.W.Martin、第18版、1990、Mack Publishing Co.、Easton、PAを参照のこと)。
【0060】
さらなる定義は、詳細な説明を通して提供される。
【0061】
(特定の好ましい実施形態の詳細な説明)
本発明は、アミロイド蓄積と関連する病態生理学的な状態の診断、予防および処置に関連する。特に、本発明は、アミロイド沈着の存在を検出するための試薬および戦略、アミロイド関連状態を予防または処置するための試薬および戦略を含む。特定の好ましい実施形態において、本発明は、脳におけるアミロイドタンパク質およびアミロイド様タンパク質の凝集および蓄積と関連する病態生理学的な状態の診断、予防および処置を可能にする。
【0062】
(I.二機能性治療分子)
本発明の一局面は、新規クラスの標的化治療試薬に関する。
【0063】
正常に加齢した個体およびアルツハイマー患者の脳における生体金属の役割の研究は、より有効な処置の開発に対して新しい方向性を設定する助けとなった。金属キレート分子を使用する遷移金属イオンのレベルの調節は、インビトロにおいてアミロイド沈着物を溶解し、酸化的損傷を防止することが示されている。金属キレーターはまた、トランスジェニックマウスの脳において、アミロイドの負荷を顕著に低減させることが見出されている(R.A.Chernyら、Neuron.2001、30:665〜676)。これらの結果は、非常に見込みがあり、アミロイド関連状態の処置に対するこのようなアプローチの可能性を示す。しかし、最も良く知られている金属キレーターは、非特異的であり、他の金属を必要とする生体分子の正常な生理学的機能を妨害し得、それによって臨床用途に対して非常に大きいことが証明され得る副作用を生じる。
【0064】
本発明は、他の重要な生体分子の作用を乱すことなく、アミロイドタンパク質およびアミロイド沈着物との相互作用から金属イオンを防ぎ得る標的化金属キレート剤が、望ましくない副作用がより少ないことを示すべきであり、そしてアミロイド関連病態生理学的な状態の処置のための治療剤として現在使用されるか、試験されるか、または提案されているほとんどの非特異的金属キレーターより有効であるべきであるという認識を含む。従って、本発明は、(1)アミロイドに対するある程度の誘引力を有し、そして、(2)金属キレーターとして作用するように設計された治療薬を提供する。より詳細には、本発明は、少なくとも一つのアミロイド結合部分に結合した少なくとも一つの金属キレート部分を含む二機能性分子を提供する。
【0065】
(アミロイド結合部分)
アミロイド結合部分は、アミロイド沈着物に対するある程度の誘引力を有する実体であって、二機能性分子中に含まれる場合に標的化する役割を果たし得る。好ましい実施形態において、アミロイド結合部分は、アミロイド沈着物に対して高い親和性および特異性を示す。すなわち、アミロイド結合部分は、アミロイドに特異的および/または有効に相互作用し、結合し、または標識する。インビトロおよびインビボ条件下で結合特性を保持するアミロイド結合部分は、好ましくは、安定かつ無毒性実体である。特定の好ましい実施形態において、アミロイド結合部分は、Aβアミロイドに対して高い親和性および特異性を有する。より詳細には、これらのアミロイド結合実体は、合成Aβペプチドまたはアルツハイマー病脳組織を用いて決定した(実施例の節において記載されるように)場合、Aβに、0.1nMと10μMとの間の解離定数(Kd)で結合する。他の好ましい実施形態において、アミロイド結合部分は、血液脳関門を通過し得る。この性質は、二機能性分子が、脳内における凝集したアミロイドタンパク質およびアミロイド様タンパク質の蓄積によって特徴付けられる神経変性性障害の処置のために、治療剤として使用される場合に特に重要である。
【0066】
アミロイド結合部分とアミロイド沈着物との間の相互作用は、共有結合性または非共有結合性であり得る。ほとんどの場合、アミロイド結合部分とアミロイド沈着物との間の相互作用は、非共有結合性である(以下を参照のこと)。非共有相互作用の例としては、疎水性相互作用、静電相互作用、双極子相互作用、ファンデルワールス相互作用および水素結合が挙げられるが、これらに限定されない。相互作用の性質にかかわらず、アミロイド沈着物と本発明の二機能性分子内のアミロイド結合部分との間の結合は、金属キレート部分がその役割を果たす(すなわち、遷移金属イオンとアミロイドタンパク質および/またはアミロイド沈着物との間の相互作用を防止し、阻害し、または逆転にする)ことが可能であるように十分に選択的、特異的、かつ強固であるべきである。
【0067】
本発明における使用に適したアミロイド結合部分としては、上に列挙した必要条件を満たす任意のアミロイド結合部分が挙げられる。実際は、アミロイド沈着物の生物学的マーカーの開発は、ここ数年間の研究目的であった(W.E.Klunk、Neurobiol.Aging.1998、19:145〜147)、そして現在は、多数のこのような化合物が利用可能である。コンゴレッド(その化学構造は、図1Aに示される)は、数十年間、インビトロにおけるアミロイド沈着物を染色するために使用されてきた(M.Tubisら、J.Am.Pharm.Assoc.1960、49:422〜425;M.Tubisら、Nukl.Med.1962、3:25〜38)。
【0068】
βシート構造に凝集したアミロイドタンパク質に対するコンゴレッドの特異的な親和性を説明するために、いくつかのモデルが提案されている(W.E.Klungら、J.Histochem.Cytochem.1989、37:1273〜1281;W.E.Klunkら、Neurol.Aging、1994、15:691〜698;D.B.CarterおよびK.−C.Chou、Neurol.Aging、1998、19:37〜40)。全ての提案されたモデルにおいて、コンゴレッドのアニオン性スルホン酸基とアミロイドペプチド上の塩基性アミノ酸(例えば、アルギニンおよびリジン)との間の化学量論的かつ飽和性の静電気的な相互作用が、優先的結合において重要な役割を果たしていると考えられている。提案されたモデルのいくつかにおいて、コンゴレッドのビフェニル部分とアミロイドペプチドのフェニルアラニン残基との間の芳香性の相互作用もまた、上記相互作用に関与していると仮定されている。
【0069】
これらのモデルに基づいて、アミロイド沈着物に特異的に結合する分子は、長鎖の、各末端で負に荷電した基を有する複数のフェニル環を保有する共役系である傾向があると結論付けられた。これらの判定基準を使用して、コンゴレッドに関連するビスジアゾベンジジン化合物(例えば、米国特許第4,933,156号;同第5,008,099号;および同第5,039,511号を参照のこと);クリサミン−G(図1Bに提示される)および誘導体(例えば、米国特許第6,114,175号;同第6,133,259号;および同第6,168,776号を参照のこと);(トランス,トランス)−1−ブロモ−2,5−ビス−(3−ヒドロキシカルボニル−4−ヒドロキシ)−スチリルベンゼン(BSB)(図1C)ならびに種々のアナログが、設計され、合成され(N.A.Dezutterら,Eur.J.Nucl.Med.1999,26:1392−1399;D.M.Skovronskyら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,2000,97:7609−7614)、放射標識され、そしてアミロイド沈着物の潜在的なインビトロプローブおよびインビボプローブとして評価されている(W.E.Klunkら,Neurobiol.Aging,1994,15:691−698;W.Zhenら,J.Med.Chem.1999,42:2805−2815;N.A.Dezutterら,J.Nucl.Med.1999,26:1392−1399;D.M.Skovronskyら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2000,97:7609−7614)。これらの分子の全ては、Aβに対して高い親和性および特異性を保有することが見出された。従って、これらの分子の全ては、本発明での使用に適している。しかし、いくつかのこれらの生物学的マーカー上の極性の高い官能基の存在が、脳内へのこれらの侵入を制限することが実証され、そして極性官能基を有さない誘導体のみが、高い脳取り込みを見せることが示された。本発明の二機能性分子の設計は、その意図される目的によって決定付けられ、そしてアミロイド結合部分は、これらの公知の、観察される特性または予期される特性(例えば、これらの血液脳関門透過性)に基づいて選択される。
【0070】
アミロイド結合部分を選択して二機能性治療分子を設計する場合、毒性もまた、考慮すべき因子である。例えば、アゾ染料は、発癌性であることが当該分野で公知である(D.L.Morganら,Environ.Health Perspec.1994,102:63−78)。アゾ染料の潜在的な発癌性は、腸内細菌による、遊離(毒性)親アミンへのこのアゾ染料の大規模な代謝分解に起因すると考えられる(C.E.Cernigliaら,Biochem.Biophys.Res.Comm.1982,107:1224−1229;C.E.Cernigliaら,Carcinogen.1982,3:1255−1260)。毒性の問題を回避するために、アゾ染料(例えば、コンゴレッド、クリサミン−Gおよびアミロイド結合部分としてのそれらの誘導体)を回避すること、ならびに二機能性治療用分子が腸内細菌を回避するように投与経路を選択することが所望され得る。
【0071】
より低分子もまた、アミロイド沈着物に特異的に結合する能力について評価されている。これらの分子としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アントラサイクリン4’−ヨード−4’−デオキシドキソルビシン(図1Dに示される)(これらは、異なる型のアミロイドタンパク質およびアミロイド沈着物に強固に結合することが見出されている)(G.Merliniら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1995,92:2959−2963)、ならびにチアゾール染料(例えば、プリムリン、チオフラビンS、およびチオフラビンT(これらの化学構造は、図1Eに示される))。これらのチアゾール染料は、組織切片中のアミロイドを染色すること、およびインビトロで合成Aβに効率的に結合することが公知である(G.Kelenyi,Histochem.Cytochem.1967,15:172−180;J.Burnsら,J.Pathol.Bacteriol.1967,94:337−344;R.Gunternら,Experientia 1992,48:8−10;H.LeVine,Meth.Enzymol.1999,309:274−284)。興味深いことに、チオフラビンTの複素環からのメチル基の脱離(これは、正電荷を除去する)が、Aβに対する高い親和性および齧歯動物における良好な脳取り込みを有する一連の親油性染料を提供することが、最近示された(W.E.Klunkら,Life Sci.2001,69:1471−1484;Z.P.Zhuangら,J.Med.Chem.2001,44:1905−1914)。
【0072】
特定の好ましい実施形態において、アミロイド結合部分は、アミロイド沈着物に対して高い親和性を示し、かつ、血液脳関門を横断することが可能であると報告されている低分子の誘導体である(D.M.Skovronskyら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,2000,97:7609−7614)。実施例1および実施例9は、少なくとも1つのこのようなアミロイド結合低分子を含む新規二機能性分子の2つのファミリーの合成を記載する。
【0073】
好ましくは、アミロイド結合部分は、アミロイド結合部分を金属キレート部分に共有結合するために使用され得る、少なくとも1つの官能基を含む(または、アミロイド結合部分を金属キレート部分に共有結合するために使用され得る、種々の官能基に容易に化学的に変換される)。適切な官能基としては、アミン(好ましくは一級アミン)、チオール、カルボキシ基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
(金属キレート部分)
金属キレート部分は、高親和性遷移金属イオンと結合し得る実体である。好ましくは、金属キレート部分によって錯化し得る遷移金属イオンは、生体金属である(すなわち、これらは、生物学的に関連性のある遷移金属イオンである)。最も好ましくは、金属キレート部分は、アミロイド沈着物中およびアミロイド沈着物周囲に高度に濃縮して見出される高親和性遷移金属イオンと結合する。特定の好ましい実施形態において、金属キレート部分は、亜鉛(II)(Zn2+)、銅(II)(Cu2+)、および鉄(III)(Fe3+)からなる群より選択される少なくとも1種の遷移金属イオンと高親和性で結合する。好ましくは、金属キレート部分は、インビトロ条件下およびインビボ条件下でそれらの合特性を保持する安定な無毒性実体である。
【0075】
遷移金属イオンをアミロイド関連臨床状態の病理の少なくとも2つの局面に関連付ける実験的証拠が、蓄積する。研究は、(1)遷移金属とアミロイドタンパク質との間の相互作用は、毒性βシート構造へのアミロイドペプチドの凝集および蓄積を促進することによってアミロイド毒性を増強し得ること、そして(2)レドックス活性遷移金属イオンは、活性酸素種の産生を助けることによってアミロイド毒性を増加させ得ることを示す。
【0076】
特に、アミロイド−βペプチドは、選択的な高親和性および低親和性のCu2+結合部位ならびに選択的な高親和性および低親和性のZn2+結合部位を保有すると示されており(A.I.Bushら,J.Biol.Chem.1994,269:12152−12158)、Cu2+、Zn2+およびFe3+を有するAβの相互作用は、このペプチドの凝集および蓄積を促進すると実証されている(A.I.Bushら,J.Biol.Chem.1994,265:1464−1467)。金属キレート剤は合成Aβペプチドの凝集を逆転させ、死後のヒト脳標本においてアミロイドを溶解し(C.S Atwoodら,J.Biol.Chem.1998,273:12817−12826;X.Huangら,J.Biol.Chem.1997,272:26464−26470;R.A.Chernyら,J.Biol.chem.1999,274:23223−23228)、そしてアルツハイマー病のためのTg2576トランスジェニックマウスモデルの脳におけるアミロイド負荷の顕著な阻害を誘発する(R.A.Chernyら,Neuron.2001,30:665−676)という本出願者らの研究室における認識は、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態の処置のための潜在的な治療剤としての、金属キレート剤および金属錯体分子の提唱をもたらした(米国特許第6,323,218号を参照のこと)。
【0077】
遷移金属イオンとアミロイドタンパク質および/またはアミロイド沈着物との間の相互作用を妨害することことによって、金属キレート剤は、アミロイド毒性に対する効果を有し得る。本発明のこの局面に従って、適切な金属キレート部分は、アミロイドタンパク質の凝集および蓄積を予防するか、減速させるか、または停止させることによって、そして/またはアミロイド沈着物の溶解を促進するか、誘発するか、または別の方法で容易にすることによって、アミロイド毒性を減少または阻害し得る実体である。これは、例えば、金属キレート部分が、亜鉛(II)(Zn2+)、銅(II)(Cu2+)、および鉄(III)(Fe3+)からなる群より選択される少なくとも1種の遷移金属イオンと高親和性で結合する場合に達成され得る。
【0078】
細胞傷害を引き起こす酸化ストレスがアルツハイマー病において観察される神経変性に重大であるという証拠が高まっている(R.N.Martinsら,J.Neurochem.1986,46:1042−1045)。タンパク質ならびに核DNAおよびミトコンドリアDNAの酸化の増大が、AD患者の脳において一貫して観察される(P.Gabbitaら,J.Neurochem.1998,71:2034−2040;W.R.Markesbery,Free Radic.Biol.Med.1997,23:134−147;M.P.Cuajungcoら,J.Biol.Chem.2000,275:19439−19442)。さらに、アミロイド−βペプチドは、神経起源の細胞において、および細胞を含まない培地において、活性酸素種の発生を高める能力を有すると実証されている(C.Behlら,Cell,1994,77:817−827;X.Huangら.,J.Biol.Chem.1999,274:37111−37116;X.Huangら.,Biochem.1999,38:7609−7616)。大規模なレドックス化学反応は、AβがCu2+および/またはFe3+に結合し、両金属の酸化状態を還元し、そして触媒的様式においてO2からH2O2を生成する場合に起こることが観察された(X.Huangら,Biochem.1999,38:7609−7616)。銅(400μM)、亜鉛(1mM)および鉄(1mM)の上昇したレベルがAD罹患脳におけるアミロイド沈着物中に見出されるので(M.A.Lovellら,J.Neurol.Sci.1998,158:47−52;M.A.Smithら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1997,94:9866−9868)、アルツハイマー病に観察される酸化ストレスは、Aβの金属結合形態による活性酸素種の産生に関連すると考えられる。この仮説は、AD脳から単離された老人斑および神経原線維もつれが、活性酸素種を生成し得、そして銅および鉄の存在が、反応が起こるために必要であるという最近の観察によって支持される(L.M.Sayreら,J.Neurochem.2000,74:270−279)。
【0079】
レドックス活性金属(例えば、Cu2+およびFe3+)は、活性酸素種の産生をもたらす反応に関与し得る(W.R.Markesbery,Free Rad.Biol.Med.1997,23:134−147)。一連のこのような反応が、以下に示される。アミロイド−βペプチドおよびAβアミロイドは、Cu2+(またはFe3+)を還元する能力を有し、同時にスーパーオキシドラジカルアニオン(O2・−)への分子酸素(O2)の見かけの還元から過酸化水素(H2O2)を形成する。このプロセスにフェントン様反応が続き、ヒドロキシラジカルを生成する。
【0080】
【化17】
上記の活性酸素種に加えて、他のフリーラジカルが形成され得、そして他のフリーラジカルもまた、アミロイドーシスの病理学に寄与する。これらとしては、アミロイドペプチドおよびアミロイド沈着物のラジカル形態、ならびにペルオキシニトライトが挙げられるが、これらに限定されず、このペルオキシニトライトは、例えば、一酸化窒素を有するスーパーオキシドラジカルアニオンの反応によって産生され得る。
【0081】
本発明のこの局面に従って、適切な金属キレート部分は、活性酸素種(スーパーオキシドラジカルアニオン(O2・−)、過酸化水素(H2O2)、ヒドロキシラジカル(・OH)ならびに一重項酸素(1O2)が挙げられる)の生体金属媒介性産生およびアミロイド媒介性産生を減少するか、阻害するか、または別の方法で妨害することによって、アミロイド毒性を減少または阻害し得る実体である。これは、二機能性分子における金属キレート部分が、銅(II)(Cu2+)および鉄(III)(Fe3+)からなる群より選択される少なくとも1つの高親和性レドックス活性遷移金属イオンと結合する場合に達成され得る。
【0082】
本発明での使用に適切な金属キレート部分は、高親和性遷移金属イオンと結合することが公知の、任意の多くの金属キレーターおよび金属錯体分子であり得る。これらとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:芳香族アミン(例えば、バソフェナントロリン(4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、この化学構造は、図2Aに示される));バソクプロイン(2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、図2B)、およびTPEN(テトラキス−(2−ピリジルメチル)エチレンジアミン、図2I);ならびに脂肪族アミン(例えば、デフェリオキサミン(図2C)、ペニシラミン(2−アミノ−3−ペルカプト−3−メチルブタン酸、図2D)、EDTA(エチレンジアミン−四酢酸、図2E)、EGTA(O,O’−ビス(2−アミノエチル)−エチレングリコール−N,N’,N’’,N’’’−四酢酸、図2F)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸、図2G)、およびTETA(トリエチレンテトラミン、図2H));ならびにこれらの官能性誘導体、ホモログおよびアナログ。
【0083】
αリポ酸誘導体は、本発明の実施において使用され得る金属キレート剤の別のファミリーを構成する。金属キレート特性を示すことに加えて、αリポ酸誘導体はまた、強力な抗酸化活性を有する(概説については、例えば、H.Moiniら,Toxicol.Appl.Pharmacol.2002,182:84−90;またはG.Biewengaら,Gen.Pharmac.1997,29:315−331を参照のこと)。αリポ酸の抗酸化作用は、神経組織および非神経組織の両方において実証されている(M.A.Lynch,Nutr.Neurosci.2001,4:419−438)。インビトロでの、動物の研究および予備的なヒトの研究からの結果は、リポ酸は、多数の神経変性障害に有効であり得ると示す(L.Packerら,Free Radic.Biol.Med.1997,22:359−378)。特に、αリポ酸は、AD患者の死後ヒト脳における神経性アミロイド負荷を減少させることに効果的であり(J.Fonteら,J.Alzheimer Dis.2001,3:209−219)、老齢マウスにおける記憶障害および脳酸化ストレスを逆転させる(S.A.Farrら,J.Neurochem.2003,83:1173−1183)と示されている。
【0084】
αリポ酸誘導体によって示されるさらなる(すなわち、抗酸化)特性(他の金属キレート剤と比較して)は、種々の機構を経てαリポ酸がその抗酸化効果を発揮し得るように二機能性分子の作用範囲を広げることが期待され、この機構としては、金属イオンをキレートすることによる機構、活性酸素種(ROS)もしくは他のラジカルを捕捉することによる機構、内因性抗酸化剤(例えば、ビタミンC、ビタミンEおよびグルタチオン)を再生成することによる機構、ならびに/または酸化傷害を修復することによる機構が挙げられる。
【0085】
本発明の二機能性分子の詳細な設計は、その意図される目的によって影響を受け、そして金属キレート部分は、それらの公知の特性、観察される特性または期待される特性に基づいて選択される。アミロイドタンパク質の凝集を妨害するための、およびアミロイド沈着物の溶解を促進するための好ましい金属キレート部分としては、DTPA、バソクプロイン、バソフェナントロリン、ペニシラミン、ならびにこれらの誘導体、ホモログおよびアナログ、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。活性酸素種の生体金属媒介性産生およびアミロイド媒介性産生を妨害するための好ましい金属キレート部分としては、バソクプロイン、バソフェナントロリン、αリポ酸、ならびにこれらの誘導体、ホモログおよびアナログ、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0086】
