説明

アミロイド阻害化合物の薬学的製剤

対象の臨床での状況がどのようであれ、その対象におけるアミロイド沈着を阻害するための治療製剤および方法を記述する。アミロイドーシスおよび/またはアミロイド関連疾患を予防または治療するための治療製剤および方法も同様に記述する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願
本出願は、いずれも「Pharmaceutical Formulations of Amyloid-Inhibiting Compounds」と題する、代理人整理番号(Attorney Docket No.)NBI-152-1によって識別される2003年6月23日に提出された米国特許仮出願第60/480,984号、代理人整理番号NBI-152-2によって識別される2003年10月17日に提出された米国特許仮出願第60/512,116号、および「Pharmaceutical Formulations of Amyloid-Inhibiting Compounds.」と題する代理人整理番号NBI-152によって識別される2004年6月18日に提出された米国特許出願第10/XXX,XXX号に対する優先権を主張する。
【0002】
本出願は、「Combination Therapy for the Treatment of Alzheimer's Disease.」と題する代理人整理番号NBI-154-1によって識別される2002年12月24日に提出された米国特許仮出願第60/436,379号、代理人整理番号NBI-154-2によって識別される2003年6月23日に提出された米国特許仮出願第60/482,214号、代理人整理番号NBI-154によって識別される2003年12月24日に提出された米国実用特許出願第10/746,138号、および「Therapeutic Formulations for the Treatment of Beta-Amyloid Related Disease.」と題する代理人整理番号NBI-154PCによって識別される国際特許出願PCT/CA2003/002011号に関連する。本出願は、いずれも「Synthetic Process for Preparing Compounds for Treating Amyloidosis.」と題する、代理人整理番号NBI-156-1によって識別される2003年6月23日に提出された米国特許仮出願第60/482,058号、代理人整理番号NBI-156-2によって識別される2003年10月17日に提出された米国特許仮出願第60/512,135号、および「Improved Pharmaceutical Drug Candidates and Methods for Preparation Thereof.」と題する代理人整理番号NBI-156によって識別される2004年6月18日に提出された米国特許出願第10/XXX,XXX号に関連する。本出願はまた、代理人整理番号NBI-149-1によって識別される2003年6月23日に提出された米国特許仮出願第60/480,918号、代理人整理番号NBI-149-2によって識別される2003年10月17日に提出された米国特許仮出願第60/512,017号、および「Methods for Treating Protein Aggregation Disorders.」と題する代理人整理番号NBI-149によって識別される2004年6月18日に提出された米国特許出願第10/XXX,XXX号にも関連する。本出願はまた、その全てが「Methods and Compositions for Treating Amyloid-Related Diseases.」と題する、代理人整理番号NBI-162-1によって識別される2003年6月23日に提出された米国特許仮出願第60/480,906号、代理人整理番号NBI-162-2によって識別される2003年10月17日に提出された米国特許仮出願第60/512,047号、代理人整理番号NBI-162Aによって識別される2004年6月18日に提出された米国特許出願第10/XXX,XXX号、および代理人整理番号NBI-162Bによって識別される2004年6月18日に提出された米国特許出願第10/XXX,XXX号、ならびにその全てが「Methods and Compositions for the Treatment of Amyloid- and Epileptogenesis-Associated Disease.」と題する、代理人整理番号NBI-163-1によって識別される2003年6月23日に提出された米国特許仮出願第60/480,928号、代理人整理番号NBI-163-2によって識別される2003年10月17日に提出された米国特許仮出願第60/512,018号、および代理人整理番号NBI-163によって識別される2004年6月18日に提出された米国特許出願10/XXX,XXX号にも関連する。本出願はまた、代理人整理番号NCI-003CP4によって識別される米国特許出願08/463,548号、現在は米国特許第5,972,328号の「Method for Treating Amyloidosis.」にも関連する。
【0003】
前述の特許出願および特許のそれぞれの全内容物は、明細書、請求の範囲、および要約書と共にその任意の図、表、または図面を含むがそれに限定されるわけではないその全内容物が参照により本明細書に明白に組み入れられる。
【0004】
本発明の背景
アミロイドーシスとは、アミロイド線維の存在を特徴とする病的状態のことを指す。アミロイドとは、多数のさまざまな疾患で認められる、多様ではあるが特異な一群のタンパク質沈着物(細胞内または細胞外)を指す総称である。その出現様式は多様であるが、すべてのアミロイド沈着物は、特定の色素(例えば、コンゴーレッド)で染色されるという共通の形態学的特徴を有し、染色後に偏光下で特徴的な赤色-緑色の複屈折像を示す。また、それらは共通の超微細な特徴ならびに共通のX線回折スペクトルおよび赤外スペクトルも有する。
【0005】
アミロイド関連疾患は、1つの臓器に限局することもあれば、いくつかの臓器に分布することもある。最初の事例は「局所性アミロイドーシス」と呼ばれ、二番目のものは「全身性アミロイドーシス」と呼ばれる。
【0006】
アミロイド病は特発性のこともあるが、これらの疾患の大部分は既存の障害の合併症として出現する。例えば、原発性アミロイドーシス(ALアミロイド)は、他の病態を伴わずに出現することもあり、形質細胞異常または多発性骨髄腫に続いて起こることもある。
【0007】
続発性アミロイドーシスは通常、慢性感染(結核など)または慢性炎症(関節リウマチなど)に伴ってみられる。家族型の続発性アミロイドーシスも、他の形態の家族性アミロイドーシス、例えば家族性地中海熱(FMF)などでみられる。この家族型のアミロイドーシスは遺伝的に受け継がれ、特定の集団群に認められる。原発性および続発性アミロイドーシスのいずれにおいても、沈着物は複数の臓器に認められ、このためこれらは全身性アミロイド病であるとみなされる。
【0008】
「局所性アミロイドーシス」とは、単一臓器系が冒される傾向にあるもののことである。種々のアミロイドは、沈着物に存在するタンパク質の種類によっても特徴づけられる。例えば、スクレイピー、ウシ海綿状脳症、クロイツフェルト-ヤコブ病などの神経変性疾患は、中枢神経系におけるプロテアーゼ耐性型のプリオンタンパク質(AScrまたはPrP-27と呼ばれる)の出現および蓄積を特徴とする。同様に、別の神経変性疾患であるアルツハイマー病は、神経突起斑および神経原線維変化を特徴とする。この場合には、実質中および血管内に認められるアミロイド斑は、線維性Aβアミロイドタンパク質の沈着によって形成される。成人発症型糖尿病糖尿病(II型糖尿病)などの他の疾患は、膵臓におけるアミロイド線維の局所蓄積を特徴とする。
【0009】
ひとたびこれらのアミロイドが形成されれば、インサイチューでアミロイド沈着物を著しく溶解させる、またはアミロイドの沈着開始を防ぐ、広く受け入れられた既知の治療法も処置も存在しない。
【0010】
それぞれのアミロイド生成性タンパク質は、コンフォメーション変化を起こし、βシートを組織化して不溶性線維を形成する能力を有しており、これが細胞外または細胞内に沈着する。各アミロイド生成性タンパク質は、アミノ酸配列の点では異なるものの、線維を形成して、プロテオグリカン、アミロイドPおよび補体成分などの他の成分と結合するという共通の性質を有する。さらに、各アミロイド生成性タンパク質は、異なってはいるものの、プロテオグリカンのグリコサミノグリカン(GAG)部分(GAG結合部位)やβシートの形成を促進する他の領域と結合する能力のある領域との類似性を示すアミノ酸配列を有する。プロテオグリカンは、体内のほぼいたるところに分布している、サイズおよび構造の点でさまざまな高分子である。これらは、細胞内区画の内部、細胞表面上および細胞外マトリックスとして存在する。すべてのプロテオグリカンの基本構造は、コアタンパク質およびそのコアタンパク質と結合した少なくとも1つ、しかし一般的にはそれ以上の多糖鎖(GAG)から構成される。コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリンおよびヒアルロナンを含む、多くのさまざまなGAGが発見されている。
【0011】
具体的な症例において、アミロイド線維は、ひとたび沈着すると周囲の細胞に対して毒性化する恐れがある。例えば、老人斑として組織化されたAβ線維はアルツハイマー病の患者における神経細胞死、異栄養性神経突起、アストロサイトーシスおよびミクログリオーシスとの関連性があることが示されている。インビトロで検査すると、オリゴマー性(可溶性)および線維性Aβペプチドがミクログリア(脳マクロファージ)の活性化プロセスを誘発しうることが示されており、これはアルツハイマー病の患者の脳内に認められるミクログリオーシスおよび脳炎症の存在の説明になると考えられる。また、オリゴマー性および線維性のAβペプチドはいずれもインビトロで神経細胞死を誘導することもできる。例として、MP Lambert, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95, 6448-54(1998)を参照されたい。
【0012】
II型糖尿病の患者で認められるもう1つの型のアミロイドーシスでは、アミロイド生成性タンパク質IAPPが、オリゴマー形態または線維状に組織化された場合に、インビトロでβ膵島細胞毒性を誘導することが示されている。このため、II型糖尿病患者の膵臓におけるIAPP線維の存在は、インスリン血症を招く恐れのある、β膵島細胞(ランゲルハンス)の喪失および臓器機能障害の一因となる。
【0013】
もう1つの型のアミロイドーシスは、β2ミクログロブリンと関係があり、長期血液透析患者でみられる。長期血液透析を受けている患者では、手根管において、さらにいくつかの関節内のコラーゲンの多い組織においてβ2ミクログロブリン線維が生じる可能性がある。これは激しい疼痛、関節硬直および腫脹の原因となる。
【0014】
アミロイドーシスはまた、アルツハイマー病に特徴的でもある。アルツハイマー病は脳の廃疾性疾患であり、痴呆に至る進行性の記憶障害、身体能力障害および死亡が比較的長い期間をかけて起こる。先進国では人口の高齢化に伴い、アルツハイマー患者の数が流行病の割合に近づきつつある。
【0015】
アルツハイマー病に罹患した人々は成人期に進行性痴呆を発症するが、これに伴って脳内では主に以下の3種類の構造変化が起こっている:脳の多くの部分でのニューロンのびまん性喪失;神経原線維変化と呼ばれる細胞内タンパク質沈着物の蓄積;および、形の崩れた神経終末(変性神経突起)および活性ミクログリア(ミクログリオーシスおよびアストロサイトーシス)によって囲まれたアミロイドまたは老人斑と呼ばれる細胞外タンパク質沈着物の蓄積。これらのアミロイド斑の主な成分はアミロイドβペプチド(Aβ)であり、これはβアミロイド前駆体タンパク質(APP)の切断によって生成される39〜43アミノ酸のタンパク質である。アルツハイマー病におけるAβ沈着物の関与については詳細な研究が行われており、例えば、Selkoe, Trends in Cell Biology 8, 447-453 (1998)を参照されたい。Aβは自然下では小胞体(「ER」)、ゴルジ装置またはエンドソーム-リソソーム経路におけるアミロイド前駆体タンパク質(「APP」)の代謝プロセシングによって生じ、そのほとんどは通常、40(「Aβ1-40」)または42(「Aβ1-42」)アミノ酸のペプチドとして分泌される(Selkoe, Annu. Rev. Cell Biol. 10, 373-403 (1994))。アルツハイマー病の主因としてのAβの役割は、アルツハイマー病の老人班における細胞外Aβ沈着物(「Aβ」)沈着物の存在、変異型アルツハイマー病関連遺伝子、例えば、アミロイド前駆体タンパク質、プレセニリンIおよびプレセニリンIIを有する細胞におけるAβの産生増加;ならびに培養下の細胞に対する細胞外の可溶性(オリゴマー性)または線維性Aβの毒性によって裏づけられている。例えば、Gervais, Eur. Biopharm. Review, 40-42 (Autumn 2001);May, DDT 6, 459-62 (2001)を参照されたい。アルツハイマー病に対する対症療法は存在するが、本疾患は現時点では予防することも治癒させることもできない。
【0016】
アルツハイマー病は、びまん性神経突起斑、脳アンギオパチーおよび神経原線維変化によって特徴づけられる。斑および血管アミロイドは不溶性Aβアミロイドタンパク質(びまん性または線維性と呼ばれることもある)の沈着によって形成されると考えられている。可溶性オリゴマー性Aβおよび線維性Aβはいずれも神経毒性および炎症性でもあると考えられている。
【0017】
もう1つの種類のアミロイドーシスは、脳アミロイドアンギオパチー(CAA)である。CAAは、脳軟膜動脈および皮質動脈、細動脈ならびに毛細血管および静脈の壁における、アミロイドβ線維の特異的沈着のことを指す。これはアルツハイマー病、ダウン症候群および正常老化のほか、脳卒中または痴呆と関係のある種々の家族性疾患に高頻度に伴ってみられる(Frangione, et al., Amyloid: J. Protein Folding Disord. 8, Suppl. 1, 36-42 (2001)を参照)。
【0018】
βアミロイド病の治療のために現在利用しうる治療法はほぼすべて対症療法的であり、一時的または部分的が臨床的有用性が得られるに過ぎない。ある種の医薬品は症状をある程度緩和することが記載されているが、例えばアルツハイマー病の予防または治療のために利用しうる総合的な薬物療法は現時点では得られていない。
【発明の開示】
【0019】
発明の概要
本発明は、アミロイドーシスの治療において有用な方法、組成物、および製剤を提供する。本発明の方法は、アミロイド沈着を阻害する治療組成物または製剤を対象に投与する段階を含む。したがって、本発明の組成物および方法は、アミロイドの沈着が起こるアミロイドーシス障害を阻害するために有用である。本発明の方法は、アミロイドーシスを治療するために治療的に用いてもよく、またはアミロイドーシスに対して感受性がある対象において予防的に用いてもよい。
【0020】
一つの局面において、本発明の方法は、少なくとも部分的にアミロイド沈着物を阻害するために、アミロイド原性タンパク質と基底膜の構成成分との相互作用を阻害することに基づく。特定の態様において、基底膜の構成成分は、糖タンパク質またはプロテオグリカンであり、好ましくは、アグリン、パーレカン、またはヘパラン硫酸プロテオグリカンである。本発明の方法において用いられる治療化合物は、アミロイド原性タンパク質上の標的結合部位に対する基底膜構成成分の結合を妨害して、それによってアミロイド沈着を阻害することができる。他の態様において、本発明の方法において用いられる治療化合物は、脳からのアミロイドβの消失を増強して、それによってアミロイド沈着を阻害することができる。他の態様において、本発明の方法において用いられる治療化合物は、アミロイドによって(例えば、本明細書に記述されるように、可溶性または不溶性アミロイド、例えばアミロイド原線維によって、アミロイド沈着および/またはアミロイドβによって)誘発された神経変性または細胞毒性を阻害することができる。
【0021】
好ましい局面において、本発明は、アミロイド関連疾患の治療にアルキルスルホン酸を用いることに関する。
【0022】
したがって、一つの局面において、本発明は、アミロイド沈着が阻害されるように、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の有効量を対象に投与する段階を含む、対象におけるアミロイド沈着を阻害する方法に向けられる。
【0023】
もう一つの局面において、本発明は、アミロイド関連疾患が治療または予防されるように、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の治療量を対象に投与する段階を含む、対象におけるアミロイド関連疾患、例えばAβ関連疾患を治療または予防する方法に関する。
【0024】
さらなる局面において、本発明は、治療化合物が、アミロイド原性タンパク質と基底膜の構成成分との相互作用を阻害してアミロイド沈着を阻害するように、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の有効量を対象に投与する段階を含む、対象におけるアミロイド沈着を阻害する方法である。
【0025】
本発明のもう一つの局面は、治療化合物がアミロイドによって(例えば、本明細書に記述されるように、可溶性または不溶性アミロイド、例えばアミロイド原線維によって、アミロイド沈着および/またはアミロイドβによって)誘発される神経変性または細胞毒性を阻害するように、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の有効量を対象に投与する段階を含む、対象におけるアミロイド沈着を阻害する方法を含む。
【0026】
もう一つの局面において、本発明は、治療化合物が脳からアミロイドβの消失を増強するように、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の有効量を対象に投与する段階を含む、対象におけるアミロイド沈着を阻害する方法に向けられる。
【0027】
さらにもう一つの局面において、本発明は、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の有効量を対象に経口投与する段階を含む、対象におけるアミロイド沈着を阻害する方法に関する。
【0028】
本発明のさらなる局面は、対象においてアミロイド沈着を阻害するために十分な量の、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物と、薬学的に許容される媒体とを含む治療製剤を含む、対象におけるアミロイド沈着を阻害するための薬学的組成物である。
【0029】
もう一つの局面において、本発明は、対象においてアミロイド沈着を阻害するために十分な量の、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物と、薬学的に許容される媒体とを含む治療製剤を含む、アミロイドーシスを治療するための薬学的組成物に向けられる。
【0030】
もう一つの局面において、本発明は、対象におけるアミロイド関連疾患を阻害または治療するために十分な量の、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物と、薬学的に許容される媒体とを含む治療製剤を含む、アミロイド関連疾患、例えばAβ関連疾患を治療または予防するための薬学的組成物に関する。
【0031】
さらにもう一つの局面において、本発明は、アミロイド沈着が対象において減少するように、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の有効量を対象に投与する段階を含む、アミロイド沈着を有する対象におけるアミロイド沈着を減少させる方法に関する。
【0032】
本発明のもう一つの局面は、グリコサミノグリカンに対するケモカインの結合が阻害されるように、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤を対象に投与する段階を含む、対象におけるグリコサミノグリカンに対するケモカインの結合を阻害する方法に向けられる。
【0033】
本発明のなおもう一つの局面は、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の有効量をヒトに投与する段階を含む、ヒトにおける細菌とグリコサミノグリカンとの相互作用を調節する方法に向けられる。
【0034】
さらなる局面において、本発明は、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の有効量をヒトに投与する段階を含む、ヒトにおける細菌感染症を治療する方法に関する。
【0035】
もう一つの局面において、本発明は、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の有効量を対象に投与する段階を含む、対象におけるウイルスとグリコサミノグリカンとの相互作用を調節する方法である。
【0036】
本発明のもう一つの局面は、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の有効量を含む治療製剤を対象に投与する段階を含む、対象におけるウイルス感染症を治療する方法である。
【0037】
本発明のさらにもう一つの局面は、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の有効量を投与する段階を含む、対象における脳アミロイド血管障害を予防、治療、または阻害する方法に向けられる。
【0038】
さらなる局面において、本発明は、脳アミロイド血管障害が予防、治療、または阻害されるように、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤を、血管壁細胞に接触させる段階を含む、脳アミロイド血管障害を予防、治療、または阻害する方法に関する。
【0039】
もう一つの局面において、本発明は、脳アミロイド血管障害が予防、治療、または阻害されるように、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療製剤の治療化合物を血管壁細胞に接触させる段階を含む、脳アミロイド血管障害を予防、治療、または阻害する方法に関する。
【0040】
本発明のさらなる局面は、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の有効量を対象に投与する段階を含む、対象におけるアルツハイマー病を予防、治療、または阻害する方法に向けられる。
【0041】
本発明のさらなる局面は、アルツハイマー病が予防、治療、または阻害されるように、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の有効量を対象に投与する段階を含む、対象におけるアルツハイマー病を予防、治療、または阻害する方法に向けられる。
【0042】
もう一つの局面において、本発明は、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の治療的有効量を入れる容器と、対象におけるアミロイド沈着を阻害する化合物を用いるための説明書とを含む、対象におけるアミロイド沈着を阻害するための包装された薬学的組成物に向けられる。
【0043】
さらにもう一つの局面において、本発明は、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の治療的有効量を入れる容器と、対象におけるアミロイドーシスを治療する化合物を用いるための説明書とを含む、対象におけるアミロイドーシスを治療するための包装された薬学的組成物に関する。
【0044】
さらにもう一つの局面において、本発明は、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の治療的有効量を入れる容器と、対象におけるアルツハイマー病を治療する化合物を用いるための説明書とを含む、対象におけるアルツハイマー病を治療するための包装された薬学的組成物に関する。
【0045】
本発明のもう一つの局面は、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の治療的有効量を入れる容器と、ウイルス感染症を治療する化合物を用いるための説明書とを含む、ウイルス感染症を治療するための包装された薬学的組成物である。
【0046】
さらなる局面において、本発明は、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の治療的有効量を入れる容器と、細菌感染症を治療する治療化合物を用いるための説明書とを含む、細菌感染症を治療するための包装された薬学的組成物に向けられる。
【0047】
もう一つの局面において、本発明は、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の治療的有効量を入れる容器と、グリコサミノグリカンに対するケモカインの結合を阻害する化合物を用いるための説明書とを含む、グリコサミノグリカンに対するケモカインの結合を阻害するための包装された薬学的組成物に関する。
【0048】
さらにもう一つの局面において、本発明は、治療製剤が消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化される、治療化合物の治療有効量と薬学的に許容される媒体とを混合する段階を含む、治療製剤を作製する方法に関する。
【0049】
本発明のさらなる局面は、3-アミノ-1-プロパンスルホン酸を重量で5%より多く含む薬学的製剤に向けられる。
【0050】
もう一つの局面において、本発明は、治療化合物と、重量で1%より多いさらなる物質とを含む薬学的製剤である。
【0051】
さらにもう一つの局面において、本発明は、アミロイド沈着が阻害されるように、腸溶コーティングと共に製剤化された治療化合物を含む治療製剤の有効量を対象に投与する段階を含む、対象におけるアミロイド沈着を阻害する方法に関する。
【0052】
本発明のもう一つの局面は、アミロイド沈着が阻害されるように、治療化合物の放出を改変する物質と共に製剤化した治療化合物を含む治療製剤の有効量を対象に投与する段階を含む、対象におけるアミロイド沈着を阻害する方法に向けられる。
【0053】
さらに、本発明のさらなる局面は、アミロイド沈着が阻害されるように、腸溶コーティングと共に製剤化した治療化合物を含む、対象におけるアミロイド沈着を阻害するための薬学的組成物である。
【0054】
もう一つの局面において、本発明は、アミロイド沈着が阻害されるように、治療化合物の放出を改変する物質と共に製剤化された治療化合物を含む、対象におけるアミロイド沈着を阻害するための薬学的組成物に関する。
【0055】
さらにもう一つの局面において、本発明は、治療化合物が消化管不耐性の有意な減少能または予防能に関して予め選択され、消化管不耐性が増強した薬学的組成物が形成される、予め選択された治療化合物と薬学的に許容される担体とを混合する段階を含む、消化管の不耐性が増強された薬学的組成物を製剤化する方法に関する。
【0056】
さらなる局面において、本発明は、アミロイド関連疾患が予防または治療されるように、腸溶コーティングと共に製剤化された治療化合物を含む治療製剤の有効量を対象に投与する段階を含む、対象におけるアミロイド関連疾患を予防または治療する方法に向けられる。
【0057】
本発明のもう一つの局面は、アミロイド関連疾患が予防または治療されるように、治療化合物の放出を改変する物質と共に製剤化した治療化合物を含む治療製剤の有効量を対象に投与する段階を含む、対象におけるアミロイド関連疾患を予防または治療する方法である。
【0058】
もう一つの局面において、本発明は、腸溶コーティングと共に製剤化した治療化合物を含む、対象におけるアミロイド関連疾患を予防または治療するための薬学的組成物に向けられる。
【0059】
さらにもう一つの局面において、本発明は、治療化合物の放出を改変する物質と共に製剤化した治療化合物を含む、対象におけるアミロイド関連疾患を予防または治療するための薬学的組成物に関する。
【0060】
発明の詳細な説明
本発明は、アミロイドーシスを治療するために有用な方法、組成物、および製剤に関する。本発明の方法は、アミロイド沈着を阻害する治療化合物を含む治療製剤を対象に投与する段階を含む。したがって詳しく述べると、本発明は、中でもアルツハイマー病、脳アミロイド血管障害、封入体筋炎、黄斑変性、ダウン症候群、軽度の認知障害、およびII型糖尿病を含む、アミロイド関連疾患の予防または治療において、例えばアルキルスルホン酸を含む治療製剤を用いることに関する。
【0061】
I. アミロイド関連疾患
本発明はアミロイド関連疾患の治療に有用な治療化合物を含む薬学的化合物または製剤の使用に関する。多くのアミロイド関連疾患が知られており、これ以外にもおそらく存在する。
【0062】
AA(反応性)アミロイドーシス
一般に、AAアミロイドーシスとは、持続的な急性期反応を誘発するさまざまな疾患の発現のことである。この種の疾患には、慢性炎症性障害、慢性の局所性または全身性の微生物感染症、ならびに悪性新生物が含まれる。最も一般的な形態の反応性または続発性(AA)アミロイドーシスは、長期にわたる炎症状態の結果としてみられる。例えば、関節リウマチまたは家族性地中海熱(これは遺伝病である)の患者はAAアミロイドーシスを発症する恐れがある。「AAアミロイドーシス」および「続発性(AA)アミロイドーシス」という用語は互換的に用いられる。
【0063】
AA線維は一般に、IL-1、IL-6およびTNFなどのサイトカインに対する応答として肝細胞で主に合成される流血中アポリポタンパク質である血清アミロイドAタンパク質(ApoSAA)のタンパク質分解によって形成される8,000ダルトンの断片(AAペプチドまたはタンパク質)から構成される。ApoSAAはひとたび分泌されるとHDLと複合体を形成する。AA線維の沈着は体内の広範囲に及ぶ可能性があり、実質臓器に対する選好性がある。腎臓は一般的な沈着部位であり、肝臓および脾臓が冒されることもある。沈着が心臓、胃腸管および皮膚にみられる場合もある。
【0064】
AAアミロイドーシスの発症を招く可能性のある基礎疾患には、関節リウマチ、若年性慢性関節炎、強直性脊椎炎、乾癬、乾癬性関節症、ライター症候群、成人スチル病、ベーチェット症候群およびクローン病などの炎症性疾患が非制限的に含まれる。AA沈着物は、ハンセン病、結核、気管支拡張症、褥瘡、慢性腎盂腎炎、骨髄炎およびウィップル病などの慢性微生物感染症の結果としても生じる。ある種の悪性新生物もAA線維性のアミロイド沈着物を引き起こすことがある。これらには、ホジキンリンパ腫、腎癌、胃癌、肺癌、尿生殖路の癌、基底細胞癌および有毛細胞白血病が含まれる。AAアミロイドーシスを伴う可能性のある他の基礎疾患には、キャッスルマン病およびシュニッツラー症候群がある。
【0065】
ALアミロイドーシス(原発性アミロイドーシス)
ALアミロイド沈着は一般に、形質細胞の悪性腫瘍(多発性骨髄腫)から良性単クローン性免疫グロブリン血症までの範囲にわたる、Bリンパ球系譜のほぼあらゆる異常に伴ってみられる。時には、アミロイド沈着物の存在が、基礎にある異常の主な指標となることもある。ALアミロイドーシスは、Current Drug Targets, 2004, 5159-171にも詳述されている。
【0066】
ALアミロイド沈着物の線維は、単クローン性免疫グロブリン軽鎖またはその断片から構成される。より詳細には、この断片は軽鎖(κまたはλ)のN末端領域に由来し、その可変(VL)ドメインの全体または一部を含む。沈着物は一般に間葉組織に生じ、末梢ニューロパチーおよび自律神経ニューロパチー、手根管症候群、巨舌症、拘束型心筋症、大関節の関節症、免疫障害、骨髄腫、さらには潜在性障害の原因となる。しかし、ほぼあらゆる組織、特に腎臓、肝臓、脾臓および心臓などの内臓が冒される可能性があることに注目すべきである。
【0067】
遺伝性全身性アミロイドーシス
遺伝性全身性アミロイドーシスには多くの形態がある。これらは比較的稀な病態であるが、症状が成人期に発症すること、およびその遺伝様式(通常、常染色体優性)が理由で、この種の障害は一般集団に存続している。一般に、これらの症候群は、変異型のアミロイド生成性ペプチドまたはタンパク質の生成をもたらす前駆体タンパク質における点変異に起因する。表1に、これらの障害の代表的な形態に関する線維組成をまとめた。
【0068】
(表1)代表的なアミロイド関連疾患の線維組成