2つの同一アミロイド結合部分(ベンゾチアゾール誘導体)に共有結合した、金属キレート部分としてDTPAを含有する新たな二機能性分子の第1のファミリーが開発されており、それらの合成、特性および用途は、実施例の節に記載される(実施例1および実施例4〜6を参照のこと)。金属キレート部分として作用し、1つのアミロイド結合部分に共有結合した、(第1のファミリーで使用されるものと同じベンゾチアゾール誘導体から選択される)、αリポ酸を含有する二機能性分子の第2のファミリーの合成が、実施例9に記載される。
【0087】
好ましくは、金属キレート部分は、アミロイド結合部分を金属キレート部分に共有結合するために使用され得る、少なくとも1つの官能基を含む(または、アミロイド結合部分を金属キレート部分に共有結合するために使用され得る、種々の官能基に容易に化学的に変換される)。適切な官能基としては、アミン(好ましくは一級アミン)、チオール、カルボキシ基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
(二機能性分子の合成)
本発明の二機能性分子は、当該分野で公知の任意の合成法によって調製され得、この方法で唯一必要なことは、反応後に、アミロイド結合部分および金属キレート部分が、それらの結合特性およびキレート特性をそれぞれ維持することである。アミロイド結合部分は、種々の方法で金属キレート部分と結合され得る。好ましくは、アミロイド結合部分は、金属キレート部分に共有結合される。当業者に認識され得るように、アミロイド結合部分および金属キレート部分は、直接的にまたはリンカーを通してのいずれかで、互いに結合され得る。
【0089】
特定の好ましい実施形態において、金属キレート部分およびアミロイド結合部分は、互いに直接的に共有結合される。直接共有結合は、アミド結合、エステル結合、炭素−炭素結合、ジスルフィド結合、カルバメート結合、エーテル結合、チオエーテル結合、尿素結合、アミン結合、または炭酸結合を通してであり得る。共有結合は、アミロイド結合部分および金属キレート部分上に存在する官能基を利用することによって達成され得る。2つの部分を一緒に結合することに使用され得る適切な官能基としては、アミン(好ましくは一級アミン)、無水物、ヒドロキシ基、カルボキシ基、およびチオールが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、実施例1に記載されるように、アミド結合は、アミロイド結合部分上に存在する一級アミノ基と金属キレート部分上の無水物官能基との間の反応によって形成され得る。直接結合はまた、活性化剤(例えば、カルボジイミド)を使用して、例えば、1つの部分上に存在する一級アミノ基をもう1つの部分上に存在するカルボキシ基に結合することによって形成され得る。広範囲の活性化剤が、当該分野で公知であり、本発明での使用に適切である。
【0090】
他の好ましい実施形態において、金属キレート部分およびアミロイド結合部分は、リンカー基を介して互いに間接的に共有結合される。これは、当該分野で周知の任意の数の安定な二機能性薬剤を使用することによって達成され得、この二機能性薬剤は、同種官能性リンカーおよび異種官能性リンカーを含む(例えば、Pierce Catalog and Handbook,1994を参照のこと)。二機能性リンカーの使用は、活性化剤の使用とは異なる。この違いは、前者は、反応後に本発明の二機能性分子中に存在する結合部分をもたらし、一方後者は、反応に関与する2つの部分間の直接結合をもたらすというという点においてである。二機能性リンカーの主な役割は、2つの他の点で化学的に不活性な部分間の反応を可能にすることである。しかし、反応生成物の一部となる二機能性リンカーはまた、この二機能性リンカーが二機能性分子にある程度の構造の柔軟性を与えるように選択され得る(例えば、二機能性リンカーとしては、いくつかの原子を含有する直鎖状アルキル鎖が挙げられ、例えば、この直鎖状アルキル鎖は、2個と10個との間の炭素原子を含む)。
【0091】
当該分野で公知の、広範な適切な同一官能性リンカーおよび異種官能性リンカーは、本発明の状況下で使用され得る。好ましいリンカーとしては、アルキル基およびアリール基(直鎖状および分枝鎖状のアルキル基を含む)、置換アルキル基および置換アリール基、ヘテロアルキル基およびヘテロアリール基(反応性化学官能基(例えば、アミノ基、無水物基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基など)を有する)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
当業者に容易に認識され得るように、本発明の二機能性分子は、任意の数の異なる方法によって互いに結合される、任意の数のアミロイド結合部分および任意の数の金属キレート部分を含み得る。本発明の二機能性分子内のアミロイド結合部分は、同一であり得るか、または別々であり得る。同様に、本発明の二機能性分子内の金属キレート部分は、同一であり得るか、または別々であり得る。二機能性治療分子の詳細な設計は、その使用の特定の状況において所望される、その意図される目的および特性よって影響を受ける。
【0093】
(II.標的化造影画像化剤)
本発明の別の局面は、標的化造影画像化剤の新たな分類に関する。
【0094】
上で既に述べられたように、アミロイドーシスの診断は、生検サンプルまたは組織サンプルの組織病理学に現在のところ関する。アミロイドの存在は、代表的には、コンゴレッドでの染色後に交差偏光下で検出される、青リンゴ色の複屈折によって決定される。しかし、罹患した器官の生検は、合併症を免れず、そしてアミロイド沈着物の程度または分布を十分には明らかにし得ない(C.FrimanおよびT.Pettersson,Curr.Opin.Rheumatol.1996,8:6−71)。アルツハイマー病の場合は、アミロイド沈着物は、死亡後に評価され得るのみである。これは、疾患の研究およびより効果的な治療法の開発への主な障害を構成する。
【0095】
アミロイドーシスの診断のための理想的なプローブは、アミロイドに対して高い親和性および特異性を有し、低い毒性を示し、そして患者におけるアミロイド沈着物の検出、位置測定、および定量を可能にするものである。アルツハイマー病、および脳におけるアミロイド(またはアミロイド様)タンパク質の凝集および蓄積に関連する他の神経変性障害の診断のために、理想的なプローブはまた、血液脳関門透過性であるべきであり、そして生存患者の脳におけるアミロイド沈着物の非侵襲的な検出、位置測定、および定量を可能にするべきである。
【0096】
本発明は、上に列挙した基準のいくつかを満たす、標的化された、検出可能な試薬に関する。従って、本発明は、(1)アミロイドに対してある程度の誘引力を有するように、そして(2)映像技術によって検出可能なように設計される、標的化造影画像化剤を提供する。より詳細には、本発明は、少なくとも1つのアミロイド結合部分に結合する少なくとも1つの画像化部分を含有する、造影画像化剤を提供する。
【0097】
(アミロイド結合部分)
本発明の造影画像化剤中のアミロイド結合部分は、上記の二機能性治療分子中以外でも、同じ役割を果たす:これらは、アミロイドに対してある程度の誘引力を示す標的する実体であり、すなわちこれらは、特異的におよび/または効果的に、アミロイド沈着物と相互作用するか、アミロイド沈着物に結合するか、またはアミロイド沈着物を標識する。従って、造影画像化剤の設計および開発での使用に適切なアミロイド結合部分は、二機能性治療剤に関して上に列挙されるアミロイド結合部分と同一である。
【0098】
特定の好ましい実施形態において、本発明の造影画像化剤中のアミロイド結合部分は、アミロイド沈着物に対して高い親和性および特異性を示す。他の好ましい実施形態において、アミロイド結合部分は、Aβアミロイドに対して高い親和性および特異性を有する。さらに他の好ましい実施形態において、アミロイド結合部分は、血液脳関門を通過することが可能であり、これは、上記のように、この造影画像化剤が、脳に局在化したアミロイド沈着物のインビボ生物学的マーカーとして使用されることが意図される場合、重要な特性である。
【0099】
上記の特定のアゾ染料の潜在的な発癌性は、アミロイドの画像化研究の場合ではあまり関係性がない。なぜなら、非常に微小な、無視できる量の高度に特異的なアミロイド結合部分は、いつでも、腸内細菌と接触するからである。
【0100】
(画像化部分)
本発明の状況において、画像化部分は、画像化技術(例えば、磁気共鳴画像法(MRI)、磁気共鳴分光法(MRS)、単一光子放射コンピュータ断層法(SPECT)および陽電子放射断層法(PET))によって検出可能な実体である。好ましくは、画像化部分は、安定な、インビトロおよびインビボ条件下でそれらの特性を保持する無毒性実体である。
【0101】
(MRI画像化部分)
特定の好ましい実施形態において、本発明の造影画像化剤は、磁気共鳴画像法によって検出可能なように設計される。
【0102】
MRIは、診断的臨床医学および生物医学的研究における最も強力な非侵襲的技術の1つへと発展してきた(P.Caravanら,Chem.Rev.1999,99:2293−2352;W.Khun,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1990,29:1−19;M.M.Huberら,Bioconjug.Chem.1998,9:242−249;R.A.Moatsら,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1997,36:726−728;X.Yuら,Mag.Res.Med.2000,44:867−872)。MRIは、核磁気共鳴(NMR)の適用であり、化学、物理、および分子構造生物学において使用される周知の分析方法である。MRIは、比較的短いタイムスパンで三次元構造情報を生じ得、潜在的に害をなす生理学的異常を同定するか、血流を観察するか、または心血管系の一般状態を決定するための非侵襲的診断手段として広く使用される(P.Caravanら,Chem.Rev.1999,99:2293−2352)。
【0103】
MRIは、(他の高品質の画像化方法に対して)潜在的に有害なイオン化放射線に依存しない利点を有する(A.R.Johnsonら、Inorg.Chem.2000,39:2652〜2660)。MRIにおいて、生物学的サンプルまたは患者の身体のコントラスト画像は、水の濃度の局所的な差異、ならびに水のプロトン(1H)に由来するNMRシグナルのT1(スピン−格子)緩和時間およびT2(スピン−スピン)緩和時間をモニターすることによって提供される。しばしばMRIの明瞭さは、造影画像化剤の使用により改善され得る。その常磁性特性に起因して、これらの因子は、スピン移動を促進するために、その非対電子を用いることによって上記のT1緩和時間およびT2緩和時間を減少させる。これによって、濃度依存性コントラストの増加を生じ、結果として解剖学的構造間に増強された差異を生じる。
【0104】
実体の常磁性帯磁率(従って隣接する水分子のプロトン核のT1緩和時間およびT2緩和時間を短縮するその能力)は、非対電子の数と共に増加するので(F.A.Cottonら、「Basic Inorganic Chemistry」,John Wiley&Sons,New York,1995,p.68)、MRIに用いるための理想的な常磁性金属イオンは、原則として、可能な限り多くの非対電子を有する。しかし、水分子とのこのような常磁性金属イオンの複合体は、毒性が高く、そのためにインビボでの画像化に役に立たない(W.Kuhn,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1990,29:1〜19)。常磁性金属イオンをリガンドまたは金属キレート部分と錯化させ、水分子のために開いている一つの配位部位のみを残すことによって、上記毒性が、減少されることが見出されている。従って、大部分のMRI造影剤は代表的に、キレートされた常磁性金属イオンからなる。
【0105】
従って、本発明の特定の実施形態において、上記MRI造影画像化剤は好ましくは、画像化部分が、常磁性金属イオンに対して錯化された少なくとも一つの金属キレート部分を含むように設計される。
【0106】
本発明に用いるために適切な常磁性金属イオンとしては、生理学的に受容可能であり、MRIにおいて良好な造影増強剤であり、かつ金属キレート部分へ容易に取り込まれる事が公知である任意の常磁性金属イオンが挙げられる。好ましくは、この常磁性金属イオンは、ガドリニウム(III)(Gd3+)、クロム(III)(Cr3+)、ジスプロシウム(III)(Dy3+)、鉄(III)(Fe3+)、マンガン(II)(Mn2+)およびイッテルビウム(III)(Yb3+)からなる群より選択される。より好ましくは、この常磁性金属イオンは、ガドリニウム(III)(Gd3+)である。ガドリニウムは、MRIについてFDAに認可された造影剤であり、異常組織に蓄積し、この異常領域をMRI上で非常に明るく(増強されている)する。ガドリニウムは、身体の異なる領域、特に脳における正常組織と異常組織との間に大きなコントラストを提供することが公知である。
【0107】
本発明に用いるための適切な金属キレート部分は、MRIによって検出可能な常磁性金属イオンを錯化するための当該分野において公知である任意の実体を含む。好ましくは、金属キレート部分は、安定した、非毒性の実体であり、水分子のために開いている一つの配位部位を残す様に常磁性金属イオンに結合し、そしてこのような高い親和性のために、一旦錯化されると、この常磁性金属イオンは、水で置換され得ない。
【0108】
多くのこのような金属キレート部分は、Gd3+の錯体生成のために用いられている。これらとしては、DTPA(図2G);1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N’’,N’’’−テトラ酢酸(DOTA、この化学構造は、図3Aに示される);およびその誘導体が挙げられる(例えば、米国特許第4,885,363号;同第5,087,440号;同第5,155,215号;同第5,188,816号;同第5,219,553号;同第5,262,532号;および同第5,358,704号;ならびにD.Meyerら、Invest.Radiol.1990,25:S53〜55を参照のこと)。しかし、これらのリガンドのガドリニウム錯体は、生理学的な条件下で塩であり、非常磁性カチオン対イオンの必要条件は、溶液のオスモル濃度を増加させる。高い水溶性および緩和性を保持する中性ガドリニウム錯体は、DTPA−ビス(アミド)誘導体を用いて調製されている(米国特許第4,687,659号)。
【0109】
常磁性金属イオンを錯化する他の金属キレート部分としては、アミノポリカルボン酸およびそのリン酸素酸アナログのような非環式実体(例えば、トリエチレンテトラアミンヘキサ酢酸すなわちTTHA(この化学構造は、図3Bに示される)およびジピリドキサルジホスフェート(DPDP)(図3Cに示される)ならびに大環状実体(例えば、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N’’−三酢酸すなわち、DO3A(この化学構造は、図3Dに示される))が挙げられる。金属キレート部分はまた、米国特許第5,410,043号;同第5,277,895号;および同第6,150,376号またはF.H.Arnold,Biotechnol.1991,9:151〜156に記載される実体のいずれかでもあり得る。
【0110】
本発明の治療用の二機能性分子にGd3+を挿入することによって開発された新規MRI造影画像化剤のファミリーの合成は、実施例2に記載される。本発明のMRI画像化剤の特性および用途は、それぞれ実施例7ならびに実施例8に報告される。
【0111】
(MRS画像化部分)
特定の実施形態において、本発明の造影画像化剤は、磁気共鳴分光法(MRS)において有用であるように設計される。より詳細には、本発明はまた、安定した常磁性同位体で標識された少なくとも一つのアミロイド結合部分と関連する少なくとも一つの金属キレート部分を含む造影画像化剤も提供する。好ましい安定した常磁性同位体は、炭素−13(13C)およびフッ素−19(19F)である。
【0112】
(放射活性画像化部分)
他の好ましい実施形態において、本発明の上記造影画像化剤は、単光子放出コンピュータ断層撮影法(SPECT)または陽電子断層撮影法(PET)によって検出可能であるように設計される。
【0113】
SPECTおよびPETは、核医学画像化技術であって、腫瘍、動脈瘤(血管壁の弱い点)、種々の組織への不規則な血流または不十分な血流、血球の障害ならびに器官の不十分な機能(例えば、甲状腺および肺の機能の欠陥)を検出するために用いられている。両技術は、生物学的サンプルまたは患者の身体に導入された放射性核種濃度の情報を必要とする。PETは、放射活性同位体を作製するために中性子に非放射活性化学薬品を曝すことによって形成される、短命の放射活性物質から放出される放射線を検出することによって画像を生じる。PETは、放射活性物質から放出される陽電子が、組織内の電子と衝突した部位で放出されるγ線を検出する。PET分析は、目的の領域(例えば、脳、胸部、肝臓)を覆う身体の一連の薄いスライス画像を生じる。これらの薄いスライス画像は、試験した領域の三次元画像へと組み立てられ得る。しかし、PETセンターは、この技術に用いられる短命の放射性同位体を産生するために必要とされる粒子加速デバイス付近に位置させなければならないので、ほんの僅かのPETセンターしか存在しない。SPECTは、PETに類似するが、SPECTに用いられる放射活性物質(例えば、99mTC、l23I、l33Xe)は、PETに用いられる放射活性物質よりも長い崩壊時間を有し、二重のγ線の代わりに単一のγ線を放出する。SPECT画像は、PET画像よりも感度が低くかつ詳細ではないが、SPECT技術は、粒子加速器に近接していることを必要とせず、かつPETよりもかなり安価であるという、PETに対するいくつかの利点を示す。
【0114】
従って、特定の好ましい実施形態において、本発明の造影画像化剤は、単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)によって検出可能であるように設計される。好ましくは、造影画像化剤中の画像化部分は、SPECTによって検出可能である金属実体に錯化された少なくとも一つの金属キレート部分を含む。
【0115】
本発明に用いるために適切な金属実体は、生理学的に受容可能であり、SPECTによって検出可能であり、かつ金属キレート部分へ容易に取り込まれることが、当該分野において公知である放射性核種である。好ましくは、放射性核種は、テクネチウム−99m(99mTc)、ガリウム−67(67Ga)、イットリウム−91(9lY)、インジウム−111(111In)、レニウム−186(186Re)、およびタリウム−201(201Tl)からなる群より選択される。最も好ましくは、上記放射性核種は、テクネチウム99m(99mTc)である。85%を超える現在実施されている慣習的な核医学手順は、99mTcをベースとする放射性医薬品方法論を用いる。
【0116】
本発明に用いるために適切な金属キレート部分としては、SPECTによって検出可能な短命の放射性核種を錯化することが公知の任意の実体が挙がられる。好ましくは、金属キレート部分は、SPECTによって高親和性で検出可能な、放射性核種に結合する安定した、無毒性の実体である。
【0117】
99mTcのような放射性核種を錯化する金属キレート部分は、当該分野において周知である(例えば、「Technetium and Rhenium in Chemistry and Nuclear Medicine」、M.Nicoliniら(編)、1995,SGEditoriali:Padova,Italyを参照のこと)。適切な金属キレート部分としては、例えば、N2S2キレーターおよびN3Sキレーターが挙げられ(A.R.Fritzbergら、J.Nucl.Med.1982,23:592〜598)、これらは、それぞれ、二個の窒素原子および二個の硫黄原子を介して、または三個の窒素原子および一個の硫黄原子を介して放射性核種を錯化し得る。エチルシステイン二量体(ECD、この化学構造は、図3Cに示される)は、当該分野で周知であるN2S2キレーターである。N2S2キレーターおよびN3Sキレーターは、例えば、米国特許第4,444,690号;同第4,670,545号;同第4,673,562号;同第4,897,255号;同第4,965,392号;同第4,980,147号;同第4,988,496号;同第5,021,556号および同第5,075,099号に記載される。
【0118】
他の適切な金属キレート部分は、ポリリン酸塩(例えば、エチレンジアミンテトラメチレンテトラホスホネート(EDTMP)、この化学構造は、図3Dに示される);アミノカルボン酸(例えば、EDTA、N−(2−ヒドロキシ)エチレンジアミン−三酢酸、ニトリロ三酢酸、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)グリシン、エチレンビス(ヒドロキシ−フェニルグリシン)およびジエチレントリアミン五酢酸);1,3−ジケトン(例えば、アセチルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、およびテノイルトリフルオロアセトン);ヒドロキシカルボン酸(例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、および5−スルホサリチル酸);ポリアミン(例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、およびトリアミノトリエチルアミン);アミノアルコール(例えば、トリエタノールアミンおよびN−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン);芳香族複素環塩基(例えば、2,2’−ジイミダゾール、ピコリンアミン、ジピコリンアミンおよび1,10−フェナントロリン);フェノール(例えば、サリチルアルデヒド、ジスルホピロカテコール、およびクロモトロープ酸);アミノフェノール(例えば、8−ヒドロキシキノリンおよびオキシムスルホン酸);オキシム(例えば、ヘキサメチルプロピレンアミンオキシム(HMPAO)図3Eに示される);シッフ塩基(例えば、ジサリチルアルデヒド1,2−プロピレンジイミン);テトラピロール(例えば、テトラフェニルポルフィンおよびフタロシアニン);硫黄化合物(例えば、トルエンジチオール、メソ−2,3−ジメルカプトコハク酸、ジメルカプトプロパノール、チオグリコール酸、エチルキサントゲン酸カリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジチゾン、ジチオリン酸ジエチルおよびチオ尿素);合成大環状化合物(例えば、ジベンゾ[18]クラウン−6)、または上記因子の二以上の組み合わせから選択され得る。
【0119】
好ましい金属キレート部分は、EDTA、DTPA、DOTA、DO3Aのようなポリカルボン酸;ならびにその誘導体、相同体およびアナログ、またはその組合せからなる群より選択される。
【0120】
他の適切な金属キレート部分は、米国特許第5,559,214号ならびにWO 95/26754、WO 94/09056、WO 94/29333、WO 94/08624、WO 94/08629、WO 94/13327、およびWO 94/12216に記載される。
【0121】
好ましくは、上記金属キレート部分は、この金属キレート部分をアミロイド結合部分に共有結合させるために用いられ得る(かまたは用いられ得る異なる官能基へと容易に化学的に変換される)少なくとも一つの官能基を含む。適切な官能基としては、アミン基(好ましくは第一級アミン)、チオール基、カルボキシル基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0122】
(造影画像化剤の合成)
本発明の二機能性分子を調製するための上記の方法は、造影画像化剤を合成するために用いられ得る。
【0123】
金属実体に対して錯化された少なくとも一つの金属キレート部分を含む画像化部分は、当該分野で公知である任意の方法によって調製され得る。錯体化は、上記金属キレート部分とアミロイド結合部分との間の直接的な共有結合あるいは間接的な共有結合の形成前、形成中または形成後に実施され得る。好ましくは、この錯体化は、出発物質として本発明の二機能性分子を用いて実施される(実施例2および実施例3を参照のこと)。上記金属実体が、短命の放射性核種である場合、この錯体化は、上記造影画像化剤が用いられる直前に実施される。
【0124】
適切な錯体化方法は、例えば、上記金属実体を上記金属キレート部分へ直接組み込む工程および金属転移(transmetallation)工程を包含する。可能な場合には、直接組み込みが好ましい。この方法において、金属キレート部分の水溶液は一般に、金属塩に曝されるか、または金属塩と混合される。この反応混合物のpHは、約pH4と約pH11との間であり得る。好ましくは、このpHは、約pH5と約pH9との間である。より好ましくは、上記反応は、pH6とpH8との間で実施される。直接組み込み法は、当該分野において周知であり、そして異なる手順が、記載されている(例えば、WO 87/06229を参照のこと)。上記金属実体が、組み込み前に異なる酸化状態に還元されることを必要とする場合に、金属転移が、用いられる。金属転移法は、当該分野において周知である。実施例3は、二機能性分子への99mTcの組み込みが、SnCl2を用いて上記金属イオンをTc(V)へと還元することによって実施される反応を示す。
【0125】
当業者によって容易に理解され得るように、造影画像化剤は、任意の数の異なる方法によって互いに結合される、任意の数のアミロイド結合部分および任意の数の画像化部分を含み得る。造影画像化剤内のこのアミロイド結合部分は、全て同一かまたは異なるものであり得る。同様に、造影剤内の画像化部分は、全て同一かまたは異なるものであり得る。造影画像化剤の設計は、その意図される目的およびその用途の特定の状況において所望される特性に左右される。
【0126】
(III.二機能性治療分子の使用)
本発明の別の局面は、アミロイド毒性を減少させるかまたは阻害するための系に関する。従って、本発明は、βシート高次構造に凝集した場合に、その環境に対して有毒であるアミロイド(およびアミロイド様)タンパク質の能力を減少させるかまたは阻害するための試薬およびストラテジーを提供する。本発明はまた、広範な種々の生体分子に悪影響を有しかつ酸化ストレスを誘導し得る活性酸素種のアミロイド媒介性の産生を減少させるかまたは阻害するための試薬および方法も提供する。
【0127】
より詳細には、本発明は、金属キレート剤として作用する標的化試薬、そしてインビトロ、インビボおよびエキソビボの系、ならびに、生存する患者におけるアミロイド毒性を減少させるかまたは阻害するために上記標的試薬化を用いる方法を提供する。本明細書中に提供される方法は、効率的に遷移金属イオンをキレートすると共にアミロイド沈着物に対して高い親和性および特異性を示すことにより、二重の選択性を示す本発明の二機能性分子を用いる工程を包含する。
【0128】
特定の好ましい実施形態において、本発明は、上記の系または患者においてアミロイドの蓄積を阻止、減速、あるいは停止させること;ならびに/あるいは上記の系または患者に既に存在するアミロイド沈着物の分解を誘導するか、他の方法で分解を促進することにより、アミロイド毒性を減少または阻害することを可能とする。上記は、上記二機能性分子内の金属キレート部分が、高親和性で、亜鉛(II)(Zn2+)、銅(II)(Cu2+)、および鉄(III)(Fe3+)からなる群より選択される少なくとも一つの遷移金属イオンと結合する場合に達成され得る。
【0129】
他の好ましい実施形態において、本発明は、活性酸素種のアミロイド媒介性産生を減少させるか、阻害するか、他の方法で干渉することによってアミロイド毒性の減少または阻害を可能とする。これは、上記二機能性分子中の金属キレート部分が、高い親和性で銅(II)(Cu2+)、および鉄(III)(Fe3+)からなる群より選択される少なくとも一つのレドックス活性遷移金属イオンと結合する場合に達成され得る。
【0130】
当業者に理解され得るように、高い親和性でCu2+および/またはFe3+と結合する金属キレート部分を有する二機能性分子の使用を包含する方法は、凝集したアミロイドタンパク質から生じる毒性と活性酸素種の産生から生じる毒性の両方を減少または阻害することが可能である(Cu2+およびFe3+は、アミロイドタンパク質の凝集を促進し得る遷移金属イオンであり、かつ活性酸素種の形成に関与し得るレドックス活性生体金属であるため)。
【0131】
より詳細には、本発明は、系内のアミロイド毒性を減少または阻害するための方法を提供し、この方法は、上記の系を有効量の本発明の二機能性分子、またはその薬学的組成物と接触させる工程を包含する。
【0132】
上記接触工程は、インビトロ、インビボ、またはエキソビボで実施され得る。例えば、この接触工程は、インキュベーションによって実施され得る。
【0133】
上記系は、アミロイド沈着物を産生および/または含むことが可能である公知の任意の生物学的実体であり得る。例えば、この系は、細胞、生物学的流体、生物組織、または動物であり得る。この系が、細胞、生物学的流体または生物組織である場合、これらは生きている患者由来(例えば、生検によって得られ得る)かまたは死亡した患者由来(例えば、剖検で得られ得る)であり得る。上記患者は、ヒトまたは別の哺乳動物であり得る。好ましい実施形態において、上記細胞、生物学的流体または生物組織は、アミロイドの蓄積に関連する病態生理学的状態を有すると推測される患者に由来する。他の好ましい実施形態において、この細胞、生物学的流体または生物組織は、アミロイド−βペプチドの蓄積に関連する病態生理学的状態を有することが疑われる患者に由来する。この特定の場合において、上記二機能性分子中のアミロイド結合部分は好ましくは、Aβアミロイドに対して高い親和性および特異性を示す。
【0134】
本発明はまた、患者におけるアミロイドの蓄積に関連する病態生理学的状態を防止または処置するための方法も提供する。本明細書中に記載される方法は、(1)疾患の発症を遅延もしくは防止する;または(2)疾患の進行、悪化(aggravation)、もしくは悪化(deterioration)を減速または停止する、または(3)疾患の症状および徴候の逆行もしくは改善を引き起こす;または(4)疾患を治癒する、ために実施され得る。上記処置は、予防薬あるいは予防処置を疾患の発症前に、または治療処置を疾患の発症後に与えられ得る。
【0135】
より詳細には、本発明は、アミロイドの蓄積に関連する病態生理学的な状態を有する患者を処置するための方法を提供し、この方法は、この患者に有効量の本発明の二機能性分子、またはその薬学的組成物を投与する工程を包含する。
【0136】
二機能性分子またはその薬学的組成物の投与は、当該分野において公知の任意の適切な方法、例えば、経口投与および非経口投与(静脈内注射、筋肉内注射、および皮下注射を含む)ならびに経皮投与および経腸投与によって実施され得る。
【0137】
患者に影響を及ぼす病態生理学的な状態は、任意のアミロイドタンパク質またはアミロイド様タンパク質(例えば、アミロイド免疫グロブリン軽鎖(AL);血清アミロイド関連タンパク質(AAもしくはSAP);アミロイド−βペプチド(Aβ);改変トランスチレチン(ATTR);非常に小さいアミロイドポリペプチド(IAPPもしくはアミリン);プリオンタンパク質(PrP)など)の蓄積に関連し得る。凝集したアミロイドタンパク質またはアミロイド様タンパク質の蓄積は、身体の任意の器官または組織に生じ得、心臓、脳、胃腸系、肝臓、脾臓、腎臓、膵臓、肺、関節、筋肉などに原線維、単線維、プラークおよび/またはもつれを形成し得る。
【0138】
上記病態生理学的な状態は、アミロイド症と関連することが公知である任意の疾患および障害であり得る。これらの状態としては、II型糖尿病、進行性核上麻痺、チーズ様髄質癌のような内分泌系の特定の型の癌、家族性アミロイド症(フィンランド型);家族性アミロイド多発ニューロパチー(ポルトガル型)、家族性アミロイド多発ニューロパチー(アイオワ型)、家族性アミロイド心筋症(デンマーク型)、じんましんおよび聴覚障害を伴う家族性アミロイド多発ニューロパチー(Muckle−Wells症候群)、遺伝性非神経障害性全身性アミロイド症(Ostertag型)、遺伝性腎アミロイドーシス、アミロイドに関連する骨髄腫またはマクログロブリン関連特発症、全身性老人性アミロイドーシス、ホジキン病、ランゲルハンス島、単離された心房性アミロイド、ならびに家族性地中海熱が挙げられるが、これらに限定されない。
【0139】
特定の好ましい実施形態において、本発明の方法は、脳に優先的に凝集かつ蓄積するアミロイドタンパク質およびアミロイド様タンパク質と関連する病態生理学的な状態の予防および処置に関する。これらの病態生理学的な状態としては、例えば、ヒトに発病するプリオン疾患(例えば、クロイツフェルト・ヤコブ病、ゲルストマン−シュトロイスラー−シャインカー症候群、致死性家族性不眠症、およびクールー疾患)ならびに他のホニュウ動物に発病するプリオン疾患(例えば、ウシにおけるウシ海綿状脳症、ヒツジにおけるスクラピー、ミンクにおける遺伝性脳障害ならびにラバおよびヘラジカにおける慢性消耗病)に発病するプリオン疾患;頭部外傷を伴う個々の脳においてしばしば観察されるアミロイド症;ならびにアルツハイマー病、レヴィー小体痴呆、アミロイド症(オランダ型およびアイスランド型)を伴う遺伝性脳出血、グアムパーキンソン痴呆症候群、ならびに成人のダウン症患者に発症するアルツハイマー病の形態のような神経変性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。これらの場合において、本発明の二機能性分子中のアミロイド結合部分は、血液脳関門を越える能力を有するように選択される。
【0140】
(IV.検出方法)
別の局面において、本発明は、アミロイドの蓄積に関連する病態生理学的な状態の診断を可能とする。特に、本発明は、患者の脳内におけるアミロイドタンパク質の凝集および蓄積によって特徴付けられる神経変性疾患の非侵襲的な診断を可能とする。従って、本発明は、アミロイド沈着物の存在を検出するための試薬および方法を提供する。より詳細には、本発明は、インビトロ、インビボ、およびエキソビボの系、ならびに生きている患者におけるアミロイド沈着物の検出、限局化および定量を可能とする画像化技術および画像化方法によって検出可能である標識化試薬を提供する。本明細書中で提供される方法は、画像化技術によって検出可能である少なくとも一つの画像化部分と関連するアミロイド沈着物に対して高い親和性および特異性を有する、少なくとも一つのアミロイド結合部分を含む、本発明の造影画像化剤の使用に基づく。あるいは、本明細書中に提供される方法は、安定した常磁性同位元素を用いて標識した少なくとも一つのアミロイド結合部分と関連する少なくとも一つの金属キレート部分を含む、本発明の造影画像化剤の使用を包含し得る。
【0141】
より詳細には、本発明は、画像化有効量の本発明の造影画像化剤またはその薬学的組成物と系とを接触させる工程を包含する系においてアミロイド沈着物の存在を検出するための方法を提供する。この接触工程は好ましくは、上記造影画像化剤が上記系の存在下においてアミロイド沈着物と相互作用し、その結果この相互作用によってアミロイド沈着物に対する造影画像化剤の結合を生じ得る条件下で実施される。次いでこの系存在下でアミロイド沈着物に対して結合される造影画像化剤は、画像化技術を用いて検出され、そして上記系の少なくとも一部分の一以上の画像が、作製される。
【0142】
この接触工程は、当該分野において公知である任意の適切な方法によって実施され得る。例えば、この接触工程は、インキュベートすることによって実施され得る。
【0143】
この系は、アミロイド沈着物を生成および/または含むことが可能なことが公知の、任意の生物学的実体であり得、例えば、この系は、細胞、生物学的流体、生物組織、または動物であり得る。この系が細胞、生物学的流体または生物組織である場合、この系は、生きている患者(例えば、生検によって得られ得る)または死亡した患者(例えば、剖検において得られ得る)が起源であり得る。この患者は、ヒトであってもよく、または別の哺乳動物であってもよい。
【0144】
好ましい実施形態において、細胞、生物学的流体、または生物組織は、アミロイド蓄積と関連する病態生理学的状態を有することが疑われる患者が起源である。例えば、細胞、生物学的流体または生物組織は、アミロイド−βペプチドの蓄積と関連する病態生理学的状態を有することが疑われる患者が起源であり得る。この特定の場合において、造影画像化剤中のアミロイド結合部分は、Aβアミロイドに対する高い親和性および特異性について選択される。他の好ましい実施形態において、細胞、生物学的流体または生物組織は、アミロイド蓄積と関連する病態生理学的状態の処置のために、潜在的な治療剤と(インビトロまたはエキソビボで)接触される。
【0145】
本発明のある局面において、上に記載される方法は、潜在的な治療薬剤を同定するために使用される。例えば、細胞、生物学的流体または生物組織の少なくとも一部の画像は、細胞、生物学的流体または生物組織を、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態の処置のための潜在的な治療剤と接触させる前および後に作成され得る。「前」と「後」との画像の比較は、この系に存在するアミロイド沈着物に対する薬剤の効果を決定することを可能にする。本発明はまた、この方法によって同定される治療剤を含む。
【0146】
本発明はまた、患者中のアミロイド沈着物の存在を検出するための方法を提供する。この方法は、画像化有効量の本発明の標的化造影画像化剤、またはこれらの薬学的組成物を患者に投与する工程を包含する。この投与は、好ましくは造影画像化剤が、(1)アミロイド沈着物を含み得る患者の体の領域に到達すること、および(2)存在する任意のアミロイド沈着物と相互作用し、この相互作用が造影画像化剤のアミロイド沈着物への結合をもたらすことを可能にする条件下で実施される。造影画像化剤の投与後であり、そして相互作用が起こるための十分な時間(例えば、30分と48時間との間)が経過した後、患者に存在するアミロイド沈着物に結合する造影画像化剤は、画像化技術を用いて検出され、患者の体の少なくとも一部分の、一以上の画像が作成される。
【0147】
一実施形態において、この方法は、患者のアミロイド沈着物を位置決めするために使用され得る。アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態を有することが疑われる患者から得られる結果と、臨床的に健康な個体の研究から得られる画像とを比較することによって、アミロイド沈着物の存在および分布が決定され得、アミロイドーシスの診断が確認され得る。例えば、この方法は、患者の脳におけるアミロイド斑を位置決めするために使用され得る。この場合において、造影画像化剤中のアミロイド結合部分は、血液脳関門を通過することが可能なように選択される。特に、この方法は、アルツハイマー病を有することが疑われる患者の脳におけるアミロイド斑を検出し、そして位置決めするために使用され得る。この場合において、造影画像化剤中のアミロイド結合部分は、Aβアミロイドに対して高い親和性および特異性を有し、血液脳関門透過性である。脳のイメージングのために、結合する造影画像化剤の量が測定され、患者の小脳に結合した造影画像化剤の量と(比率として)比較される。次いでこの比率は、年齢が一致する臨床的に健康な患者の脳における同じ比率と比較される。
【0148】
この造影画像化剤、またはこれの薬学的組成物の投与は、当該分野で公知の任意の適切な方法(例えば、経口方法および非経口方法(静脈内投与、動脈内投与、くも膜下腔内投与、皮内投与、および腔内投与を含む)ならびに経腸方法による投与)によって実施され得る。
【0149】
好ましい実施形態において、本明細書中で提供される、ある系または患者におけるアミロイド沈着物の存在を検出するための方法は、本発明の造影画像化剤を使用することによって実施され、造影画像化剤中の金属キレート部分は、上に記載のような常磁性金属イオンと錯体を形成する。アミロイド沈着物の検出は、次いで磁気共鳴画像法(MRI)によって行われ、MR画像が作成される。好ましくは、この常磁性金属イオンは、ガドリニウム(III)(Gd3+)である。
【0150】
他の好ましい実施形態において、この検出方法は、本発明の造影画像化剤を使用することによって実施され、造影画像化剤中の金属キレート部分は、上に記載のような放射性核種と錯体を形成する。アミロイド沈着物の検出は、次いで単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)によって行われ、SPECT画像が作成される。好ましくは、この放射性核種は、テクネチウム99m(99mTc)である。
【0151】
さらなる他の好ましい実施形態において、この検出方法は、本発明の造影画像化剤を使用することによって実施され、造影画像化剤中のアミロイド結合部分は、上に記載のような安定な常磁性同位体で標識される。アミロイド沈着物の検出は、次いで磁気共鳴分光法(MRS)によって行われ、MR画像が作成される。好ましくは、この安定な常磁性同位体は、炭素−13(13C)またはフッ素−19(19F)である。
【0152】
患者または系中のアミロイド沈着物の存在を検出するために提供される本発明の方法は、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態を診断するために使用され得る。この診断は、患者の体の一部分または全体を試験し、画像化することによってか、あるいは患者から得られる生物学的系(例えば、生物学的流体または生物組織の一以上のサンプル)を試験し、イメージングすることによって達成され得る。一つの方法もしくは他の方法、または両方の組み合わせは、患者に影響することが疑われる臨床的状態の性質に依存して選択される。患者から得られる結果と、臨床的に健康な個体の研究からのデータとの比較は、診断の決定および確認を可能にする。
【0153】
これらの方法はまた、アミロイドーシスに関連する病態生理学的状態の進行を追跡するために、使用され得る。例えば、このことは、患者のアミロイド沈着物の存在、局在化、分布、および定量化についての時間的経過を確立するために、ある期間にわたってこの方法を繰り返すことによって達成され得る。
【0154】
これらの方法はまた、アミロイド蓄積と関連する病態生理学的状態の処置に対する患者の反応をモニタリングするために使用され得る。例えば、アミロイド沈着物を含む患者の体の一部の画像(または、患者が起源であって、かつアミロイド沈着物を含む細胞、生物学的流体もしくは生物組織の一部分の像)は、患者が処置を受ける前および後に作成される。「前」と「後」の画像の比較は、アミロイド沈着物に対する処置の効果を決定することを可能にし、従って特定の処置に対する患者の反応をモニタリングすることを可能にする。
【0155】
診断され得るか、または進行が本明細書中で提供される方法によって追跡され得る病態生理学的状態は、上に列挙されるような任意のアミロイドまたはアミロイド様タンパク質の蓄積に関連し得る。凝集したアミロイドまたはアミロイド様タンパク質は、身体の任意の器官または組織に蓄積し得、原線維、フィラメント、プラーク、および/またはもつれを形成し得る。器官(例えば、心臓、脳、胃腸系、肝臓、脾臓、腎臓、膵臓、肺、関節、筋肉など)は、本明細書中に提供される本発明の方法を使用して試験され、画像化され得る。
【0156】
診断され得るか、または進行が本明細書中で提供される本発明の方法によって追跡され得る病態生理学的状態は、アミロイドーシスと関連することが公知の任意の疾患および障害であり得る。例えば、本発明の方法は、II型糖尿病、進行性核上性麻痺、内分泌系の特定の型の癌(例えば、チーズ様の家族性アミロイドーシスの髄様癌(フィンランド型);家族性アミロイド多発ニューロパチー(ポルトガル型)、家族性アミロイド多発ニューロパチー(アイオワ型)、家族性アミロイド心筋症(デンマーク型)、蕁麻疹および難聴を伴う家族性アミロイドニューロパチー(マックル−ウェルズ症候群)、遺伝性非ニューロパチー系アミロイドーシス(Osterta)型)、遺伝性腎アミロイドーシス、アミロイドに関連する骨髄腫アイドパシー(idopathy)またはマクログロブリン血症(macroglobulinernia)関連アイドパシー、全身性老年性アミロイドーシス、ホジキン病、ランゲルハンス島、単離された関節性アミロイド、および家族性地中海熱)のような状態を診断するために使用され得る。
【0157】
特定の好ましい実施形態において、本発明の方法は、脳において優先的に凝集し蓄積するアミロイドおよびアミロイド様タンパク質に関連する病態生理学的状態の診断に関する。これらの病態生理学的状態としては、例えば、ヒト(例えば、クロイツフェルト−ヤーコプ病、ゲルストマン−シュトロイスラー−シャインカー症候群、致死性家族性不眠症、およびクールー病)ならびに他の動物(例えば、ウシにおけるウシ海綿状脳症、ヒツジにおけるスクレイピー、ミンクにおける感染性脳症、およびミュールジカおよびオオジカにおける慢性消耗病)を発症し得るプリオン病;頭の外傷を有する個体の脳において時々観察されるアミロイドーシス;ならびに神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、レヴィー小体痴呆、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型およびアイスランド型)、グァム・パーキンソン痴呆および成人のダウン症患者に影響を与えるアルツハイマー病の形態)が挙げられる。これらの場合において、本発明の造影画像化剤中のアミロイド結合部分は、血液脳関門を通過する能力を有するように選択される。
【0158】
(V.処方、診断および投与)
(二機能性治療分子)
本明細書中に記載される二機能性治療分子は、それ自体でか、または薬学的組成物の形態で投与され得る。従って、本発明は、有効量の少なくとも一つの二機能性分子、または生理的に許容されるそれらの塩、および少なくとも1つの薬学的に受容可能なキャリアを含有する薬学的組成物を提供する。この特定の処方物は、選択される投与の経路に依存する。二機能性治療分子、またはこれらの薬学的組成物は、当該分野で公知の任意の適切な方法によって投与され得る。適切な経路の例としては、経口投与および非経口投与(静脈内、筋肉内、腹腔内、および皮下の注射を含む)、経皮投与および経腸投与などが挙げられる。
【0159】