データはTan SY, Pepys MB.「Amyloidosis」. Histopathology, 25(5), 403-414(Nov 1994)、WHO/IUIS Nomenclature Subcommittee,「Nomenclature of Amyloid and Amyloidosis」. Bulletin of the World Health Organisation 1993; 71:10508;およびMerlini et al., Clin Chem Lab Med 2001; 39(11):1065-75に由来する。
【0069】
表1に提示されたデータは代表的なものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。例えば、トランスチレチン遺伝子には40種を上回る別個の点変異が記載されており、これらはすべて臨床的に類似した形態の家族性アミロイド多発ニューロパチーを生じさせる。
【0070】
一般に、すべての遺伝性アミロイド障害は孤発性にも起こる可能性があり、遺伝型および孤発型の疾患はどちらもアミロイドに関しては同じ特徴を呈する。例えば、続発性AAアミロイドーシスの主要な形態のほとんどは、進行中の炎症などの結果として孤発性に起こり、家族性地中海熱との関連性はない。このため、以下の遺伝性アミロイド障害に関する一般的な考察は、孤発性アミロイドーシスに対しても当てはまる。
【0071】
トランスチレチン(TTR)は、14キロダルトンのタンパク質であり、プレアルブミンと呼ばれることもある。これは肝臓および脈絡叢によって産生され、甲状腺ホルモンおよびビタミンAの輸送に働く。それぞれ単一のアミノ酸変化を特徴とする少なくとも50種の変異型のタンパク質が、さまざまな形態の家族性アミロイド多発ニューロパチーの原因となる。例えば、55位のロイシンのプロリンへの置換は、特に進行性が高度な型のニューロパチーを引き起こす;111位のロイシンのメチオニンへの置換はデンマーク人患者で重症の心臓病を引き起こしていた。
【0072】
全身性アミロイドーシスの患者の心組織から単離されたアミロイド沈着物から、沈着物がTTRおよびその断片(ATTRと総称される)の異種混合物から構成されることが判明しており、その完全長配列は明らかにされている。当技術分野で公知の方法に従って、この種の斑からATTR線維成分を抽出し、その構造および配列を決定することが可能である(例えば、Gustavsson, A., et al., Laboratory Invest. 73: 703-708, 1995;Kametani, F., et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 125: 622-628, 1984;Pras, M., et al., PNAS 80: 539-42, 1983)。
【0073】
アポリポタンパク質A1分子に点変異(例えば、Gly→Arg26;Trp→Arg50;Leu→Arg60)を有する個人は、タンパク質アポリポタンパク質AIまたはその断片(AApoAI)の沈着物を特徴とするアミロイドーシスの一形態(「オステルターク型」)を示す。これらの患者は低比重リポタンパク質(HDL)のレベルが低く、末梢ニューロパチーまたは腎不全を呈する。
【0074】
酵素リゾチームのα鎖における変異(例えば、Ile→Thr56またはAsp→His57)は、英国の家系で報告されている別の形態のオステルターク型非ニューロパチー性遺伝性アミロイドの原因である。この場合には、変異型リゾチームタンパク質(Alys)の線維が沈着し、患者は一般に腎機能障害を呈する。このタンパク質は、本明細書に記載した線維形成性タンパク質の大部分とは異なり、通常は完全(非断片化)形態として存在する(Benson、M.D., et al. CIBA Fdn Symp. 199: 104-131, 1996)。
【0075】
免疫グロブリン軽鎖は種々の形態の凝集物を形成する傾向があり、これには線維性(例えば、ALアミロイドーシスおよびAHアミロイドーシス)、顆粒性(例えば、軽鎖沈着病(LCDD)、重鎖沈着病(HCDD)および軽鎖重鎖沈着病(LHCDD))、結晶性(例えば、後天性ファンコニ症候群)および微小管性(例えば、クリオグロブリン血症)が含まれる。ALおよびAHアミロイドーシスはそれぞれ、免疫グロブリン軽鎖および重鎖ならびに/またはその断片の不溶性線維の形成によって示される。AL線維では、λVI鎖(λ6鎖)などのラムダ(λ)鎖の濃度がカッパ(κ)鎖よりも高い。λIII鎖も幾分多い。Merlini et al., CLIN CHEM LAB MED 39(11): 1065-75 (2001)。重鎖アミロイドーシス(AH)は一般に、IgG1サブクラスのγ鎖アミロイドタンパク質の凝集物を特徴とする。Eulitz et al., PROC NATL ACAD SCI USA 87: 6542-46 (1990)。
【0076】
アミロイド形成性軽鎖とアミロイド非形成性軽鎖との比較により、前者はタンパク質のフォールディングを不安定化して凝集を促進するように思われる置換を含みうることが判明している。ALおよびLCDDは、抗体産生性B細胞の新生物性増殖によって生成される単クローン性軽鎖またはその断片の割合が比較的少ないことから、他のアミロイド病とは区別されている。AL凝集物は通常、λ鎖の高度に秩序立った線維である。LCDD凝集物はκ鎖およびλ鎖の双方を有する比較的無定形な凝集物であり、その大半はκであるが場合によってはκIVである。Bellotti et al., JOURNAL OF STRUCTURAL BIOLOGY 13: 280-89(2000)。AHアミロイドーシスを有する患者におけるアミロイド生成性重鎖とアミロイド非生成性重鎖との比較により、欠損および/または変化している成分が判明している。Eulitz et al., PROC NATL ACAD SCI USA 87: 6542-46 (1990)(アミロイド非生成性重鎖よりも分子量が有意に低いことを特徴とする病的重鎖);および、Solomon et al. AM J HEMAT 45(2)171-6(1994)(アミロイド非生成性重鎖のVH-D部分のみからなることを特徴とするアミロイド生成性重鎖)。
【0077】
したがって、AH、LCDD、ARなどを有する、またはそれらを有するリスクのある対象の検出および治療のモニタリングの方法として可能性のあるものには、アミロイド生成性軽鎖または重鎖、例えば、アミロイドλ、アミロイドκ、アミロイドκIV、アミロイドγまたはアミロイドγ1の存在または沈着抑制に関して、血漿または尿のイムノアッセイを行うことが非制限的に含まれる。
【0078】
脳アミロイドーシス
脳内で最も頻度の高い型のアミロイドは、孤発性(非遺伝性)アルツハイマー病に伴う痴呆を引き起こすAβペプチド線維から主に構成される。実際には、孤発性アルツハイマー病の発生率は、遺伝性であることが示された形態のものを大きく上回る。しかし、斑を形成する線維性ペプチドはいずれの型とも非常に類似している。脳アミロイドーシスには、その成分を含み、原因物質がアミロイドである、疾患、状態、病態、および脳の構造または機能のその他の異常が含まれる。アミロイド関連疾患において影響される脳の領域は、血管系を含む間質、機能的もしくは解剖学的な領域を含む実質、またはニューロンそれ自体のいずれのこともある。対象は必ずしも明確に認識されているアミロイド関連疾患の確定診断を受けていなくともよい。「アミロイド関連疾患」という用語には脳アミロイドーシスが含まれる。
【0079】
アミロイドβペプチド(「Aβ」)は、βアミロイド前駆体タンパク質(「βAPP」)として知られる大きなタンパク質からタンパク分解によって生じる、39〜43アミノ酸のペプチドである。βAPPにおける変異は、Aβ原線維および他の成分(以下でさらに詳細に説明する)から構成される斑の脳内沈着を特徴とする、家族型アルツハイマー病、ダウン症候群、脳アミロイドアンギオパチーおよび老年性痴呆を引き起こす。アルツハイマー病と関連性のあるAPPにおける既知の変異は、βセクレターゼまたはγセクレターゼの切断部位よりも近位、またはAβ内部に存在する。例えば、717位はAPPがAβへとプロセシングされるγセクレターゼ切断部位に対して近位にあり、670/671位はβセクレターゼ切断部位に対して近位にある。これらの残基のいずれかにおける変異はアルツハイマー病を引き起こす可能性があるが、これはおそらくAPPから生成される42/43アミノ酸型のAβの量の増加を引き起こすためと考えられる。家族型アルツハイマー病はこの疾患集団の中の10%に過ぎない。アルツハイマー病の発生例のほとんどは、APPおよびAβに変異のない孤発例である。種々の長さのAβペプチドの構造および配列は当技術分野で周知である。このようなペプチドは当技術分野で知られた方法に従って作製することができ、または既知の方法に従って脳から抽出することができる(例えば、Glenner and Wong, Biochem. Biophys. Res. Comm. 129, 885-90 (1984);Glenner and Wong, Biochem. Biophys. Res. Comm. 122, 1131-35 (1984))。さらに、種々の型のペプチドが市販されてもいる。APPはほとんどの細胞で発現され、恒常的に異化されている。その主な異化経路は、αセクレターゼと暫定的に呼ばれている酵素によるAβ配列内部でのAPPの切断であると思われ、これはAPPsαとして知られる可溶性細胞外ドメイン断片の遊離をもたらす。この切断によってAβの形成は防止される。この非アミロイド生成性経路とは異なり、APPはAβのN末端およびC末端でそれぞれβおよびγセクレターゼとして知られる酵素によっても切断可能であり、この場合はその後に細胞外空間にAβの遊離が起こる。現時点では、BACEがβセクレターゼとして同定されており(Vasser, et al, Science 286 735-741, 1999)、プレセニリンがγセクレターゼ活性と関連づけられている(De Strooper, et al., Nature 391, 387-90 (1998))。39〜43アミノ酸のAβペプチドが、酵素βおよびγセクレターゼによるアミロイド前駆体タンパク質(APP)の連続的タンパク分解切断によって生成される。生成される大多数の形態はAβ40であるが、全Aβの5〜7%はAβ42として存在する(Cappai et al., Int. J. Biochem. Cell Biol. 31. 885-89 (1999))。
【0080】
Aβペプチドの長さはその生化学的/生物物理学的特性を顕著に変化させるように思われる。具体的には、Aβ42のC末端に付加された2アミノ酸は疎水性が非常に高く、これはおそらくAβ42が凝集する性質を高めると考えられる。例えば、Jarrett, et al.は、Aβ42がインビトロでAβ40よりも極めて急速に凝集することを示しており、このことは長い方の型のAβがアルツハイマー病における神経突起斑の初期播種に関与する重要な病的タンパク質であることを示している(Jarrett, et al., Biochemistry 32, 4693-97 (1993);Jarrett, et al., Ann. N.Y. Acad. Sci. 695, 144-48 (1993))。この仮説は、遺伝性の家族型アルツハイマー病(「FAD」)の症例における特定の型のAβの寄与に関する最近の分析によってさらに裏づけられている。例えば、FADとの関連性がある「London」変異型APP(APPV717I)は、Aβ42/43型の産生をAβ40に比して選択的に増加させ(Suzuki, et al., Science 264, 1336-40 (1994))、一方、「Swedish」変異型APP(APPK670N/M671L)はAβ40およびAβ42/43の両方のレベルを高める(Citron, et al., Nature 360, 672-674 (1992);Cai, et al., Science 259, 514-16 (1993))。また、プレセニリン-1(「PS1」)遺伝子またはプレセニリン-2(「PS2」)遺伝子におけるFAD関連変異は、Aβ40ではなく、Aβ42/43産生を選択的に増加させると考えられることが観察されている(Borchelt, et al., Neuron 17, 1005-13 (1996))。この所見は、PS変異体を発現し、脳内Aβ42の選択的増加を示すトランスジェニックマウスモデルによって裏づけられた(Borchelt, op cit.;Duff, et al., Neurodegeneration 5(4), 293-98 (1996))。このように、アルツハイマー病の原因に関する有力な仮説は、Aβ42の生成および遊離の増加またはクリアランスの低下に起因する脳内Aβ42濃度の上昇が、疾患の病態における原因イベントであるというものである。
【0081】
AβまたはAPP遺伝子には複数の変異部位が同定されており、これらは痴呆または脳出血と臨床的な関連性がある。CAA障害の例には、アイスランド型のアミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(HCHWA-I);オランダ型のHCHWA(HCHWA-D;Aβにおける変異);Aβのフレミッシュ変異;Aβの北極地方(Arctic)変異;Aβのイタリア変異;Aβのアイオワ変異;家族性英国型痴呆(familial British dementia);および家族性デンマーク型痴呆(familial Danish dementia)が非制限的に含まれる。CAAが孤発性である場合もある。
【0082】
本明細書で用いる場合、「βアミロイド」「アミロイドβ」などの用語は、別に特記する場合をのぞき、アミロイドβタンパク質またはペプチド、アミロイドβ前駆体タンパク質またはペプチド、中間体、ならびにそれらの修飾物および断片のことを指す。詳細には、「Aβ」は、APP遺伝子産物のタンパク分解プロセスによって生成される任意のペプチド、特に、Aβ1-39、Aβ1-40、Aβ1-41、Aβ1-42およびAβ1-43を含む、アミロイド病態と関連性のあるペプチドのことを指す。命名の便宜上、「Aβ1-42」を、本明細書では「Aβ(1-42)」または単に「Aβ42」または「Aβ42」と称することがある(本明細書で考察する他の任意のアミロイドペプチドについても同様)。本明細書で用いる場合、「βアミロイド」「アミロイドβ」および「Aβ」は同義である。
【0083】
別に指定する場合を除き、「アミロイド」という用語は、アミロイド生成性のタンパク質、ペプチドまたはそれらの断片のことを指し、これらは可溶性(例えば、モノマー性またはオリゴマー性)であっても不溶性(例えば、線維性構造を有する、またはアミロイド斑の中にある)であってもよい。例えば、MP Lambert, et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 95, 6448-53 (1998)を参照されたい。「アミロイドーシス」または「アミロイド病」または「アミロイド関連疾患」とは、アミロイド線維の存在を特徴とする病的状態のことを指す。アミロイドとは、多数のさまざまな疾患で認められる、多様ではあるが特異な一群のタンパク質沈着物(細胞内または細胞外)を指す総称である。その出現様式は多様であるが、すべてのアミロイド沈着物は、特定の色素(例えば、コンゴーレッド)で染色されるという共通の形態学的特徴を有し、染色後に偏光下で特徴的な赤色-緑色の複屈折像を示す。また、それらは共通の超微細的特徴ならびに共通のX線回折スペクトルおよび赤外スペクトルも有する。
【0084】
ゲルゾリンは、断片およびアクチンフィラメントと結合するカルシウム結合性タンパク質である。このタンパク質の187位での変異(例えば、Asp→Asn;Asp→Tyr)は、フィンランド出身の患者、ならびにオランダ系または日本系の人々に通常認められる形態の遺伝性全身性アミロイドーシスを引き起こす。罹患した個体には、通常はアミノ酸173-243(68kDaカルボキシ末端断片)からなるゲルゾリン断片(Agel)から形成される線維が血管および基底膜に沈着し、角膜ジストロフィーおよび脳神経ニューロパチー(これは末梢ニューロパチーへと進行する)、ジストロフィー性皮膚変化および他の臓器における沈着を引き起こす(Kangas, H., et al. Human Mol. Genet. 5(9): 1237-1243, 1996)。
【0085】
変異型のフィブリノーゲンα鎖(AfibA)および変異型シスタチンC(Acys)などのその他の変異タンパク質も線維を形成し、特徴的な遺伝性障害を生じさせる。AfibA線維は、腎疾患を伴う非ニューロパチー性遺伝性アミロイドに特徴的な沈着物を形成する;Acys沈着物は、アイスランドで報告されている遺伝性脳アミロイドアンギオパチーに特徴的である(Isselbacher,「Harrison's Principles of Internal Medicine」、McGraw-Hill, San Francisco, 1995;Benson, et al)。少なくともいくつかの場合には、脳アミロイドアンギオパチー(CAA)の患者が、非変異型のシスタチンCを含むアミロイド線維をアミロイドβタンパク質とともに有することが示されている(Nagai, A., et al. Molec. Chem. Neuropathol. 33: 63-78, 1998)。
【0086】
ある種の形態のプリオン病は、以前は大多数が感染性であると考えられていたものの、現在では、遺伝性のものがあり、症例の15%を占めるとみなされている(Baldwin、et al.,「Research Advances in Alzheimer Disease and Related Disorders」中、John Wiley and Sons, New York, 1995)。遺伝性および孤発性のプリオン病では、患者には、正常プリオンタンパク質の異常アイソフォーム(PrPSC)から構成される斑が生じる。
【0087】
主要な変異型アイソフォームであるPrPSC(これはAScrとも呼ばれる)は、プロテアーゼ分解に対する抵抗性があり、界面活性剤による抽出で溶解されず、二次リソソーム中に沈着し、翻訳後合成され、βプリーツシート含量が高い点で、正常な細胞タンパク質とは異なる。クロイツフェルト-ヤコブ病(CJD)、ゲルストマン-シュトロイスラー-シャインカー症候群(GSS)および致死性家族性不眠症(FFI)を引き起こす少なくとも5種類の変異に関しては遺伝的連鎖が確かめられている(Baldwin、前記)。スクレイピー線維からの線維性ペプチドの抽出、配列の決定およびこの種のペプチドの作製のための方法は当技術分野で公知である(例えば、Beekes, M., et al. J. Gen. Virol. 76: 2567-76, 1995)。
【0088】
例えば、GSSの一つの形態はコドン102でのPrP変異と連鎖し、一方、終脳GSSはコドン117での変異とともに分離される。コドン198および217での変異は、Aβペプチドの代わりにPrPを含む、アルツハイマー病に特徴的な神経突起斑がみられるGSSの一形態を引き起こす。ある種の形態の家族性CJDはコドン200および210での変異と関連づけられている;コドン129および178での変異は家族性CJDおよびFFIの両方で見いだされている(Baldwin、前記)。
【0089】
脳性アミロイドーシス
アミロイドの局所沈着は脳にはよくみられ、特に高齢者ではそうである。脳で最も頻度の高い型のアミロイドは、痴呆または孤発性(非遺伝性)アルツハイマー病を引き起こすAβペプチド線維から主に構成される。脳性アミロイドーシスのうち最も発生頻度が高いのは孤発性であり、家族性ではない。例えば、孤発性アルツハイマー病および孤発性CAAの発生率は家族性ADおよびCAAの発生率を大きく上回る。さらに、孤発性および家族性の疾患を互いに区別することはできない(それらは遺伝性の遺伝子変異の有無の点のみが異なる);例えば、孤発性および家族性ADの臨床症状およびそれらにおいて形成されるアミロイド斑は、全く同一ではないにしても、極めて類似している。
【0090】
脳アミロイドアンギオパチー(CAA)とは、脳軟膜動脈および皮質動脈、細動脈ならびに毛細血管および静脈の壁における、アミロイド原線維の特異的沈着のことを指す。これはアルツハイマー病、ダウン症候群および正常老化のほか、脳卒中または痴呆と関係のある種々の家族性疾患に高頻度に伴ってみられる(Frangione, et al., Amyloid: J. Protein Folding Disord. 8, Suppl. 1, 36-42 (2001))。CAAは孤発性に起こる場合も遺伝性の場合もある。
【0091】
老年性全身性アミロイドーシス
アミロイド沈着は、全身性にせよ限局性にせよ、年齢とともに増加する。例えば、野生型トランスチレチン(TTR)の線維は、高齢者の心組織中に一般的に認められる。これらは無症候性で臨床的に変化がみられないこともあれば、心不全を引き起こすこともある。無症候性の線維性限局性沈着物は、脳(Aβ)、前立腺デンプン様小体(β2ミクログロブリン)、関節および精嚢にも存在する。
【0092】
透析関連アミロイドーシス(DRA)
長期的な血液透析または腹膜透析を受けている患者では、β2ミクログロブリン(β2M)線維から構成される斑が高頻度に生じる。β2ミクログロブリンは、11.8キロダルトンのポリペプチドであり、これはすべての有核細胞に存在するクラスI MHC抗原の軽鎖である。正常な環境ではβ2Mは通常、細胞外間隙に分布しているが、腎機能障害がある場合には、β2Mは組織中に輸送されてそこで重合化してアミロイド線維を形成する。腎機能障害の場合のようなクリアランスの不全は、手根管および他の部位(主として関節のコラーゲンに富む組織)における沈着をもたらす。他の線維性タンパク質とは異なり、β2M分子はより長い前駆体タンパク質の切断によって生じるのではなく、線維状の非断片化形態として一般に存在する(Benson、前記)。このアミロイド前駆体の保持および蓄積は、DRAの基礎を成す主な病的過程であることが示されている。DRAは末梢関節骨関節症(例えば、関節硬直、疼痛、腫脹など)を特徴とする。組織中のβ2Mのアイソフォーム、糖化β2Mまたはβ2M重合体は非常にアミロイド生成性の高い形態である(元のβ2Mとは対照的に)。他の型のアミロイドーシスとは異なり、β2Mのほとんどは骨関節部位に限局している。内臓沈着は稀である。時に、これらの沈着物が血管および他の重要な解剖学的部位に影響することもある。
【0093】
β2Mの除去に関する透析方法の改良にもかかわらず、患者の大半では血漿中β2M濃度が正常よりも著しく高いままである。これらの高いβ2M濃度は一般に、糖尿病関連アミロイドーシス(DRA)、および死亡の原因となる合併症を招く。
【0094】
膵島アミロイドポリペプチドおよび糖尿病
膵島ヒアリン症(アミロイド沈着)は、重症高血糖の患者の膵臓中の線維性タンパク質凝集物として一世紀前に最初に記載された(Opie、EL., J Exp. Med. 5: 397-428, 1901)。今日では、膵島アミロイドポリペプチド(IAPP)またはアミリンから大部分が構成される膵島アミロイドは、II型糖尿病(インスリン非依存性糖尿病またはNIDDMとしても知られる)の全症例の90%超にみられる特徴的な組織病理学的標識となっている。これらの線維性蓄積物は、プロIAPPと呼ばれるより大きな前駆体ペプチドに由来する37アミノ酸のペプチドである膵島アミロイドポリペプチド(IAPP)またはアミリンの凝集に起因する。
【0095】
IAPPはβ細胞分泌刺激物質に対する応答としてインスリンとともに分泌される。この病的特徴はインスリン依存性(I型)糖尿病にはみられず、NIDDM(II型糖尿病)と診断される多様な臨床的表現型に一致する特徴である。
【0096】
ネコにおける縦断的研究およびサルでの免疫細胞化学的検討により、膵島アミロイドの累進的な増加は、インスリン分泌性β細胞集団の劇的な減少および疾患の重症度の増加と関連があることが示されている。さらに最近では、トランスジェニック研究により、IAPP斑の形成とβ細胞のアポトーシスおよび機能障害との間の関連が強く裏づけられ、このことからアミロイド沈着がII型糖尿病の重症度を増大させる主要な因子であることが示されている。
【0097】
IAPPはインビトロでもβ膵島細胞毒性を誘導することが示されており、このことは、II型またはI型の糖尿病患者(膵島移植後)の膵臓におけるIAPP線維がβ細胞島(ランゲルハンス)の減少および臓器機能障害の一因となりうることを示している。II型糖尿病の患者において、膵臓IAPPの蓄積はオリゴマー性IAPPの蓄積を招き、IAPPアミロイドの不溶性線維性沈着物としての付着を招いて、これが最終的には膵島のインスリン産生性β細胞を破壊し、β細胞の枯渇および不全をもたらす(Westermark, P., Grimelius, L., Acta Path. Microbiol. Scand., sect. A. 81: 291-300, 1973;de Koning, EJP., et al., Diabetologia 36: 378-384, 1993;およびLorenzo, A., et al., Nature 368: 756-760, 1994)。線維性沈着物としてのIAPPの蓄積は、血漿中に通常認められるプロ-IAPPとIAPPとの比に対しても、IAPPを沈着物中に捕捉することによってこの比を上昇させることにより、影響を及ぼしうる。β細胞量の減少は高血糖およびインスリン血症として発現しうる。このβ細胞量の減少のためにインスリン療法が必要になる可能性がある。
【0098】
特定の1つまたは複数の種類の細胞の死滅または機能異常によって引き起こされる疾患は、当該種類の細胞の健常細胞を患者に移植することによって治療することができる。このアプローチはI型糖尿病患者に対して用いられている。移植の前にドナー由来の膵島細胞を、単離処置から回復させるため、またはその免疫原性を低下させるためにインビトロで培養することが多い。しかし、多くの場合には、膵島細胞移植は、移植細胞の死滅のせいで成功には至らない。このように成功率が低いことの一つの理由は、毒性オリゴマーへと組織化されるIAPPにある。毒性作用は線維オリゴマーの細胞内および細胞外への蓄積に起因する可能性がある。IAPPオリゴマーはインビトロで線維を形成して細胞に対する毒性を獲得しうる。さらに、IAPP線維は細胞が移植された後も増殖し続けて、細胞の死滅または機能障害の原因となる可能性が高い。これは、細胞が健常ドナーに由来し、しかも移植を受ける患者が線維の存在を特徴とする疾患を有していなくても起こる恐れがある。例えば、本発明の化合物を、国際特許出願(PCT)WO 01/003680号に記載された方法に従った移植のための組織または細胞を調製するために用いてもよい。
【0099】
本発明の化合物を、プロ-IAPP/IAPP、プロ-インスリン/インスリンの濃度比およびC-ペプチドレベルを安定化するために用いることもできる。さらに、有効な生物マーカーとして、アルギニン-インスリン分泌検査、耐糖能検査、インスリン耐性および感受性検査などの種々の検査の結果はいずれも、β細胞量の減少/アミロイド沈着物の沈着に関するマーカーとして用いることができる。このような種類の薬剤を、インスリン抵抗性、肝グルコース産生およびインスリン分泌を標的とする他の薬剤とともに用いることも可能と考えられる。このような化合物は、β細胞機能を保たせることによってインスリン療法を阻止しうる可能性があり、移植膵島を保たせるために利用しうる可能がある。
【0100】
ホルモン由来アミロイドーシス
内分泌器官にアミロイド沈着物が付く可能性もあり、これは特に高齢者でそうである。ホルモン分泌性腫瘍がホルモン由来アミロイド斑を含むこともあり、その線維はカルシトニン(甲状腺髄様癌)および心房性ナトリウム利尿ペプチド(孤立性心房アミロイドーシス)などのポリペプチドホルモンから構成される。これらのタンパク質の配列および構造は当技術分野で周知である。
【0101】
種々のアミロイドーシス
アミロイドの局所性沈着物として通常呈する発現される他の形態のアミロイド病にはさまざまなものがある。一般に、これらの疾患はおそらく、特定の線維前駆体の局所性産生もしくは異化の欠如、特定の組織(関節など)の線維沈着に関する素因の結果であると考えられる。このような特発性沈着の例には、結節性ALアミロイド、皮膚アミロイド、内分泌アミロイドおよび腫瘍関連アミロイドが含まれる。その他のアミロイド関連疾患には、表1に記載されたもの、例えば、家族性アミロイド多発ニューロパチー(FAP)、老年性全身性アミロイドーシス、腱鞘炎(Tenosynovium)、家族性アミロイドーシス、オステルターク型非ニューロパチー性アミロイドーシス、脳神経ニューロパチー、遺伝性脳出血、家族性痴呆、慢性透析、家族性クロイツフェルト-ヤコブ病;ゲルストマン-シュトロイスラー-シャインカー症候群、遺伝性海綿状脳症、プリオン病、家族性地中海熱、マックル-ウェルズ症候群、腎症、難聴、蕁麻疹、肢痛、心筋症、皮膚沈着物、多発性骨髄腫、良性単クローン性免疫グロブリン血症、マクログロブリン血症(maccoglobulinaemia)、骨髄腫関連アミロイドーシス、甲状腺髄様癌、孤立性心房アミロイドおよび糖尿病が含まれる。
【0102】