経口投与のための薬学的組成物は、本発明の二機能性分子を一以上の薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤と組み合わせることによって得られ得る。このようなキャリアの使用は、本発明の二機能性分子が、例えば、錠剤、カプセル剤、丸剤、糖剤、液体、ゲル、シロップ剤、スラリー、および懸濁剤として処方されることを可能にする。経口投与のための薬学的に受容可能なキャリアおよび賦形剤は、当該分野で周知であり(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,1990を参照のこと)、任意およびすべての溶媒、分散媒、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤などが挙げられる。このような薬学的組成物は、少なくとも1重量%の活性型化合物を含有するべきである。組成物のパーセンテージは変動し得、都合よくは、単位の重量の約5%〜約80%の間であり得る。治療上有用な組成物中の活性型化合物の量は、得られる適切な投薬量である。本発明に従う好ましい組成物は、経口の投薬単位形態が約0.5μgと約2000mgとの間の活性型化合物を含有するように調製される。
【0160】
経口処方物は、必要に応じて他の従来の無毒性成分を含み得る。これらの成分としては、例えば、充填剤および結合剤(例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール、およびソルビトールのような糖類;ならびにデンプン、ゼラチン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびポリビニルピロリドンのようなセルロース調製物);賦形剤(例えば、リン酸二カルシウム);崩壊剤(例えば、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸およびアルギン酸ナトリウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム);ならびに矯味剤(例えば、ペパーミント、冬緑油、およびチェリーの矯味)が挙げられる。処方物がカプセル剤を形成する場合、そのカプセル剤は上に列挙される物質に加えて、液体ビヒクルまたは半液体ビヒクル(例えば、脂肪油、液体パラフィン、および液体ポリエチレングリコール)を含み得る。種々の他の物質は、コーティングとしてか、またはさもなければ投薬単位の物理的形態を改変するために存在し得る。例えば、錠剤、丸剤、またはカプセル剤は、シェラック、砂糖または両方でコーティングされ得る。シロップ剤またはエリキシル剤は、活性型化合物、甘味剤としてのスクロース、保存剤としてのメチルパラベンおよびプロピルパラベン、色素、チェリーフレーバーまたはオレンジフレーバーのような矯味を含み得る。経口の薬学的組成物の調製に使用される任意の材料は、薬学的に純粋であり、適用される量において実質的に無毒性であるべきである。
【0161】
本発明の二機能性分子はまた、注射による非経口投与(例えば、ボーラス注射または持続的注入による)のために処方され得、単位投薬形態中(例えば、アンプル中かまたは複数用量の容器中)に存在し得る。注射のための投薬単位形態は、投与の簡単さおよび投薬の均一性のために特に有利である。本明細書で使用される場合、用語「投薬単位形態」は、処置される患者のための単位用量として適した物理的な分散型単位をいう。それぞれの単位は、所望される治療効果をもたらすために計算される所定の量の活性型物質を含む。この投薬単位形態は、活性型化合物の特徴および所望される治療効果に直接的に依存する。例えば、単位用量形態は、主要な活性型化合物を0.5μg〜約2000mgの範囲の量で含む。あるいは、体重1kgあたり200ng〜10mg以上の範囲の量が、投与され得る。この量は、個々の活性型化合物についてか、または組み合わせる全体の活性型化合物についてであり得る。
【0162】
非経口組成物は、懸濁剤、乳濁剤、または活性な二機能性分子の水性溶液および非水性溶液であり得、必要に応じて他の助剤(例えば、懸濁剤、安定化剤、および/または分散剤)を含み得る。脂肪親和性溶媒またはビヒクル(例えば、脂肪油、合成脂肪酸エステル、およびリポソーム)は、懸濁剤および乳濁剤を調製するために使用され得る。水性の非経口処方物の粘度は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、およびデキストランのような物質を添加することによって増加させ得る。
【0163】
あるいは、本発明の二機能性分子は、活性成分の制御される送達を可能にするために処方され得る。制御放出組成物は、当該分野で周知であり(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,1990を参照のこと)、マイクロカプセル、坐剤、またはデポー(depot)調製物の形態をとり得る。これらの薬学的組成物は、高分子材料(例えば、ポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニルピロリドン、ヒドロゲル、ポリ乳酸、エチレンビニルアセテート、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、およびカルボキシ−メチルセルロース)の粒子中に活性型分子を組み込むかもしくは封入することによって、またはコロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、マクロスフェア、マイクロ乳濁剤またはマクロ乳濁剤、ナノ粒子、およびナノカプセル剤)中に活性型分子を組み込むかもしくは封入するによって得られ得る。デポー調製物は、移植または経皮送達、筋肉内注射によってか、または経皮パッチの使用(例えば、米国特許第4,708,716号および同第5,372,579号に記載されるデバイス)を介して投与され得る。
【0164】
本発明の二機能性治療分子、またはこれらの薬学的組成物は、単独で、本発明の他の試薬と組み合わせて、および/または他の治療剤との組み合わせて投与され得、その性質は、部分的に処置される状態に依存する。例えば、アルツハイマー病の場合、本発明の二機能性分子は、FDAに認可された治療剤(例えば、塩酸ドネベジル(Aricept(登録商標))、タクリン(Cognex(登録商標))、リバスチグミン(Exelon(登録商標))、およびベルナクリン(Mentane(登録商標)))と組み合わせて投与され得、これらは向知性薬として作用するアセチルコリンエステラーゼであり、一部のAD患者においてわずかな軽減を提供することが公知である。特定の障害を処置するために適切な化合物の組み合わせを決定する能力は、訓練された医師の能力の十分に範囲内である。
【0165】
本発明の二機能性分子、またはこれらの薬学的組成物は、アミロイド蓄積と関連する種々の病態生理学的状態を処置するために治療的に(すなわち、疾患の発症の後に)投与され得るか、またはこれらの病態生理学的状態を防ぐために予防的に投与され得る。
【0166】
本発明の二機能性分子、またはこれらの薬学的組成物の投与は、送達される量が意図される目的のために有効であるような投薬量においてである。投与の経路、処方および投与される投薬量は、患者の年齢、性別、体重および健康状態;処置される特定の病態生理学的状態(全身性または局所性、原発性または続発性アミロイドーシス);疾患の程度;二機能性治療分子の効力、バイオアベイラビリティ、インビボでの半減期、副作用の重症度に依存する。これらの因子は、治療の過程で容易に決定可能である。あるいは、またはさらに、投与される投薬量は、処置される特定の状態についての動物モデルを使用した研究から、および/または同様な薬理学的活性を示すことが公知である化合物について得られた動物のデータもしくはヒトのデータから決定され得る。各処置のために必要とされる総用量は、複数回用量または単回用量によって投与され得る。これらの方法または他の方法に基づく最大限の効力を達成するよう用量を調節することは、当該分野で周知であり、訓練された医師の能力の範囲内である。
【0167】
アミロイド蓄積と関連する病態生理学的状態を有する適切な患者は、検査室検査と病歴とによって同定され得る。特に、アミロイド沈着物の存在、局在化、分布および定量化は、本明細書中に記載の本発明の方法の1つによって決定され得る。この方法は、標的化造影画像化剤および画像化技術の使用を包含する。
【0168】
(標的化造影画像化剤)
本発明はまた、標的化造影画像化剤を含有する薬学的組成物を提供する。より詳細には、本発明の薬学的組成物は、上に記載される画像化有効量の少なくとも1つの造影画像化剤、または生理的に耐容性のそれらの塩、および少なくとも1つの薬学的に受容可能なキャリアを含有する。特定の好ましい薬学的組成物において、造影画像化剤の画像化部分は、常磁性金属イオンまたは放射性核種と錯体化する少なくとも1つの金属キレート部分を含む。好ましくは、この常磁性金属イオンはガドリニウムIII(Gd3+)であり;この放射性核種はテクネチウム99m(99mTc)である。他の好ましい実施形態において、造影画像化剤中のアミロイド結合部分は、安定な常磁性同位体で標識される。好ましくは、この安定な常磁性同位体は、炭素−13(13C)またはフッ素19(19F)である。
【0169】
造影画像化剤、またはこれらの薬学的組成物の投与は、当該分野で公知の任意の適切な方法によって実施され得、これらの方法は、Remington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。患者が罹患したことが疑われるアミロイドーシスの特定の型および試験される体の部位に依存して、造影画像化剤は局所的にかまたは全身的に投与され得、そして経口的(固体、液剤または懸濁剤として)にか、または注射(例えば、静脈内注射、動脈内注射、くも膜下腔内注入(すなわち、脊髄液を介して)、皮内注入、または腔内注入)によって送達され得る。
【0170】
経口投与のために、二機能性治療分子の場合には、本発明の造影画像化剤は、上に記載のように処方され得る。
【0171】
注射による投与のために、造影画像化剤の薬学的組成物は、滅菌の水溶液もしくは非水性溶液として、または代替的に滅菌の注射可能溶液の即座の調製のための滅菌散剤として処方され得る。このような薬学的組成物は、製造および貯蔵の条件下で安定であるべきであり、かつ微生物(例えば、細菌および真菌)の汚染行為に対して保護されなければならない。
【0172】
薬学的に受容可能なキャリアは、溶媒または分散媒(例えば、水溶液(例えば、ハンクス溶液、アルコール性/水溶性溶液、または食塩水)、および非水性キャリア(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油および注射可能なエチルオレアートのような有機エステル)である。注射可能な薬学的組成物はまた、非経口ビヒクル(例えば、塩化ナトリウムおよびリンガーデキストロース(Ringer’s dextrose))、および/または静脈内ビヒクル(例えば、流体および栄養補充剤);ならびに他の従来の薬学的に受容可能な、無毒性の賦形剤および添加剤(塩、緩衝剤および抗菌剤または抗真菌剤のような保存剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チーメローサル(thirmerosal)など)を含む)を含む。注射可能な組成物の長期の吸収は、吸収を遅らせ得る薬剤(例えば、アルミニウムモノステアレートおよびゼラチン)を加えることによって、もたらされ得る。種々の成分のpHおよび濃度は、当業者によって容易に決定され得る。
【0173】
滅菌の注射可能溶液は、必要量の適切な溶媒中に、活性化合物を上に列挙される種々の他の成分と共に組み込み、続いて滅菌(例えば、フィルター処理または照射)することによって調製される。滅菌の注射可能溶液の調製のための滅菌散剤の場合、調製の好ましい方法は、真空乾燥技術および凍結乾燥技術である。
【0174】
概して、検出可能な造影画像化剤の投薬は、例えば、患者の年齢、性別および体重、ならびに患者が罹患したことが疑われる特定の病態生理学的状態、疾患の程度、ならびに試験される体の領域など考慮すべき事柄に依存して変動する。禁忌、併用治療および他の変動のような要因もまた、投与される検出可能な造影画像化剤の投薬を調節するために考慮される。しかし、このことは、訓練された医師によって容易に達成され得る。
【0175】
概して、本発明の薬学的組成物の適切な1日の用量は、患者に存在する任意のアミロイド沈着物の検出を可能にするために十分な造影画像化剤の最小量に対応する。この用量を最小化するために、投与は、静脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下であることが好ましく、好ましくは試験される部位の近位である。例えば、静脈内投与は、尿路のイメージングのために適切であり;髄腔内投与は、脳および中枢神経系のイメージングのためにより適しており;一方、食事を与えられていない患者への経口投与は、胃腸管のイメージングのために適切である。
【0176】
本発明の放射性造影画像化剤は、好ましくは、1日あたり体重1kgあたり0.1mCurie〜約10mCurieの範囲において投与される。本発明の常磁性造影画像化剤は、好ましくは、1日あたり体重1kgあたり0.02mmole〜1,3mmoleの範囲において投与される。
【実施例】
【0177】
以下の実施例は、本発明を作製し実践する、いくつかの好ましい様式を記載する。しかし、これらの実施例は、説明の目的のためだけであり、本発明の範囲を限定することを意味しないということが理解されるべきである。
【0178】
(実施例1:アミロイド結合、金属キレート薬剤のファミリーの合成)
新規の二機能性分子のファミリーが設計されており、開発されている。新しい二機能性分子は、1つの金属キレート部分を含み、直接的に2つの同一のアミロイド結合部分に共有結合する。このファミリーのすべての二機能性分子に共通である金属キレート部分は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)であり、当該分野で周知の金属キレート剤である。図4Aに示すように、このファミリーの親分子(parent molecule)のアミロイド結合部分は、ベンゾチオフラビン誘導体である。この誘導体は、チオフラビンアナログのファミリーに属し、げっ歯動物において血液脳関門透過性であり、Aβアミロイドに対して高親和性を示すことが報告されている(W.E.Klunkら,Life Sci.2001,69:1471−1484)。
【0179】
このファミリーの他のメンバーは、親の二機能性分子のアナログであり、ベンゾチアゾール部分の芳香環は、一以上の官能基(例えば、4−ジメチルアミノ;4−アミノ;4−クロロ;4−クロロ−5−エチル;4−アセチル;5−カルボキシル;5−スルホノキシル;5−ブロモ;4−、5−または6−メチル;5−トリフルロメチル;4−エトキシ;4−、5−または6−メチルスルホニル;および4−、5−または6−ヒドロキシルを含む(図4Bを参照のこと))で置換されている。
【0180】
下に報告される合成において使用するすべての試薬および溶媒を、Aldrich Chemical(St.Louis,MO)Acros Organics(Pittsburg,PA)、またはLancaster Synthesis Inc.(Windham,NH)から利用可能な高い純度グレードで得て、事前の精製なしに使用した。
【0181】
このファミリーの親の二機能性分子の合成(化合物XH1)を、本明細書中に記載する。以下のスキームに示されるとおり、XH1の調製は、金属キレート部分とアミロイド結合部分との間のアミド結合の形成を包含する。以前に刊行された合成方法(W.E.Klunkら,Life Sci.2001,69:1471−1484;D.Shiら,J.Med.Chem.1996,39:3375−3384;およびM.S.Koningsら,Inorg.Chem.1990,29:1488−1491))から適合した手順に従って、この反応を実施した。
【0182】
【化18】
合成の工程(a)は、チオフラビンアナログである、2−(4’−アミノフェニル)−ベンゾチアゾール(化合物III)を提供し、これを塩化4−ニトロベンゾイル(化合物II)と2−アミノチオフェノール(化合物I)との間の直接結合の生成物を還元することによって調製した。合成の工程(b)は、化合物IVであるDTPA−ビス(無水物)を、過剰のチオフラビンアナログと反応させて所望の化合物XH1を形成した。
【0183】
より正確には、無水ベンゼン(200mL)中の化合物I(10g、80mmol)および化合物II(15g、80mmol)を、室温で16時間攪拌した。酢酸エチルでの抽出に続いて、溶媒をエバポレートし、その残分をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル;85:15、v:v)によって精製し、薄い黄色の固体として15g(73%)の2−(4’−ナフトフェニル)−ベンゾチアゾールを得た。エタノール中のこの中間体(10g、40mmol)と塩化スズ(II)二水和物(20g、90mmol)との混合物を、次いで窒素下で4時間還流した。エバポレーションによりエタノールを除去し、その残分を酢酸エチル(200mL)中に溶解させた。1M NaOH(3×200mL)と水(3×200mL)とを用いて、得た溶液を洗浄した。溶媒のエバポレーションから、10g(97%)の2−(4’−アミノフェニル)−ベンゾチアゾールを得た。
【0184】
次いで、DTPA−ビス(無水物)(2.5g、7.0mmol)を、氷冷し、攪拌したエタノール中の化合物III(8.85g、7.8mmol)の溶液に30分にわたって部分的に加えた。水(150mL)を加えた後、結果として生じた反応混合物を、さらに12時間周囲温度において攪拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、水(500mL)を加えることによって得た溶液を、濃HClを用いてpH 2.5に調整し、結晶の形成を誘導した。収集した後、エタノールから結晶を再結晶化し、純粋なXH1(収量:71%)を得た。
【0185】
LC/MSおよび1H−NMRによって、得た親の二機能性分子を特徴付けた。250MHzで操作したBruker AVANT機器を使用して、プロトン−NMRスペクトルを記録した。参照としてDMSOを使用して、化学シフトをppmで報告した。FAB−MSを介したM−Scan,Inc.(West Chester,PA)により、逆相LC/MS分析を実施した。SymmetryTM C18、3.5μM、2.1×50mmカラム(Waters Corporation,Milord,MA)上で、LC−MSクロマトグラフィーを行った。これには、流速1mL/分かつ水中の10分勾配の15〜85%アセトニトリル(0.1%ギ酸の不変濃度を有する)を使用した。XH1の質量スペクトルおよび1H−NMRスペクトルを、図5に提示する。
【0186】
上に記載の合成経路を、このファミリーの他の二機能性分子の調製のために使用し、適合し得る。
【0187】
(実施例2:MRI造影画像化剤のファミリーの合成)
磁気共鳴画像法(MRI)によって検出可能な造影画像化剤を、実施例1に記載の二機能性分子から調製し得る。親の化合物の場合において下に示すように、MRI造影画像化剤Gd−XHlの合成は、ガドリニウム(III)(Gd3+)のXH1への挿入を含む。以前に報告された方法(M.S.Koningsら,Inorg.Chem.1990,29:1488−1491)に従って、この反応を実施した。
【0188】
【化19】
より詳細には、水(30mL)中のXH1(12.1g、25.0mmol)とガドリニウム酸化物であるGd2O3(4.53g、12.4mmol)との混合物を、5時間還流した。ガドリニウム錯体の透明の結晶を、1M NaOHで溶液のpHを6.5に調整することによって、定量的に形成した。
【0189】
(実施例3:SPECT造影画像化剤のファミリーの合成)
同様に、単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)によって検出可能な造影画像化剤を、実施例1に記載の二機能性分子から調製し得る。親の二機能性分子の場合において、この反応を下に示し、米国特許第4,434,151号に記載のpH6.5におけるスズの還元の手順を使用したテクネチウム99mの挿入によって、この反応を実施した。この反応は、テクネチウム錯体である化合物99mTc−XH1を定量的に生じる。
【0190】
【化20】
より詳細には、XH1(8.25g、0.17mmol)を、1.0mLのエタノールおよび1.0M酢酸ナトリウム(pH5.5)中に溶解し、そして生理食塩水中の99mTcO4−(5〜50mCi)の1.0mLのジェネレーター溶出物質(generator eluant)を、反応混合物に加える。エタノール1mLあたり2.0mgのSnCl2・H2Oを溶解することによって調製した0.2mLのスズ溶液の添加は、テクネチウム錯体を生成する。15〜30分後、標識効力を、電気泳動により決定し得る。
【0191】
(実施例4:二機能性分子の生物学的活性を試験するための無細胞アッセイ)
以下の段落において、本発明の二機能性分子の生物学的活性を試験するために使用し得る種々の無細胞アッセイを記載する。より詳細には、第1の一連のアッセイは、注目する二機能性分子の、Aβ凝集をもたらすアミロイド−βペプチドへのレドックス活性遷移金属イオンの結合を減少、阻害または、さもなくば干渉する能力を評価することを可能にする。第2の一連のアッセイは、注目する二機能性分子の、レドックス活性遷移金属イオンのアミロイド媒介性還元を阻害する能力を評価することを可能にする。第3の一連のアッセイは、本発明の二機能性分子の、活性酸素種(例えば、H2O2、O2・−、および・OH)の金属媒介性またはアミロイド媒介性の生成に対する阻害効果を評価することを可能にする。この節に記載する最後のアッセイは、二機能性分子の、金属誘導性Aβ凝集を分解する能力を評価することを可能にする。
【0192】
(金属−アミロイド−βペプチド結合の阻害)
レドックス活性遷移金属イオンのアミロイドタンパク質への結合は、(1)タンパク質の凝集および蓄積を促進すること、(2)遷移金属イオンを還元すること、および(3)活性酸素種(例えば、過酸化水素(H2O2)、スーパーオキシドラジカルアニオン(O2・−)およびヒドロキシラジカル(・OH))を作製することが公知である。本発明の二機能性分子の存在下において、これら3つのプロセスの効力は、少なくとも減少されるべきであり、最もよくて完全に阻害されるべきである。以下の無細胞アッセイを使用して、レドックス活性遷移金属イオンのアミロイド−βペプチドへの結合に対する本発明の二機能性分子の効果を、これら3つの二次的なプロセスに対する効果を評価することによって評価し得る。
【0193】
((a)Aβペプチドの合成)
W.M.Keck Foundation Biotechnology Resource Laboratory(Yale University,New Haven,CT)における固相Fmoc化学;Glabe Laboratory(University of California,Irvine,CA);またはMulthaup Laboratory(University of Heidelberg,Germany);またはU.S.Peptide,Inc.(Rancho Cucamonga,CA)から購入;またはAldrich−Sigma(St.Louis,MO)を使用して、ヒトAβペプチド(Aβ1〜40およびAβ1〜42)を合成した。逆相HPLC、アミノ酸配列決定、および質量分析による精製により、この合成を確認した。合成Aβペプチドを、トリフルオロエタノール(Milli−Q水中30%(Millipore Corporation,Milord,MA))または20mM HEPES(pH8.5)中に0.5〜1.0g/mLの濃度において溶解し、20分間10,000×gにおいて遠心分離した。この上清(ストックAβ)を、実験の日に続く実験のために使用した。
【0194】
Aβのストック溶液の濃度を、214nmにおけるUV分光またはMicro BCAタンパク質アッセイ(Pierce,Rockford,IL)によって決定した。10μLのストックAβ(またはウシ血清アルブミン(BSA)標準)を140μLの蒸留水に加え、次いで等しい体積のMicro BCAタンパク質アッセイ試薬(150μL)を96ウェルプレートに加え、562nmにおける吸光度を測定することによって、Micro BCAアッセイを行った。BSA標準曲線を使用して、Aβの濃度を決定した。使用のまえに、金属イオンのすべての緩衝液およびストック溶液(例えば、塩化物塩)を、0.22μmフィルター(Gelan Sciences,Ann Arbor,MI)を介してフィルター処理し、任意の粒子状物質を除去した。
【0195】
2つの異なる方法を使用して、XH1によるZn2+誘導性Aβ凝集の可逆性:混濁度および免疫濾過(immuno−filtration)を調べ得る。
【0196】
((b)濁度によって測定されるAβの金属誘導性凝集の阻害)
濁度測定を、以前に記載されたように行った(X.Huangら,J.Biol.Chem.1997,272:26464−26470)。67mMリン酸緩衝液、150mM NaCl(pH7.4)中で1時間、25μMの化合物XH1(親の二機能性分子)の存在下または非存在下において、Aβ1〜40(10μM)をZn2+(25μM)と共培養し、混濁度測定を1分間隔で4回行った。続いて、試験される10mMの二機能性分子の20μLアリコートまたは10mM Zn2+を代替的に混合物に加え、続いて2分遅れで、さらなる4回の測定を1分間隔で行った。二機能性分子の最後の添加および混濁度測定の後に、最後の測定を行う前に、この混合物をさらに30分間インキュベートした。コントロールの目的のために、化合物XH1の代わりにジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)を使用して、同じ実験を実施した(DTPAは、周知の金属キレート剤でもあり、XH1中に含まれる金属キレート部分でもある)。
【0197】
これらの実験の結果は、図8に提示され、DTPAと本発明の親の二機能性分子との両方が、溶液中のAβ1〜40のZn2+誘導性凝集を顕著に減少させ、DTPAについて観察される最も強力な効果を有することを示す。
【0198】
((c)免疫濾過(Immunofiltration)によって測定されるAβの金属誘導性凝集の阻害)
第2の方法において、本発明の二機能性分子の金属誘導性Aβ凝集に対する効果を評価するために、この第2の方法を使用し得、生理学的濃度のAβ(8nM)を、150mM NaCl、20mM HEPES(pH7.4)、100nM BSAをZnCl2(0、0.1μM、0.2μM、0.5μMおよび2μM)と共に含む混合物中に加え、試験される二機能性分子の存在下(1〜5μM)または非存在下においてインキュベートする(30分、37℃)。次いで、この反応混合物(200μL)を、96ウェルEasy−Titer ELISAシステム(Pierce,Rockford,IL)に配置し、0.22μmセルロースアセテートフィルター(MSI,Westboro,MA)を介してフィルター処理する。凝集した粒子を膜に固定し(0.1%グルタルアルデヒド,15分)、完全に洗浄し、次いで抗Aβモノクローナル抗体6E10(Senetek,Maryland Leights,MI)を用いて調査する。ブロットを洗浄し、ECL化学発光試薬(Amersham Biosciences Corp.,Piscataway,NJ)の存在下で、フィルムに感光させる。次いで、免疫ブロットからのECLフィルムの透過率の分析によって、免疫反応性を定量化する。
【0199】
(レドックス活性遷移金属イオンのアミロイド媒介性還元の阻害)
確立されたプロトコル(J.W.Landersら,Amer.Clin.Path.1958,29:590−592)の改変に基づく方法に従って、96ウェルマイクロタイタープレート(Corning Costar,Acton,MA)を使用して金属還元アッセイを行い得る。Aβペプチド(10μM)またはビタミンC(100μM)、金属イオン(10μM、Fe(NO3)3またはCu(NO3)2)、および還元した金属イオン指示薬であるバソフェナントロリンジスルホン酸(bathophenanthrolinedisulfonic acid)(BP、Fe2+について、200μM、Aldrich−Sigma)またはバソキュプロインジスルホン酸(bathocuproinedisulfonic acid)(BC、Cu+について、200μM、Aldrich−Sigma)を、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)(pH7.4)中で1時間37℃において、試験される発明の二機能性分子の存在下(200μM)または非存在下で同時にインキュベートする。この金属イオン溶液を、米国標準技術局(NIST)から購入する水溶性ストックから緩衝液中に直接的に希釈することによって、調製する。次いで、96ウェルプレートリーダー(SPECTRAmax 250,Molecular Devices,CA)を用いて、536nm(Fe2+−BP錯体)および483nm(Cu+−BC錯体)において、それぞれ吸光度を測定する。コントロールサンプルの吸光度をまた測定し、光散乱の寄与を評価し、これらの波長におけるバックグラウンドの緩衝液シグナルを決定する。それぞれの指示薬および二機能性分子の存在下で、ペプチドと金属によって作成される吸光度から、これらのコントロールからの吸光度を差し引くことによって、536nmまたは483nmにおける正味の吸光度(ΔA)を得る。
【0200】
還元金属イオン(Fe2+またはCu+)の濃度を、式:[Fe2+]または[Cu+]=(ΔA×106)/(ε×l)に基づいて定量化し、ここでlは、機器の仕様マニュアルで記載されるとおり(Fe2+について0.856cm;Cu+について1.049cm)、測定したウェルの300μLの容積についての等価垂直パスレングス(vertical pathlength)であり;εは、錯体についての公知の分子吸光度(すなわち、Fe2+−BPについての7124M−1cm−1およびCu+−BPについての2762M−1cm−1)である。
【0201】
(活性酸素種の金属媒介性生成およびアミロイド媒介性生成の阻害)
H2O2アッセイ。UV−透過96ウェルマイクロタイタープレート(Molecular Devices,CA)中で、既存のプロトコル(J.C.Hanら,Anal.Biochem.1996,234:107−109;およびJ.C.Hanら,Biochem.1994,220:5−10)から調整した手順に従って、H2O2アッセイを行い得る。Aβペプチド(Aβ1〜42またはAβ1〜40;10μM)またはビタミンC(10μM)、Fe3+もしくはCu2+(1μM)およびH2O2トラップ剤であるトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィンハイドロクロライド(TCEP,Pierce,50μM)を、PBS緩衝液(300mL,pH7.4)中で1時間37℃において、試験する本発明の二機能性分子の存在下(1〜5μM)または非存在下で、同時インキュベートする。同一の条件下で、カタラーゼ(Aldrich−Sigma,100U/mL)を、このペプチドと置き換え、H2O2なしを表すコントロールシグナルとする。インキュベーションに続いて、未反応のTCEPを、5,5−ジチオ−ビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB,Aldrich−Sigma)によって検出する。これは、2モルの有色生成物、2−(ニトロ−5−チオベンゾエート)(NTB)を作成する。この反応は、以下:
TCEP+H2O2→TCEP=O+H2O
のとおりであり、次いで残りのTCEPは、DTNBと反応する:
TCEP+DTNB+H2O→TCEP=O+2NTB
生成したH2O2の量を、以下の式:
H2O2(μM)=(ΔA*×106)/(2×l×ε)に基づいて定量化する。ここで、ΔA*は、412 nmにおけるサンプルとカタラーゼのみのコントロールとの間の絶対的な吸光度の差であり;l=0.875cm(プレートリーダーの製造者の仕様書から得る等価垂直パスレングス);そしてεは、NTBについての分子吸光度(412nmにおいて14,150M−1cm−1)である。TCEPは、強力な還元剤であって、ジスルフィド結合を含むポリペプチドと人為現象的に反応し得る。しかし、Aβはこのような化学結合を有していないので、この反応は、Aβとは起こり得ない。
【0202】
O2・−の検出のためのアッセイ。37℃のPBS(pH7.4)中で1時間、試験する本発明の二機能性分子の存在下(1〜5μM)または非存在下でインキュベーションした後に、Aβペプチド(Aβ1〜42またはAβ1〜40、10μM、1ウェルあたり300μL)の吸光度を測定する(96ウェルプレートリーダーを使用)ことによって、O2・−の生成を評価し得る。対応するブランクは、PBS単独由来のシグナルである。ペプチドが生成するシグナルについての絶対的な基線は、このアッセイにおいては達成できない。なぜならば、チロシン(Aβの残基10)についての吸収ピークが、O2・−についての吸光ピークと近い(254nm)からである。しかし、スーパーオキシドジスムターゼ(100U/mL)との同時インキュベーションによる吸光度の弱化は、吸光度シグナルの大部分は、O2・−の存在のためであるということを確認することを助ける。
【0203】
・OHの検出のためのチオバルビツール酸反応物質(TBARS)アッセイ。Fe3+またはCu2+とのインキュベーション混合物についてのチオバルビツール酸反応性物質(TBARS)アッセイを、確立されたプロトコル(J.M.Gutteridgeら,Biochim.Biophys.Acta,1983,759:38−41)から改変した96ウェルマイクロタイターフォーマットにおいて行い得る。アミロイド−βペプチド(Aβ1〜42またはAβ1〜40;10μM)またはビタミンC(100μM)を、試験する本発明の二機能性分子の存在下または非存在下で、PBS(pH7.4)中でFe3+またはCu2+(1μM)およびデオキシリボース(7.5mM,Aldrich−Sigma)と共にインキュベーションする。インキュベーション(37℃、1時間)に続き、氷酢酸および2−チオバルブリック酸(thiobarburic acid)(1%,0.05M NaOH中のw/v,Aldrich−Sigma)を加え、加熱する(100℃、10分)。最終的な混合物を、532nmにおける吸光度を測定する前に、氷上に3分間配置する。ビタミンCまたはAβペプチドを除いて同一の化学的成分からなるコントロールサンプル由来の吸光度を差し引くことによって、各サンプルについての正味の吸光度変化を得る。
【0204】
(金属誘導性Aβ凝集の再可溶化)
金属誘導性Aβ凝集の再可溶化を引き起こす本発明の二機能性分子の能力を評価するために、Aβ(Aβ1〜40またはAβ1〜42;10ng/ウェル(PBS中))凝集を、ZnCl2(25μM)、またはCuCl2(5μM)を加えることによって、最初に誘導する。次いで、フィルター処理によって、凝集を0.22μmのナイロン膜に移す。PBS単独、または2μMの試験する本発明の二機能性分子を含有するPBS、または2μMのClioquinolを含有するPBS(コントロールとして使用)を用いて、凝集を洗浄する(200μL/ウェル)。この膜を固定し、抗Aβモノクローナル抗体6E10を用いて調査し、ECLフィルムへの露光のために現像する。相対シグナル強度をECLフィルムの濃度測定分析によって決定し、既知の量のペプチドについて較正する。PBS単独で洗浄した後のフィルター上に残るAβシグナルのパーセンテージとして、値を表現する。
【0205】
(実施例5:二機能性分子を試験するための細胞ベースアッセイ)
(二機能性分子の神経毒性)
((a)E17ラット皮質一次ニューロン)
初代ニューロン培養物を使用して、親の二機能性分子(XH1)の神経毒性を試験した。G.J.BrewerおよびC.W.Cotman(Brain Res.1989,494:65−74において)によって記載のように、妊娠17日後の病原体を含まないメスSprague−Dawleyラット(Taconic Farms,MAから購入)から、E17ラット皮質一次ニューロンを得た。使用したプロトコルは、正確に定義した培養条件のもとで、低密度でのニューロンの長期間の培養を可能にした。このプロトコルは、90%までのニューロン培養を提供した。グリア細胞の小さな集団を、ラット皮質一次ニューロンと一緒に培養することが好ましい。なぜならこれらの細胞は、ニューロンの生存を補助するからである。シトシンアラビノシド(1μM)を使用して、培養調製物中のグリア細胞の増殖を制御した。ニューロン特異的エノラーゼ(および/または大グリア細胞特異的S100β)免疫組織化学を用いて、ニューロン集団を定期的に調べた。
【0206】
95%O2、5%CO2、湿度85%の条件の下で、37℃で4日間、B−27サプリメント(Life Technologies,Inc.)、20μM L−グルタミン酸、100単位/mL ペニシリン、0.1g/mL ストレプトマイシン、および2mM L−グルタミンを含む無血清NeurobasalTM培地中で、E17ラット皮質一次ニューロンを増殖させた。5日目(処置日)に、B−27サプリメントを含まない無血清NeurobasalTM培地+L−グルタミンで、培地を置き換えた。次いで、XH1(0、1または10μM)の存在下で、細胞をインキュベートし、XH1での処理の48時間後に、細胞生存率をアッセイした。LDH放出アッセイおよびMTTアッセイを、Roche(Nutley,NJ)から市販されるキットを使用して行い、それぞれ壊死性細胞死を評価し、細胞の代謝活性を決定した。
【0207】
これらのアッセイの結果を、3つのセットの実験において得られるデータを使用して計算した平均値として、図9Aに報告する。この結果は、XH1は、E17ラット皮質一次ニューロン中の低い高分子濃度において、任意の有意な細胞死を誘導しないことを示す。
【0208】
((b)ヒトSH−SY5Y神経芽腫細胞)
XH1の神経毒性をまた、ヒトSH−SY5Y神経芽腫細胞について試験した。SH−SY5Y細胞株を一般に使用し、神経突起生成、分化、および腫瘍形成を研究する(D.Vuら,Brain Res.Mol.Brain Res.2003,115:93−103)。SH−SY5Y細胞を、American Type Culture Collectionから得て、10%ウシ胎児血清(Gibco−BRL)および抗生物質を添加したダルベッコ改変イーグル培地中で増殖させた。
【0209】
ヒトSH−SY5Y神経芽腫細胞を、XH1の存在下(0、1、5または10μM)でインキュベートし(95%O2、5%CO2、湿度85%、37℃)、そして処理の48時間後に上に記載されるLDH放出アッセイを使用して、細胞生存を評価した。これらの実験の結果を図9Bに報告する。図9Bは、XH1は、ヒトSH−SY5Y神経芽腫細胞中の低い高分子濃度において、いかなる有意な細胞死をも引き起こさないことを示す。
【0210】
(金属調節性APPタンパク質発現に対する二機能性分子の効果)
いくつかの因子は、アミロイドタンパク質前駆体(APP)のレベルの増加とアルツハイマー病の発生との間の直接の関連を示唆する。APPは、ADと関連する。なぜならば、APPは、タンパク質切断を介してアミロイド斑中に蓄積するβ−ペプチドに処理され、そして、APP遺伝子変異は、早期のAD発症をもたらし得るからである。しかし、家族性ADの変異の存在下においてでさえも、トランスジェニックマウスにおけるAPPの過剰発現により、アミロイドフィラメント沈着とアルツハイマー様病理との発達の原因となるには十分なAβペプチド生成物を必要とすることが分かった。現在、生物学的関連状態におけるAPP合成および起こり得るAβペプチド分泌を制御する、翻訳調整機構についての重要な役割を支持する幾つかの報告が存在する(van Leeuwenら,Science,1998,279:242−247)。
【0211】
異なる実験を行って、APP合成およびその結果のAβ生成物を減少させるか、または阻害する、XH1およびそのアナログの能力を評価し得る。
【0212】
((a)APPタンパク質合成の決定)
SH−SY5Yヒト神経芽腫細胞において、APP合成を抑制するXH1の容量を、SDS−PAGEによって測定した。コントロールタンパク質(β−チューブリンおよび/または2つのアミロイド−前駆体様タンパク質(APLP1およびAPLP2)を使用して、本発明の二機能性分子の標的の抑制特異性を確認した。
【0213】
SDS−PAGE。SH−SY5Yヒト神経芽腫細胞を収集し、冷却PBSで3回洗浄し、次いでプロテアーゼインヒビターカクテル(Roche)と混合したM−PERTM哺乳動物タンパク質抽出試薬(Pierce)で溶解した。細胞溶解物を、低温度室の中で15分間13,000rpmにおいてボルテックスし、その上清を全体のタンパク質濃度についてBCAアッセイを行った。成形済みNuPAGETM4−12%ビス−トリスゲル(Invitrogen)上で、等しくタンパク質をローディングし(15μg/ウェル)、タンパク質ブロットを行った。200Vにおいて45分間電気泳動し、75mA/ゲルで95分間転写した。製造者の指示に従って、このブロットを一次抗体および二次抗体によって調べ、最後に15分間隔で2〜3時間洗浄した。次いで、このブロットを化学発光キット(Pierce)を使用して発光させた。
【0214】
この実験の結果を、図10に報告する。図10Aで示すとおり、XH1濃度における増加は、APP合成における減少をもたらしたが、同じ条件のもとでβ−チューブリン発現への効果はみられなかった。同様に、図10Bで示すとおり、XH1の存在は(10μMの濃度まで)、APLP1合成またはAPLP2合成に影響を与えなかった。これらのデータは、XH1の標的の抑制特異性を実証する。
【0215】
神経芽腫細胞の代謝標識。各処理の前に等しい数(96ウェルディッシュ中、1×105細胞/ウェル)で8マイクロタイターウェルに細胞をプレートした後、初代神経芽腫において、細胞内APPタンパク質合成を決定し得る。XH1、DPTAの存在下、または未処理のままで、細胞を48時間処理する。各処理の始めにおいて、1ウェルあたり1×105細胞が一致して存在することを確認するために、ランダムなウェルからの細胞をカウントする。神経芽腫細胞をメチオニンのない培地中で15分間プレインキュベートし、メチオニンのない培地(RPMI 1640;GIBCO)中で、300μCi/mL[35S]−メチオニンを用いて30分間パルス標識(pulse−labeled)した。各マイクロタイタープレートを、25mL STEN緩衝液(STEN緩衝液は、0.2%NP−40、2mM EDTA、50mMトリス、pH7.6であった)および無菌のガラス棒を用いて、神経芽腫細胞を溶解する前に、4℃の冷却PBS中で2回洗浄した。20mM PMSF、5mg/mLロイペプチンの溶解緩衝液への添加は、タンパク質分解を防ぐ。各ウェルからの緩衝液を、総量の300μLへプールする。各プールした溶解物の半分を、APPのカルボキシル末端に対して惹起した抗血清(APP−695のアミノ酸残基676〜695に対して惹起されたC−8抗体の1:500希釈)を用いて免疫沈降する。各溶解物の残りの部分を、ヒトフェリチン抗血清(1:500希釈、Boehringer)を用いて免疫沈降する。
【0216】
すべての標識実験において、免疫沈降したタンパク質を、抗体標識した抗原複合体のプロテインAセファロースTMビーズへの結合を介して収集する。免疫沈降したサンプルを、10〜20%トリス−トリシンゲル(Novex)に適用し、製造者の指示に従って、このサンプルをトリス−トリシン緩衝液中で電気泳動する。このゲルを、25%メタノール、7%(v/v)メタノールで1時間固定し、フルオログラフィック(fluorographic)試薬(Amplify,Amersham)で30分間処理し、乾燥させ、そして一晩−80℃でX−omat Kodakフィルムに感光させる。
【0217】
((b)APP mRNAレベルの決定)
比較のために、XH1のAPPプロセッシングに影響する能力を、リアルタイムRT−PCRによってAPPのmRNAレベルを測定することによって評価し得る。
【0218】
((c)細胞内Aβ1〜40およびAβ1〜42ならびに分泌Aβ1〜40およびAβ1〜42濃度の決定)
SH−SY5Y細胞のXH1での処理の後のAβ1〜40およびAβ1〜42の細胞内濃度と分泌濃度の両方を、Aβ40/42レベルについての市販のELISAキット(BioSource International)を使用して決定し得る。
【0219】
((d)スクリーニングアッセイ)
APPをコードするmRNAの5’非翻訳領域(5’−UTR)が、鉄反応性要素(J.T.Rogersら,J.Biol.Chem.2002,47:45518−45528)、すなわち、RNAステムループを含有することを実証した。RNAステムループは、フェリチンの翻訳およびトランスフェリチンレセプターmRNAの安定性を調節することによって、細胞内の鉄ホメオスタシスを制御する。鉄のレベルは、星状細胞中のAPP mRNAの翻訳を調節することが示されているが(J.T.Rogersら,J.Biol.Chem.1999,274:6421−6431)、一方、細胞内の鉄レベルは、神経芽腫細胞中のAPP合成を調節することが見出されている(J.T.Rogersら,J.Biol.Chem.2002,47:45518−45528)。さらに、鉄キレート剤(例えば、デスフェリオキサミン)の存在は、APP 5’−UTRが与える翻訳のダウンレギュレーションを誘導することを報告した。これは、鉄の流入によって、逆転することを観察した。
【0220】
J.T.Rogersおよび共同研究者は(J.Mol.Neurosci.2002,19:77−82)、潜在的な薬物が、APPをコードするmRNAの5’−UTRと相互作用することによって、APP発現を阻害するそれらの能力についてスクリーニングするためのトランスフェクションベースのアッセイを発展した。彼らは、このアッセイを使用して、異なる分類の薬物(レセプターリガンド相互作用の公知のブロッカー、細菌性抗生物質、脂質代謝に関わる薬物、金属キレート剤を含む)をスクリーニングする。
【0221】
Dr.Rogersとの共同研究において、初期に報告されたアッセイと類似のアッセイを使用して、mRNA 5’−UTRとの相互作用を介したAPP発現および必然的なAβ生成を減少させる、XH1ならびにそのアナログの能力を試験する。
【0222】
構築物調製。pSV2(APP)ルシフェラーゼおよびpSV2(APP)GFP構築物を、APP遺伝子の5’−UTR配列をそれぞれ下流のレポーター遺伝子(ルシフェラーゼおよび緑色蛍光タンパク質、GFP)と融合することによって作製した。これは、J.T.Rogersら,J.Mol.Neurosci.2002,19:77−82に記載される。