本発明の化合物は、臨床状況にかかわらず、アミロイド線維の形成、凝集または沈着を伴う疾患を治療するために治療的または予防的に投与することができる。本発明の化合物は、以下の機構のいずれかを利用して、アミロイド関連疾患の経過を改善させるように作用することができる(このリストは例示を意図しており、限定的ではない):アミロイド線維の形成もしくは沈着の速度を低下させる;アミロイド沈着の程度を軽減する;アミロイド線維形成を抑制、軽減もしくは防止する;アミロイドにより誘導される炎症を抑制する;アミロイドのクリアランス、例えば脳からのクリアランスを増大させる;またはアミロイド(オリゴマーまたは線維)により誘導される毒性から細胞を保護する。
【0103】
1つの態様において、本発明の化合物/製剤は、アミロイドβ線維の形成、凝集または沈着を伴う疾患を治療するために治療的または予防的に投与することができる。本発明の化合物は、以下の機構のいずれかを利用して、アミロイドβ関連疾患の経過を改善させるように作用しうる(このリストは例示を意図しており、限定的ではない):アミロイドβ線維の形成もしくは沈着の速度を低下させる;アミロイドβ沈着の程度を軽減する;アミロイドβ原線維形成を抑制、軽減もしくは防止する;アミロイドβにより誘導される神経変性もしくは細胞毒性を抑制する;アミロイドβにより誘導される炎症を抑制する;または脳からのアミロイドβのクリアランスを増大させる;またはAβの異化を促す。
【0104】
本発明の化合物は、脳内に入った後(血液脳関門の通過後)に、または末梢から、アミロイドβ沈着を抑制するのに有効であってよい。末梢から作用する場合には、化合物は、脳からのAβの排出が促されるように、脳と血漿との間のAβの平衡を変化させてもよい。脳からのAβの排出の増加はAβの脳内濃度の低下をもたらし、それ故にAβ沈着の減少を促すと考えられる。または、脳に浸透する化合物は、脳Aβに対して直接作用することにより、例えばそれを非線維性形態に保つこと、または脳からのその排出を促すことにより、沈着を抑制しうると考えられる。化合物が、APPプロセシングを緩徐化する;マクロファージもしくは神経細胞によるAβ線維の分解を増加させる;または活性化ミクログリアによるAβ産生を減少させてもよい。これらの薬剤がまた、脳内のAβが細胞表面と相互作用することを防ぎ、それによって神経毒性、神経変性または炎症を防止しうることも考えられる。
【0105】
好ましい態様において、本方法は、アルツハイマー病(例えば、孤発性または家族性AD)を治療するために用いられる。また、本方法を、ダウン症候群の個体、および脳アミロイドアンギオパチー(「CAA」)、遺伝性脳出血または早期アルツハイマー病の患者などにおける、アミロイドβ沈着のその他の臨床的発現を予防的または治療的に治療するために用いることもできる。
【0106】
もう1つの態様において、本方法は、軽度認知障害を治療するために用いられる。軽度認知障害(「MCI」)は、思考能力に軽度ではあるが計測可能な障害のある状態を特徴とする状態であるが、必ずしも痴呆の存在を伴うわけではない。MCIは高い頻度で(必ずとは言えないが)アルツハイマー病に先立って生じる。
【0107】
さらに、筋線維におけるAPPおよびアミロイドβタンパク質の異常な蓄積は、孤発性封入体筋炎(「IBM」)の病態と関連づけられている(Askanas, V. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93, 1314-1319 (1996);Askanas, V. et al., Current Opinion in Rheumatology 7:486-496 (1995))。したがって、本発明の化合物は、アミロイドβタンパク質が非神経性の位置に異常に沈着している障害の治療に、例えば筋線維への化合物の送達によるIBMの治療などに、予防的または治療的に用いることができる。
【0108】
さらに、Aβは、加齢性黄斑変性症(ARMD)の個体で網膜色素上皮の基底面に沿って蓄積する、ドルーゼンとして知られる異常な細胞外沈着物とも関連性があることが示されている。ARMDは高齢者における非可逆的な失明の原因の1つである。Aβ沈着は、網膜色素上皮の萎縮、ドルーゼンの生成およびARMDの発生の原因となる局所炎症イベントの重要な要素である可能性があると考えられている(Johnson, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99(18), 11830-5 (2002))。
【0109】
もう1つの態様において、本発明は、対象(好ましくはヒト)におけるアミロイド関連疾患の治療または予防の方法であって、以下の式による、または本明細書に別に記載された化合物の治療量を、アミロイド線維の形成もしくは沈着、神経変性または細胞毒性が軽減または抑制されるように、対象に投与することを含む方法にも関する。もう1つの態様において、本発明は、対象(好ましくはヒト)におけるアミロイド関連疾患の治療または予防の方法であって、以下の式による、または本明細書に別に記載された化合物の治療量を、脳性アミロイドーシス、例えば、アルツハイマー病、ダウン症候群または脳アミロイドアンギオパチーの患者における認知機能が改善もしくは安定化される、または認知機能のさらなる低下が防止、緩徐化もしくは阻止されるように、対象に投与する方法に関する。これらの化合物は、これらの対象における日常生活の質を向上させることもできる。
【0110】
本発明の治療化合物は、例えば、血糖症を安定化すること、β細胞量の減少を防止または軽減すること、β細胞量の減少に起因する高血糖を軽減または防止すること、およびインスリン産生を調節すること(例えば、増加させることまたは安定化すること)により、II型糖尿病に関連したアミロイドーシスを治療することもできる。本発明の化合物が、プロ-IAPP/IAPPの濃度比を安定化してもよい。
【0111】
本発明の治療化合物は、腎機能を安定化すること、タンパク質尿を減少させること、クレアチニンクリアランスを増加させること(例えば、少なくとも50%またはそれ以上、または少なくとも100%またはそれ以上)、または慢性下痢の緩解もしくは体重増加(例えば、10%またはそれ以上)を導くことにより、AA(続発性)アミロイドーシスおよび/またはAL(原発性)アミロイドーシスを治療することもできる。
【0112】
II.本発明の方法
一つの態様において、本発明には、アミロイド沈着が阻害されるように、本明細書に記述の治療化合物を含む治療製剤の有効量を対象に投与する段階を含む、対象におけるアミロイド沈着物を阻害する方法が含まれる。したがって、もう一つの態様において、本発明は、本発明の治療化合物を含む治療製剤の治療量を対象に投与する段階を含む、対象におけるアミロイド関連疾患、例えばAβ関連疾患を治療または予防する方法に関する。
【0113】
本発明の製剤は、アミロイドβ原線維の形成、凝集、または沈着に関連した疾患を治療するために治療的または予防的に投与してもよい。本発明の製剤は、以下の任意のメカニズム(この一覧は説明的であって制限的であることを意味しない)を用いてアミロイドβ関連疾患の経過を改善するように作用する可能性がある:アミロイドβ原線維の形成もしくは沈着の速度を遅らせる;アミロイドβ沈着の程度を減少させる;アミロイドβ原線維の形成を阻害、減少、もしくは予防する;アミロイドβによって誘発された神経変性もしくは細胞毒性を阻害する;アミロイドβによる炎症を阻害する;または脳からのアミロイドβの消失を増強する。
【0114】
本発明の組成物は、脳への(血液脳関門の貫通後)または末梢からの流入後のアミロイドβの沈着を制御するために有効である可能性がある。理論に拘束されることなく、末梢から作用する場合、本発明の製剤の化合物は、脳からのAβの流出にとって都合がよいように、脳と血漿とのあいだのAβの平衡を変化させる可能性がある。脳からのAβの流出が増加すれば、Aβの脳内濃度の減少が起こり、したがってAβ沈着の減少にとって都合がよいであろう。または、脳に浸透する本発明の製剤の化合物は、脳のAβに直接作用することによって、例えばそれを非原線維型に維持することによって、脳からのその流出にとって有利となるように、またはAβの有害な作用から脳細胞を保護することによって、沈着を制御することができるであろう。もう一つの態様において、化合物はまた、その可溶性のオリゴマー型、またはその原線維型のアミロイドタンパク質が、細胞表面に結合または接着することを防止して、細胞の損傷または毒性を引き起こすことを防止する可能性がある。
【0115】
特定の態様において、方法は、アルツハイマー病(例えば、散発性または家族性AD)を治療するために用いられる。方法はまた、ダウン症候群の人、および脳アミロイド血管障害(「CAA」)、または遺伝性脳出血を有する患者において、アミロイドβ沈着の他の臨床での発生を治療するために、予防的または治療的に用いることができる。
【0116】
特定の態様において、本発明の治療製剤は、アミロイド原性タンパク質と基底膜の構成成分、例えば糖タンパク質またはプロテオグリカンとの相互作用を阻害して、このようにアミロイド沈着を阻害することができる。本発明の治療化合物が、アミロイド原性タンパク質と、基底膜の糖タンパク質またはプロテオグリカン構成成分との相互作用を阻害できるか否かは、本明細書(実施例5)に記述の、またはその全内容物が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,164,295号に記述される質量分析アッセイのようなインビトロ結合アッセイによって評価することができる。
【0117】
本発明は、置換または非置換芳香族または脂肪族分子に共有結合した少なくとも一つのスルホネート基を含む治療化合物を含む、本明細書に記述の治療製剤の有効量を対象に投与する段階を含む、対象におけるアミロイド沈着を阻害する方法に関する。
【0118】
もう一つの態様において、本発明には、本明細書に記述の治療化合物を含む治療製剤を投与する段階を含む、グリコサミノグリカンに対するケモカインの結合を阻害する方法が含まれる。
【0119】
さらにもう一つの態様において、本発明は、本明細書に記述の治療化合物を含む治療製剤をヒトに投与する段階を含む、ヒトにおける細菌とグリコサミノグリカンとの相互作用を調節する方法に関する。したがって、本発明はまた、本発明の治療化合物を含む治療製剤をヒトに投与する段階を含む、ヒトにおける細菌感染症を治療する方法にも関する。特定の態様において、本発明は、本明細書に記述の治療化合物を含む治療製剤を対象に投与する段階を含む、クラミジア(Chlamydia)に罹患した対象を治療する方法である。
【0120】
さらなる態様において、本発明には、本明細書に記載の治療化合物を含む治療製剤を対象に投与する段階を含む、対象におけるウイルスとグリコサミノグリカンとの相互作用を調節する方法が含まれる。より一般的に、本発明のもう一つの態様は、本発明の治療化合物を含む治療製剤を対象に投与する段階を含む、対象におけるウイルス感染症を治療する方法である。特定の態様において、本発明は、本明細書に記述の治療化合物を含む治療製剤を対象に投与する段階を含む、HSVに罹患した対象を治療する方法である。
【0121】
さらに、本発明の一つの態様は、アミロイド沈着が対象において減少するように、本明細書に記述の治療化合物を含む治療製剤の有効量を対象に投与する段階を含む、アミロイド沈着を有する対象におけるアミロイド沈着を減少させる方法である。
【0122】
本発明のもう一つの態様は、本発明の治療化合物を含む治療製剤を対象に投与する段階を含む、対象における脳アミロイド血管障害を予防、治療、または阻害する方法に関する。さらに、本発明には、脳アミロイド血管障害が予防、治療、または阻害されるように、本発明の治療化合物を含む治療製剤を血管壁細胞に接触させる段階を含む、脳アミロイド血管障害を予防、治療、または阻害する方法が含まれる。さらに、本発明には、脳アミロイド血管障害が予防、治療、または阻害されるように、本発明の治療製剤の治療化合物を血管壁細胞に接触させる段階を含む、脳アミロイド血管障害を予防、治療、または阻害する方法が含まれる。
【0123】
「アミロイド沈着の阻害」という用語には、アミロイド形成、例えば原線維形成を減少、予防、または停止させること、アミロイドーシスを有する対象、例えばアミロイド沈着を既に有する対象におけるさらなるアミロイド沈着を阻害または遅らせること、および進行中のアミロイドーシスを有する対象におけるアミロイド原線維形成または沈着を減少または逆転させることが含まれる。例えば、アミロイド沈着の阻害の程度は、範囲として本出願によって企図され、それには、例えばアミロイド沈着の実質的に完全な消失またはアミロイド沈着の減少が含まれうる。アミロイド沈着の阻害は、無処置対象、治療される対象の治療前と比較して決定されるか、または例えば糖尿病患者では膵機能の臨床的に測定可能な改善、または脳アミロイドーシス患者、例えばアルツハイマー病もしくは脳アミロイド血管障害患者の場合には、認知機能の安定化、認知機能のさらなる減少の予防(すなわち疾患進行の予防、遅延、または停止)、またはCSFにおけるAβまたはタウ濃度のようなパラメータの改善によって決定される。特定の態様において、アミロイド沈着は、例えばアミロイド原性タンパク質と基底膜の構成成分との相互作用を阻害すること、脳からアミロイドβの消失を増強する、アミロイドによって(例えば、本明細書に記述される、可溶性または不溶性アミロイド、例えばアミロイド原線維によって、アミロイド沈着および/またはアミロイドβによって)誘発される神経変性もしくは細胞毒性を阻害する、または脳細胞をAβの有害な作用から保護することによって、阻害してもよい。
【0124】
「基底膜」という用語は、糖タンパク質、ならびにラミニン、IV型コラーゲン、フィブロネクチン、アグリン、パーレカン、およびヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)を含むプロテオグリカンを含む細胞外マトリクスを指す。一つの態様において、アミロイド沈着は、アミロイド原性タンパク質と、HSPGのような硫酸化グリコサミノグリカンとの相互作用を妨害することによって阻害される。硫酸化グリコサミノグリカンは全てのタイプのアミロイドに存在することがわかっており(Snow, A.D.ら、Lab. Invest. 56:120〜123(1987)を参照されたい)、アミロイド沈着およびHSPG沈着は、アミロイドーシスの動物モデルにおいて同時に発生する(Snow, A.D.ら、Lab. Invest. 56:665〜675(1987)を参照されたい)。
【0125】
本明細書で用いる場合、対象の「治療(treatment)」には、疾患しくは状態を、疾患もしくは状態の症状を、または疾患もしくは状態に対するリスク(もしくは易罹病性)を、治癒させる、治す、緩和する、軽減する、変化させる、矯正する、回復させる、改善する、または影響を及ぼすことを目的とした、アミロイド関連性の疾患もしくは状態を有する、このような疾患もしくは状態の症状を有する、またはこのような疾患もしくは状態に対するリスクがある(もしくは易罹病性がある)対象に対する、本発明の組成物の適用もしくは投与、またはこのような対象からの細胞もしくは組織に対する、本発明の組成物の適用もしくは投与が含まれる。「治療すること(treating)」という用語は、損傷、病態または状態の治療または改善における成功の任意の表示のことを指し、これには以下のような任意の客観的なまたは主観的なパラメーターが含まれる:寛解;緩解;症状の軽減、または損傷、病態もしくは状態を対象にとってより忍容しうるものにすること;変性もしくは退行の速度を緩徐にすること;変性の最終点での廃疾の度合いを軽減すること;対象の身体的もしくは精神的な満足度を向上させること;または、状況によっては、痴呆の発症を防止すること。症状の治療または改善は、客観的または主観的なパラメーターに基づくことができる;これには身体診察または精神医学的評価、またはCDR、MMSE、ADAS-Cogまたは当技術分野で既知の他の検査の結果も含まれる。例えば、本発明の方法は、認知機能低下の速度を遅らせるまたは程度を低くすることによって対象の痴呆を首尾よく治療する。
【0126】
1つの態様において、「治療すること」という用語は、対象のCDR評点をそのベースライン評点または0に維持することを含む。もう1つの態様において、治療することという用語は、対象のCDR評点を約0.25もしくはそれ以上、約0.5もしくはそれ以上、約1.0もしくはそれ以上、約1.5もしくはそれ以上、約2.0もしくはそれ以上、約2.5もしくはそれ以上、または約3.0もしくはそれ以上減少させることを含む。もう1つの態様において、「治療すること」という用語は、対象のCDR評点の増加速度を過去の対照に比して低下させることも含む。もう1つの態様において、この用語は、対象のCDR評点の増加速度を、過去の対照または未治療対照の増加の、約5%もしくはそれ以上、約10%もしくはそれ以上、約20%もしくはそれ以上、約25%もしくはそれ以上、約30%もしくはそれ以上、約40%もしくはそれ以上、約50%もしくはそれ以上、約60%もしくはそれ以上、約70%もしくはそれ以上、約80%もしくはそれ以上、約90%もしくはそれ以上、または約100%、低下させることを含む。
【0127】
もう1つの態様において、「治療すること」という用語は、MMSEでの対象のスコアを維持することも含む。「治療すること」という用語は、対象のMMSEスコアを約1、約2、約3、約4、約5、約7.5、約10、約12.5、約15、約17.5、約20または約25ポイント増加させることを含む。この用語はまた、対象のMMSEスコアの減少速度を過去の対照に比して低下させることも含む。もう1つの態様において、この用語は、対象のMMSEスコアの減少速度を、過去の対照または未治療対照の減少の、約5%もしくはそれ未満、約10%もしくはそれ未満、約20%もしくはそれ未満、約25%もしくはそれ未満、約30%もしくはそれ未満、約40%もしくはそれ未満、約50%もしくはそれ未満、約60%もしくはそれ未満、約70%もしくはそれ未満、約80%もしくはそれ未満、約90%もしくはそれ未満、または約100%もしくはそれ未満、低下させることを含む。
【0128】
さらにもう1つの態様において、「治療すること」という用語は、ADAS-Cogでの対象のスコアを維持することを含む。「治療すること」という用語は、対象のADAS-Cogスコアを、約1ポイントもしくはそれ以上、約2ポイントもしくはそれ以上、約3ポイントもしくはそれ以上、約4ポイントもしくはそれ以上、約5ポイントもしくはそれ以上、約7.5ポイントもしくはそれ以上、約10ポイントもしくはそれ以上、約12.5ポイントもしくはそれ以上、約15ポイントもしくはそれ以上、約17.5ポイントもしくはそれ以上、約20ポイントもしくはそれ以上、または約25ポイントもしくはそれ以上、減少させることを含む。この用語はまた、対象のADAS-Cogスコアの増加速度を過去の対照に比して低下させることも含む。もう1つの態様において、この用語は、対象のADAS-Cogスコアの増加速度を、過去の対照または未治療対照の増加の、約5%もしくはそれ以上、約10%もしくはそれ以上、約20%もしくはそれ以上、約25%もしくはそれ以上、約30%もしくはそれ以上、約40%もしくはそれ以上、約50%もしくはそれ以上、約60%もしくはそれ以上、約70%もしくはそれ以上、約80%もしくはそれ以上、約90%もしくはそれ以上、または約100%、低下させることを含む。
【0129】
もう1つの態様において、例えばAAまたはALアミロイドーシスに関して、「治療すること」という用語は、血清クレアチニンの増加、例えば、クレアチニンクリアランスの10%もしくはそれ以上、20%もしくはそれ以上、50%もしくはそれ以上、80%もしくはそれ以上、90%もしくはそれ以上、100%もしくはそれ以上、150%もしくはそれ以上、200%もしくはそれ以上の増加を含む。「治療すること」という用語はまた、ネフローゼ症候群(NS)の緩解も含みうる。これはまた、慢性下痢の緩解、および/または、例えば、10%もしくはそれ以上、15%もしくはそれ以上、または20%もしくはそれ以上の体重増加も含みうる。
【0130】
理論に拘束されることは望んでいないが、いくつかの面において、本発明の薬学的組成物は、脳もしくは関心対象の他の臓器において(局所的に作用する)、または全身を通じて(全身性に作用する)、アミロイド線維の形成を防止または抑制する、化合物を含む。本発明の薬学的組成物は、脳内に入った後(血液脳関門の通過後)に、または末梢から、アミロイド沈着を抑制するのに有効であってよい。末梢から作用する場合、薬学的組成物の化合物は、脳からのアミロイド生成性ペプチドの排出を促すために脳と血漿との間のアミロイド生成性ペプチドの平衡を変化させてもよい。これが、アミロイドタンパク質(可溶性)のクリアランス(または異化)を促して、特定の臓器、例えば、肝臓、脾臓、膵臓、腎臓、関節、脳などにおけるアミロイドタンパク質プールの減少によってアミロイド線維の形成および沈着を防止してもよい。脳からのアミロイド生成性ペプチドの排出の増加はアミロイド生成性ペプチドの脳内濃度の低下をもたらし、それ故にアミロイド生成性ペプチドの沈着の減少を促すと考えられる。特に、薬剤が、アミロイドβペプチド、例えばAβ40およびAβ42の両者のCSFおよび血漿中でのレベルを低下させてもよく、または薬剤が、アミロイドβペプチド、例えばAβ40およびAβ42のCSF中のレベルを低下させ、血漿中のそれを上昇させてもよい。または、脳へと浸透する化合物は、脳のアミロイド生成性ペプチドに対して直接作用することにより、例えばそれを非線維性形態に保つこと、脳からのそのクリアランスを促すこと、または脳内でのその分解を増加させること、または脳細胞をアミロイド生成性ペプチドの有害な影響から保護することにより、沈着を抑制しうる可能性がある。薬剤がまた、アミロイドタンパク質の濃度の低下(すなわち、特定の臓器における濃度。それによってアミロイド線維の形成または沈着を誘発するのに必要な決定的濃度に達しないように)を引き起こすこともできる。さらに、本明細書に記載した化合物は、アミロイドと細胞表面成分、例えば基底膜のグリコサミノグリカン成分またはプロテオグリカン成分との間の相互作用を阻害または低下させることができる。例えば、化合物が、細胞障害性または毒性を引き起こすことが知られているプロセスであるアミロイドペプチドの細胞表面との結合または付着を防止してもよい。同様に、化合物が、アミロイドにより誘導される細胞毒性もしくはミクログリア活性化またはアミロイドにより誘導される神経毒性を阻止するか、またはアミロイドにより誘導される炎症を抑制してもよい。化合物がまた、アミロイド凝集、線維形成もしくは沈着の速度もしくは量を低下させてもよく、または化合物がアミロイド沈着の程度を軽減してもよい。このような情報がなくても本発明を実施しうる限り、以上の作用機構は本発明を限定するものとみなされるべきではない。
【0131】
「有意に」または「有意な」という用語は、識別された特性の顕著もしくは測定可能な量もしくは増加で起こる変化、またはそのような変化が顕著で、測定可能な、もしくは許容されない影響、例えば有害な影響を有する場合を説明する。そのため、「消化管の不耐性を有意に減少または予防する」という用語には、すなわち減少または予防が顕著または測定可能でない状況とは逆に、消化管の不耐性を顕著または測定可能に減少または予防することが含まれる。例えば、経時的に追跡した悪心、嘔吐、および消化管関連疼痛または刺激感を、消化管の不耐性の減少または予防に及ぼす本発明の治療製剤の影響の測定値として用いてもよい。さらに、「治療製剤の能力に有意に影響を及ぼさない」という用語は、治療製剤の能力に影響を及ぼすが、代償が利益を上回る程度まで許容されないように能力に影響を及ぼさず、したがって治療製剤の能力に「有意に影響を及ぼす」ことはない項目の説明である。
【0132】
「アミロイド沈着」の調節には、上記のように、アミロイド沈着または原線維形成の阻害と増強の双方が含まれる。したがって、「調節する」という用語は、1)アミロイド形成または蓄積の防止または停止、アミロイドーシスが進行中の、例えばアミロイド凝集物を既に有する対象におけるさらなるアミロイド凝集の阻害または遅延、およびアミロイドーシスが進行中の対象におけるアミロイド凝集の減少または逆転、ならびに2)アミロイド蓄積の増強、例えばインビボまたはインビトロでのアミロイド沈着の速度または量の増加、を含むと意図される。アミロイド増強化合物は、例えば、動物において短期間でアミロイド沈着の発達を可能にする、または選択された期間でアミロイド沈着を増加させるために、動物アミロイドーシスモデルにおいて有用である可能性がある。アミロイド増強化合物は、インビボで、例えばアミロイドーシスの動物モデル、細胞アッセイ、およびインビトロアッセイにおいて、アミロイドーシスを阻害する化合物のスクリーニングアッセイにおいて有用となる可能性がある。そのような化合物を用いて、例えば化合物のより速く、より感度のよいアッセイを提供してもよい。アミロイド凝集の調節は、無処置対象または治療される対象の治療前と比較して決定してもよい。
【0133】
「治療製剤」という用語には、その意図される治療機能を行う、例えばアミロイドーシスを予防、治療、または阻害して、消化管の不耐性(すなわち、悪心および嘔吐)を減少または防止するために用いられる製剤が含まれる。消化管不耐性の減少または予防は、例えば胃における直接の物理的相互作用、または中枢神経系に対する間接的な中心的な作用に依存する可能性がある。
【0134】
特定の態様において、消化管の不耐性の減少または予防は、対象に投与される治療化合物に少なくとも依存する。一つの態様において、所望の治療機能を有する治療化合物は、その消化管の不耐性の減少または防止能に基づいて治療製剤に含めるために選択される。特定の態様において、化合物は、所望の治療機能および消化管不耐性の減少または防止能を有する治療化合物が得られるように改変される。例えば、化合物は、所望の治療機能および消化管の不耐性の減少または防止能を有するように構造的に改変(例えば、適当な置換基を付加、または薬学的に許容される対イオンを変化させる)または再製剤化してもよい。
【0135】
特定の他の態様において、消化管不耐性の減少または予防は、対象に投与される治療化合物のみに依存しない。例えば、一つの態様において、消化管不耐性の減少または予防は、Xが対陽イオンまたはスルホネートとエステルを形成する式3-アミノ-1-プロパンスルホネート/Xを有する治療化合物、例えば3-アミノ-1-プロパンスルホン酸またはそのナトリウム塩には依存しない。本発明の特定の態様において、消化管の不耐性の減少または予防は、腸溶コーティングまたは放出改変物質のような、さらなる物質に依存する。
【0136】
もう一つの態様において、治療化合物とは異なる少なくとも一つのさらなる物質が治療製剤に含まれる。特定の態様において、さらなる物質は、治療製剤に対して少なくとも一つの所望の特性を付与する。特定の態様において、望ましい特性は、少なくとも部分的に消化管の不耐性を減少または防止する。したがって、さらなる態様において、さらなる物質は、不耐性を減少または予防する他の方法とは独立して、または共に消化管の不耐性を減少または予防するために治療製剤において用いてもよい。例えば、治療製剤に起因しうる如何なる可能性がある消化管の不耐性に対しても保護するために、錠剤を腸溶コーティングしてもよく、または胃もしくは腸における治療化合物の如何なる迅速な放出も制御するために放出改変剤を加えてもよい。
【0137】
本発明の一つの態様において、消化管の不耐性の減少または予防は、治療化合物の投与後の胃における治療化合物の溶解の際に生じる高いpHの結果としての局所刺激を減少または予防することによって得られる。本発明の治療製剤のさらなる長所として、消化管の不耐性が減少すればまた、投与される対象、例えば患者によるコンプライアンスも改善する。
【0138】
もう一つの特定の態様において、本発明の治療化合物はアルキルスルホン酸である。「アルキルスルホン酸」という用語には、置換または非置換アルキルスルホン酸、および置換または非置換低級アルキルスルホン酸が含まれる。アミノ置換化合物は特に注目に値し、本発明は、置換または非置換アミノ置換アルキルスルホン酸、および置換または非置換アミノ置換低級アルキルスルホン酸に関し、その例は、3-アミノ-1-プロパンスルホン酸である。同様に、本明細書において用いられるように「アルキルスルホン酸」という用語は、「アルカンスルホン酸」という用語と同義であると解釈されることに注目すべきである。
【0139】
特定の態様において、本発明は、置換もしくは非置換アルキルスルホン酸、置換もしくは非置換アルキル硫酸、置換もしくは非置換アルキルチオスルホン酸、置換もしくは非置換アルキルチオ硫酸、またはその薬学的に許容される塩を含むそのエステルもしくはアミドに関する。例えば、本発明は、置換または非置換アルキルスルホン酸である化合物、またはその薬学的に許容される塩を含む、そのエステルもしくはアミドに関する。もう一つの態様において、本発明は、置換もしくは非置換低級アルキルスルホン酸またはそのエステルもしくはアミドである化合物に関する。同様に、本発明には、(置換もしくは非置換-アミノ)-置換アルキルスルホン酸またはその薬学的に許容される塩を含むエステルまたはアミドである化合物が含まれる。さらにもう一つの態様において、化合物は、(置換もしくは非置換-アミノ)-置換低級アルキルスルホン酸、またはその薬学的に許容される塩を含むエステルもしくはアミドである。
【0140】
例えば3-アミノ-1-プロパンスルホン酸およびその特定の塩を含むアルキルスルホン酸の組成物は、アルツハイマー病および脳アミロイド血管障害を含む、アミロイドβ関連疾患の治療において有用であることが示されている。国際公開公報第96/28187号、国際公開公報第01/85093号、および米国特許第5,840,294号を参照されたい。
【0141】
例としてのアルキルスルホン酸の一つの群は以下の構造を有する:

式中、Yはアミノ基(式-NRaRbを有し、RaおよびRbはそれぞれ独立して水素、アルキル、アリール、またはヘテロシクリルである、またはRaおよびRbは、それらが結合する窒素原子と共に、環上に原子3〜8個を有する環状部分を形成する)であるか、またはスルホン酸基(式-SO3-X+を有する)であって、nは1〜5の整数であり、Xは水素または陽イオン基(例えば、ナトリウム)である。いくつかの例としてのアルキルスルホン酸には以下が含まれる:

【0142】
場合によっては、アルキルスルホン酸は、「低分子」である、すなわちそれ自身が遺伝子の転写または翻訳の産物(例えば、タンパク質、RNA、またはDNA)ではなく、しかも低分子量を有する、例えば分子量が約2500未満である化合物である。別の場合では、化合物は抗体または免疫原性ペプチドのような生物学的産物であってもよい。
【0143】
アルキルスルホン酸は、その全内容物が参照により本明細書に明白に組み入れられる、例えば米国特許第5,643,562号;第5,972,328号;第5,728,375号;第5,840,294号;第4,657,704号;およびそのいずれも「Synthetic Process for Preparing Compounds for Treating Amyloidosis」と題する、代理人整理番号NBI-156-1によって識別される2003年6月23日に提出された米国特許仮出願第60/482,058号、代理人整理番号NBI-156-2によって識別される2003年10月17日に提出された米国特許仮出願第60/512,135号、ならびに「Improved Pharmaceutical Drug Candidates and Method for Preparation Thereof」と題する代理人整理番号NBI-156によって識別される2004年6月18日に提出された米国特許出願第10/___,___号に記述されるような一般的な反応スキーム、またはその改変物において説明される方法によって、容易に入手できる開始材料、試薬、および通常の合成技法を用いて調製してもよい。これらの反応において、それ自身が既知であるが、言及されない変種を利用することも可能である。例えば、本明細書に記述の化合物の機能的および構造的等価物で、同じ一般的特性を有するもの(化合物の本質的な特性または有用性に有害な影響を及ぼさない、置換基の一つまたはそれ以上の単純な変更が行われている)を、当技術分野で公知の多様な方法に従って調製してもよい。
【0144】
一般に、本発明の化合物は、例えば、以下に記載した一般的な反応スキームに示された方法、またはそれらの改良法により、容易に入手可能な出発材料、試薬および従来の合成手順を用いて調製することができる。これらの反応において、それ自体は知られているが言及されてはいない変法を利用することも可能である。薬剤の本質的な性質または有用性に悪影響を及ぼさない置換基の1つまたは複数の単純な差異が加えられた、本明細書に記載した薬剤の機能的および構造的な等価物であって同じ一般特性を有する等価物が含まれる。本発明の薬剤は、提示した具体的な手順に示されているような、本明細書に記載した合成スキームおよびプロトコールに従って容易に調製することができる。しかし、当業者は、本発明の薬剤を形成させるために他の合成経路を用いることもでき、以下のものは単に例示的に提供されるのに過ぎず、本発明を限定するものではないことを認識していると考えられる。例えば、「Comprehensive Organic Transformations」、R. Larock, VCH Publishers (1989)を参照されたい。さらに、当技術分野で標準的なさまざまな保護および脱保護の戦略が用いられることも認識されていると考えられる(例えば、「Protective Groups in Organic Synthesis」、Greene and Wutsを参照されたい)。関連分野の当業者は、具体的な保護基(例えば、アミン保護基およびカルボキシル保護基)の選択はその後の反応条件に対する点保護部分の安定性に依存すると考えられることを認識していると考えられ、適切な選択を理解していると考えられる。当業者の知識をさらに示したものには、広範な化学文献から抽出された以下のものがある:「Chemistry of the Amino Acids」、J.P. Greenstein and M. Winitz, John Wiley & Sons, Inc., New York (1961);「Comprehensive Organic Transformations」、R. Larock, VCH Publishers (1989);T.D. Ocain, et al., J. Med. Chem. 31, 2193-99 (1988);E.M. Gordon, et al., J. Med. Chem. 31, 2199-10 (1988);「Practice of Peptide Synthesis」、M. Bodansky and A. Bodanszky, Springer-Verlag, New York (1984);「Protective Groups in Organic Synthesis」、T. Greene and P. Wuts (1991);「Asymmetric Synthesis: Construction of Chiral Molecules Using Amino Acids」、G.M. Coppola and H.F. Schuster, John Wiley & Sons, Inc., New York (1987);「The Chemical Synthesis of Peptides」、J. Jones, Oxford University Press, New York (1991);および「Introduction of Peptide Chemistry」、P.D. Bailey, John Wiley & Sons, Inc., New York (1992)。
【0145】
本明細書に記述の化学構造は、当技術分野で公知の通常の標準に従って描写される。このように、炭素原子のような原子が不満足な原子価を有するように見えるように描写される場合、原子価は、水素原子が必ずしも明白に描写されていなくとも、水素原子によって満足されると仮定される。本発明の化合物のいくつかの構造には、不斉炭素原子が含まれる。そのような非対称性によって生じる異性体(例えば、全てのエナンチオマーおよびジアステレオマー)は、特に明記していない限り本発明の範囲に含まれると理解される。すなわち、そうでないことを明記していなければ、如何なるカイラル炭素中心も(R)-または(S)-立体化学であってもよい。そのような異性体は、古典的な分離技術および立体化学的に制御された合成によって、実質的に純粋な形で得ることができる。さらに、アルケンには、適当であればE-またはZ-幾何学のいずれかが含まれうる。さらに、本発明の化合物は、非溶媒化型のみならず、水、THF、エタノール等のような許容される溶媒による溶媒和型で存在してもよく、例えば偽多形型のような多形型で存在してもよい。「溶媒和」という用語は、水、エタノール等のような薬学的溶媒の一つまたはそれ以上の分子と共に、化合物の一つまたはそれ以上の分子を含む凝集体を表す。
【0146】
本発明に従って化合物として用いてもよい化合物のさらなる例には、その全てが「Methods and Compositions for Treating Amyloid-Related Diseases.」と題する、代理人整理番号NBI-162-1によって識別される2003年6月23日に提出された米国特許仮出願第60/480,906号、代理人整理番号NBI-162-2によって識別される2003年10月17日に提出された米国特許仮出願第60/512,047号、代理人整理番号NBI-162Aによって識別される2004年6月18日に提出された米国特許出願第10/___,___号、および代理人整理番号NBI-162Bによって識別される2004年6月18日に提出された米国特許出願第10/___,___号、ならびにその全てが「Methods and Compositions for the Treatment of Amyloid- and Epileptogenesis-Associated Disease.」と題する、代理人整理番号NBI-163-1によって識別される2003年6月23日に提出された米国特許仮出願第60/480,928号、代理人整理番号NBI-163-2によって識別される2003年10月17日に提出された米国特許仮出願第60/512,018号、および代理人整理番号NBI-163によって識別される2004年6月18日に提出された米国特許出願10/___,___号において記述されるものが含まれる。
【0147】
一つの態様において、本発明は、式I-Aの化合物である治療化合物を有する組成物、またはその薬学的に許容される塩に少なくとも部分的に関する:

式中、
R1は、置換もしくは非置換シクロアルキル、アリール、アリールシクロアルキル、二環、または三環、二環もしくは三環融合環基、または置換もしくは非置換C2-C10アルキル基であり;
R2は、水素、アルキル、メルカプトアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、チアゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、ベンゾチアゾリル、およびベンゾイミダゾリルからなる群より選択され;
Yは、SO3-X+、OSO3-X+、またはSSO3-X+であり;
X+は、水素、陽イオン基、またはエステル形成基(すなわち、プロドラッグにおいて)であり;かつ
L1およびL2はそれぞれ、独立して置換または非置換C1-C5アルキル基であるか、または存在しない、但しR1がアルキルである場合、L1は存在しない。
【0148】
もう一つの態様において、本発明は、式II-Aの化合物である治療化合物を有する組成物、またはその薬学的に許容される塩に少なくとも部分的に関する:

式中、
R1は置換もしくは非置換の単環、二環、三環、またはベンゾ複素環基である、または置換もしくは非置換C2-C10アルキル基であり;
R2は、水素、アルキル、メルカプトアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、チアゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリルであるか、またはR1に結合して複素環を形成し;
Yは、SO3-X+、OSO3-X+、またはSSO3-X+であり;
X+は、水素、陽イオン基、またはエステル形成基であり;
mは、0または1であり;
nは1、2、3または4であり;
Lは、置換もしくは非置換C1-C3アルキル基であるか、または存在せず、
但し、R1がアルキルである場合、Lは存在しない。特定の態様において、nは3または4である。
【0149】
さらにもう一つの態様において、本発明は、式III-Aの化合物である治療化合物を有する組成物、ならびにその薬学的に許容される塩およびエステルに少なくとも部分的に関する:

式中、
Aは窒素または酸素であり;
R11は水素、塩形成陽イオン、エステル形成基、-(CH2)x-Qであるか、またはAが窒素である場合、AおよびR11は共に、天然もしくは非天然のアミノ酸残基、その塩、もしくはエステルであってもよく;
Qは水素、チアゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、ベンゾチアゾリル、またはベンゾイミダゾリルであり;
xは0、1、2、3または4であり;
nは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であり;
R3、R3a、R4、R4a、R5、R5a、R6、R6a、R7、およびR7aは、それぞれ独立して、水素、アルキル、メルカプトアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、シアノ、ハロゲン、アミノ、テトラゾリルであるか、または隣接する環原子上の二つのR基が環原子と共に二重結合を形成する。特定の態様において、nは3または4である。特定の態様において、R3、R3a、R4、R4a、R5、R5a、R6、R6a、R7、およびR7aは、式IIIa-Aの一部である:

式中、
mは0、1、2、3、または4であり;
RA、RB、RC、RD、およびREは、独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシル、ハロゲン化アルキル、メルカプトアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、シアノ、チアゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、ベンゾチアゾリル、およびベンゾイミダゾリルである。特定の態様において、該化合物は3-(4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロ-1-ピリジル)-1-プロパンスルホン酸である。
【0150】
エステル形成基または部分には、結合した場合にエステルを形成する基が含まれる。そのような基の例には、置換または非置換アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、またはシクロアルキルが含まれる。可能性があるエステルの特定の例には、メチル、エチル、およびt-ブチルが含まれる。さらに、塩形成陽イオンの例には、本明細書に記述される薬学的に許容される塩と共に、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、鉄、およびアンモニウムが含まれる。さらなる態様において、塩形成陽イオンはナトリウム塩である。
【0151】
さらにもう一つの態様において、本発明は、式IVの化合物である治療化合物を有する組成物、ならびにその薬学的に許容される塩およびエステルに少なくとも部分的に関する:

式中、
Aは窒素または酸素であり;
R11は水素、塩形成陽イオン、エステル形成基、-(CH2)x-Qであるか、またはAが窒素である場合、AおよびR11は共に、天然もしくは非天然のアミノ酸残基、その塩、もしくはエステルであってもよく;
Qは水素、チアゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、ベンゾチアゾリル、またはベンゾイミダゾリルであり;
xは0、1、2、3または4であり;
nは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であり;
R4、R4a、R5、R5a、R6、R6a、R7、およびR7aは、それぞれ独立して、水素、アルキル、メルカプトアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、シアノ、ハロゲン、アミノ、テトラゾリルであり、R4およびR5は共に、それらが結合する環原子と共に二重結合を形成するか、またはR6およびR7は共に、それらが結合する環原子と共に二重結合を形成し;
mは0、1、2、3、または4であり;
R8、R9、R10、R11、およびR12は、独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシル、ハロゲン化アルキル、メルカプトアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、シアノ、チアゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、ベンゾチアゾリル、およびベンゾイミダゾリルである。特定の態様において、nは3または4である。
【0152】
もう一つの態様において、本発明には、式V-Aの化合物である治療化合物を有する組成物、ならびにその薬学的に許容される塩およびプロドラッグが含まれる:

式中、
Aは窒素または酸素であり;
R11は水素、塩形成陽イオン、エステル形成基、-(CH2)x-Qであるか、またはAが窒素である場合、AおよびR11は共に、天然もしくは非天然のアミノ酸残基、その塩、もしくはエステルであってもよく;
Qは水素、チアゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、ベンゾチアゾリル、またはベンゾイミダゾリルであり;
xは0、1、2、3または4であり;
nは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であり;
aaは天然または非天然アミノ酸残基であり;
mは0、1、2、または3であり;
R14は水素または保護基であり;
R15は、水素、アルキル、またはアリールである。特定の態様においてnは3または4である。
【0153】
もう一つの態様において、本発明には式VI-Aの化合物である治療化合物を有する組成物、またはその薬学的に許容される塩が含まれる:

式中、
nは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であり;
Aは、酸素または窒素であり;
R11は水素、塩形成陽イオン、エステル形成基、-(CH2)x-Qであるか、またはAが窒素である場合、AおよびR11は共に、天然もしくは非天然のアミノ酸残基、その塩、もしくはエステルであってもよく;
Qは水素、チアゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、ベンゾチアゾリル、またはベンゾイミダゾリルであり;
xは0、1、2、3または4であり;
R19は、水素、アルキル、またはアリールであり;
Y1は、酸素、硫黄、または窒素であり;
Y2は、炭素、窒素、または酸素であり;
R20は、水素、アルキル、アミノ、メルカプトアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、チアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イミダゾリル、ベンゾチアゾリル、またはベンゾイミダゾリルであり;
R21は、水素、アルキル、メルカプトアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、チアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリルであるか、またはY2が酸素である場合には存在せず;
R22は、水素、アルキル、メルカプトアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、チアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリルであるか;またはR22は、Y1が窒素である場合には、水素、ヒドロキシル、アルコキシ、もしくはアリールオキシである;またはR22は、Y1が酸素もしくは硫黄である場合には存在せず;またはR22およびR21は、Y1が窒素である場合には、結合して環状部分を形成してもよい。特定の態様において、nは3または4である。
【0154】
もう一つの態様において、本発明には、式VII-Aの化合物である治療化合物を有する組成物、およびその薬学的に許容される塩が含まれる:

式中、
nは2、3、または4であり;
Aは、酸素または窒素であり;
R11は水素、塩形成陽イオン、エステル形成基、-(CH2)x-Qであるか、またはAが窒素である場合、AおよびR11は共に、天然もしくは非天然のアミノ酸残基、その塩、もしくはエステルであってもよく;
Qは水素、チアゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、ベンゾチアゾリル、またはベンゾイミダゾリルであり;
xは0、1、2、3または4であり;
Gは、直接結合するか、または酸素、窒素、もしくは硫黄であり;
zは0、1、2、3、4、または5であり;
mは0または1であり;
R24は、水素、アルキル、メルカプトアルキル、アルケニル、アルキニル、アロイル、アルキルカルボニル、アミノアルキルカルボニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、チアゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、ベンゾチアゾリル、およびベンゾイミダゾリルからなる群より選択され;
それぞれのR25は、水素、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシル、アルコキシ、チオール、アミノ、ニトロ、アルキル、アリール、炭素環、または複素環から独立して選択される。特定の態様において、nは3または4である。
【0155】
さらなる化合物には、例えば式(I-B)の治療化合物、ならびにその薬学的に許容される塩、エステル、およびプロドラッグが含まれる:

式中、
Xは酸素または窒素であり;
ZはC=O、S(O)2、またはP(O)OR7であり;
mおよびnはそれぞれ独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であり;
R1およびR7はそれぞれ独立して、水素、金属イオン、アルキル、メルカプトアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、Xと共に天然もしくは非天然のアミノ酸残基を形成する部分、または-(CH2)p-Yであり;
Yは、水素またはチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イミダゾリル、ベンゾチアゾリル、およびベンゾイミダゾリルからなる群より選択される複素環部分であり;
pは、0、1、2、3、または4であり;
R2は、水素、アルキル、メルカプトアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、またはアルコキシカルボニルであり;
R3は、水素、アミノ、シアノ、アルキル、メルカプトアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環、置換もしくは非置換アリール、ヘテロアリール、チアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イミダゾリル、ベンゾチアゾリル、またはベンゾイミダゾリルである。
【0156】
さらなる態様において、mは0、1、または2である。もう一つのさらなる態様において、nは0、1、または2、例えば1もしくは2である。もう一つのさらなる態様において、R3はアリール、例えば、ヘテロアリールまたはフェニルである。さらにもう一つの態様において、ZはS(O)2である。
【0157】
もう一つの態様において、本発明の治療化合物は以下の式(II-B)の化合物、ならびにその薬学的に許容される塩、エステル、およびプロドラッグである;

式中、
Xは、酸素または窒素であり;
mおよびnはそれぞれ独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であり;
R1は、水素、金属イオン、アルキル、メルカプトアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、Xと共に天然もしくは非天然のアミノ酸残基を形成する部分、または-(CH2)p-Yであり;
Yは水素、またはチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イミダゾリル、ベンゾチアゾリル、およびベンゾイミダゾリルからなる群より選択される複素環部分であり;
それぞれのR4は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、チオール、アミノ、シアノ、ニトロ、アルキル、アリール、炭素環または複素環からなる群より独立して選択される。
R2は水素、アルキル、メルカプトアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、またはアルコキシカルボニルであり;
Jは存在しないか、酸素、窒素、硫黄、または低級アルキレン、アルキレニルオキシ、アルキレニルアミノ、アルキレニルチオ、アルキレニルオキシアルキル、アルキレニルアミノアルキル、アルキレニルチオアルキル、アルケニル、アルケニルオキシ、アルケニルアミノ、またはアルケニルチオからなるがこれらに限定されない二価結合部分である;および
qは1、2、3、4または5である。特定の態様において、nは1または2である。
【0158】
なおさらなる態様において、本発明の治療化合物は式(III-B)の化合物、ならびにその薬学的に許容される塩、エステル、およびプロドラッグである;

式中、
Xは、酸素または窒素であり;
mおよびnはそれぞれ独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であり;
qは、1、2、3、4、または5であり;
R1は、水素、金属イオン、アルキル、メルカプトアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、Xと共に天然もしくは非天然のアミノ酸残基を形成する部分、または-(CH2)p-Yであり;
Yは水素、またはチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イミダゾリル、ベンゾチアゾリル、およびベンゾイミダゾリルからなる群より選択される複素環部分であり;
pは、0、1、2、3、または4であり;
R2は、水素、アルキル、メルカプトアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、またはアルコキシカルボニルであり;
R5は、水素、ハロゲン、アミノ、ニトロ、ヒドロキシ、カルボニル、チオール、カルボキシ、アルキル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アシル、アルキルアミノ、およびアシルアミノからなる群より選択され;
Jは存在しないか、酸素、窒素、硫黄、または低級アルキレン、アルキレニルオキシ、アルキレニルアミノ、アルキレニルチオ、アルキレニルオキシアルキル、アルキレニルアミノアルキル、アルキレニルチオアルキル、アルケニル、アルケニルオキシ、アルケニルアミノ、またはアルケニルチオからなるがこれらに限定されない二価結合部分である。特定の態様において、nは1または2である。
【0159】
さらにもう一つの態様において、本発明の治療化合物は、以下である化合物ならびにその薬学的に許容される塩、エステル、およびプロドラッグである;

式中、
Xは、酸素または窒素であり;
mおよびnはそれぞれ独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であり;
qは、1、2、3、4、または5であり;
R1は、水素、金属イオン、アルキル、メルカプトアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、Xと共に天然もしくは非天然のアミノ酸残基を形成する部分、または-(CH2)p-Yであり;
Yは水素、またはチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イミダゾリル、ベンゾチアゾリル、およびベンゾイミダゾリルからなる群より選択される複素環部分であり;
pは、0、1、2、3、または4であり;
R2は、水素、アルキル、メルカプトアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、またはアルコキシカルボニルであり;
R5は、水素、ハロゲン、アミノ、ニトロ、ヒドロキシ、カルボニル、チオール、カルボキシ、アルキル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アシル、アルキルアミノ、およびアシルアミノからなる群より選択される。さらなる態様において、mは0である。特定の態様において、nは1または2である。
【0160】
もう一つの態様において、本発明は、式(V-B)の治療化合物に関する:

式中、
ZはC=O、S(O)2、またはP(O)OR7であり;
R1は、水素、金属イオン、アルキル、メルカプトアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、Xと共に天然もしくは非天然のアミノ酸残基を形成する部分、または-(CH2)p-Yであり;
Yは、水素またはチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イミダゾリル、ベンゾチアゾリル、およびベンゾイミダゾリルからなる群より選択される複素環部分であり;
mおよびnはそれぞれ独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であり;
R2は、水素、アルキル、メルカプトアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、またはアルコキシカルボニルであり;
R6は、置換または非置換複素環部分である。さらなる態様において、mは0または1である。もう一つの態様において、nは0または1である。もう一つのさらなる態様において、R6は、チアゾリル、オキサゾリル、ピラゾリル、インドリル、ピリジニル、チアジニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、ジヒドロイミダゾリル、ジヒドロチアゾリル、オキサゾリジニル、チアゾリジニル、テトラヒドロピリミジニル、またはオキサジニルである。なおもう一つの態様において、ZはS(O)2である。特定の態様において、nは1または2である。
【0161】
本発明の特定の態様において、本発明の治療製剤は、薬学的に許容される不活性成分と、式3-アミノ-1-プロパンスルホネート/Xを有する治療化合物とを含んでもよく、式中、Xは対陽イオンであるかまたはスルホネートとエステルを形成し、エステルまたは対陽イオンにはそれぞれ、治療製剤の消化管不耐性の減少能または予防能に有意な影響を及ぼさないアルコールラジカルまたは陽性に荷電した原子および部分が含まれる。好ましい態様において、陽イオン基は水素(H+)であり、化合物は3-アミノ-1-プロパンスルホン酸である。特定の他の態様において、水素が、薬学的に許容される陽イオン、アルコールラジカル、またはその等価物に置換されて、化合物は酸の塩またはエステルである。治療製剤の消化管不耐性の減少能または予防能に有意に影響を及ぼさない治療化合物の薬学的に許容される塩またはエステルは、本発明の範囲に含まれる。例えば、陽イオンは、薬学的に許容されるアルキル金属、アルカリ土類、結合価のより高い陽イオン(例えば、アルミニウム塩)、多価陽イオン性対イオンまたはアンモニウムとなりえて、アルコールラジカルは薬学的に許容されるアルコールラジカルとなりうる。特定の態様において、薬学的に許容される塩はナトリウム塩であるが、他の塩も同様に薬学的に許容される範囲内であると企図される。
【0162】
一般的に、本発明の治療製剤において用いるために適当な治療化合物は、置換または非置換芳香族または脂肪族基に共有結合した少なくとも一つのスルホネート基を含む。
【0163】
もう一つの態様において、治療化合物は、置換または非置換脂肪族基に共有結合した少なくとも一つのスルホネート基を有する。類似の態様において、治療化合物は、置換または非置換脂肪族基に共有結合した少なくとも二つのスルホネート基を有する。もう一つの態様において、治療化合物は、置換または非置換低級アルキル基に共有結合した少なくとも一つのスルホネート基を有する。類似の態様において、治療化合物は、置換または非置換低級アルキル基に共有結合した少なくとも二つのスルホネート基を有する。
【0164】
さらにもう一つの態様において、治療化合物は、アミノ置換脂肪族基に共有結合した少なくとも一つのスルホネート基を有する。類似の態様において、治療化合物は、アミノ置換脂肪族基に共有結合した少なくとも二つのスルホネート基を有する。さらになおもう一つの態様において、治療化合物は、アミノ置換低級アルキル基に共有結合した少なくとも一つのスルホネート基を有する。類似の態様において、治療化合物は、アミノ置換低級アルキル基に共有結合した少なくとも二つのスルホネート基を有する。
【0165】
本明細書において用いられるように、「スルホネート基」とは、Xが陽イオン基またはエステル基である、炭素原子に結合した-SO3-Hまたは-SO3X基である。同様に、「スルホン酸」化合物は、炭素原子に結合した-SO3H基を有する。本明細書において用いられるように「スルフェート」とは、Xが陽イオン基またはエステル基である、炭素原子に結合した-OSO3-Hまたは-OSO3X基である;および「硫酸」化合物は炭素原子に結合した-OSO3H基を有する。本発明に従って、適した陽イオン基は水素原子であってもよい。特定の場合において、陽イオン基は、生理的pHで正に帯電している治療化合物上のもう一つの基、例えばアミノ基であってもよい。治療化合物自身に共有結合しているそのような陽イオン基を含むそのような化合物は、「分子内塩」または「両性イオン」と呼ばれることがある。例えば、化合物3-アミノ-1-プロパンスルホン酸は、適当な条件下で分子内塩または両性イオンを形成する可能性がある。
【0166】
特に明記していなければ、本明細書における化学部分は置換しても置換しなくてもよい。いくつかの態様において、「置換された」という用語は、その部分に、その意図する機能を分子に行わせる水素以外の置換基が存在することを意味する。置換基の例には、直鎖または分岐鎖アルキル(好ましくはC1-C5)、シクロアルキル(好ましくはC3-C8)、アルコキシ(好ましくはC1-C6)、チオアルキル(好ましくはC1-C6)、アルケニル(好ましくはC2-C6)、アルキニル(好ましくはC2-C6)、複素環、炭素環、アリール(例えばフェニル)、アリールオキシ(例えばフェノキシ)、アラルキル(例えばベンジル)、アリールオキシアルキル(例えばフェニルオキシアルキル)、アリールアセタミドイル、アルキルアリール、ヘテロアラルキル、アルキルカルボニル、およびアリールカルボニル、または他のそのようなアシル基、ヘテロアリールカルボニル、もしくはヘテロアリール基、R'およびR''がそれぞれ独立して、水素、C1-C5アルキル、C2-C5アルケニル、C2-C5アルキニル、もしくはアリール基である、(CR'R'')0-3NR'R''(例えば、-NH2)、(CR'R'')0-3CN(例えば、-CN)、-NO2、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Br、または-I)、(CR'R'')0-3C(ハロゲン)3(例えば、-CF3)、(CR'R'')0-3CH(ハロゲン)2、(CR'R'')0-3CH2(ハロゲン)、(CR'R'')0-3CONR'R''、(CR'R'')0-3(CHN)NR'R''、(CR'R'')0-3S(O)1-2NR'R''、(CR'R'')0-3CHO、(CR'R'')0-3O(CR'R'')0-3H、(CR'R'')0-3S(O)0-3R'(例えば、-SO3H、-OSO3H)、(CR'R'')0-3O(CR'R")0-3H(例えば、-CH2OCH3、および-OCH3)、(CR'R")0-3S(CR'R")0-3H(例えば、-SHおよび-SCH3)、(CR'R")0-3OH(例えば、-OH)、(CR'R")0-3COR'、(CR'R")0-3(置換または非置換フェニル)、(CR'R")0-3(C3-C8シクロアルキル)、(CR'R")0-3CO2R'(例えば、-CO2H)、もしくは(CR'R")0-3OR'基、または任意の天然に存在するアミノ酸の側鎖が含まれるがこれらに限定されるわけではない。「置換基」にはまた、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイドを含む)、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、アジド、ヘテロシクリル、アラルキル、または芳香族もしくはヘテロ芳香族部分から選択される部分が含まれてもよい。
【0167】
「置換」または「置換された」には、そのような置換が置換原子および置換基の許容される原子価に従う、ならびに置換によって安定な化合物、例えば再配列、環状化、脱離等によるような変換を自然発生的に受けない化合物が得られる、という暗黙の条件が含まれると理解されるであろう。本明細書において用いられるように、「置換された」という用語には、有機化合物の全ての許容される置換基が含まれる。広い局面において、許容される置換基には、有機化合物の非環式および環式、分岐および非分岐、炭素環および複素環、芳香族および非芳香族置換基が含まれる。許容される置換基は、適当な有機化合物にとって一つまたはそれ以上であって、同じまたは異なりうる。
【0168】
特定の態様において、「置換基」は、例えば、ハロゲノ、トリフルオロメチル、ニトロ、シアノ、C1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、C1-C6アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、C1-C6アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、C1-C6アルキルカルボニル、C1-C6アルコキシカルボニル、C1-C6アルコキシ、C1-C6アルキルチオ、アリールチオ、ヘテロシクリル、アラルキル、およびアリール(ヘテロアリールを含む)基からなる群より選択してもよい。
【0169】
一般的に、本発明の治療化合物は低分子である。「低分子」は、それ自身、遺伝子の転写または翻訳の産物(例えば、タンパク質、RNA、DNA)ではない化合物を指す。好ましくは、「低分子」は、低分子量化合物、例えば7500 amu未満、より好ましくは5000 amu未満、およびさらにより好ましくは1000 amu未満の化合物である。
【0170】
本明細書において用いられるように、「アミン」または「アミノ」という用語は、RaおよびRbがそれぞれ独立して、水素、アルキル、アリール、もしくはヘテロシクリルである、またはRaおよびRbは、それらが結合する窒素原子と共に環において原子3〜8個を有する環状部分を形成する、式-NRaRbの非置換または置換部分を指す。このように、アミノという用語には、特に明記していなければ、ピペリジニルまたはピロリジニル基のような環状アミノ部分が含まれる。このように、本明細書において用いられる「アルキルアミノ」という用語は、それに結合したアミノ基を有するアルキル基を意味する。適したアルキルアミノ基には、炭素原子1〜約12個、例えば炭素原子1〜約6個を有する基が含まれる。アミノという用語には、窒素原子が少なくとも一つの炭素またはヘテロ原子に共有結合している化合物または部分が含まれる。「ジアルキルアミノ」という用語には、窒素原子が少なくとも二つのアルキル基に結合している基が含まれる。「アリールアミノ」および「ジアリールアミノ」という用語には、窒素がそれぞれ少なくとも一つまたは二つのアリール基に結合している基が含まれる。「アルキルアリールアミノ」という用語は、少なくとも一つのアルキル基および少なくとも一つのアリール基に結合しているアミノ基を指す。「アルカミノアルキル」という用語は、アルキルアミノ基によって置換されたアルキル、アルケニル、またはアルキニル基を指す。「アミド」または「アミノカルボニル」という用語には、カルボニルまたはチオカルボニル基の炭素に結合した窒素原子を含む化合物または部分が含まれる。
【0171】
「脂肪族基」という用語には、典型的に炭素原子1〜22個を有する直鎖または分岐鎖を特徴とする有機化合物が含まれる。脂肪族基には、アルキル基、アルケニル基、およびアルキニル基が含まれる。鎖は分岐していてもクロスリンクしていてもよい。アルキル基には、直鎖アルキル基および分岐鎖アルキル基を含む一つまたはそれ以上の炭素原子を有する飽和炭化水素が含まれる。「脂環式基」という用語には、三つまたはそれ以上の炭素原子の閉環構造が含まれる。脂環式基には、飽和環状炭化水素であるシクロパラフィンまたはナフテン、二つまたはそれ以上の二重結合によって不飽和であるシクロオレフィン、および三重結合を有するシクロアセチレンが含まれる。それらには芳香族基は含まれない。シクロパラフィンの例には、シクロプロパン、シクロヘキサン、およびシクロペンタンが含まれる。シクロオレフィンの例には、シクロペンタジエンおよびシクロオクタテトラエンが含まれる。脂環式基にはまた、多環、例えば融合環構造、およびアルキル置換脂環式基のような置換脂環式基が含まれる。「ポリシクリル」または「ポリ環状基」には、一つまたはそれ以上の炭素が二つの隣接する環に対して共通である、例えば環が「融合環」またはスピロ環である、二つまたはそれ以上の環(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、またはヘテロシクリル)が含まれる。隣接しない原子によって結合される環は「架橋」環と呼ばれる。
【0172】
本明細書において用いられるように、「アルキル基」には、直鎖アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等;環状アルキル基(または「シクロアルキル」または「脂環式」または「炭素環」基)、例えばシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等;分岐鎖アルキル基、例えばイソプロピル、tert-ブチル、sec-ブチル、イソブチル等;ならびにアルキル置換アルキル基、例えばアルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基、を含む一つまたはそれ以上の炭素原子を有する飽和炭化水素が含まれる。
【0173】
したがって、本発明は、例えば、置換または非置換直鎖アルキルスルホン酸、置換または非置換シクロアルキルスルホン酸、および置換または非置換分岐鎖アルキルスルホン酸である置換または非置換アルキルスルホン酸に関する。
【0174】
特定の態様において、直鎖または分岐鎖アルキル基は、その骨格において30個またはそれより少ない炭素原子を有してもよく、例えば、直鎖の場合にはC1-C30個、または分岐鎖の場合にはC3-C30個を有してもよい。特定の態様において、直鎖または分岐鎖アルキル基は、その骨格において20個またはそれより少ない炭素原子を有してもよく、例えば、直鎖の場合にはC1-C20個、または分岐鎖の場合にはC3-C20個を有してもよく、より詳しくは例えば18個またはそれより少ない炭素原子を有してもよい。さらに、例としてのシクロアルキル基は、その環構造において炭素原子4〜10個、例えばその環構造に炭素原子4〜7個を有する。
【0175】
「低級アルキル」という用語は、その鎖に炭素原子1〜8個を有するアルキル基、およびその環構造において炭素原子3〜8個を有するシクロアルキル基を指す。炭素数が特に明記されていない場合、「低級アルキル」の場合のような「低級」は、その部分が、炭素原子少なくとも一つから約8個未満を有することを意味する。特定の態様において、直鎖または分岐鎖低級アルキル基は、その骨格において6個またはそれより少ない炭素原子を有し(例えば、直鎖の場合にはC1-C6個、または分岐鎖の場合にはC3-C6個)、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、およびtert-ブチルである。同様に、シクロアルキル基は、その環構造に炭素原子3〜8個、例えばその環構造に炭素原子5または6個を有してもよい。「C1-C6アルキル」の場合のような「C1-C6」という用語は、炭素原子1〜6個を含むアルキル基を意味する。
【0176】
その上、特に明記していなければ、アルキルという用語には、「非置換アルキル」および「置換アルキル」の双方が含まれ、後者は炭化水素骨格の一つまたはそれ以上の炭素原子上の一つまたはそれ以上の水素を置換する置換基を有するアルキル基を指す。そのような置換基には、例えば、アルケニル、アルキニル、ハロゲノ、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族(ヘテロ芳香族を含む)基が含まれてもよい。
【0177】
「アルケニル」および「アルキニル」という用語は、直鎖および分岐鎖、ならびに環状構造を含むが、それぞれ少なくとも一つの二重または三重結合を含むアルキルと類似の不飽和脂肪族基を指す。適したアルケニルおよびアルキニル基には、炭素原子2〜約12個、好ましくは炭素原子2〜約6個を有する基が含まれる。
【0178】
「芳香族基」という用語には、一つまたはそれ以上の環を含む不飽和環状炭化水素が含まれる。一般的に、「アリール」という用語には、ヘテロ原子0〜4個を含んでもよい5-および6-員環の単環芳香族基を含む基、例えばベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、およびピリミジン等に由来する基が含まれる。さらに、アリールという用語には、多環式アリール基、例えば三環、二環に由来する基、例えばナフタレン、ベンゾキサゾール、ベンゾジオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチオフェン、メチレンジオキシフェニル、キノリン、イソキノリン、ナフチリジン、インドール、ベンゾフラン、プリン、ベンゾフラン、デアザプリン、またはインドリジンが含まれる。環構造にヘテロ原子を有するそれらのアリール基はまた、「アリール複素環」、「ヘテロアリール」、または「ヘテロ芳香族」と呼ばれることがある。
【0179】
アリール基は、多環(例えば、テトラリン)を形成するために芳香族ではない脂環または複素環と融合または架橋してもよい。その環構造にヘテロ原子を有するそれらのアリール基はまた、アリール複素環、複素環、ヘテロアリール、またはヘテロ芳香族と呼ばれることがあり、これらには例えば、ヘテロ原子または炭素ではない原子を組み入れて形成される任意の環が含まれる。環は飽和または不飽和であってもよく、一つまたはそれ以上の二重結合を含んでもよい。いくつかの複素環基の例には、ピリジル、フラニル、チオフェニル、モルフォリニル、およびインドリル基が含まれる。
【0180】
「ヘテロ原子」という用語には、炭素または水素以外の任意の元素の原子が含まれる。好ましいヘテロ原子は、窒素、酸素、硫黄、およびリンである。複素環基にはまた、環における一つまたはそれ以上の原子が炭素以外の元素、例えば窒素、硫黄、または酸素である閉環構造が含まれる。複素環基は飽和または不飽和であってもよく、ピロールおよびフランのような複素環基は、芳香族特徴を有する可能性がある。それらには、キノリンおよびイソキノリンのような融合環構造が含まれる。複素環基の他の例には、ピリジンおよびプリンが含まれる。ヘテロ芳香族およびヘテロ脂環基の例は、環が3〜約8員環である1〜3個の個別のまたは融合環と、一つまたはそれ以上のN、O、またはS原子を有してもよく、例えばクマリニル、キノリニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジル、フリル、ピロリル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、インドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチアゾリル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、モルフォリノ、およびピロリジニルであってもよい。
【0181】
III.本発明の治療製剤
本発明はまた、本明細書において定義される治療製剤の、対象におけるアミロイド沈着を阻害するために十分な量と、薬学的に許容される媒体と含む、対象におけるアミロイド沈着を阻害するための薬学的組成物にも関する。
【0182】
もう一つの態様において、本発明は、本明細書において記述される治療製剤の、対象におけるアミロイド沈着を阻害するために十分な量と、薬学的に許容される媒体と含む、対象におけるアミロイドーシスを治療するための薬学的組成物である。
【0183】
もう一つの態様において、本発明は、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物の、対象におけるアミロイド関連疾患を予防または治療するために十分な量と、薬学的に許容される媒体とを含む治療製剤を含む、アミロイド関連疾患、例えばII型糖尿病またはAβ関連疾患、例えばアルツハイマー病、脳アミロイド血管障害、封入体筋炎、黄斑変性、ダウン症候群、および遺伝性脳出血を治療または予防するための薬学的組成物に関する。
【0184】
特定の態様において、本発明の治療製剤の治療化合物は、アミロイド原性タンパク質における基底膜の糖タンパク質またはプロテオグリカンのための結合部位と相互作用して、それによって基底膜構成成分に対するアミロイド原性タンパク質の結合を阻害する。基底膜の糖タンパク質およびプロテオグリカンには、ラミニン、IV型コラーゲン、フィブロネクチン、アグリン、パーレカン、およびヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)が含まれる。特定の態様において、治療化合物は、アミロイド原性タンパク質とアグリン、パーレカン、またはHSPGとの相互作用を阻害する。さらに、アミロイド原性タンパク質におけるHSPGのコンセンサス結合部位モチーフが記述されている(例えば、Cardin and Weintraub(1989)、Arteriosclerosis 9:21〜32を参照されたい)。
【0185】
したがって、本発明には、本明細書に記述される治療製剤の治療的有効量を入れる容器と、対象におけるアミロイド沈着を阻害する化合物を用いるための説明書とを含む、対象におけるアミロイド沈着を阻害するための包装された薬学的組成物が含まれる。特定の態様において、そのようなアミロイド沈着に関連する疾患は、アルツハイマー病、脳アミロイド血管障害、封入体筋炎、黄斑変性、ダウン症候群、軽度の認知障害、II型糖尿病、および遺伝性脳出血からなる群より選択される。
【0186】
「容器」という用語には、治療製剤を入れるための如何なる容器も含まれる。例えば、一つの態様において、容器は、製剤を含む包装である。他の態様において、容器は、製剤を入れる包装ではない、すなわち容器は、包装された製剤または包装されない製剤と、製剤の使用説明書とを含む箱またはバイアルのような容器である。その上、包装技術は当技術分野で周知である。治療製剤の使用説明書は、治療製剤を入れる容器の上に含まれてもよく、説明書それ自体が包装された製品に対する機能的関連性の増加を構成すると理解すべきである。しかし、説明書は、化合物がその意図される機能を行う能力、例えば消化管不耐性の減少能または予防能に関する情報を含むことができると理解すべきである。
【0187】
もう一つの態様において、本発明には、本明細書に記述される治療製剤の治療的有効量を入れる容器と、対象におけるアミロイドーシスを治療する化合物を用いるための説明書とを含む、対象におけるアミロイドーシスを治療するための包装された薬学的組成物が含まれる。
【0188】
なおもう一つの態様において、本発明には、本明細書に記述される治療製剤の治療的有効量と、ウイルス感染症を治療する化合物を用いるための説明書とを含む、ウイルス感染症を治療するための包装された薬学的組成物が含まれる。
【0189】
本発明のもう一つの態様は、本発明の治療製剤の治療的有効量を入れる容器と、細菌感染症を治療する治療化合物を用いるための説明書とを含む、細菌感染症を治療するための包装された薬学的組成物に関する。
【0190】
本発明のもう一つの態様は、本発明の治療製剤の治療的有効量を入れる容器と、グリコサミノグリカンに対するケモカインの結合を阻害する治療化合物を用いるための説明書とを含む、グリコサミノグリカンに対するケモカインの結合を阻害するための包装された薬学的組成物に関する。
【0191】
本発明の治療製剤にはまた、二つまたはそれ以上の治療化合物の併用が含まれる。したがって、本発明は、3-アミノ-1-プロパンスルホン酸と、さらなる症状、例えばアルツハイマー病の第二の症状を標的とする第二の薬剤とを含む、アルツハイマー病を治療するための治療製剤に関する。特定の態様において、「第二の薬剤」は、アセチルコリンエステラーゼまたはブチリルコリンエステラーゼ阻害剤、例えばタクリン、ドネペジル、リバスチグミン、またはガランタミンのようなコリンエステラーゼ阻害剤であってもよい。もう一つの態様において、第二の薬剤は、メマンチンのようなNMDA受容体アンタゴニストであってもよい。さらにもう一つの態様において、第二の薬剤は、抗酸化剤、ビタミンE、エストロゲン、非ステロイド性抗炎症薬(例えば、アスピリンもしくはナプロキセン)、スタチンのようなコレステロール改変剤、またはイチョウであってもよい。
【0192】
本発明の治療製剤はさらに、薬学的に許容される媒体を含んでもよい。本明細書において用いられるように、「薬学的に許容される媒体」には、化合物の活性と適合性であって、対象に対して生理的に許容され、治療製剤がその意図する機能を行う能力に影響を有意な及ぼさない、または治療製剤が消化管不耐性を減少もしくは予防する能力に有意な影響を及ぼさない、任意の全てのコーティング、抗菌剤および抗真菌剤、ならびに吸収遅延剤等が含まれる。補助活性化合物も同様に、治療製剤が悪心を減少または防止する能力にそれらが有意な影響を及ぼさない限り、組成物に組み入れることができる。
【0193】
活性化合物は、対象におけるアミロイド沈着を阻害するために十分な治療的有効量で投与される。「治療的有効量」は、無処置対象と比較して、好ましくはアミロイド沈着を少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、さらにより好ましくは少なくとも約60%、およびなおより好ましくは少なくとも80%阻害する。化合物がアミロイド沈着を阻害する能力は、ヒト疾患におけるアミロイド沈着の阻害に関する有効性を予測する可能性がある動物モデル系において評価することができる。または、化合物がアミロイド沈着を阻害できるか否かは、参照により本明細書に明白に組み入れられる、米国特許第5,164,295号に記述されるように、アミロイド原性タンパク質と基底膜構成成分との相互作用を化合物が阻害できるか否かを調べることによって、または実施例5に記述する質量分析アッセイによって評価することができる。
【0194】
「対象」という用語には、アミロイドーシスが起こりうる、またはアミロイド疾患、例えばアルツハイマー病、ダウン症候群、軽度の認知障害、CAA、糖尿病関連(β2M)アミロイドーシス、二次(AA)アミロイドーシス、原発性(AL)アミロイドーシス、遺伝性アミロイドーシス、糖尿病等に対して感受性がある生きている生物が含まれる。対象の例には、ヒト、サル、ウシ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、およびネコが含まれる。「対象」という用語には、動物(例えば、哺乳類、例えば、ネコ、イヌ、ウマ、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、齧歯類、例えばマウスまたはラット、ウサギ、リス、クマ、霊長類(例えば、チンパンジー、サル、ゴリラ、およびヒト))と共に、ニワトリ、アヒル、ペキンダック、ガチョウ、およびそのトランスジェニック種が含まれる。
【0195】
本発明の特定の態様において、対象は、本発明の方法による治療を必要としており、この必要性に基づいて治療のために選択される。治療を必要とする対象は当技術分野において認識され、アミロイド沈着もしくはアミロイドーシスに関連した疾患もしくは障害を有する、そのような疾患もしくは障害の症状を有する、またはそのような疾患もしくは障害のリスクを有すると同定されており、診断、例えば医学的診断に基づいて、治療から利益を得ることが期待されるであろう(例えば、疾患もしくは障害、疾患もしくは障害の症状、または疾患もしくは障害のリスクを平癒、治癒、予防、緩和、軽減、変化、治療、改良、改善する、または影響を及ぼす)対象が含まれる。
【0196】
本発明の組成物を、治療される対象に投与することは、対象におけるアミロイド沈着を阻害するために有効な公知の技法、用量および期間を用いて行うことができる。治療効果を得るために必要な治療化合物の有効量は、対象における臨床部位で既に沈着しているアミロイドの量、対象の年齢、性別、および体重、ならびに治療化合物の対象におけるアミロイド沈着の阻害能のような要因に応じて変化する可能性がある。投与レジメは、最適な治療範囲を提供するために調節することができる。例えば、いくつかの分割用量を毎日投与してもよく、または用量は、治療状況の緊急性に応じて比例して減少させてもよい。本発明の治療化合物(例えば、3-アミノ-1-プロパンスルホン酸)に関する有効量の範囲の非制限的な例は、1〜500 mg/kg体重/日である。当業者は、過度の実験を行うことなく、関連する要因を調べて、治療化合物の有効量に関する決定を行うことができるであろう。
【0197】
本発明の薬学的組成物における活性成分の実際の用量レベルは、患者に毒性を示すことなく、特定の患者、組成物、および投与様式に関して所望の治療反応を得るために有効である活性成分の量を得るために変更してもよい。
【0198】
特に、選択された用量レベルは、用いる本発明の特定の化合物の活性、投与時期、用いられる特定の化合物の排出速度、治療期間、用いられる特定の化合物と併用して用いられる他の薬剤、化合物または材料、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、全身健康、および既往、ならびに医学の技術分野において周知の要因を含む多様な要因に依存するであろう。
【0199】
医師、例えば、当業者の医師または獣医師は、必要な薬学的組成物の有効量を容易に決定して処方することができる。例えば、医師または獣医師は、薬学的組成物において用いられる本発明の化合物の用量を、所望の治療効果を得るために必要なレベルより低いレベルから開始して、所望の効果が得られるまで用量を徐々に増加させることができるであろう。
【0200】
投与レジメは、有効量を構成するものに影響を及ぼすことができる。治療製剤は、アミロイドーシスの発症前または発症後のいずれかに対象に投与することができる。さらに、いくつかの分割用量と共に交互の用量を、毎日もしくは連続的に投与することができ、または用量を持続的に注入するもしくは1回注射することができる。さらに、治療製剤の用量は、治療的または予防的状況の緊急度に応じてそれに比例して増加または減少することができる。
【0201】
特定の態様において、投与の容易さおよび用量の均一性のために単位投与剤形で組成物を製剤化することが特に都合がよい。本明細書において用いられる単位投与剤形は、それぞれの単位が、必要な薬学的媒体に関連して所望の治療効果を得るように計算された治療化合物の既定量を含む、治療される対象のための単位用量として適している物理的に個別の単位を指す。本発明の単位投与剤形の仕様は、(a)治療化合物の独自の特徴、および得られる特定の治療効果、ならびに(b)対象におけるアミロイド沈着を治療するためにそのような治療化合物を調合/製剤化する当技術分野における固有の制限によって左右され、直接依存する。
【0202】
本発明のさらなる局面には、アミロイドーシスを治療するため、アミロイド沈着を阻害する、またはアミロイド関連疾患、例えばAβ関連疾患、例えばアルツハイマー病、脳アミロイド血管障害、封入体筋炎、黄斑変性、ダウン症候群、軽度の認知障害、および遺伝性脳出血を予防または治療するための薬学的組成物が含まれる。薬学的に許容される媒体と、消化管の不耐性を有意に減少または予防するために製剤化された治療化合物の量、アミロイドーシスを治療または阻害するために十分な量、アミロイド沈着を阻害するため、またはアミロイド関連疾患を予防または治療するために十分な量とを含む、本明細書において先に記述した治療製剤を、薬学的組成物に組み入れることができる。一つの態様において、本発明の薬学的組成物には、式3-アミノ-1-プロパンスルホネート/Xを有する治療化合物が含まれ、式中Xはエステルまたは対陽イオンであり、エステルまたは対イオンにはそれぞれ、治療製剤が消化管の不耐性を減少または防止する能力に有意に影響を及ぼさない、アルコールラジカルまたは陽性に荷電した原子および部分が含まれる。好ましい態様において、陽イオン基は、水素、H+であり、化合物は3-アミノ-1-プロパンスルホン酸である。
【0203】
さらにもう一つの態様において、本発明は、消化管不耐性の有意な減少能または予防能に関して予め選択された治療化合物を薬学的に許容される化合物と配合して、消化管の不耐性が増強された薬学的組成物を形成する、消化管の不耐性が増強された薬学的組成物を製剤化する方法である。
【0204】
「消化管の不耐性が増強された薬学的組成物」という用語には、消化管の不耐性の有意な減少能または予防能に基づいて化合物を予め選択することによって選択されている本発明の治療化合物を含む薬学的組成物が含まれる。
【0205】
IV.投与
本発明の製剤には、経口投与に適した製剤が含まれる。製剤は簡便に単位投与剤形で表してもよく、薬学の技術分野において周知の任意の方法によって調製してもよい。担体材料と混合して単一の投与剤形を産生することができる活性成分の量は、一般的に、治療効果を生じる化合物の量であろう。一般的に、この量は100%のうち、活性成分約1%〜約99%、好ましくは約5%〜約70%、最も好ましくは約10%〜約30%の範囲であろう。
【0206】
これらの製剤または組成物を調製する方法には、以下の段階が含まれる:本発明の化合物を担体、および任意で、一つまたはそれ以上の補助成分と会合させる。一般的に製剤は、本発明の化合物を液体担体、または細かく粉砕された固体担体、またはその双方と均一かつ十分に会合させた後、必要であれば製剤を成型することによって調製される。
【0207】
経口投与のために適した本発明の製剤は、それぞれが活性成分として本発明の化合物の既定量を含む、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、トローチ剤(香料基剤、通常蔗糖およびアカシアまたはトラガカントを用いて)、粉剤、顆粒剤、水性もしくは非水性液体における溶液もしくは懸濁液として、エリキシル剤もしくはシロップとして、香錠(ゼラチンおよびグリセリンのような不活性基剤、または蔗糖およびアカシアを用いて)として、またはマウスウォッシュ等の剤形であってもよい。本発明の化合物はまた、ボーラス、し剤、またはパスタ剤として投与してもよい。
【0208】
経口投与のための本発明の固体投与剤形(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣丸、粉剤、顆粒等)において、活性成分をクエン酸ナトリウムまたは二カルシウムリン酸塩、または以下のいずれかのような一つまたはそれ以上の薬学的に許容される担体と混合する:デンプン、乳糖、蔗糖、グルコース、マンニトール、またはケイ酸のような充填剤または増量剤;例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、蔗糖またはアカシアのような結合剤;グリセロールのような湿潤剤;寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウムのような崩壊剤;パラフィンのような溶解遅延剤;四級アンモニウム化合物のような吸収促進剤;例えばセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールのような湿潤剤;カオリンおよびベントナイト土のような吸収剤;タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびその混合物のような潤滑剤;ならびに着色剤。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、薬学的組成物は、緩衝剤を含んでもよい。類似のタイプの固体組成物も同様に、ラクトース、または乳糖と共に高分子量ポリエチレングリコール等のような賦形剤を用いる軟および硬ゼラチンカプセルにおける充填剤として用いてもよい。
【0209】
本発明の治療化合物は、経口投与した場合に有効である。したがって、好ましい投与経路は経口投与である。治療的に活性な化合物を、化合物を不活化する可能性がある酸の作用およびその他の天然の条件から化合物を保護する材料でコーティングしてもよい。本発明の化合物は、インビボで適切な分布が確実に得られるように調製することができる。例えば、血液脳関門(BBB)は、非常に親水性の多くの化合物を排除することから、本発明の治療化合物がBBBを確実に通過するために、それらを例えばリポソームに調製することができる。リポソームを調製する方法に関しては、例えば米国特許第4,522,811号;第5,374,548号;および第5,399,331号を参照されたい。リポソームは特定の細胞または臓器(「ターゲティング部分」)に選択的に輸送される一つまたはそれ以上の成分を含んでもよく、このように標的化薬物輸送を提供する(例えば、V.V.Ranade(1989)J. Clin. Pharmacol. 29:685を参照されたい)。例としてのターゲティング部分には、葉酸塩またはビオチン(例えば、Lowらに対する米国特許第5,416,016号を参照されたい);マンノシド(Umezawaら(1988)、Biochem. Biophys. Res. Commun. 153:1038);抗体(P.G. Bloemanら(1995)FEBS Lett. 357:140;M. Owaisら(1995)、Antimicrob. Agents Chemother. 39:180);界面活性剤プロテインA受容体(Briscoeら(1995)、Am. J. Physiol. 1233:134);gp120(Schreierら(1994)、J. Biol. Chem. 269:9090;同様に、K. Keinanen, M.L. Laukkanen(1994)FEBS Lett. 346:123;J.J. Killion、I.J.Fidler(1994)Immunomethods 4:273も同様に参照されたい)が含まれる。
【0210】
治療化合物を投与するために、化合物をその不活化を防止する材料によってコーティングするか、またはその材料を化合物と同時投与する必要があるかも知れない。例えば、治療化合物は適当な担体、例えばリポソームまたは希釈剤において対象に投与してもよい。リポソームには、水中油中水型CGF乳剤と共に通常のリポソーム(Strejanら、J. Neuroimmunol. 7:27(1984))が含まれる。
【0211】
治療化合物は、不活性希釈剤または同化可能な食用担体と共に経口投与することができる。治療化合物および他の成分はまた、硬もしくは軟ゼラチンカプセルに封入してもよく、錠剤に圧縮してもよく、または対象の食事に直接組み入れてもよい。治療的経口投与の場合、治療化合物を賦形剤と共に組み入れて、摂取可能な錠剤、口腔内錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウェーハ等の形で用いてもよい。組成物および調製物における治療化合物の割合は当然変化してもよい。そのような治療的に有用な組成物における治療化合物の量は、適した用量が得られるような量である。
【0212】
「薬学的に許容される担体」という用語には、本発明の化合物が意図する機能を発揮できるように、対象におけるまたは対象に対する本発明の化合物の運搬または輸送に関係する、液体または固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、または封入材料のような薬学的に許容される材料、組成物、または媒体が含まれる。典型的に、そのような化合物は、一つの臓器または体の一部からもう一つの臓器または体の一部へと運搬または輸送される。それぞれの担体は、製剤の他の成分に対して適合性であるという意味において、およびそれが消化管の不耐性を減少または予防する治療製剤の能力に影響を及ぼさないという意味において、「許容され」なければならない。薬学的に許容される担体として役立ちうるいくつかの材料の例には、乳糖、グルコース、および蔗糖のような糖;コーンスターチおよびジャガイモデンプンのようなデンプン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースのようなセルロースおよびその誘導体;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;カカオバターおよび坐剤用ロウのような賦形剤;ピーナッツ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、および大豆油のような油脂;プロピレングリコールのようなグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコールのようなポリオール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルのようなエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムのような緩衝剤;アルギン酸;発熱物質不含水;等張生理食塩液;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝溶液;ならびに当技術分野で公知の薬学的製剤において用いられる他の非毒性の適合性物質が含まれる。
【0213】
湿潤剤、乳化剤、およびラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤は、着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味料、着香料および芳香剤、保存剤、ならびに抗酸化剤と共に同様に組成物に存在しうる。
【0214】
薬学的に許容される抗酸化剤の例には、アスコルビン酸、塩酸システイン、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等のような水溶性抗酸化剤;アスコルビン酸パルミテート、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、αトコフェロール等のような脂溶性抗酸化剤;およびクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等のような金属キレート剤が含まれる。
【0215】
錠剤は、任意で一つまたはそれ以上の補助成分と共に、圧縮または成型によって形成してもよい。圧縮錠は、結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、またはクロスリンクしたカルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤または分散剤を用いて調製してもよい。成型錠は、不活性な液体希釈剤によって湿らせた粉末化合物の混合物を、適した機械において成型することによって調製してもよい。
【0216】
錠剤、および糖衣丸、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤のような本発明の薬学的組成物の他の固体投与剤形は、任意で腸溶コーティングおよび製薬技術分野において周知の他のコーティングのようなコーティングおよび外皮によって作製または調製してもよい。それらは、例えば、望ましい放出プロフィールを提供するために多様な割合のヒドロキシメチルセルロース、他のポリマーマトリクス、リポソーム、またはミクロスフェアを用いて、その中の活性成分の放出の遅延または制御を提供するように調製してもよい。それらは、例えば、細菌捕獲濾紙を通して濾過することによって、または滅菌水もしくは他のいくつかの注射用媒体に使用直前に溶解することができる滅菌固体組成物の形で、滅菌物質を組み入れることによって滅菌してもよい。これらの組成物はまた、任意で不透明化剤を含んでもよく、および/または活性成分のみを放出する物質、または選択的に、消化管の特定の部分に、任意で遅れて活性成分を放出する物質を含んでもよい。用いることができる抱埋組成物の例には、ポリマー物質およびロウが含まれる。活性成分はまた、適当であれば、上記の賦形剤の一つまたはそれ以上と共に微小封入型となりうる。
【0217】
粉剤は、本発明の化合物の他に、乳糖、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末のような賦形剤、またはこれらの物質の混合物を含みうる。
【0218】
本発明の化合物の経口投与のための液体投与剤形には、薬学的に許容される乳剤、微小乳剤、溶液、懸濁液、シロップ剤、およびエリキシル剤が含まれる。活性成分の他に、液体投与剤形は、例えば水または他の溶媒のような当技術分野において一般的に用いられる不活性希釈剤、溶解剤、ならびにエチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカーボネート、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油脂(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフラニルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステルのような乳化剤、ならびにその混合物を含んでもよい。不活性希釈剤の他に、経口組成物にはまた、湿潤剤、乳化剤、および懸濁剤、甘味料、着香料、着色料、香料、および保存剤のような補助剤が含まれうる。
【0219】
懸濁剤は、活性成分の他に、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール、およびソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天、およびトラガカントのような懸濁剤、ならびにその混合物を含んでもよい。
【0220】
これらの組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤のような補助剤を含んでもよい。様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸等を含めることによって、微生物の作用を確実に予防してもよい。同様に、糖、塩化ナトリウム等のような等張剤を組成物に含めることが望ましいかも知れない。さらに、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような吸収を遅らせる物質を含めることによって、注射用製剤を持続的に吸収させてもよい。
【0221】
本発明の組成物はまた、対象に局所投与、例えば対象の表皮または上皮組織に組成物を直接塗布するもしくは塗ることによって、または「パッチ」によって経皮投与することができる。そのような組成物には、例えばローション、クリーム、溶液、ゲル、および固体が含まれる。これらの局所組成物は好ましくは、通常、本発明の組成物の少なくとも約0.1%、好ましくは約1%〜約5%の有効量を含む。局所投与のための適した担体は、好ましくは持続的な被膜として皮膚のその場に残り、発汗または水に浸しても除去されないで残る。一般的に、担体は、本質的に有機担体であり、治療化合物をその中に分散または溶解させることができる。担体には、薬学的に許容されるエモリエント(emolient)、乳化剤、濃化剤、溶媒等が含まれてもよい。
【0222】
一つの態様において、薬学的製剤は、製剤の重量で治療化合物、例えばアルキルスルホン酸、例えば3-アミノ-1-プロパンスルホン酸化合物を約0.1%より多く、例えば約1%より多く、例えば約2%より多く、例えば約3%より多く、例えば約4%より多く、例えば約5%より多く、例えば約10%より多く、例えば約20%より多く、例えば約30%より多く、例えば約40%より多く、例えば約50%より多く、例えば約60%より多く、例えば約70%より多く、例えば約80%より多く、例えば約90%より多く、例えば約95%より多く、例えば約99%より多く含む。特定の態様において、薬学的製剤は、製剤の重量で治療化合物を約12.6%±0.5%含む。もう一つの特定の態様において、薬学的製剤は、治療化合物を製剤の重量で約95.2%±0.5%含む。薬学的製剤の残りは、本明細書に記述されるさらなる物質を含んでもよい。
【0223】
もう一つの態様において、薬学的製剤は、製剤の重量で、さらなる物質、例えば治療化合物の放出を改変する物質または腸溶コーティングを、例えば約1%より多く、例えば約2%より多く、例えば約3%より多く、例えば約4%より多く、例えば約5%より多く、例えば約6%より多く、例えば約7%より多く、例えば約8%より多く、例えば約9%より多く、例えば約10%より多く、例えば約20%より多く、例えば約30%より多く、例えば約40%より多く、例えば約50%より多く、例えば約60%より多く、例えば約70%より多く、例えば約80%より多く、例えば約90%より多く、例えば約95%より多く、例えば約99%より多く含む。これらの割合は、製剤の一つまたはそれ以上のさらなる物質に、独立して、または併用した場合に当てはまる範囲である。特定の態様において、好ましい特性を付与するために、例えば不耐性を減少または予防する他の方法と独立してまたは共に、消化管の不耐性を減少または予防するために、治療製剤にさらなる物質を用いてもよい。例としてのさらなる物質は本明細書に記述される。例えば、治療製剤に起因しうる如何なる可能性がある消化管の不耐性に対しても保護するために、錠剤を腸溶コーティングしてもよく、または放出改変剤を加えて胃または腸における治療化合物の如何なる迅速な放出も制御してもよい。特定の態様において、薬学的製剤は、製剤の重量でさらなる物質を約9.3%±0.5%含む。もう一つの特定の態様において、薬学的製剤は、製剤の重量でさらなる物質約8.8%±0.5%を含む。もう一つの特定の態様において、薬学的製剤は、製剤の重量でさらなる物質約5.6%±0.5%を含む。
【0224】
本発明の特定の態様において、治療化合物は、治療化合物の放出を改変する物質、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、流動促進剤/希釈剤、例えばシリカ微結晶、充填剤、例えばリン酸水素カルシウム、結合剤/崩壊剤、例えばStarch(登録商標)1500、潤滑剤、例えばステアリン酸粉末またはステアリン酸マグネシウム、サブコート、例えばOpadry(登録商標)II White、トップコート、例えばOpadry(登録商標)II WhiteまたはOpadry(登録商標)Clear、腸溶コート、例えばAcryleze(登録商標)、およびその組み合わせからなる群より選択される物質と共に投与される。以下の材料がColorcon(ウェストポイント、ペンシルバニア州)から入手可能である:Starch(登録商標)1500、Opadry(登録商標)II White、Opadry(登録商標)Clear、Acryleze(登録商標)。本発明のいくつかの態様を、下記の実施例において考察する。
【0225】
等価物
当業者は、単なる通常の実験および本明細書の内容物を用いて、本明細書に記述された特異的技法、態様、請求の範囲、および実施例に対する多数の等価物を認識し、確認することができるであろう。そのような等価物は、本発明の範囲に含まれ、添付の請求の範囲に含まれると見なされる。
【0226】
例えば対象集団の年齢、用量、および血中レベルのような、値および範囲が本明細書において提供されている場合は常に、これらの値および範囲に含まれる全ての値および範囲が本発明の範囲に含まれることを意味すると理解される。その上、これらの範囲に入る全ての値と共に、値の範囲の上限または下限も同様に、本出願によって企図される。
【0227】
参考文献の組み入れ
本出願を通して引用された全ての参考文献、公表された特許、および出版された特許出願の内容物は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書および「関連出願(The Related Applications)」の章において同定される出願に記述される如何なる化合物の使用も本発明の範囲に含まれ、本発明によって含まれると意図され、少なくともこれらの目的に関して本明細書に明白に組み入れられ、さらに他の全ての目的に関して明白に組み入れられると理解すべきである。
【0228】
実施例
本発明は、以下の実施例によってさらに説明するが、これらは本発明をさらに制限すると解釈してはならない。
【0229】
実施例1−経口投与のためのゼラチンカプセル
100および400 mg白色ゼラチンカプセルの単位処方を表2に示す。
【0230】
(表2)100および400 mg白色ゼラチンカプセルの単位処方