【0223】
トランスフェクション。ヒトSH−SY5Y神経芽腫細胞を、pGL−3、pGALおよびpGALA構築物由来の10μgのDNAを用いてトランスフェクトし、緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現する構築物に由来する5μgのDNAを用いて共トランスフェクトする。ルシフェラーゼおよびGFPレポーター遺伝子を、SV40プロモーターから発現する。製造者(Invitrogen)の指示に従って、LipofectAMINE−2000の存在下でトランスフェクションを行う。代表的には、各処理について、神経芽腫細胞をフラスコ(100mm2)中で増殖させる。各フラスコをトランスフェクトし(12時間)、続いて96ウェルプレートに等しく継代する。これは、各処理についてXH1(または別の試験する二機能性分子)およびデスフェリオキサミン(コントロールとして)へ48時間曝露するためである。
【0224】
48時間の処理の後、細胞生存度を各ウェルの顕微鏡検査によって確立する。自動化Wallac 1420マルチラベルカウンターを使用して、480/509nmの波長(GFP)を測定することによる各96ウェル中のGFPの相対発現によって、細胞生存度を確認する。GFPの読み出し情報を得た後、各96ウェルプレート中の細胞を、50μLのレポーター溶解緩衝液(Promega,Madison,WI)に溶解し、Wallac 1420カウンターを使用するルシフェラーゼアッセイを続ける。
【0225】
本発明の二機能性分子が、翻訳全体に対して非特異的な負の調節効果を示すという可能性を除外するために、レポーター(すなわち、APP、CAT、ルシフェラーゼ、およびGFP)の前のAPP 5’UTR配列のアンチセンス版を発現する構築物を使用することもまた、必要とされる。これらの構築物とのトランスフェクションは、スクリーニングする化合物が、APP−mRNAの正しい二次構築物に高い選択性を有して標的化されることを確実にする。特異性について最も基準になる検査は、APP遺伝子発現、合成、およびAβレベルが抑制される一方で、APLP1合成およびAPLP2合成ならびに5’−UTR駆動性遺伝子発現が、変化しないままかどうかを調べることである。
【0226】
(実施例6:本発明の二機能性分子によるAβアミロイドのエキソビボ溶解)
下に記載のアッセイを使用して、本発明の二機能性分子の、ヒト脳組織からAβ沈着物を抽出する能力を評価し得る。
【0227】
サンプルの調製。−80℃で保存した死後の組織を、組織病理学データおよび臨床的データを伴って得る。このサンプルの半分は、アルツハイマー病を有する患者由来であり、残りの半分は、年齢適合の健康な患者に由来する。アルツハイマー病を、Consortium to Establish a Register for Alzheimer’s Disease(CERAD)基準に従って神経炎性局面および神経細線維もつれの存在に特定の注意を払って、評価する(S.S.Mirraら,Neurology,1997,49:S14−16)。
【0228】
死後の脳組織からのAβアミロイドの抽出。前頭葉の同一の領域(0.5g)を、DIAX 900ホモジナイザー(Heidolph & Co,Kelheim,Germany)を使用してホモジナイズする。このホモジナイズは、EDTAを除いたプロテアーゼインヒビターの混合物(BioRad,Hercules,CA)を含む3mLの氷冷PBS(pH7.4)中か、または0.1〜2mMの本発明の二機能性分子もしくはClioquinol(コントロールとして使用)のどちらかの存在下において、十分な速度において、3回の30秒期間をストロークの間に30秒の休憩を伴って行う。PBS抽出可能画分を得るために、ホモジネートを、100,000×gにおいて30分間遠心分離し(Beckman J180,Beckman instruments,Fullerton,CA)、そして上清を収集し、1−mLのアリコートに分割し、氷上貯蔵するか、または即座に−70℃において凍結する。1−mLの上清サンプル中のタンパク質を、1:5の氷冷の10%トリクロロ酢酸を使用して沈殿させ、10,000×gにおいて20分間遠心分離することによってペレットとする。このペレットを、8%SDS、10%メルカプトエタノール、および8M尿素を含有するトリス−トリシンSDS−サンプル緩衝液中で10分間煮沸することによって、ポリアクリルアミドゲル電気泳動のために調製する。1mLのPBS中でホモジナイズし、上に記載のサンプル緩衝液中で煮沸することによって、皮質サンプル中の総Aβを得る。
【0229】
ポリアクリルアミドゲル電気泳動およびウエスタンブロッティング。トリス−トリシンポリアクリルアミドゲル電気泳動を、10ウェルの10〜20%勾配ゲルに(Novex,San Diego,CA)サンプルをロードすることによって行い、0.2mmニトロセルロース膜(BioRad,Hercules,CA)上へのウエスタントランスファーを続ける。モノクローナル抗体WO2(5と8との間のエピトープにおいてAβ1〜40およびAβ1〜42を検出する)、G210(カルボキシル残基40において終結するAβ種について特異的である)またはG211(残基42において終結するAβ種について特異的である)(N.Idaら,J.Biol.Chem.1996,271:22908−22914)を、ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ウサギ抗マウスIgG(Dako,Denmark)と一緒に使用してAβペプチドを検出し、化学発光(ECL,Amersham Biosciences Corp.,Piscataway,NJ)を使用して可視化する。各ゲルは、内部基準標準となる公知の量の合成Aβを含む2以上のレーンを含む。
【0230】
ブロットのスキャニングおよびAβについての透過濃度測定アッセイ。ブロットイメージを、透明性アダプターを有するRelisysスキャナー(Teco Information Systems,Taiwan)を使用してスキャンし、PCのために改変された(Scion Corporation,Frederick,MDによる)Image 1.6ソフトウェア(NIH,Bethesda,MD)を使用して、濃度測定を行い、段階拡散チャート(step diffusion chart)を使用して校正する。脳の抽出物中のAβの定量化のために、内部基準標準の合成Aβを利用して値が挿入される標準曲線を生成する。
【0231】
(実施例7:本発明のMRI造影画像化剤の特性)
(球状ファントム由来のMRIシグナル)
異なる溶液混合物(PBS(pH7.4)中で、Aβ1〜40、Aβ1〜42またはHSAの存在下もしくは非存在下において、造影画像化剤Gd−XH1またはGd−DTPAを含む)を、4.5−mLの中空の球(ポリプロピレン製)に注入し、3−T磁気スキャナー(Simens)に供した。Spin−Echoスキャニング様式を使用し、12TR値(TE=5ms)をR1=1/T1、およびR1(obs)=R1(0)+R1(Gd−XH1−Aβ1〜40またはGd−XH−Aβ1〜42)と一緒に使用して、各溶液についてT1シグナルを測定した。
【0232】
この実験の結果を、図11に報告する。この結果は、縦軸(T1)の磁気緩和(magnetic relaxation)速度に対するGd−XH1の効果を示す。Gd−XH1の濃度が増加するにつれて、T1は減少し、シグナルはより鮮やかになる。Gd−DTPA(コントロールとして使用した小さな親水性分子)とHSAまたはAβとの組み合わせについての効果は、観察されなかった。
【0233】
これらの実験の結果をまた、図12および図13に報告する。これらの図は、Gd−XH1は、特異的にAβ1〜40ペプチドと相互作用をする一方、HSAとはわずかにしか相互作用しないことを示す(図12)。さらに、図13で示すように、β−シートが豊富なAβ1〜42と結合する場合、低いβ−シート含有量を示す天然のAβ1〜40との結合と比較して、Gd−XH1の緩和速度が増加する。
【0234】
(ADマウスおよびヒトの脳組織抽出物由来のMRIシグナル)
ADマウス(PS1(M146V)xAPPTg2576)脳組織抽出物とヒト脳組織抽出物を、プロテアーゼインヒビターカクテル(Roche)と混合したT−PERTM組織タンパク質抽出試薬(Pierce)を用いて組織を溶解することによって、調製した。次いで、0.25mM Gd−XH1および10μg/mL(総タンパク質)抽出物を含む異なる溶液混合物を、4.5−mLの中空の球に注入し、そして上に記載の同じ実験プロトコルに供した。
【0235】
これらの実験の結果を、図14に報告する。これらの結果は、Gd−XH1と混合する場合、MRIシグナルが、ADマウスおよびヒトの脳組織抽出物中で増強されることを示す。
【0236】
(実施例8:ADの動物モデル中のAβアミロイド沈着物のMRI検出)
アルツハイマー病の動物モデルにおけるアミロイド沈着物の存在を検出するための方法を、本明細書中に記載する。この方法は、Gd−XH1の使用に基づいた。上に示すように、Gd−XH1は、特異的にAβ1〜40およびAβ1〜42と相互作用する。さらに、ADマウスおよびヒトの脳組織抽出物由来のMRIシグナルは、これらの抽出物をGd−XH1と混合した場合に増強することを見出した。
【0237】
この一連の実験において使用した動物モデルは、トランスジェニックTg2576マウス系統であり、Tg2576マウス系統は、家族性AD遺伝子変異を有するヒトアミロイド前駆体タンパク質(APP)を過剰発現し、ADの神経病理学的特性(例えば、記憶の欠損(memory deficit)および脳の特定の領域におけるアミロイド沈着物の加齢性形成)を示す。MGH/MIT/HMS Athinoula A.Martinos Center for Functional and Structural Biomedical Imaging(Department of Radiology,Massachusetts General Hospital,Boston,MA)において、小さな9.4 T MRIシステム(400MHz;Magnex Scientific,Kidlington,UK)を使用して、イメージングを実施した。
【0238】
インビボでのGd−XH1の毒性をまず評価するために、PS1(M146V)xAPPTg2576マウス(約6ヶ月齢;1群あたり5匹)に、体重1kgあたり30mgの用量のGd−XH1を、4週間毎日腹腔内に注射した。コントロールは、同じ用量のGd−DTPAの注射、および未処置を含む。Gd−XH1の急性毒性は、観察されなかった。
【0239】
第1の一連の試験実験を実施し、Gd−XH1のMRIイメージング造影能力を評価した。Gd−XH1をメチルセルロースと混合し、懸濁剤として調製した。1匹の雄Sprague−Dawleyラット(8ヶ月齢)に、体重1kgあたり10mgの一回用量のこの懸濁剤を、腹腔内に注射した。注射の1時間後、連続スキャニング様式を使用して、4.7 T MRI機器(GE)でその動物をイメージングした。形態MRI像とS/NレシオメトリックMRI像との両方を、記録した。得たイメージの一部を、図15に示す。i.p.注射の1時間後、シグナル対ノイズ比の8%増加を観察した。T1加重したシグナル強度における増加は、広範囲に及ぶように見え、これは、Gd−XH1が、BBB透過性でもあり骨格筋透過性でもあることを示す。
【0240】
ラットの代わりにAPPトランスジェニックマウスを使用して、さらなる実験を実施する。より詳細には、5〜10匹のAPPトランスジェニックTg2576マウスの一群に、体重1kgあたり0.1mmolの一回用量の発明のMRI造影画像化剤(例えば、DMSOおよびPBSの混合物(60:40;v:v)中のGd−XH1)を腹腔内に注射した。比較のために、5〜10匹のPS1(M146V)xAPPTg2576マウスの別の群に、体重1kgあたり0.1mmolの一回用量のコントロールの造影剤(PBS中)を腹腔内に注射する。このコントロールのイメージング薬剤は、本発明の造影画像化剤よりも同じ常磁性金属に錯化する同じ金属キレート部分を含むが、本発明の造影画像化剤と逆に、いずれのアミロイド結合部分も含まない。例えば、造影画像化剤Gd−XH1の場合において、Gd−DTPAをコントロールとして使用する。注射の後、両方の群の動物をMRIによって画像化する。トランスジェニックマウスにおける脳のAβアミロイド像の増強に対する本発明のMRI造影画像化剤の効果を、動物の屠殺後のAβ免疫染色によって評価し、確認する。
【0241】
(実施例9:α−リポ酸部分を含有する二機能性分子のファミリーの合成)
新規な二機能性分子の第2のファミリーを設計し、発展させる。新しい二機能性分子は、直接的に1つのアミロイド結合部分と共有結合する1つの金属キレート部分を含む。この金属キレート部分は、このファミリーのすべての二機能性分子に共通であり、α−リポ酸である。α−リポ酸は、強力な抗酸化特性を有することがまた公知である。図6Aに示されるように、このファミリーの親の分子のアミロイド結合部分は、第1のファミリーの二機能性分子において使用されるものよりも、同じベンゾチオフラビン誘導体である(実施例1)。
【0242】
このファミリーの他のメンバーは、親の二機能性分子のアナログであり、ここでベンゾチアゾール部分の芳香環は、1以上の1つの官能基(例えば、4−ジメチルアミノ;4−アミノ;4−クロロ;4−クロロ−5−エチル;4−アセチル;5−カルボキシル;5−スルホノキシル;5−ブロモ;4−メチル、5−メチルまたは6−メチル;5−トリフルオロメチル;4−エトキシル;4−メチルスルホニル、5−メチルスルホニルまたは6−メチルスルホニル;および4−ヒドロキシ、5−ヒドロキシまたは6−ヒドロキシルを含む)で置換される(図6Bを参照のこと)。
【0243】
このファミリーの親の二機能性分子(化合物XH2)の合成を、本明細書中に記載する。XH2の調製は、金属キレート部分とアミロイド結合部分との間のアミド結合の形成を包含する。以前に刊行された合成方法(W.E.Klunkら,Life Sci.2001,69:1471−1484;D.Shiら,J.Med.Chem.1996,39:3375−3384;およびM.S.Koningsら,Inorg.Chem.1990,29:1488−1491)から適合する手順に従って、この反応を実施する。
【0244】
室温の塩化メチレン中の1mgリポ酸(Aldrich Chemical)の攪拌溶液に対して、2滴のDMFを添加した。この溶液に、0.5mLの塩化オキサリルを滴下した。反応の表面は、少量のガスの発生を示した。発泡が止んだ場合、この混合物を、15mLの塩化メチレン中の1.2mgの4−ベンゾチアゾール−2−イル−フェニルアミンおよび1mLのN,N−ジイソプロピルエチルアミンの溶液で処理した。濃い緑色の混合物を、室温で1時間攪拌した。この混合物を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過してエバポレートし、固体を生じた。これを酢酸エチルで砕き
、真空下で乾燥させXH2を得た(90%)。この構造を、1H−NMRによって確認した(図7を参照のこと)。
【図面の簡単な説明】
【0245】
【図1】図1は、コンゴレッド(図1A);クリサミン−G(図1B);(トランス,トランス)−1−ブロモ−2,5−bis−(3−ヒドロキシカルボニル−4−ヒドロキシ)−スチリルベンゼン(Fig.1C);4’−ヨード−4’−デオキシドキソルビシン(Fig.1D);およびチオフラビンT(図1E)の化学構造を示す。これらがアミロイドに対して高い親和性を示すことが、当該分野において公知である。
【図2】図2は、バソフェナントロリン(bathophenanthroline)(図2A)、バソクプロイン(bathocuproine)(図2B)、デスフェリオキサミン(図2C)、ペニシラミン(図2D)、EDTA(図2E)、EGTA(図2F)、DTPA(図2G)、TETA(図2H)、TPEN(図2I)、およびα−リポ酸(図2J)の化学構造を示す。これらは、周知の金属キレーターである。
【図3】図3は、DOTA(図3A)、TTHA(図3B)、ECD(図3C)、EDTMP(図3D)、およびHMPAO(図3E)の化学構造を示す。これらが画像化技術によって検出可能な金属実体を錯化することが、当該分野で公知である。
【図4】図4は、DTPAを含み、金属キレート部分として作用し、2つの同一のアミロイド結合部分に共有結合する新しい二機能性分子のファミリーの化学構造を示す。これらは、チオフラビン誘導体である。このファミリーの親分子(化合物XH1)および種々のアナログは、図4Aおよび図4Bにそれぞれ提示される。
【図5】図5は、化合物XH1の化学的特徴付けの結果を示す。XH1の質量スペクトルおよび1H−NMRスペクトルは、図5Aおよび図5Bにそれぞれ提示される。
【図6】図6は、α−リポ酸を含み、金属キレート部分として作用し、1つのアミロイド結合部分に共有結合する新しい二機能性分子のファミリー、チオフラビン誘導体の化学構造を示す。このファミリーの親分子(化合物XH2)および種々のアナログは、図6Aおよび図6Bにそれぞれ提示される。
【図7】図7は、化合物XH2の化学的特徴付けの結果を示す。XH2の質量スペクトルおよび1H−NMRスペクトルは、図7Aおよび図7Bにそれぞれ提示される。
【図8】図8は、二機能性分子XH1および金属キレート化合物DTPAの存在の、Aβ1〜40の凝集に対する効果を示すグラフである。凝集は、400nmにおける濁度の測定によって評価される。
【図9】図9は、E17ラット皮質一次ニューロンの生存度(図9A)、およびヒトSH−SY5Y神経芽細胞腫細胞(図9B)に対するXH1の効果を示す。細胞の生存度を、XH1による処置の48時間後、MTTアッセイおよび/またはLDH放出アッセイを用いて評価した。データは、平均細胞生存(未処理培養物の%)±標準偏差として報告される。少なくとも3回の実験がXH1の各濃度について行われた。
【図10】図10は、APP発現に対するXH1濃度の上昇の効果(図10A)およびコントロールとして使用された種々のタンパク質:β−チューブリン(図10A)、APLP1およびAPLP2(図10B)の効果を示すSDS−PAGEゲルを提示する。タンパク質合成を、SH−SY5Yヒト神経細胞芽種細胞をXH1で処理した48時間後に測定した。A8717を、APPのための検出抗体として使用した。
【図11】図11は、Aβ1〜40またはHSAの存在下または非存在下で造影画像化剤(Gd−XH1またはGd−DTPA)とともにインキュベートされた球状ファントムから測定されたT1−加重MRIシグナルを示す。A1−5において、Gd−XH1は、0mM(A1)と0.5mM(A5)との間の濃度で存在する。B1−5において、Gd−DTPAは、0mM(B1)と1mM(B5)との間の濃度で存在する。レーンCの球状ファントムの全ては、0.025mMのHSAおよび0mM(C1)と0.25mM(C5)との間の濃度で存在するGd−XH1を含む。レーンDの球状ファントムは、0.5mMのGd−XH1および0mM(D1)と0.025mM(D5)との間のAβ1〜40を含み、一方レーンEの球状ファントムの全ては、1mMのGd−XH1および0mM(E1)と0.025mM(E5)との間のAβ1〜40を含む。造影画像化剤濃度の上昇は、より短いT1、したがってより明るいシグナルを生じる。これらの実験において、シグナルの飽和は観察されなかった。
【図12】図12は、球状ファントムからのMRIシグナルの変動を、ファントム中に存在する造影画像化剤(Gd−XH1またはGd−DTPA)およびタンパク質(HSAまたはAβ1〜40)の関数として示す2つのグラフを提示する。図12Aにおいて、R1(すなわち、1/T1)のパーセント上昇が、Aβ1〜40の濃度の関数として、造影画像化剤、Gd−XH1およびGd−DTPAの両方に関して報告される。図12Bにおいて、R1は、HSA(0.025mM)の存在下または非存在下で、種々の濃度のGd−XH1に関して報告される。
【図13】図13は、Gd−DTPA(0.25mM)またはGd−XH1(0.25mM)、および種々の濃度のAβ1〜42を含む球状ファントムから測定された、R1(すなわち、1/T1)として報告されるMRIシグナルの変動を示すグラフである。
【図14】図14は、MRIシグナルを示す。このシグナルは、Gd−XH1(0.025mM)と混合される場合、ADマウスおよびADのヒトの脳組織抽出物において増強される。
【図15】図15は、MRI画像を示す。第一の画像のシリーズ(図15Aに示される)は、ラット脳の基線画像であり、解剖学的特徴を示す。第二の画像のシリーズ(図15Bに示される)は、Gd−XH1のi.p.注入の約1時間後に測定された、MRIシグナルの上昇のパーセントをマッピングする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのアミロイド結合部分に結合した少なくとも一つの金属キレート部分を含む、二機能性分子。
【請求項2】
請求項1に記載の二機能性分子であって、前記金属キレート部分が、亜鉛(II)(Zn2+)、銅(II)(Cu2+)および鉄(III)(Fe3+)からなる群より選択される少なくとも一つの遷移金属イオンに高親和性で結合する、二機能性分子。
【請求項3】
請求項1に記載の二機能性分子であって、前記金属キレート部分が、DTPAを含む、二機能性分子。
【請求項4】
請求項1に記載の二機能性分子であって、前記金属キレート部分が、α−リポ酸誘導体を含む、二機能性分子。
【請求項5】
請求項1に記載の二機能性分子であって、前記アミロイド結合部分が、血液脳関門透過性である、二機能性分子。
【請求項6】
請求項1に記載の二機能性分子であって、前記アミロイド結合部分が、Aβアミロイド沈着物に対して高い親和性および特異性を有する、二機能性分子。
【請求項7】
請求項1に記載の二機能性分子であって、前記アミロイド結合部分が、ベンゾチアゾール誘導体を含む、二機能性分子。
【請求項8】
請求項1に記載の二機能性分子であって、前記金属キレート部分が、亜鉛(II)(Zn2+)、銅(II)(Cu2+)および鉄(III)(Fe3+)からなる群より選択される少なくとも一つの遷移金属イオンに高親和性で結合し、かつ前記アミロイド結合部分が、Aβアミロイド沈着物に対して高い親和性および特異性を有する、二機能性分子。
【請求項9】
請求項8に記載の二機能性分子であって、前記金属キレート部分が、DTPAを含む、二機能性分子。
【請求項10】
請求項8に記載の二機能性分子であって、前記アミロイド結合部分が、ベンゾチアゾール誘導体を含む、二機能性分子。
【請求項11】
請求項8に記載の二機能性分子であって、前記金属キレート部分が、DTPAを含み、かつ前記アミロイド結合部分が、ベンゾチアゾール誘導体を含む、二機能性分子。
【請求項12】
以下の化学構造:
【化1】
を有する、二機能性分子。
【請求項13】
以下の化学構造:
【化2】
を有する二機能性分子であって、ここで、Rは、4−ジメチルアミノ、4−アミノ、4−クロロ、4−クロロ−5−エチル、4−アセチル、5−カルボキシル、5−スルホニル、5−ブロモ、4−メチル、5−メチル、6−メチル、5−トリフルオロメチル、4−エトキシル、4−メチルスルホニル、5−メチルスルホニル、6−メチルスルホニル、4−ヒドロキシル、5−ヒドロキシル、および6−ヒドロキシルからなる群より選択される、二機能性分子。
【請求項14】
以下の化学構造:
【化3】
を有する、二機能性分子。
【請求項15】
以下の化学構造:
【化4】
を有する二機能性分子であって、ここで、Rは、4−ジメチルアミノ、4−アミノ、4−クロロ、4−クロロ−5−エチル、4−アセチル、5−カルボキシル、5−スルホニル、5−ブロモ、4−メチル、5−メチル、6−メチル、5−トリフルオロメチル、4−エトキシル、4−メチルスルホニル、5−メチルスルホニル、6−メチルスルホニル、4−ヒドロキシル、5−ヒドロキシル、および6−ヒドロキシルからなる群より選択される、二機能性分子。
【請求項16】
少なくとも一つのアミロイド結合部分に結合した少なくとも一つの画像化部分を含む、造影画像化剤。
【請求項17】
請求項16に記載の造影画像化剤であって、前記アミロイド結合部分が、血液脳関門透過性である、造影画像化剤。
【請求項18】
請求項16に記載の造影画像化剤であって、前記アミロイド結合部分が、Aβアミロイド沈着物に対して高い親和性および特異性を有する、造影画像化剤。
【請求項19】
請求項16に記載の造影画像化剤であって、前記アミロイド結合部分が、ベンゾチアゾール誘導体を含む、造影画像化剤。
【請求項20】
請求項16に記載の造影画像化剤であって、前記画像化部分が、金属実体に対して錯化された少なくとも一つの金属キレート部分を含む、造影画像化剤。
【請求項21】
請求項20に記載の造影画像化剤であって、前記金属キレート部分が、DTPAを含む、造影画像化剤。
【請求項22】
請求項16に記載の造影画像化剤であって、前記画像化部分が、金属実体に対して錯化された少なくとも一つの金属キレート部分を含み、かつ前記アミロイド結合部分が、Aβアミロイド沈着物に対して高い親和性および特異性を有する、造影画像化剤。
【請求項23】
請求項22に記載の造影画像化剤であって、前記金属キレート部分が、DTPAを含み、かつ前記アミロイド結合部分が、ベンゾチアゾール誘導体を含む、造影画像化剤。
【請求項24】
請求項20または22に記載の造影画像化剤であって、前記金属実体が、常磁性金属イオンである、造影画像化剤。
【請求項25】
請求項20または22に記載の造影画像化剤であって、前記金属実体が、ガドリニウム(III)(Gd3+)、クロム(III)(Cr3+)、ジスプロシウム(III)(Dy3+)、鉄(III)(Fe3+)、マンガン(II)(Mn2+)、およびイッテルビウム(III)(Yb3+)からなる群より選択される常磁性金属イオンである、造影画像化剤。
【請求項26】
請求項20または22に記載の造影画像化剤であって、前記金属実体が、ガドリニウム(III)(Gd3+)である、造影画像化剤。
【請求項27】
請求項20または22に記載の造影画像化剤であって、前記金属実体が、放射性核種である、造影画像化剤。
【請求項28】
請求項20または22に記載の造影画像化剤であって、前記金属実体が、テクネチウム−99m(99mTc)、ガリウム−67(67Ga)、イットリウム−91(90Y)、インジウム−111(111In)、レニウム−186(186Re)、およびタリウム−201(201Tl)からなる群より選択される放射性核種である、造影画像化剤。
【請求項29】
請求項20または22に記載の造影画像化剤であって、前記金属実体が、テクネチウム−99m(99mTc)である、造影画像化剤。
【請求項30】
造影画像化剤であって、ガドリニウム(III)(Gd3+)が、以下の化学構造:
【化5】
を有する二機能性分子に対して錯化されている、造影画像化剤。
【請求項31】
造影画像化剤であって、ガドリニウム(III)(Gd3+)が、以下の化学構造:
【化6】
を有する二機能性分子に対して錯化されており、ここで、Rが、4−ジメチルアミノ、4−アミノ、4−クロロ、4−クロロ−5−エチル、4−アセチル、5−カルボキシル、5−スルホニル、5−ブロモ、4−メチル、5−メチル、6−メチル、5−トリフルオロメチル、4−エトキシル、4−メチルスルホニル、5−メチルスルホニル、6−メチルスルホニル、4−ヒドロキシル、5−ヒドロキシル、および6−ヒドロキシルからなる群より選択される、造影画像化剤。
【請求項32】
安定常磁性同位体で標識された少なくとも一つのアミロイド結合部分に結合した少なくとも一つの金属キレート部分を含む、造影画像化剤。
【請求項33】
請求項32に記載の造影画像化剤であって、前記安定常磁性同位体が、炭素−13(13C)またはフッ素−19(19F)である、造影画像化剤。
【請求項34】
薬学的組成物であって、有効量の、請求項1に記載の二機能性分子の少なくとも一種、またはその生理学的に耐容性の塩、および少なくとも一種の薬学的に受容可能なキャリアを含有する、薬学的組成物。
【請求項35】
薬学的組成物であって、有効量の、請求項8に記載の二機能性分子の少なくとも一種、またはその生理学的に耐容性の塩、および少なくとも一種の薬学的に受容可能なキャリアを含有する、薬学的組成物。
【請求項36】
薬学的組成物であって、有効量の、請求項12に記載の二機能性分子の少なくとも一種、またはその生理学的に耐容性の塩、および少なくとも一種の薬学的に受容可能なキャリアを含有する、薬学的組成物。
【請求項37】
薬学的組成物であって、有効量の、請求項13に記載の二機能性分子の少なくとも一種、またはその生理学的に耐容性の塩、および少なくとも一種の薬学的に受容可能なキャリアを含有する、薬学的組成物。
【請求項38】
薬学的組成物であって、有効量の、請求項14に記載の二機能性分子の少なくとも一種、またはその生理学的に耐容性の塩、および少なくとも一種の薬学的に受容可能なキャリアを含有する、薬学的組成物。
【請求項39】
薬学的組成物であって、有効量の、請求項15に記載の二機能性分子の少なくとも一種、またはその生理学的に耐容性の塩、および少なくとも一種の薬学的に受容可能なキャリアを含有する、薬学的組成物。
【請求項40】
薬学的組成物であって、画像化有効量の、請求項16に記載の造影画像化剤の少なくとも一種、またはその生理学的に耐容性の塩、および少なくとも一種の薬学的に受容可能なキャリアを含有する、薬学的組成物。
【請求項41】
薬学的組成物であって、画像化有効量の、請求項20に記載の造影画像化剤の少なくとも一種、またはその生理学的に耐容性の塩、および少なくとも一種の薬学的に受容可能なキャリアを含有する、薬学的組成物。
【請求項42】
薬学的組成物であって、画像化有効量の、請求項25に記載の造影画像化剤の少なくとも一種、またはその生理学的に耐容性の塩、および少なくとも一種の薬学的に受容可能なキャリアを含有する、薬学的組成物。
【請求項43】
薬学的組成物であって、画像化有効量の、請求項28に記載の造影画像化剤、またはその生理学的に耐容性の塩、および少なくとも一種の薬学的に受容可能なキャリアを含有する、薬学的組成物。
【請求項44】
薬学的組成物であって、画像化有効量の、請求項30に記載の造影画像化剤、またはその生理学的に耐容性の塩、および少なくとも一種の薬学的に受容可能なキャリアを含有する、薬学的組成物。
【請求項45】
薬学的組成物であって、画像化有効量の、請求項31に記載の造影画像化剤の少なくとも一種、またはその生理学的に耐容性の塩、および少なくとも一種の薬学的に受容可能なキャリアを含有する、薬学的組成物。
【請求項46】
系においてアミロイド毒性を減少または阻害するための方法であって、該系と請求項1に記載の二機能性分子もしくはその薬学的組成物とを接触させる工程を包含する、方法。
【請求項47】
請求項46に記載の方法であって、該方法が、前記系におけるアミロイド蓄積を予防、減速もしくは停止するか;または該系に存在するアミロイド沈着物の溶解を促進、誘導もしくは容易にするか;あるいはその両方である、方法。
【請求項48】
請求項46に記載の方法であって、該方法が、アミロイド媒介性の活性酸素種産生を、減少、阻害もしくは妨害する、方法。
【請求項49】
請求項46に記載の方法であって、前記接触させる工程が、インビトロインキュベーションもしくはエキソビボインキュベーションによって行われ、そして前記系が、細胞、生物学的流体および生物組織からなる群より選択される、方法。
【請求項50】
請求項49に記載の方法であって、前記細胞、前記生物学的流体もしくは前記生物組織が、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態を有すると疑われる患者に由来する、方法。
【請求項51】
請求項50に記載の方法であって、前記病態生理学的状態が、アミロイド−βペプチドの蓄積に関連し、そして前記二機能性分子中のアミロイド結合部分が、Aβアミロイド沈着物に対して高い親和性および特異性を有する、方法。
【請求項52】
請求項46に記載の方法であって、前記二機能性分子が、以下の化学構造:
【化7】
を有する、方法。
【請求項53】
請求項46に記載の方法であって、前記二機能性分子が、以下の化学構造:
【化8】
を有し、ここで、Rが、4−ジメチルアミノ、4−アミノ、4−クロロ、4−クロロ−5−エチル、4−アセチル、5−カルボキシル、5−スルホニル、5−ブロモ、4−メチル、5−メチル、6−メチル、5−トリフルオロメチル、4−エトキシル、4−メチルスルホニル、5−メチルスルホニル、6−メチルスルホニル、4−ヒドロキシル、5−ヒドロキシル、および6−ヒドロキシルからなる群より選択される、方法。
【請求項54】
請求項46に記載の方法であって、前記二機能性分子が、以下の化学構造:
【化9】
を有する、方法。
【請求項55】
請求項46に記載の方法であって、前記二機能性分子が、以下の化学構造:
【化10】
を有し、ここで、Rが、4−ジメチルアミノ、4−アミノ、4−クロロ、4−クロロ−5−エチル、4−アセチル、5−カルボキシル、5−スルホニル、5−ブロモ、4−メチル、5−メチル、6−メチル、5−トリフルオロメチル、4−エトキシル、4−メチルスルホニル、5−メチルスルホニル、6−メチルスルホニル、4−ヒドロキシル、5−ヒドロキシル、および6−ヒドロキシルからなる群より選択される、方法。
【請求項56】
アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態を有する患者を処置するための方法であって、該患者に、有効量の、請求項1に記載の二機能性分子またはその薬学的組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項57】
請求項56に記載の方法であって、該方法が、前記患者におけるアミロイド蓄積を予防、減速もしくは停止するか;または該患者に存在するアミロイド沈着物の溶解を促進、誘導もしくは容易にするか;あるいはその両方である、方法。
【請求項58】
請求項56に記載の方法であって、該方法が、アミロイド媒介性の活性酸素種産生を、減少、阻害もしくは妨害する、方法。
【請求項59】
請求項56に記載の方法であって、前記投与が、経口投与および非経口投与からなる群より選択される方法によって実行され、該非経口投与が、静脈内注入、筋肉内注入、皮下注入、ならびに経皮投与および経腸投与を包含する、方法。
【請求項60】
請求項56に記載の方法であって、前記病態生理学的状態が、アミロイド−βペプチドの蓄積に関連し、かつ前記二機能性分子における前記アミロイド結合部分が、Aβアミロイド沈着物に対して高い親和性および特異性を有する、方法。
【請求項61】
請求項56に記載の方法であって、前記二機能性分子が、以下の化学構造:
【化11】
を有する、方法。
【請求項62】
請求項56に記載の方法であって、前記二機能性分子が、以下の化学構造:
【化12】
を有し、ここで、Rが、4−ジメチルアミノ、4−アミノ、4−クロロ、4−クロロ−5−エチル、4−アセチル、5−カルボキシル、5−スルホニル、5−ブロモ、4−メチル、5−メチル、6−メチル、5−トリフルオロメチル、4−エトキシル、4−メチルスルホニル、5−メチルスルホニル、6−メチルスルホニル、4−ヒドロキシル、5−ヒドロキシル、および6−ヒドロキシルからなる群より選択される、方法。
【請求項63】
請求項56に記載の方法であって、前記二機能性分子が、以下の化学構造:
【化13】
を有する、方法。
【請求項64】
請求項56に記載の方法であって、前記二機能性分子が、以下の化学構造:
【化14】
を有し、ここで、Rが、4−ジメチルアミノ、4−アミノ、4−クロロ、4−クロロ−5−エチル、4−アセチル、5−カルボキシル、5−スルホニル、5−ブロモ、4−メチル、5−メチル、6−メチル、5−トリフルオロメチル、4−エトキシル、4−メチルスルホニル、5−メチルスルホニル、6−メチルスルホニル、4−ヒドロキシル、5−ヒドロキシル、および6−ヒドロキシルからなる群より選択される、方法。
【請求項65】
請求項56に記載の方法であって、前記病態生理学的状態が、アルツハイマー病、ダウン症候群、レヴィー小体痴呆、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型)、グアム・パーキンソン痴呆、および頭部外傷からなる群より選択される、方法。
【請求項66】
請求項56に記載の方法であって、前記病態生理学的状態が、アルツハイマー病である、方法。
【請求項67】
系におけるアミロイド沈着物の存在を検出するための方法であって、以下の工程:
該系と、画像化有効量の、請求項20に記載の造影画像化剤またはその薬学的組成物とを、該造影画像化剤と、存在するいずれかのアミロイド沈着物とを相互作用させる条件下で接触させる工程であって、該工程によって、該相互作用が、該アミロイド沈着物への該造影画像化剤の結合を生じさせる、工程;
画像化技術を使用して、該系に存在し、該造影画像化剤に結合しているいずれかのアミロイド沈着物を検出する工程;ならびに、
該系の少なくとも一部の、一以上の画像を作製する工程、
を包含する、方法。
【請求項68】
請求項67に記載の方法であって、前記系に存在する前記アミロイド沈着物が、アミロイド−βペプチドの蓄積によって形成され、そして前記造影画像化剤中のアミロイド結合部分が、Aβアミロイド沈着物に対して高い親和性を有する、方法。
【請求項69】
請求項67に記載の方法であって、前記接触させる工程が、インビトロインキュベーションまたはエキソビボインキュベーションによって行われ、そして前記系が、細胞、生物学的流体、および生物組織からなる群より選択される、方法。
【請求項70】
請求項69に記載の方法であって、前記細胞、前記生物学的流体、または前記生物組織が、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態を有すると疑われる患者に由来する、方法。
【請求項71】
請求項69に記載の方法であって、前記細胞、前記生物学的流体、または前記生物組織が、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態のための処置を受けている患者に由来する、方法。
【請求項72】
請求項69に記載の方法であって、前記細胞、前記生物学的流体、または前記生物組織が、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態の処置のための潜在的な治療剤と接触させられている、方法。
【請求項73】
請求項67に記載の方法であって、該方法が、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態の処置のための潜在的な治療剤を同定するために使用される、方法。
【請求項74】
請求項67に記載の方法であって、該方法が、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態を診断するために使用される、方法。
【請求項75】
請求項67に記載の方法であって、該方法が、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態の進行を追跡するために使用される、方法。
【請求項76】
請求項67に記載の方法であって、該方法が、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態のための処置に対する患者の応答をモニタリングするために使用される、方法。
【請求項77】
患者におけるアミロイド沈着物の存在を検出するための方法であって、以下の工程:
該患者に、画像化有効量の、請求項20に記載の造影画像化剤またはその薬学的組成物を、該造影画像化剤と、存在するいずれかのアミロイド沈着物とを相互作用させる条件下で、投与する工程であって、該工程によって、該相互作用が、該アミロイド沈着物への該造影画像化剤の結合を生じさせる、工程;
画像化技術を使用して、該患者中に存在し、該造影画像化剤に結合しているいずれかのアミロイド沈着物を検出する工程;ならびに、
該患者の身体の少なくとも一部の、一以上の画像を作製する工程、
を包含する、方法。
【請求項78】
請求項77に記載の方法であって、前記投与が、経口投与および非経口投与からなる群より選択される方法によって実行され、該投与が、静脈内投与、動脈内投与、くも膜下腔内投与、皮内投与、および腔内投与、ならびに経腸投与を包含する、方法。
【請求項79】
請求項77に記載の方法であって、前記アミロイド沈着物が、アミロイド−βペプチドの凝集および蓄積によって形成され、そして前記造影画像化剤中のアミロイド結合部分が、Aβアミロイド沈着物に対して高い親和性または特異性を有する、方法。
【請求項80】
請求項77に記載の方法であって、該方法が、患者中のアミロイド沈着物を位置決めするために使用される、方法。
【請求項81】
請求項77に記載の方法であって、該方法が、患者の脳内のアミロイド沈着物を位置決めするために使用され;そしてここで、前記造影画像化剤中のアミロイド結合部分が、血液脳関門透過性である、方法。
【請求項82】
請求項77に記載の方法であって、該方法が、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態を診断するために使用される、方法。
【請求項83】
請求項77に記載の方法であって、該方法が、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態の進行を追跡するために使用される、方法。
【請求項84】
請求項77に記載の方法であって、該方法が、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態のための処置に対する患者の応答をモニタリングするために使用される、方法。
【請求項85】
請求項67または77に記載の方法であって、前記造影画像化剤中の画像化部分が、常磁性金属イオンに対して錯化された、少なくとも一つの金属キレート部分を含み;前記検出が、磁気共鳴画像法(MRI)によって実行され;そしてMR画像が作製される、方法。
【請求項86】
請求項85に記載の方法であって、前記常磁性金属イオンが、ガドリニウム(III)(Gd3+)、クロム(III)(Cr3+)、ジスプロシウム(III)(Dy3+)、鉄(III)(Fe3+)、マンガン(II)(Mn2+)、およびイッテルビウム(III)(Yb3+)からなる群より選択される、方法。
【請求項87】
請求項85に記載の方法であって、前記常磁性金属イオンが、ガドリニウム(III)(Gd3+)である、方法。
【請求項88】
請求項87に記載の方法であって、ガドリニウム(III)(Gd3+)が、以下の化学構造:
【化15】
を有する二機能性分子に対して錯化されている、方法。
【請求項89】
請求項87に記載の方法であって、ガドリニウム(III)(Gd3+)が、以下の化学構造:
【化16】
を有する二機能性分子に対して錯化されており、ここで、Rが、4−ジメチルアミノ、4−アミノ、4−クロロ、4−クロロ−5−エチル、4−アセチル、5−カルボキシル、5−スルホニル、5−ブロモ、4−メチル、5−メチル、6−メチル、5−トリフルオロメチル、4−エトキシル、4−メチルスルホニル、5−メチルスルホニル、6−メチルスルホニル、4−ヒドロキシル、5−ヒドロキシル、および6−ヒドロキシルからなる群より選択される、方法。
【請求項90】
請求項67または77に記載の方法であって、前記造影画像化剤の画像化部分が、放射性核種に対して錯化された少なくとも一つの金属キレート部分を含み;前記検出が、単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)によって実行され;そしてSPECT画像が作製される、方法。
【請求項91】
請求項90に記載の方法であって、前記放射性核種が、テクネチウム−99m(99mTc)、ガリウム−67(67Ga)、イットリウム−91(90Y)、インジウム−111(111In)、レニウム−186(186Re)、およびタリウム−201(201Tl)からなる群より選択される、方法。
【請求項92】
請求項90に記載の方法であって、前記放射性核種が、テクネチウム−99m(99mTc)である、方法。
【請求項93】
請求項73、74、75、76、82、83または84に記載の方法であって、前記病態生理学的状態が、アミロイド−βペプチドの蓄積に関連し、そして前記造影画像化剤中のアミロイド結合部分が、Aβアミロイド沈着物に対して高い親和性を有する、方法。
【請求項94】
請求項73、74、75、76、82、83または84に記載の方法であって、前記病態生理学的状態が、アルツハイマー病、ダウン症候群、レヴィー小体痴呆、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型)、グアム・パーキンソン痴呆、および頭部外傷からなる群より選択される、方法。
【請求項95】
請求項73、74、75、76、82、83または84に記載の方法であって、前記病態生理学的状態が、アルツハイマー病である、方法。
【請求項1】
少なくとも一つのアミロイド結合部分に結合した少なくとも一つの金属キレート部分を含む、二機能性分子。
【請求項2】
請求項1に記載の二機能性分子であって、前記金属キレート部分が、亜鉛(II)(Zn2+)、銅(II)(Cu2+)および鉄(III)(Fe3+)からなる群より選択される少なくとも一つの遷移金属イオンに高親和性で結合する、二機能性分子。
【請求項3】
請求項1に記載の二機能性分子であって、前記金属キレート部分が、DTPAを含む、二機能性分子。
【請求項4】
請求項1に記載の二機能性分子であって、前記金属キレート部分が、α−リポ酸誘導体を含む、二機能性分子。
【請求項5】
請求項1に記載の二機能性分子であって、前記アミロイド結合部分が、血液脳関門透過性である、二機能性分子。
【請求項6】
請求項1に記載の二機能性分子であって、前記アミロイド結合部分が、Aβアミロイド沈着物に対して高い親和性および特異性を有する、二機能性分子。
【請求項7】
請求項1に記載の二機能性分子であって、前記アミロイド結合部分が、ベンゾチアゾール誘導体を含む、二機能性分子。
【請求項8】
請求項1に記載の二機能性分子であって、前記金属キレート部分が、亜鉛(II)(Zn2+)、銅(II)(Cu2+)および鉄(III)(Fe3+)からなる群より選択される少なくとも一つの遷移金属イオンに高親和性で結合し、かつ前記アミロイド結合部分が、Aβアミロイド沈着物に対して高い親和性および特異性を有する、二機能性分子。
【請求項9】
請求項8に記載の二機能性分子であって、前記金属キレート部分が、DTPAを含む、二機能性分子。
【請求項10】
請求項8に記載の二機能性分子であって、前記アミロイド結合部分が、ベンゾチアゾール誘導体を含む、二機能性分子。
【請求項11】
請求項8に記載の二機能性分子であって、前記金属キレート部分が、DTPAを含み、かつ前記アミロイド結合部分が、ベンゾチアゾール誘導体を含む、二機能性分子。
【請求項12】
以下の化学構造:
【化1】
を有する、二機能性分子。
【請求項13】
以下の化学構造:
【化2】