*MS:製造元の標準、NF:国内処方集、USP:米国薬局方
【0231】
3-アミノ-1-プロパンスルホン酸ナトリウム塩を固体投与剤形(カプセル剤)で投与すると消化管症状(すなわち、悪心および嘔吐)に関連することが、特定の試験の結果から示されている。さらなる試験から、消化管症状は、アミノ-1-プロパンスルホン酸ナトリウム塩が胃において溶解する際に生じる高いpHによる局所刺激によって少なくとも部分的に引き起こされることが判明した。イヌにおけるさらなる実験(固体投与剤形)から、遊離の酸はナトリウム塩型より認容性が良好であることが示された。さらに、酸型は非吸湿特性を有することから、活性な薬学的成分として酸型はより望ましい。酸型に起因しうる如何なる起こりうる消化管不耐性に対してもさらに保護するために、錠剤を腸溶コーティングして、放出改変剤を加えて、胃および腸における薬剤の迅速な吸収を制御した。
【0232】
実施例2−腸溶コーティング錠
100および400 mg白色腸溶コーティング錠を処方に従って調製し、この処方ではナトリウムを除去するためにイオン交換を利用するプロセスによって産生される薬物は、その密度が低く飛散性であるために、これらを水による造粒によって密度を高めた。100および400 mg腸溶コーティング錠の単位処方を表3に示す。
【0233】
(表3)100および400 mg腸溶コーティング錠の単位処方

*MS:製造元の標準、NF:国内処方集、USP:米国薬局方
【0234】
初期フェーズI試験において用いられた100 mg腸溶コーティング錠のインビトロ(溶解速度)およびPKデータから、これらの錠剤が許容されるPKおよび良好な認容性を有することが示された。
【0235】
実施例3−放出改変コーティング錠
臨床試験から、腸溶コーティングおよび薬物放出改変剤の役割は、医薬品の薬物動態(PK)プロフィールのみならずその認容性において重要であることが示された。したがって、PK、認容性、および製品の安定性に関して特定の薬学的成績を得るために、薬物放出改変剤を錠剤に製剤化した。皮膜コーティング許容性および湿度保護能に関して製品の物理的安定性を改善するために、加速条件で腸溶コーティングの量を増加させ、トップコートを加えることによって腸溶コーティング系を改変した。
【0236】
バルク物質(3-アミノ-1-プロパンスルホン酸)と不活性成分(ケイ酸化微結晶性セルロース、リン酸水素カルシウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デンプン、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムと共に、Opadry(登録商標)II White(サブコートおよびトップコート)ならびにAcryleze(登録商標))とからなる50 mgの放出改変コーティング錠を調製した。50 mg放出改変コーティング錠の単位処方を表4に提供する。
【0237】
(表4)50 mg放出改変コーティング錠の単位処方

*MS:製造元の標準、NF:国内処方集、USP:米国薬局方
【0238】
実施例4−放出改変コーティング錠
実施例3の製剤におけるコーティングに対してわずかな改変を行った:実施例3においてトップコートとして用いたOpadry(登録商標)Clearを、サブコートにも用いられるOpadry(登録商標)II Whiteに交換した。Opadry(登録商標)Clearと同様に、Opadry(登録商標)II Whiteは、密封能として機能するHPMC基剤の調製物であり、したがって腸溶コート(Acryleze(登録商標))の水分保護能を増強するように等しく機能する。トップコートのコーティング系の変更は、すなわち、コーティングプロセスの際の腸溶コーティング段階からトップコート適用段階への移行の際の噴霧銃の目詰まりを防止することによって、一つのコーティングの適用から他のコーティングへの移行を容易にするために、製品の処方サイズの拡大にとって都合がよい可能性があるプロセスの変更であった。
【0239】
50 mg放出改変コーティング錠の単位処方を表5に示す。
【0240】
(表5)50 mg放出改変コーティング錠の単位処方

*MS:製造元の標準、NF:国内処方集、USP:米国薬局方
【0241】
米国薬局方の方法(USP 25、方法B、2017頁)に従って行われた溶解プロフィールから、50 mg放出改変コーティング錠(実施例3および4)の溶解速度はいずれも同等であることが示されている。
【0242】
さらに、外観、すなわち白色の安定性を改善するために、以下の放出改変コーティング錠処方を、すなわちOpadry(登録商標)II Whiteを増加させて調製した。
【0243】
(表6)50 mg放出改変コーティング錠の単位処方