を有する二機能性分子であって、ここで、Rは、4−ジメチルアミノ、4−アミノ、4−クロロ、4−クロロ−5−エチル、4−アセチル、5−カルボキシル、5−スルホニル、5−ブロモ、4−メチル、5−メチル、6−メチル、5−トリフルオロメチル、4−エトキシル、4−メチルスルホニル、5−メチルスルホニル、6−メチルスルホニル、4−ヒドロキシル、5−ヒドロキシル、および6−ヒドロキシルからなる群より選択される、二機能性分子。
【請求項14】
以下の化学構造:
【化3】
を有する、二機能性分子。
【請求項15】
以下の化学構造:
【化4】
を有する二機能性分子であって、ここで、Rは、4−ジメチルアミノ、4−アミノ、4−クロロ、4−クロロ−5−エチル、4−アセチル、5−カルボキシル、5−スルホニル、5−ブロモ、4−メチル、5−メチル、6−メチル、5−トリフルオロメチル、4−エトキシル、4−メチルスルホニル、5−メチルスルホニル、6−メチルスルホニル、4−ヒドロキシル、5−ヒドロキシル、および6−ヒドロキシルからなる群より選択される、二機能性分子。
【請求項16】
少なくとも一つのアミロイド結合部分に結合した少なくとも一つの画像化部分を含む、造影画像化剤。
【請求項17】
請求項16に記載の造影画像化剤であって、前記アミロイド結合部分が、血液脳関門透過性である、造影画像化剤。
【請求項18】
請求項16に記載の造影画像化剤であって、前記アミロイド結合部分が、Aβアミロイド沈着物に対して高い親和性および特異性を有する、造影画像化剤。
【請求項19】
請求項16に記載の造影画像化剤であって、前記アミロイド結合部分が、ベンゾチアゾール誘導体を含む、造影画像化剤。
【請求項20】
請求項16に記載の造影画像化剤であって、前記画像化部分が、金属実体に対して錯化された少なくとも一つの金属キレート部分を含む、造影画像化剤。
【請求項21】
請求項20に記載の造影画像化剤であって、前記金属キレート部分が、DTPAを含む、造影画像化剤。
【請求項22】
請求項16に記載の造影画像化剤であって、前記画像化部分が、金属実体に対して錯化された少なくとも一つの金属キレート部分を含み、かつ前記アミロイド結合部分が、Aβアミロイド沈着物に対して高い親和性および特異性を有する、造影画像化剤。
【請求項23】
請求項22に記載の造影画像化剤であって、前記金属キレート部分が、DTPAを含み、かつ前記アミロイド結合部分が、ベンゾチアゾール誘導体を含む、造影画像化剤。
【請求項24】
請求項20または22に記載の造影画像化剤であって、前記金属実体が、常磁性金属イオンである、造影画像化剤。
【請求項25】
請求項20または22に記載の造影画像化剤であって、前記金属実体が、ガドリニウム(III)(Gd3+)、クロム(III)(Cr3+)、ジスプロシウム(III)(Dy3+)、鉄(III)(Fe3+)、マンガン(II)(Mn2+)、およびイッテルビウム(III)(Yb3+)からなる群より選択される常磁性金属イオンである、造影画像化剤。
【請求項26】
請求項20または22に記載の造影画像化剤であって、前記金属実体が、ガドリニウム(III)(Gd3+)である、造影画像化剤。
【請求項27】
請求項20または22に記載の造影画像化剤であって、前記金属実体が、放射性核種である、造影画像化剤。
【請求項28】
請求項20または22に記載の造影画像化剤であって、前記金属実体が、テクネチウム−99m(99mTc)、ガリウム−67(67Ga)、イットリウム−91(90Y)、インジウム−111(111In)、レニウム−186(186Re)、およびタリウム−201(201Tl)からなる群より選択される放射性核種である、造影画像化剤。
【請求項29】
請求項20または22に記載の造影画像化剤であって、前記金属実体が、テクネチウム−99m(99mTc)である、造影画像化剤。
【請求項30】
造影画像化剤であって、ガドリニウム(III)(Gd3+)が、以下の化学構造:
【化5】
を有する二機能性分子に対して錯化されている、造影画像化剤。
【請求項31】
造影画像化剤であって、ガドリニウム(III)(Gd3+)が、以下の化学構造:
【化6】
を有する二機能性分子に対して錯化されており、ここで、Rが、4−ジメチルアミノ、4−アミノ、4−クロロ、4−クロロ−5−エチル、4−アセチル、5−カルボキシル、5−スルホニル、5−ブロモ、4−メチル、5−メチル、6−メチル、5−トリフルオロメチル、4−エトキシル、4−メチルスルホニル、5−メチルスルホニル、6−メチルスルホニル、4−ヒドロキシル、5−ヒドロキシル、および6−ヒドロキシルからなる群より選択される、造影画像化剤。
【請求項32】
安定常磁性同位体で標識された少なくとも一つのアミロイド結合部分に結合した少なくとも一つの金属キレート部分を含む、造影画像化剤。
【請求項33】
請求項32に記載の造影画像化剤であって、前記安定常磁性同位体が、炭素−13(13C)またはフッ素−19(19F)である、造影画像化剤。
【請求項34】
薬学的組成物であって、有効量の、請求項1に記載の二機能性分子の少なくとも一種、またはその生理学的に耐容性の塩、および少なくとも一種の薬学的に受容可能なキャリアを含有する、薬学的組成物。
【請求項35】
薬学的組成物であって、有効量の、請求項8に記載の二機能性分子の少なくとも一種、またはその生理学的に耐容性の塩、および少なくとも一種の薬学的に受容可能なキャリアを含有する、薬学的組成物。
【請求項36】
薬学的組成物であって、有効量の、請求項12に記載の二機能性分子の少なくとも一種、またはその生理学的に耐容性の塩、および少なくとも一種の薬学的に受容可能なキャリアを含有する、薬学的組成物。
【請求項37】
薬学的組成物であって、有効量の、請求項13に記載の二機能性分子の少なくとも一種、またはその生理学的に耐容性の塩、および少なくとも一種の薬学的に受容可能なキャリアを含有する、薬学的組成物。
【請求項38】
薬学的組成物であって、有効量の、請求項14に記載の二機能性分子の少なくとも一種、またはその生理学的に耐容性の塩、および少なくとも一種の薬学的に受容可能なキャリアを含有する、薬学的組成物。
【請求項39】
薬学的組成物であって、有効量の、請求項15に記載の二機能性分子の少なくとも一種、またはその生理学的に耐容性の塩、および少なくとも一種の薬学的に受容可能なキャリアを含有する、薬学的組成物。
【請求項40】
薬学的組成物であって、画像化有効量の、請求項16に記載の造影画像化剤の少なくとも一種、またはその生理学的に耐容性の塩、および少なくとも一種の薬学的に受容可能なキャリアを含有する、薬学的組成物。
【請求項41】
薬学的組成物であって、画像化有効量の、請求項20に記載の造影画像化剤の少なくとも一種、またはその生理学的に耐容性の塩、および少なくとも一種の薬学的に受容可能なキャリアを含有する、薬学的組成物。
【請求項42】
薬学的組成物であって、画像化有効量の、請求項25に記載の造影画像化剤の少なくとも一種、またはその生理学的に耐容性の塩、および少なくとも一種の薬学的に受容可能なキャリアを含有する、薬学的組成物。
【請求項43】
薬学的組成物であって、画像化有効量の、請求項28に記載の造影画像化剤、またはその生理学的に耐容性の塩、および少なくとも一種の薬学的に受容可能なキャリアを含有する、薬学的組成物。
【請求項44】
薬学的組成物であって、画像化有効量の、請求項30に記載の造影画像化剤、またはその生理学的に耐容性の塩、および少なくとも一種の薬学的に受容可能なキャリアを含有する、薬学的組成物。
【請求項45】
薬学的組成物であって、画像化有効量の、請求項31に記載の造影画像化剤の少なくとも一種、またはその生理学的に耐容性の塩、および少なくとも一種の薬学的に受容可能なキャリアを含有する、薬学的組成物。
【請求項46】
系においてアミロイド毒性を減少または阻害するための方法であって、該系と請求項1に記載の二機能性分子もしくはその薬学的組成物とを接触させる工程を包含する、方法。
【請求項47】
請求項46に記載の方法であって、該方法が、前記系におけるアミロイド蓄積を予防、減速もしくは停止するか;または該系に存在するアミロイド沈着物の溶解を促進、誘導もしくは容易にするか;あるいはその両方である、方法。
【請求項48】
請求項46に記載の方法であって、該方法が、アミロイド媒介性の活性酸素種産生を、減少、阻害もしくは妨害する、方法。
【請求項49】
請求項46に記載の方法であって、前記接触させる工程が、インビトロインキュベーションもしくはエキソビボインキュベーションによって行われ、そして前記系が、細胞、生物学的流体および生物組織からなる群より選択される、方法。
【請求項50】
請求項49に記載の方法であって、前記細胞、前記生物学的流体もしくは前記生物組織が、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態を有すると疑われる患者に由来する、方法。
【請求項51】
請求項50に記載の方法であって、前記病態生理学的状態が、アミロイド−βペプチドの蓄積に関連し、そして前記二機能性分子中のアミロイド結合部分が、Aβアミロイド沈着物に対して高い親和性および特異性を有する、方法。
【請求項52】
請求項46に記載の方法であって、前記二機能性分子が、以下の化学構造:
【化7】
を有する、方法。
【請求項53】
請求項46に記載の方法であって、前記二機能性分子が、以下の化学構造:
【化8】
を有し、ここで、Rが、4−ジメチルアミノ、4−アミノ、4−クロロ、4−クロロ−5−エチル、4−アセチル、5−カルボキシル、5−スルホニル、5−ブロモ、4−メチル、5−メチル、6−メチル、5−トリフルオロメチル、4−エトキシル、4−メチルスルホニル、5−メチルスルホニル、6−メチルスルホニル、4−ヒドロキシル、5−ヒドロキシル、および6−ヒドロキシルからなる群より選択される、方法。
【請求項54】
請求項46に記載の方法であって、前記二機能性分子が、以下の化学構造:
【化9】
を有する、方法。
【請求項55】
請求項46に記載の方法であって、前記二機能性分子が、以下の化学構造:
【化10】
を有し、ここで、Rが、4−ジメチルアミノ、4−アミノ、4−クロロ、4−クロロ−5−エチル、4−アセチル、5−カルボキシル、5−スルホニル、5−ブロモ、4−メチル、5−メチル、6−メチル、5−トリフルオロメチル、4−エトキシル、4−メチルスルホニル、5−メチルスルホニル、6−メチルスルホニル、4−ヒドロキシル、5−ヒドロキシル、および6−ヒドロキシルからなる群より選択される、方法。
【請求項56】
アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態を有する患者を処置するための方法であって、該患者に、有効量の、請求項1に記載の二機能性分子またはその薬学的組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項57】
請求項56に記載の方法であって、該方法が、前記患者におけるアミロイド蓄積を予防、減速もしくは停止するか;または該患者に存在するアミロイド沈着物の溶解を促進、誘導もしくは容易にするか;あるいはその両方である、方法。
【請求項58】
請求項56に記載の方法であって、該方法が、アミロイド媒介性の活性酸素種産生を、減少、阻害もしくは妨害する、方法。
【請求項59】
請求項56に記載の方法であって、前記投与が、経口投与および非経口投与からなる群より選択される方法によって実行され、該非経口投与が、静脈内注入、筋肉内注入、皮下注入、ならびに経皮投与および経腸投与を包含する、方法。
【請求項60】
請求項56に記載の方法であって、前記病態生理学的状態が、アミロイド−βペプチドの蓄積に関連し、かつ前記二機能性分子における前記アミロイド結合部分が、Aβアミロイド沈着物に対して高い親和性および特異性を有する、方法。
【請求項61】
請求項56に記載の方法であって、前記二機能性分子が、以下の化学構造:
【化11】
を有する、方法。
【請求項62】
請求項56に記載の方法であって、前記二機能性分子が、以下の化学構造:
【化12】
を有し、ここで、Rが、4−ジメチルアミノ、4−アミノ、4−クロロ、4−クロロ−5−エチル、4−アセチル、5−カルボキシル、5−スルホニル、5−ブロモ、4−メチル、5−メチル、6−メチル、5−トリフルオロメチル、4−エトキシル、4−メチルスルホニル、5−メチルスルホニル、6−メチルスルホニル、4−ヒドロキシル、5−ヒドロキシル、および6−ヒドロキシルからなる群より選択される、方法。
【請求項63】
請求項56に記載の方法であって、前記二機能性分子が、以下の化学構造:
【化13】
を有する、方法。
【請求項64】
請求項56に記載の方法であって、前記二機能性分子が、以下の化学構造:
【化14】
を有し、ここで、Rが、4−ジメチルアミノ、4−アミノ、4−クロロ、4−クロロ−5−エチル、4−アセチル、5−カルボキシル、5−スルホニル、5−ブロモ、4−メチル、5−メチル、6−メチル、5−トリフルオロメチル、4−エトキシル、4−メチルスルホニル、5−メチルスルホニル、6−メチルスルホニル、4−ヒドロキシル、5−ヒドロキシル、および6−ヒドロキシルからなる群より選択される、方法。
【請求項65】
請求項56に記載の方法であって、前記病態生理学的状態が、アルツハイマー病、ダウン症候群、レヴィー小体痴呆、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型)、グアム・パーキンソン痴呆、および頭部外傷からなる群より選択される、方法。
【請求項66】
請求項56に記載の方法であって、前記病態生理学的状態が、アルツハイマー病である、方法。
【請求項67】
系におけるアミロイド沈着物の存在を検出するための方法であって、以下の工程:
該系と、画像化有効量の、請求項20に記載の造影画像化剤またはその薬学的組成物とを、該造影画像化剤と、存在するいずれかのアミロイド沈着物とを相互作用させる条件下で接触させる工程であって、該工程によって、該相互作用が、該アミロイド沈着物への該造影画像化剤の結合を生じさせる、工程;
画像化技術を使用して、該系に存在し、該造影画像化剤に結合しているいずれかのアミロイド沈着物を検出する工程;ならびに、
該系の少なくとも一部の、一以上の画像を作製する工程、
を包含する、方法。
【請求項68】
請求項67に記載の方法であって、前記系に存在する前記アミロイド沈着物が、アミロイド−βペプチドの蓄積によって形成され、そして前記造影画像化剤中のアミロイド結合部分が、Aβアミロイド沈着物に対して高い親和性を有する、方法。
【請求項69】
請求項67に記載の方法であって、前記接触させる工程が、インビトロインキュベーションまたはエキソビボインキュベーションによって行われ、そして前記系が、細胞、生物学的流体、および生物組織からなる群より選択される、方法。
【請求項70】
請求項69に記載の方法であって、前記細胞、前記生物学的流体、または前記生物組織が、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態を有すると疑われる患者に由来する、方法。
【請求項71】
請求項69に記載の方法であって、前記細胞、前記生物学的流体、または前記生物組織が、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態のための処置を受けている患者に由来する、方法。
【請求項72】
請求項69に記載の方法であって、前記細胞、前記生物学的流体、または前記生物組織が、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態の処置のための潜在的な治療剤と接触させられている、方法。
【請求項73】
請求項67に記載の方法であって、該方法が、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態の処置のための潜在的な治療剤を同定するために使用される、方法。
【請求項74】
請求項67に記載の方法であって、該方法が、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態を診断するために使用される、方法。
【請求項75】
請求項67に記載の方法であって、該方法が、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態の進行を追跡するために使用される、方法。
【請求項76】
請求項67に記載の方法であって、該方法が、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態のための処置に対する患者の応答をモニタリングするために使用される、方法。
【請求項77】
患者におけるアミロイド沈着物の存在を検出するための方法であって、以下の工程:
該患者に、画像化有効量の、請求項20に記載の造影画像化剤またはその薬学的組成物を、該造影画像化剤と、存在するいずれかのアミロイド沈着物とを相互作用させる条件下で、投与する工程であって、該工程によって、該相互作用が、該アミロイド沈着物への該造影画像化剤の結合を生じさせる、工程;
画像化技術を使用して、該患者中に存在し、該造影画像化剤に結合しているいずれかのアミロイド沈着物を検出する工程;ならびに、
該患者の身体の少なくとも一部の、一以上の画像を作製する工程、
を包含する、方法。
【請求項78】
請求項77に記載の方法であって、前記投与が、経口投与および非経口投与からなる群より選択される方法によって実行され、該投与が、静脈内投与、動脈内投与、くも膜下腔内投与、皮内投与、および腔内投与、ならびに経腸投与を包含する、方法。
【請求項79】
請求項77に記載の方法であって、前記アミロイド沈着物が、アミロイド−βペプチドの凝集および蓄積によって形成され、そして前記造影画像化剤中のアミロイド結合部分が、Aβアミロイド沈着物に対して高い親和性または特異性を有する、方法。
【請求項80】
請求項77に記載の方法であって、該方法が、患者中のアミロイド沈着物を位置決めするために使用される、方法。
【請求項81】
請求項77に記載の方法であって、該方法が、患者の脳内のアミロイド沈着物を位置決めするために使用され;そしてここで、前記造影画像化剤中のアミロイド結合部分が、血液脳関門透過性である、方法。
【請求項82】
請求項77に記載の方法であって、該方法が、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態を診断するために使用される、方法。
【請求項83】
請求項77に記載の方法であって、該方法が、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態の進行を追跡するために使用される、方法。
【請求項84】
請求項77に記載の方法であって、該方法が、アミロイド蓄積に関連する病態生理学的状態のための処置に対する患者の応答をモニタリングするために使用される、方法。
【請求項85】
請求項67または77に記載の方法であって、前記造影画像化剤中の画像化部分が、常磁性金属イオンに対して錯化された、少なくとも一つの金属キレート部分を含み;前記検出が、磁気共鳴画像法(MRI)によって実行され;そしてMR画像が作製される、方法。
【請求項86】
請求項85に記載の方法であって、前記常磁性金属イオンが、ガドリニウム(III)(Gd3+)、クロム(III)(Cr3+)、ジスプロシウム(III)(Dy3+)、鉄(III)(Fe3+)、マンガン(II)(Mn2+)、およびイッテルビウム(III)(Yb3+)からなる群より選択される、方法。
【請求項87】
請求項85に記載の方法であって、前記常磁性金属イオンが、ガドリニウム(III)(Gd3+)である、方法。
【請求項88】
請求項87に記載の方法であって、ガドリニウム(III)(Gd3+)が、以下の化学構造:
【化15】
を有する二機能性分子に対して錯化されている、方法。
【請求項89】
請求項87に記載の方法であって、ガドリニウム(III)(Gd3+)が、以下の化学構造:
【化16】
を有する二機能性分子に対して錯化されており、ここで、Rが、4−ジメチルアミノ、4−アミノ、4−クロロ、4−クロロ−5−エチル、4−アセチル、5−カルボキシル、5−スルホニル、5−ブロモ、4−メチル、5−メチル、6−メチル、5−トリフルオロメチル、4−エトキシル、4−メチルスルホニル、5−メチルスルホニル、6−メチルスルホニル、4−ヒドロキシル、5−ヒドロキシル、および6−ヒドロキシルからなる群より選択される、方法。
【請求項90】
請求項67または77に記載の方法であって、前記造影画像化剤の画像化部分が、放射性核種に対して錯化された少なくとも一つの金属キレート部分を含み;前記検出が、単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)によって実行され;そしてSPECT画像が作製される、方法。
【請求項91】
請求項90に記載の方法であって、前記放射性核種が、テクネチウム−99m(99mTc)、ガリウム−67(67Ga)、イットリウム−91(90Y)、インジウム−111(111In)、レニウム−186(186Re)、およびタリウム−201(201Tl)からなる群より選択される、方法。
【請求項92】
請求項90に記載の方法であって、前記放射性核種が、テクネチウム−99m(99mTc)である、方法。
【請求項93】
請求項73、74、75、76、82、83または84に記載の方法であって、前記病態生理学的状態が、アミロイド−βペプチドの蓄積に関連し、そして前記造影画像化剤中のアミロイド結合部分が、Aβアミロイド沈着物に対して高い親和性を有する、方法。
【請求項94】
請求項73、74、75、76、82、83または84に記載の方法であって、前記病態生理学的状態が、アルツハイマー病、ダウン症候群、レヴィー小体痴呆、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型)、グアム・パーキンソン痴呆、および頭部外傷からなる群より選択される、方法。
【請求項95】
請求項73、74、75、76、82、83または84に記載の方法であって、前記病態生理学的状態が、アルツハイマー病である、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2006−515630(P2006−515630A)
【公表日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501093(P2006−501093)
【出願日】平成16年1月22日(2004.1.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/001669
【国際公開番号】WO2004/064869
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(592017633)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション (177)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年1月22日(2004.1.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/001669
【国際公開番号】WO2004/064869
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(592017633)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション (177)
【Fターム(参考)】
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