*MS:製造元の標準、NF:国内処方集、USP:米国薬局方
【0244】
実施例5−質量分析アッセイ
アミロイド原線維に対する化合物の結合は、本明細書において下記に示すように質量分析(「MS」)アッセイを用いて測定してもよい。
【0245】
試料を、20%エタノール、200 μM試験化合物、および20 μM可溶化Aβを含む水溶液として調製する。各試料のpH値は、0.1%水酸化ナトリウム水溶液を加えることによって7.4(±0.2)に調節する。次に、溶液をWaters ZQ 4000質量分析器を用いて、エレクトロスプレーイオン化質量分析によって分析する。試料を流速25 μl/分で直接注入することによって、試料の調製後2時間以内に導入する。熱源の温度を70℃に維持し、コーン電圧は全ての分析に関して20 Vである。データはMasslynx 3.5ソフトウェアを用いて処理する。
【0246】
得られたMSアッセイデータは、Aβに対する化合物の結合能に対する洞察を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミロイド沈着が阻害されるように、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の有効量を対象に投与する段階を含む、対象におけるアミロイド沈着を阻害する方法。
【請求項2】
治療製剤が、消化管の不耐性の有意な減少能または予防能に関して予め選択された治療化合物をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
治療製剤が、消化管の不耐性を有意に減少または予防するさらなる物質をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
さらなる物質が腸溶コーティングである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
さらなる物質が治療化合物の放出を改変する物質である、請求項3記載の方法。
【請求項6】
治療製剤が、置換または非置換芳香族または脂肪族分子に共有結合した少なくとも一つのスルホネート基を含む治療化合物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
アミロイド関連疾患が治療または予防されるように、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の治療量を対象に投与する段階を含む、対象におけるアミロイド関連疾患を治療または予防する方法。
【請求項8】
アミロイド関連疾患がAβ関連疾患である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
アミロイド関連疾患が予防的または治療に治療される、請求項7記載の方法。
【請求項10】
アミロイド関連疾患が、アルツハイマー病、脳アミロイド血管障害、封入体筋炎、黄斑変性、ダウン症候群、軽度の認知障害、および遺伝性脳出血からなる群より選択される、請求項7記載の方法。
【請求項11】
アミロイド関連疾患がII型糖尿病である、請求項7記載の方法。
【請求項12】
治療化合物が、アミロイド原性タンパク質と基底膜構成成分との相互作用を阻害してアミロイド沈着を阻害する、請求項1または7記載の方法。
【請求項13】
治療製剤が、アミロイド沈着を阻害するために十分な量の式3-アミノ-1-プロパンスルホネート/Xを有する治療化合物を含み、Xは、対陽イオンであるか、またはスルホネートとエステルを形成し、エステルまたは対陽イオンには、治療製剤の消化管の不耐性の減少能または予防能に有意に影響を及ぼさないアルコールラジカルまたは陽性に荷電した原子および部分がそれぞれ含まれる、請求項1記載の方法。
【請求項14】
治療化合物が3-アミノ-1-プロパンスルホン酸である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
治療化合物が、置換もしくは非置換アルキルスルホン酸、置換もしくは非置換アルキル硫酸、置換もしくは非置換アルキルチオスルホン酸、置換もしくは非置換アルキルチオ硫酸、またはその薬学的に許容される塩である、請求項7記載の方法。
【請求項16】
治療化合物が、置換もしくは非置換アルキルスルホン酸またはその薬学的に許容される塩である、請求項7記載の方法。
【請求項17】
治療化合物が、置換もしくは非置換低級アルキルスルホン酸またはその薬学的に許容される塩である、請求項7記載の方法。
【請求項18】
治療化合物が、(置換もしくは非置換-アミノ)-置換アルキルスルホン酸またはその薬学的に許容される塩である、請求項7記載の方法。
【請求項19】
治療化合物が、(置換もしくは非置換-アミノ)-置換低級アルキルスルホン酸またはその薬学的に許容される塩である、請求項7記載の方法。
【請求項20】
治療化合物が以下の構造を有する、請求項7記載の方法:

式中、Yは-NRaRbまたは-SO3-X+であって、nは1〜5の整数であり;X+は水素または陽イオン基であり;かつRaおよびRbは、水素、アルキル、アリール、もしくはヘテロシクリルからなる群よりそれぞれ独立して選択されるか、またはRaおよびRbは、それらが結合する窒素原子と共に、原子3〜8個を環に有する環状部分を形成する。
【請求項21】
治療化合物が以下の構造を有する、請求項7記載の方法。

【請求項22】
治療化合物が、3-アミノ-1-プロパンスルホン酸である、請求項7記載の方法。
【請求項23】
治療製剤が、実施例1、実施例2、実施例3、または実施例4に記載されるように製剤化される、請求項13記載の方法。
【請求項24】
治療化合物が経口投与される、請求項1〜23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
治療化合物が、アミロイド原性タンパク質と基底膜の構成成分との相互作用を阻害してアミロイド沈着を阻害するように、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の有効量を対象に投与する段階を含む、対象におけるアミロイド沈着を阻害する方法。
【請求項26】
治療化合物が、アミロイドによって誘導される神経変性または細胞毒性を阻害するように、消化管の不耐性を有意に減少または阻害するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の有効量を対象に投与する段階を含む、対象におけるアミロイド沈着を阻害する方法。
【請求項27】
治療化合物が脳からのアミロイドβのクリアランスを増強するように、消化管の不耐性を有意に減少または阻害するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の有効量を対象に投与する段階を含む、対象におけるアミロイド沈着を阻害する方法。
【請求項28】
治療製剤が、アミロイド沈着を阻害するために十分な量の式3-アミノ-1-プロパンスルホネート/Xを有する治療化合物を含み、Xは、対陽イオンであるか、またはスルホネートとエステルを形成し、エステルまたは対陽イオンには、治療製剤の消化管の不耐性の減少能または予防能に有意に影響を及ぼさないアルコールラジカルまたは陽性に荷電した原子および部分がそれぞれ含まれる、請求項25〜27のいずれか一項記載の方法。。
【請求項29】
治療化合物が、置換もしくは非置換アルキルスルホン酸、置換もしくは非置換アルキル硫酸、置換もしくは非置換アルキルチオスルホン酸、置換もしくは非置換アルキルチオ硫酸、またはその薬学的に許容される塩である、請求項25〜27のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
治療化合物が、置換もしくは非置換アルキルスルホン酸またはその薬学的に許容される塩である、請求項25〜27のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
治療化合物が、置換もしくは非置換低級アルキルスルホン酸、またはその薬学的に許容される塩である、請求項25〜27のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
治療化合物が、(置換もしくは非置換-アミノ)-置換アルキルスルホン酸またはその薬学的に許容される塩である、請求項25〜27のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
治療化合物が、(置換もしくは非置換-アミノ)-置換低級アルキルスルホン酸またはその薬学的に許容される塩である、請求項25〜27のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
治療化合物が以下の構造を有する、請求項28記載の方法:

式中、Yは-NRaRbまたは-SO3-X+であって、nは1〜5の整数であり;X+は水素または陽イオン基であり;かつRaおよびRbは、水素、アルキル、アリール、もしくはヘテロシクリルからなる群よりそれぞれ独立して選択されるか、またはRaおよびRbは、それらが結合する窒素原子と共に、原子3〜8個を環に有する環状部分を形成する。
【請求項35】
治療化合物が以下の構造を有する、請求項28記載の方法。

【請求項36】
治療化合物が、3-アミノ-1-プロパンスルホン酸である、請求項28記載の方法。
【請求項37】
治療化合物が経口投与される、請求項25〜36のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
アミロイド沈着が阻害されるように、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の有効量を対象に経口投与する段階を含む、対象におけるアミロイド沈着を阻害する方法。
【請求項39】
治療製剤が、アミロイド沈着を阻害するために十分な量の式3-アミノ-1-プロパンスルホネート/Xを有する治療化合物を含み、Xは、対陽イオンであるか、またはスルホネートとエステルを形成し、エステルまたは対陽イオンには、治療製剤の消化管の不耐性の減少能または予防能に有意に影響を及ぼさないアルコールラジカルまたは陽性に荷電した原子および部分がそれぞれ含まれる、請求項38記載の方法。
【請求項40】
治療化合物が、3-アミノ-1-プロパンスルホン酸である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
薬学的に許容される媒体において治療化合物を投与することをさらに含む、請求項1、25、26、または27のいずれか一項記載の方法。
【請求項42】
治療製剤が、実施例1、実施例2、実施例3、または実施例4に記載されるように製剤化される、請求項39記載の方法。
【請求項43】
治療化合物が、治療化合物の放出を改変する物質、流動促進剤/希釈剤、増量剤、結合剤/崩壊剤、潤滑剤、サブコート、トップコート、腸溶コート、およびその任意の組み合わせからなる群より選択される物質と共に投与される、請求項41記載の方法。
【請求項44】
治療化合物の放出を改変する物質が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である、請求項43記載の方法。
【請求項45】
流動促進剤/希釈剤がケイ酸化微結晶である、請求項43記載の方法。
【請求項46】
増量剤がリン酸水素カルシウムである、請求項43記載の方法。
【請求項47】
結合剤/崩壊剤がStarch(登録商標)1500である、請求項43記載の方法。
【請求項48】
潤滑剤がステアリン酸粉末である、請求項43記載の方法。
【請求項49】
潤滑剤がステアリン酸マグネシウムである、請求項43記載の方法。
【請求項50】
サブコートがOpadry(登録商標)II Whiteである、請求項43記載の方法。
【請求項51】
トップコートがOpadry(登録商標)II WhiteまたはOpadry(登録商標)Clearであり、請求項43記載の方法。
【請求項52】
腸溶コートがAcryleze(登録商標)である、請求項43記載の方法。
【請求項53】
対象におけるアミロイド沈着を阻害するために十分な量の、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物と、薬学的に許容される媒体とを含む治療製剤を含む、対象におけるアミロイド沈着を阻害するための薬学的組成物。
【請求項54】
対象におけるアミロイドーシスを治療するために十分な量の、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物と、薬学的に許容される媒体とを含む治療製剤を含む、アミロイドーシスを治療するための薬学的組成物。
【請求項55】
対象におけるアミロイド関連疾患を予防または治療するために十分な量の、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物と、薬学的に許容される媒体とを含む治療製剤を含む、アミロイド関連疾患を治療または予防するための薬学的組成物。
【請求項56】
アミロイド関連疾患がAβ関連疾患である、請求項55記載の薬学的組成物。
【請求項57】
アミロイド関連疾患が、アルツハイマー病、脳アミロイド血管障害、封入体筋炎、黄斑変性、ダウン症候群、軽度の認知障害、および遺伝性脳出血からなる群より選択される、請求項55記載の薬学的組成物。
【請求項58】
アミロイド関連疾患がII型糖尿病である、請求項55記載の薬学的組成物。
【請求項59】
治療製剤が、アミロイド原性タンパク質と基底膜の構成成分との相互作用を阻害するために十分な量、および対象におけるアミロイド沈着を阻害するために十分な量で、かつ薬学的に許容される媒体中に存在する、請求項53〜58のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項60】
治療製剤が、アミロイドによって誘導される神経変性または細胞毒性を阻害するために十分な量で、かつ薬学的に許容される媒体中に存在する、請求項53〜58のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項61】
治療製剤が、脳からのアミロイドβのクリアランスを増強するために十分な量で、薬学的に許容される媒体中に存在する、請求項53〜58のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項62】
治療製剤が、アミロイド沈着を阻害するために十分な量の式3-アミノ-1-プロパンスルホネート/Xを有する治療化合物、および薬学的に許容される媒体を含み、Xは、対陽イオンであるか、またはスルホネートとエステルを形成し、エステルまたは対陽イオンには、治療製剤の消化管の不耐性の減少能または予防能に有意に影響を及ぼさないアルコールラジカルまたは陽性に荷電した原子および部分がそれぞれ含まれる、請求項53〜58のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項63】
治療化合物が、置換もしくは非置換アルキルスルホン酸、置換もしくは非置換アルキル硫酸、置換もしくは非置換アルキルチオスルホン酸、置換もしくは非置換アルキルチオ硫酸、またはその薬学的に許容される塩である、請求項53〜58のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項64】
治療化合物が、置換もしくは非置換アルキルスルホン酸またはその薬学的に許容される塩である、請求項53〜58のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項65】
治療化合物が、置換もしくは非置換低級アルキルスルホン酸またはその薬学的に許容される塩である、請求項53〜58のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項66】
治療化合物が、(置換もしくは非置換-アミノ)-置換アルキルスルホン酸またはその薬学的に許容される塩である、請求項53〜58のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項67】
治療化合物が、(置換もしくは非置換-アミノ)-置換低級アルキルスルホン酸またはその薬学的に許容される塩である、請求項53〜58のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項68】
治療化合物が以下の構造を有する、請求項53〜58のいずれか一項記載の薬学的組成物:

式中、Yは-NRaRbまたは-SO3-X+であって、nは1〜5の整数であり;X+は水素または陽イオン基であり;かつRaおよびRbは、水素、アルキル、アリール、もしくはヘテロシクリルからなる群よりそれぞれ独立して選択されるか、またはRaおよびRbは、それらが結合する窒素原子と共に、原子3〜8個を環に有する環状部分を形成する。
【請求項69】
治療化合物が以下の構造を有する、請求項62記載の薬学的組成物。

【請求項70】
治療化合物が、3-アミノ-1-プロパンスルホン酸である、請求項62記載の薬学的組成物。
【請求項71】
治療製剤が、実施例1、実施例2、実施例3、または実施例4に記載されるように製剤化される、請求項62記載の薬学的組成物。
【請求項72】
治療化合物が、治療化合物の放出を改変する物質、流動促進剤/希釈剤、増量剤、結合剤/崩壊剤、潤滑剤、サブコート、トップコート、腸溶コート、およびその任意の組み合わせからなる群より選択される物質と共に投与される、請求項70記載の薬学的組成物。
【請求項73】
治療化合物の放出を改変する物質が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である、請求項72記載の薬学的組成物。
【請求項74】
流動促進剤/希釈剤がケイ酸化微結晶である、請求項72記載の薬学的組成物。
【請求項75】
増量剤がリン酸水素カルシウムである、請求項72記載の薬学的組成物。
【請求項76】
結合剤/崩壊剤がStarch 1500である、請求項72記載の薬学的組成物。
【請求項77】
潤滑剤がステアリン酸粉末である、請求項72記載の薬学的組成物。
【請求項78】
潤滑剤がステアリン酸マグネシウムである、請求項72記載の薬学的組成物。
【請求項79】
サブコートがOpadry(登録商標)II Whiteである、請求項72記載の薬学的組成物。
【請求項80】
トップコートがOpadry(登録商標)II WhiteまたはOpadry(登録商標)Clearである、請求項72記載の薬学的組成物。
【請求項81】
腸溶コートがAcryleze(登録商標)である、請求項72記載の薬学的組成物。
【請求項82】
アミロイド沈着が対象において減少するように、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の有効量を対象に投与する段階を含む、アミロイド沈着を有する対象におけるアミロイド沈着を減少させる方法。
【請求項83】
グリコサミノグリカンに対するケモカインの結合が阻害されるように、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤を対象に投与する段階を含む、対象におけるグリコサミノグリカンに対するケモカインの結合を阻害する方法。
【請求項84】
消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の有効量をヒトに投与する段階を含む、ヒトにおける細菌とグリコサミノグリカンとの相互作用を調節する方法。
【請求項85】
消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の有効量をヒトに投与する段階を含む、ヒトにおける細菌感染症を治療する方法。
【請求項86】
細菌感染症がクラミジア(Chlamydia)である、請求項85記載の方法。
【請求項87】
消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の有効量を対象に投与する段階を含む、対象におけるウイルスとグリコサミノグリカンとの相互作用を調節する方法。
【請求項88】
消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の有効量を含む治療製剤を対象に投与する段階を含む、対象におけるウイルス感染症を治療する方法。
【請求項89】
ウイルス感染症がHSVである、請求項88記載の方法。
【請求項90】
消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の有効量を投与する段階を含む、対象における脳アミロイド血管障害を予防、治療、または阻害する方法。
【請求項91】
脳アミロイド血管障害が予防、治療、または阻害されるように、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤を血管壁細胞に接触させる段階を含む、脳アミロイド血管障害を予防、治療、または阻害する方法。
【請求項92】
脳アミロイド血管障害が予防、治療、または阻害されるように、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療製剤の治療化合物を血管壁細胞に接触させる段階を含む、脳アミロイド血管障害を予防、治療、または阻害する方法。
【請求項93】
消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の有効量を対象に投与する段階を含む、対象におけるアルツハイマー病を予防または治療する方法。
【請求項94】
消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の治療的有効量を入れる容器と、対象におけるアミロイド沈着を阻害する化合物を用いるための説明書とを含む、対象におけるアミロイド沈着を阻害するための包装された薬学的組成物。
【請求項95】
アミロイド沈着に関連する疾患が、アルツハイマー病、脳アミロイド血管障害、封入体筋炎、黄斑変性、ダウン症候群、軽度の認知障害、および遺伝性脳出血からなる群より選択される、請求項94記載の包装された薬学的組成物。
【請求項96】
アミロイド沈着に関連する疾患がII型糖尿病である、請求項94記載の包装された薬学的組成物。
【請求項97】
消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の治療的有効量を入れる容器と、対象におけるアミロイドーシスを治療する化合物を用いるための説明書とを含む、対象におけるアミロイドーシスを治療するための包装された薬学的組成物。
【請求項98】
消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の治療的有効量を入れる容器と、ウイルス感染症を治療する化合物を用いるための説明書とを含む、ウイルス感染症を治療するための包装された薬学的組成物。
【請求項99】
消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の治療的有効量を入れる容器と、細菌感染症を治療する治療化合物を用いるための説明書とを含む、細菌感染症を治療するための包装された薬学的組成物。
【請求項100】
消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の治療的有効量を入れる容器と、グリコサミノグリカンに対するケモカインの結合を阻害する治療化合物を用いるための説明書とを含む、グリコサミノグリカンに対するケモカインの結合を阻害するための包装された薬学的組成物。
【請求項101】
治療化合物の治療的有効量と薬学的に許容される媒体とを混合する段階を含む、治療製剤を作製する方法であって、治療製剤は消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化される、方法。
【請求項102】
3-アミノ-1-プロパンスルホン酸を重量で5%より多く含む薬学的製剤。
【請求項103】
3-アミノ-1-プロパンスルホン酸を重量で10%より多く含む、請求項102記載の薬学的製剤。
【請求項104】
3-アミノ-1-プロパンスルホン酸を重量で20%より多く含む、請求項102記載の薬学的製剤。
【請求項105】
3-アミノ-1-プロパンスルホン酸を重量で30%より多く含む、請求項102記載の薬学的製剤。
【請求項106】
3-アミノ-1-プロパンスルホン酸を重量で50%より多く含む、請求項102記載の薬学的製剤。
【請求項107】
3-アミノ-1-プロパンスルホン酸を重量で80%より多く含む、請求項102記載の薬学的製剤。
【請求項108】
3-アミノ-1-プロパンスルホン酸を重量で95%より多く含む、請求項102記載の薬学的製剤。
【請求項109】
治療化合物と、重量で1%より多いさらなる物質とを含む薬学的製剤。
【請求項110】
さらなる物質を重量で2%より多く含む、請求項109記載の薬学的製剤。
【請求項111】
さらなる物質を重量で3%より多く含む、請求項109記載の薬学的製剤。
【請求項112】
さらなる物質を重量で4%より多く含む、請求項109記載の薬学的製剤。
【請求項113】
さらなる物質を重量で5%より多く含む、請求項109記載の薬学的製剤。
【請求項114】
さらなる物質が腸溶コーティングである、請求項109記載の薬学的製剤。
【請求項115】
さらなる物質が治療化合物の放出を改変する物質である、請求項109記載の薬学的製剤。
【請求項116】
アミロイド沈着が阻害されるように、腸溶コーティングと共に製剤化した治療化合物を含む治療製剤の有効量を対象に投与する段階を含む、対象におけるアミロイド沈着を阻害する方法。
【請求項117】
アミロイド沈着が阻害されるように、治療化合物の放出を改変する物質と共に製剤化された治療化合物を含む治療製剤の有効量を対象に投与する段階を含む、対象におけるアミロイド沈着を阻害する方法。
【請求項118】
アミロイド沈着が阻害されるように、腸溶コーティングと共に製剤化された治療化合物を含む、対象におけるアミロイド沈着を阻害するための薬学的組成物。
【請求項119】
アミロイド沈着が阻害されるように、治療化合物の放出を改変する物質と共に製剤化された治療化合物を含む、対象におけるアミロイド沈着を阻害するための薬学的組成物。
【請求項120】
以下の段階を含む、消化管の不耐性が増強された薬学的組成物を製剤化する方法:
治療化合物が消化管不耐性の有意な減少能または予防能に関して予め選択される、予め選択された治療化合物と薬学的に許容される担体とを混合する段階、
消化管の不耐性が増強された薬学的組成物を形成する段階。
【請求項121】
脳アミロイド血管障害が、アルツハイマー病、ダウン症候群、通常の加齢、または脳卒中もしくは痴呆に関連した家族性の病態に関連する、請求項90、91、または92のいずれか一項記載の方法。
【請求項122】
アミロイド関連疾患が予防または治療されるように、腸溶コーティングと共に製剤化された治療化合物を含む治療製剤の有効量を対象に投与する段階を含む、対象におけるアミロイド関連疾患を予防または治療する方法。
【請求項123】
アミロイド関連疾患が予防または治療されるように、治療化合物の放出を改変する物質と共に製剤化された治療化合物を含む治療製剤の有効量を対象に投与する段階を含む、対象におけるアミロイド関連疾患を予防または治療する方法。
【請求項124】
腸溶コーティングと共に製剤化された治療化合物を含む、対象におけるアミロイド関連疾患を予防または治療するための薬学的組成物。
【請求項125】
治療化合物の放出を改変する物質と共に製剤化された治療化合物を含む、対象におけるアミロイド関連疾患を予防または治療するための薬学的組成物。
【請求項126】
アルツハイマー病が予防、治療、または阻害されるように、消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の有効量を対象に投与する段階を含む、対象におけるアルツハイマー病を予防、治療、または阻害する方法。
【請求項127】
消化管の不耐性を有意に減少または予防するように製剤化された治療化合物を含む治療製剤の治療的有効量を入れる容器と、対象におけるアルツハイマー病を治療する化合物を用いるための説明書とを含む、対象におけるアルツハイマー病を治療するための包装された薬学的組成物。

【公表番号】特表2007−518672(P2007−518672A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516600(P2006−516600)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【国際出願番号】PCT/IB2004/002381
【国際公開番号】WO2004/112762
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(505475769)ニューロケム (インターナショナル) リミテッド (7)
【Fターム(参考)】